JP2021049574A - 平角線の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】面取り加工設備の簡素化と切削ロスの低減化を図ることにより、面取り部を有する平角線を低コストに製造する。【解決手段】平角線1’の製造方法は、平角線素材1に面取り加工を施す面取り工程S2と、面取り加工が施された部分で平角線素材1を切断して、端部に面取り部5を有する平角線1’を得る切断工程S3とを具備する。面取り工程S2で、平角線素材1の外周に設けられ相反する向きを指向する二つの平坦面部2a,2bのうち一方の平坦面部2aの表層部2a1に引張り応力分布を生成すると共に、表層部2a1に刃状部材11を押し当てて一方の平坦面部2aに切込み6を入れることで、切込み6を起点として一対の面取り部5,5を形成する。【選択図】図6

Description

本発明は、平角線の製造方法に関し、特に平角線の端部に面取り部を設けるための技術に関する。
近年、環境問題に鑑み電気自動車やハイブリッド車など、車両の駆動装置やその周辺機器にモータを採用する動きが加速している。上記車両へ搭載されるモータには、搭載可能なスペースの関係上、小型であることが求められる一方で、車両の駆動性能を向上させるべく高出力であることが求められることが多い。
ここで、モータの高出力化のためには、ステータコイルに流す電流値を高める必要がある。その一方で、スペースが制限された条件下で効率よくコイルに流れる電流値を高めるためには、断面が略矩形状をなし占積率が相対的に高い平角線(平角導線)でコイルを構成することが考えられる。
この平角線は、ステータコアの円周方向に一定の間隔で形成されたスロット内に予め定められた順序で配置されることにより、三相のコイルを構成する。一方、この平角線は周囲を絶縁被膜で覆われた形態をなす。よって、各相を構成する平角線を電気的に接続するためには、平角線の端部の絶縁被膜を除去して平角線の端部同士を接合する必要がある。
ここで、特許文献1には、予め所定の長さに切断して得た平角線をその長手方向軸線まわりに回転させながら所定の方向に平角線を搬送して、搬送方向に沿って設けられた複数の切削工程で、平角線の角部に順次面取り加工(切削加工)を施す方法が開示されている。
特開2015−89837号公報
しかしながら、特許文献1に記載のように、平角線を回転させながら複数の角部に面取り加工を施す場合には、平角線の搬送と姿勢変更の二つの機能を備えた搬送装置が必要となるため、この搬送装置を備えた面取り加工設備の構造が複雑化し、設備コストの高騰を招く。また、面取り加工を施す角部の数だけ面取り工程が必要となり、加工ラインが長大化することによっても設備コストの高騰を避けられない。何より、上述のように切削加工で角部に面取り加工を施す場合、無視できない量の切削カスが発生するため、多くの場合、銅線を構成する高価な材料である銅の切削ロスを招き、材料コストの面でも好ましくない。
以上の事情に鑑み、本明細書では、面取り加工設備の簡素化と切削ロスの低減化を図ることにより、面取り部を有する平角線を低コストに製造することを、解決すべき技術課題とする。
前記課題の解決は、本発明に係る平角線の製造方法によって達成される。すなわち、この製造方法は、平角線素材に面取り加工を施す面取り工程と、面取り加工が施された部分で平角線素材を切断して、端部に面取り部を有する平角線を得る切断工程とを具備し、面取り工程で、平角線素材の外周に設けられ相反する向きを指向する二つの平坦面部のうち一方の平坦面部の表層部に引張り応力分布を生成すると共に、表層部に刃状部材を押し当てて一方の平坦面部に切込みを入れることで、切込みを起点として一対の面取り部を形成する点をもって特徴付けられる。
このように、本発明に係る平角線の製造方法では、平角線素材の外周に設けられた一方の平坦面部の表層部に引張り応力分布を生成すると共に、当該表層部に刃状部材を押し当てて切込みを入れることで、一対の面取り部を形成するようにした。これにより、切込みが形成された部分に生成されていた引張り応力分布が解消(解放)され、引張り応力分布が解消された部分に、切込みが開く向きの変形が生じる。そのため、必要以上に刃状部材を切込み部分に押込まなくても、応力解放に伴う変形によって切込みが自ずと進展する。従って、本発明によれば、素材を削り取ることなく面取り部を形成することができ、これにより材料コストの低減化を図ることができる。
ここで、例えば図11に示すように、平角線素材1のうち面取り加工対象となる部分に対し何らの引張り応力分布を生成しない状態で、単に塑性加工用のパンチ100を平角線素材1に押込んで、一対の面取り部を形成する場合を考える。この場合、パンチ100の押込みにより、平角線素材1をパンチ100に準じた形状に塑性変形させて、平角線素材1に一対の面取り部5,5を形成することはできる(図12を参照)。しかしながら、このような方法だと、パンチ100の押込みにより生じる塑性流動を制御することは難しい。そのため、例えば図13に示すように、パンチ100の押込みにより生じた塑性流動が平角線素材1の幅方向(ここでいう幅方向とは、押込み方向及び平角線素材1の長手方向の双方に対して直交する向きをいうものとする。以下、本明細書において同じ。)に向けて生じ、平角線素材1が幅方向に膨らむといった問題があった。これに対して、本発明に係る製造方法であれば、上述したように、必要以上に刃状部材を切込み部分に押込まなくても、応力解放に伴う変形によって切込みが自ずと進展し、面取り部となる。従って、本発明によれば、面取り加工時に塑性流動が発生する事態を可及的に防止しつつ、適度な大きさ及び形状の面取り部を安定して形成することが可能となる。
また、本発明によれば、所定の長さに切断される前の平角線(平角線素材)に対して面取り加工を施すことができるので、平角線素材に対して複数の加工を施す加工ライン上(インライン上)で面取り加工を施すことができる。よって、切断前の面取り加工の分だけ切断して得た平角線に対する面取り加工(切断後の面取り加工)の工数を減らすことができる。従って、面取り加工用設備を簡素化でき、設備コストの低減化を図ることが可能となる。
また、本発明に係る平角線の製造方法においては、面取り工程で、平角線素材のうち切込みを入れる部分の長手方向両側を拘束した状態で、他方の平坦面部を所定の押込み部材で押込んで一方の平坦面部を凸状に曲げ変形させることで、一方の平坦面部の表層部に引張り応力分布を生成してもよい。
平角線素材の一方の平坦面部に引張り応力分布を生成するための手段として、例えば平角線素材をその長手方向に引張ることが考えられる。しかしながら、平角線素材は、通常、連続的にドラム等から引き出されて搬送される点を考慮すると、当該搬送設備内(インライン)で平角線素材を部分的に引張ることは難しい。これに対して、上述のように拘束した状態の平角線素材を押込み部材で押込んで凸状に曲げ変形させることで、引張り応力分布を生成するのであれば、インライン上であっても比較的容易に引張り応力分布を生成することができる。よって、インライン上で効率よく平角線素材に面取り加工を施して、加工効率ひいては生産効率を高めることが可能となる。
また、本発明に係る平角線の製造方法においては、一方の平坦面部に刃状部材を押当てた状態を維持しながら、押込み部材による平角線素材の押込みに追従して刃状部材を押込み方向に移動させてもよい。
上述のように押込み部材で平角線素材を押込んで一方の平坦面部を凸状に曲げ変形させる場合、凸状に曲げ変形させた状態とした後、例えば引き続き押込み部材による押込みを継続することで、所定位置に停止した状態の刃状部材を押し当てることによっても、一対の面取り部を形成することは可能だが、この方法だと、押込み部材による打痕が他方の平坦面部に残る可能性がある。他方の平坦面部は、上述したように他の平角線との接合面となる可能性があるため、打痕の発生は形状精度ひいては接合強度を確保する観点からも好ましくない。これに対して、上述のように、一方の平坦面部に刃状部材を押当てた状態を維持しながら、押込み部材による平角線の押込みに追従して刃状部材を押込み方向に移動させることによって、所定の引張り応力分布が生成された状態の一方の平坦面部の表層部に刃状部材を押し当てた状態を維持しつつ、押込み部材による押込み力を緩和することができる。よって、幅方向への変形(膨らみ)を回避して面取り部を形成しつつも、押込み部材の押込みによる打痕の発生を可及的に防止して、良好な形状精度を示す平角線を得ることが可能となる。
以上のように、本発明によれば、面取り加工設備の簡素化と切削ロスの低減化を図ることにより、面取り部を有する平角線を低コストに製造することが可能となる。
本発明の一実施形態に係る平角線の製造方法の要部の手順を示すフローチャートである。 図1に示す被膜除去工程の概要を説明するための側面図である。 図1に示す切断前面取り工程に使用する面取り加工装置の側面図である。 図3に示す面取り加工装置を矢印Aの方向から見た平面図である。 図3に示す装置を用いた面取り加工の一例を説明するための図で、押込み部材による平角線素材の押込みを開始した直後の状態を示す側面図である。 図3に示す装置を用いた面取り加工の一例を説明するための図で、刃状部材を平角線に押し当てた直後の状態を示す側面図である。 図6に示す状態における平角線の切込みが形成された部分の拡大図である。 図3に示す装置を用いた面取り加工の一例を説明するための図で、面取り加工により一対の面取り部が平角線に形成された状態を示す側面図である。 図8に示す状態の平角線を矢印Bの向きから見た平面図である。 本発明の他の実施形態に係る切断前面取り工程に使用する面取り加工装置の平面図である。 本発明との対比に係る面取り加工に使用する面取り加工装置の側面図である。 図11に示す面取り加工装置を用いた面取り加工が完了した状態を示す側面図である。 図12に示す状態の平角線を矢印Cの向きから見た平面図である。
以下、本発明の一実施形態に係る平角線の製造方法の内容を図面に基づいて説明する。
図1は、平角線の製造方法の要部の手順を示している。すなわち、本発明に係る平角線の製造方法は、被膜除去工程S1と、切断前面取り工程S2と、切断工程S3と、切断後面取り工程S4とを具備する。ここで、切断前面取り工程S2が、本発明に係る面取り工程に相当する。以下、各工程S1〜S4の詳細を順に説明する。
(S1)被膜除去工程
被膜除去工程S1では、後述する面取り工程S2の前に、平角線の端部となる部分を覆う絶縁被膜の一部を除去する。言い換えると、図2に示すように、平角線素材1を構成する長尺の導体2のうち面取り工程S2で面取り加工を受ける部分を覆う絶縁被膜3の一部を除去する。本実施形態では、この工程S1は、図2に示すように、平角線素材1の絶縁被膜3に対してプレカットを施すプレカット工程S11と、プレカット工程S11よりも平角線素材1の搬送方向下流側に設けられ、絶縁被膜3のうちプレカットを施した部分を剥離する剥離工程S12とを有する。
(S11)プレカット工程
このうち、プレカット工程S11では、平角線素材1の外周を覆う絶縁被膜3のうち、平角線素材1のフラットワイズ側(幅広側)の平坦部3aに切れ目4を形成する。この切れ目4は、幅広側の平坦部3aの幅方向(本明細書では、平坦部3aに沿った向きでかつ平角線素材1の長手方向に直交する向きを意味する。)に沿って形成される。また、切れ目4は平角線素材1の長手方向に所定の間隔を空けて形成される。本実施形態では、導体2を介して互いに対向する一対の平坦部3aそれぞれに対して一組の切れ目4が形成される(図2を参照)。
(S12)剥離工程
剥離工程S12では、絶縁被膜3の平坦部3aのうち予め一組の切れ目4により区画された領域に対して、所定の剥離手段により剥離処理を施す。この際、適用可能な剥離手段は任意であり、例えば図示は省略するが、剥離用の刃部材を平角線素材1の平坦部3aのうち長手方向で隣り合う一組の切れ目4の間の部分に当て、幅方向に滑らせることで、平坦部3aのうち一組の切れ目4で区画された部分が剥がされ、平角形状を成す導体2の表面から除去される。上述した剥離動作は、導体2を介して互いに対向する一対の平坦部3aに対して行われる。本実施形態では、絶縁被膜3のうち幅広側の平坦部3aのみを除去した状態で、次の面取り工程S2が実施される。そのため、被膜除去工程S1が完了した時点では、平角線素材1の外周を覆う絶縁被膜3のうち、エッジワイズ側(幅狭側)の平坦部3bが未だ導体2の表面に付着した状態にある。言い換えると、導体2の幅広側の平坦面部2a,2bのみが露出し、幅狭側の平坦面部2c,2d(後述する図4を参照)は未だ絶縁被膜3に覆われた状態にある。
(S2)切断前面取り工程
切断前面取り工程S2では、図2に示すように、平角線1’の端部のうち幅広側の平坦面部(ここでは導体2の幅広側の平坦面部2a)となる部分に面取り加工を施す。本実施形態では、導体2の外周面を構成し相反する向きを指向する一対の平坦面部2aのうち、一方の平坦面部2a(図2では下側の平坦面部2a)であって絶縁被膜3が除去された部分に、面取り加工を施す。
図3は、切断前面取り工程S2で使用する面取り加工装置10の側面図を示している。この面取り加工装置10は、導体2の一方の平坦面部2aに切込みを形成するための刃状部材11と、一方の平坦面部2aと相反する向き(図3では上向き)を指向する他方の平坦面部2bを押込むための押込み部材12と、平角線素材1のうち面取り加工を施す部分の長手方向両側を拘束する一組の拘束部材13,13とを具備する。本実施形態では、刃状部材11と押込み部材12とが共通の鉛直線上に位置している。また、一組の拘束部材13,13は、平角線素材1の長手方向が水平方向と一致するように平角線素材1を拘束する。
ここで、刃状部材11は、一方の平坦面部2aと対向する位置に配設される。刃状部材11の先端には、先細り形状をなす一対の刃面11a,11aが設けられている。これら一対の刃面11a,11aはともに平坦形状をなしている。この場合、一対の刃面11a,11aがなす角度(刃角度θ1)は、形成すべき一対の面取り部5,5の面取り角度θ2(図2を参照)に応じて、適宜設定される。例えば本実施形態では、最終的に取得すべき平角線1’の状態における面取り部5の角度(面取り角度θ3)が、面取り加工終了時(後述する図8を参照)において一対の面取り部5,5がそれぞれ水平方向に対してなす角度θ2よりも小さくなることを想定して、一対の刃面11a,11aがなす刃角度θ1を設定する。すなわち、刃角度θ1は、面取り角度θ2の二倍よりも大きく設定される。
また、本実施形態では、刃状部材11は、一方の平坦面部2aに刃状部材11を押当てた状態を維持しながら、押込み部材12による平角線素材1の押込みに追従して押込み方向に移動可能に構成される。ここでは、例えば刃状部材11の下方に緩衝部材14を設けて、押込み力又は押込み量に応じて刃状部材11を下方に追従移動できるように構成される。緩衝部材14は種々の材料で形成でき、例えばゴム、ウレタンなどで形成することが可能である。もちろん、上述のように刃状部材11を押込みに追従させて移動可能な限りにおいて、その構成は任意であり、例えば緩衝部材14に代えて、機械的に刃状部材11を追従移動可能な装置を適用することも可能である。何れにしても、押込み完了時における刃状部材11の鉛直方向位置が正確に設定できればよい。
押込み部材12はその先端(ここでは下端)に、他方の平坦面部2bを押込むための押込み面12aを有する。ここで押込み面12aの形状は任意であるが、押込みに伴う一方の平坦面部2aの曲げ変形時の形状(図6、図8を参照)が、押込み面12aの形状の影響を受ける(押込み面12aの形状を反映した形状となる)ことを考慮して、例えば断面円弧状に形成される。また、その大きさ(断面円弧状であればその曲率半径)と、最終的な押込み量は、それぞれ適宜に設定される。
なお、刃面11a、11aと押込み面12aともに、本実施形態では、平角線素材1の幅方向に沿って同一の断面形状をなしている。また、図4に示すように、刃面11a,11aと押込み面12aともに、平角線素材1の幅方向全域(すなわち双方の平担面部2a,2bの全域)にわたって刃面11a,11aと押込み面12aを押圧可能なように、それぞれの幅方向寸法が、平角線素材1の幅方向寸法よりも大きく設定される。
一組の拘束部材13,13は、平角線素材1の少なくとも面取り加工を施す部分に所定の曲げ変形を許容する限りにおいて、任意の位置で平角線素材1を拘束可能である。すなわち、本実施形態では、平角線素材1のうち絶縁被膜3で導体2が覆われた部分の両端部1a,1aを拘束可能なように、一組の拘束部材13,13の位置が設定される。もちろん、曲げ変形に支障がなければ、より面取り加工を施す部分に近い位置で平角線素材1を拘束してもよい。あるいは、絶縁被膜3に不要かつ過剰な負荷が生じない限りにおいて、面取り加工を施す部分から離れた位置で平角線素材1を拘束してもよい。
次に、上記構成の面取り加工装置10を用いた切断前面取り加工の一例を、主に図5〜図9に基づいて説明する。
まず、図3に示すように、平角線素材1を一組の拘束部材13,13で拘束した状態で、押込み部材12を下降させて、押込み部材12の先端を平角線素材1の導体2の他方の平坦面部2bのうち絶縁被膜3が除去された部分に押込む。これにより、図5に示すように、他方の平坦面部2bを含む導体2の長手方向の所定部分が曲げ変形を生じて、対応する一方の平坦面部2aも曲げ変形を生じる。その結果、その表層部2a1に所定の引張り応力分布が生成される。この引張り応力分布は、一方の平坦面部2aが刃状部材11に接触する前に生成されるのがよい。
このようにして引張り応力分布を生成した状態で引き続き押込み部材12を押込んで、平角線素材1の導体2に対し更なる曲げ変形を生じさせる。これにより、一方の平坦面部2aの表層部2a1に生成された引張り応力が全体的に増大すると共に、一方の平坦面部2aに刃状部材11が押し当てられる(図6を参照)。これにより、一方の平坦面部2aには刃面11a,11aに倣った形状の切込み6が形成される。
図7は、切込み6周辺を拡大して示した側面図である。図7に示すように、一方の平坦面部2aに切込み6が形成されることで、この切込み6が形成された部分に生成されていた引張り応力分布が解消(解放)される。そのため、引張り応力分布が解消された部分には、既に生成された切込み6が開く向きの変形が生じる(図7中、二点鎖線で示す状態)。この応力解放による変形によって、切込み6の進展が助長されるので、押込み部材12による押込みを継続することで、切込み6を無理なく安定的に所定の深さにまで進展させることができる。
以上のようにして押込み部材12の押込みに伴い切込み6を形成し、進展させることで、一対の面取り部5,5が形成される(図8を参照)。然る後、押込み部材12による押込み状態を解除すると共に一組の拘束部材13,13による拘束状態を解除して、平角線素材1をその長手方向に向けて搬送することで、平角線素材1のうち面取り加工を受けた部分の曲げ変形が解消する(図2を参照)。なお、この状態において、一対の面取り部5,5が形成された部分における平角線素材1の幅方向寸法は面取り加工前と実質的に変わっておらず、幅方向への膨らみは可及的に防止される(図9を参照)。
(S3)切断工程
切断工程S3では、平角線素材1のうち直前の工程(切断前面取り工程S2)で一対の面取り部5,5が形成された部分を所定の切断手段(例えばせん断加工)で切断する。これにより、例えば図2に示すように、一方の平坦面部2aの長手方向端部に面取り部5が形成されてなる平角線1’が得られる。
(S4)切断後面取り工程
このようにして平角線素材1を切断して、面取り部5を端部に有する平角線1’を得た後、図示は省略するが、必要に応じて、導体2の露出部分における角部、例えば幅広側の平坦面部2a(2b)と幅狭側の平坦面部2c(2d)との間の角部、平角線1の最も長手方向両端側に位置する導体2の先端面部と幅狭側の平坦面部2c(2d)との間の角部の一部又は全部に面取り加工を施す。なお、面取り加工の手段については任意であり、切削、型成形など種々の手段を適用することが可能である。また、面取り対象となる部位によって、面取り加工手段を異ならせても(複数の面取り加工手段を用いても)よい。
以上のようにして、各角部に対応する面取り部を形成すると共に、導体2の長手方向端部を被覆する絶縁被膜3の幅狭側の平坦部3bを除去することによって、平角線1’の端部に対する加工が完了する。然る後、所定の曲げ加工等を施すことにより、コイルセグメントとしての平角線が完成する。
このように、本発明に係る平角線の製造方法では、平角線素材を構成する導体2の外周に設けられた一方の平坦面部2aの表層部2a1に引張り応力分布を生成すると共に、当該表層部2a1に刃状部材11を押し当てて切込み6を入れることで、一対の面取り部5,5を形成するようにした。これにより、切込み6が形成された部分に生成されていた引張り応力分布が解消(解放)され、引張り応力分布が解消された部分に、切込み6が開く向きの変形が生じる。そのため、必要以上に刃状部材11を押込まなくても、応力解放に伴う変形によって切込み6が自ずと進展する。従って、本発明によれば、素材を削り取ることなく一対の面取り部5,5を形成することができ、これにより材料コストの低減化を図ることができる。
また、本発明に係る製造方法であれば、上述したように、必要以上に刃状部材11を切込み6が形成された部分に押込まなくても、応力解放に伴う変形によって切込み6が自ずと進展し、一対の面取り部5,5となる。従って、面取り加工時に塑性流動が発生する事態を可及的に防止しつつ、適度な大きさ及び形状の面取り部5を形成することが可能となる。
また、本発明によれば、所定の長さに切断される前の平角線(平角線素材1)に対して面取り加工を施すことができるので、平角線素材1に対して複数の加工を施す加工ライン上(インライン上)で面取り加工を施すことができる。よって、切断前の面取り加工(切断前面取り工程S2)の分だけ、切断して得た平角線1’に対する面取り加工(切断後面取り工程S4)の工数を減らすことができる。従って、面取り加工用設備を簡素化でき、設備コストの低減化を図ることが可能となる。
以上、本発明の一実施形態について述べたが、本発明に係る平角線の製造方法は、その趣旨を逸脱しない範囲において、上記以外の構成を採ることも可能である。
例えば、上記実施形態では、平角線素材1の幅広側の平坦面部(実際には導体2の幅広側の平坦面部2a,2b)に切断前面取り加工を施した場合を説明したが、もちろんこれ以外の部位に切断前面取り加工を施すことも可能である。例えば図10は、平角線素材1の幅狭側の平坦面部に切断前面取り加工を施すための面取り加工装置20の側面図を示している。この面取り加工装置20は、導体2の幅狭側の平坦面部2c,2dのうち一方の平坦面部2cに切込みを形成するための刃状部材21と、一方の平坦面部2cと相反する向き(図10では上向き)を指向する他方の平坦面部2dを押込むための押込み部材22と、平角線素材1のうち面取り加工を施す部分の長手方向両側を拘束する一組の拘束部材23,23とを具備する。本実施形態では、刃状部材21と押込み部材22とが共通の水平線上に位置している。また、一組の拘束部材23,23は、平角線素材1の長手方向が水平方向と一致するように平角線素材1を拘束する。ここで、刃状部材21と押込み部材22の構成は、移動方向が水平方向であることを除いて、図3等に示す実施形態の場合と同じである。
上記構成の面取り加工装置20を用いることで、先端面部と幅狭側の平坦面部2c(2d)との間の角部に面取り加工を施して、先端面部と幅狭側の平坦面部2c(2d)との間に面取り部(図示は省略)を形成することができる。この面取り工程は、例えば図1に示す切断前面取り工程S2の一部として、幅広側の平坦面部2aに対する面取り加工の後に実施することが可能である。
なお、切断前面取り工程S2の実施に当たり、面取り加工の対象となる部位を覆う絶縁被膜(幅広側の平坦部3a、幅狭側の平坦部3b)の除去は必須ではないが、これら絶縁被膜3が残った状態で本発明に係る切断前面取り工程S2を実施する場合、刃状部材11(21)の押し当てにより、少なくとも導体2の一部にまで切込みを形成することが肝要である。
また、上記実施形態では、切断前面取り工程S2で、平角線素材1のうち切込み6を入れる部分の長手方向両側を拘束した状態で、他方の平坦面部2b(2d)を所定の押込み部材12(22)で押込んで一方の平坦面部2a(2c)を凸状に曲げ変形させることで、一方の平坦面部2a(2c)の表層部2a1に引張り応力分布を生成する場合を説明したが、もちろんこれには限られない。例えば図示は省略するが、搬送性ないし加工性の点で特に問題がなければ、例えば平角線素材1を所定の方向に搬送しながら、その長手方向に引張るようにしてもよい。
1 平角線素材
1’ 平角線
2 導体
2a,2b 平坦面部(幅広側)
2a1 表層部
2c,2d 平坦面部(幅狭側)
3 絶縁被膜
3a 平坦部(幅広側)
3b 平坦部(幅狭側)
4 切れ目
5 面取り部
10,20 面取り加工装置
11,21 刃状部材
11a 刃面
12,22 押込み部材
12a 押込み面
13,23 拘束部材
14 緩衝部材
100 パンチ
S1 被膜除去工程
S11 プレカット工程
S12 剥離工程
S2 切断前面取り工程
S3 切断工程
S4 切断後面取り工程

Claims (2)

  1. 平角線素材に面取り加工を施す面取り工程と、
    前記面取り加工が施された部分で前記平角線素材を切断して、端部に面取り部を有する平角線を得る切断工程とを具備し、
    前記面取り工程で、前記平角線素材の外周に設けられ相反する向きを指向する二つの平坦面部のうち一方の平坦面部の表層部に引張り応力分布を生成すると共に、
    前記表層部に刃状部材を押し当てて前記一方の平坦面部に切込みを入れることで、前記切込みを起点として一対の面取り部を形成する、平角線の製造方法。
  2. 前記面取り工程で、前記平角線素材のうち前記切込みを入れる部分の長手方向両側を拘束した状態で、他方の平坦面部を所定の押込み部材で押込んで前記一方の平坦面部を凸状に曲げ変形させることで、前記一方の平坦面部の表層部に前記引張り応力分布を生成する請求項1に記載の平角線の製造方法。
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