JP2021056208A - 分析方法および分析装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】短時間でスペクトルマップを取得できる分析方法を提供する。【解決手段】本発明に係る分析方法は、一次プローブを試料上で走査して、試料から放出された電子を電子分光器で検出することによってn個のマップデータを取得するマップ測定を、アナライザーの測定エネルギー範囲を変更しながらm回繰り返すことによって、n×m個のマップデータを取得する工程と、n×m個のマップデータに基づいて、試料上の位置とスペクトルとを関連づけたスペクトルマップを生成する工程と、を含み、m回のマップ測定の測定エネルギー範囲は、互いに重ならない。【選択図】図5

Description

本発明は、分析方法および分析装置に関する。
X線光電子分光装置やオージェ電子分光装置などの分析装置では、電子分光器によって電子をエネルギー分光することによって、特定のエネルギーを持つ電子のみを検出することができる。測定されるエネルギーの選択は、電子分光器が備える電子レンズを制御することによって行われる。例えば、測定されるエネルギーを掃引させながら、測定を繰り返すことによって、エネルギースペクトルが得られる(例えば特許文献1参照)。また、測定エネルギーを固定し、入射プローブを試料表面上で走査することによって、電子分光像が得られる。電子分光像は、特定のエネルギーを持つ電子の分布を示す像である。
測定エネルギーを掃引し、かつ、一次プローブの走査を組み合わせることによって、試料表面上の各測定点においてエネルギースペクトルを取得することができる。このように、試料上の位置とスペクトルとを関連づけたものをスペクトルマップという。
特開2001−312994号公報
スペクトルマップは、分析視野内の各測定点で点分析を行ってエネルギースペクトルを取得することで生成できる。しかしながら、スペクトルマップの取得には、時間がかかってしまうという問題がある。
例えば、オージェ電子分光装置において、エネルギースペクトルを得るための点分析では、電子分光器の電子レンズの制御と、電子の分光および検出と、を繰り返し実行する必要がある。電子レンズの制御時には、電子分光器内部の電極電圧やコイル電流を変更してから安定するまでの待ち時間が必要である。電子分光器の分光条件によっては、この待ち時間が数分から数十分に及ぶ場合がある。
上述したように、分析視野内の各測定点で点分析を行ってスペクトルマップを取得する場合、測定点ごとに、上記の待ち時間が必要である。したがって、スペクトルマップの取得には、時間がかってしまう。
(1)本発明に係る分析方法の一態様は、
一次プローブを試料に照射して前記試料から放出された電子をエネルギー分光するアナライザーと、前記アナライザーでエネルギー分光された電子のエネルギー分散方向に並んで配置されたn個の検出部を有する検出器と、を有する電子分光器を含む分析装置を用いた分析方法であって、
前記一次プローブを前記試料上で走査して、前記試料から放出された電子を前記電子分光器で検出することによってn個のマップデータを取得するマップ測定を、前記アナライザーの測定エネルギー範囲を変更しながらm回繰り返すことによって、n×m個のマップデータを取得する工程と、
前記n×m個のマップデータに基づいて、前記試料上の位置とスペクトルとを関連づけ
たスペクトルマップを生成する工程と、
を含み、
m回の前記マップ測定の測定エネルギー範囲は、互いに重ならない。
このような分析方法では、測定点ごとに、電子分光器内部の電極電圧やコイル電流を変更してから安定するまでの待ち時間が生じないため、スペクトルマップを取得するための測定を短時間で行うことができる。
(2)本発明に係る分析方法の一態様は、
一次プローブを試料に照射して前記試料から放出された電子をエネルギー分光するアナライザーと、前記アナライザーでエネルギー分光された電子のエネルギー分散方向に並んで配置されたn個の検出部を有する検出器と、を有する電子分光器を含む分析装置を用いた分析方法であって、
前記一次プローブを前記試料上で走査して、前記試料から放出された電子を前記電子分光器で検出することによってn個のマップデータを取得するマップ測定を、前記アナライザーの測定エネルギー範囲を変更しながらm回繰り返すことによって、n×m個のマップデータを取得する工程と、
前記n×m個のマップデータに基づいて、前記試料上の位置とスペクトルとを関連づけたスペクトルマップを生成する工程と、
を含み、
m回の前記マップ測定において、前記検出部の測定エネルギーは重複しない。
このような分析方法では、測定点ごとに、電子分光器内部の電極電圧やコイル電流を変更してから安定するまでの待ち時間が生じないため、スペクトルマップを取得するための測定を短時間で行うことができる。
(3)本発明に係る分析装置の一態様は、
一次プローブを試料に照射して前記試料から放出された電子をエネルギー分光するアナライザー、および前記アナライザーでエネルギー分光された電子のエネルギー分散方向に並んで配置されたn個の検出部を有する検出器を有する電子分光器と、
前記電子分光器における電子の検出結果に基づいて、前記試料上の位置とスペクトルとを関連づけたスペクトルマップを生成する処理部と、
を含み、
前記処理部は、
前記一次プローブを前記試料上で走査して、前記試料から放出された電子を前記電子分光器で検出することによってn個のマップデータを取得するマップ測定を、前記アナライザーの測定エネルギー範囲を変更しながらm回繰り返すことによって得られた、n×m個のマップデータを取得する処理と、
前記n×m個のマップデータに基づいて、前記試料上の位置とスペクトルとを関連づけたスペクトルマップを生成する処理と、
を行い、
m回の前記マップ測定の測定エネルギー範囲は、互いに重ならない。
このような分析装置では、測定点ごとに、電子分光器内部の電極電圧やコイル電流の値を変更してから安定するまでの待ち時間が生じないため、スペクトルマップを取得するための測定を短時間で行うことができる。
(4)本発明に係る分析装置の一態様は、
一次プローブを試料に照射して前記試料から放出された電子をエネルギー分光するアナライザー、および前記アナライザーでエネルギー分光された電子のエネルギー分散方向に
並んで配置されたn個の検出部を有する検出器を有する電子分光器と、
前記電子分光器における電子の検出結果に基づいて、前記試料上の位置とスペクトルとを関連づけたスペクトルマップを生成する処理部と、
を含み、
前記処理部は、
前記一次プローブを前記試料上で走査して、前記試料から放出された電子を前記電子分光器で検出することによってn個のマップデータを取得するマップ測定を、前記アナライザーの測定エネルギー範囲を変更しながらm回繰り返すことによって得られた、n×m個のマップデータを取得する処理と、
前記n×m個のマップデータに基づいて、前記試料上の位置とスペクトルとを関連づけたスペクトルマップを生成する処理と、
を行い、
m回の前記マップ測定において、前記検出部の測定エネルギーは重複しない。
このような分析装置では、測定点ごとに、電子分光器内部の電極電圧やコイル電流の値を変更してから安定するまでの待ち時間が生じないため、スペクトルマップを取得するための測定を短時間で行うことができる。
オージェ電子分光装置の構成を示す図。 検出器を模式的に示す図。 検出器の機能を説明するための図。 第1実施形態に係る分析方法の一例を示すフローチャート。 n×m個のマップデータを取得する工程を説明するための図。 スペクトルマップから取得されたスペクトルを示す図。 スペクトルS2において、各測定エネルギーで使用されたチャンネル、および強度の関係を示す表。 第1変形例に係る分析方法を説明するための図。 第1変形例に係る分析方法を説明するための図。 第1変形例に係る分析方法を説明するための図。 第1変形例に係る分析方法を説明するための図。 第1変形例に係る分析方法を説明するための図。 第1変形例に係る分析方法を説明するための図。 第1変形例に係る分析方法を説明するための図。 第1変形例に係る分析方法を説明するための図。 第1変形例に係る分析方法を説明するための図。 第1変形例に係る分析方法を説明するための図。 第1変形例に係る分析方法を説明するための図。 スペクトルマップから得られたスペクトルと、当該スペクトルの移動平均を計算して得られたスペクトルと、を示す図。 1chのスペクトル、2chのスペクトル、および3chのスペクトルを示す図。 各チャンネルの検出感度を補正する処理を説明するための図。 補正する前のスペクトル。 補正後のスペクトル。 第3変形例に係る分析方法を説明するための図。 第2実施形態に係る分析方法の一例を示すフローチャート。 マップ測定中のドリフト補正を説明するための図。 マップ測定中のドリフト補正の変形例を説明するための図 マップ測定後のドリフト補正を説明するための図。 マップ測定後のドリフト補正の変形例を説明するための図。 第3実施形態に係る分析方法を説明するための図。 第3変形例に係るマップデータの取得方法を説明するための図。 第4実施形態におけるドリフト補正方法を説明するための図。 第5実施形態におけるドリフト補正方法を説明するための図。 第7実施形態におけるドリフト補正方法を説明するための図。
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
また、以下では、本発明に係る分析装置として、オージェ電子分光装置を例に挙げて説明するが、本発明に係る分析装置はこれに限定されない。
1. 第1実施形態
1.1. オージェ電子分光装置
まず、第1実施形態に係る分析方法に用いられるオージェ電子分光装置について図面を参照しながら説明する。図1は、オージェ電子分光装置100を模式的に示す図である。
オージェ電子分光装置100は、オージェ電子分光法により試料の分析を行うための装置である。オージェ電子分光装置100では、電子線等の一次プローブを試料Sに照射して試料Sから放出された電子を電子分光器30で分光および検出することによって、元素分析を行う。
オージェ電子分光装置100は、図1に示すように、電子線照射装置10と、試料ステージ20と、電子分光器30と、照射制御装置50と、電子分光器制御装置52と、計数演算装置54と、処理部60と、二次電子検出器70と、を含む。
電子線照射装置10は、電子線を試料Sに照射する。電子線照射装置10は、電子銃12と、電子レンズ14と、偏向器16と、を含む。
電子銃12は、電子線を放出する。電子レンズ14は、電子銃12から放出された電子線を集束させる。偏向器16は、電子レンズ14で集束された電子線を偏向させる。偏向器16によって、電子線を試料S上で走査することができる。
試料ステージ20は、試料Sを保持し、試料Sを移動させることができる。
電子分光器30は、インプットレンズ32と、アナライザー34と、検出器40と、を有している。電子分光器30では、試料Sから放出された電子をアナライザー34でエネルギー分光し、分光された電子を検出器40で検出する。
インプットレンズ32は、試料Sから放出された電子をアナライザー34に導く。また、インプットレンズ32は、電子を減速させることによってエネルギー分解能を可変にする。インプットレンズ32において、電子を減速させるほど分解能は良くなるが、感度は低下する。インプットレンズ32は、例えば、複数の静電レンズ33で構成されている。
アナライザー34は、電子線が試料Sに照射されることによって試料Sから放出された電子をエネルギー分光する。アナライザー34は、例えば、静電半球型アナライザーである。アナライザー34は、内半球電極35aと、外半球電極35bと、を有している。ア
ナライザー34では、内半球電極35aと外半球電極35bとの間に電圧を印加することで、印加した電圧に応じたエネルギー範囲の電子を取り出すことができる。
なお、アナライザー34は、試料Sから放出された電子をエネルギー分光することができればその構成は限定されない。アナライザー34として、円筒鏡型アナライザーなどを用いてもよい。
検出器40は、アナライザー34でエネルギー分光された電子を検出する。
図2は、検出器40を模式的に示す図である。検出器40は、n個のチャンネルトロン42(検出部の一例)を有している。チャンネルトロン42の数nは、2以上である(n≧2)。図2に示す例では、検出器40は、7個のチャンネルトロン42を有している(n=7)。チャンネルトロン42は、電子を検出し、増幅した信号を出力する検出器である。
n個のチャンネルトロン42は、アナライザー34の出射面(エネルギー分散面)において、エネルギー分散方向Aに並んで配置されている。そのため、n個のチャンネルトロン42は、互いに異なるエネルギーの電子を検出することができる。したがって、検出器40では、異なるエネルギーの電子を同時に検出することができる。n個のチャンネルトロン42は、内半球電極35aから外半球電極35bに向かう方向に沿って配列されている。
図3は、検出器40の機能を説明するための図である。
図3に示すように、7個のチャンネルトロン42には、−3ch〜+3chのチャンネル番号が割り当てられている。具体的には、アナライザー34の電極35a,35b間の中心を通る電子を検出するチャンネルトロン42が、0chである。また、0chのチャンネルトロン42から、内半球電極35a側に向かって順に、−1chのチャンネルトロン42、−2chのチャンネルトロン42、−3chのチャンネルトロン42が配置されている。また、0chのチャンネルトロン42から、外半球電極35b側に向かって順に、+1chのチャンネルトロン42、+2chのチャンネルトロン42、+3chのチャンネルトロン42が配置されている。
7個のチャンネルトロン42は、隣り合うチャンネルトロン42間の測定エネルギー間隔ΔEが同じになるように配列されている。そのため、例えば、0chのチャンネルトロン42における測定エネルギーをEに設定した場合、−3chのチャンネルトロン42の測定エネルギーはE−3ΔEであり、−2chのチャンネルトロン42の測定エネルギーはE−2ΔEであり、−1chのチャンネルトロン42の測定エネルギーはE−1ΔEであり、+1chのチャンネルトロン42の測定エネルギーはE+1ΔEであり、+2chのチャンネルトロン42の測定エネルギーはE+2ΔEであり、+3chのチャンネルトロン42の測定エネルギーはE+3ΔEである。
なお、上記では、検出器40がn個のチャンネルトロン42からなる場合について説明したが、検出器40の構成はこれに限定されない。例えば、検出器40として、マイクロチャンネルプレート、マルチアノード、CMOSカメラ、などの多チャンネル検出器を用いてもよい。
照射制御装置50は、電子線照射装置10を制御する。照射制御装置50は、例えば、処理部60からの制御信号に基づいて、電子線が試料S上の所定の位置に照射されるように、電子線照射装置10を制御する。
電子分光器制御装置52は、電子分光器30を制御する。電子分光器制御装置52は、例えば、処理部60からの制御信号に基づいて、アナライザー34の内半球電極35aと外半球電極35bとの間に電圧を印加する。また、電子分光器制御装置52は、処理部60からの制御信号に基づいて、インプットレンズ32を制御する。
計数演算装置54は、チャンネルトロン42で検出された電子を計数する。計数演算装置54は、チャンネルトロン42で検出された電子の計数結果(すなわち検出結果)を処理部60に送る。単位時間に計数された電子の数は、電子の強度に対応する。
処理部60は、照射制御装置50および電子分光器制御装置52を制御するための制御信号を生成する処理等の処理を行う。また、処理部60は、検出器40における電子の検出結果を取得し、当該検出結果に基づいてスペクトルマップを生成する処理を行う。なお、処理部60の処理の詳細については後述する。
処理部60は、例えば、CPU(Central Processing Unit)および記憶装置(RAM
(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)など)を含む。処理部60では、CPUで記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、各種計算処理、各種制御処理を行う。
二次電子検出器70は、試料Sに電子線が照射されることによって試料Sから放出される二次電子を検出する。二次電子検出器70における二次電子の検出結果は、処理部60に送られる。二次電子の検出結果から、二次電子像を生成できる。オージェ電子分光装置100では、アナライザー34で分光された電子を検出する検出器40と、二次電子検出器70と、を有するため、電子分光像と二次電子像を同時に取得できる。なお、オージェ電子分光装置100では、図示はしないが反射電子検出器を有していてもよい。
オージェ電子分光装置100では、電子銃12から放出された電子線は、電子レンズ14によって集束されて試料S上に照射される。このとき、偏向器16を用いて試料S面上で電子線を走査することでマップ測定を行うことができる。電子線が照射された試料Sからは、オージェ電子、二次電子、反射電子等が放出される。
試料Sから放出されたオージェ電子等の電子は、インプットレンズ32に入射し、静電レンズ33により減速され、アナライザー34に入射する。アナライザー34に入射した電子は、エネルギー分光され、アナライザー34の出射面においてエネルギー分散方向Aにエネルギーに応じて分散される。
エネルギーに応じて分散された電子は、エネルギー分散方向Aに並んで配置されたn個のチャンネルトロン42で検出される。各チャンネルトロン42で検出された電子は、チャンネルトロン42ごとに計数演算装置54で計数され、その計数結果が処理部60に送られる。
1.2. 分析方法
次に、第1実施形態に係る分析方法について説明する。第1実施形態に係る分析方法では、オージェ電子分光装置100を用いてスペクトルマップを取得することができる。スペクトルマップは、試料S上の位置とスペクトルとを関連付けたマップである。図4は、第1実施形態に係る分析方法の一例を示すフローチャートである。
第1実施形態に係る分析方法は、電子線を試料S上で走査して、試料Sから放出される電子を電子分光器30で検出することによってn個のマップデータを取得するマップ測定
を、アナライザー34の測定エネルギー範囲を変更しながらm回繰り返すことによって、n×m個のマップデータを取得する工程S10と、取得したn×m個のマップデータに基づいてスペクトルマップを生成する工程S20と、を含む。さらに、第1実施形態に係る分析方法は、電子分光器30の感度を補正する工程S30を含む。以下、各工程について詳細に説明する。
1.2.1. マップデータの取得
まず、電子線を試料S上で走査して、試料Sから放出される電子を電子分光器30で検出することによってn個のマップデータを取得するマップ測定を、アナライザー34の測定エネルギー範囲を変更しながらm回繰り返すことによって、n×m個のマップデータを取得する。
図5は、n×m個のマップデータを取得する工程を説明するための図である。
まず、アナライザー34の測定エネルギー範囲を設定する。測定エネルギー範囲は、アナライザー34でエネルギー分光されるエネルギー範囲である。測定エネルギー範囲は、−3chのチャンネルトロン42の測定エネルギーから、+3chのチャンネルトロン42の測定エネルギーまでの範囲である。ここで、マップ測定は、低エネルギー側のエネルギー範囲から順に行われる。また、m回のマップ測定のエネルギー範囲は、互いに重ならないように設定される。
例えば、図3に示すように、0chのチャンネルトロン42の測定エネルギーをEとし、測定エネルギー範囲をE−3ΔE〜E+3ΔEに設定する。これにより、−3ch〜+3chのチャンネルトロン42の測定エネルギーは、互いに等しい測定エネルギー間隔ΔEに設定される。
1回目のマップ測定で設定される測定エネルギーは以下の通りである。
1回目の測定:−3ch=E−3ΔE
1回目の測定:−2ch=E−2ΔE
1回目の測定:−1ch=E−1ΔE
1回目の測定: 0ch=E
1回目の測定:+1ch=E+1ΔE
1回目の測定:+2ch=E+2ΔE
1回目の測定:+3ch=E+3ΔE
上記のように測定エネルギーが設定された状態で1回目のマップ測定を行う。マップ測定は、例えば、電子線で試料S上を1回走査し、試料S上から放出された電子を電子分光器30で分光および検出することで行われる。なお、1回のマップ測定において電子線で試料S上を複数回走査してもよい。これにより、各測定点における信号の強度を積算することができる。
検出器40には、7個のチャンネルトロン42があるため、1回のマップ測定で7つのマップデータを取得できる。1回目のマップ測定では、E−3ΔEのエネルギーを持つ電子のマップデータ、E−2ΔEのエネルギーを持つ電子のマップデータ、E−1ΔEのエネルギーを持つ電子のマップデータ、Eのエネルギーを持つ電子のマップデータ、E+1ΔEのエネルギーを持つ電子のマップデータ、E+2ΔEのエネルギーを持つ電子のマップデータ、E+3ΔEのエネルギーを持つ電子のマップデータを取得できる。
なお、Eのエネルギーを持つ電子のマップデータとは、試料上の位置とEのエネルギーを持つ電子の強度とを関連づけたデータである。Eのエネルギーを持つ電子のマップデータは、Eのエネルギーを持つ電子の分布を示す電子分光像を含む。電子分光像は、試料上の各位置での電子の強度の違いを画像化したものである。その他のエネルギーを持つ電子のマップデータについても同様である。
次に、0chのチャンネルトロン42の測定エネルギーをE0_1とし、測定エネルギー範囲をE0_1−3ΔE〜E0_1+3ΔEに設定する。1回目のマップ測定の測定エネルギー範囲と2回目のマップ測定の測定エネルギー範囲とは重ならないように設定される。すなわち、2回目のマップ測定における測定エネルギーの最小値は、1回目のマップ測定における測定エネルギーの最大値よりも大きく設定される。
2回目のマップ測定で設定される測定エネルギーは、以下の通りである。
2回目の測定:−3ch=E0_1−3ΔE
2回目の測定:−2ch=E0_1−2ΔE
2回目の測定:−1ch=E0_1−1ΔE
2回目の測定: 0ch=E0_1
2回目の測定:+1ch=E0_1+1ΔE
2回目の測定:+2ch=E0_1+2ΔE
2回目の測定:+3ch=E0_1+3ΔE
ここで、1回目のマップ測定における+3chのチャンネルトロン42の測定エネルギーと、2回目のマップ測定における−3chのチャンネルトロン42の測定エネルギーとの差をΔEとする。すなわち、2回目のマップ測定の測定エネルギー範囲は、1回目のマップ測定の測定エネルギー範囲をn×ΔEだけずらしたものとする。これにより、2回目のマップ測定の測定エネルギーは、以下のように表される。
2回目の測定:−3ch=E0_1−3ΔE=E+4ΔE
2回目の測定:−2ch=E0_1−2ΔE=E+5ΔE
2回目の測定:−1ch=E0_1−1ΔE=E+6ΔE
2回目の測定: 0ch=E0_1 =E+7ΔE
2回目の測定:+1ch=E0_1+1ΔE=E+8ΔE
2回目の測定:+2ch=E0_1+2ΔE=E+9ΔE
2回目の測定:+3ch=E0_1+3ΔE=E+10ΔE
2回目のマップ測定では、E+4ΔEのエネルギーを持つ電子のマップデータ、E+5ΔEのエネルギーを持つ電子のマップデータ、E+6ΔEのエネルギーを持つ電子のマップデータ、E+7ΔEのエネルギーを持つ電子のマップデータ、E+8ΔEのエネルギーを持つ電子のマップデータ、E+9ΔEのエネルギーを持つ電子のマップデータ、E+10ΔEのエネルギーを持つ電子のマップデータを取得できる。
上記のように、7個のチャンネルトロン42の測定エネルギーの間隔がΔEの場合、1回目のマップ測定の測定エネルギーの最大値をE+3ΔEと設定し、2回目のマップ測定の測定エネルギーの最小値をE+4ΔEと設定し、差をΔEとする。これにより、エネルギー分解能を一定にできる。
3回目以降のマップ測定についても、同様に、測定エネルギー範囲を設定してマップ測定を行う。具体的には、j回目のマップ測定における測定エネルギー範囲とj+1回目のマップ測定における測定エネルギー範囲とは、重ならないように設定する。また、j回目
のマップ測定におけるn個のチャンネルトロン42の測定エネルギーの最大値と、j+1回目のマップ測定におけるn個のチャンネルトロン42の測定エネルギーの最小値との差は、n個のチャンネルトロン42の測定エネルギー間隔に等しく設定する。なお、n,m,jは、自然数(正の整数)であり、2≦n、1≦j≦mを満たす。また、mに上限値はない。
上記のように、マップ測定を、測定エネルギー範囲を変更しながらm回繰り返すことによって、n×m個のマップデータを取得できる。このようにして取得されたn×m個のマップデータ(電子分光像)は、互いに異なるエネルギーを持つ電子の分布を示している。
なお、マップ測定の終了条件として、上記では測定回数mを設定したが、終了条件として、測定を終了するエネルギーを設定してもよい。また、1回目の測定エネルギーEや、測定エネルギー間隔ΔEは、測定条件に応じて任意の値に設定可能である。
上記では、試料Sから放出された電子のエネルギーに関わらず、電子が電子分光器30を通過するときのエネルギーが一定、すなわち、パスエネルギーが一定になるようにするCAE(Constant Analyzer Energy)モードの場合について説明した。CAEモードでは、内半球電極35aと外半球電極35bの間に印加する電位差を一定の値に保ち、インプットレンズ32の印加電圧を掃引する。CAEモードでは、エネルギー分解能ΔEはすべてのエネルギー範囲で同じである。すなわち、CAEモードでは、ΔE=一定である。
これに対して、オージェ電子分光装置100では、測定する電子の運動エネルギーに応じて一定の比率で電子を減速するCRR(Constant Retarding Ratio)モードでのマップ測定も可能である。CRRモードでは、内半球電極35aと外半球電極35bの間に印加する電位差をインプットレンズ32の印加電圧とともに掃引し、電子を一定の減速比で分光する。CRRモードでは、エネルギー分解能ΔEはエネルギーEによって変化する。CRRモードでは、ΔE/E=一定である。
CRRモードでは、1回のマップ測定の測定エネルギー範囲が、0chのチャンネルトロン42の測定エネルギーに比例する。すなわち、n個のチャンネルトロン42を有する場合、j回目のマップ測定におけるn個のチャンネルトロン42の測定エネルギーの中央値をEj−1とし、インプットレンズ32の減速率に比例する値をαとした場合、j+1回目のマップ測定におけるn個のチャンネルトロン42の測定エネルギーの中央値Eは、
=Ej−1(1+α)
である。
1.2.2. スペクトルマップの生成
取得したn×m個のマップデータに基づいて、スペクトルマップを生成する。具体的には、図5に示すように、取得したn×m個のマップデータから、試料上の測定点ごとに強度データを抽出することによって、測定点ごとにスペクトルを生成する。そして、試料上の測定点とスペクトルを関連付けて不図示の記憶部に記憶させる。これにより、スペクトルマップを生成できる。
1.2.3. 電子分光器の検出感度の補正
次に、電子分光器30の検出感度を補正するための補正係数を求める。電子分光器30の検出器40は、n個のチャンネルトロン42を有している。n個のチャンネルトロン42は、それぞれ検出感度が異なる。したがって、電子分光器30の検出感度の補正する工程では、電子分光器30の検出感度を補正するための補正係数を求めることによって、n個のチャンネルトロン42の検出感度を補正する。以下、電子分光器30の検出感度を補
正する工程について説明する。
まず、スペクトルマップからスペクトルを取得する。スペクトルを取得する工程では、例えば、スペクトルマップ上の任意の領域を選択し、選択された領域のスペクトルを取得する。なお、スペクトルを取得する領域は、1つの測定点であってもよいし、隣接する複数の測定点を含んでいてもよい。また、スペクトルを取得する領域は、スペクトルマップの全体であってもよい。この場合、スペクトルは、全測定点のスペクトルを積算したスペクトルとなる。
図6は、スペクトルマップから取得されたスペクトル(オージェスペクトル)を示す図である。図6に示すスペクトルS2は、感度補正前のスペクトルであり、スペクトルS4は、感度補正後のスペクトルである。図6では、測定をCRRモードで行っているため、エネルギーステップは、測定エネルギーに比例している。なお、エネルギーステップは、任意に設定可能である。
次に、スペクトルマップから取得されたスペクトルに基づいて、補正係数を求める。
図6に示すように、電子分光器30では各チャンネルトロン42ごとに検出感度が異なっているため、スペクトルS2にはチャンネルトロン42の数と同じ測定点数の周期で強度に変動が見られる。そのため、補正係数を求めることによって、各チャンネルトロン42の検出感度を補正する。補正係数は、チャンネルトロン42ごとに求められる。
図7は、スペクトルS2において、測定エネルギーと、当該測定エネルギーの電子の検出に使用されたチャンネルと、当該チャンネルで検出された電子の強度と、の関係を示す表である。
以下、0chのチャンネルトロン42の補正係数を求める場合について説明する。
まず、スペクトルS2において、0chのチャンネルトロン42の測定エネルギーの前後から、連続する測定エネルギーの強度データをn個、すなわち、検出器40が有するチャンネルトロン42の数だけ抽出する。ここでは、検出器40は、−3ch〜+3chのチャンネルトロン42を有するため、スペクトルS2から連続する測定エネルギーの強度データを7点取得する。例えば、測定エネルギー20.37eVを中心として、スペクトルS2から、20.00eVから20.75eVまでの7点の強度データを取得する。
次に、7点の強度データの平均値Iを計算する。
=(1000+883+752+710+681+687+609)/7≒760.3
次に、平均値Iと、0chのチャンネルトロン42の強度データの比を計算する。
0chの補正係数=I/0chの強度=760.3/710≒1.07
これにより、0chのチャンネルトロン42の補正係数を求めることができる。
次に、計算された補正係数を用いて、0chのチャンネルトロン42の強度データを補正する。強度データの補正は、次式で示すように、補正前の強度データに補正係数を乗算することで行われる。
補正後の強度データ=補正前の強度データ×補正係数
上記の例では、測定エネルギー20.37eVでの0chのチャンネルトロン42において、補正係数は1.07、補正前の強度データは710、であるため、補正後の強度データは、710×1.07=759.7となる。
ここで、チャンネルトロン42の検出感度は、測定エネルギーによっても変化する。そのため、チャンネルトロン42の補正係数を測定エネルギーごとに求めることによって、測定エネルギーによるチャンネルトロン42の検出感度の違いを補正できる。
測定エネルギーが21.27eVでの0chのチャンネルトロン42の補正係数は、以下の通りである。
=(972+867+737+698+667+677+604)/7≒746.0
0chの補正係数=I/0chの強度=746.0/698≒1.07
測定エネルギーが1015.87eVでの0chのチャンネルトロン42の補正係数は、以下の通りである。
=(283+290+267+253+258+263+230)/7≒263.4
0chの補正係数=I/0chの強度=263.4/253≒1.04
上記のようにして、0chのチャンネルトロン42の補正係数を、測定エネルギーごとに求めることができる。
その他のチャンネルトロン42の補正係数も、上述した0chのチャンネルトロン42の補正係数と同様に求めることができる。
例えば、測定エネルギーが20.50eVの+1chのチャンネルトロン42の補正係数は、以下のように求められる。
=(883+752+710+681+687+609+972)/7≒756.3
+1chの補正係数=I/+1chの強度=756.3/681=1.11
また、例えば、測定エネルギーが20.62eVでの+2chのチャンネルトロン42の補正係数は、以下のように求められる。
=(752+710+681+687+609+972+867)/7≒754.0
+2chの補正係数=I/+2chの強度=754/687≒1.10
このようにして、各チャンネルトロン42について、測定エネルギーごとに補正係数を求めることができる。
上記のようにして求めた補正係数を用いて、スペクトルS2を補正することによって、スペクトルS4を得ることができる。
なお、上記では、スペクトルS2から、連続する測定エネルギーのデータをn個抽出して補正係数を求める場合について説明したが、例えば、スペクトルS2から連続する測定エネルギーのデータをnの倍数個抽出して、補正係数を求めてもよい。
また、上記では、測定をCRRモードで行った場合について説明したが、測定をCAEモードで行った場合も同様の手法で補正係数を求めることができる。
また、上記では、補正係数を求めるチャンネルを中心として前後3つのチャンネルの強度データの平均を計算することによって補正係数を求めたが、補正係数を求める手法は連続する測定エネルギーの強度データをnの倍数個を抽出して求められた係数であれば特に限定されない。
1.3. 処理
オージェ電子分光装置100における処理部60の処理について説明する。ここでは、処理部60のスペクトルマップを生成する処理について説明する。
処理部60は、まず、n個のマップデータを取得するマップ測定をアナライザー34の測定エネルギー範囲を変更しながらm回繰り返すことによって得られた、n×m個のマップデータを取得する。処理部60は、取得したn×m個のマップデータに基づいてスペクトルマップを生成する。
次に、処理部60は、電子分光器30の感度を補正する処理を行う。処理部60は、生成されたスペクトルマップからスペクトルを生成し、生成したスペクトルに基づいて補正係数を求める。補正係数を求める方法は、上述した通りである。処理部60は、求めた補正係数を用いて、スペクトルを補正する。以上の処理によりスペクトルマップを生成できる。
1.4. 効果
第1実施形態に係る分析方法は、電子線を試料S上で走査して試料Sから放出される電子を検出器40で検出することによってn個のマップデータを取得するマップ測定を、アナライザー34の測定エネルギー範囲を変更しながらm回繰り返すことによって、n×m個のマップデータを取得する工程と、n×m個のマップデータに基づいてスペクトルマップを生成する工程と、を含む。そのため、第1実施形態に係る分析方法では、スペクトルマップを短時間で取得できる。
例えば、分析視野内の各測定点において点分析を行ってスペクトルを取得して、スペクトルマップを生成する場合、各測定点ごとに、電子分光器内部の電極電圧やコイル電流の値を変更してから安定するまでの待ち時間が必要である。例えば、分析視野内の測定点数が多くなると、測定点数の増加に従って待つ回数が増え、測定時間も長くなってしまう。これに対して、第1実施形態に係る分析方法では、1スキャン毎に(1マップ測定ごとに)上記の待ち時間が生じるが、各測定点ごとに待つ必要がない。また、測定点数が多くなっても、待つ回数が増えることがない。さらに、検出器40のチャンネル数を多くすることによって、測定時間の短縮を図ることができる。したがって、第1実施形態に係る分析方法では、短時間でスペクトルマップを取得できる。
第1実施形態に係る分析方法では、m回のマップ測定において、各チャンネルトロン42の測定エネルギーは重複しない。すなわち、マップ測定がm回繰り返されても、n個のチャンネルトロン42に対して同じ測定エネルギーが設定されない。したがって、第1実施形態に係る分析方法では、測定時間を短くできる。例えば、m回のマップ測定においてチャンネルトロン42の測定エネルギーが重複すると、その分だけ測定時間が長くなって
しまう。
第1実施形態に係る分析方法では、j回目のマップ測定において設定される測定エネルギー範囲と、j+1回目のマップ測定において設定される測定エネルギー範囲とは、重ならない。したがって、第1実施形態に係る分析方法では、上述した手法を用いて、電子分光器30の検出感度の補正を容易に行うことができる。
第1実施形態に係る分析方法は、電子分光器30の検出感度を補正するための補正係数を求める工程を含む。当該補正係数を求める工程では、生成されたスペクトルマップから得られたスペクトルに基づいて補正係数を求める。そのため、第1実施形態に係る分析方法では、電子分光器30の感度を補正するための測定が不要である。
例えば、スペクトルマップを取得するための測定とは別に、電子分光器30の感度を補正するための測定を行うと、試料Sが損傷してしまうおそれがある。また、電子分光器30の感度を補正するための測定を別試料で行った場合、感度を正確に補正できない場合がある。これに対して、第1実施形態に係る分析方法では、得られたスペクトルマップからスペクトルを取得して電子分光器30の感度を補正するため、このような問題が生じない。さらに、電子分光器30の感度を補正するための測定が不要であるため、測定時間を短縮できる。
第1実施形態に係る分析方法では、補正係数をチャンネルトロン42ごとに求める。これにより、各チャンネルトロン42の検出感度の違いを補正できる。
第1実施形態に係る分析方法では、補正係数を測定エネルギーごとに求める。これにより、測定エネルギーの違いによるチャンネルトロン42の検出感度の違いを補正できる。
第1実施形態に係る分析方法では、補正係数を求める工程において、取得したスペクトルから、連続する測定エネルギーのデータをnの倍数個抽出して、電子分光器30の感度を補正する。これにより、抽出したデータには、各チャンネルトロン42のデータが同じ数だけ含まれることとなるため、n個のチャンネルトロン42の検出感度の違いを補正することができる。
1.5. 変形例
次に、第1実施形態に係る分析方法の変形例について説明する。以下では、上述した第1実施形態に係る分析方法と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
1.5.1. 第1変形例
電子分光器30の検出感度を補正する手法は、上述した「1.2.3. 電子分光器の検出感度の補正」に記載した手法に限定されない。
上述した「1.2.3. 電子分光器の検出感度の補正」に記載した手法では、補正係数は、観測される電子の強度が一定であることが前提となっているため、オージェピークのように、エネルギーによって強度が大きく変化するエネルギー範囲では、補正係数を正確に計算することができない。第1変形例では、スペクトルを加工し、加工したスペクトルに基づいて補正係数を計算することによって、強度の変化の影響を低減する。以下、その原理について、説明する。なお、以下では、チャンネル数が2の場合(n=2)について説明する。
図8〜図18は、第1変形例に係る分析方法を説明するための図である。図8は、真の
スペクトルを示している。図8では、測定エネルギーが112付近でピークが観測されている。
図9は、補正前のスペクトルを示している。1chのチャンネルトロン42および2chのチャンネルトロン42は、互いに検出感度が異なっている。図9に示すように、1chのスペクトルのバックグラウンド領域の強度が、2chのスペクトルの強度データのバックグラウンド領域の強度よりも大きい。これは、1chのチャンネルトロン42の検出感度が、2chのチャンネルトロン42の検出感度よりも高いためである。
図10は、図9に示す1chのスペクトルと2chのスペクトルのそれぞれにおいて、各点の前後5点で平均値を計算して得られたスペクトルである。
図11は、図9に示す1chのスペクトルと2chのスペクトルのそれぞれにおいて、各点の前後の5点で中央値を計算して得られたスペクトルである。
図10および図11では、スペクトルのピーク部分が抑えられている。
図12は、図9に示すスペクトルを用いて、補正係数を計算した結果である。図13は、図10に示すスペクトルを用いて、補正係数を計算した結果である。図14は、図11に示すスペクトルを用いて、補正係数を計算した結果である。補正係数の計算方法は、「1.2.3. 電子分光器の検出感度の補正」で説明したように、測定エネルギーの強度と平均値Iとの比から計算した。
図13および図14では、スペクトルのピーク部分の影響が抑えられている。
図15は、図12の補正係数を用いて、図9のスペクトルを補正して得られたスペクトルである。図16は、図13の補正係数を用いて、図9のスペクトルを補正して得られたスペクトルである。図17は、図14の補正係数を用いて、図9のスペクトルを補正して得られたスペクトルである。スペクトルの補正は、「1.2.3. 電子分光器の検出感度の補正」で説明したように、補正前のスペクトルの強度に補正係数を乗算することで行った。
図18は、図8に示す真のスペクトル(TRUE)と、図15に示すスペクトル(raw)と、図16に示すスペクトル(mean5)と、図17に示すスペクトル(median5)と、を比較するための図である。
図15〜図18に示すように、平均値や中央値を用いてスペクトルを加工して、補正係数を計算することによって、ピークの影響を低減できる。特に、この例では、中央値を用いることによってピークの影響を低減できた。
上記では、スペクトルの平均値および中央値を用いてスペクトルを加工する場合について説明した。平均値を用いてスペクトルを加工すると、スペクトルの統計ノイズによる影響を抑える効果が期待できる。また、中央値を利用すると、ピークによる影響を低減できる。ただし、スペクトルの加工処理は、平均値や中央値によらず、その他の処理を用いてもよい。例えば、スプライン関数を最小二乗法によりフィッティングしてもよい。
1.5.2. 第2変形例
電子分光器30の検出感度を補正する手法は、上述した「1.2.3. 電子分光器の検出感度の補正」に記載した手法に限定されない。以下、第2変形例に係る分析方法について説明する。
まず、スペクトルマップからスペクトルを取得する。
次に、スペクトルの移動平均を計算して、移動平均スペクトルを生成する。
図19は、スペクトルマップから取得したスペクトルと、当該スペクトルの移動平均を計算して得られた移動平均スペクトルと、を図示している。図19にて、Energy−Channelはエネルギー値に変換する前のチャンネルのインデックスを示す。なお、図19に示すスペクトルマップから取得したスペクトルは、3チャンネルのスペクトルマップで得られたスペクトルである。3チャンネルのスペクトルマップとは、3つのチャンネルトロン42(n=3)を用いてマップ測定を行って得られたスペクトルマップである。
n個のチャンネルトロン42を用いてマップ測定を行った場合、nの倍数の移動平均を計算する。図19では、3個のチャンネルトロン42を有しており、6ch分(連続する6つの測定エネルギーの強度データ)の移動平均を計算している。スペクトルの移動平均を計算することによって、チャンネルトロン42の検出感度のばらつきの影響を低減できる。
なお、PCAフィルター等を用いて、スペクトルのホワイトノイズ(統計的なノイズ)を除去してもよい。
次に、3つのチャンネルトロン42の強度データを個別にプロットして、3つのシングルチャネルスペクトルを得る。図20は、1chのチャンネルトロン42の強度データをプロットして得られた1chのスペクトル、2chのチャンネルトロン42の強度データをプロットして得られた2chのスペクトル、および3chのチャンネルトロン42の強度データをプロットして得られた3chのスペクトルを示す図である。
次に、移動平均スペクトルから1chのスペクトルと同じエネルギー値の信号を抽出して1chのスペクトルに対応する移動平均スペクトルを生成する。同様にして、2chのスペクトルに対応する移動平均スペクトル、および3chのスペクトルに対応する移動平均スペクトルを生成する。
次に、スペクトルのバックグラウンド領域を用いて、各チャンネルトロンの検出感度を補正する。検出感度の補正は、例えば、各チャンネルのスペクトルのバックグラウンド領域の強度を、移動平均スペクトルのバックグラウンド領域の強度に合わせることで行う。
ここでは、スペクトルのバックグラウンド領域の強度を示す曲線(バックグラウンド曲線)が、移動平均スペクトルと近似すると仮定する。
図21は、各チャンネルの検出感度を補正する処理を説明するための図である。
図21に示すように、各チャンネルの強度データを移動平均で割る。各チャンネルの強度データを移動平均で割ると、スペクトルのピーク領域では、値が急激に変化してしまう。そのため、ピーク領域を無視するために、フィルター処理および平滑化処理を行う。
各スペクトルに対して、上記の処理を行った後、スペクトルを移動平均に一致させる。これにより、各チャンネルトロン42の検出感度を補正することができる。また、スペクトルを移動平均に一致させるためにスペクトルに乗算される係数が、補正係数となる。
図22は、各チャンネルトロンの検出感度を補正する前のスペクトルであり、図23は、各チャンネルトロンの検出感度を補正した後のスペクトルである。
第2変形例によれば、図22および図23に示すように、電子分光器30の検出感度を補正できる。
1.5.3. 第3変形例
上述した第1実施形態では、スペクトルマップの任意の領域から抽出されたスペクトルを用いて、補正係数を求めた。
第3変形例では、生成されたスペクトルマップを複数の領域に区画し、領域ごとにスペクトルを取得し、領域ごとに補正係数を求める。
ここで、電子分光器30では、試料S上の測定点の位置の違いによってインプットレンズ32で取り込むことができる電子の量に違いが生じる。例えば、試料S上の測定点の位置がインプットレンズ32の光軸を通る直線上の近傍にある場合、取り込むことができる電子の量が多く、試料S上の測定点の位置が当該直線から離れている場合、取り込むことができる電子の量が少ない。したがって、電子分光器30では、測定点の位置によっても、検出感度に違いが生じる。そのため、第3変形例では、スペクトルマップを複数の領域に区画して、領域ごとに補正係数を求めることで、測定点の位置による検出感度の違いを補正する。
図24は、第3変形例に係る分析方法を説明するための図である。
第3変形例では、まず、図24に示すように、スペクトルマップを複数の領域2に区画する。1つの領域2は、1つの測定点であってもよいし、隣接する複数の測定点を含む領域であってもよい。
次に、第1領域2aからスペクトルを取得し、上述した「1.2.3. 電子分光器の検出感度の補正」に記載した手法を用いて、補正係数を求める。そして、求めた補正係数を用いて、スペクトルを補正する。これにより、第1領域2aにおいて、電子分光器30の検出感度を補正することができる。
次に、第2領域2bからスペクトルを取得し、第1領域2aと同様に、電子分光器30の検出感度の補正を行う。その他の領域2についても同様に、電子分光器30の検出感度の補正を行う。これにより、領域2ごとに、電子分光器30の検出感度を補正することができる。
なお、電子分光器30の検出感度は、測定点の位置に応じて連続的に変化する。そのため、例えば、第1領域2aの補正係数を求める際に、第1領域2aから取得したスペクトルをそのまま用いずに、隣接する領域2のスペクトルとの平均値や中央値を用いてスペクトルを加工して、第1領域2aの補正係数を求めてもよい。平均値や中央値を用いてスペクトルを加工する手法は、第2変形例で説明した手法と同様の手法を用いることができる。
第3変形例では、生成されたスペクトルマップを複数の領域2に区画し、領域2ごとにスペクトルを取得し、領域2ごとに補正係数を求める。そのため、第3変形例では、測定点の位置による検出感度に違いも補正することができる。
なお、第3変形例は、上述した第1変形例および第2変形例にも適用可能である。
2. 第2実施形態
2.1. オージェ電子分光装置
第2実施形態に係る分析方法に用いられるオージェ電子分光装置の構成は、上述した図1に示すオージェ電子分光装置100と同様であり、その説明を省略する。処理部60は、以下で説明する分析視野のドリフトを補正する処理を行う。
2.2. 分析方法
図25は、第2実施形態に係る分析方法の一例を示すフローチャートである。図25に示すように、第2実施形態に係る分析方法は、分析視野のドリフトを補正する工程S15を含む。以下では、上述した第1実施形態に係る分析方法の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
オージェ電子分光装置100では、分析視野のドリフト補正として、マップ測定中に行われるドリフト補正と、マップ測定後に行われるドリフト補正と、を行う。
(1)マップ測定中のドリフト補正
図26は、マップ測定中のドリフト補正を説明するための図である。
マップ測定中のドリフト補正は、プローブトラッキングを使用して行われる。プローブトラッキングとは、試料Sに照射される電子線の照射位置のずれを検出して、そのずれを補正しながらマップ測定を行う機能である。
例えば、図26に示すように、二次電子像と、マップ測定による電子分光像(マップデータ)と、を交互に取得する。二次電子像を取得すると、取得した二次電子像を基準となる二次電子像と比較することによって、ドリフト量を算出する。そして、算出したドリフト量に基づいて、電子線の照射位置の移動または試料ステージ20の移動により、分析視野を移動させる。これにより、分析視野のドリフトを補正できる。基準となる二次電子像は、例えば、あらかじめ取得した二次電子像である。なお、基準となる二次電子像は、直前に取得した二次電子像であってもよい。すなわち、N回目のマップ測定で取得した二次電子像の比較対象となる基準となる二次電子像は、N−1回目のマップ測定で取得した二次電子像であってもよい。
なお、図27に示すように、マップ測定と同時に、二次電子像を取得してもよい。これにより、測定時間を短縮できる。さらに、マップ測定と同一のドリフト情報を有しているため、ドリフト補正の精度を向上できる。
(2)マップ測定後のドリフト補正(工程S15)
マップ測定後のドリフト補正は、図25に示すように、n×m個のマップデータを取得する工程S10の後に行われる。マップ測定後の測定視野のドリフトを補正する工程では、n×m個のマップデータに基づいてn×m個の電子分光像を生成し、n×m個の電子分光像をそれぞれ基準となる像と比較して分析視野のドリフトを補正する。すなわち、ドリフト補正は、マップデータごと(電子分光像ごと)に行われる。
図28は、マップ測定後のドリフト補正を説明するための図である。
図28に示すように、マップ測定で得られた電子分光像を用いて、画像処理によるドリフト補正を行う。上記のようにマップ測定中にプローブトラッキングによるドリフト補正を行ったとしても、プローブトラッキング直後から次のプローブトラッキングまでの間にドリフトが発生した場合、マップデータにはドリフトの影響が生じる。そのため、マップ
測定後に、測定結果である電子分光像を用いてドリフト補正を行う。
具体的には、マップ測定で得られた電子分光像を基準となる像と比較し、像間のドリフトを算出する。基準となる像としては、例えば、1回目のマップ測定で取得された電子分光像を用いることができる。また、基準となる像として、スペクトルマップを生成するための測定の前に、あらかじめ取得された電子分光像を用いてもよい。
像間のドリフト量の計算には、プローブトラッキングで用いたドリフト量の計算方法と同様の計算方法が適用できる。また、像間のドリフト量の計算は、平行移動だけでなく、回転、スケーリング、およびせん断を含むアフィン変換や、非線形歪みおよび局所歪みを考慮した計算を行ってもよい。
なお、マップ測定で得られた電子分光像は、それぞれ測定エネルギーが異なるため、像のコントラストやブライトネスが異なる場合がある。そのため、例えば、図29に示すように、像間のドリフト量の計算を、電子分光像と同時に取得した二次電子像で行ってもよい。
また、例えば、電子の強度が低い測定エネルギーでは、電子分光像のコントラストが弱く、ドリフト量を正確に計算できない場合がある。このような場合に、電子分光像と同時に取得した二次電子像でドリフト量の計算を行うことで、精度よくドリフト量を計算できる。
上記では、電子分光像と同時に取得した二次電子像でドリフト量の計算を行う場合について説明したが、電子分光像と同時に取得可能であれば二次電子像に限定されない。例えば、電子分光像と同時に反射電子像を取得して反射電子像でドリフト量の計算を行ってもよい。
2.3. 効果
第2実施形態に係る分析方法は、分析視野のドリフトを補正する工程を含む。分析視野のドリフトを補正する工程では、マップデータに基づいて、マップデータごとに電子分光像を生成し、マップデータごとに生成された電子分光像を、基準となる分光像と比較して、分析視野のドリフトを補正する。このように、第2実施形態に係る分析方法では、スペクトルマップを生成するための電子分光像を用いてドリフト補正を行うため、ドリフト補正のための像を取得する必要がない。また、電子分光像を用いることで、線形的なドリフト補正だけでなく、非線形歪みや局所歪みを補正できる。
3. 第3実施形態
3.1. オージェ電子分光装置
第3実施形態に係る分析方法に用いられるオージェ電子分光装置の構成は、上述した図1に示すオージェ電子分光装置100と同様であり、その説明を省略する。
3.2. 分析方法
次に、第3実施形態に係る分析方法について説明する。第3実施形態に係る分析方法では、図4に示すn×m個のマップデータを取得する工程S10、および電子分光器30の感度を補正する工程S30が第1実施形態に係る分析方法と異なる。以下では、上述した第1実施形態に係る分析方法の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
3.2.1. マップデータの取得
第3実施形態に係る分析方法では、第1実施形態に係る分析方法と同様に、m回のマッ
プ測定において、チャンネルトロン42の測定エネルギーは重複しない。また、第3実施形態に係る分析方法において、n×m個のマップデータを取得する工程では、隣り合うチャンネルトロン42間の測定エネルギー間隔をΔEとした場合に、測定エネルギー間隔がΔEとなるように測定エネルギー間隔をn×ΔEずらしながらマップ測定をm/a回繰り返す工程を、測定エネルギー範囲をΔE/aだけずらしながらa回行う。ただし、aは、m>aを満たす正の整数であり、mはaの倍数である。
図30は、第3実施形態に係る分析方法を説明するための図である。なお、図30では、a=3の場合を示している。
図30に示すように、まず、測定エネルギー間隔がΔEとなるように、測定エネルギー間隔をn×ΔEずらしながらマップ測定をm/a回繰り返す工程(以下、「マップ測定を繰り返す工程」ともいう)の1回目を行う。マップ測定を繰り返す工程は、上述した第1実施形態と同様に行われる。すなわち、マップ測定を繰り返す工程において、1回目のマップ測定の測定エネルギー範囲と、2回目のマップ測定エネルギー範囲とは、n×ΔEだけずれるように設定される。
具体的には、マップ測定を繰り返す工程における1回目のマップ測定の測定エネルギーは以下の通りである。
1回目のマップ測定:−3ch=E−3ΔE
1回目のマップ測定:−2ch=E−2ΔE
1回目のマップ測定:−1ch=E−1ΔE
1回目のマップ測定: 0ch=E
1回目のマップ測定:+1ch=E+1ΔE
1回目のマップ測定:+2ch=E+2ΔE
1回目のマップ測定:+3ch=E+3ΔE
マップ測定を繰り返す工程における2回目のマップ測定の測定エネルギーは以下の通りである。
2回目のマップ測定:−3ch=E+4ΔE
2回目のマップ測定:−2ch=E+5ΔE
2回目のマップ測定:−1ch=E+6ΔE
2回目のマップ測定: 0ch=E+7ΔE
2回目のマップ測定:+1ch=E+8ΔE
2回目のマップ測定:+2ch=E+9ΔE
2回目のマップ測定:+3ch=E+10ΔE
3回目以降のマップ測定も同様に行われる。マップ測定を繰り返す工程では、m/3回のマップ測定が行われる。
次に、2回目のマップ測定を繰り返す工程を行う。2回目のマップ測定を繰り返す工程では、1回目のマップ測定を繰り返す工程の測定エネルギー範囲をΔE/a、すなわち、ΔE/3だけずらして行われる。例えば、図示の例では、2回目のマップ測定を繰り返す工程では、測定開始時の測定エネルギー、すなわち、最小の測定エネルギーは、1回目のマップ測定を繰り返す工程における測定開始時の測定エネルギーよりもΔE/3だけ大きい。
具体的には、2回目のマップ測定を繰り返す工程における1回目のマップ測定の測定エ
ネルギーおよび2回目のマップ測定の測定エネルギーは以下の通りである。
1回目のマップ測定:−3ch=E−3ΔE+ΔE/3
1回目のマップ測定:−2ch=E−2ΔE+ΔE/3
1回目のマップ測定:−1ch=E−1ΔE+ΔE/3
1回目のマップ測定: 0ch=E+ΔE/3
1回目のマップ測定:+1ch=E+1ΔE+ΔE/3
1回目のマップ測定:+2ch=E+2ΔE+ΔE/3
1回目のマップ測定:+3ch=E+3ΔE+ΔE/3
2回目のマップ測定:−3ch=E+4ΔE+ΔE/3
2回目のマップ測定:−2ch=E+5ΔE+ΔE/3
2回目のマップ測定:−1ch=E+6ΔE+ΔE/3
2回目のマップ測定: 0ch=E+7ΔE+ΔE/3
2回目のマップ測定:+1ch=E+8ΔE+ΔE/3
2回目のマップ測定:+2ch=E+9ΔE+ΔE/3
2回目のマップ測定:+3ch=E+10ΔE+ΔE/3
3回目以降のマップ測定も同様に行われる。
次に、3回目のマップ測定を繰り返す工程を行う。3回目のマップ測定を繰り返す工程では、2回目のマップ測定を繰り返す工程の測定エネルギー範囲をΔE/3だけずらして行われる。
具体的には、3回目のマップ測定を繰り返す工程における1回目のマップ測定の測定エネルギーおよび2回目のマップ測定の測定エネルギーは以下の通りである。
1回目のマップ測定:−3ch=E−3ΔE+2ΔE/3
1回目のマップ測定:−2ch=E−2ΔE+2ΔE/3
1回目のマップ測定:−1ch=E−1ΔE+2ΔE/3
1回目のマップ測定: 0ch=E+2ΔE/3
1回目のマップ測定:+1ch=E+1ΔE+2ΔE/3
1回目のマップ測定:+2ch=E+2ΔE+2ΔE/3
1回目のマップ測定:+3ch=E+3ΔE+2ΔE/3
2回目のマップ測定:−3ch=E+4ΔE+2ΔE/3
2回目のマップ測定:−2ch=E+5ΔE+2ΔE/3
2回目のマップ測定:−1ch=E+6ΔE+2ΔE/3
2回目のマップ測定: 0ch=E+7ΔE+2ΔE/3
2回目のマップ測定:+1ch=E+8ΔE+2ΔE/3
2回目のマップ測定:+2ch=E+9ΔE+2ΔE/3
2回目のマップ測定:+3ch=E+10ΔE+2ΔE/3
3回目以降のマップ測定も同様に行われる。
マップ測定を繰り返す工程を3回行うことにより、n×m個のマップデータを取得できる。
上記のように、測定エネルギー間隔をn×ΔEずらしながらマップ測定をm/a回繰り返す工程を、測定エネルギー範囲をΔE/aだけずらしながらa回行うことにより、隣り合うチャンネルトロン42間の測定エネルギー間隔ΔEよりも狭いエネルギー間隔のスペクトルマップを得ることができる。すなわち、測定エネルギー間隔がΔE/aのスペクト
ルマップを得ることができる。
3.2.2. 電子分光器の感度の補正
第1実施形態では、スペクトルS2から連続する測定エネルギーのデータをnの倍数個抽出して補正係数を求めたが、第2実施形態では、スペクトルS2から連続する測定エネルギーのデータをn×a個抽出して補正係数を求める。これにより、抽出したデータには、各チャンネルトロン42のデータが同じ数だけ含まれるため、n個のチャンネルトロン42の検出感度の違いを補正することができる。
3.3. 効果
第3実施形態に係る分析方法でも、上述した第1実施形態に係る分析方法と同様に、スペクトルマップを短時間で取得できる。
3.4. 変形例
次に、第3実施形態に係る分析方法の変形例について説明する。以下では、上述した第1実施形態に係る分析方法と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
3.4.1. 第1変形例
上述した実施形態では、n×m個のマップデータを取得する工程において、測定エネルギー間隔をn×ΔEずらしながらマップ測定をm/a回繰り返す工程を、測定エネルギー範囲をΔE/aだけずらしながらa回行うことで、n×m個のマップデータを取得した。
これに対して、第1変形例では、隣り合うチャンネルトロン42間の測定エネルギー間隔ΔEとして、測定エネルギー範囲をΔE/aだけずらしながらマップ測定をa回繰り返す工程を、測定エネルギー範囲をn×ΔEずらしながらm/a回行う。
図31は、第3変形例に係るマップデータの取得方法を説明するための図である。図31では、a=3の場合を示している。
図31に示すように、まず、測定エネルギー範囲をΔE/3だけずらしながらマップ測定を3回繰り返す。1回目の測定エネルギー範囲をΔE/3だけずらしながらマップ測定を3回繰り返す工程(以下、「マップ測定を繰り返す工程」ともいう)における1〜3回目のマップ測定の測定エネルギーは以下の通りである。
1回目のマップ測定:−3ch=E−3ΔE
1回目のマップ測定:−2ch=E−2ΔE
1回目のマップ測定:−1ch=E−1ΔE
1回目のマップ測定: 0ch=E
1回目のマップ測定:+1ch=E+1ΔE
1回目のマップ測定:+2ch=E+2ΔE
1回目のマップ測定:+3ch=E+3ΔE
2回目のマップ測定:−3ch=E−3ΔE+ΔE/3
2回目のマップ測定:−2ch=E−2ΔE+ΔE/3
2回目のマップ測定:−1ch=E−1ΔE+ΔE/3
2回目のマップ測定: 0ch=E+ΔE/3
2回目のマップ測定:+1ch=E+1ΔE+ΔE/3
2回目のマップ測定:+2ch=E+2ΔE+ΔE/3
2回目のマップ測定:+3ch=E+3ΔE+ΔE/3
3回目のマップ測定:−3ch=E−3ΔE+2ΔE/3
3回目のマップ測定:−2ch=E−2ΔE+2ΔE/3
3回目のマップ測定:−1ch=E−1ΔE+2ΔE/3
3回目のマップ測定: 0ch=E+2ΔE/3
3回目のマップ測定:+1ch=E+1ΔE+2ΔE/3
3回目のマップ測定:+2ch=E+2ΔE+2ΔE/3
3回目のマップ測定:+3ch=E+3ΔE+2ΔE/3
次に、2回目のマップ測定を繰り返す工程を行う。2回目のマップ測定を繰り返す工程では、1回目のマップ測定を繰り返す工程の測定エネルギー範囲を7×ΔE(n×ΔE、n=7)だけずらして行われる。
具体的には、2回目のマップ測定を繰り返す工程における1〜3回目のマップ測定の測定エネルギーは以下の通りである。
1回目のマップ測定:−3ch=E+4ΔE
1回目のマップ測定:−2ch=E+5ΔE
1回目のマップ測定:−1ch=E+6ΔE
1回目のマップ測定: 0ch=E+7ΔE
1回目のマップ測定:+1ch=E+8ΔE
1回目のマップ測定:+2ch=E+9ΔE
1回目のマップ測定:+3ch=E+10ΔE
2回目のマップ測定:−3ch=E+4ΔE+ΔE/3
2回目のマップ測定:−2ch=E+5ΔE+ΔE/3
2回目のマップ測定:−1ch=E+6ΔE+ΔE/3
2回目のマップ測定: 0ch=E+7ΔE+ΔE/3
2回目のマップ測定:+1ch=E+8ΔE+ΔE/3
2回目のマップ測定:+2ch=E+9ΔE+ΔE/3
2回目のマップ測定:+3ch=E+10ΔE+ΔE/3
3回目のマップ測定:−3ch=E+4ΔE+2ΔE/3
3回目のマップ測定:−2ch=E+5ΔE+2ΔE/3
3回目のマップ測定:−1ch=E+6ΔE+2ΔE/3
3回目のマップ測定: 0ch=E+7ΔE+2ΔE/3
3回目のマップ測定:+1ch=E+8ΔE+2ΔE/3
3回目のマップ測定:+2ch=E+9ΔE+2ΔE/3
3回目のマップ測定:+3ch=E+10ΔE+2ΔE/3
3回目以降のマップ測定を繰り返す工程も同様に行われる。マップ測定を繰り返す工程は、m/3回行われる。
測定エネルギー範囲をΔE/3だけずらしながらマップ測定を3回繰り返す工程を、測定エネルギー範囲をn×ΔEずらしながらm/3回行うことで、n×m個のマップデータを取得できる。
第1変形例においても、上述した第3実施形態と同様に、隣り合うチャンネルトロン42間の測定エネルギー間隔ΔEよりも狭いエネルギー間隔のスペクトルマップを得ることができる。
3.4.2. 第2変形例
第3実施形態に係る分析方法についても、上述した第1実施形態の第1〜第3変形例を適用できる。
4. 第4実施形態
4.1. オージェ電子分光装置
第4実施形態に係る分析方法に用いられるオージェ電子分光装置の構成は、上述した図1に示すオージェ電子分光装置100と同様であり、その説明を省略する。処理部60は、以下で説明する分析視野のドリフトを補正する処理を行う。
4.2. 分析方法
第4実施形態に係る分析方法では、上述した第2実施形態に係る分析方法と同様に、マップ測定中およびマップ測定後に、ドリフト補正を行う。以下、第2実施形態に係る分析方法と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
(1)マップ測定中のドリフト補正
図32は、第4実施形態におけるドリフト補正方法を説明するための図である。第4実施形態では、n×m個のマップデータを取得する工程において、マップデータとともに二次電子像を取得し、二次電子像に基づいて電子線の照射位置のずれを補正する(プローブトラッキング)。
ここで、上述したように、ドリフト量の計算は、取得された二次電子像を、基準となる二次電子像(基準像)と比較することによって行われる。このドリフト量の計算には時間がかかる。そのため、図32に示すように、二次電子像を取得する電子線の走査範囲を、マップデータを取得する電子線の走査範囲よりも小さくする。すなわち、ドリフト量の計算に用いられる二次電子像の分析視野は、マップデータの分析視野よりも小さい。
図32に示す例では、二次電子像の走査範囲は、マップデータの走査範囲の半分である。すなわち、二次電子像の分析視野は、マップデータの分析視野の半分である。そのため、マップデータを取得するための電子線の走査の前半部分で二次電子像を取得し、電子線の走査の後半部分では、取得した二次電子像と基準像を比較してドリフト量の計算を行うことができる。これにより、マップ測定間におけるドリフト量の計算のための待ち時間を短縮できる。
図32に示す例では、ドリフト量の計算に用いられる二次電子像の走査範囲がマップデータの半分であったが、二次電子像の走査範囲は適宜変更可能である。例えば、二次電子像の走査範囲を、マップ測定間においてドリフト量の計算のための待ち時間が発生しない範囲に設定することによって、効率よく測定を行うことができる。
(2)マップ測定後のドリフト補正
マップ測定後のドリフトを補正する工程では、電子分光像と同時に取得した二次電子像を基準となる像と比較することによって、ドリフトを補正する。なお、マップ測定後のドリフトを補正する工程では、上述した図32に示す走査範囲が半分の二次電子像を用いてもよいし、マップデータと同じ走査範囲の二次電子像を用いてもよい。
なお、上記では、電子分光像と同時に取得した二次電子像でドリフト量の計算を行う場合について説明したが、電子分光像と同時に取得可能な走査像(プローブの走査により得られる像)であれば二次電子像に限定されない。例えば、電子分光像と同時に反射電子像を取得し、反射電子像でドリフト量の計算を行ってもよい。
4.3. 効果
第4実施形態に係る分析方法では、マップ測定においてマップデータとともに二次電子像を取得し、二次電子像に基づいて電子線の照射位置のずれを補正する。このように、二
次電子像に基づいて電子線の照射位置のずれを補正することによって、精度よくドリフト量を計算できる。
また、第4実施形態に係る分析方法では、二次電子像を取得する電子線の走査範囲は、マップデータを取得する電子線の走査範囲よりも小さい。そのため、図32に示すように、マップデータを取得するための電子線の走査を行っている間に、ドリフト量の計算を行うことができる。これにより、マップ測定間においてドリフト量の計算のための待ち時間を短縮できる。したがって、効率よく測定を行うことができる。
5. 第5実施形態
5.1. オージェ電子分光装置
第5実施形態に係る分析方法に用いられるオージェ電子分光装置の構成は、上述した図1に示すオージェ電子分光装置100と同様であり、その説明を省略する。処理部60は、以下で説明する分析視野のドリフトを補正する処理を行う。
5.2. 分析方法
第5実施形態に係る分析方法では、上述した第2実施形態に係る分析方法と同様に、マップ測定中およびマップ測定後に、ドリフト補正を行う。以下、第2実施形態に係る分析方法と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
(1)マップ測定中のドリフト補正
図33は、第5実施形態におけるドリフト補正方法を説明するための図である。上述した図32に示す第4実施形態では、二次電子像を取得する電子線の走査範囲を、マップデータを取得する電子線の走査範囲よりも小さくすることによって、ドリフト量の計算のための待ち時間を短縮した。
これに対して、第5実施形態では、図33に示すように、1回目のマップ測定を行ってマップデータとともに二次電子像を取得し、2回目のマップ測定を行っている間に、1回目のマップ測定で得られた二次電子像を基準像と比較してドリフト量の計算を行う。そして、このドリフト量の計算結果に基づいて、3回目のマップ測定において電子線の照射位置のずれを補正する。
同様に、3回目のマップ測定を行ってマップデータとともに二次電子像を取得し、4回目のマップ測定を行っている間に、3回目のマップ測定で得られた二次電子像を基準像と比較してドリフト量の計算を行う。そして、このドリフト量の計算結果に基づいて、5回目のマップ測定において電子線の照射位置のずれを補正する。
このように第5実施形態では、N−1回目のマップ測定を行ってマップデータとともに二次電子像を取得し、N回目のマップ測定を行っている間に、N−1回目のマップ測定で得られた二次電子像を基準像と比較してドリフト量の計算を行う。そして、このドリフト量の計算結果に基づいて、N+1回目のマップ測定において電子線の照射位置のずれを補正する。
(2)マップ測定後のドリフト補正
マップ測定後のドリフト補正は、上述した第2実施形態と同様であり、その説明を省略する。
5.3. 効果
第5実施形態に係る分析方法では、N−1回目のマップ測定を行ってマップデータとともに二次電子像を取得し、N回目のマップ測定を行っている間に、N−1回目のマップ測
定で得られた二次電子像を基準像と比較してドリフト量の計算を行う。また、このドリフト量の計算結果に基づいて、N+1回目のマップ測定において電子線の照射位置の補正を行う。そのため、ドリフト量の計算のための待ち時間を短縮でき、効率よく測定を行うことができる。
なお、ドリフト量の計算に必要な時間に応じて、ドリフト量を計算する時間を変更してもよい。例えば、N−1回目のマップ測定を行ってマップデータとともに二次電子像を取得し、N回目のマップ測定を行っている間およびN+1回目のマップ測定を行っている間に、N−1回目のマップ測定で得られた二次電子像を基準像と比較してドリフト量の計算を行う。そして、このドリフト量の計算結果に基づいて、N+2回目のマップ測定において電子線の照射位置のずれを補正する。これにより、ドリフト量の計算を2回のマップ測定を行っている間に行うことができる。
なお、ドリフト量を計算するための時間に応じて、ドリフト量の計算を3回のマップ測定を行っている間に行ってもよいし、4回のマップ測定を行っている間に行ってもよい。
6. 第6実施形態
6.1. オージェ電子分光装置
第6実施形態に係る分析方法に用いられるオージェ電子分光装置の構成は、上述した図1に示すオージェ電子分光装置100と同様であり、その説明を省略する。処理部60は、以下で説明する分析視野のドリフトを補正する処理を行う。
6.2. 分析方法
(1)マップ測定中のドリフト補正
上述した第4実施形態および第5実施形態では、1回のマップ測定で得られた1つの二次電子像に基づいてプローブトラッキングを行ったが、マップ測定をN回繰り返して得られたN個の二次電子像に基づいてプローブトラッキングを行ってもよい。
例えば、1回目のマップ測定で得られた二次電子像、2回目のマップ測定で得られた二次電子像、および3回目のマップ測定で得られた二次電子像に基づいて、ドリフト量の時間変化を表す関数を求める。そして、当該関数を用いて、4回目のマップ測定におけるドリフト量を計算し、4回目のマップ測定において、電子線の照射位置のずれを補正する。
(2)マップ測定後のドリフト補正
マップ測定後のドリフト補正は、上述した第2実施形態と同様であり、その説明を省略する。
6.3. 効果
第6実施形態に係る分析方法では、マップ測定をN回繰り返して得られたN個の二次電子像走査像に基づいて、電子線の照射位置のずれの時間変化を求めて、電子線の照射位置のずれを補正する。そのため、第6実施形態に係る分析方法では、電子線の照射位置のずれを正確に補正できる。例えば、分析視野のドリフトが非線形の関数で表される場合であっても、第6実施形態では、正確に分析視野のドリフトを補正できる。
7. 第7実施形態
7.1. オージェ電子分光装置
第7実施形態に係る分析方法に用いられるオージェ電子分光装置の構成は、上述した図1に示すオージェ電子分光装置100と同様であり、その説明を省略する。処理部60は、以下で説明する分析視野のドリフトを補正する処理を行う。
7.2. 分析方法
(1)マップ測定中のドリフト補正
図34は、第7実施形態におけるドリフト補正方法を説明するための図である。
上述した第4実施形態および第5実施形態では、1回のマップ測定で得られた1つの二次電子像に基づいてプローブトラッキングを行ったが、図34に示すように、マップ測定をN回繰り返して得られたN個の二次電子像を加算して積算画像を生成し、生成した積算画像に基づいてプローブトラッキングを行ってもよい。
また、N個の二次電子像を加算する際には、各二次電子像に重みをつけてもよい。例えば、N番目に取得された二次電子像の重みは、N−1番目に取得された二次電子像の重みよりも大きくする。
図34に示す例では、1回目のマップ測定で得られた二次電子像の重みをWとし、2回目のマップ測定で得られた二次電子像の重みをWとし、3回目のマップ測定で得られた二次電子像の重みをWとし、N−1回目のマップ測定で得られた二次電子像の重みをWN−1とし、N回目のマップ測定で得られた二次電子像の重みをWとしている。このとき、W<W<W<・・・<WN−1<Wとなる。ただし、W+W+W+・・・+WN−1+W=1である。
N個の二次電子像を加算する際には、各二次電子像に上記の重みをつけて加算する。これにより、積算画像を得ることができる。
このようにして得られた積算画像に基づいて、電子線の照射位置のずれを補正する。例えば、積算画像を基準像と比較してドリフト量を計算し、算出されたドリフト量に基づいて電子線の照射位置のずれを補正する。
(2)マップ測定後のドリフト補正
上述した第2実施形態では、1回のマップ測定で得られた電子分光像または二次電子像でドリフト量の計算を行ったが、マップ測定をN回繰り返して得られたN個の電子分光像またはN個の二次電子像を加算して積算画像を生成し、生成した積算画像に基づいてドリフト量の計算を行ってもよい。積算画像の生成方法は、上述したマップ測定中のドリフト補正と同様である。
7.3. 効果
第7実施形態に係る分析方法では、マップ測定をN回繰り返して得られたN個の二次電子像を加算して積算画像を生成し、当該積算画像に基づいて、電子線の照射位置のずれを補正する。ここで、積算画像は、1回の測定で得られた二次電子像に比べて、ノイズが低減され、鮮明である。そのため、第7実施形態に係る分析方法では、より正確にドリフト量を計算することができ、より精度よく電子線の照射位置のずれを補正できる。
また、第7実施形態に係る分析方法では、N個の二次電子像を加算する際に、各二次電子像に重みをつける。このとき、N番目に取得された二次電子像の重みは、N−1番目に取得された二次電子像の重みよりも大きい。そのため、第7実施形態に係る分析方法では、より正確にドリフト量を計算することができ、より精度よく電子線の照射位置のずれを補正できる。
8. その他
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
上述した第1〜第7実施形態では、本発明の一実施形態に係る分析方法に用いられる分析装置としてオージェ電子分光装置を説明したが、試料に照射する一次プローブは電子に限定されず、試料から電子を放出させるものであればよい。例えば、一次プローブをX線としてもよい。この場合、本発明の一実施形態に係る分析方法で用いられる分析装置は、光電子分光装置となる。
また、上述した第1〜第7実施形態では、一次プローブのエネルギー強度が一定であると仮定したが、一次プローブのエネルギー強度を変更した場合にも対応可能である。この場合、前処理として各測定点の信号の強度を一次プローブのエネルギー強度で除算する演算を行うことで、第1〜第7実施形態と同様の処理を行うことができる。
なお、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることが可能である。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
2…領域、2a…第1領域、2b…第2領域、10…電子線照射装置、12…電子銃、14…電子レンズ、16…偏向器、20…試料ステージ、30…電子分光器、32…インプットレンズ、33…静電レンズ、34…アナライザー、35a…内半球電極、35b…外半球電極、40…検出器、42…チャンネルトロン、50…照射制御装置、52…電子分光器制御装置、54…計数演算装置、60…処理部、70…二次電子検出器、100…オージェ電子分光装置

Claims (23)

  1. 一次プローブを試料に照射して前記試料から放出された電子をエネルギー分光するアナライザーと、前記アナライザーでエネルギー分光された電子のエネルギー分散方向に並んで配置されたn個の検出部を有する検出器と、を有する電子分光器を含む分析装置を用いた分析方法であって、
    前記一次プローブを前記試料上で走査して、前記試料から放出された電子を前記電子分光器で検出することによってn個のマップデータを取得するマップ測定を、前記アナライザーの測定エネルギー範囲を変更しながらm回繰り返すことによって、n×m個のマップデータを取得する工程と、
    前記n×m個のマップデータに基づいて、前記試料上の位置とスペクトルとを関連づけたスペクトルマップを生成する工程と、
    を含み、
    m回の前記マップ測定の測定エネルギー範囲は、互いに重ならない、分析方法。
  2. 請求項1において、
    j回目の前記マップ測定の測定エネルギー範囲と、j+1回目の前記マップ測定の測定エネルギー範囲とは、重ならない、分析方法。
  3. 請求項2において、
    前記マップ測定は、エネルギー分解能が一定となるモードで行われ、
    前記n個の検出部は、互いに等しい測定エネルギー間隔に設定され、
    前記j回目の前記マップ測定における前記n個の検出部の測定エネルギーの最大値と、前記j+1回目の前記マップ測定における前記n個の検出部の測定エネルギーの最小値との差は、前記n個の検出部の測定エネルギー間隔に等しい、分析方法。
  4. 請求項2において、
    前記電子分光器は、前記アナライザーに入射する電子を減速させるインプットレンズを有し、
    前記マップ測定は、エネルギー分解能が測定エネルギーとともに変化するモードで行われ、
    前記j回目の前記マップ測定における前記n個の検出部の測定エネルギーの中央値をEj−1とし、前記インプットレンズの減速率に比例する値をαとした場合、前記j+1回目の前記マップ測定における前記n個の検出部の測定エネルギーの中央値Ejは、
    =Ej−1(1+α)
    である、分析方法。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項において、
    前記電子分光器の検出感度を補正するための補正係数を求める工程を含む、分析方法。
  6. 請求項5において、
    前記補正係数を求める工程では、前記補正係数を前記検出部ごとに求める、分析方法。
  7. 請求項5または6において、
    前記補正係数を求める工程では、前記補正係数を測定エネルギーごとに求める、分析方法。
  8. 請求項5ないし7のいずれか1項において、
    前記補正係数を求める工程では、生成された前記スペクトルマップから取得したスペクトルに基づいて、前記補正係数を求める、分析方法。
  9. 請求項8において、
    前記補正係数を求める工程では、取得したスペクトルから、連続する測定エネルギーのデータをnの倍数個抽出して、前記補正係数を求める、分析方法。
  10. 請求項5ないし9のいずれか1項において、
    前記補正係数を求める工程では、生成された前記スペクトルマップを複数の領域に区画し、前記領域ごとにスペクトルを取得し、前記領域ごとに前記補正係数を求める、分析方法。
  11. 請求項1ないし10のいずれか1項において、
    分析視野のドリフトを補正する工程を含む、分析方法。
  12. 請求項11において、
    前記分析視野のドリフトを補正する工程では、
    前記マップデータに基づいて、電子分光像を生成し、
    生成された前記電子分光像を基準となる像と比較して、前記分析視野のドリフトを補正する、分析方法。
  13. 請求項11において、
    前記分析視野のドリフトを補正する工程は、前記n×m個のマップデータを取得する工程の後に行われ、
    前記分析視野のドリフトを補正する工程では、
    前記n×m個のマップデータに基づいて、n×m個の電子分光像を生成し、
    前記n×m個の電子分光像を、それぞれ基準となる像と比較して、前記分析視野のドリフトを補正する、分析方法。
  14. 請求項1ないし13のいずれか1項において、
    前記分析装置は、前記一次プローブを前記試料に照射して前記試料から放出された電子を検出して走査像を取得するための電子検出器を含み、
    前記n×m個のマップデータを取得する工程では、
    前記マップ測定において、前記マップデータとともに前記走査像を取得し、
    前記走査像に基づいて、前記一次プローブの照射位置のずれを補正する、分析方法。
  15. 請求項14において、
    前記走査像を取得する前記一次プローブの走査範囲は、前記マップデータを取得する前記一次プローブの走査範囲よりも小さい、分析方法。
  16. 請求項14または15において、
    前記マップ測定をN回繰り返して得られたN個の前記走査像に基づいて、前記照射位置のずれの時間変化を求めて、前記照射位置のずれを補正する、分析方法。
  17. 請求項14または15において、
    前記マップ測定をN回繰り返して得られたN個の前記走査像を加算して積算画像を生成し、
    前記積算画像に基づいて、前記照射位置のずれを補正する、分析方法。
  18. 請求項17において、
    N個の前記走査像を加算する際に、各前記走査像に重みをつけ、
    N番目に取得された前記走査像の重みは、N−1番目に取得された前記走査像の重みよ
    りも大きい、分析方法。
  19. 一次プローブを試料に照射して前記試料から放出された電子をエネルギー分光するアナライザーと、前記アナライザーでエネルギー分光された電子のエネルギー分散方向に並んで配置されたn個の検出部を有する検出器と、を有する電子分光器を含む分析装置を用いた分析方法であって、
    前記一次プローブを前記試料上で走査して、前記試料から放出された電子を前記電子分光器で検出することによってn個のマップデータを取得するマップ測定を、前記アナライザーの測定エネルギー範囲を変更しながらm回繰り返すことによって、n×m個のマップデータを取得する工程と、
    前記n×m個のマップデータに基づいて、前記試料上の位置とスペクトルとを関連づけたスペクトルマップを生成する工程と、
    を含み、
    m回の前記マップ測定において、前記検出部の測定エネルギーは重複しない、分析方法。
  20. 請求項19において、
    隣り合う前記検出部間の測定エネルギー間隔をΔEとした場合に、
    前記n×m個のマップデータを取得する工程では、
    測定エネルギー範囲をn×ΔEずらしながら前記マップ測定をm/a回繰り返す工程を、測定エネルギー範囲をΔE/aだけずらしながらa回行う、分析方法。
  21. 請求項19において、
    隣り合う前記検出部間の測定エネルギー間隔をΔEとした場合に、
    前記n×m個のマップデータを取得する工程では、
    測定エネルギー範囲をΔE/aだけずらしながら前記マップ測定をa回繰り返す工程を、測定エネルギー範囲をn×ΔEずらしながらm/a回行う、分析方法。
  22. 一次プローブを試料に照射して前記試料から放出された電子をエネルギー分光するアナライザー、および前記アナライザーでエネルギー分光された電子のエネルギー分散方向に並んで配置されたn個の検出部を有する検出器を有する電子分光器と、
    前記電子分光器における電子の検出結果に基づいて、前記試料上の位置とスペクトルとを関連づけたスペクトルマップを生成する処理部と、
    を含み、
    前記処理部は、
    前記一次プローブを前記試料上で走査して、前記試料から放出された電子を前記電子分光器で検出することによってn個のマップデータを取得するマップ測定を、前記アナライザーの測定エネルギー範囲を変更しながらm回繰り返すことによって得られた、n×m個のマップデータを取得する処理と、
    前記n×m個のマップデータに基づいて、前記試料上の位置とスペクトルとを関連づけたスペクトルマップを生成する処理と、
    を行い、
    m回の前記マップ測定の測定エネルギー範囲は、互いに重ならない、分析装置。
  23. 一次プローブを試料に照射して前記試料から放出された電子をエネルギー分光するアナライザー、および前記アナライザーでエネルギー分光された電子のエネルギー分散方向に並んで配置されたn個の検出部を有する検出器を有する電子分光器と、
    前記電子分光器における電子の検出結果に基づいて、前記試料上の位置とスペクトルとを関連づけたスペクトルマップを生成する処理部と、
    を含み、
    前記処理部は、
    前記一次プローブを前記試料上で走査して、前記試料から放出された電子を前記電子分光器で検出することによってn個のマップデータを取得するマップ測定を、前記アナライザーの測定エネルギー範囲を変更しながらm回繰り返すことによって得られた、n×m個のマップデータを取得する処理と、
    前記n×m個のマップデータに基づいて、前記試料上の位置とスペクトルとを関連づけたスペクトルマップを生成する処理と、
    を行い、
    m回の前記マップ測定において、前記検出部の測定エネルギーは重複しない、分析装置。
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