JP2021053636A - 発酵液のろ過方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】長期間安定して繰り返しろ過が可能な、膜モジュールによる発酵液のろ過方法を提供する。【解決手段】本発明の膜モジュールによる発酵液のろ過方法は、(a)発酵液のクロスフローろ過、(b)水リンス、(c)薬液洗浄、(d)水リンスの4つの工程を繰り返すろ過方法であって、工程cの薬液洗浄において膜モジュールの膜の2次側から1次側に酸化剤を含有するpH10以上14以下の薬液を注入する。【選択図】図1

Description

本発明は、発酵工業分野、食品工業分野などでの膜モジュールを用いた発酵液のろ過方法に関するものである。
特に、食品分野における発酵液の処理においては、従来、発酵後のビール、ワイン中の酵母、固形物、コロイド等を除去するために珪藻土が利用されていたが、珪藻土自体の安全性や使用済みの珪藻土は焼却処分できず、また、大量に使用するため廃棄にかかるコスト高の問題があった。そこで、近年、装置の小型化に優れる限外濾過膜や精密濾過膜等の分離膜による発酵液の処理が注目されている。
ビールおよびワイン等の発酵液を分離膜モジュールで処理する際には、除去された微生物類やその破砕物、コロイド等からなる層が膜面上で形成されて膜が目詰まりして、ろ過圧の上昇やろ過速度の経時的な減少が起きやすいという問題があった。
膜面が目詰まりしにくく、ろ過性を発揮できる膜構造として、分離膜の片側の表面孔径が除去したい物質よりも大きく、もう一方の表面または膜厚部のいずれかの範囲に最小孔径層を持ち、膜の内部に不純物を捕捉する、いわゆるデプス濾過が可能な膜が開発されている。特許文献1、2には、中空糸膜の外表面から内表面に向けて徐々に孔径が大きくなる、傾斜構造の膜が提案されている。これらに開示される膜は透水性が十分でないか、透水性が高い代わりに膜の破断強度が十分でなく、目詰まりの抑制が十分でない。
また比較的近年、特許文献3、4に記載されているように、親水性高分子を含有し、非対称構造を持つ、ビールろ過用中空糸膜が開示されている。これらに開示される膜のろ過性能は比較的高いが、水酸化ナトリウム水溶液等、汎用薬品による洗浄回復性が十分でなく、また高い洗浄回復性を得るためには高価な薬品を要するため経済的でない。
さらに特許文献5には、ポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる分離膜を膜融点近傍の一定温度条件で熱処理することで、耐薬品に優れ、機械的な破断強度に優れるばかりか高い純水透水性を有する中空糸膜が提案されている。しかしながら、これに開示される製造方法では固形部の収縮が過剰に進行し、部分的に固形部間の微細な空隙の閉塞が生じるため、流路の分岐に乏しい膜が得られる。上記のような膜は、透過可能な流路の膜面積つまり有効膜面積が局所的な目詰まりにより大きく減少する特徴を有するため、発酵液のような目詰まりの進行しやすい液体のろ過では、ろ過の進行とともに有効膜面積が加速度的に低下する。
WO2002/058828 WO2010/035793 WO2016/182015 WO2017/155034 特開2008−105016号公報
発酵生産物の分離や微生物の濃縮など、様々な目的で分離膜による発酵液のろ過が行われるが、発酵液にはタンパク質、多糖類、ポリフェノールなど、種々の有機物が含まれており、これらの物質が原因で分離膜のファウリングが発生する。ファウリングした分離膜は薬液洗浄により透水性を回復させて繰り返し使用できるが、分離膜がファウリングしやすいと薬液洗浄の頻度が増え、洗浄コストが高くなる。また、発酵液のろ過と薬液洗浄を繰り返すと、徐々に洗浄しきれないファウリング物質が膜中に蓄積し、透水性が回復しにくくなると共に、洗浄時間が長くなる。
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、長期間安定して繰り返しろ過が可能な、膜モジュールによる発酵液のろ過方法を提供することを課題とする。
上述した課題を解決するために、本発明は以下の[1]〜[9]の技術を提供する。
[1]下記工程a〜dをこの順に行う発酵液のろ過方法であって
(a)分離膜を有する膜モジュールにより発酵液をクロスフローろ過する工程と、
(b)前記分離膜を水でリンスする工程と、
(c)前記pHが10以上14以下の薬液を分離膜の二次側から一次側に透過させる工程と、
(d)前記分離膜を水でリンスする工程と
を含み、
前記工程aのクロスフロー膜透過液は、全糖濃度が1000mg/L以上かつ100000mg/L以下であり、タンパク質濃度が50mg/L以上かつ10000mg/L以下であり、ポリフェノール濃度が50mg/L以上かつ10000mg/L以下であり、
前記工程cが、
(c−1)膜モジュールの二次側から一次側に、pHが10以上14以下であり、かつ酸化剤濃度が0.01%以上である薬液Aを透過させるステップ
を備える発酵液のろ過方法。
[2] 前記工程cが、
(c−2)前記ステップc−1の前に、酸化剤濃度が0.01%未満である薬液Bを分離膜の二次側から一次側に透過させるステップ
をさらに備える[1]に記載の発酵液のろ過方法。
[3]前記工程dの後に、
(e)pHが0以上4以下の薬液Cを分離膜の二次側から一次側に通過させる工程と
(f)前記工程eの後に、前記膜モジュールを水でリンスする工程と
をさらに含む[1]−[2]のいずれかに記載の発酵液のろ過方法。
[4]前記工程cおよびeにおいて、二次側から一次側に透過させる薬液の流束(m/m/d)が前記工程aのクロスフローの流束の1.5倍以上、10倍以内である[1]−[3]のいずれかに記載の発酵液のろ過方法。
[5]前記薬液Cが、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クエン酸、シュウ酸、アスコルビン酸および乳酸からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有する水溶液である
[3]−[4]のいずれかに記載の発酵液ろ過方法。
[6]前記薬液A、BおよびCが、界面活性剤、酵素およびキレート剤のうちの少なくとも1種の洗浄補助剤を含有する
[1]−[5]のいずれか一項に記載の膜モジュールを用いた発酵液のろ過方法。
[7]原水中の多糖類の濃度Ctが、ろ過開始時の濃度C0の1.3倍以上15倍以下の範囲で、工程aから工程bに移る、上記[1]−[6]のいずれかに記載の発酵液のろ過方法。
[8]前記分離膜が中空糸膜である、上記[1]−[7]のいずれかに記載の発酵液のろ過方法。
[9]前記分離膜が疎水性高分子樹脂を含有し、
ガス吸着法で測定される孔径100nm未満の細孔容積V2が0.02cm3/g以上0.1cm3/g未満かつ、
水銀圧入法で測定される孔径100nm以上の細孔容積V1が0.1cm3/g以上であり、
前記細孔容積V2と前記細孔容積V1との比V1/V2が3以上60以下である
る上記[8]に記載の発酵液のろ過方法。
V1:水銀圧入法で測定される孔径100nm以上の細孔容積
V2:ガス吸着法で測定される孔径100nm未満の細孔容積
[10]前記分離膜の破断伸度が38%以上である、上記[9]に記載の発酵液のろ過方法。
[11]前記膜を125℃の水蒸気雰囲気で20時間加熱処理した時の中空糸膜長の収縮率が0.5%以上である上記[9]または[10]に記載の分離膜。
[12]前記分離膜が親水性高分子を含有し、
前記親水性高分子は、N種類のモノマー単位1,2,・・・i・・・Nから構成される共重合体を含有し、下記式(1)に基づいて算出される前記親水性高分子の水和エネルギー密度が、40〜70cal・mol−1・Å−3である
上記[1]−[11]のいずれか1項に記載の発酵液のろ過方法。
Figure 2021053636
[式(1)中、任意のモノマー単位iの水和エネルギーは、モノマー単位iの水中のエネルギーからモノマー単位iの真空中のエネルギーを減じた値の絶対値であり、Nは、共重合体を構成するモノマー種の総数であり、iは、1以上N以下の整数であり、Nは2以上の整数である。]
[13]前記疎水性高分子樹脂がフッ素系樹脂あるいはスルホン系樹脂である
上記[1]−[12]のいずれかに記載の発酵液のろ過方法。
[14]前記工程aのろ過が、中空糸膜の外周側から内周側に向かってろ過する外圧式ろ過であって、前記工程cおよびeにおいて、透過させる薬液の流束が、中空糸膜の内側面積当たり7.0m/m/d以上10m/m/d以下である、前記[1]−[13]のいずれかに記載の発酵液のろ過方法。
本発明の膜モジュールによる発酵液のろ過方法は、(a)発酵液のクロスフローろ過、(b)水リンス、(c)アルカリ薬液洗浄、(d)水リンスの4つの工程を繰り返すろ過方法である。ここで工程aのクロスフロー膜透過液組成が、全糖濃度が1000mg/L以上100000mg/L以下、かつタンパク質濃度が50mg/L以上10000mg/L以下であり、ポリフェノール濃度が50mg/L以上かつ10000mg/L以下である透過液に対し、工程cの薬液洗浄において、pHが10以上、14以下で、かつ酸化剤を含有する薬液を2次側から1次側に通液することで、短い洗浄時間で、高い洗浄効果を発揮し、長期間にわたる安定ろ過が可能となる。
図1は、本発明の実施形態にかかるろ過装置の概略図である。 図2は、本発明の発酵液のろ過方法の一例を示すフローチャートである。 図3は、本発明の発酵液のろ過方法の一例を示すフローチャートである。 図4は、本発明で利用される中空糸膜の斜視図である。 図5は、上記中空糸膜に含まれる球状構造の概略を示す斜視図である。
以下に、本発明の実施形態にかかる膜モジュールによるろ過方法を図面に基づいて詳細に説明する。尚、本発明において、「上」、「下」は、図面に示す状態に基づいており、便宜的なものであって、原液が流入する側を「下」方向、ろ過液が流出する側を「上」方向とする。通常、膜モジュールの使用時の姿勢において、上下方向は、図面における上下方向と一致する。
本発明の実施形態にかかる発酵液のろ過装置の構成について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施形態にかかるろ過装置の概略図であり、図2は発酵液のろ過方法の一例を示したフローチャートである。
まず図2のフローチャートを使用し、工程全体の概要を述べる。
本発明に係る膜モジュールによる発酵液のろ過方法は、以下の工程a〜dを含み、この工程a〜dを繰り返すことにより、長期間安定して繰り返しろ過が可能となる。
(a)分離膜を有する膜モジュールにより発酵液をクロスフローろ過する工程
(b)工程aの後に、分離膜を水でリンスする工程
(c)前記工程bの後に、膜モジュールの膜の二次側から一次側にpHが10以上、14以下の薬液を注入する工程と
(d)工程cの後に、分離膜を水でリンスする工程
更に、図3のフローチャートに示した通り、前記工程a〜dに工程e、fを加えた工程a〜fを繰り返すことにより、より長期間安定して繰り返しろ過が可能となる。
(e)前記工程dの後に、膜モジュールの膜の二次側から一次側にpHが0以上、4以下の薬液を注入する工程と
(f)工程eの後に、分離膜を水でリンスする工程
最初の工程である工程aでは、膜モジュールにより発酵液のクロスフローろ過を行う。この工程aでは、分離膜の原液側の圧力からろ過液側の圧力を減じた膜間差圧から分離膜のファウリング状態を判断することができ、膜間差圧の値が所定の値まで上昇したら、工程bに移行し、所定の値以下のときは、工程aのクロスフローろ過を継続する。工程bでは水リンスによる膜モジュールの洗浄を行う。工程bが終了したら工程cに移行し、膜モジュールの薬液洗浄を行う。工程cが終了したら工程dの水リンスを行う。ここで、洗浄回復性が不十分の場合は、工程dが終了後、工程eに移行し、膜モジュールの追加薬液洗浄を行う。工程eが終了したら工程fの水リンスを行い、再度工程aに戻る。この工程a〜d、もしくはa〜fを繰り返して発酵液のろ過を行う。
<原液>
本実施形態では、原液として発酵液を用いる。発酵液としては、例えば、ビール、ワイン、清酒、食酢、醤油、アミノ酸発酵液、有機酸発酵液、バイオ医薬品の発酵液などが挙げられる。発酵液は微生物により生成される発酵生産物を含有するが、微生物の種類および発酵生産物の種類は具体的な例には限定されない。
工程aのクロスフローろ過において発酵液が膜モジュールを透過することで得られたろ過液の全糖濃度は、1000mg/L以上100000mg/L以下、かつタンパク質濃度が50mg/L以上10000mg/L以下であり、ポリフェノール濃度が50mg/L以上かつ10000mg/L以下であることが好ましい。
膜モジュールを透過する前の発酵液(つまり原液)中の全糖濃度、タンパク質濃度、及びポリフェノール濃度は、膜モジュールに含まれる分離膜の孔径や構造によって、透過したろ過液と同程度の場合と、透過したろ過液と異なる場合とがある。分離膜により前記成分の一部が阻止された場合には、原液中の前記成分の濃度に対して、ろ過液中の前記成分濃度は低下する。ここで、原液やろ過液中の全糖濃度、タンパク質濃度、及びポリフェノール濃度は、以下に挙げる手法により算出することができる。すなわち、全糖濃度はフェノール硫酸法や加水分解による単糖定量法により、タンパク質濃度はBCA法、Bradford法、Lowry法、及びPierce 660 nm Protein Assay法により、ポリフェノール濃度はフォーリン・チオカルト法、フォーリン・デニス法、及び酒石酸鉄吸光光度法、などであるが、これらに限定されるものではない
(工程a)
<クロスフローろ過>
発酵液は微生物、タンパク質、多糖類、脂質など、種々の有機物が含まれており、膜モジュールに供給する液を全てろ過するデッドエンドろ過ではファウリングが進行しやすい。そのため膜面と平行に原液である発酵液を流して膜面を洗浄しながらろ過を行うクロスフローろ過が適している(膜モジュールにより発酵液をクロスフローろ過するステップ(a−1))。
図1に示したように、クロスフローろ過を行う際は原液タンク1から原液ポンプ3で膜モジュール2に発酵液(原液)を供給し、原液の一部は原液タンク1に還流される。また、膜モジュール2の分離膜でろ過されたろ過液はろ過液タンク6に送液される。なお、発酵液のろ過運転性を向上させるため、膜ろ過の前に遠心分離などの処理を実施してもよい。
前述の通り、クロスフローろ過では膜面と平行に原液を流すため、原液タンク1と膜モジュール2の間で原液を循環させる。このとき、原液の循環流量は、一定の膜面線速度になるよう調整することが好ましい。膜面線速度とは、原液の循環流量を、膜モジュール内の循環流が流れる断面積で割ったものを指す。膜面線速度は原液の性状に合わせて適宜設定すればよいが、0.1m/s以上3.0m/s以下とすることが好ましく、0.3m/s以上2.5m/s以下とすることがさらに好ましい。膜面線速度が0.1m/s未満だと、十分な洗浄効果が得られない場合がある。また膜面線速度が3.0m/sを超えると動力コストが高くなるため好ましくない。なお、原液の流量は原液ポンプ3、循環制御バルブ4により制御することができる。
クロスフローろ過時のろ過流束は原液の性状に合わせて適宜設定すればよいが、0.1m/m/d以上2.5m/m/d以下とすることが好ましく、0.3m/m/d以上2.0m/m/d以下とすることがさらに好ましい。ろ過流束が0.1m/m/d未満だと、必要な膜モジュールが多くなりコストが高くなる。一方ろ過流束が2.5m/m/dを超えると、分離膜のファウリングが急激に進行する場合があるため、好ましくない。なお、ろ過液の流量は原液ポンプ3、循環制御バルブ4、ろ過液制御バルブ5により制御することができる。
分離膜によるろ過では分離膜の原液側の圧力からろ過液側の圧力を減じた膜間差圧から分離膜のファウリング状態を判断することができ、デッドエンドろ過の場合は膜モジュール2の原液入口側の圧力計21と膜モジュール2のろ過液出口側の圧力計23から、膜間差圧を算出することができる。同一ろ過流束のとき、分離膜のファウリングが進行すると膜間差圧は上昇する。しかしクロスフローろ過の場合、原液が膜モジュール2の原液側流路を通過して原液タンク1に還流する際の圧力損失が大きく、前述の算出方法では原液側流路の圧力損失も含まれてしまうため、適切に膜間差圧を算出することが難しい。そこで、膜モジュール2の原液入口側の圧力計21と出口側の圧力計22の平均値と膜モジュール2のろ過液出口側の圧力計23の値の差分から、膜間差圧を算出することができる。
工程aのクロスフローろ過で、分離膜のファウリングが進行すると膜間差圧が上昇するため、ある程度閉塞したところで、工程bに移ることが好ましい。工程bに移るタイミングとしては、原水中の多糖類の濃度Cが、ろ過開始時の濃度Cの1.3倍以上15倍以下の範囲となったときが好ましい。濃度C/濃度Cが1.3以上であることで、多糖類が膜面に溜まりやすいので、ろ過とは逆の向きに洗浄することにより、大きな洗浄効果が得られる。一方、濃度C/濃度Cが15以下であれば、分離膜のファウリングが過剰に進行しておらず、薬液洗浄を行うことで分離膜の透水性が十分に回復する可能性が高い。
多糖類としては、発酵液の種類や発酵原料によって適宜選択すればよいが、例えばβグルカン、アミロース、アミロペクチン、ペクチン、デキストラン、セルロース、キチン、キトサン、グルコマンナン、等が挙げられる。
原水中の多糖類の濃度は、原水に対してエタノール沈殿等により多糖画分を抽出した後、酵素やアルカリ等による加水分解操作を施し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、生じた構成単糖を分析することで測定することができるが、この限りでない。
<逆洗>
工程aは、クロスフローろ過を行うステップ(a−1)と、定期的にクロスフローろ過を停止し、膜モジュールを逆洗するステップ(a−2)とを含んでいてもよい。逆洗により透水性が回復すると、ろ過時間を延長することができ、薬液洗浄の頻度が減るため運転コストを低減できる。ステップ(a−1)と(a−2)は交互に任意の回数繰り返すことができる。
逆洗はろ過液で実施してもよいし、水など他の液体を使用することもできるが、原液に水など他の液体を混入させたくない場合はろ過液で逆洗するか、バルブ操作により切り替えを行い、原液に逆洗液が混入しないように逆洗を行うこともできる。
逆洗時の逆洗流束は、原液の性状や、分離膜のファウリング状態に応じて適宜設定すればよいが、1.0m/m/d以上10.0m/m/d以下とすることが好ましく、1.5m/m/d以上5.0m/m/d以下とすることがさらに好ましい。逆洗流束が1.0m/m/d未満だと、洗浄効果が低くなるため好ましくない。また逆洗流束が10.0m/m/dを超えると動力コストが高くなり、逆洗に使用する液が大量に必要となるため、好ましくない。
分離膜が中空糸膜であれば、工程aのろ過を、中空糸膜の外周側から内周側に向かってろ過する外圧式ろ過とし、工程a−2の逆洗は、中空糸膜の内周側から外周側に向かって液体を流すことが好ましい。この際、逆洗の流束は、中空糸膜の内側面積あたりで換算した流束が、4.0m/m/d以上10.0m/m/d以下とすることが好ましく、7.0m/m/d以上10.0m/m/d以下とすることがさらに好ましい。工程aにおいて、高い流束で中空糸膜の外側から内側に向かって液体を流すと、中空糸膜を圧縮して潰してしまうが、中空糸膜の内側から外側に向かって液体を流すことで、高流束での洗浄を実現でき、高い洗浄効果を得ることができる。
<濃縮液回収>
工程aでクロスフローろ過を継続すると、最終的に原液タンクの液量が少なくなり、原液タンクと膜モジュールの間での原液の循環が困難となる。ここで原液タンクや配管、膜モジュール内に残存した原液を回収するため、デッドエンドろ過やダイアフィルトレーションを行うこともできる。デッドエンドろ過の場合、例えば、原液タンク1に水を投入し、原液ポンプ3で膜モジュール2に原液を供給してデッドエンドろ過を行い、水が膜モジュールに到達する前にろ過を停止する方法が挙げられる。また、原液タンク1や配管にガスを供給することでデッドエンドろ過を行うこともできる。ダイアフィルトレーションでは原液タンク1に水を投入してクロスフローろ過を実施し、原液タンク1の液量が減少したら再度水を投入してクロスフローろ過を繰り返すことで原液の回収率を向上できる。
(工程b)
<水リンス>
工程bでは水による膜モジュール2のリンスを行うが、これは工程cの薬液洗浄の前に有機物などの汚れ成分を減らすことが目的である。薬液洗浄ではpH10以上、14以下で酸化剤を含有する薬液による洗浄を行うが、有機物が多量に残存していると酸化剤が消費され、分離膜が十分に洗浄できない場合があるため、薬液洗浄を行う前に分離膜を水でリンスする。
水リンスの方法としては、例えば、洗浄液タンク10に水を投入し、膜モジュール2のクロスフローろ過を行うことで膜モジュール2の内部全体、つまり一次側および二次側の両方を洗浄できる。このとき逆洗液タンク7から水を送液し、水による逆洗を併せて実施することで、より洗浄効果を高めることができる。膜面線速度、ろ過流束、逆洗流束については工程aと同様の条件で実施すればよい。
(工程c)
<アルカリ薬液洗浄>
工程cでは膜モジュール2の薬液洗浄を行い、分離膜に付着したファウリング成分を除去する。分離膜の洗浄用の薬液としては酸、アルカリ、酸化剤、界面活性剤、キレート剤などが挙げられるが、発酵液ろ過後の分離膜の洗浄にはpH10以上、14以下で酸化剤を組み合わせ、かつ膜の2次側から1次側に薬液を注入する洗浄が有効であることを見出した。
薬液のpHは10以上14以下とすることが好ましく、11以上13以下とすることがより好ましい。pHは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等で調整する。発酵液中のファウリング物質は有機物が中心であり、高pH条件で洗浄力が高まるが、pH14を超える条件では、膜、膜モジュール部材、配管などが劣化する場合がある。一方、pH10未満では洗浄効果が不十分となる場合がある。
酸化剤としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸カリウムなどの次亜塩素酸塩、過硫酸水素ナトリウム、過硫酸水素カリウムなどの過硫酸水素塩、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウムなどの過炭酸塩、過マンガン酸塩、オゾン、過酸化水素などの過酸化物などが挙げられるが、十分な洗浄効果を得る上で、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸カリウムなどの次亜塩素酸塩が好ましい。これら酸化剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
酸化剤はpH10以上、14以下のアルカリ性水溶液に溶解して洗浄液として使用する。酸化剤は、最初から高濃度で使用してもよいし、低濃度、高濃度の順番に使用してもよい。具体的には、0.01%以上の酸化剤を含有するpH10以上、14以下の薬液Aを膜の2次側から1次側に注入するステップ(c−1)を単独で行う方法や、c−1の前に0.01%未満の酸化剤を含有するpH10以上、14以下の薬液Bを膜の2次側から1次側に注入するステップ(c−2)を順次行う方法が挙げられる。本発明において、酸化剤を含有するpH10以上、14以下の薬液を膜モジュールの膜の二次側から一次側に注入すると相乗効果により、短時間で高い洗浄効果が得られる。更に、ステップc−1、c−2それぞれにおいて、膜モジュールの膜の二次側から一次側に注入した初期のアルカリ薬液は汚れ成分が多量に含まれているため、再利用することなく、廃棄することで、膜への再付着を防止でき、より高い洗浄効果を得られる。廃棄時間としては、5分〜10分程度実施することが好ましい。
薬液洗浄に用いる酸化剤の濃度は、薬液洗浄を1ステップで行う場合、0.01%以上1%以下とすることが好ましく、0.1%以上0.5%以下とすることがより好ましい。一方、薬液洗浄を2ステップ以上で行う場合、少なくとも1ステップ目の洗浄における酸化剤の濃度は0.01%未満であることが好ましく、2ステップ目以降の少なくとも1回の洗浄では、酸化剤濃度を0.01%以上1%以下とすることが好ましく、0.1%以上0.5%以下とすることがより好ましい。酸化剤を高濃度で使用するステップ(c−1)において、酸化剤濃度が0.01%以上であることで、充分な洗浄効果が得られる。また、酸化剤濃度を1%以下とすることで、コストと洗浄効果とのバランスをとることができる。また、薬液洗浄を2ステップ以上で行う場合に、少なくとも1ステップにおいて0.01%未満の酸化剤濃度で洗浄を行うことで、膜に付着しているファウラント成分を酸化剤により変性させることなく除去し、その後に酸化剤濃度を0.01%以上としてさらに洗浄を行うことで、酸化剤による洗浄効果も得ることができる。薬剤洗浄を1ステップで行うか、2ステップで行うかは、原液の性状や、分離膜のファウリング成分、ファウリング状態に応じて適宜変更すればよい。
薬液の温度は20℃以上70℃以下とすることが好ましく、40℃以上60℃以下とすることがさらに好ましい。薬液の温度が20℃未満だと十分な洗浄効果を発揮しない場合がある。一方、70℃を超えると酸化剤の分解が促進されるため好ましくない。
2次側から1次側への薬液の注入流束は、原液の性状や、分離膜のファウリング状態に応じて適宜設定すればよいが、工程aにおけるクロスフローろ過時のろ過流束の1.5倍以上、10倍以内が好ましく、2.0倍以上、4.0倍以内がより好ましい。2次側から1次側への薬液の注入流束が1.5倍未満だと、洗浄効果が低くなるため好ましくない。また2次側から1次側への薬液の注入流束が10倍を超えると動力コストが高くなり、薬液使用液が大量に必要となるため、好ましくない。
分離膜が中空糸膜であれば、工程aのろ過を、中空糸膜の外周側から内周側に向かってろ過する外圧式ろ過とし、工程bの水リンスおよび工程cの薬液洗浄を、中空糸膜の内周側から外周側に向かって水または薬液を流すことが好ましい。この際、逆洗の流束は、中空糸膜の内側面積あたりで換算した流束が、4.0m/m/d以上10.0m/m/d以下とすることが好ましく、7.0m/m/d以上10.0m/m/d以下とすることがさらに好ましい。工程bおよび工程cにおいて、高い流束で中空糸膜の外側から内側に向かって液体を流すと、中空糸膜を圧縮して潰してしまうが、中空糸膜の内側から外側に向かって液体を流すことで、高流束での洗浄を実現でき、高い洗浄効果を得ることができる。
(工程d)
<水リンス>
工程dでは水による膜モジュール2のリンスを行うが、これは工程cの薬液洗浄の後に残存した薬液を洗浄することが目的である。水リンスの方法は、工程bと同様の方法を実施すればよい。
(工程e)
<酸薬液洗浄>
工程eでは膜モジュール2の膜の2次側から1次側に酸性の薬液cを注入し、工程cでは洗浄できなかった分離膜に残存するファウリング成分を除去する。
薬液cのpHは0以上、4.0以下とすることが好ましく、1.0以上3.0以下とすることがより好ましい。pHは塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クエン酸、シュウ酸、アスコルビン酸および乳酸からなる群より選択される少なくとも1種の化合物で調製する。pHが低いほど洗浄力が高まるが、pHが0未満の条件では、膜、膜モジュール部材、配管などが劣化する場合がある。一方、pHが4を超える条件では、酸性度が不十分なため、洗浄効果が不十分となる。
薬液の温度は20℃以上70℃以下とすることが好ましく、40℃以上60℃以下とすることがさらに好ましい。薬液の温度が20℃未満だと十分な洗浄効果を発揮しない場合がある。一方、70℃を超えると膜、膜モジュール部材、配管などが劣化する場合があり、好ましくない。
2次側から1次側への薬液の注入流束は、原液の性状や、分離膜のファウリング状態に応じて適宜設定すればよいが、工程aにおけるクロスフローろ過時のろ過流束の1.5倍以上、10倍以内が好ましく、2.0倍以上、4.0倍以内がより好ましい。2次側から1次側への薬液の注入流束が1.5倍未満だと、洗浄効果が低くなるため好ましくない。また2次側から1次側への薬液の注入流束が10倍を超えると動力コストが高くなり、薬液使用液が大量に必要となるため、好ましくない。更に、膜モジュールの膜の二次側から一次側に注入した初期の酸薬液は汚れ成分が多量に含まれているため、再利用することなく、廃棄することで、膜への再付着を防止でき、より高い洗浄効果を得られる。廃棄時間としては、5分〜10分程度実施することが好ましい。
分離膜が中空糸膜であれば、工程aのろ過を、中空糸膜の外周側から内周側に向かってろ過する外圧式ろ過とし、工程bの水リンスおよび工程cの薬液洗浄を、中空糸膜の内周側から外周側に向かって水または薬液を流すことが好ましい。この際、逆洗の流束は、中空糸膜の内側面積あたりで換算した流束が、4.0m/m/d以上10.0m/m/d以下とすることが好ましく、7.0m3/m2/d以上10.0m/m/d以下とすることがさらに好ましい。工程bおよび工程cにおいて、高い流束で中空糸膜の外側から内側に向かって液体を流すと、中空糸膜を圧縮して潰してしまうが、中空糸膜の内側から外側に向かって液体を流ことで、高流束での洗浄を実現でき、高い洗浄効果を得ることができる。
(工程f)
<水リンス>
工程fでは水による膜モジュール2のリンスを行うが、これは工程eの薬液洗浄の後に残存した薬液を洗浄することが目的である。水リンスの方法は、工程bと同様の方法を実施すればよい。
<洗浄補助剤>
上記の薬液A、Bには、アルカリ、酸化剤以外に、また、薬液Cには酸以外に、洗浄補助剤として界面活性剤、酵素、キレート剤、ポリリン酸塩、を含有していることが好ましい。界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤などがあるが、ノニオン性界面活性剤が特に好ましく、キレート剤はEDTA、酵素はプロテアーゼ、マンナナーゼ、β-グルカナーゼが特に好ましい。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリソルベート(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン化ヒマシ油等が挙げられる。ノニオン系界面活性剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。タンパク質、多糖類、脂質などのファウリング物質は、分子中の疎水性部分が分離膜に付着していると考えられる。そのため界面活性剤の疎水性部分(親油性部分)とファウリング物質の疎水性部分との相互作用や、界面活性剤の水中への溶解性が洗浄性に影響する。ノニオン系界面活性剤の親水性親油性バランスを表すHLBは12以上18以下とすることが好ましく、13以上17以下とすることがさらに好ましい。HLBがこの範囲だと界面活性剤の親水性と親油性のバランスに優れ、洗浄効果が高まる。
薬液洗浄に用いる洗浄補助剤の濃度は0.05%以上3%以下とすることが好ましく、0.1%以上1%以下とすることがさらに好ましい。また、界面活性剤については種類により臨界ミセル濃度が異なるが、十分な洗浄効果を発揮するためには臨界ミセル濃度以上とすることが好ましい。
<膜モジュール>
本発明で使用する膜モジュールの種類は特に限定されないが、中空糸膜モジュールは一般的に比表面積が大きく、単位時間当たりのろ過可能液量が多いこと、また逆洗が可能であることなどから、好ましい。
<分離膜>
分離膜の構造としては特に限定はされないが、例えば、全体的に孔径が一様な対称膜や、膜の厚み方向で孔径が変化する非対称膜、強度を保持するための支持層と対象物質の分離を行うための分離機能層とを有する複合膜などが挙げられる。
分離膜は、以下(A)から(D)のいずれか一つ以上を満たすことが好ましく、全てを満たすことがより好ましい。
(A)分離膜が疎水性高分子を含有し、孔径100nm未満の細孔容積V2が0.02cm/g以上0.1cm/g未満かつ、孔径100nm以上の細孔容積V1が0.1cm/g以上であり、細孔容積V2と細孔容積V1の比であるV1/V2が3以上60以下であること。
(B)分離膜の破断伸度が38%以上であること。
(C)分離膜を125℃の水蒸気雰囲気で20時間加熱処理した時の中空糸膜長の収縮率が0.5%以上であること。
(D)分離膜が親水性高分子を含有し、前記親水性高分子は、N種類のモノマー単位1,2,・・・i・・・Nから構成される共重合体を含有し、下記式(1)に基づいて算出される前記親水性高分子の水和エネルギー密度が、40〜70cal・mol−1・Å−3であること。
Figure 2021053636
[式(1)中、任意のモノマー単位iの水和エネルギーは、モノマー単位iの水中のエネルギーからモノマー単位iの真空中のエネルギーを減じた値の絶対値であり、Nは、共重合体を構成するモノマー種の総数であり、iは、1以上N以下の整数であり、Nは2以上の整数である。]
以下に詳細を説明する。
(1)疎水性高分子
本発明において、疎水性高分子とは、製膜時に用いる疎水性有機溶媒に溶解するものであれば制限されない。疎水性高分子として、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ酢酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート等のポリエステル類、ポリウレタン類、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリビニルアセタール類、ポリアミド類、ポリスチレン類、ポリスルホン類、セルロース誘導体、ポリフェニレンエーテル類、ポリカーボネート類等の単独成分、これらから選ばれる2種以上のポリマーアロイやブレンド物、又は上記ポリマーを形成するモノマーの共重合体等が挙げられるが、上記の例に限定されるものではない。この中でも、耐熱性、耐薬品性等に優れた樹脂成分として、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂、もしくは、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のスルホン系樹脂が挙げられる。この中でも特に、溶媒との相溶性が高く、均一な製造原液を容易に作製できる、フッ化ビニリデン樹脂が好ましい。フッ化ビニリデン樹脂とは、フッ化ビニリデンホモポリマーおよびフッ化ビニリデン共重合体のうちの少なくとも1つを含有する樹脂を意味する。フッ化ビニリデン樹脂は、複数の種類のフッ化ビニリデン共重合体を含有してもよい。
フッ化ビニリデン共重合体は、フッ化ビニリデン残基構造を有するポリマーであり、典型的にはフッ化ビニリデンモノマーとそれ以外のフッ素系モノマー等との共重合体である。このような共重合体としては、例えば、フッ化ビニル、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、三フッ化塩化エチレンから選ばれた1種類以上のモノマーとフッ化ビニリデンとの共重合体が挙げられる。
また、フッ化ビニリデン樹脂の重量平均分子量は、要求される分離膜の強度と透水性能によって適宜選択すればよいが、重量平均分子量が大きくなると透水性能が低下し、重量平均分子量が小さくなると強度が低下する。このため、重量平均分子量は5万以上100万以下が好ましい。分離膜が薬液洗浄に晒される水処理用途の場合、重量平均分子量は10万以上70万以下が好ましく、さらに15万以上60万以下が好ましい。
分離膜は、フッ化ビニリデン樹脂を主成分として含有することが好ましく、中空糸膜においてフッ化ビニリデン樹脂が占める割合は、80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、95重量%以上であることが更に好ましい。
(2)平均孔径
本発明の分離膜は、平均孔径が10〜10000nmの範囲の細孔を有することが好ましい。細孔の平均孔径は、より好ましくは50〜5000nmの範囲であり、更に好ましくは100〜3000nmの範囲である。平均孔径が100nm以上であると、透過抵抗が大きくなりにくく、ろ過に要する圧力が高くなることを防止でき、例えば微生物粒子を含む液をろ過する場合、微生物粒子の破壊、変形による膜面閉塞、ろ過効率の低下等が起ることを防止できる。また、3000nm以下であると、十分な分画性が得られる。
細孔径は、水銀圧入法により測定することができる。水銀圧入法では、分離膜の連通孔に水銀が圧入されるように水銀に圧力pをかけ、圧力の増分dpに対するセル内の水銀の体積変化dVを測定することによって、次式(A)から、細孔分布関数F(r)を求める。
Figure 2021053636
(ここで、rは細孔半径,σは水銀の表面張力(0.480N/m),θは接触角(140°)を表す。)
平均孔径は、次式(B)によって求めることができる。
Figure 2021053636
(3)細孔容積
孔径100nm未満の細孔は主に分離膜を形成する固形部内の空隙であり、固形部間の微細な空隙も含まれる。孔径100nm以上の細孔は分離膜を形成する固形部間の大きな空隙である。
固形部内の空隙が小さいということは、固形部を構成するポリマー分子がより密に配列していることを意味し、そのような固形部で形成される分離膜は高い破断強度、破断伸度を有する。
また、孔径100nm未満の細孔は発酵液中のタンパク質等の汚れ成分の付着起点となり目詰まりを生じるため、固形部内の空隙が小さいということは発酵液に対して高いろ過性を有し、加えて、香味成分の付着が減ることで、ろ過する発酵液の品種を切り替える際に、臭着が少ない特徴を有する。
一方で、孔径100nm未満の細孔容積が極端に小さい場合、分離膜中の流路が分岐に乏しくなる。固形分間の微細な空隙が部分的な閉塞により消失すると、孔径100nm未満の細孔容積が小さくなりすぎることが多い。
ここで、発酵液のような目詰まりの進行しやすい液体のろ過において、透過可能な流路の膜面積つまり有効膜面積が局所的な目詰まりにより大きく減少する特徴を有する分離膜は、ろ過の進行とともに有効膜面積が加速度的に低下する。そのため、一定量の微細な空隙を残存させることで高いろ過性が付与される。
また、固形部間の空隙の容積、つまり孔径100nm以上の細孔容積が大きいと、分離膜を形成する固形部間の空隙が大きいと、高い純水透過性能を示し、加えて、洗浄時の薬品接触面の入組みが少ないので、薬品による表面変性の膜構造体内部への影響がわずかであり、優れた薬品耐久性を有する。
一方で、孔径100nm以上の細孔容積が一定値以下であることで、良好な機械的強度が得られる。機械的強度の観点から、孔径100nm以上の細孔容積は、0.1cm/g以上1.0cm/g未満であることが好ましい。
すなわち、分離膜において、孔径100nm未満の細孔容積V1が0.02cm/g以上0.1cm/g未満かつ、孔径100nm以上の細孔容積V2が0.1cm/g以上であり、細孔容積V2と細孔容積V1との比V1/V2が3以上60以下であると、その分離膜は機械的強度に優れると共に、薬品洗浄に対する耐久性を併せ持ち、かつ、その分離膜では発酵液のろ過中に目詰まりが発生しにくく、ろ過中の香味成分の付着が少ない。
孔径100nm以上の細孔容積V1は、0.3cm/g以上であることが好ましく、0.35cm/g以上であることがより好ましい。また、孔径100nm以上の細孔容積V1は、0.5cm/g以下であることが好ましく、0.45cm/g以下であることがより好ましい。
孔径100nm未満の細孔容積V2は、0.020cm/g以上であることが好ましく、0.025cm/g以上であることがより好ましく、0.030cm/g以上であることがさらに好ましい。また、孔径100nm未満の細孔容積V2は、0.1cm/g以下であることが好ましく、0.075cm/g以下であることがより好ましく、0.050cm/g以下であることがさらに好ましい。
細孔容積V2と前記細孔容積V1との比V1/V2は3以上であることが好ましい。また、V1/V2は、60以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましく、15以下であることがさらに好ましい。
なお、孔径100nm以上の細孔容積については上記の水銀圧入法により測定すればよく、孔径100nm未満の細孔についてはガス吸着法により測定すればよい。ガス吸着法では、例えば、分離膜に吸着している水等を除去した後、液体窒素温度での窒素ガス吸着測定を行い、相対圧(吸着平衡圧力/液体窒素温度での飽和蒸気圧)0.99の際の窒素ガス吸着量(液体換算)より、分離膜の細孔容積V(cm/g)を測定すればよい。
上記の範囲の中でも、水銀圧入法により測定した平均孔径と細孔容積について、平均孔径未満の孔径の細孔容積が細孔容積全体の60%以上を占める分離膜は、流路の分岐に富み、局所的な目詰まりにより生じる負荷を他の流路に分散するため、発酵液のような目詰まりの進行しやすい液体のろ過に好適である。
(4)球状構造
本発明の実施形態の分離膜において、固形部が球状構造を有することが好ましい。球状構造とは、球状体が連続した構造である。分離膜の内部がこのような構造を有することにより、固形部(球状体)間の空隙が収縮しにくく、高い純水透過性能を維持できる。また、球状構造により、従来の網目状の構造に比べて高い強度および高い透水性能を実現することができる。
また、球状構造はフッ化ビニリデン樹脂を含有することが好ましく、分離膜は球状構造を有すると共に中空糸膜であることが好ましい。中空糸膜の一部分を図4に例示する。分離膜の内部とは、分離膜が図4に示す中空糸膜30である場合は、外表面31を除いた部分、つまり中空糸膜の実質的な内部および/または内表面32をいう。
球状構造の一部分を図5に模式的に示す。図5の球状構造40においては、複数の球状体41が連結している。球状体41は、略球体乃至略楕円体である。図5に示すように、球状体241は他の球状体41と連結しているため、その球面または楕円体面の全体を観察することはできない。しかし、外形に表れている形状から、その直径、長径および短径を推定することができる。
球状体間の連結は、球状体同士が直接接着することで形成されていてもよいし、球状体の間の非球状な部分(くびれと言い換えられる)42によって形成されていてもよい。球状体間の空隙43は、上述した固形部間の空隙である。固形部について上述したように、球状体内にも微細な空隙が存在する。
前記球状体の平均直径は、0.5〜15μmの範囲にあり、好ましくは0.6〜10μmの範囲にあり、さらに好ましくは、0.8〜8μmの範囲の範囲にある。前記球状体の直径は、中空糸膜の断面および/または内表面を球状構造が明瞭に確認できる倍率で走査型電子顕微鏡等を用いて写真を撮り、10個以上、好ましくは20個以上の任意の球状体の直径を測定し、平均して求める。写真を画像処理装置で解析し、等価円直径の平均を求めることも好ましく採用できる。球状体の密度は10〜10個/mmの範囲が好ましく、より好ましくは10〜10個/mmの範囲である。球状体の密度が10個/mm以上であることで発酵液処理に求められる高い強度が実現でき、10個/mm以下であることで高い純水透過性能が得られる。
なお、球状体の密度は、直径の測定と同様に写真を撮り、単位面積あたりの球状体の個数を計測する。真円率(短径/長径)は好ましくは0.5以上、より好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.7以上である。
(5)親水性高分子
中空糸膜は、N種類のモノマー単位から構成される共重合体を含有し、前記式(1)に基づいて算出される親水性高分子の水和エネルギー密度が、40〜70cal・mol−1・Å−3である親水性高分子を含むことが好ましい。
また、水和エネルギー密度の最も大きいモノマー単位の体積分率が35〜90%であり、水和エネルギー密度の差が、10〜100cal・mol−1・Å−3である。
「モノマー単位」とは、モノマーを重合して得られる単独重合体又は共重合体の中の繰り返し単位を指す。例えば、疎水性モノマー単位とは、疎水性モノマーを重合して得られる単独重合体又は共重合体の中の繰り返し単位を指す。
「N種類のモノマー単位を含有する」とは、共重合体がN種類の繰り返し単位(つまりモノマー単位)を含むことを意味する。Nは2以上の整数であり、モノマー単位iとは、N種類のモノマー単位のうちの任意の1種を指す。例えば、ビニルピロリドン/デカン酸ビニルランダム共重合体は、ビニルピロリドン及びデカン酸ビニルの2種類のモノマー単位を含有している。
「共重合体」とは、2種類以上のモノマー単位から構成される重合体を意味する。
「水和エネルギー」とは、溶質を水溶液に入れたときに系が得られるエネルギー変化を意味する。
「モノマー単位の水和エネルギー」は、モノマー単位の水中のエネルギーから当該モノマー単位の真空中のエネルギーを引いた値の絶対値を意味する。
「水和エネルギー密度」とは、単位体積当たりの水和エネルギーを意味する。例えば、モノマーの場合、下記式(2)で定義される数値である。
任意のモノマー単位iの水和エネルギー密度(cal・mol−1・Å−3)=(当該モノマー単位iの水和エネルギー)/(当該モノマー単位iの体積) ・・・式(2)
「水和エネルギー密度の差」とは、下記式(3)で定義される数値を意味する。
水和エネルギー密度の差(cal・mol−1・Å−3)=(モノマー単位の水和エネルギー密度の最も大きいモノマー単位の水和エネルギー密度)−(モノマー単位の水和エネルギー密度の最も小さいモノマー単位の水和エネルギー密度) ・・・式(3)
「水和エネルギー密度の最も大きいモノマー単位j」とは、親水性高分子を構成するモノマー単位の中で、前記式(2)で定義される前記水和エネルギー密度が最も大きいモノマー単位を意味する。
「水和エネルギー密度の最も小さいモノマー単位k」とは、親水性高分子を構成するモノマー単位の中で、前記式(2)で定義される前記水和エネルギー密度が最も小さいモノマー単位を意味する。
前記モノマー単位の分子モデルについては、例えば、モノマー単位が次式(I)の化学式で示される構造である場合、次式(II)の化学式で示される構造を計算対象とする。すなわち、側鎖Rが結合した側の炭素末端はメチル基(次式(II)中(a))でターミネートし、側鎖Rが結合していない側の炭素末端は水素原子(次式(II)中(b))でターミネートした構造を用いる。
Figure 2021053636
Figure 2021053636
前記式(1)中のモノマー単位の真空中のエネルギー及び水中のエネルギーは、以下の方法で計算することができる。
はじめに、前記モノマー単位の分子モデルを構造最適化する。構造最適化には、密度汎関数理論を使用する。汎関数にはB3LYP、基底関数には6―31G(d,p)を使用する。さらにインプットファイルに記載するキーワードとして、optを設定する。
次に、前記構造最適化された構造に対して、真空中のエネルギー及び水中のエネルギーを計算する。真空中のエネルギー算出は、密度汎関数理論を使用する。汎関数にはB3LYP、基底関数には6―31G(d,p)を使用する。水中のエネルギー算出は、密度汎関数理論を使用する。汎関数にはB3LYP、基底関数には6―31G(d,p)を使用する。さらに水中のエネルギーを算出するために、連続誘電体モデルを利用し、キーワードとして、以下を使用する。
SCRF=(PCM、G03Defaults、Read、Solvent=Water)
Radii=UAHF
Alpha=1.20
真空中及び水中のSCFエネルギーを求めることで前記モノマー単位の水和エネルギーが決定する。ここで、SCFエネルギーとは、”SCF Done:”と記載された行に書かれたEの値である。
前記エネルギー計算には、Gaussian社製の量子化学計算ソフトGaussian09(登録商標)を使用する。
前記親水性高分子において、前記親水性高分子の水和エネルギー密度は、上記式(1)に基づいて定義される。
前記式(1)中の前記モノマー単位の体積は、前記構造最適化された構造の体積である。モノマー単位の体積は、例えば、BIOVIA製のMaterialsStudio(登録商標)のConnollysurface法を利用して算出することができる。その際、設定するパラメータは以下の通りである。
Gridresolution=Coarse
Gridinterval=0.75Å
vdWfactor=1.0
Connollyradius=1.0Å
前記親水性高分子の水和エネルギー密度は、40〜70cal・mol−1・Å−3であり、好ましくは、43〜60cal・mol−1・Å−3であり、より好ましくは、45〜55cal・mol−1・Å−3である。いずれの好ましい下限値もいずれの好ましい上限値と組み合わせることができる。
前記親水性高分子を構成するモノマー種の総数Nは、特に上限として制限はないが、2〜5が好ましく、2〜3がより好ましく、2が最も好ましい。
前記親水性高分子全体の水和エネルギー密度が40cal・mol−1・Å−3以上、70cal・mol−1・Å−3以下であることにより、前記親水性高分子と前記親水性高分子の吸着水、および発酵液中の不純物と前記発酵液中の不純物の吸着水の構造が安定すると考えられる。その結果、中空糸膜表面に存在する前記親水性高分子と発酵液中の不純物との静電相互作用、あるいは疎水性相互作用等が小さくなり、発酵液中の不純物の中空糸膜への付着が抑制される。
前記式(1)及び下記式(4)のモノマー単位のモル分率は、親水性高分子を構成するモノマー単位の総数における各種モノマー単位の数の占める割合である。後述のとおり、核磁気共鳴(NMR)装置で測定してピーク面積から算出する。ピーク同士が重なる等の理由でNMR測定による前記モル分率の算出ができない場合は、元素分析により前記モル分率を算出してもよい。
Figure 2021053636
[前記式(4)中、N及びiは、前記定義に同じである。]
中空糸膜は、後述のように疎水性高分子の相分離と、その後の親水性高分子の導入で形成されることで、疎水性高分子で構成された球状構造の集合体と、その球状構造の表面に付着した親水性高分子と、を有する。
前記親水性高分子の数平均分子量は、発酵液中の不純物の付着を抑制するために2,000以上が好ましく、3,000以上がより好ましい。また、膜への高い導入効率のために、親水性高分子の数平均分子量は、1,000,000以下が好ましく、200,000以下がより好ましく、100,000以下がさらに好ましい。
前記親水性高分子において、前記式(2)に基づいて算出される水和エネルギー密度が最も大きいモノマー単位(説明の便宜上モノマー単位jと称する)の体積分率は、35%〜90%であり、40%〜80%であることが好ましく、40%〜75%であることがより好ましく、40%〜70%であることがさらに好ましい。いずれの好ましい下限値もいずれの好ましい上限値と組み合わせることができる。
前記体積分率が前記範囲にある場合、親水性モノマー単位と疎水性モノマー単位の両方の効果によって、中空糸膜表面に存在する前記親水性高分子と前記親水性高分子の吸着水が発酵液中の不純物と発酵液中の不純物の吸着水に及ぼす相互作用が適切な大きさとなると考えられ、結果として発酵液中の不純物の付着が抑制される。
また、前記親水性高分子において、水和エネルギー密度の差は、下記式(5)で算出される。
(水和エネルギー密度の差)cal・mol−1・Å−3
(水和エネルギー密度の最も大きいモノマー単位jの水和エネルギー密度)−(水和エネルギー密度の最も小さいモノマー単位kの水和エネルギー密度) ・・・式(5)
前記水和エネルギー密度の差は、10〜100cal・mol−1・Å−3であり、10〜80cal・mol−1・Å−3であることが好ましく、10〜60cal・mol−1・Å−3であることがより好ましい。
前記水和エネルギー密度の差が前記範囲にある場合、中空糸膜表面に存在する親水性高分子の親水性モノマー単位が吸着水保持の役割を担い、疎水性モノマー単位が吸着水の運動性制御の役割を担うことができると考えられる。その結果、材料表面に存在する前記親水性高分子と前記親水性高分子の吸着水が発酵液中の不純物と発酵液中の不純物の吸着水に及ぼす相互作用が適切な大きさとなると考えられ、結果として発酵液中の不純物の付着が抑制される。
前記2種類以上のモノマー単位は、疎水性モノマー単位及び親水性モノマー単位であることが好ましい。
「疎水性モノマー単位」とは、水和エネルギー密度が親水性モノマー単位より小さいモノマー単位を意味し、例えば、カルボン酸ビニル、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル及びスチレン誘導体からなる群から選択されるモノマーを重合して得られる、単独重合体又は共重合体の中の繰り返し単位が好適に用いられる。これらのうち、親水性モノマー単位とのバランスがとりやすく、材料表面に存在する吸着水の運動性を制御しやすいことから、カルボン酸ビニルを重合して得られる単独重合体又はカルボン酸ビニルを共重合して得られる共重合体の中の繰り返し単位がより好ましく、カルボン酸ビニルを重合して得られる単独重合体の繰り返し単位がさらに好ましい。
「親水性モノマー単位」とは、疎水性モノマー単位より水和エネルギー密度が大きいモノマー単位を意味し、例えば、アリルアミン、ビニルアミン、N−ビニルアミド、N−ビニルラクタム及びN−アクリロイルモルホリンからなる群から選択されるモノマーを重合して得られる、単独重合体又は共重合体の中の繰り返し単位が好適に用いられる。これらのうち、材料表面に存在する吸着水との相互作用が強すぎず、疎水性モノマー単位とのバランスが取りやすいことから、N−ビニルラクタムを重合して得られる単独重合体又はN−ビニルラクタムを共重合して得られる共重合体の中の繰り返し単位が好ましく、N−ビニルラクタムを重合して得られる単独重合体の繰り返し単位がより好ましい。その中でも、ビニルピロリドンを重合して得られる単独重合体又はビニルピロリドンを共重合して得られる共重合体の中の繰り返し単位がさらに好ましく、ビニルピロリドンを重合して得られる単独重合体が最も好ましい。
なお、前記親水性高分子の作用・機能を阻害しない程度、すなわち前記[8]を満たす範囲において、他のモノマー、例えば、グリシジル基のような反応性基を含むモノマーが共重合されていてもよい。
前記親水性高分子における親水性モノマー単位と疎水性モノマー単位の配列としては、例えば、グラフト共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、ランダム共重合体等が挙げられる。これらのうち、発酵液中の不純物の付着抑制機能が高い点において好ましいのは、ブロック共重合体、交互共重合体、ランダム共重合体であり、1分子の中で親水性と疎水性の適度なバランスを有する点においてより好ましいのは、ランダム共重合体又は交互共重合体である。ブロック共重合体や交互共重合体、ランダム共重合体が、グラフト共重合体、例えば主鎖が親水性モノマー単位、側鎖が疎水性モノマー単位からなるグラフト共重合体よりも発酵液中の不純物の付着抑制機能が高い理由は、グラフト共重合体では、主鎖にグラフトしたモノマー単位部分がタンパク質等と接触する機会が多いため、共重合ポリマーとしての特性よりも、グラフト鎖部分の特性が大きく影響するためと考えられる。また、交互共重合体、ランダム共重合体が、ブロック共重合体より親水性と疎水性の適度なバランスの点でより好ましいのは、ブロック共重合体では、それぞれのモノマー単位の特性がはっきり分かれるためではないかと考えられる。
上記親水性高分子は、例えば、アゾ系開始剤を用いたラジカル重合法に代表される連鎖重合法により合成できるが、合成法はこれに限られるものではない。
上記親水性高分子は、例えば、以下の製造方法により製造されるが、この方法に限られるものではない。
親水性モノマー、疎水性モノマーをそれぞれ所定量と、重合溶媒及び重合開始剤とを混合し、窒素雰囲気下で所定温度にて所定時間、攪拌しながら混合し、重合反応させる。親水性モノマー、疎水性モノマーの量比は、共重合体における親水性モノマー単位のモル分率に応じて決めることができる。反応液を室温まで冷却して重合反応を停止し、ヘキサン等の溶媒に投入する。析出した沈殿物を回収し、減圧乾燥することで、親水性高分子を得ることができる。
上記重合反応の反応温度は、30〜150℃が好ましく、50〜100℃がより好ましく、70〜80℃がさらに好ましい。
上記重合反応の圧力は、常圧であることが好ましい。
上記重合反応の反応時間は、反応温度等の条件に応じて適宜選択されるが、1時間以上が好ましく、3時間以上がより好ましく、5時間以上がさらに好ましい。反応時間が短いと、共重合体に大量の未反応モノマーが残存しやすくなる場合がある。一方、反応時間は24時間以下が好ましく、12時間以下がより好ましい。反応時間が長くなると、二量体の生成等副反応が起こりやすくなり、分子量の制御が困難になる場合がある。
上記重合反応に用いる重合溶媒は、モノマーと相溶する溶媒であれば特に限定はされず、例えば、ジオキサン若しくはテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、ベンゼン若しくはトルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アミルアルコール若しくはヘキサノール等のアルコール系溶媒又は水等が用いられるが、毒性の点から、アルコール系溶媒又は水を用いることが好ましい。
上記重合反応の重合開始剤としては、例えば、光重合開始剤や熱重合開始剤が用いられる。ラジカル、カチオン又はアニオンのいずれを発生する重合開始剤を用いてもよいが、モノマーの分解を起こさないという点で、ラジカル重合開始剤が好適に使用される。ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル若しくはアゾビス(イソ酪酸)ジメチル等のアゾ系開始剤又は過酸化水素、過酸化ベンゾイル、ジ−tert−ブチルペルオキシド若しくはジクミルペルオキシド等の過酸化物開始剤が使用される。
重合反応停止後、重合反応溶液を投入する溶媒としては、共重合体が沈殿する溶媒であれば得に限定はされず、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン若しくはデカンのような炭化水素系溶媒又はジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル若しくはジフェニルエーテルのようなエーテル系溶媒が用いられる。
(6)その他
本発明の分離膜が中空糸膜の形状をとる場合、中空糸の外径と膜厚は、膜の強度を損なわない範囲で、中空糸膜内部長手方向の圧力損失を考慮し、膜モジュールとして透水量が目標値になるように決めればよい。即ち、外径が、太ければ圧力損失の点で有利になるが、充填本数が減り、膜面積の点で不利になる。一方、外径が細い場合は充填本数を増やせるので膜面積の点で有利になるが、圧力損失の点で不利になる。また、膜厚は強度を損なわない範囲で薄い方が好ましい。従って、おおよその目安を示すならば、中空糸膜の外径は、好ましくは0.3〜3mm、より好ましくは0.4〜2.5mm、更に好ましくは、0.5〜2.0mmである。また、膜厚は、好ましくは外径の0.08〜0.4倍、より好ましくは0.1〜0.35倍、更に好ましくは0.12〜0.3倍である。
本発明の分離膜は実質上、マクロボイドを有しないことが好ましい。ここで、マクロボイドとは、分離膜断面において、膜実質部分に観察される長径が50μm以上の空孔である。実質上有しないとは、断面において10個/mm以下、より好ましくは5個/mm以下、であり、全く有しないことが、もっとも好ましい。
本発明の分離膜は、10kPa,25℃における透水性能が0.1〜10m/m・h、好ましくは0.2〜5m/m・h、更に好ましくは0.4〜2m/m・hの範囲にあり、本発明の分離膜が中空糸膜の形状をとる場合、中空糸の破断強度が0.3〜3kg/本、好ましくは0.4〜2.5kg/本、更に好ましくは0.5〜2kg/本の範囲にあり、かつ、破断伸度が20〜1000%、好ましくは40〜800%、更に好ましくは60〜500%の範囲にあることが好ましい。この範囲にあることにより、通常の使用条件で、十分な透水性能を発揮するとともに、中空糸膜の破断を起こさない。
<分離膜の製造方法>
次に、本発明の分離膜の中でも特に疎水性高分子としてポリフッ化ビニリデン系樹脂から中空糸膜を得るための方法について述べるが、本発明はこれらの製造方法例によってなんら限定されるものではない。上述の中空糸膜の製造方法の一例について、以下に説明する。以下に説明する製造方法は、
(a)疎水性高分子を含有する溶液を相分離することにより中空糸を形成し、溶媒浸漬で後処理する工程
(b)前記中空糸に親水性高分子を導入する工程
を有する。

(a)中空糸を形成し溶媒浸漬で後処理する工程
ポリフッ化ビニリデン系樹脂から中空糸膜を製造する方法としては、熱誘起相分離法、非溶媒誘起相分離法、溶融抽出法、延伸開孔法等が挙げられるが、このうち熱誘起相分離法あるいは非溶媒誘起相分離法を利用することが好ましい。
熱誘起相分離とは、高温で溶解した樹脂溶液を冷却することにより固化せしめる相分離であり、非溶媒誘起相分離とは、樹脂溶液を非溶媒に接触させることにより固化せしめる相分離である。
熱誘起相分離法を利用して中空糸膜を製造する場合、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液の溶媒としては、樹脂の貧溶媒が好ましく、シクロヘキサノン、イソホロン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド等のアルキルケトン、エステル等の比較的樹脂の溶解度が高い貧溶媒が特に好ましく採用される。
また非溶媒誘起相分離法を利用して中空糸膜を製造する場合、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液の溶媒としては、樹脂の良溶媒が好ましく、この良溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン等の低級アルキルケトン、エステル、アミド等およびその混合溶媒が挙げられる。他方、非溶媒は、樹脂の非溶媒であり、水、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、四塩化炭素、o−ジクロルベンゼン、トリクロルエチレン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、低分子量のポリエチレングリコール等の脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族多価アルコール、芳香族多価アルコール、塩素化炭化水素、またはその他の塩素化有機液体およびその混合溶媒等が挙げられる。
熱誘起相分離法および非溶媒誘起相分離法では、樹脂の溶解度が高い良溶媒あるいは貧溶媒を用いることにより、樹脂と溶媒を分子レベルで混合させられるため、固化させた際に、樹脂の分子間に溶媒分子が介在する。そのため形成される分子間の空隙が多くなる。よって発酵液のろ過性に優れる細孔容積範囲に制御するために、前記相分離法により得られた分離膜に分子間の空隙を削減する後処理を行うことが好ましく採用される。
分子間の空隙を削減する後処理としては、フッ化ビニリデン樹脂の溶解度が比較的高い貧溶媒に一定温度で短時間浸漬させ、固形部の外表面構造のみを溶解させた状態でフッ化ビニリデン樹脂の非溶媒により置換を行う溶媒浸漬処理が好ましい。溶媒浸漬処理では固形部内の空隙を閉塞させる一方で、固形部間の空隙に対してはほとんど影響を与えないと考えられ、発酵液のような目詰まりの生じやすい液体のろ過に適した細孔構造となる。
一方で、熱誘起相分離法または非溶媒誘起相分離法により得られた分離膜の融点Tm付近の高温で分離膜を熱処理すると、分離膜を形成する固形部内の非晶部でポリマーのミクロブラウン運動が活発化した後、一部で結晶化したり、あるいは固形部内の分離膜の融点より低温で溶融する結晶部が、一度溶融した後、より高温で溶融する結晶部に再結晶化したりすることで、固形部が収縮する。このような結晶部および非晶部には微小な空隙が存在するため、収縮により空隙が埋まることで、発酵液中のタンパク質等の汚れ成分の付着起点を削減する効果が期待される。
しかし、熱処理時に膜全体の収縮により固形部間の微小空隙が閉塞することで、流路の分岐を乏しくする効果が生じると考えられるため、発酵液のような目詰まりの生じやすい液体のろ過には適していない。固形部間の微小空隙を定量する手法としては分離膜の融点をTmとしたときTm−60℃≦T<Tm−40℃を満たす温度Tで熱処理した時の中空糸膜の収縮率を測定することが挙げられる。
なお、ここで分離膜の融点Tmは、示差走査熱量測定(DSC測定)装置を用いて乾燥状態の分離膜を速度10℃/minで昇温させたときのピークトップの温度であり、ポリフッ化ビニリデンからなる中空糸膜の場合175℃付近である。フッ化ビニリデン樹脂からなる中空糸膜の場合、125℃の水蒸気雰囲気において20時間加熱処理した時の中空糸膜長の収縮率が0.5%以上であると十分な固形部間の微小空隙を有している。より好ましい収縮率としては1.0%以上であり、2.0%以上であるとさらに好ましい。一方で、過度な熱収縮は、糸切れやモジュール内部での変形を誘引することから25%以下であることが好ましい。


なお、熱誘起相分離法には主に2種類の相分離機構がある。一つは高温時に均一に溶解した樹脂溶液が、降温時に溶液の溶解能力低下が原因で樹脂の濃厚相と希薄相に分離する液−液相分離法、もう一つが高温時に均一に溶解した樹脂溶液が、降温時に樹脂の結晶化が起こりポリマー固体相とポリマー希薄溶液相に相分離する固−液相分離法である。
前者の方法では主に三次元網目構造が、後者の方法では球状構造が形成される。本発明では上述した理由から、後者の相分離機構により球状構造を形成させることがより好ましい。この相分離機構によると、ラメラ構造を含む球晶(球状体)と、1つのラメラ構造から他のラメラ構造につながるポリマー鎖とを有する球状構造が形成される。球状構造の場合、固形部がバルキーであるため、固形部間の空隙が収縮しにくく、高い純水透過性能を維持できることも好ましい理由である。このことから固−液相分離が誘起される樹脂濃度および溶媒を選択することが好ましく採用される。また冷却する際は冷却浴を用いることが好ましく、樹脂溶液の溶媒と同じか、固化を速くさせる等のために前記樹脂の非溶媒を低濃度で含有することが好ましい。
以上の理由から本発明の実施形態の分離膜の製造方法としては、球状構造を形成させるため熱誘起相分離法の固−液相分離法がより好ましく採用され、得られた分離膜に溶媒浸漬処理することが好ましい。
ここで、本発明の分離膜が中空糸膜の形状をとる場合、非溶媒誘起相分離法あるいは熱誘起相分離法を利用して製造された中空糸膜は、空隙を拡大し純水透過性能を向上させるために延伸することも好ましく採用される。延伸の条件は、好ましくは50〜120℃、より好ましくは60〜100℃の温度範囲で、好ましくは1.1〜4倍の延伸倍率である。
温度が50℃未満では、安定して均質に延伸することが困難であり、120℃を超える温度では、中空糸膜が軟化し中空部がつぶれてしまうことがある。また、延伸は温度制御が容易であるため液体中で行うことが好ましいが、スチーム等の気体中で行っても構わない。液体としては水が簡便で好ましいが、90℃程度以上で延伸する場合には、低分子量のポリエチレングリコール等を用いることも好ましい。
分離膜の熱処理については一般的に知られているが、従来の技術では、熱処理温度以下での寸法安定性のために利用されている。そのため本発明に比べ熱処理温度は低く、発酵液に対する優れたろ過性能を分離膜に付与することはない。
(b)親水性高分子の導入工程
親水性高分子の種類は中空糸膜の欄で説明したとおりである。親水性高分子を導入する方法として、親水性高分子を溶解した水溶液を中空糸膜に通液、もしくは浸漬後、放射線照射や熱処理を行い、親水性高分子を不溶化させる方法、または中空糸膜に存在する反応性基との化学反応により共有結合を形成する方法が挙げられる。
親水性高分子水溶液の濃度は、小さすぎると十分な量の親水性高分子が表面に導入されない。したがって、上記水溶液中の共重合体濃度は10ppm以上が好ましく、100ppm以上がより好ましく、500ppm以上がもっとも好ましい。ただし、水溶液の親水性高分子の濃度が大きすぎると、モジュールからの溶出物の増加が懸念されるため、上記水溶液中の共重合体濃度は100,000ppm以下が好ましく、10,000ppm以下がより好ましい。なお、上記親水性高分子の数平均分子量は、後述のとおり、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定される。
なお、上記親水性高分子が水に難溶又は不溶である場合は、中空糸を溶解しない有機溶媒又は水と相溶し、かつ中空糸を溶解しない有機溶媒と水との混合溶媒に親水性高分子を溶解させてもよい。上記有機溶媒又は上記混合溶媒に用いうる有機溶媒の具体例として、メタノール、エタノール又はプロパノール等のアルコール系溶媒が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、上記混合溶媒中の有機溶媒の割合が多くなると、中空糸が膨潤し、中空糸膜の孔径等が変化してしまう可能性がある。したがって、上記混合溶媒中の有機溶媒の重量分率は60%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、1%以下が最も好ましい。
前記放射線照射にはα線、β線、γ線、X線、紫外線又は電子線等を用いることができる。ここで、安全性や簡便さの点から、γ線や電子線を用いた放射線法が好ましい。放射線の照射線量は15kGy以上が好ましく、25kGy以上がより好ましい。15kGy以上にすることで親水性高分子を効果的に導入することができる。また、上記照射線量は100kGy以下が好ましい。照射線量が100kGyを超えると、共重合体が3次元架橋やカルボン酸ビニルモノマー単位のエステル基部分の分解等を起こしやすくなる場合があるためである。
放射線を照射する際の架橋反応を抑制するため、抗酸化剤を用いてもよい。抗酸化剤とは、他の分子に電子を与えやすい性質を持つ物質のことを意味し、例えば、ビタミンC等の水溶性ビタミン類、ポリフェノール類又はメタノール、エタノール若しくはプロパノール等のアルコール系溶媒が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの抗酸化剤は単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。抗酸化剤を用いる場合、安全性を考慮する必要があるため、エタノールやプロパノール等、毒性の低い抗酸化剤が好適に用いられる。
また、反応性基との化学反応により共有結合を形成する方法として、具体的には、材料の基材表面のアミノ基、スルホン酸基、ハロゲン化アルキル基等の反応性基と、共重合体の主鎖の末端や側鎖に導入された反応性基とを反応させることによって達成される。
材料表面に、反応性基を導入する方法としては、例えば、反応性基を有するモノマーを重合して表面に反応性基を有する基材を得る方法や、重合後、オゾン処理、プラズマ処理によって反応性基を導入する方法等が挙げられる。
上記共重合体の主鎖の末端に反応性基を導入する方法としては、例えば、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]や4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)のような反応性基を有する開始剤を使用する方法等が挙げられる。
上記共重合体の側鎖に反応性基を導入する方法としては、上記共重合体の作用・機能を阻害しない程度において、メタクリル酸グリシジルのような反応性基を有するモノマーを共重合する方法等が挙げられる。
前記親水性高分子の中空糸膜への導入量は、前述のとおり、全反射赤外分光法(ATR−IR)により定量可能である。また、必要に応じて、X線電子分光法(XPS)等によっても定量可能である。
さらに、前記製造方法で製造された中空糸膜は、中空糸膜モジュールとして用いることができる。モジュールとは、中空糸膜を複数本束ねて円筒状の容器に納め、両端または片端をポリウレタンやエポキシ樹脂等で固定し、透過水を集水できるようにしたものや、平板状に中空糸膜の両端を固定して透過水を集水できるようにしたもののことである。この中空糸膜モジュールの原液側にポンプや水位差などの加圧手段を設けたり、透過液側にポンプまたはサイフォン等による吸引手段を設けたりすることにより、原液である発酵液の膜ろ過を行う分離装置として用いることができる。この分離装置を用いて、発酵液から、精製された透過液を製造することができる。
<中空糸膜の利用>
上述の中空糸膜は、この中空糸膜を用いて本発明の発酵液をろ過する工程に好適に利用される。発酵液は微生物の種類や発酵生産物で特に限定されないが、例えば、ビール、ワイン、清酒、食酢、醤油、アミノ酸発酵液、有機酸発酵液、バイオ医薬品の発酵液などが挙げられ、ろ過によって、発酵液の微生物粒子や濁質等、製品に不要な成分を除去することができる。上述の中空糸膜は、ろ過中の目詰まりが発生しにくく、目詰まり後の薬品洗浄による性能回復性が長期間にわたって維持されるので、これらの用途に好適である。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
以下の実施例では本発明の分離膜が中空糸膜の形状をとる場合について説明する。
<水銀圧入法による中空糸膜の細孔径分布測定>
中空糸膜を次の方法により絶乾した。水で湿潤した状態の中空糸膜は、−20℃で約50時間凍結乾燥した後、さらに常温で約8時間真空乾燥した。水で湿潤していない中空糸膜は、常温で約8時間真空乾燥した。この絶乾中空糸膜を約5mmの長さに切断し、試料重量を電子天秤((株)島津製作所製AW220)で秤量した。細孔径分布はマイクロメリテックス社製ポアサイザー9320により測定した。試験片を装置付属の約5cmのガラス製のセルに封入し減圧下に水銀を注入した後、装置付属の耐圧容器中でオイルを介して約4kPa〜207MPa(細孔径約7nm〜350μmに対応)の範囲で昇圧することで行った。水銀の表面張力は484dyn/cm、水銀の接触角は141.3°を用いて計算した。孔径100nm以上の細孔容積をV1とした。
<ガス吸着法による中空糸膜の細孔容積測定>
減圧乾燥した中空糸膜について約10cmの長さに切断し、試料重量を電子天秤((株)島津製作所製AW220)で秤量した。自動比表面積・細孔径分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製、BELSORP−mini II)を用い、窒素ガス吸着量を測定した。付属の解析プログラムを用いてBET比表面積を算出した。孔径100nm未満の細孔容積をV2とした。
<膜モジュールの作製>
複数本の中空糸膜を約30cmの長さに切断し、ポリエチレンフィルムで巻いて中空糸膜束とした。この中空糸膜束を円筒型のポリカーボネート製モジュールケースに挿入し、両末端をエポキシポッティング剤で固めた。端部を切断して、両末端が開口したモジュールを得た。中空糸膜の本数は、中空糸膜内径基準の膜面積が実施例1〜7、10、11および比較例1〜3では100〜200cm、実施例8、9および比較例4〜9では1000〜2000cm2となるよう適宜設定した。なお、円筒状のモジュールケースには両端部付近の2箇所にポートを設け、中空糸膜の外面を流体が灌流できるようにし、両末端には液の出入り口を有するエンドキャップを装着して、中空糸膜の中空部を流体が灌流できるようにした。
<全糖濃度の測定>
フェノール‐硫酸法により、試料溶液中の全糖を定量した。すなわち、試料と5%フェノール液を同量ずつ混合し、次いで前記混合物の1.5倍量の濃硫酸を速やかに加え撹拌した。一定温度(20〜30℃)で20〜30分保った。その後、波長480nmにおける混合溶液の吸光度を、紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製、UV2450)を用いて測定した。一方で、グルコース標準液により検量線を作成し、得られた検量線を用いて、試料溶液中の全糖濃度(グルコース換算値)を算出した。
<タンパク質濃度の測定>
試料溶液150μLに、Bradford試薬であるCoomassie(Bradford) Protein Assay Reagent(Thermo Fisher Scientific社製)を1350μL混合し、室温で10分間静置し反応させた。反応後、波長470nmにおける混合溶液の吸光度を、紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製、UV2450)を用いて測定した。一方で、ウシ血清アルブミン標準試料とBradford試薬を前記同様に反応させ、検量線を作成し、得られた検量線を用いて、試料溶液中のタンパク質濃度を算出した。
<ポリフェノール濃度の測定>
試料溶液500μLに、1%フェノール試薬液を2500μL混合し、撹拌後、室温で5分間静置した。続いて、7.5%炭酸ナトリウム水溶液2mLを混合し、撹拌後、室温で60分間静置し、波長765nmにおける混合溶液の吸光度を、紫外可視分光光度計(株式会社日立製作所製、U−2001)を用いて測定した。
<滅菌時の収縮率>
中空糸膜を次の方法により滅菌処理した。中空糸膜を40cmの長さに切断し、オートクレーブ装置(トミー精工社製、LSX−300)を用い、設定温度を125℃とし、20時間の滅菌処理を行った。中空糸膜の長さを測定し、収縮長さを滅菌前の中空糸膜長さで除することで収縮率を算出した。
<最大点応力、破断伸度の測定>
引張試験機((株)東洋ボールドウィン製TENSILON/RTM100)を用いて、フルスケール5kgの荷重でクロスヘッドスピード50mm/分にて測定し求めた。試験片は、試験長50mmを湿潤状態で測定に用いた。
<βグルカンの測定>
βグルカンの測定は、Megazyme社製βグルカン測定キットMixed−linkage beta−glucanを用いて行った。測定は、付属のプロトコールに従って行った。
(参考例1)
重量平均分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマー28重量%とジメチルスルホキシド72重量%を120℃で溶解した。このフッ化ビニリデンホモポリマー溶液を二重管式口金の外側の管から吐出し、同時にジメチルスルホキシド90重量%の水溶液を二重管式口金の内側の管から吐出し、ジメチルスルホキシド85重量%の水溶液からなる温度10℃の浴中で固化させた後、水洗して90℃の水中で1.4倍に延伸した。得られた中空糸膜の孔径100nm未満の細孔容積(V1)は0.213(cm/g)、孔径100nm以上の細孔容積(V2)は0.229(cm/g)であった。
(参考例2)
参考例1で得られた中空糸膜を10℃のジメチルスルホキシドに15分間浸漬し、水により貧溶媒を置換した。得られた中空糸膜の孔径100nm未満の細孔容積(V1)は0.310(cm/g)、孔径100nm以上の細孔容積(V2)は0.030(cm/g)、V1/V2は10.3であった。また、125℃滅菌時の収縮率は5.1%、破断伸度は35%であった。
(参考例3)
ビニルピロリドン/酢酸ビニルランダム共重合体(コリドンVA64;BASF社製)からなる親水性高分子1000ppmを溶解した、0.1重量%エタノール水溶液に、参考例2で作製した中空糸膜を2時間浸漬させた後、25kGyのγ線を照射して中空糸膜にビニルピロリドン/酢酸ビニルランダム共重合体を導入した。なお、ビニルピロリドン/酢酸ビニルランダム共重合体のモノマー単位の比は6/4であり、親水性高分子の水和エネルギー密度/水和エネルギー密度の最も大きいモノマー単位(ビニルピロリドン)の体積分率/ビニルピロリドンと酢酸ビニルとの水和エネルギー密度差は、45.2/60/14である。
(実施例1)
参考例1の中空糸膜を用いて作製した中空糸膜モジュールを使用し、図1のろ過装置でビールのクロスフローろ過を実施した(工程a)。ビールは、ビール酵母を含有した市販の無ろ過ビール「銀河高原ビール」を(以下、評価用ビールと呼称する)使用した。モジュール内にRO水を充填し1時間以上放置した後、中空糸膜の外側のRO水を排出した後、中空部に存在する水を評価用ビールで置換した。容器内に0℃を維持した評価用ビール2Lを用意し、この容器からポンプを介して評価用ビールが中空糸膜の外面を灌流して容器に戻ると同時に、中空糸膜によってろ過されたろ液は評価用ビールが入っている容器とは異なる容器で採取するよう回路を組んだ。その際、モジュールへの評価用ビールの入口圧と出口圧およびろ過側の圧を測定できるようにした。モジュール入口を、評価用ビールが膜面線速度1.5m/secで流れるように、評価用ビールを導入した。また、ろ過流束は、100[L/m/h]になるように調整した。この状態で、中空糸膜外面に評価用ビールを5±3℃で灌流、一部をろ過するクロスフローろ過を継続して実施した。所定の時間毎に入口圧、出口圧およびろ過側の圧力を測定し、膜間圧力差(TMP)が150kPaに上昇するまでろ過を行い、ビール処理量を算出した。評価用ビールは容器内に2L保たれるように適宜追加投入を行った。
TMP=(Pi+Po)/2−Pf とした。
ここで、Piは入口圧、Poは出口圧およびPfはろ過側の圧である。
ビール処理量[L/m]=ろ過流束100[L/m/h]×圧力150kPaまで上昇する時間[h]。
TMPが150kPaまで上昇後、ろ過を停止して排液し、純水によるリンスを実施した(工程b)。純水によるリンスは膜面線速度1.5m/s、ろ過流束100[L/m/h]で5分間実施し、その後100[L/m/h]での逆洗を3分間実施した。
続いて、薬液洗浄(工程c)を行った。薬液洗浄は、50℃の0.3%次亜塩素酸Na水溶液(pH12)で中空糸膜の内側(2次側)から外側(1次側)に向かって140[L/m/h]となる条件で逆ろ過を行い、2回目のビールろ過においてTMPが150kPaに上昇するまでのビール処理量が1回目の90%以上得られるまで膜を洗浄した。最後に、薬液を排液し、続いて純水によるリンスを実施した(工程d)。純水によるリンスは膜面線速度1.5m/s、ろ過流束100[L/m/h]で5分間実施した。その後排水して再度純水によるリンスを実施し、同様の操作を合計3回繰り返した。
前述の工程a〜dを20回繰り返した後のビール処理量から、ビール処理量回復率を算出した。なお、2回目以降の薬品洗浄時間は1回目の洗浄時間を用いて行った。
ビール処理量回復率(%)=ビール処理量(20回目)/ビール処理量(1回目)×100
各ろ過結果(ろ過1回目のビール処理量、1回目の洗浄時間、ろ過20回目のビール処理量、ビール処理量回復率)を表1に示す。
(実施例2)
薬液洗浄(工程c)において、1段階目を50℃の0.04%NaOH水溶液、2段階目を50℃の0.3%次亜塩素酸Na水溶液(pH12)を用いて行った以外は実施例1と同様の方法で行い、表1の結果を得た。なお、1段階目と2段階目の洗浄は同じ時間で行った。
(実施例3)
実施例2において、工程dの後に、50℃の3.0%クエン酸水溶液を用いて、工程bと同じ方法で15分間追加の薬液洗浄を行った(工程e)。更に、薬液を排液し、続いて純水によるリンスを実施した(工程f)。純水によるリンスは膜面線速度1.5m/s、ろ過流束100[L/m/h]で5分間実施した。その後排水して再度純水によるリンスを実施し、同様の操作を合計3回繰り返した。前述の工程a〜fを繰り返した以外は実施例2と同様の方法で行い、表1の結果を得た。
(実施例4)
実施例2の工程cにおいて、薬液洗浄時の中空糸膜の内側(2次側)から外側(1次側)に向かって逆ろ過する流束を250[L/m/h]に変更した以外は実施例2と同様の方法で行い、表1の結果を得た。
(実施例5)
実施例2の工程cにおいて、1段階目の薬液にノニオン系界面活性剤としてTween20(和光純薬工業株式会社製、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)を0.2%添加した以外は実施例2と同様の方法で行い、表1の結果を得た。
(実施例6)
実施例2において、参考例2の中空糸膜を用いた以外は同様の方法で行い、表1の結果を得た。また、使用した膜を切り出して応力測定を行ったところ、最大点応力は1800gf/mm2であった。
(実施例7)
実施例2において、参考例3の中空糸膜を用いた以外は同様の方法で行い、表1の結果を得た。
(比較例1)
実施例2の工程cにおいて、薬液に浸漬した以外は同様の方法で行い、表1の結果を得た。
(比較例2)
実施例2の工程cにおいて、薬液を外側(1次側)から内側(2次側)に向かって流した以外は同様の方法で行い、表1の結果を得た。
(比較例3)
実施例7の工程cにおいて、薬液を外側(1次側)から内側(2次側)に向かって流した以外は同様の方法で行い、表1の結果を得た。
(実施例8)
実施例2において、工程aのろ過を、容器内に保持される評価用ビール量を500mLとし、原水中のβグルカン濃度が、初期濃度の1.3倍まで達するまで行った以外は同様の方法で行い、表1の結果を得た。なお、評価用ビールの循環部に電磁流量計とコリオリ式流量計を直列に並べることでビールの密度を算出し、予め測定したβグルカン濃度に相当するビールの密度に達したところで、βグルカン濃度が1.3倍になったと判断して洗浄を実施した。
(比較例4)
実施例8において、工程cの薬液を外側(1次側)から内側(2次側)に向かって流した以外は同様の方法で行い、表1の結果を得た。
(比較例5)
実施例8において、工程aのろ過を原水中のβグルカン濃度が、初期濃度の1.2倍まで達するまで行った以外は、同様の方法で行い、表1の結果を得た。
(比較例6)
実施例8において、工程aのろ過を原水中のβグルカン濃度が、初期濃度の1.2倍まで達するまで行い、工程cの薬液を外側(1次側)から内側(2次側)に向かって流した以外は、同様の方法で行い、表1の結果を得た。
(実施例9)
実施例6において、工程aのろ過を、容器内に保持される評価用ビール量を50mLとし、原水中のβグルカン濃度が、初期濃度の15倍まで達するまで行った以外は同様の方法で行い、表1の結果を得た。
(比較例7)
実施例9において、工程cの薬液を外側(1次側)から内側(2次側)に向かって流した以外は同様の方法で行い、表1の結果を得た。
(比較例8)
実施例6において、容器内に保持される評価用ビール量を20mLとし、工程aのろ過を原水中のβグルカン濃度が、初期濃度の20倍まで達するまで行った以外は同様の方法で行い、表1の結果を得た。
(比較例9)
比較例8において、工程cの薬液を外側(1次側)から内側(2次側)に向かって流した以外は同様の方法で行い、表1の結果を得た。
(実施例10)
実施例6において、工程cの1段階目を50℃の0.4%NaOH水溶液で行った以外は同様の方法で行い、表1の結果を得た。使用した膜を切り出して応力測定を行ったところ、最大点応力は1800gf/mm2であり、実施例6と比較して強度の低下は見られなかった。
(実施例11)
実施例6において、工程cの2段階目を50℃の1.0%次亜塩素酸Na水溶液(pH12)で行った以外は同様の方法で行い、表1の結果を得た。使用した膜を切り出して応力測定を行ったところ、最大点応力は1800gf/mm2であり、実施例6と比較して強度の低下は見られなかった。
(比較例10)
実施例2において、工程cの1段階目を50℃の0.4%NaOH水溶液で行った以外は同様の方法で行い、表1の結果を得た。使用した膜を切り出して応力測定を行ったところ、最大点応力は1600gf/mm2であった。回復率は実施例10と同等であったが、最大点応力が低下していた。
Figure 2021053636
比較例1〜3のビール処理量、薬液洗浄時間、ビール処理量回復率に対し、実施例1〜7はいずれも優れており。この結果より、本発明のろ過方法により、発酵液を長期間にわたり安定的にろ過を行うことができることがわかった。
本発明の発酵液のろ過方法は発酵工業分野、食品工業分野などでの発酵液のろ過に使用することができる。
1 原液タンク
2 膜モジュール
3 原液ポンプ
4 循環制御バルブ
5 ろ過制御バルブ
6 ろ過液タンク
7 逆洗液タンク
8 逆洗ポンプ
9 逆洗制御バルブ
10 洗浄液タンク
11〜20 バルブ
21〜23 圧力計
24〜26 流量計
30 中空糸膜
31 外表面
32 内表面
40 球状構造
41 球状体
42 非球状な部分(くびれと言い換えられる)
43 空隙

Claims (14)

  1. 下記工程a〜dをこの順に行う発酵液のろ過方法であって
    (a)分離膜を有する膜モジュールにより発酵液をクロスフローろ過する工程と、
    (b)前記分離膜を水でリンスする工程と、
    (c)前記pHが10以上14以下の薬液を分離膜の二次側から一次側に透過させる工程と、
    (d)前記分離膜を水でリンスする工程と
    を含み、
    前記工程aのクロスフロー膜透過液は、全糖濃度が1000mg/L以上かつ100000mg/L以下であり、タンパク質濃度が50mg/L以上かつ10000mg/L以下であり、ポリフェノール濃度が50mg/L以上かつ10000mg/L以下であり、
    前記工程cが、
    (c−1)膜モジュールの二次側から一次側に、pHが10以上14以下であり、かつ酸化剤濃度が0.01%以上である薬液Aを透過させるステップ
    を備える発酵液のろ過方法。
  2. 前記工程cが、
    (c−2)前記ステップc−1の前に、酸化剤濃度が0.01%未満である薬液Bを分離膜の二次側から一次側に透過させるステップ
    をさらに備える請求項1に記載の発酵液のろ過方法。
  3. 前記工程dの後に、
    (e)pHが0以上4以下の薬液Cを分離膜の二次側から一次側に通過させる工程と
    (f)前記工程eの後に、前記膜モジュールを水でリンスする工程と
    をさらに含む請求項1−2のいずれかに記載の発酵液のろ過方法。
  4. 前記工程cおよびeにおいて、二次側から一次側に透過させる薬液の流束(m/m/d)が前記工程aのクロスフローの流束の1.5倍以上、10倍以内である請求項1−3のいずれかに記載の発酵液のろ過方法。
  5. 前記薬液Cが、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クエン酸、シュウ酸、アスコルビン酸および乳酸からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有する水溶液である
    請求項3−4のいずれかに記載の発酵液ろ過方法。
  6. 前記薬液A、BおよびCが、界面活性剤、酵素およびキレート剤のうちの少なくとも1種の洗浄補助剤を含有する
    請求項1−5のいずれか一項に記載の膜モジュールを用いた発酵液のろ過方法。
  7. 原水中の多糖類の濃度Cが、ろ過開始時の濃度Cの1.3倍以上15倍以下の範囲で、工程aから工程bに移る、請求項1−6のいずれかに記載の発酵液のろ過方法。
  8. 前記分離膜が中空糸膜である、請求項1−7のいずれかに記載の発酵液のろ過方法。
  9. 前記分離膜が疎水性高分子樹脂を含有し、
    ガス吸着法で測定される孔径100nm未満の細孔容積V2が0.02cm/g以上0.1cm/g未満かつ、
    水銀圧入法で測定される孔径100nm以上の細孔容積V1が0.1cm/g以上であり、
    前記細孔容積V2と前記細孔容積V1との比V1/V2が3以上60以下である
    る請求項8に記載の発酵液のろ過方法。
    V1:水銀圧入法で測定される孔径100nm以上の細孔容積
    V2:ガス吸着法で測定される孔径100nm未満の細孔容積
  10. 前記分離膜の破断伸度が38%以上である、請求項9に記載の発酵液のろ過方法。
  11. 前記膜を125℃の水蒸気雰囲気で20時間加熱処理した時の中空糸膜長の収縮率が0.5%以上である、請求項9または10に記載の分離膜。
  12. 前記分離膜が親水性高分子を含有し、
    前記親水性高分子は、N種類のモノマー単位1,2,・・・i・・・Nから構成される共重合体を含有し、下記式(1)に基づいて算出される前記親水性高分子の水和エネルギー密度が、40〜70cal・mol−1・Å−3である
    請求項1−11のいずれか1項に記載の発酵液のろ過方法。
    Figure 2021053636
    [式(1)中、任意のモノマー単位iの水和エネルギーは、モノマー単位iの水中のエネルギーからモノマー単位iの真空中のエネルギーを減じた値の絶対値であり、Nは、共重合体を構成するモノマー種の総数であり、iは、1以上N以下の整数であり、Nは2以上の整数である。]
  13. 前記疎水性高分子樹脂がフッ素系樹脂あるいはスルホン系樹脂である
    請求項1−12のいずれかに記載の発酵液のろ過方法。
  14. 前記工程aのろ過が、中空糸膜の外周側から内周側に向かってろ過する外圧式ろ過であって、前記工程cおよびeにおいて、透過させる薬液の流束が、中空糸膜の内側面積当たり7.0m/m/d以上10m/m/d以下である、請求項1−13のいずれかに記載の発酵液のろ過方法。
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