JP2021059614A - 熱伝導性フィラー、熱伝導性複合材料、ワイヤーハーネス、および熱伝導性フィラーの製造方法 - Google Patents

熱伝導性フィラー、熱伝導性複合材料、ワイヤーハーネス、および熱伝導性フィラーの製造方法 Download PDF

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直之 鴛海
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Abstract

【課題】比重を小さく抑えながら、高い熱伝導性を発揮することができる熱伝導性フィラー、また、そのような熱伝導性フィラーを含んだ熱伝導性複合材料およびワイヤーハーネス、そのような熱伝導性フィラーを製造することができる熱伝導性フィラーの製造方法を提供する。【解決手段】有機ポリマーを含んだ有機部と、前記有機部の表面を被覆する、無機物質を含んだ無機層と、を有し、粒子状となっている、熱伝導性フィラーとする。また、前記熱伝導性フィラーと、マトリクス材料と、を含み、前記熱伝導性フィラーが前記マトリクス材料中に分散されている、熱伝導性複合材料とする。さらに、前記熱伝導性複合材料を含む、ワイヤーハーネスとする。【選択図】図3

Description

本開示は、熱伝導性フィラー、熱伝導性複合材料、ワイヤーハーネス、および熱伝導性フィラーの製造方法に関する。
に関する。
電気電子部品を構成する絶縁性部材において、放熱性を高め、通電等による発熱の影響を小さく抑える目的で、有機ポリマー材料に、熱伝導性フィラーが添加される場合がある。熱伝導性フィラーは、多くの場合、アルミナや窒化アルミニウム、窒化ホウ素等、熱伝導性の高い無機化合物より構成される。
近年、自動車用エレクトロニクスをはじめとする種々の電気電子部品において、大電流化や集積化が進んでおり、通電時の発熱量が増大する傾向にある。その発熱の影響を抑制する手段として、例えば、自動車用ワイヤーハーネスであれば、電線をフラット化し、電線の表面積を増やすことや、電線を高熱伝導性の外装材に効率良く接触させること等、部材の形状や構造の改良による放熱性の向上が進められている。一方で、電線被覆や電線外装材等、電気電子部品の絶縁性部材を構成する材料自体の熱伝導性を高めることも、放熱性の向上に重要である。
有機ポリマー材料等に、多量のフィラーを混合すれば、材料の熱伝導性を高めることができるが、無機化合物よりなるフィラーを多量に有機ポリマー材料に混合すると、材料の比重が大きくなってしまい、電気電子部品を軽量化することが難しくなる。自動車全体の軽量化の観点から、自動車用の電気電子部品においては、軽量化が重要となる。よって、熱伝導性フィラーを含む材料において、軽量化が望まれる。そのための方法として、フィラーの添加量を少なく抑えることが試みられている。
フィラーの添加量を少なく抑えながら、高熱伝導性を維持することを目的として、フィラーの形状や粒子配置に関して、工夫がなされている。例えば、特許文献1では、内部に空隙部を有し、空隙率が所定の範囲とされたフィラーが開示されている。特許文献2では、マトリックスとしての樹脂中に、窒化ホウ素粒子を、一次粒子の積層体である二次粒子を層間剥離させる剥離工程を経ることにより生じた剥離扁平粒子の状態で分散させた、無機有機複合組成物が開示されている。特許文献3では、形状に異方性をもつ高熱伝導性フィラー同士が直接接触して、マトリックス樹脂中で網目構造を形成している高熱伝導性複合体が開示されている。
特開2019−1849号公報 特開2012−255055号公報 特開2010−13580号公報 特開2012−122057号公報 特開2015−178543号公報 特開2015−108058号公報 特開2003−221453号公報
アルミナや窒化アルミニウム、窒化ホウ素に代表される無機化合物は、高い熱伝導性を示す一方、比重が大きく、フィラーとして有機ポリマー材料等に添加して複合材料とした際に、複合材料全体としての比重を小さく保ちながら、高熱伝導性を達成することは、難しい。特に、アルミナ等の酸化物よりなるフィラーは、比重が大きくなりやすい。特許文献1〜3に記載されるように、フィラーの形状や粒子配置の工夫により、無機化合物の添加量をある程度少なく抑えることはできるが、それにも限界がある。フィラーの構成材料を検討することで、フィラー自体の比重を低減することができれば、フィラーを添加した複合材料において、軽量化と高熱伝導性の両立を、さらに高度に達成できる可能性がある。
そこで、比重を小さく抑えながら、高い熱伝導性を発揮することができる熱伝導性フィラー、また、そのような熱伝導性フィラーを含んだ熱伝導性複合材料およびワイヤーハーネス、そのような熱伝導性フィラーを製造することができる熱伝導性フィラーの製造方法を提供することを課題とする。
本開示の熱伝導性フィラーは、有機ポリマーを含んだ有機部と、前記有機部の表面を被覆する、無機物質を含んだ無機層と、を有し、粒子状となっている。
本開示の熱伝導性複合材料は、前記熱伝導性フィラーと、マトリクス材料と、を含み、前記熱伝導性フィラーが前記マトリクス材料中に分散されている。
本開示のワイヤーハーネスは、前記熱伝導性複合材料を含む。
本開示の熱伝導性フィラーの製造方法は、そのままの状態で、または化学反応を経て、前記無機層を構成する原料物質を用い、酸性基を有する有機ポリマーを含んだポリマー粒子に対し、表面の前記酸性基に、前記原料物質を結合させる工程を含んで、前記熱伝導性フィラーを製造する。
本開示にかかる熱伝導性フィラーは、比重を小さく抑えながら、高い熱伝導性を発揮することができる熱伝導性フィラーとなる。また、本開示にかかる熱伝導性複合材料およびワイヤーハーネスは、そのような熱伝導性フィラーを含んだものとなる。本開示にかかる熱伝導性フィラーの製造方法は、そのような熱伝導性フィラーを製造することができる。
図1は、本開示の一実施形態にかかる熱伝導性フィラーおよび熱伝導性複合材料の構造を説明する模式図である。 図2は、本開示の一実施形態にかかるワイヤーハーネスを示す側面図である。 図3Aは、フィラーF1の断面を観察したSEM像である。図3B〜3Dは、図3AのSEM像に対応するEDXによる元素分布像であり、図3BはC、図3CはAl、図3DはOの分布を示している。
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示にかかる熱伝導性フィラーは、有機ポリマーを含んだ有機部と、前記有機部の表面を被覆する、無機物質を含んだ無機層と、を有し、粒子状となっている。
上記熱伝導性フィラーは、無機物質のみではなく、有機ポリマーを含んだ有機部を、構成材料として備えるものとなっている。多くの場合、有機ポリマーは、無機物質より比重が小さいため、熱伝導性フィラーが有機ポリマーを含むことにより、熱伝導性フィラーが無機物質のみよりなる場合よりも、熱伝導性フィラー全体としての比重が小さくなる。一方、熱伝導性フィラーの粒子において、無機物質を含んだ無機層が、有機ポリマーを含む有機部の表面を被覆していることにより、フィラー粒子が、他のフィラー粒子、または周囲を囲む他の材料と、無機層において接触し、高い熱伝導性を発揮することができる。このように、熱伝導性フィラーにおいて、比重を小さく抑えながら、高い熱伝導性を確保することが可能となる。
ここで、前記有機ポリマーは、酸性基を有するとよい。すると、有機部の表面の酸性基との相互作用や化学反応により、無機層を構成する無機物質、あるいはその無機物質となる原料物質を、有機部の表面に結合させやすくなる。その結果、有機部の表面が無機層に被覆された熱伝導性フィラーを、安定に、また簡便に形成することができる。
前記有機ポリマーは、ポリアクリル酸、アクリル酸共重合物、無水マレイン酸変性ポリマーの少なくとも1種を含有するとよい。それらの有機ポリマーは、比重が小さく、有機部として用いることで、熱伝導性フィラー全体としての比重を小さく抑えやすいうえ、粒子表面に酸性基を安定に露出させるため、それら表面の酸性基との相互作用や化学反応による結合を利用して、表面に無機層を形成しやすい。
前記無機物質は、金属酸化物を含むとよい。金属酸化物は、種々の無機物質の中で、比較的高い熱伝導性を示すとともに、有機ポリマーを含む有機部の表面に、層状に形成しやすい。よって、低比重で熱伝導性に優れた熱伝導性フィラーを構成しやすい。
前記無機物質は、AlおよびMgの少なくとも一方を含有する化合物を含むとよい。AlやMgは、酸化物をはじめとする化合物が、高い熱伝導性を示す。また、AlやMgは、アルコキシドや炭酸塩をはじめとして、有機ポリマー粒子の表面に結合させ、安定な化合物膜を形成することができる原料合物が、入手しやすい。よって、無機層を、AlやMgを含有する化合物として形成することで、低比重と高熱伝導性を両立する熱伝導性フィラーを、簡便に製造することができる。
前記有機部のみの比重をR1、前記熱伝導性フィラー全体としての比重をR2とし、無機層比重率RをR=(R2−R1)/R1として、前記無機層比重率Rは、5%以上であるとよい。すると、有機部に対して、十分な量を占めて、無機層が形成されることになり、熱伝導性フィラー粒子全体として、高い熱伝導性を確保しやすくなる。
前記有機部のみの比重をR1、前記熱伝導性フィラー全体としての比重をR2とし、無機層比重率RをR=(R2−R1)/R1として、前記無機層比重率Rは、40%以下であるとよい。すると、無機層による熱伝導性向上の効果が飽和するのを避けて、過剰に厚い無機層を形成することによる熱伝導性フィラーの比重の増大を、抑制することができる。
前記熱伝導性フィラー全体としての比重R2は、1.5以下であるとよい。この場合には、熱伝導性フィラーの低比重性を、十分に確保することができる。
本開示にかかる熱伝導性複合材料は、前記熱伝導性フィラーと、マトリクス材料と、を含み、前記熱伝導性フィラーが前記マトリクス材料中に分散されている。
上記熱伝導性複合材料は、上記で説明した、有機ポリマーを含んだ有機部と、その有機部の表面を被覆する無機物質を含んだ無機層とを有する熱伝導性フィラーを含有している。よって、熱伝導性複合材料全体としての比重を小さく抑えながら、熱伝導性フィラーが有する高い熱伝導性を利用して、放熱性を高めることができる。
ここで、前記マトリクス材料は、有機ポリマーであるとよい。多くの有機ポリマーは、熱伝導性が低いが、表面に無機層を有する上記熱伝導性フィラーを混合することで、熱伝導性複合材料全体として、高い放熱性を確保することができる。一方、有機ポリマーは、比重が比較的小さいものが多いが、混合する熱伝導性フィラーが、有機部を含み、比重が小さく抑えられたものであることにより、熱伝導性フィラーを添加した状態でも、比重を小さく抑えることができる。
前記熱伝導性複合材料は、比重が1.5以下であるとよい。この場合には、熱伝導性複合材料全体としての比重が、十分に小さく抑えられることになる。
前記熱伝導性複合材料は、室温における熱伝導率が、1.0W/(m・K)以上であるとよい。この場合には、熱伝導性複合材料全体として、十分に高い熱伝導性が確保されることになる。
本開示にかかるワイヤーハーネスは、前記熱伝導性複合材料を含んでいる。
上記ワイヤーハーネスは、上記で説明した熱伝導性複合材料を含んでいるため、構成部材の比重を小さく抑えながら、高熱伝導率を利用することができる。よって、ワイヤーハーネス全体としての質量を小さく抑えながら、高い放熱性が得られる。そのため、ワイヤーハーネスの軽量性を保ちながら、ワイヤーハーネスを構成する電線への通電等によって発熱が起こっても、その発熱の影響を、小さく抑えることができる。
本開示にかかる熱伝導性フィラーの製造方法は、そのままの状態で、または化学反応を経て、前記無機層を構成する原料物質を用い、酸性基を有する有機ポリマーを含んだポリマー粒子に対し、表面の前記酸性基に、前記原料物質を結合させる工程を含んで、前記熱伝導性フィラーを製造する。
上記製造方法によれば、有機ポリマーを含んだ有機部の表面に、無機物質を含んだ無機層を形成し、比重が小さく、かつ熱伝導性の高い熱伝導性フィラーを、簡便に製造することができる。
ここで、前記原料物質は、金属アルコキシドおよび金属炭酸塩の少なくとも一方であるとよい。すると、簡素な化学反応工程によって、ポリマー粒子の表面に金属酸化物を含む無機層を形成し、熱伝導性フィラーを得ることができる。
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態にかかる熱伝導性フィラー、熱伝導性複合材料、ワイヤーハーネス、および熱伝導性フィラーの製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。本開示の実施形態にかかる熱伝導性フィラーを含んで、本開示の実施形態にかかる熱伝導性複合材料が構成される。また、本開示の実施形態にかかる熱伝導性複合材料を含んで、本開示の実施形態にかかるワイヤーハーネスが構成される。さらに、本開示の実施形態にかかる製造方法によって、本開示の実施形態にかかる熱伝導性フィラーを製造することができる。
本明細書において、各種物性値は、特記しない限り、室温、大気中にて計測されるものとする。また、本明細書において、ある成分が、ある材料の主成分であるとは、その成分が、その材料を構成する全成分の質量に対して、50質量%以上を占めている状態を指す。
<熱伝導性フィラー>
まず、本開示の一実施形態にかかる熱伝導性フィラー(以下、単に「フィラー」と称する場合がある)について説明する。図1に示すように、本開示の一実施形態にかかる熱伝導性フィラー10は、有機部11と、無機層12とを有しており、粒子状となっている。無機層12は、有機部11の表面を被覆している。
有機部11および無機層12の具体的な材料については、後に説明するが、有機部11は、有機ポリマーを含んでいる。一方、無機層12は、無機物質を含んでいる。多くの有機ポリマーは、無機物質よりも、小さな比重を有している。一方、多くの無機物質は、有機ポリマーよりも高い熱伝導率を有している。
本実施形態にかかる熱伝導性フィラー10は、比重の小さい有機ポリマーを含む有機部11を有することにより、全体が無機物質よりなる場合と比較して、全体としての比重を小さくすることができる。一方、本実施形態かかる熱伝導性フィラー10は、有機部11の表面を被覆して、無機層12を有している。無機層12は、高い熱伝導性を有しており、フィラー10全体としての熱伝導性を高めることができる。図1に示すように、フィラー粒子10の表面の無機層12が、そのフィラー粒子10を取り囲むマトリクス材料2や、他のフィラー粒子10の表面の無機層12と接触することで、フィラー粒子10とマトリクス材料2の間、またフィラー粒子10の間の熱伝導に寄与する。有機部11の表面にのみ無機層12が設けられているため、フィラー粒子10全体としての体積は、有機部11によって確保しながら、小体積の無機層12によって、熱伝導性を発揮することができる。隣接するフィラー粒子10が、表層の無機層12を介して、相互に接触することによって、熱伝導経路を形成することができる。
フィラー10の質量の増加を避ける観点から、フィラー10全体としての比重は、1.5以下、さらに好ましくは1.4以下、1.2以下であるとよい。一方、比重を小さく抑えすぎることにより、無機層12を十分な厚さで形成できなくなることを避ける観点から、フィラー10全体としての比重は0.3以上、好ましくは0.6以上、さらに好ましくは0.9以上であるとよい。フィラー10の比重は、例えば、比重計を用いて、粉末状のフィラー10の真密度として計測することができる。なお、フィラー10全体としての比重は、後に無機層12の割合について説明する式(1)において、比重R2として用いられる。
ここで、有機部11および無機層12を構成する材料等について説明する。上記のように、有機部11は、有機ポリマーを含んでいる。好ましくは、有機部11は、有機ポリマーを主成分として含んでいる。有機部11を構成する有機ポリマーは、各種樹脂、エラストマー、ゴム等、いかなる有機ポリマーであってもよい。しかし、有機部11を構成する有機ポリマーは、酸性基を有するものであることが好ましい。有機ポリマーが酸性基を有することで、後に説明するように、有機部11となるポリマー粒子の表面に、無機層12となる原料無機化合物を結合させて無機層12を形成する際に、有機ポリマーの酸性基と原料無機化合物との間に結合を形成し、安定な無機層12を簡便に形成しやすいからである。
有機ポリマーに含まれる酸性基としては、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、スルホン酸基、リン酸基等を例示することができる。これらの酸性基のうち、カルボン酸基を有する有機ポリマーが、低比重性および入手容易性において、特に好ましい。カルボン酸基を有する有機ポリマーの具体例として、有機部11は、ポリアクリル酸、アクリル酸共重合物、無水マレイン酸変性ポリマーの少なくとも1種を含むことが好ましい。それらのポリマーは、比重が小さいうえ、ポリマー粒子とした際に、表面に酸性基を安定に露出させやすい。
有機部11を構成する有機ポリマーは、1種のみであっても、2種以上が混合されてもよい。有機部11の比重を、無機層12の比重よりも小さく保てる限りにおいて、つまり、有機部11のみでの比重を、フィラー10全体としての比重よりも小さく保てる限りにおいて、有機部11は、有機ポリマー以外に、難燃剤、安定化剤、酸化防止剤等、有機物あるいは無機物よりなる各種添加剤を、適宜含んでいてもよい。また、有機部11は、無機層12との間に、適宜、界面活性剤等、表面処理剤の層を有していてもよい。
フィラー10全体としての比重を小さく抑える観点から、有機部11の比重も小さい方が好ましく、例えば、1.2以下、好ましくは1.0以下であるとよい。有機部11の比重に特に上限は設けられないが、有機ポリマー粒子の比重は、概ね0.8以上である。有機部11は、粒子状となっており、その粒径(平均粒径D50;以下においても同様)は、特に限定されるものではないが、無機層12の厚さに対して過度に小さくならないようにすることで、フィラー10全体としての比重を小さく抑えられるようにする等の観点から、1μm以上、さらには5μm以上であることが好ましい。一方、フィラー10が添加されるマトリクス材料2の特性への影響を小さく抑える、比表面積を大きくする等の観点から、有機部11の粒径は、100μm以下、さらには50μm以下であることが好ましい。
上記のように、無機層12は、無機物質を含んでいる。好ましくは、無機層12は、無機物質を主成分として含んでいる。無機物質の種類は特に限定されるものではなく、金属、または無機化合物等の非金属のいずれであってもよい。有機部11の粒子の表面に、安定な無機層12を簡便に形成する等の観点から、好ましくは、無機層12は、無機物質として、無機化合物、特に金属化合物を含んでいるとよい。ここで、金属化合物を構成する金属元素には、B,Si等、半金属も含むものとする(以降においても同じ)。
無機層12を構成する金属化合物としては、金属元素を含む酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、炭窒化物、炭酸化物、水酸化物、ホウ化物等、また、金属のシリケート、アルミネート、チタネート等を例示することができる。熱伝導性に優れ、有機部11の表面に安定に膜状の無機層12を形成しやすい等の観点から、無機層12は、各種の金属化合物のうち、金属酸化物を含むことが好ましい。無機層12が、金属酸化物を主成分としてなっていれば、特に好ましい。金属酸化物は、金属窒化物や金属炭化物よりも比重が大きくなりやすいため、フィラー10において、有機部11と共存する無機層12として形成されることで、有機部11による比重低減の効果を、大きく享受することができる。
無機層12を構成する無機物質は、種々の金属化合物の中でも、AlおよびMgの少なくとも一方を含有する化合物を含んでいることが好ましい。特にAlを含んでいることが好ましい。また、AlやMgは、酸化物を構成していることが好ましい。酸化物をはじめとするAlやMgの化合物は、高い熱伝導性を示すとともに、市販の原料化合物を用いて、粒子状の有機部11の表面に、安定に、また強固に付着した膜状の無機層12として、形成しやすいからである。
無機層12を構成する無機物質は、1種であっても、複数であってもよい。また、複数の無機物質を用いる場合に、それらの無機物質は混在していても、さらには複合体を形成していてもよく、あるいは層状に積層されていてもよい。さらに、無機層12は、無機物質のみならず、各種添加剤や反応残渣等、有機物質をあわせて含むものであってもよい。また、マトリクス材料2が有機ポリマーを含む場合に、無機層12の表面に、マトリクス材料2との親和性を高める等の観点から、有機膜が設けられていてもよい。しかし、隣接するフィラー粒子10の間で、無機層12どうしの直接の接触によって、熱伝導性を高める観点からは、そのような有機膜は設けられない方が好ましい。無機層12は、有機部11の表面の少なくとも一部を被覆していればよいが、フィラー粒子10とマトリクス材料2の間、また隣接するフィラー粒子10の間で、無機層12を介した接触を十分に確保する観点から、無機層12は、少なくとも、有機部11の表面積の半分以上、さらには、不可避的な欠陥等を除いて、有機部11の表面全域を被覆していることが好ましい。
フィラー10において、無機層12が占める割合は、特に限定されるものではないが、下記の式(1)で規定される無機層比重率Rが、5%以上であることが好ましい。
R=(R2−R1)/R1 (1)
ここで、R1は、有機部11のみの比重を指し、R2は、フィラー10全体としての比重を指す。無機層比重率Rが大きいほど、フィラー10において無機層12が占める領域の割合が大きいことを示す。なお、有機部11の状態は、無機層12の形成によって実質的に変化しないので、有機部11の比重R1は、フィラー10を製造する際に用いるポリマー粒子の比重で代用することができる。
無機層比重率Rが5%以上であれば、フィラー10が十分な体積の無機層12を有することにより、フィラー10全体としての熱伝導性を十分に高めやすい。無機層比重率Rは、10%以上、また20%以上であれば、さらに好ましい。また、フィラー粒子10全体に対して、無機層12は、質量比で9質量%以上、また体積比で3体積%以上を占めることが好ましい。無機層12の厚さとしては、平均値で、フィラー粒子10の粒径の1%以上を占めることが好ましい。
一方、フィラー粒子10において、無機層12が占める割合を大きくしすぎても、フィラー10の熱伝導性の向上効果が飽和するとともに、有機部11の含有によってフィラー粒子10の比重を小さく抑える効果が、小さくなる。それらの現象を避ける観点から、無機層比重率Rを、50%以下、さらには40%以下としておくことが好ましい。なお、フィラー粒子10において、無機層12が占める領域は、有機部11の粒径に比べて薄いため、フィラー粒子10全体としての粒径は、有機部11の粒径と大きくは変わらず、1μm以上、さらには5μm以上、また100μm以下、さらには50μm以下であることが好ましい。
以上のように、本実施形態にかかる熱伝導性フィラー10は、有機部11の表面に無機層12が形成された二重構造を有することにより、熱伝導性を高く保ちながら、比重が低減されたものとなる。よって、後に説明する熱伝導性複合材料のように、他の物質と組み合わせて複合材料とすることで、複合材料全体としての比重を著しく増大させることなく、複合材料の熱伝導性を高めるものとなる。
<熱伝導性フィラーの製造方法>
次に、上記の熱伝導性フィラー10を製造することができる、本開示の一実施形態にかかる熱伝導性フィラーの製造方法について説明する。熱伝導性フィラー10は、有機部準備工程と、無機層形成工程とを実施することで、製造することができる。
有機部準備工程においては、製造されるフィラー10において有機部11となる、有機ポリマーを含んだポリマー粒子を準備する。ポリマー粒子は、液相合成等の化学的方法や、粉砕等の物理的方法によって、所望の化学組成を有する有機ポリマー材料を、所望の粒径を有する粒状体とすればよい。好ましくは、有機ポリマーとして酸性基を有するものを用いれば、次の無機層形成工程において、無機化合物を含む無機層12を、簡便に形成することができる。
次に、無機層形成工程において、ポリマー粒子の表面に、無機層12を形成する。この際、製造されるフィラー10において無機層12を構成する無機物質そのものを、原料物質としてポリマー粒子の表面に配置する直接形成法をとっても、あるいは、適宜化学反応を経ることで無機層12を構成する無機物質となる原料物質を、ポリマー粒子の表面に配置する間接形成法をとってもよい。直接形成法をとる場合には、ポリマー粒子の表面に配置した原料物質が、そのままの状態で、無機層12となる。直接形成法としては、蒸着、析出等を例示することができる。一方、間接形成法をとる場合には、原料物質をポリマー粒子の表面に配置した後、化学反応を起こすことで、無機層12を形成することになる。間接形成法としては、原料物質をポリマー粒子の表面に、静電的相互作用(イオン結合)等の相互作用により、または化学反応を経て、結合させたうえで、その結合した原料物質に対して化学反応を行うことで、所望の組成の無機層12を形成する方法を挙げることができる。特に、ポリマー粒子が酸性基を有する有機ポリマーを含み、表面に酸性基を露出させている場合には、相互作用または化学反応を介した原料化合物の結合を、簡便に、また強固に達成しやすい。
酸性基を表面に有するポリマー粒子に対して、原料化合物の結合を経て無機層形成工程を実施する場合には、まず、分散媒(溶媒)中にポリマー粒子の構成材料と、無機層12を構成する無機物質となる原料化合物の両方が含有された原料液を調製すればよい。原料液中において、ポリマー粒子は、固体粒子の状態で分散されていても、溶解していてもよい。また、原料液中において、無機層を構成する無機物質となる原料化合物は、液状で存在している必要があり、分散媒(溶媒)に溶解した状態のほか、溶融状態にあってもよい。あるいは微分散した状態にあってもよい。以下に、原料液中において、ポリマー粒子が固体粒子の状態で分散され、無機層を構成する原料化合物が溶解した状態にある形態について、説明する。この場合に、原料溶液を構成する分散媒(溶媒)は、ポリマー粒子を溶解させることなく分散させるとともに、無機層12を形成するための原料化合物を溶解させることができるものであれば、特に限定されず、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)等の有機溶媒、イソブチルアルコール等のアルコール類を例示することができる。
原料液を調製するに際し、例えば、最初に分散媒中にポリマー粒子を添加して十分に撹拌し、ポリマー粒子を分散させればよい。次に、ポリマー粒子の分散液に無機層12となる原料化合物を添加し、撹拌等により、溶解させればよい。この操作で、ポリマー粒子の表面の酸性基に、静電的相互作用(イオン結合)等の相互作用により、あるいは化学反応を経て、原料化合物を結合させる。原料化合物を、ポリマー粒子の酸性基に結合可能な状態とするために、原料化合物の分解等が必要な場合や、原料化合物とポリマー粒子の酸性基の間で、化学反応を経て結合を形成する場合に、それら分解や化学反応に、加熱や反応剤の添加が必要であれば、適宜、撹拌と合わせて、それらの操作を行えばよい。
原料化合物をポリマー粒子の表面に結合させると、次に、原料化合物に対して、化学反応を起こし、無機層12を構成する所望の無機物質への変換を行えばよい。この際、必要な化学反応の種類に応じた操作を行えばよく、例えば、撹拌に加えて、加熱、反応剤の添加、酸素等の気体分子との接触等を行えばよい。撹拌以外に、加熱や大気との接触のみで、原料化合物からの変換を完了することができれば、簡便に無機層12を形成することができ、好ましい。
無機層形成工程において、有機部11の表面に無機層12を形成した後、適宜、濾過等によって生成物を単離すればよい。さらに、加熱乾燥や真空乾燥を行って、揮発成分を除去することで、熱伝導性フィラー10を得ることができる。
無機層形成工程において用いる原料化合物としては、ポリマー粒子の分散液中、あるいはポリマー粒子の表面で、含金属イオンを形成しうるものを用いることが好ましい。具体的な化合物の種類は特に限定されず、そのような原料化合物の好適な例として、金属アルコキシドおよび金属炭酸塩を挙げることができる。原料化合物として金属アルコキシドを用いる場合には、ポリマー粒子の分散液に金属アルコキシドを添加し、加熱しながら撹拌を行えばよい。金属アルコキシドは、加水分解を起こし、アルコールの発生を伴いながら、金属水和物を形成する。特に、ポリマー粒子の表面や分散媒中に微量の酸性基が存在すると、その周辺で金属水和物の生成速度が速くなる。生じた金属水和物は、ポリマー粒子表面の酸性基との間に、イオン結合を形成し、膜の状態で、ポリマー表面に強固に結合することになる。その後、適宜反応液を加熱し、分散媒を乾燥させることで、大気中の酸素による酸化を経て、金属水酸化物および金属酸化物の少なくとも一方を含んだ無機層12を有する、熱伝導性フィラー10が得られる。多くの場合、無機層12における酸化は、金属酸化物の状態まで進む。金属アルコキシドの種類は、特に限定されるものではなく、メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド等を例示することができるが、アルミニウムイソプロポキシドやマグネシウムエトキシドが、安全性や入手容易性において、利用しやすい。
原料化合物として金属炭酸塩を用いる場合には、塩基性炭酸塩をポリマー粒子の分散液に添加すると、金属水酸化物が、ポリマー粒子の表面で形成され、ポリマー粒子の表面に強固に結合して、膜を構成する。その後、上記アルコキシドの場合と同様に、適宜反応液を加熱し、分散媒を乾燥させることで、大気中の酸素による酸化を経て、金属水酸化物および金属酸化物の少なくとも一方を含んだ無機層12を有する熱伝導性フィラー10が得られる。多くの場合、無機層12における酸化は、金属酸化物の状態まで進む。
<熱伝導性複合材料>
次に、本開示の一実施形態にかかる熱伝導性複合材料(以下、単に複合材料と称する場合がある)について説明する。本実施形態にかかる熱伝導性複合材料1は、図1に示すように、上記で説明した本開示の実施形態にかかる熱伝導性フィラー10と、マトリクス材料2とを含んでいる。マトリクス材料2の中に、フィラー10が分散されている。
本実施形態にかかる複合材料1は、上記で説明した有機部11の表面に無機層12を有する熱伝導性フィラー10を含んでいるため、無機層12によって付与される高熱伝導性により、複合材料1全体として、高い熱伝導性を示し、放熱性に優れたものとなる。同時に、有機部11による熱伝導性フィラー10の低比重化の効果により、複合材料1全体として、比重の小さいものとなる。
マトリクス材料2の種類は、特に限定されるものではないが、マトリクス材料2は、有機ポリマーを含むことが好ましく、有機ポリマーを主成分とするものであれば、より好ましい。マトリクス材料2を構成する具体的な有機ポリマーは、特に限定されるものではなく、フィラー10の有機部11を構成する有機ポリマーと同じものであっても、異なるものであってもよいが、有機部11は、ポリマー粒子の入手可能性や無機層12の形成可能性から、構成材料の選択における自由度が限られるのに対し、マトリクス材料2はそのような制約を受けないので、有機部11とは異なる材料から、所望の特性を有するものを選択することが好ましい。
マトリクス材料2を構成する有機ポリマーの具体例としては、各種樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム等を挙げることができる。有機ポリマーとして樹脂材料を用いる場合には、所望の用途に応じて、硬化性樹脂でも、熱可塑性樹脂、溶剤に溶解可能なプラスチックでもよい。マトリクス材料2を構成する樹脂の種類としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ乳酸、ポリスチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、およびエポキシ樹脂、またはこれらの樹脂同士の共重合体やポリマーアロイが挙げられる。マトリクス材料2は、有機ポリマーを1種のみ含むものであっても、複数含むものであってもよい。また、マトリクス材料2は、有機ポリマーの他に、難燃剤、充填剤、着色剤等の添加剤を適宜含んでいてもよい。
マトリクス材料2自体の比重も、特に限定されるものではないが、フィラー10を添加した複合材料1全体としての比重を小さく抑える観点から、1.5以下に抑えておくことが好ましい。マトリクス材料2の比重に特に下限は設けられないが、マトリクス材料2として有機ポリマーを用いる場合に、その比重は、おおむね0.8以上となる。また、マトリクス材料2自体の熱伝導率も特に限定されるものではないが、フィラー10を添加した複合材料1全体として、高い熱伝導率を確保する観点から、0.1W/(m・K)以上としておくことが好ましい。マトリクス材料2の熱伝導率に特に上限は設けられないが、マトリクス材料2として有機ポリマーを用いる場合に、その熱伝導率は、おおむね0.6W/(m・K)以下となる。なお、マトリクス材料2や複合材料1の比重は、水置換法等によって測定することができる。また、それらの材料の熱伝導率は、レーザーフラッシュ法、熱線法等により、測定することができる。
本実施形態にかかる複合材料1において、フィラー10の含有量は、複合材料1全体として、所望の比重と熱伝導性が得られるように、適宜定めればよい。フィラー10の含有量を多くするほど、複合材料1の熱伝導性が高くなるので、所望の熱伝導性が得られる含有量を下限として、フィラー10の含有量を定めればよい。例えば、複合材料1の熱伝導率が、フィラー10を添加しないマトリクス材料2の熱伝導率の5倍以上、さらには6倍以上となるように、フィラー10の含有量を定めればよい。あるいは、複合材料1の熱伝導率が、1.0W/(m・K)以上、さらには1.2W/(m・K)以上となるように、フィラー10の含有量を定めればよい。なお、複合材料1の熱伝導率は高いほど好ましいものではあるが、フィラー10の過剰な添加による比重の増大を避ける観点から、マトリクス材料2の熱伝導率の50倍以下、さらには30倍以下、また8.0W/(m・K)以下、さらには5.0W/(m・K)以下に留めておくとよい。
一方、複合材料1において、フィラー10の含有量を多くするほど、複合材料1全体としての比重が大きくなる場合は、フィラー10の含有量の上限を、所望の範囲に複合材料1の比重を抑えられる含有量として、定めればよい。例えば、複合材料1の比重が、フィラー10を添加しないマトリクス材料2の比重の1.3倍以下、さらには1.2倍以下に抑えられるように、フィラー10の含有量を定めればよい。あるいは、複合材料1の比重の値が、1.5以下、さらには1.4以下に抑えられるように、フィラー10の含有量を定めればよい。なお、複合材料1の比重は、小さいほど好ましいものではあり、下限は特に定められない。
フィラー10の含有量を、複合材料1全体にフィラー10が占める割合で規定する場合には、フィラー10の含有量は、複合材料1の熱伝導性の十分な向上を図る観点から、おおむね、40体積%以上とすればよい。一方、複合材料1の比重の増大を抑える観点から、60体積%以下とすればよい。また、フィラー10の含有量は、図1に示すように、隣接するフィラー粒子10の無機層12が接触し、熱伝導経路が形成されるように選択することが好ましい。
以上のように、本実施形態にかかる複合材料1は、高熱伝導性と低比重を両立するものである。よって、本複合材料1は、次に説明するワイヤーハーネスのように、軽量性と放熱性の両方が求められる部材を構成する材料として、好適に用いることができる。本実施形態にかかる複合材料1は、上記で説明した製造方法で製造した粉末状のフィラー10を、所定の配合比でマトリクス材料2に混合することにより、製造することができる。
<ワイヤーハーネス>
最後に、本開示の実施形態にかかるワイヤーハーネスについて説明する。本実施形態にかかるワイヤーハーネスは、上記で説明した本開示の実施形態にかかる熱伝導性複合材料1を含むものである。図2に示すように、ワイヤーハーネス5は、電線導体の外周に絶縁被覆を設けた絶縁電線51の端末部に、接続端子(不図示)を含んだコネクタ52が設けられたものである。ワイヤーハーネス5において、絶縁電線51が複数束ねられていてもよく、この場合に、絶縁電線51を束ねる外装材として、テープ53が用いられる。
本実施形態にかかるワイヤーハーネス5において、上記で説明した本開示の実施形態にかかる複合材料1は、放熱性が求められる種々の部材を構成することができる。主に、マトリクス材料2としての有機ポリマーにフィラー10が添加された複合材料1を、絶縁性の部材として用いることが好ましい。そのような絶縁性の部材として、絶縁電線51を構成する絶縁被覆、絶縁電線51の外側に配置されるテープ53や保護管等の外装材、構成部材間の接着や止水に用いられる接着剤、コネクタ52を構成するコネクタハウジング等を例示することができる。
近年、自動車分野において、中でも電気自動車やハイブリッド車において、電線に流される電流が大きくなり、それに伴って、電線から発生する熱量が大きくなる傾向がある。また、多数の電線や電気接続部材が近接して配置されるようになってきている。これらの場合に、ワイヤーハーネス5を構成する各種部材が、高い放熱性を有することが、電線や電気接続部材からの放熱の影響を小さく抑える観点から、重要である。ワイヤーハーネス5において、そのように放熱の影響を受ける可能性のある部材を、高い熱伝導性を有する上記複合材料1を用いて構成することにより、効率的に放熱を行うことが可能となる。また、自動車分野において、構成部材の軽量化は重要な課題であり、比重が小さく抑えられた上記複合材料1を用いることで、ワイヤーハーネス5の軽量化にも貢献することができる。
以下、実施例を示す。本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。以下、特記しない限り、試料の作製および評価は、大気中、室温にて行っている。
[1]フィラーの構造と特性
まず、本開示の実施形態にかかるフィラーの構造を確認するとともに、フィラーを添加した複合材料において、どのような比重と熱伝導性が得られるかを確認した。
[試験方法]
(1)フィラーの準備
まず、有機部を構成する樹脂の種類を変化させて、F1〜F3の3種のフィラーを合成した。以下、各フィラーの合成方法について説明する。
・フィラーF1
ポリアクリル酸粒子(平均分子量1,000,000;富士フイルム和光純薬社製)5gを、トルエン100mLに懸濁した。その懸濁液を撹拌しながら、アルミニウムイソプロポキシド(東京化成工業社製)10gを加え、110℃に加熱して還流撹拌した。さらに、加熱還流撹拌を続けながら、純水を10mL加え、40時間加熱還流撹拌を続けた。その後、反応液を室温に戻して濾過し、得られた固形成分を、100℃で48時間乾燥して、フィラーF1を得た。なお、用いたポリアクリル酸粒子の平均粒径は、40μmであった。
・フィラーF2
カルボン酸変性ポリプロピレン(PP)(アディバント社製「ポリボンド 1001」)の凍結粉砕品5gを、イソブチルアルコール100mLに懸濁した。その懸濁液を撹拌しながら、アルミニウムイソプロポキシド(東京化成工業社製)10gを加え、110℃に加熱して還流撹拌した。さらに、加熱還流撹拌を続けながら、純水を10mL加え、40時間加熱還流撹拌を続けた。その後、反応液を室温に戻して濾過し、得られた固形成分を、100℃で48時間乾燥して、フィラーF2を得た。なお、用いたカルボン酸変性PP粉砕品の平均粒径は、35μmであった。
・フィラーF3
無水マレイン酸変性SEBS(MAH−SEBS;旭化成社製「タフテック M1911」)5gを、200mLのTHFに溶解し、撹拌しながらアルミニウムイソプロポキシド(東京化成工社製)10gを加えた。その溶液を80℃に加熱して2時間還流撹拌した。さらに、反応液に純水20mLを加えて乳濁させた後、撹拌を続けながら、100℃に加熱してTHFを留去した。その後さらに、110℃での加熱還流撹拌を40時間続けた。得られた反応液を室温に戻して濾過し、固形成分を、100℃で48時間乾燥して、フィラーF3を得た。一連の反応を経た後、MAH−SEBSは、平均粒径40μmの粒子状となっていた。
上記フィラーF1〜F3に加えて、参照用に、以下3種のフィラーを準備した。
・PAA:ポリアクリル酸粒子(平均分子量1,000,000;富士フイルム和光純薬社製)−フィラーF1の合成に用いたのと同じもの
・CA−PP:カルボン酸変性PP(アディバント社製「ポリボンド 1001」)の凍結粉砕品−フィラーF2の合成に用いたのと同じもの
・アルミナ:昭和電工社製 充填用丸み状アルミナ(1〜80μm径;平均粒径40μm)
(2)複合材料の調製
上記で準備した各フィラーをマトリクス材料に分散させ、試料A1〜A3および試料B1〜B5にかかる複合材料を調製した。ここで、複合材料を構成するマトリクス材料は、以下の2液系エポキシ樹脂の硬化物とした。
・エポキシ主剤:ビスフェノールAのグリシジルエーテル(三菱化学社製「jER828」;エポキシ当量:190g/eq.)
・エポキシ硬化剤:アミンタイプ(三菱化学社製「ST12」;アミン価:345〜385KOHmg/g)
後の表2に示す質量比で、各種フィラーとエポキシ主剤、エポキシ硬化剤を、常温にてメノウ乳鉢で混合し、常温真空下で1分間脱泡した。そして、混合物を、熱プレス成形機により、100℃にて10分間加熱し、硬化させた。硬化体のうち、目視にて気泡が確認されない部分を切り出して、樹脂硬化物試験片(10mm×10mm×1mm)を作製した。なお、表2に示したフィラーの添加量は、下記のように測定された比重に基づいて、容量当たりの配合量が50体積%(試料B5のみ31体積%)となるように、設定したものである。試料B1については、フィラーを添加せず、エポキシ樹脂のみから樹脂硬化物試験片を作製した。
(3)フィラーの構造の評価
フィラーF1〜F3について、走査電子顕微鏡(SEM)による観察を行い、構造を評価した。具体的には、フィラー粒子を樹脂に包埋して切断し、断面をSEMにて観察した。また、SEM観察と合わせて、エネルギー分散型X線分析(EDX)による測定も行い、断面におけるCおよびAlの分布を評価した。
さらに、各フィラーについて、電子比重計(アルファーミラージュ社製)を用いて、比重(真密度)を測定した。各フィラーを構成するポリマー粒子およびアルミナフィラーについても、同様に比重を測定した。
(4)複合材料の特性評価
上記で作製した各樹脂硬化物試験片に対して、密度および熱伝導率を測定した。密度は水中置換法によって測定した。熱伝導率は、熱伝導装置(NETZSCH社製「LFA447」)を用い、レーザーフラッシュ法にて測定した。
[試験結果]
(フィラーの構造)
図3Aに、フィラーF1の断面のSEM観察像(二次電子像)を示す。明るい箇所ほど、二次電子の検出量が多くなっており、帯電が大きいことを示している。また、図3B〜3Dに、それぞれ、図3AのSEM観察に対応するEDX測定によって得られた、C,Al,Oの分布像を示す。明るい箇所ほど、各元素の濃度が高くなっている。なお、像を掲載したフィラーは、直径約40μmのものである。
図3AのSEM像によると、明るく観察される粒状部の表面に、比較的暗く観察される層状の領域が観察されている。層の厚さは、約2μmとなっており、樹脂粒子の粒径の約5%に対応する。明るく観察されている粒状部は、帯電が大きくなっており、有機物であるポリマー粒子に由来する部位に、対応づけることができる。一方、層状の部位は、帯電が小さく、無機物質より構成されていると考えられる。
さらに、図3BのC(炭素)の分布像を見ると、SEMで観察された粒状部において高密度となっており、表面の層状部では、その密度はかなり低くなっている。一方、図3CのAl(アルミニウム)の分布像を見ると、表面の層状部では高密度のAlが観測されているのに対し、内部の粒状部では、Alはほぼ検出されていない。また、図3DのO(酸素)の分布像を見ると、おおむね、図3CでAlが多く分布している箇所に、Oも多く分布している。
これらの観察結果から、内部の粒状部を、ポリマー粒子に由来する有機部に対応づけることができる。一方、表面の層状部を、アルミニウムプロポキシドを原料として形成されたAl酸化物(あるいは水酸化物)より構成される、無機層に対応付けることができる。また、有機部には、Al化合物の侵入等、無機層の形成による影響が実質的に及んでいないことが分かる。以上より、フィラーが、有機部の表面を無機層が被覆した二重構造を有する粒状体として形成されていることが、確認された。結果の掲載は省略するが、フィラーF2,F3についても、同様の二重構造が観察された。
次に、各フィラーについて、フィラー全体、およびフィラーを構成するポリマー粒子の比重の計測結果を、表1に示す。それらの比重をもとに式(1)によって算出した無機層比重率Rについても、表中に合わせて示す。
Figure 2021059614
表1によると、フィラーF1〜F3のいずれにおいても、ポリマー粒子より構成される有機部の表面に無機層を形成したことにより、比重が、ポリマー粒子のみの場合よりも増加している。しかし、それらフィラーの比重は、いずれも、1.5以下となっており、4.0とのアルミナフィラーの比重よりも、かなり小さく抑えられている。このように、フィラーを、無機物質のみから構成するのではなく、有機部の表面に無機物質を層状に有する二重構造とすることにより、フィラー全体としての比重を、大きく低減することができる。
(複合材料の特性)
表2に、試料A1〜A3および試料B1〜B5にかかる複合材料ついて、フィラーおよびマトリクス材料の配合比(単位:質量%)、およびフィラーの配合量(単位:体積%)とともに、比重および熱伝導率の計測結果をまとめる。
Figure 2021059614
表2によると、汎用的に熱伝導性フィラーとして用いられているアルミナフィラーを50体積%添加した試料B4においては、フィラーを添加していない試料B1と比較して、熱伝導率が大幅に向上しているものの、比重が、2倍以上に大きくなっている。試料B5において、フィラーの添加量を、熱伝導率が1.0W/(m・K)を下回る31体積%まで低下させてもなお、比重は、試料B1の1.7倍程度となっている。このように、フィラーとして、無機物質のみを用いると、複合材料の比重が大きくなってしまう。
一方で、試料B2,B3では、マトリクス材料に、ポリマー粒子そのものを添加しており、試料B1と比べて、比重の増大は見られない。しかし、アルミニウム化合物のように、高熱伝導性を示す無機物質を含んでいないため、熱伝導率は、試料B1とほぼ変わらない低値を示している。このように、ポリマー粒子そのものは、熱伝導性フィラーとして利用することはできない。
それら試料B2〜B5とは異なり、有機部と無機層の二重構造を有するフィラーF1〜F3をマトリクス材料に添加した試料A1〜A3においては、フィラーを50体積%も添加しているにもかかわらず、フィラーの比重が、1.5以下に抑えられている。フィラーを添加していない試料B1の比重からの増加率にして、25%以下である。特に、試料A2,A3では、マトリクス材料よりもフィラーの方が比重が小さいことに対応して、フィラーを添加することで、比重がむしろ低下している。
そして、試料A1〜A3では、いずれも、熱伝導率が、1.0W/(m・K)以上となっている。これらの値は、フィラーを添加していない試料B1の熱伝導率と比較して、5倍以上に相当する。この結果から、有機部の表面に無機層を形成したフィラーF1〜F3を用いた試料A1〜A3においては、フィラーが、低比重の有機部を含んでいることにより、フィラーを添加した複合材料全体として、比重を小さく抑えながら、高い熱伝導率が得られることが分かる。
[2]無機層の量と特性の関係
次に、本開示の実施形態にかかるフィラーにおいて、無機層が占める割合を変化させた際に、フィラー自体、またフィラーを添加した複合材料の特性がどのように変化するのかを調査した。
[試験方法]
(1)試料の作製
上記試験[1]でフィラーF1を合成したのと同様にして、フィラーF1−1〜F1−7を合成した。ただし、各フィラーの合成において、原料として、ポリアクリル酸5gに対して添加するアルミニウムイソプロポキシドの量を、表3のように変化させた。フィラーF1−3は、試験[1]で合成したフィラーF1と同じものとなっている。
得られた各フィラーをエポキシ樹脂に添加して、試料C1〜C7にかかる複合材料を調製した。複合材料の調製および樹脂硬化物試験片の作製は、試験[1]と同様に行った。フィラーの添加量は、容量当たりの配合量が50体積%となるようにした。
(2)特性評価
試験[1]と同様にして、各フィラーに対して、比重を計測した。また、各樹脂硬化物試験片について、比重と熱伝導率を計測した。
[試験結果]
表3に、各フィラーを添加した試料C1〜C7について、各成分の配合比(単位:質量%)およびフィラーの配合量(単位:体積%)とともに、比重および熱伝導率の測定結果を示す。左欄には、各フィラーについて、合成時に用いたアルミニウムイソプロポキシドの量とともに、比重および無機層比重率Rを示している。無機層比重率Rは、有機部の比重を、PAAの値である1.20として、算出したものである。
Figure 2021059614
まず、表3の左欄によると、フィラーF1−1〜F1〜7において、合成時に使用するアルミニウムプロポキシドの量が多くなるほど、フィラーの比重が大きくなり、それにともなって、無機層比重率も大きくなっている。このことから、フィラー合成時に使用する無機層の原料化合物の濃度によって、ポリマー粒子の表面に形成する無機層の厚さを制御でき、原料化合物の濃度を高くするほど、厚い無機層が形成されることが分かる。フィラーF1−1において、用いたアルミニウムプロポキシドが全て、アルミナ(Al)となって無機層を構成すると仮定すると、フィラーに占める無機層の割合は、質量比で9質量%、体積比で3体積%と見積もられる。また、ポリマー粒子の粒径に対する無機層の厚さは、約1%と見積もられる。
表3によると、それぞれフィラーF1−1〜F1−7を添加した試料C1〜C7において、添加したフィラーの無機層比重率が大きくなるほど、複合材料全体としての比重も大きくなっている。熱伝導率については、比較的フィラーの無機層比重率が小さい領域においては、添加したフィラーの無機層比重率が大きくなるほど、熱伝導率が高くなる傾向が見られている。無機層比重率が最も小さいフィラーを用いた試料C1では、熱伝導率は、フィラーを添加しない場合の値である0.18W/(m・K)と比較して(表2の試料B1参照)、それほど向上していないのに対し、試料C2〜C7で、フィラーの無機層比重率を5%以上とすると、熱伝導率が大きく向上し、1.0W/(m・K)を超えている。
しかし、試料C5〜C7のように、フィラーの無機層比重率を40%を超えて大きくした場合には、熱伝導率の向上は飽和している。つまり、フィラーの無機層比重率を高め、フィラーにおいて無機層が占める割合を大きくしすぎても、熱伝導率を効率的に向上させられないにもかかわらず、フィラーおよび複合材料の比重ばかりが大きくなる。
以上の結果から、熱伝導率の向上と比重の低減を高度に両立する観点から、フィラーの無機層比重率は、5%以上、また40%以下程度の範囲としておくことが好ましいと言える。表1に示すように、フィラーF2,F3についても、無機層比重率Rは、5%以上40%以下の範囲に収まっている。
[3]フィラーの添加量と特性の関係
最後に、複合材料におけるフィラーの添加量と、特性との関係について調査した。
[試験方法]
(1)試料の作製
上記試験[1]で作製したフィラーF1を、エポキシ樹脂に添加して、試料D1〜D7にかかる複合材料を調製した。複合材料の調製および樹脂硬化物試験片の作製は、試験[1]と同様に行った。ただし、各試料において、フィラーの添加量は、表4に示すように、変化させた。フィラーの配合量が50体積%である試料D6は、表2の試料A1と同じものである。
(2)特性評価
試験[1]と同様にして、各樹脂硬化物試験片について、比重と熱伝導率を計測した。
[試験結果]
表4に、各試料について、各成分の配合比(単位:質量%)、およびフィラーの配合量(単位:体積%)とともに、比重および熱伝導率の測定結果を示す。
Figure 2021059614
表4によると、フィラーの配合量を多くするほど、熱伝導率が高くなっている。しかも、フィラー配合量が多い領域ほど、フィラー配合量の増加に対する熱伝導率の上昇幅が大きくなっている。この挙動は、従来一般の無機化合物よりなるフィラーについて、配合量を増やした際の熱伝導率の挙動と類似したものである。この結果から、有機部の表面に無機層が形成された本開示の実施形態にかかるフィラーにおいても、従来一般の無機化合物よりなるフィラーと同様に、隣接するフィラーが接触することで、マトリクス材料中に熱伝導パスが形成されるという機構によって、熱伝導率の向上が達成されていることが分かる。
表4の結果によると、複合材料の熱伝導率を1.0W/(m・K)以上に向上させる観点からは、フィラーの配合量を40体積%以上とすることが好ましいと言える。一方、複合材料の比重は、フィラーの配合量を70体積%としても、1.5以下に抑えられているが、さらに比重を1.3以下に抑えたい場合には、フィラーの配合量を60体積%以下とすればよい。
以上、本開示の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
1 (熱伝導性)複合材料
10 (熱伝導性)フィラー
11 有機部
12 無機層
2 マトリクス材料
5 ワイヤーハーネス
51 絶縁電線
52 コネクタ
53 テープ

Claims (15)

  1. 有機ポリマーを含んだ有機部と、
    前記有機部の表面を被覆する、無機物質を含んだ無機層と、を有し、
    粒子状となっている、熱伝導性フィラー。
  2. 前記有機ポリマーは、酸性基を有する、請求項1に記載の熱伝導性フィラー。
  3. 前記有機ポリマーは、ポリアクリル酸、アクリル酸共重合物、無水マレイン酸変性ポリマーの少なくとも1種を含有する、請求項1または請求項2に記載の熱伝導性フィラー。
  4. 前記無機物質は、金属酸化物を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の熱伝導性フィラー。
  5. 前記無機物質は、AlおよびMgの少なくとも一方を含有する化合物を含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の熱伝導性フィラー。
  6. 前記有機部のみの比重をR1、前記熱伝導性フィラー全体としての比重をR2とし、無機層比重率RをR=(R2−R1)/R1として、
    前記無機層比重率Rは、5%以上である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の熱伝導性フィラー。
  7. 前記有機部のみの比重をR1、前記熱伝導性フィラー全体としての比重をR2とし、無機層比重率RをR=(R2−R1)/R1として、
    前記無機層比重率Rは、40%以下である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の熱伝導性フィラー。
  8. 前記熱伝導性フィラー全体としての比重R2は、1.5以下である、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の熱伝導性フィラー。
  9. 請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の熱伝導性フィラーと、マトリクス材料と、を含み、
    前記熱伝導性フィラーが前記マトリクス材料中に分散されている、熱伝導性複合材料。
  10. 前記マトリクス材料は、有機ポリマーである、請求項9に記載の熱伝導性複合材料。
  11. 比重が1.5以下である、請求項9または請求項10に記載の熱伝導性複合材料。
  12. 室温における熱伝導率が、1.0W/(m・K)以上である、請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の熱伝導性複合材料。
  13. 請求項9から請求項12のいずれか1項に記載の熱伝導性複合材料を含む、ワイヤーハーネス。
  14. そのままの状態で、または化学反応を経て、前記無機層を構成する原料物質を用い、
    酸性基を有する有機ポリマーを含んだポリマー粒子に対し、表面の前記酸性基に、前記原料物質を結合させる工程を含んで、
    請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の熱伝導性フィラーを製造する、熱伝導性フィラーの製造方法。
  15. 前記原料物質は、金属アルコキシドおよび金属炭酸塩の少なくとも一方である、請求項14に記載の熱伝導性フィラーの製造方法。

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