JP2021079317A - アルコール製造用触媒及びその製造方法、並びにアルコールの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】オレフィンの水和反応によるアルコールの製造において、経時的な収率低下を抑制することのできる触媒、及びその製造方法の提供。【解決手段】シリカ担体上にヘテロポリ酸又はその塩と、周期表の第4又は第5周期に属し、かつ第5から第12族のいずれかに属する金属の酸化物の少なくとも一種とが担持されている、オレフィンの水和反応によるアルコール製造用触媒。金属がRuである触媒。シリカ担体に、周期表の第4又は第5周期に属し、かつ第5から第12族のいずれかに属する金属の少なくとも一種の金属塩水溶液を含浸させること、シリカ担体を乾燥後焼成して、金属の酸化物が担持されたシリカ担体を調製すること、及びシリカ担体にヘテロポリ酸又はその塩の溶液を含浸させて、ヘテロポリ酸又はその塩が担持されたシリカ担体を調製することを含む、触媒の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、オレフィンの水和反応によるアルコール製造用触媒、特にエチレンからのエタノールの製造に好適なアルコール製造用触媒、及びその製造方法、並びに該触媒を用いたアルコールの製造方法に関する。
工業用エタノールは有機溶剤、有機合成原料、消毒剤、化学品などの中間体として広く使用される重要な工業化学製品である。工業用エタノールは、硫酸、スルホン酸などの液体の酸、ゼオライト触媒、タングステン、ニオブ、タンタルなどを含む金属酸化物触媒、リンタングステン酸、ケイタングステン酸などのヘテロポリ酸又はリン酸をシリカ担体、珪藻土担体などに担持させた固体酸触媒の存在下、エチレンの水和反応により得られることが知られている。硫酸、スルホン酸などの液体の酸を触媒とした液相のエチレン水和反応は、反応に使用された酸の後処理を必要とし、加えて活性が低いため、その工業的な利用は制限されている。一方、触媒成分を担体に担持させた固体酸触媒を用いたエチレンの水和反応は、気相で行うことができ、反応物と触媒の分離が容易であり、反応速度的に有利な高温条件又は平衡論的に有利な高圧条件で反応を行うことができるというメリットがある。固体酸触媒に関しては、これまでに多くの提案がなされており、特に、リン酸を担体に担持させた触媒を用いた気相反応プロセスは工業的に実施されている。しかし、このリン酸を担体に担持させた触媒を用いる工業プロセスでは、連続的に活性成分であるリン酸の流出が起こり、その結果活性及び選択性が低下するため継続的なリン酸の供給が必要である。また、流出したリン酸が装置を腐食するため、反応器及びその他の設備の定期的なメンテナンスが必要であり、反応器及び設備の維持に多くのコストがかかる。また、リン酸担持触媒は、水蒸気との接触により物理的及び化学的に劣化する。そのため、リン酸担持触媒を長期間使用するとその活性が低下し、場合によっては担体粒子が互いに凝集してブロック状となり、触媒の取替え及び抜き出しが極めて困難となる。このため、上記問題点を解決する新規な担体及び担持型の触媒の開発が行われている。
例えば、酸化チタンを担体とし、酸化チタン及び酸化タングステンを必須成分とする、リン酸が流出するおそれのない触媒を用いたエチレンの水和反応が知られている(特許文献1)。従来のシリカ担体に担持されたリン酸触媒に比べて、収率及び選択性に優れており、担体の粒子強度の低下が防止された、リン酸を少なくとも1.23mL/gの平均細孔容積を有するシリカ担体に担持させた触媒を用いたエチレンの水和反応によるエタノールの製造方法が開示されている(特許文献2)。性能の改良されたエチレンの水和反応によるエタノール製造用担持型触媒として、ヘテロポリ酸を燃焼法により得られるフュームドシリカに担持させた触媒が開示されている(特許文献3)。ヘテロポリ酸触媒の性能を改善する方法として、ヘテロポリ酸を熱酸で処理されたクレー担体に担持させた触媒が提案されている(特許文献4)。オレフィンの水和反応に好適な担持型触媒の担体として、細孔容積、比表面積、及び細孔直径が特定されたシリカ担体が開示されており、該シリカ担体を用いたエチレンの水和反応によるエタノール製造用触媒も例示されている(特許文献5)。
特許第3041414号公報 特開平10−101601号公報 特許第3901233号公報 特開平8−225473号公報 特開2003−190786号公報
しかし、上記開示のいずれも、触媒の担持成分の流出、経時的な収率低下などの問題を有しており、工業的に利用するには十分ではない。
本発明は、オレフィンの水和反応によるアルコールの製造において、経時的な収率低下を抑制することのできる触媒、及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは鋭意検討の結果、シリカ担体上にヘテロポリ酸又はその塩と、周期表の第4又は第5周期に属し、かつ第5から第12族のいずれかに属する金属の酸化物の少なくとも一種とが担持されている固体酸触媒が、オレフィン水和反応によるアルコール製造用触媒として、経時的な収率低下の抑制において優れた性能を有することを見出した。
即ち、本発明は、以下の[1]〜[8]に関する。
[1]
シリカ担体上にヘテロポリ酸又はその塩と、周期表の第4又は第5周期に属し、かつ第5から第12族のいずれかに属する金属の酸化物の少なくとも一種とが担持されていることを特徴とする、オレフィンの水和反応によるアルコール製造用触媒。
[2]
前記金属がRu、Pd、Nb、及びCrからなる群より選ばれる少なくとも一種である[1]に記載の触媒。
[3]
前記金属がRuである[1]に記載の触媒。
[4]
前記金属の酸化物の担持量が前記シリカ担体100質量部に対して0.01〜1.5質量部である[1]〜[3]のいずれかに記載の触媒。
[5]
オレフィンの水和反応によるアルコールの製造において、[1]〜[4]のいずれかに記載の触媒を用いることを特徴とするアルコールの製造方法。
[6]
オレフィンの水和反応が、式(1)で表される[5]に記載のアルコールの製造方法。
Figure 2021079317
(式中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1〜3のアルキル基を表し、R〜Rの合計の炭素原子数は0〜3である。)
[7]
式(1)中のR〜Rがすべて水素原子である[6]に記載のアルコールの製造方法。
[8]
シリカ担体に、周期表の第4又は第5周期に属し、かつ第5から第12族のいずれかに属する金属の少なくとも一種の金属塩水溶液を含浸させること、前記シリカ担体を乾燥後焼成して、前記金属の酸化物が担持されたシリカ担体を調製すること、及び前記シリカ担体にヘテロポリ酸又はその塩の溶液を含浸させて、前記ヘテロポリ酸又はその塩が担持されたシリカ担体を調製することを含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の触媒の製造方法。
本発明の固体酸触媒を、水とオレフィン、例えばエチレンとの水和反応によるアルコールの製造に使用することで、経時的な収率低下を抑制することができる。
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明するが、本発明はこれらの形態のみに限定されるものではなく、その精神と実施の範囲内において様々な応用が可能であることを理解されたい。
(オレフィンの水和反応)
オレフィンの水和反応によるアルコール製造の具体例を式(1)に示す。
Figure 2021079317
(式中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1〜3のアルキル基を表し、R〜Rの合計の炭素原子数は0〜3である。)
(アルコール製造用固体酸触媒)
アルコール製造用固体酸触媒(以下、「アルコール製造用触媒」と記すことがある。)は、シリカ担体上に担持された、ヘテロポリ酸又はその塩と、周期表の第4又は第5周期に属し、かつ第5から第12族のいずれかに属する金属の酸化物の少なくとも一種とを含む。
(シリカ担体)
本発明では、担体としてシリカを用いる。触媒の担体用として用いられているシリカであれば、特に制限はなく使用できるが、下記実施態様のシリカ担体を用いることが好ましい。
一実施形態のシリカ担体は、燃焼法により得られたフュームドシリカと、ゲル法で得られたシリカゲルと、ゾルゲル法又は水ガラス法で得られたコロイダルシリカとを混練し、混練物を成形し、次いで成形体を焼成することにより得ることができる。
このような合成シリカは、高純度のシリカ原料を用いることで高純度なシリカを得ることができるため、天然シリカよりも好ましい。
フュームドシリカに制限はなく、一般的なフュームドシリカを使用することができる。市販されているフュームドシリカの例としては、日本アエロジル株式会社製のアエロジル(商標)、株式会社トクヤマ製のレオロシール(商標)、キャボットコーポレーション社製のCAB−O−SIL(商標)等を挙げることができる。市販されているフュームドシリカには、親水性と疎水性のグレードがあるが、いずれのものも使用することができる。代表的なフュームドシリカは、物性値として例えば一次粒子径7〜40nm、比表面積50〜500m/gを有し、多孔質ではなく内部表面積がなく非晶質であり、酸化ケイ素としての純度が99%以上と高く、金属及び重金属を殆ど含まないといった特徴を有する。
シリカゲルにも制限はなく、一般的なシリカゲルを使用することができる。市販されているシリカゲルの例としては、東ソー・シリカ株式会社製のNIPGEL、水澤化学工業株式会社製のMIZUKASIL、富士シリシア化学株式会社製のCARiACT、AGCエスアイテック株式会社製のサンスフェア等を挙げることができる。一般に、シリカゲルは、珪砂(SiO)とソーダ灰(NaCO)を混合溶融して得られるケイ酸ソーダガラス(カレット)を水に溶解したケイ酸ソーダを原料に用い、ケイ酸ソーダと硫酸のような鉱酸との反応を酸性条件下で行い、一次粒子の成長を抑えた状態で凝集を起こすことで、反応液全体をゲル化させることにより製造される。シリカゲルの物性としては特に制限されないが、シリカゲルは、一次粒子が小さく、比表面積が高く、二次粒子が硬いといった特徴を有する。シリカゲルの具体的な物性の例としては、BET比表面積が200〜1000m/g、二次粒子径が1〜30μm、窒素ガス吸着法(BJH法)による細孔容積が0.3〜2.5mL/gであることが挙げられる。シリカゲルの純度は高いほど好ましく、好ましい純度としては95質量%以上、より好ましくは98質量%以上である。
コロイダルシリカも特に制限されず、一般的なコロイダルシリカを使用することができる。市販されているコロイダルシリカの例としては、日産化学株式会社製のスノーテックス(商標)、日本化学工業株式会社製のシリカドール、株式会社ADEKA製のアデライト、キャボットコーポレーション社製のCAB−O−SIL(商標)TG−Cコロイダルシリカ、扶桑化学工業株式会社製のクォートロン(商標)等を挙げることができる。コロイダルシリカは、シリカ微粒子を水等の媒体に分散させたものである。コロイダルシリカの製造方法として、水ガラス法とアルコキシシランの加水分解によるゾルゲル法があり、どちらの製法で製造されたコロイダルシリカでも用いることができる。水ガラス法で製造されたコロイダルシリカとゾルゲル法で製造されたコロイダルシリカを組み合わせて使用してもよい。コロイダルシリカの代表的な物性としては、粒子径が4〜80nm、水又は有機溶剤中に分散しているシリカの固形分濃度が5〜40質量%であることが挙げられる。コロイダルシリカ中の不純物濃度は、担持する触媒活性成分に影響を及ぼすおそれがあるので、低い方が望ましい。固形分中のシリカ純度は、99質量%以上であることが好ましく、99.5質量%以上であることがより好ましい。
シリカ担体は、細孔径が2〜50nmのメソ細孔及び細孔径が50nm超、1000nm以下のマクロ細孔を有してもよい。シリカ担体において、各細孔の分布割合については特に制限されず、シリカ担体を用いる反応の種類によって適切な細孔径分布割合を選択することができる。
シリカ担体のガス吸着法(BJH法)によるメソ細孔の平均細孔径は、3〜16nmであることが好ましい。シリカ担体のガス吸着法(BJH法)によるメソ細孔の平均細孔径は、より好ましくは4〜14nmであり、さらに好ましくは5〜12nmである。シリカ担体のガス吸着法(BJH法)によるメソ細孔の平均細孔径が3〜16nmの範囲であると、BET法による比表面積が十分な値となる。
水銀圧入法による細孔径分布において、シリカ担体のマクロ細孔の細孔容積(全マクロ細孔容積の積分値)が0.05〜0.50cc/gであることが好ましい。シリカ担体のマクロ細孔の細孔容積は、より好ましくは0.07〜0.40cc/gであり、さらに好ましくは0.10〜0.30cc/gである。シリカ担体のマクロ細孔の細孔容積が0.05〜0.50cc/gの範囲であると、物質の拡散速度と担体の強度が両立できる。
シリカ担体のBET法による比表面積(BET比表面積)は、200〜500m/gであることが好ましい。シリカ担体のBET比表面積は、より好ましくは220〜400m/gであり、さらに好ましくは240〜400m/gである。シリカ担体のBET比表面積が200〜500m/gの範囲であると触媒化した場合に十分な反応速度を得ることができる。
シリカ担体の嵩密度は、300〜700g/Lであることが好ましい。シリカ担体の嵩密度は、より好ましくは400〜650g/Lであり、さらに好ましくは450〜600g/Lである。シリカ担体の嵩密度が300〜700g/Lの範囲であると、必要量の活性成分を担持できるとともに、担体の強度も維持できる。
(金属酸化物)
シリカ担体に担持させる金属の酸化物は、周期表の第4又は第5周期に属し、かつ第5から第12族のいずれかに属する金属の酸化物の少なくとも一種である。周期表の第4又は第5周期に属し、かつ第5から第12族のいずれかに属する金属としては、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、及びCdが挙げられる。これらの中でも、その酸化物の耐水性及び耐酸性が高く、反応基質である水、及びシリカ担体上で共存するヘテロポリ酸と相互作用しにくいという観点から、Ru、Pd、Nb、及びCrが好ましく、Ruが最も好ましい。
具体的な金属酸化物としては、
酸化ルテニウム(IV) RuO
酸化パラジウム(IV) PdO
酸化ニオブ(V) Nb
酸化クロム(III) Cr
などを挙げることができるが、金属酸化物中の金属の酸化数はこれらに限定されず、またこれらの金属酸化物の組み合わせに制限はない。
これらの金属酸化物は耐水性及び耐酸性が高く、反応基質である水、及びシリカ担体上で共存するヘテロポリ酸と相互作用しにくいことが特徴である。
(ヘテロポリ酸又はその塩)
ヘテロポリ酸とは、中心元素及び酸素が結合した周辺元素からなるものである。中心元素は、通常ケイ素又はリンであるが、元素の周期表の第1〜17族の多種の元素から選ばれる任意の1つからなることができる。具体的には、例えば、第二銅イオン;二価のベリリウム、亜鉛、コバルト又はニッケルのイオン;三価のホウ素、アルミニウム、ガリウム、鉄、セリウム、ヒ素、アンチモン、リン、ビスマス、クロム又はロジウムのイオン;四価のケイ素、ゲルマニウム、スズ、チタン、ジルコニウム、バナジウム、硫黄、テルル、マンガン、ニッケル、白金、トリウム、ハフニウム、セリウムのイオン及び他の希土類イオン;五価のリン、ヒ素、バナジウム、アンチモンイオン;六価のテルルイオン;及び七価のヨウ素イオン等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。また、周辺元素の具体例としては、タングステン、モリブデン、バナジウム、ニオブ、タンタル等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
このようなヘテロポリ酸は、また、「ポリオキソアニオン」、「ポリオキソ金属塩」又は「酸化金属クラスター」として知られている。よく知られているアニオン類のいくつかの構造には、この分野の研究者本人にちなんで名前が付けられており、例えば、ケギン(Keggin)型構造、ウエルス−ドーソン(Wells−Dawson)型構造及びアンダーソン−エバンス−ペアロフ(Anderson−Evans−Perloff)型構造が知られている。詳しくは、「ポリ酸の化学」(社団法人日本化学会編、季刊化学総説No.20、1993年)に記載がある。ヘテロポリ酸は、通常高分子量、例えば、700〜8500の範囲の分子量を有し、その単量体だけでなく、二量体錯体をも含む。
ヘテロポリ酸は、特にヘテロポリ酸が遊離酸及びいくつかの塩である場合、水又は他の酸素化溶媒のような極性溶媒に対して比較的高い溶解度を有する。それらの溶解度は適当な対イオンを選択することにより制御することができる。
触媒として用いることができるヘテロポリ酸の例としては
ケイタングステン酸 H[SiW1240]・xH
リンタングステン酸 H[PW1240]・xH
リンモリブデン酸 H[PMo1240]・xH
ケイモリブデン酸 H[SiMo1240]・xH
ケイバナドタングステン酸 H4+n[SiV12−n40]・xH
リンバナドタングステン酸 H3+n[PV12−n40]・xH
リンバナドモリブデン酸 H3+n[PVMo12−n40]・xH
ケイバナドモリブデン酸 H4+n[SiVMo12−n40]・xH
ケイモリブドタングステン酸 H[SiMo12−n40]・xH
リンモリブドタングステン酸 H[PMo12−n40]・xH
(式中、nは1〜11の整数であり、xは1以上の整数である。)
などを挙げることができるが、これらに限定されない。
ヘテロポリ酸は、ケイタングステン酸、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸、ケイバナドタングステン酸、又はリンバナドタングステン酸であることが好ましく、ケイタングステン酸、リンタングステン酸、ケイバナドタングステン酸、又はリンバナドタングステン酸であることがより好ましい。
ヘテロポリ酸の塩の例としては、上記ヘテロポリ酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、銅塩、金塩、ガリウム塩、及びアンモニウム塩などが挙げられる。
(シリカ担体の調製法)
シリカ担体の調製法に特に制限はない。例えばフュームドシリカ、シリカゲル、及びコロイダルシリカ、並びに必要に応じて、水及び/又は添加剤をニーダーに入れて混練し、混練物を調製する。次いで、所望のサイズの円孔を先端に設けたダイスを取り付けた押出成形機に、混練物を投入し、押出成形機から押し出された中間物を所望のサイズになるように、カッターで切断しながら、円柱状の焼成前成形体を得ることができる。焼成前成形体をマルメライザー(登録商標)で処理を行った後、予備乾燥を行い、次いで、空気雰囲気下、700〜900℃の温度で焼成処理を行うことで、シリカ担体を得ることができる。
用いるシリカ担体はいかなる形状であってもよく、その形状に特に制限はない。シリカ担体は、例えば、粉末状、球状、ペレット状などであってよく、球状、又はペレット状であることが好ましい。シリカ担体の粒径も特に制限はない。シリカ担体の粒径は、反応の形態により異なるが、固定床方式で用いる場合には、2mm〜10mmであることが好ましく、3mm〜7mmであることがより好ましい。
(金属酸化物のシリカ担体への担持法)
周期表の第4又は第5周期に属し、かつ第5から第12族のいずれかに属する金属の酸化物のシリカ担体への担持法に特に制限はない。例えば該金属の金属塩を担体の吸水液量相当の蒸留水などに溶解させ、その溶液を担体に含浸させ、乾燥後に焼成することにより該金属の酸化物が担持されたシリカ担体を調製することができる。別の実施態様では、該金属酸化物の担体への担持量は、担体を過剰量の該金属塩の溶液中に適度に動かしながら浸漬し、その後濾過して過剰の該金属塩を取り除くことにより調整することもできる。溶液又は懸濁液の容積は用いる担体、担持方法などにより異なる。該金属塩が含浸された担体を、加熱オーブン内に数時間おいて溶媒を蒸発させた後、数時間焼成することにより、該金属酸化物が担持されたシリカ担体を得ることができる。乾燥方法及び焼成方法に特に制限はなく、静置式、ベルトコンベア式など、様々な方法を用いることができる。シリカ担体に担持させた金属酸化物の組成及び担持量は、ICP、XRF等の化学分析によって正確に測定することができる。
上記金属酸化物のシリカ担体への担持量は、シリカ担体100質量部に対して、該金属酸化物の合計質量で0.01〜1.5質量部とすることが好ましく、0.03〜1.0質量部とすることがより好ましい。
(ヘテロポリ酸の調製法)
ヘテロポリ酸の調製法としては、特に制限はなく、どのような方法を用いてもよい。例えば、モリブデン酸又はタングステン酸の塩とヘテロ原子の単純酸素酸又はその塩を含む酸性水溶液(pH1〜pH2程度)を熱することによってヘテロポリ酸を得ることができる。ヘテロポリ酸の製造の具体例は、「新実験化学講座8 無機化合物の合成(III)」(社団法人日本化学会編、丸善株式会社発行、昭和59年8月20日、第3版)の1413頁に記載されているが、これに限定されるものではない。合成したヘテロポリ酸の構造確認は、化学分析のほか、X線回折、UV、又はIRの測定により行うことができる。
(ヘテロポリ酸又はその塩のシリカ担体への担持法)
ヘテロポリ酸又はその塩の担体への担持法に特に制限はない。例えばヘテロポリ酸又はその塩を担体の吸水液量相当の蒸留水などに溶解させ、その溶液を担体に含浸させることによりヘテロポリ酸又はその塩が担持されたシリカ担体を調製することができる。別の実施態様では、ヘテロポリ酸又はその塩の担体への担持量は、担体を過剰量のヘテロポリ酸又はその塩の溶液中に適度に動かしながら浸漬し、その後濾過して過剰のヘテロポリ酸又はその塩を取り除くことにより調整することもできる。溶液又は懸濁液の容積は用いる担体、担持方法などにより異なる。ヘテロポリ酸又はその塩が含浸された担体を、加熱オーブン内に数時間おいて溶媒を蒸発させることにより、担体に担持された固体酸触媒を得ることができる。乾燥方法に特に制限はなく、静置式、ベルトコンベア式など、様々な方法を用いることができる。シリカ担体に担持させたヘテロポリ酸又はその塩の組成及び担持量は、ICP、XRF等の化学分析によって正確に測定することができる。
ヘテロポリ酸又はその塩のシリカ担体への担持量は、シリカ担体100質量部に対して、ヘテロポリ酸又はその塩の合計質量で10〜200質量部とすることが好ましい。
上記金属酸化物のシリカ担体への担持、及びヘテロポリ酸又はその塩のシリカ担体への担持の順序に特に制限はないが、該金属酸化物をシリカ担体に担持させた後に、ヘテロポリ酸又はその塩をシリカ担体に担持させることが、シリカ担体の表面を該金属酸化物で効果的に保護し、かつヘテロポリ酸の活性表面を最大化することができる点で好ましい。
(オレフィンの水和反応によるアルコールの製造方法)
次に、アルコール製造用固体酸触媒を用いたオレフィンの水和反応によるアルコールの製造方法について説明する。
オレフィンの水和反応で使用することができるオレフィンは特に限定されないが、炭素原子数2〜5のオレフィンが好ましい。オレフィンは、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン、ペンテン又はそれらの二種以上の混合物であることがさらに好ましい。
具体的なオレフィンの水和反応の例は式(1)で示される。
Figure 2021079317
(式中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1〜3のアルキル基を表し、R〜Rの合計の炭素原子数は0〜3である。)
式(1)において、R〜Rは水素原子であることが好ましく、R〜Rがすべて水素原子であることがより好ましい。即ち、エチレンを原料としてエタノールを生成する反応であることが最も好適である。
オレフィンと水との使用割合に制限はないが、反応速度に対するオレフィンの濃度依存性が大きいこと、水濃度が高い場合、アルコール製造プロセスのエネルギーコストが上昇することから、オレフィンと水とのモル比は、水:オレフィン=0.01〜2.0であることが好ましく、水:オレフィン=0.1〜1.0であることがより好ましい。
オレフィンの水和反応の形式に制限はなく、いずれの反応形式を用いることができる。好ましい形式としては、触媒との分離のし易さ、及び反応効率の観点から、固定床形式、流動床形式、懸濁床形式などを挙げることができる。触媒との分離に最もエネルギーを必要としない固定床形式がより好ましい。
固定床形式を用いる場合のガス空間速度は、特に制限されないが、エネルギー、及び反応効率の観点から、好ましくは500〜15000/hr、より好ましくは1000〜10000/hrである。ガス空間速度が500/hr以上であれば、触媒の使用量を効果的に削減することができる。ガス空間速度が15000/hr以下であれば、ガス循環量を減少させて、アルコールをより効率的に製造することができる。
オレフィンの水和反応における反応圧力に制限はない。オレフィンの水和反応は、分子数が減る反応であるから、一般に高圧で行うことが有利である。反応圧力は、好ましくは0.5〜7.0MPaGであり、より好ましくは1.5〜4.0MPaGである。「G」はゲージ圧を意味する。反応圧力が0.5MPaG以上であれば、十分な反応速度を得ることができる。反応圧力が7.0MPaG以下であれば、オレフィンの凝縮対策及びオレフィンの蒸発に係る設備の設置、高圧ガス保安対策に係る設備、及びエネルギーに関するコストの増加を抑えることができる。
オレフィンの水和反応の反応温度は、特に制限されず、幅広い温度で実施することができる。反応温度は、ヘテロポリ酸の熱安定性、及び原料の一つである水の凝縮防止の観点から、好ましくは100〜550℃であり、より好ましくは150〜350℃である。
オレフィンの水和反応は平衡反応であり、オレフィンの転化率は最大でも平衡転化率となる。例えば、エチレンの水和によるエタノールの製造における平衡転化率は、温度200℃、圧力2.0MPaGの時、7.5%と計算される。したがって、オレフィンの水和によるアルコールの製造方法においては、平衡転化率によって最大の転化率が決まり、エチレンの例に見られるように、平衡転化率が小さい傾向があるので、工業的には、オレフィンの水和反応を穏やかな条件下で高効率に実施することが強く求められている。
オレフィンの水和反応では、未反応のオレフィンを反応器へリサイクルすることによりオレフィンのロスを削減することができる。反応器へ未反応オレフィンをリサイクルする方法に制限はなく、反応器から出てきたプロセス流体からオレフィンを単離してリサイクルしてもよく、その他の不活性成分と一緒にリサイクルしてもよい。通常、工業グレードのエチレンには、極少量のエタンが含まれていることが多く、エタンを含んだエチレンを使用して、未反応のエチレンを反応器へリサイクルする際は、エタンの濃縮及び蓄積を防止するために、回収したエチレンガスの一部を系外にパージすることが望ましい。
オレフィンの水和反応においては、生成したアルコールが脱水してエーテル化合物が副生物として生じることがある。例えば、エチレンの水和によりエタノールを得る場合、ジエチルエーテルが副生する。このジエチルエーテルは、エタノール2分子からの脱水反応により生じるものと考えられる。ジエチルエーテルの副生は、エチレンの水和反応によりエタノールを製造する場合には反応の収率を著しく低下させてしまうが、副生したジエチルエーテルを反応器にリサイクルすることによりジエチルエーテルをエタノールに再度変換することができ、エチレンからエタノールを極めて高効率で製造することができる。副生したジエチルエーテルの反応器へのリサイクル方法は特に制限されないが、例えば反応器の出口成分からジエチルエーテルを単離し反応器へリサイクルする方法、未反応のエチレンと一緒にガス成分として反応器へリサイクルする方法などがある。
(収率の経時変化)
シリカ担体にヘテロポリ酸を担持させた触媒を用いてエチレンの水和反応を長期間行うと、エタノール及びジエチルエーテルの収率が経時的に低下することが確認される。水熱条件下では、シリカが溶解してその比表面積が低下していくことが知られており、オレフィンの水和反応でも触媒及びシリカ担体の比表面積低下が確認される。一般的に、比表面積と活性には相関関係があることから、エタノール及びジエチルエーテルの収率の経時的な低下の原因は、水蒸気の存在に起因するシリカ担体の比表面積低下であると考えられる。
水蒸気が吸着しうるシリカ表面を減らすことで、このような比表面積低下を抑制することが期待される。本発明によれば、耐水性及び耐酸性が高く、反応基質である水、及びシリカ担体上で共存するヘテロポリ酸と相互作用しにくい物質として周期表の第4又は第5周期に属し、かつ第5から第12族のいずれかに属する金属の酸化物をシリカ担体に担持させることにより、シリカ担体の露出表面を低減し、触媒及びシリカ担体の比表面積低下を防止することができる。
触媒及びシリカ担体の比表面積低下は、水熱条件下で触媒をスチーム処理することで再現することができる。即ち、スチーム処理された触媒を用いてアルコールの水和反応を行い、触媒の反応評価を行えば、長期間の反応実験を行わなくとも、長期間反応後の触媒劣化時の反応成績を予測することができる。スチーム処理前後の触媒反応成績(収率)の比較から触媒の安定性を評価することができる。
本発明をさらに以下の実施例及び比較例を参照して説明するが、これらの実施例は本発明の概要を示すもので、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(オレフィンの水和反応)
所定量のアルコール製造用触媒を充填した反応器を所定温度及び圧力に昇温及び昇圧コントロールし、蒸発器により気化した所定量の水、及びマスフローコントローラーより所定量のエチレンを反応器に導入した。反応器通過後の反応ガスを冷却し、凝縮した液体、及び凝縮物が取り除かれた反応ガスを、それぞれ一定時間サンプリングした。サンプリングした液体(反応液)、及び反応ガスを、ガスクロマトフィー分析装置、及びカールフィッシャー分析装置を用いて分析し、反応成績を算出した。
(反応ガスの分析)
サンプリングした反応ガスは、アジレント(Agilent)・テクノロジー株式会社製ガスクロマトグラフィー装置(装置名:7890)を使用し、複数のカラムと二つの検出器によるシステムプログラムで分析した。
・ガスクロマトグラフィー条件
オーブン:40℃で3分間保持後、20℃/分で200℃まで昇温
キャリアガス:ヘリウム
スプリット比:10:1
・使用カラム(アジレント・テクノロジー株式会社製)
HP−1(2m)+GasPro(30m)32m×320μm×0μm
DB−624 60m×320μm×1.8μm
・検出器
フロント検出器:FID(ヒーター230℃、水素流量40mL/分、空気流量400L/分)
バック検出器:FID(ヒーター230℃、水素流量40mL/分、空気流量400L/分)
Aux検出器:TCD(ヒーター230℃、リファレンス流量45mL/分、メークアップ流量2mL/分)
(反応液の分析)
サンプリングした反応液は、アジレント(Agilent)・テクノロジー株式会社製ガスクロマトグラフィー装置(装置名:6850)を使用して分析した。また、反応液中の水濃度は、三菱化学株式会社製のカールフィッシャー分析装置で分析した。
使用カラム:PoraBONDQ 25m×0.53mmID×10μm
オーブン温度:100℃で2分間保持後、5℃/分で240℃まで昇温
インジェクション温度:250℃
検出器温度:300℃
(スチーム処理)
長期間反応による劣化後の触媒の性能を推測するために、反応に供していない触媒に対して以下のスチーム処理を施した。所定量のアルコール製造用触媒を充填した反応器を所定温度及び圧力に昇温及び昇圧コントロールし、蒸発器により気化した所定量の水を反応器に導入し、所定の時間処理した。
<実施例1>
フュームドシリカとして、日本アエロジル株式会社製のアエロジル(商標)300 40質量部、シリカゲルとして、富士シリシア化学株式会社製のCARiACT G6 60質量部、コロイダルシリカとして、日産化学株式会社製のスノーテックス(商標)ST−O 40質量部をニーダーにて混練した後、混練物の状態を観察しながら、水、及び添加剤(メチルセルロースとして信越化学工業株式会社製MC−4000を10質量部、及びセランダーとしてユケン工業株式会社製YB−132Aを5質量部)を適量加え、更に混練して、混練物を得た。次いで、混練物を3mmφの円孔を設けたダイスを取り付けた押出成形機に投入し、混練物を押し出し、押し出された中間物を長さが用いた円孔の直径と同じ長さになるようにカッターで切断しながら押出成形を行った。得られた焼成前のシリカ担体をマルメライザー(登録商標)にて球形化処理し、次いで70℃で24時間以上乾燥した後、空気雰囲気下820℃で焼成処理し、冷却したのちシリカ担体を得た。
シリカ担体に担持される酸化ルテニウム量が、シリカ担体100質量部に対して0.5質量部となるように、富士フイルム和光純薬株式会社製の塩化ルテニウム三水和物0.21gを100mLのビーカーに量りとり、少量の蒸留水を加え、塩化ルテニウムを溶解した後、200mLのメスシリンダーに移液した。次いで、塩化ルテニウム水溶液の液量が、シリカ担体の吸水率の95%になるように蒸留水を加え、全体が均一になるように撹拌した。
担体の吸水率とは、以下の測定方法で測定した数値をいう。
(1)担体約5gを天秤で計量(W1g)し、100mLのビーカーに入れる。
(2)担体を完全に覆うように純水(イオン交換水)約15mLをビーカーに加える。
(3)30分間放置する。
(4)金網上に担体と純水を空けて、純水をきる。
(5)担体の表面に付着した水を、表面の光沢がなくなるまで紙タオルで軽く押して除去する。
(6)担体+純水の質量を測定する(W2g)。
(7)以下の式から担体の吸水率を算出する。
吸水率(g/g−担体)=(W2−W1)/W1
したがって、担体の吸水量(g)は担体の吸水率(g/g)×使用した担体の質量(g)により計算される。
撹拌後に秤量したシリカ担体35mL(19.8g)を200mLメスフラスコに投入し、次に塩化ルテニウムの水溶液を200mLメスフラスコに投入し、塩化ルテニウムの水溶液が担体全体に行きわたるようにメスフラスコ内で混合した。塩化ルテニウムが担持されたシリカ担体を磁性皿に移し、一時間風乾させた後、70℃に調節した熱風乾燥器で12時間乾燥した。乾燥後、空気雰囲気下300℃で焼成処理し、冷却したのち酸化ルテニウムが担持されたシリカ担体を得た。日本無機化学工業株式会社製のケイタングステン酸・26水和物15.0gを100mLのビーカーに量りとり、少量の蒸留水を加え、ケイタングステン酸を溶解した後、200mLのメスシリンダーに移液した。次いで、メスシリンダーのケイタングステン酸溶液の液量が、酸化ルテニウム担持シリカ担体の吸水率の95%になるように蒸留水を加え、全体が均一になるように撹拌した。撹拌後、ケイタングステン酸の水溶液を、200mLのメスフラスコに移液し、次いで、秤量した酸化ルテニウム担持シリカ担体30mLを200mLメスフラスコに投入し、次にケイタングステン酸の水溶液を200mLメスフラスコに投入し、ケイタングステン酸の水溶液が担体全体に行きわたるようにメスフラスコ内で混合した。ケイタングステン酸が担持された酸化ルテニウム担持シリカ担体を磁性皿に移し、1時間風乾させた後、130℃に調節した熱風乾燥器で、5時間乾燥した。乾燥後、デシケーター内に移し、室温になるまで冷却し、触媒1を得た。
<実施例2>
酸化ルテニウムの担持量をシリカ担体100質量部に対して0.05質量部とした以外は実施例1と同様にして触媒2を調製した。
<比較例1>
酸化ルテニウムを担持しなかった以外は実施例1と同様にして比較触媒1を調製した。
(触媒の評価)
触媒を10mL(10g)量りとり、管型の反応器(SUS316製、内径10mm、長さ300mm)に充填し、窒素ガスで置換した後、0.75MPaGまで昇圧した。次いで、反応器を160℃に加熱し、温度が安定した段階で、GHSV(ガス空間速度)が2000/hr、エチレンに対する水のモル比が0.4となる量の水とエチレンを反応器にフィードして、エチレンの水和反応を行った。水及びエチレンのフィード後、温度が安定してから、触媒層のピーク温度が200℃となるように反応器の温度を調整した。ピーク温度が200℃で安定して1時間後から、反応器を通過したガスを冷却し、凝縮した反応液、及び凝縮した反応液が除かれた反応ガスのサンプリングを1時間行った。取得した反応液と反応ガスの質量及びガス流量、並びに分析結果から、触媒の反応成績を算出した。表1に反応成績を示す。
(模擬劣化触媒の評価)
触媒を10mL(10g)量りとり、前記管型反応器に充填し、窒素ガスで置換した後、0.75MPaGまで昇圧した。次いで、反応器を160℃に加熱し、温度が安定した段階で、GHSVが2000/hr、水蒸気/窒素ガスの体積比が43/57となるように水蒸気と窒素ガスを反応器にフィードして、スチーム処理を行った。水蒸気及び窒素ガスのフィード開始後、温度が安定してから、触媒層のピーク温度が165℃となるように反応器の温度を調整した。ピーク温度を165℃で安定させ、7時間処理した。スチーム処理後の触媒を用いて上記と同様にエチレンの水和反応を行った。表1に反応成績を示す。収率維持率とは、以下の式から算出した数値をいう。
収率維持率(%)=(スチーム処理をした触媒を用いた時のエタノールとジエチルエーテルの空時収率の合計)/(未処理の触媒を用いた時のエタノールとジエチルエーテルの空時収率の合計)×100
Figure 2021079317
本発明は、シリカ担体上にヘテロポリ酸又はその塩と、周期表の第4又は第5周期に属し、かつ第5から第12族のいずれかに属する金属の酸化物の少なくとも一種とが担持された触媒と、その触媒を用いたオレフィンの水和反応によるアルコールの製造方法を提供し、経時的な収率低下を抑制することができ、産業上有用である。

Claims (8)

  1. シリカ担体上にヘテロポリ酸又はその塩と、周期表の第4又は第5周期に属し、かつ第5から第12族のいずれかに属する金属の酸化物の少なくとも一種とが担持されていることを特徴とする、オレフィンの水和反応によるアルコール製造用触媒。
  2. 前記金属がRu、Pd、Nb、及びCrからなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の触媒。
  3. 前記金属がRuである請求項1に記載の触媒。
  4. 前記金属の酸化物の担持量が前記シリカ担体100質量部に対して0.01〜1.5質量部である請求項1〜3のいずれか一項に記載の触媒。
  5. オレフィンの水和反応によるアルコールの製造において、請求項1〜4のいずれか一項に記載の触媒を用いることを特徴とするアルコールの製造方法。
  6. オレフィンの水和反応が、式(1)で表される請求項5に記載のアルコールの製造方法。
    Figure 2021079317
    (式中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1〜3のアルキル基を表し、R〜Rの合計の炭素原子数は0〜3である。)
  7. 式(1)中のR〜Rがすべて水素原子である請求項6に記載のアルコールの製造方法。
  8. シリカ担体に、周期表の第4又は第5周期に属し、かつ第5から第12族のいずれかに属する金属の少なくとも一種の金属塩水溶液を含浸させること、前記シリカ担体を乾燥後焼成して、前記金属の酸化物が担持されたシリカ担体を調製すること、及び前記シリカ担体にヘテロポリ酸又はその塩の溶液を含浸させて、前記ヘテロポリ酸又はその塩が担持されたシリカ担体を調製することを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の触媒の製造方法。
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