JP2021068551A - 鉛蓄電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】成層化を抑制し、IS寿命が向上する鉛蓄電池を提供する。【解決手段】鉛蓄電池は、正極板と、負極板と、正極板および負極板の間に介在するセパレータと、電解液と、を備える。正極板は、正極集電体101と、正極集電体に保持された正極電極材料102と、を備える。負極板は、負極集電体と、負極集電体に保持された負極電極材料と、を備える。正極集電体および負極集電体は、格子部103と、格子部の一端部に設けられた第1の横骨部104と、第1の横骨部に設けられた耳部106と、を有し、正極板および負極板の少なくとも一方の、第1の横骨部とは反対側の端部の一対の隅部の少なくとも一方は、面取り107されている。セパレータの全細孔容積は0.8cm3/g以上である。【選択図】図1

Description

本発明は、鉛蓄電池に関する。
鉛蓄電池は、車載用、産業用の他、様々な用途で使用されている。なかでも、車載用の鉛蓄電池については、アイドリングストップ車両の利用拡大に伴い、部分充電状態(Partial State of Charge: PSOC)での寿命性能の向上が要求されている。
例えば、充電制御やアイドリングストップ・スタート(ISS)の際には、鉛蓄電池がPSOCで使用される。そのため、このような用途で使用される鉛蓄電池は、PSOC条件下でのサイクル試験において寿命性能に優れることが求められる。この場合、成層化の進行が寿命(以下において、「IS寿命」と称する)を決定する要因となり易い。
通常、一般始動用の鉛蓄電池においては、過充電または満充電に近い状態まで充電されることでガス発生により電解液の対流が発生し、成層化は抑制される。しかしながら、アイドリングストップ車用の鉛蓄電池では、過充電または満充電に近い状態になり難い。結果、PSOC状態で使用され続けることにより電解液の成層化が進行し、正極活物質の軟化および正負極活物質への硫酸鉛の蓄積が促進され、IS寿命が短くなり易い。
特許文献1は、アイドリングストップ車用の液式鉛蓄電池において、正極活物質は化成済みの状態において、Sbを金属Sbに換算して0.03mass%以上0.3mass%以下含有し、かつSnを金属Snに換算して0.05mass%以上1.0mass%以下含有することを提案している。
特許文献2は、エキスパンド格子を用いた鉛蓄電池において、正極板および負極板の少なくとも一方の極板の4つの隅部のうち極板底部の2つの隅部にカット部を設けた構成を提案している。
特開2013−140678号公報 特開2008−204639号公報
鉛蓄電池において、成層化を抑制し、IS寿命を向上させる。
本発明の一側面は、正極板と、負極板と、前記正極板および前記負極板の間に介在するセパレータと、電解液と、を備え、前記正極板は、正極集電体と、前記正極集電体に保持された正極電極材料と、を備え、前記負極板は、負極集電体と、前記負極集電体に保持された負極電極材料と、を備え、前記正極集電体および前記負極集電体は、格子部と、前記格子部の一端部に設けられた第1の横骨部と、前記第1の横骨部に設けられた耳部と、を有し、前記正極板および前記負極板の少なくとも一方の、前記第1の横骨部とは反対側の端部の一対の隅部の少なくとも一方は、面取りされており、前記セパレータの全細孔容積は0.8cm/g以上である、鉛蓄電池に関する。
本発明によれば、成層化が抑制されることから、鉛蓄電池のIS寿命が向上する。
本発明の一実施形態に係る鉛蓄電池で用いる集電体の外観を示す平面図である。 本発明の一実施形態に係る鉛蓄電池の外観と内部構造を示す一部切り欠き斜視図である。
本発明の一態様に係る鉛蓄電池は、正極板と、負極板と、正極板および負極板の間に介在するセパレータと、電解液と、を備える。正極板は、正極集電体と、正極集電体に保持された正極電極材料と、を備える。負極板は、負極集電体と、負極集電体に保持された負極電極材料と、を備える。
正極集電体および負極集電体は、格子部と、格子部の一端部に設けられた第1の横骨部と、第1の横骨部に設けられた耳部と、を有する。正極板および負極板の少なくとも一方の、第1の横骨部とは反対側の端部の一対の隅部の少なくとも一方は、面取りされている。セパレータの全細孔容積は0.8cm/g以上である。以下において、面取りにより設けられた面を「カット面」とも称する。面取りとは、隅部の角部分が丸められ、もしくは斜めに形成されることをいう。面取りは、C面取りであってもよく、R面取りであってもよい。また、隅部が面取りされているとは、隅部の角部分を除去する加工が行われることを必ずしも意味するものではなく、例えば、角部分を除去することなく、隅部に角部分のない形状の極板を形成する場合を含む。
鉛蓄電池では、放電時には、正極板および負極板の双方で硫酸鉛が生成するとともに正極では水が生成する。一方、充電時には、硫酸鉛と水から、金属鉛、二酸化鉛、および硫酸が生成する。部分充電状態での使用が長期にわたる場合、硫酸鉛の蓄積量が必然的に多くなるため、電解液の比重が小さくなる。充電中に充分に電解液が攪拌されない場合、電解液の上部と下部で硫酸の濃度差が発生し、成層化する。このような環境下で使用を続けると、電解液の比重の低い上部から充放電効率が低下し、寿命に至る。また、正極電極材料が軟化劣化により正極板から脱落し、寿命に至る場合もある。また、電解液の比重の低い上部では硫酸鉛が電解液中に溶解し易く、溶解により生じた鉛イオンが負極で還元され、デンドライト状に析出した鉛結晶がセパレータを貫通し、浸透短絡により寿命に至る場合もある。
特に、極板の隅部に面取りを施した鉛蓄電池では、カット面の下方において電解液が滞留し易いことから、成層化が進行し易いことが判明した。しかしながら、セパレータの全細孔容積を0.8cm/g以上とすることで、IS寿命が顕著に改善することが分かり、本発明に至った。
IS寿命が顕著に改善する理由としては、セパレータの全細孔容積を0.8cm/g以上に高めることで、セパレータ内を電解液が流動し易くなることが挙げられる。これにより、成層化の進行が抑制され、IS寿命が向上されると考えられる。セパレータの全細孔容積は、1.1cm/g以上であってもよい。この場合に、IS寿命の向上が顕著である。
なお、集電体がエキスパンド格子である場合には、正極板および負極板をセパレータを介して積層した極板群を作製するに際して、予め極板の隅部を面取りし、カット面を形成しておくことによって、製造装置との干渉により隅部が変形するのを防ぐこともできる。これにより初期電池短絡が生じるのを抑制することができる(特許文献2参照)。特に正極集電体がエキスパンド格子である場合、格子骨が太いために隅部が一旦変形すると元に戻り難く、初期電池短絡が生じ易い。これに対し、集電体がエキスパンド格子以外の集電体(例えば、打ち抜き集電体または鋳造集電体)である場合には、集電体の外周全体に枠骨を有しているため、極板群の作製に際して(カット面の有無に拘わらず)隅部分は変形し難く、初期電池短絡の問題は生じ難い。
一方で、カット面を設けた鉛蓄電池における成層化抑制効果およびIS寿命の改善効果は、エキスパンド格子を用いる場合に限られず、打ち抜き集電体または鋳造集電体を用いる場合においても得られる。そして、エキスパンド格子を用いる鉛蓄電池においては、IS寿命が改善されるほか、初期電池短絡の問題も抑制されるため特に有用である。
カット面は、例えばエキスパンド格子の場合、長方形に製造した極板の角部分の一部を除去することにより製造され得る。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。打ち抜き集電体または鋳造集電体の場合、角部が面取りされた形状(例えばテーパ状もしくは曲線形状)の外縁を有するように枠骨を形成してもよい。
面取りにより減少した極板面積の減少分(以下において、「カット面積」と称する)は、面取りされる前の正極板または負極板の面積の1%以上であってもよい。面取り前の極板面積に対するカット面積の割合R1が1%以上で、電解液の滞留が顕著になり、成層化の進行によるIS寿命の低下の問題が発現し易い。しかしながら、本実施形態の鉛蓄電池では、セパレータの全細孔面積を0.8cm/gとすることで、割合R1が1%以上の場合においても、IS寿命は低下が抑制され、IS寿命はむしろ向上する。一方で、電池特性(低温出力、容量など)を高く維持するため、割合R1を6%以下としてもよい。割合R1は、2%以上であってもよく、4%以下であってもよい。
割合R1は、1%以上6%以下、2%以上6%以下、もしくは2%以上4%以下であってもよい。
なお、極板面積とは、正極板または負極板(耳部を除く)を極板面の法線方向に投影したときの投影面積を指す。また、カット面積とは、正極板または負極板の耳部を有する横骨部と反対側の端部の隅部の欠除した部分(例えば、面取りにより除去された部分)の面積を指し、以下の方法で求められる。
通常、正極板および負極板は、耳部を除くと略長方形の形状をしている。正極板および負極板の投影形状の輪郭は、耳部の反対側において、横骨(第1の横骨)の延伸方向である第1方向(通常、水平方向)と平行に延びる直線部分L1と、第1方向に交差する第2方向(通常、鉛直方向)に平行に延びる直線部分L2と、を有し、直線部分L1とL2とは、接続部分Cを介して連結されている。接続部分Cは、第1方向および第2方向から傾いた直線および/または曲線を含んで構成され得る。
直線部分L1をL2側に延長した延伸線E1、および、直線部分L2をL1側に延長した延伸線E2を考える(図1参照)。カット面積は、延伸線E1、延伸線E2、および、接続部分Cで囲まれた領域の面積Sを算出することにより求められる。第1方向において、一対の隅部の両側を面取りする場合、カット面積は、両側の欠除部分の面積SとSの合計とする。
面取りされたカット面を有する極板の極板面積をAとする。割合Rは、下記式(1)で求められる。
(式1)
R1=S/(A+S)
特に、正極板または負極板が、略長方形の極板の面取りにより形成されたものである場合には、極板の第1方向の幅をWとし、耳部を除いた極板の第2方向の高さをHとして、割合R1は、下記式(2)で求められる。
(式2)
R1=S/(W×H)
カット面は、正極板および負極板の両方に設けられていてもよいし、正極板および負極板のいずれか一方にのみ設けられていてもよい。カット面が正極板および負極板の両方に設けられる場合、カット面積は、正極板と負極板とで同じであってもよいし、異なっていてもよい。なかでも、カット面は、正極板の一対の隅部の少なくとも一方に設けられる場合に、IS寿命の改善が顕著である。さらに、カット面は、正極板の一対の隅部の少なくとも一方にのみ設け、負極板には設けないことが好ましい。なお、正極板または負極板にカット面が設けられていないとは、上記式で表されるカット面積の割合R1が0.1%以下の場合を含むものとする。
カット面積は、1cm以上7cm以下、2cm以上7cm以下、もしくは2cm以上4.5cm以下であってもよい。
また、カット面は、正極板または負極板の一対の隅部の両方に設けられていてもよいし、正極板または負極板の一対の隅部の一方のみに設けられていてもよい。カット面が正極板または負極板の一対の隅部の両方に設けられている場合、一方の隅部に設けられたカット面が、他方の隅部に設けられたカット面と、形状またはカット面積が相違していてもよい。
正極板のみにカット面が設けられる場合、あるいは、正極板におけるカット面積Sが、負極板におけるカット面積Sよりも大きい場合、負極板には、正極板と対向する方向から見て、正極板と対向しない非対向部が、正極板の隅部のカット面の外側に張り出して存在し得る。負極板の非対向部は、充放電反応に寄与し難く、充放電電圧の印加によりガス(水素ガス)が発生する反応が主として起こり得る。よって、負極板に非対向部を設けることで、部分充電状態においても水素ガス発生が促進される。発生した水素ガスは非対向部が存在する電槽の底部側から電解液の液面もしくは鉛直方向に向かって移動する。これにより、カット面の下方で滞留する電解液の流動および攪拌を誘起させて、成層化が効果的に抑制され得る。結果、IS寿命の向上効果を一層高めることができる。
一方で、少なくとも正極板にカット面が設けられ、負極板に非対向部を有する場合、ガス(水素ガス)の発生が促進されるものの、ガス発生の分だけ充電効率が低下するため、却ってIS寿命の低下を招く可能性がある。つまり、負極非対向部でのガス発生によるIS寿命の向上効果は、充電効率の低下に伴うIS寿命の低下の副作用と相殺される可能性がある。しかしながら、実際には、向上効果が副作用を大きく上回り、IS寿命が顕著に改善する。
負極板の非対向部の面積Sは、正極板および負極板のそれぞれにおけるカット面もしくは隅部の形状およびカット面積から求められる。負極板の非対向部の面積Sは、面取り前の負極板の面積に対して1%以上であってもよく、2%以上であってもよい。面積Sは、面取り前の負極板の面積に対して6%以下であってもよく、4%以下であってもよい。
面取りされたカット面を有する負極板の極板面積をAとする。面取り前の負極板の面積に対する非対向部の割合R2は、下記式(3)で求められる。
(式3)
R2=S/(A+S
正極板または負極板が、略長方形の極板の面取りにより形成されたものである場合には、極板の第1方向の幅をWとし、耳部を除いた極板の第2方向の高さをHとして、割合R2は、下記式(4)で求められる。
(式4)
R2=S/(W×H)
割合R2は、1%以上6%以下、2%以上6%以下、もしくは2%以上4%以下であってもよい。
セパレータは袋状であってもよい。その場合、セパレータが負極板を収容していてもよい。ガス発生による電解液の攪拌が効果的に行われ、成層化の抑制効果を高めることができる。
例えばアイドリングストップ車両に搭載される鉛蓄電池では、極板群を構成する正極板および負極板の枚数が多く、正極板、セパレータ、および負極板は圧力が加えられた状態で電槽内に収容されている。このような極板群に圧力が加えられている鉛蓄電池において、負極板が袋状のセパレータに収容されている場合、セパレータは負極板と密着する。一方、セパレータと正極板との間にはセパレータに設けられたリブにより電解液の隙間が介在し得る。この場合、負極で発生したガスは、セパレータを通過した後、電解液の隙間を通って、上方へと移動し得る。これにより、セパレータ内に含浸された電解液の攪拌を行うことができ、成層化の抑制効果を高めることができる。
セパレータは、オイルを含んでいてもよい。セパレータ中のオイルの含有量は、例えば、10質量%以上、もしくは12質量%以上であってもよい。オイル量が少ないほど、全細孔容積の大きなセパレータを容易に作製できる。また、セパレータの抵抗を低減することができる。よって、IS寿命の高い鉛蓄電池の実現が容易である。一方で、オイル量が少ない場合、セパレータが酸化され易くなり、耐久性が低下する。セパレータのオイル含有量を10質量%以上とすることで、耐久性を維持しながら、IS寿命を高く維持できる。電解液の拡散性を高く維持し、高いIS寿命を得る観点からは、セパレータのオイル含有量を20質量%以下もしくは18質量%以下としてもよい。
なお、セパレータ中のオイルの含有量は、鉛蓄電池から取り出し、洗浄および乾燥させたセパレータについて、下記の手順で測定される。
鉛蓄電池から取り出したセパレータは、測定の前に、洗浄および乾燥され、必要に応じて、所望のサイズにカットされる。鉛蓄電池から取り出したセパレータの洗浄および乾燥は、次の手順で行われる。鉛蓄電池から取り出したセパレータを純水中に1時間浸漬し、セパレータ中の硫酸を除去する。次いで浸漬していた液体からセパレータを取り出して、25℃環境下で、16時間以上静置し、乾燥させる。なお、セパレータを鉛蓄電池から取り出す場合、セパレータは、満充電状態の鉛蓄電池から取り出される。
上記の乾燥後のセパレータから、下記の手順でオイルの含有量が算出される。まず、乾燥後のセパレータを短冊状にカットしたサンプルを、0.5g(初期のサンプルの質量:m)秤量し、採取する。サンプルを、適当な大きさのガラス製ビーカーに入れ、n−ヘキサン50mLを加える。次いで、ビーカーごと、サンプルに約30分間、超音波を付与することにより、サンプル中に含まれるオイル分をn−ヘキサン中に溶出させる。サンプルを取り出し、大気中、室温(20℃以上35℃以下の温度)で乾燥させた後、秤量することにより、オイル除去後のサンプルの質量(m)を求める。そして、下記式により、オイルの含有量を算出する。
オイルの含有量(質量%)=(m−m)/m×100
セパレータの全細孔容積は、セパレータを縦20mm×横5mmのサイズにカットしたサンプルについて、水銀ポロシメータ(例えば、(株)島津製作所製、オートポアIV9510)を用いて測定される。なお、測定の圧力範囲は、4psia(≒27.6kPa)以上60,000psia(≒414MPa)以下とする。また、細孔分布は、孔径0.01μm以上50μm以下の範囲を用いる。
なお、セパレータがリブを有する場合、サンプルは、セパレータの正極板または負極板と対向し得る領域(ベース部)にあって、リブを有さない領域から採取される。
本明細書中、液式の鉛蓄電池の満充電状態とは、JIS D 5301:2006の定義によって定められる。より具体的には、25℃±2℃の水槽中で、鉛蓄電池を、定格容量に記載の数値の0.2倍の電流で、15分ごとに測定した充電中の端子電圧または20℃に温度換算した電解液密度が3回連続して有効数字3桁で一定値を示すまで充電した状態を満充電状態とする。また、制御弁式の鉛蓄電池の場合、満充電状態とは、25℃の気槽中で、定格容量に記載の数値の0.2倍の電流で、2.23V/セルの定電流定電圧充電を行い、定電圧充電時の充電電流が定格容量に記載の数値の0.005倍になった時点で充電を終了した状態である。なお、定格容量として記載の数値は、単位をAhとした数値である。定格容量として記載の数値を元に設定される電流の単位はAとする。
満充電状態の鉛蓄電池は、既化成の鉛蓄電池を満充電したものをいう。鉛蓄電池の満充電は、化成後であれば、化成直後でもよく、化成から時間が経過した後に行ってもよい(例えば、化成後で、使用中(好ましくは使用初期)の鉛蓄電池を満充電してもよい)。使用初期の電池とは、使用開始後、それほど時間が経過しておらず、ほとんど劣化していない電池をいう。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る鉛蓄電池に用いられる極板100(正極板または負極板)の外観を示す平面図である。図1の例では、極板100は正極板であるが、負極板であってもよい。図1では、極板100の一部領域において電極材料の記載を省略することにより、電極材料で覆われた集電体の状態が併せて示されている。
極板(正極板)100は、集電体(正極集電体)101と、集電体101に保持された電極材料(正極電極材料)102を備える。集電体101は、図1の例では、エキスパンド格子である。集電体101は、打ち抜き集電体または鋳造集電体であってもよい。正極集電体101は、格子部103と、第1の横骨部104、および耳部106を備える。第1の横骨部104は、格子部103の一端部に設けられている。耳部106は、第1の横骨部104に設けられている。
耳部106を除く極板100の概略の形状は、幅Wおよび高さHの長方形状であるが、第1の横骨部104とは反対側の隅部の角部分が面取りされている。これにより、極板100にカット面107が形成される。
極板100の輪郭形状は、第1の横骨部104とは反対側にあって、第1の横骨部104の延伸方向と平行に延びる直線部分L1と、第1の横骨部104の延伸方向と交差する方向に平行な直線部分L2と、隅部において、直線部分L1と直線部分L2とを連結する接続部分Cと、を有する。接続部分Cは、直線部分L1およびL2に対して傾いた直線および/または曲線を含んで構成され得る。カット面107は、接続部分Cに対応する斜面をいう。カット面107は、一対の隅部の一方または両方に存在し得る。
直線部分L1をL2側に延長した延伸線をE1とし、直線部分L2をL1側に延長した延伸線をE2とする。極板100では、一対の隅部において、延伸線E1、延伸線E2、および、接続部分Cで囲まれた領域の面積の合計S+Sの分だけ、極板面積が減少する。
極板100を用いて、正極板と負極板をセパレータを介して積層させることで極板群が得られる。得られた極板群を電槽に収容する場合、電槽の内壁の断面形状を長方形とした場合、極板100のカット面107の下方には隙間が生じることとなる。この隙間は電解液で満たされる。この隙間に存在する電解液は流動、攪拌され難く、成層化を促進させ易い。しかしながら、本実施形態では、全細孔容積が0.8cm/g以上のセパレータを用いることで、電解液がセパレータ内に流動および攪拌し易くなる。結果、成層化の進行は抑制され、IS寿命が改善する。
正極板に極板100を用い、負極板に面取りされていない通常の極板を用いてもよい。この場合、正極板と負極板をセパレータを介して重ね、極板群を構成すると、負極板には、正極板と対向する方向から見て、正極板の面取りにより設けられる面から張り出し、かつ正極板と対向しない非対向部が生じる。この負極非対向部では、充放電電圧の印加により水素ガスが発生する反応が主として起こり得る。これにより、負極板のカット面の下方で滞留する電解液が流動および攪拌され、成層化が効果的に抑制され得る。
(正極板)
鉛蓄電池の正極板には、ペースト式とクラッド式がある。
ペースト式正極板は、正極集電体と、正極電極材料とを具備する。正極電極材料は、正極集電体に保持されている。ペースト式正極板では、正極電極材料は、正極板から正極集電体を除いたものである。正極集電体は、負極集電体と同様に形成すればよく、鉛または鉛合金の鋳造や、鉛または鉛合金シートの加工により形成することができる。
クラッド式正極板は、複数の多孔質のチューブと、各チューブ内に挿入される芯金と、芯金が挿入されたチューブ内に充填される正極電極材料と、複数のチューブを連結する連座とを具備する。クラッド式正極板では、正極電極材料は、正極板から、チューブ、芯金、および連座を除いたものである。
正極集電体に用いる鉛合金としては、耐食性および機械的強度の点で、Pb−Ca系合金、Pb−Ca−Sn系合金が好ましい。正極集電体は、組成の異なる鉛合金層を有してもよく、合金層は複数でもよい。芯金には、Pb−Ca系合金やPb−Sb系合金を用いることが好ましい。
正極電極材料は、酸化還元反応により容量を発現する正極活物質(二酸化鉛もしくは硫酸鉛)を含む。正極電極材料は、必要に応じて、他の添加剤を含んでもよい。
未化成のペースト式正極板は、負極板の場合に準じて、正極集電体に、正極ペーストを充填し、熟成、乾燥することにより得られる。その後、未化成の正極板を化成する。正極ペーストは、鉛粉、添加剤、水、硫酸を練合することで調製される。
クラッド式正極板は、芯金が挿入されたチューブに鉛粉または、スラリー状の鉛粉を充填し、複数のチューブを連座で結合することにより形成される。
(負極板)
鉛蓄電池の負極板は、負極集電体と、負極電極材料とで構成されている。負極電極材料は、負極板から負極集電体を除いたものである。負極集電体は、鉛(Pb)または鉛合金の鋳造により形成してもよく、鉛または鉛合金シートを加工して形成してもよい。加工方法としては、例えば、エキスパンド加工や打ち抜き(パンチング)加工が挙げられる。負極集電体として負極格子を用いると、負極電極材料を担持させ易いため好ましい。
負極集電体に用いる鉛合金は、Pb−Sb系合金、Pb−Ca系合金、Pb−Ca−Sn系合金のいずれであってもよい。これらの鉛もしくは鉛合金は、更に、添加元素として、Ba、Ag、Al、Bi、As、Se、Cuなどからなる群より選択された少なくとも1種を含んでもよい。
負極電極材料は、酸化還元反応により容量を発現する負極活物質(鉛もしくは硫酸鉛)を含んでおり、防縮剤、カーボンブラックなどの炭素質材料、硫酸バリウムなどを含んでもよく、必要に応じて、他の添加剤を含んでもよい。
有機防縮剤として、リグニン類および/または合成有機防縮剤を用いてもよい。リグニン類としては、リグニン、リグニンスルホン酸またはその塩(ナトリウム塩などのアルカリ金属塩など)などのリグニン誘導体などが挙げられる。合成有機防縮剤は、硫黄元素を含む有機高分子であり、一般に、分子内に複数の芳香環を含むとともに、硫黄含有基として硫黄元素を含んでいる。硫黄含有基の中では、安定形態であるスルホン酸基もしくはスルホニル基が好ましい。
充電状態の負極活物質は、海綿状鉛であるが、未化成の負極板は、通常、鉛粉を用いて作製される。
負極板は、負極集電体に、負極ペーストを充填し、熟成および乾燥することにより未化成の負極板を作製し、その後、未化成の負極板を化成することにより形成できる。負極ペーストは、鉛粉と有機防縮剤および必要に応じて各種添加剤に、水と硫酸を加えて混練することで作製する。熟成工程では、室温より高温かつ高湿度で、未化成の負極板を熟成させることが好ましい。
化成は、鉛蓄電池の電槽内の硫酸を含む電解液中に、未化成の負極板を含む極板群を浸漬させた状態で、極板群を充電することにより行うことができる。ただし、化成は、鉛蓄電池または極板群の組み立て前に行ってもよい。化成により、海綿状鉛が生成する。
正極板および負極板の少なくともいずれか一方は、例えば図1に示す極板100のように、極板の隅部にカット面を有して構成される。
(電解液)
電解液は、硫酸を含む水溶液であり、Naイオン、Liイオン、Mgイオン、およびAlイオンからなる群より選択される少なくとも一種などを含んでもよい。電解液は、必要に応じてゲル化させてもよい。
電解液の20℃における比重は、例えば、1.10g/cm3以上である。電解液の20℃における比重は、1.35g/cm3以下であってもよい。なお、これらの比重は、既化成で満充電状態の鉛蓄電池の電解液についての値である。
(セパレータ)
負極板と正極板との間には、通常、セパレータが配置される。セパレータには、不織布、微多孔膜などが用いられる。不織布は、繊維を織らずに絡み合わせたマットであり、繊維を主体とする。例えば、セパレータの60質量%以上が繊維で形成されている。繊維としては、ガラス繊維、ポリマー繊維、パルプ繊維などを用いることができる。不織布は、繊維以外の成分、例えば耐酸性の無機粉体、結着剤としてのポリマーなどを含んでもよい。微多孔膜は、繊維成分以外を主体とする多孔性のシートであり、例えば、造孔剤(ポリマー粉末、オイルなど)を含む組成物をシート状に押し出し成形した後、造孔剤を除去して細孔を形成することにより得られる。
セパレータは、リブを有するもの、およびリブを有さないもののいずれであってもよい。リブは、セパレータの表面の正極板または負極板と対向し得る領域(ベース部)に立設される。リブは、セパレータの一方の表面のみに設けてもよく、両方の表面にそれぞれ設けてもよい。セパレータは袋状に形成してもよく、正極板または負極板のうちのいずれか一方を袋状のセパレータに包んでもよい。しかしながら、ガス発生による電解液の拡散を効果的に行う観点からは、上述の通り、負極板を袋状のセパレータに収容してもよい。
微多孔膜で構成されたセパレータは、例えば、ポリマー材料(以下、ベースポリマーとも称する。)と、造孔剤と、浸透剤(界面活性剤)とを含む樹脂組成物をシート状に押し出し成形した後、造孔剤を除去することにより得られる。少なくとも一部の造孔剤を除去することで、ベースポリマーのマトリックス中に微細孔が形成される。樹脂組成物は、さらに無機粒子を含んでもよい。
リブは、押出成形する際にシートに形成してもよく、樹脂組成物をシート状に成形した後または造孔剤を除去した後に、各リブに対応する溝を有するローラでシートを押圧することにより形成してもよい。
ベースポリマーとしては、鉛蓄電池のセパレータに使用されるものであれば特に制限されないが、ポリオレフィンが用いられる場合が多い。ポリオレフィンとしては、例えば、少なくともエチレンおよび/またはプロピレンをモノマー単位として含む重合体が挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンおよび/またはプロピレンをモノマー単位として含む共重合体(例えば、エチレン−プロピレン共重合体など)がより好ましい。中でも、ポリエチレンを少なくとも用いることが好ましい。ポリオレフィンと他のポリマーとを併用してもよい。
無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニアなどのセラミックス粒子などが好ましい。
セパレータ中に占める無機粒子の含有量は、例えば、40質量%以上であり、50質量%以上であってもよい。無機粒子の含有量は、例えば、80質量%以下であり、75質量%以下または70質量%以下であってもよい。
セパレータ中に占める無機粒子の含有量は、40質量%以上(または50質量%以上)80質量%以下、40質量%以上(または50質量%以上)75質量%以下、あるいは40質量%以上(または50質量%以上)70質量%以下であってもよい。
なお、セパレータ中に占める無機粒子の含有量は、上述の手順で、鉛蓄電池から取り出し、洗浄および乾燥したセパレータを測定試料として用いて、下記の手順で求められる。測定試料を正確に秤量した後、白金坩堝中に入れ、ブンゼンバーナーで白煙が出なくなるまで加熱する。次に、電気炉(酸素気流中、550℃)で、試料を約1時間加熱して灰化し、灰化物を秤量する。上記の測定試料の質量に占める灰化物の質量の比率を算出し、上記の無機粒子の含有量(質量%)とする。
造孔剤としては、液状造孔剤および固形造孔剤などが挙げられる。造孔剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。液状造孔剤と、固形造孔剤とを併用してもよい。液状造孔剤としては、鉱物オイル、合成オイルなどが好ましい。液状造孔剤としては、例えば、パラフィンオイル、シリコーンオイルなどが挙げられる。固形造孔剤としては、例えば、ポリマー粉末などが挙げられる。
セパレータ中の造孔剤量は、種類によっては変化することがあるため、一概にはいえないが、ベースポリマー100質量部あたり、例えば30質量部以上である。また、造孔剤量は、例えば、60質量部以下である。
浸透剤としての界面活性剤としては、例えば、イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のいずれであってもよい。界面活性剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
セパレータ中の浸透剤量は、ベースポリマー100質量部あたり、例えば、0.1質量部以上であり、0.5質量部以上であってもよい。また、浸透剤量は、例えば、10質量部以下であり、5質量部以下であってもよい。
セパレータ中に占める浸透剤の含有量は、例えば、0.01質量%以上であり、0.1質量%以上であってもよい。浸透剤の含有量は、例えば、5質量%以下であり、10質量%以下であってもよい。
セパレータ中に占める浸透剤の含有量は、0.01質量%以上10質量%以下、あるいは0.01質量%以上5質量%以下であってもよい。
なお、セパレータ中に占める浸透剤の含有量は、上述の手順で鉛蓄電池から取り出し、洗浄および乾燥したセパレータを測定試料として用いて、下記の手順で求められる。まず、約15cmの面積を有する測定試料を正確に秤量した後、室温(20℃以上35℃以下の温度)で大気圧より低い減圧環境下で、12時間以上乾燥させる。乾燥物を白金セルに入れて、熱重量測定装置にセットし、昇温速度10K/分で、室温から800℃まで昇温する。室温から250℃まで昇温させたときの重量減少量を浸透剤の質量とし、上記の測定試料の質量に占める浸透剤の質量の比率を算出し、上記の浸透剤の含有量(質量%)とする。熱重量測定装置としては、T.A.インスツルメント社製のQ5000IRが使用される。
セパレータの全細孔容積は、0.8cm/g以上であり、好ましくは1.1cm/g以上であってもよい。全細孔容積を1.1cm/g以上とすることで、電解液の拡散性が高まり、IS寿命を一層高めることができる。一方で、全細孔容積が大きいほど、セパレータが酸化劣化を受け易く、耐久性が低下し易い。セパレータの酸化劣化を抑制し、耐久性の低下を抑制する観点から、全細孔容積を例えば1.9cm/g以下、もしくは1.8cm/g以下としてもよい。
セパレータの全細孔容積は、0.8cm/g以上1.9cm/g以下、0.8cm/g以上1.8cm/g以下、1.1cm/g以上1.9cm/g以下、もしくは1.1cm/g以上1.8cm/g以下であってもよい。
セパレータがオイルを含む場合、オイル含有量は、セパレータの酸化劣化を抑制し、耐久性の低下を抑制する観点から、例えば、10質量%以上もしくは12質量%以上であってもよい。一方、オイル含有量は、少ない方が全細孔容積の大きなセパレータを容易に実現できる。オイル含有量は、電解液の拡散性を高く維持し、高いIS寿命を得る観点から、例えば、20質量%以下、18質量%以下もしくは15質量%以下であってもよい。
セパレータのオイル含有量は、10質量%以上20質量%以下、12質量%以上20質量%以下、12質量%以上18質量%以下、もしくは12質量%以上15質量%以下であってもよい。
セパレータの全細孔容積、およびオイル含有量は、鉛蓄電池から取り出し、洗浄および乾燥させたセパレータについて、既述の手順により測定され得る。
(繊維マット)
鉛蓄電池は、さらに、正極板と負極板との間に介在する繊維マットを備えていてもよい。繊維マットは、セパレータとは異なり、シート状の繊維集合体を含む。このような繊維集合体としては、電解液に不溶な繊維が絡み合ったシートが使用される。このようなシートには、例えば、不織布、織布、編み物などがある。繊維マットの例えば60質量%以上が繊維で形成されている。
繊維としては、ガラス繊維、ポリマー繊維、パルプ繊維などを用いることができる。ポリマー繊維の中では、ポリオレフィン繊維が好ましい。
図2は、本発明の一実施形態に係る液式鉛蓄電池の外観と内部構造を示す一部切り欠き斜視図である。
鉛蓄電池1は、極板群11と電解液(図示せず)とを収容する電槽12を具備する。電槽12内は、隔壁13により、複数のセル室14に仕切られている。各セル室14には、極板群11が1つずつ収納されている。電槽12の開口部は、負極端子16および正極端子17を具備する蓋15で閉じられる。蓋15には、セル室毎に液口栓18が設けられている。補水の際には、液口栓18を外して補水液が補給される。液口栓18は、セル室14内で発生したガスを電池外に排出する機能を有してもよい。
極板群11は、それぞれ複数枚の負極板2および正極板3を、セパレータ4を介して積層することにより構成されている。ここでは、負極板2を収容する袋状のセパレータ4を示すが、セパレータの形態は特に限定されない。電槽12の一方の端部に位置するセル室14では、複数の負極板2を並列接続する負極棚部6が貫通接続体8に接続され、複数の正極板3を並列接続する正極棚部5が正極柱7に接続されている。正極柱7は蓋15の外部の正極端子17に接続されている。電槽12の他方の端部に位置するセル室14では、負極棚部6に負極柱9が接続され、正極棚部5に貫通接続体8が接続される。負極柱9は蓋15の外部の負極端子16と接続されている。各々の貫通接続体8は、隔壁13に設けられた貫通孔を通過して、隣接するセル室14の極板群11同士を直列に接続している。
図2では、液式電池(ベント型電池)の例を示したが、鉛蓄電池は、制御弁式電池(VRLA型)でもよい。
以下、鉛蓄電池の各特性の評価方法について説明する。
上記側面に係る鉛蓄電池では、ガス発生を促進することで、IS寿命が向上する。また、集電体にエキスパンド格子を用いる場合には、正極板および/または負極板にカット面を設けることで、初期電池短絡が抑制される。IS寿命、および初期電池短絡は、下記の手順で評価される。
(1)IS寿命
次の手順で、端子電圧が7.2V(1.2V/セル)に到達するまでのサイクル数をIS寿命の指標とする。なお、(e)の微小電流放電は、エンジン停止時の暗電流放電を模擬している。
(a)満充電が完了後、最低16時間、蓄電池を0℃±1℃の冷却室に置いた後、中央にあるいずれかのセルの電解液温度が0℃±1℃であることを確認する。
(b)蓄電池を定格容量として記載のAhの数値の10倍の電流(A)で1.0秒間放電する。
(c)蓄電池を定格容量として記載のAhの数値の0.83倍の電流(A)で25秒間放電する。
(d)蓄電池を14.0V(2.33V/セル)の電圧で30秒間充電する。
(e)上記(b)〜(c)の放電および充電を1サイクルとして繰り返す。このとき、30サイクル毎に微小電流(20mA)を6時間放電する。
(f)上記(b)において端子電圧が7.2V(1.2V/セル)未満になったときのサイクル数を求める。
(2)初期電池短絡
(a)極板群の製造において、集電体の骨曲がりによりセパレータに穴あきが見られるか否かを目視で確認する。
(b)セパレータの穴あきを確認できなかった極板群を電槽に収容し、電解液を注入し、化成処理を行う。
(c)化成後の鉛蓄電池を定格容量として記載のAhの数値の8.3倍の電流(A)で2.5秒放電させる。放電後の電圧が9.5V(1.58V/セル)以下の場合、放電不良とする。
(d)(a)においてセパレータの穴あきを確認した個数、および、(c)において放電不良とされた個数を合計し、全サンプル数に対する割合を求め、初期電池短絡率とする。
[実施例]
以下、本発明の実施形態について、実施例および比較例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
《電池A1〜A17、B1〜B5、C1〜C4》
下記の手順で、正負極板の構成、および/または、セパレータの全細孔容積が異なる複数の鉛蓄電池A1〜A17、B1〜B5およびC1〜C4を作製した。
(1)正極板の作製
鉛酸化物、補強材(合成樹脂繊維)、水および硫酸を混合して正極ペーストを調製した。正極ペーストをアンチモンが含有されていないPb−Ca−Sn系合金製のエキスパンド格子の網目部に充填し、熟成、乾燥し、幅100mm、高さ110mm、厚さ1.6mmの未化成の正極板を得た。
(2)負極板の作製
鉛酸化物、カーボンブラック、硫酸バリウム、リグニン、補強材(合成樹脂繊維)、水および硫酸を混合して負極ペーストを調製した。負極ペーストをアンチモンが含有されていないPb−Ca−Sn系合金製のエキスパンド格子の網目部に充填し、熟成、乾燥し、幅100mm、高さ110mm、厚さ1.3mの未化成の負極板を得た。カーボンブラック、硫酸バリウム、リグニンおよび合成樹脂繊維の量は、既化成の満充電の状態で測定したときに、それぞれ0.3質量%、2.1質量%、0.1質量%および0.1質量%になるように調節した。
(3)カット面の形成
鉛蓄電池A1〜A16およびB3〜B5では、(1)(2)で得られた正極板および負極板の少なくともいずれか一方について、極板の耳部と反対側の両隅の角部分を面取りし、カット面を形成した。極板の面取りにより除去された部分の形状は、高さが17mmの直角二等辺三角形であり、カット面積は両側の隅部の除去部分を合計して289mmであった。この場合、極板面積に対するカット面積の割合R1は、2.6%であった。
(4)セパレータ
ポリエチレン100質量部と、シリカ粒子160質量部と、造孔剤としてのパラフィン系オイル80質量部と、2質量部の浸透剤を含む樹脂組成物をシート状に押出成形した後、造孔剤の一部を除去することにより、既述の手順で求められる全細孔容積およびオイル含有量が所定の値である微多孔膜を作製した。次に、シート状の微多孔膜を二つ折りにして袋を形成し、重ね合わせた両端部を溶着して、袋状セパレータを得た。袋状セパレータは、外面において突出するリブ(外リブ)が設けられていた。外リブの高さは0.6mmであった。
(5)鉛蓄電池の作製
未化成の負極板を、袋状セパレータに収容し、正極板と積層し、未化成の負極板7枚と未化成の正極板6枚とで極板群を形成した。
正極板の耳部同士および負極板の耳部同士をそれぞれキャストオンストラップ(COS)方式で正極棚部および負極棚部と溶接した。極板群をポリプロピレン製の電槽に挿入し、電解液を注液して、電槽内で化成を施して、定格電圧12Vおよび定格容量が30Ah(5時間率容量(定格容量に記載のAhの数値の1/5の電流(A)で放電するときの容量))の液式の鉛蓄電池A1〜A16およびB1〜B5を組み立てた。なお、電槽内では6個の極板群が直列に接続されている。
電解液としては、硫酸水溶液を用いた。化成後の電解液の20℃における比重は1.285であった。
鉛蓄電池A1〜A17、B1〜B5およびC1〜C4について、IS寿命および初期電池短絡を既述の手順で評価した結果を表1に示す。表1では、鉛蓄電池のそれぞれについて、正極板および負極板におけるカット面の有無、セパレータの全細孔容積、および、セパレータのオイル含有量が併せて示されている。表1では、IS寿命は、鉛蓄電池B1のサイクル数を100とした相対値で示されている。また、初期電池短絡は、不良が発生した割合の百万分率(ppm)で示されている。
なお、A1〜A17は実施例である。B1〜B5は比較例であり、セパレータの全細孔容積が0.8cm/g未満の例である。C1〜C4は参考例であり、セパレータの全細孔容積が0.8cm/g以上であるが、正極板および負極板のいずれにもカット面を形成していない。
Figure 2021068551
表1より、セパレータの全細孔容積を0.8cm/g以上とし、且つ、正極板および負極板の少なくともいずれか一方にカット面を形成した鉛蓄電池A1〜A17では、IS寿命が改善し、且つ、初期電池短絡による不良の発生も抑制されている。
鉛蓄電池B1およびB2は、初期電池短絡の不良発生割合が大きい。これは、極板群の作製時において、エキスパンド格子の隅部分が変形し、折れ曲がり易いためである。隅部分の格子骨が折れ曲がると、折れ曲がった部分がセパレータを貫通し、隣接する極板と直接接触して短絡に至る場合がある。
これに対し、鉛蓄電池B3〜B5では、正極板および負極板の少なくともいずれか一方にカット面を設けることによって、この初期電池短絡による不良の発生割合は低減される。特に、少なくとも正極板にカット面を設けられた鉛蓄電池B4、B5では、初期電池短絡は殆ど発生しない。ところが、鉛蓄電池B3〜B5では、カット面を設けることによりIS寿命が短くなった。
しかしながら、鉛蓄電池A1〜A17では、セパレータの全細孔容積を0.8cm/gとすることにより、カット面を有する鉛蓄電池においてIS寿命が大きく改善した。特に、正極板にカット面を設け、負極板にカット面を設けていない鉛蓄電池A2、A7、A10およびA13は、セパレータの全細孔面積が同じで、且つ正負極板のいずれにもカット面を設けていない鉛蓄電池(C1〜C4)と比べても、IS寿命が長くなった。
本発明に係る鉛蓄電池用格子体は、制御弁式および液式の鉛蓄電池に適用可能であり、自動車、バイクなどの始動用電源や、電動車両(フォークリフトなど)などの産業用蓄電装置などの電源として好適に利用できる。なかでも、アイドリングストップ車両に搭載される電源に特に有用である。
1:鉛蓄電池、2:負極板、3:正極板、4:セパレータ、5:正極棚部、6:負極棚部、7:正極柱、8:貫通接続体、9:負極柱、11:極板群、12:電槽、13:隔壁、14:セル室、15:蓋、16:負極端子、17:正極端子、18:液口栓、100:極板、101:集電体(正極集電体)、102:電極材料(正極電極材料)、103:格子部、104:第1の横骨部、106:耳部、107:カット面

Claims (8)

  1. 正極板と、負極板と、前記正極板および前記負極板の間に介在するセパレータと、電解液と、を備え、
    前記正極板は、正極集電体と、前記正極集電体に保持された正極電極材料と、を備え、
    前記負極板は、負極集電体と、前記負極集電体に保持された負極電極材料と、を備え、
    前記正極集電体および前記負極集電体は、格子部と、前記格子部の一端部に設けられた第1の横骨部と、前記第1の横骨部に設けられた耳部と、を有し、
    前記正極板および前記負極板の少なくとも一方の、前記第1の横骨部とは反対側の端部の一対の隅部の少なくとも一方は、面取りされており、
    前記セパレータの全細孔容積は0.8cm/g以上である、鉛蓄電池。
  2. 前記正極板の前記一対の隅部の少なくとも一方が、面取りされている、請求項1に記載の鉛蓄電池。
  3. 前記負極板は、前記正極板と対向する方向から見たとき、前記正極板の前記面取りにより設けられる面から張り出し、かつ前記正極板と対向しない非対向部を有する、請求項2に記載の鉛蓄電池。
  4. 前記正極集電体は、エキスパンド格子である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の鉛蓄電池。
  5. 前記セパレータは袋状であり、前記負極板を収容している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の鉛蓄電池。
  6. 前記セパレータの全細孔容積は1.1cm/g以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の鉛蓄電池。
  7. 前記セパレータはオイルを含み、
    前記セパレータ中の前記オイルの含有量は、10質量%以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の鉛蓄電池。
  8. アイドリングストップ車両に搭載される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の鉛蓄電池。
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