JP2021065176A - 口腔内病原性細菌の生育抑制剤、口腔用組成物及び促進剤 - Google Patents

口腔内病原性細菌の生育抑制剤、口腔用組成物及び促進剤 Download PDF

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Abstract

【課題】口腔内の病原性細菌の生育を抑制する口腔内病原性細菌の生育抑制剤、口腔内疾患の予防又は改善効果に優れる口腔用組成物、病原性細菌の生育抑制効果又はストレプトコッカス ペロリス等の生育を促進する促進剤を提供する。【解決手段】(A)ストレプトコッカス ペロリス(Streptococcus peroris)、ストレプトコッカス ラクタリウス(Streptococcus lactarius)及びこれらの培養物から選ばれる1種以上、及び/又は(B)ミルクオリゴ糖及びラクツロースから選ばれる1種以上を含有する、口腔内病原性細菌に対する生育抑制剤、上記(A)及び/又は(B)成分を含有する口腔用組成物並びに(A)成分が有する上記細菌に対する生育抑制効果を促進する、(B)成分含有の促進剤。【選択図】なし

Description

本発明は、口腔内病原性細菌の生育を抑制し、歯周病や口臭の予防又は抑制用として好適な口腔用組成物、ならびに病原性細菌の生育抑制効果又はストレプトコッカス ペロリス等の生育を促進する促進剤に関する。
口腔用疾患としては、う蝕、歯周病、口臭等が挙げられ、これらの疾患の予防又は改善が求められている。
ヒトの口腔内には様々な病原性を示す細菌が存在する。例えば、う蝕の原因菌であるストレプトコッカス ミュータンス(Streptococcus mutans)、歯周病や口臭の原因菌であるポルフィロモナス ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、プレボテラ インターメディア(Prevotella intermedia)、フゾバクテリウム ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)等が挙げられる。
口腔内において上記病原性を示す細菌の生育を抑制することで、口腔疾患の予防又は改善することができ、これまで様々な技術が提案されてきたが、より効果の高い技術が求められていた。
特許第5982376号公報 特許第6235138号公報 特開2012−77053号公報
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、口腔内の病原性細菌の生育を抑制する口腔内病原性細菌の生育抑制剤、口腔内疾患の予防又は改善効果に優れる口腔用組成物、病原性細菌の生育抑制効果又はストレプトコッカス ペロリス等の生育を促進する促進剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、口腔内に存在する細菌であるストレプトコッカス ペロリス(Streptococcus peroris)又はストレプトコッカス ラクタリウス(Streptococcus lactarius)、これらの培養物が、口腔内病原性細菌に対する生育抑制効果を有することを知見した。
さらに、(B)ミルクオリゴ糖及びラクツロースから選ばれる1種以上が、それ自身は口腔内病原性細菌に対する生育抑制効果を有していないものの、ストレプトコッカス ペロリス(Streptococcus peroris)、ストレプトコッカス ラクタリウス(Streptococcus lactarius)及びこれらの培養物に作用して、これらの有する口腔内病原性細菌に対する生育抑制効果を促進させること、例えば、上記ストレプトコッカス ペロリス等の生育を促進することにより、口腔内病原性細菌に対する顕著な生育抑制効果を有することを知見し、発明をなすに至ったものである。
従って、本発明は下記発明を提供する。
1.(A)ストレプトコッカス ペロリス(Streptococcus peroris)、ストレプトコッカス ラクタリウス(Streptococcus lactarius)及びこれらの培養物から選ばれる1種以上を含有する、口腔内病原性細菌に対する生育抑制剤。
2.(B)ミルクオリゴ糖及びラクツロースから選ばれる1種以上を含有する、口腔内病原性細菌に対する生育抑制剤。
3.口腔内のストレプトコッカス ペロリス(Streptococcus peroris)又はストレプトコッカス ラクタリウス(Streptococcus lactarius)が有する口腔内病原性細菌に対する生育抑制効果を促進させ、口腔内病原性細菌に対する生育を抑制することを特徴とする、2記載の口腔内病原性細菌に対する生育抑制剤。
4.さらに、(A)ストレプトコッカス ペロリス(Streptococcus peroris)、ストレプトコッカス ラクタリウス(Streptococcus lactarius)及びこれらの培養物から選ばれる1種以上を含有する、2又は3記載の口腔内病原性細菌に対する生育抑制剤。
5.口腔内病原性細菌が、ポルフィロモナス ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、プレボテラ インターメディア(Prevotella intermedia)又はフゾバクテリウム ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)である1〜4のいずれかに記載の口腔内病原性細菌に対する生育抑制剤。
6.(A)ストレプトコッカス ペロリス(Streptococcus peroris)、ストレプトコッカス ラクタリウス(Streptococcus lactarius)及びこれらの培養物から選ばれる1種以上を含有する口腔用組成物。
7.(B)ミルクオリゴ糖及びラクツロースから選ばれる1種以上を含有する、歯磨剤、洗口剤、塗布剤、マウススプレー、貼付剤、シート剤、口腔内徐放剤、咀嚼剤、口腔内溶解剤、口腔内崩壊剤、義歯ケア剤、舌ケア剤及び口中清涼剤から選ばれる口腔用組成物。
8.さらに、(A)ストレプトコッカス ペロリス(Streptococcus peroris)、ストレプトコッカス ラクタリウス(Streptococcus lactarius)及びこれらの培養物から選ばれる1種以上を含有する7記載の口腔用組成物。
9.歯周病又は口臭の予防又は改善用である6〜8のいずれかに記載の口腔用組成物。
10.(A)ストレプトコッカス ペロリス(Streptococcus peroris)、ストレプトコッカス ラクタリウス(Streptococcus lactarius)及びこれらの培養物から選ばれる1種以上が有する口腔内病原性細菌に対する生育抑制効果を促進する、(B)ミルクオリゴ糖及びラクツロースから選ばれる1種以上を含有する促進剤。
11.ストレプトコッカス ペロリス(Streptococcus peroris)又はストレプトコッカス ラクタリウス(Streptococcus lactarius)の生育を促進する、(B)ミルクオリゴ糖及びラクツロースから選ばれる1種以上を含有する促進剤。
本発明によれば、口腔内病原性細菌に対する優れた抑制効果を有する生育抑制剤、口腔疾患予防又は改善用として好適に使用し得る口腔用組成物、及び病原性細菌の生育抑制効果又はストレプトコッカス ペロリス等の生育を促進する促進剤を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
I.口腔内病原性細菌に対する生育抑制剤
本発明の口腔内病原性細菌に対する第1の生育抑制剤(以下、「口腔内病原性細菌に対する生育抑制剤」を単に「生育抑制剤」と表記する場合がある。)は、(A)ストレプトコッカス ペロリス(Streptococcus peroris)、ストレプトコッカス ラクタリウス(Streptococcus lactarius)及びこれらの培養物から選ばれる1種以上を含有する、口腔内病原性細菌に対する生育抑制剤である。
ストレプトコッカス ペロリス(Streptococcus peroris)は 1998年にヒトの口腔内から単離された細菌である。また、ストレプトコッカス ラクタリウス(Streptococcus lactarius)は2011年にヒトの母乳から単離された細菌であり、両菌は非常に近縁な細菌である。
(A)成分は菌体そのものでもよく、培養物でもよい。培養物は特に限定されず、公知の方法を用いて培養した培養物が挙げられ、培養液、菌と培養液を含むもの、これらから培地成分を除去した培養上清、これらの乾燥物等が挙げられる。
培養物としては、菌を糖含有又は不含の培地や栄養源を用いて培養の常法に従って任意の条件で培養した培養物そのものを使用することができる。さらに培養物から遠心分離やろ過等の分離手段によって集菌したものをそのまま、もしくは生理食塩水や滅菌水等で洗浄し使用することができる。さらに、菌を凍結乾燥やスプレードライ等で乾燥したものも使用することができる。
培養上清としては、菌を培地を用いて培養の常法に従って任意の条件で培養し、培養物から遠心分離やろ過等の分離手段によって菌を除去したものを使用することができる。また、減圧濃縮、凍結乾燥、スプレードライ等の方法で濃縮又は乾燥させたものを使用することもできる。
また、培養物又は培養上清を水酸化ナトリウム等のアルカリ剤を用いてpHを中性域(5.6〜8.5(温度10〜30℃))にしたものを使用することができる。中和することで、酸による歯牙を脱灰するう蝕のリスクが軽減される。
本発明の口腔内病原性細菌に対する第2の生育抑制剤は、(B)ミルクオリゴ糖及びラクツロースから選ばれる1種以上を含有するものであり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。後述する実施例の結果から明らかであるように、口腔内に存在するストレプトコッカス ペロリス(Streptococcus peroris)又はストレプトコッカス ラクタリウス(Streptococcus lactarius)は、口腔内病原性細菌に対する生育抑制効果を有する。一方、(B)ミルクオリゴ糖及びラクツロースから選ばれる1種以上は、それ自身は口腔内病原性細菌に対する生育抑制効果を有していないものの、これらを口腔内で適用することにより、ストレプトコッカス ペロリス(Streptococcus peroris)又はストレプトコッカス ラクタリウス(Streptococcus lactarius)が有する口腔内病原性細菌に対する生育抑制効果を飛躍的に促進させ、口腔内病原性細菌に対する顕著な生育抑制効果が得られる。以上のことから、(B)成分は、ストレプトコッカス ペロリス(Streptococcus peroris)又はストレプトコッカス ラクタリウス(Streptococcus lactarius)が有する口腔内病原性細菌に対する生育抑制効果を促進する促進剤として好適である。また、(B)成分は、(A)成分の生育促進効果を有することから、(A)ストレプトコッカス ペロリス(Streptococcus peroris)、ストレプトコッカス ラクタリウス(Streptococcus lactarius)及びこれらの培養物から選ばれる1種以上の生育を促進する促進剤としても好適である。
ミルクオリゴ糖とは、遊離ラクトース単位を還元末端側にもち、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース(Gal)、フコース(Fuc)、N−アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)が付加したものである。ミルクオリゴ糖の例として、2’−フコシルラクトース、3−フコシルラクトース、3’−シアリルラクトース、6’−シアリルラクトース、ラクト−N−テトラオース、ラクト−N−ネオテトラオース、ラクト−N−フコペンタオースI、ラクト−N−フコペンタオースII、ラクト−N−フコペンタオースIII、ラクト−N−ジフコヘキサオースI、ラクト−N−ジフコヘキサオースII、ラクト−N−ヘキサオース、ラクト−N−ネオヘキサオース、6’−N−アセチルノイラミニルラクトース、3’−N−アセチルノイラミニルラクトース等が挙げられる。
ラクツロースは、ガラクトースとフルクトースがβ−1,4−グリコシド結合した二糖であり、便秘改善等に用いられる。
(B)成分としては、3’−シアリルラクトース、6’−シアリルラクトース、2’−フコシルラクトース、ラクト−N−テトラオース、ラクト−N−フコペンタオースI、ラクツロースが好ましく、3’−シアリルラクトース、6’−シアリルラクトース、2’−フコシルラクトース、ラクト−N−テトラオース、ラクト−N−フコペンタオースIがより好ましい。
ストレプトコッカス ペロリス(Streptococcus peroris)又はストレプトコッカス ラクタリウス(Streptococcus lactarius)は口腔内に存在するが、(A)ストレプトコッカス ペロリス(Streptococcus peroris)、ストレプトコッカス ラクタリウス(Streptococcus lactarius)及びこれらの培養物から選ばれる1種以上を、さらに剤中に配合することで、口腔内病原性細菌に対するより顕著な生育抑制効果が得られる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
本発明の生育抑制剤は、有効成分として(A)成分もしくは(B)成分を、又は(A)成分と(B)成分とを併用し、これらの成分を有効成分として配合することで得ることができる。また、上記有効成分のみからなる生育抑制剤として使用できるが、必要に応じて、その他の口腔用として公知の任意成分をさらに含有してもよく、この場合、任意成分は本発明の効果を妨げない範囲で配合し得る。
この場合、生育抑制の有効成分である(A)及び(B)成分を、生育抑制剤、口腔用組成物に応用する場合は、生育抑制効果の点から、(A)及び(B)成分の配合量がそれぞれ後述の範囲が好ましい。以下、生育抑制剤、口腔用組成物のいずれの場合も組成物全体として記載する。
(A)成分の配合量は、組成物全体の0.1%(質量%、以下同様)以上が好ましく、0.5%以上がより好ましい。上記範囲とすることで、生育抑制効果がより向上する。上限は特にないが、製剤の安定性等の点から、90%以下が好ましく、50%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましい。
(B)成分の配合量は、組成物全体の0.01%以上が好ましく、0.1%以上がより好ましく、0.5%以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが、製剤安定性の点、服用性等の点から、組成物全体の50%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましい。上記範囲とすることで、生育抑制効果、ストレプトコッカス ペロリス又はストレプトコッカス ラクタリウスの生育促進効果がより向上する。
(A)成分と(B)成分とを併用する場合、(A)成分と(B)成分との配合比率は、上記各成分の配合量から算出し得る範囲がよいが、下記範囲であると口腔内の生育抑制効果がさらに向上する。
(A)成分と(B)成分との量比を示す(A)/(B)は、質量比として0.002〜5,000が好ましく、0.01〜100がより好ましく、0.1〜20がさらに好ましい。
病原性細菌としては、歯周病や口臭の原因菌であるポルフィロモナス ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、プレボテラ インターメディア(Prevotella intermedia)、フゾバクテリウム ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)等が挙げられ、これらに対してより効果を発揮できる。
口腔内病原性細菌に対する生育抑制は、病原性細菌に対してサンプル及びコントロール(水)で培養した場合の培養液の濁度で測定することができ、濁度が低いほど生育抑制効果が高いことを示す。サンプル添加の濁度をa、コントロールの濁度をbとしたときの下記式における、コントロールに対する濁度相対値Xを生育抑制効果の指標とする。Xが低いほど生育抑制効果が高いことを示す。具体的な例示の試験方法は実施例において説明する。
X=(a/b)×100
Xの値は0〜70の範囲が好ましく、0〜50がより好ましく、0〜20がさらに好ましい。
II.口腔用組成物
本発明の第1の口腔用組成物は、(A)ストレプトコッカス ペロリス(Streptococcus peroris)、ストレプトコッカス ラクタリウス(Streptococcus lactarius)及びこれらの培養物から選ばれる1種以上を含有する口腔用組成物である。
本発明の第2の口腔用組成物は、(B)ミルクオリゴ糖及びラクツロースから選ばれる1種以上を含有する口腔用組成物であり、さらに、上記(A)成分を含有し、(A)及び(B)成分を含有する口腔用組成物が好ましい。
上述したように(A)成分及び(B)成分は優れた口腔内病原性細菌に対する生育抑制効果を有するため、歯周病又は口臭の予防又は改善用として好適である。好適な成分及び配合量は上述した通りである。
本発明の口腔用組成物は、液状(液体、液状)、ペースト状、固体(固体、固形状)といった各種形状に調製でき、剤型は特に限定されない。
なお、本発明において、口腔用組成物とは、主として口腔内で使用することを目的にするものであり、使用後は口腔内から排出される口腔用製剤だけでなく、摂取可能な飲食品でもよい。例えば、歯磨剤(練歯磨、液体歯磨、液状歯磨、粉歯磨等)、洗口剤、塗布剤、マウススプレー、貼付剤、シート剤、口腔内徐放剤、咀嚼剤、口腔内溶解剤、口腔内崩壊剤、舌ケア剤、口中清涼剤、義歯ケア剤等の一般的な口腔用製剤に調製できる。また、口腔内に含んで使用するチューインガム、錠菓、キャンディ、グミ、可食フイルム、トローチや、水に溶かして飲む粉末飲料等の飲食品に調製することもできる。調製法は、それぞれの常法を採用できる。なお、飲食品の形態は、いつでもどこでも使用可能な簡便性、携帯性の点から、チューインガム、錠菓、キャンディ、グミ、可食フイルムのいずれかが好ましい。第2の口腔用組成物の場合、歯磨剤、洗口剤、塗布剤、マウススプレー、貼付剤、シート剤、口腔内徐放剤、咀嚼剤、口腔内溶解剤、口腔内崩壊剤、義歯ケア剤、舌ケア剤及び口中清涼剤から選ばれる口腔用組成物であることが好ましい。
本発明の口腔用組成物は、上記成分に加えて、必要に応じて、その他の公知成分を任意に含んでもよい。任意の成分としては、例えば、界面活性剤、研磨剤、粘稠剤、粘結剤、着色剤、甘味料、防腐剤、香料、有効成分、更には、pH調整剤、光沢剤、流動化剤、除電剤、結合剤、酸味料、滑沢剤、保存料、崩壊剤、賦形剤、溶剤等が挙げられ、これらの配合量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜調整すればよく、常用量でもよい。
口腔用製剤、例えば歯磨剤、洗口剤では、界面活性剤、研磨剤、粘稠剤、粘結剤、着色剤、甘味料、防腐剤、香料、有効成分、pH調整剤等を配合できる。
飲食品、例えばチューインガム、錠菓、キャンディ、グミでは、ガムベース、着色剤、甘味料、香料、光沢剤、流動化剤、結合剤、酸味料、滑沢剤、保存料、崩壊剤、賦形剤等を配合できる。以下、剤及び口腔用組成物中の好適な配合量を示す。
界面活性剤は、口腔用として一般的なアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤を配合できる。アニオン性界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ノニオン性界面活性剤は、糖脂肪酸エステル、糖アルコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル又は高級アルコールエステルが挙げられる。カチオン性界面活性剤はアルキルアンモニウム塩、両性界面活性剤はベタイン系やイミダゾリン系が挙げられる。界面活性剤の配合量は、通常、0〜10%、特に0.01〜5%である。
研磨剤は、シリカ系研磨剤、リン酸カルシウム系研磨剤、炭酸カルシウム系研磨剤が挙げられ、その配合量は、通常、練歯磨等の歯磨剤では2〜50%である。
粘稠剤は、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、ラクチトール、イソマルト等の糖アルコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコールが挙げられ、その配合量は、通常、5〜50%である。
粘結剤は、有機粘結剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロール誘導体、ガム類等、無機粘結剤としてゲル化性シリカ等が挙げられる。その配合量は、通常、0.5〜10%である。
粘結剤は、有機粘結剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロール誘導体、ガム類等、無機粘結剤としてゲル化性シリカ等が挙げられる。その配合量は、通常、0.5〜10%である。
着色剤は、赤色2号、青色1号等、甘味料はサッカリンナトリウム等が挙げられ、防腐剤は、パラオキシ安息香酸エステル等が挙げられる。
香料は、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、グレープフルーツ油、スウィーティー油、柚油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及びこれら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等が挙げられ、口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を使用できる。
これら香料の配合量は、通常、歯磨剤、洗口剤等の口腔用製剤では0.00001〜1%がよく、また、錠菓、グミ、チューインガム等の飲食品では0.001〜50%がよい。上記香料素材を使用した賦香用香料は、0.1〜10%使用するのが好ましい。
有効成分としては、口腔用組成物に通常配合される公知のものを配合できる。例えば、イソプロピルメチルフェノール等の非イオン性殺菌剤、塩化セチルピリジニウム等のカチオン性殺菌剤、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸等の抗炎症剤、デキストラナーゼ等の酵素、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、水溶性リン酸化合物、銅化合物、硝酸カリウム、乳酸アルミニウム、各種ビタミン類、植物抽出物が挙げられる。なお、上記有効成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で設定できる。
なお、本発明の(A)成分もしくは(B)成分、又は(A)成分及び(B)成分の併用により、口腔内病原性細菌に対する生育抑制効果が得られ、これにより、非病原性細菌と病原性細菌の生育とのバランスが改善されることで、口腔内菌叢改善効果も期待できる。以上の点から、本発明では、口腔内の病原性細菌と共に非病原性細菌をも殺菌する非選択的殺菌剤の配合は制限することが好ましい。前記非選択的殺菌剤は、従来から広く口腔用製剤に使用されている殺菌剤に多く見られ、例えば塩化セチルピリジニウム等のカチオン性殺菌剤、イソプロピルメチルフェノール等の非イオン性殺菌剤が挙げられる。これら非選択的殺菌剤を配合する場合は、0.1%以下が好ましく、0.05%以下がより好ましく、配合しないことがさらに好ましい。
以下、実施例及び比較例、処方例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例中の特に記載のない「%」は、いずれも質量百分率を示す。
[実施例、比較例]
[I]病原性細菌に対する抗菌効果試験
下記方法で、病原性細菌に対する抗菌効果を評価した。
使用した主原料を下記に示す。
(A)成分
ストレプトコッカス ペロリス(Streptococcus peroris):以下、S.perorisと略記。)ATCC 700780
ストレプトコッカス ラクタリウス(Streptococcus lactarius):以下、S.lactariusと略記。)CCUG 66490T
(B)成分
3’−シアリルラクトース:Carbosynth社製
ラクスロース:富士フイルム和光純薬工業社製
(病原性細菌)
ポルフィロモナス ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis:以下、P.gingivalisと略記。)ATCC33277
[細菌のプレカルチャー]
上記各種細菌の凍結菌液を、馬脱繊血を含有するトッドへヴィットブロス(Todd Hewitt Broth、Becton and Dickinson社製)寒天培地に白金耳にて植菌し、37℃で72時間嫌気培養(80体積%窒素、10体積%二酸化炭素、10体積%水素)にて起菌した。続いて増殖したコロニーを5mg/Lのヘミン(Sigma社製)及び1mg/LのビタミンK(富士フイルム和光純薬工業社製)を含むトッドへヴィットブロス(Todd Hewitt Broth、Becton and Dickinson社製)〔THBHM〕4mLに懸濁し、37℃24時間嫌気培養した。さらに、この培養液を20mLのTHBHMに1%接種し、37℃24時間嫌気培養した。
上記培養後の菌液を11,000rpm 5minで遠心分離し、沈殿物をトッドへヴィットブロス培地を用いて、上記(A)成分が各々濁度(O.D.550nm)1.0になるように再懸濁し、菌液を調製した。その後、(B)成分を1%添加したトッドへヴィットブロス培地40mLに、調製した菌液を1%添加して37℃24時間嫌気培養した。
得られた培養液を11,000rpm 5minで遠心し、上清を回収した。上清のpHをpH7に調整した後、0.22μフィルターでろ過して菌体を取り除いた。ろ過後の培養液を小試験管に3mLずつ分注した(n=2)。濁度(O.D.550nm)1.0に調整したP.gingivalis菌液を30μLずつ添加し、37℃で24時間嫌気培養後に濁度(O.D.550nm)を測定した。
[濁度相対値(病原性細菌に対する生育抑制効果)]
評価サンプル((B)成分、又は(A)及び(B)成分)添加の濁度をa、コントロール((A)成分なし、(B)成分の代わりに蒸留水添加)の濁度をbとしたときの下記式における、コントロールに対する評価サンプルの濁度相対値Xを生育抑制効果の指標とした。Xが低いほど病原性細菌に対する生育抑制効果が高いことを示す。結果をn=2の平均値で示す。
X=(a/b)×100
Figure 2021065176
Figure 2021065176
Figure 2021065176
上記結果から明らかであるように、(A)成分は、口腔内病原性細菌に対する生育抑制効果を有する。一方、(B)ミルクオリゴ糖及びラクツロースから選ばれる1種以上は、それ自身は口腔内病原性細菌に対する生育抑制効果を有していないものの、上記(A)成分と併用することで、(A)成分の有する口腔内病原性細菌に対する生育抑制効果を飛躍的に促進させる効果があり、(A)成分と(B)成分とを併用することで、口腔内病原性細菌に対する顕著な生育抑制効果が得られた。
より具体的に説明する。表1のコントロールと、表2,3の(B)成分が蒸留水(コントロール)の結果から明らかであるように、S.peroris又はS.lactariusは、P.gingivalisに対する生育抑制効果を有する。
一方、表1のコントロールと、表1の(B)成分が3’−シアリルラクトース又はラクツロースの結果の結果から明らかであるように、(B)成分は、それ自身は口腔内病原性細菌に対する生育抑制効果を有していないものの、表2,3の結果から明らかであるように、(B)成分をストレプトコッカス ペロリス(Streptococcus peroris)又はストレプトコッカス ラクタリウス(Streptococcus lactarius)が存在する口腔内に適用すること、又は(B)成分と口腔内以外の(A)成分とを併用することで、口腔内のストレプトコッカス ペロリス(Streptococcus peroris)もしくはストレプトコッカス ラクタリウス(Streptococcus lactarius)、又は配合した(A)成分が有する口腔内病原性細菌に対する生育抑制効果を飛躍的に促進させる効果が得られた。
3’−シアリルラクトースのトッドへヴィットブロス培地への添加量を以下の表4に示すように変更して評価を行った。上記1%の場合の結果を併記する。
Figure 2021065176
[II]S.perorisの生育促進効果試験
下記方法で、S.perorisの生育促進効果を評価した。
評価サンプル(3’−シアリルラクトース又はラクツロース)又は蒸留水(コントロール)を添加したトッドへヴィットブロス培地200μLに、上記[I]記載のように濁度(O.D.550nm)1.0になるように再懸濁したS.peroris菌液を1%添加し、96穴プレートを用いて37℃で18時間嫌気培養した。細菌の増殖量は、濁度(O.D.550nm)で測定し、菌の生育度を評価した。表中の濃度はトッドへヴィットブロス培地中の濃度である。
評価サンプル添加の濁度を(Ts)、コントロール(蒸留水添加)の濁度を(Tc)としたときの下記式における、コントロールに対する評価サンプルの濁度相対値Yを生育促進効果の指標とした。すなわち、Yが100より大きいと生育が促進されたことになる。
Y=Ts/Tc×100
Figure 2021065176
Figure 2021065176
以下に処方例を示す。なお、使用原料は上記と同様である。
(A)成分については、各菌をトッドへヴィットブロス培地で37℃24時間嫌気培養した後、得られた培養液を11,000rpm 5minで遠心分離した上清又は沈殿物を凍結乾燥した粉末を用いた。
[処方例1]チューインガム
(A)S.peroris 培養上清乾燥粉末 1
(B)3’−シアリルラクトース 0.1
キシリトール 48.9
マルチトール 20
ガムベース 20
アラビアガム 9
香料 1
合計 100%
[処方例2]チューインガム(歯周病又は口臭の予防又は改善用)
(B)ラフィノース 0.1
キシリトール 49.9
マルチトール 20
ガムベース 20
アラビアガム 9
香料 1
合計 100%
[処方例3]錠菓
(A)S.peroris 培養上清乾燥粉末 1
(B)3’−シアリルラクトース 0.1
ソルビトール 80.9
キシリトール 10
ショ糖脂肪酸エステル 3
香料 4.5
微粒二酸化ケイ素 0.5
合計 100.0%
[処方例4]錠菓
(A)S.peroris 培養沈殿物乾燥粉末 1
(B)3’−シアリルラクトース 0.1
ソルビトール 80.9
キシリトール 10
ショ糖脂肪酸エステル 3
香料 4.5
微粒二酸化ケイ素 0.5
合計 100.0%
[処方例5]錠菓(歯周病又は口臭の予防又は改善用)
(B)3'-シアリルラクトース 0.1
ソルビトール 81.9
キシリトール 10
ショ糖脂肪酸エステル 3
香料 4.5
微粒二酸化ケイ素 0.5
合計 100.0%
[処方例6]グミ
(A)S.peroris 培養上清乾燥粉末 1
(B)3’−シアリルラクトース 0.1
砂糖 40
水飴 30
ブドウ糖液糖 10
グリセリン 5
ゼラチン 5
香料 0.2
蒸留水 バランス
合計 100.0%
[処方例7]グミ(歯周病又は口臭の予防又は改善用)
(B)3’−シアリルラクトース 0.1
砂糖 40
水飴 30
ブドウ糖液糖 10
グリセリン 5
ゼラチン 5
香料 0.2
蒸留水 バランス
合計 100.0%
[処方例8]キャンディ
(A)S.peroris 培養上清乾燥粉末 1
(B)3'−シアリルラクトース 0.1
砂糖 50
水飴 33
クエン酸 2.0
香料 0.2
蒸留水 バランス
合計 100.0%
[処方例9]キャンディ(歯周病又は口臭の予防又は改善用)
(B)3’−シアリルラクトース 0.1
砂糖 50
水飴 33
クエン酸 2
香料 0.2
蒸留水 バランス
合計 100.0%
[処方例10]歯磨剤
(A)S.peroris 培養上清乾燥粉末 1
(B)3’−シアリルラクトース 0.1
無水ケイ酸 10
ラウリル硫酸ナトリウム 1
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.5
サッカリンナトリウム 0.1
ソルビトール 25
香料 1
蒸留水 バランス
合計 100.0%
[処方例11]歯磨剤
(A)S.peroris 培養沈殿物乾燥粉末 1
(B)3’−シアリルラクトース 0.1
無水ケイ酸 10
ラウリル硫酸ナトリウム 1
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.5
サッカリンナトリウム 0.1
ソルビトール 25
香料 1
蒸留水 バランス
合計 100.0%
[処方例12]歯磨剤
(B)3’−シアリルラクトース 0.1
無水ケイ酸 10
ラウリル硫酸ナトリウム 1
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.5
サッカリンナトリウム 0.1
ソルビトール 25
香料 1
蒸留水 バランス
合計 100.0%
[処方例13]洗口剤
(A)S.peroris 培養上清乾燥粉末 0.1
(B)3’−シアリルラクトース 0.1
プロピレングリコール 5
グリセリン 5
クエン酸 0.03
クエン酸ナトリウム 0.25
香料 0.8
蒸留水 バランス
合計 100.0%
[処方例14]洗口剤
(B)3’−シアリルラクトース 0.1
プロピレングリコール 5
グリセリン 5
クエン酸 0.03
クエン酸ナトリウム 0.25
香料 0.8
蒸留水 バランス
合計 100.0%

Claims (11)

  1. (A)ストレプトコッカス ペロリス(Streptococcus peroris)、ストレプトコッカス ラクタリウス(Streptococcus lactarius)及びこれらの培養物から選ばれる1種以上を含有する、口腔内病原性細菌に対する生育抑制剤。
  2. (B)ミルクオリゴ糖及びラクツロースから選ばれる1種以上を含有する、口腔内病原性細菌に対する生育抑制剤。
  3. 口腔内のストレプトコッカス ペロリス(Streptococcus peroris)又はストレプトコッカス ラクタリウス(Streptococcus lactarius)が有する口腔内病原性細菌に対する生育抑制効果を促進させ、口腔内病原性細菌に対する生育を抑制することを特徴とする、請求項2記載の口腔内病原性細菌に対する生育抑制剤。
  4. さらに、(A)ストレプトコッカス ペロリス(Streptococcus peroris)、ストレプトコッカス ラクタリウス(Streptococcus lactarius)及びこれらの培養物から選ばれる1種以上を含有する、請求項2又は3載の口腔内病原性細菌に対する生育抑制剤。
  5. 口腔内病原性細菌が、ポルフィロモナス ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、プレボテラ インターメディア(Prevotella intermedia)又はフゾバクテリウム ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)である請求項1〜4のいずれか1項記載の口腔内病原性細菌に対する生育抑制剤。
  6. (A)ストレプトコッカス ペロリス(Streptococcus peroris)、ストレプトコッカス ラクタリウス(Streptococcus lactarius)及びこれらの培養物から選ばれる1種以上を含有する口腔用組成物。
  7. (B)ミルクオリゴ糖及びラクツロースから選ばれる1種以上を含有する、歯磨剤、洗口剤、塗布剤、マウススプレー、貼付剤、シート剤、口腔内徐放剤、咀嚼剤、口腔内溶解剤、口腔内崩壊剤、義歯ケア剤、舌ケア剤及び口中清涼剤から選ばれる口腔用組成物。
  8. さらに、(A)ストレプトコッカス ペロリス(Streptococcus peroris)、ストレプトコッカス ラクタリウス(Streptococcus lactarius)及びこれらの培養物から選ばれる1種以上を含有する請求項7記載の口腔用組成物。
  9. 歯周病又は口臭の予防又は改善用である請求項6〜8のいずれか1項記載の口腔用組成物。
  10. (A)ストレプトコッカス ペロリス(Streptococcus peroris)、ストレプトコッカス ラクタリウス(Streptococcus lactarius)及びこれらの培養物から選ばれる1種以上が有する口腔内病原性細菌に対する生育抑制効果を促進する、(B)ミルクオリゴ糖及びラクツロースから選ばれる1種以上を含有する促進剤。
  11. ストレプトコッカス ペロリス(Streptococcus peroris)又はストレプトコッカス ラクタリウス(Streptococcus lactarius)の生育を促進する、(B)ミルクオリゴ糖及びラクツロースから選ばれる1種以上を含有する促進剤。
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