JP2021059081A - 接合体の製造方法および液体吐出ヘッドの製造方法 - Google Patents

接合体の製造方法および液体吐出ヘッドの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】接合時のボイドの発生を抑制することが可能な技術を提供する。【解決手段】一方の部材上に接合材として塗布された感光性樹脂に対して光を照射して露光する露光工程と、前記露光工程で露光された接合材を介して他方の部材が前記一方の部材に当接した状態で前記一方の部材および前記他方の部材をプレスするプレス工程と、前記露光工程による露光により形成されたパターンを安定化するために前記接合材を加熱する加熱工程と、前記接合体における可溶部を溶解して除去する除去工程とを有するようにした。【選択図】図4

Description

本発明は、部材同士を接合させた接合体の製造方法、および当該接合体の製造方法を用いた液体吐出ヘッドの製造方法に関する。
基板同士を接合することで、多くのMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスが作製されている。こうしたMEMSデバイスとして、液体を吐出する液体吐出ヘッドがある。液体吐出ヘッドでは、微細な流路などが形成されるため、基板同士を接合する接合材により当該流路などが閉塞しないように、当該接合材の不要部分をパターニングして除去する。
特許文献1には、基板上に感光性ドライフィルムによるフィルム層を形成し、このフィルム層を露光、現像してパターニングした後に、残存させたフィルムを介して別基板と接合させる技術が開示されている。また、特許文献2には、基板上に感光性樹脂を塗布し、この感光性樹脂を露光して潜像を形成した後に、感光性樹脂介して別基板と接合し、その後、感光性樹脂の可溶部を溶剤で現像する技術が開示されている。
特開2000−289197号公報 特許第4996089号公報
しかしながら、上記特許文献のような感光性樹脂を用いる技術の場合、接合時に感光性樹脂と、当該感光性樹脂と接合される基板との界面に空隙(ボイド)が発生しやすい。即ち、特許文献1では、感光性樹脂に対して露光、現像などの処理をすることで、感光性樹脂における樹脂反応率が高くなり、残存する感光性樹脂に流動性がなくなる。また、特許文献2では、潜像を形成した後に、解像性向上のためPEB(Post exposure bake)処理を行ってから接合しており、感光性樹脂の硬化が進行しやすく、接合材としての感光性樹脂に流動性がなくなる。
このため、上記特許文献の技術では、感光性樹脂が基板の接合面になじまずに、感光性樹脂や接合される基板の接合面に存在する凹凸が解消されにくくなり、感光性樹脂と接合される基板との間にボイドが発生しやすくなる。そして、液体吐出ヘッドでは、こうしたボイドの発生により、流路間で液体の漏れ(リーク)が発生して混色するなどの問題が生じてしまう。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、接合時のボイドの発生を抑制することが可能な技術を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、光と処理液とによってパターニングが可能な感光性樹脂による接合材によって部材同士が接合された接合体の製造方法であって、一方の部材上に形成された前記接合材に対して、光を照射して露光する露光工程と、前記露光工程で露光された前記接合材を介して他方の部材が前記一方の部材に当接した状態で、前記一方の部材と前記他方の部材とをプレスするプレス工程と、前記露光工程による露光により形成されたパターンを安定させるために前記接合材を加熱する加熱工程と、前記接合材に形成された可溶部を、処理液を用いて溶解して除去する除去工程と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、接合時のボイドの発生を抑制することが可能となる。
第1実施形態による第1基板と第2基板とへの処理を説明する図。 第1基板と第2基板との接合について説明する図。 第1基板と第2基板と仮接合するプレス処理を説明する図。 第1基板と抱き2基板とを仮接合後の処理を説明する図。 昇温速度を変更したときの感光性樹脂の室温の粘度に対する粘度比を示すグラフ。 昇温速度を変更したときのボイドの発生について検討した表。 第3実施形態による第1基板および第2基板への処理を説明する図。 第3実施形態による第1基板と第2基板とを仮接合後の処理を説明する図。 条件を変更して作製したサンプルを用いてボイドの発生について検討した表。
以下、添付の図面を参照しながら本発明による接合体の製造方法および液体吐出ヘッドの製造方法の一例を詳細に説明する。なお、以下の説明は、本実施形態を限定するものではなく、また、以下で説明されている特徴の組み合わせのすべてが本実施形態の解決手段に必須のものとは限らない。なお、本実施形態に記載されている構成要素の相対位置、形状などはあくまで例示であり、本実施形態の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
(第1実施形態)
まず、図1乃至図6を参照しながら、本発明の第1実施形態による接合体の製造方法について、第1基板12と第2基板14とを接合した接合体を用いて、吐出口16へ液体を供給する流路18を備えた液体吐出ヘッド10を作製する場合を例として説明する。図1(a)〜(d)は、第1基板12と第2基板14とに対する処理を説明する図である。図2(a)〜(c)は、第1基板12と第2基板14との接合について説明する図である。図3(a)〜(c)は、第1基板12と第2基板14とを仮接合するプレス処理を説明する図である。図4(a)〜(d)は、第1基板12と第2基板14との仮接合後の処理を説明する図である。なお、図3については、理解を容易にするために、第1基板12の内部構造を省略して示している。
<第1基板への処理>
まず、表面に回路やエネルギー発生素子20が形成された第1基板12を用意する(図1(a)参照)。この第1基板12の表面12aには、配線膜や層間絶縁膜から構成された表面メンブレン層22が形成されている。なお、配線、絶縁膜、トランジスタ、電極用のコンタクトパッドなどの部材については図示を省略する。また、第1基板12の裏面12bは加工され、第1基板12は所望の厚さに薄加工される。薄加工する手法としては、研削や、フッ硝酸などの薬液によるウエットエッチングなど用いることができる。
第1基板12は、材料としてシリコンを用いることが好ましい。なお、第1基板12の材料としては、例えば、炭化シリコン、窒化シリコン、各種ガラス(石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、ソーダガラス)、各種セラミック(アルミナ、ガリウム砒素、窒化ガリウム、窒化アルミ)、樹脂などがあげられる。また、第1基板12としては、基板形態に限定されず、不定形部材やチップ実装用のマウント部材でもよい。
第1基板12は、後述する感光性樹脂28を介して、後述する第2基板14とプレスにより接合される。このとき、第1基板12および第2基板14が特に剛性が高く、プレスによって接合面の凹凸がつぶれにくい無機材料であるときに、ボイドが発生しやすい。従って、第1基板12および第2基板14が無機材料により形成されるときに、本願発明はより有効となる。
次に、第1基板12における接合面となる裏面12bを平滑化し、その後、第1基板12に、流路18の一部を形成する第1流路24と第2流路26とを形成する(図1(b)参照)。裏面12bを平滑化する手法としては、番手の大きい砥石による研削、ドライポリッシュ、CMP(Chemical Mechanical Polishing)による研磨などを用いることができる。また、反応性ガスによるドライエッチング、フッ硝酸などの薬液によるウエットエッチングなどを用いることができる。第1流路24および第2流路26を形成する手法としては、ドライエッチング、ウエットエッチング、レーザ、サンドブラストなどの各種の加工法方法を用いることができる。
<第2基板への処理>
第1基板12への加工が終わると、次に、第2基板14を用意し、第2基板14に対して、第1基板12と同様にして、所望の厚さに薄加工した後に、接合面となる表面14aを平滑化する。そして、表面14aに、接合材として感光性樹脂28を塗布する(図1(c)参照)。塗布方法として、スピン塗布、スリット塗布、スプレー塗布、ラミネートなどを用いることができる。なお、塗膜表面の平坦性が比較的高くなることから、塗布方法としては、スピン塗布やラミネートを用いることが好ましい。感光性樹脂28による塗膜の膜厚は、少なくとも、第1基板12および第2基板14における接合面(つまり、裏面12bおよび表面14a)の凹凸を埋めるのに十分な厚さを備える。なお、膜厚は、0.1〜300μmが好ましい。300μmを超えると、露光、現像によるパターニングが難しくなる。
感光性樹脂28は、部分的な光照射によって可溶部と不溶部とが形成され、その後の現像処理により可溶部を良好に除去できるものとする。感光性樹脂28は、主剤と、露光によって主剤と反応する光増感剤と、主剤および光増感剤を可溶な溶媒とから構成され、光増感剤と主剤との樹脂反応率がある値以上になったときに、現像液によって溶ける、あるいは、溶けなくなる材料となる。
こうした主剤と光増感剤との組み合わせとして、ポジ型レジストでは、ノボラック樹脂と、ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル(NQD)系化合物、ベンゾシクロブテン樹脂とNQD系化合物、メタクリル樹脂と各種光酸発生剤との組み合わせなどがある。なお、メタクリル樹脂は、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エステルである。各種光酸発生剤は、例えば、スルポニウム塩、ヨードニウム塩、ハロメチルトリアジン、スルホン酸エステルなどである。ネガ型レジストでは、環化ゴムとビスアジド化合物、ベンゾシクロブテン樹脂とビスアジド化合物、ポリケイ皮酸ビニル(主剤と光増感剤とを兼用)、各種樹脂と各種光酸発生剤との組み合わせなどがある。各種樹脂は、例えば、ビニル樹脂、スチレン樹脂、ビニルエーテル樹脂や環状エーテル樹脂(オキセタン樹脂やエポキシ樹脂)、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂などである。各種光酸発生剤は、例えば、スルポニウム塩、ヨードニウム塩、ハロメチルトリアジン、スルホン酸エステルなどである。
第1基板12および第2基板14の接合材としては、解像性が高い感光性樹脂が好ましく、光増感剤として、光照射により酸を発生し得る光酸発生剤を用いる化学増幅型レジストが好適である。特に、ネガ型の化学増幅型レジストは、一般的に基板との密着力が高い。このため、液体としてインクを吐出する液体吐出ヘッドでは、耐インク性を得るために、ネガ型の化学増幅型レジストを用いることが好ましい。また、エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などを用いることができる。特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、感光性樹脂を厚膜化しても解像性が高いため用いて好適であり、耐インク性も高いため、インクを吐出する液体吐出ヘッドの作製に用いて好適である。
その後、感光性樹脂28に対してマスク29を介して光を照射して露光することで、現像処理における不要領域と可溶領域とを形成する(図1(d)参照)。感光性樹脂28は、ネガ型レジストでは、一般的に露光した領域で主剤の架橋が進み溶剤に対して不溶化する。そして、露光量を増加していくと、ゲル化露光量で初めて樹脂がゲル化して溶剤に対して不溶になる。例えば、所定のビスフェノールA型エポキシ樹脂から構成された感光性樹脂28では、i線に対して80mJ/cm2がゲル化露光量であった。
従って、感光性樹脂28に対する露光量は、少なくとも現像してパターニングするために、感光性樹脂28のゲル化露光量以上である必要がある。即ち、露光量がゲル化露光量近傍の場合には、主剤の架橋が不完全となる恐れがある。このため、感光性樹脂28における安定した解像性を得るために、露光量は、少なくともゲル化露光量の3〜4倍とすることが好ましい。一方、露光量を上げすぎると、感光性樹脂28の硬化が進み、プレス処理の際に、感光性樹脂28の流動性が極端に低下し、ボイドが発生しやすくなる。従って、露光量は、その上限として、ゲル化露光量の20倍以下とすることが好ましい。
後述するように、露光後には第1基板12と第2基板14とを仮接合するためのプレス処理が行われるが、感光性樹脂28では、露光後も露光部の硬化反応が進む。露光後の硬化は、温度が高いほど硬化速度が上がって樹脂反応率が高くなり、これにより、感光性樹脂28の流動性は低下する。従って、露光後、プレス処理を行うまでは、不要な露光、不要な昇温、不要な滞留時間をさける必要がある。特に、感光性樹脂28が化学増幅型レジストの場合、硬化反応は、露光量、時間、温度によって大きく影響を受けるため、これらの要因を適正に管理する必要がある。
<第1基板と第2基板とを仮接合する処理>
次に、プレス処理により、第1基板12と第2基板14とを仮接合する(図2(a)参照)。このプレス処理では、例えば、接合用のアライナーでアライメントを行う。具体的には、図3(a)のように、仮固定治具30により、第1基板と第2基板14とを、第2基板14の表面14aに形成された感光性樹脂28に、第1基板12の裏面12bを当接した状態で固定する。このとき、第1基板12と第2基板14とはアライメントされて固定されている。なお、仮固定治具30では、第1基板12と第2基板14との間に、スペーサ32を配置し、互いの接合面がプレス処理するまで接触しないようにしたが、スペーサ32を用いることなく、互いの接合面同士が感光性樹脂28を介して接触しているようにしてもよい。
仮固定治具30では、クランプ34により、第1基板12および第2基板14を仮固定する。より詳細には、仮固定治具30は、対象物の外周近辺の数ヵ所を局所的に押圧することが可能なクランプ34を備え、このクランプ34により、第1基板12および第2基板14をまとめて押圧することで仮固定を行うこととなる。なお、アライメント方法として、可視光顕微鏡により第1基板12と第2基板14とのアライメントマークを個別に観察することや、赤外線顕微鏡を用いて第1基板12と第2基板14とのアライメントマークを同時観察してもよい。
第1基板12と第2基板14とを仮固定した仮固定治具30は、プレス装置36内に配置される(図3(b)参照)。プレス装置36は、上部プレス板38を備えた上部チャンバー40と、下部プレス板42(第1プレス板)を備えた下部チャンバー44とにより構成されている。なお、上部プレス板38(第2プレス板)および下部プレス板42には、それぞれ独立してヒータ(不図示)と温度計(不図示)とが設けられている。仮固定治具30は、下部チャンバー44の下部プレス板42上に配置される。その後、上部チャンバー40を下降させてプレス装置36を閉め、プレス装置36内を密閉し、プレス装置36内の真空引きが行われる。プレス装置36内の真空引きが完了すると、上部プレス板38を下降させて、仮固定された第1基板12と第2基板14とをプレスする(図3(c)参照)。そして、ヒータにより、上部プレス板38と下部プレス板42とを所望の温度まで昇温させ、第1基板12と第2基板14とが仮接合された仮接合体99を取得する。なお、上部プレス板38と下部プレス板42とを所望の温度まで昇温させた後に、上部プレス板38を下降させて、第1基板12と第2基板14とをプレスするようにしてもよい。
本実施形態では、第1基板12と第2基板14とのプレス処理について、ボイドの発生を抑制する条件で行われる。ここで、第1基板12と第2基板14との接合時に生じるボイドは、露光後の感光性樹脂28に押圧させる第1基板12の裏面12bと、当該感光性樹脂28との界面に生じやすい(図2(b)参照)。その理由としては、上述のように、感光性樹脂28への露光により主剤の架橋が進み、感光性樹脂28の流動性が低下するためである。なお、露光前の感光性樹脂28は、主剤の架橋が進んでおらず流動性の低下が生じないため、裏面12bにおける凹凸を感光性樹脂28により埋めることができ、裏面12bと感光性樹脂28との界面にボイドが生じにくい。
従って、ボイドの発生を抑制するためには、裏面12bと接触する露光後の感光性樹脂28の粘度を下げる、つまり、露光後の感光性樹脂28に、裏面12bにおける凹凸を埋めることが可能な程度の流動性を保持させる必要がある。そこで、本実施形態では、プレス処理を実行する際には、ボイドの発生を抑制するために、感光性樹脂28の樹脂反応率を低くするとともに、適切な昇温条件で樹脂粘度を低減することで、感光性樹脂28の流動性を向上させるようにした。
プレス処理時の感光性樹脂28の樹脂反応率を低くするために、解像性を上げるためのPEB処理(さらにはその後の現像工程を含む。)を実行する前にプレス処理を実行するようにした。なお、PEB処理は、露光により形成された潜像パターンを安定させるために感光性樹脂を加熱する加熱処理である。さらに、露光後は、速やかにプレス処理を実行することが好ましい。即ち、感光性樹脂28において、マスク29を介した露光による硬化以外の硬化反応が進んでいないタイミングでプレス処理を実行することで、感光性樹脂28に比較的流動性がある状態で、感光性樹脂28に第1基板12の裏面12bを押圧するようにした。
また、プレス装置36によるプレス力、つまり、上部プレス板38と下部プレス板42とによる第1基板12および第2基板14への押圧力は、弱すぎると感光性樹脂28が流動しにくく、ボイドが発生しやすくなる。逆に、強すぎると基板や基板に形成された構造体を破損する虞が生じる。プレス力は、ボイドや基板などの破損を生じない適正な範囲内の値に設定される。例えば、8インチ基板に対しては、0.5〜10kNの範囲内の値にプレス力を設定することが好ましい。
次に、適正な昇温条件について説明する。感光性樹脂28は、一般に室温では粘度が高く流動性が低いため、粘度を下げるためには昇温させる必要がある。しかしながら、感光性樹脂28は、昇温すると硬化反応が進み、粘度が上昇して流動性が低下してしまう。そこで、本実施形態では、単位時間当たりに上昇させる温度、つまり、昇温速度を高くすることで、硬化反応が進むよりも早く感光性樹脂28の粘度を低下させて流動性を向上させるようにした。
本願発明者は、上部プレス板38および下部プレス板42をヒータにて加熱する際の昇温速度を変更して、そのときの感光性樹脂28の粘度を比較する実験を行った。その結果を図5に示す。図5は、上部プレス板38および下部プレス板42の昇温速度を変更したときの、露光された感光性樹脂28における室温での粘度に対する昇温中の粘度の比率(粘度比)を示すグラフである。なお、本実験には、感光性樹脂28として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用い、粘度については、レオメータにより測定を行った。また、室温は25℃とした。サンプルは、サンプル1:昇温速度1℃/min、サンプル2:昇温速度3℃/min、サンプル3:昇温速度5℃/minの3つのサンプルを用いた。上部プレス板38、下部プレス板42は、同じ昇温速度で昇温させている。
感光性樹脂28の粘度は、3つのサンプルにおいてそれぞれ、昇温に伴って低下し、極小値に達した後、硬化によって急激に増加する。そして、昇温速度が高いほど、より高温で、硬化に伴う急激な粘度上昇が生じるとともに、粘度比も小さく、つまり、室温時の粘度に対する粘度減少量が大きくなっている。従って、昇温速度が高いほうがボイドの発生を抑制することができるようになる。
図6は、昇温速度を変更したときの、第1基板12と第2基板14との接合時のボイドの発生率の変化を検討した実験結果を示す。この実験では、第1基板12と第2基板14とを接合して作製され、流路18を含む構成が形成されたチップが複数形成されたウエハに対して、各チップにおけるボイドの発生の有無を評価した。また、感光性樹脂28として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いた。感光性樹脂28は、8インチ基板上にスピン塗布により厚さ5μmに塗布し、露光量320mJ/cm2で露光した後に、5kNでプレス処理しながら室温から60℃まで昇温させて仮接合した。その後、感光性樹脂28を本硬化させた接合体100としてのウエハに対して、ボイド起因のリーク(液漏れ)が発生したチップの発生率を算出した。なお、各チップには流路18が形成されている。また、リークチップは超音波顕微鏡により評価した。
図5によるグラフで示される傾向と同様に、昇温速度が高いほど、ボイドの発生率、つまり、ボイド起因のリークが生じたチップの発生率が少なくなる。具体的には、昇温速度1℃/minのサンプルAでは、発生率が92%となり、ほとんどのチップで、ボイド起因のリークの発生が確認された。昇温速度3℃/minのサンプルBでは、発生率が22まで低減されており、大幅に改善されている。昇温速度5℃/minのサンプルCおよび昇温速度10℃/minのサンプルDでは、発生率がゼロとなり、ボイドの発生の抑制に著しい効果があることが示された。本実験から、少なくとも昇温速度3℃/min以上とし、昇温速度5℃/min以上が好ましいものとなる。
また、図5では、昇温速度3℃/minでは、室温に対する粘度比が30%以下となるまで粘度が減少した。つまり、昇温速度3℃/minでは、感光性樹脂28は、室温での粘度の3割以下の粘度まで減少した。また、昇温速度5℃/minでは、室温に対する粘度比が10%以下となるまで粘度が減少した。つまり、昇温速度5℃/minでは、感光性樹脂28は、室温での粘度の1割以下の粘度まで減少した。この結果から、プレス処理中における室温に対する粘度比は少なくとも30%以下であり、10%以下がより好ましいものとなる。即ち、プレス処理時の昇温速度は、感光性樹脂28における第1基板12と第2基板14とを接合する接合領域において、上記粘度比が0%より高く、30%以下となる昇温速度とする。より好ましくは、上記粘度比が0%より高く、10%以下となる昇温速度とする。
次に、樹脂反応率について説明する。感光性樹脂28について、プレス処理の各工程における樹脂反応率を下記の方法によって算出した。樹脂反応率は、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)を用いて取得した。より詳細には、基板上に塗布した感光性樹脂28について、FT−IRによって、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が有するエポキシ基由来のピーク(約910cm-1)のピーク高さXを測定した。また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂において反応に寄与しない芳香族エーテルのピーク(約1240cm-1)のピーク高さYを測定した。そして、反応前のピーク高さのそれぞれをピーク高さX0、Y0とし、反応後のピーク高さのそれぞれをピーク高さX1、Y1とし、下記の式により樹脂反応率を算出した。なお、特に断りのない限り、本明細書における樹脂反応率は、下記の式により算出されたものとする。
樹脂反応率(%)={(X0/Y0)-(X1/Y1)}/(X0/Y0)×100
感光性樹脂28の樹脂反応率は、露光後に概ね50%以下であり、その後、5℃/minで昇温したときは60℃付近で概ね70%以下であった。さらに、PEB処理を実行した後の樹脂反応率は、概ね90%以下であった。
従って、PEB処理よりも前にプレス処理を行うことで、第1基板12と第2基板14とを接合する感光性樹脂28における接合領域の樹脂反応率が、少なくとも90%以下でプレス処理を開始することが可能となる。また、露光直後に迅速にプレス処理を実行することができれば、樹脂反応率が50%以下でプレス処理を行うことができる。さらに、プレス処理中に接合面の凹凸を埋めるような低粘度状態を維持するためには、プレス処理中に少なくとも樹脂反応率が70%以下を維持することが好ましい。なお、プレス処理を開始する際の樹脂反応率の下限は、露光後の感光性樹脂28が現像液によって不溶となる値、即ち20%となる。
このようにして、本実施形態では、プレス処理をPEB処理の前に行い、かつ、露光後に速やかに仮固定治具30により仮固定された第1基板12および第2基板14に対してプレス装置36によりプレス処理する。これにより、樹脂反応率が低い状態でプレス処理することができる。また、このとき、上記した昇温速度で上部プレス板38および下部プレス板42を昇温させながらプレス装置36によるプレス処理を行う。これにより、プレス処理の際に感光性樹脂28の流動性が向上し、接合面の凹凸を感光性樹脂28で埋めることができるようになる。
<第1基板と第2基板との仮接合後の処理>
プレス処理が終わると、次に、第1基板12と第2基板14とが本硬化前の感光性樹脂28によって仮接合された仮接合体99を、オーブンやホットプレートで加熱してPEB処理を行う(図4(a)参照)。PEB処理での加熱温度は、通常、プレス処理時に昇温させたときの最高温度よりも高くする。PEB処理の効果として、まず、樹脂反応率を高めることで、解像性が向上する。また、感光性樹脂28が硬くなるため、仮接合状態にある仮接合体99をその後の工程に移動したときのアライメントずれが抑制される。
PEB処理により達成すべき樹脂反応率は、感光性樹脂28の種類にもよるが、厚さが20μmのビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いたネガ型の化学増幅型レジストを用いた場合、本願発明者の実験では、樹脂反応率が80%では一部に解像不良が発生した。従って、PEB処理では樹脂反応率が90%以上となることが好ましい。
その後、PEB処理した仮接合体99に対して、第2基板14の裏面14b側から感光性樹脂28に達する第3流路46を形成する(図4(b)参照)。具体的には、例えば、フォトリソグラフィとエッチング技術とを用いて第3流路46を形成する。そして、この第3流路46により、感光性樹脂28が裏面14b側から外部に曝される。なお、感光性樹脂28は、プレス処理前の露光処理において、現像処理による感光性樹脂28の可溶部の除去によって、この第3流路46が第2流路26と連通するように、マスク29を介して露光されている。
こうして第3流路46が形成されると、現像処理により感光性樹脂28の可溶部を除去する(図4(c)参照)。この現像処理では、現像液により裏面14b側から可溶部を溶解して除去することとなる。現像液(処理液)は、感光性樹脂28の溶解に適したものを選択する。具体的には、アルカリ溶液(水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム)、有機溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルイソブチルケント、シクロヘキサン、キシレン)などを用いることができる。現像方法としては、浸漬現像を用いることができるが、感光性樹脂28が厚い場合には、現像速度が遅くなる。この場合には、スプレー現像、超音波現像などを用いることで、現像速度を向上することができる。
現像処理によって感光性樹脂28のパターニングが完了すると、仮接合体99を高温でベーク処理して、感光性樹脂28を硬化させて接合体100を作製する。このベーク処理によって感光性樹脂28の樹脂反応率を95%以上として、感光性樹脂28である接合材によって、第1基板12と第2基板14とが接合された接合体100が作製されることとなる。
その後、表面メンブレン層22上に吐出口形成部材48を形成する(図4(d)参照)。具体的には、フィルム基材上に感光性樹脂が塗布されたドライフィルムレジストを表面メンブレン層22上に貼り合わせる。次に、ドライフィルムレジストに対して露光および現像することによって、吐出口形成部材48の側壁部50を形成する。その後、側壁部50が形成された接合体100の表面上に上記ドライフィルムレジストを貼り合わせ、当該ドライフィルムレジストに対して、露光および現像することによって、吐出口形成部材48の天板52を形成する。吐出口形成部材48では、天板52のエネルギー発生素子20と対向する位置に吐出口16が形成される。これにより、第1流路24、第2流路26および第3流路46により構成される流路18に液体が供給され、エネルギー発生素子20で発生させた圧力によって、吐出口16から液体を吐出する液体吐出ヘッド10が作製される。
上記した説明では、感光性樹脂28として、ネガ型の感光性樹脂を用いる場合について説明したが、ポジ型の感光性樹脂を用いた場合も同様である。この場合、高い解像性でパターニングするためには、PEB処理を行って露光部の樹脂反応率を高める必要があるが、REBによって未露光部の熱硬化反応が進んでしまい未露光部の樹脂が固くなる恐れがある。しかしながら、本実施形態では、PEB処理の前に、所定の昇温速度で昇温させながらプレス処理を行うことで、感光性樹脂28の樹脂反応率が低い状態で第1基板12と第2基板14とを接合することができる。これにより、感光性樹脂28におけるパターニング精度を低下させることなく、第1基板12と感光性樹脂28との界面においてボイドの発生を抑制することができる。
以上において説明したように、本実施形態では、PEB処理の前に、第1基板12(他方の部材)と第2基板14(一方の部材)とに対してプレス処理するようにした。また、プレス処理の際に、第1基板12と第2基板14とをプレスする上部プレス板38および下部プレス板42を、例えば、昇温速度5℃/minで、60℃まで加熱するようにした。これにより、接合材としての感光性樹脂28は、プレス処理の際に、樹脂反応率が低く、かつ、低粘度となり、比較的流動性が高い状態となる。このため、第1基板12の接合面(裏面12b)と感光性樹脂28との界面における凹凸を解消することができるようになり、接合面におけるボイドの発生が抑制されることとなる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態による接合体の製造方法について説明する。なお、以下の説明では、上記した第1実施形態と同一または相当する構成については、第1実施形態に用いた符号と同一の符号を用いることにより、その詳細な説明を省略する。
この第2実施形態では、プレス処理の際に、プレス装置36の下部プレス板42を室温程度に保持しつつ、上部プレス板38を所定温度まで昇温させた状態で、プレスを実行するようにした点において、上記第1実施形態による接合体の製造方法と異なっている。なお、以下の説明では、第1実施形態と異なるプレス処理について詳細に説明することとする。第1実施形態と同じである、プレス処理前後の処理の説明についてはその説明を省略する。
図3(b)のように、プレス処理では、仮固定治具30により仮固定された第1基板12および第2基板14は、まず、下部プレス板42上に配置される。次に、上部チャンバー40が下降させてプレス装置36を閉め、真空引きを行う。
ここで、ボイドの発生を抑制するためには、プレスした状態で感光性樹脂28が所定の柔らかさとなるまで昇温する必要がある。所定の柔らかさとは、第1基板12の裏面12bの凹凸を埋めることが可能な流動性を備えた柔らかさである。しかしながら、昇温すると硬化が進み、感光性樹脂28の流動性が低下する虞がある。従って、実際にプレスするまでは極力昇温を抑えることが好ましい。実際にプレスするまでの感光性樹脂28の昇温を抑えるために、本実施形態では、プレスの前までに、上部プレス板38を加熱して高温に保持しつつ、下部プレス板42を低温に保持するようにした。なお、本実施形態では、例えば、下部プレス板42に水冷機構(不図示)を設け、冷却水により下部プレス板42を室温程度の温度に維持しておく。
従って、本実施形態では、真空引きが完了するまで、ヒータにより上部プレス板38を所定温度まで昇温させつつ、冷却機構により下部プレス板42を室温程度に維持する。本実施形態では、真空引きが完了すると、ヒータにより上部プレス板38を所定温度まで昇温させるとともに、ヒータおよび冷却機構を用いて下部プレス板42を室温程度に維持する。なお、真空引きを実行中に、上部プレス板38および下部プレス板42への温度制御を実行するようにしてもよい。そして、下部プレス板42を室温に維持しつつ、上部プレス板38が所定温度まで昇温すると、上部プレス板38を下降して、上部プレス板38と下部プレス板42とにより、仮固定治具30に仮固定された第1基板12と第2基板14とをプレスする。これにより、上部プレス板38からの伝熱によって感光性樹脂28が昇温するようになる。このため、本実施形態では、実際にプレスするまでの感光性樹脂28の昇温をより確実に抑制することができる。
また、本実施形態では、予め所定温度まで昇温した上部プレス板38によって感光性樹脂28を昇温させる構成のため、上記第1実施形態による接合体の製造方法よりも、感光性樹脂28における昇温速度が速くなる。これにより、熱による感光性樹脂28の硬化反応よりも早く感光性樹脂28を軟化、つまり、低粘度化させることができ、ボイドの発生をより確実に抑制することができるようになる。
なお、上部プレス板38でなく、下部プレス板42を加熱して昇温させる場合には、上部プレス板38で昇温させる場合と比較して、感光性樹脂28が昇温しにくい。即ち、プレス装置36内では、感光性樹脂28が塗布された第2基板14は、仮固定治具30の基台部31を介して下部プレス板42上に配置されているため、熱源となる下部プレス板42と感光性樹脂28との距離が大きくなる。さらに、基台部31の熱容量は大きい。このため、感光性樹脂28が昇温しにくくなる。
上部プレス板38は、プレスする際に初めて第1基板12に直接当接するため、プレスするタイミングで感光性樹脂28を昇温させることができるとともに、事前により高温に設定することで、昇温速度をより上げることもできる。また、プレス時には下部プレス板42よりも感光性樹脂28に近い位置にあるため、感光性樹脂28を昇温させやすい。
ここで、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と光酸発生剤から構成された感光性樹脂を用いて上部プレス板38および下部プレス板42の温度を変化させて第1基板12と第2基板14とを接合する実験を行った。この結果、下部プレス板42を30℃、上部プレス板38を50℃以上としたときに、感光性樹脂28の流動性が大幅に向上し、ボイドの発生を抑制することができた。このように、本実施形態では、上部プレス板38を下部プレス板42よりも20℃以上高い温度まで昇温することで、より効率的にボイドの発生を抑制することができるようになる。なお、温度差をさらに大きくすることで、感光性樹脂28に流動性は上がるので、感光性樹脂28において発現させたい流動性に応じて、上部プレス板38と下部プレス板42との温度さを設定するようにしてもよい。この場合、用いる感光性樹脂28などに応じて、上部プレス板38および下部プレス板42の温度は、例えば、実験的に決定される。
(第3実施形態)
次に、図7乃至図8を参照しながら、本発明の第3実施形態による接合体の製造方法について説明する。なお、以下の説明では、上記した第1実施形態と同一または相当する構成については、第1実施形態で用いた符号と同一の符号を用いることにより、その詳細な説明を省略する。
この第3実施形態では、感光性樹脂により形成され、第1基板12と第2基板14とを接合する接合層を2層化するようにした点において、上記した第1実施形態および第2実施形態による接合体の製造方法と異なっている。
<第1基板への処理>
より詳細には、まず、第1基板12を用意し、第1流路24と第2流路26とを形成する(図7(a)参照)。なお、第1基板12として用いる材料について、表面メンブレン層22の形成などを含む第1基板12への各種処理などについては、上記第1実施形態による接合体の製造方法と同じであるため、その詳細な説明は省略する。
<第2基板への処理>
第1基板12への加工が終わると、次に、第2基板14を用意し、第2基板14に対して、第1基板12と同様にして、所望の厚さに薄加工した後に、接合面となる表面14aを平滑化する。その後、第2基板14の裏面14b側から表面14aまで貫通する第3流路46を形成する(図7(b)参照)。第3流路46の形成方法としては、第1基板12における第1流路24、第2流路26の形成と同様に、ドライエッチング、ウエットエッチングなどの各種加工方法を用いることができる。
次に、接合体200を構成する一方の部材上に樹脂層を形成する。具体的には、第2基板14の表面14aに、感光性樹脂128による第1樹脂層56を形成する(図7(c)参照)。なお、表面14aには、第3流路46による開口部46aが形成されている。このため、スピン塗布、スリット塗布、スプレー塗布などの塗布方法では、開口部46a内に感光性樹脂128が流れ込んでしまい、表面14a上に第1樹脂層56を均一な膜厚で形成することができない。そこで、感光性樹脂128をフィルム化して、表面14aへラミネートして第1樹脂層56を形成するようにした。これにより、表面14a上に平坦な第1樹脂層56を形成することができるとともに、開口部46a内への感光性樹脂128の流れ込みなどを抑制することができる。
具体的には、まず、ラミネートするための転写体を作製する。転写体の基材としては、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリオレフィンなどを用いることができる。そして、基材上に感光性樹脂128による樹脂層(フィルム)を形成する。感光性樹脂128としては、上記第1実施形態で用いた感光性樹脂28と同じものを用いることができる。基材上への感光性樹脂128の塗布方法は、スピン塗布、スリット塗布、スプレー塗布を用いることができる。次に、塗布した感光性樹脂128をフィルム化するために、感光性樹脂128の溶媒を揮発させる。溶媒が揮発できる温度で、所定時間をかけて塗布した感光性樹脂128の溶媒を揮発させる。例えば、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを用いた感光性樹脂128では、ホットプレートなどを用いて80〜100℃で20〜30分かけて乾燥して、溶媒を揮発させる。その後、こうして形成された転写体において、樹脂層側を第2基板14の表面14aに貼り合わせ、基材のみを剥がすことで、表面14a上に第1樹脂層56を形成する。
ここで、表面14aの第1樹脂層56は、感光性樹脂128から溶媒を揮発させた樹脂層により構成されている。このため、第1樹脂層56は、硬くなり、粘度が高い。つまり、流動性が低い。こうした第1樹脂層56を介して第1基板12を押圧させても、流動性が低いためボイドが発生しやすくなる。そこで、本実施形態では、第1樹脂層56よりも粘度が低い、つまり流動性が高い第2樹脂層58を、第1樹脂層上に形成するようにした(図7(d)参照)。その後、第2樹脂層58に対して、マスク29を介して露光し、不要部と可溶部とを形成する(図7(e)参照)。第2樹脂層58は、第1樹脂層56を形成する感光性樹脂128と同じ、あるいは、その構造が近似した感光性樹脂228により形成する。即ち、第2樹脂層58は、第1樹脂層56上に感光性樹脂228を塗布することにより形成される。
塗布方法としては、スピン塗布、スリット塗布、スプレー塗布、ラミネートを用いることができる。こうした塗布方法で、第2樹脂層58における溶媒含有率を高くするには、塗布前の感光性樹脂228の溶媒含有率を高くすること、塗布後の乾燥温度を低くすること、塗布後の乾燥時間を短くすることなどがある。なお、第2樹脂層58において、プレス時の接合面の凹凸を埋めるために必要な流動性を保持させるためには、溶媒含有率を高くするほかに、第2樹脂層の膜厚を増大させることや、露光量を下げるなどの方法を用いることができる。
上記したように、第2樹脂層58を形成する感光性樹脂228は、第1樹脂層56を形成する感光性樹脂128と同じあるいはその構造が近似したものとした。このため、感光性樹脂228に含有する溶媒によって、感光性樹脂128が溶解してしまい(相溶)、第2樹脂層58の表面の平坦性が悪化する虞がある。このため、樹脂層間における感光性樹脂同士の相溶を抑制するために、図7(f)のように、第2樹脂層58を形成する前に、第1樹脂層56に対して露光するようにしてもよい。
露光する領域については、第1樹脂層56の全面を露光してもよいし、第2樹脂層58への露光と同様に、マスク29を用いて不要部と可溶部とを形成してもよい。第1樹脂層56の全面を露光する場合には、簡便な光照射機を用いることができ、容易に露光処理を実行することができる。しかしながら、第2流路26と第3流路46とを連通させる際に、現像処理で除去することが難しくなり、ドライエッチングなどの手法を用いて連通させることとなる。露光量としては、感光性樹脂128の溶解度が大幅に下がるゲル化露光量以上であることが好ましい。感光性樹脂128の溶解度をさらに下げる必要がある場合には、露光量を増やす、あるいは、PEB処理を実行することとなる。
<第1基板と第2基板とを仮接合する処理および仮接合後の処理>
こうして第1基板12および第2基板14への処理が終了すると、部材同士を接合する処理行うこととなる。具体的には、まず、プレス処理により、第1基板12と第2基板14とをプレスして(図8(a)参照)、第1基板12と第2基板14とが硬化前の感光性樹脂128、228によって仮接合された仮接合体199を取得する(図8(b)参照)。そして、仮接合体199に対して、必要な解像性を得るためのPEB処理を行った後に、現像処理を行って可溶部を溶解し、第2流路26と第3流路46とを連通する(図8(c)参照)。現像処理では、第1流路24および第2流路26側から現像液を注入するとともに、第3流路46側からも現像液を注入する。その後、仮接合体199に対して、感光性樹脂128、228を本硬化させるベーク処理を行って、接合体200を作製する。このベーク処理によって、感光性樹脂128、228よりなる接合材によって、第1基板12と第2基板14とが接合された接合体200が作製されることとなる。
そして、作製した接合体上に吐出口形成部材48を形成する。即ち、接合体200における第1基板12の表面12a上に、表面メンブレン層22を介して吐出口形成部材48を形成して、液体吐出ヘッド10が作製される(図8(d)参照)。第1基板12と第2基板14との仮接合および仮接合後の処理の具体的な処理内容については、現像液を第1、2流路側と、第3流路46側とから注入すること以外は、上記第1実施形態と同じである。その為、詳細な説明は省略する。
(本願発明者による実験)
次に、本願発明者による、上記各実施形態で作製した液体吐出ヘッドと、従来技術で作製した液体吐出ヘッドとにおけるボイドの発生を比較した実験結果について説明する。本実験では、それぞれ異なる製法により作製した、吐出口形成部材48および流路18を備えた複数のチップが形成された接合体としてのウエハをサンプルとした。そして、各サンプルにおけるボイドの発生の有無は、各チップに液体を供給したときにリークが生じたか否かを確認することにより判定した。
この実験では、サンプルO、O−1、P、Q、Rの5つのサンプルを用いて実験を行った。上記各実施形態による接合体の製造方法を用いてサンプルO、サンプルP、サンプルQ、サンプルRを作製するとともに、比較例として、公知技術による製造方法を用いてサンプルO−1を作製した。
<各サンプルの製法>
・サンプルO
まず、各サンプルの具体的な製法について説明する。サンプルOは、第1実施形態による接合体の製造方法により作製した。より詳細には、第1基板12として、厚さ730μm、8インチのシリコン基板を用いた。シリコン基板の表面12a上には、アルミの配線、酸化シリコン薄膜の層間絶縁膜、窒化タンタルのヒータ薄膜パターン、および外部の制御部と導通させるコンタクトパッドを形成した。なお、表面12aは、ミラー面となっている。
次に、配線などが形成された表面12a上に保護テープを貼り合わせ、第1基板12の裏面12bを研削装置によって研削し、第1基板12の厚さが625μmとなるまで薄加工した。そして、研削した裏面12bを平滑化するためにCMP装置によって研磨した。具体的には、CMP装置でコロイダルシリカを主成分とするスラリーとポリウレタン系の研磨パッドを用いて平滑化する。その後、アンモニア8重量%、過酸化水素水8重量%、および純水84重量%の混合液からなる洗浄液を用いて研磨面、つまり、裏面12bを洗浄してスラリーを除去した。
その後、第2流路26を形成するためのレジストマスクを裏面12bに形成し、第2流路26となる溝をエッチング加工により形成した。第2流路26は、溝としての幅が200μm、溝同士の間隔は70〜2500μmとした。裏面12bにおけるレジストマスクの形成については、公知の種々の技術を用いることができる。また、第2流路26を形成するためのエッチング加工としては、ドライエッチング、具体的には、SF6ガスによるエッチングと、CF4ガスによる堆積を繰り返すボッシュプロセスを用いた。平均の溝深さが450μmになったらエッチングを停止し、保護テープに紫外線を照射して除去した後に、剥離液でレジストやエッチング堆積物を除去した。
第2流路26を形成すると、次に、裏面12bに保護テープを貼り合わせ、第1流路24を形成するためのレジストマスクを表面12aに形成し、第1流路24となる複数のホールをドライエッチングにより形成した。第1流路24の開口形状は約50μm幅の正方形とした。ドライエッチング後に、保護テープを除去し、剥離液によりレジストやエッチング堆積物を除去した。
また、第2基板14として、厚さ400μmのシリコン基板を用いた。なお、第2基板14は、表面14aおよび裏面14bが研磨されている。第2基板14の表面14aに100nmのタンタル膜を製膜し、パターニングすることで、アライメントマークを形成する。
次に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を主成分とするネガ型の感光性樹脂28を表面14aに塗布した。表面14aへは、スピン塗布により膜厚が5μmとなるように感光性樹脂28を塗布した。そして、第2基板14を70℃、5分間の条件でプリベークして乾燥させた。その後に、i線を光源としたプロジェクション露光機を用いて、感光性樹脂28に対してマスク29を介して露光量320mJ/cm2で露光して、可溶部と不溶部とを形成した。
こうして第1基板12および第2基板14への処理が終了すると、接合アライメント装置を用いて、仮固定治具30により第1基板12を第2基板14上の所定位置で仮固定した。そして、仮固定治具30をプレス装置36の下部プレス板42に固定した。プレス装置36における上部プレス板38と下部プレス板42とは、30℃に温度制御されている。なお、プレスする直前の樹脂反応率を、FT−IRを用いた手法で評価したところ30%であった。
次に、プレス装置36の上部チャンバー40を閉じて真空引きを行い、上部プレス板38を下降させて5kNでプレスし、上部プレス板38と下部プレス板42とを60まで昇温させた。このときの昇温速度は5℃/minとした。60℃まで昇温させた後に10分間保持し、30℃まで冷却して第1基板12と第2基板14とを仮接合させて仮接合体99を作製した。なお、プレス前の露光直後の感光性樹脂28の粘度(つまり、室温の粘度)に対するプレス中の粘度比(昇温後の粘度比)をレオメータで評価した結果、粘度比が最小で8%まで減少していた。また、プレスを完了したときの樹脂反応率は75%であった。そして、作製された仮接合体99に対して、100℃、15分間の条件でホットプレートを用いてPEB処理した。この時の樹脂反応率は90%であった。
その後、仮接合体99において、第1基板12の表面12a側に保護テープを貼り合わせ、第2基板14の裏面14b側にレジストを形成して、第3流路46をボッシュプロセス(ドライエッチング)により形成した。第3流路46の開口部形状は、約200μmの正方形とした。このドライエッチングでは、第3流路46内に感光性樹脂28が暴露したら処理を停止し、剥離液でレジストやエッチング堆積物を除去した。そして、保護テープを剥離し、プロピレングリコールモノメチルエーテルを主成分とする現像液に仮接合体99を浸漬させて現像処理を行い、感光性樹脂28の可溶部を除去した。このとき、感光性樹脂28における開口形状は良好に形成されていた。そして、現像後の仮接合体99をオーブンにより、200℃、1時間の条件でベーク処理して、接合材としての感光性樹脂28を本硬化させて、接合体100を作製した。
次に、接合体100における第1基板12の表面12a側に、エポキシ樹脂から構成されたネガ型のドライフィルムを貼り合わせ、露光、現像することにより吐出口形成部材48の側壁部50を形成した。そして、側壁部50の上からドライフィルムを貼り合わせ、露光、現像することにより吐出口形成部材48の天板52を形成した。その後、オーブンにより接合体100を200℃、1時間の条件でベーク処理して、吐出口形成部材48を本硬化して、液体吐出ヘッド10の作製を完了した。
・サンプルO−1
次に、サンプルOの比較例としてのサンプルO−1の製法について説明する。サンプルO−1は、下記の点においてのみ、サンプルOの製法と異なっている。即ち、第2基板14に塗布した感光性樹脂28への露光を行った後に、PEB処理、現像処理を行い、感光性樹脂28をパターニングし、その後、プレス装置36によるプレス処理を行った。なお、サンプルO−1では、プレス前の感光性樹脂28の樹脂反応率は92%であった。
・サンプルP
また、サンプルPは、第2実施形態による接合体の製造方法により作製した。より詳細には、サンプルOと同様にして、第1流路24と第2流路26とが形成された第1基板12を取得する。次に、第2基板14上にアライメントマークを形成し、ドライエッチングにより第3流路46を形成した。具体的には、アライメントマークの形成は、サンプルOと同様の処理を行った。また、ドライエッチングは、第2基板14の表面14a側に保護テープを貼り合わせ、裏面14b側にレジストを形成して、第3流路46をボッシュプロセスにより形成した。
次に、感光性樹脂28によるフィルムを備えた転写体を作製する。感光性樹脂28は、サンプルOで用いたものと同じものを用いた。ポリエチレンテレフタレート基材上に20μmの厚さで感光性樹脂28をスピン塗布し、70℃、20分の条件で乾燥させて転写体を作製した。こうして作製した転写体を、表面14aに貼り付けた後に基材だけ剥がし、感光性樹脂28によるフィルムをラミネートした。そして、表面14aを被覆しているフィルム状の感光性樹脂28に対して、プロジェクション露光機を用いて、マスク29を介して露光量320mJ/cm2で露光して、可溶部と不溶部とを形成した。
その後、サンプルOと同様にして、仮固定治具30により第1基板12と第2基板14とをアライメントした状態で仮固定し、仮固定治具30をプレス装置36内の下部プレス板42上に配置する。このとき、下部プレス板42は30℃、上部プレス板38は60℃に保持されている。そして、プレス装置36内を真空引きし、上部プレス板38を下降させて4kNでプレスして10分間保持した後に、室温まで冷却して仮接合体99を作製した。なお、プレスする直前の樹脂反応率は30%であった。
次に、仮接合体99に対して、100℃、15分の条件でホットプレートによりPEB処理を行い、PEB処理した仮接合体99を、プロピレングリコールモノメチルエーテルを主成分とする現像液に浸漬して現像処理することで感光性樹脂28の可溶部を除去した。なお、PEB処理後の樹脂反応率は90%であった。その後、仮接合体99をオーブンで200℃、1時間の条件でベーク処理することで、接合材としての感光性樹脂28を本硬化させて接合体100を作製した。そして、サンプルOと同様にして、接合体100における第1基板12の表面12a上に吐出口形成部材48を形成して液体吐出ヘッド10を作製した。
・サンプルQ
次に、サンプルQは、第1実施形態による接合体の製造方法により作製した。より詳細には、サンプルQは、サンプルPの製法と、プレス方法のみを変更している。即ち、第1基板12と第2基板14とを仮固定した仮固定治具30を下部プレス板42上に固定した後に、上部チャンバー40を下降させてプレス装置36を閉じた。次に、上部プレス板38を下降させて第1基板12と第2基板14とを、5kNでプレスした後に、上部プレス板38と下部プレス板42とを30℃から60℃まで昇温させた。昇温速度は5℃/minとした。また、60℃に昇温後10分間保持し、その後、30℃まで冷却して仮接合体99を作製した。なお、このサンプルQの製法については、主に、接合材の塗布方法および接合材の膜厚などが、サンプルOの製法と異なっている。
・サンプルR
さらに、サンプルRは、第3実施形態による接合体の製造方法により作製した。より詳細には、サンプルOと同様にして、第1流路24と第2流路26とが形成された第1基板12を取得する。また、サンプルPと同様にして、第3流路46が形成された第2基板14を取得する。そして、サンプルPと同様にして、感光性樹脂128としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を用い、感光性樹脂128がフィルム状に形成された転写体を作製し、表面14aに当該転写体におけるフィルムをラミネートして第1樹脂層56を形成した。
次に、第1樹脂層56に対して、プロジェクション露光機を用い、マスク29を介して露光量320mJ/cm2で露光して、可溶部と不溶部とを形成した。そして、第1樹脂層56を、ホットプレートを用いて100℃、15分間の条件でPEB処理した。その後、感光性樹脂228として感光性樹脂128と同じビスフェノールA型エポキシ樹脂を用い、スピン塗布により第1樹脂層56上に第2樹脂層58を形成した。この第2樹脂層58の膜厚は10μmである。第2樹脂層58を、70℃、5分間の条件で乾燥した後に、感光性樹脂228に対して、マスク29を介して露光量320mJ/cm2で露光して、可溶部と不溶部とを形成した。
その後、サンプルOと同様にして、仮固定治具30に第1基板12と第2基板14とをアライメントした状態で仮固定し、プレス装置36の下部プレス板42上に配置した。このとき、上部プレス板38および下部プレス板42は、30℃に温度制御されている。そして、上部チャンバー40を下降してプレス装置36を閉めた後に、プレス装置36内を真空引きする。次いで、上部プレス板38を下降させて、第1基板12と第2基板14とを5kNでプレスした後に、上部プレス板38と下部プレス板42とを60℃まで昇温させた。このときの昇温速度は5℃/minとした。60℃まで昇温後10分間保持した後、30℃まで冷却して仮接合体199を作製した。
こうして作製した仮接合体199に対して、ホットプレートにより、100℃、15分間の条件でPEB処理した。そして、PEB処理した仮接合体199を、プロピレングリコールモノメチルエーテルを主成分とする現像液に浸漬させて現像処理を行い、第1樹脂層56および第2樹脂層58の可溶部を除去した。現像処理が完了すると、仮接合体199をオーブンにより、200℃、1時間の条件でベーク処理することで、接合材としての感光性樹脂128、228を本硬化させて接合体200を作製した。その後、サンプルOと同様にして、接合体200における第1基板12の表面12a上に吐出口形成部材48を形成して液体吐出ヘッド10を作製した。
なお、サンプルRでは、第2樹脂層58を形成する感光性樹脂228は、プレス前の樹脂反応率、PEB処理後の樹脂反応率、および露光直後(プレス前)の感光性樹脂228の粘度に対するプレス中の感光性樹脂228の粘度比は、サンプルOと同じであった。
<各サンプルのボイド発生の評価>
図9は、本実施形態による接合体の製造方法により作製したサンプルと比較例としてのサンプルとについて、ボイドの発生の有無を評価した評価結果を示す図である。
第1実施形態による接合体の製造方法を用いて作製したサンプルOについて、吐出口形成部材48を形成する前のウエハにおいて、超音波顕微鏡により第1基板12と第2基板14との接合部分からの液体のリークの有無を確認した。その結果、流路18を含むチップ単位で、どのチップからも液体のリークを確認することができなかった。即ち、サンプルOでは、第1基板12と第2基板14との接合面においてボイドが発生していないと評価できる。一方、サンプルOの比較例として、公知技術の製法を用いて作製したサンプルO−1では、吐出口形成部材48を形成する前のウエハにおいて、70%のチップで上記接合部分から液体のリークを確認することができた。即ち、サンプルO−1では、第1基板12と第2基板14との接合面においてボイドが発生していると評価できる。
第2実施形態による接合体の製造方法を用いて作製したサンプルPについて、吐出口形成部材48を形成する前のウエハにおいて、超音波顕微鏡により第1基板12と第2基板14との接合部分からの液体のリークの有無を確認した。その結果、どのチップからも液体のリークを確認することができなかった。即ち、サンプルPでは、第1基板12と第2基板14との接合面においてボイドが発生していないと評価できる。
サンプルOとサンプルPとについて、プレス中の感光性樹脂28の粘度を、プレスによって感光性樹脂28が流動して第2流路26の壁面を這い上がる量から推定した。這い上がる量については、プレス完了時の断面SEMにより評価した。その結果、サンプルPでは、感光性樹脂28の壁面を這い上がった量が、サンプルOのおよそ3倍となった。従って、サンプルPでは、サンプルOよりも感光性樹脂28の流動性が高かったことがかわかる。このことから、サンプルPでは、サンプルOよりもプレス中の感光性樹脂28の粘度が低くなり、露光直後(プレス前)の感光性樹脂28の粘度に対する、プレス中の感光性樹脂28の粘度比は、少なくとも8%よりも小さくなっているもの推測される。
第1実施形態による接合体の製造方法を用いて作製したサンプルQについて、吐出口形成部材48を形成する前のウエハにおいて、超音波顕微鏡により第1基板12と第2基板14との接合部分からの液体のリークの有無を確認した。その結果、上記ウエハにおいて、36%のチップで上記接合部分から液体のリークが確認された。即ち、サンプルQでは第1基板12と第2基板14との接合面においてボイドが発生していると評価できる。
しかしながら、サンプルQについては、サンプルO−1と異なり、感光性樹脂28への露光後にプレス処理を行い、その後、PEB処理、現像処理を行うようにしている。このように、樹脂反応率の低い段階でプレス処理を行っているサンプルQでは、公知技術による製法によって作製されたサンプルO−1よりもボイドの発生がより抑制されていることがわかる。なお、サンプルQでは、ラミネートにより感光性樹脂28を塗布しているため、プレス時の感光性樹脂の流動性が低く、このため、サンプルOよりもボイドが発生したものと考えられる。
第3実施形態による接合体の製造方法を用いて作製したサンプルRについて、吐出口形成部材48を形成する前のウエハにおいて、超音波顕微鏡により第1基板12と第2基板14との接合部分からの液体のリークの有無を確認した。その結果、どのチップからの液体のリークを確認することができなかった。即ち、サンプルRでは、第1基板12と第2基板14との接合面においてボイドが発生していないと評価できる。
(他の実施形態)
なお、上記実施形態は、以下の(1)乃至(4)に示すように変形してもよい。
(1)上記第3実施形態では、第2樹脂層58を形成する感光性樹脂228を、溶媒の含有量を多くすることによって第1樹脂層56を形成する感光性樹脂128よりも低粘度とするようにしたが、これに限定されるものではない。即ち、感光性樹脂228としては、例えば、近似した特性を示す、分子量が低い感光性樹脂を用いるなど、溶媒の含有量によらずに、感光性樹脂128よりも低粘度となる感光性樹脂を用いてもよい。
(2)上記実施形態では特に記載しなかったが、上記した第1実施形態、第2実施形態および第3実施形態の複数を組み合わせるようにしてもよい。また、上記実施形態では、下部プレス板42に対して、上部プレス板38を下降させることで、第1基板12および第2基板14をプレスするようにしたが、これに限定されるものではない。即ち、上部プレス板38と下部プレス板42とが相対移動して、第1基板12と第2基板14とが感光性樹脂を介して押圧し合うようにプレスされる構成であればどのような構成であってもよい。
(3)上記実施形態では、プレス処理の際に、感光性樹脂の樹脂反応率を低くするとともに、加熱部材(上部プレス板38、下部プレス板42)を所定の昇温速度で昇温するようにしたが、これに限定されるものではない。即ち、ボイドの発生を許容可能な範囲に抑制できるのであれば、感光性樹脂の樹脂反応率を低くすること、あるいは、加熱部材を所定の昇温速度で昇温することのどちらか一方のみを実行するようにしてもよい。
(4)上記実施形態および上記した(1)乃至(3)に示す各種の形態は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。
10 液体吐出ヘッド
12 第1基板
14 第2基板
28、128、228 感光性樹脂
100、200 接合体

Claims (17)

  1. 光と処理液とによってパターニングが可能な感光性樹脂による接合材によって部材同士が接合された接合体の製造方法であって、
    一方の部材上に形成された前記接合材に対して、光を照射して露光する露光工程と、
    前記露光工程で露光された前記接合材を介して他方の部材が前記一方の部材に当接した状態で、前記一方の部材と前記他方の部材とをプレスするプレス工程と、
    前記露光工程による露光により形成されたパターンを安定させるために前記接合材を加熱する加熱工程と、
    前記接合材に形成された可溶部を、処理液を用いて溶解して除去する除去工程と、
    を有することを特徴とする接合体の製造方法。
  2. 前記プレス工程では、前記一方の部材と前記他方の部材とを接合する前記接合材の接合領域における樹脂反応率が90%以下である、請求項1に記載の接合体の製造方法。
  3. 前記樹脂反応率は50%以下である、請求項2に記載の接合体の製造方法。
  4. 前記プレス工程では、前記一方の部材と前記他方の部材とを接合する前記接合材の接合領域の室温における粘度に対するプレス中の前記接合領域の粘度の比率は、少なくとも30%以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
  5. 前記比率は少なくとも10%以下である、請求項4に記載の接合体の製造方法。
  6. 前記加熱工程では、前記一方の部材と前記他方の部材とを接合する前記接合材の接合領域における樹脂反応率は90%以上となる、請求項1から5のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
  7. 前記一方の部材および前記他方の部材は、無機材料により形成される、請求項1から6のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
  8. 前記接合材は、少なくとも、主剤と、光照射により酸を発生し得る光酸発生剤と、前記主剤および前記光酸発生剤を可溶な溶媒とを含み、
    前記主剤は、メタクリル樹脂、ビニル樹脂、スチレン樹脂、ビニルエーテル樹脂、オキセタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、あるいはポリアミド樹脂である、請求項1から7のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
  9. 前記接合材は、ネガ型の感光性樹脂であり、
    前記主剤は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である、請求項8に記載の接合体の製造方法。
  10. 前記露光工程における露光量は、前記接合材のゲル化露光量以上、該ゲル化露光量の20倍以下である、請求項9のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
  11. 前記プレス工程では、
    前記一方の部材に当接する第1プレス板と、前記他方の部材に当接する第2プレス板とを備え、前記第1プレス板と前記第2プレス板とを相対移動して、前記一方の部材と前記他方の部材とを前記接合材を介して押圧し合うようにプレスするプレス手段を用い、
    プレス中に、前記第1プレス板と前記第2プレス板とを昇温速度3℃/min以上で昇温させる、請求項1から10のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
  12. 前記プレス工程では、
    前記一方の部材に当接する第1プレス板と、前記他方の部材に当接する第2プレス板とを備え、前記第1プレス板と前記第2プレス板とを相対移動して、前記一方の部材と前記他方の部材とを前記接合材を介して押圧し合うようにプレスするプレス手段を用い、
    前記第2プレス板を前記第1プレス板よりも20℃以上高い温度まで昇温させた後に、プレスを行う、請求項1から10のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
  13. 前記第1プレス板は室温とする、請求項12に記載の接合体の製造方法。
  14. 前記一方の部材上に、第1感光性樹脂により第1樹脂層を形成し、前記第1樹脂層上に、前記第1感光性樹脂よりも低粘度の第2感光性樹脂による第2樹脂層を形成することで、前記一方の部材上に、前記第1樹脂層および前記第2樹脂層による前記接合材を形成する形成工程をさらに有し、
    前記露光工程では、前記形成工程で形成された前記接合材に対して露光を行う、請求項1から13のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
  15. 前記形成工程では、前記第1樹脂層を露光した後に、前記第1樹脂層上に前記第2樹脂層を形成する、請求項14に記載の接合体の製造方法。
  16. 前記形成工程では、前記第1感光性樹脂を前記一方の部材上にラミネートして前記第1樹脂層を形成する、請求項14または15に記載の接合体の製造方法。
  17. 液体を供給する流路を備えた接合体上に、前記流路を介して供給される液体を吐出する吐出口を備えた液体吐出ヘッドの製造方法であって、
    前記接合体を、請求項1から16のいずれか1項に記載の接合体の製造方法により作製する、ことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
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