図1は、打ち込み工具1の外観の一例を概略的に示す側面図であり、図2は、打ち込み工具1の内部構成の一例を概略的に示す断面図であり、図3は、打ち込み工具1の電気的な構成の一例を概略的に示すブロック図である。
打ち込み工具1は、木材などの打込対象物に打ち込み材を打ち込む例えば電動の工具である。図1および図2の例では、打ち込み工具1は釘打ち機である。この打ち込み工具1は打込対象物に向かって、打ち込み材として釘2を打ち出すことにより、打込対象物に釘2を打ち込む。
図1に例示するように、打ち込み工具1はハウジング10を含んでいる。このハウジング10には、マガジン20およびバッテリ30の各々が着脱可能に取り付けられる。マガジン20は、釘2をハウジング10内に供給する部材であり、バッテリ30は、ハウジング10内に収納された後述の各種構成要素に電力を供給する部材である。
ハウジング10は、打ち込み工具1の機能を実現するための後述の種々の機械要素および電気要素を収納する。図1および図2の例では、ハウジング10は打出機構収納部11とモータ収納部12と把持部13と基板収納部14とを含んでいる。
打出機構収納部11は長尺状の中空形状を有する。以下では、打出機構収納部11の長手方向を前後方向と呼び、当該長手方向の一方側および他方側をそれぞれ前方および後方と呼ぶ。図1および図2で説明すると、左が前方を示し、右が後方を示す。打出機構収納部11の前方の端部には、釘2が打ち出される打出口11aが形成されている。打出口11aの開口軸は前後方向に沿っている。
図1の例では、マガジン20の一端は打出機構収納部11の前方寄りの一部に着脱可能に取り付けられる。以下では、マガジン20の一端側を上側と呼び、マガジン20の他端側を下側と呼ぶ。図1の例では、マガジン20は、上側から下側に向かうにつれて前方から後方に向かう斜め方向に延在している。このマガジン20の内部には、複数の釘2が収納される。複数の釘2は互いに平行に隣接して配置されている。マガジン20は釘2を1本ずつ打出機構収納部11の内部に送り出すことができる。この釘2は打出機構収納部11の内部において、その長手方向が前後方向に沿った姿勢で、打出口11aと向かい合う位置に収納される(図2も参照)。
打出機構収納部11の内部には、打出機構(打出部)40が収納されている。打出機構40は、マガジン20から送り出された釘2を1本ずつ打出口11aから打ち出す。打出口11aにおける釘2の打出方向D1は前後方向に沿う方向である。打出方向D1は前方であり、打出方向D1と反対方向が後方である。打出機構収納部11の内部に送り出された釘2が打出機構40によって打ち出されると、次の釘2がマガジン20から打出機構収納部11の内部に送り出される。
モータ収納部12は、上下方向に延在する長尺状の中空形状を有し、その上側の端部が打出機構収納部11の前方寄りの一部に連結されている。図1および図2の例では、モータ収納部12の上側の端部は、マガジン20の上側の端部よりも後方において、打出機構収納部11の下部に連結されている。モータ収納部12の内部には、後述の駆動部51が収納される。モータ収納部12の内部空間は打出機構収納部11の内部空間と繋がっており、駆動部51は打出機構40と機械的に連結し、打出機構40を駆動する。
把持部13は、上下方向に延在する長尺状の中空形状を有しており、その上側の端部がモータ収納部12よりも後方において、打出機構収納部11の下部に連結されている。把持部13は前後方向においてモータ収納部12と離れており、把持部13とモータ収納部12との間には空間が形成される。把持部13は使用者によって把持される部分である。
基板収納部14は、前後方向に延在する中空形状を有しており、モータ収納部12の下側の端部と、把持部13の下側の端部とを連結している。基板収納部14の内部空間はモータ収納部12の内部空間および把持部13の内部空間に繋がっている。この基板収納部14の内部には、基板70が収納されている。基板70には、打ち込み工具1を制御する制御部71が実装されている。制御部71はハウジング10内の各種構成要素と電気的に接続されている。制御部71がこれら各種構成要素を制御することにより、打ち込み工具1は釘2を打出口11aから打ち出す。
制御部71は制御回路とも言える。制御部71は、以下にさらに詳細に述べられるように、種々の機能を実行するための制御および処理能力を提供するために、少なくとも1つのプロセッサを含む。
種々の実施形態によれば、少なくとも1つのプロセッサは、単一の集積回路(IC)として、または複数の通信可能に接続された集積回路ICおよび/またはディスクリート回路(discrete circuits)として実行されてもよい。少なくとも1つのプロセッサは、種々の既知の技術に従って実行されることが可能である。
1つの実施形態において、プロセッサは、例えば、関連するメモリに記憶された指示を実行することによって1以上のデータ計算手続または処理を実行するように構成された1以上の回路またはユニットを含む。他の実施形態において、プロセッサは、1以上のデータ計算手続きまたは処理を実行するように構成されたファームウェア(例えば、ディスクリートロジックコンポーネント)であってもよい。
種々の実施形態によれば、プロセッサは、1以上のプロセッサ、コントローラ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号処理装置、プログラマブルロジックデバイス、フィールドプログラマブルゲートアレイ、またはこれらのデバイス若しくは構成の任意の組み合わせ、または他の既知のデバイスおよび構成の組み合わせを含み、以下に説明される機能を実行してもよい。
バッテリ30はハウジング10に着脱可能に取り付けられる。図1および図2の例では、バッテリ30は基板収納部14の下端面に取り付けられる。バッテリ30が取り付けられた状態で、バッテリ30は打ち込み工具1の各種構成要素に電力を供給する。図3の例では、バッテリ30は基板70に電気的に接続されており、基板70を経由して各種構成要素へと電力を供給する。
図1および図2に例示するように、把持部13の上側の前方部分には、操作部(以下、トリガと呼ぶ)61が位置している。トリガ61は、打ち出しを行う操作を受け付ける。トリガ61は変位可能に把持部13に取り付けられる。例えばトリガ61は、後方に押し込み可能に把持部13に取り付けられる。把持部13の内部には、トリガ61を前方に押圧する不図示の弾性部材(例えばバネ)が収納されている。
使用者はトリガ61を変位させることで、打ち出しの操作を行う。具体的には、使用者は、把持部13を把持した状態で、例えば人差し指をトリガ61にかけることができる。使用者は釘2の打ち出し指示の入力として、トリガ61を後方に押し込むことができる。言い換えれば、使用者はトリガ61を引くことができる。トリガ61が後方に押し込まれることにより、打ち込み工具1は釘2を打出口11aから打ち出す。ただし、本打ち込み工具1は、トリガ61の押下のみならず、後述する他の諸条件を満足したときに、釘2を打出口11aから打ち出す。これにより、意図しない状態での打ち込み工具1による釘2の打ち出しを抑制する。
例えば図1および図2では、打出機構収納部11の前方の端部には、プッシュレバー62が位置している。このプッシュレバー62は、意図しない状態での打ち込み工具1による釘2の打ち出しを抑制するための部材である。プッシュレバー62は、打出機構収納部11から打出口11aよりも前方に突出しており、後方に押し込み可能に打出機構収納部11に取り付けられる。
図1および図2の例では、プッシュレバー62は筒部材621とロッド622とを含んでいる。筒部材621は、前後方向に自身を貫通する中空部を含んだ筒状形状を有する。筒部材621はハウジング10の打出口11aよりも前方において、打出口11aと間隔を空けた位置に配置されている。筒部材621の中空部は打出口11aと前後方向において並ぶ。よって、釘2は打出口11aおよび筒部材621を貫通して打ち出される。ロッド622は棒状の形状を有しており、その一端が筒部材621に連結されている。ロッド622は前後方向に延在しており、前後方向に移動可能に打出機構収納部11に結合される。ロッド622の後方部分は打出機構収納部11の内部に位置する。打出機構収納部11の内部には、プッシュレバー62を可変の押圧力で前方に押圧する押圧機構(押圧部)90が収納される。押圧機構90については後に詳述する。
使用者は、プッシュレバー62を打込対象物に押し付けてプッシュレバー62を所定の押し込み量だけ後方に押し込んだ状態で、トリガ61を引く。これにより、打ち込み工具1は釘2を打ち出して、打込対象物に釘2を打ち込む。つまり、打ち込み工具1は、少なくとも、プッシュレバー62が押し込まれる第1条件と、トリガ61が引かれる第2条件との両方が成立した場合に釘2を打ち出す。つまり、第1条件および第2条件のいずれか一方が偶発的に成立したとしても、他方が成立しない限り、打ち込み工具1は釘2を打ち出さない。よって、使用者が意図せず釘2が打ち出されることを抑制することができる。
プッシュレバー62は上記した安全機能のみならず、打込対象物に対する釘2の打込み量を調整する調整機能も発揮してもよい。具体的には、打ち込み工具1は、プッシュレバー62のハウジング10からの突出量(つまり、プッシュレバー62の露出部分の長さ)を調整可能に構成されてもよい。図1の例では、打ち込み工具1は、プッシュレバー62の突出量を調整するための操作部64を含んでいる。図1の例では、操作部64は打出機構収納部11の前方部分に位置している。使用者は、操作部64を操作することにより、プッシュレバー62の突出量を調整する。
プッシュレバー62の突出量が大きい場合には、プッシュレバー62を所定の押し込み量だけ打込対象物に押し付けた状態において、打込対象物と打出口11aの距離は比較的に長くなる。よって、この状態で打ち込み工具1が釘2を打込対象物に打ち込むと、小さい打ち込み量で釘2を打込対象物に打ち込むことができる。つまり、釘2を浅く打込対象物に打ち込むことができる。
一方で、プッシュレバー62の突出量が小さい場合には、プッシュレバー62を所定の押し込み量だけ打込対象物に押し付けた状態において、打込対象物と打出口11aとの間の距離は比較的に短くなる。よって、この状態で打ち込み工具1が釘2を打込対象物に打ち込むと、大きい打ち込み量で釘2を打込対象物に打ち込むことができる。つまり、釘2をより深く打込対象物に打ち込むことができる。
使用者が打ち込み工具1を打込対象物から離すと、プッシュレバー62を押し込む外力が消失するので、プッシュレバー62は押圧機構90からの押圧力によって元の位置まで前方に移動する。打出機構収納部11の内部には、プッシュレバー62を元の位置で停止させるストッパー(不図示)が設けられている。
次に、ハウジング10内に収納される各種構成要素について説明する。打出機構収納部11の内部にはレバー位置検出部63が収納され、把持部13にはトリガ検出部60が収納されている。
レバー位置検出部63はプッシュレバー62の位置を検出する。このレバー位置検出部63は制御部71に電気的に接続される。例えば、レバー位置検出部63は、プッシュレバー62が所定の押し込み量だけ押し込まれたことを検出し、その検出結果を示す検出信号を制御部71に出力する。具体的な一例として、レバー位置検出部63は検出用スイッチを含む。当該検出用スイッチは、プッシュレバー62が所定の押し込み量だけ押し込まれると開閉を切り替える。レバー位置検出部63は当該検出用スイッチの状態を示す信号を、プッシュレバー62の位置を示す検出信号として制御部71に出力する。
トリガ検出部60はトリガ61の前後方向の位置を検出する。このトリガ検出部60は制御部71に電気的に接続される。例えば、トリガ検出部60は、トリガ61が引かれたことを検出し、その検出結果を示す検出信号を制御部71に出力する。より具体的な一例として、トリガ検出部60はトリガスイッチを含んでいる。トリガスイッチは、トリガ61が後方に押し込まれて後方位置に移動したときに開閉を切り替える。トリガ検出部60は当該トリガスイッチの状態を示す信号を、トリガ61の位置を示す検出信号として制御部71に出力する。
打出機構収納部11の内部には、打出機構40(図2参照)および駆動部52(図4参照)も収納されている。打出機構40は、プッシュレバー62が押し込まれ、かつ、トリガ61に対する操作が行われたときに、釘2を打出口11aから打出方向D1に沿って打ち出す。この打出機構40は打撃部材41と移動機構(移動部)42とを含む。打撃部材41は、マガジン20から送り出された釘2と前後方向において並ぶ位置に配置されており、釘2に対して後方に位置する。打撃部材41は打撃位置と待機位置との間で往復移動可能である。待機位置は釘2よりも後方の位置である。図2は、打撃部材41が待機位置で停止している状態を示している。打撃部材41が待機位置で停止しているときには、打撃部材41は釘2と離れていてもよい。打撃位置は待機位置よりも前方の位置である。打撃部材41が待機位置から打撃位置に移動することにより、打撃部材41の前方の端部が釘2の頭部に衝突して釘2を打出口11aから打ち出す。図2の例では、打撃部材41は、前後方向に延在する棒状の形状を有している。
移動機構42は打撃部材41を待機位置と打撃位置との間で往復移動させる。移動機構42の具体的な構成は特に制限されないものの、例えば、移動機構42は空気ばね421と戻り機構422(図2参照)とロック機構423(図4も参照)とを含む。
空気ばね421は打撃部材41の後方の端部に連結されており、打撃部材41を前方に押圧する。具体的には、空気ばね421はピストン4211とシリンダ4212とを含んでいる。ピストン4211は前後方向に移動可能にシリンダ4212の内周面に取り付けられている。ピストン4211が後方に移動することにより、ピストン4211とシリンダ4212とで密閉された気体が圧縮される。これにより、ピストン4211は、より高い圧力で前方に押圧される。図2の例では、ピストン4211が後方に位置する状態が示されている。
図4は、移動機構42、および、移動機構42を駆動する駆動機構50の構成の一例を概略的に示す斜視図である。図4では、空気ばね421についてはピストン4211のみが示されている。
戻り機構422は、打撃部材41を前方の打撃位置から後方の待機位置へ移動させる。ロック機構423は、待機位置に位置する打撃部材41と係止して、打撃部材41を停止させる。ロック機構423が係止を解除すると、打撃部材41が空気ばね421の押圧力を受けて前方の打撃位置まで移動し、釘2を打ち出す。釘2の打ち出し後には、戻り機構422は再び打撃部材41を打撃位置から待機位置へ移動させる。これにより、ロック機構423が再び打撃部材41と係止して、打撃部材41を待機位置で停止させる。以上のように、打ち込み工具1は順次に釘2を打ち出すことができる。
図4の例では、打撃部材41は、棒状の本体部411と、複数の突起部412とを含んでいる。本体部411は前後方向に沿って延在しており、その後方の端部がピストン4211に連結される。複数の突起部412は本体部411の側方に立設されており、前後方向において間隔を空けて並んでいる。図4の例では、突起部412は上側に突出している。
戻り機構422は打撃部材41の突起部412を後方に押圧して、打撃部材41を後方に移動させる。例えば戻り機構422は連結板4221と複数の押圧突起部4222とを含む。連結板4221はその厚み方向が上下方向に沿うように配置される。連結板4221は、上下方向に延在する回転軸Q1のまわりで回転可能である。押圧突起部4222は連結板4221の下面から下側に突出する。複数の押圧突起部4222は回転軸Q1についての周方向に沿って並んで配置される。ただし、複数の押圧突起部4222は回転軸Q1まわりの全周には配置されておらず、例えば半周程度の範囲に配置される。具体的な一例として、3つの押圧突起部4222が半周程度の範囲で周方向に並んで配置される。
連結板4221は、押圧突起部4222が打撃部材41の突起部412と周方向で接触する位置に配置されており、連結板4221が図4の回転方向に回転することにより、各押圧突起部4222が順に突起部412を後方に押し込み、これによって、打撃部材41が後方に移動する。
ロック機構423は打撃部材41と解除可能に係止する。図4の例では、打撃部材41は係止側壁413をさらに含んでいる。係止側壁413は突起部412とは反対側の本体部411の側方に立設されている。一方で、ロック機構423は、係止側壁413と係止可能な係止部4231を含んでいる。図4の例では、ロック機構423は回転体4232も含んでいる。回転体4232は、上下方向に延在する回転軸Q2のまわりで回転可能である。係止部4231は回転体4232の外周面から、回転軸Q2の径方向外側に向かって突出する。
回転体4232が回転することにより、係止部4231の先端は回転軸Q2の周方向に沿って移動する。係止部4231は回転軸Q2の周方向のうち打撃部材41側に押圧されている。打撃部材41が打撃位置から待機位置に移動する際に、係止側壁413が係止部4231の先端を押して係止部4231の先端を退かせる。係止側壁413が係止部4231よりも後方に移動すると、係止部4231が元の位置に戻って係止側壁413の前方の端部と当接する。これにより、打撃部材41の前方への移動が阻止される。
図4の例では、係止側壁413には、複数の係止孔4131が形成されている。複数の係止孔4131は前後方向において間隔を空けて並んでいる。係止部4231は各係止孔4131にも係止可能である。これによれば、打撃部材41の待機位置への移動中に係止部4231が係止孔4131に順次に係止する。よって、後方への移動中において打撃部材41が前方に移動してしまうことを抑制できる。
打撃部材41が待機位置で停止した状態では、戻り機構422の連結板4221は、複数の押圧突起部4222のいずれもが打撃部材41の突起部412と前後方向で並ばない回転位置で停止する。よって、打撃部材41が前方に移動しても、打撃部材41の突起部412は戻り機構422の押圧突起部4222と衝突しない。
戻り機構422およびロック機構423を含む移動機構42は駆動機構50によって駆動される。駆動機構50は移動機構42に駆動力を供給して移動機構42を駆動し、移動機構42に打撃部材41を前後方向に移動させる。駆動機構50は制御部71による制御に基づいて作動する。駆動機構50の具体的な構成は特に制限される必要ないものの、図4の例では、駆動機構50は、戻り機構422を駆動する駆動部51と、ロック機構423を駆動する駆動部52とを含んでいる。
駆動部51はモータ511とギア部512とを含んでいる。モータ511およびギア部512はモータ収納部12の内部に収納されている。モータ511は制御部71と電気的に接続され、制御部71によって制御される。モータ511のシャフトはギア部512を介して戻り機構422の連結板4221のシャフトに連結される。ギア部512は例えば減速機であって、モータ511が出力するトルクを増幅して連結板4221に伝達する。モータ511が回転することにより、連結板4221が回転して、打撃部材41が後方の待機位置まで移動する。
駆動部52はシリンダ機構521とリンク機構522とを含んでいる。シリンダ機構521およびリンク機構522は打出機構収納部11の内部に収納される。シリンダ機構521は制御部71に電気的に接続されており、制御部71によって制御される。シリンダ機構521のロッドはリンク機構522を介してロック機構423の回転体4232に連結される。リンク機構522はシリンダ機構521のロッドの直線移動を回転力に変換して、当該回転力を回転体4232に伝達する。シリンダ機構521がロッドを移動させることにより、回転体4232および係止部4231が回転して係止を解除する。これにより、打撃部材41が空気ばね421の押圧力を受けて前方に移動する。打撃部材41は釘2を打出口11aから打ち出す。
次に、プッシュレバー62を打出方向D1に押圧する押圧機構90の一例について説明する。押圧機構90は、ハウジング10の傾斜姿勢に応じた押圧力で、プッシュレバー62を押圧する。以下では、ハウジング10の傾斜姿勢を示す指標として、傾斜角θ(0度≦θ≦180度)を導入する。図2を参照して、傾斜角θは、打出口11aの打出方向D1が、鉛直方向に沿って鉛直上側に延びる仮想的な基準ベクトルV1に対してなす角度であると定義する。鉛直方向とは重力方向に平行な方向であり、打ち込み工具1の姿勢とは無関係に設定される方向である。鉛直上側は重力方向の反対側を示し、鉛直下側は、重力方向に向かう側を意味する。打出方向D1が鉛直方向に沿って鉛直上側を向くときには傾斜角θは零度であり、打出方向D1が鉛直方向に沿って鉛直下側を向くときには傾斜角θは180度である。
図5は、異なる傾斜姿勢をとる打ち込み工具1の一例を概略的に示す図である。図5の例では、2つの打ち込み工具1が示されている。紙面下側の打ち込み工具1は、その打出方向D1が鉛直方向に沿って鉛直下側を向く傾斜姿勢をとっている。この打ち込み工具1についての傾斜角θは180度である。傾斜角θが180度であるときには、使用者は打ち込み工具1の把持部13を把持しつつ、プッシュレバー62を打込対象物102の上面に当接させ、打ち込み工具1を鉛直下側に押し付ける。これにより、プッシュレバー62を押し込むことができる。打ち込み工具1の重量は鉛直下側に作用するので、このとき、当該重量はプッシュレバー62を押し込む方向に作用する。よって、プッシュレバー62を押し込むために必要な使用者による押し込み力は比較的に小さくてもよい。
紙面上側の打ち込み工具1は、その打出方向D1が鉛直方向に沿って鉛直上側を向く傾斜姿勢をとっている。説明のために、この状態における打ち込み工具1の傾斜角θを零度と定義している。傾斜角θが零度であるときには、使用者は打ち込み工具1の把持部13を把持しつつ、プッシュレバー62を打込対象物100の下面に当接させ、打ち込み工具1を鉛直上側に押し付ける。これにより、プッシュレバー62を押し込むことができる。打ち込み工具1の重量は鉛直下側に作用するので、使用者は打ち込み工具1の重量を支持しつつ、プッシュレバー62を押し込む必要がある。よって、プッシュレバー62を押し込むために必要な使用者による押し込み力は、傾斜角θが180度である場合に比べて大きい。つまり、プッシュレバー62の押し込みに必要な押し込み力は、打ち込み工具1の傾斜姿勢によって大きく相違する。プッシュレバー62の押し込みに必要な押し込み力が傾斜姿勢に応じてばらつくと、使用者は打ち込み工具1を使いにくい。
そこで、押圧機構90は、傾斜角θが第1値(例えば零度)であるときに、より小さい第1押圧力でプッシュレバー62を打出方向D1に向かって押圧し、傾斜角θが第1値よりも大きい第2値(例えば180度)であるときに、第1押圧力よりも大きい第2押圧力でプッシュレバー62を打出方向D1に向かって押圧する。つまり、傾斜角θが第1値(例えば零度)であるときに押圧機構90がプッシュレバー62を押圧する第1押圧力は、傾斜角θが第2値(例えば180度)であるときの第2押圧力よりも小さい。
さらに言い換えれば、押圧機構90は、打出方向D1が第1方向(例えば重力方向とは反対方向)であるとき第1押圧力でプッシュレバー62を押圧し、打出方向D1が第1方向よりも鉛直下側に傾斜した第2方向(例えば重力方向)であるときに、第1押圧力よりも大きい第2押圧力でプッシュレバー62を押圧する。
これによれば、打ち込み工具1の傾斜姿勢という観点では使用者による大きな押し込み力を必要とする状態で、押圧機構90によるプッシュレバー62への押圧力が小さくなる。例えば傾斜角θが零度である状態で、押圧機構90による押圧力が小さくなる。よって、プッシュレバー62の押し込みに必要な使用者の押し込み力を低減することができる。これによれば、打ち込み工具1の使いやすさを向上できる。以下、より具体的な一例について述べる。
図6は、押圧機構90の構成の一例を概略的に示す図である。図6に例示するように、押圧機構90は弾性部材91と支持体92と移動機構93とを含んでいてもよい。また、打ち込み工具1には、傾斜センサ(角度検出部)94も設けられている。弾性部材91は例えばコイルバネおよび板バネなどのバネであって、第1端部91aおよび第2端部91bを含んでいる。弾性部材91の第1端部91aは支持体92に当接し、第2端部91bはプッシュレバー62に当接する。図6では、弾性部材91としてコイルバネが例示されている。図6の例では、プッシュレバー62のロッド622の外周面には、径方向外側に突出する突起部623が立設されている。弾性部材91の第2端部91bは、後方から突起部623に当接する。支持体92は突起部623よりも後方に位置しており、前後方向に沿って突起部623と並んでいる。支持体92は例えば板状の形状を有しており、その厚み方向が前後方向に沿うように位置している。弾性部材91の第1端部91aは前方から支持体92に当接する。
弾性部材91は支持体92とプッシュレバー62との間の間隔を広げる方向に、支持体92およびプッシュレバー62に押圧力を作用させる。これにより、弾性部材91はプッシュレバー62を前方(つまり、打出方向D1)に押圧することができる。弾性部材91は支持体92とプッシュレバー62との間の間隔、つまり、第1端部91aと第2端部91bとの間の間隔が狭いほど大きな押圧力でプッシュレバー62を押圧する。なお、図6の例では、プッシュレバー62は打込対象物に押し付けられておらず、初期位置で停止している。例えば突起部623がハウジング10内に位置する不図示のストッパーに当接することで、プッシュレバー62の前方への移動が制限されてもよい。この場合、突起部623がストッパーに当接した状態でのプッシュレバー62の位置が初期位置となる。
支持体92は打出方向D1に沿って往復移動可能に配置される。移動機構93は所定の移動範囲内において支持体92を打出方向D1に沿って往復移動させることが可能である。移動機構93は例えばボールねじ機構またはシリンダ機構を有しており、制御部71によって制御される。移動機構93が支持体92を移動させることにより、支持体92と突起部623との間の間隔を調整することができる。弾性部材91は、支持体92と突起部623との間の間隔が狭いほど高い押圧力をプッシュレバー62および支持体92に作用させる。つまり、移動機構93が支持体92の位置を調整することで、弾性部材91がプッシュレバー62に作用させる押圧力を調整することができる。移動機構93は制御部71の制御の下で、傾斜角θに基づいて支持体92を移動させる。
弾性部材91は支持体92が所定の移動範囲内のどの位置に位置していても、プッシュレバー62を前方に押圧する。つまり、弾性部材91は、支持体92の位置によらず、弾性変形前の状態から縮んでいる。
傾斜センサ94は、打ち込み工具1の傾斜姿勢を測定する。言い換えれば、傾斜センサ94は、打ち込み工具1の打出口11aの打出方向D1がどの方向を向いているのかを測定する。より具体的な一例として、傾斜センサ94は傾斜角θを測定する。
傾斜センサ94は、例えば、3軸の加速度センサを含んでいる。3軸は、ハウジング10に対して予め設定される軸であり、互いに略直交する。この加速度センサは、打ち込み工具1に生じる3軸の重力加速度成分を測定し、その測定結果を示す電気信号を制御部71に出力することができる。制御部71は、加速度センサによって測定された各方向の重力加速度成分を用いて、幾何学的な関係式より、傾斜角θを算出することができる。この場合、加速度センサおよび制御部71の傾斜角算出機能は、傾斜センサ94を構成する。なお、傾斜角算出機能を有する、制御部71とは別の演算部が、傾斜センサ94に設けられてもよい。この点は、以下でも同様である。
傾斜センサ94は、加速度センサに替えて、あるいは、加速度センサとともに、例えば3軸のジャイロセンサを含んでいてもよい。ジャイロセンサは、打ち込み工具1の各軸まわりの角速度を測定し、その測定結果を示す電気信号を制御部71に出力する。制御部71は、ジャイロセンサによって測定された角速度を時間積分することで、傾斜角θを算出する。あるいは、制御部71は加速度センサの測定結果とジャイロセンサの測定結果の両方に基づいて傾斜角θを算出してもよい。
制御部71は傾斜角θに応じて移動機構93を制御する。つまり、制御部71は傾斜角θに応じて支持体92と突起部623との間の間隔を制御する。具体的には、制御部71は、傾斜角θが第1値(例えば零度)であるときの支持体92と突起部623との間の間隔が、傾斜角θが第1値よりも大きい第2値(例えば180度)であるときの支持体92と突起部623との間の間隔よりも広くなるように、移動機構93を制御する。
図7は、傾斜角θが零度であるときの押圧機構90、および、傾斜角θが180度であるときの押圧機構90の構成の一例を概略的に示している。図7の例では、傾斜角θが零度であるときの支持体92と突起部623との間の間隔G1は、傾斜角θが180度であるときの支持体92と突起部623との間の間隔G2よりも広い。なお、図7の両状態において、プッシュレバー62は打込対象物に押し付けられておらず、初期位置に位置している。
間隔G1が間隔G2よりも広いので、傾斜角θが零度であるときの弾性部材91による押圧力F41は、傾斜角θが180度であるときの弾性部材91による押圧力F42よりも小さい。
次に、プッシュレバー62を後方に押し込むための力について説明する。弾性部材91はプッシュレバー62が押し込まれるほど縮むので、より高い押圧力でプッシュレバー62を前方に押し返す。よって、プッシュレバー62が後方に位置するほど、プッシュレバー62を押し込むために必要な力も増加する。以下では、説明の簡単のために、プッシュレバー62を押し始めるときの初期的な力について説明する。
例えば打込対象物が打込対象物102である場合(図5も参照)、まず、使用者は打出口11aを鉛直下側に向けてプッシュレバー62を打込対象物102の上面に当接させる。そして、使用者は打ち込み工具1を鉛直下側に押し込んで、プッシュレバー62を所定の押し込み量だけ押し込み、トリガ61を引く。これにより、釘2が打込対象物102に打ち込まれる。
この例では、打ち込み工具1に生じる重力の方向と、使用者が打ち込み工具1を押し付ける方向とが互いに等しいので、図7も参照して、プッシュレバー62には、打ち込み工具1の重量F1と、使用者による押し付け力F22とを加算して得られた力F32が作用する。つまり、この傾斜姿勢では、重量F1をプッシュレバー62の押し込みに利用することができる。プッシュレバー62を押し込むには、力F32(=F22+F1)は、押圧機構90による押圧力F42以上である必要がある。
一方、例えば打込対象物が打込対象物100である場合(図5も参照)、まず、使用者は打出口11aを鉛直上側に向けてプッシュレバー62を打込対象物100の下面に当接させる。そして、使用者は打ち込み工具1を鉛直上側に押し付けて、プッシュレバー62を所定の押し込み量だけ押し込み、トリガ61を引く。これにより、釘2が打込対象物100に打ち込まれる。
この例では、打ち込み工具1に生じる重力の方向と、使用者が打ち込み工具1を押し付ける方向とは互いに反対となるので、図7も参照して、プッシュレバー62には、使用者による押し付け力F21から打ち込み工具1の重量F1を減算して得られた力F31が作用する。この場合、重量F1は、プッシュレバー62の押し込みに利用できないだけでなく、むしろ、押し込みを困難とする。プッシュレバー62を押し込むには、力F31(=F21-F1)は、押圧機構90による押圧力F41以上である必要がある。
本打ち込み工具1によれば、傾斜角θが例えば零度であるときの押圧機構90による押圧力F41は、傾斜角θが例えば180度であるときの押圧機構90による押圧力F42よりも小さい。よって、使用者は、重量F1がプッシュレバー62の押し込みを阻害するような、打出方向D1が鉛直上側を向く場合であっても、従来よりも小さい力F21で適切にプッシュレバー62を押し込むことができる。つまり、打出方向D1が鉛直上側を向く場合に必要な力F21を、打出方向D1が鉛直下側を向く場合に必要な力F22に近づけることができる。これによれば、使用者は、打出口11aの打出方向D1が鉛直上側であっても、小さい負担で作業を行うことができる。言い換えれば、プッシュレバー62の押し込みに必要な使用者の力の、傾斜姿勢に応じたばらつきを低減することができる。よって、打ち込み工具1の使いやすさを向上することができる。
押圧力F41と押圧力F42との差を重量F1の2倍に一致させれば、理想的には、プッシュレバー62の押し込みに必要な使用者の力F21および力F22を互いに一致させることができる。
上述の例では、打出方向D1が鉛直方向に沿って鉛直上側を向く状態と、鉛直方向に沿って鉛直下側を向く状態とを説明したが、打出方向D1が鉛直方向に対して傾斜している場合も同様である。例えば、押圧機構90は、打出方向D1が水平面よりも鉛直上側を向くとき、つまり、傾斜角θが90度よりも小さいときに、押圧力F41でプッシュレバー62を押圧し、打出方向D1が水平面よりも鉛直下側を向くとき、つまり、傾斜角θが90度よりも大きいときに押圧力F42でプッシュレバー62を押圧してもよい。
図8は、押圧機構90の上記動作の一例を示す図である。図8の一連の処理は例えば所定時間ごとに繰り返し実行される。まずステップS1にて、傾斜センサ94は、打出方向D1の傾斜角θを測定する。次に、ステップS2にて、制御部71は、傾斜センサ94によって測定された傾斜角θが90度未満であるか否かを判断する。
傾斜角θが90度未満であるときには、ステップS3にて、制御部71は移動機構93を制御して、弾性部材91に押圧力F41でプッシュレバー62を押圧させる。具体的には、移動機構93は支持体92を第1位置に停止させる。
一方で、傾斜角θが90度以上であるときには、ステップS4にて、制御部71は移動機構93を制御して、弾性部材91に押圧力F42でプッシュレバー62を押圧させる。具体的には、移動機構93は支持体92を第1位置よりも前方の第2位置で停止させる。
上述の例では、傾斜角θが90度よりも大きいか否かで押圧力を変化させた。しかるに、必ずしもこれに限らない。より細かく押圧力を変化させてもよい。なぜなら、打ち込み工具1の重量F1のうちプッシュレバー62の押し込みに作用する成分の大きさは、傾斜角θの変化に対して連続的に変化するからである。具体的には、傾斜角θが90度よりも大きい範囲において、打ち込み工具1の重量F1のうちプッシュレバー62の押し込みに寄与する寄与成分(=F1・|cosθ|)は、傾斜角θが90度に近づくほど小さくなる。傾斜角θが90度であるときには、理想的には当該寄与成分は零である。また、傾斜角θが90度よりも小さい範囲において、打ち込み工具1の重量F1のうちプッシュレバー62の押し込みを阻害する阻害成分(=F1・cosθ)も、傾斜角θが90度に近づくほど小さくなる。傾斜角θが90度であるときには、理想的には当該阻害成分は零である。
以上のように、重量F1のうちプッシュレバー62の押し込みに作用する寄与成分および阻害成分は、傾斜角θに対して連続的に変化する。よって、押圧機構90の押圧力を傾斜角θの変化に対してより細かく変化させてもよい。
例えば、押圧機構90は、傾斜角θが第1値であるときに第1押圧力でプッシュレバー62を押圧し、傾斜角θが第1値よりも大きな第2値であるときに第1押圧力よりも大きな第2押圧力でプッシュレバー62を押圧し、傾斜角θが第1値と第2値との間の第3値であるときに、第1押圧力と第2押圧力との間の第3押圧力でプッシュレバー62を押圧してもよい。言い換えれば、押圧機構90は、傾斜角θが第1角度未満であるときに第1押圧力でプッシュレバー62を押圧し、傾斜角θが第1角度以上かつ第2角度未満であるときに、第1押圧力よりも大きな第2押圧力でプッシュレバー62を押圧し、傾斜角θが第2角度以上であるときに、第2押圧力よりも大きな第3押圧力でプッシュレバー62を押圧してもよい。
図9は、傾斜角θと押圧機構90の押圧力との関係を例示するグラフである。図9の例では、傾斜角θと押圧機構90の押圧力との関係の示す関数f1(θ)から関数f3(θ)が示されている。関数f1(θ)から関数f3(θ)の各々において、傾斜角θが零度であるときの押圧力は押圧力F41であり、傾斜角θが180度であるときの押圧力は押圧力F42である。押圧力F41と押圧力F42との差は、例えば、打ち込み工具1の重量F1の2倍に設定される。
関数f1(θ)では、傾斜角θの角度範囲を3つの範囲に分割し、傾斜角θが大きいほど押圧力を大きく設定している。例えば、押圧機構90は、傾斜角θが第1基準値(例えば60度)よりも小さい範囲ではより小さい押圧力F41でプッシュレバー62を押圧し、傾斜角θが第1基準値よりも大きく第2基準値(例えば120度)よりも小さい範囲では、押圧力F41よりも大きい押圧力F43でプッシュレバーを押圧し、傾斜角θが第2基準値よりも大きい範囲では、押圧力F43よりも大きい押圧力F42でプッシュレバー62を押圧する。押圧力F43は、例えば押圧力F41と押圧力F42との平均値であってもよい。
図9の例では、関数f2(θ)も示されている。関数f2(θ)は傾斜角θの増加に対して連続的に押圧力を増加させている。関数f2(θ)において、押圧力は傾斜角θの増加に対して線形に増加している。
図9の例では、関数f3(θ)も示されている。関数f3(θ)も、傾斜角θの増加に対して連続的に押圧力を増加させている。ただし、関数f3(θ)においては、押圧力は傾斜角θの増加に対して余弦波に沿って単調非減少で増加している。この関数f3(θ)によれば、使用者によるプッシュレバー62の押し込みに必要な力F2を、傾斜角θによらず、一定にすることできる。以下、数式を用いて説明する。押圧機構90の押圧力F4は以下の式で表される。
F4=f3(θ)
=-(F42-F41)・cosθ/2+(F41+F42)/2 ・・・(1)
式(1)において、傾斜角θが零度であるときには、F4=F41が成立し、傾斜角θが180度であるときには、F4=F42が成立する。
一方で、プッシュレバー62に作用する力F3は、以下の式で表される。
F3=F2-F1・cosθ ・・・(2)
ここでは、2・F1=F42-F41が成立するので、式(2)を以下のように変形できる。
F3=F2-(F42-F41)・cosθ/2 ・・・(3)
力F3が押圧力F4以上となったときに、プッシュレバー62が押し込まれるので、F3=F4が成立したときの力F2が、プッシュレバー62の押し込みに必要な使用者の力である。F3=F4を変形すると、以下の式が導かれる。
F2=(F41+F42)/2 ・・・(4)
式(4)によれば、プッシュレバー62の押し込みに必要な力F2は傾斜角θを変数として含まない。よって、押し込みに必要な使用者の力F2を傾斜角θによらず、一定にすることができる。これによれば、打ち込み工具1をどの方向に押し付ける場合であっても、使用者は同じ力F2で打ち込み工具1を打込対象物に押し付ければよい。
なお、関数f1(θ)から関数f3(θ)の各々を示す情報は、制御部71の記録媒体に記録されてもよい。当該情報は数式を示す情報であってもよく、ルックアップテーブルであってもよい。また、制御部71は、傾斜センサ94によって測定された傾斜角θと当該情報とに基づいて、支持体92の位置を決定してもよい。支持体92の位置と弾性部材91の押圧力との関係は予め設定できるので、傾斜角θと支持体92の位置との関係を示す情報が制御部71の記録媒体に記録されてもよい。
以上のように、打ち込み工具1は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この開示がそれに限定されるものではない。また、上述した各種変形例は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない多数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
例えば打ち込み工具1は釘打ち機に限らず、鋲を打込対象物に打ち込む鋲打ち機、または、ビスを打込対象物に打ち込んだ後に当該ビスを締め付けるビス打ち機であってもよい。
また、上述の例では、移動機構42は気体の圧力を利用して釘2を打ち出しているものの、必ずしもこれに限らない。例えば、移動機構42はモータにより打撃部材41を直接に駆動してもよい。要するに、打ち込み工具1は、電動の打ち込み工具であればよい。「電動」とは、打出機構40の動作に電力を利用していることを意味しており、打撃部材41を前方に移動させる力、および、打撃部材41を後方に移動させる力の少なくともいずれか一方が、電力を利用して生成されればよい。
また、打ち込み工具1には、通知部が設けられてもよい。通知部は、押圧機構90による押圧力を使用者に通知する。例えば、通知部は光源および音出力源の少なくともいずれか一つを含んでいる。光源は、例えば、LED(Light Emitting Diode)などの発光素子を含み、音出力源は例えばスピーカを含む。
通知部が光源を含む場合には、当該光源は例えばハウジング10に位置している。光源は使用者によって視認可能である。通知部はハウジング10の後方の端部、より具体的には、打出機構収納部11の後方の端部に位置していてもよい。打ち込み工具1の使用中には、使用者はハウジング10の後方の端部よりも後方に位置しており、ハウジング10の後方の端部を見やすい。よって、通知部の光源がハウジング10の後方の端部に位置している場合には、使用者は光源を見やすい。よって、使用者は報知を受け取りやすい。通知部が音出力源を含む場合には、例えばハウジング10の内部に収納される。この場合、通知部は打出機構40に対してプッシュレバー62とは反対側に位置していてもよい。