JP2021084937A - ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品 - Google Patents

ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】導光部材の成形材料として好適な、色相及び耐熱性に優れたポリカーボネート樹脂成形品を安定かつ確実に得ることができるポリカーボネート樹脂組成物と、このポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品を提供する。【解決手段】ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、下記一般式(1A)で表される芳香族アルコール(B)0.001〜1質量部と、リン系安定剤(C)0.003〜0.5質量部とを含有するポリカーボネート樹脂組成物であって、該芳香族アルコール(B)中のナトリウム(Na)量が200ppm以下であり、かつカリウム(K)量が200ppm以下であるポリカーボネート樹脂組成物。(一般式(1A)中、Xは、窒素、硫黄、及びハロゲンのいずれの元素も含まない有機基である。nは0〜4の整数を表し、nが2以上の場合、n個のXは同一であってもよく異なるものであってもよい。)【選択図】なし

Description

本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品に関する。詳しくは、本発明は、色相に優れると共に、耐熱性にも優れたポリカーボネート樹脂組成物と、このポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品に関する。
近年、欧州及び北米等においては、自動車のヘッドランプ及びリアランプに常時点灯するデイライトを設置することにより、昼間の歩行者や対向車からの視認性を高める、自動車のデイライト化が進んでいる。デイライトは一般に、導光部材と、導光部材に光を入射させる光源とを備えている。
従来、導光部材の構成材料として、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を用いることが提案されているが、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、成形過程で受ける熱で芳香族ポリカーボネート樹脂が劣化することにより、得られる成形品は僅かながら黄色味を帯びることがある。しかし、自動車用照明装置に内蔵される導光部材用途においては、例えば300mm長光路成形品について測定される300mm長のYI値としての数値が小さい、高度な色相を有するものであることが望まれる。
特許文献1には、自動車用照明装置に内蔵される導光部材用途に好適な、優れた色相を有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物として、芳香族ポリカーボネート樹脂に、特定のリン系安定剤と共にポリアルキレングリコールを配合したものが提案されている。
本発明者は、特許文献1よりも更に優れた色相のポリカーボネート樹脂成形品を得るべく検討を重ね、特定の芳香族アルコールとリン系安定剤を所定の割合で配合することにより、著しく優れた色相を有するポリカーボネート樹脂成形品を得ることができることを見出し、先に本出願人より国際出願した(特許文献2)。
特開2016−145325号公報 国際公開2019/198321号
しかし、特許文献2に記載の特定の芳香族アルコールとリン系安定剤を配合しても、目的とする色相のポリカーボネート樹脂成形品を得ることができない場合があり、得られる成形品の色相にはバラツキがあることが見出された。また、特許文献2のポリカーボネート樹脂組成物では、耐熱性が低下する問題があることが見出された。
例えば、自動車用デイライトの導光部材としての用途において、自動車のデイライトの近傍には、一般的に夜間用の通常の光源としてLEDやハロゲンランプ等の白熱灯が設けられているため、導光部材は、デイライトの光源から発生する熱に加え、LEDや白熱灯から発生する熱によっても加熱されることから、耐熱耐久性に優れることは、重要な特性である。
本発明は、特許文献2に記載のポリカーボネート樹脂組成物を更に改善し、耐熱性を損なうことなく、自動車用照明装置に内蔵される導光部材用途にも好適な、著しく優れた色相を有するポリカーボネート樹脂成形品を安定かつ確実に得ることができるポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品を提供することを課題とする。
本発明者は上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、特許文献2で用いられる芳香族アルコールの製造時に用いられる触媒中のナトリウム(Na)やカリウム(K)が、製品としての芳香族アルコール中に含まれてポリカーボネート樹脂組成物中に混入することで、得られるポリカーボネート樹脂組成物の色相や耐熱性が低下すること、従って、この芳香族アルコール中のNa及びK量を所定値以下とすることで、Na及びKに起因する色相及び耐熱性の低下の問題を解決し、色相及び耐熱性に優れたポリカーボネート樹脂成形品を安定かつ確実に得ることができることを見出した。
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
[1] ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、下記一般式(1A)で表される芳香族アルコール(B)0.001〜1質量部と、リン系安定剤(C)0.003〜0.5質量部とを含有するポリカーボネート樹脂組成物であって、該芳香族アルコール(B)中のナトリウム(Na)量が200ppm以下であり、かつカリウム(K)量が200ppm以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
Figure 2021084937
(一般式(1A)中、Xは、窒素、硫黄、及びハロゲンのいずれの元素も含まない有機基である。nは0〜4の整数を表し、nが2以上の場合、n個のXは同一であってもよく異なるものであってもよい。)
[2] 前記芳香族アルコール(B)中のナトリウム(Na)とカリウム(K)の合計量が300ppm以下であることを特徴とする[1]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[3] 前記芳香族アルコール(B)が、ベンジルアルコール(フェニルメタノール)、4−フェニルベンジルアルコール(4-フェニルフェニルメタノール)、2−メチルフェニルメタノール、4−メチルフェニルメタノール、4−tert−ブチルフェニルメタノール及び1,4−ベンゼンジメタノールよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[4] 前記芳香族アルコール(B)が、ベンジルアルコール(フェニルメタノール)および/又は4−フェニルベンジルアルコール(4-フェニルフェニルメタノール)であることを特徴とする[3]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[5] さらに、エポキシ化合物(D)を0.01〜0.5質量部含有することを特徴とする[1]ないし[4]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[6] [1]ないし[5]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物によれば、300mm長光路成形品について測定される300mm長のYI値として約18以下、特に16以下を満足する著しく良好な色相を有すると共に耐熱性にも優れたポリカーボネート樹脂成形品を安定かつ確実に提供することができる。
このため、本発明のポリカーボネート樹脂組成物によれば、長尺ないしは肉厚の導光部材に適用した場合であっても、高い光伝達効率を得ることができ、また、自動車用デイライトの導光部材として要求される高い耐熱耐久性を十分に満たすポリカーボネート樹脂成形品を歩留りよく製造することができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
[ポリカーボネート樹脂組成物]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、下記一般式(1A)で表される芳香族アルコール(B)0.001〜1質量部と、リン系安定剤(C)0.003〜0.5質量部とを含有するポリカーボネート樹脂組成物であって、該芳香族アルコール(B)中のナトリウム(Na)量が200ppm以下であり、かつカリウム(K)量が200ppm以下であることを特徴とする。
Figure 2021084937
(一般式(1A)中、Xは、窒素、硫黄、及びハロゲンのいずれの元素も含まない有機基である。nは0〜4の整数を表し、nが2以上の場合、n個のXは同一であってもよく異なるものであってもよい。)
<ポリカーボネート樹脂(A)>
ポリカーボネート樹脂(A)としては、従来公知の任意のポリカーボネート樹脂を使用できる。ポリカーボネート樹脂(A)としては、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族−脂肪族ポリカーボネート樹脂が挙げられるが、好ましくは、芳香族ポリカーボネート樹脂である。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ヒドロキシ化合物と、ホスゲン又は炭酸のジエステルとを反応させることによって得られる芳香族ポリカーボネート重合体である。上記芳香族ポリカーボネート重合体は分岐を有していてもよい。芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)、溶融法(エステル交換法)等の従来法によることができる。
芳香族ジヒドロキシ化合物の代表的なものとしては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等が挙げられる。
上記芳香族ジヒドロキシ化合物の中では、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が特に好ましい。
上記芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種類を単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する際に、上記芳香族ジヒドロキシ化合物に加えてさらに分子中に3個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール等を少量添加してもよい。この場合、上記芳香族ポリカーボネート樹脂は分岐を有するものになる。
上記3個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノールとしては、例えばフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのポリヒドロキシ化合物、あるいは3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロムイサチン等が挙げられる。この中でも、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシルフェニル)エタン又は1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼンが好ましい。上記多価フェノールの使用量は、上記芳香族ジヒドロキシ化合物を基準(100モル%)として好ましくは0.01〜10モル%となる量であり、より好ましくは0.1〜2モル%となる量である。
エステル交換法による重合においては、ホスゲンの代わりに炭酸ジエステルがモノマーとして使用される。炭酸ジエステルの代表的な例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等に代表される置換ジアリールカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート等に代表されるジアルキルカーボネートが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種類を単独で、又は2種類以上を混合して用いることができる。これらのなかでも、ジフェニルカーボネート、置換ジフェニルカーボネートが好ましい。
また上記の炭酸ジエステルは、好ましくはその50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下の量を、ジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換してもよい。代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル及びイソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで炭酸ジエステルの一部を置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
エステル交換法により芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、触媒が使用される。触媒種に制限はないが、一般的にはアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物が使用される。中でもアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が特に好ましい。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。エステル交換法では、上記触媒をp−トルエンスルホン酸エステル等で失活させることが一般的である。
上記芳香族ポリカーボネート樹脂には、難燃性等を付与する目的で、シロキサン構造を有するポリマー又はオリゴマーを共重合させることができる。
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、10,000〜22,000であることが好ましい。ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が10,000未満である場合、得られる成形品の機械的強度が不足し、十分な機械的強度を有するものを得ることができない場合がある。また、ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が22,000を超える場合、ポリカーボネート樹脂(A)の溶融粘度が大きくなるため、例えば本発明のポリカーボネート樹脂組成物を射出成形などの方法で成形して導光部材等の長尺状の成形品を製造する際に優れた流動性を得ることができず、また、樹脂の剪断による発熱量が大きくなり、熱分解により樹脂が劣化する結果、優れた色相を有する成形品を得ることができない場合がある。
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量はより好ましくは12,000〜18,000であり、さらに好ましくは14,000〜17,000である。
ここで粘度平均分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、20℃の温度で測定した溶液粘度より換算して求めたものである。
ポリカーボネート樹脂(A)は、粘度平均分子量の異なる2種以上のポリカーボネート樹脂を混合したものであってもよく、また粘度平均分子量が上記範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合して上記粘度平均分子量の範囲内としたものであってもよい。
なお、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)を主成分として、通常95質量%以上、好ましくは97質量%以上、より好ましくは99質量%以上含有するものである。
<芳香族アルコール(B)>
本発明において用いる芳香族アルコール(B)は、下記一般式(1A)で表される化合物である。
Figure 2021084937
(一般式(1A)中、Xは、窒素、硫黄、及びハロゲンのいずれの元素も含まない有機基である。nは0〜4の整数を表し、nが2以上の場合、n個のXは同一であってもよく異なるものであってもよい。)
一般式(1A)におけるXの窒素、硫黄、及びハロゲンのいずれの元素も含まない有機基は、着色の原因となる窒素、硫黄、ハロゲンのいずれの元素も含まないものであればよく、特に制限はないが、通常、炭素原子と水素原子、或いは炭素原子と水素原子と酸素原子とで構成される置換基が挙げられ、具体的には、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、これらの基に水酸基やエーテル基、その他の基が導入された基等が挙げられる。
Xとしては、特にアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基が好ましく、Xのアリール基としてはフェニル基が好ましい。該フェニル基は置換基としてアルキル基を有していてもよい。該アルキル基としては、Xのアルキル基として以下に記載するものが挙げられる。
Xのアルキル基としては炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。Xのアルキル基は直鎖アルキル基であっても分岐鎖アルキル基であっても、環状アルキル基であってもよいが、好ましくは直鎖又は分岐鎖の鎖状アルキル基である。
一般式(1A)中の置換基Xの数を表すnは0〜4である。nは好ましくは0〜3、より好ましくは0〜2、特に好ましくは0(非置換)又は1である。
なお、nが2以上の場合、複数の置換基Xは互いに同一であってもよく、異なるものであってもよい。
Xの置換位置としては、−CHOH基に対してオルト位及び/又はパラ位が好ましい。
一般式(1A)で表される芳香族アルコール(B)の具体例としては、ベンジルアルコール(フェニルメタノール)、4−メチルフェニルメタノール、2−メチルフェニルメタノール、3−メチルフェニルメタノール、4−エチルフェニルメタノール、2−エチルフェニルメタノール、4−イソプロピルフェニルメタノール、4−tert−ブチルフェニルメタノール、4−フェニルベンジルアルコール(4−フェニルフェニルメタノール)、3−フェニルフェニルメタノール、2,3−ジメチルフェニルメタノール、2,4−ジメチルフェニルメタノール、2−メチル−3−フェニルフェニルメタノール、3,5−tert−ブチルフェニルメタノール、2,4,6−トリメチルフェニルメタノール、2,3,5,6−テトラメチルフェニルメタノール等が挙げられる。
これらのうち、好ましくはベンジルアルコール、4−フェニルベンジルアルコール、2−メチルフェニルメタノール、4−メチルフェニルメタノール、4−tert−ブチルフェニルメタノール、1,4−ベンゼンジメタノールであり、より好ましくはベンジルアルコール、4−フェニルベンジルアルコールである。
これらの芳香族アルコール(B)は、1種類を単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
これらの芳香族アルコール(B)には、通常、その製造工程で用いられる触媒に起因して、ナトリウム(Na)やカリウム(K)が含まれている。
例えば、ベンジルアルコールの製造方法としては、塩基性触媒の存在下に、酢酸ベンジルとメタノールとを反応させる方法や、塩化ベンジルや酢酸ベンジルの加水分解、またはベンズアルデヒドからのカニッツァロ反応などがあるが、これらの反応では、塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物や、ナトリウムアルコラート、カリウムアルコラート等のアルコラート等、特に水酸化ナトリウムが好適に使用される。
このため、製造されたベンジルアルコールには、触媒由来のNaやKが残留して含まれるようになる。
また、4−フェニルベンジルアルコールは、4−フェニルベンジルアセテートとメタノールとの反応、塩化4−フェニルベンジルや酢酸4−フェニルベンジルの加水分解、または4−フェニルベンズアルデヒドからのカニッツァロ反応などによって製造され、この4−フェニルベンジルアルコールの製造においても、上記ベンジルアルコールの製造用触媒と同様の塩基性触媒が用いられるため、製造された4−フェニルベンジルアルコールにNaやKが含まれるものとなる。
その他の芳香族アルコール(B)についても同様である。
前掲の特許文献2においては、このようにして芳香族アルコール中に含まれるNaやKが、得られるポリカーボネート樹脂組成物の色相や耐熱性に悪影響を及ぼすことは認識されていなかったが、本発明者により芳香族アルコール中のNaやKが、色相や耐熱性に悪影響を及ぼすことが初めて見出された。
本発明では、Na量が200ppm以下でありかつK量が200ppm以下の芳香族アルコール(B)を用いることで、芳香族アルコール(B)に含まれてポリカーボネート樹脂組成物に混入する色相及び耐熱性の低下を防止する。
芳香族アルコール(B)中のNa、K量は少ないほど好ましく、それぞれ100ppm以下、より好ましくはそれぞれ1ppm以下である。
また、芳香族アルコール(B)中のNaとKの合計の含有量は300ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、1ppm以下であることが特に好ましい。
本発明者は、Na、K含有量を低減した芳香族アルコール(B)を用いることにより、幅広い温度域で成形しても透明でかつ色相の良好な成形品を製造することができるポリカーボネート樹脂組成物を得ることができることを見出した。よって、芳香族アルコール(B)中のNa、K量は上記上限以下であることが好ましい。
なお、芳香族アルコール(B)中のNa、K量及び合計含有量は少ないほど色相及び耐熱性の観点からは好ましく、その下限には特に制限はない。従って、Na及びKを実質的に含有しないものであってもよいが、水洗や、蒸留等の精製処理で、芳香族アルコール(B)中のNa、K量を0ppmとすることは実用上困難であるため、本発明で用いる芳香族アルコール(B)のNa、K量は、通常0ppmを超えるものとなる。
Na、Kが上記上限以下の芳香族アルコールは、例えば、製造された芳香族アルコール(B)を水洗したり、吸着処理、蒸留等の精製処理を施すことで得ることができる。
水洗の場合は、水洗回数を増やすことで芳香族アルコール(B)中のNa、K量をより少なくすることができる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、このようにNa、K量が所定値以下の芳香族アルコール(B)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して0.001〜1質量部含有する。ポリカーボネート樹脂組成物中の芳香族アルコール(B)の含有量が少ないと、芳香族アルコール(B)を含むことによる色相改善効果を十分に得ることができない。ポリカーボネート樹脂組成物中の芳香族アルコール(B)の含有量が過度に多いと成形品が白濁したり、熱や光に対する耐久性が悪化するおそれがある。このため、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記範囲で芳香族アルコール(B)を含むものとする。
<リン系安定剤(C)>
リン系安定剤(C)としては、好ましくは、スピロ環骨格を有するホスファイト系安定剤(C−I)(以下、単に「ホスファイト系安定剤(C−I)」と称す場合がある。)と、下記一般式(II)で表されるホスファイト系安定剤(C−II)(以下、単に「ホスファイト系安定剤(C−II)」と称す場合がある。)等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができるが、特にホスファイト系安定剤(C−I)とホスファイト系安定剤(C−II)を併用することが好ましい。
Figure 2021084937
(式(II)中、R25〜R29は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
<ホスファイト系安定剤(C−I)>
ホスファイト系安定剤(C−I)としては、スピロ環骨格を有するホスファイト系化合物であればよく、特に制限はないが、例えば、下記一般式(I)で表されるものが好ましい。
Figure 2021084937
(式(I)中、R10A及びR10Bはそれぞれ独立に、炭素原子数1〜30のアルキル基又は炭素原子数6〜30のアリール基を表す。)
上記一般式(I)中、R10A,R10B表されるアルキル基は、それぞれ独立に、炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基であることが好ましい。R10A,R10Bがアリール基である場合、以下の一般式(I−1)、(I−2)、又は(I−3)のいずれかで表されるアリール基が好ましい。
Figure 2021084937
(式(I−1)中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表す。式(I−2)中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
ホスファイト系安定剤(C−I)としては、例えば、下記構造式(I−A)で表されるビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが挙げられる。
Figure 2021084937
ホスファイト系安定剤(C−I)としてはまた、下記一般式(I−B)で表される化合物も好ましいものとして挙げられる。
Figure 2021084937
(式(I−B)中、R11〜R18は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を示し、R19〜R22は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、a〜dは、それぞれ独立に0〜3の整数を示す。)
上記一般式(I−B)において、R11〜R18は、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることが好ましく、また、a〜dは、0であることが好ましい。
上記一般式(I−B)で表される化合物としては、下記構造式(I−b)で表されるビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましい。
Figure 2021084937
上記のホスファイト系安定剤(C−I)は、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
<ホスファイト系安定剤(C−II)>
ホスファイト系安定剤(C−II)は、前記一般式(II)で表されるものである。
前記一般式(II)中、R25〜R29で表されるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基などが挙げられる。
ホスファイト系安定剤(C−II)としては、特に、下記構造式(II−A)で表される(トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましい。
Figure 2021084937
上記のホスファイト系安定剤(C−II)は、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
<ポリカーボネート樹脂組成物中のリン系安定剤(C)の含有量>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物において、リン系安定剤(C)の含有量はポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して0.003〜0.5質量部であり、好ましくは0.005〜0.45質量部、より好ましくは0.01〜0.4質量部、さらに好ましくは0.03〜0.3質量部である。ポリカーボネート樹脂組成物中のリン系安定剤(C)の含有量が上記下限未満では、リン系安定剤(C)を含有することによる色相の改善効果を得ることができず、上記上限を超えるとかえって色相が低下するおそれがあり、また成形時のガスが多くなったり、モールドデポジットによる転写不良が起こったりするため、得られる成形品の光透過率が低下するおそれがある。
ホスファイト系安定剤(C−I)とホスファイト系安定剤(C−II)を併用する場合、同様の理由から、本発明のポリカーボネート樹脂組成物中のホスファイト系安定剤(C−I)の含有量はポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して好ましくは0.001〜0.5質量部、より好ましくは0.003〜0.3質量部、さらに好ましくは0.005〜0.2質量部、ホスファイト系安定剤(C−II)の含有量はポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して好ましくは0.001〜0.5質量部、より好ましくは0.003〜0.3質量部、さらに好ましくは0.005〜0.2質量部であって、これらの合計が上記範囲内であることが好ましい。
また、ホスファイト系安定剤(C−I)とホスファイト系安定剤(C−II)とを併用することによる効果をより有効に得るために、本発明のポリカーボネート樹脂組成物中のホスファイト系安定剤(C−I)とホスファイト系安定剤(C−II)の含有質量比は1:1〜15、特に1:1.5〜10、とりわけ1:2〜5となるような量であることが好ましい。
<エポキシ化合物(D)・オキセタン化合物(E)>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物はさらにエポキシ化合物(D)及び/又はオキセタン化合物(E)を含有してもよい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物がエポキシ化合物(D)及び/又はオキセタン化合物(E)を含有することにより、良好な色相と高度の耐熱変色性を一層向上させることができる。
<エポキシ化合物(D)>
エポキシ化合物(D)としては、1分子中にエポキシ基を1個以上有する化合物が用いられる。具体的には、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、2,3−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4−(3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシル)ブチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチレンオキシド、シクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−6’−メチルシロヘキシルカルボキシレート、ビスフェノール−Aジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノール−Aグリシジルエーテル、フタル酸のジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸のジグリシジルエステル、ビス−エポキシジシクロペンタジエニルエーテル、ビス−エポキシエチレングリコール、ビス−エポキシシクロヘキシルアジペート、ブタジエンジエポキシド、テトラフェニルエチレンエポキシド、オクチルエポキシタレート、エポキシ化ポリブタジエン、3,4−ジメチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、3,5−ジメチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、3−メチル−5−t−ブチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、オクタデシル−2,2−ジメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、N−ブチル−2,2−ジメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、シクロヘキシル−2−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、N−ブチル−2−イソプロピル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、オクタデシル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、2−エチルヘキシル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4,6−ジメチル−2,3−エポキシシクロヘキシル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4,5−エポキシ無水テトラヒドロフタル酸、3−t−ブチル−4,5−エポキシ無水テトラヒドロフタル酸、ジエチル4,5−エポキシ−シス−1,2−シクロヘキシルジカルボキシレート、ジ−n−ブチル−3−t−ブチル−4,5−エポキシ−シス−1,2−シクロヘキシルジカルボキシレート、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油などを好ましく例示することができる。これらのうち、特に、1分子中にエポキシ基を2個以上有する脂環式エポキシ化合物が好ましい。
エポキシ化合物(D)は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<オキセタン化合物(E)>
オキセタン化合物としては、分子内に1以上のオキセタン基を有する化合物であればいずれも使用することができ、分子中にオキセタン基を1個有するモノオキセタン化合物および分子中にオキセタン基を2個以上有する2官能以上のポリオキセタン化合物のいずれをも使用することができる。
モノオキセタン化合物としては、下記の一般式(III−a)又は(III−b)で表される化合物などを好ましく例示することができる。ポリオキセタン化合物としては下記一般式(IV)で表される分子中にオキセタン基を2個有するジオキセタン化合物などを好ましく例示することができる。
Figure 2021084937
(式中、Rはアルキル基を、Rはアルキル基またはフェニル基を、Rは芳香環を有していてもよい2価の有機基をそれぞれ示し、nは0または1を示す。)
上記一般式(III−a)、(III−b)及び(IV)において、Rはアルキル基であるが、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、メチル基またはエチル基が好ましく、特に好ましくはエチル基である。
上記一般式(III−b)において、Rはアルキル基またはフェニル基であるが、好ましくは炭素数2〜10のアルキル基であり、鎖状のアルキル基、分岐したアルキル基または脂環式アルキル基のいずれであってもよく、或いはアルキル鎖の途中にエーテル結合(エーテル系酸素原子)を有する鎖状または分岐状のアルキル基であってもよい。Rの具体例としては、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3−オキシペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基などを挙げることができる。そのうちでも、Rは2−エチルヘキシル基、フェニル基、シクロヘキシル基が好ましい。
一般式(III−a)で表される化合物の具体例としては、3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−プロピルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−ノルマルブチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−プロピルオキセタンなどを好ましく挙げることができる。そのうちでも、3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン等が特に好ましい。
一般式(III−b)で表される化合物の具体例としては、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン等が特に好ましい。
上記一般式(IV)において、Rは芳香環を有していてもよい2価の有機基であるが、その例としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ネオペンチレン基、n−ペンタメチレン基、n−ヘキサメチレン基等の炭素数1〜12の直鎖状または分岐状のアルキレン基、フェニレン基、式:−CH−Ph−CH−または−CH−Ph−Ph−CH−(ここで、Phはフェニル基を示す)で表される2価の基、水素添加ビスフェノールA残基、水素添加ビスフェノールF残基、水素添加ビスフェノールZ残基、シクロヘキサンジメタノール残基、トリシクロデカンジメタノール残基などを挙げることができる。
一般式(IV)で表される化合物の具体例としては、ビス(3−メチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3−プロピル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3−ブチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン等を特に好ましく挙げることができる。
オキセタン化合物(E)は、単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
<エポキシ化合物(D)及び/又はオキセタン化合物(E)の含有量>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物がエポキシ化合物(D)及び/又はオキセタン化合物(E)を含む場合、その含有量(エポキシ化合物(D)とオキセタン化合物(E)を含む場合はその合計の含有量)は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して好ましくは0.01〜0.5質量部、より好ましくは0.003〜0.3質量部、特に好ましくは0.005〜0.2質量部である。エポキシ化合物(D)及び/又はオキセタン化合物(E)の含有量が上記下限未満の場合は、エポキシ化合物(D)及び/又はオキセタン化合物(E)を含むことによる色相の向上効果を十分に得ることができず、上記上限を超えるとかえって色相が低下し、また湿熱安定性も低下する傾向がある。
<その他の成分>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、任意成分としてさらに酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、染顔料、難燃剤、耐衝撃改良剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、相溶化剤、充填剤等が配合されてもよい。
任意成分の一例として、以下に示すポリアルキレングリコール化合物が挙げられる。
ポリアルキレングリコール化合物としては、下記一般式(2)で表される直鎖アルキレンエーテル単位(P1)と下記一般式(2A)〜(2D)で表される単位から選ばれる分岐アルキレンエーテル単位(P2)を有するポリアルキレングリコール共重合体(CP)が好ましいものとして挙げられる。
Figure 2021084937
一般式(2)中、tは3〜6の整数を示す。
Figure 2021084937
一般式(2A)〜(2D)中、R31〜R40は各々独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。それぞれの一般式(2A)〜(2D)においてR31〜R40の少なくとも1つは炭素数1〜3のアルキル基である。
一般式(2)で示される直鎖アルキレンエーテル単位(P1)としては、それをグリコールとして記載すると、tが3であるトリメチレングリコール、tが4であるテトラメチレングリコール、tが5のペンタメチレングリコール、tが6のヘキサメチレングリコールが挙げられる。好ましくはトリメチレングリコール、テトラメチレングリコールであり、テトラメチレングリコールが特に好ましい。
トリメチレングリコールは、工業的にはエチレンオキシドのヒドロホルミル化により3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドを得、これを水添する方法、又はアクロレインを水和して得た3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドをNi触媒で水素化する方法で製造される。バイオ法により、グリセリン、グルコース、澱粉等を微生物に還元させてトリメチレングリコールを製造することも行われている。
一般式(2A)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(2−メチル)エチレングリコール(プロピレングリコール)、(2−エチル)エチレングリコール(ブチレングリコール)、(2,2−ジメチル)エチレングリコール(ネオペンチルグリコール)などが挙げられる。
一般式(2B)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(2−メチル)トリメチレングリコール、(3−メチル)トリメチレングリコール、(2−エチル)トリメチレングリコール、(3−エチル)トリエチレングリコール、(2,2−ジメチル)トリメチレングリコール、(2,2−メチルエチル)トリメチレングリコール、(2,2−ジエチル)トリメチレングリコール(即ち、ネオペンチルグリコール)、(3,3−ジメチル)トリメチレングリコール、(3,3−メチルエチル)トリメチレングリコール、(3,3−ジエチル)トリメチレングリコールなどが挙げられる。
一般式(2C)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(3−メチル)テトラメチレングリコール、(4−メチル)テトラメチレングリコール、(3−エチル)テトラメチレングリコール、(4−エチル)テトラメチレングリコール、(3,3−ジメチル)テトラメチレングリコール、(3,3−メチルエチル)テトラメチレングリコール、(3,3−ジエチル)テトラメチレングリコール、(4,4−ジメチル)テトラメチレングリコール、(4,4−メチルエチル)テトラメチレングリコール、(4,4−ジエチル)テトラメチレングリコールなどが挙げられ、(3−メチル)テトラメチレングリコールが好ましい。
一般式(2D)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(3−メチル)ペンタメチレングリコール、(4−メチル)ペンタメチレングリコール、(5−メチル)ペンタメチレングリコール、(3−エチル)ペンタメチレングリコール、(4−エチル)ペンタメチレングリコール、(5−エチル)ペンタメチレングリコール、(3,3−ジメチル)ペンタメチレングリコール、(3,3−メチルエチル)ペンタメチレングリコール、(3,3−ジエチル)ペンタメチレングリコール、(4,4−ジメチル)ペンタメチレングリコール、(4,4−メチルエチル)ペンタメチレングリコール、(4,4−ジエチル)ペンタメチレングリコール、(5,5−ジメチル)ペンタメチレングリコール、(5,5−メチルエチル)ペンタメチレングリコール、(5,5−ジエチル)ペンタメチレングリコールなどが挙げられる。
以上、分岐アルキレンエーテル単位(P2)を構成する一般式(2A)〜(2D)で表される単位を便宜的にグリコールを例として記載したが、これらグリコールに限らず、これらのアルキレンオキシドや、これらのポリエーテル形成性誘導体であってもよい。
ポリアルキレングリコール共重合体(CP)として好ましいものを挙げると、テトラメチレンエーテル(テトラメチレングリコール)単位と一般式(2A)で表される単位からなる共重合体が好ましく、特にテトラメチレンエーテル(テトラメチレングリコール)単位と2−メチルエチレンエーテル(プロピレングリコール)単位及び/又は(2−エチル)エチレングリコール(ブチレングリコール)単位からなる共重合体が好ましい。テトラメチレンエーテル単位と2,2−ジメチルトリメチレンエーテル単位、即ちネオペンチルグリコールエーテル単位からなる共重合体も好ましい。
直鎖アルキレンエーテル単位(P1)と分岐アルキレンエーテル単位(P2)を有するポリアルキレングリコール共重合体(CP)を製造する方法は公知であり、上記したようなグリコール、アルキレンオキシドあるいはそのポリエーテル形成性誘導体を、通常、酸触媒を用いて重縮合させることによって製造することができる。
ポリアルキレングリコール共重合体(CP)は、ランダム共重合体やブロック共重合体であってもよい。
ポリアルキレングリコール共重合体(CP)の末端基はヒドロキシル基であることが好ましい。ポリアルキレングリコール共重合体(CP)は、その片末端あるいは両末端がアルキルエーテル、アリールエーテル、アラルキルエーテル、脂肪酸エステル、アリールエステルなどで封鎖されていてもその性能発現に影響はなく、エーテル化物又はエステル化物が同様に使用できる。
アルキルエーテルを構成するアルキル基としては、直鎖状又は分岐状のいずれでもよく、炭素数1〜22のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ラウリル基、ステアリル基等が挙げられる。アルキルエーテルとしては、ポリアルキレングリコールのメチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル、ラウリルエーテル、ステアリルエーテル等が好ましく例示できる。
アリールエーテルを構成するアリール基としては、好ましくは炭素数6〜22、より好ましくは炭素数6〜12、さらに好ましくは炭素数6〜10のアリール基が好ましく、例えばフェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられ、フェニル基、トリル基等が好ましい。アラルキル基としては、好ましくは炭素数7〜23、より好ましくは炭素数7〜13、さらに好ましくは炭素数7〜11のアラルキル基が好ましく、例えばベンジル基、フェネチル基等が挙げられ、ベンジル基が特に好ましい。
脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、直鎖状又は分岐状のいずれでもよく、飽和脂肪酸であってもよく不飽和脂肪酸であってもよい。
脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、炭素数1〜22の1価又は2価の脂肪酸、例えば、1価の飽和脂肪酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸や、1価の不飽和脂肪酸、例えば、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸、また炭素数10以上の二価の脂肪酸、例えば、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、タプシア酸およびデセン二酸、ウンデセン二酸、ドデセン二酸が挙げられる。
アリールエステルを構成するアリール基としては、好ましくは炭素数6〜22、より好ましくは炭素数6〜12、さらに好ましくは炭素数6〜10のアリール基が好ましく、例えばフェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられ、フェニル基、トリル基等が好ましい。末端封止する基は、アラルキル基であってもポリカーボネート樹脂(A)と良好な相溶性を示すことから、アリール基と同様の作用を発現できる。アラルキル基としては、好ましくは炭素数7〜23、より好ましくは炭素数7〜13、さらに好ましくは炭素数7〜11のアラルキル基が好ましく、例えばベンジル基、フェネチル基等が挙げられ、ベンジル基が特に好ましい。
ポリアルキレングリコール共重合体(CP)としては、なかでもテトラメチレンエーテル単位と2−メチルエチレンエーテル単位からなる共重合体、テトラメチレンエーテル単位と3−メチルテトラメチレンエーテル単位からなる共重合体、テトラメチレンエーテル単位と2,2−ジメチルトリメチレンエーテル単位からなる共重合体が特に好ましい。このようなポリアルキレングリコール共重合体の市販品としては、日油社製商品名(以下同様)「ポリセリンDCB」、保土谷化学社製「PTG−L」、旭化成せんい社製「PTXG」などが挙げられる。
テトラメチレンエーテル単位と2,2−ジメチルトリメチレンエーテル単位からなる共重合体は特開2016−125038号公報に記載の方法で製造することも可能である。
ポリアルキレングリコール化合物としては、下記一般式(3A)で表される分岐型ポリアルキレングリコール化合物又は下記一般式(3B)で表される直鎖型ポリアルキレングリコール化合物も好ましいものとして挙げられる。なお、下記一般式(3A)で表される分岐型ポリアルキレングリコール化合物又は下記一般式(3B)で表される直鎖型ポリアルキレングリコール化合物は、他の共重合成分との共重合体であってもよいが、単独重合体が好ましい。
Figure 2021084937
一般式(3A)中、Rは炭素数1〜3のアルキル基を示す。QおよびQは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜23の脂肪族アシル基、又は炭素数1〜23のアルキル基を示す。rは10〜400の整数を示す。
Figure 2021084937
一般式(3B)中、Q及びQは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数2〜23の脂肪族アシル基又は炭素数1〜22のアルキル基を示す。pは2〜6の整数、qは6〜100の整数を示す。
一般式(3A)において、整数(重合度)rは、10〜400であるが、好ましくは15〜200、更に好ましくは20〜100である。重合度rが10未満の場合、成形時のガス発生量が多くなり、ガスによる成形不良、例えば、未充填、ガスやけ、転写不良を発生する可能性がある。重合度rが400を超える場合、ポリカーボネート樹脂組成物ペレットの色相を向上させる効果が十分に得られないおそれがある。
分岐型ポリアルキレングリコール化合物としては、一般式(3A)中、Q,Qが水素原子で、Rがメチル基であるポリプロピレングリコール(ポリ(2−メチル)エチレングリコール)やエチル基であるポリブチレングリコール(ポリ(2−エチル)エチレングリコール)が好ましく、特に好ましくはポリブチレングリコール(ポリ(2−エチル)エチレングリコール)である。
一般式(3B)において、q(重合度)は、6〜100の整数であるが、好ましくは8〜90、より好ましくは10〜80である。重合度qが6未満の場合、成形時にガスが発生するので好ましくない。重合度qが100を超える場合、相溶性が低下するので好ましくない。
直鎖型ポリアルキレングリコール化合物としては、一般式(3B)中のQ及びQが水素原子で、pが2であるポリエチレングリコール、pが3であるポリトリメチレングリコール、pが4であるポリテトラメチレングリコール、pが5であるポリペンタメチレングリコール、pが6であるポリヘキサメチレングリコールが好ましく挙げられ、より好ましくはポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールあるいはそのエステル化物又はエーテル化物である。
ポリアルキレングリコール化合物として、その片末端あるいは両末端が脂肪酸またはアルコールで封鎖されていてもその性能発現に影響はなく、脂肪酸エステル化物またはエーテル化物を同様に使用することができる。従って、一般式(3A),(3B)中のQ〜Qは炭素数1〜23の脂肪族アシル基又はアルキル基であってもよい。
脂肪酸エステル化物としては、直鎖状又は分岐状脂肪酸エステルのいずれも使用できる。脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよく不飽和脂肪酸であってもよい。一部の水素原子がヒドロキシル基などの置換基で置換されたものも使用できる。
脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、炭素数1〜23の1価又は2価の脂肪酸、例えば、1価の飽和脂肪酸、具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、1価の不飽和脂肪酸、具体的には、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸、炭素数10以上の二価の脂肪酸、具体的には、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、タプシア酸及びデセン二酸、ウンデセン二酸、ドデセン二酸が挙げられる。
脂肪酸は1種又は2種以上組み合せて使用できる。脂肪酸には、1つ又は複数のヒドロキシル基を分子内に有する脂肪酸も含まれる。
分岐型ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステルの好ましい具体例としては、一般式(3A)において、Rがメチル基、QおよびQが炭素数18の脂肪族アシル基であるポリプロピレングリコールステアレート、Rがメチル基、QおよびQが炭素数22の脂肪族アシル基であるポリプロピレングリコールベヘネートが挙げられる。直鎖型ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステルの好ましい具体例としては、ポリアルキレングリコールモノパルミチン酸エステル、ポリアルキレングリコールジパルミチン酸エステル、ポリアルキレングリコールモノステアリン酸エステル、ポリアルキレングリコールジステアリン酸エステル、ポリアルキレングリコール(モノパルミチン酸・モノステアリン酸)エステル、ポリアルキレングリコールベヘネート等が挙げられる。
ポリアルキレングリコールのアルキルエーテルを構成するアルキル基としては、直鎖状又は分岐状のいずれでもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ラウリル基、ステアリル基等の炭素数1〜23のアルキル基が挙げられる。ポリアルキレングリコール化合物としては、ポリアルキレングリコールのアルキルメチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル、ラウリルエーテル、ステアリルエーテル等が好ましく例示できる。
一般式(3A)で表される分岐型ポリアルキレングリコール化合物の市販品としては、日油社製商品名(以下同様)「ユニオールD−1000」、「ユニオールPB−1000」などが挙げられる。
ポリアルキレングリコール共重合体(CP)、一般式(3A)で表される分岐型ポリアルキレングリコール化合物、一般式(3B)で表される直鎖型ポリアルキレングリコール化合物等のポリアルキレングリコール化合物の数平均分子量は、200〜5,000が好ましく、より好ましくは300以上、さらに好ましくは500以上、より好ましくは4,000以下、さらに好ましくは3,000以下、特に好ましくは2000以下、とりわけ好ましくは1000未満であり、800以下であることが最も好ましい。数平均分子量が上記上限を超えると、相溶性が低下する傾向がある。数平均分子量が上記下限を下回ると成形時にガスが発生する傾向がある。ポリアルキレングリコール化合物の数平均分子量はJIS K1577に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量である。
これらのポリアルキレングリコール化合物は、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物がポリアルキレングリコール化合物を含む場合、その含有量は、用いるポリアルキレングリコール化合物の種類によっても異なるが、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して0.001〜1.0質量部であることが好ましく、0.1〜0.5質量部であることがより好ましい。ポリアルキレングリコール化合物の含有量が上記下限未満であっても、上記上限を超えても、得られる成形品の色相が劣る傾向がある。
<ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造する方法としては、例えば、ポリカーボネート樹脂(A)、芳香族アルコール(B)、リン系安定剤(C)、及び必要に応じて用いられるエポキシ化合物(D)等を前述の所定の割合又は好適割合で用い、これらの各成分を一括又は分割して配合し、溶融混練してペレット化する方法が挙げられる。
各成分の配合方法としては、例えばタンブラー、ヘンシェルミキサー等を使用する方法、フィーダーにより定量的に押出機のホッパーに供給して混合する方法などが挙げられる。溶融混練には、例えば単軸混練押出機、二軸混練押出機等を使用することが好ましく、押出機先端の吐出ノズルから押出された芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のストランドを、引き取りローラーにより引き取り、水槽内を搬送して冷却した後、ペレタイザーで所定の大きさにカットして芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得ることができる。
[成形品]
本発明の成形品は、上述の本発明のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなるものである。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の成形方法には特に制限はないが、例えば、射出成形法、圧縮成形法、射出圧縮成形法などが挙げられ、好ましくは射出成形法である。
なお、成形時の樹脂の熱劣化を抑制し、色相に優れたものを得るために、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を成形する際には、窒素等の不活性ガス雰囲気下で成形を行うことが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる本発明の成形品は、従来品に比べて、色相が著しく良好である上に耐熱性にも優れるため、照明装置の導光部材、特に、デイライトの光源のみならず白熱灯から発生する熱によっても加熱条件下に晒される自動車用照明装置の導光部材として好適に用いることができ、その優れた色相により、導光部材の光伝達効率を長期に亘り高く維持して、導光部材の交換頻度を大幅に低減することができる。
[YI値]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、色相に著しく優れ、後掲の実施例の項に記載される方法に従って、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を用いて射出成形することにより得られた300mm長光路成形品について測定した300mm長のYI値として、通常約18以下、好ましくは16以下、より好ましくは15以下の値を安定して得ることができる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例において用いた材料は次のとおりである。
<ポリカーボネート樹脂(A)>
A1:三菱エンジニアリングプラスチックス社製「ユーピロン(登録商標)H−4000F」:界面重合法で製造されたビスフェノールA型芳香族ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量15,000)
<芳香族アルコール(B)>
B1:ベンジルアルコール
B2:4−フェニルベンジルアルコール
<リン系安定剤(C)>
<ホスファイト系安定剤(C−I)>
C1:ADEKA社製「アデカスタブPEP−36」:ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト
C2:ドーバーケミカル社製「ドバフォスS−9228PC」:ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト
<ホスファイト系安定剤(C−II)>
C3:ADEKA社製「アデカスタブ2112」:トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト
<エポキシ化合物(D)>
D1:ダイセル社製「セロキサイド2021P」:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート
[芳香族アルコール(B)のNa量調整]
芳香族アルコール(B)として用いたベンジルアルコールは、塩基性触媒として水酸化ナトリウムを用いて酢酸ベンジルとメタノールとの反応で製造されたものであり、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC−MS)によるNaの分析でNa量500ppmであることが確認された。
このNa量500ppmのベンジルアルコールを5回水洗することにより、LC−MSによる分析値としてNa量100ppmとしたものと、蒸留を行うことで、LC−MSによるNa量が1≦1ppmのものとを準備した。
また、4−フェニルベンジルアルコールは、塩基性触媒として水酸化ナトリウムを用いて4−フェニルベンジルアセテートとメタノールとの反応で製造されたものであり、LC−MSによるNaの分析でNa量500ppmであることが確認された。
このNa量500ppmの4−フェニルベンジルアルコールを5回水洗することにより、LC−MSによる分析値としてNa量100ppmとしたものと、蒸留を行うことで、LC−MSによるNa量が≦1ppmのものとを準備した。
[実施例1〜10、比較例1〜4及び参考例1]
<ポリカーボネート樹脂組成物の製造>
表1,2に示す成分を表1に示す配合量で配合し、タンブラーミキサーで均一に混合して混合物を得た。この混合物を、フルフライトスクリューとベントとを備えた単軸押出機(いすず化工機社製「VS−40」)に供給し、スクリュー回転数80rpm、吐出量20kg/時間、バレル温度250℃の条件で混練し、押出ノズル先端からストランド状に押出した。押出物を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてカットしてペレット化し、ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得た。
得られたペレットについて以下の測定、評価を行った。
<色相(YI)の評価>
ペレットを120℃で4〜8時間、熱風循環式乾燥機により乾燥した後、射出成形機(東芝機械社製「EC100」)により、280℃の温度で300mm長光路成形品(6mm×4mm×300mm、L/d=50)を成形した。この成形品について、長光路分光透過色計(日本電色工業社製「ASA1」)を使用して300mm長のYI値を測定した。
<ビカット軟化点温度の測定>
ペレットを120℃で4〜8時間、熱風循環式乾燥機により乾燥した後、射出成形機(東芝機械社製「EC100」)により、280℃の温度でISO試験片形状(80mm×10mm×4mmt)を成形した。この成形品を恒温恒湿試験機により温度110℃、湿度85%の雰囲気下に100時間保存した後、ビカット試験機(安田精機製作所製「No.148全自動ヒートデストーションテスター」)を使用してISO 306を基に制定されたJIS K−7206のA50法に準拠してビカット軟化温度試験を行い、ビカット軟化点温度を測定した。
ビカット軟化点温度は、分子量保持率の目安であり、高温高湿条件下に晒した後のビカット軟化点が高い程、分子量保持率が高く、耐熱性、耐湿熱性に優れる。ポリカーボネート樹脂成形品としての用途において、ビカット軟化点温度は、130℃以上であることが好ましい。
これらの結果を表1,2に示す。
Figure 2021084937
Figure 2021084937
表1,2より、芳香族アルコール(B)中のNa量が多い比較例1〜4は、得られる成形品の色相が劣ると共にビカット軟化点温度も低く、耐熱性にも劣るが、芳香族アルコール(B)中のNa量を所定値以下に低減して用いた本発明のポリカーボネート樹脂組成物によれば、YI値が低く、色相に優れ、またビカット軟化点温度が高く、耐熱性にも優れた成形品を得ることができることが分かる。
参考例1は芳香族アルコール(B)を含まない場合の評価結果を示すものであり、芳香族アルコール(B)を含まないため、芳香族アルコール(B)に由来して混入するNa量の問題がないことから、ビカット軟化点温度が高く、耐熱性に優れるが、YI値が高く、色相に劣る。この参考例1から耐熱性の低下の問題は、芳香族アルコール(B)中のNa、Kによることが分かる。

Claims (6)

  1. ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、下記一般式(1A)で表される芳香族アルコール(B)0.001〜1質量部と、リン系安定剤(C)0.003〜0.5質量部とを含有するポリカーボネート樹脂組成物であって、該芳香族アルコール(B)中のナトリウム(Na)量が200ppm以下であり、かつカリウム(K)量が200ppm以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
    Figure 2021084937
    (一般式(1A)中、Xは、窒素、硫黄、及びハロゲンのいずれの元素も含まない有機基である。nは0〜4の整数を表し、nが2以上の場合、n個のXは同一であってもよく異なるものであってもよい。)
  2. 前記芳香族アルコール(B)中のナトリウム(Na)とカリウム(K)の合計量が300ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  3. 前記芳香族アルコール(B)が、ベンジルアルコール(フェニルメタノール)、4−フェニルベンジルアルコール(4-フェニルフェニルメタノール)、2−メチルフェニルメタノール、4−メチルフェニルメタノール、4−tert−ブチルフェニルメタノール及び1,4−ベンゼンジメタノールよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 前記芳香族アルコール(B)が、ベンジルアルコール(フェニルメタノール)および/又は4−フェニルベンジルアルコール(4-フェニルフェニルメタノール)であることを特徴とする請求項3に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  5. さらに、エポキシ化合物(D)を0.01〜0.5質量部含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
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