以下、図1〜図5を参照して本発明の一実施形態について説明する。本発明の実施形態に係るバッテリ管理装置は、市場で流通してリユースされる中古のバッテリ(二次電池)を管理するための装置である。中古バッテリは新品のバッテリよりも安価に入手可能であり、ユーザにとってのニーズが高いだけでなく、バッテリを再利用することは、環境面に対する貢献度も高い。このような中古バッテリは、車両や住宅など、種々の分野および用途に用いることができるが、以下では、特に電気自動車やハイブリッド自動車などの走行モータを有する電動車両に用いられるバッテリを対象としてバッテリ管理装置を構成する例を説明する。
図1は、本実施形態に係るバッテリ管理装置が適用される電動車両101(単に車両と呼ぶこともある)の走行駆動系の要部構成を概略的に示す図である。図1に示すように、車両101は、バッテリ10と、電力制御ユニット(PCU)6と、走行モータ7とを有する。
バッテリ10は、単一のバッテリパック(BP)1によりユニット化して構成される。なお、複数のバッテリパック1によりバッテリ10を構成することもできる。本実施形態のように単一のバッテリパック1によりバッテリ10を構成する場合、バッテリ10とバッテリパック1とは同一であり、以下では、バッテリパック1をバッテリ10と呼ぶことがある。
バッテリパック1は、複数のバッテリモジュール(BM)2と、バッテリECU3とを有する。複数のバッテリモジュール2は、それぞれ略直方体状に形成された筐体21と、各筐体21内に積層して配置された複数のセルとを有する。複数のバッテリモジュール2は例えば互いに同一形状に構成される。複数のセルは、例えばラミネートフィルムでシールされた平坦形状のリチウムイオンセルであり、密閉された筐体21内に互いに直列または並列に接続した状態で収容されて、リチウムイオンバッテリを形成する。
複数のバッテリモジュール2は、全体の組み合わせにより所定の電圧および容量が得られるように、バスバーなどを介して互いに直列または並列に接続される。バッテリパック1は、バッテリケース11を有する。バッテリケース11は、例えば互いにボルトで締結される上下一対のケース部を有し、バッテリケース11内に複数のバッテリモジュール2が収容される。バッテリケース11は、例えば平面視略矩形状かつ全体が低背に構成され、車両101の底部等に配置される。なお、図1では、バッテリケース11内に単一のバッテリパック1が配置されているが、複数のバッテリパック1を配置するとともに、複数のバッテリパック1を互いに直列または並列に接続して全体でバッテリ10を構成することもできる。
バッテリECU3は、複数のバッテリモジュール2それぞれの状態(モジュール状態)を検出する複数の検出回路4と、バッテリパック1の状態(パック状態)を検出する検出回路5とを有する。検出回路4は、例えば各バッテリモジュール2の電流、電圧、温度などの各種物理量を検出するセンサを含む。検出回路4は、これら検出された物理量に基づいて、モジュール状態として各バッテリモジュール2の充電率SOC(State of Charge)と健全性SOH(State of Health)とを演算する。検出回路5は、検出回路4からの信号に基づいて、パック状態としてバッテリ全体のSOCとSOHとを演算する。
SOHは、バッテリ10の劣化の程度を表す値であり、バッテリ新品時のバッテリ性能を基準として、時間経過に伴うバッテリ容量の維持率(=ある時点での容量/初期の容量)により定義される。なお、以下では、便宜上、バッテリ10の性能をSOHで代表する。SOHが高いほど、バッテリ10の健全性が高い。容量維持率に代えて、内部抵抗の上昇率(ある時点での抵抗値/初期の抵抗値)によりSOHを定義することもできる。
SOHが所定の下限値SOHa以下になると、1回の充電によって走行可能な航続距離が基準値以下になる等の問題が生じるため、バッテリ交換が必要となる。SOHは、バッテリ10の使用状況(充電時間、放電時間、充電量、放電量等)や使用環境(温度等)に応じて変化する。バッテリ10を中古バッテリに交換するとき、その交換時点における中古バッテリ10のSOHは、所定値(要求値)SOHb以上であることが要求される。
図2は、時間経過に伴うバッテリ10のSOHの変化の一例を示す図である。図2に示すように、バッテリ交換を行った初期時点t1から所望の使用期間である所定期間Δtが経過した終期時点t2にかけて、SOHが特性L1に沿って下限値SOHaまで低下すると仮定する。このとき、所定期間Δtにわたって中古バッテリ10を使用するためには、初期時点t1で、中古バッテリ10のSOHが所定値以上である必要があり、この所定値が要求値SOHbに相当する。なお、特性L1は、バッテリ10の使用状況や使用環境に応じて定まる。
バッテリECU3は、検出回路4,5で得られた電流、電圧および温度と、経過時間とをパラメータとし、周知の電池モデルを用いてバッテリモジュール2とバッテリパック1のSOHをそれぞれ演算する。なお、電池モデルを用いてSOHを演算することに代えて、充電時の経過時間に伴う電圧変化の特性(充電特性)、放電容量の変化に対する電圧変化の特性(放電負荷特性)、充放電の回数の変化に対するバッテリ容量変化の特性(充放電サイクル特性)等を求め、これらの特性と予め定めた基準特性とを比較することにより、SOHを求めることもできる。バッテリ交換時のSOHの要求値SOHbは、バッテリ10の使用状況や使用環境を考慮して、車両101の車載端末20(図3)により演算することができる。
バッテリ10の電力は、バッテリケース11に取り付けられた図示しないジャンクボックスを介して電力制御ユニット6に供給される。電力制御ユニット6は、インバータ回路を有し、インバータ回路でバッテリ10からの直流を交流に変換して、走行モータ7に駆動電力を供給する。これにより走行モータ7が駆動され、駆動輪8が回転駆動して車両101が走行する。
図3は、本実施形態に係るバッテリ管理装置を有するバッテリ管理システム100の全体構成を概略的に示すブロック図である。図3に示すように、バッテリ管理システム100は、予めバッテリ管理システム100に登録された複数の車両101(101A〜101C)の車載端末20(20A〜20C)と、バッテリ交換を希望するユーザが有するユーザ端末30と、バッテリ交換に係る事業を行う事業所の端末(事業所端末)40と、サーバ装置50とを有する。サーバ装置50が、主に本実施形態に係るバッテリ管理装置を構成する。
複数の車両101は、将来の所定時点でバッテリ交換を希望するユーザが所有する自車両101Aと、他車両101B,101Cとを含み、これらはそれぞれバッテリ10(10A〜10C)を搭載する。他車両101B,101Cは、将来の所定時点においてバッテリ交換に供することが可能なバッテリ10B,10Cを搭載した車両、例えば遅くとも所定時点よりも前に、車両101B,101Cに搭載されたバッテリ10B,10Cを何らかの理由により取り外す予定のある車両である。すなわち、リユース可能なバッテリ10B,10Cを有する車両である。これら車両101A〜101Cは、例えば同一または類似の車種である。
したがって車両101A〜101Cのバッテリ10A〜10Cの構成は互いに等しく、他車両101B,101Cに搭載されたバッテリ10B,10Cは、自車両101Aがバッテリ交換するときの交換候補となり得る。なお、他車両101B,101Cは、自車両101Aのバッテリ(自車バッテリ)10Aと同一または類似のバッテリ10B,10Cを有していればよく、車種が同一または類似でなくもよい。バッテリ交換するときの候補となる同一または類似のバッテリ(候補バッテリと呼ぶ)とは、以下のように2つの類型(第1類型、第2類型)の候補バッテリ110、すなわち第1候補バッテリ111および第2候補バッテリ112をいう。
図4は、候補バッテリ110(111,112)の例を概略的に示す図である。なお、図4では、煩雑な説明を避けるために、バッテリ交換前の各車両101のバッテリ10A〜10Cを、それぞれ2つのバッテリモジュール(BM1,BM1),(BM2,BM3),(BM3,BM3)を有する単一のバッテリパック1で構成されるものとして扱う。
図4に示すように、第1候補バッテリ111は、バッテリパック1の仕様(形状、初期性能等)が自車バッテリ10Aと同一または類似であるバッテリからなる。このような仕様のバッテリパック1を含むバッテリ10の、バッテリ交換時点におけるSOH(バッテリパック1のSOH)が要求値SOHb以上であり、かつ、価格等がユーザ要求を満たせば、第1候補バッテリ111となる。例えば、バッテリ10B,10Cのバッテリパック1がそれぞれ第1候補バッテリ111となる。この場合には、バッテリケース11を分解して内部のバッテリパック1を交換することにより、バッテリ交換が可能である。なお、バッテリケース11を分解せずに、バッテリケース11ごと交換することにより、バッテリ交換することもできる。
第2候補バッテリ112は、バッテリパック1の一部の仕様が自車バッテリ10Aと同一または類似のバッテリ、すなわち、バッテリモジュール2の仕様(形状、初期性能等)が自車バッテリ10Aのバッテリモジュール2と同一または類似のバッテリモジュール2からなる。このような仕様のバッテリモジュール2を含むバッテリ10を組み合わせてバッテリパック(組バッテリ)1を構成したときの、バッテリ交換時点におけるバッテリ10のSOH(バッテリパック1のSOH)が要求値SOHb以上であり、かつ、価格等がユーザ要求を満たせば、第2候補バッテリ112となる。
例えば、バッテリ10Bのバッテリモジュール(BM2)とバッテリ10Cのバッテリモジュール(BM3)とを組み合わせた組バッテリが,第2候補バッテリ112となる。なお、組バッテリのSOHが要求値SOHb以上であるか否かの判定は、例えば組バッテリを構成する個々のバッテリモジュール2のSOHの大きさに応じて行うことができる。例えば、SOHが要求値SOHb以上のバッテリモジュール2のみを組み合わせて組バッテリを構成するとき、組バッテリのSOHが要求値SOHb以上になると判定する。第1候補バッテリ111が単一のバッテリ10(10Bまたは10C)から構成されるのに対し、第2候補バッテリ112は、複数のバッテリ10(10Bおよび10C)により構成される。
図3に示すように、車載端末20、ユーザ端末30、事業所端末40およびサーバ装置50は、インターネット網や携帯電話網等に代表される公衆無線通信網を含むネットワーク60に接続され、ネットワーク60を介して通信可能である。なお、ネットワーク60には、所定の管理地域ごとに設けられた閉鎖的な通信網、例えば無線LAN、Wi−Fi(登録商標)等も含まれる。
車載端末20は、機能的構成として、ネットワーク60を介して通信を行う通信部と、車両101の制御装置として機能する制御部とを有する。そして、バッテリ10を搭載した車両101の情報(車両情報)と、各車両101に搭載された各種センサや各種ECUにより得られたバッテリ情報とを、通信部を介して、車両101を識別する車両IDおよびバッテリ10を識別するバッテリIDとともに所定のタイミングでサーバ装置50に送信する。
バッテリ情報には、バッテリECU3で演算されたバッテリモジュール2のSOHとバッテリパック1のSOHの情報が含まれる。車載端末20は、バッテリモジュール2を識別するバッテリモジュールIDおよびバッテリパック1を識別するバッテリパックIDとともに、SOHの情報をサーバ装置50に送信する。バッテリ情報には、過去のバッテリ10の故障および修理の情報(内容、時期等)、過去のバッテリ10の交換の情報(交換原因、交換の時期等)も含まれる。
車両情報には、車両101に搭載されたバッテリ10のID(バッテリID)の他、車両101の車種、年式、登録住所などの情報の他、車載センサにより得られた車両101の走行環境や走行状況の情報、すなわち走行距離、走行時間、停止時間、平均加減速度、温度環境等の情報が含まれる。なお、車両101のバッテリ10を交換する場合、バッテリ交換する場所(例えば最寄の事業所等)を決定する必要がある。したがって、GPSセンサ等により車両101の位置を検出し、その位置情報を車両情報の一部として、バッテリ情報とともに通信部を介して送信してもよい。
ユーザ端末30は、ユーザにより携帯して使用されるスマートフォンやタブレット端末、携帯電話、さらには各種ウェアラブル端末等の携帯端末により構成される。ユーザ端末30は、機能的構成として、ネットワーク60を介して通信を行う通信部と、各種指令を入力する入力部と、各種情報を表示する表示部と、ユーザ端末30の各部を制御する制御部などを有する。
バッテリ交換を希望するユーザが、ユーザ端末30の入力部を介してバッテリ要求情報(ユーザ要求情報)を入力すると、ユーザを識別するユーザIDとともに、ユーザ要求情報が通信部を介してサーバ装置50に送信される。ユーザ要求情報には、ユーザが有する車両のID(車両ID)の他、ユーザがバッテリ交換を希望するタイミング(時期や走行距離等)、バッテリ10の希望購入価格(上限価格や最低価格等)、バッテリ10のグレード(品質の程度)、およびバッテリ10の使用予定年数などの情報が含まれる。なお、バッテリ交換の要否を車両101の制御装置が判断し、ユーザ端末30の通信部を介してユーザに報知するようにしてもよい。バッテリ10の使用予定年数は、ユーザが入力するのではなく、予め車載端末20に設定された規定値を用いてもよい。
バッテリ要求情報は、ユーザ端末30からだけでなく車載端末20からも送信される。例えば、ユーザ端末30からユーザ要求情報が送信されると、車載端末20は、車両IDとともに、ユーザによって要求される所定のバッテリ性能を含むバッテリ要求情報(車両要求情報)をサーバ装置50に送信する。車両要求情報には、1回の充電で必要な自車両101の航続距離、バッテリ10の容量、バッテリ10を使用する環境(温度の上限、下限等)、充電の頻度等の情報が含まれる。車両要求情報は、車両101に設けられた各種センサやECUの情報により得ることができる。すなわち、車両101の制御装置は、車両101の走行状況やバッテリ10の使用状況(航続距離、温度、充電の頻度等)に基づいて車両要求情報を推定することができる。なお、車両要求情報の一部(例えば航続距離)を、ユーザ端末30を介してユーザが指定してもよい。
バッテリ要求情報には、バッテリ交換時点においてバッテリ10が満たすべきSOHの要求値SOHbの情報も含まれる。要求値SOHbは、交換前のバッテリ10の使用環境や使用状況に基づいて、例えば車載端末20が演算する。すなわち、車載端末20は、ユーザ端末30から送信された使用予定年数の情報を受信し、使用予定年数にわたってバッテリ10の使用を可能とする要求値SOHbを演算する。そして、この要求値SOHbをバッテリ要求情報の一部としてサーバ装置50に送信する。なお、バッテリ交換後の使用予定年数として規定値が用いられる場合には、車載端末20は、ユーザ端末30と通信せずに要求値SOHbを演算することができる。車載端末20に代えてサーバ装置50で、要求値SOHbを演算するようにしてもよい。
事業所端末40は、機能的構成として、ネットワーク60を介して通信を行う通信部を有する。事業所端末40は、事業所で管理している各種のバッテリ情報を、バッテリIDとともに、通信部を介してサーバ装置50に送信する。事業所端末40から送信されるバッテリ情報には、事業所で管理されている各バッテリ10の情報の他、当該バッテリ10の保管期間、事業所へのバッテリ10の入庫予定情報、および事業所からのバッテリ10の出庫予定情報などが含まれる。
サーバ装置50は、例えば単一のサーバとして、あるいは機能ごとに別々のサーバから構成される分散サーバとして構成される。クラウドサーバと呼ばれるクラウド環境に作られた分散型の仮想サーバとしてサーバ装置50を構成することもできる。サーバ装置50は、CPU,ROM,RAM、およびその他の周辺回路を有する演算処理装置を含んで構成される。
サーバ装置50は、機能的構成として、通信部51と、バッテリ情報取得部52と、要求情報取得部53と、車両情報取得部54と、劣化予測部55と、バッテリ抽出部56と、バッテリ選択部57と、記憶部58とを有する。
通信部51は、ネットワーク60を介し、車載端末20、ユーザ端末30および事業所端末40と無線通信可能に構成される。通信部は、所定周期であるいは所定のタイミングで車載端末20、ユーザ端末30および事業所端末40と通信し、各種情報の取得や情報の送信を行う。
バッテリ情報取得部52は、車載端末20および事業所端末40からそれぞれ送信された、複数のバッテリ10のバッテリ情報をバッテリIDとともに取得する。バッテリ情報には、各バッテリ10の性能情報、すなわちバッテリパック1のSOHおよびバッテリモジュール2のSOHの情報が含まれ、これらSOH情報は、バッテリパックIDおよびバッテリモジュールIDに対応付けられて記憶部58に記憶される。
要求情報取得部53は、車載端末20およびユーザ端末30からそれぞれ送信されたバッテリ要求情報をユーザIDとともに取得する。取得するバッテリ要求情報には、バッテリ交換の予定時期やバッテリ10の希望購入価格を含むユーザ要求情報と、交換後のバッテリ10に要求されるバッテリ性能を表す情報(要求値SOHbなど)と、を含む。取得した情報は、ユーザIDに対応付けられて記憶部58に記憶される。
車両情報取得部54は、各車両101の車載端末20から車両情報を取得する。取得した車両情報は、車両IDに対応付けられて記憶部58に記憶される。なお、記憶部58には、互いに対応するバッテリID(バッテリパックID,バッテリモジュールID)とユーザIDと車両IDとが紐付けられて記憶される。
劣化予測部55は、記憶部58に記憶されたバッテリ情報と車両情報とユーザ要求情報とに基づいて、バッテリ10の交換予定時点における各バッテリ10のSOHを予測する。例えば、過去から現時点までの時間経過に伴う各バッテリ10のSOHの変化(図2の特性L1に示すような変化)からSOHの変化率を算出し、この変化率を用いて、将来のバッテリ交換予定時点における各バッテリ10(図3の10A〜10C等)のSOHを予測する。より具体的には、過去1年分のバッテリ10のSOHの変化率に基づいて、交換予定時点(例えば3か月後)の当該バッテリ10のSOHを予測する。
バッテリ抽出部56は、記憶部58に記憶されたバッテリ情報と車両情報とユーザ要求情報とに基づいて、複数の中古バッテリ10(バッテリパック1、バッテリモジュール2)の中から、ユーザによるバッテリ要求を満たすバッテリ、すなわち候補バッテリ110を抽出する。この場合、劣化予測部55により予測された交換予定時点におけるSOHが要求値SOHb以上となるバッテリの中から、候補バッテリ110を抽出する。
より具体的には、バッテリ抽出部56は、まず、バッテリパック1の仕様が自車バッテリ10Aのものと同一または類似であり、かつ、SOHが要求値SOHb以上のバッテリパック1があるか否かを判定する。そして、そのような要件を満たすバッテリパック1があり、かつ、ユーザによる他のバッテリ要求(価格等)を満たすと判定すると、そのバッテリパック1を含むバッテリ10を第1候補バッテリ111として抽出する。
一方、そのようなバッテリパック1がないと判定すると、バッテリ抽出部56は、バッテリモジュール2の仕様が自車バッテリ10Aのものと同一または類似の複数のバッテリモジュール2、すなわち車両IDの異なる複数のバッテリモジュール2を組み合わせてバッテリパック1を構成したときに、当該バッテリパック1のSOHが要求値SOHb以上となるものがあるか否かを判定する。そして、そのような要件を満たすバッテリモジュール2があり、かつ、ユーザによる他のバッテリ要求(価格等)を満たすと判定すると、そのバッテリモジュール2を含む複数のバッテリ10を第2候補バッテリ112として抽出する。バッテリ抽出部56により抽出された候補バッテリ110の情報は、バッテリID(バッテリパックID,バッテリモジュールID)とともに記憶部58に記憶される。
バッテリ選択部57は、記憶部58に記憶された候補バッテリ110の中から、ユーザに提示するための提示バッテリを選択する。例えば、候補バッテリ110が複数ある場合には、所定の規則に従い提示バッテリを選択する。所定の規則は、例えば最も価格が安い候補バッテリ、最も性能がよい候補バッテリ、最も近距離にある候補バッテリ、のいずれかである。
バッテリ選択部57により選択された提示バッテリの情報は、当該バッテリのバッテリID(バッテリパックID,バッテリモジュールID)とともに記憶部58に記憶されるとともに、通信部51を介してユーザ端末30と事業所端末40とに送信される。これにより、交換希望時点における、提示バッテリを構成する中古バッテリ10の使用が予約される。また、ユーザは、バッテリ交換に要する費用や交換後のバッテリの性能等を認識することができるとともに、事業所はバッテリ交換の予定を把握することができる。記憶部58に記憶された提示バッテリ、すなわち予約が確定された中古バッテリ10は、以降、バッテリ交換に用いられる交換バッテリ110の候補から除外される。
なお、バッテリ選択部57が、複数の候補バッテリ110の中から複数の提示バッテリを選択してもよい。この場合、複数の提示バッテリをユーザ端末30に送信し、ユーザの操作により単一の提示バッテリを選択させてもよい。複数の提示バッテリに優先順位を付けてユーザ端末30に送信してもよく、これによりユーザによる提示バッテリの選択が容易になる。
図5は、予め定められたプログラムに従いサーバ装置50のCPUで実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えばユーザ端末30から送信されたバッテリ交換要求を受信すると、開始される。
まず、ステップS1で、バッテリ情報取得部52、要求情報取得部53、および車両情報取得部54での処理により、複数の中古バッテリ10のバッテリ情報、ユーザからのバッテリ要求情報、および車両情報をそれぞれ取得するとともに、取得した情報を記憶部58に記憶する。次いで、ステップS2で、劣化予測部55での処理により、ステップS1で取得した各種情報に基づいて、将来のバッテリ交換予定時点における複数の中古バッテリ10それぞれのSOHの予測値を算出する。
次いで、ステップS3で、バッテリ抽出部56での処理により、ステップS1で取得された各種情報と、ステップS2で予測されたバッテリ交換時点におけるSOHとに基づいて、複数の中古バッテリ10の中に第1候補バッテリ111があるか否かを判定する。ステップS3で否定されるとステップS4に進み、肯定されるとステップS5に進む。
ステップS4では、バッテリ抽出部56での処理により、ステップS1で取得された各種情報と、ステップS2で予測されたバッテリ交換時点におけるSOHとに基づいて、複数の中古バッテリ10の中に第2候補バッテリ112があるか否かを判定する。ステップS4で肯定されるとステップS5に進み、否定されると処理を終了する。なお、ステップS4で否定されると、候補バッテリ110がない旨をユーザ端末30に送信して処理を終了してもよい。
ステップS5では、バッテリ選択部57での処理により、ステップS3またはステップS4で抽出された候補バッテリ110の中から、所定の規則に従いユーザに提示するための提示バッテリを選択する。なお、ステップS3またはステップS4で単一の候補バッテリ110が抽出された場合には、ステップS5では、その候補バッテリ110をそのまま提示バッテリとして選択する。
次いで、ステップS6で、ステップS5で選択された提示バッテリの情報を、バッテリIDとともに記憶部58に記憶する。さらに、その提示バッテリの情報をユーザ端末30と事業所端末40とに送信し、処理を終了する。
本実施形態に係るバッテリ管理装置の動作をまとめると以下のようになる。ユーザがユーザ端末30を介して自車バッテリ10Aの交換要求を指令すると、サーバ管理装置(サーバ装置50)で、例えば図4に示す複数の中古バッテリ10B,10Cの中からバッテリ交換予定時点における交換候補となる候補バッテリ110が抽出される。この場合、まず、自車バッテリ10Aと同一仕様のバッテリパック1を有する中古バッテリ10B,10Cが、ユーザからのバッテリ要求情報に含まれる所定の要件(要求値SOHb、価格等)を満たすか否かが判定される(ステップS3)。所定の要件を満たすと判定されると、中古バッテリ10B、10Cのいずれかが提示バッテリとなり、提示バッテリの情報がユーザ端末30を介してユーザに報知される(ステップS5,ステップS6)。これにより、バッテリ交換時点において、自車バッテリ10A(バッテリパック1)を、所望の要件を満たす中古バッテリ10B,10C(バッテリパック1)に交換することができる。
一方、中古バッテリ10B,10Cがバッテリ要求情報に含まれる所定の要件を満たさないときには、サーバ装置50で、異なるバッテリ10B,10Cのバッテリモジュール(BM2,BM3)を組み合わせた組バッテリにより、所定の要件を満たすか否かが判定される(ステップS4)。所定の要件を満たすと判定されると、中古バッテリ10B、10Cの双方が候補バッテリ110(第2候補バッテリ112)となり、これら第2候補バッテリ112からなる提示バッテリの情報がユーザ端末30を介してユーザに報知される(ステップS5,ステップS6)。このように、異なるバッテリ10B,10Cのバッテリモジュール(BM2,BM3)を組み合わせて単一のバッテリパック1を構成することで、候補バッテリ110の範囲が拡大する。
すなわち、例えばバッテリ10Bの複数のバッテリモジュール(BM2)にばらつきがあって、一部のバッテリモジュール2のSOHが要求値SOHb以上であるが、残りのバッテリモジュール2のSOHが要求値SOHb未満である場合を想定する。この場合、バッテリパック1のSOHが要求値SOHb未満となることにより、バッテリ10B全体が候補バッテリ110から除外されると、SOHが要求値SOHb以上である一部のバッテリモジュール2を有効利用することができず、効率的でない。この点、本実施形態では、SOHが要求値SOHb以上である一部のバッテリモジュール2を有効利用することができ、中古バッテリ10を効率よく再利用することができる。その結果、候補バッテリ110の範囲が拡大し、所定の要件を満たす最適な中古バッテリ(組バッテリ)をユーザに提示することができる。
中古のバッテリパック1の価格がユーザ要求を満たさないが、組バッテリとして構成されたバッテリパック1の価格がユーザ要求を満たすとき、組バッテリを構成する中古バッテリは第2候補バッテリ112となる。この場合も、候補バッテリ110の範囲が広がり、ユーザに最適な中古バッテリを提示することができる。
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)バッテリ管理装置としてのサーバ装置50は、複数のバッテリモジュール2を直列およびまたは並列に接続して構成された中古バッテリ10A〜10Cを管理するように構成される。このサーバ装置50は、複数の中古バッテリ10A〜10Cの情報(バッテリ情報)を取得するバッテリ情報取得部52と、中古バッテリ10B,10Cの使用を予定するユーザによる中古バッテリ10B,10Cに対する要求値SOHbや購入希望価格なとの所定の要件(バッテリ要求)を含むバッテリ要求情報を取得する要求情報取得部53と、バッテリ情報取得部52により取得されたバッテリ情報と、要求情報取得部53により取得されたバッテリ要求情報とに基づいて、複数の中古バッテリ10B,10Cの中から、所定の要件を満たす中古バッテリ10B,10Cを、ユーザに提示する提示バッテリの候補である候補バッテリ110として抽出するバッテリ抽出部56と、を備える(図3)。バッテリ情報取得部52により取得されるバッテリ情報は、複数のバッテリモジュール2それぞれのSOHなどの情報を含む。バッテリ抽出部56は、バッテリ情報取得部52により取得された複数のバッテリモジュール2それぞれの情報に基づいて、互いに異なる中古バッテリ10B,10Cに含まれるバッテリモジュール(BM2,BM3)同士を組み合わせた組バッテリにより、所定の要件を満たす第2候補バッテリ112を構成可能であるか否かを判定し、第2候補バッテリ112を構成可能であると判定すると、当該組バッテリを候補バッテリ110として抽出する。
このように、複数の中古バッテリ10B,10Cを構成する電池要素(バッテリモジュール2)単位で候補バッテリ110を構成することにより、バッテリ交換に供する中古バッテリの候補数が増加する。このため、ユーザの要求を満たす最適な中古バッテリを提供することができる。
(2)バッテリ抽出部56は、複数の中古バッテリ10B,10Cの中にそれ自体で所定の要件を満たす第1候補バッテリ111があるか否かを判定し(ステップS3)、第1候補バッテリ111がないと判定すると、異なるバッテリ10B,10Cに含まれる複数のバッテリモジュール(BM2,BM3)からなる組バッテリにより第2候補バッテリ112を構成可能であるか否かを判定する(ステップS4)。これにより、第1候補バッテリ111を優先的に提示バッテリとするため、バッテリ交換が容易となる。すなわち、第1候補バッテリ111はバッテリパック1ごと交換可能であるため、第2候補バッテリ112を用いる場合に比べ、バッテリ交換が容易である。
(3)サーバ装置50は、将来の所定時点における複数の中古バッテリ10のSOHを予測する劣化予測部55をさらに備える(図3)。バッテリ抽出部56は、劣化予測部55により予測されたSOHに基づいて、複数の中古バッテリ10の中から候補バッテリ110を抽出する。これにより、所定時点で所定の要件を満たす中古バッテリ10を前もって抽出することができ、バッテリ交換の準備を早期に開始することができる。
(4)サーバ装置50は、バッテリ抽出部56により抽出された候補バッテリ110の中から、バッテリ交換予定時点よりも前に、ユーザに提示するための提示バッテリを選択するバッテリ選択部57と、バッテリ選択部57で選択された提示バッテリの情報を記憶する記憶部58と、をさらに備える(図3)。これにより、提示バッテリが事前に予約されるため、バッテリ交換時点で中古バッテリ10の在庫がないなどの事態にあわずに、バッテリ交換を効率的に行うことができる。また、予め事業所に保管されている中古バッテリ10だけでなく、利用中の車両101B,101Cに搭載されたバッテリ10B,10Cも候補バッテリ110となるため、事業所でのバッテリの保管期間を短くすることができる。したがって、リユースされる中古バッテリ10を市場で効率的に流通させることができる。
上記実施形態は、種々の形態に変更することができる。以下、いくつかの変形例について説明する。上記実施形態では、バッテリモジュール2を電池要素として、互いに異なる中古バッテリ10に含まれる複数のバッテリモジュール2を組み合わせて組バッテリを構成したが、バッテリ10が複数のバッテリパック1からなる場合には、バッテリパック1を電池要素として、互いに異なる中古バッテリ10に含まれる複数のバッテリパック1を組み合わせて組バッテリを構成してもよい。自車バッテリ10Aと候補バッテリ110のバッテリケース11の構成が互いに同一である場合、バッテリ交換時にバッテリケース11ごと交換してもよい。
上記実施形態では、バッテリ交換予定時点におけるSOHの要求値SOHbが所定値以上であることを、バッテリ要求情報に含まれるバッテリ要求に含めるようにしたが、バッテリ要求はこれに限らない。例えば、中古バッテリ10のグレードが所定値以上であることを、バッテリ要求に含めてもよい。グレードは、例えばバッテリの故障や修理の履歴がない場合、およびバッテリモジュール同士のSOHのばらつきがない場合に、高くなる。グレードは中古バッテリ10の価格と相関関係を有しており、価格を抑えたいユーザは、候補バッテリのグレードを低く設定する。これにより、多様なユーザの要求を満足することができる。
上記実施形態では、複数の中古バッテリ10の中から、バッテリ要求を満たす中古バッテリ10を、車両101のユーザに提示するようにしたが、バッテリ管理装置により管理されるバッテリが適用される対象物は車両101に限らない。例えば住宅のバッテリに、車両のバッテリ10を用いてもよく、対象物は住宅であってもよい。
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。