JP2021042446A - 高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents
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一般に溶融亜鉛めっき鋼板は、冷延鋼板や熱延鋼板を下地鋼板として連続式溶融めっき設備(以下、「CGL」と称す。)で製造される。CGLでは、まず、前処理工程にて脱脂及び酸洗の少なくとも一方の処理を行い洗浄した後、或いは前処理工程を省略して予熱炉内で下地鋼板表面の油分を燃焼除去した後に、非酸化性雰囲気中又は還元性雰囲気中で加熱することで再結晶焼鈍を行う。その後、非酸化性雰囲気中又は還元性雰囲気中で鋼板をめっきに適した温度まで冷却してから、大気に触れさせることなくAl:0.1mass%〜0.3mass%程度を含有する溶融亜鉛めっき浴に鋼板を浸漬した後、浴上でガスワイピングを行うことでめっき付着量を制御した溶融亜鉛めっき鋼板(GI)が得られる。また、めっき皮膜中にAlを0.14mass%以下含有する溶融Znめっき鋼板(GI)を加熱して合金化処理することで合金化溶融亜鉛めっき鋼板が得られる。
つまり、高耐食化と高強度化とを両立させる溶融亜鉛めっき鋼板として、高強度溶融めっき鋼板が、自動車分野や建材分野において多く使われている。
ここで、めっき処理では、下地鋼板の最表面に酸化物等のめっき濡れ性を阻害する物質が形成或いは付着した場合において、めっき後にめっき液膜のはじき現象が起こる。特に下地が高強度鋼板の場合、前工程の焼鈍工程で形成した鋼中成分のSiやMn等の易酸化性元素が鋼板の表面に酸化物を形成するため、めっきはじき現象が一般の鋼板に比べて起こりやすい。尚、はじき現象は、めっき凝固が完了するまで起こるため、一旦ガスワイピングによるめっき付着量(膜厚)制御を行った後でも起こる。
この不均一な膜厚のめっき層を有する鋼板に調質圧延を施すと、全面が平坦化されるものの、厚膜部が周囲に比べロールに強く押されるため、そのめっき表面は周囲に比べて粗い形状となる。このように発現した表面形状の違いにより、めっき外観にむらが生じ、この外観むらをサザナミ模様と呼ぶ。
特許文献1〜3には、焼鈍炉内の雰囲気制御や鋼成分の制御により、焼鈍時のSiやMnの酸化物形成を抑制する方法が示されている。しかしながら、これらの方法を用いた場合、不めっきの抑制は可能となるが、サザナミ模様の抑制には至らなかった。
本発明の一実施形態に係る高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法では、連続式溶融亜鉛めっきライン(CGL)を用いて高強度溶融亜鉛めっき鋼板を製造する。高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造では、まず、めっき処理が施される鋼板である下地鋼板に対して、必要に応じて前処理を行う(前処理工程)。前処理工程の条件については、特に限定されず、適宜好ましい条件を採用すればよい。例えば、前処理工程では、脱脂及び酸洗の少なくとも一方の処理を行い、下地鋼板を洗浄してもよい。
C:0.01%以上0.18%以下
Cは、鋼組織としてマルテンサイトなどを形成させることで加工性を向上させる。必要な加工性を得るためには、0.01%以上含有させる必要がある。一方、C含有量が0.18%を越えると溶接性が劣化する。したがって、C含有量は0.01%以上0.18%以下とする。
Siは鋼を強化して良好な材質を得るのに有効な元素であり、本発明の目的とする強度(440MPa以上)を得るためには、0.02%以上含有させる必要がある。Si含有量が0.02%未満の場合、本発明の適用範囲とする強度が得られず、高加工時の耐めっき剥離性についても特に問題とならない。一方、Si含有量が2.0%を越えると、高加工時の耐めっき剥離性の改善が困難となってくる。したがって、Si含有量は0.02%以上2.0%以下とする。Si含有量が多くなるとTSは上昇し、伸びは減少する傾向があるため、要求される特性に応じてSi含有量を変化させることができる。特に高強度材には、0.4以上のSi含有量が好適に用いられる。
Mnは鋼の高強度化に有効な元素である。機械特性や強度を確保するためは1.0%以上含有させることが必要である。一方、Mn含有量が8.0%を越えると溶接性やめっき密着性の確保、強度と延性とのバランスの確保が困難になる。したがって、Mn含有量は1.0%以上8.0%以下とする。
Alは溶鋼の脱酸を目的に添加されるが、その含有量が0.001%未満の場合、この目的が達成されない。溶鋼の脱酸の効果は、Al含有量を0.001%以上とすることで得られる。一方、Al含有量が1.0%を越えるとコストアップになる。したがって、Al含有量は0.001%以上1.0%以下とする。
Pは不可避的に含有される元素のひとつであり、0.005%未満の含有量にするためには、コストの増大が懸念される。このため、P含有量は0.005%以上とする。一方、Pが0.060%を越えて含有されると、溶接性が劣化し、さらに、表面品質が劣化する。また、非合金化処理時にはめっき密着性が劣化し、合金化処理時には合金化処理温度を上昇させないと所望の合金化度とすることができない。また、所望の合金化度とするために合金化処理温度を上昇させると、延性が劣化すると同時に合金化めっき皮膜の密着性が劣化するため、所望の合金化度と良好な延性とを両立させた合金化めっき皮膜とすることができない。したがって、P含有量は、0.005%以上0.060%以下とする。
S:0.01%以下
Sは不可避的に含有される元素のひとつである。S含有量の下限は規定しないが、多量に含有されると溶接性が劣化するため含有量を0.01%以下とする。
Bは焼き入れ促進効果を目的に添加される元素であるが、含有量が0.001%未満ではこの効果が得られにくい。一方、B含有量が0.005%を超えるとめっき密着性が劣化する。よって、Bを含有する場合には、B含有量を0.001%以上0.005%以下とする。
Nbは強度調整の効果やMoとの複合添加によってめっき密着性改善効果を目的に添加される元素であるが、これらの効果が得られにくい。一方、Nb含有量が0.05%を超えると、コストアップを招く。よって、Nbを含有する場合には、Nb含有量を0.005%以上0.05%以下とする。
Tiは強度調整の効果を目的に添加される元素であるが、含有量が0.005%未満ではこの効果が得られにくい。一方、Ti含有量が0.05%を超えると、めっき密着性の劣化を招く。よって、Tiを含有する場合には、Ti含有量を0.005%以上0.05%以下とする。
Crは焼き入れ性向上の効果を目的に添加される元素であるが、含有量が0.001%未満ではこの効果が得られにくい。一方、Cr含有量が1.0%を超えるとCrが表面濃化するため、めっき密着性や溶接性が劣化する。よって、Crを含有する場合、Cr含有量を0.001%以上1.0%以下とする。
Moは強度調整の効果や、NbやNi、Cuとの複合添加時におけるめっき密着性改善効果を目的に添加される元素であるが、含有量が0.05%未満ではこれらの効果が得られにくい。一方、Mo含有量が1.0%を超えるとコストアップを招く。よって、Moを含有する場合、Mo含有量を0.05%以上1.0%以下とする。
Cuは残留γ相形成促進効果や、NiやMoとの複合添加時におけるめっき密着性改善効果を目的に添加される元素であるが、含有量が0.05%未満ではこの効果が得られにくい。一方、Cu含有量が1.0%を超えるとコストアップを招く。よって、Cuを含有する場合、Cu含有量は0.05%以上1.0%以下とする。
Niは残留γ相形成促進効果や、CuやMoとの複合添加時におけるめっき密着性改善効果を目的に添加される元素であるが、含有量が0.05%未満ではこの効果が得られにくい。一方、Ni含有量が1.0%を超えるとコストアップを招く。よって、Niを含有する場合、Ni含有量は0.05%以上1.0%以下とする。
下地鋼板は、酸洗脱スケールした熱延鋼板、又は、この熱延鋼板を冷間圧延して得られた冷延鋼板を用いることができる。さらに、鋼板の厚さは特に限定されないが、自動車車体や建材等の用途に用いる観点からは、1.0mm以上3.2mm以下であることが好ましい。
ウェットブラスト法によるブラスト処理時の投射距離(ノズルから鋼板までの距離)は、3mm超500mm未満であることが望ましい。投射距離が3mm以下であると、鋼板とノズルとが接触してしまう可能性がある。一方、投射距離が500mm以上であると、サザナミ模様の消失に必要なめっき最表面の研磨が十分に施せないおそれことがある。
ウェットブラスト法によるブラスト処理後の鋼板は、ブラストした粒子が残存しないよう、水洗し、乾燥する。水洗方法や乾燥方法は限定されず、適宜必要な方法を用いればよい。
以上の各工程が行われ、最終的にブラスト工程が行われることで、めっき外観、特にサザナミ模様のない高強度溶融亜鉛めっき鋼板が製造される。なお、上述のように、合金化工程が行われた高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板となる。
(1)鋼板に溶融亜鉛めっきを施し、鋼板の表面に亜鉛めっき層を形成する溶融亜鉛めっき工程と、溶融亜鉛めっき工程の後、ウェットブラスト法により、粒径が6μm以上150μm以下のブラスト粒子で鋼板の表面をブラスト処理するブラスト工程と、を備え、溶融亜鉛めっき工程においてめっきされる鋼板は、質量%で、C:0.01%以上0.18%以下、Si:0.02%以上2.0%以下、Mn:1.0%以上8.0%以下、Al:0.001%以上1.0%以下、P:0.005%以上0.060%以下、S:0.01%以下、を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。
上記(2)の構成によれば、十分な耐食性を得ることができ、たれ模様の発生による外観の劣化を防止することができる。
(3)上記(1)または(2)の構成において、溶融亜鉛めっき工程の後、鋼板を調質圧延する調質圧延工程をさらに備え、ブラスト工程では、調質圧延工程にて調質圧延された鋼板にブラスト処理を施す。
上記(3)の構成によれば、鋼板の 降伏点伸びを消失させることができ、機械的特性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板を製造することができる。
上記(4)の構成によれば、耐食性によりすぐれた高強度溶融亜鉛めっき鋼板である、高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造することができる。
上記(5)の構成によれば、高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板において、上記(3)と同様な効果が得られる。
上記(6)の構成によれば、めっき表面の研磨効果が高まり、容易に外観を良好にすることが可能となる。
(7)上記(1)〜(6)のいずれか1つの構成において、ブラスト粒子として、粒径が80μm以下のものを用いる。
上記(7)の構成によれば、めっき外観により良好にすることができる。
上記(8)の構成によれば、L値の低い外観に制御することができる。
(9)上記(1)〜(8)のいずれか1つの構成において、溶融亜鉛めっき工程においてめっきされる鋼板は、質量%で、B:0.001%以上0.005%以下、Nb:0.005%以上0.05%以下、Ti:0.005%以上0.05%以下、Cr:0.001%以上1.0%以下、Mo:0.05以上1.0%以下、Cu:0.05%以上1.0%以下、Ni:0.05以上1.0%以下の中から選ばれる1種以上の元素をさらに含有する。
上記(9)の構成によれば、鋼板の強度と延性とのバランスの制御を細かく行うことができる。
サンプルとなる全ての溶融亜鉛めっき鋼板は、連続式溶融めっき設備で製造した。冷間圧延された表1に示す鋼成分、板厚1.0mmの高強度鋼板を下地鋼板として用い、めっき付着量を片面あたり60g/m2、すなわち両面で120g/m2の条件で溶融亜鉛めっき処理を施した(溶融亜鉛めっき工程)。また、合金化工程を行う条件では、めっき組成として、Feが10%となるように制御して合金化処理を施した。さらに、全ての鋼板に対して、Raが1.3μm、PPIが380のショットダルロールを用いて、調質圧延を施した(調質圧延工程)。そして、得られた溶融亜鉛めっき鋼板の中から、サザナミ模様を有する部分を230mm×350mmサイズに剪断してサンプルとした。
得られた結果を、表3に示す。なお、表3において、合金化工程における「×」、「○」は、合金化工程の実施有無を示すものであり、「×」は合金化工程を実施していない条件、つまり高強度非合金化溶融亜鉛めっき鋼板の条件を示し、「○」は合金化工程を実施した条件、つまり高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の条件を示す。また、表3において、めっき外観の評価における評価結果の記号は、以下の通りである。
めっき外観を目視で確認し、以下の評価基準により判定し、○を合格基準とした。
○:サザナミ模様の存在が認められない
×:サザナミ模様の存在が認められる
・めっき外観の均一性
めっき外観を目視で確認し、以下の評価基準により判定し、○を合格基準とした。
〇:むらが認められない均一な表面
×:むらが認められる不均一な表面
Claims (9)
- 鋼板に溶融亜鉛めっきを施し、前記鋼板の表面に亜鉛めっき層を形成する溶融亜鉛めっき工程と、
前記溶融亜鉛めっき工程の後、ウェットブラスト法により、粒径が6μm以上150μm以下のブラスト粒子で前記鋼板の表面をブラスト処理するブラスト工程と、
を備え、
前記溶融亜鉛めっき工程においてめっきされる前記鋼板は、質量%で、C:0.01%以上0.18%以下、Si:0.02%以上2.0%以下、Mn:1.0%以上8.0%以下、Al:0.001%以上1.0%以下、P:0.005%以上0.060%以下、S:0.01%以下、を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる、高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。 - 前記溶融亜鉛めっき工程では、前記鋼板の片面あたりのめっき付着量が20g/m2以上120g/m2以下となるように前記亜鉛めっき層を形成する、請求項1に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 前記溶融亜鉛めっき工程の後、前記鋼板を調質圧延する調質圧延工程をさらに備え、
前記ブラスト工程では、前記調質圧延工程にて調質圧延された前記鋼板にブラスト処理を施す、請求項1または2に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。 - 前記溶融亜鉛めっき工程の後、前記鋼板に合金化処理を施す合金化工程をさらに備え、
前記ブラスト工程では、前記合金化工程にて合金化処理が施された前記鋼板にブラスト処理を施す、請求項1または2に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。 - 前記溶融亜鉛めっき工程の後、前記鋼板に合金化処理を施す合金化工程をさらに備え、
前記調質圧延工程では、前記合金化工程にて合金化処理が施された前記鋼板を調質圧延する、請求項3に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。 - 前記ブラスト粒子として、材質がステンレス、アルミナ、ジルコニア、樹脂及びガラスのうち1種類又は2種類以上のものを用いる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 前記ブラスト粒子として、粒径が80μm以下のものを用いる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 前記ブラスト粒子として、多角形粒子を用いる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 前記溶融亜鉛めっき工程においてめっきされる前記鋼板は、質量%で、B:0.001%以上0.005%以下、Nb:0.005%以上0.05%以下、Ti:0.005%以上0.05%以下、Cr:0.001%以上1.0%以下、Mo:0.05以上1.0%以下、Cu:0.05%以上1.0%以下、Ni:0.05以上1.0%以下の中から選ばれる1種以上の元素をさらに含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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