第1の実施の形態
図1は、打ち込み工具1の外観の一例を概略的に示す側面図であり、図2は、打ち込み工具1の内部構成の一例を概略的に示す断面図であり、図3は、打ち込み工具1の電気的な構成の一例を概略的に示すブロック図である。
打ち込み工具1は、木材などの打込対象物に打ち込み材を打ち込む電動の工具である。図1および図2の例では、打ち込み工具1は釘打ち機である。この打ち込み工具1は打込対象物に向かって、打ち込み材として釘2を打ち出すことにより、打込対象物に釘2を打ち込む。
図1に例示するように、打ち込み工具1はハウジング10を含んでいる。このハウジング10には、マガジン20およびバッテリ30の各々が着脱可能に取り付けられる。マガジン20は、釘2をハウジング10内に供給する部材であり、バッテリ30は、ハウジング10内に収納された後述の各種構成要素に電力を供給する部材である。
ハウジング10は、打ち込み工具1の機能を実現するための後述の種々の機械要素および電気要素を収納する。図1および図2の例では、ハウジング10は打出機構収納部11とモータ収納部12と把持部13と基板収納部14とを含んでいる。
打出機構収納部11は長尺状の中空形状を有する。以下では、打出機構収納部11の長手方向を前後方向と呼び、当該長手方向の一方側および他方側をそれぞれ前方および後方と呼ぶ。図1および図2で説明すると、左が前方を示し、右が後方を示す。打出機構収納部11の前方の端部には、釘2が打ち出される打出口11aが形成されている。打出口11aの開口軸は前後方向に沿っている。
図1の例では、マガジン20の一端は打出機構収納部11の前方寄りの一部に着脱可能に取り付けられる。以下では、マガジン20の一端側を上側と呼び、マガジン20の他端側を下側と呼ぶ。図1の例では、マガジン20は、上側から下側に向かうにつれて前方から後方に向かう斜め方向に延在している。このマガジン20の内部には、複数の釘2が収納される。複数の釘2は互いに平行に隣接して配置されている。マガジン20は釘2を1本ずつ打出機構収納部11の内部に送り出すことができる。この釘2は打出機構収納部11の内部において、その長手方向が前後方向に沿った姿勢で、打出口11aと向かい合う位置に収納される(図2も参照)。
打出機構収納部11の内部には、打出機構40が収納されている。打出機構40は、マガジン20から送り出された釘2を1本ずつ打出口11aから打ち出す。打出口11aにおける釘2の打出方向は前後方向と略同一である。打出機構収納部11の内部に送り出された釘2が打出機構40によって打ち出されると、次の釘2がマガジン20から打出機構収納部11の内部に送り出される。
モータ収納部12は、上下方向に延在する長尺状の中空形状を有し、その上側の端部が打出機構収納部11の前方寄りの一部に連結されている。図1および図2の例では、モータ収納部12の上側の端部は、マガジン20の上側の端部よりも後方において、打出機構収納部11の下部に連結されている。モータ収納部12の内部には、後述の駆動部51が収納される。モータ収納部12の内部空間は打出機構収納部11の内部空間と繋がっており、駆動部51は打出機構40と機械的に連結し、打出機構40を駆動する。
把持部13は、上下方向に延在する長尺状の中空形状を有しており、その上側の端部がモータ収納部12よりも後方において、打出機構収納部11の下部に連結されている。把持部13は前後方向においてモータ収納部12と離れており、把持部13とモータ収納部12との間には空間が形成される。把持部13は使用者によって把持される部分である。
基板収納部14は、前後方向に延在する中空形状を有しており、モータ収納部12の下側の端部と、把持部13の下側の端部とを連結している。基板収納部14の内部空間はモータ収納部12の内部空間および把持部13の内部空間に繋がっている。この基板収納部14の内部には、基板70が収納されている。基板70には、打ち込み工具1を制御する制御部71が実装されている。制御部71はハウジング10内の各種構成要素と電気的に接続されている。制御部71がこれら各種構成要素を制御することにより、打ち込み工具1は釘2を打出口11aから打ち出す。
制御部71は制御回路とも言える。制御部71は、以下にさらに詳細に述べられるように、種々の機能を実行するための制御および処理能力を提供するために、少なくとも1つのプロセッサを含む。
種々の実施形態によれば、少なくとも1つのプロセッサは、単一の集積回路(IC)として、または複数の通信可能に接続された集積回路ICおよび/またはディスクリート回路(discrete circuits)として実行されてもよい。少なくとも1つのプロセッサは、種々の既知の技術に従って実行されることが可能である。
1つの実施形態において、プロセッサは、例えば、関連するメモリに記憶された指示を実行することによって1以上のデータ計算手続または処理を実行するように構成された1以上の回路またはユニットを含む。他の実施形態において、プロセッサは、1以上のデータ計算手続きまたは処理を実行するように構成されたファームウェア(例えば、ディスクリートロジックコンポーネント)であってもよい。
種々の実施形態によれば、プロセッサは、1以上のプロセッサ、コントローラ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号処理装置、プログラマブルロジックデバイス、フィールドプログラマブルゲートアレイ、またはこれらのデバイス若しくは構成の任意の組み合わせ、または他の既知のデバイスおよび構成の組み合わせを含み、以下に説明される機能を実行してもよい。
バッテリ30はハウジング10に着脱可能に取り付けられる。図1および図2の例では、バッテリ30は基板収納部14の下端面に取り付けられる。バッテリ30が取り付けられた状態で、バッテリ30は打ち込み工具1の各種構成要素に電力を供給する。図3の例では、バッテリ30は基板70に電気的に接続されており、基板70を経由して各種構成要素へと電力を供給する。
図1および図2に例示するように、把持部13の上側の前方部分には、操作部(以下、トリガと呼ぶ)61が位置している。トリガ61は、打ち出しを行う操作を受け付ける。トリガ61は変位可能に把持部13に取り付けられる。例えばトリガ61は、後方に押し込み可能に把持部13に取り付けられる。把持部13の内部には、トリガ61を前方に押圧する不図示の弾性部材(例えばバネ)が収納されている。
使用者はトリガ61を変位させることで、打ち出しの操作を行う。具体的には、使用者は、把持部13を把持した状態で、例えば人差し指をトリガ61にかけることができる。使用者は釘2の打ち出し指示の入力として、トリガ61を後方に押し込むことができる。言い換えれば、使用者はトリガ61を引くことができる。トリガ61が後方に押し込まれることにより、打ち込み工具1は釘2を打出口11aから打ち出す。ただし、本打ち込み工具1は、トリガ61の押下のみならず、後述する他の諸条件を満足したときに、釘2を打出口11aから打ち出す。これにより、意図しない状態での打ち込み工具1による釘2の打ち出しを抑制する。
例えば図1および図2では、打出機構収納部11の前方の端部には、プッシュレバー62が位置している。このプッシュレバー62は、意図しない状態での打ち込み工具1による釘2の打ち出しを抑制するための部材である。プッシュレバー62は後方に押し込み可能に、打出機構収納部11に取り付けられる。
図1および図2の例では、プッシュレバー62は筒部材621とロッド622とを含んでいる。筒部材621は、前後方向に自身を貫通する中空部を含んだ筒状形状を有する。筒部材621はハウジング10の打出口11aよりも前方において、打出口11aと間隔を空けた位置に配置されている。筒部材621の中空部は打出口11aと前後方向において並ぶ。よって、釘2は打出口11aおよび筒部材621を貫通して打ち出される。ロッド622は棒状の形状を有しており、その一端が筒部材621に連結されている。ロッド622は前後方向に延在しており、前後方向に移動可能に打出機構収納部11に結合される。ロッド622の後方部分は打出機構収納部11の内部に位置する。打出機構収納部11の内部には、ロッド622を前方に押圧する不図示の弾性部材(例えばバネ)が収納される。
使用者は、プッシュレバー62を打込対象物に押し付けてプッシュレバー62を所定の押し込み量だけ後方に押し込んだ状態で、トリガ61を引く。これにより、打ち込み工具1は釘2を打ち出して、打込対象物に釘2を打ち込む。つまり、打ち込み工具1は、少なくとも、プッシュレバー62が押し込まれる第1条件と、トリガ61が引かれる第2条件との両方が成立した場合に釘2を打ち出す。つまり、第1条件および第2条件のいずれか一方が偶発的に成立したとしても、他方が成立しない限り、打ち込み工具1は釘2を打ち出さない。よって、使用者が意図せず釘2が打ち出されることを抑制することができる。
プッシュレバー62は上記した安全機能のみならず、打込対象物に対する釘2の打込み量を調整する調整機能も発揮してもよい。具体的には、打ち込み工具1は、プッシュレバー62のハウジング10からの突出量(つまり、プッシュレバー62の露出部分の長さ)を調整可能に構成されてもよい。図1の例では、打ち込み工具1は、プッシュレバー62の突出量を調整するための操作部64を含んでいる。図1の例では、操作部64は打出機構収納部11の前方部分に位置している。使用者は、操作部64を操作することにより、プッシュレバー62の突出量を調整する。
プッシュレバー62の突出量が大きい場合には、プッシュレバー62を所定の押し込み量だけ打込対象物に押し付けた状態において、打込対象物と打出口11aの距離は比較的に長くなる。よって、この状態で打ち込み工具1が釘2を打込対象物に打ち込むと、小さい打ち込み量で釘2を打込対象物に打ち込むことができる。つまり、釘2を浅く打込対象物に打ち込むことができる。
一方で、プッシュレバー62の突出量が小さい場合には、プッシュレバー62を所定の押し込み量だけ打込対象物に押し付けた状態において、打込対象物と打出口11aとの間の距離は比較的に短くなる。よって、この状態で打ち込み工具1が釘2を打込対象物に打ち込むと、大きい打ち込み量で釘2を打込対象物に打ち込むことができる。つまり、釘2をより深く打込対象物に打ち込むことができる。
次に、ハウジング10内に収納される各種構成要素について説明する。打出機構収納部11の内部にはレバー位置検出部63が収納され、把持部13にはトリガ検出部60が収納されている。
レバー位置検出部63はプッシュレバー62の位置を検出する。このレバー位置検出部63は制御部71に電気的に接続される。例えば、レバー位置検出部63は、プッシュレバー62が所定の押し込み量だけ押し込まれたことを検出し、その検出結果を示す検出信号を制御部71に出力する。具体的な一例として、レバー位置検出部63は検出用スイッチを含む。当該検出用スイッチは、プッシュレバー62が所定の押し込み量だけ押し込まれると開閉を切り替える。レバー位置検出部63は当該検出用スイッチの状態を示す信号を、プッシュレバー62の位置を示す検出信号として制御部71に出力する。
トリガ検出部60はトリガ61の前後方向の位置を検出する。このトリガ検出部60は制御部71に電気的に接続される。例えば、トリガ検出部60は、トリガ61が引かれたことを検出し、その検出結果を示す検出信号を制御部71に出力する。より具体的な一例として、トリガ検出部60はトリガスイッチを含んでいる。トリガスイッチは、トリガ61が後方に押し込まれて後方位置に移動したときに開閉を切り替える。トリガ検出部60は当該トリガスイッチの状態を示す信号を、トリガ61の位置を示す検出信号として制御部71に出力する。
打出機構収納部11の内部には、打出機構40(図2参照)および駆動部52(図4参照)も収納されている。打出機構40は打撃部材41と移動機構42とを含む。打撃部材41は、マガジン20から送り出された釘2と前後方向において並ぶ位置に配置されており、釘2に対して後方に位置する。打撃部材41は打撃位置と待機位置との間で往復移動可能である。待機位置は釘2よりも後方の位置である。図2は、打撃部材41が待機位置で停止している状態を示している。打撃部材41が待機位置で停止しているときには、打撃部材41は釘2と離れていてもよい。打撃位置は待機位置よりも前方の位置である。打撃部材41が待機位置から打撃位置に移動することにより、打撃部材41の前方の端部が釘2の頭部に衝突して釘2を打出口11aから打ち出す。図2の例では、打撃部材41は、前後方向に延在する棒状の形状を有している。
移動機構42は打撃部材41を待機位置と打撃位置との間で往復移動させる。移動機構42の具体的な構成は特に制限されないものの、例えば、移動機構42は空気ばね421と戻り機構422(図2参照)とロック機構423(図4も参照)とを含む。
空気ばね421は打撃部材41の後方の端部に連結されており、打撃部材41を前方に押圧する。具体的には、空気ばね421はピストン4211とシリンダ4212とを含んでいる。ピストン4211は前後方向に移動可能にシリンダ4212の内周面に取り付けられている。ピストン4211が後方に移動することにより、ピストン4211とシリンダ4212とで密閉された気体が圧縮される。これにより、ピストン4211は、より高い圧力で前方に押圧される。図2の例では、ピストン4211が後方に位置する状態が示されている。
図4は、移動機構42、および、移動機構42を駆動する駆動機構50の構成の一例を概略的に示す斜視図である。図4では、空気ばね421についてはピストン4211のみが示されている。
戻り機構422は、打撃部材41を前方の打撃位置から後方の待機位置へ移動させる。ロック機構423は、待機位置に位置する打撃部材41と係止して、打撃部材41を停止させる。ロック機構423が係止を解除すると、打撃部材41が空気ばね421の押圧力を受けて前方の打撃位置まで移動し、釘2を打ち出す。釘2の打ち出し後には、戻り機構422は再び打撃部材41を打撃位置から待機位置へ移動させる。これにより、ロック機構423が再び打撃部材41と係止して、打撃部材41を待機位置で停止させる。以上のように、打ち込み工具1は順次に釘2を打ち出すことができる。
図4の例では、打撃部材41は、棒状の本体部411と、複数の突起部412とを含んでいる。本体部411は前後方向に沿って延在しており、その後方の端部がピストン4211に連結される。複数の突起部412は本体部411の側方に立設されており、前後方向において間隔を空けて並んでいる。図4の例では、突起部412は上側に突出している。
戻り機構422は打撃部材41の突起部412を後方に押圧して、打撃部材41を後方に移動させる。例えば戻り機構422は連結板4221と複数の押圧突起部4222とを含む。連結板4221はその厚み方向が上下方向に沿うように配置される。連結板4221は、上下方向に延在する回転軸Q1のまわりで回転可能である。押圧突起部4222は連結板4221の下面から下側に突出する。複数の押圧突起部4222は回転軸Q1についての周方向に沿って並んで配置される。ただし、複数の押圧突起部4222は回転軸Q1まわりの全周には配置されておらず、例えば半周程度の範囲に配置される。具体的な一例として、3つの押圧突起部4222が半周程度の範囲で周方向に並んで配置される。
連結板4221は、押圧突起部4222が打撃部材41の突起部412と周方向で接触する位置に配置されており、連結板4221が図4の回転方向に回転することにより、各押圧突起部4222が順に突起部412を後方に押し込み、これによって、打撃部材41が後方に移動する。
ロック機構423は打撃部材41と解除可能に係止する。図4の例では、打撃部材41は係止側壁413をさらに含んでいる。係止側壁413は突起部412とは反対側の本体部411の側方に立設されている。一方で、ロック機構423は、係止側壁413と係止可能な係止部4231を含んでいる。図4の例では、ロック機構423は回転体4232も含んでいる。回転体4232は、上下方向に延在する回転軸Q2のまわりで回転可能である。係止部4231は回転体4232の外周面から、回転軸Q2の径方向外側に向かって突出する。
回転体4232が回転することにより、係止部4231の先端は回転軸Q2の周方向に沿って移動する。係止部4231は回転軸Q2の周方向のうち打撃部材41側に押圧されている。打撃部材41が打撃位置から待機位置に移動する際に、係止側壁413が係止部4231の先端を押して係止部4231の先端を退かせる。係止側壁413が係止部4231よりも後方に移動すると、係止部4231が元の位置に戻って係止側壁413の前方の端部と当接する。これにより、打撃部材41の前方への移動が阻止される。
図4の例では、係止側壁413には、複数の係止孔4131が形成されている。複数の係止孔4131は前後方向において間隔を空けて並んでいる。係止部4231は各係止孔4131にも係止可能である。これによれば、打撃部材41の待機位置への移動中に係止部4231が係止孔4131に順次に係止する。よって、後方への移動中において打撃部材41が前方に移動してしまうことを抑制できる。
打撃部材41が待機位置で停止した状態では、戻り機構422の連結板4221は、複数の押圧突起部4222のいずれもが打撃部材41の突起部412と前後方向で並ばない回転位置で停止する。よって、打撃部材41が前方に移動しても、打撃部材41の突起部412は戻り機構422の押圧突起部4222と衝突しない。
戻り機構422およびロック機構423を含む移動機構42は駆動機構50によって駆動される。駆動機構50は移動機構42に駆動力を供給して移動機構42を駆動し、移動機構42に打撃部材41を前後方向に移動させる。駆動機構50は制御部71による制御に基づいて作動する。駆動機構50の具体的な構成は特に制限される必要ないものの、図4の例では、駆動機構50は、戻り機構422を駆動する駆動部51と、ロック機構423を駆動する駆動部52とを含んでいる。
駆動部51はモータ511とギア部512とを含んでいる。モータ511およびギア部512はモータ収納部12の内部に収納されている。モータ511は制御部71と電気的に接続され、制御部71によって制御される。モータ511のシャフトはギア部512を介して戻り機構422の連結板4221のシャフトに連結される。ギア部512は例えば減速機であって、モータ511が出力するトルクを増幅して連結板4221に伝達する。モータ511が回転することにより、連結板4221が回転して、打撃部材41が後方の待機位置まで移動する。
駆動部52はシリンダ機構521とリンク機構522とを含んでいる。シリンダ機構521およびリンク機構522は打出機構収納部11の内部に収納される。シリンダ機構521は制御部71に電気的に接続されており、制御部71によって制御される。シリンダ機構521のロッドはリンク機構522を介してロック機構423の回転体4232に連結される。リンク機構522はシリンダ機構521のロッドの直線移動を回転力に変換して、当該回転力を回転体4232に伝達する。シリンダ機構521がロッドを移動させることにより、回転体4232および係止部4231が回転して係止を解除する。これにより、打撃部材41が空気ばね421の押圧力を受けて前方に移動する。打撃部材41は釘2を打出口11aから打ち出す。
図1を参照して、打ち込み工具1はセンサ80を含んでいる。センサ80は、打ち込み工具1のプッシュレバー62よりも前方に位置する物体を検出する非接触式センサである。センサ80は距離センサを含み、例えば打ち込み工具1の打出口11aと当該物体との間の距離を測定する。センサ80は制御部71に電気的に接続されており(図3も参照)、測定した距離を示す距離信号を制御部71に出力する。
センサ80の配置位置は特に制限されないものの、図1および図2の例では、センサ80はハウジング10の打出機構収納部11に取り付けられている。図1および図2の例では、打出機構収納部11の前方部分は打出口11aに近づくにつれて細くなる先細形状を有しており、センサ80は先細形状の傾斜部に位置している。センサ80が当該傾斜部に位置している場合、センサ80よりも前方の空間には、打ち込み工具1の部材があまり存在していないので、センサ80は打ち込み工具1の部材に影響されずに、前方の物体を検出しやすい。
センサ80は例えば送波器81と受波器82と処理部83とを含む(図3参照)。送波器81は処理部83によって制御され、電磁波または超音波である測定波を前方に向かって送波する。測定波として電磁波を採用する場合には、例えば赤外線を採用することができる。送波器81から送波された測定波は前方に進み、打出口11aよりも前方の物体に当たって反射する。当該物体で反射された測定波は受波器82で受波される。
処理部83は、受波器82が受波した測定波に基づいて、当該物体までの距離を算出する。具体的な一例として、処理部83は送波器81が測定波を送波した時点と、受波器82が測定波を受波した時点との差に基づいて、当該物体までの距離を測定してもよい。あるいは、三角測量の原理を利用した距離測定を採用してもよい。
処理部83の構成の一例は制御部71と同様である。なお、処理部83の機能は制御部71に実装されてもよい。この場合、送波器81、受波器82および制御部71がセンサ80を構成する。
制御部71は、センサ80によって測定された距離に基づいて、打出機構40による釘2の打ち出しを制限する。具体的には、制御部71は当該距離が所定の基準値よりも長いか否かを判断し、当該距離が基準値よりも長いときに、釘2の打ち出しを制限する。基準値は例えば予め設定されており、制御部71の記憶媒体に記憶されている。基準値は例えば釘2の長手方向の長さ以下の値である。
打ち出しの制限は、例えば、制御部71が駆動機構50を作動させないことにより実現してもよい。具体的な一例として、制御部71は駆動機構50への電力の供給を遮断して、打ち出しを制限してもよい。例えば、シリンダ機構521とバッテリ30との間に電源用のスイッチ55を設け、制御部71が当該電源用のスイッチ55をオフすることにより、打ち出しを制限してもよい。これによれば、打ち込み工具1は釘2を打ち出すことができない。言い換えれば、釘2の打ち出しが禁止される。
センサ80によって測定された距離が基準値よりも短いときには、制御部71は当該距離に基づく釘2の打ち出しの制限を解除する。
さて、使用者が打ち込み工具1を用いて打込対象物に釘2を打ち込む場合には、上述のように、打ち込み工具1のプッシュレバー62を打込対象物に押し付ける。よって、この状態では、センサ80によって測定される距離は基準値以下となる。逆に言えば、打込対象物がプッシュレバー62に当接した状態で当該距離が基準値以下となるように、基準値が設定される。したがって、この状態では、当該距離に基づく打ち出し制限は解除される。よって、打込対象物に釘2を打ち込むことができる。
一方で、使用者が打ち込み工具1のプッシュレバー62を打込対象物に押し付けておらず、打ち込み工具1の打出口11aが打込対象物から基準値を超えて離れているときには、当該距離に基づいて釘2の打ち出しが制限される。
要するに、打ち込み工具1は、プッシュレバー62が押し込まれているという第1条件およびトリガ61が引かれているという第2条件のみならず、前方の物体までの距離が基準値よりも短いという第3条件が成立したときに、釘2を打ち出す。
図5は、打ち込み工具1の上記動作の一例を示すフローチャートである。ステップS1にて、センサ80は打ち込み工具1の打出口11aと前方の物体との間の距離を測定し、その測定結果を示す距離信号を制御部71に出力する。
次にステップS2にて、制御部71は、センサ80によって測定された距離が基準値よりも長いか否かを判断する。当該距離が基準値よりも長いときには、ステップS5を実行することなく、ステップS1を再び実行する。
当該距離が基準値以下であるときには、ステップS3にて、制御部71はプッシュレバー62が後方位置に位置しているか否かを判断する。つまり、制御部71はプッシュレバー62が所定の押し込み量だけ押し込まれているか否かを判断する。プッシュレバー62の位置は、レバー位置検出部63からの検出信号によって特定される。プッシュレバー62が後方位置に位置していないときには、再びステップS1を実行する。
プッシュレバー62が所定の押し込み量だけ押し込まれているときには、ステップS4にて、制御部71はトリガ61が後方位置に位置しているか否かを判断する。つまり、制御部71はトリガ61が引かれているか否かを判断する。トリガ61の位置は、トリガ検出部60からの検出信号によって特定される。トリガ61が引かれていないときには、再びステップS1を実行する。
トリガ61が引かれているときには、ステップS5にて、制御部71は駆動機構50を制御して打撃部材41を前方に移動させる。具体的には、制御部71はシリンダ機構521を制御して、ロック機構423の係止を解除する。これにより、打撃部材41が空気ばね421の押圧力を受けて前方に移動し、釘2を打出口11aから打ち出す。
上述の動作によれば、センサ80によって測定された距離が基準値よりも長いときには、ステップS5が実行されない。これによれば、当該距離が長いときには、釘2の打ち出しを制限することができる。
使用者がプッシュレバー62を打込対象物に押し付けると、センサ80によって測定される距離は基準値よりも短くなり、プッシュレバー62が後方位置まで押し込まれる。この状態で、使用者がトリガ61を引くと、打出口11aから釘2が打ち出されて打込対象物に打ち込まれる(ステップS5)。
ところで、不正な第三者が打ち込み工具1を銃として活用しようとすることが考えられる。具体的には、不正な第三者が例えばピアノ線などの用具を用いてプッシュレバー62を後方位置まで押し込んだ状態を維持することが考えられる。この場合、釘2の打ち出しの第1条件(ステップS3)が成立する。そして、不正な第三者がトリガ61を引くと、釘2の打ち出しの第2条件(ステップS4)も成立する。
しかしながら、本実施の形態によれば、前方の物体が打ち込み工具1の打出口11aに対して基準値を超えて離れていれば、釘2の打ち出しが制限される。したがって、打ち込み工具1を銃として活用することを抑制できる。よって、打ち込み工具1の安全性を向上することができる。特に、基準値が釘2の長さ以下であれば、釘2が打ち込み工具1を離れて空中を飛ばないので、銃のように利用されることを抑制できる。
以上のように、打ち込み工具1は、打出口11aから離れて前方に位置する物体を検出可能な非接触式のセンサ80を含んでおり、センサ80の検出結果に基づいて釘2の打ち出しを制限している。つまり、非接触式のセンサ80が打ち込み工具1と離れた物体を検出し、打ち込み工具1が当該物体の検出に基づいて打ち出しを制限することにより、離れた物体へと弾丸を射出する銃としての使用を抑制している。これにより、打ち込み工具1の安全性を向上することができる。
なお、上述の具体例では、ステップS2からステップS4の判断をこの順に行っているものの、その順序はこれに限らない。例えばステップS2の判断はステップS3またはステップS4において肯定的な判断(YESの判断)がなされたときに行ってもよい。これによれば、センサ80の動作期間を短くすることができ、消費電力を低減できる。
図1および図3の例では、打ち込み工具1は報知部90も含んでいる。報知部90は使用者に報知を行うことができる。例えば、報知部90は光源、音出力源および振動源の少なくともいずれか一つを含んでいる。光源は、例えば、LED(Light Emitting Diode)などの発光素子を含み、音出力源は例えばスピーカおよびブザーの少なくともいずれか一つを含み、振動源は例えば偏芯モータを含む。
報知部90が光源を含む場合には、当該光源は例えばハウジング10に位置している。光源は使用者によって視認可能である。報知部90が音出力源または振動源を含む場合には、これらは、例えばハウジング10の内部に収納される。
図1の例では、報知部90はハウジング10の後方の端部に位置している。打ち込み工具1の使用中には、使用者はハウジング10の後方の端部よりも後方に位置しており、ハウジング10の後方の端部を見やすい。よって、報知部90の光源がハウジング10の後方の端部に位置している場合には、使用者は光源を見やすい。よって、使用者は報知を受け取りやすい。
制御部70は報知部90と電気的に接続されており、報知部90を制御する。具体的には、制御部70は、センサ80によって測定された距離に基づいて打ち出しを制限するときに、報知部90に報知を行わせる。例えば、報知部90に光源を発光させたり、音出力源に音を出力させたり、あるいは、振動源を振動させる。これにより、使用者は、前方の物体までの距離に基づいて釘2の打ち出しが制限されていることを、理解できる。
制御部70は、センサ80によって測定された距離に基づく打ち出しの制限を解除したときに、報知部90による報知を終了させる。これにより、使用者は、前方の物体までの距離に基づいた釘2の打ち出しの制限が解除されていることを、理解できる。
第2の実施の形態
第2の実施の形態にかかる打ち込み工具1の構成は図1および図2と同様である。ただし、センサ80の替わりにセンサ80Aが取り付けられている。センサ80Aは、打ち込み工具1のプッシュレバー62よりも前方に位置する物体を識別し、その識別結果を示す識別信号を制御部71に出力する。具体的には、センサ80Aは、当該物体が人であるのか、あるいは、当該物体が打込対象物であるのかを識別する。
センサ80Aの配置位置はセンサ80と同様に特に制限されないものの、例えば、打出機構収納部11に位置している。より具体的な一例として、センサ80Aは打出機構収納部11の前方部分の傾斜部に位置していてもよい。
図6は、打ち込み工具1の電気的な構成の一例を示すブロック図である。センサ80Aは制御部71に接続される。センサ80Aは例えばカメラ81Aと画像処理部82Aとを含む。カメラ81Aは、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどのイメージセンサを含む。カメラ81Aは打ち込み工具1よりも前方の撮像領域を撮像して、撮像画像データを生成する。カメラ81Aはこの撮像画像データを画像処理部82Aに出力する。
画像処理部82Aは撮像画像データに対して画像処理を行って、撮像画像データに含まれた物体を識別する。このような画像認識のアルゴリズムは特に制限される必要はないものの、例えば、深層学習などの機械学習を用いてもよい。画像処理部82Aは、識別結果を示す識別信号を制御部71に出力する。
画像処理部82Aの構成の一例は制御部71と同様である。なお、画像処理部82Aによる識別機能は制御部71に実装されてもよい。この場合、カメラ81Aおよび制御部71がセンサ80Aを構成する。
制御部71はセンサ80Aの識別結果に基づいて、打出機構40による釘2の打ち出しを制限する。例えば制御部71は、前方の物体が人であるとセンサ80Aが認識しているときには、釘2の打ち出しを制限する。つまり、前方の物体が人であるときには、たとえプッシュレバー62が後方に押し込まれており、かつ、トリガ61が引かれていたとしても、制御部71は駆動機構50を作動させない。これにより、打ち込み工具1が人に向けて釘2を打ち出すことを抑制できる。
一方で、制御部71は、前方の物体が人以外のものであるとセンサ80Aが認識しているときには、釘2の打ち出しを許可してもよい。つまり、前方の物体が人でないときには、プッシュレバー62が後方に押し込まれ、かつ、トリガ61が引かれたときに、制御部71は駆動機構50を作動させる。具体的には、制御部71は駆動機構50を作動させてロック機構423の係止を解除する。これにより、打撃部材41が前方に移動して釘2を前方に打ち出す。
要するに、打ち込み工具1は、プッシュレバー62が押し込まれているという第1条件およびトリガ61が引かれているという第2条件のみならず、前方の物体が人ではないという第4条件が成立したときに、釘2を打ち出す。
なお、カメラ81Aは可視光を受光するカメラであってもよく、あるいは、赤外線を受光するサーモグラフィであってもよい。後者の場合、カメラ81Aは、前方の温度分布を示す画像データを生成する。画像処理部82Aはこの画像データに対する画像処理によって、前方の物体が人であるか否かを判断することができる。このような画像認識のアルゴリズムも特に制限される必要はないものの、例えば深層学習などの機械学習を利用することができる。
図7は、打ち込み工具1の上記動作の一例を示すフローチャートである。ステップS11にて、センサ80Aは前方の物体を識別し、その識別結果を示す識別信号を制御部71に出力する。次にステップS12にて、制御部71は前方の物体が人であるか否かを判断する。前方の物体が人であるときには、再びステップS11を実行する。
前方の物体が人ではないときには、ステップS13にて、制御部71はプッシュレバー62が押し込まれているか否かを判断する。プッシュレバー62が押し込まれていないときには、再びステップS11を実行する。
プッシュレバー62が押し込まれているときには、ステップS14にて、制御部71はトリガ61が引かれているか否かを判断する。トリガ61が引かれていないときには、再びステップS11を実行する。トリガ61が引かれているときには、ステップS15にて、制御部71は駆動機構50を作動させて打撃部材41を前方に移動させ、釘2を打出口11aから打ち出す。
以上の動作によれば、前方の物体が人であるとセンサ80Aが認識したときには、ステップS15は実行されない。したがって、打ち込み工具1が人に向かって釘2を打ち出すことを抑制することができる。よって、打ち込み工具1の安全性を向上することができる。
上述の例では、前方の物体が人であるとセンサ80Aが認識しているときに、制御部71は釘2の打ち出しを制限した。しかるに、必ずしもこれに限らない。制御部71は、前方の物体が打込対象物以外のものであるとセンサ80Aが認識しているときに、釘2の打ち出しを制限してもよい。逆に言えば、制御部71は、前方の物体が打込対象物であるとセンサ80Aが認識しているときのみ、釘2の打ち出しを許可してもよい。
要するに、打ち込み工具1は、プッシュレバー62が押し込まれているという第1条件およびトリガ61が引かれているという第2条件のみならず、前方の物体が打込対象物であるという第5条件が成立したときに、釘2を打ち出す。
図8は、打ち込み工具1の上記動作の一例を示すフローチャートである。ステップS21にて、センサ80Aは前方の物体を識別し、その識別結果を示す識別信号を制御部71に出力する。次にステップS22にて、制御部71は前方の物体が打込対象物であるか否かを判断する。前方の物体が打込対象物でないときには、再びステップS21を実行する。
前方の物体が打込対象物であるときには、ステップS23にて、制御部71はプッシュレバー62が押し込まれているか否かを判断する。プッシュレバー62が押し込まれていないときには、再びステップS21を実行する。
プッシュレバー62が押し込まれているときには、ステップS24にて、制御部71はトリガ61が引かれているか否かを判断する。トリガ61が引かれていないときには、再びステップS21を実行する。トリガ61が引かれているときには、ステップS25にて、制御部71は駆動機構50を作動させて打撃部材41を前方に移動させ、釘2を打出口11aから打ち出す。
以上の動作によれば、前方の物体が打込対象物以外のものであるとセンサ80Aが認識したときには、ステップS25は実行されない。よって、打ち込み工具1の安全性を向上できる。
例えば、釘2の打ち出し時点で打ち込み工具1の前方に人がいなくても、釘2の飛翔中に打ち込み工具1の前方に人が移動すると、釘2が当該人に当たる可能性がある。上述の動作では、前方の物体が打込対象物以外のものであるときには打ち出しが制限されるので、上述の事態が生じる可能性をさらに低減することができる。言い換えれば、打ち込み工具1の安全性をさらに向上することができる。
なお、第1の実施の形態と同様に、ステップS12の判断は、ステップS13またはステップS14において肯定的な判断がなされたときに行われてもよく、ステップS22の判断は、ステップS23またはステップS24において肯定的な判断がなされたときに行われてもよい。
また、第1の実施の形態と同様に、制御部70は、センサ80Aの識別結果に基づいて打ち出しを制限するときに、報知部90に報知を行わせてもよい。これにより、使用者は、前方の物体に基づいて打ち出しが制限されていることを理解できる。
第3の実施の形態
第3の実施の形態にかかる打ち込み工具1の構成は図1および図2と同様であるものの、センサ80およびセンサ80Aの両方を含んでいる。第3の実施の形態では、制御部71は、センサ80によって測定された距離に基づいて釘2の打ち出しを制限し、かつ、センサ80Aの識別結果に基づいて釘2の打ち出しを制限する。
例えば、制御部71は、第1の実施の形態と同様に、センサ80によって測定された距離が基準値よりも長いときに釘2の打ち出しを制限し、また第2の実施の形態と同様に、前方の物体が人であるとセンサ80Aが認識しているときにも、釘2の打ち出しを制限する。逆に言えば、制御部71は、センサ80によって測定された距離が基準値よりも短く、かつ、当該物体が人以外のものであるとセンサ80Aが認識しているときに、釘2の打ち出しを許可する。
図9は、打ち込み工具1の上記動作の一例を示すフローチャートである。図9では、ステップS1およびステップS2、ステップS11からステップS15が実行される。ステップS11は、ステップS2において、センサ80によって測定された距離が基準値以下であると判断されたときに実行される。
この動作によれば、距離が基準値よりも長いときに釘2の打ち出しが制限され、また、前方の物体が人であるときにも釘2の打ち出しが制限される。よって、打ち込み工具1の安全性をさらに向上することができる。
また、第2の実施の形態と同様に、制御部71は、前方の物体が打込対象物ではないとセンサ80Aが認識しているときに、釘2の打ち出しを制限してもよい。逆に言えば、制御部71は、センサ80によって測定された距離が基準値よりも短く、かつ、前方の物体が打込対象物であるとセンサ80Aが認識しているときに、釘2の打ち出しを許可してもよい。具体的な動作の一例として、ステップS1およびステップS2を実行し、ステップS2にて距離が基準値以下と判断されたときに、ステップS21からステップS25を実行すればよい。これによっても、打ち込み工具1の安全性をさらに向上することができる。
変形例
変形例にかかる打ち込み工具1Aの構成は、トリガロック機構およびプッシュレバーロック機構の有無を除いて、第1から第3の実施の形態にかかる打ち込み工具1と同様である。図10は、打ち込み工具1Aの電気的な構成の一例を概略的に示すブロック図である。打ち込み工具1Aはトリガロック機構91とプッシュレバーロック機構92とをさらに含んでいる。
トリガロック機構91は把持部13の内部に収納され、トリガ61と解除可能に係止する。トリガロック機構91とトリガ61との係止および解除は制御部71によって制御される。トリガロック機構91は押し込み前のトリガ61と係止可能であり、この係止によりトリガ61の後方への移動が制限される。このとき、使用者はトリガ61を引くことができない。つまり、トリガ61の移動の制限によって、釘2の打ち出しが制限される。また、トリガロック機構91は制御部71の制御によってトリガ61との係止を解除する。
図11は、トリガロック機構91の構成の一例を概略的に示す図である。例えば、トリガロック機構91は、第1トリガ係止部911とトリガ駆動部912とを含む。またトリガ61は、第2トリガ係止部611を含む。第1トリガ係止部911は、トリガ61が押し込まれていない状態で、第2トリガ係止部611に係止可能である。第1トリガ係止部911が第2トリガ係止部611に係止した状態では、トリガ61は後方位置まで移動することができない。図11の例では、第2トリガ係止部611は凹部であり、第1トリガ係止部911の先端が当該凹部に挿入されることにより、第1トリガ係止部911および第2トリガ係止部611が互いに係止される。
トリガ駆動部912はモータまたはシリンダ機構などを含み、第1トリガ係止部911を移動させる。具体的には、トリガ駆動部912は第1トリガ係止部911が第2トリガ係止部611に係止する状態と、第2トリガ係止部611に係止しない状態との間で、第1トリガ係止部911を移動させる。
プッシュレバーロック機構92は打出機構収納部11の内部に収納され、プッシュレバー62と解除可能に係止する。プッシュレバーロック機構92とプッシュレバー62との係止および解除は制御部71によって制御される。プッシュレバーロック機構92は、押し込み前のプッシュレバー62と係止可能であり、この係止によりプッシュレバー62の後方への移動が制限される。このとき、使用者はプッシュレバー62を押し込むことができない。つまり、プッシュレバー60の移動の制限によって、釘2の打ち出しが制限される。また、プッシュレバーロック機構92は制御部71の制御によってプッシュレバー62との係止を解除する。
例えば、プッシュレバーロック機構92は、いずれも不図示の第1プッシュ係止部とプッシュ駆動部とを含む。またプッシュレバー62は不図示の第2プッシュ係止部を含む。第1プッシュ係止部は、プッシュレバー62が押し込まれていない状態で、第2プッシュ係止部に係止可能である。第1プッシュ係止部が第2プッシュ係止部に係止した状態では、プッシュレバー62は後方位置まで移動することができない。なお、係止構造の一例は図11と同様である。
プッシュ駆動部はモータまたはシリンダ機構などを含み、第1プッシュ係止部を移動させる。具体的には、プッシュ駆動部は第1プッシュ係止部が第2プッシュ係止部に係止する状態と、第2プッシュ係止部に係止しない状態との間で、第1プッシュ係止部を移動させる。
制御部71はトリガロック機構91およびプッシュレバーロック機構92に接続されており、これらを制御する。制御部71は釘2の打ち出しを制限するときに、トリガ61およびプッシュレバー62の少なくともいずれか一方の移動を制限してもよい。
具体的な一例として、センサ80によって測定された距離が基準値よりも長いときに、制御部71はトリガロック機構91を制御して、第1トリガ係止部を第2トリガ係止部に係止させてもよい。これによれば、使用者はトリガ61を引くことができず、打ち込み工具1は釘2を打ち出すことができない。
また、当該距離が基準値よりも長いときに、制御部71はプッシュレバーロック機構92を制御して、第1プッシュ係止部を第2プッシュ係止部に係止させてもよい。これによれば、使用者はプッシュレバー62を押し込むことができず、打ち込み工具1は釘2を打ち出すことができない。
これによれば、使用者は、釘2の打ち出しのための動作(トリガ61およびプッシュレバー62の押し込み)を行うことができず、打ち込み工具1は釘2を打ち出すことができない。
なお、制御部71は、前方の物体が人であるとセンサ80Aが認識しているとき、または、前方の物体が打込対象物以外のものであるとセンサ80Aが認識しているときに、同様にして、トリガ61およびプッシュレバー62の少なくともいずれか一方の移動を制限してもよい。
以上のように、打ち込み工具1,1Aは詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この開示がそれに限定されるものではない。また、上述した各種変形例は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない多数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
例えば打ち込み工具1,1Aは釘打ち機に限らず、鋲を打込対象物に打ち込む鋲打ち機、または、ビスを打込対象物に打ち込んだ後に当該ビスを締め付けるビス打ち機であってもよい。
また、上述の例では、移動機構42は気体の圧力を利用して釘2を打ち出しているものの、必ずしもこれに限らない。例えば、移動機構42はモータにより打撃部材41を直接に駆動してもよい。要するに、打ち込み工具1は、電動の打ち込み工具であればよい。「電動」とは、打込機構40の動作に電力を利用していることを意味しており、打撃部材41を前方に移動させる力、および、打撃部材41を後方に移動させる力の少なくともいずれか一方が、電力を利用して生成されればよい。
また、打ち込み工具1は、次に説明するシングルモードおよびマルチモードを切り替える操作部を有していてもよい。シングルモードは、使用者がトリガ61を1度引くと、再びトリガ61を初期位置に戻さなければ、次の釘2が打ち出されないモードである。マルチモードは、トリガ61を引いた状態では、プッシュレバー62が押し込まれるたびに釘2を打ち出すモードである。いずれのモードにおいても、第1から第3の実施の形態が適用可能である。例えばセンサ80によって測定された距離が基準値よりも長いときには、シングルモードであってもマルチモードであっても、釘2の打ち出しが制限される。