JP2021075917A - 斜面表層崩壊対策杭工法 - Google Patents

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Abstract

【課題】短い作業時間および低コストでの施工を可能としつつ表土層のうちの特に地表面側の部分が崩壊するのを抑制する斜面表層崩壊対策杭工法を提供する。【解決手段】所定の方向に延びる杭本体10を、その長手方向と地表面101とが交差する姿勢で当該杭本体10の長手方向の先端側から斜面100に打ち込むとともに、所定の方向に延びる羽根部材20を、前記杭本体10の長手方向の基端側の部分に連結された状態で前記斜面100に配設する杭設置工程を実施する。杭設置工程では、杭本体10の先端12が表土層内にとどまるように杭本体10を打ち込むとともに、羽根部材20を、斜面100の地表面101に沿って延びるように斜面100に配設する。【選択図】図1

Description

本発明は、少なくとも地表側の層が基盤層よりも柔らかい表土層で構成され且つ地表面が水平面に対して傾斜している斜面に適用されて、当該斜面の崩壊を抑制するための工法に関する。
山林斜面の多くは、岩を主体とする硬い基盤層と、基盤層の上に存在して岩が粉砕・風化によって細粒化することで形成された粘土、砂、礫からなる比較的やわらかい表土層とで構成されている。山林斜面の崩壊には、表土層に加えて基盤層までが崩壊する深層崩壊と、表土層が崩壊する表層崩壊とがある。一部の山林においては、降雨量が所定量を超えることで表層崩壊が生じるおそれがあり、これを抑制することが望まれている。山林斜面の表層崩壊を抑制するための工法としては、一般的には、特許文献1に開示されているように、杭の先端が基盤層にまで到達するように地表面から杭を打ち込む工法が採用されている。この工法では、基盤層が杭を支えてその倒伏を抑制するので、杭によって表土層の滑動・流動を抑制できる。
特開2012−2012号公報
山林斜面の表層崩壊には、表土層と基盤層との境界面に沿って表土層全体が崩壊するものと、表土層のうち有機物を多量に含む地表面側の部分が崩壊するものとがある。後者の表層崩壊は、1個の崩壊地から崩壊する土砂の量は比較的少ないものの、森林伐採跡地や若齢林等において1回の豪雨によって多数の崩壊が同時に生じやすく、多くの地域で比較的容易に生じるおそれがある。
しかし、杭を基盤層まで打ち込む特許文献1のような従来の工法では、多大な作業時間およびコストがかかってしまうため、多数の地域での施工には限界がある。具体的には、基盤層は非常に硬い層であるため、これに杭を打ち込むためには、まず基盤層に到達するような孔を斜面に開け、次にその孔内に杭を設置し、さらにその後に杭の周囲にセメント等を流し込んで固める必要があり、多大な作業時間とコストがかかる。
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、短い作業時間で且つ低コストで施工でき、表土層のうちの特に地表面側の部分が崩壊するのを抑制できる斜面表層崩壊対策杭工法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するためのものとして、本発明は、少なくとも地表側の層が基盤層よりも柔らかい表土層で構成され且つ地表面が水平面に対して傾斜している斜面に適用されて、当該斜面の崩壊を抑制ための方法であって、所定の方向に延びる杭本体を、その長手方向と前記斜面の前記地表面とが交差する姿勢で当該杭本体の長手方向の先端側から前記斜面に打ち込むとともに、所定の方向に延びる羽根部材を、前記杭本体の長手方向の基端側の部分に連結された状態で前記斜面に配置する杭設置工程を含み、前記杭設置工程では、前記杭本体の先端が前記表土層内にとどまるように当該杭本体を打ち込むとともに、前記羽根部材が前記斜面の前記地表面に沿って延びるように当該羽根部材を前記斜面に配置する、ことを特徴とするものである。
この方法では、表土層の移動開始時において、杭本体の内部に生じる引張り応力を羽根部材に伝達して羽根部材が地表面を押圧する力を増強することができるので、表土層の地表面側の部分のさらなる移動つまりこの部分の崩壊を抑制することができる。具体的には、杭本体が基盤層まで到達していないことで表土層が斜面下方に動き出すと杭本体も傾き、杭本体にはこれを表土層から引き抜く方向の力が作用する。しかし、杭本体の周面と土との間には摩擦力が作用するため杭本体は容易には引き抜かれず、杭本体の内部には下向き(地中向き)の引張り応力が発生する。ここで、前記のように杭本体と羽根部材とは連結されている。そのため、前記の引張り応力は羽根部材に伝達されて、この引張り応力のうち地表面と垂直な方向の分力が羽根部材から地表面に加えられることになる。これより、羽根部材が地表面を押圧する力が増強される。また、杭本体に生じた前記下向きの引張応力の地表面に沿う方向の分力によっても、斜面下方への土の移動が抑制される。
このように、杭本体を基盤層まで打ち込まなくても羽根部材と杭本体とによって表土層の地表面付近の土の崩壊を抑制できることから、本方法では、杭本体をその先端が表土層内にとどまるように斜面に打ち込む。そのため、基盤層まで杭を打ち込む場合に比べて杭本体の打設距離を短くしてこの打設に係る作業時間を短くできるとともにコストを低く抑えることができる。また、杭本体の長さが短いことからこれの打ち込み作業に必要なスペースも小さくて済み、種々の場所での施工が可能になる。
前記構成において、好ましくは、前記杭設置工程の前に実施されて、前記羽根部材と、前記表土層の厚さ寸法よりも短い前記杭本体を準備する準備工程を含み、前記準備工程の実施後且つ前記杭設置工程の実施前に、前記杭本体と前記羽根部材とを連結する。
この構成によれば、杭設置工程において、杭本体の打ち込みと羽根部材の配設とを同時に行うことができ、作業性が向上する。また、杭本体の打ち込みを確実に表土層内にとどめつつ羽根部材を地表面に沿うように配設できる。
前記構成において、好ましくは、前記羽根部材は、前記杭本体の長手方向と直交する方向に延びる回動中心線回りに回動可能に前記杭本体に連結されているとともに、前記回動中心線と交差する方向に延びる形状を有する。
この構成によれば、羽根部材を回動させることで、羽根部材の姿勢を、杭本体の長手方向と交差して杭本体が斜面に打ち込まれた際に羽根部材が地表面に沿って延びる状態となる姿勢と、杭本体の長手方向に沿って延びる姿勢との間で容易に変更できる。羽根部材の姿勢を地表面に沿って延びる姿勢とすれば、羽根部材と地表面との接触面積を大きくして、より広範囲にわたって土の崩壊を羽根部材で抑制できる。羽根部材を杭本体の長手方向に沿って延びる姿勢とすれば、杭本体の長手方向と直交する方向の杭全体の寸法を小さくできる。従って、この構成によれば、羽根部材の姿勢を前記の2つの姿勢に容易に変更できることで、広範囲にわたって土の崩壊を抑制しつつ杭の収容スペースを小さくできる。
前記構成において、好ましくは、前記羽根部材は、その長手方向について前記回動中心線よりも一方側の部分に当該羽根部材の重心が位置するように前記杭本体に連結されており、前記杭本体は、前記羽根部材の回動を規制する規制部材を備え、前記規制部材は、前記羽根部材が、前記杭本体の長手方向と交差する方向に沿って延びる姿勢で、前記羽根部材の長手方向の前記一方側の端部が前記杭本体の先端側に近づく方向に当該羽根部材が回動するのを規制する。
この構成によれば、羽根部材の姿勢を杭本体の長手方向と交差する方向に延びる姿勢ひいては地表面に沿って延びる姿勢に維持した状態で杭本体の打ち込みを行うことができるので、作業性が向上する。
前記とは異なる構成として、前記羽根部材と、前記表土層の厚さ寸法よりも短い前記杭本体とを準備する準備工程を含み、前記杭設置工程では、前記杭本体を前記斜面に打ち込んだ後、前記羽根部材を前記斜面の前記地表面に沿って延びる状態で前記杭本体の上端部に連結する、ようにしてもよい。
この構成では、杭本体を単体で斜面に打ち込むため、杭本体を斜面により確実に適切な姿勢で打ち込むことができる。
前記構成において、好ましくは、前記杭本体および前記羽根部材は、防腐処理がなされた木で形成されている。
この構成によれば、杭本体および羽根部材を鋼管等の金属で形成する場合に比べて、コストを低く抑えることができる。また、土中の水を杭本体および羽根部材に含侵させて膨張させることができ、杭本体および羽根部材の周囲の土の密度を高めることができる。そして、防腐処理がなされていることで、長期間にわたって表土層の崩壊を抑制することができる。
以上説明したように、本発明によれば、短い作業時間および低コストでの施工を実現しつつ表土層のうちの特に地表面側の部分が崩壊するのを抑制できる。
本発明の一実施形態にかかる杭が地面に打ち込まれた状態を示した概略図である。 杭の側面図である。 杭の上面図である。 羽根板が回動する様子を示した杭の側面図である。 ふわふわ杭工法の手順を示したフローチャートである。 複数の杭が地面に打ち込まれた状態を示した概略図である。 複数の杭を搬送するときの様子を示した概略上面図である。 ふわふわ杭工法の作用効果を説明するための図である。 羽根板の効果を検証するための実験結果を示したグラフであって、土塊の変形量と荷重との関係を示したグラフである。 図9に示した実験結果が得られたときの実験装置を示した図であって、(a)は実験装置の概略上面図、(b)は実験装置の概略断面図である。 変形例に係る杭を示した概略上面図である。 他の変形例に係る杭を示した概略上面図である。 ふわふわ杭工法の他の手順を説明するための図である。
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る斜面表層崩壊対策杭工法について説明する。なお、後述するように本発明の斜面表層崩壊対策杭工法では、山林斜面において、基盤層104(図6参照)よりも地表面側に位置する比較的やわらかい土壌層111(図6参照)にのみ杭1を打ち込むことから、以下では、本発明に係る斜面表層崩壊対策杭工法をふわふわ杭工法といって説明する。
(杭の構造)
図1は、ふわふわ杭工法の施工後の状態であって、ふわふわ杭工法で用いられる杭1が山林の斜面を構成する地面100に打ち込まれた状態を示した概略図である。図2、図3は、それぞれ杭1の側面図、上面図である。
杭1は、所定の方向に延びる杭本体10と、所定の方向に延びる羽根板(羽根部材)20とを有する。羽根板20は、杭本体10と同程度の長さを有している。杭本体10と羽根板20とは、ともに防腐処理がなされた木で形成されている。例えば、これら杭本体10と羽根板20とは、ACQ(Alkaline Copper Quaternary)加圧注入加工がなされた木材によって形成される。なお、ACQ加圧注入加工がなされた木材では、20年程度は腐朽が生じないといわれている。また、本実施形態では、これら羽根板20および杭本体10が間伐材によって形成されており、間伐材が有効に利用されている。
杭本体10は略円柱状を有する。例えば、杭本体10は、木の芯に沿って延びて目切れのない(木の繊維が切断されていない)木材で形成されている。このように目切れのない木材で杭本体10を形成すれば、杭本体10の剛性を高くできる。
例えば、杭本体10には、直径が160mm程度で長さが1000mm程度のものが用いられる。なお、十分な長さを有する杭本体10を準備し、これを斜面100に打ち込んだ後に地表面から上方に飛び出ている部分を所定の高さ位置で切断するようにしてもよいが、後述するように、本実施形態では、予め調査した土壌層111の深さ(厚さ寸法)に応じて杭本体10の長さを設定し、設定した長さを有する杭本体10を用いる。
杭本体10の先端部12には三面落し処理がなされており、この先端部12は杭本体10の先端を頂点とする略三角錐状を有している。図1に示すように、杭本体10は、この先端部12側から地面100に打ち込まれる。つまり、杭本体10は、先端部12が下を向く姿勢で地面100に打ち込まれる。以下の杭1の説明では、杭本体10の長手方向を上下方向、杭本体10が地面100に打ち込まれた状態での上を上として説明する。
羽根板20は略四角柱状を有し、羽根板20の長手方向に沿って延びる4つの側面21、22、23、24を有している。
羽根板20は、その二つ側面が杭本体10の中心軸X1と平行となる姿勢で杭本体10の外周面に連結されている。以下では、羽根板20の4つの側面のうち杭本体10の中心軸X1と平行に延びて杭本体10の外周面と向き合う面を第1側面21といい、これに対向する側面であって杭本体10の中心軸X1と平行に延びる他の側面を第2側面22という。また、これら第1側面21と第2側面22の幅方向の一方縁間にわたって延びて、後述する第2の姿勢A2において(図1に示す状態で)羽根板20の上面を構成する側面を第3側面23といい、図1に示す状態で下面を構成する側面を第4側面24という。
例えば、羽根板20には、断面が90mm×90mm程度の正方形状であって長さが900mm程度のものが用いられる。
羽根板20は、杭本体10の中心軸X1と直交する方向に延びる回動中心線X2回りに回動可能に杭本体10の上端部に連結されている。以下では、この回動中心線X2を回動軸X2という。
本実施形態では、羽根板20は、図4の矢印Y1に示すように、羽根板20が杭本体10の中心軸X1と平行な方向に沿って延び(羽根板20が杭本体10の長手方向に沿って延び)且つ、羽根板20の重心Mが回動軸X2よりも上側(杭本体10の長手方向について基端側)となる第1の姿勢A1(図4の点線)と、羽根板20が杭本体10の中心軸X1と直交する方向に沿って延びる(羽根板20が杭本体10の長手方向と交差する方向に延びる)第2の姿勢A2(図4の実線)との間で回動可能となっている。
具体的には、杭本体10の上端部には、その中心軸X1と直交する方向に沿って杭本体10を貫通する貫通孔11が形成されている。羽根板20には、第1側面21と第2側面22とに開口し、羽根板20の長手方向と直交する方向に沿って羽根板20を貫通する貫通孔25が形成されている。杭本体10および羽根板20の各貫通孔11、25には共通のボルト32aが挿通されている。ボルト32aの先端は羽根板20の第2側面22から外側に突出している。このボルト32aの先端にナット32bが螺合されている。なお、ナット32bは、羽根板20の第1側面21と杭本体10の外周面とが当接する位置まで締めこまれており、杭本体10の外周面とこれと向き合う第1側面21とは、当接している。
このように、ボルト32aとナット32bとからなる連結部材32によって、ボルト32aの中心軸X2であって杭本体10の中心軸X1と直交する方向に延びる軸X2回りに回動可能なように、羽根板20は杭本体10に連結されている。
羽根板20の長手方向について、回動軸X2の位置は羽根板20の重心Mからずれている。つまり、貫通孔25は、羽根板20のうちその長手方向について羽根板20の重心Mよりも一方側寄りの位置(図1において右側寄りの位置)に形成されており、羽根板20は、その重心Mよりも長手方向の一方側寄りの位置で杭本体10に連結されている。
ただし、貫通孔25および回動軸X2は、羽根板20の長手方向の一方側の端部ではなく、当該端部よりも中央側に位置している。例えば、図1の例では、羽根板20の重心Mから羽根板20の長手方向の各端部までの長さの比がおよそ1:1であるのに対して、回動軸X2から羽根板20の各端部までの長さの比はおよそ3:2となっている。これより、図4に示すように、羽根板20が第1の姿勢A1にある状態で羽根板20の一部と杭本体10の一部とは重なり合う。また、第2の姿勢A2にある状態で、羽根板20は、杭本体10よりも外側まで延びる。なお、図4に示すように、本実施形態では、第1の姿勢A1にある状態での羽根板20の幅寸法は、杭本体10の外径よりも小さい。
以下では、適宜、羽根板20の長手方向について、羽根板20のうちの回動軸X2よりも一方側の部分であって羽根板20の重心Mを含む部分を重心側部分20aといい、反対側を反重心側部分20bという。また、図4の左右方向であって、羽根板20が第2の姿勢A2にある状態で、重心側部分20aが位置する側を左、反重心側部分20bが位置する側を右として、説明を行う。
杭本体10には、羽根板20の回動範囲を規制するための規制部材が設けられている。本実施形態では、杭本体10に打ち付けられた釘29がこの規制部材として機能する。
図2および図4に示すように、釘29は、羽根板20が第2の姿勢A2にある状態で、羽根板20の重心側部分20aのわずかに下方となる位置で、杭本体10に打ち付けられている。また、釘29は、羽根板20が第2の姿勢A2にある状態で、釘29の一部が上面視で羽根板20の第4側面24と重複するように、杭本体10から図4の紙面手前側に突出する状態で杭本体10に打ち付けられている。
これより、釘29は、第2の姿勢A2にある羽根板20の重心側部分20aに下方から当接して、重心側部分20aがさらに下方に向かう向きに羽根板20が回動するのを規制する。
また、図4に示すように、釘29は、羽根板20が第1の姿勢A1にある状態で、羽根板20の反重心側部分20bのわずかに左方となる位置で、杭本体10に打ち付けられている。
これより、釘29は、第1の姿勢A1にある羽根板20の反重心側部分20bに左方から当接して、反重心側部分20bが左方に向かう向きに、つまり、重心側部分20aが右方に向かう向きに羽根板20が回動するのを規制する。
このようにして、羽根板20は、第1の姿勢A1から左方にのみ回動可能とされ、その回動角度は第2の姿勢A2となるまでの90度に限定される。
(ふわふわ杭工法の手順)
次に、図5、図6、図7を用いて前記の杭1を用いたふわふわ杭工法の手順を説明する。図5は、ふわふわ杭工法の手順を示したフローチャートである。図6は、複数の杭1が地面に打ち込まれた状態を示した概略図である。
まず、対象となる山林斜面100の土壌層111の深さを測定する。
図6に示すように、植物の生息が可能な山林の斜面を構成する地面100は、主として、基盤層104と、これよりも地表側に形成される表土層102とで構成されている。基盤層104は、岩を主体とする層であり、破砕・風化によって亀裂や割れ目が生じた岩からなる層である。表土層102は、岩が粉砕・風化によって細粒化することで形成された粘土、砂、礫からなる層であり、基盤層104よりもやわらかく且つ透水性の高い層である。土壌層111は、表土層102の地表側の部分を構成する層である。表土層102の表面側には樹木や草本植物が生息し、これに伴って小動物や土壌微生物が活動する。その結果、表土層102の表面には、落ち葉等の有機物が堆積する。土壌層111は、このようにして有機物の堆積によって形成された層であって表土層102のうち特にやわらかく透水性の高い層である。なお、山林の急斜面では、表土層102の全体が土壌層111で構成される場合もある。
前記のように、本実施形態に係るふわふわ杭工法では、土壌層111にのみ杭1を打ち込む。これより、まず、対象となる斜面の土壌層111の深さD1を測定する(ステップS1)。
本実施形態では、簡易貫入試験(簡易動的コーン貫入試験)方法を用いて土壌層111の深さを測定する。簡易貫入試験方法は、「地盤工学会基準」(JGS1433)に規定された地盤調査方法であって、地盤調査において一般的に用いられている。簡単に説明すると、簡易貫入試験方法は、地面に立てたロッドに5kgの重りを自由落下させて、ロッドの下端に取付けられたコーンが地中に100mm貫入されるのに要する回数をカウントする方法である。この回数であるNd値が大きいほど、地面は硬いことになる。一般的に、Nd値が30以上の層は基盤層であると判定される。本実施形態では、Nd値が20未満の場合に、コーンの貫入地点の層が土壌層であると判定しており、Nd値が20を超えるまで繰り返し簡易貫入試験を行って、コーンを100mmずつ地中に貫入していく。そして、Nd値が20以上になる層にコーンが到達すると、その到達地点の地表面から距離を土壌層111の深さとして求める。
図6に示すように、本実施形態では、対象となる土地の複数の地点に杭1を打ち込む。これより、対象地の複数の地点で土壌層111の深さを測定する。具体的には、予め杭1の打ち込み地点を決定し、これら地点でそれぞれ測定を行う。なお、所定の地点において土壌層111の深さが過度に浅いときは、その周囲で土壌層111の深さが確保できる地点に打ち込み地点を変更する。
次に、ステップS1での測定結果に基づいて、杭本体10の長さと羽根板20の長さとを決定し、決定した各長さを有する杭本体10と羽根板20とを準備する(ステップS2:準備工程)。
具体的には、各地点に打ち込む杭本体10の寸法を、それぞれ測定した土壌層111の深さと同じあるいはこれよりも短い寸法に決定する。そして、複数の杭本体10を、各地点に対応させて準備する。例えば、杭本体10に地点を表す番号等を記しながらこれらを準備する。また、予め設定された所定の長さを有する複数の羽根板20を準備する。前記のように、本実施形態では、これら杭本体10と羽根板20に間伐材を用いており、前記決定した長さ寸法を有する杭本体10と羽根板20とを間伐材によって形成する。
本発明者らが各地域の山林等において調査を行った結果、土壌層111の深さは概ね1m〜2m程度であり、地表面から深さ1〜2m程度までの範囲に土壌層111は形成されている。これより、前記のように、杭本体10の長さLは1m(1000mm)程度とされる。また、前記の所定の長さ(羽根板20の長さL2)は、0.9m(900mm)程度とされる。
次に、ステップS2で準備した杭本体10と羽根板20とを連結して、杭1を形成する(ステップS3)。具体的には、前記のようにこれら杭本体10と羽根板20とをボルト32aとナット32bとを用いて連結するとともに、杭本体10に釘29を打ち付ける。杭本体10と羽根板20の準備およびこれらの連結作業は、例えば、間伐材の加工工場で行う。
次に、杭1を打ち込み地点に搬送する(ステップS4)。本実施形態では、杭1の製造場所から打ち込み対象地の近くの道路まで杭1を車両で運び、その後、杭1を容器に積み替えて、この容器を人力であるいは山林内を走行可能な車に牽引させて打ち込み対象地に搬送する。ここで、図7に示すように、車両の荷台や容器等の収納部90内には、図7に示すように、杭1を第1の姿勢A1とした状態で積み込む。
次に、山林斜面を構成する地面100に各杭1をそれぞれ打ち込み、各杭1の杭本体10を地面100に打ち込むとともに、羽根板20を地表面101に沿って延びるように地面100に配設する(ステップS5:杭設置工程)。
本実施形態では、杭本体10の中心軸X1と地表面101とが直交するように杭1を打ち込む。また、第2の姿勢A2になったときに羽根板20の重心側部分20aが回動軸X2から斜面100の下向きに延びるように杭1を打ち込む。ここで、この向きで杭1を地表面101に立てれば、羽根板20の重心側部分20aは、その自重で鉛直方向の下方に回動する。そして、釘29により重心側部分20aのさらなる下方への回動が規制されて、杭1の姿勢は第2の姿勢A2となる。これより、杭1を地表面101に立てることで、杭1の姿勢は自動的に第1の姿勢A1から第2の姿勢A2になり、第2の姿勢A2となった杭1が地面100に打ち込まれることになる。
杭1の打ち込みは、図1に示すように、杭本体10の上面が地表面101からわずかに上方に突き出るまで位置まで行う。これにより、土壌層111内に杭本体10のほぼ全体が打ち込まれる。また、羽根板20は、地表面101付近に沿って延びる姿勢で土壌層111に配設される。本実施形態では、羽根板20と地表面101とが接触した状態でさらに杭1が打ち込まれ、これにより、羽根板20は地表面101に圧接される。
なお、杭1を地表面101に立てる作業や杭1を地面100に打ち込む作業は、作業者が直接行ってもよいが、作業車両を用いて行ってもよい。
杭1の打ち込み作業は各打ち込み地点で実施される。本実施形態では、図6に示すように、地表面101に沿ってほぼ等間隔で杭1が打ち込まれる。また、図示は省略したが、図6の紙面と直交する方向に沿ってもほぼ等間隔で複数の杭1が打ち込まれる。例えば、杭1の中心軸X1どうしの距離が2mとなるように複数の杭1が打ち込まれる。
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係るふわふわ杭工法では、杭本体10が、基盤層104よりもやわらかく、且つ、基盤層104よりも地表側に形成されて地表面101を構成する土壌層111にのみ打ち込まれる。そのため、杭本体10の長さを短くでき、コストを抑えることができる。そして、杭本体10の長さが短く且つ打ち込む層が軟らかいことで、杭1を打ち込むのに必要な作業時間を短くできる。また、杭1を打ち込むために大規模な装置を用いる必要がなくなり、これによってもコストを抑えることができる。例えば、従来のように基盤層104まで杭を打ち込む工法では、杭の打ち込み距離が非常に長いことおよび基盤層104が固いことから、まず、基盤層104まで地面をボーリング削孔し、その後、杭を孔内に挿入し、さらにその後、孔と杭との間の隙間をセメント等で固める必要がある。そのため、従来の工法では作業が大規模になるとともに作業時間が極めて長くなる。これに対して、本実施形態に係るふわふわ杭工法では、ボーリング削孔を省略して直接杭1を斜面に打ち込むことができる。従って、削孔に係る作業および杭の周囲にセメントを流し込んでこれを固める作業を省略でき、この作業に必要な装置が不要になるとともに、作業時間を極めて短くできる。
しかも、ふわふわ杭工法では、杭本体10が斜面100に打ち込まれるとともに、杭本体10の上端部に連結された羽根板20が斜面100の地表面101に沿って延びる姿勢でこれに配設される。そのため、土壌層111の崩壊を効果的に抑制できる。
図8を用いて具体的に説明する。土壌層111に多量の水が供給されると、土壌層111は地表面101に沿って斜面の下方に向かって流れようとする。これにより、杭本体10には地表面101と平行な方向の力F1が付与される。土壌層111の中でも地表面側の部分は特に柔らかい。そのため、前記の力F1を受けて、杭本体10の上端は斜面の下方に移動し、杭本体10は、鎖線で示す打ち込み時の姿勢に対して実線で示すように斜面の下向きに倒れる姿勢となる。そして、杭本体10の長さは初期の破線で示した状態から実線で示した状態に引き延ばされて、上方に引っ張られることになる。
これに対して、杭本体10の周面には当該周面と土との間で生じる摩擦力F2が作用する。これより、杭本体10の上方への移動(地中から抜ける方向の移動)は規制され、杭本体10の内部には、前記の摩擦力F2に等しい下向きの引張り応力F3が生じる。この引張り応力F3の地表面101と平行な方向の成分F3_aは、斜面の上向きに働き、土砂が斜面下方に移動するのを規制する。さらに、引張り応力F3の地表面101と直交する方向の成分であって下向き(地中向き)の成分F3_bは、ボルト32aを含む連結部材32を介して羽根板20に伝達されることになる。これより、羽根板20が地表面を押圧する力に前記の引張り応力F3に起因する力F4が加えられて、羽根板20が地表面を押圧する力が増強される。従って、土壌層111の崩壊初期において、羽根板20の下方の土の内部の摩擦力が増大することになり、土のさらなる移動つまり崩壊の進行が抑制される。
このように、本実施形態に係るふわふわ杭工法によれば、コストおよび作業時間を小さくしつつ、土壌層111つまり表土層102の地表面側の部分が崩壊するのを効果的に抑制できる。
図9は、前記の羽根板20の作用効果を調べた実験結果である。図10の(a)、(b)は、それぞれこの実験に用いた実験装置の概略上面図、側面図である。この実験では、土壌層からなる土塊に剪断荷重を加えるという実験を、土塊に杭を打ち込まない場合と、土塊に杭本体のみを打ち込んだ場合と、土塊に羽根板と杭本体とを備える杭を打ち込んだ場合とで実施し、各場合において土塊に付与された荷重と土塊の変位量との関係を調べた。
具体的には、図10に示すように、山林内において、略長方形状の部分の周囲の土を掘り起こして、長さL_a、幅W_a、深さD_aがそれぞれ1200mm、1000mm、1000mmの土塊301を形成した。以下では、土塊301の長手方向であって図10の左右方向を単に左右方向として説明する。そして、油圧ジャッキ310を用いて、土塊301の左上部から土塊301に対して斜め下方に荷重を加えた。詳細には、土塊301の左側面の上部に上斜め右方に傾斜する傾斜面302を形成した。ここでは、土塊301の上面から深さ400mm(図10(b)のD_bの寸法)までの範囲を傾斜させるとともに、傾斜面302の水平面に対する傾斜角度θを60度とした。そして、この傾斜面302に厚さ12mmの鉄製の板材303を当てて、板材303の中央に対して油圧ジャッキ310から荷重を加えた。なお、油圧ジャッキ310からの荷重が板材303に対してこれと直交する方向に付与されるように、つまり、土塊301に対して左側の上部から下斜め右方に荷重が付与されるように、油圧ジャッキ310をコンクリートで形成された支持部材320によって支持した。
ここで、前記のように、左右方向について土塊301の一方側の上部に下斜め他方向きに力を付与したのは、表層崩壊の発生時と同様に土を崩壊させるためである。具体的には、表層崩壊では、前記のように、まず、土に対して地表面に沿う方向に力が付与され、これにより土全体が歪むことで土に亀裂が発生する。そして、この亀裂が発達することで土が崩壊する。これに対して、前記のような土塊301に対して地表面に沿うように力を付与すると、この付与位置と反対側の端部を支点とするモーメントが土塊301に発生してしまい、土塊に歪や亀裂が生じることなく回転してこれによって土が崩壊してしまう。そこで、回転することなく土塊に歪や亀裂が生じて、表層崩壊により近い現象が生じるように本実験では前記のように土塊301に力を付与した。
この実験では、図10に示すような杭401であって、杭本体410と、2枚の羽根板421、422とを備えた木製の杭401を用いた。この杭401では、杭本体410の上部に第1の羽根板421がボルトで連結されるとともに、第2の羽根板422が第1の羽根板421よりも上方においてこれと直交する姿勢で杭本体410にボルトで連結されている。杭本体410の直径は120mm、長さは1000mmである。第1の羽根板421および第2の羽根板422には、直径120mmの丸太を太鼓落とし処理したものを用いており、第1の羽根板421は、およそ80mm×90mm×700mmの柱状を有し、第2の羽根板422は、およそ80mm×90mm×1200mmの柱状を有する。各羽根板421,422は、高さ方向の寸法が90mmとなる状態で羽根板422に連結されている。
図9は、横軸を土塊301の変位量とし、縦軸を土塊301に付与された荷重としたグラフである。また、図10のラインL1は、土塊301に杭を打ち込まなかった場合の結果、ラインL2は、土塊301に杭本体410のみを打ち込んだ場合の結果、ラインL3は、土塊301に杭本体410に羽根板421、422が連結された杭401を打ち込んだ場合の結果である。ここで、横軸の土塊301の変位量は、傾斜面302付近の土の変位量を変位計によって測定したものである。また、荷重は、ロードセルを用いて測定したものである。
図9のラインL1に示すように、杭が打ち込まれていない場合は、ポイントC1であって土塊301の変位量が20mmのときに荷重が最大となり、その後は、変位量の増大に対して荷重は減少していく。これより、この場合では、変位量が20mm程度のときに土塊301の崩壊が生じたと考えられ、土塊301の最大抵抗力(土塊301が崩壊する荷重の最小値)はポイントC1の荷重である13kN程度であるといえる。
これに対して、図9のラインL3に示すように、杭本体410に羽根板421、422が連結された杭401を打ち込んだ場合は、ポイントC3において荷重が最大となる。つまり、土塊301の変位量が85mm程度で荷重が24kN程度のポイントC3において土塊301が崩壊したと考えられ、土塊301の最大抵抗力は24kN程度であるといえる。
このように、杭本体410に羽根板421、422が連結された杭401を用いれば、杭401を打ち込まない場合に比べて、土塊301の最大抵抗力は2倍程度に増強され、土塊301の崩壊が抑制される。
ここで、図9のラインL2に示すように、杭本体410のみを土塊301に打ち込んだ場合も、その最大荷重は20kN程度となり、杭401を打ち込まない場合に比べて土塊301の最大抵抗力は大きくなる。しかし、羽根板421、422を設けた場合に比べるとその値は小さく抑えられる。
また、本実施形態に係るふわふわ杭工法では、まず、土壌層111の深さを測定して、土壌層3の深さ寸法(厚さ寸法)と同じあるいはこれよりも短い杭本体10を準備するとともに、羽根板20を準備する。そして、この杭本体10に羽根板20を連結して杭本体10と羽根板20とが一体となった杭1を形成した後、この杭1を斜面に打ち込んでいく。そのため、杭本体10の打ち込みと羽根板20の地表面への圧接とを同時に行うことができ、作業性が向上する。
また、本実施形態に係る杭1では、羽根板20が所定の方向に延びる形状を有し、杭本体10の長手方向と直交する方向に延びる回動軸X2回りに回動可能に、且つ、回動軸X2と交差する方向に延びるように杭本体10に連結されている。そのため、杭1の姿勢を、杭本体10と羽根板20とが平行に延びる第1の姿勢A1と、羽根板20が杭本体10と交差する方向に延びる第2の姿勢A2との間で容易に変更できる。そのため、前記のように杭1の運搬時等に杭1の姿勢を第1の姿勢A1とすることで、杭本体10の中心軸Xと直交する方向の杭1全体の寸法を短く抑えて、容器の収容スペースを有効に利用できる。そして、杭1を打ち込む際には、杭1を第2の姿勢A2とすることで羽根板20を地表面に沿って延びる状態で地表面に圧接することができ、羽根板20と土との摩擦抵抗を確保できる。
特に、本実施形態に係る杭1では、羽根板20の長手方向について羽根板20の重心Mと回動軸X2とがずれるように構成されるとともに、釘29によって羽根板20が第2の姿勢A2となったときに羽根板20の重心側部分20aが下方(杭本体10の先端側)に回動しないように構成されている。そのため、羽根板20の重心側部分20aの自重によって、杭1の姿勢を、この重心側部分20aが回動軸X2よりも上方に位置する第1の姿勢A1から、第2の姿勢A2へと容易に変更することができる。また、羽根板20を第2の姿勢A2に保持することができる。従って、杭1の打ち込み時に、羽根板20が地表面に沿う姿勢から傾くのを抑制してこれを地表面に適切に圧接することができる。
また、本実施形態に係る杭1では、杭本体10と羽根板20とが防腐処理がなされた木で形成されている。そのため、これらを鋼管等の金属で形成する場合に比べて、コストを低く抑えることができる。また、土中の水を杭本体10および羽根板20に含侵させて、打ち込み時よりもこれらの体積を大きくすることができ、杭1の打ち込みを容易にしつつ杭本体および羽根部材の周囲の土の摩擦力を高めることができる。また、木の方が鋼等の金属よりも表面が荒くなりやすいので、杭本体10および羽根板20を木製とすることでこれらと土との間の摩擦抵抗を大きくできる。そして、防腐処理がなされていることで杭本体10と羽根板20の早期の腐朽を抑制して、長期間にわたって表土層の崩壊を抑制できる。さらに、本実施形態では、これらが間伐材で形成されており、間伐材の有効利用にも役立つ。
(変形例)
前記実施形態では、杭本体10をその中心軸X1と地表面とが直交するように杭1を打ち込んだ場合を説明したが、杭本体10の打ち込み角度はこれに限らない。例えば、急斜面等では、杭本体10の中心軸X1を地表面に直交するラインに一致させて杭1を打ち込むのが難しい。この場合は、杭本体10の中心軸X1と前記ラインとがずれることが考えられる。しかし、これら中心軸X1とラインとが完全に一致していなくても、土壌層111の移動に伴って杭本体10が図8の実線で示す姿勢となることで杭本体10および羽根板20によって土壌層111のさらなる移動を抑制できる。ただし、杭本体10をその中心軸X1と地表面とが直交するように打ち込めば、杭本体10および羽根板20によって土壌層111の移動を効果的に抑制できる。また、地表面に直交するラインに対して杭本体10の上端の方が下端よりも斜面の下側に位置するように杭本体10を傾けて、この傾き角(前記ラインと杭本体10の中心軸X1とのなす角度)を30度程度とすれば、杭本体10による土壌層111の変位に対する抵抗力をより大きくできることが分かっている。これより、このように杭本体10を地表面と直交する方向に対して傾けた状態で地表面に打ち込むようにしてもよい。
また、前記実施形態では、羽根板20の重心側部分20aが杭本体10から斜面の下方に延びるように杭1を斜面に打ち込んだ場合を説明したが、杭1の打ち込み姿勢はこれに限らない。例えば、重心側部分20aが杭本体10から斜面の上方に延びるように杭1を打ち込んでもよい。また、羽根板20が水平方向に延びるように杭1を斜面に打ち込んでもよい。
また、杭本体10および羽根板20の材質は木に限らない。例えば、鋼管等によりこれらを形成してもよい。ただし、前記のように、これらを木製とすればコストの低減効果等を得ることができる。また、杭本体10および羽根板20を木で形成する場合において、その防腐処理の方法は前記に限らない。
また、前記実施形態では、表層土の地表側に土壌層111が形成された斜面に杭1を打ち込む場合について説明したが、杭1は杭本体10が表層土にとどまる範囲で打ち込まれればよく、本実施形態に係るふわふわ工法は、土壌層が形成されていない表層土にも適用可能である。また、杭本体10の先端12が表層土にとどまる範囲において、杭本体10は土壌層111よりも深い位置まで打ち込まれてもよい。例えば、前記の土壌層111の深さD1を測定する工程において、土壌層111の深さD1ではなく表層土の深さを測定し、測定した表層土の深さよりも浅い範囲で杭本体10を打ち込むようにしてもよい。
また、前記実施形態では、各地点に打ち込まれる杭本体10の長さを、それぞれ各地点での土壌層111の深さD1の測定結果に応じて個別に設定する場合を説明した。この方法によれば、各地点において、杭本体10を確実に土壌層111にとどまるように打ち込むことができる。
ただし、杭本体10の長さの設定手順はこれに限らず、各地点に打ち込まれる杭本体10の長さをすべて所定の値に統一してもよい。例えば、杭本体10の長さを、各地点で測定した土壌層111の深さD1の平均値や最小値に揃えてもよい。また、異なる長さの杭本体10をそれぞれ複数準備しておき、各地点に打ち込む杭本体10を、準備した杭本体10の中から前記の測定結果に応じて選ぶようにしてもよい。例えば、長さが異なる2種類の杭本体10を準備しておき、土壌層111の深さD1が所定値以上の地点には長さの長い杭本体10を用い、土壌層111の深さD1が所定値未満の地点には長さの短い杭本体10を用いるようにしてもよい。また、前記のように、土壌層111の深さが概ね1m〜2m程度であることから、土壌層111の深さD1を測定することなく、あるいは、この測定結果を杭1の打ち込み地点を決定することのみに利用して(杭本体10の長さよりも土壌層111の深さが深い地点を打ち込み地点として選定する等)、前記の測定結果に関わらず1m程度の長さを有する杭本体10を準備するようにしてもよい。このように、杭本体10の長さをある程度揃えれば、杭本体10の準備にかかる時間を短くできるとともにコストを低く抑えることができる。
また、前記実施形態では、釘29によって羽根板20の回動を規制する場合を説明したが、この回動を規制するための部材は釘29に限らない。また、羽根板20の回動は規制されなくてもよい。ただし、前記のように、羽根板20の姿勢が第2の姿勢A2にある状態で、羽根板20の重心側部分20aが下向きに回動するのを規制すれば、羽根板20の姿勢を第2の姿勢A2であって杭1の打ち込み後の姿勢に維持することができるので、作業性が向上する。
また、前記実施形態では、1の羽根板20のみが杭本体10に連結される場合を説明したが、前記の実験時の杭401のように複数の羽根板20を杭本体10に連結してもよい。また、複数の羽根板20を設ける場合においても、実験時のような各羽根板20をそれぞれ杭本体10に直接連結するものに代えて、図11や図12のように、連結部材を介して、間接的に羽根板と杭本体とを連結してもよい。
具体的には、図11は、他の例に係る杭501の上面図である。この図11の例では、杭本体510の上端に杭本体510の中心軸X1と直交する方向に延びる連結板502が固定されて、この連結板502の長手方向の両端にそれぞれ1つずつ羽根板521、522が連結されている。この杭501においても、連結板502を介して、杭本体510から各羽根板521、522に杭本体510の周面に生じる摩擦力が伝達されるので、土の崩壊を効果的に抑制することができる。特に、この例では、各羽根板521、522の押圧力を受けて互いに離間する位置で土の摩擦力がそれぞれ高められるため、これら羽根板どうしの間の領域の土の移動も抑制することができ、より広範囲にわたって土の崩壊を抑制できる。
図12は、さらに他の例に係る杭601の上面図である。この図12の例では、杭本体610の中心軸X1と直交し且つ互いに直交する方向に延びる2本の連結板602、603によって、4つの羽根板621、622、623、624が、杭本体10を囲み且つ井形状となるように杭本体610に連結されている。この杭601においても、連結板602、603を介して、杭本体610から各羽根板621〜624に杭本体610の周面に生じる摩擦力が伝達されるので、土の崩壊を効果的に抑制することができる。また、この例では、杭本体610の周囲の土の四方において、その摩擦力が高められるので土の移動をより確実に抑制できる。
また、杭本体10の具体的な形状は前記に限らず、杭本体10は、例えば、角柱状を有していてもよい。また、杭本体10の径や長さ寸法は前記に限らない。ただし、前記のように、一般的に地表面から1〜2m程度までの範囲に土壌層111が形成されていることから、また、作業性の面から、杭本体10の長さは、800mm〜1500mm程度に設定されるのが好ましい。同様に、羽根板20の具体的な寸法も前記に限らない。
また、前記実施形態では、杭本体10に羽根板20を連結して杭1を形成した後に、杭1および杭本体10を斜面100に打ち込む場合を説明したが、これに代えて、杭本体を斜面100に打ち込んだ後に、羽根板を地表面101に沿って延びる状態で杭本体に連結してもよい。つまり、杭本体を斜面100に打ち込むとともに羽根板を杭本体に連結された状態で斜面100に配置する杭設置工程において、杭本体を斜面100に打ち込むというステップと、斜面100に打ち込まれた杭本体に羽根板を地表面101に沿って延びる状態で連結するというステップとを実施するようにしてもよい。
例えば、図13に示すように、まず、杭本体710をその上端と地表面101とが略同じ高さ位置となるように斜面100に打ち込み、その後、杭本体710の上端に羽根板720を載置してこれらを釘730等によって連結してもよい。
この手順によれば、杭本体710の打ち込み作業時に、羽根板720が邪魔にならないため、杭本体710の打ち込み作業を容易に行うことができるとともに、杭本体710をより確実に適切な姿勢で打ち込むことができる。
また、このように羽根板720を連結させずに杭本体710を単独で斜面100に打ち込む方法では、次のようにして杭本体710を土壌層111(あるいは表土層102)にとどまるように打ち込むことができる。すなわち、まず、十分な長さを有する杭本体710(杭本体710の元となる木材)を、その先端が土壌層111(あるいは表土層102)におさまるように斜面100に打ち込む。例えば、打ち込みにかかる力が所定値を超えると杭本体710の先端が土壌層111(あるいは表土層102)とその下の層との境界面に到達したと判定して、打ち込みを停止させる。次に、杭本体701のうち地表面から飛び出ている部分を所定の高さで切断する。その後、杭本体の上端部に羽根板720を連結させる。この手順によれば、土壌層111(あるいは表土層102)の深さを測定する工程を省略あるいは簡略化することができる。
1 杭
10 杭本体
20 羽根板(羽根部材)
29 釘(規制部材)
32 連結部材
100 地面
102 表土層
104 基盤層
111 土壌層

Claims (6)

  1. 少なくとも地表側の層が基盤層よりも柔らかい表土層で構成され且つ地表面が水平面に対して傾斜している斜面に適用されて、当該斜面の崩壊を抑制するための方法であって、
    所定の方向に延びる杭本体を、その長手方向と前記斜面の前記地表面とが交差する姿勢で当該杭本体の長手方向の先端側から前記斜面に打ち込むとともに、所定の方向に延びる羽根部材を、前記杭本体の長手方向の基端側の部分に連結された状態で前記斜面に配置する杭設置工程を含み、
    前記杭設置工程では、前記杭本体の先端が前記表土層内にとどまるように当該杭本体を打ち込むとともに、前記羽根部材が前記斜面の前記地表面に沿って延びるように当該羽根部材を前記斜面に配置する、ことを特徴とする斜面表層崩壊対策杭工法。
  2. 請求項1に記載の斜面表層崩壊対策杭工法において、
    前記杭設置工程の前に実施されて、前記羽根部材と、前記表土層の厚さ寸法よりも短い前記杭本体とを準備する準備工程を含み、
    前記準備工程の実施後且つ前記杭設置工程の実施前に、前記杭本体と前記羽根部材とを連結する、ことを特徴とする斜面表層崩壊対策杭工法。
  3. 請求項2に記載の斜面表層崩壊対策杭工法において、
    前記羽根部材は、前記杭本体の長手方向と直交する方向に延びる回動中心線回りに回動可能に前記杭本体に連結されているとともに、前記回動中心線と交差する方向に延びる形状を有する、ことを特徴とする斜面表層崩壊対策杭工法。
  4. 請求項3に記載の斜面表層崩壊対策杭工法において、
    前記羽根部材は、その長手方向について前記回動中心線よりも一方側の部分に当該羽根部材の重心が位置するように前記杭本体に連結されており、
    前記杭本体は、前記羽根部材の回動を規制する規制部材を備え、
    前記規制部材は、前記羽根部材が、前記杭本体の長手方向と交差する方向に沿って延びる姿勢で、前記羽根部材の長手方向の前記一方側の端部が前記杭本体の先端側に近づく方向に当該羽根部材が回動するのを規制する、ことを特徴とする斜面表層崩壊対策杭工法。
  5. 請求項1に記載の斜面表層崩壊対策杭工法において、
    前記羽根部材と、前記表土層の厚さ寸法よりも短い前記杭本体とを準備する準備工程を含み、
    前記杭設置工程では、前記杭本体を前記斜面に打ち込んだ後、前記羽根部材を前記斜面の前記地表面に沿って延びる状態で前記杭本体に連結する、ことを特徴とする斜面表層崩壊対策杭工法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の斜面表層崩壊対策杭工法において、
    前記杭本体および前記羽根部材は、防腐処理がなされた木で形成されている、ことを特徴とする斜面表層崩壊対策杭工法。
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