JP2021084065A - 塗布器 - Google Patents
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Abstract
【課題】塗布器において、スリットが広くなっても、その開口で液面を容易に保持する。【解決手段】塗布器12は、液が溜められる第1方向に長い液溜め空間40と、前記液溜め空間40に一方側が開口し外部空間に他方側が開口する前記第1方向に長いスリット42と、を備える。前記スリット42は、前記第1方向に直交する第2方向に対向する第一スリット壁面51及び第二スリット壁面52を有する。前記第一スリット壁面51と前記第二スリット壁面52との間に前記第1方向に長い中継部材30が設けられている。前記スリット42の開口で形成される液面形状が前記中継部材30を介して複数のメニスカス形状を有するように、当該中継部材30は、前記第一スリット壁面51及び前記第二スリット壁面52それぞれと前記第2方向に間隔をあけて設けられている。【選択図】 図3
Description
本発明は、基材に液を塗布するために用いられる塗布器に関する。
例えば、半導体の製造工程では、半導体ウエハに液体の機能性材料(以下、単に「液」と称する。)が塗布される。近年、基材に塗布する液として、カラーレジスト等の低粘度の液以外に、ポリイミド等の高粘度の液等、様々な粘度の液が用いられる。
半導体ウエハに液を塗布する技術としてスピンコートが知られている。しかし、粘度が比較的高い液の場合、スピンコートによる塗布は困難である。そこで、様々な粘度の液を基材に塗布することが可能である装置として、塗布器を備えた塗布装置が用いられる。塗布器は、液が溜められる一方向に長い液溜め空間(「マニホールド」とも称される。)と、一方向に長いスリットとを有し、液溜め空間に一旦溜められた液がスリットから吐出される。特許文献1には、前記のような塗布器を備えた塗布装置が開示されている。
特許文献1に開示の塗布装置では、塗布器と基材とを相対移動させながら、塗布器のスリットから液が吐出され、これにより、基材への液の塗布が可能となる。このような塗布装置によれば、低粘度の液のみならず、高粘度の液の塗布が可能である。
更に、前記のような塗布器を用いて行われる塗布技術として、キャピラリ塗布が注目されている。キャピラリ塗布では、塗布器のスリットから吐出させた液を基材に付着させ、その状態で塗布器と基材とを相対移動させる。すると、基材に付着した液によりスリットから更に液が引き出され、引き出された液が基材に塗布される。
更に、前記のような塗布器を用いて行われる塗布技術として、キャピラリ塗布が注目されている。キャピラリ塗布では、塗布器のスリットから吐出させた液を基材に付着させ、その状態で塗布器と基材とを相対移動させる。すると、基材に付着した液によりスリットから更に液が引き出され、引き出された液が基材に塗布される。
キャピラリ塗布では、塗布器内の液の圧力(内圧)が、大気圧に対して負圧となるように制御される。また、スリットから液を吐出させない状態では、液の表面張力によってスリットの開口で液面が保持されるように、塗布器内の液の圧力が調整される。仮に、スリットの開口で液面が保持されず、液が塗布器内に吸い込まれると、それにあわせてエアも塗布器内に引き込まれてしまう。すると、その後、塗布作業を行った際、基材に塗布した液の膜にエアが含まれ、不良品となる可能性がある。
ここで、基材に塗布する液として、例えば高粘度の液が用いられ、しかも、その液により基材上に形成される膜を厚くするためには、スリットを広くすればよい。しかし、スリットを広くすると、塗布器内の液の圧力を大気圧に対して負圧に設定した際、スリット内部の液が液溜め空間(マニホールド)に引き込まれやすくなる。つまり、スリットを広くすると、スリットの開口で液面が保持され難くなる。
そこで、本開示は、スリットが広くなっても、その開口で液面を容易に保持することが可能となる塗布器を提供することを目的とする。
本開示の塗布器は、液が溜められる第1方向に長い液溜め空間と、前記液溜め空間に一方側が開口し外部空間に他方側が開口する前記第1方向に長いスリットと、を備え、前記スリットは、前記第1方向に直交する第2方向に対向する第一スリット壁面及び第二スリット壁面を有し、前記第一スリット壁面と前記第二スリット壁面との間に前記第1方向に長い中継部材が設けられていて、前記スリットの開口で形成される液面形状が前記中継部材を介して複数のメニスカス形状を有するように、当該中継部材は、前記第一スリット壁面及び前記第二スリット壁面それぞれと前記第2方向に間隔をあけて設けられている。
前記構成を備える塗布器によれば、スリットが広くなっても、つまり、スリットの第2方向の寸法が大きくなっても、スリットの開口で形成される液面形状は、中継部材を介して複数のメニスカス形状を有するので、スリットの開口で液面が保持され易くなる。
スリットにおいて、中継部材が可能な限り流路抵抗とならないように、中継部材の断面を小さくするのが好ましい。しかし、この場合、中継部材の剛性は低く、液溜め空間からスリットへと液が流れると、中継部材がスリットの開口側に変位することが考えられる。その変位によって中継部材のうち、例えば第1方向の中央部が外部空間に露出すると、スリットの開口から吐出させた液の流れが、中継部材が原因となって不均一になる可能性がある。
そこで、好ましくは、前記中継部材は、前記スリットの開口よりも、前記液溜め空間側の位置に設けられている。
前記構成によれば、流れる液によって中継部材がスリットの開口側に押されても、中継部材の例えば第1方向の中央部が外部空間に露出し難くなり、スリットの開口から吐出させた液の流れが不均一になり難い。
前記構成によれば、流れる液によって中継部材がスリットの開口側に押されても、中継部材の例えば第1方向の中央部が外部空間に露出し難くなり、スリットの開口から吐出させた液の流れが不均一になり難い。
また、好ましくは、前記第1方向及び前記第2方向の双方に直交しかつ前記液溜め空間から前記スリットの開口に向かう方向を第3方向と定義した場合に、前記中継部材は、前記第3方向に向かうにしたがって前記第2方向に細くなる先部を有する。
前記構成によれば、中継部材の先端が先鋭となるため、液溜め空間からスリットに液が流れ液が中継部材を通過すると、その液の合流を促し、合流部分に気泡が発生するのを抑えることができる。このため、液が基材に塗布されて形成される膜にエアが混入するのを防止することが可能となる。
前記構成によれば、中継部材の先端が先鋭となるため、液溜め空間からスリットに液が流れ液が中継部材を通過すると、その液の合流を促し、合流部分に気泡が発生するのを抑えることができる。このため、液が基材に塗布されて形成される膜にエアが混入するのを防止することが可能となる。
また、好ましくは、前記第1方向及び前記第2方向の双方に直交しかつ前記液溜め空間から前記スリットの開口に向かう方向を第3方向と定義した場合に、前記中継部材は、前記第3方向と反対方向に向かうにしたがって前記第2方向に細くなる基部を有する。
前記構成によれば、スリットを通過する液の流れが中継部材によって乱れ難くなる。
前記構成によれば、スリットを通過する液の流れが中継部材によって乱れ難くなる。
また、好ましくは、前記スリットが開口する塗布器先端面は、当該スリットの開口を挟んで前記第2方向側の第一先端面と、当該開口を挟んで前記第2方向と反対側の第二先端面と、を有し、前記第一先端面と前記第二先端面とは共通する仮想平面上に配置されている。
前記構成によれば、中継部材を挟んで両側を通過した液が、同じ流れの態様でスリットの開口から吐出される。
前記構成によれば、中継部材を挟んで両側を通過した液が、同じ流れの態様でスリットの開口から吐出される。
また、好ましくは、前記中継部材は、前記第2方向に均等配置されている。
前記構成によれば、中継部材を挟む両側を流れる液の流路幅が均等となる。
前記構成によれば、中継部材を挟む両側を流れる液の流路幅が均等となる。
本開示の発明によれば、塗布器が備えるスリットが広くなっても、その開口で液面を容易に保持することが可能となる。
〔塗布装置の構成〕
図1は、塗布器を備える塗布装置を側方から見た概略構成図である。図1に示す塗布装置10は、基材7に液を塗布するための装置である。そのために、塗布装置10は、塗布器12と、基材7を保持するステージ14と、塗布器12と基材7(ステージ14)とを相対的に移動させるための移動機構16と、塗布器12と繋がり液を塗布器12に供給可能である供給機構22と、制御部20とを備える。
図1は、塗布器を備える塗布装置を側方から見た概略構成図である。図1に示す塗布装置10は、基材7に液を塗布するための装置である。そのために、塗布装置10は、塗布器12と、基材7を保持するステージ14と、塗布器12と基材7(ステージ14)とを相対的に移動させるための移動機構16と、塗布器12と繋がり液を塗布器12に供給可能である供給機構22と、制御部20とを備える。
図2は、塗布器12及び基材7の斜視図である。本開示の基材7は、半導体ウエハのような円形の基板である。なお、基材7は、円形の基板である以外に、正方形又は矩形の基板であってもよく、また、半導体ウエハのような枚葉部材ではなく、連続するシート状の部材であってもよい。図1は、塗布のための初期処理として、後述する液付け動作の状態を示している。図2は、塗布の途中の状態を示している。
塗布器12は、スリットダイとも呼ばれ、一方向に長い部材である。前記一方向、つまり、塗布器12の長手方向を「第1方向」と定義する。各図において「第1方向」を矢印Xで示している。塗布器12は、塗布装置10が備える支持部24(図1参照)に搭載されている。
塗布器12と基材7(ステージ14)とは移動機構16によって相対的に移動する。本開示では、固定状態にある塗布器12に対して、基材7を保持するステージ14が移動する。移動する基材7に対して相対的な塗布器12の移動方向が塗布方向となり、第1方向に直交する方向となる。第1方向に直交する塗布方向を「第2方向」と定義する。各図において「第2方向」を矢印Yで示している。
第1方向及び第2方向の双方に直交する方向であり、塗布器12が有する後述する液溜め空間40からスリット42の開口に向かう方向を「第3方向」と定義する。各図において「第3方向」を矢印Zで示している。
本開示の発明では、第1方向及び第2方向は、水平面に沿った方向となり、第3方向は、鉛直線に沿って上から下に向かう方向となる。
本開示の発明では、第1方向及び第2方向は、水平面に沿った方向となり、第3方向は、鉛直線に沿って上から下に向かう方向となる。
図3は、塗布器12の断面図である。塗布器12の内部に、液が溜められる液溜め空間40と、スリット42とが形成されている。液溜め空間40及びスリット42は、第1方向(X方向)に沿って長く直線状に形成されている。スリット42に中継部材30が設けられている。図3では、スリット42及び中継部材30の説明を容易とするために、これらは実際の寸法よりも大きく(特にY方向に大きく)記載されている。中継部材30は、第1方向(X方向)に沿って長く直線状の部材である。中継部材30については後にも説明する。
図3において、スリット42の一方側(図3では上側)は、液溜め空間40に開口し、液溜め空間40と繋がっている。スリット42の他方側(図3では下側)は、塗布器12の先端面46で開口している。つまり、スリット42の他方側は、外部空間に開口している。スリット42の開口は「吐出口44」と称される。吐出口44の第1方向(X方向)の寸法は、基材7の直径(幅寸法)よりも大きい(図2参照)。液溜め空間40に一旦溜められた液が、スリット42を通じて吐出口44から外部空間へ吐出される。塗布器12の先端面46は、基材7の表面8と対向しており、吐出口44から吐出された液は基材7に塗布される。
図1において、ステージ14は、基材7を例えばエアの吸引によって保持する。基材7に液を塗布する際、ステージ14の上方に塗布器12が位置する。本開示の移動機構16は、固定状態にある塗布器12に対して、ステージ14を移動させる構成を備える。具体的に説明すると、移動機構16は、ステージ14を移動させるアクチュエータ37を有する。アクチュエータ37は、例えばリニアアクチュエータである。移動機構16により、塗布器12に対してステージ14は水平方向に移動する。基材7の表面8が、液が塗布される被塗布面であり、表面8が水平状態となって基材7がステージ14と共に移動する。移動機構16の動作は制御部20によって制御される。
なお、本開示の場合とは反対に、ステージ14が固定状態であって塗布器12が移動してもよい。つまり、移動機構16は、基材7と塗布器12とを相対的に移動させる構成であればよい。塗布器12の移動方向が塗布方向であり、矢印Yで示す第2方向となる。
以上より、塗布器12に対して基材7が移動しながら、吐出口44から液を吐出して、後にも説明するが、キャピラリ塗布を行うことが可能となる。
また、塗布器12の吐出口44と、ステージ14上の基材7の表面8との間隔(隙間G)を調整するために、塗布器12は、表面8に直交する方向(第3方向及びその反対方向)に移動可能となって支持部24に搭載されている。
また、塗布器12の吐出口44と、ステージ14上の基材7の表面8との間隔(隙間G)を調整するために、塗布器12は、表面8に直交する方向(第3方向及びその反対方向)に移動可能となって支持部24に搭載されている。
図1において、供給機構22は、塗布器12に液を供給することができる。供給機構22は、液を溜めているタンク35と、タンク35と塗布器12とを繋ぐ配管34とを有する。塗布器12から液が吐出されると、つまり、液が消費されると、その吐出(消費)にあわせてタンク35から液が塗布器12に供給される(補充される)。本開示の塗布装置10が行う基材7への液の塗布は、後にも説明するキャピラリ塗布である。このために、供給機構22は、タンク35に溜められている液の圧力を調整する調整部36を有する。
調整部36は、エアを吸引するポンプ(真空ポンプ)及びレギュレータを有する。調整部36は、タンク35の液を大気圧に対して負圧とする。これにより、塗布器12内の液も大気圧に対して負圧となる。塗布器12内の液が負圧となっている状態では、吐出口44から液は吐出されない。
また、調整部36は、タンク35の液の圧力を調整することによって、塗布器12内の液の圧力を大気圧と同じ又は大気圧よりも僅かに高い圧力に調整することも可能である。塗布器12内の圧力が大気圧と同じ又は大気圧よりも僅かに高い圧力になると、塗布器12内の液が吐出口44から吐出される。これにより、後に説明するが、塗布器12内の液を基材7の縁部9(図1参照)に付着させることが可能となる。液を基材7の縁部9に付着させる動作は「液付け動作」と称される。
また、調整部36は、タンク35の液の圧力を調整することによって、塗布器12内の液の圧力を大気圧と同じ又は大気圧よりも僅かに高い圧力に調整することも可能である。塗布器12内の圧力が大気圧と同じ又は大気圧よりも僅かに高い圧力になると、塗布器12内の液が吐出口44から吐出される。これにより、後に説明するが、塗布器12内の液を基材7の縁部9(図1参照)に付着させることが可能となる。液を基材7の縁部9に付着させる動作は「液付け動作」と称される。
液付け動作の前、及び、基材7に液を塗布している途中では、後にも説明するが、調整部36のレギュレータは、塗布器12内の液の圧力が所定の値(負圧)に保たれるように、タンク35に溜めている液の圧力を調整する。調整部36は、塗布器12内の液の圧力を大気圧に対して負圧に調整可能であり、これにより、塗布器12によるキャピラリ塗布が可能となる。キャピラリ塗布については後にも説明する。調整部36の動作は制御部20によって制御される。
制御部20は、コントロールユニットと呼ばれるものであり、コンピュータを含む。そのコンピュータに記憶されているプログラムが、コンピュータの処理装置(CPU)によって実行されることで、塗布装置10が備える各部の動作タイミングが制御され、基材7に対する液の塗布が行われる。制御部20は、アクチュエータ37の動作を制御することで、塗布器12に対する基材7(ステージ14)の移動の制御を行う機能を有する。制御部20は、調整部36の動作を制御することで、吐出口44から液を吐出させるための制御を行う機能を有する。
〔キャピラリ塗布について〕
本開示の塗布装置10では、塗布器12に対して、ステージ14上の基材7が移動する間に、塗布器12の吐出口44から液が吐出される。本開示の塗布方法は、下向きのキャピラリ塗布方法となる。
本開示の塗布装置10では、塗布器12に対して、ステージ14上の基材7が移動する間に、塗布器12の吐出口44から液が吐出される。本開示の塗布方法は、下向きのキャピラリ塗布方法となる。
キャピラリ塗布について更に説明する。塗布開始の前、調整部36は、タンク35の液の圧力が大気圧よりも低い圧力となるように調整している。このため、塗布器12内の液の圧力も負圧であり、スリット42から液は吐出されない。図1に示すように、塗布器12の吐出口44と、ステージ14上の基材7の表面8のうちの縁部9とを接近させた状態とする。調整部36は、タンク35の液の圧力が大気圧よりも僅かに高い圧力となるように調整する。すると、タンク35から塗布器12に液が供給されると共に、塗布器12の吐出口44から液が吐出される。塗布器12から吐出させた液が基材7の表面8の縁部9に接触すると、図1の拡大図に示すように、吐出口44と基材7の表面8の縁部9との隙間Gに液の液溜まりBが形成される。この液溜まりBを、以下「ビードB」と称する。このようにして液付け動作が行われる。液付け動作の際、基材7の縁部9のうち、塗布始端となる一部の直上に、塗布器12は位置していて、その塗布器12は停止した状態にある。
ビードBが形成されると直ぐに、調整部36は、タンク35の液の圧力が大気圧よりも低い圧力となるように調整する。これにより、スリット42からの液の吐出が一旦停止される。ビードBは形成されたままである。その後、調整部36は、塗布器12内の液の圧力が大気圧よりも低い所定の圧力となるように調整する。そして、移動機構16が、基材7(ステージ14)の移動を開始させる。この移動に伴って、ビードBを継続して形成するため、液が隙間Gに満たされるように塗布器12から引き出され、基材7の表面8に対して連続的に液が塗布される。塗布の間、消費される量の液が、供給機構22から塗布器12に補充される。
このようにキャピラリ塗布は、塗布器12からの液が基材7の表面8に付着した後、液が、吐出口44と表面8との間における毛細管現象(表面張力)、及び、塗布中のビードBに作用するせん断力によって、塗布器12から引き出される。これにより、基材7の表面8に液が塗布される。このようなキャピラリ塗布では、吐出口44からは、直下に基材7が存在している領域に対してのみ液が吐出され、直下に基材7が存在していない領域に対しては液が吐出されない。
以上のように、キャピラリ塗布では、塗布器12のスリット42から吐出させた液を基材7に付着させ、その状態で塗布器12に対して基材7を移動させる。すると、基材7に付着した液によりスリット42から液が更に引き出される力が生じ、引き出された液が基材7に塗布される。つまり、基材7に液が接触した状態で、基材7と塗布器12とが相対移動すると、スリット42から液を引き出す力が生じ、これにより、基材7への液の塗布が行われる。このような液を引き出す力は、基材7の移動により生じる液のせん断力(粘性力)によって生じる。
〔スリット42及び中継部材30について〕
図4は、スリット42の開口側を拡大して示す断面図である。図3及び図4において、スリット42は、第2方向(矢印Y方向)に対向する第一スリット壁面51及び第二スリット壁面52を有する。第一スリット壁面51と第二スリット壁面52との間に中継部材30が設けられている。中継部材30は、第1方向に細長い部材により構成されている。中継部材30は、第一スリット壁面51と第2方向に間隔をあけて設けられていて、第二スリット壁面52と第2方向に間隔をあけて設けられている。
図4は、スリット42の開口側を拡大して示す断面図である。図3及び図4において、スリット42は、第2方向(矢印Y方向)に対向する第一スリット壁面51及び第二スリット壁面52を有する。第一スリット壁面51と第二スリット壁面52との間に中継部材30が設けられている。中継部材30は、第1方向に細長い部材により構成されている。中継部材30は、第一スリット壁面51と第2方向に間隔をあけて設けられていて、第二スリット壁面52と第2方向に間隔をあけて設けられている。
図4に示す形態では、中継部材30は、第一スリット壁面51と第二スリット壁面52との間において、第2方向に均等配置されている。つまり、第一スリット壁面51から中継部材30までの第2方向の距離と、その中継部材30から第二スリット壁面52までの第2方向の距離とが同じである。この構成により、中継部材30を挟む両側を流れる液Lの流路幅(第2方向の幅)が均等となり、流路幅が異なることによる膜品位の低下(膜ムラなど)が発生するのを抑えることができる。
図4は、液Lを吐出口44から吐出させず、液面Fを吐出口44で保持している状態を示している。この状態では、吐出口44に、中継部材30を介して2つのメニスカス形状Q1,Q2(凹曲面形状Q1,Q2)が形成される。つまり、中継部材30によって、スリット42の開口で、表面張力により形成される液面Fの形状は、2つのメニスカス形状Q1,Q2を有する。
図4に示すように、スリット42が開口する塗布器12の先端面46は、スリット42の開口、つまり吐出口44を挟んで、第2方向側(図4では左側)の第一先端面46aと、吐出口44を挟んで第2方向と反対側(図4では右側)の第二先端面46bとを有する。第一先端面46aと第二先端面46bとは共通する仮想平面(仮想水平面)S上に配置されている。そして、このような吐出口44よりも液溜め空間40側の位置に、中継部材30は設けられている。つまり、中継部材30の第3方向の先端(下端)30eは、吐出口44(前記仮想平面S)から外部空間側へはみ出さずに設けられている。
中継部材30は、スリット42を流れる液Lにとって抵抗となり難い断面形状を有するのが好ましい。そのために、図4に示す中継部材30は、ひし形の断面形状を有する。なお、中継部材30の断面形状はひし形である以外に、他であってもよい。中継部材30は、第3方向(図4では下)に向かうにしたがって第2方向に細くなる先部31を有していればよい。また、中継部材30は、第3方向と反対方向(図4では上)に向かうにしたがって第2方向に細くなる基部32を有していればよい。例えば図7に示すように、中継部材30の断面形状は、第3方向が長軸となる長円や楕円形であってもよい。または、図示しないが、中継部材30の断面形状は、第3方向に細長い矩形であってもよい。
前記のような先部31により、液溜め空間40からスリット42に液Lが流れる際に、中継部材30よりも第3方向側にエアが存在する(空間が生じる)のを防ぐことができる。このため、液Lが基材7に塗布されて形成される膜にエアが混入するのを防止することが可能となる。
前記のような基部32によれば、スリット42を通過する液Lの流れが中継部材30によって乱れ難くなる。
前記のような基部32によれば、スリット42を通過する液Lの流れが中継部材30によって乱れ難くなる。
図5は、図3に示す塗布器12の分解図である。塗布器12は、第一ブロック61、第二ブロック62及び中間ブロック63を有し、これらはそれぞれ第1方向に長い部材である。塗布器12の組立状態で(図3参照)、中間ブロック63は第一ブロック61と第二ブロック62とに挟まれた状態にある。第一ブロック61及び第二ブロック62のうちの少なくとも一方の内側に、液溜め空間40を形成するための凹部64が形成されている。
中間ブロック63は、第1方向に長く第2方向に薄い主部63aと、主部63aの両端部それぞれから第3方向に延びて設けられている副部63bとを有する。主部63aは、液溜め空間40(図3参照)の上壁の一部を構成する。主部63aと2つの副部63b,63bとの間に形成される空間が、液溜め空間40の一部及びスリット42を構成する。2つの副部63b,63bの間に中継部材30が設けられている。第二ブロック62、中間ブロック63、及び第一ブロック61が順に第2方向に並んで結合されることで、一つの塗布器12が構成される。
中継部材30は比較的剛性の高い部材であってもよいが、中継部材30は糸状であって低剛性の部材であってもよい。特に中継部材30が低剛性である場合、図6に示すように、中間ブロック63には、中継部材30に張力を付与する調整機構65が設けられている。中継部材30の一端30aが一方の副部63bに固定されていて、中継部材30の他端30bが他方の副部63bに第1方向に引っ張られた状態で取り付けられている。調整機構65は、中継部材30を引っ張って中継部材30に張力を付与することができる。更に、調整機構65は、その張力を調整することができる。調整機構65は、中継部材30の他端30bが取り付けられていて回転を第1方向の変位に変換するねじ構造部を有して構成される。つまり、ねじ構造部を回転させることで、中継部材30の他端30bが第1方向に変位し、これにより、中継部材30に作用する張力が変更される。ねじ構造部の回転を拘束することで、その張力が維持される。
〔本開示の塗布器12について〕
以上のように、本開示の塗布器12は、その内部に、液が溜められる第1方向に長い液溜め空間40と、第1方向に長いスリット42とを備える。スリット42は、液溜め空間40に一方側が開口していて、外部空間に他方側が開口する。スリット42が有する第一スリット壁面51と第二スリット壁面52との間に第1方向に長い中継部材30が設けられている。そして、図4に示すように、スリット42の開口で液Lの表面張力により形成される液面Fの形状が、中継部材30を介して複数(図4では2つ)のメニスカス形状Q1,Q2を有するように、中継部材30は、第一スリット壁面51及び第二スリット壁面52それぞれと第2方向に間隔をあけて設けられている。
以上のように、本開示の塗布器12は、その内部に、液が溜められる第1方向に長い液溜め空間40と、第1方向に長いスリット42とを備える。スリット42は、液溜め空間40に一方側が開口していて、外部空間に他方側が開口する。スリット42が有する第一スリット壁面51と第二スリット壁面52との間に第1方向に長い中継部材30が設けられている。そして、図4に示すように、スリット42の開口で液Lの表面張力により形成される液面Fの形状が、中継部材30を介して複数(図4では2つ)のメニスカス形状Q1,Q2を有するように、中継部材30は、第一スリット壁面51及び第二スリット壁面52それぞれと第2方向に間隔をあけて設けられている。
この構成を備える塗布器12によれば、スリット42が第2方向に広くなっても、スリット42の開口、つまり、吐出口44で形成される液面Fの形状は、中継部材30を介して複数(図4では2つ)のメニスカス形状Q1,Q2を有する。このため、スリット42の開口で液面Fが保持され易くなる。中継部材30は、吐出口44の液面Fを複数のメニスカス形状として保持することに貢献することから、中継部材30は「液面保持部材」と呼ぶこともできる。
基材7に塗布する液Lが高粘度であり、しかも、その液Lによる膜を厚くするためには、スリット42を第2方向に広くするのが効果的である。なお、スリット42を第2方向に広くすると流動抵抗が減少する。
そこで、本開示の塗布器12によれば、前記のとおり、スリット42を第2方向に広くしても、液面Fが吐出口44で保持される。この結果、液Lが高粘度であっても基材7に塗布した液による膜を厚くすることが可能となる。
基材7に塗布する液Lが高粘度であり、しかも、その液Lによる膜を厚くするためには、スリット42を第2方向に広くするのが効果的である。なお、スリット42を第2方向に広くすると流動抵抗が減少する。
そこで、本開示の塗布器12によれば、前記のとおり、スリット42を第2方向に広くしても、液面Fが吐出口44で保持される。この結果、液Lが高粘度であっても基材7に塗布した液による膜を厚くすることが可能となる。
スリット42において、中継部材30が可能な限り流路抵抗とならないように、中継部材30の断面を小さくするのが好ましい。
しかし、この場合、中継部材30の剛性は低く、液溜め空間40からスリット42へと液Lが流れると、中継部材30がスリット42の開口側に変位することが考えられる。その変位によって、図8(A)に示すように、中継部材30のうち、例えば第1方向の中央部30nが外部空間に露出すると、スリット42の開口から吐出させた液の流れが、中継部材30が原因となって不均一になる可能性がある。
しかし、この場合、中継部材30の剛性は低く、液溜め空間40からスリット42へと液Lが流れると、中継部材30がスリット42の開口側に変位することが考えられる。その変位によって、図8(A)に示すように、中継部材30のうち、例えば第1方向の中央部30nが外部空間に露出すると、スリット42の開口から吐出させた液の流れが、中継部材30が原因となって不均一になる可能性がある。
そこで、本開示の塗布器12では、図4に示すように、中継部材30は、スリット42の開口よりも、液溜め空間40側の位置に設けられている。つまり、中継部材30は、塗布器12の先端面46から第3方向にはみ出さずに、液溜め空間40側の位置に、設けられている。
この構成によれば、流れる液Lによって中継部材30がスリット42の開口側に押されても、図8(B)に示すように、中継部材30の第1方向の中央部30nが外部空間に露出せず、スリット42の開口から吐出させた液の流れが不均一になり難い。その結果、液が基材7に塗布されて形成される膜の厚さ精度が低下するのを防ぐことが可能となる。
この構成によれば、流れる液Lによって中継部材30がスリット42の開口側に押されても、図8(B)に示すように、中継部材30の第1方向の中央部30nが外部空間に露出せず、スリット42の開口から吐出させた液の流れが不均一になり難い。その結果、液が基材7に塗布されて形成される膜の厚さ精度が低下するのを防ぐことが可能となる。
また、本開示の塗布器12では、図4において、スリット42が開口する塗布器12の先端面46は、スリット42の開口を挟んで第一先端面46aと第二先端面46bとを有する。そして、第一先端面46aと第二先端面46bとは、共通する仮想平面S上に配置されている。つまり、本開示の塗布器12では、第一先端面46aと第二先端面46bとの第3方向についての位置が、第一先端面46aと第二先端面46bとで揃っている。この構成によれば、中継部材30を挟んで両側を通過した液が、同じ流れの態様でスリット42の開口から吐出される。このため、液Lが基材7に塗布されて形成される膜の厚さ等の精度が向上する。
仮に第3方向についての位置が第一先端面46aと第二先端面46bとで揃っていない場合、例えば、第一先端面46aが基材7に近く、第二先端面46bが基材7から離れている場合、液Lが第二先端面46bを越えてリップ斜面47bに回り込んでしまう可能性がある。この場合、特に液付け動作の際、液が基材7に付着し難くなる。
仮に第3方向についての位置が第一先端面46aと第二先端面46bとで揃っていない場合、例えば、第一先端面46aが基材7に近く、第二先端面46bが基材7から離れている場合、液Lが第二先端面46bを越えてリップ斜面47bに回り込んでしまう可能性がある。この場合、特に液付け動作の際、液が基材7に付着し難くなる。
なお、図示しないが、本開示の塗布器12において、中継部材30は、一つのみならず、スリット42の第2方向の広さに応じて、第2方向に間隔をあけて複数設けられていてもよい。この場合、スリット42の開口で形成される液面Fの形状は、中継部材30の数よりも一つ多い数のメニスカス形状を有することができる。
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲に記載された構成と均等の範囲内での全ての変更が含まれる。
7:基材 12:塗布器 30:中継部材
31:先部 32:基部 40:液溜め空間
42:スリット 46:先端面 46a:第一先端面
46b:第二先端面 51:第一スリット壁面 52:第二スリット壁面
Q1:メニスカス形状 Q2:メニスカス形状 S:仮想平面
31:先部 32:基部 40:液溜め空間
42:スリット 46:先端面 46a:第一先端面
46b:第二先端面 51:第一スリット壁面 52:第二スリット壁面
Q1:メニスカス形状 Q2:メニスカス形状 S:仮想平面
Claims (6)
- 液が溜められる第1方向に長い液溜め空間と、前記液溜め空間に一方側が開口し外部空間に他方側が開口する前記第1方向に長いスリットと、を備え、
前記スリットは、前記第1方向に直交する第2方向に対向する第一スリット壁面及び第二スリット壁面を有し、
前記第一スリット壁面と前記第二スリット壁面との間に前記第1方向に長い中継部材が設けられていて、
前記スリットの開口で形成される液面形状が前記中継部材を介して複数のメニスカス形状を有するように、当該中継部材は、前記第一スリット壁面及び前記第二スリット壁面それぞれと前記第2方向に間隔をあけて設けられている、塗布器。 - 前記中継部材は、前記スリットの開口よりも、前記液溜め空間側の位置に設けられている、請求項1に記載の塗布器。
- 前記第1方向及び前記第2方向の双方に直交しかつ前記液溜め空間から前記スリットの開口に向かう方向を第3方向と定義した場合に、
前記中継部材は、前記第3方向に向かうにしたがって前記第2方向に細くなる先部を有する、請求項1又は2に記載の塗布器。 - 前記第1方向及び前記第2方向の双方に直交しかつ前記液溜め空間から前記スリットの開口に向かう方向を第3方向と定義した場合に、
前記中継部材は、前記第3方向と反対方向に向かうにしたがって前記第2方向に細くなる基部を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗布器。 - 前記スリットが開口する塗布器先端面は、当該スリットの開口を挟んで前記第2方向側の第一先端面と、当該開口を挟んで前記第2方向と反対側の第二先端面と、を有し、
前記第一先端面と前記第二先端面とは共通する仮想平面上に配置されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗布器。 - 前記中継部材は、前記第2方向に均等配置されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の塗布器。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019214332A JP2021084065A (ja) | 2019-11-27 | 2019-11-27 | 塗布器 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2019214332A JP2021084065A (ja) | 2019-11-27 | 2019-11-27 | 塗布器 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2021084065A true JP2021084065A (ja) | 2021-06-03 |
Family
ID=76086057
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2019214332A Pending JP2021084065A (ja) | 2019-11-27 | 2019-11-27 | 塗布器 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2021084065A (ja) |
-
2019
- 2019-11-27 JP JP2019214332A patent/JP2021084065A/ja active Pending
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