JP2021089221A - 前がん病変の検出方法及び前がん病変か否かの診断を補助する方法 - Google Patents

前がん病変の検出方法及び前がん病変か否かの診断を補助する方法 Download PDF

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洋平 向
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Abstract

【課題】膵臓がん前がん病変又は乳がん前がん病変を検出するための方法を提供すること。【解決手段】被験者の組織におけるCOL17A1タンパク質の発現を検出することを含む、前がん病変の検出方法であって、前がん病変が膵臓がん前がん病変又は乳がん前がん病変である、検出方法。【選択図】なし

Description

本発明は、前がん病変の検出方法及び前がん病変か否かの診断を補助する方法に関する。具体的には、COL17A1タンパク質の発現に基づき、前がん病変を検出する方法、及びCOL17A1タンパク質の発現に基づき、前がん病変か否かの診断を補助する方法に関する。
乳がんは、現在、女性において最もよく診断されている悪性腫瘍であり、女性が罹患するすべての癌のなかでも最高レベルの致死率となっている。乳がんはエストロゲン受容体、プロゲステロン受容体及びHER2受容体の発現の有無によって分類され、患部の摘出手術とともに、それぞれのタイプに応じた薬物療法が行われている。しかし、このような治療を行っても、乳がんの進行度に応じて、5年生存率は低下してしまう。一方で、早期診断により、長期生存率を顕著に増加させることができる。
膵臓がんは、特徴的な症状がないことから早期に発見することが困難であり、急速に広がることから、がんに起因する死亡の主要な原因となっている。膵臓がんは、CEAやCA19−9を腫瘍マーカーとした血液検査、超音波検査、CT等の検査を組み合わせて診断することが一般的である。
これまで、乳がん及び膵臓がんを検出する様々なマーカーの探索が行われており、例えば、乳がんマーカーとしてグルタミン及びグルタミン酸等(特許文献1)、膵臓がんマーカーとしてシアル化糖鎖抗原KL−6が報告されている(特許文献2)。
しかしながら、これらの乳がん及び膵臓がんのマーカーは、既にがん化した病変に対する指標となるものが主であり、がんに対する適切な予防及び早期治療の指標として利用可能なマーカーが依然として求められている。
また、乳がんの複数の進行段階の組織を用いた遺伝子の網羅的発現解析において、XVII型コラーゲンアルファー1(COL17A1)をコードする遺伝子を含む複数の遺伝子の発現及び変動が認められている(非特許文献1)。
米国特許出願公開第2017/299592号明細書 特開2006−308576号公報
BreastCancer Research and Treatment (2012), 135(1), 153-165
正常組織よりもがんを発生しやすく、形態学的に変化した組織として、前がん病変が知られている。膵臓がん前がん病変又は乳がん前がん病変を検出することにより、膵臓がん及び乳がんの適切な予防及び早期治療が可能となることが期待される。そこで、本発明は、膵臓がん前がん病変又は乳がん前がん病変を検出するための方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、膵臓がん前がん病変及びは乳がん前がん病変を検出するためのマーカーについて鋭意探索し、その結果、XVII型コラーゲンアルファー1(COL17A1)タンパク質の発現に基づき、膵臓がん前がん病変及び乳がん前がん病変を検出できることを見いだした。
すなわち、本発明は、例えば、以下の各発明を提供する。
〔1〕 被験者の組織におけるCOL17A1タンパク質の発現を検出することを含む、前がん病変の検出方法であって、前がん病変が膵臓がん前がん病変又は乳がん前がん病変である、検出方法。
〔2〕 COL17A1タンパク質の発現が対照と比べて高いことが、前がん病変であることを示す、〔1〕に記載の検出方法。
〔3〕 被験者の組織が膵臓組織であり、前がん病変が膵臓がん前がん病変である、〔1〕又は〔2〕に記載の検出方法。
〔4〕 被験者の組織が乳腺組織であり、前がん病変が乳がん前がん病変である、〔1〕又は〔2〕に記載の検出方法。
〔5〕 COL17A1タンパク質の発現の検出が、被験者の体外で行われる、〔1〜〔4〕のいずれか1項に記載の検出方法。
〔6〕 COL17A1タンパク質の発現の検出が、被験者の体内で行われる、〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の検出方法。
〔7〕 COL17A1タンパク質の発現の検出が、抗COL17A1抗体により行われる、〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の検出方法。
〔8〕 被験者の組織が前がん病変か否かの診断を補助する方法であって、
被験者の組織におけるCOL17A1タンパク質の発現に基づき、上記組織が前がん病変であるか否か診断するための指標を提供する工程を含み、
前がん病変が膵臓がん前がん病変又は乳がん前がん病変である、方法。
〔9〕 COL17A1タンパク質の発現が対照と比べて高い場合に、上記組織が前がん病変であるとの指標を提供する、〔8〕に記載の方法。
〔10〕 被験者の組織が膵臓組織であり、前がん病変が膵臓がん前がん病変である、〔8〕又は〔9〕に記載の方法。
〔11〕 被験者の組織が乳腺組織であり、前がん病変が乳がん前がん病変である、〔8〕又は〔9〕に記載の方法。
〔12〕 COL17A1タンパク質の発現が、被験者の体外における発現である、〔8〕〜〔11〕のいずれかに記載の方法。
〔13〕 COL17A1タンパク質の発現が、被験者の体内における発現である、〔8〕〜〔11〕のいずれかに記載の方法。
〔14〕 COL17A1タンパク質の発現を、抗COL17A1抗体を用いて検出することを含む、〔9〕〜〔13〕のいずれかに記載の方法。
本発明によれば、膵臓がん前がん病変及び乳がん前がん病変の検出方法、及び被験者の組織が膵臓がん前がん病変又は乳がん前がん病変か否かの診断を補助する方法を提供することができる。
MDCK細胞及びMDCK pTR−GFP−RasV12細胞におけるCOL17A1タンパク質の発現を、共焦点レーザー顕微鏡により観察した結果を示す。 MDCK細胞、MDCK pTR−GFP−RasV12細胞及びMDCK pTR3G−GFP−RasV12−COL17A1−KO細胞におけるCOL17A1タンパク質の発現を、共焦点レーザー顕微鏡により観察した結果(a)及び定量化した多層部分の割合を比較したグラフ(b)を示す。 KPCマウスの膵上皮内腫瘍性病変を含む組織におけるCOL17A1タンパク質の発現を、正立顕微鏡により観察した結果を示す。矢印は、膵臓がん前がん病変を示す。 正常なヒト乳管組織(a)及びヒト非浸潤性乳管癌患者の組織(b)におけるCOL17A1タンパク質の発現を、正立顕微鏡により観察した結果を示す。
本実施形態に係る前がん病変の検出方法は、被験者の組織におけるCOL17A1タンパク質の発現を検出することを含む。ここで、前がん病変は膵臓がん前がん病変又は乳がん前がん病変である。
被験者は、全ての脊椎動物、例えば、哺乳動物及び非哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類及び爬虫類を含む、ヒト及び非ヒト動物を指す。非ヒト動物は、マウス、ラット、霊長類動物等の哺乳動物であることが好ましい。また、非ヒト動物は、膵臓がん及び/又は乳がんのモデル動物であってもよい。被験者は、ヒトであることが好ましい。
前がん病変は、上述したように、正常組織よりもがんを発生しやすく、形態学的に変化した組織である。前がん病変は、がんになる前の病変であり、がんとは区別される。また、前がん病変はがん幹細胞とも区別される。がん幹細胞は、多分化能、自己複製能、及び造腫瘍能を有するがん細胞である。
前がん病変は、膵臓がん前がん病変又は乳がん前がん病変であり、膵臓がん前がん病変であってもよく、乳がん前がん病変であってもよい。膵臓がん前がん病変としては、例えば、膵上皮内腫瘍性病変(Pancreatic intraepithelial neoplasia (PanIN))が挙げられる。乳がん前がん病変としては、非浸潤性乳管癌(ductal carcinoma in situ(DCIS))が挙げられる。非浸潤性乳管癌は、増殖した腫瘍性病変が上皮管腔内に留まり、基底側マトリックスへ組織への浸潤を示さない前がん病変である。
前がん病変は、あらゆる組織において生じ得る病変である。したがって、被験者の組織は、特に限定されないが、例えば、前がん病変が生じることが多い上皮組織及び造血組織であってよい。膵臓がん前がん病変又は乳がん前がん病変を対象とした検出を行う観点から、被験者の組織は、膵臓組織又は乳腺組織であることが好ましい。膵臓がん前がん病変を検出する場合には、被験者の組織は、膵臓組織であることが好ましく、乳がん前がん病変を検出する場合には、被験者の組織は、乳腺組織であることが好ましい。膵臓がんの多くは、膵管の上皮組織から発生するため、被験者の組織は膵管の上皮組織であってもよい。また、乳がんの多くは、乳管の上皮組織から発生するため、被験者の組織は乳管の上皮組織であってもよい。
前がん病変の検出は、体内における被験者の組織において行ってもよく、被験者の組織から採取したサンプルを用いて体外で行ってもよい。サンプルとしては、例えば、組織片及び組織から採取した細胞等が挙げられる。
本実施形態に係る方法は、被験者の組織からサンプルを採取することを含んでもよい。被験者の組織からサンプルを採取する方法としては、例えば、外科的切除、穿刺吸引、ブラシ及び鉗子等による採取が挙げられる。
COL17A1タンパク質は、上皮組織の細胞結合の1つである半接着斑のタンパク質で、膜貫通タンパク質の細胞接着分子であり、BP180と呼ばれることもある。1,497アミノ酸残基の単量体(分子量180kDa)のポリペプチドが3つ会合したホモ三量体のタンパク質であり、細胞内ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞外ドメインを有する。細胞外ドメインには15個のコラーゲン配列があり、16個の非コラーゲン配列で分断されている。
本実施形態に係る方法は、被験者の組織におけるCOL17A1タンパク質の発現を検出することを含む。ただし、本実施形態に係る方法は、COL17A1遺伝子及びmRNA等、COL17A1タンパク質以外の発現の検出をさらに含むことを妨げるものではない。COL17A1タンパク質の発現の検出は、COL17A1タンパク質の発現レベルを決定することを含んでもよい。COL17A1タンパク質の発現の検出は、例えば、COL17A1タンパク質に対する抗体(以下、「抗COL17A1抗体」という。)を用いたイムノアッセイ等により行うことができる。イムノアッセイとしては、例えば、ウェスタンブロット分析、ラジオイムノアッセイ、免疫蛍光測定(immunofluorimetry)、免疫沈降、免疫拡散、電気化学発光(ECL)イムノアッセイ、免疫組織化学、蛍光活性化細胞選別(FACS)及び酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)等が挙げられる。
本明細書において、抗COL17A1抗体は、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体、並びにCOL17A1タンパク質に対して結合活性を保持する抗体のポリペプチド断片を含む。当業者は、Fab、F(ab’)2及びFv断片を含む抗体断片が、抗COL17A1タンパク質に対して結合活性を保持することができ、したがって、抗COL17A1抗体に含まれることを理解する。モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体の調製は、公知の方法により行うことができる。
抗COL17A1抗体には、例えば、モノクローナル抗体若しくはポリクローナル抗体、完全ヒト抗体、ヒト抗体相同体、ヒト化抗体相同体、キメラ抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体相同体、及び抗体重鎖若しくは軽鎖の単量体若しくは二量体、又はそれらの混合物が含まれる。抗COL17A1抗体は、IgA、IgG、IgE、IgD、IgM(並びにそれらのサブタイプ)を含む任意のアイソタイプのインタクトな免疫グロブリンを含み得る。免疫グロブリンの軽鎖は、カッパ又はラムダであり得る。
ある実施形態において、抗COL17A1抗体は、検出可能な標識に結合した標識抗COL17A1抗体である。別の実施形態において、抗COL17A1抗体は、標識されていない抗COL17A1抗体である。かかる非標識の抗COL17A1抗体の検出は、当該抗体に結合する標識された二次抗体を使用して行うことができる。それぞれの実施形態において用いられる抗体の標識としては、例えば、酵素標識、蛍光標識、ビオチン標識及び放射性又は非放射性のアイソトープ標識が挙げられる。
COL17A1タンパク質の発現の検出は、被験者の体外で行われても、被験者の体内で行われてもよい。
被験者の体外でCOL17A1タンパク質の発現の検出を行う場合には、被験者の組織から採取したサンプルを用いて、上述したイムノアッセイ等の公知の方法により行うことができる。
被験者の体内においてCOL17A1タンパク質の発現の検出を行う場合には、標識抗COL17A1抗体を用いることができる。Zrなどの放射性同位体で標識した抗COL17A1抗体を静脈注射することにより、体内におけるCOL17A1タンパク質の発現を非侵襲的にPET(positron emission tomography:陽電子放出断層撮影)で観察することが可能となる。
本実施形態に係る方法によれば、検出したCOL17A1タンパク質の発現に基づき、前がん病変を検出することができる。ある実施形態において、COL17A1タンパク質の発現が対照と比べて高いことが、前がん病変であることを示すものである。本明細書において「対照」は、正常組織及び基準値を含む。COL17A1タンパク質の発現が正常組織と比べて高いかの判断は、公知の方法、例えば、免疫染色の後の顕微鏡観察による正常組織との比較等に基づき、当業者が適宜行うことできる。当該基準値は、例えば、正常組織におけるCOL17A1タンパク質の発現レベルから設定した値でもよく、異常組織におけるCOL17A1タンパク質の発現レベルから設定した値でもよく、正常組織におけるCOL17A1タンパク質の発現レベルと異常組織におけるCOL17A1タンパク質の発現レベルを比較することにより設定した値であってもよい。当該基準値は、例えば、被検体の組織におけるCOL17A1タンパク質の発現レベルを直接比較するための値(規定発現レベル)であってもよく、被検体の組織におけるCOL17A1タンパク質の発現レベルを正常組織におけるCOL17A1タンパク質の発現レベルと比較した場合のCOL17A1タンパク質の発現レベルの倍率(例えば、5倍)として設定された値であってもよい。また、基準値は、複数のサンプル(群)に基づき設定されるものであってもよく、例えば、異常組織に由来する細胞におけるCOL17A1タンパク質の平均発現レベルとすることもでき、正常組織に由来する細胞におけるCOL17A1タンパク質の平均発現レベルの規定倍率とすることもできる。ここで、正常組織には、例えば、前がん病変の可能性が低いと判断された組織及び前がん病変ではないと判断された組織が含まれ、異常組織には、例えば、前がん病変の可能性が高いと判断された組織及び前がん病変であると判断された組織が含まれる。
本実施形態に係る前がん病変か否かの診断を補助する方法は、被験者の組織におけるCOL17A1タンパク質の発現に基づき、上記組織が前がん病変であるか否か診断するための指標を提供する工程を含む。ここで、前がん病変は膵臓がん前がん病変又は乳がん前がん病変である。ある実施形態において、COL17A1タンパク質の発現が対照と比べて高い場合に、前記組織が前がん病変であるとの指標を提供する。被験者の組織におけるCOL17A1タンパク質の発現は、被験者の体外における発現であってもよく、被験者の体内における発現であってもよい。ある実施形態において、COL17A1タンパク質の発現は、抗COL17A1抗体を用いて検出される。被験者の組織におけるCOL17A1タンパク質の発現の検出、その対照との比較等に関しては、上述したように行うことができる。
別の実施形態に係る前がん病変か否かの診断を補助する方法は、被験者の組織におけるCOL17A1タンパク質の発現に基づき、上記組織が前がん病変であるか否かを判定する工程を含む。ここで、前がん病変は膵臓がん前がん病変又は乳がん前がん病変である。ある実施形態において、COL17A1タンパク質の発現が対照と比べて高い場合に、前記組織が前がん病変であると判定される。被験者の組織におけるCOL17A1タンパク質の発現は、被験者の体外における発現であってもよく、被験者の体内における発現であってもよい。ある実施形態において、COL17A1タンパク質の発現は、抗COL17A1抗体を用いて検出される。被験者の組織におけるCOL17A1タンパク質の発現の検出、その対照との比較等に関しては、上述したように行うことができる。本明細書において、「判定」は、医師や検査技師などの専門知識を有する者の判断によらず、自動的及び/又は機械的に行うことができる。
本実施形態に係るがんを予防する方法は、被験者の組織におけるCOL17A1タンパク質の発現に基づき、上記組織が前がん病変であるか否かを判定する工程、並びに、上記組織が前がん病変であると判定された場合に、前がん病変を抑制又は除去する工程を含む。「がんを予防する」とは、前がん病変をがんに進行させないことをいう。ここで、がんは膵臓がん又は乳がんであり、前がん病変が膵臓がん前がん病変又は乳がん前がん病変である。前がん病変を抑制又は除去する方法としては、例えば、がんの治療薬を被験者に投与する方法、前がん病変を外科的方法により除去する方法等が挙げられる。投与される乳がんの治療薬及び膵がんの治療薬は、通常乳がんの治療及び膵がんの治療に用いられている薬剤の中から医師が適宜選択することができる。被験者の組織におけるCOL17A1タンパク質の発現の検出、その対照との比較等に関しては、上述したように行うことができる。
本実施形態に係る使用は、前がん病変の診断マーカーとしてのCOL17A1タンパク質の使用である。ここで、前がん病変は膵臓がん前がん病変又は乳がん前がん病変である。上述したように、COL17A1タンパク質の発現に基づき、前がん病変を検出することができるため、COL17A1タンパク質は前がん病変の診断マーカーとして使用することができる。前がん病変の診断、COL17A1タンパク質の発現の検出、その対照との比較等に関しては、上述したように行うことができる。
本発明者らは、複数のスクリーニング方法を組み合わせることにより、膜タンパク質であるCOL17A1タンパク質を、膵臓がん及び乳がんの前がん病変の検出におけるマーカータンパク質の候補として選抜し、その前がん病変のマーカータンパク質としての使用可能性を下記のように検討した。
[実施例1]
活性化型(発現性)Ras(RasV12)を発現する細胞(本明細書において、「Ras変異細胞」ともいう。)におけるCOL17A1タンパク質の発現を分析した。
〔細胞培養及び免疫染色〕
DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)にFBSを最終濃度10%、penicillin−streptmycinを最終濃度1%、Glutamax(Gibco)を最終濃度1%となるように添加したものを培地として用い、イヌ腎臓上皮由来細胞MDCK(Madin−Darby canine kidney)細胞、GFP−RasV12融合タンパク質を発現するMDCK pTR−GFP−RasV12細胞(Hogan et al., 2009,Nature Cell Biology Apr;11(4):460−7. doi: 10.1038/ncb1853. Epub 2009 Mar 15.)、及びCOL17A1がノックアウトされたMDCK pTR3G−GFP−RasV12細胞であるMDCK pTR3G−GFP−RasV12−COL17A1−KO細胞を、37℃、5% COインキュベーターで48時間培養した。また、MDCK pTR3G−GFP−RasV12−COL17A1−KO細胞は、Kon et al.,Nature Cell Biology,2017,19(5):530−541.に記載の方法と同様の方法によりMDCK pTR3G−Cas9細胞に対してpCDH−QC−COL17A1 sgRNA(pCDH−EF1−Hygro sgRNA vectorにCOL17A1single guide RNA(sgRNA)配列を導入したもの)を導入しCOL17A1−ノックアウトした後、前記MDCK pTR−GFP−RasV12細胞と同じ方法でGFP−RasV12融合タンパク質の発現ベクターをトランスフェクションして作成した。ノックアウトに用いたCOL17A1 sgRNA配列は、CCCGCCATGGAACATACGAAGG(配列番号1)である。上記3種類の細胞をそれぞれType−I collagenでコートしたカバースリップ上に播種し、同時に1μg/mLのドキシサイクリンを用いてGFP−RasV12の発現を誘導した。48時間後、4%パラホルムアルデヒド/PBSを用いて、細胞を固定した。固定後は、0.5% TritonX−100/PBSで細胞膜の透過処理を行い、1% BSA/PBSを用いてブロッキングを行った。かかる細胞を、一次抗体を1:100、二次抗体(Anti−Human IgG,Fcγ fragment specific, cat:709−585−098,Jackson immunoresearch社)を1:200の濃度で1%BSA/PBSに希釈したもので染色した。一次抗体として、ファージディスプレイ法を用いたスクリーニングにより得られた抗COL17A1モノクローナル抗体(20C5)を用いた。サンプルは共焦点レーザー顕微鏡(FV1200, Olympus社)で観察を行った。
また、共焦点レーザー顕微鏡で撮影したxz軸の画像を用い多層部分の割合を定量した。一層部分、二層部分、三層以上の部分の底面の距離をそれぞれ測定し、全体に占める割合を算出した。
〔結果〕
COL17A1タンパク質の発現は、正常細胞において細胞膜で非常に弱く認められた。これに対し、MDCK pTR−GFP−RasV12細胞においては、単層で正常細胞と同程度のCOL17A1タンパク質の細胞膜に局在する発現が、多層を形成した部分でより強くなっていた。(図1)。
In vitroにおいて、正常細胞とRas変異細胞の大きな違いとして、Ras変異細胞は培養を続けると多層構造を形成するのに対し、正常細胞は形成しないことが知られている(J Cell Biol.1995 Dec;131(6 Pt 1):1587−98.,Massive programmed cell death in intestinal epithelial cells induced by three−dimensional growth conditions:suppression by mutant c−H−ras oncogene expression.Rak J,Mitsuhashi Y,Erdos V,Huang SN, Filmus J,Kerbel RS.)。MDCK pTR−GFP−RasV12細胞も多層構造を形成し、その多層構造(特に上層部)において、COL17A1タンパク質が強く発現していた(図1)。一方で、COL17A1をノックアウトしたMDCK pTR3G−GFP−RasV12−COL17A1−KO細胞では、多層構造が減弱したことが示され(図2(a)、(b))、さらに、この減弱はSytox試薬(Thermo Fisher Scientific)を用いた解析により細胞死によるものであることが確認された。これにより、COL17A1タンパク質が、Ras変異細胞の多層構造の形成に関与していることが示唆された。
[実施例2]
〔サンプル採取及び免疫染色〕
ヒト膵癌に類似した経過をたどるモデルマウスである、K−Ras及びp53に変異を持つKPCマウス(Pdx1−Cre;LSL−p53 R172H;LSL−Kras g12D)(Trp53R172H and KrasG12D cooperate to promote chromosomal instability and widely metastatic pancreatic ductal adenocarcinoma in mice Cancer Cell,VOLUME 7,ISSUE 5,P469−483,MAY 01,2005 Hingorani SR, Wang L, Multani AS, Combs C, Deramaudt TB, Hruban RH, Rustgi AK, Chang S, Tuveson DA.)は、膵臓がんの前がん病変である膵上皮内腫瘍性病変を形成する。膵上皮内腫瘍性病変の形成時期のKPCマウスから実体顕微鏡下に1.5cm×0.5cmの組織を採取した。採取した組織をホルマリン固定した後、パラフィン包埋標本を作製した。標本ブロックの薄切作業により組織切片サンプルを作製した。
また、乳腺部分切除によって得られたヒト非浸潤性乳管癌組織をホルマリン固定後、病変部位の切り出し作業により3cm×1.5cmのパラフィン包埋標本を作製し、標本ブロックの薄切作業により組織切片サンプルを作製した。
マウスの腫瘍サンプル及びヒト患者サンプルについて、抗COL17A1抗体による免疫染色を以下のように行った。
サンプルをキシレン一槽目に10分後間入れた後、キシレン4槽に入れて(数回上下)脱パラフィンを行った。その後、サンプルを、99.5%エタノール3槽、90%、80%、70%エタノール各槽(数回上下)に段階的に移し、流水により2〜3分水洗することで、脱キシレン及び浸水処理を行った。抗原賦活は、pH9のEpitope Retrieval Soliution(ライカ社製)を用いて処理し、98℃で30分加熱後、40分以上かけて自然冷却した。
リキッドブロッカーでサンプルの周りを囲み、サンプルをPBSで軽く洗浄した後、Dako Protein Block(X0909)を用いて、30分間プロテインブロック処理した。このサンプルを、PBS洗浄せず、ブロッキング液を落とし、希釈済み一次抗体(20C5、希釈液:1%BSA/PBS・0.1%NaN3、10,000倍希釈)を載せて4℃でオーバーナイト若しくは室温2時間インキュベートした。その後、このサンプルをPBS洗浄(5分間×3回)し、内因性ペルオキシダーゼブロッキングH加メタノール(MetOH 50mlに30%Hを0.5ml)で15分間処理した。PBS洗浄(5分間×3回)し、二次抗体(Dako ENVISION Rabbit(K4003)又はMouse(K4001))で30分間処理した。PBS洗浄(5分間×3回)した。
DAB発色は、Dako Liquid DAB Substrate Chromoden Systemを用いて行った。DAB DHROMOGENをSUBSTRATE BUFFERにて10倍希釈し、それを組織切片に載せて顕微鏡で確認しながら発色させた。十分に発色したことを確認後、サンプルをPBSへ入れて発色を停止させた。
対比染色は、オムニヘマトキシリンを用いて、サンプルを5〜6秒染色した後、流水により10分水洗することにより行った。
対比染色後、70%、80%、90%エタノール各1槽、99.5%エタノール3槽(それぞれ数回上下)にサンプルを段階的に移すことで脱水し、キシレン4槽を用いて透徹した後、Entellan(登録商標)new(Merck Millipore社製)を用いて封入した。
〔結果〕
免疫染色したサンプルを正立顕微鏡(BX53、オリンパス社製)により観察した。図3に、KPCマウスの膵上皮内腫瘍性病変を含むサンプルを染色した結果を示す。矢印は、膵臓がん前がん病変を示す。多層化した前がん病変において、COL17A1タンパク質が強く発現していることが認められた。
また、正常な乳管(a)及びヒト患者の非浸潤性乳管癌の組織(b)におけるCOL17A1タンパク質の発現を比較した結果を図4に示す。正常な乳管と比較して、非浸潤性乳管癌の多層病変部において、COL17A1タンパク質が強く発現していることが示された。なお、非浸潤性乳管癌の9例中、8例において、COL17A1タンパク質が陽性(ポジティブ)となった。

Claims (14)

  1. 被験者の組織におけるCOL17A1タンパク質の発現を検出することを含む、前がん病変の検出方法であって、前がん病変が膵臓がん前がん病変又は乳がん前がん病変である、検出方法。
  2. COL17A1タンパク質の発現が対照と比べて高いことが、前がん病変であることを示す、請求項1に記載の検出方法。
  3. 被験者の組織が膵臓組織であり、前がん病変が膵臓がん前がん病変である、請求項1又は2に記載の検出方法。
  4. 被験者の組織が乳腺組織であり、前がん病変が乳がん前がん病変である、請求項1又は2に記載の検出方法。
  5. COL17A1タンパク質の発現の検出が、被験者の体外で行われる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の検出方法。
  6. COL17A1タンパク質の発現の検出が、被験者の体内で行われる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の検出方法。
  7. COL17A1タンパク質の発現の検出が、抗COL17A1抗体により行われる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の検出方法。
  8. 被験者の組織が前がん病変か否かの診断を補助する方法であって、
    被験者の組織におけるCOL17A1タンパク質の発現に基づき、前記組織が前がん病変であるか否か診断するための指標を提供する工程を含み、
    前がん病変が膵臓がん前がん病変又は乳がん前がん病変である、方法。
  9. COL17A1タンパク質の発現が対照と比べて高い場合に、前記組織が前がん病変であるとの指標を提供する、請求項8に記載の方法。
  10. 被験者の組織が膵臓組織であり、前がん病変が膵臓がん前がん病変である、請求項8又は9に記載の方法。
  11. 被験者の組織が乳腺組織であり、前がん病変が乳がん前がん病変である、請求項8又は9に記載の方法。
  12. COL17A1タンパク質の発現が、被験者の体外における発現である、請求項8〜11のいずれか一項に記載の方法。
  13. COL17A1タンパク質の発現が、被験者の体内における発現である、請求項8〜11のいずれか一項に記載の方法。
  14. COL17A1タンパク質の発現を、抗COL17A1抗体を用いて検出することを含む、請求項9〜13のいずれか一項に記載の方法。
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WO2023143326A1 (zh) * 2022-01-28 2023-08-03 臻智达生物技术(上海)有限公司 用于预测胰腺癌发生风险的生物标志物、方法和诊断设备

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