JP2021050255A - アクリル系ポリマー及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】比較的低温・低荷重の条件(例えば、230℃、37N)であっても十分な流動性を有し、耐熱性に優れ、且つ高度に複屈折が制御されたアクリル系ポリマー及びその製造方法を提供すること。【解決手段】温度230℃、荷重37Nで測定したメルトフローレートが3.0g/10分以上8.0g/10分以下であり、ガラス転移温度が110℃以上であり、且つ応力光学係数の絶対値が15×10−11Pa−1以下であるアクリル系ポリマー。【選択図】なし

Description

本発明は、アクリル系ポリマー及びその製造方法に関する。
近年、導光板、導光体、各種レンズ等の光学材料に用いられるガラスの代替材料として、アクリル樹脂が検討されている。例えば、特許文献1には、所定の方法により製造されたアクリル樹脂の耐熱性が高く、且つ高度に複屈折が制御され、レンズ用途等に適する旨記載されている。
特開2017−165944号公報
ところで、アクリル樹脂等の樹脂を用いてレンズ等の光学材料を製造する際には一般的に射出成形が適用されるが、射出成形のためには樹脂の流動性が求められる。樹脂の流動性は、高温・高荷重とすることで高めることができるが、高温による樹脂の黄変や、高荷重による製品の破損等が懸念されるため、比較的低温・低荷重で十分な流動性を有することが望ましい。しかしながら、本発明者等による検討の結果、特許文献1等の従来のアクリル樹脂については、高温・高荷重の条件でないと、射出成形のために十分な流動性を有しないことが明らかとなった。
そこで本発明は、比較的低温・低荷重の条件(例えば、230℃、37N)であっても十分な流動性を有し、耐熱性に優れ、且つ高度に複屈折が制御されたアクリル樹脂(アクリル系ポリマー)及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の[1]〜[6]を提供する。
[1] 温度230℃、荷重37Nで測定したメルトフローレートが3.0g/10分以上8.0g/10分以下であり、ガラス転移温度が110℃以上であり、且つ応力光学係数の絶対値が15×10−11Pa−1以下であるアクリル系ポリマー。
[2] 黄色度が3.5以下である、[1]に記載のアクリル系ポリマー。
[3] 重量平均分子量が50000以上100000未満である、[1]又は[2]に記載のアクリル系ポリマー。
[4] 主鎖に環構造を有する、[1]〜[3]のいずれかに記載のアクリル系ポリマー。
[5] レンズ用である、[1]〜[4]のいずれかに記載のアクリル系ポリマー。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載のアクリル系ポリマーの製造方法であって、モノマーを分割添加、又は滴下しながら重合を行う重合工程を備える、アクリル系ポリマーの製造方法。
本発明によれば、比較的低温・低荷重の条件(例えば、230℃、37N)であっても十分な流動性を有し、耐熱性に優れ、且つ高度に複屈折が制御されたアクリル系ポリマー及びその製造方法を提供することができる。
以下、本発明の一実施形態を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本明細書中、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを意味する。(メタ)アクリレート等の類似の表現についても同様である。
(アクリル系ポリマー)
本実施形態のアクリル系ポリマーは、温度230℃、荷重37Nで測定したメルトフローレートが3.0g/10分以上8.0g/10分以下であり、ガラス転移温度が110℃以上であり、且つ応力光学係数の絶対値が15×10−11Pa−1以下である。
アクリル系ポリマーとは、アクリル系モノマー由来の構成単位を有するポリマーを言う。上記アクリル系モノマーとは、アクリロイル基若しくはメタクリロイル基、又は、これらの基における水素原子が他の原子若しくは原子団に置き換わった基を有するモノマー又はそのようなモノマーの誘導体を言う。
本実施形態のアクリル系ポリマーは、通常、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を有する。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、脂肪族(メタ)アクリレート[例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸C1−18アルキル)等]、脂環族(メタ)アクリレート[例えば、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸シクロプロピル、(メタ)アクリル酸シクロブチル等の(メタ)アクリル酸C3−20シクロアルキル)、架橋環式(メタ)アクリレート(例えば、(メタ)アクリル酸イソボルニル)等]、芳香族(メタ)アクリレート[例えば、(メタ)アクリル酸アリールエステル(例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸o−トリル等の(メタ)アクリル酸C6−20アリール)、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸C6−10アリールC1−4アルキル)、(メタ)アクリル酸フェノキシアルキル(例えば、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等の(メタ)アクリル酸フェノキシC1−4アルキル)等]、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル[例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1−12アルキル)等]、アルコキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル[例えば、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル等のメタクリル酸C1−12アルコキシC1−12アルキル等)]、グリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル等)等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のアクリル系ポリマーは、これらの中で、メタクリル酸エステル由来の構成単位を含むことが好ましく、メタクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を含むことがより好ましい。メタクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸C1−18アルキルが好ましく、メタクリル酸C1−10アルキルがより好ましく、メタクリル酸C1−4アルキルが更に好ましく、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
本実施形態のアクリル系ポリマーが(メタ)アクリル酸エステル(例えば、メタクリル酸アルキルエステル)由来の構成単位を含む場合の含有割合は、10質量%以上(例えば、20質量%以上)の範囲から選択でき、好ましくは30質量%以上(例えば、40質量%以上)、更に好ましくは50質量%以上(例えば、55質量%以上)であってもよく、60質量%以上、70質量%以上等であってもよい。(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位の含有割合の上限は、特に限定されないが、例えば95質量%以下とすることができる。
本実施形態のアクリル系ポリマーは、必要に応じて、(メタ)アクリル酸エステル以外の他の重合性単量体(モノマー)由来の構成単位を含んでいてもよい。このような他のモノマーとしては、例えば、酸基含有モノマー(メタクリル酸、アクリル酸等)、スチレン系モノマー[例えば、スチレン、ビニルトルエン、置換基(例えば、ハロゲン基、アルコキシ基、アルキル基、ヒドロキシ基等)を有するスチレン(例えば、α―メチルスチレン、クロロスチレン等)、スチレンスルホン酸又はその塩等]、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル等)、不飽和ニトリル(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、オレフィン系モノマー(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−オクテン等のC2−10アルケン)、アミド基含有ビニル系単量体[例えば、(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミド(例えば、N−メチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルキル(メタ)アクリルアミド;N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド等のN−シクロアルキル(メタ)アクリルアミド;N−フェニル(メタ)アクリルアミド等のN−アリール(メタ)アクリルアミド;N−ベンジル(メタ)アクリルアミド等のN−アラルキル(メタ)アクリルアミド等)等]、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エステル(例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル等のアルキルエステル)等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のアクリル系ポリマーは、これらの中で、スチレン系モノマー由来の構成単位を含むことが好ましく、スチレン由来の構成単位を含むことがより好ましい。
本実施形態のアクリル系ポリマーが他のモノマー(例えば、スチレン系モノマー)由来の構成単位を含む場合の含有割合は、例えば、20質量%以下(例えば、15質量%)の範囲から選択でき、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下であってもよい。他のモノマー由来の構成単位の含有割合の下限は、特に限定されないが、例えば0.5質量%以上とすることができる。他のモノマー(例えば、スチレン系モノマー)由来の構成単位を含む場合の含有割合が上記の範囲であれば高度に複屈折が制御されると共に耐候性に優れたアクリル樹脂(アクリル系ポリマー)を得ることができる。
本実施形態のアクリル系ポリマーは、主鎖に環構造を有することが好ましい。環構造は、4員環構造、5員環構造、6員環構造、7員環構造、8員環構造等のいずれでもよく、好ましくは5員環構造または6員環構造である。
環構造としては、例えば、ラクトン環構造、環状イミド構造(例えば、N−置換マレイミド単量体由来の構造、グルタルイミド構造等)、環状アミド構造(例えば、ラクタム構造等)、無水酸構造(例えば、無水マレイン酸単量体由来の構造、無水グルタル酸構造)等が挙げられる。なお、これらの他の環構造は、特に限定されず、公知の刊行物に開示された構造(例えば、特開2006−309033号公報等に開示されたグルタルイミド構造、特開2006−283013号公報等に開示された無水グルタル酸構造等)であってもよい。これらは1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
耐水性、耐湿熱性の観点から、ラクトン環構造、環状イミド構造(例えば、N−置換マレイミド単量体由来の構造、グルタルイミド構造等)、環状アミド構造(例えば、ラクタム構造等)が好ましい。
本実施形態のアクリル系ポリマーが環構造を有する場合の含有割合は、用途や所望の物性等に応じて選択でき、特に限定されないが、例えば耐熱性や強度向上の観点から0.1質量%〜90質量%(例えば0.5質量%〜70質量%)の範囲から選択でき、1質量%〜60質量%、3質量%〜50質量%、5質量%〜45質量%、7質量%〜40質量%、9質量%〜30質量%であってもよい。
ラクトン環構造としては、特に限定されず、例えば、4から8員環であってもよいが、環構造の安定性に優れることから5員環又は6員環であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。
ラクトン環構造としては、例えば、以下の式(1)で表される構造等が挙げられる。
Figure 2021050255

(式中、R、R及びRは、互いに独立して、水素原子又は置換基である。)
式(1)において、置換基としては、例えば、炭化水素基等の有機残基等が挙げられる。
当該炭化水素基としては、例えば、脂肪族基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のC1−20アルキル基、エテニル基、プロペニル基等のC2−20不飽和脂肪族炭化水素基等)、芳香族基(例えば、フェニル基、ナフチル基等のC6−20芳香族炭化水素基等)等が挙げられる。
上記炭化水素基は、酸素原子を含んでいてもよく、水素原子の一つ以上が、水酸基、カルボキシル基、エーテル基及びエステル基から選ばれる少なくとも1種類の基により置換されていてもよい。
式(1)において、Rが水素原子又はメチル基、R及びRがそれぞれ独立して水素原子又はC1−20アルキル基であると好ましく、Rが水素原子又はメチル基、R及びRがそれぞれ独立して水素原子又はメチル基であるとより好ましい。
ラクトン環構造は、式(1)で表わされる構造を1種又は2種以上含んでいてもよい。
本実施形態のアクリル系ポリマーがラクトン環構造を有する場合の含有割合は、用途や所望の物性等に応じて選択でき、特に限定されないが、例えば0.1質量%〜90質量%(例えば0.5質量%〜70質量%)の範囲から選択でき、1質量%〜60質量%、3質量%〜50質量%、5質量%〜40質量%、7.5質量%〜30質量%であってもよい。
ラクトン環構造の含有割合が大きくなると、耐熱性、硬度(強度)、耐溶剤性、表面硬度、寸法安定性等の点で好ましい。
なお、式(1)で表されるラクトン環構造の形成方法は、特に限定されないが例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む重合成分を重合した後に、分子内エステル交換反応により環化する方法等が挙げられる。
N−置換マレイミド単量体由来の構造としては、例えば、以下の式(2)で表される構造が挙げられる。
Figure 2021050255

(式中、R、Rは互いに独立して水素原子又はメチル基であり、Rは置換基であり、Xは窒素原子であり、n=1である。)
式(2)のRにおいて、置換基としては、例えば、炭化水素基等が挙げられる。
当該炭化水素基としては、例えば、脂肪族基{例えば、アルキル基[例えば、C1−6直鎖アルキル基(例えば、メチル基、エチル基等)、C1−6分岐アルキル基(例えば、イソプロピル基等)等のC1−6アルキル基等]等}、脂環族基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のC3−20シクロアルキル基等)、芳香族基{例えば、C6−20芳香族基[例えば、C7−20アラルキル基(例えば、ベンジル基等)、C6−20アリール基(例えば、フェニル基等)]}等が挙げられる。なお、炭化水素基は、さらにハロゲン等の置換基を有していてもよい。
式(2)において、好ましくは、R及びRがそれぞれ独立して水素原子、RがC3−20シクロアルキル基又はC6−20芳香族基であってもよく、より好ましくはR及びRがそれぞれ独立して水素原子、Rがシクロヘキシル基、ベンジル基又はフェニル基であってもよい。透明性の観点から、Rがシクロヘキシル基であることが好ましい。
環構造は、式(2)で表わされる構造を1種又は2種以上有していてもよい。
本実施形態のアクリル系ポリマーは、上記環構造の中で、ラクトン環構造を有することがより好ましい。アクリル系ポリマーがラクトン環構造を有することにより、アクリル系ポリマーにおいて種々の物性[例えば、耐熱性、耐湿熱性、硬度(強度)、耐溶剤性、表面硬度、酸素や水蒸気のバリヤ性、光学特性、寸法安定性、形状安定性等]を、付与、改善又は向上し得る。
本実施形態のアクリル系ポリマーは、重合の際に使用する成分等に由来の原子や基を有していてもよい。例えば、アクリル系ポリマーは、連鎖移動剤由来の硫黄原子を含有してもよい。しかし、着色低減等の観点から、硫黄原子を実質的に含有しないことが望ましい。
なお、アクリル系ポリマーが、共重合体であるとき、共重合の形態は特に限定されず、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体等であってもよい。
本実施形態のアクリル系ポリマーのメルトフローレートは、温度230℃及び荷重37Nにおいて、3.0g/10分以上8.0g/10分以下であり、3.5g/10分以上7.8g/10分以下であると好ましく、4.0g/10分以上7.6g/10分以下であるとより好ましい。
なお、メルトフローレートは、JIS K 7210 A法に準拠して測定してもよい。
本実施形態のアクリル系ポリマーは、環構造の有無にかかわらず、比較的高い溶融流動性を実現しうる。
溶融流動性に優れる(高い溶融流動性を有する)ことにより、成形(特に、射出成形)時の着色を低減し、黄色度が小さい成形体(ライトガイドや光学レンズなどの射出成形体)を効率よく得ることができる。
溶融流動性が高いことにより、より低温での成形加工が可能となり、成形工程における熱履歴を抑制することにより成形品の着色を低減しうると共に、樹脂の分解が抑えられることから気泡の含有が少ない成形体が得られることが期待できる。また射出装置の昇温降温工程に要する時間を短縮できることから、生産性向上が期待できる。
本実施形態のアクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、アクリル系ポリマーの成形性が優れる等の観点から、50000以上100000未満であると好ましく、60000以上95000以下であるとより好ましく、70000以上93000以下であると更に好ましい。
本実施形態のアクリル系ポリマーの分子量分布(Mw/Mn)は、溶融流動性や成形体の強度等の観点から、例えば、1〜10(例えば、1.1〜7.0)、好ましくは1.2〜5.0(例えば、1.5〜4.0)程度であってもよく、1.5〜3.0程度であってもよい。
なお、分子量(及び分子量分布)は、例えば、GPCを用い、ポリスチレン換算により測定してもよく、実施例に記載の方法で測定してもよい。
本実施形態のアクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、110℃以上であり、115℃以上であると好ましく、120℃以上であるとより好ましい。Tgが上記範囲であると耐熱性に優れる。アクリル系ポリマーのTgの上限は特に限定されないが、例えば200℃以下とすることができる。
なお、Tgは、例えば、実施例に記載の方法により測定してもよい。
本実施形態のアクリル系ポリマーの黄色度は、3.5以下であると好ましく、2以下であるとより好ましく、1.7以下であると更に好ましく、1.5以下であると特に好ましい。
黄色度は、例えば、実施例に記載の方法により測定してもよい。
本実施形態のアクリル系ポリマーの応力光学係数(Cr)の絶対値は、15×10−11Pa−1以下であり、10×10−11Pa−1以下、5×10−11Pa−1以下、又は、2×10−11Pa−1以下であると好ましい。
応力光学係数は、例えば、実施例に記載の方法により測定してもよい。
本実施形態のアクリル系ポリマーの全光線透過率は、85%〜100%であると好ましく、87.5%〜99%であるとより好ましく、90%〜98%であると更に好ましい。
全光線透過率は、例えば、実施例に記載の方法により測定してもよい。
なお、アクリル系ポリマーは、慣用の方法により製造してもよく、特に、後述の方法により製造してもよい。
[アクリル系ポリマーの製造方法]
本実施形態のアクリル系ポリマーの製造方法は、モノマーを分割添加、又は滴下しながら重合を行う重合工程を備える。当該製造方法により得られるアクリル系ポリマーにおいて、物性、構成単位の種類や割合、これらの好ましい態様等は、上記本実施形態のアクリル系ポリマーについて例示したとおりであってもよい。
重合は、通常、ラジカル重合であってもよい。
重合は、重合開始剤(特にラジカル重合開始剤)の存在下で行ってもよい。
ラジカル重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、有機過酸化物[例えば、パーオキシド(ジアルキルパーオキシド、ジアシルパーオキシド等)、パーオキシモノカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール等]、アゾ化合物等が含まれる。
重合開始剤の具体例としては、有機過酸化物[例えば、tert―アミルパーオキシイソノナノエート、t―アミルパーオキシ―2―エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサネート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、tert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサネート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサネート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン等]、アゾ化合物[例えば、2−(カルバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、1,1'−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビスイソブチレート、2、2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2、2'−アゾビス(2−メチルプロパン)等]等が挙げられる。
重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
特に、重合開始剤として、少なくとも有機過酸化物(パーオキシエステル等)を好適に使用してもよい。
重合開始剤の使用量(使用割合)は、重合開始剤の種類等にもよるが、例えば、重合成分100質量部に対して、0.05質量部以上5質量部以下、0.1質量部以上3質量部以下、又は0.15質量部以上2質量部以下とすることができる。
重合は、チオール化合物等の連鎖移動剤の存在下で行ってもよい。本実施形態では、着色低減の観点などから重合成分100質量部に対する連鎖移動剤の使用割合を比較的小さく、例えば、0.5質量部以下、0.1質量部以下(例えば、0.001〜0.1質量部)などとしてもよい。本実施形態では、着色低減の観点などから重合成分100質量部に対する連鎖移動剤の使用割合を比較的小さく、例えば、0.5質量部以下、0.1質量部以下(例えば、0.001〜0.1質量部)などとしてもよい。本実施形態では、アクリル系ポリマーの着色低減等の観点から、連鎖移動剤を用いずに重合を行うことが好ましい。本実施形態のアクリル系ポリマーの製造方法によれば、連鎖移動剤を用いなくとも、又は使用割合を比較的小さくしても、アクリル系ポリマーの流動性を調整することができる。
重合は、必要に応じて、重合開始剤や連鎖移動剤の他、他の成分(例えば、pH調整剤、各種触媒等)の存在下で行ってもよい。
重合は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等のいずれであってもよく、特に、不純物を含まず、流動性の安定したポリマーを得る等の観点から溶液重合であってもよい。溶液重合に用いる溶媒は、重合成分の種類等に応じて、従来公知の溶媒から適宜選択することができる。
なお、各成分(例えば、重合成分、重合開始剤、連鎖移動剤、その他の成分、溶媒等)は、重合開始の段階ですべて反応系(反応器)に存在させて(仕込んで)もよく、重合の進行とともに添加(又は混合)してもよく、これらを組み合わせてもよい。このような場合、各成分の添加速度や添加時間は、適宜選択できる。
各成分は、複数回(2回以上、例えば、2〜5回等)に分割して反応系に添加してもよい。
特に、重合成分(モノマー)を重合の進行とともに反応系に添加してもよく、その場合、重合成分を複数回に分割して添加してもよいし、重合成分を滴下させてもよい。重合成分を滴下によって反応系に添加すると、比較的分子量分布の狭いアクリル系ポリマーを得やすい。
また、重合開始剤を重合の進行とともに反応系に添加してもよい。特に、重合成分を滴下によって反応系に添加する場合、重合開始剤も滴下によって反応系に添加することが好ましい。なお、重合開始の段階から存在させる重合成分の割合と、分割添加又は滴下させる重合成分との割合は、重合成分の反応性等に合わせて適宜設定することができる。
また、滴下によって重合成分や重合開始剤を添加する場合、滴下速度は、特に限定されないが、比較的分子量の小さいアクリル系ポリマーを得やすい等の観点から、ゆっくりと添加することが好ましく、1時間以上(例えば、1〜10時間等)かけて添加してもよい。
重合温度、重合時間等の諸条件は、重合成分、重合開始剤、溶媒の種類等に応じて適宜選択でき、例えば、20℃以上180℃以下、0.5時間以上24時間以下、窒素等の不活性雰囲気下の条件で反応を行うことができる。
アクリル系ポリマーがラクトン環構造を有する場合、ラクトン環構造は、上記のような重合とともに形成されてもよく、重合後、更に環構造を形成又は導入する工程を経てアクリル系ポリマーに形成又は導入できる。ラクトン環構造の形成又は導入する方法としては、特に限定されず、公知の方法に従うことができる。
ラクトン環構造は、例えば、ラクトン環の原料となるモノマー[例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル]由来の構成単位を含む重合体を、分子内エステル交換反応により、環化(環化縮合、環化処理)することで、形成又は導入できる。環化は、環化触媒[例えば、リン系触媒(例えば、リン酸ステアリル等のリン酸エステル)]の存在下で行ってもよい。
このような重合工程(及び必要に応じて環化工程)を経て、アクリル系ポリマーが得られる。
なお、重合工程を経て得られたアクリル系ポリマーは、適宜、慣用の手法にて精製、分離等してもよい。
[用途、組成物、成形体等]
アクリル系ポリマーは、樹脂として使用でき、組成物(樹脂組成物)を構成してもよい。
そのため、本発明には、アクリル系ポリマーを含む組成物を包含する。
本明細書において、「樹脂」とは「ポリマー(重合体ともいう)」よりも広い概念である。樹脂は、1種または2種以上のポリマーを含むことができる。「組成物(樹脂組成物)」とはポリマー以外の材料、例えば添加剤を含むことができる。
組成物において、樹脂成分は、1種又は2種以上の上述のアクリル系ポリマーのみで構成されていてもよく、上述のアクリル系ポリマーと他のポリマーとを組み合わせて構成されていてもよい。
他のポリマーとしては、所望の物性、用途等に応じて適宜選択でき、特に限定されず、熱可塑性ポリマーであってもよく、硬化性ポリマーであってもよく、これらを組み合わせてもよい。他のポリマーは、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
他のポリマーの具体例としては、オレフィン系ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等)、ハロゲン系ポリマー(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化ビニル系ポリマー)、スチレン系ポリマー[例えば、ポリスチレン、スチレン系共重合体(例えば、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(ABS樹脂)、アクリレート−スチレン−アクリロニトリル共重合体(ASA樹脂)等)等]、ポリエステル系ポリマー(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の芳香族ポリエステル)、ポリアミド系ポリマー(例えば、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610等の脂肪族ポリアミド系ポリマー)、ポリアセタール系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリフェニレンオキシド系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリスルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ゴム質重合体[例えば、ゴム(ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴム等)を配合したスチレン系ポリマー(例えば、ABS樹脂、ASA樹脂等のスチレン系共重合体)等]、セルロース系ポリマー(セルロース誘導体)、熱可塑性エラストマー(スチレン系エラストマー等)等が挙げられる。
他のポリマーには、上述の本実施形態のアクリル系ポリマーの範囲から外れるアクリル系ポリマーも含まれる。
なお、樹脂において、上述のアクリル系ポリマーと他のポリマーとの存在形態は、特に限定されず、ポリマーブレンドであってもよく、上述のアクリル系ポリマーと他のポリマーとが化学的に結合していてもよい。
樹脂が、他のポリマーを含む場合、他のポリマーの含有割合は、樹脂成分中、例えば、90質量%以下(例えば、0.1〜85質量%)程度の範囲から選択でき、80質量%以下(例えば、0.5〜70質量%)、好ましくは60質量%以下(例えば、1〜55質量%)程度であってもよく、50質量%以下(例えば、2〜45質量%)等であってもよい。
組成物は、必要に応じて他の成分(添加剤)を含んでいてもよい。他の成分としては、特に限定されず、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤、補強材、難燃剤、帯電防止剤、有機フィラー、無機フィラー、ブロッキング防止剤、樹脂改質剤、有機充填剤、無機充填剤、可塑剤、滑剤、位相差低減等が挙げられる。
他の成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
組成物が、他の成分(非樹脂成分)を含む場合、他の成分の割合は、組成物中に、例えば、0.01〜10質量%(例えば、0.05〜5質量%)程度であってもよい。
なお、組成物(又は樹脂)の重量平均分子量、メルトフローレート、ガラス転移温度、黄色度、全光線透過率等は、上述のアクリル系ポリマーと同様であってもよく、異なっていてもよい。
本実施形態のアクリル系ポリマー、樹脂又は組成物は、成形体(成形品)として使用可能である。
このような成形体の形状は、特に限定されず、二次元的形状[例えば、フィルム(又はシート)等]、三次元的形状(例えば、ブロック状等)等のいずれであってもよい。
成形体(成形品)は、上記組成物と同様の物性(黄色度、ガラス転移温度、全光線透過率等)を有していてもよい。このような物性値は、上記と同様の範囲から選択できる。
成形体(成形品)の黄色度は、例えば、2以下、好ましくは1.7以下、さらに好ましくは1.5以下であってもよく、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.1以下、1.0以下などであってもよい。
成形体の製造方法(成形方法)としては、成形体の形態等に応じて選択でき、公知の成形方法(例えば、押出成形、射出成形、注型成形、ブロー成形、発泡成形等)を利用できるが、上述のアクリル系ポリマーは流動性に優れるため、射出成形に好適に適用することができる。
成形体は、種々の用途に適用でき、例えば、光学用途に好適に適用することができる。
具体的な用途の例を挙げると、例えば、導光部材、フィルム用途、レンズ(光学レンズ等)、カバー、発泡体用途(例えば、緩衝材、保温・断熱材、制振材、防音材、シール材、パッキング材等)等の各種用途が挙げられるが、射出成形により成形可能なレンズに好適に適用することができる。
レンズ(光学レンズ等)としては、例えば、フレネルレンズ、リニアフレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、平面プリズム、フライアイレンズ、非球面レンズ、コンデンサーレンズ、マイクロレンズ、コリメーターレンズ、凹レンズ、凸レンズ、回折レンズ等が挙げられる。
レンズの用途としては、例えば、ヘッドアップディスプレイ用、LIDAR装置用等が挙げられる。このような用途のレンズとしては、例えば、ヘッドアップディスプレイに用いるフレネルレンズ、コンデンサーレンズ、LIDAR装置に用いるフレネルレンズ、コンデンサーレンズ、コリメーターレンズ、凸レンズ等が挙げられる。
以下に、実施例を示すことにより本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは全て本発明の技術的範囲に包含される。
(1) 分析方法
(1−1) 重量平均分子量(Mw)
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算により求めた。測定に用いた装置及び測定条件は以下のとおりである。
−システム:東ソー社製GPCシステム HLC−8220
−測定側カラム構成
ガードカラム:東ソー社製、TSKguardcolumn SuperHZ−L
分離カラム:東ソー社製、TSKgel SuperHZM−M 2本直列接続
−リファレンス側カラム構成
リファレンスカラム:東ソー製、TSKgel SuperH−RC
−展開溶媒:クロロホルム(和光純薬工業社製、特級)
−展開溶媒の流量:0.6mL/分
−標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー社製、PS−オリゴマーキット)
−カラム温度:40℃
(1−2) メルトフローレート(MFR)
メルトフローレートは、JIS K 7210 A法に準拠して、温度230℃、荷重3.8kgf(37N)で測定した。
(1−3) ガラス転移温度(Tg)
ガラス転移温度は、JIS K 7121の規定に準拠して求めた。具体的には、示差走査熱量計(リガク社製、Thermo plus EVO DSC−8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から、始点法により評価した。リファレンスには、α−アルミナを用いた。
(1−4) アクリル系ポリマーの黄色度(YI)
アクリル系ポリマーの黄色度は、JIS K 7373の規定に準拠して求めた。具体的には、分光光度計(島津製作所社製、UV−3600)を用い、スリット幅8.0、視野角2°、C2度光源、波長380nm〜780nmの範囲で、アクリル系ポリマー10.0gをクロロホルム40.0gに溶解した20質量%の溶液を、10センチのセルを用いて測定した。
(1−5) 成形体の黄色度(YI)
成形体の黄色度は、分光光度計(島津製作所社製、UV−3600)を用い、スリット幅8.0、視野角2°、C2度光源、波長380nm〜780nmの範囲で、JIS K7373の規定に準拠し、厚さ3mmの成形体を測定した。成形体は、得られたペレットを100℃で12時間以上乾燥した後、射出成形機(日精樹脂社製、NS40−5A)を用い、成形温度215℃、金型温度70℃、金型サイズ100mm×100mm×厚さ3mmにて作製した。
(1−6) 応力光学係数(Cr)
応力光学係数Crは、以下のように評価した。評価対象のアクリル系ポリマーを溶融プレスによりフィルムに成形して未延伸フィルム(厚さ100μm)を作製した。次に、作製した未延伸フィルムを60mm×20mmの長方形に切り出して評価試料とし、1N/mm以下の応力が試料に加わるように選択した錘を、試料の短辺の一つに取り付けた。次に、取り付けた錘が下端となるように、試料を定温乾燥機(DOV−450A、アズワン社製)にチャック間40mmでセットした。定温乾燥機の設定温度を評価対象のアクリル系ポリマーのTg+3℃とし、試料をセットする前に、定温乾燥機を当該温度にまで予熱しておいた。試料をセットした後、定温乾燥機の設定温度を変化させることなく約30分間保持することにより、取り付けた錘の荷重に基づく試料の一軸延伸を実施した。次に、定温乾燥機を、機内の温度がアクリル系ポリマーのTg−40℃になるまで、約1℃/分の冷却速度で冷却した。冷却後、フィルムを乾燥機から取り出し、延伸後のフィルムの長さ及び厚さ、錘の重量、並びに延伸後のフィルムの波長590nmの光に対する面内位相差Reを、以下に示す方法で測定した。
同様の測定を、錘の重さを変えながら一つのアクリル系ポリマーに対して計4回実施し、その結果から、アクリル系ポリマーの応力光学係数Crを算出した。Crの算出方法は、『透明プラスチックの最前線(高分子学会編)』のpp.37−44に記載されている方法に従った。具体的には、延伸後のフィルムの面内位相差Re及び厚さから当該フィルムのΔn(=nx−ny)を、錘の重さ並びに延伸後のフィルムの長さ及び厚さから、延伸時にフィルムに加わった延伸応力σ(単位:N/m)を求め、4回の測定により得られたそれぞれのΔn及びσを、Δnを縦軸の値、σを横軸の値として座標を定め、これをプロットした。次に、プロットした4点を結ぶ近似直線の傾きを最小二乗法により求め、これをアクリル系ポリマーのCrとした。
(1−7) 面内位相差(Re)
フィルムの波長590nmの光に対する面内位相差Reは、位相差フィルム・光学材料検査装置RETS−100(大塚電子製)を用いて、入射角40°の条件で測定した。面内位相差Reは、フィルムの面内における遅相軸方向(フィルム面内において最大の屈折率を示す方向)の屈折率をnx、フィルムの面内における進相軸方向(フィルム面内においてnxと垂直な方向)の屈折率をny、フィルムの厚さ方向の屈折率をnz、フィルムの厚さをdとして、下記式により与えられる。
Re=(nx−ny)×d
(1−8) 全光線透過率
全光線透過率は、濁度計(日本電色工業社製、NDH 5000)を用い、JIS K7361の規定に準拠し、厚さ3mmの成形体を測定した。成形体は、得られたペレットを100℃で12時間以上乾燥した後、射出成形機(日精樹脂社製、NS40−5A)を用い、成形温度215℃、金型温度70℃、金型サイズ100mm×100mm×厚さ3mmにて作製した。
(2) アクリル系ポリマーの製造
(2−1)実施例1[アクリル系ポリマー(A1)の製造]
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管及び滴下ポンプを備えた反応容器に、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(RHMA)5.40重量部、メタクリル酸メチル(MMA)37.6重量部、スチレン(St)0.450重量部、トルエン90.0重量部仕込み、窒素を通じつつ105℃まで昇温した。
初期開始剤として、トルエン3.63重量部、t−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス(登録商標)570)0.245重量部からなる溶液を9分かけて滴下しながら105℃〜110℃で溶液重合を行った。そして、その11分後に、滴下開始剤としてトルエン4.42重量部、t−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス(登録商標)570)0.298重量部からなる溶液を180分かけて滴下した。また、滴下開始剤投入と同時に、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(RHMA)6.6重量部、メタクリル酸メチル(MMA)45.9重量部、スチレン(St)4.05重量部からなる溶液を180分かけて滴下しながら105℃〜110℃で溶液重合を行い、更に100分かけて熟成を行った。
得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)として、トルエン1.20重量部、リン酸ステアリル(堺化学工業社製、Phoslex A−18)0.0750重量部からなる溶液を加え、約90℃〜110℃の還流下において1.5時間、ラクトン環構造を形成するための環化縮合反応を進行させた。
次に、得られた重合溶液を220℃に保持した多管式熱交換器に通して環化縮合反応を完結させた後、先端部にリーフディスク型のポリマーフィルター(濾過精度5μm)が配置されたベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)に、樹脂量換算で90重量部/時の処理速度で導入して、重合溶液を脱揮した。用いたベントタイプスクリュー二軸押出機のリアベント数は1個、フォアベント数は4個(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)とし、バレル温度は220℃、減圧度は13.3〜400hPa(10〜300mmHg)とした。脱揮の際、イオン交換水を1.3重量部/時の投入速度で第1、第2、第3ベントの後ろから投入した。
得られたアクリル系ポリマー(A1)について、上述の分析方法で評価した結果を表1に示す。
(2−2)実施例2[アクリル系ポリマー(A2)の製造]
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管及び滴下ポンプを備えた反応容器に、シクロヘキシルマレイミド(CHMI)4.00重量部、メタクリル酸メチル(MMA)35.6重量部、トルエン92.5重量部、アデカズタブ2112を0.10重量部仕込み、窒素を通じつつ105℃まで昇温した。
初期開始剤として、トルエン0.83重量部、tert−ブチルパ−オキシイソプロピルカ−ボネ−ト(化薬アクゾ株式会社製、カヤカルボンBIC−75)0.32重量部からなる溶液を9分かけて滴下しながら105℃〜110℃で溶液重合を行った。そして、その1分後に、滴下開始剤としてトルエン7.82重量部、tert−ブチルパ−オキシイソプロピルカ−ボネ−ト(化薬アクゾ株式会社製、カヤカルボンBIC−75)0.35重量部、モノマーとしてスチレン(St)1.00重量部からなる溶液を240分かけて滴下した。また同時に、シクロヘキシルマレイミド(CHMI)6.00重量部、メタクリル酸メチル(MMA)53.4重量部からなる溶液を180分かけて滴下しながら105℃〜110℃で溶液重合を行い、初期開始剤投入開始から420分かけて重合を行った。
得られた重合溶液を220℃に保持した多管式熱交換器に通した後、先端部にリーフディスク型のポリマーフィルター(濾過精度5μm)が配置されたベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)に、樹脂量換算で90重量部/時の処理速度で導入して、重合溶液を脱揮した。用いたベントタイプスクリュー二軸押出機のリアベント数は1個、フォアベント数は4個(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)とし、バレル温度は220℃、減圧度は13.3〜400hPa(10〜300mmHg)とした。脱揮の際、イオン交換水を1.3重量部/時の投入速度で第1、第2、第3ベントの後ろから投入した。
得られたアクリル系ポリマー(A2)について、上述の分析方法で評価した結果を表1に示す。
(2−3)比較例1[アクリル系ポリマー(A3)の製造]
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管及び滴下ポンプを備えた反応容器に、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(RHMA)12.0重量部、メタクリル酸メチル(MMA)83.5重量部、トルエン83.6重量部、亜りん酸トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)0.500重量部、n−ドデシルメルカプタンを0.0700重量部仕込み、仕込み、窒素を通じつつ105℃まで昇温した。
初期開始剤としてトルエン0.545重量部、t−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス(登録商標)570)0.0957重量部からなる溶液を加え、その5分後に、トルエン5.64重量部、スチレン(St)4.50重量部、滴下開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート0.191重量部からなる溶液を2時間かけて滴下しながら100℃〜110℃で溶液重合を行い、更に4時間かけて熟成を行った。
得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)として、トルエン1.09重量部、リン酸ステアリル(堺化学工業社製、Phoslex A−18)0.075重量部からなる溶液を加え、約90℃〜110℃の還流下において1.5時間、ラクトン環構造を形成するための環化縮合反応を進行させた。
次に、得られた重合溶液を220℃に保持した多管式熱交換器に通して環化縮合反応を完結させた後、先端部にリーフディスク型のポリマーフィルター(濾過精度5μm)が配置されたベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)に、樹脂量換算で90重量部/時の処理速度で導入して、重合溶液を脱揮した。用いたベントタイプスクリュー二軸押出機のリアベント数は1個、フォアベント数は4個(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)とし、バレル温度は220℃、減圧度は13.3〜400hPa(10〜300mmHg)とした。脱揮の際、イオン交換水を1.3重量部/時の投入速度で第1、第2、第3ベントの後ろから投入した。
得られたアクリル系ポリマー(A3)について、ペレットを100℃で12時間以上乾燥した後、射出成形機(日精樹脂社製、NS40−5A)を用い、成形温度215℃、金型温度70℃にて成形を行なったが、焼けが発生し評価可能な成形体を得ることができなかった。
Figure 2021050255

Claims (6)

  1. 温度230℃、荷重37Nで測定したメルトフローレートが3.0g/10分以上8.0g/10分以下であり、
    ガラス転移温度が110℃以上であり、且つ
    応力光学係数の絶対値が15×10−11Pa−1以下であるアクリル系ポリマー。
  2. 黄色度が3.5以下である、請求項1に記載のアクリル系ポリマー。
  3. 重量平均分子量が50000以上100000未満である、請求項1又は2に記載のアクリル系ポリマー。
  4. 主鎖に環構造を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアクリル系ポリマー。
  5. レンズ用である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアクリル系ポリマー。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のアクリル系ポリマーの製造方法であって、
    モノマーを分割添加、又は滴下しながら重合を行う重合工程を備える、アクリル系ポリマーの製造方法。
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