JP2021038540A - 浚渫システム - Google Patents

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Abstract

【課題】水質を大きく変化させずに重金属成分を除去もしくは不溶化して、水は貯水池に環流し底泥は培養土として回収する浚渫システムを提供する。
【解決手段】この浚渫システム100は、水中に溶出している重金属成分は多孔質鉄粒が捕集除去して環境基準値以下にするとともに底泥中の重金属成分は無機中性凝集剤が固定不溶化し外部への溶出を防止する。また、使用する無機中性凝集剤は添加の前後で水質を大きく変化させず、また動植物に有害な成分を含有しない。よって、この浚渫システム100により分離した上澄み水は浚渫した貯水池にそのまま放流することが可能であり、貯水池の機能を維持したまま浚渫作業を行うことができる。また、浚渫により生じた脱水底泥は重金属成分が溶出しないため植物栽培用の培養土として使用することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、貯水池の底に溜まった底泥を水ごと吸引して、重金属成分を除去及び不溶化した後、底泥を分離回収する浚渫システムに関するものである。
従来、湖沼や堀、人工池、農業用ため池等の貯水池には、土や砂、ゴミ、ヘドロ等の底泥が徐々に堆積してゆく。これら、底泥の堆積は貯水池の水深を浅くして貯水池本来の機能を低下させる他、水質の悪化を引き起こす一因となる。よって、これら底泥を除去する浚渫を定期的に行うことが好ましい。
従来の貯水池の浚渫は、貯水池の水を抜いた上で重機等により行うことが一般的であった。しかしながら、この手法では貯水池への水の遮水と貯水池の水の排水が必要となり、何らかの土木工事が必要であるとともに作業期間が長く、コスト高であるという問題点がある。また、浚渫作業中には貯水池を使用できないという問題点がある。さらに、貯水池の水が抜き取られるため、貯水池に生息する水生動植物が死滅し、貯水池の生態系に多大な悪影響を与えるという問題点がある。
この問題点に対し、本願発明者らは下記[特許文献1]に示す湖沼水の浚渫システムに関する発明を行った。この[特許文献1]に記載の発明は、貯水池の水面に浮かべた台船から送水ポンプを吊下げ、この送水ポンプで底泥を吸引し浚渫を行う。このため、貯水池の遮水作業、排水作業が不要で、作業期間の短縮と、抵コスト化とを実現することができる。また、貯水池の水を抜き取ることなく浚渫を行うことが可能なため、貯水池に生息する動植物の生態系を維持することができる。さらに、[特許文献1]に記載の発明ではカルシウムを主成分とした無機中性凝集剤を用いているため、分離回収した底泥を培養土としてそのまま植物栽培に使用することができる。
しかしながら、ヒ素等の重金属成分を多く含む水や土砂が流入したり、自然由来にて生じた重金属成分が存在する貯水池では、この重金属成分の濃度が環境基準を超える場合がある。このような貯水池を浚渫して回収した底泥は重金属成分を多く含むため土壌汚染防止法により植物の培養土には使用できず、産業廃棄物として処分する必要があり、処理コストが掛るという問題点が有る。この問題点に対し下記[特許文献2]には泥水中に150μm〜300μmの鉄粉を混合して泥水中に溶出した重金属成分を吸着した後、鉄粉を重金属成分ごと分離して除去する重金属汚染土壌の無害化処理システムに関する発明が開示されている。
また、例えば下記[特許文献3]では、凝集物の脱水ケーキからの金属類の溶出を抑制する無機中性凝集剤に関する発明が開示されている。
特開第6359902号公報 特開2017−148760号公報 特開第2774096号公報
上記の[特許文献2]に記載の発明は、泥水中の鉄粉を磁性を用いて分離する。しかしながら、この磁性を用いた分離方法は効率が悪く、大量の水を底泥ごと吸引して処理する[特許文献1]に記載の発明には適用することができない。また、[特許文献2]に記載の発明では土中の(水中に溶出していない)重金属成分を除去するために、水のpH調整を行って土中の重金属成分を水中に溶出させる必要がある。しかしながら[特許文献1]に記載の発明では、底泥を分離した後の水を貯水池に戻すことで生態系の維持を図る。このため、pH調整等の水質を変化させる薬剤を添加することができず、よって[特許文献2]に記載の技術を[特許文献1]に記載の発明に適用することができない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、水質を大きく変化させずに重金属成分を除去もしくは不溶化して、水は貯水池に環流し底泥は培養土として回収する浚渫システムの提供を目的とする。
本発明は、
(1)底泥を水ごと吸引して底泥スラリとして圧送する送水ポンプ20と、前記底泥スラリに凝集剤を添加して前記底泥を凝集沈降させる凝集分離槽50と、前記凝集剤によって凝集沈降した底泥を脱水する脱水部80と、を有する浚渫システムにおいて、
前記送水ポンプ20で圧送された底泥スラリから重量物及び夾雑物を除去するスラリ分離部(遠心分離部30及び夾雑物選別部40)と、
前記スラリ分離部を通過した底泥スラリに多孔質鉄粒を添加して攪拌し、前記底泥スラリ中に溶出している重金属成分を前記多孔質鉄粒に吸着させる鉄粒混合部70と、
前記多孔質鉄粒を重金属成分ごと遠心分離により分離して、分離後の底泥スラリを前記凝集分離槽50に送出する鉄粒遠心分離部76と、をさらに有し、
前記凝集剤が重金属成分の溶出を抑制する石膏を主成分とした無機中性凝集剤であることを特徴とする浚渫システム100を提供することにより、上記課題を解決する。
(2)鉄粒混合部70が、底泥スラリに多孔質鉄粒を添加する鉄粒添加槽72aと、多孔質鉄粒と底泥スラリとを攪拌しながら維持する鉄粒混合槽72bと、を有し、前記鉄粒混合槽72bの連結数によって底泥スラリの停留時間を調節することを特徴とする上記(1)記載の浚渫システム100を提供することにより、上記課題を解決する。
(3)鉄粒遠心分離部76が鉄粒添加槽72aの上方に位置し、分離した多孔質鉄粒を前記鉄粒添加槽72aに排出することを特徴とする上記(2)記載の浚渫システム100を提供することにより、上記課題を解決する。
(4)スラリ分離部から鉄粒混合部70までの底泥スラリの搬送を送水ポンプ20による圧送と自然流下によって行い、鉄粒混合部70から脱水部80までの底泥スラリの搬送を鉄粒遠心分離部76に底泥スラリを搬送する第2送水ポンプ74による圧送と自然流下によって行うことを特徴とする上記(1)乃至上記(3)のいずれかに記載の浚渫システム100を提供することにより、上記課題を解決する。
本願発明の浚渫システムは、水中に溶出している重金属成分に関しては多孔質鉄粒が捕集除去する。また、底泥中の重金属成分は無機中性凝集剤が固定不溶化し外部への溶出を防止する。さらに、本願発明が使用する無機中性凝集剤は添加の前後で水質を大きく変化させず、また動植物に有害な成分を含有しない。よって、本願発明の浚渫システムにより分離した水は貯水池にそのまま放流することが可能であり、貯水池の機能を維持したまま浚渫作業を行うことができる。また、貯水池に生息する動植物の生態系を維持することができる。また、浚渫により生じた脱水底泥は重金属成分が溶出しないため植物栽培用の培養土として使用することができる。これにより、環境に対する負荷を軽減することができる。また、本発明に係る浚渫システムは、多孔質鉄粒の分離を遠心分離装置のみで行う。これにより、多孔質鉄粒の分離を短時間で効率良く行う事が可能となり、底泥スラリに対する高い処理能力を有する。
本発明に係る浚渫システムを示す図である。 本発明に係る浚渫システムの送水ポンプ及び台船を示す図である。 多孔質鉄粒の攪拌時間とヒ素の濃度の関係を示すグラフである。 本発明に係る浚渫システムの脱水部を示す図である。 各処理条件における上澄み液のヒ素濃度と脱水底泥の溶出試験結果を示す表である。
本発明に係る浚渫システム100の実施の形態について図面に基づいて説明する。図1に示す本発明に係る浚渫システム100は、基本構成として、貯水池の底泥を水ごと吸引して底泥スラリとして圧送する送水ポンプ20と、この送水ポンプ20により搬送される底泥スラリから底泥を分離回収する分離処理装置90と、を有している。そして、分離処理装置90は、送水ポンプ20によって搬送される底泥スラリ中の砂や小石等の重量物を遠心分離により除去する遠心分離部30と、この遠心分離部30を通過した底泥スラリから植物片やゴミ等の夾雑物を除去する夾雑物選別部40と、この夾雑物選別部40を通過した底泥スラリ中に多孔質鉄粒を添加混合してスラリ中に溶出した重金属成分を吸着捕集する鉄粒混合部70と、この多孔質鉄粒を重金属成分ごと遠心分離により分離する鉄粒遠心分離部76と、この鉄粒遠心分離部76で分離した底泥スラリに無機中性凝集剤を添加し底泥を凝集沈降させる凝集分離槽50と、この凝集分離槽50で凝集沈降した底泥(凝集底泥)を濃縮する濃縮槽60と、この濃縮槽60で濃縮された底泥(濃縮底泥)を脱水する脱水部80と、を有している。尚、このうち、遠心分離部30と夾雑物選別部40とが本願発明のスラリ分離部を構成する。
次に、本発明に係る浚渫システム100に好適な送水ポンプ20の一具体例の構成を図2の部分断面図を用いて説明する。本発明に好適な送水ポンプ20は、1%〜20%程度のSS濃度(浮遊物質濃度)のスラリを圧送可能なものであり、モータを内蔵し防水性を有するポンプ本体部21と、このポンプ本体部21の下部に設置されたケーシング22と、このケーシング22内に設置されモータによって回転動作するインペラ23と、ケーシング22の取水口に設置されたカッタ24と、モータによって回転動作し斜め下方を向いた羽根を複数備えた攪拌羽根26と、ケーシング22の下方に延びた脚部28と、を有している。また、ケーシング22からはホース接続端22aが伸び、このホース接続端22aに送水ホース12の一端が接続する。そして、送水ポンプ20は貯水池の水面に浮いた台船10から適宜水中に吊下げて使用し、送水ポンプ20で吸引された底泥スラリは送水ホース12によって分離処理装置90に搬送される。また、送水ポンプ20の電源ケーブル15aは、送水ホース12に沿って陸上まで延伸され、分離処理装置90側の図示しない送水ポンプ制御盤を介して発電機等の電源に接続される。
送水ホース12は送水ポンプ20と接続可能であれば如何なるものを用いても良いが、内径65mm程度のものを用いることが好ましい。また、送水ホース12にはフロート18が所定の間隔で設置され、電源ケーブル15a(15b)とともに貯水池の水面に支持される。
また、台船10は送水ポンプ20及び作業者を搭載しても貯水池の水面に浮く十分なフロートを備え、台船10の略中央部分には送水ポンプ20を貯水池内に昇降する昇降口11を有している。また、昇降口11の上部には送水ポンプ20を吊下げる櫓14が設置され、この櫓14の上部には送水ポンプ20を昇降する昇降機16が設置されている。尚、昇降機16の電源ケーブル15bは、送水ポンプ20の電源ケーブル15aとともに送水ホース12に沿って陸上まで延伸され図示しない電源に接続される。
次に、分離処理装置90の構成を図1を用いて説明する。先ず、分離処理装置90の遠心分離部30は、周知のサイクロン型の遠心分離装置であり、外筒32aと内筒32bとを有している。そして、外筒32aの上部には送水ホース12が横方向に向けて接続する。また、外筒32aの下部はホッパ部34となっており、ホッパ部34には開閉コック36aにより開閉する排出口36が設置されている。そして、内筒32bには夾雑物選別部40と繋がる配管5aが接続されている。尚、分離処理装置90の各部を繋ぐ配管5a〜5d及び水配管7a、7bとしては、ホースや金属配管等の周知の配管設備を用いることができる。
また、夾雑物選別部40は、底泥スラリ中の夾雑物を取り除く夾雑物選別装置42を有している。この夾雑物選別装置42としては、所定の大きさ以上の夾雑物を取り除くことが可能であれば如何なる装置を用いても良いが、2mm程度のスリットを有する周知のベルトスクリーンを用いることが特に好ましい。また、夾雑物選別部40には流量測定升44を設け、送水ポンプ20が吸引する底泥スラリの流量を確認可能とすることが好ましい。
また、鉄粒混合部70は、前述のように底泥スラリ中に多孔質鉄粒を添加して攪拌し、底泥スラリ中に溶出している重金属成分を多孔質鉄粒に吸着させるためのものであり、多孔質鉄粒を添加する鉄粒添加槽72aと、多孔質鉄粒と底泥スラリとを攪拌しながら維持する鉄粒混合槽72bと、の複数の槽で構成することが好ましい。尚、このように鉄粒添加槽72aと鉄粒混合槽72bとを分けることで、十分な重金属成分の吸着時間が確保でき、水中に溶出した重金属成分の捕集を効率的に行うことができる。そして、鉄粒混合槽72b及び各鉄粒混合槽72bには、底泥スラリと多孔質鉄粒とを混合攪拌する周知の攪拌装置52を有する。また、最も下流に位置する鉄粒混合槽72bには第2送水ポンプ74が接続し、この最下流に位置する鉄粒混合槽72b内の底泥スラリを多孔質鉄粒ごと吸引し送水ホース12aを介して鉄粒遠心分離部76に圧送する。
ここで、本発明に係る浚渫システム100で使用する多孔質鉄粒とは、水中に溶出している重金属成分(カドミウム、クロム、セレン、鉛、ヒ素、フッ素、ホウ素等やその化合物)を吸着可能な多数の微細孔を表面に有する鉄材の顆粒であり、例えば比表面積が0.12m/g〜0.36m/g、見掛密度が1.3g/cm〜1.5g/cm程度のものを用いることが好ましい。また、形状に関しては球、フレーク状、塊状、如何なるものを用いても構わない。ただし、その粒径はサイクロン型の遠心分離装置にて分離が可能な概ね0.1mm〜1mmの範囲内のものを用いる。
ここで、底泥スラリ中に溶出しているヒ素の濃度(mg/L)と多孔質鉄粒の攪拌時間(処理時間:min)との関係を図3のグラフに示す。尚、多孔質鉄粒の量は底泥スラリ1L当たり20gとした。この図3のグラフから、多孔質鉄粒の攪拌時間、即ち底泥スラリと多孔質鉄粒との接触時間が長い程、重金属成分(ヒ素)の吸着捕集が進み、底泥スラリ中に溶出しているヒ素の濃度が低下することが判る。ここで、土壌汚染防止法におけるヒ素濃度の基準値は0.01mg/L以下であるため、上記の条件では多孔質鉄粒の攪拌時間、即ち鉄粒混合部70における底泥スラリの停留時間は40分以上が必要であり、吸着がほぼ完了する90分が好ましいことがわかる。尚、この鉄粒混合部70での停留時間は底泥スラリ中に溶出している重金属成分の濃度によって変化する。よって、浚渫を行う貯水池ごとに測定等を行い、最適な停留時間を取得することが好ましい。
ただし、鉄粒混合部70での停留時間に合わせて底泥スラリの搬送量を設定すると、浚渫システム100全体としての浚渫効率が低下する可能性が有る。よって、鉄粒混合部70における停留時間の調整は鉄粒混合部70(鉄粒添加槽72a及び鉄粒混合槽72b)の容量にて行うことが好ましい。ただし、容量の異なる槽を複数準備するのは設備コストや保管スペースの面から好ましくない。よって、鉄粒混合槽72bの連結個数により鉄粒混合部70の容量を調整し目的の停留時間以上とすることが好ましい。尚、本例では浚渫システム100の流量を約10m/hrとし、容量5mの鉄粒添加槽72aと鉄粒混合槽72bとを全体で3台(鉄粒添加槽72a×1台、鉄粒混合槽72b×2台:総容量15m)連結することで、鉄粒混合部70での停留時間を90分としている。
また、鉄粒遠心分離部76は遠心分離部30と同様の周知のサイクロン型の遠心分離装置であり、外筒32aと内筒32bとを有している。そして、鉄粒遠心分離部76の外筒32aの上部には第2送水ポンプ74から延びた送水ホース12aが横方向に向けて接続する。また、外筒32aの下部はホッパ部34となっており、ホッパ部34の先側には開閉コック36aにより開閉する排出口36が設置されている。そして、内筒32bには凝集分離槽50へと繋がる配管5dが接続している。そして、比重の軽い底泥スラリは内筒32bを通って凝集分離槽50へ吐出され、比重の重い多孔質鉄粒は重金属成分を吸着したままホッパ部34に沿って沈降堆積して排出口36から排出される。このとき、鉄粒遠心分離部76を鉄粒添加槽72aの上方に設けるとともに排出口36を適宜開閉して、鉄粒遠心分離部76で遠心分離した多孔質鉄粒を鉄粒添加槽72aに吐出して再利用することが好ましい。尚、多孔質鉄粒は複数回使用することで徐々に吸着能力が低下する。よって、例えば底泥スラリの累積処理水量もしくは累積処理時間もしくは再使用回数が予め設定された値を超えるなどして多孔質鉄粒の吸着能力が不十分となると、作業者は多孔質鉄粒の排出方向を鉄粒回収部78側へ切り替える。これにより、多孔質鉄粒は鉄粒回収部78へと排出され、重金属成分を吸着したまま法律に準拠した然るべき処理方法によって処分される。尚、処分される多孔質鉄粒の量は底泥の量に比較して少ないため、処分コストの削減を図ることができる。また、古い多孔質鉄粒が回収されると、鉄粒混合部70には新たな多孔質鉄粒が供給される。
また、凝集分離槽50は、鉄粒遠心分離部76で分離した底泥スラリが流入する内槽50bを有しており、この内槽50bの上方には無機中性凝集剤を投入する凝集剤投入部51が設置されている。また、底泥スラリと無機中性凝集剤とを混合攪拌する攪拌装置52が設置されている。そして、凝集分離槽50の下部は略円錐形のホッパ部50aとなっており、このホッパ部50aの先側には濃縮槽60と繋がる配管5bが接続している。また、凝集分離槽50の上部には凝集分離槽50の上澄み水を貯水池に放流する水配管7aが接続している。
また、濃縮槽60は、凝集分離槽50で凝集沈降した凝集底泥を静置してさらに濃縮する機能を有し、上部に凝集分離槽50と繋がった配管5bが接続している。また、濃縮槽60の下部は略円錐形のホッパ部60aとなっており、このホッパ部60aの先側には濃縮槽60で濃縮された濃縮底泥を脱水部80に送る配管5cが接続している。また、濃縮槽60の上部には濃縮槽60の上澄み水を貯水池に放流する水配管7bが接続している。
尚、分離処理装置90は凝集分離槽50、濃縮槽60の上澄み水を一旦貯水して適宜貯水池に放流する水循環槽を有しても良い。この構成によれば、水循環槽に貯水した上澄み水を設備の洗浄等に利用することができる。これにより、水道栓が分離処理装置90の近傍に存在しない場合でも、設備の洗浄等の作業を円滑に行うことができる。また、洗浄に関する水道費用を削減することができる。
次に、本発明に係る浚渫システム100に好適な脱水部80の構成を図4を用いて説明する。本発明に好適な脱水部80は、布製でベルト状の濾布82と、スラリ(濃縮底泥)を濾布82上に堆積させるスラリーダム部81と、濾布82上のスラリの過剰な水分を吸引する吸引部83と、大ローラ86aと複数の小ローラ86bとを有し、この大ローラ86aと小ローラ86bとの間隙を通過することで濾布82上のスラリを圧接し脱水するベルトプレス部86と、脱水した底泥を濾布82上から剥離するスクレイパ87と、を有している。そして、濾布82を送る搬送ローラ84が回転することで、濾布82はスラリーダム部81と吸引部83とベルトプレス部86とを略一定の速度で連続的に移動する。
次に、本発明に係る浚渫システム100の動作を説明する。先ず、分離処理装置90を浚渫を行う貯水池近傍の陸地に設置する。また、台船10を浚渫を行う貯水池に浮かべる。この台船10には送水ホース12で繋がった送水ポンプ20が設置されている。
次に、台船10に作業者が搭乗し、台船10を浚渫場所に移動させる。そして、竿等の測量器具を用いて浚渫場所の大まかな水深と底泥の厚みを把握する。次に、作業者は昇降機16を操作して送水ポンプ20を貯水池中に投入する。次に、作業者は分離処理装置90側の作業者に対し、送水ポンプ20の稼働を要求する。分離処理装置90側の作業者はこの要求を受けて、送水ポンプ制御盤を操作し送水ポンプ20を稼働する。これにより、ポンプ本体部21内のモータが回転し、インペラ23と攪拌羽根26とが回転動作する。そして、貯水池の水はケーシング22の取水口から吸引され送水ホース12を介して分離処理装置90に圧送される。
次に、台船10側の作業者は昇降機16を操作して送水ポンプ20を貯水池中の適切な位置に保持する。この適切な位置とは、送水ポンプ20の吸引する底泥スラリの濃度が5%〜10%となる位置である。尚、底泥スラリの濃度は分離処理装置90側の作業者が目視等で確認し、適宜、台船10側の作業者に連絡して調整する。
送水ポンプ20が底泥の表層近傍の適切な位置に保持されると、攪拌羽根26が底泥を攪拌するとともに、攪拌羽根26の回転動作によって発生する下向きの水流が底泥を舞い上げる。舞い上げられた底泥はインペラ23の回転動作により貯水池の水ごとケーシング22の取水口から吸引され、底泥スラリとして送水ホース12を介して分離処理装置90に圧送される。このとき、底泥中に混在する落ち葉、枯枝、水生植物の葉茎根、ビニール等のゴミ類は、ケーシング22の取水口に設置されたカッタ24と回転するインペラ23及び攪拌羽根26との間で適度な大きさに破砕される。これにより、これらゴミ類の送水ポンプ20への絡まりや、ケーシング22内や送水ホース12内における目詰りを防止することができる。また、攪拌羽根26は空き缶等の比較的大型で硬質な夾雑物を跳ね飛ばして、これら夾雑物が送水ポンプ20で吸引されることを防止する。尚、底泥が厚い場合には、表層近傍の底泥を浚渫した後、徐々に送水ポンプ20を降下させ底泥を掘り下げるようにして浚渫して行くことが好ましい。
送水ポンプ20によって吸引、圧送された底泥スラリは送水ホース12を通って遠心分離部30の外筒32aに横方向を向けて吐出される。そして、吐出された底泥スラリは外筒32a内を渦を巻いて流下する。このとき、砂や小石等の比較的重い重量物は遠心分離部30の外筒32aに沿って下方へ落下し、遠心分離部30のホッパ部34に堆積する。また、その他の底泥スラリは内筒32bの下端から内筒32b内を通って夾雑物選別部40側へ搬送される。尚、ホッパ部34に堆積した重量物は開閉コック36aを適宜開閉することで排出口36から排出され、廃棄や選別等のしかるべき処理が行われる。
また、遠心分離部30を通過した底泥スラリは配管5aを介して夾雑物選別部40の流量測定升44に吐出され、分離処理装置90側の作業者はこの流量測定升44によって底泥スラリの流量を把握する。そして、送水ポンプ制御盤を操作して底泥スラリが適正な流量となるように送水ポンプ20の回転数を調整する。また、底泥スラリの濃度を目視等で確認し、濃度が適正でない場合、台船10側の作業者に指示して送水ポンプ20の位置調整を行わせる。
流量測定升44を通った底泥スラリは、夾雑物選別部40の夾雑物選別装置42に吐出される。そして、この夾雑物選別装置42において、底泥スラリ中に混入した夾雑物、即ち、カッタ24で破砕されたゴミ類等が選別除去される。尚、本例では夾雑物選別装置42としてベルトスクリーンを用いた例を図示しており、選別された夾雑物はベルトスクリーンの移動によって自動的に排出される。排出された夾雑物は例えばスライダ46上を滑り落ちて、夾雑物集積用袋等に落下し、廃棄等のしかるべき処理に付される。
夾雑物選別部40で夾雑物が除去された底泥スラリは、鉄粒混合部70の鉄粒添加槽72aに吐出される。また、鉄粒添加槽72aには新品もしくは鉄粒遠心分離部76で分離した多孔質鉄粒が投入され、攪拌装置52によって混合攪拌される。また、鉄粒添加槽72aには鉄粒混合槽72bが接続しており、多孔質鉄粒が混合した底泥スラリは各槽の攪拌装置52によって攪拌されながら、下流の鉄粒混合槽72b側に順次移動する。そして、底泥スラリ中に溶出している重金属成分は、これら鉄粒添加槽72a、鉄粒混合槽72b内において、スラリ中に混合した多孔質鉄粒の微細孔によって吸着捕集される。尚、鉄粒混合部70における底泥スラリの停留時間は前述のように鉄粒混合槽72bの連結数によって最適化され、最下流の鉄粒混合槽72bにおいては溶出している重金属成分がほぼ多孔質鉄粒によって吸着捕集され所定の濃度以下となる。
また、第2送水ポンプ74は最下流の鉄粒混合槽72bの底泥スラリを多孔質鉄粒ごと吸引し、送水ホース12aを通して鉄粒遠心分離部76の外筒32aに横方向を向けて吐出する。吐出した底泥スラリは外筒32a内を渦を巻いて流下する。このとき、比重の重い多孔質鉄粒は鉄粒遠心分離部76の外筒32aに沿って下方へ落下し、ホッパ部34に堆積する。また、底泥スラリは内筒32bの下端から内筒32b内を通って凝集分離槽50側へ搬送される。尚、ホッパ部34に堆積した多孔質鉄粒は開閉コック36aを適宜開閉することで排出口36から鉄粒添加槽72a内に排出され再利用される。また、所定回数もしくは所定水量の処理に用いられた多孔質鉄粒は鉄粒回収部78へと排出され、吸着した重金属成分ごと然るべき方法により処分される。これにより、底泥スラリ中に溶出している重金属成分は除去される。ただし、固体の重金属成分は底泥とともに凝集分離槽50側へと排出される。
次に、鉄粒遠心分離部76で多孔質鉄粒と分離した底泥スラリは凝集分離槽50の内槽50bに吐出される。また、この内槽50bには凝集剤投入部51から無機中性凝集剤が投入され攪拌装置52によって吐出された底泥スラリと混合攪拌される。ここで投入する無機中性凝集剤としては、脱水後の凝集物からの重金属成分の溶出を抑制するものを用いる。具体的には、石膏を主成分とした無機中性凝集剤を用いることが好ましく、さらに具体的にはアルミナ・ケイ酸塩を主体とする天然鉱物30〜50重量%と硫酸カルシウム45〜65重量%と有機系凝集剤1〜5重量%とから成る主成分100重量部に対し、硫酸アルミニウム30〜50重量部、塩化アルミニウム5〜10重量部、およびアルカリ金属炭酸塩20〜40重量部が配合された無機中性凝集剤を用いることが特に好ましい。
そして、この無機中性凝集剤の添加により、底泥スラリ中の泥、ヘドロ等の底泥は固体の重金属成分とともに凝集し下方のホッパ部50aに沈殿する。そして、沈殿した凝集底泥は凝集分離槽50への新たな底泥スラリの流入によりホッパ部50aに接続された配管5bに押し出され、この配管5bを通って濃縮槽60の上部に吐出する。また、凝集分離槽50の上澄み水は水配管7aを通して貯水池に放流される。尚、本発明に用いる無機中性凝集剤は石膏を主成分としており、水のpHを変化させたり、動植物に悪影響を与える成分を含有していない。また、この上澄み水は鉄粒混合部70によって水中に溶出した重金属成分が捕集済みであるから、分離した上澄み水をそのまま貯水池に放流することができる。
濃縮槽60に吐出された凝集底泥は、この濃縮槽60で静置され濃縮槽60の下方のホッパ部60aに沈降してさらに濃縮される。そして、この濃縮底泥は、濃縮槽60への新たな凝集底泥の流入によりホッパ部60aに接続された配管5cに押し出され、この配管5cを通って脱水部80に搬送される。また、濃縮槽60の上澄み水は水配管7bを通して貯水池に放流される。
また、配管5cから吐出された濃縮底泥は脱水部80のスラリーダム部81に溜まり、この状態で濾布82が一定速度で移動することで濾布82上にほぼ一定の厚みで堆積する。濾布82上に堆積した濃縮底泥は吸引部83に搬送され、この吸引部83によって濾布82の裏面側から過剰な水分が吸引除去される。吸引された水分は排水部89を介して貯水池に放流される。次に、濾布82はベルトプレス部86に搬送される。ベルトプレス部86は大ローラ86aと複数の小ローラ86bとで構成される脱水ローラを有し、大ローラ86aが濃縮底泥側に位置し、小ローラ86bが濾布82の裏面側に位置する。そして、濃縮底泥は濾布82ごと脱水ローラ86a、86b間を通され、この脱水ローラ86a、86bの圧接によって脱水される。脱水された水分は排水部89を介して貯水池に放流される。そして、この脱水部80の脱水により、濃縮底泥は含水率が50%〜55%程度の脱水底泥となる。この脱水底泥はスクレイパ87によって剥ぎ取られ、脱水底泥回収袋1等に送られて回収される。
尚、本発明に係る浚渫システム100は、基本的に貯水池から鉄粒混合部70までの底泥スラリの搬送を送水ポンプ20の圧送と自然流下で行い、また鉄粒混合部70から凝集分離槽50、濃縮槽60、脱水部80までの底泥スラリ等(底泥及び上澄み水)の搬送を第2送水ポンプ74の圧送と自然流下で行う。そして、特に凝集分離槽50、濃縮槽60、脱水部80間の底泥の移動を自然流下によって行う事で凝集底泥、濃縮底泥が再分散されることがなく、濃縮底泥を高濃度のまま脱水部80に搬送することができる。
ここで、図5の表に、未処理の底泥スラリの上澄み液、多孔質鉄粒処理のみの底泥スラリの上澄み液、無機中性凝集剤処理のみの上澄み液、多孔質鉄粒+無機中性凝集剤処理後の上澄み液の各液中のヒ素濃度及びpHを示す。また、各試料の脱水底泥を水中に浸漬した時のヒ素の溶出試験の結果(濃度)を示す。尚、試料A−1〜A−4と試料B−1〜B−4とは底泥スラリの取得日が異なるものである。また、多孔質鉄粒の添加量は底泥スラリ1L当たり20gとした。図5から、未処理の底泥スラリの試料A−1、B−1の上澄み液のヒ素濃度は、それぞれ0.016mg/L、0.038mg/Lであったのに対し、多孔質鉄粒による吸着処理を行った試料A−2〜A−4、B−3、B−4のヒ素濃度はいずれも0.006mg/L〜0.003mg/Lであり、土壌汚染防止法のヒ素濃度の基準値0.01mg/Lよりも低い値を示した。よって、本願発明の多孔質鉄粒は溶出した重金属成分を効果的に捕集可能なことが判る。ただし、多孔質鉄粒処理のみの試料A−2の溶出試験結果は0.012mg/Lと未処理の底泥スラリ試料A−1と同等の値であり、多孔質鉄粒では底泥中の重金属成分は捕集できないことが判る。また、無機中性凝集剤処理のみの試料B−2は上澄み液のヒ素濃度が0.034mg/Lと未処理の底泥スラリの試料B−1と同等の値であり、無機中性凝集剤のみではスラリ中に溶出している重金属成分の捕集はできないことが判る。
また、無機中性凝集剤処理を行っていない未処理の底泥スラリの試料A−1、B−1及び多孔質鉄粒処理のみの試料A−2の脱水底泥の溶出試験におけるヒ素濃度は、それぞれ0.012mg/L、0.014mg/L、0.012mg/Lであったのに対し、本願発明の無機中性凝集剤によって凝集した脱水底泥の試料A−3、A−4、B−3、B−4の溶出試験のヒ素濃度は、無機中性凝集剤の添加量が底泥の乾燥重量に対して0.95wt%の試料A−3のものが0.006mg/Lを示したものの、添加量1.5wt%〜3.0wt%のものは測定下限値未満でありいずれも基準値0.01mg/Lよりも低い値を示した。これらのことから、本願発明の無機中性凝集剤を用いることで底泥中の重金属成分は底泥とともに固定不溶化され、外部への溶出が防止されることが判る。尚、無機中性凝集剤処理のみの試料B−2は溶出試験のヒ素濃度が0.007mg/Lと比較的高い値を示したが、これはスラリ中の溶出ヒ素を除去していないためである。
尚、pHに関しては、試料A−2〜A−4、試料B−1〜B−4間で大きな変化は無く、本願発明の無機中性凝集剤は水質(pH)に大きな影響を与えないことが判る。
以上のように、本願発明の浚渫システム100は、水中に溶出している重金属成分は多孔質鉄粒が捕集除去して環境基準値以下にするとともに底泥中の重金属成分は無機中性凝集剤が固定不溶化し外部への溶出を防止する。また、本願発明が使用する無機中性凝集剤は添加の前後で水質を大きく変化させず、また動植物に有害な成分を含有しない。よって、本願発明の浚渫システム100により分離した上澄み水は浚渫した貯水池にそのまま放流することが可能であり、貯水池の機能を維持したまま浚渫作業を行うことができる。また、貯水池に生息する動植物の生態系を維持することができる。また、浚渫により生じた脱水底泥は重金属成分が溶出しないため植物栽培用の培養土として使用することができる。これにより、環境に対する負荷を軽減することができる。さらに、重金属成分を吸着した多孔質鉄粒の量は脱水底泥の量に比較して少ないため、処分コストの削減を図ることができる。
またさらに、本発明に係る浚渫システム100は、多孔質鉄粒の分離を遠心分離装置(鉄粒遠心分離部76)のみで行う。これにより、多孔質鉄粒の分離を短時間で効率良く行う事が可能となり、底泥スラリに対する高い処理能力を有する。
またさらに、本発明に係る浚渫システム100は[特許文献1]に記載の発明と同様、貯水池の遮水作業、排水作業が不要で、作業期間の短縮と低コスト化を図ることができる。また、分離処理装置90を設置して底泥の処理を行うため、従来の重機を使用した浚渫と比較して、省スペースで浚渫作業を行うことができる。また、分離処理装置90は分解して現地にて組立てが可能なため、大型の運搬車両が進入できない貯水池に対しても浚渫作業を行うことができる。
尚、本例で示した浚渫システム100、分離処理装置90、鉄粒混合部70等の各部の形状、構成、動作機構、配管経路等は一例であり、本発明は本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
20 送水ポンプ
30 遠心分離部(スラリ分離部)
40 夾雑物選別部(スラリ分離部)
50 凝集分離槽
70 鉄粒混合部
72a 鉄粒添加槽
72b 鉄粒混合槽
74 第2送水ポンプ
76 鉄粒遠心分離部
80 脱水部
100 浚渫システム
本発明は、
(1)底泥を水ごと吸引して底泥スラリとして圧送する送水ポンプ20と、前記底泥スラリに凝集剤を添加して前記底泥を凝集沈降させる凝集分離槽50と、前記凝集剤によって凝集沈降した底泥を脱水する脱水部80と、を有する浚渫システムにおいて、
サイクロン型の遠心分離装置を備え前記送水ポンプ20で圧送された底泥スラリから重量物及び夾雑物を除去するスラリ分離部(遠心分離部30及び夾雑物選別部40)と、
前記スラリ分離部を通過した底泥スラリに比表面積が0.12m /g〜0.36m /g、見掛密度が1.3g/cm 〜1.5g/cm で、サイクロン型の遠心分離装置にて分離が可能な粒径0.1mm〜1mmの多孔質鉄粒を添加して攪拌し、前記底泥スラリ中に溶出している重金属成分を前記多孔質鉄粒に吸着させる鉄粒混合部70と、
前記多孔質鉄粒を重金属成分ごと前記スラリ分離部の遠心分離装置と同様の1台のサイクロン型の遠心分離装置により分離して、分離後の底泥スラリを前記凝集分離槽50に送出する鉄粒遠心分離部76と、をさらに有し、
前記凝集剤が凝集後の底泥中の固体の重金属成分の溶出を抑制し且つ水のpHを変化させない石膏を主成分とした無機中性凝集剤であることを特徴とする浚渫システム100を提供することにより、上記課題を解決する。
(2)鉄粒混合部70が、底泥スラリに多孔質鉄粒を添加する鉄粒添加槽72aと、多孔質鉄粒と底泥スラリとを攪拌しながら維持する鉄粒混合槽72bと、を有し、前記鉄粒添加槽72aと鉄粒混合槽72bとは、各槽の下方に位置する連結管によって直列に連結され、前記鉄粒混合槽72bの連結数によって底泥スラリの停留時間を調節することを特徴とする上記(1)記載の浚渫システム100を提供することにより、上記課題を解決する。
(3)鉄粒遠心分離部76が鉄粒添加槽72aの上方に位置し、分離した多孔質鉄粒を前記鉄粒添加槽72aに排出することを特徴とする上記(2)記載の浚渫システム100を提供することにより、上記課題を解決する。
(4)スラリ分離部から鉄粒混合部70までの底泥スラリの搬送を送水ポンプ20による圧送と自然流下によって行い、鉄粒混合部70から脱水部80までの底泥スラリの搬送を鉄粒遠心分離部76に底泥スラリを搬送する第2送水ポンプ74による圧送と自然流下によって行うことを特徴とする上記(1)乃至上記(3)のいずれかに記載の浚渫システム100を提供することにより、上記課題を解決する。
(5)無機中性凝集剤として、アルミナ・ケイ酸塩を主体とする天然鉱物30〜50重量%と硫酸カルシウム45〜65重量%と有機系凝集剤1〜5重量%とから成る主成分100重量部に対し、硫酸アルミニウム30〜50重量部、塩化アルミニウム5〜10重量部、およびアルカリ金属炭酸塩20〜40重量部が配合されたものを用いることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の浚渫システム100を提供することにより、上記課題を解決する。
ここで、本発明に係る浚渫システム100で使用する多孔質鉄粒とは、水中に溶出している重金属成分(カドミウム、クロム、セレン、鉛、ヒ素、フッ素、ホウ素等やその化合物)を吸着可能な多数の微細孔を表面に有する鉄材の顆粒であり、例えば比表面積が0.12m/g〜0.36m/g、見掛密度が1.3g/cm〜1.5g/cm ものを用いる。また、形状に関しては球、フレーク状、塊状、如何なるものを用いても構わない。ただし、その粒径はサイクロン型の遠心分離装置にて分離が可能0.1mm〜1mmの範囲内のものを用いる。
次に、鉄粒遠心分離部76で多孔質鉄粒と分離した底泥スラリは凝集分離槽50の内槽50bに吐出される。また、この内槽50bには凝集剤投入部51から無機中性凝集剤が投入され攪拌装置52によって吐出された底泥スラリと混合攪拌される。ここで投入する無機中性凝集剤としては、脱水後の凝集物からの重金属成分の溶出を抑制するものを用いる。具体的には、石膏を主成分とした無機中性凝集剤を用い、さらに具体的にはアルミナ・ケイ酸塩を主体とする天然鉱物30〜50重量%と硫酸カルシウム45〜65重量%と有機系凝集剤1〜5重量%とから成る主成分100重量部に対し、硫酸アルミニウム30〜50重量部、塩化アルミニウム5〜10重量部、およびアルカリ金属炭酸塩20〜40重量部が配合された無機中性凝集剤を用いることが特に好ましい。
本発明は、
(1)底泥を水ごと吸引して底泥スラリとして圧送する送水ポンプ20と、前記底泥スラリに凝集剤を添加して前記底泥を凝集沈降させる凝集分離槽50と、前記凝集剤によって凝集沈降した底泥を脱水する脱水部80と、を有する浚渫システムにおいて、
サイクロン型の遠心分離装置を備え前記送水ポンプ20で圧送された底泥スラリから重量物及び夾雑物を除去するスラリ分離部(遠心分離部30及び夾雑物選別部40)と、
前記スラリ分離部を通過した底泥スラリに比表面積が0.12m/g〜0.36m/g、見掛密度が1.3g/cm〜1.5g/cmで、サイクロン型の遠心分離装置にて分離が可能な粒径0.1mm〜1mmの多孔質鉄粒を添加して攪拌し、前記底泥スラリ中に溶出している重金属成分を前記多孔質鉄粒に吸着させる鉄粒混合部70と、
前記多孔質鉄粒を重金属成分ごと前記スラリ分離部の遠心分離装置と同様の1台のサイクロン型の遠心分離装置により分離して、分離後の底泥スラリを前記凝集分離槽50に送出する鉄粒遠心分離部76と、をさらに有し、
前記凝集剤が凝集後の底泥中の固体の重金属成分の溶出を抑制し且つ水のpHを変化させない石膏を主成分とした無機中性凝集剤であり、
さらに、前記鉄粒混合部70が、底泥スラリに前記多孔質鉄粒を添加する鉄粒添加槽72aと、多孔質鉄粒と底泥スラリとを攪拌しながら維持する鉄粒混合槽72bと、を有し、前記鉄粒添加槽72aと鉄粒混合槽72bとは、各槽の下方に位置する連結管によって直列に連結され、前記鉄粒混合槽72bの連結数によって底泥スラリの停留時間を調節することを特徴とする浚渫システム100を提供することにより、上記課題を解決する。
)鉄粒遠心分離部76が鉄粒添加槽72aの上方に位置し、分離した多孔質鉄粒を前記鉄粒添加槽72aに排出することを特徴とする上記()記載の浚渫システム100を提供することにより、上記課題を解決する。
)スラリ分離部から鉄粒混合部70までの底泥スラリの搬送を送水ポンプ20による圧送と自然流下によって行い、鉄粒混合部70から脱水部80までの底泥スラリの搬送を鉄粒遠心分離部76に底泥スラリを搬送する第2送水ポンプ74による圧送と自然流下によって行うことを特徴とする上記(1)または(2)に記載の浚渫システム100を提供することにより、上記課題を解決する。
)無機中性凝集剤として、アルミナ・ケイ酸塩を主体とする天然鉱物30〜50重量%と硫酸カルシウム45〜65重量%と有機系凝集剤1〜5重量%とから成る主成分100重量部に対し、硫酸アルミニウム30〜50重量部、塩化アルミニウム5〜10重量部、およびアルカリ金属炭酸塩20〜40重量部が配合されたものを用いることを特徴とする上記(1)乃至()のいずれかに記載の浚渫システム100を提供することにより、上記課題を解決する。
また、鉄粒混合部70は、前述のように底泥スラリ中に多孔質鉄粒を添加して攪拌し、底泥スラリ中に溶出している重金属成分を多孔質鉄粒に吸着させるためのものであり、多孔質鉄粒を添加する鉄粒添加槽72aと、多孔質鉄粒と底泥スラリとを攪拌しながら維持する鉄粒混合槽72bと、の複数の槽で構成する。尚、このように鉄粒添加槽72aと鉄粒混合槽72bとを分けることで、十分な重金属成分の吸着時間が確保でき、水中に溶出した重金属成分の捕集を効率的に行うことができる。そして、鉄粒混合槽72b及び各鉄粒混合槽72bには、底泥スラリと多孔質鉄粒とを混合攪拌する周知の攪拌装置52を有する。また、最も下流に位置する鉄粒混合槽72bには第2送水ポンプ74が接続し、この最下流に位置する鉄粒混合槽72b内の底泥スラリを多孔質鉄粒ごと吸引し送水ホース12aを介して鉄粒遠心分離部76に圧送する。
ただし、鉄粒混合部70での停留時間に合わせて底泥スラリの搬送量を設定すると、浚渫システム100全体としての浚渫効率が低下する可能性が有る。よって、鉄粒混合部70における停留時間の調整は鉄粒混合部70(鉄粒添加槽72a及び鉄粒混合槽72b)の容量にて行うことが好ましい。ただし、容量の異なる槽を複数準備するのは設備コストや保管スペースの面から好ましくない。よって、鉄粒混合槽72bの連結個数により鉄粒混合部70の容量を調整し目的の停留時間以上とする。尚、本例では浚渫システム100の流量を約10m/hrとし、容量5mの鉄粒添加槽72aと鉄粒混合槽72bとを全体で3台(鉄粒添加槽72a×1台、鉄粒混合槽72b×2台:総容量15m)連結することで、鉄粒混合部70での停留時間を90分としている。

Claims (4)

  1. 底泥を水ごと吸引して底泥スラリとして圧送する送水ポンプと、
    前記底泥スラリに凝集剤を添加して前記底泥を凝集沈降させる凝集分離槽と、
    前記凝集剤によって凝集沈降した底泥を脱水する脱水部と、を有する浚渫システムにおいて、
    前記送水ポンプで圧送された底泥スラリから重量物及び夾雑物を除去するスラリ分離部と、
    前記スラリ分離部を通過した底泥スラリに多孔質鉄粒を添加して攪拌し、前記底泥スラリ中に溶出している重金属成分を前記多孔質鉄粒に吸着させる鉄粒混合部と、
    前記多孔質鉄粒を重金属成分ごと遠心分離により分離して、分離後の底泥スラリを前記凝集分離槽に送出する鉄粒遠心分離部と、をさらに有し、
    前記凝集剤が重金属成分の溶出を抑制する石膏を主成分とした無機中性凝集剤であることを特徴とする浚渫システム。
  2. 鉄粒混合部が、底泥スラリに多孔質鉄粒を添加する鉄粒添加槽と、多孔質鉄粒と底泥スラリとを攪拌しながら維持する鉄粒混合槽と、を有し、前記鉄粒混合槽の連結数によって底泥スラリの停留時間を調節することを特徴とする請求項1記載の浚渫システム。
  3. 鉄粒遠心分離部が鉄粒添加槽の上方に位置し、分離した多孔質鉄粒を前記鉄粒添加槽に排出することを特徴とする請求項2記載の浚渫システム。
  4. スラリ分離部から鉄粒混合部までの底泥スラリの搬送を送水ポンプによる圧送と自然流下によって行い、前記鉄粒混合部から脱水部までの底泥スラリの搬送を鉄粒遠心分離部に底泥スラリを搬送する第2送水ポンプによる圧送と自然流下によって行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の浚渫システム。
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