JP2021042311A - 変性ポリオレフィン樹脂 - Google Patents

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Abstract

【課題】銅部材、ニッケル部材に対して室温乾燥で密着する変性ポリオレフィン樹脂を提供すること。【解決手段】ポリオレフィン樹脂の変性物であり、下記条件(A)〜(C)を満たす変性ポリオレフィン樹脂。条件(A):変性成分が、環状構造を有するα,β−不飽和カルボン酸誘導体及び(メタ)アクリル酸エステルを含むこと。条件(B):式(1)で表される開環度が55以上であること。条件(C):重量平均分子量が、10,000〜100,000の範囲であること。式(1):開環度=変性度K×開環率R(式(1)中、変性度Kは、α,β−不飽和カルボン酸誘導体のグラフト重量(重量%)を表し、開環率Rは、α,β−不飽和カルボン酸誘導体における環状構造の開環率(%)を表す。)。【選択図】なし

Description

本発明は、変性ポリオレフィン樹脂に関する。
一般的に、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンは、安価で成形性、耐薬品性、耐水性、電気特性など多くの優れた性質を有する。そのため、ポリオレフィンは、シート、フィルム、成形物等として近年広く採用されている。しかしながら、ポリオレフィン基材は、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂等の極性基材とは異なり、非極性でかつ結晶性のため、塗装や接着が困難であるという問題がある。
非極性樹脂基材に対して付着性を与えるよう、ポリオレフィン樹脂を塩素化した塩素化ポリオレフィン樹脂が広く用いられている。しかしながら、塩素化ポリオレフィン樹脂は脱塩酸の問題がある。そのため、ポリオレフィン樹脂と金属との接着には不適であるとされている。そこで、本出願人は、非極性基材と金属との接着に適する変性ポリオレフィン樹脂を提案している(例えば、特許文献1参照)。
特開2015−105294号公報
特許文献1の実施例で効果が実証されている金属は、アルミニウムである。そのため、銅やニッケルといった他の金属材料でも接着性が生じれば、広範な用途に利用可能である。
また、特許文献1の技術では、接着に高温を要している。しかしながら、加熱することなく室温で接着性を生じれば、エネルギーコストの削減、ひいては環境への負荷を減らすことができる。
本発明の課題は、銅部材、ニッケル部材に対して室温乾燥で密着する変性ポリオレフィン樹脂を提供することである。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、ポリオレフィン樹脂の変性物が、所望の条件(A)〜(C)を満たすことにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明者らは、下記の〔1〕〜〔7〕を提供する。
〔1〕ポリオレフィン樹脂の変性物であり、下記条件(A)〜(C)を満たす変性ポリオレフィン樹脂。
条件(A):変性成分が、環状構造を有するα,β−不飽和カルボン酸誘導体及び(メタ)アクリル酸エステルを含むこと。
条件(B):下記式(1)で表される開環度が55以上であること。
条件(C):重量平均分子量が、10,000〜100,000の範囲であること。
式(1):開環度=変性度K×開環率R
(前記式(1)中、前記変性度Kは、前記α,β−不飽和カルボン酸誘導体のグラフト重量(重量%)を表し、前記開環率Rは、前記α,β−不飽和カルボン酸誘導体における環状構造の開環率(%)を表す。)
〔2〕融点が、50〜100℃である、上記〔1〕に記載の変性ポリオレフィン樹脂。
〔3〕銅部材用又はニッケル部材用である上記〔1〕又は〔2〕に記載の変性ポリオレフィン樹脂。
〔4〕上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の変性ポリオレフィン樹脂を含む、塗料。
〔5〕上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の変性ポリオレフィン樹脂を含む、プライマー。
〔6〕上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の変性ポリオレフィン樹脂を含む、バインダー。
〔7〕上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の変性ポリオレフィン樹脂を含む、接着剤。
本発明の変性ポリオレフィン樹脂によれば、銅部材、ニッケル部材に対して室温乾燥で密着する。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
なお、本明細書中、「AA〜BB」という表記は、AA以上BB以下を意味する。また、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの少なくともいずれかを意味する。
[1.変性ポリオレフィン樹脂]
本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂の変性物であり、条件(A)〜(C)を満たす。
条件(A):変性成分が、環状構造を有するα,β−不飽和カルボン酸誘導体及び(メタ)アクリル酸エステルを含むこと。
条件(B):式(1)で表される開環度が55以上であること。
条件(C):重量平均分子量が、10,000〜100,000の範囲であること。
(1):開環度=変性度K×開環率R
(式(1)中、変性度Kは、α,β−不飽和カルボン酸誘導体のグラフト重量(重量%)を表し、開環率Rは、α,β−不飽和カルボン酸誘導体における環状構造の開環率(%)を表す。)
本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、条件(B)を満たすので、樹脂に存在するカルボキシル基が金属部材表面の酸化物又は金属部材表面に吸着した水分子と水素結合を形成することで、樹脂基材と金属部材との付着性を発現し得る。また、本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、条件(C)を満たすので、樹脂の物理的な吸着に寄与するフロー性等が良好となり、室温で乾燥密着し得る。
変性ポリオレフィン樹脂は条件(A)を満たすので、環状構造を有するα,β−不飽和カルボン酸誘導体及び(メタ)アクリル酸エステルがポリオレフィン樹脂にグラフト重合された構造をとる。
変性ポリオレフィン樹脂は条件(B)を満たすので、ポリオレフィン樹脂に導入された環状構造を有するα,β−不飽和カルボン酸誘導体の少なくとも一部が開環された構造をとる。本発明において、α,β−不飽和カルボン酸誘導体の環状構造は、水分子により開環される。そのため、開環構造は、カルボキシ基を有する。即ち、本発明の変性ポリオレフィン樹脂において、開環度は、変性ポリオレフィン樹脂におけるカルボキシ基の存在量に関連するパラメータといえる。
変性ポリオレフィン樹脂は条件(C)を満たすので、銅部材やニッケル部材に対して所望の付着力が得られる変性ポリオレフィン樹脂が得られる。
無水マレイン酸等の環状構造を有するα,β−不飽和カルボン酸誘導体を用いてポリオレフィン樹脂を変性して得られる変性ポリオレフィン樹脂は従来公知である。しかしながら、従来公知の変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂に導入したα,β−不飽和カルボン酸誘導体の環状構造を化学反応に利用して、種々の効果を発揮し得るものである。そのため、ポリオレフィン樹脂に導入したα,β−不飽和カルボン酸誘導体の環状構造は、開環しない方が望ましい、即ち、開環度は低い方が望ましい。
一方、本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂に導入したα,β−不飽和カルボン酸誘導体の環状構造の開環度を所定の数値以上に設定する、即ち、開環度を高くする。
本発明の変性ポリオレフィン樹脂の開環度は、55以上であり、60以上が好ましい。開環度が55以上であると、環状構造を有するα,β−不飽和カルボン酸誘導体を用いてグラフト重合を行っても、所望の付着力が得られる。また、その上限は、700以下が好ましく、650以下がより好ましく、600以下がさらに好ましい。
なお、開環度は、変性度Kと開環率Rの積として定義される。変性度Kと開環率Rの詳細を下記に示す。
変性度Kは、α,β−不飽和カルボン酸誘導体のグラフト重量(重量%)である。即ち、変性度Kは、ポリオレフィン樹脂に導入された環状構造を有するα,β−不飽和カルボン酸誘導体の割合を示す。変性度Kは、変性ポリオレフィン樹脂の開環度に応じて設定し得る。変性度Kは、1〜20重量%が好ましく、2〜10重量%がより好ましく、3〜8重量%がさらに好ましい。
変性度Kは、ポリオレフィン樹脂を変性成分で変性する際の、変性成分及びラジカル発生剤の使用量、反応温度、反応時間等によって調整し得る。
変性度Kは、JIS K−0070(1992)に準拠して次の通り算出し得る。すなわち、精秤した約0.5gの変性ポリオレフィン樹脂と約100gのトルエンを、冷却管及び温度計を取り付けた300mlセパラブルフラスコに投入し、ホットスターラー上で内温が80℃となるように加熱しながら撹拌溶解する。樹脂溶解後、15mlのメタノールと5〜6滴の指示薬(1%フェノールフタレイン−メタノール溶液)を添加し、0.1mol/L水酸化カリウム−エタノール溶液で滴定する。この際、中和に要した滴定量から、次式より変性ポリオレフィン樹脂の変性度Kを算出し得る。なお、変性度Kの測定は、開環処理前の変性ポリオレフィン樹脂を用いて行う。
K=(B×f×F/(S×1000))×100
Kは、変性度(重量%)を表し、Bは、水酸化カリウム−エタノール溶液の滴定量(ml)を表し、fは、0.1mol/L水酸化カリウム−エタノール溶液のファクターを表し、Fは、α,β−不飽和カルボン酸誘導体の式量×1/10であり、Sは、変性ポリオレフィン樹脂の重量(g)を表す。
後述の実施例における変性度Kは、この方法で算出した値である。
開環率Rは、α,β−不飽和カルボン酸誘導体における環状構造の開環率(%)である。即ち、開環率Rは、ポリオレフィン樹脂に導入された環状構造を有するα,β−不飽和カルボン酸誘導体の開環率を示す。開環率Rは、変性ポリオレフィン樹脂の開環度に応じて設定し得る。開環率Rは、15〜75%が好ましく、20〜72%がより好ましい。
開環率が10%以上であると、基材との化学結合(水素結合)に関与する原子数を確保し、所望の付着性を発現し得る。一方、開環率が80%以下であると、樹脂同士や他のモノマーとの相互作用が強まり、溶液安定性が低下することを抑制し得る。
開環率Rは、例えば、温度や時間を種々変更しつつ、変性ポリオレフィン樹脂を水に浸漬する、変性ポリオレフィン樹脂を恒湿条件下に置く、等の処理を行うことで調整し得る。
開環率Rの測定の詳細は、以下の通りである。
変性ポリオレフィン樹脂を有機溶剤に溶解して溶液を得る。KBr板に溶液を塗布、乾燥して薄膜を形成し、FT−IR(例えば、「FT/IR−4100」、日本分光社製)にて、400〜4000cm−1の赤外吸光スペクトルを観測する。解析は、付属ソフトウェア(「Spectro Manager」、日本分光社)によって行い得る。
波数1700〜1750cm−1に現れるピークを、開環したα,β−不飽和カルボン酸誘導体のカルボニル基由来のピークに帰属し、そのピーク高さをAとする。波数1750〜1820cm−1に現れるピークを、開環していないα,β−不飽和カルボン酸誘導体のカルボニル基由来のピークに帰属し、そのピーク高さをBとする。開環率R(%)は、各ピーク高さの値を((A/(A+B)×100)に代入して算出し得る。
後述の実施例における開環率Rは、この方法で算出した値である。
本発明の変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、10,000〜100,000であり、50,000〜100,000が好ましい。重量平均分子量がこの範囲であると、低温、特に室温乾燥での付着性が良好となる。
重量平均分子量は、例えば、ポリオレフィン樹脂のベース樹脂の重量平均分子量や変性成分の使用量等により調整し得る。
GPCの測定条件の詳細は、以下の通りである。
測定機器:HLC−8320GPC(東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム:TSKgel(東ソー社製)
標準物質:ポリスチレン(東ソー製、GLサイエンス製)
検出器:示差屈折計(東ソー製)
後述の実施例における変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、この条件で測定した値である。
本発明の変性ポリオレフィン樹脂の融点は、50〜100℃が好ましく、50〜90℃がより好ましい。融点が50℃以上であると、十分な付着性を発揮し得る。一方、融点が100℃以下であると、低温、特に室温乾燥での付着性や、溶液安定性が良好であり、低温での十分な保管安定性を発揮し得る。本発明の変性ポリオレフィン樹脂の融点が50〜100℃であると、樹脂の物理的な吸着に寄与するフロー性等がさらに良好となり、室温での乾燥密着をより良好にし得る。
融点は、例えば、ポリオレフィン樹脂のベース樹脂の種類により調整し得る。
DSCによる融点の測定の詳細は、以下の通りである。JIS K7121(1987)に準拠し、DSC測定装置(例えば、「DISCOVERY DSC2500」、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用い、約5mgの試料を150℃で10分間加熱融解状態を保持する。その後、10℃/分の速度で降温し、−50℃で5分間安定保持する。その後、10℃/分で150℃まで昇温して融解した時の融解ピーク温度を測定し、該温度を融点とする。
(ポリオレフィン樹脂)
ポリオレフィン樹脂は、特に限定されるものではない。ポリオレフィン樹脂を構成するオレフィンとしては、α−オレフィンが好適に用いられる。α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンが挙げられる。
ポリオレフィン樹脂は、1種単独のオレフィン重合体であってもよく、2種以上のオレフィン重合体の共重合体であってもよい。ポリオレフィン樹脂が共重合体である場合、ポリオレフィン樹脂はランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
ポリオレフィン樹脂は、銅部材、ニッケル部材等の金属部材への十分な付着性を発現させるという観点からは、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体がより好ましい。
ここで、「エチレン−プロピレン共重合体」とは、基本単位がエチレン及びプロピレン由来の構成単位である共重合体を表す。「プロピレン−1−ブテン共重合体」とは、基本単位がプロピレン及びブテン由来の構成単位である共重合体を表す。「エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体」とは、基本単位がエチレン、プロピレン及びブテン由来の構成単位である共重合体を表す。これらの(共)重合体は、基本単位以外の他のオレフィン由来の構成単位を少量含有していてもよい。この含有量は、樹脂本来の性能を著しく損なわない量であればよい。
ポリオレフィン樹脂は、構成単位100モル%中、プロピレン由来の構成単位を50モル%以上含むことが好ましい。プロピレン由来の構成単位を上記範囲で含むと、銅部材、ニッケル部材等の金属部材に対する付着性を発現し得る。
ポリオレフィン樹脂は、重合触媒としてメタロセン触媒を用いて得られるものが好ましい。
メタロセン触媒としては、公知のものを使用できる。メタロセン触媒は、下記成分(1)及び成分(2)と、さらに必要に応じて成分(3)とを組み合わせて得られるものが好ましい。
成分(1);共役五員環配位子を少なくとも一個有する周期律表4〜6族の遷移金属化合物であるメタロセン錯体;
成分(2);イオン交換性層状ケイ酸塩;
成分(3);有機アルミニウム化合物。
メタロセン触媒を用いると、ポリオレフィン樹脂は次の特徴を有する。ポリオレフィン樹脂の分子量分布が狭くなる。また、ポリオレフィン樹脂が共重合体の場合は、ランダム共重合性に優れ、組成分布が狭く、さらに、共重合し得るコモノマーの範囲が広くなる。
エチレン−プロピレン共重合体又はプロピレン−1−ブテン共重合体がランダム共重合体である場合、好ましくは、構成単位100モル%中、エチレン由来の構成単位又はブテン由来の構成単位が5〜50モル%であり、プロピレン由来の構成単位が50〜95モル%である。
ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量に併せて適宜設定すればよい。例えば、変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量について、10,000〜100,000であり、50,000〜100,000が好ましい場合、得られる変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量が当該範囲となるように、ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量を調整することが好ましい。より詳細には、熱やラジカルの存在下で減成して、ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量を適当な範囲、例えば100,000以下となるように調整することが好ましい。
なお、ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、上記と同様に、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、標準物質:ポリスチレン)によって測定した値である。また、測定条件は、上記と同じである。
ポリオレフィン樹脂の融点の下限は、50℃以上が好ましい。ポリオレフィン樹脂の融点が50℃以上であると、変性ポリオレフィン樹脂をインキ、塗料等の用途に用いる際、十分な塗膜強度を発現し得る。そのため、基材との付着性が十分に発揮され得る。また、インキとして用いる際、印刷中のブロッキングを抑制し得る。また、その上限は、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましい。ポリオレフィン樹脂の融点が100℃以下であると、変性ポリオレフィン樹脂をインキ、塗料等の用途に用いる際、塗膜が固くなりすぎることを抑制し得る。そのため、塗膜が適度な柔軟性を発揮し得る。
ポリオレフィン樹脂の融点の一実施形態としては、50〜100℃が好ましく、50〜90℃がより好ましい。
ポリオレフィン樹脂の融点は、DSC測定装置(例えば、「DISCOVERY DSC2500」、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて測定し得る。より詳細には、約5mgの試料を150℃で10分間融解し、−50℃まで10℃/minの速度で降温して結晶化する。その後、10℃/minで150℃まで昇温して融解する。融解した時の融解ピーク温度を融点として求め得る。
後述の実施例における融点は、この方法で算出した値である。
(変性成分)
変性成分は、環状構造を有するα,β−不飽和カルボン酸誘導体及び(メタ)アクリル酸エステルを含む。
環状構造を有するα,β−不飽和カルボン酸誘導体としては、例えば、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、及び無水アコニット酸が挙げられる。中でも、無水マレイン酸が好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。中でも、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレートが好ましく、ラウリルメタクリレート、オクチルメタクリレート、トリデシルメタクリレートがより好ましい。
変性成分は、環状構造を有するα,β−不飽和カルボン酸誘導体及び(メタ)アクリル酸エステル以外の成分を含んでもよい。例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、アコニット酸等のα,β−不飽和カルボン酸;フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノブチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジプロピル、フマル酸ジブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジブチル、マレイミド、N−フェニルマレイミドが挙げられる。
α,β−不飽和カルボン酸誘導体のグラフト量は、上記変性度Kと同義である。
(メタ)アクリル酸エステルのグラフト量は、ポリオレフィン樹脂に対して、0.1〜20重量%が好ましく、2〜10重量%がより好ましく、3〜8重量%がさらに好ましい。
また、α,β−不飽和カルボン酸誘導体及び(メタ)アクリル酸エステル以外の成分のグラフト量は、ポリオレフィン樹脂に対して、0.1〜20重量%が好ましく、0.5〜15重量%がより好ましく、0.5〜10重量%がさらに好ましい。
グラフト量は、ポリオレフィン樹脂を変性成分で変性する際の、変性成分及びラジカル発生剤の使用量、反応温度、反応時間等によって調整し得る。
なお、(メタ)アクリル酸エステルのグラフト量は、H−NMRにより求め得る。
ポリオレフィン樹脂を変性成分で変性する方法としては、公知の方法であってよい。このような方法としては、例えば、ポリオレフィン樹脂を溶融又は溶媒に溶解し、変性成分及びラジカル発生剤を添加し、変性する方法が挙げられる。
反応装置としては、例えば、二軸押出機などの押出機を用いることができる。
反応は、回分式で行ってもよく、連続式で行ってもよい。
ポリオレフィン樹脂を、変性成分で変性することにより、通常、ポリオレフィンを主鎖とし、変性成分に由来する構成単位を含む側鎖を有するグラフト重合体が得られる。
[製造方法]
本発明の変性ポリオレフィン樹脂の製造方法は、特に限定されるものではない。一例を以下に示す。
まず、ポリオレフィン樹脂を用意する。ポリオレフィン樹脂は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等のα−オレフィンを、チーグラー・ナッタ触媒又はメタロセン触媒等の触媒の存在下、重合することにより調製し得る。ポリオレフィン樹脂は、市販品を用いてもよい。
つぎに、ポリオレフィン樹脂を変性成分により変性する。変性方法は、公知の方法、例えば、グラフト重合方法で行うことができる。グラフト重合反応の際には、ラジカル発生剤を用いてもよい。変性ポリオレフィン樹脂を得る方法としては、トルエン等の溶剤に変性成分を加熱溶解し、ラジカル発生剤を添加する溶液法;バンバリーミキサー、ニーダー、押出機等の機器に、変性成分及びラジカル発生剤を添加し混練する溶融混練法が挙げられる。ここで、変性成分は一括添加しても、逐次添加してもよい。
グラフト重合反応の際には、変性成分は、好ましい量でグラフトする観点から、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部の量で用いることが好ましい。
ラジカル発生剤は、公知のものより適宜選択して使用し得る。中でも、有機過酸化物系化合物が好ましい。有機過酸化物系化合物としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンが挙げられる。中でも、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。
変性成分100質量%に対する、ラジカル発生剤の添加量の好ましい範囲は次の通りである。添加量の下限は、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上である。ラジカル発生剤の添加量が1質量%以上であると、グラフト効率を保つことができる。一方、添加量の上限は、好ましくは200質量%以下であり、より好ましくは100質量%以下である。ラジカル発生剤の添加量が200質量%以下であると経済的である。
ポリオレフィン樹脂にグラフト重合しない変性成分である未反応物は、例えば貧溶媒で抽出して除去してもよい。このようにして、グラフト重合体が得られる。
本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、条件(B)を満たすように、得られたグラフト重合体を水分子と反応させることで製造し得る。より詳細には、変性ポリオレフィン樹脂を水に浸漬する、変性ポリオレフィン樹脂を恒湿条件下に置く等の開環処理を行うことで製造し得る。この際、水温や処理条件の温度・湿度、浸漬時間や恒湿条件下に置く時間を変更することで、開環率(%)と開環度を調整し得る。
本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、金属と樹脂との優れた接着性をも発揮し得る。金属としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス、銅が挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂等の非極性樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂が挙げられる。従って、本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、接着剤、プライマー、塗料用バインダー及びインキ用バインダーとして、又はこれらの成分として、用いることができる。
[組成物]
本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、通常、変性ポリオレフィン樹脂を含む組成物として利用される。組成物は、変性ポリオレフィン樹脂の他に、溶液、硬化剤、及び接着成分からなる群より選択される少なくとも1種の成分をさらに含むことが好ましい。
(溶液)
上記組成物の一実施態様は、変性ポリオレフィン樹脂と溶液を含む樹脂組成物である。溶液は、水系溶媒であってもよく、有機溶剤が挙げられる。有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤;メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、エチルシクロヘキサノン等のケトン溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ノナン、デカン等の脂肪族又は脂環式炭化水素溶剤が挙げられる。環境問題の観点から、芳香族溶剤以外の有機溶剤が好ましく、脂環式炭化水素溶剤とエステル溶剤又はケトン溶剤との混合溶剤がより好ましい。
有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
また、変性ポリオレフィン樹脂と溶液を含む樹脂組成物の溶液の保存安定性を高めるために、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール)、プロピレン系グリコールエーテル(例、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコール−t−ブチルエーテル)を、1種単独で、又は2種以上混合して用いてもよい。この場合、上記有機溶剤に対して、1〜20質量%添加することが好ましい。
水系溶媒は、水単独でもよいし、水に溶解可能な溶剤を水と併用してもよい。水に溶解可能な溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン等の低級ケトン類が挙げられる。
水系溶媒の使用量は、特に限定されるものではなく、用途に応じて任意に変更し得る。一例として、変性ポリオレフィン樹脂の固形分濃度が、10〜50重量%となる量が好ましく、20〜40重量%となる量がさらに好ましい。
水系溶媒を用いる際、乳化剤を併用してもよい。乳化剤は、変性ポリオレフィン樹脂を、水系溶媒に分散させる際、分散体の安定化を図る目的で添加する従来公知のものを使用し得る。例えば、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、メチルタウリル酸塩、スルホコハク酸塩、エーテルスルホン酸塩、エーテルカルボン酸塩、脂肪酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンフェニルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート、ジオクチルスルホコハク酸エステル塩、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
乳化剤の含有量は、10重量%未満が好ましく、5重量%未満がより好ましい。下限は特に限定されない。乳化剤の含有量が10重量%未満であると、乳化剤の添加による付着性の低下を抑制し得る。
(硬化剤)
上記組成物の他の実施態様は、変性ポリオレフィン樹脂と硬化剤を含む組成物である。硬化剤としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、ポリアミン化合物、ポリオール化合物、或いはそれらの官能基が保護基でブロックされた架橋剤が例示される。
硬化剤は1種単独であってもよく、複数種の組み合わせであってもよい。
硬化剤の配合量は、変性ポリオレフィン樹脂中の変性度Kにより適宜選択できる。また、硬化剤を配合する場合は、目的に応じて有機スズ化合物、第三級アミン化合物等の触媒を併用することができる。
(接着成分)
上記組成物のさらに他の実施態様は、変性ポリオレフィン樹脂と接着成分を含む組成物である。接着成分としては、所望の効果を阻害しない範囲でポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤等の公知の接着成分を用いることができる。
組成物は、ポリオレフィン系基材等の非極性樹脂同士や非極性樹脂とアルミ、銅、ニッケル等の金属の接着に優れるので、接着剤、プライマー、塗料用バインダー及びインキ用バインダーとして用いることができ、例えば、アルミラミネートフィルム、銅箔ラミネートフィルム、ニッケル箔ラミネートフィルム等のラミネートフィルムにおける接着剤として有用である。
[プライマー、バインダー]
本発明の変性ポリオレフィン樹脂又は上記の組成物は、プライマー、塗料用バインダー又はインキ用バインダーとして利用し得る。本発明の変性ポリオレフィン樹脂又はそれを含む組成物は、銅部材やニッケル部材等の金属部材との付着性、溶液安定性、耐熱性に優れており、ニッケルメッキされた金属へ塗装する際のプライマーや、銅への塗装用プライマー、自動車のバンパー等ポリオレフィン基材への上塗り塗装時のプライマー、上塗り塗料やクリアーとの付着性に優れる塗料用バインダーとして好適に利用し得る。
プライマー、塗料用バインダー又はインキ用バインダーは、溶液、粉末、シート等、用途に応じた形態で使用できる。また、その際に必要に応じて添加剤、例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、無機充填剤を添加し得る。
[積層体]
本発明の変性ポリオレフィン樹脂又はそれを含む組成物は、積層体としても利用し得る。積層体は、通常、変性ポリオレフィン樹脂又は上記の組成物を含む層、金属層及び樹脂層を有する。積層体における層の配置は特に限定されないが、金属層及び樹脂層が変性ポリオレフィン樹脂又は組成物を含む層を挟んで位置する態様、金属層を挟んで第1の樹脂層と第2の樹脂層が存在し、金属層と各樹脂層の間に変性ポリオレフィン樹脂又は組成物を含む層が挟持されている態様が例示される。積層体は、リチウムイオン二次電池、コンデンサー、電気二重層キャパシター等の外装材として用いられるものであってもよい。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を好適に説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。なお、「部」は、特に断りがない限り、「質量部」を意味する。
[各構造単位の含有率(mol%)]:核磁気共鳴装置(NMR)を用いて測定した。より詳細には、試料約60mgをテトラクロロエタン(d2)に溶解し、下記条件にて13C−NMRスペクトルを測定し、連鎖メチレン炭素シグナルの積分値より構造単位含有率を計算した。
観測範囲:250ppm
測定モード:シングルパルスプロトンデカップリング
パルスアングル:5.25μ秒(45°)
繰り返し時間:5.5秒
測定温度:120℃
[変性度K(重量%)]:JIS K−0070(1992)に準拠して次の通り算出した。すなわち、精秤した約0.5gの変性ポリオレフィン樹脂と約100gのトルエンを、冷却管及び温度計を取り付けた300mlセパラブルフラスコに投入し、ホットスターラー上で内温が80℃となるように加熱しながら撹拌溶解した。樹脂溶解後、15mlのメタノールと5〜6滴の指示薬(1%フェノールフタレイン−メタノール溶液)を添加し、0.1mol/L水酸化カリウム−エタノール溶液で中和滴定した。この際、中和に要した滴定量から、次式より変性ポリオレフィン樹脂の変性度Kを算出した。
K=(B×f×9.806/(S×1000))×100
Kは、変性度(重量%)を表し、Bは、水酸化カリウム−エタノール溶液の滴定量(ml)を表し、fは、0.1mol/L水酸化カリウム−エタノール溶液のファクターを表し、9.806は、無水マレイン酸の式量×1/10であり、Sは、変性ポリオレフィン樹脂の重量(g)を表す。
[開環率R(%)]:変性ポリオレフィン樹脂を有機溶剤に溶解して溶液を得た。KBr板に溶液を塗布、乾燥して薄膜を形成し、FT−IR(「FT/IR−4100」、日本分光社製)にて、400〜4000cm−1の赤外吸光スペクトルを観測した。解析は、付属ソフトウェア(「Spectro Manager」、日本分光社)によって行った。
波数1700〜1750cm−1に現れるピークを、開環したα,β−不飽和カルボン酸無水物のカルボニル基由来のピークに帰属し、そのピーク高さをAとした。波数1750〜1820cm−1に現れるピークを、開環していないα,β−不飽和カルボン酸無水物のカルボニル基由来のピークに帰属し、そのピーク高さをBとした。開環率R(%)は、各ピーク高さの値を(A/(A+B)×100)に代入して算出した。
[開環度]:変性度Kの値と開環率Rの積で算出した。
[メタ)アクリル酸エステルのグラフト量(重量%)]:H−NMRにより測定した。
[融点(℃)]:JIS K7121(1987)に準拠し、DSC測定装置(「DISCOVERY DSC2500」、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて測定した。より詳細には、約5mgの試料を150℃で10分間加熱融解状態を保持した。次いで、10℃/分の速度で降温して、−50℃で安定保持した。その後、10℃/分で150℃まで昇温して融解した。融解した時の融解ピーク温度を測定し、該温度を融点とした。
[重量平均分子量(Mw)]:以下の測定条件で測定した値である。
測定機器:HLC−8320GPC(東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム:TSKgel(東ソー社製)
標準物質:ポリスチレン(東ソー製、GLサイエンス製)
検出器:示差屈折計(東ソー製)
温度:40℃
流速:1mL/分
[碁盤目剥離試験]:
[試験片の作製]
銅板(1mm厚)又はニッケル板(1mm厚)(いずれも日本テストパネル製)の表面をイソプロピルアルコールで脱脂し、乾燥塗膜が10〜15μm以下となるよう変性ポリオレフィン樹脂溶液(15%固形分溶液(溶剤組成:メチルシクロヘキサン/メチルエチルケトン=80/20(w/w))を5%固形分となるようにキシレンで希釈した溶液)をスプレー塗装し、10分間静置した。次に、ベース塗料をスプレー塗装し、10分間静置した。その後、クリアー塗料を塗装し、恒温・恒湿環境下(23℃、50%RH)で1日間静置し、試験片を作製した。
[試験手順]
カッターナイフで試験片の塗膜上に2mm間隔で素地に達する100個の碁盤目状の切り込みを入れた。その上にセロハン粘着テープを密着させて、180°の角度で10回剥離し、塗膜の残存を判定した。具体的には残マス数を数えた。
(実施例1)
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、プロピレン−エチレンランダム共重合体〔P−E〕(プロピレン成分88モル%、エチレン成分12モル%、Tm=65℃)100部をトルエン400g中に加熱溶解した。系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、無水マレイン酸4.5部、ラウリルメタクリレート4.5部、及びジ−t−ブチルパーオキサイド1.2部を、それぞれ3時間かけて滴下し、さらに1時間反応を行った。
反応終了後、室温まで冷却し、重量平均分子量が70,000、Tm=64℃の反応物を得た。該反応物を大過剰のアセトン中に投入することで精製して、無水マレイン酸及びラウリルメタクリレートのグラフト重量を測定したところ、各々3.7重量%、2.5重量%であった。
該反応物を、恒温・恒湿下(50℃、100%RH)に5時間静置し、開環率が25.0%、すなわち開環度が92.5の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
(実施例2)
プロピレン−ブテンランダム共重合体〔P−B〕(プロピレン成分70モル%、ブテン成分30モル%、Tm=75℃)100部、無水マレイン酸4.5部、オクチルメタクリレート4.0部、及びジ−t−ブチルパーオキサイド1.0部を、170℃に設定した二軸押出機を用いて混練して反応を行った。押出機内にて減圧脱気を行い、残留する未反応物を除去し、重量平均分子量が100,000、Tm=73℃の反応物を得た。反応物を大過剰のアセトン中に投入することで精製して、無水マレイン酸及びオクチルメタクリレートのグラフト重量を測定したところ、各々3.6重量%、2.7重量%であった。
該反応物を、恒温・恒湿下(50℃、100%RH)に5時間静置し、開環率が17.0%、すなわち開環度が61.2の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
(実施例3)
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、プロピレン−ブテン−エチレンランダム共重合体〔P−B−E〕(プロピレン成分60モル%、ブテン成分30モル%、エチレン成分10モル%、Tm=65℃)100部をトルエン400g中に加熱溶解した。系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、無水マレイン酸7.0部、トリデシルメタクリレート7.5部、及びジ−t−ブチルパーオキサイド2.0部を、それぞれ3時間かけて滴下し、さらに1時間反応を行った。
反応終了後、室温まで冷却し、重量平均分子量が80,000、Tm=63℃の反応物を得た。反応物を大過剰のアセトン中に投入することで精製して、無水マレイン酸及びトリデシルメタクリレートのグラフト重量を測定したところ、各々5.8重量%、6.0重量%であった。
該反応物を、恒温・恒湿下(50℃、100%RH)に5時間静置し、開環率が20.5%、すなわち開環度が118.9の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
(実施例4)
プロピレン−エチレンランダム共重合体〔P−E〕(プロピレン成分88モル%、エチレン成分12モル%、Tm=65℃)100部、無水マレイン酸8.5部、オクチルメタクリレート7.0部、ジ−t−ブチルパーオキサイド2.5部を、175℃に設定した二軸押出機を用いて混練して反応を行った。押出機内にて減圧脱気を行い、残留する未反応物を除去し、重量平均分子量が70,000、Tm=63℃の反応物を得た。反応物を大過剰のアセトン中に投入することで精製して、無水マレイン酸及びオクチルメタクリレートのグラフト重量を測定したところ、各々8.0重量%、7.0重量%であった。
該反応物を、恒温・恒湿下(50℃、100%RH)に48時間静置し、開環率が70.3%、すなわち開環度が562.4の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
(比較例1)
プロピレン−エチレンランダム共重合体〔P−E〕(プロピレン成分88モル%、エチレン成分12モル%、Tm=65℃)を変性せずに用いた。
(比較例2)
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、プロピレン−エチレンランダム共重合体〔P−E〕(プロピレン成分89モル%、エチレン成分11モル%、Tm=63℃)100部をトルエン400g中に加熱溶解した。系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、無水マレイン酸1.0部、オクチルメタクリレート1.5部、及びジ−t−ブチルパーオキサイド0.5部を、それぞれ3時間かけて滴下し、さらに1時間反応を行った。
反応終了後、室温まで冷却し、重量平均分子量が130,000、Tm=62℃の反応物を得た。該反応物を大過剰のアセトン中に投入することで精製して、無水マレイン酸及びオクチルメタクリレートのグラフト重量を測定したところ、各々0.8重量%、1.2重量%であった。
該反応物を、恒温・恒湿下(50℃、100%RH)に5時間静置し、開環率が25.0%、すなわち開環度が20.0の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
(比較例3)
比較例2で無水マレイン酸4.5部、オクチルメタクリレート4.5部、及びジ−t−ブチルパーオキサイド1.0部としたこと以外は、比較例2と同様に反応した。
反応終了後、室温まで冷却し、重量平均分子量が130,000、Tm=62℃の反応物を得た。該反応物を大過剰のアセトン中に投入することで精製して、無水マレイン酸及びオクチルメタクリレートのグラフト重量を測定したところ、各々4.0重量%、3.8重量%であった。
該反応物を、恒温・恒湿下(50℃、100%RH)に5時間静置し、開環率が20.3%、すなわち開環度が81.2の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
(比較例4)
プロピレン−ブテンランダム共重合体〔P−B〕(プロピレン成分80モル%、ブテン成分20モル%、Tm=85℃)100部、無水マレイン酸2.2部、トリデシルメタクリレート2.0部、及びジ−t−ブチルパーオキサイド0.5部を、170℃に設定した二軸押出機を用いて混練して反応を行った。押出機内にて減圧脱気を行い、残留する未反応物を除去し、重量平均分子量が150,000、Tm=84℃の反応物を得た。反応物を大過剰のアセトン中に投入することで精製して、無水マレイン酸及びトリデシルメタクリレートのグラフト重量を測定したところ、各々2.0重量%、1.8重量%であった。
該反応物を、恒温・恒湿下(50℃、100%RH)に5時間静置し、開環率が25.1%、すなわち開環度が50.2の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
上記実施例1〜4及び比較例1〜4で得られた変性ポリオレフィン樹脂のベース樹脂の種類、変性度K(重量%)、開環率R(%)、開環度の一覧を表1に示す。
Figure 2021042311
本発明の変性ポリオレフィン樹脂を用いると、銅部材及びニッケル部材に対して剥離数が少ないことがわかる(実施例1〜4参照)。そのため、銅部材及びニッケル部材に対して室温乾燥で密着することがわかる。これに対して、未変性の変性ポリオレフィン樹脂及び開環度が著しく低い変性ポリオレフィン樹脂では、銅部材及びニッケル部材に対する剥離試験結果が悪く、銅部材及びニッケル部材に対して室温乾燥で密着してないことがわかる(比較例1〜2参照)。また、重量平均分子量が10万超である変性ポリオレフィン樹脂を用いると、開環度によらず、銅部材及びニッケル部材に対する剥離試験結果が劣り、銅部材及びニッケル部材に対して室温乾燥での密着性が不十分であることがわかる(比較例3〜4参照)。

Claims (7)

  1. ポリオレフィン樹脂の変性物であり、下記条件(A)〜(C)を満たす変性ポリオレフィン樹脂。
    条件(A):変性成分が、環状構造を有するα,β−不飽和カルボン酸誘導体及び(メタ)アクリル酸エステルを含むこと。
    条件(B):下記式(1)で表される開環度が55以上であること。
    条件(C):重量平均分子量が、10,000〜100,000の範囲であること。
    式(1):開環度=変性度K×開環率R
    (前記式(1)中、前記変性度Kは、前記α,β−不飽和カルボン酸誘導体のグラフト重量(重量%)を表し、前記開環率Rは、前記α,β−不飽和カルボン酸誘導体における環状構造の開環率(%)を表す。)
  2. 融点が、50〜100℃である、請求項1に記載の変性ポリオレフィン樹脂。
  3. 銅部材用又はニッケル部材用である請求項1又は2に記載の変性ポリオレフィン樹脂。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の変性ポリオレフィン樹脂を含む、塗料。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の変性ポリオレフィン樹脂を含む、プライマー。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の変性ポリオレフィン樹脂を含む、バインダー。
  7. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の変性ポリオレフィン樹脂を含む、接着剤。
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