JP2021059553A - ポビドンヨードを使用した感冒の治療および予防 - Google Patents

ポビドンヨードを使用した感冒の治療および予防 Download PDF

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Abstract

【課題】原因がウイルスであるときの、ヒト被験者における感冒および関連する二次的疾病を治療するおよび予防する方法を提供する。【解決手段】ヒト被験者の鼻道に、周囲温度で、0.10%w/vより高く約2.5%w/v未満の濃度でポビドンヨード(PVP−I)を含む医薬製剤の有効量を適用することを含み、PVP−Iの少なくとも50%がリポソームまたは他の粒子状担体に結合しておらず、感冒の原因となるまたは原因となる可能性のある因子がウイルスである、方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、広域スペクトルの抗菌剤であるポビドンヨードを含む局所用製剤を使用した、感冒およびその続発症の治療および予防のための方法に関する。
感染性呼吸器疾患は、上気道感染症(URI)および下気道感染症(LRI)に、たいてい大きく分類される。上気道は、口腔、鼻腔、洞、中耳、咽頭および喉頭を含む。下気道は、肺にある気管、気管支、細気管支および肺胞を含む。それぞれの部位は、別個の提示、原因および治療的難題を有し得る特定の臨床状態の中枢であり得る。この理由のために、「上気道感染症」または「下気道感症染」という用語はそれぞれ、非常に多数の臨床的に別個の部位、原因、臨床状態および治療的難題を包含するため、唯一の連続的なまたは同種の状態または治療上の標的としてそれらについて語ることは適切ではない。さらに、特定の部位または状態に対して有用であると開示されている治療でも、上気道または下気道における別の部位または状態でその有用性を必然的に示すということは、当技術分野において仮にも考えられない。
感冒は、広く認められているURIであるが、通常は、必ずしも鼻粘膜のウイルス感染のみが原因であるとは限らない。他のよくあるURIは、扁桃炎、副鼻腔炎および中耳炎を含む。急性扁桃炎は、咽頭における口蓋扁桃の感染症であり、これは、典型的にはA群連鎖球菌(group A streptococcus)属に属する細菌によって引き起こされ、ペニシリンで治療されることが多い。副鼻腔炎は、感染、アレルギーまたは自己免疫性の原因による可能性がある洞の炎症状態であり、細菌性の原因が疑われる場合には、一般に、抗生物質で治療される。中耳炎は、中耳の感染症であり、細菌によって引き起こされることが多く、典型的には抗生物質で治療される。前述のこれらの3種の状態とは異なり、現在のところ、一般にウイルスによって引き起こされる感冒のための有効な治療は全く存在しない。
普通は軽度であり、自己限定的であるが、感冒または一般に知られているような単なる「かぜ」は、非常に高い発生率および有病率を有し、高い罹患率、高額な医療費および生産性の大損失を引き起こし、医療制度への極度に高い負担の一因となっている。米国では、成人は年に平均2、3回かぜを経験するが、学童は年に10回より多く罹る場合もあり、合計で毎年推定10億例のかぜの一因となっており、その結果として年に最大1億人が医師の診察を受けることになり、それは地域社会に推定80億ドルを消費させ、医療制度にかなりの負担を強いており、最も進んだ経済において、すでに財政が圧迫されている。加えて、年に最大2億日の授業日が損なわれ、かぜに罹っている従業員のために1億5千日の仕事日が失われ、かぜを引いている病気の子どもをその親が看病するために在宅することで、別の1億5千日に及ぶ仕事日が失われている。かぜに関係する生産性損失の経済的影響の総額は、米国単独で年間200億ドルを超える可能性があると推定されており、これは他の先進国に匹敵する規模の損失である。加えて、米国において数十億ドルが、毎年一般用(OTC)医薬品、サプリメントおよび他の治療薬に使われており、その大部分は、ほとんどまたは全く利益が証明されておらず、他のいくつかは、症状の穏やかな緩和を有する位である。
加えて、たいていのかぜは元来ウイルス性であり、抗生物質は細菌のみを標的とするという事実にもかかわらず、初期治療を行う医師がかぜに対して抗生物質を過剰処方することによって幾分引き起こされる抗生物質耐性の間接費が存在する。これは、薬物耐性病原菌が出現するために、極めて重大な医学的問題となっている。
さらなる問題は、かぜが、他の状態、特に中耳炎、副鼻腔炎および気管支炎に罹り易くなるまたはこれらを促進させる場合があり、結果として、追加の罹患率、医療費、生産性損失および抗生物質の使用につながることである。
加えて、ある特定の「リスクのある」人にとって、その人の感受性の増大のためまたは呼吸器の基礎疾患の増悪の結果として、かぜは、肺炎などの重篤な下気道感染症に至る可能性がある。リスクのあるこれらの人は、がん化学療法を受けている人々または他のことで免疫が低下している人々ならびに喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症および肺気腫を含む、呼吸器の基礎疾患を有する人々を含む。リスクのあるそのような人において、かぜは、入院することになり得るおよび生命にかかわる可能性がある、重大な脅威であると言える。
感冒のための有効な治療または予防の、これらのすべての重要な医学的、経済的および社会的必要性にもかかわらず、かつ当分野における数十年の医学的研究にもかかわらず、感冒に利用可能な有効な治療は全く存在しない、かつかぜを予防するためのワクチンは全く存在しない。このための理由および継続中の難題を以下に論じる。
感冒は、鼻腔の内部の鼻粘膜細胞の感染によって開始される症状群である。本発明の目的のために、「鼻道」という用語は、感冒症状群を引き起こす感染の典型的な部位である、鼻腔および中咽頭内のすべての部位を含むように使用される。かぜは、他のURIまたはLRI、特に副鼻腔炎、中耳炎および気管支炎を引き起こし得るまたはこれらに罹り易くなり得るが、これらは、かぜの二次的合併症または続発症であり、感冒状態自体の一部ではないと、当技術分野においてみなされており、本明細書において定義される。
圧倒的に、ウイルスは、感冒として知られている状態に至る、鼻道の感染の原因である。実際に、同定および特性決定されているウイルスは、すべてのかぜの少なくとも70%を引き起こすことが公知であり、一方、かぜのさらなるおよそ25%は、原因に関して非特異的であるが、ウイルス性であると考えられており、とはいえ、そのような症例では、ウイルス性の特定の原因が、まだ同定および特性決定されていない。かぜを引き起こすことが公知のウイルスのうち、最も一般的なものはヒトライノウイルス(HRV)であり、これは、すべてのかぜの少なくとも半分、ひいてはウイルス性かぜの大多数を占めると考えられている。しかし、HRVの100を超える血清型が存在する。加えて、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルスおよび呼吸器合胞体ウイルス(RSV)を含む、かぜを引き起こし得る他の多くのウイルスが存在する。多くの場合には、それぞれについての多数の株または血清型が存在する。全般的に、ウイルスの推定200種の株または血清型が、感冒に至る鼻道の感染を引き起こし得る。
可能性のある感染原因の範囲にもかかわらず、感染に起因する臨床状態の症状は、一般に類似している。症状は、くしゃみ、鼻漏(鼻水)、鼻閉、咽喉痛、咳嗽、頭痛、倦怠感、悪寒および筋肉痛(体のうずきおよび疼痛)を含み得る。感冒として一般に公知の状態を定義するのは、感染自体よりもむしろ、これらの症状の一群または「症状群」である。実際に、感染した人の中には、鼻道の感染を有することを微生物学的に示すことができる場合でさえも、症状を有さない、すなわち、かぜに罹らないものもいる。特異体質の1つの理由は、症状群が、感染自体よりもむしろ、感染に対する体内反応の結果であるということである。
感冒は、鼻道に沿って並んでいる細胞の感染として始まる。当分野における研究のほとんどはHRVに焦点を合わせているため、HRVによるかぜの臨床病理は、他のウイルス性のかぜに比べてはるかに良く特性決定されているが、それはほとんどのウイルス性のかぜに類似していると一般に考えられている。HRVによるかぜについて、細胞が一度感染すると、ウイルスは細胞の内部で急速に増殖し、8〜10時間後に細胞を破裂させ、鼻道に多数の感染性の子孫ウイルスを放出し、それらが他の細胞を感染させて、感染を広げる。
感染によって引き起こされる細胞の損傷は、くしゃみ、鼻漏、うっ血、咽喉痛および咳嗽を直接引き起こすと考えられている化学物質のブラジキニンの放出を含む、局所細胞の防御機構を誘発する。これらは感冒の「局所症状」として公知である。
これらの非特異的な細胞の防御に加えて、鼻道に存在するある特定の免疫細胞、特に単球および顆粒球が関与するようになる。単球は、ウイルス抗原または核酸、典型的にはRNAの存在を感知し、サイトカインを放出する。サイトカインとは、他の免疫細胞、特に顆粒球を、感染または異物の部位に補充する炎症促進性の化学物質である。かぜの場合には、顆粒球、特に好中球が、侵入している微生物を含む異物を摂取し、破壊する。それらはまた、より多くのサイトカインを分泌し、さらに多くの好中球をその部位に引き付けて、ウイルス除去を促進する。しかし、副作用として、サイトカインは、微熱、傾眠状態、倦怠感、筋肉痛および頭痛を引き起こす。これらは、かぜの「全身症状」として公知であるが、かぜに特有のものではなく、免疫系が異種タンパク質または核酸に反応する時にはいつでも、例えば、ワクチン接種後にまたは体内の任意の場所への細菌感染もしくはウイルス感染の結果として、ある程度起こり得る。
これらの局所症状および全身症状の一群は、かぜとして公知の臨床状態の特性を示し、それを定義する「症状群」を表す。感冒症状群の構成、重症度およびタイミングは、免疫不全または喘息などの、それらの基礎的な健康状態および以前から存在する状態に応じて、個人によって変化し得る。それは、感染するウイルスによっても変化し得る。比較的軽度なものから重篤なものまで、いくつかの例では、そのような感染症の致命的結果に至るものまで、ウイルス性の原因の多様な範囲および影響力の範囲は、当分野における抗ウイルス薬開発に対して主要な難題を提示している。
被験者が一度感染すると、鼻道における初期感染から24〜36時間後にかぜ症状が現れ始め、典型的には、発症時から8〜9日続く。かぜの最初の4〜5日間に、多数の感染性ウイルスが産生され、鼻粘液中に検出することができ、鼻粘液は、疾患の伝播の主な媒介物であると考えられている。伝播は、咳嗽およびくしゃみの最中のエアロゾル化を通してあるいは鼻をかみ、次いで、他の人々がウイルスを多く含んだエアロゾル粒子中で呼吸をするまたは汚染された手もしくは表面に触れることによって起こる。かぜの最初の2、3日の間に産生されるかなりの量の鼻粘液は、感染した人からのウイルス排出を拡大し、それによって伝播過程の効率を拡大する。さらに、研究は、すべての症状が消失した後でさえ、かぜからのウイルス排出が、低レベルでさらに2〜3週間継続し得ることを示している。
多くのウイルス性疾患とは異なり、感冒のためのワクチンは全く存在しない。ウイルスのワクチンは、特定のウイルスの長期免疫記憶に頼っているため、そのウイルスが再提示される際には、すでに抗体が存在しており、ウイルスが感染を引き起こすことができる前に、種々の免疫過程によって、そのウイルスを直ちに破壊の標的とする。しかし、ある1種のかぜウイルスによる感染から誘導される免疫性は、比較的寿命が短く、1種の特定のウイルスまたは血清型のみに限られる可能性があるのに対して、かぜは、絶えず進化し、それによって抗体媒介性の免疫系を回避する200種もの異なるウイルスによって引き起こされ得る。したがって、抗体媒介性の免疫性は、集団内で感冒を予防することにおいて、実用的なまたは有効な役割をほとんど果たさない。
ワクチンを用いた予防に代わる手段は感染後の治療であるが、かぜを治療するには、いくつもの実質的な難題が存在する。そのうちの1つは、かぜを引き起こし得る多くの微生物が存在することである。それにひきかえ、他の感染性疾患は、典型的には単一の微生物が原因であり、原因−症状の経路が複雑ではない。例として、AIDSを引き起こすヒト免疫不全ウイルス(HIV)および単純ヘルペスを引き起こす単純ヘルペスウイルス(HSV)が挙げられる。いずれの場合にも、原因となるウイルスを抑制または破壊する、特異的抗ウイルス治療が利用可能であり、それによって疾患の症状を治療する。感冒は、少なくとも200種の異なる微生物のいずれか1種による感染の結果であり得るため、これらの疾患とは異なる。
感冒のための可能な治療として、抗ウイルス剤を開発するために、長年にわたる多数の試みが行われてきたが、上市に成功したものは全くない。ヒトライノウイルス(HRV)は、感冒の主な原因因子であり、当分野におけるほとんどすべての抗ウイルス薬開発の焦点となっている。3つのHRV種であるA、BおよびCが存在し、それらはエンテロウイルス(EV)属およびピコルナウイルス科の中に含まれることが現在公知である。HRV種は、100を超える明確な血清型にさらに分けられる。事実上、現代のすべての薬物の発見および開発は、1980年代から2000年代初期の間に起こった感冒に狙いを定めたものであり、ほとんど例外なく、HRVを特異的に標的とした薬物を開発することを目的としたものであった。この期間中のある時期に、主要な製薬会社のほとんどが、HRVを標的とした抗ウイルス薬を開発しようと試みたが、2000年までに、ほとんどの計画が棚上げにされたまたは断念された。1つの例外はプレコナリルという薬物であり、これは、米国の企業であるViropharmaにおいて2000年代初期の間にまだ開発中であった。プレコナリルは、抗ウイルス剤のカプシド結合剤の類に属し、ウイルスの殻またはカプシドに結合して、感染サイクルにおける初期の必須段階である脱殻を妨げる。他のカプシド結合剤は、HRVが細胞上のICAM−1受容体に結合するのを妨げ、また、細胞中にウイルスが侵入するのを予防すると報告されている。Viropharmaの2002年の新薬承認申請(NDA)は、第III相試験のデータが、かぜの持続期間の減少が1日のみであることを示すと同時に、起こり得る望ましくない副作用につながるシトクロムP450誘導のリスクを提示していたため、FDA諮問委員会によって、承認が全会一致で否決された。Viropharmaはプレコナリルを断念し、それ以来、HRVのための抗ウイルス薬のうち、第III相試験まで進んだものは他になかった。
副作用とは別に、HRV特異的抗ウイルス剤の別の欠点は、それらが標的とするのはすべてのかぜのうちおよそ半分に過ぎないことである。医師が症状群の提示のみに基づいて原因となる有機体を識別することは不可能であり得るため、抗ウイルス薬のこの狭域スペクトルの問題が特に懸念される。別の欠点は、それらが特異的な受容体またはタンパク質に結合する機構を標的としているため、ウイルスが突然変異して薬剤に耐性を示す可能性があり、そのため薬剤が無効になることである。
これらのHRV特異的アプローチに加えて、インターフェロン(細胞によって自然に産生され、ウイルス感染に対して防御する化学物質)、酸性緩衝剤(いくつかのウイルス、特にHRVは、酸に不安定であるため)およびカラギーナン(海藻抽出物)を含む、少数の非特異的アプローチが臨床的に試験されてきた。インターフェロンは無効であり、酸性緩衝剤はウイルス排出を減少させるが、症状にほとんど影響を及ぼさないことが示された。カラギーナンのみが商業的に開発され、少数の国で売り出されたが、米国を含む他の国では承認されていない。それが作用する、想定されている機序は、ウイルスの付着を防ぐ多糖で、ウイルスおよび鼻腔面をコートすることである。カラギーナンを用いた臨床研究は混成の結果を示しているが、かぜの症状を示す期間中に継続的に使用された場合、かぜの持続期間をわずかに減少させ得るが、症状の重症度にはほとんど効果がない可能性があるように思われる。
感冒のための任意の治療に対する別の難題は、介入枠が非常に狭いことである。症状が一度観察されると、感染は24〜36時間進行中である可能性があり、その後、最初の症状の後3日目または4日目までに、鼻粘液中のウイルス量は、すでに比較的低レベルに減少している。これは、ウイルスを標的とするいずれの治療的介入も、かぜの持続期間の減少という点から見て、その効果を発揮し、症状に関する大きな利益または効果を達成するには、限られた時間枠を有することを意味する。このことは、症状が一度観察されると、薬物を入手する際にさらなる遅延が生じるため、処方せんに基づいて利用可能ないずれの薬物に対しても実際的な問題を提示している。
さらに、すでに言及されているように、症状群は、感染自体よりもむしろ、感染に対する体内反応の産物である。感染によって一度点火されると、細胞の防御機構および免疫応答が関与したままになり得、鼻道中のウイルスの量が下降し始めた後でさえも、数日間継続中の症状を引き起こすことが公知である。これは、抗ウイルス剤がその抗ウイルス作用単独に基づいてかぜ症状を治療する能力の限界を示している。
要約すると、有効な治療を発見し開発することに対する大変な技術的難題が存在し、結果としておよび可能な治療の数十年間の研究にもかかわらず、感冒のための有効な治療を見出し、開発および商品化する非常に実質的な医学的、経済的および社会的必要性にもかかわらず、有効な治療は全く出現していない。
かぜのための有効な治療は、当技術分野において、一般に、(1)症状の重症度および/または(2)かぜの持続期間における大幅な減少を実証するものであると考えられている。症状の重症度による効果を評価する目的のために、当業者は、一般に、総症状スコア(TSS)と称される尺度を用いる。これは、選択される症状の非加重合成に基づいた、全般的な症状群の重症度の尺度であり、典型的には1日平均スコアとして算出される。TSSは、一般に、5つの局所症状および3つの全身症状からなり、それぞれが、重症度の順序スケールについて評価される。かぜの持続期間は、臨床評価のための別の重要な尺度である。当技術分野において妥当であると考えられる1つの尺度は、疾病が緩和する時間(TAI)であり、これは、治療の開始から、鼻漏がなくなり、個人の症状のうち重症度において「軽度」より上に評価されるものが他にない時までの時間として決定される。
これらの症状に関係する尺度に加えて、被験者をかぜウイルス、典型的にはHRVに故意に感染させる研究では、感冒における任意の介入の有効性の別の重要な尺度として、感染後の種々の時間に存在するウイルス量を測定することが可能である。これは、スワブまたは鼻洗浄液を使用して、鼻道における粘液のサンプリングによって、および細胞培養または定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)などの技術を使用して、存在するウイルスの量または濃度を検出することによって、一般に行われている。
任意のかぜ治療法の評価における、他の潜在的に重要な臨床的評価項目は、それが、(1)中耳炎、副鼻腔炎および気管支炎などの二次的疾病の発生率または重症度を減少させる、(2)リスクのある人における、重篤なLRIおよび疾患増悪の発生率または重症度を減少させる、ならびに(3)被験者がかぜに罹っている他者に曝露される場合に発生するかぜを予防する程度を含む。
鼻道に広域スペクトルの化学的消毒剤タイプの薬剤を適用することによるかぜの局所治療は、呼吸器疾患管理の分野において、試行されてこなかった。そのようなアプローチは、鼻道から直接ウイルスを排除する消毒剤の能力のために、表面的には可能性を有しているように思われ得る。しかし、ほとんどの場合、そのような薬剤は、局所灼熱感、刺激、細胞毒性、全身毒性および不快臭を含む重大な欠点が存在する。毒性の可能性を低減し、最近では鼻の中に使用するのに安全であることが示されている1つの化学的消毒剤は、一般にPVP−Iと称されるポビドンヨードである。
ポビドンヨード(PVP−I)は、主に、遊離ヨウ素が微生物のタンパク質および核酸に及ぼす強力な酸化作用を通じて、ウイルスを急速に不活性化することが公知である、広域スペクトルの局所殺菌剤である。いずれのPVP−I溶液の瞬間的な効力も、ポリマー担体から放出される遊離ヨウ素の濃度に関係しており、遊離ヨウ素がPVP−I溶液中に典型的には30ppm未満である場合に、抗菌作用のための適切な効力を保証すると同時に、ヨウ素に関係する刺痛感、灼熱感および遊離ヨウ素のヨウ化カリウム中溶液であるルゴール液などの、昔からのヨウ素溶液の他の毒性を回避することが、当技術分野において公知である。PVP−I溶液に関して、ヨウ素の大部分は、複合体の内部に留まっているまたは複合体に結合されて留まっており、例として、それと微生物のタンパク質との酸化的相互作用の結果として、外因性の遊離ヨウ素が枯渇した時のみ放出される。このようにして、比較的安定な低レベルの遊離ヨウ素が維持されると同時に、複合体に結合された不活性なヨウ素のレザバーが作用部位の近くに留まり、必要時に使用可能な状態であり続ける。
遊離ヨウ素の酸化作用は強力であり、タンパク質または標的に対して特異的ではないため、PVP−Iは、局所消毒剤として30年余りの間、広範囲に使用されてきたにもかかわらず、ウイルスによる耐性発現に対する感受性を全く示していない。加えて、それは、それぞれある特定の細菌および単純ヘルペスウイルスによって引き起こされる座瘡および単純ヘルペスを含む、ある特定の感染性皮膚状態を治療するための局所薬剤として、ある治療上の有用性を見出している。オーストラリアおよび日本を含むいくつかの市場において、それは、多くが感冒に関連し得る咽喉痛を治療するための含嗽剤として、広く使用されている。しかし、非特許文献1による1つのランダム化、対照試験に示されているように、そのような含嗽の実施は、咽喉痛またはかぜの咽頭症状にわずかに影響を及ぼし得るが、それらは鼻のかぜ症状または気管支の合併症に有意な影響を全く及ぼさず、感冒の発生率を減少させるという点から見て、利益を全く有さない。
PVP−Iの鼻腔内使用は、極度に限られている。PVP−Iは、不注意にも鼻道に運ばれて、病院における感染の大発生の一因となり得るような、抗生物質に耐性を示す細菌の排除のための鼻腔内溶液またはクリーム剤として提案されている。非特許文献2は、5%PVP−Iクリーム剤を試験し、それがMRSAによって引き起こされる定着および感染の予防に役割を果たし得ると結論付けた。非特許文献3は、1.25%PVP−I溶液を鼻内スプレーとして使用し、神経学的リハビリテーション課における患者の鼻道からの薬物耐性クレブシエラ肺炎杆菌(Klebsiella pneumonia)を排除した。非特許文献4は、PVP−I溶液が、MRSAに対しても有効であることを確認し、1.25%以下の濃度のPVP−Iが、鼻の中に使用するのに適していることを示した。これらのいずれの場合においても、PVP−I溶液が、ウイルスによって引き起こされる感冒を治療するまたは予防するのに有用性を有し得ることを示唆したものはない。
PVP−Iは、その広域スペクトル、耐性の可能性がないこと、ある特定の治療への適用における有用性ならびに薬物耐性細菌の排除のための鼻道における、潜在的な安全性および有用性にもかかわらず、PVP−Iはウイルスによって引き起こされる感冒を治療するための薬剤として適切ではない、安全ではない、または有効ではないと当業者が結論付けるに至る公知の重要な欠点を有している。
認識されている1つの欠点は、PVP−Iが鼻の細胞に入らない局所薬剤であり、一方、かぜウイルスの複製は、鼻の細胞の内部で排他的に起こることである。当業者であれば、PVP−Iなどのいずれの局所介入も、鼻粘液中のウイルス量を一時的に低下させ得るが、細胞内部で継続中の感染に直接的な影響を全く及ぼさない、また後者は、ブラジキニンおよびサイトカインの産生ならびにそれによる症状群を推進し続けると結論付ける。いずれの場合にも、感染した細胞が破裂し、より多くのウイルスを放出すると、鼻粘液中のウイルス量が補充され、PVP−Iのいずれの枯渇作用も打ち消してしまう。これは、鼻細胞の表面上に住み着いて複製し、いずれの活動性感染にも関与しないMRSAなどの細菌を排除するための、PVP−Iの鼻道への公知の有用な適用とは対照的である。
粘液線毛クリアランスの過程も、PVP−Iを含む局所薬剤の鼻腔内使用において、考慮される必要がある。粘液線毛クリアランスは、鼻細胞上の線毛と呼ばれる毛のような毛包の掃除作用が、粘液を咽喉の方に向け、粘液が鼻道を出て行くのを可能にし、最終的には嚥下される、鼻道における自然な洗浄過程である。この過程は、鼻粘液中の微生物を含む汚染物質を除去することによって、鼻道を絶えずきれいにするように作られている。非特許文献5は、粘液線毛クリアランス時間が、健康な鼻ではおよそ15分であり、PVP−I製剤の適用は、クリアランス時間を有意に変更しないことを示した。これは、任意の抗ウイルス効果または他の局所効果を及ぼすために、局所鼻腔内製剤にとって利用可能な最大時間が、およそ15分であることを示唆している。
加えて、かぜの期間中に、いずれの局所薬剤も鼻漏または鼻水によって、さらに急速にクリアされる。鼻漏または鼻水は、非特許文献6によると、成人における感冒の最も多く見られる初期症状である。鼻漏は、病原体および他の有害物質を鼻から追い出すように主に作られている、鼻道における鼻腺および杯細胞からの水様分泌液によるものである。かぜの最初の数日にかけて産生される液体の量はかなり多く、非特許文献7によると、前鼻孔から追い出される液体の量は、成人のかぜについて、7日間にわたっておよそ33gである。鼻孔から分泌されるこれらの液体に加えて、相当量の分泌液が嚥下され得る。全般的に、かぜの期間中、高容量の分泌液がいずれの局所薬剤も希釈してしまい、その加速されたクリアランスが、鼻道における有効な曝露時間および効果の大幅な減少を引き起こすことになる。よって、研究者であれば、かぜの期間中の、PVP−Iなどの任意の局所薬剤についての有効な曝露時間は、1分または2分以下であり得ると結論付けるのが妥当であり得る。
認識されている別の欠点は、PVP−I溶液中の唯一の活性な抗菌部分である遊離ヨウ素が、鼻粘液によって急速に消費されることであり、これは、容易に遊離ヨウ素と反応することによって遊離ヨウ素を不活性化し、それを殺菌作用に利用できないようにする高濃度のシステインを含有する、鼻粘膜分泌物中に存在する糖タンパク質であるムチンの存在のためである。本明細書において先に述べた非特許文献2は、鼻分泌物が5%PVP−Iクリーム剤の殺菌活性を減少させることを実証し、1.0mLの鼻分泌物が22.5mgのPVP−I相当物を不活性化すると算出した。鼻道中に適用され得る溶液の量およびそのような溶液中でのPVP−Iのあり得る濃度を考慮すると、研究者であれば、鼻腔内適用のPVP−Iからの放出に利用可能な遊離ヨウ素のすべてとは言えないまでも、そのほとんどが、鼻分泌物によって不活性化され得ると結論付ける。以上に論じられているように、鼻漏のために、分泌物の量およびムチンのレベルが非常に高まると、この問題は感冒の期間に拡大される。粘液が限られており、鼻漏が典型的なものではないMRSAまたは他の定住細菌の排除のために、PVP−Iが鼻道に適用され得る場合には、これはそれほど大した問題ではない。
長年にわたって認識されている別の欠点は、PVP−Iがヒト細胞にとって重要な毒性を有することである。本明細書において先に述べた非特許文献4は、2.5%以上のPVP−I濃度は、鼻線毛に対して毒性であるため、一般に、鼻の中に使用するのに適さないことを示した。1.25%以下の濃度は、毛様体毒性を引き起こさなかった。しかし、1.25%またはそれ未満でさえも、PVP−Iは、感冒の治療に特に関連するヒト免疫細胞に対して重要な毒性を有する。非特許文献8は、PVP−Iが、0.05%より高い濃度で、顆粒球の生存率を有意に減少させ、0.1%より高いと、事実上すべての顆粒球を破壊することを示した。顆粒球は、かぜの期間中にウイルスを排除する細胞性免疫過程において中心的役割を担うため、そのような毒性は、一般に、かぜ治療剤には望ましくないと考えられる。単球は、かぜにおいて重要な免疫シグナルを発する役割を担っており、ウイルスを排除するために、顆粒球と協力して作用するものであり、PVP−Iに対してわずかにより復元力を示したが、0.1%より高い濃度のPVP−Iによって、実質的に劣化した。1982年以来、免疫細胞に対するPVP−Iの毒性が当技術分野において公知であるため、それは、多くの治療への適用のためのPVP−Iの開発を阻む、長年にわたって認識されている障壁を提示している。再びおよびそれとは対照的に、免疫細胞が感染との闘いに積極的には関与しない他の定住細菌の排除のために、PVP−Iが鼻道に適用される場合には、これはそれほど大した問題ではない。
水性PVP−I製剤の細胞毒性問題と闘い、PVP−Iの有用性を拡大することを目指して、研究者らは最近、PVP−Iの大部分がリポソーム中にカプセル化されている、PVP−Iのリポソーム製剤を開発しようとしている。そのようなリポソームPVP−I製剤は、ヒト細胞に対する大幅に減少された毒性を有しており、感冒に限らないが、ある特定の鼻腔内適用に関して、それらをより適したものにする可能性がある。PVP−Iの大部分をリポソームの内部に閉じ込めることは、毒性を減少させるが、それはまた、遊離ヨウ素の放出の速度および/または程度を遅らせるため、その効力も減少させ、本明細書にさらに記載されているように、感冒などの適用に適さなくなり、そのようなリポソームPVP−I製剤は、感冒の治療または予防のために提案されたことがない。
PVP−Iの鼻腔内使用について、認識されているさらなる欠点は、ヨウ素の吸収が、甲状腺機能に及ぼすその周知の影響のために、全身毒性をもたらし得ることである。鼻道は、薬物および他の薬剤が全身循環に入るための非常に効率的な入口を表すことは、当技術分野において周知である。それ故に、鼻道に任意のヨウ素ベースの製品を使用する場合には、研究者は、過剰なヨウ素を吸収する可能性について極めて用心する必要がある。米国において、国立衛生研究所のガイドラインは、成人による総ヨウ素摂取の安全な上限は、1日当たり1,100マイクログラムのヨウ素であると記載している。これは、製剤の適用の量、濃度および頻度にもよるが、鼻におけるPVP−I製剤の鼻腔内適用によって容易に超過し得る。
PVP−Iの認識されている最後の決定的な欠点は、かぜの大部分の原因となるウイルスであるHRVに対するその活性が限られていることである。エンベロープを有するウイルスが、PVP−Iを含む種々の薬剤による不活性化に非常に感受性であるのに対して、エンベロープを有さないまたは「裸の」ウイルスおよび特にHRVは、ほとんどの化学薬剤による不活性化に耐性を示すことは、当技術分野において周知である。非特許文献9による研究は、エンベロープを有するウイルスであるヒトインフルエンザウイルスに対して、非常に低濃度のPVP−Iが、生存ウイルス数の4log10の減少を達成したことを示しており、これは一般に、30秒以内の曝露での殺菌効果と考えられる。これは、任意の濃度のPVP−Iが、30秒の曝露後に1logの減少をかろうじて達成し、4logの減少には30分の曝露を必要とした、裸のウイルスであるヒトライノウイルスとは対照的である。これは、4logの減少に5分のみの曝露を必要とした、別の裸のウイルスであるアデノウイルスとさらに比較して、ライノウイルスは、最も復元力のある裸のウイルスの1種であるという事実、さらに、アデノウイルスまたは他の裸のウイルスに対する任意の薬剤の活性が、HRVに対する薬剤の活性を表すものではない可能性があるという事実を強固にする。さらに、いずれの場合にも、アデノウイルスは、感冒のよくあるまたは認められている原因ではないため、感冒という状況における比較に実際的な意味はない。
HRVに対するPVP−Iの比較的弱い活性は、他の研究によって確証されている。例えば、非特許文献10は、アデノウイルスに対してたったの5分後およびエンベロープを有する単純ヘルペスウイルス(HSV)に対してたったの30秒後の殺菌効果と比較して、PVP−IがHRVにおいて、30秒の曝露後に1.1logの減少をもたらし、殺菌効果(4logの減少)には30分を必要とすることを示した。アデノウイルスと同様に、HSVは、かぜのよくあるまたは認められている原因ではない。
非特許文献11は、複数のウイルスに対するPVP−Iの活性を試験し、エンベロープを有するウイルスに対する急速な殺菌効果を確認した。しかし、PVP−Iは、10分という試験された最大曝露期間内に、HRVに対する殺菌効果をもたらすことができなかった。これらの種々の研究が理想的なin vitro条件下で行われたことを考慮すると、当業者であれば、in vivoにおいて、特に不活性化およびクリアランス過程に直面するPVP−IのHRVに対する能力は、臨床的に無視してよいと仮定する。上記のすべての理由で、PVP−Iの鼻腔内適用が、感冒のための治療として有効であることは明白ではない。さらに、PVP−Iは、感冒のための鼻腔内治療として、これまでに開発も商品化も行われたことがなく、公表されている情報に基づいて、感冒のための見込みのある治療として、その有効性を決定するために、臨床試験において評価さえも行われたことがない。それが対照臨床試験において評価されるならば、当業者であれば、それは有効な治療のための基準を満たさない、すなわち、それはかぜの症状の重症度またはかぜの持続期間に有意な減少をもたらさないと仮定する。
これらのすべての欠点にもかかわらず、本発明者らは、驚くべきことに、本発明の方法に従って鼻腔内製剤として使用される場合に、PVP−Iがかぜの症状の重症度およびかぜの持続期間の両方を減少させるのに有効であることを見出した。さらに、それは、かぜの期間中に、鼻道におけるウイルス量およびウイルス排出を減少させること、二次的疾病を減少させることならびにリスクのある人における、重篤なLRIおよび増悪のリスクまたは重症度を減少させることに関して、追加の利益を有する。最後に、かぜの予防に有用性を有する方法が開示される。
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本発明は、感冒の原因となるまたは原因となる可能性のある因子がウイルスである、ある特定の続発症および二次的疾病を含む、感冒の治療および予防のための方法を含む。すべての場合において、方法は、周囲温度における医薬製剤のヒト被験者の鼻道への適用を含み、当該製剤は、濃度が0.10%w/v以上、2.5%w/v以下のPVP−Iを含み、PVP−Iの少なくとも50%は、リポソームまたは他の粒子状担体に結合していない。
よって、一態様では、本発明は、ウイルスによって引き起こされるまたは引き起こされる可能性のある、ヒト被験者における感冒を治療する方法であって、ヒト被験者の鼻道に、周囲温度で、0.10%w/v〜2.5%w/vの濃度でポビドンヨード(PVP−I)を含む医薬製剤の有効量を適用することを含み、PVP−Iの少なくとも50%が、リポソームまたは他の粒子状担体に結合していない、方法を提供する。
別の態様では、本発明は、ヒト被験者の鼻道内のウイルスの活性、生存率または数を減少させる方法であって、ウイルスが、感冒の原因となるまたは原因となる可能性のある因子であり、ヒト被験者の鼻道に、周囲温度で、0.10%w/v〜2.5%w/vの濃度でポビドンヨード(PVP−I)を含む医薬製剤の有効量を適用することを含み、PVP−Iの少なくとも50%が、リポソームまたは他の粒子状担体に結合していない、方法を提供する。
別の態様では、本発明は、ウイルスによって引き起こされるまたは引き起こされる可能性のある、ヒト被験者における感冒の症状を軽減する方法であって、ヒト被験者の鼻道に、周囲温度で、0.10%w/v〜2.5%w/vの濃度でポビドンヨード(PVP−I)を含む医薬製剤の有効量を適用することを含み、PVP−Iの少なくとも50%が、リポソームまたは他の粒子状担体に結合していない、方法を提供する。
別の態様では、本発明は、ウイルスによって引き起こされるまたは引き起こされる可能性のある、ヒト被験者における感冒の持続期間を減少させる方法であって、ヒト被験者の鼻道に、周囲温度で、0.10%w/v〜2.5%w/vの濃度でポビドンヨード(PVP−I)を含む医薬製剤の有効量を適用することを含み、PVP−Iの少なくとも50%が、リポソームまたは他の粒子状担体に結合していない、方法を提供する。
別の態様では、本発明は、ウイルスによって引き起こされるまたは引き起こされる可能性のある、ヒト被験者における感冒に関連する二次的疾病のリスク、発生率または重症度を減少させる方法であって、二次的疾病が、気管支炎、中耳炎および副鼻腔炎からなる群から選択され、ヒト被験者の鼻道に、周囲温度で、0.10%w/v〜2.5%w/vの濃度でポビドンヨード(PVP−I)を含む医薬製剤の有効量を適用することを含み、PVP−Iの少なくとも50%が、リポソームまたは他の粒子状担体に結合していない、方法を提供する。
別の態様では、本発明は、ウイルスによって引き起こされるまたは引き起こされる可能性のある、COPD、喘息、肺気腫もしくは嚢胞性線維症に罹患しているヒト被験者または免疫不全症を有する個人における感冒に関連する下気道疾病のリスク、発生率または重症度を減少させる方法であって、ヒト被験者の鼻道に、周囲温度で、0.10%w/v〜2.5%w/vの濃度でポビドンヨード(PVP−I)を含む医薬製剤の有効量を適用することを含み、PVP−Iの少なくとも50%が、リポソームまたは他の粒子状担体に結合していない、方法を提供する。
別の態様では、本発明は、感冒の症状を有するヒト被験者から感染していないヒト被験者への感冒の伝播のリスクを予防するまたは減少させる方法であって、かぜ症状を伴うヒト被験者の鼻道に、周囲温度で、0.10%w/v〜2.5%w/vの濃度でポビドンヨード(PVP−I)を含む医薬製剤の有効量を適用することを含み、PVP−Iの少なくとも50%が、リポソームまたは他の粒子状担体に結合しておらず、感冒の原因となるまたは原因となる可能性のある因子がウイルスである、方法を提供する。
別の態様では、本発明は、感冒症状を有する他者に曝露されたヒト被験者における感冒を回避する方法であって、ヒト被験者の鼻道に、周囲温度で、0.10%w/v〜2.5%w/vの濃度でポビドンヨード(PVP−I)を含む医薬製剤の有効量を適用することを含み、PVP−Iの少なくとも50%が、リポソームまたは他の粒子状担体に結合しておらず、感冒の原因となるまたは原因となる可能性のある因子がウイルスである、方法を提供する。
鼻道のHRV感染の数理モデルから導かれる、未治療の被験者および最初の症状から24時間後に開始する鼻腔内PVP−Iで好ましい治療方法に従って治療された者についての、典型的な感冒期間中の予測されたウイルス量を、経時的に示すグラフである。 未治療の被験者および最初の症状から24時間後に開始する鼻腔内PVP−Iで好ましい治療方法に従って治療された者についての、数理モデルからの予測された症状の重症度スコアを、時間の関数として示すグラフである。 かぜ症状を伴い、好ましい方法に従って鼻腔内PVP−Iで治療された4名のうち1名の被験者に関し、実際の結果を示すグラフである。当該グラフは、典型的なかぜ症状を伴う4名のうちの1名の被験者について、4日間にわたりスコア化した事象において報告される総症状スコア(TSS)として測定された症状の重症度を示すグラフであって、プラセボ対照群を使用する公表された研究で報告されている、未治療患者についての典型的な1日平均TSSの結果と比較したグラフである。 かぜ症状を伴い、好ましい方法に従って鼻腔内PVP−Iで治療された4名のうち別の1名の被験者に関し、実際の結果を示すグラフである。当該グラフは、典型的なかぜ症状を伴う4名のうちの1名の被験者について、4日間にわたりスコア化した事象において報告される総症状スコア(TSS)として測定された症状の重症度を示すグラフであって、プラセボ対照群を使用する公表された研究で報告されている、未治療患者についての典型的な1日平均TSSの結果と比較したグラフである。 かぜ症状を伴い、好ましい方法に従って鼻腔内PVP−Iで治療された4名のうち別の1名の被験者に関し、実際の結果を示すグラフである。当該グラフは、典型的なかぜ症状を伴う4名のうちの1名の被験者について、4日間にわたりスコア化した事象において報告される総症状スコア(TSS)として測定された症状の重症度を示すグラフであって、プラセボ対照群を使用する公表された研究で報告されている、未治療患者についての典型的な1日平均TSSの結果と比較したグラフである。 かぜ症状を伴い、好ましい方法に従って鼻腔内PVP−Iで治療された4名のうち別の1名の被験者に関し、実際の結果を示すグラフである。当該グラフは、典型的なかぜ症状を伴う4名のうちの1名の被験者について、4日間にわたりスコア化した事象において報告される総症状スコア(TSS)として測定された症状の重症度を示すグラフであって、プラセボ対照群を使用する公表された研究で報告されている、未治療患者についての典型的な1日平均TSSの結果と比較したグラフである。 上記の4名の被験者についての1日平均TSSの結果を、プラセボ対照群を使用する公表された研究で報告されている、未治療患者についての典型的な1日平均TSSの結果と比較したグラフである。 図3〜図7のように最初の症状から24時間後ではなく、被験者がかぜの最初の徴候時にPVP−Iでの治療を開始した場合の、2名の被験者が経験した4例のかぜのうち1例のかぜに関するTSSの結果を示すグラフである。 図3〜図7のように最初の症状から24時間後ではなく、被験者がかぜの最初の徴候時にPVP−Iでの治療を開始した場合の、2名の被験者が経験した4例のかぜのうち、別の1例のかぜに関するTSSの結果を示すグラフである。 図3〜図7のように最初の症状から24時間後ではなく、被験者がかぜの最初の徴候時にPVP−Iでの治療を開始した場合の、2名の被験者が経験した4例のかぜのうち、別の1例のかぜに関するTSSの結果を示すグラフである。 図3〜図7のように最初の症状から24時間後ではなく、被験者がかぜの最初の徴候時にPVP−Iでの治療を開始した場合の、2名の被験者が経験した4例のかぜのうち、別の1例のかぜに関するTSSの結果を示すグラフである。 図8〜図11までの4例のかぜについての1日平均TSSの結果を、プラセボ対照群を使用する公表された研究で報告されている、未治療患者についての典型的な1日平均TSSの結果と比較したグラフである。 最初の症状時に治療を開始した場合と、最初の症状から24時間後に開始する治療とを比較し、プラセボ対照群を使用する公表された研究で報告されている未治療患者についての類似の期間にわたる典型的な1日平均TSS結果とをさらに比較した、1日平均TSSの結果を示すグラフである。
[定義]
本特許明細書において、例えば、第1のおよび第2の、左側のおよび右側の、前方のおよび後方の、最上部のおよび最下部のなどの形容詞は、その形容詞によって記載される特定の相対位置または順序を必ずしも必要とすることなく、一方の要素または方法ステップを別の要素または方法ステップから明確にするために、単独で使用される。「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」という用語または類似の用語は、要素のリストを含む方法、系または装置が、それらの要素のみを含むのではなく、掲載されていない他の要素を含む可能性があるように、非排他的な包含を意味することを意図する。
他に特に定義されない限り、本明細書において使用される科学技術用語はすべて、本発明が属する技術分野における当業者によって共通に理解されているものと同じ意味を有する。
本明細書において使用される場合、「感冒」または「かぜ」という用語は、局所症状および全身症状を引き起こす、本明細書に定義されているような鼻道の感染を指し、その一群は、一般に感冒と定義される。この定義は、気管支炎、副鼻腔炎および中耳炎などの二次的疾病を除く。
本明細書において使用される場合、「遊離ヨウ素」は、溶液中に存在し、実際にはポリマーに結合されていないが、ポビドンヨードの場合には、初めはそのように結合されている可能性がある、元素のまたは2原子のヨウ素を指す。遊離ヨウ素の濃度は、ヨードフォア溶液の瞬間的な殺菌効力を表し、参照によって本明細書に組み込まれるCantorの米国特許第3,028,300号に教示されている方法に従って測定される。
本明細書において使用される場合、「利用可能なヨウ素」は、ポリマーから遊離ヨウ素として放出されて最終的に利用可能である、ヨードフォアのヨウ素を指す。それ故に、それは、溶液中の遊離ヨウ素、三ヨウ化物イオンから利用可能な2原子のヨウ素およびポリマー構造によって形成されるレザバー内に保たれている2原子のヨウ素を含む。利用可能なヨウ素は、ヨウ化物イオンを含まない。利用可能なヨウ素は、米国薬局方および英国薬局方の規格に従って、チオ硫酸塩滴定によって測定される。
本明細書において使用される場合、「総ヨウ素」は、遊離ヨウ素、利用可能なヨウ素、ヨウ化物、ヨウ素酸塩および溶液中のヨウ素の他の荷電種を含むすべての形のヨウ素を指す。
本明細書において使用される場合、「有効量」は、本発明の方法によるPVP−Iを含有する医薬製剤の、適用に有効であるのに十分である、投与量および投与の頻度を指す。有効量は、患者の年齢、性別、体重、鼻道の容積などによって、当業者によって理解されている仕方で変化する。適切な投与量および投与頻度は、通常の試験を通じて確かめることができる。
本明細書において使用される場合、「PVP−I NS」は、本発明によって広く定義されているように、鼻腔内使用のためのPVP−Iを含有する医薬製剤を指す、または言及されている特定の実施例に関して使用される場合に、実施例に記載されているように調製される0.25%PVP−I鼻内スプレーを指す。
本明細書において使用される場合、「周囲温度」は、本発明の方法が行われる環境の中の温度を指す。典型的には、周囲温度は、約10℃〜約30℃である。重要なことには、「周囲温度」という用語は、医薬製剤も治療される被験者の鼻道も、本発明の方法を実施する際に、外部加熱に曝露されないことを意味する。
「ウイルス排出」は、鼻洗浄液中または鼻の他のサンプリング技術による物の中に存在するウイルスの量または濃度を指す。本明細書において使用される場合、その用語は、一般に、それぞれが、かぜの期間中の、鼻道におけるウイルスの濃度または量を指す「ウイルス量」および「細胞外ウイルス量」または「EVL」という用語に相当する。
本明細書において使用される場合、「リポソーム」という用語は、当技術分野において通常の意味を有するが、「粒子状担体」は、Fleischerらによる国際特許出願WO99/60998号に一般に定義され、使用され、言及されているような、リポソーム、マイクロスフェア、ナノ粒子、粗大多孔質粒子(LPP)またはレーザーパルスポリマーコート分子製剤を意味する。本明細書において使用される場合、「リポソームPVP−I」または「リポソームPVP−I製剤」という用語は、PVP−Iが主にリポソームまたは他の粒子状担体中に閉じ込められている、PVP−Iを含有するすべての製剤を指す。反対に、「非リポソームPVP−I」または「非リポソームPVP−I製剤」という用語は、PVP−Iの大部分が、リポソームまたは他の粒子状担体に閉じ込められていない、カプセル化されていないまたは別のやり方で結合されていない、PVP−Iの製剤を指す。
[発明の詳細な説明]
本発明は、感冒および続発症の治療および予防のための方法であって、すべての場合において、周囲温度における非リポソームPVP−I製剤のヒト被験者の鼻道への適用を用い、PVP−Iの濃度が0.10%w/v以上、2.5%w/v以下である方法を含む。本発明の方法は、かぜの症状の重症度または持続期間を減少させることを含む、感冒のカギとなる臨床的尺度において、かなりの良好な転帰をもたらし、それによって感冒の有効な治療のための方法を構成する。
本発明の方法は、副鼻腔炎、気管支炎および中耳炎などのよくある二次的疾病の発生率、リスクまたは重症度を減少させるという点から見て、利益をさらにもたらす。本方法は、リスクのある患者集団における、重篤なLRIおよび疾患増悪の発生率、リスクまたは重症度を減少させるという点から見て、利益をさらにもたらす。本方法は、鼻道からのウイルス排出を減少させ、それによって家族および他者へのかぜの伝播のリスクを減少させるという点から見て、利益をさらにもたらす。本方法は、被験者が他の人々からのかぜに曝露される場合に、感冒にかかることを回避するという点から見て、利益をさらにもたらす。
非リポソームPVP−I製剤が、かぜを治療するおよび予防するのに有効であり得るという本発見は、当技術分野において公知であり、本明細書において先に概説されているすべての欠点にもかかわらず行われ、本開示がなければ、当業者は、開示されているPVP−I製剤が、そのような適用に安全および有効であるという結論に至らなかった。
本発明者らがこの発見へと導いた1つの進歩性は、HRVによって引き起こされる典型的なかぜの経過の数理モデルを、彼らが創り出したことであった。本明細書において「HRVモデル」と称されるこのモデルを、実施例1においてさらに詳しく述べる。HRVモデルは、HRVによって引き起こされるかぜの期間中のウイルス量およびかぜ症状に影響を及ぼす多数の変数についてのおよびその変数間の仮定、データおよび関係を統合し、それによって、典型的なHRVかぜのウイルス量および症状を、HRVかぜの経過期間にわたって予測することができる。HRVモデルは、本発明の方法に従って鼻道に適用されるPVP−I製剤の影響をさらに統合して組み込んでおり、そのような適用がウイルス量および症状に及ぼす影響を、かぜの経過期間にわたって予測することができる。
HRVモデルを使用して、本発明者らは、PVP−Iが、HRVに対して比較的弱い活性を有し得、さらに、そのようないずれの効果も、不活性化およびクリアランスによって有意に低下し得るが、本発明の方法に従って使用される場合、PVP−Iは、鼻道におけるHRVウイルス量を有意に減少させるのに有効であり得ることを発見した。さらに、この減少は、驚いたことに、かぜ症状およびかぜ持続期間の有意な減少を導く。HRVが、PVP−Iの作用に対して最も耐性であることが公知のウイルスであることを考慮すると、モデルによって予測されるHRVに対する活性は、本発明の方法が、より感受性の他のウイルスによって引き起こされるかぜを治療するのに少なくとも有効とされることを示唆している。
先に述べられた非特許文献10および非特許文献9による、理想的なin vitro条件下におけるデータに基づいて、研究者は、鼻道に使用するための、適した濃度の非リポソームPVP−I製剤は、2分間にHRVウイルス量のおよそ1.6logの減少(97.5%の減少)をもたらし、これは、かぜの期間中のクリアランス効果を考慮すると、ウイルスをPVP−Iに曝露するための時間の妥当な近似値であると予期することができた。さらに、ウイルスおよび細胞を含む、鼻の中のムチンおよび有機物質による不活性化のために、その能力が低下することを斟酌すると、それぞれの適用後のウイルス量の正味の減少(%)を推定することができる。例えば、不活性化による低下の影響が50%であれば、PVP−Iのそれぞれの適用で、HRVウイルス量の有効な減少は38.8%まで下落し、低下の影響がさらに80%に増加すれば、HRVウイルス量の有効な減少は19.5%まで下落する。しかし、モデルに従っておよび適用の適した頻度を用いて、それぞれの適用後、19.5%のウイルス量の減少でさえも、かぜの間にわたって、ウイルス排出、かぜ症状の重症度およびかぜの持続期間の大幅な減少を引き起こすのに十分にウイルス量を減少させる。この驚くべき結果は、HRVによる低効率の細胞感染および再感染、HRVウイルス粒子の臨界数が、感染を開始し長続きさせるために必要とされるという事実、HRVの比較的長い感染サイクルならびにPVP−I製剤の反復適用の頻度を含む、モデルに統合された因子の組合せによるものである。
モデルはまた、驚いたことに、本発明の方法によるPVP−I製剤が、最初の症状から24時間後、48時間後または72時間後に最初に導入されるかどうかにかかわらず、本方法は、症状およびかぜ持続期間において、その後のかなりの減少をもたらすことを予測する。したがって、感冒の治療としてのPVP−Iの使用は、一般に、いずれのかぜ治療にとっても障壁または欠点と考えられている短い介入枠によって妨げられることはない。
本発明者らは、HRVモデルによって予測される転帰および感冒を治療する際の本発明の方法の有効性を、実施例2および4にさらに記載されているパイロット臨床試験によって検証した。実施例2は、治療前に少なくとも24時間かぜを確認していた人々において、総症状スコア(TSS)およびかぜ持続期間または疾病が緩和する時間(TAI)の減少によって測定されるように、本発明の方法によるPVP−I製剤は、HRVかぜおよび他のウイルスによって引き起こされるかぜを治療するのに有効であることを示した。実施例4は、かぜの最初の徴候を有した人々において、本発明の方法によるPVP−I製剤は、TSSを全般的に90%超減少させ、彼らがさもなければ個人の日常の活動に支障があるレベルに達するかぜ症状を予防するのに有効であることを示した。
ウイルス量は試験において直接的に評価されないが、HRVモデルによって予測されるように、PVP−Iの主な作用機序が、遊離ヨウ素によるウイルスの破壊に基づいていることを考慮すると、鼻道におけるウイルスの活性、生存率および/または数が減少し、それによって鼻からのウイルス排出が減少すると結論付けるのが妥当であるに違いない。
さらに、ウイルス量を抑制することおよびウイルスが鼻道に存在する期間を短縮することおよびかぜ症状、特に粘液分泌物を減少させることによって、本発明の方法は、気管支炎、中耳炎および副鼻腔炎などの二次的疾病の発生率または重症度を減少させる。これは、ウイルス量および粘液分泌物の減少が、相当量の感染性ウイルスの、それぞれ気管支、中耳および洞などの第2の場所への移動のリスクを減少させるためである。実施例2、3および4は、この効果のさらなる証拠を提供する。
同様に、ウイルス量を抑制すること、ウイルスが鼻道に存在する期間を短縮することおよび粘液分泌物を減少させることによって、本発明の方法は、リスクのある人における、重篤なLRIおよび/または呼吸器の基礎疾患の増悪のリスクおよび/または重症度を減少させる。
同様に、ウイルス量を抑制すること、ウイルスが鼻道に存在する期間を短縮することおよび粘液分泌物を減少させることによって、本発明の方法は、感染した人から他の人々へのウイルスの伝播のリスクを減少させる。
本発明の方法はまた、まだかぜには罹っていないが、かぜ症状を伴う他者に曝露される人々において、かぜを予防または回避するのに有効である。かぜの予防に関して、治療に関する考慮すべき事柄の中には、当てはまらないものもある。特に、PVP−I製剤を用いた介入の目的が、主に、ウイルス量を減少させ、感染サイクルを遮断し、それによってかぜの持続期間を短縮することではなく、主に、免疫原性の刺激物質を除去し、それによってかぜの局所症状および全身症状を減少させることでもない。むしろ、それは、かぜウイルスが鼻の細胞を感染させる機会を有する前に、鼻道におけるかぜウイルスを破壊することまたはかぜウイルスの放出後、かぜ症状が最初に現れる前の、細胞感染サイクルの初期の間に、かぜウイルスを破壊することまたはかぜの最初の徴候時およびかぜ症状が完全に発症する好機を有する前に、かぜウイルスを破壊することである。実施例3に記載されているように、本発明の方法によるPVP−I製剤は、人がかぜに曝露されるまたは曝露された可能性がある後に使用される場合に、重篤なかぜの発生率を、18カ月間にわたって、およそ88%減少させた。さらに、実施例4に示されているように、本発明の方法によるPVP−I製剤は、人が最初にかぜ症状を感知した後に使用される場合に、かぜが盛んになるのを予防し、典型的にはかぜ症状に関連する支障を排除した。
本発明のPVP−I製剤の、かぜの期間中にウイルス量を低下させるという予測された直接的な効果に加えて、特定の理論的説明に限定されることを望むものではないが、本発明者らは、感冒を治療するおよび予防する際に観察された驚くべき好ましい転帰は、ある場合には、PVP−Iの直接的な効果を増大又は補完し、別の場合では、理論的に明らかな制限的な効果にもかかわらず、驚くべきことに、有利にも、実際に作用して、かぜを治療する際のPVP−Iの有効性に寄与し得る、他の作用機序による好都合かつ予期せぬ相互作用によるものであり得ると考える。いずれの疾病においてもPVP−Iの有効性についての説明として、これらの他の機序の組合せおよび相互作用は、以前に開示されていない。
例として、ここでも特定の理論的説明に限定されることを望むものではないが、かぜを治療する際に観察された鼻腔内PVP−Iの有用性は、ひとつには、ウイルスの付着および細胞への侵入に必須である、鼻の細胞の表面上のウイルス受容体タンパク質およびウイルスの表面上のそれらのタンパク質にPVP−Iが及ぼす影響によるものであり得る。Sriwilaijaroen他著(「Mechanisms of the action of povidone−iodine against human and avian influenza A viruses:its effects on hemagglutination and sialidase activities.」Virology Journal 6.1(2009):124ページ)によって最近開示されているように、PVP−Iは、ウイルス上のおよび/または細胞表面上の受容体タンパク質の結合タンパク質を変更することによって、ヒト細胞へのインフルエンザウイルスの付着をブロックすることができる。インフルエンザウイルスは、ほんのわずかな割合のかぜの、公知の原因であるが、類似の効果が恐らくHRVおよび他のかぜウイルス対して起こり得る。この効果は、かぜを治療する際に観察されるPVP−Iの有用性をさらに説明し、それに寄与することができ、かぜを予防する際のその有効性にも寄与し得る。
さらなる例として、ここでも特定の理論的説明に限定されることを望むものではないが、かぜを治療する際に観察されたPVP−Iの有用性は、ひとつには、遊離ヨウ素が多くのタンパク質と相互作用し、鼻粘液中の免疫シグナルタンパク質を、恐らく損傷および/または不活性化し得るという事実によるものであり得る。Konig他著(「Effects of Betaisodona(登録商標)on parameters of host defense.」Dermatology 195.Suppl.2(1997):42〜48ページ)は、免疫細胞がサイトカインTNF−αを放出した後に、PVP−Iがサイトカインを不活性化することを実証した。Kesslerらの米国特許第8,303,994号は、遊離ヨウ素が、黄色ブドウ球菌(Staph aureus)のエンテロトキシンとT−細胞との間の結合を妨げ、T−細胞にサイトカインを放出するのを抑えたことを開示している。この可能な効果は、かぜを治療する際に観察されたPVP−Iの有用性をさらに説明し、それに寄与することができる。
さらなる例として、ここでも特定の理論的説明に限定されることを望むものではないが、かぜを治療する際に観察されたPVP−Iの有用性は、単球および顆粒球に対するPVP−Iの毒性のためであり得、この特徴が、欠点というよりもむしろ、驚いたことに、本発明の方法によるPVP−Iでかぜを治療する際に観察された有効な転帰に有利にも寄与し得ることであり得る。この理由は、これらの細胞を排除することによって、さもなければこれらの細胞からのサイトカインの放出によって引き起こされる全身症状の伝播および拡大を、PVP−Iが抑えるためである。さらなる説明として、HRVモデルによって予測されるような、PVP−Iがウイルス量に及ぼす直接的な影響が、かぜの間にわたって非常に深在性であるため、ウイルスを排除するという免疫細胞の通常の役割が、状態の治療において大いに過剰になり、HRVモデルにかける場合、本発明の方法によるPVP−Iを使用すると、PVP−Iの毒性作用による免疫細胞の排除が感染または症状の過程に及ぼす影響は無視できる。
これから概説される、本発明の方法の重要な構成要素を表す、本発明のいくつかの態様が存在する。本発明の1つの重要な態様は、本発明の方法によるPVP−I製剤が、本明細書に定義されているような非リポソームPVP−I製剤であることである。これは、本明細書において先に述べられた非特許文献10および非特許文献5にさらに記載されているように、それらの減少された毒性、長時間の作用および改善された忍容性のために、MRSAコロニーの排除などの、鼻腔内使用のためのリポソームPVP−I製剤の使用を支持する、当技術分野における現在の見解に反している。リポソームPVP−I製剤は、Reimer他著(「Povidone−iodine liposomes an overview.」Dermatology 195.Suppl.2(1997):93〜99ページ)によって、より完全に記載されており、典型的には、多層小胞または単層小胞での調製に、PVP−Iの大部分のカプセル化を必要とする。これおよび本明細書に引用されている他の参照文献は、これらの性質は、眼の感染症を予防するまたは治療する、創傷における感染症を予防するおよび抗生物質に耐性を示す細菌を鼻道から排除するのに有用であり得、低毒性および高忍容性と併せて、長時間の滞留および抗菌作用が重要であり得るすべての場合に有用であり得ることを示唆している。
リポソームPVP−I製剤において、非常に大部分のPVP−Iが、リポソーム中にカプセル化され、小部分のPVP−Iおよび/または遊離ヨウ素が、水溶液中のリポソームの外側で、リポソームの内部のPVP−Iおよび/または遊離ヨウ素との平衡を保った形で存在する。しかし、リポソームの外側の遊離ヨウ素のみが、微生物との相互作用に利用可能である。この2相系(リポソーム相−水相)は、リポソームの外側の比較的低レベルの活性剤を保証し、これがその減少された毒性と一致する。PVPは、不活性であり、認識可能な毒性を全く有さないことが公知であるため、PVP−I製剤中の唯一の毒性は、リポソームのものであろうと非リポソームのものであろうと、遊離ヨウ素から生じる。それ故に、当業者には、非リポソームPVP−I製剤と比較して、リポソームPVP−I製剤の減少された毒性は、主として、リポソームの外側の非常に低い遊離ヨウ素レベルによるに違いないことは明白である。これは、遊離ヨウ素のみがいずれの抗菌性も有することを考慮すると、水性PVP−I製剤と比較した、リポソームPVP−I製剤の減少された抗菌性によってさらに証明される。
リポソームの2相系が、PVP−Iおよび/または遊離ヨウ素の放出を遅らせ、それによって、他の因子がなければ、長時間にわたって延長された放出および作用のより長い持続期間をもたらすことは明らかである。系はまた、かぜの期間中に起こるような、抗菌作用および不活性化による遊離ヨウ素の枯渇に反応して、水相中へのPVP−Iおよび/または遊離ヨウ素の補充速度および/または量を必然的に減少させる。よって、リポソームPVP−I製剤は、一般に、かぜの期間中、特に遊離ヨウ素の不活性化および急速なクリアランスに直面する際の、急速な作用および高い瞬間効力の必要性を相殺する、遊離ヨウ素の低い瞬間レベルおよびリポソーム相からの遅い補充速度のために、かぜの治療には適さない。
さらに、リポソームPVP−I製剤は、HRVに対してそれほど有効ではない。先に述べられた非特許文献10は、HRVに対する活性について、リポソームおよび非リポソームPVP−I製剤を比較した。30秒の曝露後に、水性PVP−I製剤は、ウイルスの1.1logの減少(92%の減少)をもたらしたが、これと比較して、同一濃度のPVP−Iに基づくリポソームPVP−I製剤については、0.2logのみの減少(37%の減少)であった。かぜの期間中に達成され得る最長の曝露時間に近づきつつありそうな2分の曝露後に、その減少は、それぞれ1.6log(97.5%)および0.6log(75%)であった。しかし、これらの試験は、理想的なin vitro条件下で行われた。かぜの期間中、リポソームPVP−I製剤において、リポソームの外側の少量の活性剤は、急速な不活性化および希釈を受けるため、in vivoにおけるHRVウイルス量に及ぼす直接的な影響は無視できると予期される。リポソーム相の外側の活性剤の遅い補充速度のために、いずれの長時間の影響も、急速なクリアランスおよびさらなる不活性化によって相殺される。要約すると、かぜの場合には、より急速におよび強力に作用する薬剤が必須であり、リポソームPVP−I製剤の利益、すなわち、減少された毒性および作用のより長い持続期間が、感冒の治療に望まれる転帰に対して働く。それ故に、本発明は、PVP−I製剤は、PVP−Iの大部分がリポソーム中に閉じ込められていない非リポソーム製剤であることが強く好ましく、本明細書におけるPVP−I製剤、製剤または溶液への、後に続くすべての言及は、他に特に規定されない限り、非リポソームPVP−I製剤を指す。
本発明の別の態様は、PVP−I製剤中のPVP−I濃度は、特に不活性化およびクリアランスを考慮すると、かぜの期間中に最も急速で強力な作用を及ぼすためには、0.10%w/vよりも高い濃度であるべきであるということである。PVP−Iの濃度が10%からおよそ0.2%まで減少するのにつれて、PVP−I溶液中の遊離ヨウ素濃度は逆説的に増加することが、当技術分野において公知である。この理由は、PVP−I溶液が希釈されるにつれて、遊離ヨウ素がポリマー−ヨウ素複合体から解離し、溶液中に放出され、それによって遊離ヨウ素レベルが増加し、ポリマーに結合されたままの利用可能なヨウ素の量が減少するためである。このことについて、Atemnkeng他著(「Comparison of free and bound iodine and iodide species as a function of the dilution of three commercial povidone−iodine formulations and their microbicidal activity.」International Journal of Pharmaceutics 317.2(2006):161〜166ページ)は、0.10%未満のPVP−I濃度で、利用可能なヨウ素が非常に枯渇することを見出した。PVP−I濃度が0.05%未満に減少すると、利用可能なヨウ素の大部分は、複合体から遊離ヨウ素の形で解き放たれて、溶液が効果的に水性ヨウ素溶液になり、PVP−Iのいずれのレザバーの影響も、すべての実際的な目的のために排除される。すべての場合において、当業者であれば、PVP−I製剤が、有効であるためにおよび主にヨウ素溶液よりもむしろPVP−I溶液を効率的に構成するために、遊離ヨウ素の大部分がポリマーに結合され、溶液中にはわずかに少数の遊離ヨウ素のみ存在する必要があると結論付ける。
上記参照のAtemnkengによってさらに報告されているように、最も高い遊離ヨウ素レベルは、PVP−I濃度が0.1%から0.5%の場合に起こった。このことを考慮すると、0.1%超から1.0%未満の間のPVP−I濃度が好ましく、0.2%から0.5%の濃度が最も好ましい。
鼻の繊毛上皮に及ぼす鼻腔内薬剤の影響は、鼻の中にPVP−I製剤を使用するにあたり、考慮すべき重要な事柄である。この理由として、いずれの毛様体毒性も、通常の粘液線毛クリアランス機能にとって不利益であり得、毛様体毒性を引き起こすいずれの薬剤も、一般的なまたは広範囲に及ぶ使用には適さないと考えられ得るためである。本明細書において先に述べられた非特許文献9は、2.5%以上の濃度のPVP−Iを含有するPVP−I溶液は、毛様体毒性であり、絨毛機能の完全な喪失を引き起こしたことに留意している。しかし、1.25%以下の濃度は、毛様体毒性ではなかった。このことを考慮すると、鼻内使用のための組成物は、PVP−I濃度が2.5%未満であり、好ましくは1.25%以下であるべきである。
PVP−Iの鼻腔内忍容性に関しては、毛様体毒性とは異なるが、本発明者らは、水性製剤中のPVP−Iの濃度が1.0%より高いと、製剤に鼻粘膜を刺激される人もいて、感冒の有効な治療または予防に必要とされる反復、頻回および一般的な使用には適さないことを発見した。このことを考慮すると、鼻内使用のための好ましい組成物は、1.0%以下のPVP−Iの濃度である。
特に感冒の治療および予防における、鼻腔内使用のための任意のPVP−I溶液の安全性および有用性に影響を及ぼし得るという、先に確認した欠点は、ヨウ素吸収の見込みおよび過剰なヨウ素の取り込みの可能性であり、特に甲状腺疾患を有する人々における、血清ヨウ素レベルの上昇および甲状腺機能への不要な作用が結果として生じることである。米国において、国立衛生研究所のガイドラインは、成人によるヨウ素摂取の安全な上限は、1日当たり1,100マイクログラムのヨウ素であると記載している。本発明の方法によると、PVP−I濃度が0.5%である場合、成人に対して0.6mLの用量を1日4回送達すると、この上限に達する。しかし、PVP−I製剤から利用可能なヨウ素の全身バイオアベイラビリティーは、そのような計算によって示されるレベルよりも恐らく大幅に低い可能性がある。主に吸収されるヨウ素部分ならびに血清ヨウ素レベルおよび甲状腺機能に関する懸念材料は、ヨウ化物イオンである。感冒の治療において、相当なウイルス性物質および他のタンパク質、特に糖タンパク質であるムチンが存在する場合、PVP−Iから放出される相当な割合の任意の遊離ヨウ素が、不可逆的にタンパク質に結合するようになり、ヨウ化物イオンへの変換または鼻粘膜を通じた血流への後の取り込みに利用できない。それ故に、1.0%のPVP−I濃度でさえも、ヨウ化物の取り込みが、安全な1日限界量に達するかまたはそれを超える可能性は低い。しかし、非常に好ましい実施形態では、鼻腔内使用のためのPVP−I濃度は、0.5%未満のPVP−Iを含有する。
本発明の最後の態様は、PVP−I製剤を、鼻道に熱を補助的にまたは外部に使用することなく、鼻道に適用することである。鼻温熱療法は、鼻道に加熱および加湿された空気を適用することを含む、かぜを治療するために最近普及している方法である。Aroll著(「Non−antibiotic treatments for upper−respiratory tract infections (common cold).」Respiratory Medicine 99.12(2005):1477〜1484ページ)によって報告されているように、殺菌剤の補助的使用を行わない鼻温熱療法は、かぜを治療するのに有効であり得る。PVP−I製剤は、熱に不安定であり、PVP−I製剤が適用される環境の加熱は、特に予測不可能なまたは上昇された瞬間遊離ヨウ素レベルを引き起こすような、製剤の不安定性につながる可能性があり、そうでなければ鼻粘膜上のアレルギー反応、毒性反応または他の局所反応のリスクを増加させ得る。高められたヨウ素吸収、全身毒性および他の不要な作用にもつながり得る。それ故に、本発明のある態様は、適用が、周囲温度、特に100°F未満で行われ、外部または補助的な加熱の使用を行わないことである。
要約すると、本発明は、実施例1、2、3および4に概説されているような、感冒におけるPVP−Iの驚くべき良好な治療効果が、(a)実施例1に記載の通り、感染サイクルを遮断し、免疫応答の免疫原性の刺激物質を除去するための、鼻道におけるウイルスの活性、生存率および/または数の低下、(b)免疫細胞の生存率の減少による細胞性免疫応答の直接的な妨害ならびに(c)細胞またはウイルス上の結合タンパク質の変性または変更を通じた、標的細胞へのウイルスの付着の阻止を含む、いくつかの好都合な作用の組合せの成果であり得ることを認識し、結論付ける。かぜを治療する際に観察されるPVP−Iの有効性にさらに寄与する、本明細書に記載されていない他の効果が存在し得る。
さらに、本発明は、リポソームPVP−I製剤が、感冒の治療における使用には適しておらず、非リポソームPVP−I製剤であることが非常に好ましいことを認識している。さらに、本発明は、PVP−I溶液を効率的に構成するためにおよび感冒の治療または予防に有効であるのに十分な抗菌力を有するために、PVP−Iの濃度は、溶液の0.10%より高くなければならないことを認識している。さらに、本発明は、安全性、忍容性および毛様体毒性を考慮するために、製剤中のPVP−Iの濃度は、2.5%未満、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.5%以下であるべきであることを認識している。
先行技術は、ある特定の呼吸器状態を治療するまたは予防するために、ある特定のヨウ素またはPVP−Iベースの製剤を使用するための方法を開示しているが、いくつかのみが感冒の治療または予防におけるPVP−Iの使用に対処しており、これらのうちで、本明細書に開示されている本発明の方法を開示しているまたはこれに先行しているものはない。
参照によって本明細書に組み込まれるPiccianoの米国特許第6,171,611号は、副鼻腔炎および関係する状態を予防するおよび/または治療するための、冒されている患者の鼻孔に溶液を適用することによる、鼻用ヨウ素溶液および方法を開示している。この参照文献はPVP−Iの使用を開示しておらず、それは感冒の治療または予防も開示していない。
参照によって本明細書に組み込まれるLeshchinerらによる米国特許出願公開第2006/0280809号は、PVP−Iが耳および鼻の感染症を治療するために使用することができることを開示しており、そのために、ある特定の添加剤、特に油およびある特定の媒体、特にグリコサミノグリカンと組み合わせた、5%から50%のPVP−Iを含有する医薬組成物を請求している。PVP−Iを用いた感冒の治療または予防の開示は全く存在せず、提案されているPVP−I濃度は、本発明の範囲外であり、鼻道において毒性であることが公知である。
参照によって本明細書に組み込まれるRezakhanyによる米国特許出願公開第2010/0203166号は、咽喉において口内洗浄剤またはマウスウォッシュを撹拌するまたは含嗽することによって、蒸気が鼻道に浸透するのを可能にする、呼吸器感染症を阻止するための方法であって、ヨウ素が口内洗浄剤溶液中の成分であり得る方法を開示している。それは、PVP−Iを利用するいずれの組成物にも、感冒を治療するまたは予防するためのいずれの鼻腔内方法にも言及されていない。
参照によって本明細書に組み込まれるKrauserの米国特許第5,038,769号は、100°Fより高い温度に加熱された空気の鼻道への適用、その後の鼻内スプレーにおける殺菌剤の適用を含み、殺菌剤が0.5%PVP−I溶液を含み得る、感冒を治療するための方法および装置を開示している。開示されている方法は、すべての場合に、鼻道への加熱空気の、前もって必要な適用および併用を必要とする。加熱空気を適用せず、周囲温度でのPVP−I製剤の使用は、開示されていない。
参照によって本明細書に組み込まれるFleischerらによる米国特許第7,297,344号は、鼻道に使用するためのリポソームPVP−I製剤を開示しており、HIVおよび臓器移植後などの免疫不全状態に関連する単純ヘルペスウイルス感染症および日和見感染症、急性および慢性の咽頭喉頭炎、アンギナならびに特に機能的および美容的な組織リモデリングにおける組織修復への適用を含む特定の例を用いた、「鼻、口および咽喉の感染症の局所治療」としての1つの非常に好ましい使用を確認している。感冒を治療するまたは予防するための方法は開示されておらず、リポソームPVP−I製剤以外のPVP−I製剤の使用も開示されていない。
参照によって本明細書に組み込まれる、Hansenの米国特許第6,694,041号および関連出願US2003/0180380A1は、ヨウ素溶液をある特定の塩と組み合わせて含む鼻内スプレーを使用することによって、感冒を治療するまたは予防するための方法を開示している。すべての場合において、この特許は、ヨウ素を他のハロゲン塩またはグルコン酸亜鉛と組み合わせた使用ならびに状況および例証に基づいた使用を明記しており、「ヨウ素」は、遊離ヨウ素よりもむしろ、総ヨウ素および特にヨウ化物を指す。PVP−Iは、いくらかのヨウ素の可能な源として開示されているが、例示されている製剤は、0.05%未満のPVP−Iを含有し、それによってPVP−Iの溶液よりもむしろ、ヨウ素溶液を構成しており、感冒を治療するまたは予防するのに有効ではなく、本発明において開示されている濃度範囲外である。この特許は、感冒の治療のためのPVP−Iの使用の示唆のみを与えているが、特に例証を考慮すると、当業者はその示唆によって現在請求されている発明には至らない。
要約すると、本発明は、先行技術によって開示または先行されていない、感冒の治療および予防のための方法を記載している。
よって、第1の態様では、本発明は、ヒト被験者における感冒を治療する方法であって、ヒト被験者の鼻道に、周囲温度で、0.10%w/vより高く約2.5%w/v未満の濃度でポビドンヨード(PVP−I)を含む医薬製剤の有効量を適用することを含み、PVP−Iの少なくとも50%が、リポソームまたは他の粒子状担体に結合しておらず、感冒の原因となるまたは原因となる可能性のある因子がウイルスである、方法を提供する。
第2の態様では、本発明は、ヒト被験者の鼻道内のウイルスの活性、生存率または数を減少させる方法であって、ウイルスが、感冒の原因となるまたは原因となる可能性のある因子であり、ヒト被験者の鼻道に、周囲温度で、0.10%w/vより高く約2.5%w/v未満の濃度でポビドンヨード(PVP−I)を含む医薬製剤の有効量を適用することを含み、PVP−Iの少なくとも50%が、リポソームまたは他の粒子状担体に結合していない、方法を提供する。
第3の態様では、本発明は、ヒト被験者における感冒の症状を軽減する方法であって、ヒト被験者の鼻道に、周囲温度で、0.10%w/vより高く約2.5%w/v未満の濃度でポビドンヨード(PVP−I)を含む医薬製剤の有効量を適用することを含み、PVP−Iの少なくとも50%が、リポソームまたは他の粒子状担体に結合しておらず、感冒の原因となるまたは原因となる可能性のある因子がウイルスである、方法を提供する。
第4の態様では、本発明は、ヒト被験者における感冒の持続期間を減少させる方法であって、ヒト被験者の鼻道に、周囲温度で、0.10%w/vより高く約2.5%w/v未満の濃度でポビドンヨード(PVP−I)を含む医薬製剤の有効量を適用することを含み、PVP−Iの少なくとも50%が、リポソームまたは他の粒子状担体に結合しておらず、感冒の原因となるまたは原因となる可能性のある因子がウイルスである、方法を提供する。
第5の態様では、本発明は、ヒト被験者における感冒に関連する二次的疾病のリスク、発生率または重症度を減少させる方法であって、二次的疾病が、気管支炎、中耳炎および副鼻腔炎からなる群から選択され、ヒト被験者の鼻道に、周囲温度で、0.10%w/vより高く約2.5%w/v未満の濃度でポビドンヨード(PVP−I)を含む医薬製剤の有効量を適用することを含み、PVP−Iの少なくとも50%が、リポソームまたは他の粒子状担体に結合しておらず、感冒の原因となるまたは原因となる可能性のある因子がウイルスである、方法を提供する。この態様は、方法が、分泌される粘液の量を減少させ、分泌される粘液中に含有されるかぜウイルスの活性、生存率または数を減少させ、微生物を多く含んだ粘液が存在する期間を減少させるという発見に基づいており、当業者であれば、その発見が、ウイルスが気道の第2の部位へ移動して、二次的疾病を確立するかまたはその一因となるリスクの減少に寄与すると結論付けると予想される。
第6の態様では、本発明は、COPD、喘息、肺気腫もしくは嚢胞性線維症に罹患しているヒト被験者または免疫不全症を有する人に関し、かぜに関連する下気道疾病のリスク、発生率または重症度を減少させる方法であって、ヒト被験者の鼻道に、周囲温度で、0.10%w/vより高く約2.5%w/v未満の濃度でポビドンヨード(PVP−I)を含む医薬製剤の有効量を適用することを含み、PVP−Iの少なくとも50%が、リポソームまたは他の粒子状担体に結合しておらず、感冒の原因となるまたは原因となる可能性のある因子がウイルスである、方法を提供する。この態様は、方法が、初期のかぜ感染の重症度および持続期間を減少させ、それ自体、呼吸器の基礎疾病の増悪のリスクの減少に寄与するという発見に基づいている。加えて、第5の態様と同様に、分泌される粘液の量、分泌される粘液中の微生物の活性、生存率または数および微生物を多く含んだ粘液が存在する期間を減少させることによって、方法は、ウイルスが下気道へ移動して、下気道感染を確立するリスクの減少に寄与する。
第7の態様では、本発明は、感冒の症状を有するヒト被験者から感染していないヒト被験者への感冒の伝播のリスクを予防するまたは減少させる方法であって、かぜ症状を伴うヒト被験者の鼻道に、周囲温度で、0.10%w/vより高く約2.5%w/v未満の濃度でポビドンヨード(PVP−I)を含む医薬製剤の有効量を適用することを含み、PVP−Iの少なくとも50%が、リポソームまたは他の粒子状担体に結合しておらず、感冒の原因となるまたは原因となる可能性のある因子がウイルスである、方法を提供する。この態様は、方法が、分泌される粘液の量、粘液中に排出されたかぜウイルスの活性、生存率または数およびウイルスを多く含んだ粘液が存在する接触感染期間を減少させることによって、かぜの期間中に、ウイルス排出を減少させるという発見に基づいている。それは、伝播を促進する、鼻漏、くしゃみ、咳嗽などの症状および鼻をかむなどの症状に関係する行動も減少させる。
第8の態様では、本発明は、かぜ症状を伴う可能性はないが、かぜ症状を伴う他者に曝露されたヒト被験者における、感冒を回避または抑制する方法であって、ヒト被験者の鼻道に、周囲温度で、0.10%w/vより高く約2.5%w/v未満の濃度でポビドンヨード(PVP−I)を含む医薬製剤の有効量を適用することを含み、PVP−Iの少なくとも50%が、リポソームまたは他の粒子状担体に結合しておらず、感冒の原因となるまたは原因となる可能性のある因子がウイルスである、方法を提供する。この態様は、方法が、鼻道に入る任意のかぜウイルスを十分に不活性化して、かぜ感染症の発症を予防するまたは方法が、感染過程の初期段階にかぜウイルスを排除もしくは十分に不活性化し、それによって感染を阻止もしくは大いに減らすという発見に基づいている。
好ましい実施形態では、製剤中のPVP−Iの濃度は、約0.1%から約1.0%の間であり、より好ましくは約0.2%から約0.5%の間、最も好ましくは約0.2%から0.45%の間である。
好ましい実施形態では、PVP−Iの少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%は、リポソームまたは他の粒子状担体に結合していない。
医薬製剤は、リポソームを含有しないことがさらに好ましい。
好ましい実施形態では、かぜの原因となる因子は、ライノウイルス、ヒトコロナウイルス、インフルエンザウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス、ヒト呼吸器合胞体ウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス以外のエンテロウイルス、メタニューモウイルスおよびそれらの任意の組合せからなる群から選択され、特にライノウイルスである。
別の好ましい実施形態では、医薬製剤を、ヒト被験者の鼻孔中に、1日1回〜12回投与し、約50μL〜約1000μLの医薬製剤を、製剤のそれぞれの投与について、それぞれの鼻孔へ投与する。
別の好ましい実施形態では、冒されている感冒症状は、典型的には、悪寒、頭痛、うずきおよび疼痛、疲労、鼻水、くしゃみ、咳嗽、鼻閉、咽喉痛ならびにそれらの組合せからなる群から選択される。
別の好ましい実施形態では、医薬製剤は、うっ血除去剤、抗ヒスタミン剤、鎮痛剤、解熱剤、抗炎症剤、ステロイド、鎮咳剤または去痰剤からなる群から選択される薬剤をさらに含み得る。
別の好ましい実施形態では、医薬製剤は、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤、添加剤または担体をさらに含み得る。典型的には、薬学的に許容される賦形剤または添加剤は、着香剤、甘味剤、着色剤、溶媒、緩衝剤、アルコール、ポリマー、界面活性剤または製剤の経鼻送達、鼻腔内分布、安定性、有効性、許容性、忍容性もしくは他の有用な特徴を最適化するように設計される他の賦形剤もしくは添加剤である。リポソームまたはリポソーム形成剤が製剤中に含まれる事象では、すべての場合において、製剤中の少数のPVP−Iのみがリポソーム中に閉じ込められる。当技術分野における当業者であれば、方法によって必要とされる通り、鼻腔内使用のための医薬製剤中に使用されるべき担体、賦形剤または添加剤の適切なタイプおよび量を決定することができる。
別の好ましい実施形態では、医薬製剤は、鼻腔内溶液、点滴剤、スプレー剤、ゲル剤、エアゾール剤または吸入剤からなる群から選択される剤形の形態であるが、有効量のPVP−Iを鼻道に投与するのに適した他の任意のデバイスまたは製剤を含み得る。
本発明の本質をより明確に理解することができるように、その好ましい形態が、以下の限定されない実施例を参照して説明される。
本発明の方法の利益を証明し、解明するためにならびに本発明の方法によるPVP−I鼻用製剤のための最適な投与頻度および治療の持続期間を確立するために、本発明者らは、鼻道のHRV感染症および感冒の総体的症状について公表されている情報から導かれる変数および仮定を使用して、HRVによって引き起こされる典型的な感冒感染の数理モデルを創り出した。そのモデルは、本発明において「HRVモデル」と称され、HRVかぜの典型的な総持続期間を包含する、最初の感染の瞬間から次に続く9日間までの経時的な細胞外ウイルス量(EVL)を予測する。HRVモデルには、公表されているデータに基づいたHRVの複製速度および感染サイクルについての仮定ならびに初期接種におけるウイルス数、細胞再感染率、感染した各細胞から放出されるウイルス数ならびに免疫応答がウイルス量に及ぼすタイミングおよび影響についての仮定を組み込んだ。モデルに組み込まれた変数のリストを表1に示す。
Figure 2021059553
被験者をHRVに故意に感染させた後にウイルス量を経時的に測定した4つの臨床試験からのデータに基づいた、HRV感染症についてのウイルス量の典型的なパターンと、モデルからのウイルス量予想のパターンを比較することによって、モデルを較正した。参照によって本明細書に組み込まれるこれらの試験は、Schiff G.他著「Clinical Activity of Pleconaril in an Experimentally Induced Coxsackievirus A21 Respiratory Infection」Journal of Infectious Diseases,2000,181:20〜26ページ;Hayden,F.他著「Efficacy and safety of oral pleconaril for treatment of colds due to picornaviruses in adults:results of 2 double−blind,randomized,placebo−controlled trials」Clinical Infectious Diseases 36.12(2003):1523〜1532ページ;Gern J.他著「Inhibition of Rhinovirus Replication In Vitro and In Vivo by Acid−Buffered Saline」Journal of Infectious Diseases,2007,195:1137〜1143ページ;Turner R.他著「Efficacy of Tremacamra,a Soluble Intercellular Adhesion Molecule 1,for Experimental Rhinovirus Infection:A randomized Clinical Trial」JAMA,1999,281巻,第19号,1797〜1804ページである。
HRV感染の通常の過程にわたってEVLを予測することに加えて、公表されているデータから、EVLと症状との間の公知の関係に基づいて、全般的なかぜ症状の重症度を予測するように、モデルを設計した。症状をHRVウイルス量と併せて評価した2つの臨床試験(Schiff他著、2000;Hayden他著、2003、両文献とも上記にて言及されている)からのデータに基づいた、HRV感染症についての症状スコアの典型的なパターンと、モデルからの症状スコア予想のパターンを比較することによって、モデルによって予測された症状スコアを較正した。
次いで、HRVのウイルス量を減少させるPVP−Iの公知の性能、かぜの期間中の鼻道におけるウイルスのPVP−Iへの可能性のある曝露時間、不活性化がPVP−Iの能力に及ぼす低下の影響に基づいて、ならびに異なる1日当たりの投与頻度、治療の持続期間ならびに最初の症状後に治療が開始される前の3つの異なる遅延、すなわち24時間、48時間および72時間を適用して、本発明に定義されているPVP−I製剤の予期された効果をHRVモデルにかけた。モデルは、PVP−Iが最初の症状から24、48または72時間後に使用されたかどうかにかかわらず、PVP−IがEVL、症状およびかぜ持続期間に急速で重要な影響を及ぼすことを予測した。明らかに、PVP−I介入が早ければ早いほど、かぜの総持続期間が短いが、それらが使用されなければならない最初の症状から限られた時間枠後に受ける抗ウイルス薬とは異なり、驚いたことに、最初の症状から72時間後に初めて使用した場合でさえも、PVP−Iが、未治療のかぜと比較して、EVLの急速な下降およびその結果として予想された症状重症度の急速な下降を引き起こしたという点において、HRVモデルはPVP−Iに類似した制約が全くないことを予測した。
典型的な一連のモデル仮定に基づいた、EVLおよび症状についてのモデル予想を、図1および図2に示す。最初の症状から24時間後に開始する治療についてのデータのみ、図1および図2に示す。この理由は、24時間の遅延は、被験者がかぜ症状に最初に気づいた後の治療の開始における予期される通常のおよび実際的な遅延を反映すると考えられるためである。図1は、最初の症状から24時間後におよびその後1日およそ4回、PVP−Iで治療された被験者について、鼻における予想されたウイルス量を、未治療の被験者についての典型的なウイルス量(EVL)データと比較して、時間の関数として示している。
図1に示されているように、HRVモデルは、ウイルス量における最初の下降の後に、それぞれの適用後のEVLの迅速な低下、その後、PVP−I適用の間において、新しいウイルスが感染細胞から放出された時の、ウイルスの再増殖による一連の症状発現を反映する「鋸歯状の」パターンを予想した。HRVモデルによると、かぜの最初の症状から24時間後に、PVP−Iを適用することによって、EVLの増殖を遮断することができ、EVLは抑制されたままであり、次いで、縮小してゼロに近づき、鼻からの排出は効果的に3日以内に止まる。これは、未治療のHRVかぜの場合の最大3週間継続する排出に匹敵する。
予想される症状重症度のチャートを図2に示す。HRVモデルは、EVLの最初のピークを予防し、残存するEVLを繰り返し低下させることによって、PVP−Iは、未治療のかぜと比較して、急速に症状重症度を減少させ、最初の症状から24時間後に使用される場合には、かぜの総持続期間を、治療開始後平均7日からわずか2〜3日まで縮小することを予測した。
1日4回の投与に代わる投与計画を、より長い治療計画およびPVP−I鼻内スプレーの初期の毎時適用後に1日4回の適用というより積極的な初期治療レジメンを含むHRVモデルにおいて評価した。5日よりも長い計画での治療は、HRVモデルによると、少ない利益を与えるように思われた。しかし、より積極的な初期の毎時治療は、症状の消退という点から見て、わずかにより急速な転帰を予測した。
7.5%PVP−Iを含有する市販のPVP−I製剤を使用し、実験に着手した。市販の製剤0.67mLを使用し、これと20mLの生理食塩水(およそ1:30希釈)を混合して、0.25%PVP−Iを得、およそ25mLの容積を有し、1回のポンプアクション当たりおよそ100μL送達される、標準的なうっ血除去剤タイプの鼻内スプレー瓶に入れることによって、実験用の鼻内スプレー製剤を調製した。この実験の状況において、この医薬製剤は、「PVP−I NS」と称され得る。
最近かぜを引き、他の点では健康な、本発明者らに知られている成人4名が参加することに同意した。そのうち3名は、春または秋にかぜにかかったため、HRVが原因である可能性が高かった。4人目は、冬の間にかぜを引き、典型的なHRVかぜのものに比べてより重症の初期症状を示していたため、両方の理由で、コロナウイルス、インフルエンザウイルスまたはRSVが原因である可能性があった。HRVかぜを疑われた被験者のうち2名に、1日4回4日間、鼻孔当たり3回ショット(およそ300μL)噴霧するように指示した。HRVの3人目には、同一投与量のPVP−I NSを、最初の4時間は1時間毎に、その後1日4回、合計4日間使用するように指示した。非HRVかぜを疑われた者には、同様に、PVP−I NSを、最初の4時間は1時間毎に、その後1日4回、合計4日間使用するように指示した。
全員、かぜ症状に最初に気づいてからおよそ24時間後に治療を始めた。公表され認められている方法(Jackson,G.他著「Transmission of the common cold to volunteers under controlled conditions:I.The common cold as a clinical entity.」AMA archives of internal medicine 101.2(1958):267〜278ページ)に従い、参加者は症状日記を毎日つけ、5つの局所症状(鼻水、咳嗽、くしゃみ、うっ血、咽喉痛)および3つの全身かぜ症状(倦怠感、頭痛および悪寒)について報告した。症状は、4日間の治療中、PVP−I NSのそれぞれの投与直前に、次いで5日目の朝に報告された。
本試験はプラセボ対照臨床試験ではなかったが、感冒の対照および盲検試験からのプラセボ結果について、利用可能な公表されているデータが存在し、これらは比較する能力に有用な指針を提供するものである。この場合では、プラセボ/未治療のデータを、Eccles他著(「Efficacy and safety of an antiviral Iota−Carrageenan nasal spray:a randomized, double−blind, placebo−controlled exploratory study in volunteers with early symptoms of the common cold.」Respiratory Research 11(2010):108ページ)から導き、評点方法論の差について調整した。
実験において使用される生成物の能力のカギとなる尺度は、(a)8つの局所および全身症状についての症状スコアの1日平均の合計として算出される、総症状スコア(TSS)ならびに(b)治療の開始から、鼻水がなくなり、重症度という点から見て「軽度」より高く評点が付けられる症状が他にない時点に達するまでの時間を、日単位によって決定される、疾病が緩和する時間(TAI)である。TSSは、上記で言及したEccles他(2010)によって記載されているような、かぜ治療薬としてのカラギーナン鼻内スプレーの公表されている試験を含む、いくつかのかぜ治療試験において、治療有効性を確立するための主要評価項目として使用されている。疾病が緩和する時間は、本明細書において先に述べたHayden他(2003)によって記載されているような、抗ウイルス薬であるプレコナリルのための感冒の第III相試験において、主要評価項目として使用された。
被験者1について、TSSは、治療1日目の初めには増加したが、1日目の終わりまでに急速に下降し、2日目の終わりまでには、1日目と比較して大幅に減少した。3日目までに、事実上すべての症状が消退した。被験者2について、TSSは、2日目の終わりまでに最初のレベルの半分ほどまで下落し、4日目までに、事実上すべての症状が消退したが、さらに2日間、支障のないレベルの総体的症状が見られた。より積極的な治療計画に関わった被験者3について、TSSは、治療4時間目の終わりまでに劇的に下落し、2日目の終わりまでに、すべての重要な症状が消退していた。より積極的な治療計画に関わり、非HRVかぜを疑われた被験者4について、かぜ症状は、初めは治療に反応せず、TSSは、治療1日目に大幅に増加した。しかし、2日目の終わりまでに、TSSは、ピークTSSレベルの25%まで降下し、3日目の終わりまでに、症状はほとんど完全に消退した。
すべての参加者は治療を許容可能であったことが分かり、副作用、局所刺激または他の懸念材料を報告した者はいなかった。全員が、自身のかぜは他の方法であれば通常ではどのように進行していたかということについての自身の予想と比較して、PVP−I鼻内スプレーは、自身のかぜを急速に消退させるのに有効であると考えたことを示した。さらに、参加者のうちで、かぜに続いて、副鼻腔炎、中耳炎または気管支炎を含む二次的疾病に罹患した者はいなかった。
試験期間中に各被験者によって報告されたTSSの結果を示すグラフは、図3〜図6に示されている。これらのデータは、HRVかぜを疑われた3名について、一致したパターンを示すが、より積極的な治療計画が採用された被験者3の場合には、かぜ症状の減少は大幅により速かった。被験者4についてのデータは、1日目に、初めは治療に反応しなかったが、2日目の終わりまでに支障はなくなり、その後すぐに消退したことから、より耐性を示す感染症を示唆するものである。これは、HRVかぜに比べてより重症な難治性の症状を有し得る、多くの非HRVかぜに一致する。
図7および表2は、4名の被験者のそれぞれについての1日平均TSSを、公表されている試験から集められた、未治療の典型的な1日平均TSSデータと比較して示している。これらのデータは、PVP−I NSが、未治療のかぜについての公表されているデータと比較して、かぜ症状を減少させるのに有効であり、典型的な未治療の症状スコアと比較して、治療の2日目までに1日平均TSSが平均57%減少し、未治療のかぜについての8日までと比較して、事実上すべての症状が3日目または4日目までに消退したことを示す。
Figure 2021059553
TSSデータを、カラギーナン鼻内スプレーについて報告されているものと比較し、異なる評点方法についての調整を標準化した。本明細書において先で言及したEccles他(2010)によって報告されているカラギーナン試験では、著者は、2、3および4日目についてのTSSの合計を、それらの主要評価項目として使用し、これに対して、カラギーナン鼻内スプレーは、プラセボに対しておよそ25%の症状重症度における全般的な減少を果たした。同一の評価項目に対して、本試験におけるPVP−I NSでの症状重症度の減少は74%であった。
TSSは、治療を比較するための有用な尺度であるが、それは8つの異なる症状についての、重み付けされていないスコアの合成であるため、いくつかの規制当局によって、妥当な臨床的評価項目とみなされない。より妥当な尺度は、疾病が緩和する時間(TAI)、すなわち、かぜ持続期間であると考えられ、これは、本明細書において先に言及したHayden他(2003)によって記載されているプレコナリル第III相試験における主要評価項目であった。本試験において、PVP−I NSは、平均して2.3日でかぜ症状を消退し、これと比較して、プレコナリルでは6.3日およびプラセボでは7.3日であり、PVP−I NSについてのかぜ持続期間は、プラセボと比較して5.0日の差または68%減少した。
全般的に、試験において得られた結果は、鼻腔内PVP−Iが感冒の治療に有効であることを示している。さらに、図3〜図5に示されているように、HRVかぜを疑われた者における治療効果のパターンは、一般に、HRVモデルの予測と一致し、PVP−Iは、ひとつにはEVLの低下によって働き、感染サイクルを遮断し、免疫応答の免疫原性の刺激物質を除去するという提案を支持する。加えて、被験者4については1日目の後を含む、症状の全般的な劇的な減少およびかぜ持続期間の急な短縮は、免疫細胞の生存率の減少による免疫応答の妨害および/またはサイトカインなどのシグナルタンパク質の変性および/または結合タンパク質もしくは受容体タンパク質の変性もしくは変更を通じた、標的細胞へのウイルスの付着の阻止を含む、他のPVP−Iの効果と一致し得る。
本発明者らに知られている成人男性1名が、18カ月の期間にわたってかぜを回避する方法として、予防的にPVP−I NSを使用したときの性能を評価した。その男性は通常、毎年最大6回のひどいかぜを経験していた。この場合、「ひどい」かぜとは、症状が日常の活動に支障をきたし、その他の点で感冒の基準を満たしたものとみなされた。この者は、PVP−I NSを、2回の冬を含めた18カ月間使用した。この期間は、全般的に彼が、通常では少なくとも合計8回のかぜを経験していた期間である。
彼は、実施例2における治療実験で用いたものと同一のPVP−I NS製剤を使用した。彼には、家、職場、旅行先またはどこかで、鼻水、くしゃみまたは咳嗽などのかぜ症状を呈した人に出くわした時のみ、生成物を使用するように指示した。彼には、それぞれの遭遇の後、PVP−I NSを1日2回、5日間使用するように指示した。この者には、市販の7.5%PVP−I製剤、生理食塩溶液の支給および空の25mL鼻内スプレー瓶の支給を行った。かぜ罹患者であると疑われた者との、そのようなそれぞれの遭遇の後、この者は、PVP−I製剤を生理食塩水で1:30に希釈し、希釈した溶液を清潔な25mL鼻内スプレー瓶に注ぐことによって、およそ20mLのPVP−I NSを調製した。次いで、新たに調製された溶液を、遭遇の後に1日2回、5日間使用した。5日間の期間の終了時毎に、鼻内スプレーデバイス中の希釈されたPVP−I NSを捨て、デバイスを洗浄した。期間中、彼には自身が経験したいずれのかぜ症状も書き留めるように指示した。
試験期間の終了時に、彼は、自身が18か月間の期間に1回のみ、ひどいかぜを経験し、典型的には、以前にはかぜの続発症として気管支炎または副鼻腔炎に罹患していたにもかかわらず、気管支炎、副鼻腔炎または中耳炎を含む二次的疾病の事例を全く経験しなかったことを報告した。1回のひどいかぜの事例において、かぜ症状に最初に気づく前の3日間、彼は、かぜ症状を伴う別の者とのいずれの遭遇も認めずまたは気づかず、そのためPVP−I NSを使用しなかった。しかし、彼は、自身のかぜ症状に気づいた後12時間以内にPVP−I NSの1日4回の使用を開始し、2、3日以内にかぜが消退し、およそ1、2日間のみ日常の活動に中等度の支障を引き起こしたことを報告した。これらの結果は、実施例2における結果と一致した。使用者は、治療期間中、PVP−I NSの使用が、かぜに罹る自身のリスクを大いに減少させ、症状は、1回かぜが発生した程度に大いに改善され、二次的疾病は全く起こらないと考えた。
1人の症例のみであるが、この試験は、かぜ症状を伴う者に遭遇した後の、PVP−I NSの1日2回またはより頻回の使用は、人がかぜをひくのを回避するのに役立ち、人のかぜの発生率または重症度を減少させるという提案を支持する。しかし、人はかぜウイルスの存在に、常に気づいているとは限らないため、そのようなレジメンが、使用者のすべてのかぜを回避または予防する可能性はない。よって、人は、明白なかぜ症状を伴う別の者を実際に観察することなく、無意識に汚染された表面に触れ得るまたは汚染されたエアロゾル中で呼吸をし得る。試験期間中に観察されたひどいかぜの1つの事例では、このことが起こったように思われる。この例も、本発明の方法の使用が、気管支炎、中耳炎および副鼻腔炎などの、感冒に関連する二次的疾病のリスク、発生率または重症度を減少させるという請求を支持する。
実施例2に記載されているように、PVP−I NS製剤を使用して、実験に着手した。本発明者らに知られている、定期的なかぜ罹患者であった成人2名が、実験に参加することに同意した。実施例2に報告されている実験は、被験者が最初の症状の後、治療を開始する前に24時間待つことが必要とされたが、これとは対照的に、この実験は、かぜの最初の徴候時に適用される場合に、かぜ症状を減少させるまたは予防する際の、PVP−I鼻内スプレーの有効性を試験するように設計された。被験者を、以後、被験者1および被験者2と称する。
試験は1年かけて行われた。各々の被験者には、かぜの症状を経験し始め、症状がかぜのものであると確信した場合に、いつでも、その期間中、PVP−I NSを調製し、使用し始めるように指示した。最初の適用後、彼らには、生成物を1日4回、合計5日間または合計およそ20回の適用を適用するように指示した。しかし、この場合には、実際の適用頻度および適用数にいくらかの柔軟性を許可した。実施例2とは異なり、被験者には、生成物を4日間よりもむしろ5日間使用するように求めた。これは、彼らが全般的な症状サイクルにおけるより1日早くに、効果的に開始しているためである。実施例2とは異なり、被験者には、5日間の治療完了後2日間または合計7日間、症状を報告し続けるように求めた。すべての他の重要な点において、プロトコルおよび報告は、実施例2において報告された実験と同一であった。
この実験において試験された仮説は、実施例1に記載されているHRVモデルが妥当であるならば、鼻道においてウイルス感染が開始された後、典型的にはおよそ24時間である、かぜの最初の徴候時のPVP−I NSの適用は、感染が盛んになる機会を有する前にウイルス量を抑制するはずであり、その際、実施例2におけるように、感染およびかぜ症状がすでに盛んになっており、症状群が完全発症に近い状態である、最初の症状から24時間後にPVP−I NS治療を開始するのと比較して、(a)かぜ症状群が完全に発症するのを予防し、(b)全般的なかぜ症状をより大幅に減少させることであった。
TSSを主要評価項目として使用した。実施例2とは異なり、PVP−I NS治療によって、どの場合にも、疾病症状が疾病の緩和の有効な測定のための基準として使用され得る点に達しなかったため、TAIは測定不可能であった。この場合に、疾病の重症度を評価するのに有用であることが見出される1つの基準は、疾病が支障のあるレベルに達するか否かであり、このレベルは、実験の目的のために、TSSが4より高いと定義された。
被験者1は期間中に1回のみかぜにかかったが、被験者2は3回経験した。4回のかぜはすべて、冬ではない月間(秋に2回、春に2回)に生じたものであり、原因となったウイルスが、恐らくすべての場合においてHRVであることを示している。図8〜図11は、2名の被験者によって報告されている、4回のかぜについてのTSSデータを示している。それぞれのTSSデータポイントは、それぞれの特定の時間、典型的にはそれぞれのPVP−I NS適用直前における症状日記報告に基づいた。いずれの場合にも、下矢印は、それぞれのPVP−I NS適用の近似の時間を示す。
被験者1:被験者1/かぜ1は、以下S1/1と称され、この者は、鼻内スプレーの5日間にわたる合計21回の適用を使用した。PVP−I NSの適用は、ほとんど直ちに症状を支障のないレベルに、すなわち、TSSスコアを4以下に抑制した。しかし、症状は、5日目に支障のあるレベルを超えて上昇した後、急速に下降し、かぜは7日目の終わりまでに完全に消退し、その後、症状の再発はなかった。
被験者2:3回のかぜを経験した2人目の被験者は、以下S2/1、S2/2およびS2/3と称され、TSS結果をそれぞれ、図9、図10および図11に示す。S2/1について、図9に示されているように、この被験者は、5日間にわたる20回の適用を使用し、生成物を1日4回適用した。この場合には、症状は、最初の4日間に認知可能であったが、支障のあるレベルには決して上昇せず、5日目に消失した。被験者は、5日間かぜにかかったことは分かっていたが、症状は低レベルのままであり、自身の日常の活動に支障がある段階にはならなかったことを述べた。
S2/2、図10に示されているように、この被験者はまた、S1/1またはS2/1ほど頻度に一貫性はなかったが、PVP−I NSを5日間にわたって20回適用した。かぜ症状が最初に現れたのが1日目の夕方近くであったため、その日に2回治療を適用し、次の日に6回適用した。3日目の朝までに、被験者は、自身はかぜに罹っていないことを確信し、その結果1日1回に適用を減らした。驚いたことに、5日目の朝に、これは症状が最後に観察されてから58時間後であったが、軽度の局所症状(くしゃみ、鼻漏、うっ血)が再発し、その時点で、被験者はPVP−I NS治療を1時間毎に4時間適用し、症状は、再び速やかに消失した。次いで、症状が次の朝に再発したため(うっ血、鼻漏)、被験者は再びPVP−I NS治療を1時間毎に3時間使用し、症状は最終的に再発することなく消失した。再び、PVP−I NSは、かぜの期間中、症状を支障のないレベルに抑制した。
S2/3について、図11に示されているように、被験者は、PVP−I NSを5日間にわたって17回適用した。症状は、およそ48時間後に消失したが、S2/2と同様に、消退するたびにその後数日にわたって幾度も再発し、この場合には、以降PVP−I NSを1回のみ適用した。
この実験では、最初の事例において、PVP−I NS介入は、症状群が完全に発症するのをほとんど予防したため、TAI(疾病が緩和する時間)評価は不可能であった。1つの症例のみ(S2/3)、TAI評価項目(鼻漏+軽度を超える他のいずれかの症状)によって定義されているような「疾病」の基準を満たす総体的症状を有したため、疾病の緩和を測定することは、すべての実際的な目的には不可能であった。4つのいずれの症例においても、被験者は、気管支炎、副鼻腔炎または中耳炎などのいずれの二次的疾病も経験したものはなく、いずれの過敏反応、刺痛感またはPVP−I NS製剤に対する他の不耐症も報告したものはなかった。
図12および表3は、4名の被験者のそれぞれについての1日平均TSSを、公表されている試験、顕著には、本明細書において先に言及したEccles他(2010)から集められ、推定された典型的な未治療の1日平均TSSデータと比較して示している。これらのデータは、PVP−I NSが、かぜの最初の徴候時に使用される場合、かぜを治療するのに全般的に有効であり、典型的な未治療の症状スコアと比較して、治療の2日目までに1日平均TSSが平均89%減少し、未治療のかぜについての8日までと比較して、事実上すべての症状が3日目または4日目までに消退したことを示す。
Figure 2021059553
図13は、実施例2および4についての比較平均した1日平均TSSデータ示している。濃度曲線下面積(AUC)に基づいて、治療の開始後8日にわたるAUC差は、治療が最初の症状から24時間後に開始された場合には77%であり、これと比較して、同一の8日の期間に、治療が症状の最初の発症時に開始された場合には92%であった。
この実験は、本発明のいくつかの重要な特徴を実証している。まず第1に、本発明の方法の有効性のさらなる証拠、特に、かぜウイルスに曝露されており、まだ症状を経験していない人々またはこの実施例において具体的に評価されているように、かぜが発症しているという最初の徴候を有した人々における、感冒を回避または抑制する態様を提供する。第2に、最初の症状から24時間後のPVP−I NSの使用と比較して、かぜの最初の徴候時に使用される場合の、PVP−I NSの有効性の向上が、実施例1におけるHRVモデルと一致する。第3に、PVP−I NSでの治療の中止後またはその頻度の減少後に、頻繁に繰り返される症状が、適用の頻度および本発明の方法の他の態様の重要性を指摘しているという事実。第4に、それは、気管支炎、副鼻腔炎および中耳炎などの二次的疾病を予防する際の、方法の有効性を実証している。
本発明の利点
半世紀近くの研究にもかかわらず、感冒に利用可能な有効な治療または予防法は全く存在しない。感冒は、依然として人類を悩ます最も流行する疾患のままであり、毎年、かなりの罹患率、人的被害、入院、生産性の損失、医療制度の負担およびコストに至り、抗生物質耐性の増加という全世界的危機の一因となっている。本発明は、かぜ症状の減少およびかぜ症状の全般的な持続期間の短縮によって測定されるように、かぜを治療するおよびかぜを予防するのに、実証可能なほど安全および有効である、鼻腔内使用のためのPVP−Iを用いる新規な方法を開示する。
本方法は、感冒の治療および予防のための、市販の製品の調製に関し、産業上の利用可能性を有する。本発明に基づいた市販の製品は、比較的低コストで容易に利用可能となり得、初めてかぜを有効に治療および予防し、医師へのかぜの提示数を大幅に減少させ、これによって医師への負担を軽減し、医師の時間を開放して、世界中の高齢者集団の高まるニーズに対処する製品を提供する。また、そのような診察のための給付金または返済に関連する、患者または政府へのコストを減少させる。その上、かぜならびに気管支炎、中耳炎および副鼻腔炎などの関連する二次的疾病に対する抗生物質の処方を非常に減少させ、それによって患者および返済コストをさらに減少させるのみならず、重要なことには、抗生物質耐性を減少させるのに大いに貢献し、高価な抗生物質を重篤な細菌性疾患のために蓄えておくことが可能になる。さらに、喘息、嚢胞性線維症、肺気腫およびCOPDを有する者ならびに免疫不全症を有する者などの感受性の高い人における、かぜの続発症として起こる重篤な下気道疾病および増悪に関連するリスク、コスト、罹患率、苦痛および入院を減少させる。最後に、一般集団におけるかぜに関連する生産性損失および全般的な罹患率および苦痛を減少させ、人類を悩ます最も流行する疾患を初めて癒す可能性を秘めている。
治療および予防に関し開示している本方法の有効性は、特定の有機体または感染症を引き起こすまたは引き起こす可能性がある有機体の遺伝性または抗原性の構造に依存しない。当該方法は、副作用を引き起こさず、良好に忍容され、かぜの治療に関して、抗ヒスタミン剤、うっ血除去剤、鎮痛剤、鎮咳薬および本方法の有効性をさらに向上させる他の医薬品などの、かぜのための従来の治療または緩和手段と一緒に使用することができる。
本明細書に例証的に記載されている発明は、本明細書に具体的に開示されていない、要素または限定がない状態で、適切に実施することができる。したがって、例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」「含有する」などという用語は、拡張的に、限定されることなく理解されるものとする。加えて、本明細書において用いられる用語および表現は、説明の用語として使用されており、限定の用語ではなく、提示されている未来の任意の相当物またはその任意の部分を除外するというそのような用語および表現の使用における意図はなく、種々の改変が、請求されている本発明の範囲内において可能であることは認識される。したがって、本発明は、好ましい実施形態および任意選択の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書において開示されている本発明の改変および変更を、当業者は行うことができ、そのような改変および変更が、本明細書において開示されている本発明の範囲内であるとみなされることは理解されるべきである。本発明は、本明細書において、広く、一般的に記載されている。包括的な開示の範囲内に含まれる、より狭い種および亜属の分類のそれぞれも、これらの発明の一部を形成する。これは、それぞれの発明の包括的な説明を、条件付きでまたは任意の対象物を属から除去する消極的な限定付きで含み、削除された物質がその中に具体的に存するか否かにかかわらない。
加えて、本発明の特徴または態様が、マーカッシュ群の用語で記載されている場合、当技術分野において教育を受けた者は、発明がまた、それによって、任意の個々の部材またはマーカッシュ群の部材の亜群の用語で記載されることを認識している。以上の説明が、例証となることを目的としており、排他的ではないことも理解されるべきである。多くの実施形態は、以上の説明を再検討する際に、当業者には明らかである。それ故に、本発明の範囲は、以上の説明を参照して決定されるのではなく、代わりに、添付の特許請求の範囲が権利を与えられた相当物の完全な範囲とともに、そのような特許請求の範囲を参照して決定される。特許公開を含む、すべての記事および参照文献の開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。

Claims (24)

  1. ヒト被験者における感冒を治療する方法であって、ヒト被験者の鼻道に、周囲温度で、0.10%w/vより高く約2.5%w/v未満の濃度でポビドンヨード(PVP−I)を含む医薬製剤の有効量を適用することを含み、PVP−Iの少なくとも50%がリポソームまたは他の粒子状担体に結合しておらず、感冒の原因となるまたは原因となる可能性のある因子がウイルスである、方法。
  2. ヒト被験者の鼻道内のウイルスの活性、生存率または数を減少させる方法であって、ウイルスは感冒の原因となるまたは原因となる可能性のある因子であり、ヒト被験者の鼻道に、周囲温度で、0.10%w/vより高く約2.5%w/v未満の濃度でポビドンヨード(PVP−I)を含む医薬製剤の有効量を適用することを含み、PVP−Iの少なくとも50%がリポソームまたは他の粒子状担体に結合していない、方法。
  3. ヒト被験者における感冒の症状を軽減する方法であって、ヒト被験者の鼻道に、周囲温度で、0.10%w/vより高く約2.5%w/v未満の濃度でポビドンヨード(PVP−I)を含む医薬製剤の有効量を適用することを含み、PVP−Iの少なくとも50%がリポソームまたは他の粒子状担体に結合しておらず、感冒の原因となるまたは原因となる可能性のある因子がウイルスである、方法。
  4. ヒト被験者における感冒の持続期間を減少させる方法であって、ヒト被験者の鼻道に、周囲温度で、0.10%w/vより高く約2.5%w/v未満の濃度でポビドンヨード(PVP−I)を含む医薬製剤の有効量を適用することを含み、PVP−Iの少なくとも50%がリポソームまたは他の粒子状担体に結合しておらず、感冒の原因となるまたは原因となる可能性のある因子がウイルスである、方法。
  5. ヒト被験者における感冒に関連する二次的疾病のリスク、発生率または重症度を減少させる方法であって、二次的疾病が、気管支炎、中耳炎および副鼻腔炎からなる群から選択され、ヒト被験者の鼻道に、周囲温度で、0.10%w/vより高く約2.5%w/v未満の濃度でポビドンヨード(PVP−I)を含む医薬製剤の有効量を適用することを含み、PVP−Iの少なくとも50%がリポソームまたは他の粒子状担体に結合しておらず、感冒の原因となるまたは原因となる可能性のある因子がウイルスである、方法。
  6. COPD、喘息、肺気腫または嚢胞性線維症に罹患しているヒト被験者、或いは免疫不全症を有する人に関し、かぜに関連する下気道疾病のリスク、発生率または重症度を減少させる方法であって、ヒト被験者の鼻道に、周囲温度で、0.10%w/vより高く約2.5%w/v未満の濃度でポビドンヨード(PVP−I)を含む医薬製剤の有効量を適用することを含み、PVP−Iの少なくとも50%がリポソームまたは他の粒子状担体に結合しておらず、感冒の原因となるまたは原因となる可能性のある因子がウイルスである、方法。
  7. 感冒の症状を伴うヒト被験者から感染していないヒト被験者への感冒の伝播のリスクを予防するまたは減少させる方法であって、かぜ症状を伴うヒト被験者の鼻道に、周囲温度で、0.10%w/vより高く約2.5%w/v未満の濃度でポビドンヨード(PVP−I)を含む医薬製剤の有効量を適用することを含み、PVP−Iの少なくとも50%がリポソームまたは他の粒子状担体に結合しておらず、感冒の原因となるまたは原因となる可能性のある因子がウイルスである、方法。
  8. かぜ症状を伴う他者に曝露されたヒト被験者における感冒を回避する方法であって、ヒト被験者の鼻道に、周囲温度で、0.10%w/vより高く約2.5%w/v未満の濃度でポビドンヨード(PVP−I)を含む医薬製剤の有効量を適用することを含み、PVP−Iの少なくとも50%がリポソームまたは他の粒子状担体に結合しておらず、感冒の原因となるまたは原因となる可能性のある因子がウイルスである、方法。
  9. 鼻道に適用される医薬製剤中のPVP−I濃度が、約0.1%〜約1.0%w/vである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 鼻道に適用される医薬製剤中のPVP−I濃度が、約0.2%〜約0.5%w/vである、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 鼻道に適用される医薬製剤中のPVP−I濃度が、約0.2%〜約0.45%w/vである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
  12. PVP−Iの少なくとも70%が、リポソームまたは他の粒子状担体に結合していない、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
  13. PVP−Iの少なくとも80%が、リポソームまたは他の粒子状担体に結合していない、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
  14. PVP−Iの少なくとも90%が、リポソームまたは他の粒子状担体に結合していない、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 医薬製剤が、リポソームを含有しない、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 医薬製剤が、ヒト被験者の鼻孔中に、1日1回〜12回投与される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 製剤のそれぞれの投与時に、約0.05mL〜約1.0mLの医薬製剤が、ヒト被験者のそれぞれの鼻孔へ投与される、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
  18. 感冒の原因となるまたは原因となる可能性のある因子が、ライノウイルス、ヒトコロナウイルス、インフルエンザウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス、ヒト呼吸器合胞体ウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス以外のエンテロウイルス、メタニューモウイルスおよびそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
  19. 感冒の原因となるまたは原因となる可能性のある因子が、ヒトライノウイルスである、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
  20. 感冒症状が、悪寒、頭痛、うずきおよび疼痛、疲労、鼻水、くしゃみ、咳嗽、鼻閉、咽喉痛ならびにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
  21. 医薬製剤が、鼻腔内溶液、点滴剤、スプレー剤、ゲル剤、エアゾール剤および吸入剤からなる群から選択される剤形の形態である、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
  22. 医薬製剤が、うっ血除去剤、抗ヒスタミン剤、鎮痛剤、解熱剤、抗炎症剤、ステロイド、鎮咳剤および去痰剤からなる群から選択される少なくとも1種の薬剤をさらに含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
  23. 医薬製剤が、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤、添加剤または担体をさらに含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
  24. 賦形剤、添加剤または担体が、着香剤、甘味剤、着色剤、溶媒、緩衝剤、アルコール、ポリマー、界面活性剤または製剤の経鼻送達、鼻腔内分布、安定性、有効性、許容性、忍容性を最適化するように設計される他の賦形剤もしくは添加剤である、請求項23に記載の方法。
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