以下、実施形態を説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、適宜、構成要素を省略、拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。
図1を参照する。図1は、水洗式便器10(以下、単に便器10ともいう)の平面図でもある。本実施形態の便器装置12は、主に、洋風大便器を構成する便器10と、便器10に洗浄水を供給する給水装置14と、を備える。給水装置14の詳細は後述する。
図2〜図4を参照する。本実施形態の便器10は、大別すると、次の工夫点に主な特徴がある。この工夫点とは、(1)上側オーバーハング面44及び下側オーバーハング面50A、50B、(2)オーバーハング部28、(3)洗浄水の流れ方に関する二つの工夫点である。まず、これらの前提となる構成を説明してから、これらを順に説明する。
本実施形態の便器10の素材は陶器である。便器10の素材は特に限られず、例えば、樹脂等でもよい。便器10は、便鉢部16と、便鉢部16の上端開口部が開口する上面部18と、便鉢部16の底部に接続される便器排水路20と、を備える。上面部18は、便鉢部16の上端開口部から前後左右に延びるように設けられる。便器排水路20は、建物に設置される排水管(不図示)に接続される。便器排水路20は、便鉢部16内から排水管に排出される汚物等の通り道となる。
以下、各構成要素の位置関係に関して、互いに直交する三つの方向を用いて説明する。この方向とは、前後方向X、左右方向Y及び上下方向Zである。便器10をトイレ室に設置した状態にあるとき、理想的には、前後方向X及び左右方向Yは水平方向となり、上下方向Zは鉛直方向となる。前後方向X及び左右方向Yは、便器10に取り付けられる便座(不図示)に通常の姿勢で座るユーザの前後左右と対応する。
以下、便鉢部16の周方向、径方向を用いて説明する。「周方向」は、平面視において、便鉢部16の中心C周りを回る方向をいい、「径方向」は、その中心Cを通る鉛直線に直交する方向をいう。便器10の最大左右寸法を二等分する線を左右中心線Lyという。便鉢部16の内面部分の最大前後寸法を四等分する等分線Lx1〜Lx3のうち、前側等分線をLx1とし、後側等分線をLx3とし、それらの間の等分線を前後中心線Lx2という。本実施形態において便鉢部16の中心Cとは、これら左右中心線Lyと前後中心線Lx2の交点をいう。周方向の外周側、内周側は、単に「外周側」、「内周側」ともいう。
便鉢部16に関して、前側等分線Lx1よりも前方の領域を前方領域16Fといい、後側等分線Lx3よりも後方の領域を後方領域16Bといい、前側等分線Lx1と後側等分線Lx3の間の領域を側方領域16R、16Lという。側方領域16R、16Lは、左右一方側(本実施形態では右側)の第1側方領域16R(以下、右側方領域16Rともいう)と、左右他方側(本実施形態では左側)の第2側方領域16L(以下、左側方領域16Lともいう)とを含む。
便鉢部16は、汚物を受けるための汚物受け面22と、便鉢部16の上端側部分を形成するリム部24と、汚物受け面22の下端縁部から下方に窪む溜水部26と、を備える。リム部24の内周面は、便鉢部16の上端開口部16aから汚物受け面22の外周端部22aまでの範囲に設けられる。
リム部24は、リム部24の内周面の上部において内周側に向けて突き出るオーバーハング部28を備える。本実施形態のオーバーハング部28は、便鉢部16の周方向の大部分に亘る範囲、詳しくは、全周に亘る範囲で設けられる。本実施形態での「周方向の大部分に亘る範囲」とは、周方向の7割以上に亘る範囲をいい、好ましくは周方向の8割以上、更に好ましくは周方向の9割以上に亘る範囲をいう。
便器10は、吐水口32A、32Bから便鉢部16内に洗浄水を吐き出すことによって旋回流Fa、Fb(図18も参照)を形成する吐水部30A、30Bを備える。吐水部30A、30Bは、リム部24の内周面に開口する吐水口32A、32Bと、給水装置14から供給された洗浄水を吐水口32A、32Bに供給する通水路33とを備える。
本実施形態の便器10は、複数の吐水部30A、30Bを備える。複数の吐水部30A、30Bは、第1吐水口32Aから洗浄水を吐き出す第1吐水部30Aと、第2吐水口32Bから洗浄水を吐き出す第2吐水部30Bとを含む。第1吐水口32Aは、左右中心線Lyに対して左右一方側(本実施形態では右側)に設けられる。詳しくは、第1吐水口32Aは、右側方領域16Rに設けられる。第2吐水口32Bは、左右中心線Lyに対して左右他方側(本実施形態では左側)において、便鉢部16の後方領域16Bに設けられる。第2吐水部30Bは、第1吐水部30Aとは別に設けられる。
第1吐水部30Aは、第1吐水口32Aから吐き出される洗浄水によって、便鉢部16内を旋回する第1旋回流Faを形成する。第2吐水部30Bは、第2吐水口32Bから吐き出される洗浄水によって、便鉢部16内を旋回する第2旋回流Fbを形成する。
便鉢部16は、旋回流Fa、Fbを棚面36によって受けて旋回方向Dt1に導く導水路34A、34Bと、第2旋回流Fbの流れ方向を溜水部26側に転向させる転向部38と、を備える。導水路34A、34Bは、第1旋回流Faを旋回方向Dt1に導く第1導水路34Aと、第2旋回流Fbを旋回方向Dt1に導く第2導水路34Bとを含む。
図5〜図8を参照する。棚面36は、汚物受け面22において、汚物受け面22の外周側端部から内周側に向かう一部の径方向範囲に設けられる。本実施形態の棚面36は、棚面36の外周端部を構成する凹曲面部36aと、凹曲面部36aよりも内周側において凹曲面部36aに接続される平坦面部36bとを備える。平坦面部36bは、径方向に沿った切断面において平坦状をなす。
汚物受け面22は、棚面36の平坦面部36bに対して内周側において棚面36に連結される凸曲面状の連結面39を備える。平坦面部36bの勾配は、連結面39よりも緩やかとなる。図5〜図8では棚面36と連結面39の境界B1を示す。この境界B1は、径方向に沿った切断面において、棚面36の平坦面部36bと連結面39の間で変曲点となる。本明細書での「変曲点」とは、曲率の変化する点をいう。この「変曲点」には、たとえば、曲率の異なる一対の曲線間の境界、曲線と直線の境界等が含まれる。
第1の主な工夫点に関する説明に移る。便鉢部16は、汚物受け面22の外周端部22aから立ち上がる立ち面40、42A、42Bを備える。立ち面40、42A、42Bは、内周側立ち面40と、奥側立ち面42A、42Bとを含む。各図では、汚物受け面22の外周端部22aと各立ち面40、42A、42Bとの境界B2と、各立ち面40、42A、42Bとオーバーハング面44、50A、50Bとの境界B3とを示す。この境界B2、B3は、径方向に沿った切断面において、変曲点となる。本明細書での「立ち面」とは、径方向に沿った切断面において、下側の変曲点B2及びB4(後述する)と上側の変曲点B3との間の全範囲で水平面に対して45°以上の角度をなす面をいう。
内周側立ち面40は、汚物受け面22とオーバーハング部28とを接続する。水平面に対する内周側立ち面40の傾斜角度は、リム部24の前端24aにおいて最小となり、その前端24aから周方向に離れるに連れて大きくなる。
リム部24は、リム部24の内周面に設けられる上側オーバーハング面44を備える。上側オーバーハング面44は、オーバーハング部28の下面に設けられる。上側オーバーハング面44は、内周側立ち面40の上端(変曲点B3)から内周側に向かって延びる。本明細書での「オーバーハング面」は、径方向に沿った切断面において、水平面に対して45°未満の角度をなす箇所を含む面をいう。本実施形態の上側オーバーハング面44は、便鉢部16の周方向の大部分に亘る範囲、詳しくは、全周に亘る範囲に設けられる。上側オーバーハング面44は、便鉢部16の前方領域16Fと後方領域16Bに設けられることになる。
本実施形態の上側オーバーハング面44には、径方向に沿った切断面において平坦状をなす水平な上側平坦面46が設けられる。上側平坦面46は、便鉢部16の周方向の大部分に亘る範囲、詳しくは、全周に亘る範囲に設けられる。本明細書での「水平」とは、鉛直線に直交する水平面に対して平行な場合の他に、水平面に対して0°超15°以下の範囲内で傾斜している場合も含まれる。水平面に対する上側平坦面46の傾斜角度は、好ましくは0°以上10°以下であり、更に好ましくは0°以上5°以下である。後述する下側平坦面52の傾斜角度も同様である。
便鉢部16は、内周側立ち面40に開口する開口部48A、48Bを備える。開口部48A、48Bは、便鉢部16の右側方領域16Rに設けられる第1開口部48Aと、便鉢部16の後方領域16Bに設けられる第2開口部48Bとを含む。奥側立ち面42A、42Bは、第1開口部48Aよりも奥側に設けられる第1奥側立ち面42Aと、第2開口部48Bよりも奥側に設けられる第2奥側立ち面42Bとを含む。
リム部24は、リム部24の内周面に設けられる下側オーバーハング面50A、50Bを備える。下側オーバーハング面50A、50Bは、上側オーバーハング面44よりも外周側かつ下側に設けられる。この条件は、径方向に沿った切断面において満たされる。下側オーバーハング面50A、50Bは、第1奥側立ち面42Aの上端(変曲点B3)から内周側に向かって延びる第1下側オーバーハング面50Aと、第2奥側立ち面42Aの上端(変曲点B3)から内周側に向かって延びる第2下側オーバーハング面50Bとを含む。本実施形態の下側オーバーハング面50A、50Bには、径方向に沿った切断面において平坦状をなす水平な下側平坦面52が設けられる。
下側オーバーハング面50A、50Bは、導水路34A、34Bの下面に対して上下に対向する位置に設けられる。ここでの導水路34A、34Bの下面とは、本実施形態では棚面36をいう。下側オーバーハング面50A、50Bは、導水路34A、34Bの上面を構成する導水面となる。下側オーバーハング面50A、50Bは、旋回流と接触することによって、旋回流を旋回方向Dt1に導く機能を持つことになる。
リム部24は、上側オーバーハング面44と下側オーバーハング面50A、50Bを接続する接続面54A、54Bを備える。接続面54A、54Bの少なくとも一部は、内周側立ち面40の一部として構成される。接続面54A、54Bは、上側オーバーハング面44に対して凹曲面部56を介して接続され、下側オーバーハング面50A、50Bに対して凸曲面部58を介して接続される。開口部48A、48Bを通る径方向に沿った切断面において、接続面54A、54Bの一部となる内周側立ち面40の下端となる下側の変曲点B4は、凸曲面部58の上端となる。
接続面54A、54Bは、上側オーバーハング面44と第1下側オーバーハング面50Aを接続する第1接続面54Aと、上側オーバーハング面44と第2下側オーバーハング面50Bを接続する第2接続面54Bとを含む。第1接続面54Aは、第1開口部48Aの上縁部を形成する。第1接続面54Aの鉛直寸法は旋回方向Dt1に向かって徐々に小さくなる(図3参照)。第2接続面54Bは、第2開口部48Bの上縁部を形成する。第2接続面54Bは、第2接続面54Bに対して周方向両側に隣り合う内周側立ち面40の一部分に滑らかに連続する。本明細書での「滑らかに連続する」とは、言及している二つの対象の間で凹凸が形成されることなく連続することをいう。
各接続面54A、54Bは、外周側に向かう連れて下向きに延びる。水平面に対して第2接続面54Bのなす鋭角角度θ1は、便器10の正面側に便器10から40cmの間隔を空けた位置に立ったユーザから見て、接続面54A、54Bを視認不能な角度となるように設定される。このユーザは、便器10の販売国において平均体格を持つものをいう。この角度θ1は、水平面に対して第2奥側立ち面42Bのなす鋭角角度θ2よりも緩やかとなる。この条件は、第2接続面54Bの設けられる全ての周方向範囲において満たされる。
図3、図9を参照する。第1下側オーバーハング面50Aは、旋回方向Dt1に向かって上り勾配となり、第1吐水口32Aの内上面32aと上側オーバーハング面44に滑らかに連続する。第1下側オーバーハング面50Aの反旋回方向Dt2側の端部50aは第1吐水口32Aの内上面32aと同じ高さ位置に設けられることになる。第1下側オーバーハング面50Aの旋回方向Dt1側の端部50bは上側オーバーハング面44と同じ高さ位置に設けられることにもなる。ここでの反旋回方向Dt2とは、周方向において旋回方向Dt1とは反対側をいい、高さ位置とは、上下方向Zでの位置をいう。
図9、図10を参照する。第2下側オーバーハング面50Bは、第2吐水口32Bの内上面32bに滑らかに連続する。第2下側オーバーハング面50Bの反旋回方向Dt2側の端部50cは第2吐水口32Bの内上面32bと同じ高さ位置に設けられることになる。
第2導水路34Bは、第2吐水口32Bから転向部38まで旋回流を導く水路部35を備える。水路部35は、第2吐水口32Bの吐出方向Daに直線状に延びている。ここでの吐出方向Daとは、第2吐水口32Bの中心軸線に沿った方向をいう。水路部35の下面から第2下側オーバーハング面50Bまでの高さ寸法L0は、水路部35の始端部35aから終端部35bまでの範囲で同等の大きさである。ここでの水路部35の下面とは、本実施形態では棚面36の平坦面部36bをいう。この条件は、吐出方向Daに沿って切断した鉛直断面において満たされる。本明細書での「同等」とは、比較対象となる両者が同一の場合の他に、ほぼ同一の場合とが含まれる。ここでの高さ寸法とは上下方向Zでの寸法をいう。
以上の第1工夫点に関する効果を説明する。リム部24の内周面には下側オーバーハング面50A、50Bと上側オーバーハング面44が設けられる。よって、下側オーバーハング面50A、50Bと同じ高さ位置に上側オーバーハング面44を設ける場合と比べ、上側オーバーハング面44と汚物受け面22との間を広くできる。このため、これらの間に内周側から清掃器具(例えば、布巾)を入れ易くなり、上側オーバーハング面44と汚物受け面22を清掃器具によって清掃し易くなる。これに伴い、良好な清掃性を得られる。
下側オーバーハング面50A、50Bは導水路34A、34Bの上面を構成する。よって、上側オーバーハング面44と同じ高さ位置に下側オーバーハング面50A、50Bを設ける場合と比べ、導水路34A、34Bの水路断面積を小さくすることができる。これに伴い、導水路34A、34Bにおいて大流量の旋回流を流すことができる。ひいては、所望の箇所に大流量の旋回流を届かせる設計の実現が容易となる。ここでの「所望の箇所」とは、例えば、転向部38をいう。
下側オーバーハング面50A、50Bは、吐水口32A、32Bの内上面32a、32bに滑らかに連続する。よって、吐水口32A、32Bの内上面32a、32bと下側オーバーハング面50A、50Bの間に段差のない構造が実現できる。これに伴い、吐水口32A、32Bから吐き出される洗浄水によって洗い残しが生じ難くなる。
第1下側オーバーハング面50Aは旋回方向Dt1に向かって上り勾配となり、上側オーバーハング面44に滑らかに連続する。よって、旋回方向Dt1に向かう途中で第1下側オーバーハング面50Aに段差がある場合と比べ、第1下側オーバーハング面50Aを伝わる水を上側オーバーハング面44まで伝わせ易くなる。これに伴い、第1吐水口32Aから吐き出される洗浄水によって洗い残しが生じ難くなる。
前述の高さ寸法L0(図10参照)は、水路部35の始端部35aから終端部35bまでの範囲で同等の大きさである。よって、前述の高さ寸法L0を旋回方向Dt1に向かって大きくする場合と比べ、第2吐水口32Bから吐き出された洗浄水が勢いを保ったまま転向部38まで流れ易くなる。これに伴い、大流量の旋回流を転向部38まで届かせて、後述する大流量の流下水流Fd(図18参照)を形成し易くなる。
第2接続面54Bは、外周側に向かうに連れて下向きに延びる。よって、上側オーバーハング面44から鉛直下向きに第2接続面54Bが延びる場合と比べ、外部から便鉢部16内を視たときに、第2接続面54Bを視認し難くできる。これに伴い、良好な意匠性が得られる。特に、第2接続面54Bは、便器10の前側に立ったユーザによって視認し易い便鉢部16の後方領域16Bに設けられる。この場合に良好な意匠性を得られる点で有効となる。
第1の工夫点に関する他の特徴を説明する。図2、図3、図5、図6を参照する。上側オーバーハング面44は、便鉢部16の前方領域16Fを含む範囲に設けられる前側領域60Aと、便鉢部16の後方領域16Bを含む範囲に設けられる後側領域60Bとを備える。前側領域60Aと後側領域60Bの境界62は、側方領域16R、16Lに設けられる。
本実施形態の前側領域60Aは、一定の高さ位置に設けられる。オーバーハング部28の高さ寸法は、前側領域60Aの周方向の全範囲において、一定の大きさとなる。後側領域60Bは、前側領域60Aよりも低い高さ位置に設けられる。本実施形態の後側領域60Bの高さ位置は、便鉢部16の左右中心線Ly側に近づくに連れて徐々に低くなる。オーバーハング部28の高さ寸法は、後側領域60Bにおいて、便鉢部16の左右中心線Ly側に近づくに連れて徐々に大きくなる。
以上の構成によって、後方領域16Bにおける上側オーバーハング面44の高さ位置Pa1は、前方領域16Fにおける上側オーバーハング面44の高さ位置Pa2よりも低くなる。これにより、上側オーバーハング面44に高低差の大きい箇所がある場合と比べ、上側オーバーハング面44をつっかえることなく広い周方向の範囲で清掃し易くなる。
便鉢部16の後方領域16Bは、便器10の前側に立ったユーザによって視認し易い箇所となる。よって、良好な意匠性を得る観点からは、第2接続面54Bの高さ寸法を小さくできるとよい。この目的を果たしつつ、後方領域16Bの上側オーバーハング面44の高さ位置Pa1を前方領域16Fの上側オーバーハング面44の高さ位置Pa2に合わせる場合を考える。図11は、この条件を満たす変形例の便器装置12の一部を示す。
この場合、導水面として機能する第2下側オーバーハング面50Bの高さ位置Pbまで高くなってしまい、第2導水路34Bの水路断面積が大きくなってしまう。この点、本実施形態において、後方領域16Bにおける上側オーバーハング面44の高さ位置Pa1は、前方領域16Fにおける上側オーバーハング面44の高さ位置Pa2よりも低い。よって、前述の場合と比べ、第2接続面54Bの高さ寸法を小さくしつつ、第2下側オーバーハング面50Bの高さ位置Pbを低くすることができる(図2参照)。このため、良好な意匠性を得つつ、第2導水路34Bによって大流量の洗浄水を流すことができる。
この他に、前方領域16Fの上側オーバーハング面44の高さ位置Pa2を後方領域16Bの上側オーバーハング面44の高さ位置Pa1に合わせる場合を考える。本実施形態によれば、このような場合と比べ、上側オーバーハング面44と汚物受け面22との間を広くできる。よって、これらの間に内周側から清掃器具を入れ易くなり、良好な清掃性を得られる。つまり、良好な意匠性、清掃性を得つつ、第2導水路34Bによって大流量の洗浄水を流すことができる。
図7を参照する。第1下側オーバーハング面50A及び上側オーバーハング面44を通る径方向に沿った切断面において、第1下側オーバーハング面50Aの水平寸法Ld1は、上側オーバーハング面44の水平寸法Lu1よりも大きくなる。同様の切断面において、下側平坦面52の水平寸法は、上側平坦面46の水平寸法よりも大きくなる。図8を参照する。第2下側オーバーハング面50B及び上側オーバーハング面44を通る径方向に沿った切断面において、第1下側オーバーハング面50Aの水平寸法Ld2は、上側オーバーハング面44の水平寸法Lu2よりも大きくなる。同様の切断面において、下側平坦面52の水平寸法は、上側平坦面46の水平寸法よりも大きくなる。
ここでの下側オーバーハング面50A、50Bの水平寸法Ld1、Ld2とは、奥側立ち面42Bと下側オーバーハング面50A、50Bとの間の変曲点B3から、下側オーバーハング面50A、50Bと凸曲面部58との間の変曲点B5までの水平寸法をいう。水平面に対する下側オーバーハング面50A、50Bの傾斜角度は、この変曲点B5を含む範囲において45°未満となる。本実施形態の凸曲面部58は、下側オーバーハング面50A、50Bと接続面54A、54Bの一部(内周側立ち面40)を接続する単数の曲率半径を持つ凸曲面状をなす。凸曲面部58の傾斜角度は、変曲点B5から外周側に向かう途中の一部の範囲で45°以上となる。上側オーバーハング面44の水平寸法Lu1、Lu2とは、内周側立ち面40(接続面54A、54B)と上側オーバーハング面44との間の変曲点B3から、オーバーハング部28の内周端までの水平寸法をいう。
これにより、上側オーバーハング面44の水平寸法Lu1、Lu2が下側オーバーハング面50A、50Bの水平寸法Ld1、Ld2よりも大きくなる場合と比べ、導水路34A、34Bに大流量の洗浄水を流し易くなる。
図7を参照する。第1接続面54A及びオーバーハング部28を通る径方向に沿った切断面において、第1接続面54Aの高さ寸法Ha1は、オーバーハング部28の高さ寸法Hb1よりも大きくなる。ここでの第1接続面54Aの高さ寸法Ha1とは、前述の変曲点B5から変曲点B3までの高さ寸法をいう。ここでのオーバーハング部28の高さ寸法Hb2とは、前述の変曲点B3から、便器10の上面部18までの高さ寸法をいう。この条件は、第2接続面54Bとオーバーハング部28の間で満たされていてもよい。
第2の工夫点に関する説明に移る。図12、図13を参照する。オーバーハング部28の下面、詳しくは、上側オーバーハング面44は、吐水口32A、32Bの内上面32a、32bよりも上方に設けられる。汚物受け面22は、オーバーハング部28と上下方向Zに重なる位置Pcにおいて、吐水口32A、32Bの内下面32cから下方に位置するように設けられる。
このような条件を満たすオーバーハング部28は、便鉢部16の周方向の大部分に亘る範囲、詳しくは、全周に亘る範囲において、汚物受け面22に対して吐水口32A、32Bの高さ寸法Lb1、Lb2よりも大きい高さ寸法Laを空けて設けられる。この高さ寸法Laは、径方向に沿った切断面において、オーバーハング部28と汚物受け面22の間の最小高さ寸法をいう。本実施形態において、この条件は、第1吐水口32Aの高さ寸法Lb1との関係でも満たされるし、第2吐水口32Bの高さ寸法Lb2との関係でも満たされる。
オーバーハング部28は、板状の中実部分によって構成される。オーバーハング部28には、オーバーハング部28と上下方向に重なる範囲において、中空部が形成されないということである。リム部24は、径方向に沿った切断面において、内周側立ち面40(接続面54A、54B)よりも内周側において、中空部が形成されないとも捉えられる。この条件は、便鉢部16の周方向の大部分に亘る範囲、詳しくは、全周に亘る範囲で満たされる。
第2の工夫点に関する効果を説明する。オーバーハング部28は、汚物受け面22に対して吐水口32A、32Bの高さ寸法Lb1、Lb2よりも大きい高さ寸法Laを空けて設けられる。よって、オーバーハング部28の高さ寸法Laを吐水口32A、32Bの高さ寸法Lb1、Lb2に合わせる場合と比べ、オーバーハング部28と汚物受け面22の間に清掃器具を入れ易くなる。これに伴い、オーバーハング部28と汚物受け面22を清掃し易くなる。特に、オーバーハング部28と汚物受け面22をガイドとして利用して、これらの間に配置した清掃器具を便鉢部16の広い周方向の範囲で動かし易くなる。よって、オーバーハング部28と汚物受け面22をつっかえることなく広い周方向の範囲で清掃し易くなる。
オーバーハング部28は、中実部分によって構成される。よって、オーバーハング部28に中空部を形成する場合と比べ、オーバーハング部28の高さ寸法を小さくできる。これに伴い、オーバーハング部28の高さ寸法を小さくした分、オーバーハング部28と汚物受け面22の間に更に大きい高さ寸法Laの空間を確保できる。
オーバーハング部28の上側オーバーハング面44には前述した上側平坦面46が設けられる。よって、水平面に対して上側オーバーハング面44が大きく傾斜する場合と比べ、オーバーハング部28と汚物受け面22の間に、広い径方向範囲で大きい高さ寸法Laの空間を確保できる。
第2の工夫点に関する他の特徴を説明する。図2、図3、図5を参照する。汚物受け面22は、溜水部26よりも前方において、便鉢部16の左右中央部に設けられる中央凹部64を備える。中央凹部64は、汚物受け面22の下端縁部22bから外周端部22aまで連続する。中央凹部64の少なくとも一部は、棚面36よりも下方に位置している。中央凹部64の外周端部64aは、棚面36を介さずに内周側立ち面40に接続される。棚面36は、便鉢部16の前方領域16Fにおいて左右中央部には設けられないとも捉えられる。
図5、図14を参照する。汚物受け面22の外周端部22aには、汚物受け面22の一部として、内周側立ち面40に接続される凹曲面部22c、36aが設けられる。凹曲面部22c、36aには、中央凹部64の一部となる凹曲面部22cと、棚面36の一部となる凹曲面部36aが含まれる。本実施形態の凹曲面部22cは、単数の曲率半径を持つ凹曲面状をなす。内周側立ち面40には、便鉢部16の前方領域16Fにおいて、径方向に沿った切断面において平坦状をなす平坦面40aが設けられる。本実施形態の平坦面40aは、便鉢部16の前方領域16Fにおいて、内周側立ち面40の下端から上端部までの範囲に設けられる。
オーバーハング部28の内周端を通る鉛直線Lcは、内周側立ち面40、詳しくは、内周側立ち面40の平坦面40aを通るように設けられる。鉛直線Lcは、内周側立ち面40の平坦面40aと凹曲面部22cとの境界となる変曲点B2よりも外周側において内周側立ち面40を通るように設けられる。本実施形態において、この条件は、便鉢部16の前方領域16Fの少なくとも一部において満たされる。詳しくは、リム部24の前端24aを含む一部の周方向範囲において満たされる。
これにより、鉛直線Lcが汚物受け面22を通るように設けられる場合と比べ、オーバーハング部28の突出量を小さくできる。これに伴い、オーバーハング部28の下側において清掃器具を奥側まで届かせ易くなり、更に良好な清掃性を得られる。特に、小便の飛沫によって汚れ易い便鉢部16の前方領域16Fにおいて、この効果を得られる点で有効となる。
図4、図5、図14を参照する。左側方領域16Lは、左右中心線Lyに対して第1吐水口32Aとは左右反対側に設けられる。前方領域16Fにおけるオーバーハング部28の突出量Le1(以下、単に突出量ともいう)は、このような左側方領域16Lの突出量Le2よりも小さくなる。ここでの突出量Le1、Le2とは、径方向に沿った切断面において、内周側立ち面40の上端(変曲点B3)からオーバーハング部28の内周端までの水平寸法をいう。
左側方領域16L及び前方領域16Fにおける突出量は、前方領域16Fにおいて最小となり、左側方領域16Lにおいて最大となる。前方領域16Fにおいて突出量が最小となる箇所は、リム部24の前端24aとなる。左側方領域16L及び前方領域16Fにおけるオーバーハング部28の突出量は、旋回方向Dt1に向かうに連れて徐々に大きくなることで最大となり、その最大となる箇所Pd(図4参照)から旋回方向Dt1に離れるに連れて小さくなる。
これにより、前方領域16Fにおけるオーバーハング部28の突出量Le1を左側方領域16Lにおける突出量Le2に合わせる場合と比べ、前方領域16Fのオーバーハング部28の下側において清掃器具を奥側まで届かせ易くなる。これに伴い、更に良好な清掃性を得られる。特に、小便の飛沫によって汚れ易い便鉢部16の前方領域16Fにおいて、この効果を得られる点で有効となる。
第3及び第4の工夫点に関する説明のため、その前提となる内容を説明する。図15を参照する。給水装置14は、洗浄水を貯留するタンク80と、タンク80に通じる上流側水路82に設置される開閉弁84と、タンク80に通じる下流側水路86に設置されるポンプ88と、開閉弁84及びポンプ88を制御する制御部90とを備える。上流側水路82は、水源からタンク80に供給される洗浄水の通り道となる。下流側水路86は、タンク80から便器10の吐水部30A、30Bに供給される洗浄水の通り道となる。水源は、例えば、上水道、貯水槽等である。開閉弁84は、電磁弁、電動弁等の電気駆動弁であり、制御部90による制御のもとで開閉可能である。ポンプ88は、制御部90による制御のもとで、タンク80内の洗浄水を便器10に送り出すことができる。
制御部90は、所定の洗浄開始条件を満たすと、ポンプ88の駆動を開始する。この洗浄開始条件は、例えば、動作開始指令を取得することである。動作開始指令は、不図示のスイッチ等に対する操作を通して制御部90に入力される。制御部90は、ポンプ88の駆動を開始すると、所定の設定時間が経過するまでの間、一定の回転数でポンプ88を駆動する。制御部90は、所定の設定時間の経過後、ポンプ88の駆動を停止する。以上の一連の動作によって、タンク80から設定水量の洗浄水が供給される。
給水装置14は、タンク80内の水位を検知するフロートスイッチ(不図示)を備える。制御部90は、フロートスイッチによって検知されるタンク80内の水位が設定水位以下になった場合、開閉弁84を開状態に切り替える。これにより、タンク80内に上流側水路82から洗浄水が供給される。制御部90は、タンク80内の水位が設定水位を超えた場合、開閉弁84を閉状態に切り替える。これにより、タンク80内への上流側水路82からの洗浄水の供給が停止する。以上の一連の動作によって、タンク80内に設定水量の洗浄水が貯留される。
図16を参照する。導水路34A、34Bは、棚面36の他に、前述した各立ち面40、42A、42B及び各オーバーハング面44、50A、50Bによって構成される。第1導水路34Aの棚面36は、便鉢部16の中央凹部64を除く範囲において、第1吐水口32Aから第1終端位置Pe1まで周方向に延びるように形成される。第1終端位置Pe1は、第2吐水口32Bの内周側において、第2導水路34Bの棚面36に対して滑らかに連続する位置である。第2導水路34Bの棚面36は、第2吐水口32Bから第2終端位置Pe2まで周方向に延びるように形成される。第2終端位置Pe2は、第1吐水口32Aの内周側において、第1導水路34Aの棚面36に対して滑らかに連続する位置である。本実施形態の棚面36は、中央凹部64を除く範囲において、便鉢部16の周方向の全範囲に亘り形成されることになる。本実施形態の棚面36は、吐水口32A、32Bの内下面32cに滑らかに連続する。
図3、図16を参照する。溜水部26は、便鉢部16の底部を形成する。溜水部26には封水の一部となる溜水Wが溜められる。溜水部26は、底壁面26aと、底壁面26aから立ち上がる複数の立壁面26b、26cとを備える。溜水部26の底壁面26aの後部には便器排水路20の入口が開口する。
立壁面26b、26cは、溜水部26の左右一方側(本実施形態では右側)に設けられる第1立壁面26bと、溜水部26の左右他方側(本実施形態では左側)に設けられる第2立壁面26cとを含む。第1立壁面26bと第2立壁面26cは、後述する誘導流Fe(図18参照)を形成するため、前方に向かうにつれて先細りする形状であり、それらの前端部は凹曲面26dを介して接続される。
転向部38は、リム部24の内周面に設けられる。転向部38は、平面視において、左右中心線Lyに対して、第2吐水口32Bとは反対側において便鉢部16の後方領域16Bに形成される。転向部38は、平面視において、第2吐水口32Bの吐出方向Daに第2吐水口32Bを投影したときに、リム部24の内周面と重なる位置に設けられる。
リム部24の内周面は、転向部38に対して反旋回方向Dt2に隣接する第1隣接部分94と、転向部38に対して旋回方向Dt1に隣接する第2隣接部分96と、を備える。転向部38は、第1隣接部分94に対して、外周側に凹状をなす第1曲げ部98を介して接続される。転向部38は、第2隣接部分96に対して内周側に凸状をなす第2曲げ部100を介して接続される。第1隣接部分94及び転向部38は第2奥側立ち面42Bによって構成され、第2隣接部分96は内周側立ち面40によって構成される。転向部38及び第1隣接部分94は第2下側オーバーハング面50Bに接続される。転向部38に衝突したときに生じる飛沫の飛散を第2下側オーバーハング面50Bによって抑制できる。
以上の便器装置12による洗浄方法を説明する。図17〜図19を参照する。図17は、便器洗浄を開始した直後の初期段階での洗浄水の流れ方を示す。図18、図19では、初期段階に後続する後続段階での洗浄水の流れ方を示す。各図では、主な主流の流れ方向に矢印を付して示す。本明細書での「主流」とは、洗浄水の一部が部分的に集まった状態で流れるすじ状の流れをいう。
本実施形態の便器装置12は、水の落差を用いて汚物を押し流す洗い落とし式の洗浄方式によって汚物を排出する。給水装置14は、所定の洗浄開始条件を満たすと、所定の設定水量の洗浄水を、便器10の吐水部30A、30Bに供給する。吐水部30A、30Bに供給される洗浄水は、通水路33を経由して、吐水口32A、32Bから便鉢部16内に吐き出される。吐水口32A、32Bから吐き出される洗浄水によって、便鉢部16内を旋回する前述の旋回流Fa、Fbが形成される。各旋回流Fa、Fbによって便鉢部16内が洗浄され、便鉢部16内の汚物が便器排水路20を通して排出される。
第1旋回流Faは、便鉢部16の右側方領域16R及び前方領域16Fを経由して、左側方領域16Lを後方に向かうように旋回方向に伝わる。第1旋回流Faの一部は、便鉢部16の前方領域16Fにおいて分流Fcに分かれる。分流Fcは、溜水部26内に前方から流入する。
第2旋回流Fbは、便鉢部16の後方領域16Bを経由して右側方領域16Rを前方に向かうように旋回方向Dt1に伝わる。第2旋回流Fbの一部は、転向部38と衝突することによって、流れ方向を溜水部26側に転向させられる。第2旋回流Fbの一部は、溜水部26側に転向させられることによって、溜水部26に後方から流入する流入水流Fdを形成する。流下水流Fdは、遠心力を受ける旋回流Fa、Fbから徐々に流れ落ちる水流と比べて、強い勢いを持って溜水部26に流入する。
流下水流Fdは、溜水部26に後方から落ち込むように流入する。流下水流Fdは、溜水部26の第1立壁面26bに接触しつつ前向きに流れる。前向きの流下水流Fdは、溜水部26の底壁面26a及び第1立壁面26bに衝突することによって、溜水部26内において後向きかつ上向きに転向する。これにより、流下水流Fdは、溜水部26内において上昇したうえで自重によって下降する。この結果、流下水流Fdは、左右方向Yの軸周りに旋回する縦旋回流となる後ろ向きの誘導流Feを形成する。誘導流Feは、溜水部26内で下降することによって、便器排水路20の入口に汚物を押し込む流れとなる。このように溜水部26は、第1立壁面26bに接触しつつ前向きに流入する流下水流Fdによって、便器排水路20に汚物を押し込む誘導流Feを形成するように構成される。誘導流Feには、溜水部26内に前方から流入する分流Fcが合流する。これにより、誘導流Feの水勢が増幅される。
第3の工夫点に関する説明に移る。図18を参照する。第1旋回流Faは、便鉢部16の左右中心線Lyに対して一方側に位置する一方側半部16c(以下、右側半部16cともいう)において、第1吐水口32Aよりも旋回方向Dt1に位置する部分を経由する。第2旋回流Fbは、便鉢部16の右側半部16cにおいて、第1吐水口32Aを周方向に跨ぐ範囲を経由する。第1旋回流Faと第2旋回流Fbは、後続段階にあるとき、便鉢部16内において合流する。これらの合流箇所Pfは、便鉢部16の右側半部16cにおいて、第1吐水口32Aよりも旋回方向に位置する第1導水路34Aの棚面36上となる。
図20を参照する。本図は、図5と同じ視点から便鉢部16の前方領域16Fの一部を見た図である。本図では、左右中心線Lyに沿った左右方向Yの中央位置Pyを示す。本図では、各段階においてリム部24の内周面を伝う過程で旋回流Faが届く領域の上辺に線Lfを付す。図21も同様である。
第1旋回流Faは、初期段階にあるとき、便鉢部16の前方領域16Fにおいて、遠心力によって上向きに流れてから、自重によって下向きに流れる。第1旋回流Faは、リム部24の内周面の周方向範囲での一部24bとしての便鉢部16の前方領域16Fにおいて、リム部24の内周側立ち面40を伝わる。この結果、第1旋回流Faは、第2旋回流Fbと合流する前の初期段階にあるとき、リム部24の内周面の一部24bにおいて、第1最高水位WL1まで達するように伝わる。
この第1最高水位WL1に達する箇所は、リム部24の内周面の前端24aよりも旋回方向Dt1寄りの箇所となる。本明細書での「最高水位」とは、リム部24の内周面の一部24bを伝わる水流の中で最も高い水位をいう。初期段階にあるとき、第1旋回流Faは、僅かな上下方向及び周方向での位置の変化はあるものの、リム部24の前端24aよりも旋回方向Dt1寄りの箇所において、継続的に最高水位となる。本実施形態の第1最高水位WL1は、第1吐水口32Aの内上面32aの高さ位置Pcよりも上方となる。第1最高水位WL1は、オーバーハング部28の上側オーバーハング面44よりも下方に位置する。
図21を参照する。第1旋回流Faの水量は、第2旋回流Fbと合流した後の後続段階にあるとき、第2旋回流Fbと合流することによって増大する。この結果、第1旋回流Faは、リム部24の内周面の一部24bにおいて、第1最高水位WL1よりも高い第2最高水位WL2まで達するように伝わる。第1旋回流Faは、リム部24の一部24bにおいて、初期段階にあるときよりも高い水位に達するように伝わることになる。
第2最高水位WL2に達する箇所Pg(図4も参照)は、第1最高水位WL1に達する箇所と同様、リム部24の内周面の前端24aよりも旋回方向Dt1寄りの箇所となる。後続段階にあるとき、第1旋回流Faは、僅かな上下方向及び周方向での位置の変化はあるものの、リム部24の前端24aよりも旋回方向Dt1寄りの箇所において、継続的に最高水位となる。この第2最高水位WL2は、第1吐水口32Aの内上面32aの高さ位置Pcよりも上方に位置する。第2最高水位WL2は、オーバーハング部28の上側オーバーハング面44に達する位置である。第2吐水口32Bから吐き出された洗浄水は、リム部24の内周面を伝わる過程で、第1吐水口32Aの内上面32aよりも上方に達することになる。後続段階にあるとき、第2最高水位WL2に達する箇所Pgに対して周方向両側の箇所でも、初期段階にあるときよりも水位が上昇する。
第4の工夫点に関する説明に移る。図22を参照する。初期段階にあるとき、第2旋回流Fbの一部は、汚物受け面22上を流れる過程で、汚物受け面22の勾配に従って、徐々に下向きに流れ落ちる。この結果、第2吐水口32Bから転向部38に至るまでの範囲で、第2旋回流Fbの一部Ffは、転向部38に達する前に、溜水部26に流れ落ちる。
図23を参照する。本図では、第1旋回流Fa、第2旋回流Fbの一部にハッチングを付して、これらを模式的に示す。後続段階にあるとき、第1旋回流Faは、便鉢部16の転向部38よりも反旋回方向Dt2において、第2旋回流Fbを外周側に向けて押すように第2旋回流Fbと衝突する。第1旋回流Faと第2旋回流Fbの衝突箇所Phは、便鉢部16の後方領域16Bにある第1導水路34Aの棚面36上となる。これにより、第2吐水口32Bから転向部38に至るまでの範囲で、溜水部26側に流れ落ちる第2旋回流Fbの水量を減らすことができる。この結果、第1旋回流Faと合流した後において、第1旋回流Faと合流する前よりも、転向部38に対する第2旋回流Fbの衝突流量が大きくなる。
本実施形態の便器10は、以上の流れを便鉢部16内に形成するように構成される。このように構成するうえで、便鉢部16の形状、吐水部30A、30Bから吐き出される洗浄水の流量、洗浄水を吐き出す方向等が定められる。洗浄水の流量は、たとえば、吐水部30A、30Bの吐水口32A、32Bや通水路33の断面形状に応じて定められる。ここでの「便鉢部16の形状」には、本実施形態では、リム部24の内周面、汚物受け面22、溜水部26が含まれる。
第3及び第4の工夫点に関する効果を説明する。第1旋回流Faは、第2旋回流Fbと合流した後の後続段階にあるとき、リム部24の一部24bにおいて、初期段階にあるときよりも高い水位に達するように伝わる。よって、リム部24の一部24bにおける第1旋回流Faの水位が変化しない場合と比べ、リム部24の内周面の洗浄範囲を上下方向に広範囲化できる。
この他に、第2旋回流Fbと合流する前から、後続段階にあるときの水位に第1旋回流Faが達する場合と比べ、第1旋回流Faの流量を低減させることができる。これに伴い、第1旋回流Fa及び第2旋回流Fbの合流箇所Pfで飛沫を生じ難くさせることができる。
特に、本実施形態の便器10は、汚物受け面22に対して吐水口32A、32Bよりも大きい高さ寸法Laを空けて、吐水口32A、32Bよりも上方にオーバーハング部28が設けられる。このような場合でも、リム部24の内周面の洗浄範囲を上下方向に広範囲化できる点で有効となる。
第2最高水位WL2は、オーバーハング部28に達する位置である。よって、オーバーハング部28の下面も第1旋回流Faによって効果的に洗浄できる。この他に、第1最高水位WL1は、オーバーハング部28よりも下方に位置する。よって、第2旋回流Fbと合流する前から第1旋回流Faがオーバーハング部28に達する場合と比べ、第1旋回流Faの流量を低減させることができる。これに伴い、第1旋回流Fa及び第2旋回流Fbの合流箇所Pfで更に飛沫を生じ難くさせることができる。
リム部24の一部24bは、便鉢部16の前方領域16Fに設けられる。このような、小便の飛沫によって汚れ易い箇所において、前述のように洗浄範囲を上下方向に広範囲化できる点で有効となる。
吐水部30A、30Bは、第1旋回流Faを形成する第1吐水部30Aと、第2旋回流Fbを形成する第2吐水部30Bとを含む。よって、単数の吐水部30A、30Bのみを用いる場合と比べ、各吐水部30A、30Bから吐き出された洗浄水によって、大流量の旋回流Fa、Fbを形成できる。
水源から便器10に洗浄水を直接に供給する直接給水方式の場合、経時的に水圧が低下する。よって、便器10に供給される洗浄水の流量が経時的に減少してしまう。この点、本実施形態によれば、ポンプ88を用いる給水方式を採用している。よって、直接給水方式と比べ、一定流量の洗浄水を便器10に安定して供給し続けることができる。これは、一定の回転数でポンプ88を駆動することによって実現される。このため、便鉢部16内において第2最高水位WL2に達した状態を長期間に亘り維持し易くなり、リム部24の内周面を良好に洗浄できる。
第1旋回流Faは、便鉢部16の転向部38よりも反旋回方向Dt2において、第2旋回流Fbを外周側に向けて押すように第2旋回流Fbと衝突する。よって、転向部38に対して衝突する第2旋回流Fbの流量を増大できる。これに伴い、転向部38に対して衝突することによって形成される流下水流Fdの流量を増大できる。よって、局所的な箇所に流入する大流量の流下水流Fdを用いて、溜水部26内において実現しようとする所望の流れの流量を増大できる。ここでの所望の流れとは、本実施形態では、前述した誘導流Feをいう。この流量の増大によって、良好な汚物排出能力を得られる。
第3の工夫点に関する他の特徴を説明する。図18を参照する。第2旋回流Fbは、便鉢部16の右側半部16c上において第1旋回流Faと合流する。本実施形態では、これらの合流箇所Pfに十分流量の第2旋回流Fbを安定して届かせるため、次の工夫を講じている。
図6を参照する。左右方向Yに沿って切断した切断面において、便鉢部16の左右方向Yでの中央位置Pyから右側半部16cの汚物受け面22の外周端までの水平寸法をLg1という。ここでの汚物受け面22の外周端とは、本実施形態において、汚物受け面22と立ち面40、42A、42Bの間の変曲点B2をいう。
このとき、同様の切断面において、右側半部16cにある棚面36の水平寸法Lg2は、水平寸法Lg1の0.25倍以上の大きさとなる。本明細書での棚面36の水平寸法Lg2とは、前述の切断面において、棚面36の内周端から外周端(本実施形態では汚物受け面22の外周端)までの水平寸法をいう。棚面36の内周端とは、本実施形態において、棚面36の平坦面部36bと連結面39の間の変曲点B1をいう。この数値条件は、溜水部26に対して左右方向Yに重なる箇所において、前後方向Xの全範囲で満たされる。この数値条件は、本発明者の実験的な検討結果に基づき設定されている。これにより、第1旋回流Faと第2旋回流Fbの合流箇所Pfまで十分流量の洗浄水を安定して届かせ易くなる。これに伴い、図20、図21を用いて説明した流れ方を安定して実現できる。
第4の工夫点に関する他の特徴を説明する。図18を参照する。第1旋回流Faは、便鉢部16の左側半部16d上において第2旋回流Fbと衝突する。本実施形態では、これらの衝突箇所Phに十分流量の第1旋回流Faを安定して届かせるため、次のような工夫を講じている。
図6を参照する。左右方向に沿って切断した切断面において、便鉢部16の左右方向Yでの中央位置Pyから左側半部16dの汚物受け面22の外周端までの水平寸法をLh1という。このとき、同様の切断面において、左側半部16dにある棚面36の水平寸法Lh2は、水平寸法Lh1の0.25倍以上の大きさとなる。この数値条件は、溜水部26に対して左右方向Yに重なる箇所において、前後方向Xの全範囲で満たされる。この数値条件は、本発明者の実験的な検討結果に基づき設定されている。これにより、第1旋回流Faと第2旋回流Fbの衝突箇所Phまで十分流量の洗浄水を安定して届かせ易くなる。これに伴い、図22、図23を用いて説明した流れ方を安定して実現できる。
図24を参照する。以下、リム部24の内周面の形状に関して、平面視における、リム部24の外周輪郭線Liを基準に説明する。この外周輪郭線Liは、径方向に沿って切断した切断面において、リム部24の内周面の最外周端となる。本実施形態の外周輪郭線Liは、リム部24の立ち面40、42A、42Bによって描かれる。
図24では、リム部24の内周面の外周輪郭線Liにおいて変曲点となる主な位置に破線を付す。図25では、図24の位置X1〜X9での曲率半径を示す。第1導水路34Aは、便鉢部16の前端部16bを含む前側部分34aと、第1導水路34Aの最下流側に設けられる終端部分34bと、終端部分34bと前側部分34aを接続する中間部分34cとを備える。前側部分34aは、平面視において、第1曲率半径R1の凹曲面状をなす。第1曲率半径R1は、例えば、100〜150mmである。本実施形態の前側部分34aは、その周方向の全範囲で同等の曲率半径である。
前側部分34aと中間部分34cの間の変曲点Pj1は、便鉢部16の前方領域16Fに設けられる。中間部分34cと終端部分34bの間の変曲点Pj2は、便鉢部16の後方領域16Bに設けられる。本実施形態の中間部分34cは、前側部分34aに連続するとともに中間部分34cの大部分を構成する第1部分34dと、第1部分34dと終端部分34bに連続する第2部分34eとを備える。第1部分34dは、第1曲率半径R1よりも大きい第2曲率半径R2の凹曲面状をなす。第2部分34eは、第1曲率半径R1よりも小さい第3曲率半径R3の凹曲面状をなす。
図23を用いて説明した流れ方を実現するうえで、第1導水路34Aの終端部分34bまで十分流量の第1旋回流Faを届けることが好ましい。この観点から、便鉢部16の前端部16bから第1導水路34Aの終端部分34bまで第1旋回流Faが伝わる過程で、できるだけ第1旋回流Faに遠心力を付与できるとよい。このような経路において第1旋回流Faに遠心力を付与するうえでは、この経路における平面視でのリム部24の内周面の曲率半径に関して、ある程度小さくすることが望まれる。このような観点から、次の条件を満たすと好ましい。
便鉢部16の前端部16bから第1導水路34Aの終端部分34bまでの範囲のうち、第1導水路34Aの終端部分34bを除く範囲における、導水路34A、34Bの内周面の最大曲率半径をRmとする。このとき、最大曲率半径Rmは、好ましくは曲率半径R1の3.5倍以下であり、更に好ましくは曲率半径R1の3.0倍以下である。本実施形態では、第1導水路34Aの中間部分34cの第1部分34dにおいて最大曲率半径Rmとなる。一般的には、第1導水路34Aの中間部分34cにおける曲率半径Rmは、曲率半径R1の4.0倍以上となる。
これにより、便鉢部16の前端部16bから第1導水路34Aの終端部分34bまで第1旋回流Faが伝わる過程で、第1旋回流Faに効果的に遠心力を付与できる。この結果、第1導水路34Aの終端部分34bまで十分流量の第1旋回流Faを届けることができる。
図26を参照する。本実施形態の第1導水路34Aの終端部分34bは単数の曲率半径を持つ凹曲面状をなす。リム部24の内周面は、第1導水路34Aの終端部分34bに対して旋回方向Dt1に隣り合う凸曲面状の第3隣接部分102を備える。第1導水路34Aの内周面の終端34fは、第1導水路34Aの凹曲面状の終端部分34bと第3隣接部分102との間の変曲点となる。
平面視において第1導水路34Aの内周面の終端34fに接する接線をLjとする。便鉢部16の後方領域16Bの内周面と接線Ljとの交点Piは、便器10の左右中心線Lyよりも反旋回方向Dt2側に位置する。この交点Piは、便器10の左右中心線Lyよりも第2吐水口32B側に位置するということである。
これにより、この交点Piが左右中心線Lyよりも転向部38側(図26の紙面右側)に位置する場合と比べ、第2吐水口32Bから吐き出された洗浄水を早期に外周側に向けて押さえることができる。これに伴い、第2吐水口32Bから転向部38に至るまでの範囲で、溜水部26側に流れ落ちる第2旋回流Fbの水量を更に減らすことができる。この結果、転向部38に対して衝突することによって形成される流下水流Fdの流量を更に増大できる。
平面視において左右中心線Lyに対して接線Ljのなす鋭角での角度をθとする。この角度θが小さくなるほど、第2吐水口32Bから吐き出された洗浄水を外周側に向けて押さえ易くなる。このような観点から、この角度θは、例えば、60°以下とすると好ましく、50°以下とすると更に好ましい。
各構成要素の他の変形例を説明する。
便器装置12は、洗い落とし式以外の他の洗浄方式を用いて洗浄してもよい。この洗浄方式は、たとえば、サイホン式等である。
吐水部30A、30Bの個数は特に限定されない。吐水部30A、30Bの個数は単数及び三つ以上の何れでもよい。吐水口32A、32Bの個数に関しても同様である。吐水口32A、32Bの吐出方向は反時計回りである例を説明した。これとは異なり、吐水口32A、32Bの吐出方向は時計回りでもよい。旋回流Fa、Fbの旋回方向Dt1に関しても同様である。
左右方向Yの一方側は右側、他方側は左側である例を説明した。これとは異なり、左右方向Yの一方側は左側、他方側は右側であってもよい。実施形態の「右側」の文言は「左側」、「左側」の文言は「右側」に置き換えて捉えてもよいということである。これは、例えば、旋回流Fa、Fbの旋回方向Dt1が時計回りである場合を想定している。
下側オーバーハング面50A、50B及び上側オーバーハング面44の一方がなくともよいし、それらの両方がなくともよい。オーバーハング部28がなくともよいということである。
汚物受け面22に対するオーバーハング部28の高さ寸法L0と吐水口32A、32Bの高さ寸法Lb1、Lb2の大小関係は特に限定されない。例えば、高さ寸法L0と高さ寸法Lb1、Lb2は同じでもよい。
図20、図21を用いて説明した洗浄水の流れ方は便器10において必須ではない。図22、図23を用いて説明した洗浄水の流れ方も便器10において必須ではない。これらの流れ方のうち、いずれか一方の流れ方が用いられてもよいし、両方の流れ方が用いられていなくともよい。
(第1の工夫点に関して)各オーバーハング面44、50A、50Bには平坦面46、52が設けられなくともよい。
上側オーバーハング面44の設けられる周方向範囲は特に限定されない。上側オーバーハング面44は、例えば、便鉢部16の前方領域16Fと後方領域16Bのみに設けられてもよい。
上側オーバーハング面44の高さ位置は、便鉢部16の周方向位置によって特に限定されない。たとえば、上側オーバーハング面44は、便鉢部16の全周に亘る範囲で一定の高さ位置に設けられてもよい。
下側オーバーハング面50A、50Bは、導水路34A、34Bの上面を構成しなくともよい。下側オーバーハング面50A、50Bは、洗浄水を導く機能を持たずともよいということである。
下側オーバーハング面50A、50Bは、吐水口32A、32Bの内上面32a、32bに対して段差面を介して連続していてもよい。
第1下側オーバーハング面50Aは、上側オーバーハング面44に対して段差面を介して連続していてもよい。
導水路34A、34Bの水路部35の下面から各下側オーバーハング面50A、50Bまでの高さ寸法H0は特に限定されない。この高さ寸法H0を旋回方向Dt1に向かって同等の大きさにしつつ、下側オーバーハング面50A、50Bを旋回方向Dt1に向かって上り勾配にしてもよい。
接続面54A、54Bの水平面に対してなす角度は特に限定されない。接続面54A、54Bは、例えば、鉛直下向きに延びていてもよい。
(第2の工夫点に関して)オーバーハング部28には、実施形態とは異なり、中空部が形成されていてもよい。
オーバーハング部28の内周端を通る鉛直線Lcは、汚物受け面22を通るように設けられてもよい。内周側立ち面40を通るように鉛直線Lcを設けるという条件は、便鉢部16の側方領域16L、16R及び後方領域16Bのうちの何れかにおいて満たされてもよい。
オーバーハング部28の突出量は特に限定されない。たとえば、突出量Le1は突出量Le2と同じでもよいし、突出量Le2よりも大きくともよい。
(第3及び第4の工夫点に関して)図20、図21を用いて説明した洗浄水の流れ方を実現するうえで、便器10の具体的な構造は特に限定されない。たとえば、これを実現するうえで、便器10は第1吐水部30Aのみを備えていてもよい。これは、便鉢部16内を周回する第1旋回流Faによって第2旋回流Fbを形成し、その第2旋回流Fbと第1旋回流Faを合流させることによって、図21の流れ方を実現する場合を想定している。
第1旋回流Faは、後続段階にあるとき、その最高水位の変化を伴うことなく、初期段階にあるときよりも高い水位に達していてもよい。これは、初期段階にあるときの第1旋回流Faの最高水位WL1がオーバーハング部28に達する位置の場合を想定している。この場合に、後続段階にあるとき、初期段階にあるときに最高水位WL1に達する箇所に対して周方向両側の箇所で水位が上昇するケースも含まれるということである。
リム部24の内周面の周方向範囲での一部24bとして、図21のように水位の変化する箇所は特に限定されない。このようなリム部24の一部24bは、例えば、便鉢部16の後方領域16Bでもよい。
第1最高水位WL1及び第2最高水位WL2の高さ位置は特に限定されない。例えば、第1最高水位WL1は、第1吐水口32Aの内上面32aから下方に位置していてもよい。この他に、第2最高水位WL2は、オーバーハング部28よりも下方に位置していてもよい。
棚面36の水平寸法Lg2、Lh2は特に限定されない。棚面36の水平寸法Lg2は、例えば、水平寸法Lg1の0.25倍未満の大きさでもよい。棚面36の水平寸法Lh2は、例えば、水平寸法Lh1の0.25倍未満の大きさでもよい。
給水装置14の給水方式は特に限定されない。給水方式は、例えば、水道直圧式でもよい。この場合、給水装置14は、例えば、フラッシュバルブ等を用いて構成される。
図22、図23を用いて説明した洗浄水の流れ方を実現するうえで、便器10の具体的な構造は特に限定されない。たとえば、これを実現するうえで、便器10は第2吐水部30Bのみを備えていてもよい。これは、便鉢部16内を周回する第2旋回流Fbによって第1旋回流Faを形成し、その第2旋回流Fbと第1旋回流Faを合流させることによって、図23の流れ方を実現する場合を想定している。
流下水流Fdを用いて溜水部26内において誘導流Feを形成する例を説明した。流下水流Fdを用いて溜水部26内に形成される水流の例は特に限定されない。たとえば、流下水流Fdは便器排水路20の入口に直接的に流れ込んでもよい。
平面視における第1導水路34Aの内周面の曲率半径は特に限定されない。
便鉢部16の後方領域16Bの内周面との接線Liと交点Ltは、左右中心線Lyよりも転向部38側に位置してもよい。
以上、実施形態及び変形例について詳細に説明した。実施形態及び変形例を抽象化した技術的思想を理解するにあたり、その技術的思想は、実施形態及び変形例の内容に限定的に解釈されるべきではない。実施形態及び変形例において言及している構造には、寸法誤差、製造誤差等の誤差の分だけずれた構造も当然に含まれる。実施形態及び変形例の内容は、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態」との表記を付して強調している。しかしながら、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。以上の構成要素の任意の組み合わせも有効である。たとえば、実施形態に対して変形例の任意の説明事項を組み合わせてもよい。