以下、本開示の一の実施形態に係る定着装置と画像形成装置について、スキャナー、プリンター及びコピー機等の機能を有するタンデム型のカラー複合機(MFP:Multiple Function Peripheral)を例にして、図面を参照しながら説明する。
<実施の形態1>
〔1〕画像形成装置の全体構成
図1は、画像形成装置1の外観を示す図であり、同図では、画像形成装置1を正面側から見たときの左右方向をX軸方向、上下方向をY軸方向、X軸とY軸の双方に直交する奥行方向をZ軸方向で示している。
図1に示すように、画像形成装置1は、筐体底部に、シートの一例としての用紙を収容し搬送するシート搬送部50が設けられている。シート搬送部50の上方には、電子写真方式により画像を形成するプリントエンジン13及び画像形成装置1の各ブロックを統合的に制御する制御回路14が設けられ、プリントエンジン13及び制御回路14の上方には、原稿を読み取って入力画像データを生成するスキャナー10及び操作用の画面を表示し、操作者から入力操作を受け付ける操作パネル20が設けられている。
(1−1)スキャナー10
スキャナー10は、自動原稿給紙装置(ADF:Auto Document Feeder)11及び原稿画像読取部12等を備えて構成される。
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿を搬送機構により搬送して原稿画像読取部12へ送り出す。
原稿画像読取部12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿又はコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。スキャナー10は、原稿画像読取部12による読取結果に基づいて入力画像データを生成し、生成した入力画像データを画像メモリ104(図3)に書き込む。
(1−2)操作パネル20
操作パネル20は、表示部及び操作部(不図示)から構成される。
表示部は、各種操作画面、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部は、操作者の接触操作を受け付けるタッチパネル及びテンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、操作者による各種入力操作、例えば、プリントの実行指示や後述の光沢モードの指定等を受け付けて、操作信号を主制御部100(図3)に出力する。操作パネル20は、例えば、タッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)により構成される。
(1−3)プリントエンジン13
プリントエンジン13は、電子写真方式により画像を形成する画像形成部40及びトナー像を用紙に熱定着する定着部60から構成されている。
画像形成部40は、画像メモリ104に記憶されている入力画像データに基づいて、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、中間転写ユニット31等を備える。
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示及び説明の便宜上、共通する構成要素を同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、又はKを添えて示すこととする。図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号を付し、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号を省略している。以下、画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kを代表して、画像形成ユニット41Yについて、画像形成ユニット41として説明する。
画像形成ユニット41は、感光体ドラム43、帯電部44、露光部48、現像部42及びドラムクリーニング部45等を備える。
感光体ドラム43は、負の帯電極性を有する感光体であり、不図示の駆動モーターにより矢印B方向に一定速度で回転駆動される。
帯電部44は、回転する感光体ドラム43の周面を一様に負極性に帯電させる。
露光部48は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム43に対して対応する色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。レーザー光の照射により、感光体ドラム43の周面には、対応する色成分の静電潜像が形成されることとなる。
現像部42は、例えば、二成分現像方式の現像装置であり、感光体ドラム43の周面に対応する色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー画像を形成する。
ドラムクリーニング部45は、感光体ドラム43の周面に摺接されるクリーニングブレードを有し、クリーニングブレードは、一次転写後に感光体ドラム43の周面に残存する転写残トナーを除去する。
中間転写ユニット31は、中間転写ベルト32(中間転写体)、複数の一次転写ローラー47、複数の支持ローラー33A〜33D、二次転写ローラー34及びベルトクリーニング部36等を備える。
中間転写ベルト32は、無端状ベルトであり、支持ローラー33A〜33Dにより張架されており、矢印A方向に周回走行する。支持ローラー33Aが駆動ローラーであり、支持ローラー33B〜33Dが従動ローラーである。
一次転写ローラー47は、中間転写ベルト32を挟んで感光体ドラム43に対向して、中間転写ベルト32の内周面側に配置される。感光体ドラム43の周面と中間転写ベルト32の表面との接触領域が一次転写ニップになる。
二次転写ローラー34は、中間転写ベルト32を挟んで支持ローラー33Bに対向して、中間転写ベルト32の外周面側に配置される。中間転写ベルト32の表面と二次転写ローラー34の周面との接触領域が二次転写ニップ34Aになる。
それぞれの一次転写ニップを中間転写ベルト32が通過する際、各色用の感光体ドラム43上のトナー像が中間転写ベルト32に重ねて一次転写される。その後、シート搬送部50から搬送されてきた用紙Sが二次転写ニップ34Aを通過する際、中間転写ベルト32上のトナー像が用紙Sに二次転写される。トナー像が転写された用紙Sは定着部60に向けて搬送される。
ベルトクリーニング部36は、中間転写ベルト32の表面に摺接するクリーニングブレードを有し、二次転写後に中間転写ベルト32上に残留する転写残トナーを除去する。
定着部60は、二次転写ニップ34Aよりも用紙Sの搬送方向下流側に配されており、二次転写ニップ34Aから搬送されてきた用紙Sを加熱、加圧して、用紙S上のトナー像を熱定着する。定着部60の具体的な構成については、後述する。定着部60を通過した用紙Sは、排紙部52に搬送される。
(1−4)シート搬送部50
シート搬送部50は、給紙部51、排紙部52及び搬送経路部53を備え、制御回路14の指示に従って制御される。
給紙部51は、画像形成装置1の筐体底部に設けられ、3つの給紙トレイユニット51a、51b、51cを備える。給紙トレイユニット51a〜51cには、それぞれ、用紙Sが収容される。給紙トレイユニット51a〜51cに収容されている用紙Sは、搬送経路部53に搬送される。
搬送経路部53は、レジストローラー対53a等の複数の搬送ローラー対を有し、給紙部51から搬送されてきた用紙Sを各搬送ローラーでレジストローラー対53aまで搬送し、レジストローラー対53aで用紙Sの傾きを補正しつつ、中間転写ベルト32上のトナーが二次転写ニップ34Aに到達するタイミングと用紙Sが二次転写ニップ34Aに到達するタイミングとが一致するように、レジストローラー対53aによる用紙Sの二次転写ニップ34Aへの搬送タイミングまたは/および搬送速度を調整する。
排紙部52は、排紙ローラー52aを備え、定着部60を通過後の用紙Sを機外に排出する。排出された用紙Sは、排紙トレイ53に収容される。
〔2〕定着部の構成
図2は、定着部60の構成を示す横断面図である。
同図に示すように定着部60は、無端状の定着ベルト61と、定着ベルト61の周回経路の内側に配され、定着ベルト61を張架する加熱ローラー62と定着ローラー63と、定着ベルト61の周回経路の外側に配され、定着ベルト61を介して定着ローラー63に圧接して、定着ベルト61の表面との間で定着ニップ(以下、「ニップ」という。)NPを形成する加圧ローラー64と、定着ベルト61に熱を供給するヒーター65と、定着ベルト61の表面温度を検出する温度検出センサー66と、排紙前ローラー67と、用紙検出センサー68a、68bと、筐体69と、分離エアをニップNPに向けて吹き出す送風部70を備える。
定着ベルト61は、基層の上に弾性層と表層がこの順に積層されてなる。基層の材料には、例えばPI(ポリイミド)樹脂が用いられ、弾性層の材料には、例えばSi(シリコーン)ゴムが用いられ、表層の材料には、例えばPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)チューブが用いられる。基層が定着ベルト61の内面(裏面)側になり、表層が定着ベルト61の表面側になる。なお、各層の材料、厚み等がこれらに限られないことはいうまでもない。また、3層に限られず、1層または2以上の層を備える構成であっても良い。材料、厚み、層数などが限定されないことは、後述の各部材について同様である。
定着ローラー63は、鉄製の中実の芯金631の表面にシリコーンゴムなどの弾性層632が積層されてなり、定着ローラー63の軸方向(Z軸方向)両端が軸受部材(不図示)を介して筐体69に回転自在に支持されている。定着ローラー63の軸方向長さは、搬送可能な最大サイズの用紙Sの幅(搬送方向Gに直交する方向の長さ)よりも少し長くなっている。この軸方向長さが長いことは、定着ベルト61、加熱ローラー62、加圧ローラー64、ヒーター65について同じである。
加熱ローラー62は、円筒状であり、例えばアルミニウムなどの金属製の円筒体の表面に表層が積層されてなり、加熱ローラー62の軸方向両端が軸受部材(不図示)を介して筐体69に回転自在に支持されている。
加圧ローラー64は、鉄製の中実の芯金641の表面にシリコーンゴムなどの弾性層642とPFAチューブなどの表層(不図示)がこの順に積層されてなり、加圧ローラー64の軸方向両端が筐体69に回転自在かつ定着ローラー63に対し遠近方向に移動自在に支持されつつバネなどの付勢部材(不図示)により常時、定着ローラー63に近づく方向に付勢されている。この付勢力により、加圧ローラー64が定着ベルト61を介して定着ローラー63を押圧する。この押圧により、加圧ローラー64が定着ベルト61の表面に圧接する領域(ニップ)NPが確保される。
加圧ローラー64は、不図示の駆動モーターの回転駆動力により矢印E方向に回転駆動される。加圧ローラー64の回転により、加圧ローラー64に従動して、定着ベルト61が矢印D方向に周回走行しつつ加熱ローラー62と定着ローラー63が一緒に回転する。
ヒーター65は、棒状のハロゲンヒーターであり、円筒形状の加熱ローラー62に内挿されており、ヒーター65から発する熱が加熱ローラー62を介して定着ベルト61に伝えられる。
温度検出センサー66は、定着ベルト61の周囲であり、ニップNPよりもベルト周回方向下流側かつ加熱ローラー62よりもベルト周回方向上流側の位置に定着ベルト61の表面とは非接触の状態で配置されている非接触型のセンサーであり、定着ベルト61の検出温度を制御回路14に出力する。この検出温度は、制御回路14において、ヒーター65への電力供給(通電:オン)と電力供給の停止(遮断:オフ)を切り換えるヒーター制御に用いられる。なお、温度検出センサー66は、定着ベルト61の温度を検出できれば良く、例えば定着ベルト61に接する接触型のセンサーを用いることもできる。
送風部70は、ダクト71と、ダクト71内に設けられる送風ファン72を備える。
ダクト71は、中空の筒状部材であり、長手方向の一端部711がニップNP近傍の位置にあり、他端部712が筐体69の外部に連通している。ダクト71の一端部711は、先端に向かうほど断面積が小さくなるように形成され、先端には、ニップNPに空気を吹き付けるための吹出口713が設けられている。この吹出口713は、ニップNPのZ軸方向(用紙幅方向に相当)全体に亘って延長されている。
ダクト71の他端部712には、筐体69の外側周辺の空気をダクト71内に取り入れるための吸入口714が設けられている。
送風ファン72は、ファン(羽根)を回転させて空気流を生じさせるファンモーターであり、制御回路14の指示に基づく速度で回転動作を行うことで、ダクト71内に吹出口713へ向かう矢印I方向の空気の流れを生じさせる。これにより、送風部70は、ダクト71の吸入口714から空気を取り入れて、吹出口713からニップNPに空気を吹き付けることができる。ニップNPに吹き付けられる空気は、ニップNPを通過後の用紙Sを定着ベルト61の表面から分離させるための分離エアとして用いられる。また、この空気の風量(m3/秒)は、制御回路14により定着ベルト61の温度に応じて調整される。この分離エアの風量調整制御については、後述する。
筐体69は、定着ベルト61、加熱ローラー62、定着ローラー63、加圧ローラー64、ヒーター65などの各部材に加えて、送風部70のうちダクト71の他端部712を除く全体を収容する。
このような構成において、二次転写ニップ34A(図1)を通過後、定着部60に用紙Sが搬送されて来ると、その用紙Sは、入口ガイド91、92により矢印G方向にニップNPに向けて案内搬送される。
定着ベルト61がヒーター65により加熱されている状態で、加圧ローラー64が回転しつつ定着ベルト61が周回走行している間に、用紙SがニップNPを通過する際に、用紙Sの表面Sa上の未定着のトナー像が定着ベルト61の表面に接しつつ(加熱)、用紙Sの裏面Sbに接する加圧ローラー64で押圧(加圧)されることにより、トナー像が用紙Sの表面Saに熱定着する。
ニップNPを通過した用紙Sは、ニップNPを通過中に溶融したトナー粒子を介して定着ベルト61の表面に引っ付いたままになり易いが、ダクト711の吹出口713から吹き出された分離エアが、用紙Sの表面Saと定着ベルト61の表面との間に入り込むことで、定着ベルト61の表面から分離される。
定着ベルト61の表面から分離した用紙Sは、ニップNPよりも用紙搬送方向下流側の中間ガイド93、94により、さらに下流に配置される一対の排紙前ローラー67に向けて搬送される。一対の排紙前ローラー67を通過した用紙Sは、排出ガイド95、96によりさらに用紙搬送方向下流側の排紙部52に向けて搬送される。
用紙検出センサー68aは、入口ガイド91の近傍に配され、搬送されて来た用紙Sを検出し、検出結果を制御回路14に送る。用紙検出センサー68bは、排出ガイド95の近傍に配され、搬送されて来た用紙Sを検出し、検出結果を制御回路14に送る。制御回路14は、各センサー68a、68bの検出結果に基づき、分離エアの風量制御において、送風ファン72の回転開始や停止のタイミング、回転速度の切り換えタイミングなどを可変制御する。
〔3〕制御回路の構成
制御回路14は、図3に示すように主制御部100と、画像メモリ104と、記憶部105と、画像処理部106と、ネットワーク通信部107と、エンジン制御部108と、領域判別部109と、スキャナー制御部110と、入出力部111等を備える。
(3−1)主制御部100
主制御部100は、CPU101、ROM102及びRAM103等から構成されている。RAM103は、半導体メモリから構成され、各種の制御変数などを一時記憶すると共に、CPU101によるプログラム実行時のワークエリアを提供する。ROM102は、半導体メモリから構成され、予め、スキャンジョブ、コピージョブ又はプリントジョブ等の各種ジョブを実行させるための制御プログラムなどを記憶している。CPU101は、ROM102に記憶されている制御プログラムに従って動作する。
主制御部100は、スキャンジョブ、コピージョブ又はプリントジョブ等に従って、画像メモリ104、記憶部105、画像処理部106、ネットワーク通信部107、エンジン制御部108、領域判別部109、スキャナー制御部110及び入出力部111等を統一的に制御する。
例えば、主制御部100は、制御プログラムに従って動作することにより、ネットワーク通信部107によりプリントジョブを受信すると、エンジン制御部108に指示して、そのプリントジョブに基づき、プリントエンジン13に画像形成動作を実行させる。
また、主制御部100は、操作パネル20から入出力部110を介して光沢性を重視する光沢モードの指定を受け付ける。光沢モードの指定が受け付けられた場合と受け付けられていない場合とで、後述のように分離エアの風量制御の処理内容が異なるようになっている。
(3−2)画像メモリ104及び記憶部105
画像メモリ104は、半導体メモリから構成され、プリントジョブ等の入力画像データを一時的に記憶する。
記憶部105は、不揮発性の半導体メモリから構成されている。なお、記憶部105は、ハードディスクドライブから構成されていてもよい。記憶部105は、定着ベルト61の目標温度Taを示す情報112aと、分離エアの風量切換制御に用いられる風量切換用閾値Thの情報112bを記憶するための領域を備えている。
定着ベルト61の目標温度Taは、プリント時における定着ベルト61の最適温度、例えば170℃であり、予め実験などで決められる。なお、用紙へのトナーの定着性は、定着ベルト61の温度に依存するが、ある程度の幅内の温度であれば最適温度より高くても低くても画質低下にまで至ることはない。例えば、最適温度よりも5℃〜10℃程度低い温度までならば最低限の定着性を確保できる。
風量切換用閾値Th(以下、「閾値Th」と略す。)は、分離エアの風量を第1の風量Qaとこれよりも少ない第2の風量Qbとに切り換えるために用いる値であり、定着ベルト61の温度で表され、予め実験などで決められる。
(3−3)画像処理部106
画像処理部106は、画像メモリ104に記憶されている入力画像データに対して、デジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部106は、主制御部100の制御下で、階調補正、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理を施す。また、画像処理部106は、外部の端末装置から受信したプリントジョブに含まれ、又は、スキャナー10によるスキャンにより生成した、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の多値デジタル信号からなる入力画像データに対して、各種のデータ処理を実行して、Y、M、C、Kの各色成分の入力画像データに変換する。これらの処理が施された入力画像データに基づいて、プリントエンジン13が制御される。
(3−4)ネットワーク通信部107、スキャナー制御部110及び入出力部111
ネットワーク通信部107は、LANなどのネットワークを介して、外部の端末装置からプリントジョブを受信する。プリントジョブに含まれる画像データは、画像メモリ104に書き込まれる。また、ネットワーク通信部107は、必要に応じて、外部の端末装置に対して、メッセージ等を出力する。
スキャナー制御部110は、スキャナー10による原稿面に対するスキャン動作を制御し、スキャナー10から受け取った画像データを、画像メモリ104に書き込む。
入出力部111は、主制御部100と操作パネル20との間で、データを中継する。
(3−5)領域判別部109
領域判別部109は、画像形成に用いる画像データから、用紙1枚単位で、形成画像に含まれるベタ画像の領域を判別し、判別したベタ画像の領域の、1枚の用紙における面積比率Uを計算する。ベタ画像は、写真画像などの中間調の画素が多い画像や一定面積内の画素が全て同じ色の図形の画像などが含まれる。ベタ画像の面積比率Uが多いほど、1枚の用紙に形成される画像にベタ画像が多く含まれていることになる。この面積比率Uは、送風ファン72による分離エアの風量制御(後述の実施の形態2)に用いられる。
(3−6)エンジン制御部108
エンジン制御部108は、エンジン主制御部121及び定着制御部122から構成されている。エンジン主制御部121及び定着制御部122のそれぞれは、CPU、ROM及びRAM等から構成されている。RAMは、半導体メモリから構成され、各種の制御変数などを一時記憶すると共に、CPUによるプログラム実行時のワークエリアを提供する。ROMは、半導体メモリから構成され、予め、当該制御部121(または122)を稼働させるための制御プログラムなどを記憶している。CPUは、ROMに記憶されている制御プログラムに従って動作する。
エンジン主制御部121は、シート搬送部50からの給送動作やプリントエンジン13の色成分毎の画像形成ユニットの作像動作などを統一的に制御し、画像形成動作を実行させる。
定着制御部122は、ヒーター制御部131及びファン制御部132を備える。
(3−7)ヒーター制御部131
ヒーター制御部131は、温度検出センサー66による定着ベルト61の検出温度(ベルト検出温度)に基づき、ヒーター65のオン(通電)とオフ(遮断)を切り換えるヒーター制御を実行する。このヒーター制御は、画像形成装置1の電源がオンのときに実行される。
図4は、ヒーター制御の処理内容を示すフローチャートである。
同図に示すようにジョブの実行が開始されると、温度検出センサー66からベルト検出温度Tを取得し(ステップS1)、取得したベルト検出温度Tが目標温度Ta以上であるか否かを判断する(ステップS2)。
ベルト検出温度T≧目標温度Taであることを判断すると(ステップS2で「Yes」)、ヒーター65をオフして(ステップS3)、ステップS5に進む。一方、ベルト検出温度T<目標温度Taであることを判断すると(ステップS2で「No」)、ヒーター65をオンして(ステップS4)、ステップS5に進む。
ステップS5では、電源オフか否かを判断する。電源オフではない、すなわちオンの状態では(ステップS5で「No」)、ステップS1に戻り、ステップS1〜S4によるヒーター65のオン/オフ切換制御を行う。ジョブ終了までの間、ステップS1〜S4の処理を繰り返し行うことで、定着ベルト61の表面温度が目標温度Taを中心にある程度の温度範囲内で安定するようになる。電源オフを判断すると(ステップS5で「Yes」)、ヒーター制御を終了する。
(3−8)ファン制御部132
ファン制御部132は、ベルト検出温度Tに基づき、送風ファン72の回転の開始と停止、回転速度の調整を行う。回転速度の調整は、高速、中速、低速などの複数段階の切り換えで行われる。実施の形態1では、高速回転と低速回転の2段階切り換えを行い、高速回転時に送風ファン72による分離エアの風量がQaになり、低速回転時に分離エアの風量がQb(<Qa)になるように、高速と低速の回転数が予め決められている。
ここでは、送風ファン72が直流モーターであり、送風ファン72への供給電圧を変更することにより、回転速度の調整が行われる。例えば、高速回転時の電圧をVa、低速回転時の電圧をVb、中速回転時の電圧をVcとすると、Va>Vc>Vbの関係を満たす。なお、送風ファン72の風量の調整を行えれば良く、他の制御方法、例えば送風ファン72の通電時間の幅を周期的に変化させるPWM(Pulse Width Modulation)制御などを用いることもできる。
〔4〕ファン制御部132による分離エアの風量制御
(4−1)図5は、分離エアの風量制御の内容を具体例で示すタイミングチャートであり、ここでは3枚の用紙Sが一定の間隔を空けてニップNPを通過する場合の例を示している。図5において横軸は、3枚の用紙Sが1枚ずつニップNPを通過するときの時間を示し、左端の縦軸はベルト検出温度Tを示し、右端の縦軸は分離エアの風量Qを示している。グラフ191がベルト検出温度の推移を示し、グラフ192が分離エアの風量の推移を示す。
1枚目の用紙Sの搬送方向先端(以下、「先端」と略する。)がニップNPに至る前(時点t1よりも前)は、ヒーター65により定着ベルト61が昇温中であり、分離エアの風量QがQaまで立ち上がっている状態になっている。分離エアの風量Qの調整は、送風ファン72の高速回転と低速回転の切り換えにより行われる。なお、ジョブ開始に伴って1枚目の用紙Sの先端がニップNPに至る前までに、定着ベルト61の温度が目標温度Taに達しているようにヒーター制御が行われ、風量QもQaで維持されるようになっている。
ベルト検出温度Tが目標温度Taまで上昇すると(時点t1)、以後、ヒーター65のオン/オフ切換制御により時点t11までの間、目標温度Taで安定している。なお、同図では、時点t1〜t11の間、グラフ191が直線で示されるが、実際には温度Taを挟んで上下に少し数℃程度振れた状態になっている。
1枚目の用紙SがニップNPを通っている途中で、定着ベルト61の熱が用紙Sに奪われていくことから、ベルト検出温度Tが下がり始める(時点t11以後)。これにより、ヒーター65がオンしたままになるが、ヒーター65の熱供給が追い付かず、ベルト検出温度Tの下降が続く。
ベルト検出温度Tが閾値Thを下回り(時点t12)、その後、1枚目の用紙Sの搬送方向後端(以下、「後端」と略する。)がニップNPを通過すると(時点t2)、分離エアの風量QがQaからQbまで落とされ(時点t2〜t13)、これ以後、風量Qbで維持される。1枚目の用紙Sの後端がニップNPを通過(時点t2)してから、2枚目の用紙Sの先端がニップNPに到達(時点t3)するまでの区間を紙間という。この紙間の時間内で、分離エアの風量QのQaからQbへの低下が完了する。
分離エアの風量QがQbに低下することは、ニップNPに吹き付ける空気の風量が少なくなることに等しいので、Qaのときよりも定着ベルト61の冷却が抑制される。定着ベルト61の熱は、ニップNPを通過する2枚目の用紙Sに奪われるが、分離エアの風量Qの低下とヒーター65のオンによる熱供給の継続により、ベルト検出温度Tが下降から上昇に転じ始める(時点t3〜t14)。
2枚目の用紙Sの後端がニップNPを通過する時点t4に至るまでの間で時点t14で、ベルト検出温度Tが閾値Thまで上昇しており、時点t4には、閾値Thを超えている。その後、ベルト検出温度Tが目標温度Taまで上昇すると(時点t16)、ヒーター65のオン/オフ切換制御により目標温度Taで安定する。
2枚目の用紙Sの後端がニップNPを通過すると(時点t4)、分離エアの風量QがQbからQaまで上げられ(時点t4〜t15)、これ以後、風量Qaに維持される。分離エアの風量QのQbからQbaの上昇は、2枚目の用紙Sの後端がニップNPを通過(時点t4)してから、3枚目の用紙Sの先端がニップNPに到達(時点t5)するまでの間である紙間の時間内で完了する。
3枚目の用紙SがニップNPを通っている途中で、定着ベルト61の熱が用紙Sに奪われていくことから、1枚目の用紙Sと同様に、ベルト検出温度Tが下がり始める(時点t17以後)。ベルト検出温度Tが閾値Thを下回るが(時点t18以後)、その直後に、3枚目の用紙Sの後端がニップNPを通過すると(時点t6)、送風ファン72の停止により、分離エアの風量Qが0に落とされる。本例では、4枚目の用紙Sが存在しないからである。なお、4枚目の用紙Sが存在する場合、2枚目の用紙Sに対する制御と同様の風量切換制御が行われる。
このように本実施の形態において、定着ベルト61の検出温度Tが閾値Th以上の場合、分離エアの風量Qを第1の風量Qaにし、閾値Thを下回ると、分離エアの風量Qを第2の風量Qbに落とす制御を行うのは、次の理由による。
すなわち、ベルト検出温度Tが閾値Th以上の高い場合、用紙SがニップNPを通過すする間に用紙S上のトナー粒子に与えられる熱量が多くなり、溶融により軟化が進み粘着性が高くなった状態のトナー粒子の数が多くなって、定着ベルト61からの用紙Sの分離性が低下し易くなる。これを防止すべく、分離エアの風量QをQaに増加することで、用紙Sの分離性を高めることができる。
一方で、ベルト検出温度Tが閾値Thを下回ると、それだけトナー粒子に与えられる熱量が減って、粘着性が高くなったトナー粒子の数も減少するので、定着ベルト61からの用紙Sの分離性の低下が抑制される。分離性が低下していないのに、分離エアの風量Qが第1の風量Q1のままであれば、風量が多い分、定着ベルト61の冷却が進んで、定着ベルト61の温度をさらに低下させることに繋がる(破線のグラフ193)。定着ベルト61の温度が下がりすぎると、定着性に影響が出るおそれがある。
これを防止すべく、分離エアの風量Qを第2の風量Q2に落とすことで、定着ベルト61の温度のさらなる低下を抑制して、定着性を確保することができる。なお、ベルト検出温度Tが閾値Thよりも低いことから、分離エアの風量Qを第2の風量Q2に落としても、閾値Th以上のときのような用紙Sの分離性の低下が生じることはない。
仮に、定着ベルト61の温度と関係なく、分離エアの風量を定着ベルト61の温度が高いときに適した大きさに決めれば、定着ベルト61の温度が下がり気味になったときには、風量が強すぎることになって定着性が低下してしまう。一方で、定着ベルト61の温度が下がったときに適した大きさに決めれば、定着ベルト61の温度が上がったときには、風量が弱すぎることになって用紙Sの分離性が低下してしまう。
これに対し、本実施の形態では、用紙S上のトナー像(トナー粒子)に直に接する定着ベルト61の検出温度に基づき分離エアの風量を切換制御するので、定着ベルト61の温度と関係なく分離エアの風量を決める構成よりも、用紙Sの定着性と分離性の両方を向上できる。
(4−2)図6と図7は、本実施の形態に係る分離エアの風量制御の処理内容を示すフローチャートである。図6に示すように、分離エアの風量QをQaに設定する(ステップS11)。この設定は、送風ファン72を高速回転することにより行われる。
1枚目の用紙Sの先端を検出したか否かを判断する(ステップS12)。この判断は、用紙検出センサー68aの検出結果により行われる。具体的には、用紙検出センサー68aが用紙Sを検出していないとき、未検出を示す信号(例えばLレベル)を出力し、用紙Sを検出しているとき、検出を示す信号(例えばHレベル)を出力する構成において、検出信号がLレベルからHレベルに切り換わった時点を用紙Sの先端検出とし、検出信号がHレベルからLレベルに切り換わった時点を用紙Sの後端検出とする。
また、用紙検出センサー68aの用紙検出位置からニップNPまでの用紙搬送経路長さL(図2)を用紙搬送速度(システム速度)Vで除した時間をTαとすると、用紙Sの先端検出時から時間Tαの経過時が用紙Sの先端がニップNPの入り口Na(図2)に到達した時刻になる。さらに、ニップNPの用紙搬送経路長さW(図2)を用紙搬送速度Vで除した時間をTβとすると、用紙Sの後端検出時から時間Tα+Tβの経過時が用紙Sの後端がニップNPの出口Nb(図2)を通過した(抜けた)時刻になる。
1枚目の用紙Sの先端を検出したことを判断すると(ステップS12で「Yes」)、温度検出センサー66により検出されたベルト検出温度Tを取得する(ステップS13)。ベルト検出温度Tの取得は、温度検出センサー66の検出結果を一定時間(例えば0.5秒)ごとにサンプリングし、サンプリングした各温度検出値の平均値をとり、その平均値をベルト検出温度Tとすることにより行われる。
ベルト検出温度Tが閾値Thよりも低いか否かを判断する(ステップS14)。ここでは、1枚目の用紙Sの先端がニップNPに至る直前(図5の時点t1直前)では、ベルト検出温度T>閾値Thになるので、ベルト検出温度T<閾値Thではないと判断して(ステップS14で「No」)、ステップS15に進む。
ステップS15では、最後の用紙Sの後端がニップNPを通過したか否かを判断する。ここで、最後の用紙とは、一つのジョブにおいてプリント(画像形成)対象の1枚以上の用紙のうち最後にニップNPを通過する用紙をいう。一つのジョブで1枚の用紙Sにだけプリントする場合、その用紙Sが最後の用紙になり、複数枚、例えば3枚の用紙Sを1枚ずつ間隔を空けて給紙してプリントする場合、3枚目の用紙Sが最後の用紙になる。
プリント対象の用紙Sの枚数は、ジョブごとに決まっているので、ジョブ開始から用紙検出センサー68aにより検出された用紙Sの枚数を監視することにより、最後の用紙SがニップNPに搬送されて来たかを知ることができる。最後の用紙SがニップNPを通過したことは、最後の用紙Sの後端が用紙検出センサー68aで検出されてから時間(Tα+Tβ)の経過したことにより判断される。
ここでは、最後の用紙Sではないとして(ステップS15で「No」)、ステップS13に戻る。最後の用紙の通過が判断されるまで、ステップS13〜S15の処理を繰り返す。
この間、プリント中に定着ベルト61の熱が用紙Sに奪われつつヒーター65の熱供給が追い付かなくなって、定着ベルト61の温度が下降傾向になり(図5の時点t11〜t12)、ベルト検出温度T<閾値Thになったことを判断すると(ステップS14で「Yes」)(図5の時点t12)、現在、通紙中の用紙Sの次に通紙される用紙が存在するか否か、つまり紙間があるか否かを判断する(ステップS16)。
例えば、プリント対象の用紙Sが3枚の場合、現在、通紙中の用紙Sが1枚目であれば、次に通紙される2枚目の用紙Sとの間で紙間(図5の時点t2〜t3)が存在するが、現在、通紙中の用紙Sが3枚目(最後)であれば、次に通紙される4枚目の用紙Sがないので、紙間が存在しないと判断される。
紙間があることを判断すると(ステップS16で「Yes」)、その紙間内で分離エアの風量QをQaからQb(<Qa)に変更する(ステップS17)。紙間は、通紙中の用紙S(例えば1枚目の用紙)の後端がニップNPを抜けてから、次の用紙S(例えば2枚目の用紙)の先端がニップNPに到達するまでの間の時間として判断される。
風量の変更は、通紙中の用紙Sの後端がニップNPを抜けるのと同時に送風ファン72を高速回転から低速回転に切り換える処理が開始され(図5の時点t2)、次の用紙Sの先端がニップNPに到達するまでの時間内に終了する(時点t2〜t13)。なお、次の用紙Sの先端がニップNPに到達することは、その用紙Sの先端が用紙検出センサー68aで検出されてから時間Tαが経過したことで判断される。
そして、ベルト検出温度Tを取得し(ステップS18)、取得した現在のベルト検出温度T≧閾値Thであるか否かを判断する(ステップS19)。分離エアの風量QがQbに落とされたことで定着ベルト61の冷却が抑制され、ヒーター65の熱供給の継続によりベルト検出温度Tが上昇傾向に転じた場合に、ベルト検出温度T≧閾値Thの関係になることがあるからである(図5の時点t13〜t4)。なお、図5の破線のグラフ194で示すように定着ベルト61から用紙Sに奪われる熱が多いことによりベルト検出温度Tが上昇傾向にならない場合もあり得るが、グラフ193のように下降が連続して定着性に影響を与える程度まで定着ベルト61の温度が下がることはない。
ベルト検出温度T<閾値Thの場合(ステップS19で「No」)、最後の用紙Sの後端がニップNPを通過したか否かを判断する(ステップS20)。ここでは、最後の用紙Sではないとして(ステップS20で「No」)、ステップS18に戻る。最後の用紙Sの通過が判断されるまで、ステップS18〜S20の処理を繰り返す。
この間に、ベルト検出温度T≧閾値Thになったことを判断すると(ステップS19で「Yes」)、図7のステップS21で、紙間があるか否かを判断する。例えば、プリント対象の用紙Sが3枚の場合、現在、通紙中の用紙Sが2枚目であれば、次に通紙される3枚目の用紙が存在するので、紙間があると判断される(図5の時点t4〜t5)。
紙間があることを判断すると(ステップS21で「Yes」)、その紙間内で分離エアの風量QをQbからQa(>Qb)に変更する(ステップS22)。この風量の変更は、送風ファン72を低速回転から高速回転に切り換えることにより行われる(図5の時点t4〜t15)。
再度、ベルト検出温度Tを取得し(ステップS23)、取得した現在のベルト検出温度T<閾値Thであるか否かを判断する(ステップS24)。分離エアの風量Qが第1の風量Q1に上げられたことにより、ベルト検出温度Tが下降傾向に転じることがあるからである(図5の時点t17〜t18)。
ベルト検出温度T≧閾値Thの場合(ステップS24で「No」)、最後の用紙Sの後端がニップNPを通過したか否かを判断する(ステップS25)。ここでは、最後の用紙Sではないとして(ステップS25で「No」)、ステップS23に戻る。最後の用紙Sの通過が判断されるまで、ステップS23〜S25の処理を繰り返す。
この間に、ベルト検出温度T<閾値Thになったことを判断すると(ステップS24で「Yes」)(図5の時点t18)、紙間があるか否かを判断する(ステップS27)。紙間がないと判断すると(ステップS27で「No」)、ステップS28に進む。例えば、プリント対象の用紙Sが3枚の場合、現在、通紙中の用紙Sが3枚目であれば、紙間がないと判断される(図5の時点t6)。
ステップS28では、最後の用紙Sの後端がニップNPを通過したか否かを判断する。上記の例では、最後の用紙Sが3枚目の用紙Sになり、この3枚目の用紙Sの後端がニップNPを通過したことを判断すると(ステップS28で「Yes」)、分離エアの風量Qを0に設定して(ステップS26)、当該分離エアの風量制御を終了する。風量Qを0に設定することは、送風ファン72を停止することにより行われる(図5の時点t6)。
ステップS15、S20、S25で、最後の用紙Sの後端がニップNPを通過したことを判断すると(S15で「Yes」、S20で「Yes」、S25で「Yes」)、ステップS26に進む。これにより、送風ファン72が停止される。
ここで、ステップS20で「Yes」と判断されるのは、ステップS19でベルト検出温度T≧閾値Thの関係にならなかった場合、すなわちベルト検出温度Tが図5のグラフ194のように推移した場合である。この場合、図5の破線のグラフ195に示すように分離エアの風量Qは、Qbのまま継続され、その後、時点t6で送風ファン72が停止される。
また、ステップS16、S21で、紙間がないと判断すると(S16で「No」、S21で「No」)、ステップS28に進む。これにより、最後の用紙Sの後端がニップNPを通過すると、送風ファン72が停止される。さらに、ステップS27で紙間があることを判断すると(ステップS27で「Yes」)、ステップS17に進み、ステップS17以降の処理を実行する。例えば、4枚目の用紙Sが存在する場合、3枚目と4枚目の用紙Sの紙間内で分離エアの風量QがQbに落とされる(ステップS17)。この紙間内でのQbへの低下は、1枚目と2枚目の用紙の紙間(図5の時点t2〜t3)における風量Qbへの低下と同じである。
以上説明したように本実施の形態では、定着ベルト61の表面温度に基づき分離エアの風量の大小を切り換えるので、用紙Sの定着性と分離性の両方を従来よりも向上することができる。
また、紙間の時間内でのみ分離エアの風量低下(QaからQb)または風量上昇(QbからQa)の実行を開始しかつその風量変化を完了させるので、用紙SがニップNPを通っている途中で分離エアの風量を変化させる場合よりも、安定した定着性を維持できる。
具体的には、用紙SがニップNPを通っている間に分離エアの風量を変化させた場合、その風量変化の前後で定着ベルト61の温度に変化が生じ、例えば用紙Sの先端側と後端側とで定着性が変わってしまうおそれがある。
これに対して、本実施の形態のように紙間の時間内でのみ分離エアの風量変化を開始しかつ完了させれば、1枚の用紙Sごとに、その先端がニップNPに至ってからその後端がニップNPを通過するまでの間、分離エアの風量が一定になるので、先端から後端までの用紙全体に亘って同程度の定着性を確保できる。
<実施の形態2>
〔1〕上記実施の形態1では、形成画像の光沢性について特に触れていなかったが、本実施の形態2では、光沢を重視する光沢モードでは、分離エアの風量Qを下げる場合、第1の風量Qaから第2の風量Qbに一度に下げるのではなく、段階的に下げるとしており、この点で実施の形態1と異なっている。以下、説明の重複を避けるため、実施の形態1と同じ内容についてはその説明を省略し、同じ構成要素については、同符号を付すものとする。
図8は、実施の形態2に係る分離エアの風量制御を説明するためのタイミングチャートであり、3枚連続通紙の実行中におけるベルト検出温度Tと分離エア風量Qの変化の様子の例を示している。
ここで本例では、ベルト検出温度Tが時点t3以降、Tb(<Th)のまま推移しており(グラフ194で示す部分)、3枚目の用紙SがニップNPを通っている途中から少し上昇気味になっている。ベルト検出温度Tが閾値Thよりも少し低い温度Tbで推移しているのは、1枚目と2枚目の用紙Sに定着ベルト61の熱が多く奪われたためにヒーター65の熱供給が追い付けなくなったことによる。例えば、ニップNPを通紙される用紙Sが厚紙の場合、普通紙や薄紙よりも厚みが厚い分、熱容量が大きく、ニップNPを通過する間に定着ベルト61の熱が多く吸収される(奪われる)場合などが想定される。
ユーザーにより操作パネル20から光沢モードが指定されると、1枚目と2枚目の用紙Sの紙間(時点t2〜t3)において分離エアの風量Qが第1の風量Qaから第3の風量Qcに落とされる(時点t2〜t23)。ここで、第3の風量Qcは、次の大小関係を満たす。第1の風量Qa>第3の風量Qc>第2の風量Qb。風量Qcは、送風ファン72の上記中速回転時の風量に相当する。
光沢モードが指定されない場合に、紙間における分離エアの風量Qの低下量(差分)を実施の形態1と同じΔQ1(=Qa−Qb)とすれば、光沢モードが指定された場合、紙間における分離エアの風量Qの低下量(差分)がΔQ2(=Qa−Qc)になり、光沢モードが指定されない場合の低下量ΔQ1よりも少なくなる。これは、次の理由による。
すなわち、連続通紙される1枚目(先行)の用紙Sに対する風量と2枚目(後続)の用紙に対する風量との差分(風量変化)ΔQが大きくなるほど、ニップNPから出た直後の1枚目の用紙上におけるトナーの温度低下の速度と、2枚目の用紙上におけるトナーの温度低下の速度とに差が生じる。
このトナーの温度低下の速度差がトナー粒子の冷却速度の差になって、1枚目と2枚目とで用紙上のトナー像の光沢度に差を生じさせ、これが光沢性の低下に繋がり易い。そこで、風量変化ΔQが少なくなるように、光沢モードが指定された場合、分離エアの風量Qを第1の風量Qaから第3の風量Qcに切り換えるものである。
連続通紙される2枚目と3枚目の用紙Sの紙間(時点t4〜t5)でも分離エアの風量Qを低下させる場合、2枚目(先行)の用紙Sと3枚目(後続)の用紙Sに対する風量変化ΔQが少なくなるように、分離エアの風量QがQcからQbに落とされる(時点t4〜t25)。この低下量ΔQ3(=Qc−Qb)も、光沢モードが指定されない場合の低下量ΔQ1(=Qa−Qb)よりも少ない。
このように光沢モードが指定された場合、シートの分離性と定着性を確保できる範囲内で、光沢モードが指定されない場合よりも紙間における分離エアの風量変化ΔQが小さくなるように、風量QaとQbの一方または両方の大きさを変更することで、紙間を挟んで先行の用紙と後続の用紙との間での形成画像の光沢度の差が抑制され、その分、光沢性の向上を図れる。
なお、分離エアの風量がQbに落とされると(時点t25)、以後、ベルト検出温度Tが上昇傾向に転じている。分離エアの風量Qbへの低下により、定着ベルト61の冷却がその風量低下前よりも抑制されて、ヒーター65の熱供給が追い付くようになっていくからである。
〔2〕図9は、実施の形態2に係る分離エアの風量制御の処理内容を示すフローチャートであり、この風量制御は、ジョブ毎に実行される。同図に示すように光沢モードが選択されているか否かを判断する(ステップS30)。この判断は、ユーザーが操作パネル20で当該ジョブに対して光沢モードの実行を指定したか否かにより行われる。
光沢モードが選択されていないことを判断すると(ステップS30で「No」)、第1風量制御を実行して(ステップS31)、当該制御を終了する。第1風量制御は、図6と図7で示す実施の形態1に係る風量制御と同じ制御である。ここでの説明は、省略する。
一方、光沢モードが選択されていることを判断すると(ステップS30で「Yes」)、第2風量制御を実行して(ステップS33)、当該制御を終了する。
図10は、第2風量制御の処理内容を示すフローチャートである。同図は、図6と図7で示す風量制御に対して一部が異なる制御になっている。具体的には、ステップS16とS18の間にS17に代えてS51が実行され、ステップS19とS20の間にS52、S53が実行されるようになっている。
ステップS16で紙間、ここでは1枚目と2枚目の用紙Sの紙間(図8の時点t2〜t3:1回目)がありと判断されると(ステップS16で「Yes」)、その紙間内で分離エアの風量QをQcに落とす(ステップS51)(図8の時点t2〜t23)。以後、ベルト検出温度T<閾値Thと判断し(ステップS19で「No」)、次の紙間(2回目)があるか否かを判断する(ステップS52)。ここでは、図8の時点t3〜t4でベルト検出温度T<閾値Thの関係を満たし、次の紙間として、2枚目と3枚目の用紙Sの紙間(図8の時点t4〜t5)があると判断する。
次の紙間があることを判断すると(ステップS52で「Yes」)、その紙間内で分離エアの風量QをQcからQbに落として(ステップS53)(図8の時点t4〜t25)、ステップS20に進む。
最後の用紙後端がニップNPを通過するまでの間、ベルト検出温度T<閾値Thの関係を満たす場合、ステップS18、S19、S52、S53、S20の一連の処理が繰り返されるが、分離エアの風量QがQbになっていれば、そのままQbが維持される。つまり、3回目、4回目・・・の紙間が存在しても、分離エアの風量QはQbのままになる。分離エアの風量Qを落としすぎると、用紙Sの定着ベルト61からの分離性が低下するおそれがあるからである。
このように分離エアの風量Qを、1回目の紙間でQaからQcに落とし、2回目の紙間でQcからQbに落とすという2段階の風量低下を行うことで、1枚目から3枚目までの各用紙Sに形成された画像の光沢性の低下を抑制することができる。
なお、上記では、第2風量制御をユーザーからの光沢モードの指定を受け付けたことを契機に実行するとしたが、これに限られない。ユーザーによる手動の受け付けに代えて、例えば領域判別部109(図3)により算出された、1枚の用紙におけるベタ画像の面積比率Uが所定値を超えた場合に、光沢モードを自動選択するとしても良い。この自動選択も、ユーザーによる手動の受け付けと同様に、光沢モードを受け付ける受付手段に含まれる。ベタ画像は、文字画像よりも通常、人の目に映り易く、ベタ画像の光沢性が1枚目の用紙Sと次の2枚目や3枚目の用紙Sとで差が出すぎると、その差が目立ち易くなって、画質低下と感じさせてしまうおそれがあるからである。
〔3〕実施の形態2の変形例1
上記では、分離エアの風量低下を紙間の時間内でのみ実行するとしたが、例えば図11に示すように紙間に加えて用紙SがニップNPを通っている間にも実行することもできる。図11は、1回目の紙間の開始時(時点t2)、つまり1枚目の用紙Sの後端がニップNPを通過した(出た)時点から3枚目(最後)の用紙Sの後端がニップNPを通過(時点t6)するまでの間に亘って、風量Qを漸次低下させて行く例を示している。
上記のように用紙SがニップNPを通っている間に風量低下を行うと、定着性に影響を与えるおそれがあるが、シートの分離性と定着性および光沢性を確保できる範囲内で風量の下降率(単位時間当たりの風量変化量:風量の変化率)、つまり同図のグラフ192aの傾きを予め実験などで決めることができる。
図12は、本変形例1に係る分離エアの風量制御の内容を示すフローチャートであり、図10のフローチャートと一部が異なる制御になっている。具体的には、ステップS51に代えてS61が実行され、ステップS52、S53に代えてS62、S63が実行されるようになっている。
ステップS61では、紙間に入ると、分離エアの風量Qを一定割合で低減を開始させる(図11の時点t2)。この風量低下の一定割合は、上記の風量の下降率(グラフ192aの傾き)に相当し、風量Qがこの下降率で下がって行くように、送風ファン72への供給電圧が少しずつ下げられる。送風ファン72への供給電圧の下降率(単位時間当たりの電圧変化量)は、予め実験などにより決められる。
以後、ベルト検出温度T<閾値Thと判断すると(ステップS19で「No」)、現在の分離エアの風量Q>Qbの関係を満たしているか否かを判断する(ステップS62)。この判断は、次の(式1)の関係を満たすか否を判断することにより行われる
Qa−(I×ti)>Qb・・・(式1)
ここで、Iは、風量の単位時間当たりの下降率(グラフ192aの傾き)を示し、tiは、分離エアの風量の下降開始(時点t2)から現在までの経過時間を示す。(式1)の左辺が現在の風量Qに相当する。この下降率Iは、光沢モードではない通常の第1風量制御時における風量の下降率(図5の時点t2〜t13のグラフの傾き)よりも小さい。
風量Q>Qbの関係を満たしていると判断すると(ステップS62で「Yes」)、分離エアの風量Qの低下を継続して、ステップS20に進む。最後の用紙後端がニップNPを通過していなければ(ステップS20で「No」)、ステップS18に戻って、ベルト検出温度T<閾値Thであれば(ステップS19で「No」)、再度、ステップS62を実行する。最後の用紙後端がニップNPを通過しておらず(ステップS20で「No」)、ベルト検出温度T<閾値Thであれば(ステップS19で「No」)、風量Q>Qbの関係を満たさなくなるまで、つまり風量Q≦Qbの関係を満たすまでの間、ステップS18、S19、S62、S20の処理が繰り返し実行され、分離エアの風量Qの漸次低下が継続される(図11の時点t2〜t6)。
風量Q≦Qbの関係を満たしたことを判断すると(ステップS62で「No」)、分離エアの風量QをQbで固定して(ステップS63)(図11の時点t6)、ステップS20に進む。以後、分離エアの風量Qは、最後の用紙後端がニップNPを通過するまでの間(ステップS20で「Yes」と判断されるまでの間)、Qbに維持される。
紙間の時間が短く、かつその短い紙間の時間内で送風ファン72の風量低下を完了できないような構成では、本変形例1の制御を用いることで、分離エアの風量Qの低下を安定して行うことができる。
〔4〕実施の形態2の変形例2
上記では、分離エアの風量Qを段階的に低下する構成例を説明したが、例えば図13に示すように分離エアの風量Qを段階的に上げて行く構成とすることもできる。同図は、3枚目の用紙Sの先端がニップNPに至った時点t5以降、ベルト検出温度Tが目標温度Taで推移している例を示している。これは、定着ベルト61の熱が用紙Sにあまり奪われることなく、ヒーター65から定着ベルト61への熱供給が十分であることによる。例えば、ニップNPを通紙される3枚目以降の用紙Sが薄紙の場合などが想定される。
ベルト検出温度T>閾値Thの関係を満たしており、2枚目の用紙Sと3枚目の用紙Sとの紙間(時点t4〜t5)内で分離エアの風量QがQbからQdに上昇し、3枚目の用紙Sと4枚目の用紙Sとの紙間(時点t6〜t7)内で分離エアの風量QがQdからQaに上昇している。ここで、Qb<Qd<Qaの関係を有する。最後である4枚目の用紙Sの後端がニップNPを通過した時点t8で分離エアの風量Qが0にされる。
実施の形態1のように1回の紙間内において分離エアの風量QをQbからQaに一度に上昇する構成よりも、本変形例2のように1回の紙間内における風量の上昇幅を少なくすることで、先行する用紙Sと後続の用紙Sとの間での光沢性の差が少なくなり、その分、光沢性の向上を図れる。
図14は、本変形例2に係る分離エアの風量制御の処理内容を示すフローチャートであり、図6と図7のフローチャートと一部が異なる制御になっている。具体的には、ステップS22に代えてS71が実行され、ステップS24、S25の間にS72、S73が実行される。
ステップS21において、紙間、ここでは2枚目と3枚目の用紙Sの紙間(図13の時点t4〜t5:2回目)がありと判断されると(ステップS21で「Yes」)、その紙間内で分離エアの風量QをQbからQd(<Qa)に上げる(ステップS71)(図13の時点4〜t31)。以後、ベルト検出温度T≧閾値Thと判断し(ステップS24で「No」)、次の紙間(3回目)があるか否かを判断する(ステップS72)。ここでは、次の紙間として、3枚目と4枚目の用紙Sの紙間(図13の時点t6〜t7)があると判断する。
次の紙間があることを判断すると(ステップS72で「Yes」)、その紙間内で分離エアの風量QをQdからQaに上げて(ステップS73)(図13の時点t6〜t32)、ステップS25に進む。
最後の用紙Sの後端がニップNPを通過するまでの間、ベルト検出温度T≧閾値Thの関係を満たす場合、ステップS23、S24、S72、S73、S25の一連の処理が繰り返されるが、分離エアの風量QがQaになっていれば、そのままQaが維持される。つまり、4回目、5回目・・・の紙間が存在しても、分離エアの風量QはQaのままになる。分離エアの風量Qを上げすぎると、定着ベルト61が冷却されすぎて定着性が低下するおそれがあるからである。
このように分離エアの風量Qを、シートの分離性と定着性を確保できる範囲内で、2枚目と3枚目の用紙Sの紙間内でQbからQdに上げ、次の3枚目と4枚目の用紙Sの紙間内でQdからQaに上げるという2段階の小刻みの風量上昇を行うことで、3枚目と4枚目の各用紙Sに形成された画像の光沢性の低下を抑制することができる。
〔5〕実施の形態2の変形例3
上記変形例2では、分離エアの風量上昇を紙間の時間内でのみ実行するとしたが、例えば図15に示すように紙間に加えて用紙SがニップNPを通っている間にも実行することもできる。図15は、2回目の紙間の開始時(時点t4)から4枚目(最後)の用紙Sの後端がニップNPを通過(時点t8)するまでの間に亘って、風量Qを漸次上昇させて行く例を示している。
上記の変形例1と同様に、用紙SがニップNPを通っている間に風量変化を行うと、定着性に影響を与えるおそれがあるが、シートの分離性と定着性および光沢性を確保できる範囲内で風量の上昇率(単位時間当たりの風量変化量:風量の変化率)、つまり同図のグラフ192bの傾きを予め実験などで決めることができる。
図16は、本変形例3に係る分離エアの風量制御の処理内容の一部を示すフローチャートであり、図14のフローチャートと異なる部分を示している。具体的には、ステップS71に代えてS81が実行され、ステップS72、S73に代えてS82、S83が実行される。
ステップS81では、紙間に入ると、分離エアの風量Qを一定割合で上昇を開始させる(図15の時点t4)。この風量上昇の一定割合は、風量の上昇率(図15のグラフ192bの傾き)に相当し、風量Qがこの上昇率で下がって行くように、送風ファン72への供給電圧が少しずつ上げられる。送風ファン72への供給電圧の上昇率(単位時間当たりの電圧変化量)は、予め実験などにより決められる。
以後、ベルト検出温度T≧閾値Thと判断すると(ステップS24で「No」)、現在の分離エアの風量Q<Qaの関係を満たしているか否かを判断する(ステップS82)。この判断は、次の(式2)の関係を満たすか否を判断することにより行われる
Qb+(J×tj)<Qa・・・(式2)
ここで、Jは、風量の単位時間当たりの上昇率(グラフ192bの傾き)を示し、tjは、分離エアの風量の上昇開始(時点t4)から現在までの経過時間を示す。(式2)の左辺が現在の風量Qに相当する。この上昇率Jは、光沢モードではない通常の第1風量制御時における風量の上昇率(図5の時点t4〜t15のグラフの傾き)よりも小さい。
風量Q<Qaの関係を満たしていると判断すると(ステップS82で「Yes」)、分離エアの風量Qの上昇を継続して、ステップS25に進む。最後の用紙Sの後端がニップNPを通過していなければ(ステップS25で「No」)、ステップS23に戻って、ベルト検出温度T≧閾値Thであれば(ステップS24で「No」)、再度、ステップS82を実行する。最後の用紙Sの後端がニップNPを通過しておらず(ステップS25で「No」)、ベルト検出温度T≧閾値Thであれば(ステップS24で「No」)、風量Q<Qaの関係を満たさなくなるまで、つまり風量Q≧Qaの関係になるまでの間、ステップS23、S24、S82、S25の処理が繰り返し実行され、分離エアの風量Qの漸次上昇が継続される(図15の時点t4〜t8)。
風量Q≧Qaの関係を満たしたことを判断すると(ステップS82で「No」)、分離エアの風量QをQaで固定して(ステップS83)(図15の時点t8)、ステップS25に進む。以後、分離エアの風量Qは、最後の用紙後端がニップNPを通過するまでの間(ステップS25で「Yes」と判断されるまでの間)、Qaに維持される。
紙間の時間が短く、かつその短い紙間の時間内で送風ファン72の風量上昇を完了できないような構成では、本変形例3の制御を用いることで、分離エアの風量上昇を安定して行うことができる。
〔6〕実施の形態2の変形例4
上記では、第1風量制御と第2風量制御の切り換えを、ユーザーによる操作パネル20からの光沢モードの指定の有無により行うとしたが、これに代えて、例えば使用する用紙として光沢紙が選択された場合に、光沢モードの指定があったとして第2風量制御を実行する構成とすることもできる。
具体的には、給紙トレイユニット51a〜51cにどの種類(普通紙、厚紙、薄紙、光沢紙など)の用紙が収容されているかをユーザーが予め登録しておき、ジョブを実行するユーザーが光沢紙の収容されている給紙トレイユニットを選択した場合に第2風量制御を実行する。なお、給紙トレイユニットに収容されている用紙の種類をユーザーが登録するのではなく、光学センサーまたは超音波センサー等で自動的に用紙種類を検出する構成をとることもできる。
〔7〕その他の変形例
上記では、変形例1に係る風量の下降率I、変形例3に係る風量の上昇率Jのそれぞれについて、予め決められた一つの値としたが、これに限られない。
例えば、ベタ画像の面積比率Uが所定値以下の場合、風量の変化率R(下降率Iまたは/および上昇率J)を第1の値とし、この所定値を超える場合、風量の変化率Rを第1の値よりも小さな第2の値に切り換える制御をとることもできる。シートの分離性と定着性を確保できる範囲内で、ベタ画像の面積比率Uが多いほど風量の変化率Rを小さくすることで、シートの分離性と定着性を確保しつつ形成画像の光沢性の低下を抑制できる。
また、連続通紙する用紙Sの枚数が多いほど、風量の変化率Rを小さくすることもできる。さらに、光沢性に影響を与えないような場合には、分離エアの風量の切り換えを紙間以外の区間、つまり用紙SがニップNPを通っている間にのみ行う構成もあり得る。
上記では、光沢モードが選択されている場合の第2風量制御において、用紙SがニップNPを通っている間と紙間の両方の区間に亘って分離エアの風量を漸次変化(下降または上昇)させる制御を説明した。この制御は、第2風量制御に限られず、例えば光沢モードが選択されていない場合の第1風量制御にも適用できる。
具体的には、第1風量制御における風量の変化率RをRaとすると、第2風量制御における風量の変化率RがRb(<Ra)になるように、実行する風量制御に応じて変化率Rの値を切り換える。形成画像の光沢性を考慮して、第2風量制御の方が第1風量制御よりも変化率Rが緩やかにされる。変化率Rには、下降率I、上昇率Jの一方または両方が含まれる。具体的には、第1風量制御における風量の下降率IがIaの場合、第2風量制御における風量の下降率IがIb(<Ia)になり、第1風量制御における風量の上昇率JがJaの場合、第2風量制御における風量の上昇率JがJb(<Ja)になる。
上記では、定着装置および画像形成装置について説明したが、これに限られず、分離エアの風量を制御する方法であるとしてもよい。また、その方法をコンピュータが実行するプログラムであるとしてもよい。さらに、このプログラムは、例えば磁気ディスク、DVD−ROMなどの光記録媒体、フラッシュメモリ系記録媒体等、コンピュータ読み取り可能な各種記録媒体に記録することが可能であり、当該記録媒体の形態で生産、譲渡等がなされる場合もあるし、プログラムの形態でインターネットを含む有線、無線の各種ネットワーク、放送、電気通信回線、衛星通信等を介して伝送、供給される場合もある。
<変形例>
以上、実施の形態に基づいて説明してきたが、本開示は、上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例が考えられる。
〔1〕上記実施の形態1では、N枚目の用紙SがニップNPを通っている間にベルト検出温度Tが低下して閾値Thを下回った場合に、N枚目の用紙Sの後端がニップNPを通過すると(出ると)(図5の例において時点t2)、これと同時に分離エアの風量の低下を開始するとしたが、これに限られない。例えば、定着性に影響を与えなければ、分離エアの風量の低下開始をもう少し後ろにずらす制御をとることもできる。具体的には、分離エアの風量の低下開始を時点t2から所定時間、例えば1秒だけ遅らせることができる。また、用紙Sの先端がニップNPよりも搬送方向下流側の用紙検出センサー68bで検出されてから分離エアの風量の低下を開始する制御をとることもできる。
また、所定枚数の用紙SがニップNPを通過するのを待って、分離エアの風量の低下を開始する制御をとることもできる。例えば、所定枚数が1枚の場合、先行(N枚目)の用紙Sの次に搬送されて来る後続((N+1)枚目)の用紙Sの後端がニップNPを通過するまでの間、分離エアの風量をQaのままにして、後続の用紙Sの後端がニップNPを通過した(出た)時点で、分離エアの風量をQaからQbに低下する動作を開始することができる。
さらに、例えば後続の用紙Sの後にさらにM(1以上の整数)枚の用紙Sが順次、搬送されて来る場合には、後続の用紙Sの後端がニップNPを通過後、当該M以下の所定枚数の用紙SがニップNPを通過してから風量の切り換えを開始することもできる。Mが1枚の場合、所定枚数も1枚になり、後続の用紙Sの次の用紙Sの後端がニップNPを通過してから風量の切り換えが開始される。また、Mが2枚であり所定枚数が2枚の場合、後続の用紙Sの次に搬送されて来る用紙SがニップNPを通過し、その用紙Sの次に搬送されて来る用紙Sの後端がニップNPを通過してから風量の切り換えが開始される。Mが2枚であり、所定枚数が1枚の場合、後続の用紙Sの次の用紙Sの後端がニップNPを通過してから風量の切り換えが開始される。
分離エアの風量の上昇についても同様に、用紙の分離性に影響を与えなければ、分離エアの風量の上昇開始を後ろにずらす制御をとることもできる。後ろにずらす量については、分離エアの風量低下と同様に所定時間または所定枚数を適用できる。
〔2〕上記実施の形態1では、分離エアの風量を上昇させる場合(図5の時点t4〜t15)、Qaを最大の風量とする構成例を説明したが、これに限られない。搬送方向先端にトナー画像が形成されている用紙Sについては、分離エアの風量を通常のQaよりもさらに多い風量Qe(図5の破線)に切り換える構成をとることもできる。
定着ベルト61の表面からの用紙Sの分離性は、用紙先端にトナー像が形成されていない場合よりも形成されている場合の方が低下する。これは、用紙先端にトナー画像が形成されていない場合、用紙先端は、分離エアに加えて、真っすぐな姿勢に戻ろうとする用紙自身の復元力によるいわゆる曲率分離の作用で分離し易くなる。これに対し、用紙先端にトナー画像が形成されている場合、ニップNPを通過中に溶融状態になったトナー粒子が用紙先端と定着ベルト61の表面との間に介在して両者を引っ付ける力が作用して、トナー画像が形成されていない場合よりも分離し難くなるからである。特に、用紙先端に形成されているトナー画像の濃度が高い、具体的には文字画像よりも写真画像などを含むベタ画像の方がシートの分離性が低下し易い。
そこで、現にニップNPを通っているN枚目(図5の例では2枚目)の用紙Sの次に、ニップNPに搬送されて来る(N+1)枚目(図5の例では3枚目)の用紙Sがその先端部にトナー画像が形成されている用紙の場合または形成されているトナー画像がベタ画像の用紙の場合、分離エアの風量をN枚目の用紙Sに対する風量Qaよりも多いQeに、N枚目と(N+1)枚目の用紙Sの紙間内(図5の例では時点t4〜t5)で切り換える制御をとれば、(N+1)枚目の用紙Sの分離性を向上できる。
図17は、風量QをQaとQeに切り換える制御の例を示すフローチャートの一部を示す図であり、図7のフローチャートの一部が異なっている。すなわち、ステップS21と23の間にステップS91、S92を実行する。
具体的には、次の用紙S、つまり(N+1)枚目の用紙Sの先端に画像があるか否かを判断する(ステップS91)。この判断は、(N+1)枚目の用紙Sに形成すべき画像データに基づき、搬送方向先端から搬送方向後端に向かって所定範囲(例えば10mm)内にベタ画像が存在するか否かにより行われる。なお、用紙Sの先端に存在する画像は、ベタ画像に限られず、例えば文字画像などでも良い。
用紙先端に画像がないことを判断すると(ステップS91で「No」)、次の紙間内で分離エアの風量QをQaに上昇させ(ステップS22)、ステップS23に進む。この処理は、実施の形態1と同じである。
一方、用紙先端に画像があることを判断すると(ステップS91で「Yes」)、次の紙間内で分離エアの風量QをQe(>Qa)に上昇させ(ステップS92)、ステップS23に進む。ベルト検出温度Tが閾値Th以上の場合に適用される分離エアの風量Qの第1の値が、用紙Sの先端に画像がある第1の場合には、用紙Sの先端に画像がない第2の場合におけるQaから、これよりも大きいQeに変更され、変更後の風量Qeが用いられる。
なお、風量QのQeへの上昇に要する時間Teが紙間の時間Tpよりも長くかかる場合には、時間Tpを通常時の基準値として、風量上昇が完了した時点以降に、次の(N+1)枚目の用紙SがニップNPに到達するように、紙間を基準値から拡張する制御をとることもできる。紙間の拡張は、次の用紙Sの搬送を制御、具体的には次の用紙Sのレジストローラー対53aによる搬送を通常よりも遅らせることで実行される。なお、この遅延を行う場合、画像形成部40によるY、M、C、Kの各色画像の形成タイミングも同じ時間だけ遅延される。
図18は、紙間を拡張して分離エアの風量QをQeに上昇させる制御の例を示すフローチャートであり、図17のフローチャートと異なる部分を示している。すなわち、ステップS91と92の間にステップS95〜S97を実行する。
具体的には、次の用紙Sの先端に画像があることを判断すると(ステップS91で「Yes」)、分離エアの風量QがQbからQeに上昇するのに要する時間Teを取得する(ステップS95)。ここで、時間Teは、予め実験などで求められて記憶されている。
時間Te≦紙間の時間Tpか否かを判断する(ステップS96)。ここで、紙間の時間Tpは、基準値、つまり紙間が拡張されていない場合の時間であり、予め決められている。時間Te≦時間Tpであることを判断すると(ステップS96で「Yes」)、ステップS92に進む。この場合は、図17に示す処理と同じになる。
一方、時間Te>時間Tpであることを判断すると(ステップS96で「No」)、次の用紙SのニップNPへの搬送タイミングを遅延させて(ステップS97)、ステップS92に進む。この遅延は、定着制御部122がエンジン主制御部121に指示することで実行される。遅延時間は、時間TeとTpの差分になる。具体的には、レジストローラー対53aが次の用紙Sを搬送する通常時のタイミングを時点txとすると、紙間の拡張時には、時点txから(時間TeとTpの差分)だけ経過した時点tyで、次の用紙Sの搬送を開始する。
このようにすれば、図19に示す分離エアの風量Qの推移を示すグラフ199のように、基準の紙間の時間Tp(時点t4〜t5)よりも、時間TeとTpの差分だけ長い時間Tp1(時点t4〜t33)に紙間が拡張される。この時間Tp1は、分離エアの風量QをQbからQeに上昇するのに要する時間Teに等しいので、拡張後の紙間内で分離エアの風量QをQbからQeに上昇させることができる。これにより、3枚目の用紙S(次の用紙)の先端がニップNPに到達する時点で、分離エアの風量Qeへの上昇が完了していることになる。
上記では、紙間の時間Tpを基準値で一定としたが、これに限られない。装置構成によっては、搬送される用紙サイズに応じて紙間Tpの時間が異なるように給紙搬送制御が行われるものがあり、このような構成では、ステップS96において用紙サイズに応じた紙間Tpが適用される。用紙サイズに応じて紙間Tpが異なるのは、大サイズ(A3やB4)の用紙Sは、小サイズ(A4やB5)の用紙Sよりも1枚の用紙面積が多い分、1枚の用紙Sに奪われる熱量が多くなるので、小サイズの用紙Sの紙間(基準)よりも、大サイズの用紙Sについての紙間を基準よりも少し長い時間にすることで、大サイズの用紙Sについて一定以上の定着性を確保できるからである。
また、図19では、分離エアの風量Qeへの上昇が完了した時点と3枚目の用紙Sの先端がニップNPに到達する時点とが一致する例を説明したが、これに限られない。例えば、分離エアの風量Qeへの上昇が完了した時点からある時間(1秒など)だけ遅れて3枚目の用紙Sの先端がニップNPに到達するように、3枚目の用紙Sの搬送タイミングを遅延させるとしても良い。
〔3〕上記実施の形態では、図5に示すように用紙SがニップNPを通っている間には、分離エアの風量Qを変化させないことで、その用紙Sの搬送方向の先端側と後端側とでトナー画像の定着性に差が出ないようにした。
しかし、画質低下に至ることがないような場合には、例えば、1枚目の用紙SがニップNPを通っている間にベルト検出温度Tが閾値Thを下回ると(時点t12)、その間に、つまり1枚目の用紙Sの後端がニップNPを出るよりも前に、分離エアの風量QをQaからQbに落とす構成をとることもできる。また、2枚目の用紙SがニップNPを通っている間にベルト検出温度Tが閾値Th以上になると(時点t14)、その間に、つまり2枚目の用紙Sの後端がニップNPを出るよりも前で、分離エアの風量QをQbからQaに上げる構成をとることもできる。上記のいずれの構成をとる場合でも、ベルト検出温度Tが閾値Th以上になったことを契機に分離エアの風量QをQa(第1の値)に切り換え、ベルト検出温度Tが閾値Thよりも低くなったことを契機に分離エアの風量QをQaよりも小さいQb(第2の値)に切り換える制御が実行される構成といえる。
〔4〕上記実施の形態では、1枚の用紙Sごとに、用紙Sの先端がニップNPの入り口Naに至ってから当該用紙Sの後端がニップNPの出口Nbを通過するまでの間に亘って分離エアを吹き付ける構成例を説明した。これは、用紙Sの搬送方向先端だけではなく、用紙Sの先端から後端までの間のどの位置でも定着ベルト61からの分離性を向上させるためであるが、これに限られない。
例えば、用紙Sの先端だけについて分離エアを適用すれば、1枚の用紙Sに対する分離性を確保できるような場合には、用紙Sの先端がニップNPを出た直後までは分離エアを吹き付け、その後、分離エアの吹き付けを終了する構成とすることもできる。この構成をとる場合、次の用紙Sの先端がニップNPに至るタイミングに合わせて分離エアの吹き付けが再開される。分離エアの吹き付け終了は、例えば用紙Sの先端がニップNPの出口Nbから所定距離、例えば5〜10mmmまで搬送された時点とすることができる。
〔5〕上記実施の形態では、定着ベルト61の温度の検出結果により分離エアの風量Qを切り換えるとしたが、定着ベルト61の温度に限られず、例えば加圧ローラー64(加圧部材)の検出温度を用いることもできる。加圧ローラー64(加圧部材)は、ニップNPで定着ベルト61に圧接されており、定着ベルト61の熱が直に伝達されるので、定着ベルト61の温度変化に加圧ローラー64の温度変化が連動するからである。
また、シートS上のトナー像などの画像に直に接してこれを熱定着する定着部材として定着ベルト61を用いる構成例を説明したが、回転体としてのベルト状のものに限られず、例えばローラー状のもの、具体的には定着ローラーを用いる構成にも適用できる。
さらに、定着部材との間でニップを形成する加圧部材としては、回転体に限られず、非回転体、例えばパッド状の定着パッドなどを用いる構成にも適用できる、
また、定着部材を加熱するヒーターとして、ハロゲンヒーター65を用いる構成例を説明したが、これに限られない。ハロゲンヒーターに代えて、赤外線ヒーターや電熱線など他の方式のヒーターを用いることもできる。また、定着部材は、シート上の画像を定着するための熱を発するものであれば良く、例えば電力供給により発熱する抵抗発熱体が設けられたものや、電磁誘導により発熱する、いわゆるIH(Induction Heating)方式によるものも含まれる。さらに、ニップNPに空気(分離エア)を吹き付ける送風部70にファンモーターである送風ファン72を用いる例を説明したが、これに限られず、例えば圧縮機などで分離エアを吹き付ける構成でも良い。
〔6〕上記実施の形態では、本開示に係る画像形成装置をタンデム型カラー複合機に適用した場合の例を説明したが、これに限られない。加熱される定着部材とこれに圧接される加圧部材との間に形成されるニップNPにシートSを通紙して、当該シートS上の画像を熱定着する構成の定着装置およびこれを備える画像形成装置に適用できる。
画像形成装置としては、カラー画像形成を実行可能なものやモノクロ画像形成のみが実行可能なものに適用でき、また複合機に限られず、例えばプリンター、複写機、ファクシミリ装置等の画像形成装置に適用できる。上記の各部材の大きさ、形状、材料、個数などは一例であり、装置構成に応じて適した大きさ、形状、材料、個数等が予め決められる。
また、上記実施の形態及び上記変形例の内容をそれぞれ可能な限り組み合わせるとしてもよい。本発明の効果を得られる範囲で、定着部などの各部の機構や各部材を別の機構や別の形状の部材に代えて適用することとしても良い。