JP2021038832A - 衝撃吸収装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】衝撃吸収装置1は、衝突エネルギーの吸収性能を向上させた衝撃吸収装置を提供する。【解決手段】 衝撃吸収装置1は、車両Vの側部にて、車両前後方向にそれぞれ延設され、車両高さ方向に離間していて、対向配置された上下一対の上壁部U及び下壁部Lと、上壁部U及び下壁部Lの間にて車両前後方向にそれぞれ延設され、且つ車幅方向に所定の間隔をおいて並設された複数のリブRnであって、上壁部Uと下壁部Lとの間の空間を、車両前後方向にそれぞれ延びる複数の区画Dnに分割する複数のリブRnと、を備える。前記複数の区画Dnのうち、それらの並び方向に連続する3つの区画D5,D6,D7であって、それらの並び方向における中央の区画D6を構成するリブR6,R7の間隔が、前記中央の区画D6の両隣の区画D5,D7をそれぞれ構成するリブR5,R6の間隔及びリブR7,R8の間隔より小さい。【選択図】図3
Description
本発明は、車両の衝撃吸収装置に関する。特に、車両の側部に印加された衝撃を吸収する衝撃吸収装置に関する。
例えば、下記特許文献1に記載されているように、車両の側部に物体が衝突したとき、その衝突エネルギーを吸収する衝撃吸収装置は知られている。この衝撃吸収装置は、車両の乗降口の下方にて、車両前後方向に延設された上壁部及び下壁部を有する。上壁部及び下壁部は、車両高さ方向に離間している。上壁部及び下壁部は、その板厚方向が車両高さ方向に一致するように配置されている。上壁部と下壁部との間には、複数のリブが設けられている。これらのリブによって、上壁部と下壁部との間の空間が、複数の区画に分割されている。車両の車幅方向における端部側から中央部側へ向かうに従って、各区画の幅(リブの間隔)が減少している。一方、図11に示すように、区画Dn+1の幅(リブRn+1とリブRn+2との間隔)が区画Dnの幅(リブRnとリブRn+1との間隔)と同一又はそれ以上である衝撃吸収装置1Aも知られている。
上記の衝撃吸収装置1Aが適用された車両の側部に物体が衝突し、前記物体が衝撃吸収装置1Aを車体の車幅方向における中央部側へ押圧すると、衝撃吸収装置1Aが車幅方向に圧縮されるように変形する。すなわち、衝撃吸収装置1Aを構成する上壁部及び下壁部のうち、リブの間に位置する部分が座屈して、衝撃吸収装置1Aが蛇腹状に変形していく。これにより、前記物体の衝突エネルギーが吸収される(図13及び図14参照)。
上記衝撃吸収装置1Aに対する押圧荷重の印加方向が、前記複数の区画の並び方向(車幅方向)に対して平行である場合(図13及び図14における第1実験)には、衝撃吸収装置1Aが、上記のように蛇腹状に変形して、効率良く衝突エネルギーが吸収される。一方、衝撃吸収装置1Aに対する押圧荷重の印加方向が、前記複数の区画の並び方向(車幅方向)に対して傾斜している場合(斜め下方へ向けられている場合(図13及び図14における第2実験)には、衝撃吸収装置1Aが下方へ倒れこむように変形する(図12参照)。この場合、上壁部の一部が座屈せずに残り、衝突エネルギーを十分に吸収することができない虞がある(図13及び図14参照)。
本発明は上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、衝突エネルギーの吸収性能を向上させた衝撃吸収装置を提供することにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
上記目的を達成するために、本発明に係る衝撃吸収装置(1)は、車両(V)の側部に対し、前記車両の側方から前記車両の車幅方向における中央部側へ向かって物体(OB)が衝突したとき変形して、衝突エネルギーを吸収する。この衝撃吸収装置は、前記車両の側部にて、車両前後方向にそれぞれ延設され、車両高さ方向に離間していて、対向配置された上下一対の上壁部(U)及び下壁部(L)と、前記上壁部及び前記下壁部の間にて車両前後方向にそれぞれ延設され、且つ車幅方向に所定の間隔をおいて並設された複数のリブ(R1〜R9)であって、前記上壁部と前記下壁部との間の空間を、車両前後方向にそれぞれ延びる複数の区画(D1〜D8)に分割する複数のリブと、を備える。前記複数の区画のうち、それらの並び方向に連続する3つの区画であって、それらの並び方向における中央の区画(D6)を構成する前記リブ(R6,R7)の間隔が、前記中央の区画の両隣の区画(D5,D7)をそれぞれ構成するリブ((R5,R6),(R7,R8))の間隔より小さい。
本発明の一態様に係る衝撃吸収装置において、前記複数の区画のうち、前記連続する3つの区画の両側にそれぞれ位置する部位における任意の1つの区画を構成するリブの間隔が、その区画から見て、前記物体の進行方向とは反対側に隣接する区画を構成するリブの間隔と同一又はそれ以上である。
また、本発明の他の態様に係る衝撃吸収装置において、前記中央の区画を構成する2つのリブのうち、前記物体の進行方向とは反対側のリブから見て、前記物体の進行方向における前側に位置する前記区画の数が奇数である。
また、本発明の他の態様に係る衝撃吸収装置において、前記上壁部と前記下壁部とが平行に配置されている。
また、本発明の他の態様に係る衝撃吸収装置において、前記上壁部及び前記下壁部の一端部であって、前記物体の進行方向とは反対側に位置する端部同士の車両高さ方向における間隔が、前記上壁部及び前記下壁部の他端部であって、前記物体の進行方向における前側に位置する端部同士の車両高さ方向における間隔よりも小さい。
本発明に係る衝撃吸収装置において、上壁部及び下壁部のうち、前記中央の区画を構成する部分(以下、第1部位と呼ぶ)の幅(前記中央の区画を構成するリブとリブの間隔)が、上壁部及び下壁部のうち、前記中央部の両隣の区画を構成する部分(以下、第2部位と呼ぶ)の幅より小さい。したがって、第1部位の座屈強度が、第2部位の座屈強度に比べて高い。よって、前記物体が、前記複数の区画の並び方向に対して少し傾斜した状態で車両に衝突したとしても、第1部位における上壁部の座屈の進行速度と、第1部位の下壁部の座屈の進行速度との差がそれほど大きくない。そのため、前記中央の区画における倒れが、その両隣における倒れに比べて小さい。このように、本発明に係る衝撃吸収装置によれば、前記中央の区画の倒れが比較的小さい。図12に示した例では、各区画において生じた倒れが累積して、最後の区画に潰れ残りが生じてしまうが、本発明に係る衝撃吸収装置では、前記中央の区画よりも先に圧潰した区画の倒れの影響が、前記中央の区画以降の区画に及び難く、図7の例のような潰れ残りを抑制できる。よって、本発明によれば、衝突エネルギーの吸収性能を向上させた衝撃吸収装置を提供できる。
本発明の一実施形態に係る衝撃吸収装置1について説明する。この衝撃吸収装置1は、図1に示すように、車両Vの両側部であって、車室の床面を構成するフロアパネルの下方に設置される。
衝撃吸収装置1は、車両Vの側方から、物体OB(例えば、鉛直方向に延びる円柱状の物体(図3参照))が車両Vの側部に衝突したとき、物体OBにより、車両Vの車幅方向における中央部側へ押圧される。これにより、衝撃吸収装置1が変形して、物体OBの衝突エネルギーが吸収される。このような衝撃吸収機能によって、車両Vの側部を構成する部材の車室への進入量が低減される。
車両Vの左側部に設置される衝撃吸収装置1と右側部に設置される衝撃吸収装置1とは、左右対称形状を有しており、その他の構成は同一である。そこで、以下、車両Vの左端部に設置される衝撃吸収装置1について説明し、右端部に設置される衝撃吸収装置1の説明を省略する。
衝撃吸収装置1は、図2に示すように、車両前後方向に延設されている。衝撃吸収装置1は、アルミニウム材を押し出し成形して一体的に形成された押出成形品である。衝撃吸収装置1は、車両前後方向に延びる筒状を呈する。前記アルミニウム材の押出方向が、車両前後方向に一致するように、衝撃吸収装置1が車両Vに組み付けられる。
衝撃吸収装置1は、図3に示すように、上壁部U及び下壁部Lを備える。上壁部U及び下壁部Lは、車両前後方向にそれぞれ延設された帯板状の部位である。上壁部U及び下壁部Lは、それらの板厚方向が車両高さ方向にそれぞれ一致するように配置されている。上壁部U及び下壁部Lは、車両高さ方向に離間していて、対向配置されている。上壁部Uの左端及び右端が、下壁部Lの左端及び右端の直上にそれぞれ位置している。上壁部Uの板厚と下壁部Lの板厚は同一である。
上壁部Uと下壁部Lとの間には、リブR1乃至リブR9が設けられている。リブR1乃至リブR9は、車両前後方向に延設された帯板状の部位である。リブR1乃至リブR9の板厚は、上壁部Uの板厚(下壁部Lの板厚)と同一である。リブR1乃至リブR9は、その板厚方向が車幅方向に一致するように配置されている。リブR1乃至リブR9の幅方向(車両高さ方向)における一端部が上壁部Uの下面に接続され、リブR1乃至リブR9の幅方向における他端部が下壁部Lの上面に接続されている。
リブR1は、上壁部U及び下壁部Lの左端に配置されている。また、リブR9は、上壁部U及び下壁部Lの右端に配置されている。リブR1とリブR9との間に、リブR2乃至リブR8が下記のような所定の間隔をおいて、この順に配置されている。これにより、上壁部Uと下壁部Lとの間の空間が、8個の区画D1乃至区画D8に分割されている。すなわち、リブRn(=1,2,・・・,8)とリブRn+1との間の部位が区画Dnに相当する。以下の説明において、「区画Dnの幅dn」とは、区画Dnを構成するリブRnとリブRn+1との間隔(車幅方向の距離)を意味する。また、上壁部Uのうち、区画Dnを構成する部分(つまり、リブRnとリブRn+1との間の部分)を上壁部Unと標記する。また、下壁部Lのうち、区画Dnを構成する部分(つまり、リブRnとリブRn+1との間の部分)を下壁部Lnと標記する。
区画D1の幅d1、区画D2の幅d2、及び区画D3の幅d3は同一である。区画D4の幅d4は、区画D3の幅d3より少し大きく、区画D5の幅d5は、区画D4の幅d4よりさらに大きい。区画D6の幅d6は、区画D5の幅d5より小さい。区画D7の幅d7は、区画D6の幅d6より大きく、区画D8の幅d8は、区画D7の幅d7よりさらに大きい。具体的には、幅d1乃至幅d8は下記の表1のように設定されている。
つぎに、衝撃吸収装置1の衝突エネルギーの吸収性能に関する第1実験及び第2実験の結果(シミュレーション結果)について説明する。
(第1実験の結果)
この第1実験において、衝撃吸収装置1の車両前後方向における中央部に、その左方から円柱状の物体OBを衝突させた(図3参照)。なお、物体OBは、鉛直方向に延設されていて、車両Vの左方から右方へスライド移動する。幅d1乃至幅d8を、表1のように設定したところ、以下説明するように、区画D1乃至区画D8を、この順に圧潰させることができた。
この第1実験において、衝撃吸収装置1の車両前後方向における中央部に、その左方から円柱状の物体OBを衝突させた(図3参照)。なお、物体OBは、鉛直方向に延設されていて、車両Vの左方から右方へスライド移動する。幅d1乃至幅d8を、表1のように設定したところ、以下説明するように、区画D1乃至区画D8を、この順に圧潰させることができた。
以下、衝撃吸収装置1の変形の態様(区画D1乃至区画D8の圧潰態様)について説明する。物体OBが衝撃吸収装置1の左端面(リブR1の左面)に当接する。上記のように物体OBが円柱状であるから、リブR1と物体OBとが当接部であって、車両高さ方向に延びる線状部に、押圧荷重が集中的に印加される。ここで、リブR1の車両高さ方向における上端部及び下端部には、上壁部U及び下壁部Lがそれぞれ接続されているので、リブR1の車両高さ方向における中間部の強度に比べて、リブR1の上端部及び下端部の強度が高い。よって、まず、リブR1の中間部が右方へ少し撓む。すると、上壁部U1のうちの中央部より左方に位置する部分(左半部)が、リブR1と上壁部Uとの接続部UR1を中心として、同図において反時計回りに回動するように変形していく。また、上壁部U1のうちの中央部より右方に位置する部分(右半部)が、リブR2と上壁部Uとの接続部UR2を中心として、同図において時計回りに回動するように変形していく。一方、下壁部L1のうちの中央部より左方に位置する部分(左半部)が、リブR1と下壁部Lとの接続部LR1を中心として、同図において時計回りに回動するように変形していく。また、下壁部L1のうちの中央部より右方に位置する部分(右半部)が、リブR2と下壁部Lとの接続部LR2を中心として、同図において反時計回りに回動するように変形していく。このように、上壁部U1の中間部が上方へ突出するとともに、下壁部L1の中間部が下方へ突出するように座屈する。
上壁部U1及び下壁部L1の座屈が進行し、区画D1が完全に圧潰されてリブR1がリブR2に当接すると、リブR2が右方へ押圧され始める。上記のように、上壁部U1の右半部が、接続部UR2を中心として、図4において時計回りに回動し、下壁部L1の右半部が、接続部LR2を中心として、同図において反時計回りに回動している。そのような変形を生じさせる荷重の反作用として、上壁部U2の左半部に対し、左斜め下方へ向かう荷重が作用するとともに、下壁部L2の左半部に対し、左斜め上へ向かう荷重が作用する。これにより、上壁部U2及び下壁部L2が区画D2の内側へ折り込まれるように座屈する。
すなわち、上壁部U2の左半部)が、接続部UR2を中心として、同図において時計回りに回動するように変形していく。また、上壁部U2の右半部が、接続部UR3を中心として、同図において反時計回りに回動するように変形していく。一方、下壁部L2の左半部が、接続部LR2を中心として、同図において反時計回りに回動するように変形していく。また、下壁部L1の右半部が、接続部LR3を中心として、同図において時計回りに回動するように変形していく。なお、上記のように、上壁部U2及び下壁部L2は、区画D2の内側に折り込まれるように座屈するので、区画D2に潰れ残りが多少生じる。
区画D1の圧潰態様と同様の態様で、区画D3が圧潰する。すなわち、上壁部U3及び下壁部L3は、区画D3の外側へ突出するように座屈する(図5(A)参照)。また、区画D2の圧潰態様と同様の態様で、区画D4が圧潰する。すなわち、上壁部U4及び下壁部L4が、区画D4の内側へ折り込まれるように座屈する。また、区画D1の圧潰態様と同様の態様で、区画D5が圧潰する。すなわち、上壁部U5及び下壁部L5が、区画D5の外側へ突出するように座屈する(図5(B)参照)。
つぎに、区画D6が圧潰し始める。ここで、区画D6の幅d6(つまり、上壁部U6及び下壁部L6における押圧荷重(座屈荷重)の印加方向の長さ)が、その前に圧潰する区画D5の幅d5よりも小さく設定されている。したがって、上壁部U6及び下壁部L6の座屈荷重が、上壁部U5及び下壁部L5の座屈荷重より高い。言い換えれば、上壁部U6及び下壁部L6は、上壁部U5及び下壁部L5の変形の影響を受け難い。すなわち、区画D6乃至区画D8からなる部位が、区画D1乃至区画D5からなる部位とは分離されているものとみなすことができる。したがて、区画D6乃至区画D8は、区画D1乃至区画D3と同様の態様で圧潰する(図5(C)及び図5(D)参照)。すなわち、上壁部U5及び下壁部L5は区画D5の外側へ突出するように変形するが、上壁部U6及び下壁部L6は、その影響を受けることなく、上壁部U1及び下壁部L1と同様に、区画D6の外側へ突出するように座屈する(図5(C)参照)。また、上壁部U7及び下壁部L7は、区画D7の内側へ折り込まれるように座屈する。また、上壁部U8及び下壁部L8は、区画D8の外側へ突出するように座屈する(図5(D)参照)。
(第2実験の結果)
この第2実験において、第1実験と同様に、衝撃吸収装置1の車両前後方向における中央部に、その左方から円柱状の物体OBを衝突させた(図6参照)。ただし、第2実験において、同図に示すように、物体OBは、鉛直方向(車両高さ方向)に対して少し傾斜している、すなわち、物体OBの上側が下側に比べて少し右方に位置するように傾斜している。具体的には、鉛直方向に対する物体OBの傾斜角度は、「5°」である。本実験においても、以下説明するように、区画D1乃至区画D8を、第1実験と略同様の態様で圧潰させることができた。
この第2実験において、第1実験と同様に、衝撃吸収装置1の車両前後方向における中央部に、その左方から円柱状の物体OBを衝突させた(図6参照)。ただし、第2実験において、同図に示すように、物体OBは、鉛直方向(車両高さ方向)に対して少し傾斜している、すなわち、物体OBの上側が下側に比べて少し右方に位置するように傾斜している。具体的には、鉛直方向に対する物体OBの傾斜角度は、「5°」である。本実験においても、以下説明するように、区画D1乃至区画D8を、第1実験と略同様の態様で圧潰させることができた。
すなわち、区画D1乃至区画D8が、この順に圧潰していく。図7(A)及び図7(B)に示すように、上壁部U1及び下壁部L1は、区画D1の外側へ突出するように座屈する。また、上壁部U2及び下壁部L2は、区画D2の内側へ折り込まれるように座屈する。また、上壁部U3及び下壁部L3は、区画D3の外側へ突出するように座屈する。また、上壁部U4及び下壁部L4は、区画D4の内側へ折り込まれるように座屈する。また、上壁部U5及び下壁部L5は、区画D5の外側へ突出するように座屈する。ただし、本実験では、物体OBが上記のように傾斜しているため、各区画Dnに対し、右斜め下方へ向かう押圧荷重が作用する。そのため、下壁部Lnが上壁部Unに比べて、少し先に座屈する。これにより、同図に示すように、区画D1乃至区画D5が若干下方へ倒れる。
つぎに、図7(C)に示すように、上壁部U6及び下壁部L6は、区画D6の外側へ突出するように座屈する。このように区画D6が圧潰するが、上記のように、区画D6の幅d6が、その前に圧潰する区画D5の幅d5よりも小さく設定されている。したがって、上壁部U6及び下壁部L6の座屈強度が、上壁部U5及び下壁部L5の座屈強度に比べて高い。したがって、上壁部U6の座屈の進行速度と、下壁部L6の座屈の進行速度との差がそれほど大きくない。そのため、区画D5における倒れに比べて、区画D6における倒れが小さい。
そして、図7(C)及び図7(D)に示すように、上壁部U7及び下壁部L7は、区画D7の内側へ折り込まれるように座屈する。また、上壁部U8及び下壁部L8は、区画D8の外側へ突出するように座屈する。同図に示すように、区画D7乃至区画D8も、若干下方へ倒れる。
(効果)
上記のように、本実験において、衝撃吸収装置1の車幅方向における中間に位置する区画D6の幅d6を、その左側(物体OBの進行方向とは反対側)に位置する区画D5の幅d5より小さく設定することにより、衝撃吸収装置1の全体としての倒れを、図11の従来例に比べて小さく設定できた。これにより、衝撃吸収装置1において、従来例のような、区画の潰れ残りの発生を防止でき、第1実験における衝突エネルギーの吸収量と、第2実験における衝突エネルギーの吸収量を、同等に設定できた。すなわち、図8に示すように、第2実験における、物体OBの進入量(衝撃吸収装置1の圧縮ストローク)に対する押圧荷重の変化特性と、第1実験における同特性とが略一致している。
上記のように、本実験において、衝撃吸収装置1の車幅方向における中間に位置する区画D6の幅d6を、その左側(物体OBの進行方向とは反対側)に位置する区画D5の幅d5より小さく設定することにより、衝撃吸収装置1の全体としての倒れを、図11の従来例に比べて小さく設定できた。これにより、衝撃吸収装置1において、従来例のような、区画の潰れ残りの発生を防止でき、第1実験における衝突エネルギーの吸収量と、第2実験における衝突エネルギーの吸収量を、同等に設定できた。すなわち、図8に示すように、第2実験における、物体OBの進入量(衝撃吸収装置1の圧縮ストローク)に対する押圧荷重の変化特性と、第1実験における同特性とが略一致している。
つまり、衝撃吸収装置1によれば、衝撃吸収装置1の区画D1乃至区画D8の並び方向に対して多少傾斜した方向へ物体OBが衝突(進行)した場合(例えば、車高の比較的高い車両の側部に、車高の比較的低い車両が衝突した場合)であっても、衝突エネルギーを十分に吸収できる(図9参照)。
また、上記のように、区画D1の幅d1(つまり、上壁部U1及び下壁部L1における座屈荷重方向の長さ)が比較的小さく設定されていて、当該部位の座屈荷重が比較的高い。すなわち、図8に示すように、物体OBが衝撃吸収装置1に衝突した直後である初期段階において、衝撃吸収装置1に作用する押圧荷重が急峻に立ち上がる。ただし、その押圧荷重のピークは、許容荷重を超えていない。
なお、この初期段階において、上壁部U2乃至上壁部U8、及び下壁部L2乃至下壁部L8が座屈しない。上記のように、物体OBとリブR1との当接部は線状であり、当該部位に荷重が集中しているが、それよりも右方に位置する部分(特に、上壁部U4乃至上壁部U8、及び下壁部L4乃至下壁部L8)においては、押圧荷重がそれらの部位の車両前後方向に分散するので、当該部位の幅dnが多少大きくても、当該部位は座屈しない。その後、上記のように、区画D2乃至区画D8が、この順に圧潰していくが、その過程においても、衝撃吸収装置1に作用する押圧荷重は、所定の許容荷重を超えない。すなわち、区画D1の変形開始から区画D8の変形終了までの過程において、ある程度高い押圧荷重が衝撃吸収装置1に作用した状態を保つことができた。
また、図11に示す従来の衝撃吸収装置1Aにおいて、区画Dn+1の上壁部Un+1及び下壁部Ln+1は、その前の区画Dnの上壁部Un及び下壁部Lnの変形の影響を受ける。つまり、区画Dn=2m−1(区画D1,D3,D5,D7)における上壁部Un=2m−1及び下壁部Ln=2m−1は、区画Dn=2m−1の外側へ突出するように座屈する。一方、区画Dn=2m(区画D2,D4,D6,D8)における上壁部Un=2m及び下壁部Ln=2mは、区画Dn=2mの内側へ折り込まれるように座屈する。
これに対し、本実施形態に係る衝撃吸収装置1では、区画D6の幅d6を、その前に圧潰する区画D5の幅d5よりも小さく設定することにより、上壁部U6及び下壁部L6が、上壁部U5及び下壁部L5の変形の影響を受け難くしている。これにより、上壁部U6及び下壁部L6を区画D6の外側へ突出するように座屈させることができる。そして、区画D7の上壁部U7及び下壁部L7は、区画D6の上壁部U6及び下壁部L6の影響を受けて、区画D7の内側へ折り込まれるように座屈する。また、区画D8の上壁部U8及び下壁部L8は、区画D7の上壁部U7及び下壁部L7の影響を受けて、区画D8の外側へ突出するように座屈する。
上記のように、衝撃吸収装置1Aによれば、区画D8が圧潰していく際、上壁部U8及び下壁部L8が、区画D8の内側に座屈して、リブR8とリブR9との間に挟まれる。これに対し、衝撃吸収装置1によれば、区画D8が圧潰していく際、上壁部U8及び下壁部L8が、区画D8の外側に座屈するので、リブR8とリブR9との間に挟まれない。よって、衝撃吸収装置1における区画D8の圧縮ストロークは、衝撃吸収装置1Aの区画D8の圧縮ストロークより大きい。したがって、衝撃吸収装置1Aに比べて、衝撃吸収装置1の衝突エネルギー吸収性能が高い。
上記のように、リブRnの数及びそれらの間隔(区画Dnの数及び幅dn)を総合的に最適化することにより、軽量且つ衝突エネルギーの吸収性能を向上させた衝撃吸収装置1を構成できた。
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、上壁部Uと下壁部Lとが平行に配置されているが、例えば、図10に示すように、上壁部Uの左端が右端よりも下方に位置するように傾斜し、下壁部Lの左端が右端より上方に位置するように傾斜していてもよい。すなわち、上壁部Uの左端と下壁部Lの左端の車両高さ方向における距離が、上壁部Uの右端と下壁部Lの右端の車両高さ方向における距離より小さく設定されていてもよい。これによれば、例えば、第2実験のように、物体OBが、区画D1乃至区画D8の並び方向に対して少し傾斜した状態で、衝撃吸収装置1に衝突した場合、下壁部Lに対する荷重の印加方向と下壁部Lの傾斜方向との角度差が比較的小さくなるので、衝撃吸収装置1の倒れを抑制し易い。
また、例えば、衝撃吸収装置1の区画の数は、上記実施形態に限られない。ただし、それらの並び方向における中間部の1つの区画Dnの幅dnを、その両隣の区画Dn−1及び区画Dn+1の幅dn−1及び幅dn+1よりも小さく設定し、且つ前記中間部の1つの区画Dnを構成するリブRnよりも右方(物体OBの進行方向)に位置する区画の個数を奇数に設定するとよい。これによれば、最後に圧潰する区画を構成する上壁部及び下壁部が、その区画の外側へ突出するように座屈する。よって、これによれは、最後に圧潰する区画を構成する上壁部及び下壁部が、その区画の内側へ折り込まれるように座来るする場合に比べて、圧縮ストロークを大きくでき、衝突エネルギーの吸収性能を高く設定できる。
また、上記実施形態における衝撃吸収装置1の連続する3個の区画D5,D6,D7のうちの中央の区画D6の幅d6が、その両隣の区画D5の幅d5及び区画D7の幅d7よりも小さい。衝撃吸収装置1は、上記のような連続する3個の区画かなる一組の部位D5-D6-D7を有しているが、複数組の部位D5-D6-D7を有していてもよい。また、部位D5-D6-D7のうちの中央の区画D6を、複数の区画に分割してもよい。
1…衝撃吸収装置、Dn…区画、dn…幅、L…下壁部、Ln…下壁部、OB…物体、Rn…リブ、U…上壁部、Un…上壁部、V…車両
Claims (5)
- 車両の側部に対し、前記車両の側方から前記車両の車幅方向における中央部側へ向かって物体が衝突したとき変形して、衝突エネルギーを吸収する衝撃吸収装置であって、
前記車両の側部にて、車両前後方向にそれぞれ延設され、車両高さ方向に離間していて、対向配置された上下一対の上壁部及び下壁部と、
前記上壁部及び前記下壁部の間にて車両前後方向にそれぞれ延設され、且つ車幅方向に所定の間隔をおいて並設された複数のリブであって、前記上壁部と前記下壁部との間の空間を、車両前後方向にそれぞれ延びる複数の区画に分割する複数のリブと、
を備え、
前記複数の区画のうち、それらの並び方向に連続する3つの区画であって、それらの並び方向における中央の区画を構成する前記リブの間隔が、前記中央の区画の両隣の区画をそれぞれ構成するリブの間隔より小さい、衝撃吸収装置。 - 請求項1に記載の衝撃吸収装置において、
前記複数の区画のうち、前記連続する3つの区画の両側にそれぞれ位置する部位における任意の1つの区画を構成するリブの間隔が、その区画から見て、前記物体の進行方向とは反対側に隣接する区画を構成するリブの間隔と同一又はそれ以上である、衝撃吸収装置。 - 請求項1又は請求項2に記載の衝撃吸収装置において、
前記中央の区画を構成する2つのリブのうち、前記物体の進行方向とは反対側のリブから見て、前記物体の進行方向における前側に位置する前記区画の数が奇数である、衝撃吸収装置。 - 請求項1乃至請求項3のうちのいずれか1つに記載の衝撃吸収装置において、
前記上壁部と前記下壁部とが平行に配置されている、衝撃吸収装置。 - 請求項1乃至請求項3のうちのいずれか1つに記載の衝撃吸収装置において、
前記上壁部及び前記下壁部の一端部であって、前記物体の進行方向とは反対側に位置する端部同士の車両高さ方向における間隔が、前記上壁部及び前記下壁部の他端部であって、前記物体の進行方向における前側に位置する端部同士の車両高さ方向における間隔よりも小さい、衝撃吸収装置。
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