JP2021058900A - 接合構造部 - Google Patents
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Abstract
Description
耐熱性を高めるには、放熱に優れたCu基板に素子および部品を接合する手法が最善であるが、熱膨張率の違いによって素子および部品が破壊されるか、接合部の接合材に破損が起きるという問題点がある。そこで現在では、素子および部品の熱膨張率に合わせた高価なセラミック基板が用いられ、改善が求められている。
例えば、特許文献1に開示されているSnAgCu系接合材(粉末はんだ材料)では、約125℃程度に対応したパワー半導体に適用可能であるに過ぎず、次世代のパワー半導体に適用することができない。
しかし、特許文献2に示された金属粒子は外殻とコア部の2層構造を有し、外殻の金属間化合物が接合対象物との間に介在することによって、Cuその他の接合対象物との拡散を制御して、カーケンダルボイドの発生を抑制するものであるが、熱膨張率が異なる素子および部品同士を信頼性良く接合するまでには至っていない。
すなわち本発明は、以下の通りである。
前記Sn−Cu合金および前記金属間化合物の少なくとも1部が、エンドタキシャル接合してなることを特徴とする接合構造部。
2.前記母相が、さらにAuを含むことを特徴とする前記1に記載の接合構造部。
3.Cuを0.7〜40質量%およびNiを0.1〜5質量%含むことを特徴とする前記1に記載の接合構造部。
4.Cuを0.7〜40質量%、Niを0.1〜5質量%およびAuを0.01〜20質量%含むことを特徴とする前記2に記載の接合構造部。
本発明の接合構造部では、約160℃以下でも(たとえば、常温でも)高温相結晶を含有していることに特徴がある。たとえば、下記で説明する金属粒子を含む接合材を接合工程で加熱する際に、当該接合材を完全には溶融させない半溶融状態とし、金属間化合物と母相とのエンドタキシャル接合を含む状態とすれば、冷却後の160℃以下の温度領域でも高温相結晶を含む状態を維持する。そして、かかる高温相結晶は、ある程度まで温度を下げても、正方晶の低温相結晶β−Snへの相転移を起こしにくく、正方晶のβ−Snに相転移しないままのSnについては、α−Snへの相転移が生じず、温度の低下によるα−Snへの相転移に伴う大きな体積変化が生じない。したがって、160℃以下の温度領域でも(たとえば、常温でも)高温相結晶を有するSnを含む接合材は、Snを組成に含む他の接合材(すなわち、160℃以下の温度領域でも高温結晶相を意図的には含ませていないもの)よりも、温度変化による体積変化が低減される。
また、電子部品には、Cu、Ag、Au、Niその他さまざまな金属が用いられるが、Snは、これらのさまざまな金属と良好に接合する。
したがって、本発明の接合構造部は、幅広い温度領域で(たとえば、常温でも)高温相結晶相を含有し、正方晶の低温相β−Snが生じることを出来る限り回避することによって、温度変化による正方晶のβ−Snから立方晶のα−Snへの相転移に伴う大きな体積変化を起こしにくいという性質を有し、かつ、電子部品に用いられるさまざまな金属とも良好に接合する。したがって、とりわけ微細な接合箇所の接合に有用である。
このように、本発明によれば、従来技術よりも幅広い温度領域において体積変化が抑制された接合を形成し、従来技術よりも高い耐熱性、接合強度および機械的強度を有し、熱膨張率が異なる素子および部品同士を信頼性良く接合できる接合構造部を提供できる。なお、高温時における金属間化合物の酸化抑制は、微量なAuの添加によって抑制されることが確認された。
先に、本明細書における用語法は、特に説明がない場合であっても、以下による。
(1)金属というときは、金属元素単体のみならず、複数の金属元素を含む合金、金属間化合物を含むことがある。
(2)ある単体の金属元素に言及する場合、完全に純粋に当該金属元素のみからなる物質だけを意味するものではなく、微かな他の物質を含む場合もあわせて意味する。すなわち、当該金属元素の性質にほとんど影響を与えない微量の不純物を含むものを除外する意味ではないことは勿論、たとえば、母相という場合、Snの結晶中の原子の一部が他の元素(たとえば、Cu)に置き換わっているものを除外する意味ではない。例えば、前記他の物質または他の元素は、金属粒子中、0〜0.1質量%含まれる場合がある。
(3)エンドタキシャル接合とは、金属・合金となる物質中(本発明ではSnおよびSn−Cu合金を含む母相)に金属間化合物が析出し、この析出の最中にSn−Cu合金と金属間化合物とが結晶格子レベルで接合し、結晶粒を構成することを意味している。エンドタキシャルという用語は公知であり、例えばNature Chemisry 3(2): 160-6、2011年の160頁左欄最終パラグラフに記載がある。
例えば次のような条件が挙げられる。
溶解炉7における金属の溶融温度を600℃〜800℃に設定し、その温度を保持したまま、ノズル3から皿型回転ディスク4上に溶融金属を供給する。
皿形回転ディスク4として、内径60mm、深さ3mmの皿形ディスクを用い、毎分8万〜10万回転とする。
粒状化室1として、9×10-2Pa程度まで減圧する性能を有する真空槽を使用して減圧した上で、15〜50℃の窒素ガスを供給しつつ排気を同時に行って、粒状化室1内の気圧を1×10−1Pa以下とする。
これら条件により製造された金属粒子の粒径は、前記のように好適には1μm〜50μmの範囲であり、さらに好ましくは5μm〜40μmである。
また、本発明の金属粒子における金属間化合物の割合は、金属粒子全体に対し、例えば20〜60質量%であり、30〜40質量%が好ましい。
前記金属間化合物の組成および割合は、前記金属粒子の製造条件に従うことにより満たすことができる。
下記図1で示すような金属粒子の断面を電子顕微鏡写真撮影し、金属間化合物とSn−Cu合金との接合面を任意に50か所サンプリングする。続いて、その接合面を画像解析し、下記図5に示すようなエンドタキシャル接合が、サンプリングした接合面に対してどの程度存在するのかを調べる。
本発明の金属粒子を材料に含むシートは、当該金属粒子を、例えば、以下のようにローラーで圧接することによって得ることができる。すなわち、対向する向きに回転する一対の圧接ローラーの間に、本発明の金属粒子を供給し、圧接ローラーから金属粒子に約100℃から150℃程度の熱を加えて、金属粒子を圧接することによりシートが得られる。
例えば、Snより導電性が高いCu、Ni合金粒子、Auおよび/またはAu合金粒子と金属粒子とを組み合わせると、導電性がよく、かつ、比較的幅広い温度領域で体積変化が抑制された金属接合層が得られる。
前記Au、前記Au合金粒子、前記Auをメッキした粒子の導入割合は、前記シートまたは前記導電性ペースト全体に対し、例えば0.01〜20質量%であり、好ましくは15〜20質量%である。このように前記Au、前記Au合金粒子、前記Auをメッキした粒子を導入し接合構造部を形成すると、前記Au、前記Au合金粒子、前記Auをメッキした粒子が該接合構造部の母相の一部を形成することになる。
図9において、接合構造部300は、対向配置された基板100、500に形成された金属/合金体101、501(図9ではCu電極)を接合する。接合構造部300は、SnおよびSn−Cu合金を含む母相中に、Sn、CuおよびNiからなる金属間化合物を有し、前記母相および前記金属間化合物の少なくとも1部が、エンドタキシャル接合してなることを特徴とし、前記母相が、前記金属体または合金体101、501と接合している。
また、Sn、CuおよびNiからなる金属間化合物は、好ましくは自己相似性(フラクタル性)結晶構造を有する。
また、前記金属間化合物の組成は、Sn、Cu、Niの原子数の比として、例えばSn40〜60、Cu30〜50、Ni4〜9である。
また、本発明の接合構造部における金属間化合物の割合は、接合構造部に対し、例えば50〜90質量%であり、60〜80質量%が好ましい。
原材料として8Cu・91Sn・1Niを用い、図2に示す製造装置により、直径約3〜40μmの金属粒子1を製造した。
その際、以下の条件を採用した。
溶解炉7に溶融るつぼを設置し、その中に8Cu・91Sn・1Niを入れ、650℃で溶融し、その温度を保持したまま、ノズル3から皿型回転ディスク4上に溶融金属を供給した。
皿形回転ディスク4として、内径60mm、深さ3mmの皿形ディスクを用い、毎分8万〜10万回転とした。
粒状化室1として、9×10-2Pa程度まで減圧する性能を有する真空槽を使用して減圧した上で、15〜50℃の窒素ガスを供給しつつ排気を同時に行って、粒状化室1内の気圧を1×10−1Pa以下とした。
図3は、図1で示した金属粒子断面のEDSによる元素マッピング分析結果である。この分析結果から、Cuが10.24質量%、Niが0.99質量%、残部Snが88.76質量%であることが判明した。
図4に示すように、金属粒子断面のpt1〜pt7の各部位において、Cu、NiおよびSnの定量値が異なっている。
このことは、母相金属中に金属間化合物がフラクタル結晶構造を構築していることを示している。
図5(a)を参照すると、SnおよびSn−Cu合金を含む母相140中に、Sn、CuおよびNiからなる金属間化合物120が存在していることが分かる。
図5(b)は、図5(a)の矩形に囲まれた部分の拡大図である。図5(b)を参照すると、母相140と金属間化合物120との間で、格子定数(および結晶方位)が揃い(図5(b)では0.30nm)、それぞれの結晶が、連続的に結晶格子レベルで接合していることが確認された。すなわち、上記図5(b)によれば、格子の接合が実現していることからエンドタキシャル接合であることが確認され、なおかつ、図5(c)の母相140と金属間化合物120の界面の透過型電子回折パターンによれば、その結晶間にはバッファー層がないことも確認された。なお、該エンドタキシャル接合は、Sn−Cu合金と金属間化合物との間で形成された。
さらに図5から、該エンドタキシャル接合の界面がフラクタル結晶構造を有することが確認された。フラクタル結晶構造を有することで、金属間化合物の脆さが克服され、またSnの高温相結晶がより維持され易くなり、熱膨張率が異なる素子および部品同士をさらに信頼性良く接合でき、接合構造部が高温・極冷サイクルに施されても十分な接合維持を可能にする。
また、(-40〜175℃)の冷熱サイクル試験(TCT)では、全サイクル(1000サイクル)に渡って、シェア強度が約50MPaで安定するという試験結果が得られた。
冷熱衝撃試験は、低温さらし温度が-40℃、高温さらし温度が175℃で1000サイクル行った。
図6から、銅基板とシリコン素子との間の接合部が崩壊されず、かつシリコン素子も破壊されず、良好な接合状態が維持されていることが確認できる。
8質量%Cu、3質量%Niおよび89質量%Snからなる組成の原材料を用いて、実施例1と同様に金属粒子2を製造した。
次に、金属粒子2を70質量部と、90質量%Cu・10質量%Ni合金粉末30質量部とを均一に混合し、乾粉圧接してシートを作成した(50μm厚)。当該シートを銅基板とシリコン素子の接合に用い、260℃の高温保持試験(HTS)を行ったところ、試験開始時から約100時間までは、シェア強度が約60MPaから約70MPaまで上昇し、100時間超の時間領域では、ほぼ60MPaで安定するという試験結果が得られた。
また、(-40〜175℃)の冷熱サイクル試験(TCT)では、全サイクル(1000サイクル)に渡って、シェア強度が約50MPaで安定するという試験結果が得られた。
なお、比較例として、従来のSnAgCu系接合材(粒径5μmの粉末はんだ材料)のSTEM像と、EDSによる元素マッピング分析結果を図7に示す。
図7(a)〜(d)によれば、従来のSnAgCu系接合材は、金属間化合物が存在せず、単一金属の元素が分散していることが確認された。また金属母相のSn−Cu合金が高温相の結晶構造をもたないことも確認された。このような従来のSnAgCu系接合材では、(-40〜175℃)の冷熱サイクル試験(TCT)では100サイクルも持たず接合部崩壊してしまい、本発明の金属粒子のような耐熱性および強度を到底得ることができない。
図8は比較例1で得られた接合材で銅基板とシリコン素子を接合し、冷熱衝撃試験に供した後の、接合部断面の光学顕微鏡像である。
冷熱衝撃試験は、低温さらし温度が-40℃、高温さらし温度が175℃で50サイクル行った。
図8から、冷熱衝撃試験50サイクル後であっても銅基板およびシリコン素子間の接合部が崩壊してしまったことが確認できる。
2 蓋
3 ノズル
4 皿形回転ディスク
5 回転ディスク支持機構
6 粒子排出管
7 電気炉
8 混合ガスタンク
9 配管
10 配管
11 弁
12 排気装置
13 弁
14 排気装置
15 自動フィルター
16 微粒子回収装置
120 金属間化合物
140 母相
Claims (4)
- SnおよびSn−Cu合金を含む母相中に、Sn、CuおよびNiからなる金属間化合物を有し、金属体または合金体を接合する接合構造部であって、
前記Sn−Cu合金および前記金属間化合物の少なくとも1部が、エンドタキシャル接合してなることを特徴とする接合構造部。 - 前記母相が、さらにAuを含むことを特徴とする請求項1に記載の接合構造部。
- Cuを0.7〜40質量%およびNiを0.1〜5質量%含むことを特徴とする請求項1に記載の接合構造部。
- Cuを0.7〜40質量%、Niを0.1〜5質量%およびAuを0.01〜20質量%含むことを特徴とする請求項2に記載の接合構造部。
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