JP2021072267A - 電極前駆体 - Google Patents
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Abstract
Description
ところで、電池を容易に製造でき、電極形成時の自由度がより高く、材料を無駄なく使用する方法を提供する観点から、活物質とポリマーとを含む電極前駆体であって、該電極前駆体は、溶媒含有量が0.1質量%以下であり、集電体に接するように配置して活物質層を形成するために用いられる電極前駆体が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
本発明者は、上記の利点を見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
本発明はまた、集電体と活物質層とを含んで構成される亜鉛電極であって、該活物質層は、本発明の電極前駆体を用いて構成される亜鉛電極である。
本発明は更に、本発明の亜鉛電極を含んで構成される亜鉛電池である。
本発明はそして、集電体と活物質層とを含んで構成される亜鉛電極を製造する方法であって、該方法は、親水性の繊維からなるシート、亜鉛単体、及び、ポリマーを含む電極前駆体を集電体に接するように配置して亜鉛電極を得る工程を含む亜鉛電極の製造方法である。
本発明はまた、亜鉛電極を含んで構成される亜鉛電池を製造する方法であって、該方法は、親水性の繊維からなるシート、亜鉛単体、及び、ポリマーを含む電極前駆体を集電体に接するように配置して、集電体と活物質層とを含んで構成される亜鉛電極を得る工程を含む亜鉛電池の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本発明の電極前駆体は、親水性の繊維からなるシート、亜鉛単体、及び、ポリマーを含む。
上記親水性の繊維からなるシートにおける親水性は、本明細書中、接触角が90°以下であることをいう。
接触角は、親水性の繊維からなるシート表面を対象とし、25℃条件下で、純水2μlを滴下して30秒後の水の接触角を測定して得られるものをいう。
上記接触角は、60°以下であることが好ましく、40°以下であることがより好ましく、25°以下であることが更に好ましい。
中でも、本発明の電極前駆体における上記シートは、親水性の不織布であることが好ましい。
ガーレー値は、気体の通過しやすさを表す指標であり、値が小さいほど気体を通しやすい。ガーレー値は、JIS P 8117に準じて、ガーレー測定器を用いて100ccの空気が透過する時間を測定して求めることができる。
引張強度は、デジタルフォースゲージ ZTA−50N(イマダ社製)を用い、試験片の幅15mm、チャック間距離80mm、引っ張り速度300±10mm/minの条件下で、引張り、破断するまでの引張強度を測定することにより求められる。
上記密度は、その上限値は特に限定されないが、1g/cm3以下であることが好ましく、0.7g/cm3以下であることがより好ましく、0.5g/cm3以下であることが更に好ましい。
なお、上記密度は、上記シートの試験片について、質量と体積を測定し、質量を体積で除すことにより算出されるものである。
また、該膜厚は、5μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましい。
本発明の電極前駆体は、上述した親水性の繊維からなるシート以外に、ポリマーを含む。
上記ポリマーとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等の炭化水素部位含有ポリマー、ポリスチレン等の芳香族基含有ポリマー;アルキレングリコール等のエーテル基含有ポリマー;ポリビニルアルコールやポリ(α−ヒドロキシメチルアクリル酸塩)等の水酸基含有ポリマー;ポリアミド、ナイロン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンやN−置換ポリアクリルアミド等のアミド結合含有ポリマー;ポリマレイミド等のイミド結合含有ポリマー;ポリ(メタ)アクリル酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリメチレングルタル酸等のカルボキシル基含有ポリマー;ポリ(メタ)アクリル酸塩、ポリマレイン酸塩、ポリイタコン酸塩、ポリメチレングルタル酸塩等に代表されるカルボン酸塩含有ポリマー;ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のハロゲン含有ポリマー;エポキシ樹脂;スルホン酸塩部位含有ポリマー;第四級アンモニウム塩や第四級ホスホニウム塩含有ポリマー;陽イオン・陰イオン交換膜等に使用されるイオン交換性重合体;共役ジエン系ポリマー;セルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルセルロース)、カルボキシメチルセルロース、キチン、キトサン、アルギン酸(塩)等の糖類;ポリエチレンイミン等のアミノ基含有ポリマー;カルバメート基部位含有ポリマー;カルバミド基部位含有ポリマー;エポキシ基部位含有ポリマー;複素環、及び/又は、イオン化した複素環部位含有ポリマー;ポリマーアロイ;ヘテロ原子含有ポリマー;低分子量界面活性剤などが挙げられる。これらのポリマーは、電極前駆体やこれから得られる亜鉛電極の活物質層のバインダーとしてはたらき、例えば亜鉛電極においてクラックの発生を防止できる。
上記ポリマーは、架橋されていてもよい。
上記重量平均分子量は、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算された重量平均分子量として測定することができる。
装置:東ソー株式会社製 HCL−8220GPC
カラム:TSKgel Super AWM−H
溶離液(LiBr・H2O、リン酸入りNMP):0.01mol/L
なお、本発明の電極前駆体を、圧延により脱水時に生じる空隙を減らして高密度化した場合は、得られる電極において空隙に起因するクラックの発生をより抑制できることから、電極前駆体中の上記ポリマーの質量割合を小さくして(例えば、3質量%未満として)導電性能を高めてもよい。
本発明の電極前駆体は、亜鉛単体(金属亜鉛)を含む。
上記亜鉛単体は、導電助剤としても機能するが、電池の使用の過程で酸化還元反応をおこなって活物質としても機能する。本明細書中、亜鉛単体、及び、後述する亜鉛含有化合物を、活物質ともいい、導電助剤とは区別する。
本発明の電極前駆体が電子伝導性に優れる亜鉛単体を予め含むことによって、電池使用時の電流集中を更に防止できるため、短絡を防止する効果が非常に優れるものとなる。
また本発明の電極前駆体が亜鉛単体を含むことにより、電極前駆体を集電体に接するように配置して形成される電極は、亜鉛が充放電等の過程でイオン化し、移動できるため、当初集電体と活物質層との間に隙間があっても、隙間が埋まって密着性が高くなる。これにより、優れた充放電特性を有する電池を簡便に製造できる。
亜鉛含有化合物の中でも、酸化亜鉛が好ましい。
本明細書中、平均粒子径とは、動的光散乱法による粒度分布測定により得られる、体積基準の粒度分布における平均粒子径である。
好ましくは、親水性粒子を分散媒(0.2%ヘキサメタりん酸ナトリウム含有イオン交換水)で希釈したものを測定試料とする。
動的光散乱法による粒度分布測定器としては、例えば、大塚電子株式会社製 濃厚系粒径アナライザー FPAR−1000ASを用いることができる。
本発明の電極前駆体は、上述した亜鉛単体等の活物質の他に、更に導電助剤を含んでいてもよい。導電助剤を含むことで、電極前駆体を用いて形成される活物質層の導電性能が高くなり、活物質層に含まれる活物質を有効に利用して電池の容量を更に高めることができる。
上記導電助剤としては、例えば、導電性カーボン、導電性セラミックス、銅・真鍮・ニッケル・銀・ビスマス・インジウム・鉛・錫等の金属等の1種又は2種以上を用いることができる。
本発明の電極前駆体は、溶媒含有量が0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましく、0.03質量%以下であることが更に好ましく、0.01質量%以下であることが特に好ましい。上記溶媒含有量の下限は特に限定されず、0質量%であってもよい。
上記溶媒含有量とは、電極前駆体全体100質量%中の溶媒の含有量を意味する。
上記溶媒含有量は、本発明の電極前駆体を加熱等による乾燥工程を経て調製した場合は、乾燥工程により溶媒成分が蒸発した後に残った溶媒の質量を算出し、当該溶媒の質量の、電極前駆体全体の質量に対する百分率として算出することができる。
本発明の電極前駆体は、親水性の繊維からなるシート、活物質、ポリマー以外に、導電助剤、溶媒を含んでもよいが、さらにこれら以外のその他の成分を1種又は2種以上含んでいてもよい。
その他の成分は、特に限定されないが、例えば、アルミナ、シリカ等が挙げられる。その他の成分は、イオン伝導性を補助する等の働きが可能である。
本発明の電極前駆体中、他の成分の質量割合は、活物質100質量%に対して1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましい。
集電体とは、電池を構成したときに、正極及び負極のそれぞれにおいて、活物質層よりも、正極と負極とが電気的に接続される経路側に配置される集電体を言う。
本発明の電極前駆体は、通常、シート状であり、この主面を平面視したときの形状は、電池の設計に応じて好適な形状とすることができ、特に限定されない。
上記電気抵抗は、テスターにより測定されるものである。
本発明の電極前駆体は、例えば、本発明に係る活物質とポリマーを含むスラリー状又はペースト状(以下、スラリー状等とも言う。)の組成物を、親水性の繊維からなるシートに接触・含浸させたものである。
該組成物が溶媒等の揮発成分を含む場合は、さらに乾燥してもよい。例えば、該組成物を親水性の繊維からなるシートに接触・含浸させた後に、必要に応じて、組成物に含まれる溶媒等の揮発成分の一部または全部を蒸発させる乾燥を行ったものを電極前駆体とすることもできる。
本発明はまた、集電体と活物質層とを含んで構成される亜鉛電極であって、該活物質層は、本発明の電極前駆体を用いて構成される亜鉛電極でもある。
本発明の電極前駆体を用いて構成される亜鉛電極は、長寿命化の効果に際立って優れると共に、形成時の自由度が高く、必要に応じて製造工程を簡略化可能なものである。
なお、ここでいう活物質層の厚みは、活物質層全体の厚みを意味し、複数の電極前駆体が積層して形成された構造の活物質層の場合、当該活物質層全体の厚みを意味する。なお、本発明の亜鉛電極が含む活物質層は、集電用の導電部材を含まない電極前駆体を重ね合わせて形成することができる等、形成時の自由度が高いため、例えば、活物質層の厚みが厚く容量の大きな電極を容易に形成することができる。
活物質層の厚みは、マイクロメーター等により測定することができる。
複数の電極前駆体が積層して形成された構造の活物質層においては、それぞれの電極前駆体の各種成分の種類・割合は、同じであってもよく、異なっていてもよい。必要であれば、特定の成分の割合が異なる複数の電極前駆体を積層させることにより、活物質層の厚み方向に当該成分割合の分布がある活物質層を作製することも可能である。
本発明は更に、集電体と活物質層とを含んで構成される亜鉛電極を製造する方法であって、該方法は、親水性の繊維からなるシート、亜鉛単体、及び、ポリマーを含む電極前駆体を集電体に接するように配置して亜鉛電極を得る工程を含むことを特徴とする亜鉛電極の製造方法でもある。
上記「電極前駆体を集電体に接するように配置して亜鉛電極を構成する」は、本明細書中、本発明の電極前駆体を集電体上に塗工・圧着・接着・圧電・圧延・延伸・溶融等する必要はなく、固体状態の電極前駆体の少なくとも一部が集電体の少なくとも一部に接触するように配置すればよい。これにより、活物質と集電体とが電気的に接続され、電池を駆動できる電極を形成できる。本発明の亜鉛電極が、複数の電極前駆体が積層して形成された構造のものである場合も、結着材等を用いる等して電極前駆体間を結着させる必要はなく、本発明の電極前駆体を複数重ね合わせればよい。
なお、本発明の電極前駆体を集電体上に圧着等して活物質層を形成したり、結着材等を用いる等して電極前駆体間を結着したりしても構わない。
なお、カット時に発生した切れ端等の部材は、公知の方法で粉砕し、水等の溶媒を加えて再度混錬し、その後、必要に応じて脱水・圧延等することにより、再度本発明の電極前駆体を得ることができる。
本発明はそして、上述した本発明の亜鉛電極を含んで構成される亜鉛電池でもある。
上述したとおり、本発明の亜鉛電池は、本発明の亜鉛電極を用いて構成されることにより、充分に駆動できるとともに、容易に製造でき、また、組立時の自由度が高いものである。
また、正極活物質が酸素であることもまた好ましい。上述したとおり、本発明の亜鉛電極が含む活物質層は、集電用の導電部材を含まない電極前駆体を重ね合わせて形成することができる等、形成時の自由度が高いため、容易に活物質層の厚みを厚くすることができる。したがって、本発明の亜鉛電池が、容量を大きくするために負極活物質の厚みを厚くすることが求められる亜鉛空気電池であることが好ましい。言い換えれば、本発明の亜鉛電池が空気亜鉛電池であることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
また、本発明の亜鉛電極を負極として使用した電池の形態としては、一次電池、充放電が可能な二次電池、メカニカルチャージ(亜鉛負極の機械的な交換)の利用、本発明の負極と上述したような正極活物質より構成される正極とは別の第3極の利用等、いずれの形態であっても良い。
本発明はまた、亜鉛電極を含んで構成される亜鉛電池を製造する方法であって、該方法は、親水性の繊維からなるシート、亜鉛単体、及び、ポリマーを含む電極前駆体を集電体に接するように配置して、集電体と活物質層とを含んで構成される亜鉛電極を得る工程を含む亜鉛電池の製造方法でもある。
なお、本発明の亜鉛電池の製造方法における亜鉛電極を構成する工程は、上述した本発明の亜鉛電極の製造方法と同様である。
酸化亜鉛(平均粒子径1μm)と亜鉛金属(亜鉛単体)とポリテトラフルオロエチレンを85:11:4の質量比で塗料化しポリビニルアルコール(ビニロン)からなる親水性不織布に含浸させ、これを乾燥し、シート状の電極前駆体(厚さ300μm)を作製した。得られた電極前駆体と、錫でメッキされたパンチング鋼板とを重ねることにより亜鉛負極として電池セル内に配置した。この亜鉛負極、正極としてニッケル極、正極及び負極間には不織布とアニオン伝導体を配置し、電解液として酸化亜鉛を飽和させた8M水酸化カリウム水溶液を用いて充放電サイクル試験を行った。電流値は13.9mA/cm2(充放電時間:各1時間)とした。その結果、1000サイクル以上のサイクル寿命が得られた。
親水性不織布の種類を、下記表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に亜鉛電池を作製し、充放電サイクル試験を行なった。結果は表1に示す通りである。なお、実施例2〜4の親水性処理は、スルホン化処理を用いた。
酸化亜鉛(平均粒子径1μm)と亜鉛金属とポリテトラフルオロエチレンを85:11:4の質量比で混練しペースト化した亜鉛極合剤を錫でメッキされたパンチング鋼板に圧延によって貼り付け亜鉛負極とした。亜鉛負極の厚さは250μmであった。この亜鉛負極、正極としてのニッケル極、正極及び負極間には不織布とアニオン伝導体を配置し、電解液として酸化亜鉛を飽和させた8M水酸化カリウム水溶液を用いて充放電サイクル試験を行った。電流値は13.9mA/cm2 (充放電時間:各1時間)とした。その結果350サイクルで短絡した。
亜鉛極合剤に更に短繊維である親水性繊維を添加した以外は、比較例1と同様に亜鉛電池を作製し、充放電サイクル試験を行なった。結果は表2に示す通りである。
親水性不織布の種類を、下記表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様に亜鉛電池を作製し、充放電サイクル試験を行なった。結果は表2に示す通りである。
酸化亜鉛と亜鉛金属の質量割合を、下記表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様に亜鉛電池を作製し、充放電サイクル試験を行なった。結果は表3に示す通りである。
Claims (7)
- 親水性の繊維からなるシート、亜鉛単体、及び、ポリマーを含むことを特徴とする電極前駆体。
- 前記シートは、親水性の不織布であることを特徴とする請求項1に記載の電極前駆体。
- 前記電極前駆体は、前記シートに亜鉛単体及びポリマーを含む組成物を含浸して得られることを特徴とする請求項1又は2に記載の電極前駆体。
- 集電体と活物質層とを含んで構成される亜鉛電極であって、
該活物質層は、請求項1〜3のいずれかに記載の電極前駆体を用いて構成されることを特徴とする亜鉛電極。 - 請求項4に記載の亜鉛電極を含んで構成されることを特徴とする亜鉛電池。
- 集電体と活物質層とを含んで構成される亜鉛電極を製造する方法であって、
該方法は、親水性の繊維からなるシート、亜鉛単体、及び、ポリマーを含む電極前駆体を集電体に接するように配置して亜鉛電極を得る工程を含むことを特徴とする亜鉛電極の製造方法。 - 亜鉛電極を含んで構成される亜鉛電池を製造する方法であって、
該方法は、親水性の繊維からなるシート、亜鉛単体、及び、ポリマーを含む電極前駆体を集電体に接するように配置して、集電体と活物質層とを含んで構成される亜鉛電極を得る工程を含むことを特徴とする亜鉛電池の製造方法。
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