JP2021036832A - 見当識改善用組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】安全性に優れ、継続可能な、見当識を改善するための技術を提供することを課題とする。【解決手段】Met−Lys−Proからなるペプチド、又は前記アミノ酸配列を含むペプチドを、見当識改善用組成物に含有させる。前記組成物は、好ましくは認知症ではない対象に摂取又は投与される。【選択図】なし

Description

本発明は、特定のペプチドを含有する、見当識改善用組成物に関する。
国際アルツハイマー病協会によると、2015年に新たに990万人が認知症と診断され、3秒に1人の割合で増加している(非特許文献1)。また、世界の認知症患者は2015年時点で4680万人であるが、2050年には1億3150万人に達すると予測されている。認知症の約7割がアルツハイマー病であることが知られており、アルツハイマー病をはじめとした認知症対策は世界中で喫緊の課題となっている。認知症の進行を遅延させる薬はいくつかあるものの、現状では根治薬は知られていない。したがって、脳機能障害を呈する前、すなわち認知症を発症する前に、脳機能を予防的に改善することの重要性が指摘されている(非特許文献2、3)。
脳機能障害を呈する前段階を対象とし、予防的方法であることから、安全性に優れ、継続的に取り組むことができる手段であることが望ましいと考えられる。
見当識は、場所、時間、人の名前など、自分の置かれた状況を正しく認識する能力をいう。見当識が低下すると、アルツハイマー病に進展しやすいことが知られている(非特許文献4)。
そのため、脳機能障害を有さない人において、見当識を改善することは、現在の生活を健やかに送ることに加え、将来におけるアルツハイマー病などの認知症の発症を予防することにもつながると考えられる。
これまでに、カゼイン加水分解物やこれに含まれるMet−Lys−Proからなるペプチドを有効成分として含有する、高齢者用アルツハイマー型認知症改善剤が知られている(特許文献1)。また、カゼイン加水分解物やこれに含まれるMet−Lys−Proからなるペプチドがアミロイド・ベータタンパク質に起因する脳機能障害の改善作用を有することが見出されている(特許文献2)。カゼイン加水分解物やMet−Lys−Proからなるペプチドは、副作用が少なく安全性に優れ、血圧の変動を生じさせないことも確認されている。
しかしながら、カゼイン加水分解物やこれに含まれるMet−Lys−Proからなるペプチドの作用効果として、見当識の改善、特に脳機能障害を有さない人における見当識の改善については、知られていない。
特開2016−69343号公報 特開2018−154640号公報
World Alzheimer report 2015: the global impact of dementia. An analysis of prevalence, incidence, cost and trends. London: Alzheimer’s Disease International; (2015). Stop Alzheimer’s before it starts. Nature. 2017, 547(7662):153−155. Dementia prevention, intervention, and care. Lancet. 2017, 390(10113):2673−2734. Neural and behavioral substrates of disorientation in mild cognitive impairment and Alzheimer’s disease. Alzheimer’s & Dementia (NY). 2015, 1(1):37−45.
本発明は、安全性に優れ、継続可能な、見当識を改善するための技術を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、アミノ酸配列としてMet−Lys−Proを有するペプチドが、見当識を改善することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、Met−Lys−Proからなるペプチド、又は前記アミノ酸配列を含むペプチドを含有する、見当識改善用組成物である。
本発明の組成物は、好ましくは、認知症ではない対象に摂取又は投与される。
本発明の組成物は、好ましくは、年、月、日、曜日、時間、季節、場所、及び人物からなる群から選択される1又は2以上の項目を認識する能力を改善するために用いられる。
本発明の組成物は、好ましくは、飲食品である。
本発明の組成物は、好ましくは、医薬品である。
本発明によれば、摂取者(被投与者)の見当識を改善することができる。また、本発明の組成物は、副作用が少なく、安全性に優れるため、継続的に摂取可能である。本発明の組成物は、認知症ではない対象に適用でき、より好ましくは脳機能障害を有さない対象に適用できる。
次に、本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。
本発明の組成物は、Met−Lys−Proからなるペプチド、又は前記アミノ酸配列を含むペプチド(総称して「MKPペプチド」という)を含有する。
ここで、Met(M)はメチオニン残基を、Lys(K)はリジン残基を、Pro(P)はプロリン残基を、それぞれ示す。いずれのアミノ酸も、L−型アミノ酸であることが好ましい。
MKPペプチドは、その塩の形態であってもよい。塩としては、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属類;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属類等が挙げられる。
なお、本発明において、所定のアミノ酸配列「を含むペプチド」とは、該所定のアミノ酸配列のN末端又はC末端にペプチド残基が1又は複数個の任意のアミノ酸が付加したものをいい、より具体的には1〜10残基、望ましくは1〜5残基、さらに望ましくは1〜3残基付加したペプチドであって、かつ見当識改善作用を有する配列が望ましい。
本発明の組成物は、本発明の効果を妨げない限りにおいて、他のペプチドが併存してもかまわない。
MKPペプチドは、例えば、(1)Met−Lys−Proのアミノ酸配列を含むタンパク質やペプチドを加水分解酵素等にて分解し、得られた分解物から分離精製して得る方法、(2)ペプチドの合成法によってMKPペプチドを合成した後、得られた合成物から所望のMKPペプチドを分離精製して得る方法、(3)本発明に係るMKPペプチドを含むペプチド等を生産する植物、動物又は微生物から抽出し、得られた抽出物から分離精製する方法等により得ることができる。
以下に(1)及び(2)の方法について具体的に説明する。
(1)加水分解により得る方法
MKPペプチドは、Met−Lys−Proのアミノ酸配列を含むタンパク質やペプチドをタンパク質加水分解酵素や、酸・アルカリ等により加水分解し、得られた加水分解物からMKPペプチドを分離精製して得ることができる。原料となるタンパク質やペプチドを含むものとしては、例えば、乳、大豆、卵、小麦、大麦、米、じゃが芋、さつま芋、えんどう豆、トウモロコシ、畜肉、魚肉、魚介などに由来するタンパク質などが挙げられ、これらのうち乳タンパク質であるカゼインが特に好ましい。
以下にカゼインを原料として用いる場合を例に挙げて、加水分解酵素による処理によってMKPペプチドを得る方法を説明する。
カゼインタンパク質は、MKPペプチドを一次構造中に含むタンパク質であって、適宜加水分解酵素で消化したときにMKPペプチドが生成可能なものである。
まず、酵素で加水分解する前に、原料タンパク質を水又は温湯に分散し、溶解してタンパク質水溶液を調製する。当該タンパク質水溶液の濃度は、特に限定されないが、通常、タンパク質濃度として2質量%以上、さらに好ましくは5〜15質量%程度の濃度範囲に設定するのが好適である。
さらに、前記タンパク質水溶液を、ナトリウム型又はカリウム型陽イオン交換樹脂(好適には強酸性陽イオン交換樹脂)を用いたイオン交換法、電気透析法、限界ろ過膜法、ルーズ逆浸透膜法等で脱塩し、適宜pH調整やカルシウム濃度調整を行うのが好適である。脱塩の際には、カラム式やバッチ式の何れを採用してもよい。また、タンパク質水溶液を、脱塩前等に適宜、加熱殺菌をおこなってもよい。
次いで、前記タンパク質水溶液を、加水分解処理する。当該加水分解処理として、例えば酵素処理、酸処理、アルカリ処理、熱処理等が挙げられ、これらの2種以上の処理を適宜組み合わせてもよい。
本開示のタンパク質分解酵素は、例えば、植物由来、動物由来、微生物由来等が挙げられ、これらから1種又は2種以上組み合わせて使用できる。当該タンパク質分解酵素としては、エンドプロテアーゼが好適である。
前記エンドプロテア−ゼとしては、例えば、セリンプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼが挙げられ、これらを1種又は2種以上選択して用いることができる。このうち、セリンプロテアーゼ及び/又はメタロ
プロテアーゼを用いるのが好適である。
また、プロテアーゼは、アルカリ性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ及び酸性プロテアーゼに分類される。このうち中性プロテアーゼを用いるのが好適である。
前記タンパク質分解酵素は、市販品を用いることができる。前記タンパク質分解酵素として、例えば、ビオプラーゼ(ナガセケムテックス社製)、プロレザー(天野エンザイム社製)、プロテアーゼS(天野エンザイム社製)、PTN6.0S(ノボザイムズ社製)、サビナーゼ(ノボザイムズ社製)、GODO B.A.P(合同酒精社製)、プロテア
ーゼN(天野エンザイム社製)、GODO B.N.P(合同酒精社製)、ニュートラー
ゼ(ノボザイムズ社製)、アルカラーゼ(ノボザイムズ社製)、トリプシン(ノボザイムズ社製)、キモトリプシン(ノボザイムズ社製)、スブチリシン(ノボザイムズ社製)、パパイン(天野エンザイム社製)、ブロメライン(天野エンザイム社製)等が挙げられ、これらから1種又は2種以上の酵素を選択して用いてもよい。
これらのうち、スブチリシン(subtilisin:例えば、ビオプラーゼ)、トリプシン(trypsin:例えばPTN6.0S)、及びバシロリシン(bachillolysin:例えばプロテアーゼN)から選ばれる1種又は2種以上の中性プロテアーゼが好ましく、より好ましくはこれら3種を組み合わせて用いる。
前記タンパク質に対するエンドプロテア−ゼの使用量は、特に限定されず、基質濃度、酵素力価、反応温度及び反応時間等により適宜調整すればよいが、一般的には、タンパク質中のタンパク質1g当り2,000〜11,000活性単位の割合で添加することが好ましい。
前記タンパク質分解酵素による加水分解条件を適宜調整することにより、所望のペプチドを得ることができる。
前記タンパク質分解酵素による加水分解前に、前記原料タンパク質溶液のpHを、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム等の食品上使用可能な塩類を用いて、使用酵素の至適pHに調整することもできる。前記原料タンパク質溶液のpHは、好ましくは5〜10、より好ましくは7〜10に調整する。
前記タンパク質分解酵素の反応温度は、使用酵素の最適温度の範囲で行うことが望ましく、好ましくは30〜60℃、より好ましくは40〜60℃で行う。
前記タンパク質分解酵素の反応保持時間は、酵素反応の分解率をモニターしながら、好ましい分解率に達するまで反応を続ければよく例えば0.5〜24時間で行うことが可能であり、好ましくは1〜15時間、より好ましくは3〜10時間である。特に、原料に前記カゼインタンパク質を用いた場合の分解率は20〜30%であることが好ましい。
なお、原料タンパク質の分解率の算出方法は、ケルダール法(日本食品工業学会編、「食品分析法」、第102頁、株式会社光琳、昭和59年)により試料の全窒素量を測定し、ホルモール滴定法(満田他編、「食品工学実験書」、上巻、第547ページ、養賢堂、1970年)により試料のホルモール態窒素量を測定し、これらの測定値から分解率を次式により算出する。
分解率(%)=(ホルモール態窒素量/全窒素量)×100
前記タンパク質分解酵素による加水分解は、当該酵素を加熱して失活させて終了させればよい。加熱失活処理の加熱温度と保持時間は、使用した酵素の熱安定性を考慮し、十分に失活できる条件を適宜設定することができる。例えば、100℃以上(好適には110〜130℃)で失活させる場合には1〜3秒間、100℃未満60℃以上で失活させる場合には3〜40分間で行うことが好適である。
加熱処理の方式としては、バッチ方式、連続方式のいずれの方式も可能であり、連続方式として、プレート熱交換方式、インフュージョン方式、インジェクション方式等の方式を用いることができる。
なお、前記の加熱失活処理は、加水分解物の殺菌処理として併用することも可能であり、常法による加熱処理方法等を用いることができる。
加水分解終了後、必要に応じて分解液のpHを、好ましくは6〜8、より好ましくは7.0±0.5、さらに好ましくは7.0±0.3とするのが好適である。
なお、本発明に係るタンパク質分解物の製造において、カルシウム濃度未調整の溶液を
加水分解した場合には、得られた分解液を、前記のような脱塩処理し、カルシウム濃度を調整してもよい。次いで、常法により加熱して酵素を失活させる。反応加熱温度と反応保持時間は使用した酵素の熱安定性を配慮し、十分に失活できる条件を適宜設定することができる。加熱失活後、常法により冷却し、そのまま利用することもでき、必要に応じて濃縮して濃縮液を得ることもでき、更に濃縮液を乾燥し、粉末製品を得ることも可能である。
また、前記タンパク質水溶液を酸処理又はアルカリ処理にて加水分解する際には、タンパク質水溶液のpHを調整して処理すればよい。当該pH調整による処理の場合には、タンパク質水溶液のpHが、好ましくはpH5以下又はpH9以上であり、より好ましくはpH4以下又はpH10以上である。このようにpH処理された水溶液は、室温にて数分以上、好ましくは5分〜1時間、放置又は撹拌することによって、酸処理又はアルカリ処理の加水分解物を得ることができる。ここで、「室温」とは、4〜40℃程度であるが、10〜30℃が好適である。
また、前記タンパク質水溶液を、熱処理にて加水分解してもよい。このタンパク質水溶液は、pH未調整でもよく、またpH調整(具体的には、酸性(pH5以下)、中性(pH6〜8)、アルカリ性(pH8以上))してもよい。熱処理は、4〜100℃程度で、上記酸アルカリ処理のような条件にて行えばよい。
上記のようにしてカゼイン等のタンパク質加水分解物を取得できるが、市販のカゼイン加水分解物を用いてもよい。通常、市販のカゼイン加水分解物は、MKPペプチドを含むことが確認されている。
タンパク質加水分解物中のMKPペプチドの含有率は特に限定されないが、その下限値は、本発明の効能をより良好に発揮させる観点から、好ましくは0.001質量%以上であり、0.005質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、その上限値は、本発明の分解物の製造効率の観点から、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.4質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.3質量%以下である。
なお、本発明において、対象のペプチド含有量は、下記の方法にて測定できる。
(a)試料粉末を、1.0mg/mLとなるように、0.2%ギ酸水溶液に希釈溶解し、10分間超音波破砕したのち、0.22μm口径のPVDFフィルター(Millipore社製)でろ過して粉末溶液を調製し、下記測定条件によるLC/MS分析を実施する。一方、測定対象のペプチドの化学合成標準ペプチド(ペプチド研究所社製)の溶解液を濃度別に数点調製し、下記測定条件によるLC/MS分析を実施し、検量線を作成する。
前記粉末溶液の分析におけるピークのうち、標準ペプチドと分子量及びリテンションタイムが一致するものを、標準ペプチドと同一の配列として同定する。標準ペプチドのピーク面積と資料粉末のピーク面積を対比することにより、前記粉末溶液中に対象ペプチドの含有量を求める。
(b)対象ペプチド含有量(mg/カゼイン加水分解物1g)
対象ペプチド含有量(mg/カゼイン加水分解物1g)=〔得られたカゼイン加水分解物中の対象ペプチド測定値(mg)〕/〔得られたカゼイン加水分解物の質量(g)〕
〔得られたカゼイン加水分解物中の対象ペプチド測定値(mg)〕は、下記「LC/MS」による、試料中の対象ペプチドの測定値である。
(c)LC/MS使用機器
質量分析計:TSQ Quantum Discovery MAX(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)。
高速液体クロマトグラフ:Prominence (島津製作所社製)、カラム:XBridge BEH300 C18 φ2.1 mm×250 mm,3.5 μm(Waters社製)。
(d)LC/MS測定条件
移動相A:0.2重量% ギ酸−水溶液
移動相B:0.2重量% ギ酸−アセトニトリル溶液
タイムプログラム:2%B(0.0分)−25%B(5.0分)−65%B(5.1分)−65%B(10分)−85%B(10.1分)−85%B(13.0%)−2%B(13.1分)−STOP(30.0分)。
試料注入量:10μL、カラム温度:40℃、液体流量:200μL/min
分析モード:SRM測定。
Product Mass:m/z=260.10(Parent m/z = 375.21)
得られたタンパク質加水分解物は、未精製のままの状態で使用しても効能を発揮することが可能である。すなわち、タンパク質加水分解物を後述の飲食品や医薬品の態様として、摂取や投与に供してもよい。
また、さらに、得られたタンパク質加水分解物に対して、適宜公知の分離精製を行ってもよい。例えば、得られたタンパク質加水分解物に対して分子量分画を行い、本発明に係るMKPペプチドの分子量に該当する分画を含むタンパク質分解物を得ることができる。
分子量分画として、例えば、限外ろ過、ゲルろ過等の方法が採用でき、これにより不要な分子量のペプチドや遊離アミノ酸の除去率を高めることができる。
限外ろ過の場合には、所望の限外ろ過膜を使用すればよく、ゲルろ過の場合には、所望のサイズ排除クロマトグラフィーに用いるゲルろ過剤を使用すればよい。
さらに、脱塩や不純物を除去したり、純度を高めたりするために、公知の分離精製方法例えば、イオン交換クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー等の各種クロマトグラフィー、溶媒沈殿、塩析、2種の液相間での分配等の方法を用いてもよい。
分離精製したペプチドの分画物は、MKPペプチドが含まれているかどうかを確認することを目的として、質量分析法によりペプチドの同定を行うことができる。
このようにして得られたMKPペプチドは、ペプチド溶液のまま使用することもでき、また、必要に応じて、該溶液を公知の方法により、濃縮した濃縮液として使用することもできる。また、該濃縮液を公知の方法により乾燥し、粉末にして使用することもできる。
(2)化学合成により得る方法
MKPペプチドは、化学合成又は生合成によっても製造することができる。
ペプチドの化学合成は、オリゴペプチドの合成に通常用いられている液相法または固相法によって行うことができる。合成されたペプチドは必要に応じて脱保護され、未反応試薬や副生物等を除去して、MKPペプチドを単離することが可能である。このようなペプチドの合成は、市販のペプチド合成装置を用いて行うことができる。
ペプチドの生合成は、宿主生物にペプチド発現ベクターを導入して生成・分泌させるといった常法により行うことができる。
本発明の組成物は、見当識を改善することができる。
ここで、見当識は、時間、場所、人の名前など、現在置かれている状況を正しく認識する能力をいう。より具体的には、年、月、日、曜日、時間、季節、場所、及び人物からなる群から選択される1又は2以上の項目を認識する能力をいう。
見当識が改善したことは、例えば、ADAS−cog(Alzheimer's Disease Assessme
nt Scale-cog)の見当識の項目において、得点が向上することにより確認することができる。
見当識が低下すると、アルツハイマー病に進展しやすいとされている(非特許文献4)。このことから、本発明の組成物により見当識が改善されると、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、血管障害、脳アミロイドアンギオパチー等の脳機能障害を、予防することが期待される。ここで、脳機能障害の予防とは、脳機能障害を罹患(発症)していない適用対象において、疾患又は症状の発生を防止すること、該発生を遅延させること、及び該発生の危険性を低下させることを含む。
本発明の組成物は、食品としての使用実績があり安全性が高い。また、長期間、連続的に投与しても副作用の心配が小さい。さらに、他の薬剤との併用においても安全性が高い。
本発明の組成物を投与する対象(被投与者)及び摂取させる対象(摂取者)は、動物であれば特に限定されないが、通常はヒトである。また、成人、小児、乳児、新生児(低体重児を含む)等のいずれであってもよいが、通常は成人である。また、性別は特に限定されない。
また、本発明の摂取者及び被投与者は、好ましくは認知症ではない状態であり、より好ましくは脳機能障害を有さない状態である。通常、認知症は進行性であり、完治するものではないことから、認知症を発症する前段階にある者が対象となる。なお、軽度認知障害は認知症の前段階であるため、「脳機能障害を有する状態であるが、認知症ではない状態」に該当し、本発明の好ましい摂取者及び被投与者となりえる。
ここで、認知症ではないことは、医師により認知症であると診断されていないこと又は認知症ではないと診断されたことであってもよいし、種々の神経心理検査で認知症の判定基準に該当していないことであってもよい。摂取者(被投与者)がヒトである場合は、好ましくは、長谷川式認知症スケール(HDS−R)やミニメンタルステート検査(MMSE)において、健常(正常)に該当することにより、確認することができる。
本発明の別の側面は、見当識改善用組成物の製造における、MKPペプチドの使用である。
本発明の別の側面は、見当識改善における、MKPペプチドの使用である。
本発明の別の側面は、見当識改善のために用いられる、MKPペプチドである。
本発明の別の側面は、MKPペプチドを動物に投与することを含む、見当識を改善する方法である。
なお、本明細書において「ペプチドを動物に投与すること」は、「ペプチドを動物に摂取させること」と同義であってよい。摂取は、自発的なもの(自由摂取)であってもよく、強制的なもの(強制摂取)であってもよい。すなわち、投与工程は、具体的には、例えば、ペプチドを飲食品や飼料に配合して対象に供給し、以て対象にペプチドを自由摂取させる工程であってもよい。
本発明の組成物の摂取(投与)時期は、特に限定されず、投与対象の状態に応じて適宜選択することが可能である。
本発明の組成物の摂取(投与)量は、摂取(投与)対象の年齢、性別、状態、その他の条件等により適宜選択される。
本発明の組成物の摂取(投与)量は、本発明に係るMKPペプチドの摂取量として、例えば、成人において0.1mg/日〜1g/日の範囲が好ましく、0.1mg/日〜0.5mg/日の範囲がさらに好ましい。
なお、摂取(投与)の量や期間にかかわらず、本発明の組成物は1日1回又は複数回に分けて投与することができる。
本発明の組成物の摂取(投与)期間は、特に限定されないが、好ましくは12週間以上、より好ましくは24週間以上とすると、効果が得られやすい。また、摂取(投与)期間の上限は特に設けられず、継続的な、長期の摂取(投与)が可能である。
本発明の組成物の摂取(投与)経路は、経口又は非経口のいずれでもよいが経口が好ましい。また、非経口摂取(投与)としては、経皮、静注、直腸投与、吸入等が挙げられる。
本発明の組成物を経口摂取される組成物とする場合は、飲食品の態様とすることが好ましい。
飲食品としては、本発明の効果を損なわず、経口摂取できるものであれば形態や性状は特に制限されず、MKPペプチドを含有させること以外は、通常飲食品に用いられる原料を用いて通常の方法によって製造することができる。
飲食品としては、液状、ペースト状、ゲル状固体、粉末等の形態を問わず、例えば、錠菓;流動食(経管摂取用栄養食);パン、マカロニ、スパゲッティ、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等の小麦粉製品;即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品、その他の即席食品等の即席食品類;農産缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)等の農産加工品;水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類等の水産加工品;畜産缶詰め・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ等の畜産加工品;加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料類、チーズ、アイスクリーム類、調製粉乳類、クリーム、その他の乳製品等の乳・乳製品;バター、マーガリン類、植物油等の油脂類;しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類等の基礎調味料;調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料等の複合調味料・食品類;素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等の冷凍食品;キャラメル、キャンディー、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子、ゼリー、その他の菓子などの菓子類;炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、その他の嗜好飲料等の嗜好飲料類、ベビーフード、ふりかけ、お茶漬けのり等のその他の市販食品等;育児用調製粉乳;経腸栄養食;機能性食品(特定保健用食品、栄養機能食品)等が挙げられる。
また、飲食品の一態様として飼料とすることもできる。飼料としては、ペットフード、家畜飼料、養魚飼料等が挙げられる。
飼料の形態としては特に制限されず、MKPペプチドの他に例えば、トウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦、マイロ等の穀類;大豆油粕、ナタネ油粕、ヤシ油粕、アマニ油粕等の植物性油粕類;フスマ、麦糠、米糠、脱脂米糠等の糠類;コーングルテンミール、コーンジャムミール等の製造粕類;魚粉、脱脂粉乳、ホエイ、イエローグリース、タロー等の動物性飼料類;トルラ酵母、ビール酵母等の酵母類;第三リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の鉱物質飼料;油脂類;単体アミノ酸;糖類等を含有するものであってよい。
本発明の組成物が飲食品(飼料を含む)の態様である場合、見当識改善に関する用途や
、脳機能低下予防、記憶力低下予防等の用途が表示された飲食品として提供・販売されることが可能である。また、本明細書に係るMKPペプチドは、これら飲食品等の製造のために使用可能である。
かかる「表示」行為には、需要者に対して前記用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、前記用途を想起・類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、全て本発明における「表示」行為に該当する。
また、「表示」は、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により行われることが好ましい。具体的には、飲食品に係る商品又は商品の包装に前記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が挙げられる。
一方、表示内容としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示等)であることが好ましい。また、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。
また、「表示」には、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、医薬用部外品等としての表示も挙げられる。この中でも特に、消費者庁によって認可される表示、例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、若しくは機能性表示食品に係る制度、又はこれらに類似する制度にて認可される表示等が挙げられる。具体的には、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク減少表示、科学的根拠に基づいた機能性の表示等を挙げることができ、より具体的には、健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令(平成二十一年八月三十一年内閣府令第五十七号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)及びこれに類する表示が典型的な例である。
かかる表示としては、例えば、「見当識(時間や場所、人を認識し、思い出す力)をサポート」、「見当識(現在の時間、場所、周囲の人、状況を正しく認識する力)をサポート」、「時間や場所、人を認識し、思い出す力をサポート」、「現在の時間、場所、周囲の人、状況を正しく認識する力をサポート」、「見当識(時間や場所、人を認識し、思い出す力)を維持」、「見当識(現在の時間、場所、周囲の人、状況を正しく認識する力)を維持」、「時間や場所、人を認識し、思い出す力を維持」、「現在の時間、場所、周囲の人、状況を正しく認識する力を維持」、「見当識(時間や場所、人を認識し、思い出す力)を改善」、「見当識(現在の時間、場所、周囲の人、状況を正しく認識する力)を改善」、「時間や場所、人を認識し、思い出す力を改善」、「現在の時間、場所、周囲の人、状況を正しく認識する力を改善」、「見当識(現在の時間、場所、周囲の人、状況を正しく記憶し思い出す力)をサポート」、「時間や場所、人を記憶し、思い出す力をサポート」、「現在の時間、場所、周囲の人、状況を正しく記憶し思い出す力をサポート」、「見当識(時間や場所、人を記憶し、思い出す力)を維持」、「見当識(現在の時間、場所、周囲の人、状況を正しく記憶し、思い出す力)を維持」、「時間や場所、人を記憶し、思い出す力を維持」、「現在の時間、場所、周囲の人、状況を正しく記憶し、思い出す力を維持」、「見当識(時間や場所、人を記憶し、思い出す力)を改善」、「見当識(現在の時間、場所、周囲の人、状況を正しく記憶し、思い出す力)を改善」、「時間や場所、人を記憶し、思い出す力を改善」、「現在の時間、場所、周囲の人、状況を正しく記憶し、思い出す力を改善」、「見当識が気になる方へ」、「物忘れが気になる方へ」、「うっかりが気になる方へ」、「見当識の改善のために」、「時間や場所、人、状況を正しく認識する力を、改善・維持するために」、「認知機能の低下予防用」、「認知機能をサポー
ト」、「認知の衰えを防ぎたい方へ」等と表示することが挙げられる。
本発明の組成物は、医薬品の態様とすることもできる。
医薬品の投与経路は、経口又は非経口のいずれでもよいが経口が好ましい。また、非経口摂取(投与)としては、経皮、静注、直腸投与、吸入等が挙げられる。
医薬品の形態としては、投与方法に応じて、適宜所望の剤形に製剤化することができる。例えば、経口投与の場合、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤等の固形製剤;溶液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤等の液剤等に製剤化することができる。また、非経口投与の場合、座剤、軟膏剤、注射剤等に製剤化することができる。
製剤化に際しては、MKPペプチドの他に、通常製剤化に用いられている賦形剤、pH調整剤、着色剤、矯味剤等の成分を用いることができる。また、他の薬効成分や、公知の又は将来的に見出される見当識改善作用を有する成分等の他の医薬を併用することも可能である。
加えて、製剤化は剤形に応じて適宜公知の方法により実施できる。製剤化に際しては、適宜、通常製剤化に用いる担体を配合して製剤化してもよい。かかる担体としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤等が挙げられる。
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビット等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α−デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプン等のデンプン誘導体;結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等の珪酸塩誘導体;リン酸カルシウム等のリン酸塩誘導体;炭酸カルシウム等の炭酸塩誘導体;硫酸カルシウム等の硫酸塩誘導体等が挙げられる。
結合剤としては、例えば、上記賦形剤の他、ゼラチン;ポリビニルピロリドン;マクロゴール等が挙げられる。
崩壊剤としては、例えば、上記賦形剤の他、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾されたデンプン又はセルロース誘導体等が挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、タルク;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;コロイドシリカ;ピーガム、ゲイロウ等のワックス類;硼酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸等のカルボン酸類;安息香酸ナトリウム等のカルボン酸ナトリウム塩;硫酸ナトリウム等の硫酸塩類;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム等のラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物等の珪酸類;デンプン誘導体等が挙げられる。
安定剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;無水酢酸;ソルビン酸等が挙げられる。
矯味矯臭剤としては、例えば、甘味料、酸味料、香料等が挙げられる。
なお、経口投与用の液剤の場合に使用する担体としては、水等の溶剤等が挙げられる。
本発明の医薬品を摂取するタイミングは、例えば食前、食後、食間、就寝前など特に限定されない。
以下に実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下の方法で、ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験を行った。
(1)被験者
スクリーニングにより参加適格と判断された認知症でない成人男女、合計268名に、同意を得た上で、被験者として参加してもらった。被験者背景を表1に示す。また、具体的な選択基準及び除外基準は以下の通りである。
選択基準
・年齢40歳以上
・長谷川式簡易知能評価(HDS−R)が21点以上
除外基準
・認知症と診断されている者または認知症の疑いを有する者
・統合失調症、うつ病等の精神障害が疑われる者(高齢者用うつ尺度短縮版(GDS−15−J)にて判定し、6点以上を除外)
・脳、肝臓、腎臓、心臓、肺、消化器、血液、内分泌代謝系等に重篤な疾患を有する者、またはこれらの重篤な既往歴がある者
・妊婦、授乳婦、半年以内に妊娠の計画がある者
・重篤な薬剤アレルギー、食物アレルギーを有する者、またはこれらの重篤な既往歴がある者
・試験責任医師により被験者として不適格と判断された者
(2)試験方法
本試験は、認知症ではない中高年男女を対象として、MKPペプチド1g/日を24週間毎日摂取した時、プラセボ(デキストリン1g/日)摂取と比較して、ADAS−cogのスコアが改善するかを検証した。
ADAS−cogは、「単語再生」、「口語言語能力」、「言語の聴覚的理解」、「喚語困難」、「口頭命令に従う」、「手指および物品呼称」、「構成行為」、「観念運動」、「見当識」、「単語再認」、及び「テスト教示の再生能力」の11項目から構成される。これらの項目について割り当てた70点満点の検査で、得点が低いほど認知機能が正常であると判断されるものである。統計解析は得られた全てのデータを対象として、摂取前値を共変量とした共分散分析により行った。
(3)結果
摂取24週目においてプラセボ群と比較してMKPペプチド群の見当識が有意に改善した(表2)。
また、試験食品摂取に起因する有害事象は認められず、MKPペプチドの安全性が確認された。
Figure 2021036832
Figure 2021036832

Claims (5)

  1. Met−Lys−Proからなるペプチド、又は前記アミノ酸配列を含むペプチドを含有する、見当識改善用組成物。
  2. 認知症ではない対象に摂取又は投与される、請求項1に記載の組成物。
  3. 年、月、日、曜日、時間、季節、場所、及び人物からなる群から選択される1又は2以上の項目を認識する能力を改善するために用いられる、請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 飲食品である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
  5. 医薬品である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
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