実施形態に係る猫用おむつの肌面側から見た平面図である。
図1に示すA−A線に沿った猫用おむつの模式的断面図である。
実施形態に係る猫用おむつの着用状態を模式的に示した図である。
猫及び犬の身体の形状を模式的に示した図である。
実施形態に係る尻尾穴の拡大平面図である。
変形例に係る尻尾穴の拡大平面図である。
穴本体部の比率の比較評価結果を示した図である。
穴本体部の角度の比較評価結果を示した図である。
(1)実施形態の概要
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
一態様に係る猫用おむつは、猫の胴回り方向に沿って配置される横方向と、前記横方向と直交し、猫の腹側から背側を繋ぐ方向に延びる縦方向と、表面シート、裏面シート、及び前記表面シートと前記裏面シートの間に配置された吸収コアを有する本体部と、前記本体部に形成された尻尾穴と、を有する。前記尻尾穴は、猫の尻尾を挿通可能な穴本体部を有する。前記穴本体部は、前記腹側又は前記背側に向かって凸状に膨らんでいる。前記穴本体部の前記横方向の長さは、前記穴本体部の前記縦方向の長さに対する1.90倍以上である。本態様によれば、穴本体部の横方向の長さが穴本体部の前記縦方向の長さに対する1.90倍以上であり、穴本体部が横方向に長い形状であるため、穴本体部による尻尾穴の開口が横方向に長くなり、おむつが縦方向にずれ難くなる。また、穴本体部が横方向に長いため、穴本体部が縦方向に引っ張られても、穴本体部が縦方向に広がり難い。よって、穴本体部が縦方向に広がることに起因して、おむつが縦方向にずれることを抑制できる。
好ましい一態様によれば、前記穴本体部は、頂点及び両方の基端縁を繋ぐ円弧形状であり、前記円弧の曲率半径は、一定範囲内であり、前記一定範囲は、同一の値、又は最大値と最小値の誤差が前記穴本体部の前記横方向の長さに対する5%の範囲内の値であってよい。本態様によれば、円弧の曲率半径が一定範囲内であるため、変曲点を介して穴本体部が変形することを抑制できる。よって、猫が上下方向に尻尾を動かした場合であっても、おむつが縦方向にずれ難くなる。
好ましい一態様によれば、前記穴本体部は、頂点及び両方の基端縁を繋ぐ円弧の形状であり、前記穴本体部の基端縁を繋ぐ仮想線と、前記基端縁から前記頂点に向かう立ち上がり部の接線と、が成す角度は、80度以下であってよい。穴本体部の基端縁からの立ち上がり角度が比較的大きいと、立ち上がり角度が小さい構成と比較して、尻尾穴の開口面積が大きくなり、尻尾穴内における尻尾の位置がずれ易く、猫に対するおむつの位置がずれ易くなる。しかし、穴本体部の基端縁からの立ち上がり角度が比較的小さいため、尻尾穴内における尻尾の位置がずれ難くなり、猫に対するおむつの位置ずれを抑制できる。
他態様に係る猫用おむつは、猫の胴回り方向に沿って配置される横方向と、前記横方向と直交し、猫の腹側から背側を繋ぐ方向に延びる縦方向と、表面シート、裏面シート、及び前記表面シートと前記裏面シートの間に配置された吸収コアを有する本体部と、前記本体部に形成された尻尾穴と、を有する。前記尻尾穴は、猫の尻尾を挿通可能な穴本体部を有する。前記穴本体部は、前記腹側又は前記背側に向かって凸状に膨らんでいる。前記穴本体部は、頂点及び両方の基端縁を繋ぐ円弧形状である。前記円弧の曲率半径は、一定範囲内である。前記一定範囲は、同一の値、又は最大値と最小値の誤差が前記穴本体部の前記横方向の長さに対する5%の範囲内の値である。前記穴本体部の基端縁を繋ぐ仮想線と、前記基端縁から前記頂点に向かう立ち上がり部の接線と、が成す角度は、80度以下である。他の態様によっても、穴本体部が縦方向に広がることに起因して、おむつが縦方向にずれることを抑制できる。
好ましい一態様によれば、穴本体部は、前記背側に向かって凸状に膨らんでよい。猫が四つん這いの状態で尻尾の重力が穴本体部の頂点側にかかり難く、穴本体部の頂点側に力が集中することに起因して尻尾穴が広がる不具合を抑制できる。
好ましい一態様によれば、前記穴本体部は、前記縦方向における外側に位置する外端縁と、前記縦方向における内側である前記吸収コア側に位置する内端縁と、を有し、前記穴本体部の前記縦方向の寸法は、前記穴本体部の外端縁と前記吸収コアとの距離に対する50%以上であってよい。雄の猫は、その習性として尿をスプレー状に放射することがある。そのため、使用者は、犬におむつを装着する態様と比較して、猫におむつを装着する場合には、身体に対しておむつを密着させるように装着することがある。このとき、穴本体部の外端縁と吸収コアとの間の領域のうち50%以上の領域は、穴本体部が配置されている。穴本体部が占める割合が比較的高いため、おむつを密着させるように装着しても、尻尾の可動域を確保でき、おむつ全体の位置ずれを抑制できる。
好ましい一態様によれば、前記穴本体部の前記縦方向の中心 は、前記穴本体部の前記横方向の中心と前記穴本体部の前記横方向の外側縁との中間点 よりも前記横方向の外側に位置してよい。穴本体部の縦方向の中心が中間点よりも横方向の内側に位置する構成と比較して、穴本体部の縦方向の中心が横方向の外側に偏倚しているため、穴本体部の外形が横長の形状を維持しつつ穴本体部の面積を確保できる。よって、穴本体部の変形を抑制できる。
好ましい一態様によれば、前記尻尾穴は、前記表面シート及び前記裏面シートが切断された部分であって、前記表面シート及び前記裏面シートの少なくとも一方のシートの前記縦方向に沿う引張強度は、前記一方のシートの前記横方向に沿う引張強度よりも高くてよい。本態様によれば、縦方向に沿う引張強度が高いため、尻尾穴の開口が縦方向に広がり難い。よって、尻尾穴の開口が縦方向に広がることに起因して、おむつが縦方向にずれることを抑制できる。
(2)猫用おむつの構成
以下、図面を参照して、実施形態に係る猫用おむつについて説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法等は、以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
図1は、実施形態に係る猫用おむつの表面側T1からから見た平面図である。図2は、図1に示すA−A線に沿った猫用おむつの模式的断面図である。図1及び図2では、猫用おむつ1を皺が形成されない状態まで伸長させた伸長状態を示している。また、図2に示す断面図では、説明の便宜上、各部材を厚み方向Tにおいて離間して示しているが、実際の製品においては厚み方向Tに接している。図3は、猫用おむつの着用状態を模式的に示した図である。
猫用おむつ1は、猫の胴回り方向に沿って配置される横方向Wと、横方向Wと直交する縦方向Zと、横方向W及び縦方向Zと直交する厚み方向Tと、を有する。縦方向Zは、猫の腹側から背側を繋ぐ方向に延びる。厚み方向Tは、着用状態において猫に当てられる表面側T1と、着用状態において外側に向けられる裏面側T2と、に延びる。図3に示すように、実施形態に係る猫用おむつは、猫の腹側から股下を通って背側まで覆うように装着される。
猫用おむつ1は、本体部2と、ファスニングテープ90と、を有してよい。本体部2は、横方向Wの一端部である本体第1端部61と、横方向Wの他端部である本体第2端部62と、縦方向Zの一端部である本体第3端部63と、縦方向Zの他端部である本体第4端部64と、を有してよい。本体第1端部61は及び本体第2端部62には、ファスニングテープ90が接合されている。本体第3端部63は、着用状態において猫の腹側に配置される。本体第4端部64は、本体第3端部63と対向しており、着用状態において猫の背側に配置される。また、本発明における端部は、端縁を含む一定の範囲を占める部分である。本体第1端部61は、本体部2の横方向Wの一端縁である第1端縁61Eから横方向Wの内側に延びる部分である。同様に、本体第2端部62は、本体部2の横方向Wの他端縁である第2端縁62Eから横方向Wの内側に延びる部分である。本体第1端部61及び本体第2端部62は、本体部2の横方向Wの端縁と吸収コア30の横方向Wの端縁との間の領域であってよい。また、本体第3端部63は、本体部2の縦方向Zの一端縁である第3端縁63Eから縦方向Zの内側に延びる部分である。同様に、本体第4端部64は、本体部2の縦方向Zの他端縁である第4端縁64Eから縦方向Zの内側に延びる部分である。本体第3端部63及び本体第4端部64は、本体部2の縦方向Zの端縁と吸収コア30の縦方向Zの端縁との間の領域であってよい。また、本体第4端部64は、本体部2の縦方向Zの端縁と吸収コア30の縦方向Zの端縁との間の領域であってよいし、本体部2の縦方向Zの端縁と後述する尻尾穴70との間の領域であってもよい。
本体部2は、表面シート10、裏面シート20、及び吸収コア30を少なくとも有する。表面シート10は、本体部2において猫に当てられる内面2Pに配置されている。表面シート10は、体液を吸収コア30側に透過させる液透過性を有する。表面シート10は、縦方向Zの中央に位置し、吸収コア30を覆うセンターシート11と、センターシート11の横方向Wの両側部を覆うサイドシート12と、を有してよい。図2に示すように、サイドシート12は、折り畳まれていてよい。具体的には、サイドシート12の横方向Wの内側縁において裏面側T2に折り返されている。折り返されたサイドシート12間に、縦方向Zに伸長された状態のサイド伸縮性部材13が配置されてよい。サイド伸縮性部材13は、猫側に起立する防漏ギャザーを構成してよい。
吸収コア30は、表面シート10と裏面シート20の間に配置されている。吸収コア30は、パルプ等の吸収材料が積層されている。図2に示すように、吸収コア30を覆うコアラップ32が設けられていてよい。吸収コア30は、横方向Wにおいて本体部2の両端縁よりも内側に配置されている。すなわち、吸収コア30の横方向Wの長さは、本体部2の横方向Wの長さよりも短い。吸収コア30は、本体部2の横方向Wの中央に配置され、本体部2の横方向Wの外側部には設けられていない。また、吸収コア30は、縦方向Zにおいて本体部2の両端縁よりも内側に配置されてよい。すなわち、吸収コア30の縦方向Zの長さは、本体部2の縦方向Zの長さよりも短くてよい。吸収コア30は、本体部2の縦方向Zの中央に配置され、本体部2の縦方向Zの外側部には設けられていなくてよい。吸収コア30は、後述する尻尾穴70と縦方向Zに離間し、尻尾穴70よりも腹側に位置してよい。
裏面シート20は、本体部2において着用時に外側に位置する外面2Qに配置されている。裏面シート20は、液不透過性の裏面フィルム21と、裏面フィルム21よりも裏面側に位置する裏面不織布22と、を有してよい。なお、変形例において、裏面シートは、液不透過性の裏面フィルムと、裏面フィルム21よりも内面側に位置する裏面不織布と、を有してよい。裏面フィルム21の横方向Wの長さは、裏面不織布22の横方向Wの長さよりも短くてよい。すなわち、裏面不織布22は、裏面フィルム21よりも横方向Wの両側に延出してよい。
ファスニングテープ90は、本体部2の縦方向Zの一端部である本体第3端部63において、本体部2よりも横方向Wの両外側に延出している。より詳細には、ファスニングテープ90は、本体第3端部63において、本体部2の第1端縁61E及び第2端縁62Eよりも横方向Wの外側に延出している。ファスニングテープ90は、本体部2に接合された基材シート91と、基材シート91上に設けれ、本体部2の外面2Qに接合可能な接合部92と、を有してよい。接合部92は、ファスニングテープ90の表面側T1の面に配置されている。接合部92は、メカニカルファスナであってよく、本体部2の外面2Qに設けられたターゲット部45に接合可能に構成されている。なお、変形例において、本体部2は、ターゲット部45を備えず、接合部92は、本体部2の外面2Q側の裏面シート20に接合するように構成されてよい。変形例において、接合部は、本体第4端部64において、本体部2よりも横方向Wの両外側に延出してもよい。
猫用おむつ1は、尻尾穴70が設けられてよい。尻尾穴70は、猫の尻尾を挿通可能な穴本体部71を有してよい。尻尾穴70を有するおむつにあっては、本体第4端部64によって猫の臀部及び背中を覆う際に、尻尾穴70の穴本体部71に猫の尻尾を挿通させてよい。穴本体部71は、半円形の切り込みであってよい。穴本体部71は、連続した切れ込みであってもよいし、ミシン目等、表面シート10及び裏面シート20を引き裂き可能な構成であってもよい。尻尾穴70は、穴本体部71の寸法を拡大するための切り込み部72を有してもよい。切り込み部72は、ミシン目等、表面シート10及び裏面シート20を引き裂き可能な構成であってよく、猫の種類及び成長過程に応じて穴本体部71の寸法を調整できる。本実施の形態の切り込み部72は、尻尾穴70の横方向Wの中心に対する左右それぞれに2個ずつ設けられている。変形例において、切り込み部72は、尻尾穴70の横方向Wの中心に対する左右それぞれに1個ずつ設けられていてもよいし、2個以上ずつ設けられていて複数段階で尻尾穴70の寸法を調整できるように構成されてよい。穴本体部71及び切り込み部72は、表面シート10及び裏面シート20が切断された部分であってよい。尻尾穴70については、後述にて詳細に説明する。
猫用おむつ1を猫に装着する際は、本体第3端部63(接合部92が設けられた側の端部)を猫の腹に当てる。このとき、本体第4端部64を猫の両足の間を通し、かつ猫の後側に出しておく。そして、本体部2の縦方向Zの中央を猫の排尿口に当てつつ、猫の尻尾を、尻尾穴70を通しておむつの裏面側T2に出しておく。本体第4端部64によって猫の臀部及び背中を覆う。次いで、接合部92を猫の背中側に引っ張り、背中側に位置する本体第4端部64のターゲット部45に外面に接合部92を止める。これにより、図3に示すように、猫の腹、背中、及び股下を覆うように猫用おむつ1を装着できる。すなわち、猫用おむつ1は、猫の腹側から股下を通って背側まで覆うように装着される。
次いで、図4〜図6に基づいて、尻尾穴70について詳細に説明する。図4は、猫及び犬の身体の形状を模式的に示した図である。図4(a)は、猫の身体の形状を示しており、(b)は、犬の身体の形状を示している。図5は、実施形態に係る尻尾穴70を示しており、図6は、変形例に係る尻尾穴70Xを示している。実施形態に係る尻尾穴70と変形例に係る尻尾穴70Xは、いずれも穴本体部71と切り込み部72を有しており、それぞれの形状及び位置が異なっている。しかし、実施形態に係る尻尾穴70と変形例に係る尻尾穴70Xは、近似しており、同様の構成については、同符号を用いて説明を省略する。実施形態に係る尻尾穴70は、比較的小さい猫に着用される猫用おむつの尻尾穴であり、変形例に係る尻尾穴70Xは、比較的大きい猫に着用される猫用おむつの尻尾穴70Xであってよい。
まず、穴本体部71について詳細に説明する。本実施の形態の穴本体部71は、縦方向Zにずれ難く構成されている。出願人が鋭意研究した結果、犬は、比較的左右方向に尻尾を動かすことが多く、猫は、比較的上下方向に尻尾を動かすことが多いことがわかった。加えて、出願人が鋭意調査した結果、猫と犬で普段の身体の動かし方が大きく異なることがわかった。より詳細には、犬は、地面を走る等、平面方向の動きが多く、猫は、犬と比較して、ジャンプしたり飛び降りたりする等の垂直方向の動きが多いことがわかった。垂直方向に身体を動かそうとすると、後足を曲げた状態から一気に伸ばしたり、脚の曲げ伸ばしとともに腹を凹ませた状態及び背中を丸めた状態から延ばしたりして、腹部、臀部及び足回りの皮膚の縦方向Zの伸び縮み量が大きくなり易い。そのため、猫がおむつを着用した状態では、尻尾穴70が縦方向Zに引っ張られ、おむつが縦方向Zにずれやすいことがわかった。
出願人は、穴本体部71の縦方向Zと横方向Wの比率を異ならせた穴本体部を形成し、穴本体部の比率と縦方向のずれとの関係性について調べた。比較評価は、実施例1から実施例6に係る穴本体部を有する猫用おむつと、比較例1から比較例8に係る穴本体部を有する猫用おむつと、を用いて、各猫用おむつを猫に装着して、穴本体部と猫の身体の位置関係、及び着用状態における縦方向のずれを確認した。装着した時点で穴本体部を介して排尿部が露出している場合、着用状態において縦方向にずれた結果、穴本体部を介して排尿部が露出した場合は、「×」として評価し、装着した時点で穴本体部を介して排尿部が露出してなく、かつ着用状態において縦方向にずれた結果、穴本体部を介して排尿部が露出していない場合には、「○」として評価した。また、装着した時点で穴本体部を介して排尿部が露出してなく、かつ着用状態において縦方向にずれた結果、穴本体部を介して排尿部が露出していなく、更に穴本体部に尻尾を挿入しやすい場合には、「◎」として評価した。なお、各猫用おむつは、穴本体部以外の構成は同様であり、切り込み部によって開口していない状態である。評価結果を図7に示す。
図7の評価結果に示すように、穴本体部71の横方向Wの長さW71は、穴本体部71の縦方向Zの長さZ71よりも長く、穴本体部71の縦方向Zの長さZ71に対する1.90倍以上、好ましくは、3.5倍以上であってよい。猫におむつを着用した状態では、穴本体部71の頂点に尻尾が引っかかり、縦方向Zの移動が規制される。このとき、穴本体部71の縦方向Zの長さZ71が比較的長いと、尻尾穴の開口の縦方向Zの長さが長くなり、おむつが縦方向Zにずれて排尿口が露出するおそれがある。このとき、穴本体部71の横方向Wの長さW71が穴本体部71の縦方向Zの長さZ71に対する1.90倍以上であり、穴本体部71が横方向Wに長い形状であるため、穴本体部71による尻尾穴の開口が横方向Wに長くなり、おむつが縦方向Zにずれ難くなる。実施形態の穴本体部71の横方向Wの長さW71は、28.3mmであり、穴本体部71の縦方向Zの長さZ71は、8mmであり、穴本体部71の縦方向Zの長さZ71に対する穴本体部71の横方向Wの長さW71の比率は、3.53である。変形例に係る穴本体部71の横方向Wの長さW71は、36.7mmであり、穴本体部71の縦方向Zの長さZ71は、8mmであり、穴本体部71の縦方向Zの長さZ71に対する穴本体部71の横方向Wの長さW71の比率は、4.58である。穴本体部71の横方向Wの長さW71は、おむつの横方向のずれを抑制するために、穴本体部71の縦方向Zの長さZ71に対する6.3倍以下であってよく、好適には、5.0倍以下であってよい。また、穴本体部71の縦方向Zの長さZ71は、猫用おむつの縦方向Zのずれを抑制しつつ尻尾を収納するために、5.5mm以上10.0mm以下であってもよく、好適には、5.5mm以上8.0mm以下であってよい。また、穴本体部71の横方向Wの長さW71は、おむつの横方向Wのずれを抑制しつつ尻尾を収納するために、10.0mm以上36.7mm以下であってもよく、好適には、28.3mm以上36.7mm以下であってよい。
また、図4に示すように、一般的に、猫における尿の排尿口101と尻尾102の距離は、犬における尿の排尿口201と尻尾202の距離よりも短いことが多い。より詳細には、犬においては、雌の排尿口201Fは、尻尾202に近いが、雄の排尿口201Mは、雌よりも尻尾202から離れている。猫の場合には、雄の排尿口も雌の排尿口も縦方向Zの位置が大きくずれてなく、いずれも尻尾102に近い位置である。穴本体部71が横方向Wに長いため、穴本体部71が縦方向Zに引っ張られても、穴本体部71により開口が縦方向Zに広がり難い。よって、穴本体部71による開口が縦方向Zに広がることに起因しておむつが縦方向Zにずれることを抑制できる。
穴本体部71は、頂点711及び両方の基端縁712を繋ぐ円弧の形状であってよい。円弧の曲率半径は、一定範囲内であってよい。ここで、一定範囲の曲率半径とは、同一の値、又は最大値と最小値の誤差が穴本体部71の横方向Wの長さW71に対する5%の範囲内の値である。実施形態の穴本体部71の曲率半径は、16.6mmであり、変形例の穴本体部71の曲率半径は、25.0mmである。猫がおむつを着用した状態で、穴本体部71の頂点711に尻尾が引っかかり、縦方向Zの移動が規制される。このとき、穴本体部71の円弧の曲率半径が変化していると、当該変化する変曲点に力が集中し、変曲点を介して穴本体部71が変形し、おむつがずれて排尿口が露出するおそれがある。上述のように、犬は、比較的左右方向に尻尾を動かすことが多く、猫は、比較して上下方向に尻尾を動かすことが多い。加えて、猫は、犬と比較して排尿口101と尻尾102の距離が短い。そのため、猫がおむつを着用した状態では、尻尾穴が縦方向Zに引っ張られ、おむつが縦方向Zにずれやすい。本構成によれば、円弧の曲率半径が一定範囲内であるため、変曲点を介して穴本体部71が変形することを抑制し、尻尾穴70が縦方向Zに引っ張られても、尻尾穴70の開口が縦方向Zに広がり難い。よって、尻尾穴70の開口が縦方向Zに広がることに起因しておむつが縦方向Zにずれることを抑制できる。
出願人は、穴本体部71の基端縁712を繋ぐ仮想線L11と、基端縁712から頂点711に向かう立ち上がり部713の接線L12と、が成す角度を異ならせた穴本体部を形成し、穴本体部の角度と穴本体部の変形との関係性について調べた。比較評価は、実施例7から実施例13に係る穴本体部を有する猫用おむつと、比較例9から比較例15に係る尻尾穴部を有する猫用おむつと、を用いて、各猫用おむつを猫に装着して、装着後30分経過後の穴本体部の変形状態を確認した。装着後30分経過後に縦方向に延びる変形をしている場合には、「×」として評価し、装着後30分経過後に縦方向に延びる変形をしていないが、装着時に尻尾を挿入し難い場合には、「〇」として評価し、装着後30分経過後に縦方向に延びる変形をしていなく、装着時に尻尾穴を挿入し易い場合には、「◎」として評価した。評価結果を図8に示す。
図8の評価結果に示すように、穴本体部71の基端縁712を繋ぐ仮想線L11と、基端縁712から頂点711に向かう立ち上がり部713の接線L12と、が成す角度は、80度以下であってよい。立ち上がり部713は、基端縁712を含み、基端縁712から頂点711側に向かう部分である。例えば、基端縁712から5mmの範囲を抽出し、その5mmの円弧部分の端部同士(基端縁と基端縁から5mm離れた位置)を繋ぐ線を接線L12としてもよい。穴本体部71の基端縁712からの立ち上がり角度が比較的大きいと、立ち上がり角度が小さい構成と比較して、穴本体部71の開口面積が大きくなり、尻尾穴内における尻尾の位置がずれ易く、おむつの位置がずれ易くなる。しかし、穴本体部71の基端縁712からの立ち上がり角度が比較的小さいため、尻尾穴内における尻尾の位置がずれ難くなり、猫に対するおむつの位置ずれを抑制できる。また、角度は、尻尾を円滑に挿入するために、35度以上であってよい。
穴本体部71は、背側に向かって凸状に膨らんでよい。図4に示すような、猫が四つん這いの状態は、尻尾の重力は、穴本体部71の腹側の端縁に係る。穴本体部71の腹側の端縁に一対の基端縁712が配置されており、基端縁712を繋いだ仮想線L11に沿って本体部2がめくれ、仮想線L11全体に尻尾の重力がかかる。そのため、穴本体部71の腹側の端縁に穴本体部71の頂点711が配置された構成と比較して、尻尾の重力が局所的に集中することを抑制し、穴本体部71の変形を抑制できる。よって、穴本体部71の頂点側に力が集中することに起因して尻尾穴70が広がる不具合を抑制できる。
穴本体部71は、縦方向Zにおける外側に位置する外端縁と、縦方向Zにおける内側である吸収コア側に位置する内端縁と、を有している。外端縁は、背側の端縁であってよく、本実施の形態は、頂点711である。内端縁は、腹側の端縁であってよく、本実施の形態は、基端縁712及び仮想線L11である。穴本体部71の縦方向Zの寸法は、穴本体部71の外端縁である頂点711と吸収コア30との距離G11(図1参照)に対する50%以上であってよい。換言すると、穴本体部71の内端縁である基端縁712と吸収コア30との距離G12(図1参照)は、距離G11に対する50%未満であってよい。雄の猫は、その習性として尿をスプレー状に放射することがある。そのため、使用者は、犬におむつを装着する態様と比較して、猫におむつを装着する場合には、身体に対しておむつを密着させるように装着することがある。このとき、穴本体部71の外端縁と吸収コア30との間の領域のうち50%以上の領域は、穴本体部71が配置されている。穴本体部71が占める割合が比較的高いため、おむつを密着させるように装着しても、尻尾の可動域を確保でき、おむつ全体の位置ずれを抑制できる。
穴本体部71の縦方向Zの中心CZ71は、穴本体部71の横方向Wの中心CW71と穴本体部71の横方向Wの外側縁EW71との中間点CEW71よりも横方向Wの外側に位置してよい。本実施形態において、穴本体部71の横方向Wの中心CW71は、頂点711であり、穴本体部71の横方向Wの外側縁EW71は、基端縁712である。円弧状の穴本体部71では、頂点711が配置された穴本体部71の横方向Wの中心CW71における縦方向Zの長さが長く、穴本体部71の横方向Wの中心CW71から横方向Wの外側に向かうにつれて縦方向Zの長さが短くなる。本態様によれば、穴本体部71の縦方向Zの中心CZ71が中間点CEW71よりも横方向Wの内側に位置する構成と比較して、穴本体部71の縦方向Zの中心が横方向Wの外側に偏倚しているため、穴本体部71の外形が横長の形状を維持しつつ穴本体部71の面積を確保できる。よって、穴本体部71の変形を抑制できる。また、穴本体部71の縦方向Zの中心CZ71が中間点CEW71よりも横方向Wの内側に位置する場合には、穴本体部71において縦方向Zの長さを確保する領域が中間点CEW71側において局所的に設けられ、力が集中し、縦方向Zの変形が生じるおそれがある。しかし、穴本体部71において縦方向Zの長さを確保する領域を中間点CEW71よりも横方向Wの外側に配置でき、穴本体部71全体において尻尾の動き等によって生じる力を受けることができ、穴本体部71の変形を抑制できる。
次いで、切り込み部72について詳細に説明する。切り込み部72は、使用前の状態において、穴本体部71と離間している。穴本体部71と切り込み部72の間の領域の本体部2を切断することにより、穴本体部71の寸法を大きくすることができる。切り込み部72は、一対の横切り込み部721と、一対の縦切り込み部722と、を有してよい。切り込み部72によって尻尾穴の寸法を拡大した状態においても、おむつの横方向のずれを抑制するように構成されていることが好ましい。尻尾穴(穴本体部71+切り込み部72)の横方向Wの長さW70は、尻尾穴70の縦方向Zの長さZ70よりも長く、尻尾穴70の縦方向Zの長さZ70に対する1.90倍以上、好ましくは、3.5倍以上であってよい。実施形態の尻尾穴70の横方向Wの長さW70は、38.6mmであり、尻尾穴70の縦方向Zの長さZ70は、14.7mmであり、尻尾穴70の縦方向Zの長さZ70に対する尻尾穴70の横方向Wの長さW70の比率は、2.625である。変形例に係る尻尾穴70Xの横方向Wの長さW70は、46.9mmであり、尻尾穴70Xの縦方向Zの長さZ70は、14.7mmであり、尻尾穴70Xの縦方向Zの長さZ70に対する尻尾穴70の横方向Wの長さW70の比率は、3.19である。尻尾穴70の横方向Wの長さW70は、おむつの横方向のずれを抑制するために、尻尾穴70の縦方向Zの長さZ70に対する6.3倍以下であってよく、好適には、5.0倍であってよい。また、尻尾穴70の縦方向Zの長さZ70は、5.5mm以上15.0mm以下であってもよい。また、尻尾穴70の横方向Wの長さW70は、おむつの横方向Wのずれを抑制しつつ尻尾を収納するために、10.0mm以上46.9mm以下であってもよい。
切り込み部72は、穴本体部71から横方向Wの外側に延びる横側領域R11に設けられた横切り込み部721を有してよい。横側領域R11は、穴本体部71よりも横方向Wの外側に位置しており、横側領域R11の縦方向Zの位置は、穴本体部71の縦方向Zの位置と一致する。図6において、横側領域R11に斜線を付して示す。横切り込み部721が横側領域R11設けられているため、横切り込み部721によって尻尾穴70の寸法を横方向Wに拡大できる。従来のように、尻尾穴70の寸法を縦方向Zのみに拡大する構成においては、尻尾穴70を大きくしようとすると、尻尾穴70が必然的に縦長の形状となり、着用時に縦方向Zにずれ易かった。上述のように、犬は、比較的左右方向に尻尾を動かすことが多く、猫は、比較して上下方向に尻尾を動かすことが多い。そのため、猫がおむつを着用した状態では、尻尾穴が縦方向に引っ張られ、おむつが縦方向にずれやすい。そのため、尻尾穴の寸法が縦方向に大きくなると、おむつが縦方向にずれて排尿口が露出するおそれがある。しかし、横切り込み部721によって尻尾穴70の寸法を横方向Wに拡大できるため、尻尾穴70が縦方向Zに引っ張られても、尻尾穴70の開口が横方向Wに広がり、かつ縦方向Zに広がり難い。よって、尻尾穴70の開口が縦方向Zに広がることに起因しておむつが縦方向Zにずれることを抑制できる。また、横切り込み部721によって尻尾穴70の寸法が横方向Wに拡大することにより、尻尾穴70の開口を大きくでき、尻尾穴70を尻尾に装着する際の装着性を向上できる。
横切り込み部721は、横側領域R11のみに設けられてよい。すなわち、横切り込み部721は、横側領域R11より縦方向Zの外側に延出してなくてよい。横切り込み部721が横側領域R11のみに設けられているため、穴本体部71の縦方向Zの寸法を超えて横切り込み部721が形成されない。そのため、横切り込み部721に起因して尻尾穴70の寸法が縦方向Zに拡大することを抑制できる。横切り込み部721は、穴本体部71の外側縁EW71と離間し、穴本体部71の外側縁EW71よりも横方向Wの外側に位置してよい。
切り込み部72は、穴本体部71から縦方向Zに延びる縦側領域R12に設けられた縦切り込み部722を有してよい。縦側領域R12は、穴本体部71よりも縦方向Zの外側に位置しており、縦側領域R12の横方向Wの位置は、穴本体部71の横方向Wの位置と一致する。図6において、縦側領域R12に斜線を付して示す。縦切り込み部722によって尻尾穴の寸法を縦方向Zに拡大できる。横切り込み部721と縦切り込み部722を備えることにより、使用者が適宜選択して適切な方向に尻尾穴の寸法を拡大できる。縦切り込み部722は、穴本体部71の外端縁である頂点711と離間し、穴本体部71の外端縁である頂点711よりも縦方向Zの外側に位置してよい。
縦切り込み部722と穴本体部71との間隔G722は、横切り込み部721と穴本体部71との間隔G721よりも長くてよい。縦切り込み部722と穴本体部71との間隔G722が比較的長く、横切り込み部721と穴本体部71との間隔G721が比較的短いため、穴本体部71の寸法を拡大しようとして穴本体部71から本体部2を引き裂こうとすると、縦切り込み部722よりも横切り込み部721に到達し易い。よって、縦切り込み部722によって尻尾穴70の寸法を縦方向に拡大するよりも、横切り込み部721によって尻尾穴70の寸法を横方向Wに拡大し易くなる。
縦切り込み部722と基端縁712との間隔G732は、横切り込み部721と基端縁712との間隔G731よりも長くてよい。円弧形状の穴本体部71にあっては、穴本体部71に尻尾を挿入したり、穴本体部71内で尻尾が動いたりすると、基端縁712に力がかかり易い。横切り込み部721が基端縁712に対して比較的近く、縦切り込み部722が基端縁712に対して比較的遠いため、穴本体部71の基端縁712に力が掛かかって基端縁712から本体部2が引き裂かれた際に、縦切り込み部722よりも横切り込み部721に引き裂かれた部分が到達し易い。よって、縦切り込み部722によって尻尾穴70の寸法を縦方向に拡大するよりも、横切り込み部721によって尻尾穴70の寸法を横方向Wに拡大し易くなる。
横切り込み部721は、基端縁712から横方向Wに延びる横延長線LW712上に配置され、縦切り込み部722は、基端縁712から縦方向Zに延びる縦延長線LZ712上からずれた位置に配置されてよい。横延長線LW712及び縦延長線LZ712を図6において示す。横切り込み部721の横方向Wの内側縁は、横切り込み部721の横方向Wの外側縁よりも縦方向Zの内側に位置し、横延長線LW712上に配置されている。縦切り込み部722の横方向Wの内側縁は、縦切り込み部722の横方向Wの外側縁よりも縦方向Zの内側に位置している。縦切り込み部722の横方向Wの内側縁及び外側縁は、いずれも縦延長線LZ712よりも横方向Wの内側に配置されている。基端縁712に掛かった力は、シートの繊維の配向や各部材が延びる方向である横方向W及び縦方向Zに伝達し易い。基端縁712から横方向Wに延びる横延長線LW712上に横切り込み部721が配置されており、基端縁712から縦方向Zに延びる縦延長線LZ712上に縦切り込み部722が配置されていないため、穴本体部71の基端縁712に力が掛かかって基端縁712から本体部2が引き裂かれた際に、縦切り込み部722よりも横切り込み部721に引き裂かれた部分が到達し易い。よって、縦切り込み部722によって尻尾穴70の寸法を縦方向に拡大するよりも、横切り込み部721によって尻尾穴70の寸法を横方向Wに拡大し易くなる。
縦切り込み部722と穴本体部71との縦方向Zの距離G742は、縦切り込み部722の長さL722よりも長くてよい。一般的に、切り込み部72の長さが長い程、切り込み部72から周囲に引き裂かれ易く、切り込み部72の長さが短い程、切り込み部72から周囲に引き裂かれ難い。また、切り込み部72と穴本体部71との間隔が短い程、穴本体部71から切り込み部72に引き裂かれ易く、切り込み部72と穴本体部71との間隔が長い程、穴本体部71から切り込み部72に引き裂かれ難い。縦切り込み部722と穴本体部71との縦方向Zの距離G742が縦切り込み部の長さL722よりも長いため、縦切り込み部から縦方向に沿って引き裂かれ難く、縦切り込み部を介して縦方向の寸法が大きくなることを抑制できる。
表面シート10及び裏面シート20の少なくとも一方のシートの縦方向Zに沿う引張強度は、一方のシートの横方向Wに沿う引張強度よりも高くてよい。穴本体部71は、表面シート10及び裏面シート20が切断された部分である。表面シート10と裏面シート20の少なくともいずれか一方における縦方向Zに沿う引張強度が高いため、尻尾穴の開口が縦方向Zに広がり難い。よって、尻尾穴の開口が縦方向Zに広がることに起因して、おむつが縦方向Zにずれることを抑制できる。
シートの引張強度は、以下の方法によって測定できる。(1)引張試験機を準備し、チャック間距離:40mm、及びチャック引張速度:100mm/minにセットする。(2)試料を、100mm×25mm(縦方向×横方向)にカットする。(3)試料の縦方向の一方の端部を、引張試験機の上部チャックに、深さ約10mmがチャックに挟まれるようにセットする。(4)同様に、試料の縦方向の他方の端部を、引張試験機の下部チャックに、深さ約10mmがチャックに挟まれるようにセットする。(5)チャック引張速度100mm/minで、引張試験をスタートし、試料が破断するまで引張試験を実施する。(6)変位150mmの間の引張強度の最大値を記録する。(7)上記操作をさらに4回繰返し、計5回の引張強度の最大値の平均値を算出する。上記引張試験機としては、例えば、(株)島津製作所製のオートグラフ型引張試験機形式AG−1KNIが挙げられる。
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。