JP2021066917A - オーステナイト系ステンレス鋼 - Google Patents
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Abstract
【課題】硫黄酸化物を含む高温蒸気環境での耐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼の提供【解決手段】質量%で、C:0.04〜0.15%、 Si:2.5〜5.0%、Mn:0.15〜0.50%、P:0.10%以下、S:0.002%以下、Ni:8.0〜15.0%、Cr:18.0〜23.0%、B:0.02〜0.08%、N:0.005〜0.10%、REM:0.002〜0.01%、Cu:0〜0.2%、Mo:0〜0.35%、Ti:0〜0.15%、Al:0〜0.1%、Mg:0〜0.002%、Ca:0〜0.003%、残部:Feおよび不純物であり、「Si/14−(Al/18+Ti/24)≧0.172」を満足する、オーステナイト系ステンレス鋼。【選択図】 なし
Description
本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼に関する。
将来の水素社会の実現に向けて、化石燃料に依存しない、すなわち二酸化炭素の発生を伴わないクリーンなエネルギーを用いて水素を製造するプロセスの開発が必要になっている。エネルギー源には、太陽光もしくは風力等の再生可能エネルギー、原子力エネルギー等が挙げられる。そのなかでも原子力エネルギーはエネルギー量、エネルギー密度、その供給安定性に最も優れると考えられている。軽水炉では、一旦取りだした電気エネルギーを用い、電気分解などの方法で水素製造することになる。また、近年、炉心をヘリウムガスによって冷却し、熱交換して高温の熱を取り出す高温ガス炉が注目されている。
高温ガス炉で発生した高温の熱は発電だけでなく、直接水素製造に用いることができる。水素製造の方法としては、硫酸とヨウ化水素との熱分解を組み込んだISプロセス、高温水電解(水蒸気電解)等が考えられている。ISプロセスは化学的な水素製造ともいわれ、大量の水素製造に適している。原理的には下記のとおりであり、高温の硫酸およびヨウ化水素の分解が含まれ、これらの反応は白金等の触媒により進行する。
H2SO4 → SO3+H2O(硫酸の熱分解:300度以上)
SO3 → SO2+1/2O2(SO3の分解:≧850℃)
2HI → H2+I2(ヨウ化水素の分解:400℃)
SO2+I2+2H2O → 2HI+H2SO4(ブンゼン反応:200℃)
H2O → H2+1/2O2(全体反応)
SO3 → SO2+1/2O2(SO3の分解:≧850℃)
2HI → H2+I2(ヨウ化水素の分解:400℃)
SO2+I2+2H2O → 2HI+H2SO4(ブンゼン反応:200℃)
H2O → H2+1/2O2(全体反応)
本プロセスの主たる課題には、装置/プラントに用いる材料の耐食性の向上および触媒の性能向上が挙げられる。反応には高温の強酸を用いるので、装置機器、配管類の腐食または劣化が深刻となる。特に硫酸分解部は極めて強い腐食環境に曝されるので、通常の金属材料では腐食は避けられない。触媒を用いるプロセスについては触媒自身の活性および耐久性が不十分であり、触媒材の開発とともにガス相または液相の接触効率を高める化学工学的な取り組みが進められている。
特許文献1には、表面にCr欠乏層を備え、その外側(表面側)にCr主体の酸化スケール層を設けた、耐コーキング性と耐浸炭性を有するステンレス鋼管が開示されている。
クロムを中心とする酸化皮膜を設けた合金材料は皮膜のバリア性に基づく耐食性が期待されるが、ISプロセスの様な高温の硫酸環境では母材自身の耐食性が十分でない。
本発明は、SO3、硫酸をはじめとする硫黄酸化物を含む高温蒸気環境での耐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の目的を達成するべく、種々のオーステナイト系ステンレス鋼を、SO3、硫酸をはじめとする硫黄酸化物を含む高温蒸気環境に曝す実験を行い、耐食性を評価した。オーステナイト系ステンレス鋼の主要成分であるFe、CrおよびNiのなかではCrが最も酸化されやすく、Cr酸化皮膜は耐食皮膜として知られている。しかし、上記の高温蒸気環境においては、Cr酸化皮膜よりも腐食速度の小さい酸化皮膜があった。それは、Siを主体とする腐食生成皮膜(以下、単に「Si酸化皮膜」ともいう。)である。本発明者らは、Si酸化皮膜を安定的に形成する条件について検討をし、下記の知見を得た。
(A)上記の高温蒸気環境においては、まず、母材に含まれる元素のうち酸素との親和力の高い元素(以下、「元素A」という。)が選択的に酸化される。腐食の初期段階においては、母材の表面に元素Aの酸化物が島状に生成する。その後、母材の元素Aの含有量が十分に高い場合には点在した島状のA酸化物が徐々に拡大していき、母材の全面を覆う酸化皮膜に成長していく。しかし、元素Aの含有量が十分に高くない場合には、元素Aの次に酸化されやすい元素(以下、「元素B」という。)の酸化物が、元素Aの酸化物で覆われていない母材表面に島状に生成し、成長していく。そして、元素Bの酸化物の生成が終わると、次に酸化されやすい元素が島状に生成し、成長していく、という反応が順次進んでいく。
(B)Si酸化皮膜を安定的に形成するためには、Siよりも酸化されやすい元素を低減する必要があることが判明した。その元素とは、具体的には、AlおよびTiである。しかし、AlおよびTiは、製鋼時の脱酸剤としての役割があり、これらの元素量の低減には限界がある。
(C)そこで、ある程度の量のAlおよびTiが含まれる場合であっても、Si酸化皮膜を安定的に形成するための条件について更に検討した。上記の高温蒸気環境において形成される各元素の酸化物は、それぞれSiO2、Al2O3およびTiO2であり、Si原子1個の酸化に対し酸素原子は2個、Al原子1個の酸化に対し酸素原子は1.5個、Ti原子1個の酸化に対し酸素原子2個が必要である。すなわち、「Si/14−(Al/18+Ti/24)」の計算値を十分に大きくする必要がある。理論的にはこの計算値を0以上にすればSi酸化皮膜が形成されることになる。実際には各元素の拡散速度の影響などを受ける。
(D)一般に耐食性改善元素として知られるCuおよびMoは含有量を増加させても、上記の高温蒸気環境においては、顕著な耐食性の改善はないため、含有させなくてもよい。ただし、上記の高温蒸気環境で使用される前の母材の耐食性を担保する目的で、少量含有させてもよい。
本発明は、上記の知見に基づくものであり、下記のオーステナイト系ステンレス鋼を要旨とする。
質量%で、
C:0.04〜0.15%、
Si:2.5〜5.0%、
Mn:0.15〜0.50%、
P:0.10%以下、
S:0.002%以下、
Ni:8.0〜15.0%、
Cr:18.0〜23.0%、
B:0.02〜0.08%、
N:0.005〜0.10%、
REM:0.002〜0.01%、
Cu:0〜0.2%、
Mo:0〜0.35%、
Ti:0〜0.15%、
Al:0〜0.1%、
Mg:0〜0.002%、
Ca:0〜0.003%、
残部:Feおよび不純物であり、
下記(1)式を満足する、オーステナイト系ステンレス鋼。
Si/14−(Al/18+Ti/24)≧0.172 (1)
なお、(1)式中の各元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味する。
質量%で、
C:0.04〜0.15%、
Si:2.5〜5.0%、
Mn:0.15〜0.50%、
P:0.10%以下、
S:0.002%以下、
Ni:8.0〜15.0%、
Cr:18.0〜23.0%、
B:0.02〜0.08%、
N:0.005〜0.10%、
REM:0.002〜0.01%、
Cu:0〜0.2%、
Mo:0〜0.35%、
Ti:0〜0.15%、
Al:0〜0.1%、
Mg:0〜0.002%、
Ca:0〜0.003%、
残部:Feおよび不純物であり、
下記(1)式を満足する、オーステナイト系ステンレス鋼。
Si/14−(Al/18+Ti/24)≧0.172 (1)
なお、(1)式中の各元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味する。
本発明によれば、SO3、硫酸をはじめとする硫黄酸化物を含む高温蒸気環境での耐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼を提供することができる。
以下に本発明鋼の化学組成を規定した理由を述べる。なお、各成分の含有量に関する「%」は「質量%」を意味する。
C:0.04〜0.15%
Cは、オーステナイト組織を安定にし、また、鋼の強度を向上させる。このため、その含有量は0.04%以上とする。しかし、過剰に含有させると高温での使用中に炭化物が析出して脆化するので、0.15%を上限とする。好ましい下限は、0.06%であり、好ましい上限は、0.12%である。
Cは、オーステナイト組織を安定にし、また、鋼の強度を向上させる。このため、その含有量は0.04%以上とする。しかし、過剰に含有させると高温での使用中に炭化物が析出して脆化するので、0.15%を上限とする。好ましい下限は、0.06%であり、好ましい上限は、0.12%である。
Si:2.5〜5.0%
Siは、硫黄酸化物を含む高温蒸気中でSi酸化皮膜を形成し腐食を抑制する。このため、その含有量は2.5%以上とする。一方、Siを過剰に含有させると、加工性が低下するため、5.0%以下とする。好ましい下限は2.8%である。好ましい上限は4.5%であり、より好ましい上限は4.0%である。
Siは、硫黄酸化物を含む高温蒸気中でSi酸化皮膜を形成し腐食を抑制する。このため、その含有量は2.5%以上とする。一方、Siを過剰に含有させると、加工性が低下するため、5.0%以下とする。好ましい下限は2.8%である。好ましい上限は4.5%であり、より好ましい上限は4.0%である。
Mn:0.15〜0.50%
Mnは、鋼の脱酸に有効な元素である。このため、その含有量は0.15%以上とする。しかし、Mn酸化物は、硫黄酸化物を含む高温蒸気中の耐食性が優れず、また、Si酸化被膜中に取り込まれ、Si酸化物の形成を阻害し、耐食性を劣化させるので、上限は0.50%とする。好ましくは0.40%以下であり、より好ましくは0.35%以下である。
Mnは、鋼の脱酸に有効な元素である。このため、その含有量は0.15%以上とする。しかし、Mn酸化物は、硫黄酸化物を含む高温蒸気中の耐食性が優れず、また、Si酸化被膜中に取り込まれ、Si酸化物の形成を阻害し、耐食性を劣化させるので、上限は0.50%とする。好ましくは0.40%以下であり、より好ましくは0.35%以下である。
P:0.10%以下
Pは、不純物として鋼中に含まれる元素である。Pは、鋼材の溶接性を悪くするので、含有量は少ない方がよい。特に、P含有量が0.10%を超えると、溶接性が著しく低下するので、上限は0.10%とする。より好ましくは0.05%以下である。P含有量は少ない方がよいので、特に下限は定めないが、製造コストの観点から、0.010%が実用上の下限である。
Pは、不純物として鋼中に含まれる元素である。Pは、鋼材の溶接性を悪くするので、含有量は少ない方がよい。特に、P含有量が0.10%を超えると、溶接性が著しく低下するので、上限は0.10%とする。より好ましくは0.05%以下である。P含有量は少ない方がよいので、特に下限は定めないが、製造コストの観点から、0.010%が実用上の下限である。
S:0.002%以下
Sは、不純物として鋼中に含まれる元素である。Sは、鋼材の溶接性を悪くするので、含有量は少ない方がよい。Sは、通常、MnSとして固定化されるが、耐食性の観点からMn量を低減する必要があるため、S含有量は0.002%以下とする。Sの上限は0.0015%とするのが好ましく、0.0012%とするのがより好ましい。S含有量は少ない方がよいので、特に下限は定めないが、製造コストの観点から、0.0001%が実用上の下限である。
Sは、不純物として鋼中に含まれる元素である。Sは、鋼材の溶接性を悪くするので、含有量は少ない方がよい。Sは、通常、MnSとして固定化されるが、耐食性の観点からMn量を低減する必要があるため、S含有量は0.002%以下とする。Sの上限は0.0015%とするのが好ましく、0.0012%とするのがより好ましい。S含有量は少ない方がよいので、特に下限は定めないが、製造コストの観点から、0.0001%が実用上の下限である。
Ni:8.0〜15.0%
Niは、鋼自体の耐食性を保つために不可欠な元素である。特に、安定なオーステナイト組織を得るために、Niは8.0%以上含有させる。好ましい下限は10.0%であり、より好ましい下限は11.0%である。一方、過剰に含有させるとコストアップになるとともに、オーステナイト相がより安定となり、Siの拡散が抑制され、良好なSi耐食皮膜が形成しにくくなり、結果として、耐食性が低下するので、上限は15.0%とする。好ましくは14.0%以下、より好ましくは13.0%以下である。
Niは、鋼自体の耐食性を保つために不可欠な元素である。特に、安定なオーステナイト組織を得るために、Niは8.0%以上含有させる。好ましい下限は10.0%であり、より好ましい下限は11.0%である。一方、過剰に含有させるとコストアップになるとともに、オーステナイト相がより安定となり、Siの拡散が抑制され、良好なSi耐食皮膜が形成しにくくなり、結果として、耐食性が低下するので、上限は15.0%とする。好ましくは14.0%以下、より好ましくは13.0%以下である。
Cr:18.0〜23.0%
Crは、鋼自体の耐食性を保つために不可欠な元素である。特に、熱交換など高温の酸化環境で耐酸化性を維持するためには、その含有量を18.0%以上にする必要がある。好ましい下限は19.0%であり、より好ましい下限は20.0%以上である。しかし、過剰な含有は、熱間加工性を低下させるため、上限は23.0%とする。好ましい上限は22.0%であり、より好ましい上限は21.0%である。
Crは、鋼自体の耐食性を保つために不可欠な元素である。特に、熱交換など高温の酸化環境で耐酸化性を維持するためには、その含有量を18.0%以上にする必要がある。好ましい下限は19.0%であり、より好ましい下限は20.0%以上である。しかし、過剰な含有は、熱間加工性を低下させるため、上限は23.0%とする。好ましい上限は22.0%であり、より好ましい上限は21.0%である。
B:0.02〜0.08%
Bは、高温で金属組織の安定を維持するのに有効な元素であり、0.02%以上含有させる。過剰に含有させると、高温での使用中にクロム硼化物が析出し脆化を促すため、上限は0.08%とする。好ましい下限は0.03%である。
Bは、高温で金属組織の安定を維持するのに有効な元素であり、0.02%以上含有させる。過剰に含有させると、高温での使用中にクロム硼化物が析出し脆化を促すため、上限は0.08%とする。好ましい下限は0.03%である。
N:0.005〜0.10%
Nは、固溶強化により、鋼の強度を確保するのに有効な元素であり、0.005%以上含有させる。ただし、Nは、鋼中のTi、Nb、Vと結合して窒化物を生成して、熱処理時の粒成長を抑制する働きがある。耐酸化性の観点から著しい細粒化は望ましくないため、N含有量の上限は0.10%とする。好ましい下限は0.010%であり、好ましい上限は0.080%である。
Nは、固溶強化により、鋼の強度を確保するのに有効な元素であり、0.005%以上含有させる。ただし、Nは、鋼中のTi、Nb、Vと結合して窒化物を生成して、熱処理時の粒成長を抑制する働きがある。耐酸化性の観点から著しい細粒化は望ましくないため、N含有量の上限は0.10%とする。好ましい下限は0.010%であり、好ましい上限は0.080%である。
REM:0.002〜0.01%
REMは、Pによる熱間加工性を改善するのに有効な元素であり、0.002%以上含有させる。しかし、過剰に含有させると、非金属介在物として合金の清浄度が低下し、欠陥の原因となる。さらに過剰なREMの含有は、Si酸化皮膜の生成を阻害するため、上限を0.01%とする。好ましい下限は0.003%であり、より好ましい下限は0.005%である。好ましい上限は0.008%であり、より好ましい上限は0.007%である。なお、REMは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素の総称であり、REMの含有量は上記元素の合計量を意味する。
REMは、Pによる熱間加工性を改善するのに有効な元素であり、0.002%以上含有させる。しかし、過剰に含有させると、非金属介在物として合金の清浄度が低下し、欠陥の原因となる。さらに過剰なREMの含有は、Si酸化皮膜の生成を阻害するため、上限を0.01%とする。好ましい下限は0.003%であり、より好ましい下限は0.005%である。好ましい上限は0.008%であり、より好ましい上限は0.007%である。なお、REMは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素の総称であり、REMの含有量は上記元素の合計量を意味する。
Cu:0〜0.2%
Cuは、鋼自体の耐食性を向上させるので、含有させてもよい。過剰な含有は、熱間加工性が低下するため、上限は、0.2%とする。上記の効果を得るためには、0.08%以上含有させるのがよい。
Cuは、鋼自体の耐食性を向上させるので、含有させてもよい。過剰な含有は、熱間加工性が低下するため、上限は、0.2%とする。上記の効果を得るためには、0.08%以上含有させるのがよい。
Mo:0〜0.35%
Moは、鋼の保管時など常温での耐食性を向上させるので、含有させてもよい。過剰な含有は、熱間加工性が低下するため、上限は、0.35%とする。上記の効果を得るためには、0.04%以上含有させるのがよい。
Moは、鋼の保管時など常温での耐食性を向上させるので、含有させてもよい。過剰な含有は、熱間加工性が低下するため、上限は、0.35%とする。上記の効果を得るためには、0.04%以上含有させるのがよい。
Ti:0〜0.15%
Tiは、鋼中に固溶してステンレス鋼の強度を向上させるので、含有させてもよい。しかし、Tiは、酸化しやすく、Si酸化皮膜の生成を妨げるため、上限を0.15%とする。望ましくは0.12%以下、より望ましくは0.10%以下である。上記の効果を得るためには、0.02%以上含有させるのがよい。
Tiは、鋼中に固溶してステンレス鋼の強度を向上させるので、含有させてもよい。しかし、Tiは、酸化しやすく、Si酸化皮膜の生成を妨げるため、上限を0.15%とする。望ましくは0.12%以下、より望ましくは0.10%以下である。上記の効果を得るためには、0.02%以上含有させるのがよい。
Al:0〜0.1%
Alは、酸素との親和力が強く、鋼の脱酸に有効元素として含有してよい。しかし、Al含有量が多くなると、Si酸化皮膜の生成を妨げるため、上限を0.1%とする。望ましくは0.08%以下、より望ましくは0.05%以下である。上記の効果を得るためには、0.01%以上含有させるのがよい。
Alは、酸素との親和力が強く、鋼の脱酸に有効元素として含有してよい。しかし、Al含有量が多くなると、Si酸化皮膜の生成を妨げるため、上限を0.1%とする。望ましくは0.08%以下、より望ましくは0.05%以下である。上記の効果を得るためには、0.01%以上含有させるのがよい。
Mg:0〜0.002%、
Mgは、Sを固定して熱間加工や溶接性を改善するのに有効な元素であるので、0.002%以下の範囲で含有させてもよい。上記の効果を得るためには、0.0003%以上含有させるのがよい。
Mgは、Sを固定して熱間加工や溶接性を改善するのに有効な元素であるので、0.002%以下の範囲で含有させてもよい。上記の効果を得るためには、0.0003%以上含有させるのがよい。
Ca:0〜0.003%
Caは、Sを固定して熱間加工や溶接性を改善するのに有効な元素であるので、0.003%以下の範囲で含有させてもよい。上記の効果を得るためには、0.0015%以上含有させるのがよい。
Caは、Sを固定して熱間加工や溶接性を改善するのに有効な元素であるので、0.003%以下の範囲で含有させてもよい。上記の効果を得るためには、0.0015%以上含有させるのがよい。
本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼の化学組成における残部は、Feおよび不純物である。不純物とは、鋼材を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料その他の要因により混入し、本発明による作用効果を阻害しない範囲で許容される成分を意味する。
本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、硫黄酸化物を含む高温蒸気環境においてSi酸化皮膜が安定的に形成させて耐食性を向上させるものである。このためには、上述のように、Siよりも酸化されやすいAlおよびTiの含有量を低減しているが、これらの元素の含有量を低減するだけでは所望の耐食性能が得られない。そして、Si酸化皮膜を安定的に形成するためには、「Si/14−(Al/18+Ti/24)」の計算値を0.172以上に制限する必要がある。この計算値は、0.190以上が好ましく、0.220以上がより好ましい。
本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法については特に制約がなく、使用目的に応じて種々の製造方法を採用することができる。製造方法の一例として、オーステナイト系ステンレス鋼管の製造方法について説明する。
初めに、電気炉、AOD(Argon Oxygen Decarburization)炉、VOD(Vacuum Oxygen Decarburization)炉及びVIM(Vacuum Induction Melting)炉等により上記化学組成を有する溶鋼を準備する。溶鋼から熱間加工と熱処理工程を経て素材を得る。素材(インゴットまた鋳片)からたとえば、機械加工又は竪型穿孔により中空ビレットを製造する。
中空ビレットに対して熱間押出加工を実施する。熱間押出加工はたとえば、ユジーン・セジュルネ法である。以上の工程により、オーステナイト系ステンレス鋼管が製造される。熱間押出加工以外の他の熱間加工により、鋼管を製造してもよい。熱間加工後の鋼管に対してさらに、冷間圧延及び/又は冷間抽伸といった冷間加工を実施してもよい。所望の機械的性質を得るために固溶化処理等の最終熱処理を実施してもよい。上述の製造方法の一例では、オーステナイト系ステンレス鋼管の製造方法について説明した。しかしながら、オーステナイト系ステンレス鋼は、板材であってもよいし、溶接管、又は、棒材等であってもよい。要するに、オーステナイト系ステンレス鋼の製品形状は特に限定されない。
初めに、電気炉、AOD(Argon Oxygen Decarburization)炉、VOD(Vacuum Oxygen Decarburization)炉及びVIM(Vacuum Induction Melting)炉等により上記化学組成を有する溶鋼を準備する。溶鋼から熱間加工と熱処理工程を経て素材を得る。素材(インゴットまた鋳片)からたとえば、機械加工又は竪型穿孔により中空ビレットを製造する。
中空ビレットに対して熱間押出加工を実施する。熱間押出加工はたとえば、ユジーン・セジュルネ法である。以上の工程により、オーステナイト系ステンレス鋼管が製造される。熱間押出加工以外の他の熱間加工により、鋼管を製造してもよい。熱間加工後の鋼管に対してさらに、冷間圧延及び/又は冷間抽伸といった冷間加工を実施してもよい。所望の機械的性質を得るために固溶化処理等の最終熱処理を実施してもよい。上述の製造方法の一例では、オーステナイト系ステンレス鋼管の製造方法について説明した。しかしながら、オーステナイト系ステンレス鋼は、板材であってもよいし、溶接管、又は、棒材等であってもよい。要するに、オーステナイト系ステンレス鋼の製品形状は特に限定されない。
表1に示す化学組成を有するインゴット50kgを真空溶解で作製した。得られたインゴット(外径250mm)を1200℃加熱後、熱間鍛造により厚さ40mm×幅100mm×長さ150mmの熱間鍛造材を得て、その熱間鍛造材に熱間圧延および冷間圧延を施して、厚さ5mm×幅100mm×長さ1000mmの冷延鋼板を得た。得られた冷延鋼板を1100℃で熱処理した後、水焼入れを実施して試験用鋼板を作製した。
(耐食性評価)
試験用鋼板の肉厚中央部から厚さ1mm×幅10mm×長さ55mmの腐食試験用の試験片を機械加工で作製した。試験片の全面を湿式エメリー研磨紙の600番仕上げとし、アセトンで洗浄・脱脂し、その後、試験片の試験前質量を測定した。腐食試験用の石英管中に治具にセットした試験片を置き、アルゴンガスを流しながら850℃に加熱した。次いで、マイクロポンプを用いて98%硫酸を上流側から供給し、気化・分解させたSO3ガスを発生させ、純アルゴンガスまたはSO2を含有したアルゴンガスを流しながら20%SO3ガスとして通気させ、50時間の試験を実施した。試験後、過マンガン酸カリウム溶液およびクエン酸二アンモニウム溶液で試験片の金属光沢が出るまで脱スケールした後、試験後質量を測定した。試験片の試験片前後の質量差を試験時間で除して腐食速度(g/m2)を測定した。本発明例No.7(SUS304Lに準じた鋼)の腐食速度を1としたときの腐食速度が、0.7以下のものを「◎」(優)とし、0.7超0.8未満のものを「〇」(良)、0.8超のものを「×」(不良)として、表1に記載した。
試験用鋼板の肉厚中央部から厚さ1mm×幅10mm×長さ55mmの腐食試験用の試験片を機械加工で作製した。試験片の全面を湿式エメリー研磨紙の600番仕上げとし、アセトンで洗浄・脱脂し、その後、試験片の試験前質量を測定した。腐食試験用の石英管中に治具にセットした試験片を置き、アルゴンガスを流しながら850℃に加熱した。次いで、マイクロポンプを用いて98%硫酸を上流側から供給し、気化・分解させたSO3ガスを発生させ、純アルゴンガスまたはSO2を含有したアルゴンガスを流しながら20%SO3ガスとして通気させ、50時間の試験を実施した。試験後、過マンガン酸カリウム溶液およびクエン酸二アンモニウム溶液で試験片の金属光沢が出るまで脱スケールした後、試験後質量を測定した。試験片の試験片前後の質量差を試験時間で除して腐食速度(g/m2)を測定した。本発明例No.7(SUS304Lに準じた鋼)の腐食速度を1としたときの腐食速度が、0.7以下のものを「◎」(優)とし、0.7超0.8未満のものを「〇」(良)、0.8超のものを「×」(不良)として、表1に記載した。
(加工性評価)
上記の熱間鍛造材に熱間圧延および冷間圧延を実施する過程において割れなどの不具合が発生し、均質な冷延鋼板が得られなかった場合、加工性を「×」(不良)とした。
上記の熱間鍛造材に熱間圧延および冷間圧延を実施する過程において割れなどの不具合が発生し、均質な冷延鋼板が得られなかった場合、加工性を「×」(不良)とした。
表1に示すように、No.8は、Si含有量が低すぎ、また(1)式を満足しなかったため、鋼材表面に十分なSi酸化皮膜が形成されず、耐食性が劣化した。
No.9は、Mn量が多すぎた結果、Si酸化皮膜に過剰なMn酸化物が取り込まれ不均一なSi皮膜となり、また、Mn酸化物が腐食されることにより、耐食性が劣化した。
No.10は、Al量が多すぎ、また(1)式を満足しなかったため、鋼材表面に十分なSi酸化皮膜が形成されず、耐食性が劣化した。
No.11は、Ti量が多すぎ、また(1)式を満足しなかったため、鋼材表面に十分なSi酸化皮膜が形成されず、耐食性が劣化した。
No.12は、過剰なREMが均一なSi酸化皮膜の生成を阻害したため、耐食性が劣化した。
No.13は、各元素の含有量は本発明で規定される範囲内であったが、(1)式を満足しなかったため、鋼材表面に十分なSi酸化皮膜が形成されず、耐食性が劣化した。
No.14は、Si量が少なすぎ、また(1)式を満足しなかったため、鋼材表面に十分なSi酸化皮膜が形成されず、耐食性が劣化した。
No.15は、Ni量が多すぎたため、Siの拡散が抑制され鋼材表面に十分なSi酸化皮膜が形成されず、耐食性が劣化した。
No.16は、Si量が多すぎたため、加工性が劣化した。
これに対して、No.1〜7は、本発明の構成を全て満足していたため、耐食性および加工性に優れていた。
No.9は、Mn量が多すぎた結果、Si酸化皮膜に過剰なMn酸化物が取り込まれ不均一なSi皮膜となり、また、Mn酸化物が腐食されることにより、耐食性が劣化した。
No.10は、Al量が多すぎ、また(1)式を満足しなかったため、鋼材表面に十分なSi酸化皮膜が形成されず、耐食性が劣化した。
No.11は、Ti量が多すぎ、また(1)式を満足しなかったため、鋼材表面に十分なSi酸化皮膜が形成されず、耐食性が劣化した。
No.12は、過剰なREMが均一なSi酸化皮膜の生成を阻害したため、耐食性が劣化した。
No.13は、各元素の含有量は本発明で規定される範囲内であったが、(1)式を満足しなかったため、鋼材表面に十分なSi酸化皮膜が形成されず、耐食性が劣化した。
No.14は、Si量が少なすぎ、また(1)式を満足しなかったため、鋼材表面に十分なSi酸化皮膜が形成されず、耐食性が劣化した。
No.15は、Ni量が多すぎたため、Siの拡散が抑制され鋼材表面に十分なSi酸化皮膜が形成されず、耐食性が劣化した。
No.16は、Si量が多すぎたため、加工性が劣化した。
これに対して、No.1〜7は、本発明の構成を全て満足していたため、耐食性および加工性に優れていた。
本発明によれば、SO3、硫酸をはじめとする硫黄酸化物を含む高温蒸気環境での耐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼を提供することができる。
Claims (1)
- 質量%で、
C:0.04〜0.15%、
Si:2.5〜5.0%、
Mn:0.15〜0.50%、
P:0.10%以下、
S:0.002%以下、
Ni:8.0〜15.0%、
Cr:18.0〜23.0%、
B:0.02〜0.08%、
N:0.005〜0.10%、
REM:0.002〜0.01%、
Cu:0〜0.2%、
Mo:0〜0.35%、
Ti:0〜0.15%、
Al:0〜0.1%、
Mg:0〜0.002%、
Ca:0〜0.003%、
残部:Feおよび不純物であり、
下記(1)式を満足する、オーステナイト系ステンレス鋼。
Si/14−(Al/18+Ti/24)≧0.172 (1)
なお、(1)式中の各元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味する。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019191896A JP2021066917A (ja) | 2019-10-21 | 2019-10-21 | オーステナイト系ステンレス鋼 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019191896A JP2021066917A (ja) | 2019-10-21 | 2019-10-21 | オーステナイト系ステンレス鋼 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2021066917A true JP2021066917A (ja) | 2021-04-30 |
Family
ID=75638276
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2019191896A Pending JP2021066917A (ja) | 2019-10-21 | 2019-10-21 | オーステナイト系ステンレス鋼 |
Country Status (1)
Country | Link |
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-
2019
- 2019-10-21 JP JP2019191896A patent/JP2021066917A/ja active Pending
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