JP2016121109A - 表皮基底膜保護剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】安全性が高く、抗原性の低い、食品由来成分の表皮基底膜保護剤を提供すること。【解決手段】ラクトフェリンの加水分解物を有効成分として含有する、表皮基底膜保護剤。基底膜分解酵素及び/又はケモカインの増加を抑制する効果を有する。【選択図】なし

Description

本発明は、表皮基底膜保護剤に関する。より詳しくは、ラクトフェリンの加水分解物を有効成分として含有する表皮基底膜保護剤に関する。
皮膚の基底膜は、表皮細胞を産生し、真皮と表皮との間の結合及びコミュニケーションを行い、外界からのバリア機能及び皮膚の恒常性維持にとって重要な役割を果たしている。皮膚の基底膜構造の変化は、20代後半から生じ始め、加齢とともに蓄積していくことが見出されている。この基底膜の構造変化は、弾力性の低下やしわの形成に先行して見られる皮膚変化である。
表皮基底膜が紫外線照射等により傷害を受けると、皮膚老化が促進されるだけでなく、日々の表皮のターンオーバーに乱れが生じて肌あれ等が引き起こされる。したがって、皮膚の表皮細胞が規則正しく基底膜に結合し、十分な基底膜構造を形成することが、正常な皮膚機能の発現に不可欠であると考えられる。
紫外線は、皮膚老化に及ぼす最も重篤な影響を与える外的環境因子であり、皮膚バリア機能の低下や深いしわ等の光老化症状を引き起こす主因である(非特許文献1、2、3)。
日光に暴露した皮膚では、基底膜分解酵素の増加とともに、基底膜に構造変化が起こり、特に基底膜の多重化が頻繁に観察されることが報告されている(非特許文献4、5)。
紫外線暴露によって皮膚に急性の炎症が加わると、活性酸素の発生に伴って炎症性サイトカイン(IL−1、IL−6等)、単球・好中球の遊走因子である炎症性ケモカインMIP−2(Macrophage Inflammatory Protein-2)、MCP−1(Monocyte Chemotactic Protein-1)が放出され、またマクロファージ・好中球等の浸潤が誘導される。
また、紫外線を照射した皮膚では、表皮基底膜の分解酵素であるゼラチナーゼ、すなわちマトリックスメタロプロテアーゼ(matrix metalloproteinase)のMMP−2、MMP−9等の産生量が高まることが報告されている(非特許文献5)。
MMP−2やMMP−9は、基底膜を構成する細胞外マトリクス成分であるラミニン及びIV型コラーゲン、VII型コラーゲンを基質として分解する。その結果、基底膜のラミニンやIV型コラーゲン繊維の断裂、多重化、分解、変性、消失等が起こり、基底膜の機能に異常が生じる。
このような紫外線照射による皮膚の老化等に対し、非特許文献3では、MMP−2及びMMP−9の発現の阻害活性を示す化合物を塗布することで、紫外線暴露したマウスの皮膚におけるしわの形成が抑制される効果が報告されている。
健康で若々しい肌を保ち、皮膚のバリア機能や恒常性を維持する上で、表皮の機能維持に重要な役割を果たす「基底膜」をダメージから保護し正常な構造形成を促すこと、すなわち構成成分であるラミニン及びIV型コラーゲンの分解を阻止することが重要である。よって、紫外線等によって誘導され、基底膜の分解に働く、過剰なゼラチナーゼ(MMP−2やMMP−9)を有効的に抑制できる優れた薬剤が求められていた。
基底膜の構成成分への作用に注目した技術としては、例えば、基底膜の構成成分の産生を促す化粧料組成物が挙げられる(特許文献1)。該化粧料組成物の成分として、例えば、トウキンセンカ、ヘーゼルナッツ、ヤグルマギク、オオムギ、オドリコソウ、キョウニン、ゲンノショウコ、サボンソウ、ショウブ、スイカズラ、セイヨウノコギリソウ、トウニン、トマト、ニンニク、ムクロジ、レタス、酵母等の抽出物、及び加水分解コンキオリンが挙げられる。
また、基底膜構成成分の分解を阻害する化粧料組成物についても研究されている(特許文献2)。該化粧料組成物の成分として、ムラサキ属植物の培養細胞抽出エキス又はその処理物が挙げられる。
しかしながら、基底膜成分の分解という点では、上述のように、化粧料のような皮膚に塗布する形態で適用できる成分が見出されてはいた。しかし、基底膜構成成分の分解に対して、飲食できる成分で、十分な抑制作用を有する安全性の確認されたものは少ないという課題があった。
そこで、飲食可能で、しわ等の皮膚の老化を改善する成分として、乳由来の蛋白質が注目され、種々の研究が行われている。
例えば、分子量3000〜80000の乳由来塩基性蛋白質を皮膚に適用して、コラーゲンの産生を促進させる美肌剤が開発されている(特許文献3)。この技術によれば、皮膚のコラーゲン量を増加させることができるとしている。
また、乳塩基性蛋白質画分及び/又は乳塩基性蛋白質画分分解物を有効成分とするヒアルロン酸産生促進用飲食品及び化粧料が開発されている(特許文献4)。それらを飲食又は皮膚に適用することにより、ヒアルロン酸の生合成を促進させ、しわやたるみを防止できるとしている。
更に、ホエイ蛋白質加水分解物を有効成分とする美肌剤が開発されている(特許文献5)。この技術によれば、肌の保湿やしわ防止等に有効な美肌用化粧品、飲食品等を提供できるとしている。
特開2006−290829号公報 特開2008−031088号公報 特開2003−144095号公報 国際公開第2013/164993号パンフレット 国際公開第2012/121286号パンフレット
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本技術は、安全性が高く、抗原性の低い、食品由来成分の表皮基底膜保護剤を提供することを目的とする。
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、乳由来の成分であるラクトフェリンの加水分解物が、表皮基底膜分解酵素(MMP−2、MMP−9)に対して産生阻害活性を有し、かつ、炎症性ケモカイン(MCP−1、MIP−2)の産生阻害活性も有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本技術は、ラクトフェリンの加水分解物を有効成分として含有する、表皮基底膜保護剤である。
本技術に係る表皮基底膜保護剤は、基底膜分解酵素及び/又はケモカインの産生を抑制することができる。
本技術に係る表皮基底膜保護剤が作用する基底膜分解酵素としては、MMP−2及び/又はMMP−9を挙げることができる。
また、本技術に係る表皮基底膜保護剤が作用するケモカインとしては、MCP−1及び/又はMIP−2を挙げることができる。
また、本技術によれば、前記表皮基底膜保護剤を含有する医薬組成物、化粧料及び飲食品を提供できる。
本技術によれば、食品として長年使用されてきた乳由来の成分を表皮基底膜保護剤の有効成分とするため、生体への安全性が高く、抗原性が低い表皮基底膜保護剤を提供することができる。なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本技術中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
<1.表皮基底膜保護剤>
(1)ラクトフェリン加水分解物
原料であるラクトフェリンは、乳、涙、唾液、血液等に存在する鉄結合性の糖蛋白質である。ラクトフェリンは、特に哺乳動物、例えば、ヒツジ、ヤギ、ブタ、マウス、水牛、ラクダ、ヤク、ウマ、ロバ、ラマ、ウシ又はヒトの乳に含まれる。含有量、入手容易の点から、例えば、ウシ、ヒト等の乳が好ましい。乳は、初乳、移行乳、常乳、末期乳のいずれでもよい。
本技術においては、ラクトフェリンは哺乳動物の乳由来のものに限定されず、他に、前記乳の処理物である脱脂乳、ホエイ等から常法(例えば、イオンクロマトグラフィー等)によって分離されたラクトフェリン、遺伝子操作によって微生物、動物細胞、トランスジェニック動物等から産生された組換えラクトフェリン、化学合成ラクトフェリン、又はそれらの混合物でもよい。また、ラクトフェリンは、非グリコシル化又はグリコシル化されたものでもよい。
本技術の有効成分であるラクトフェリン加水分解物は、生体材料であって安全な乳由来の原料であるラクトフェリンを加水分解することにより製造されるため、比較的安価に簡便に製造することができる。
前記ラクトフェリン加水分解物の平均分子量は、好ましくは5000ダルトン(以下、「Da」とする)以下又は未満、より好ましくは2000Da以下である。
<平均分子量の算定方法>
本技術におけるラクトフェリン加水分解物の平均分子量は、以下の数平均分子量の概念により求めるものである。
数平均分子量(Number Average of Molecular Weight)は、例えば文献(社団法人高分子学会編、「高分子科学の基礎」、第116〜119頁、株式会社東京化学同人、1978年)に記載されているとおり、高分子化合物の分子量の平均値を次のとおり異なる指標に基づき示すものである。
すなわち、タンパク質加水分解物等の高分子化合物は不均一な物質であり、かつ分子量に分布があるため、タンパク質加水分解物の分子量は、物理化学的に取り扱うためには、平均分子量で示す必要があり、数平均分子量(以下、Mnと略記することがある。)は、分子の個数についての平均であり、ペプチド鎖iの分子量がMiであり、その分子数をNiとすると、次の式により定義される。
Figure 2016121109
(2)ラクトフェリン加水分解物の製造方法
ラクトフェリン加水分解物の製造方法は特に限定されないが、蛋白質分解酵素等の酵素を用いて製造する方法等が挙げられる。以下、蛋白質分解酵素を用いて、ラクトフェリン加水分解物を製造する方法について、具体的に説明する。
まず、原料(ラクトフェリン)を水に分散し溶解させる。
該溶解液の濃度は特に限定されないが、通常、蛋白質換算で3〜15質量%前後の濃度範囲にするのが効率性及び操作性の点から好ましい。
次に、溶解液のpHを、使用する蛋白質分解酵素の至適pH付近に調整することにより原料水溶液を調製する。具体的には、溶解液のpHを、酸性溶液を用いて、例えばpH2〜4に調整することが好ましい。pH調整剤は特に限定されないが、例えば、塩酸、クエン酸、アスコルビン酸等が挙げられる。
次に、調製した原料水溶液に蛋白質分解酵素を添加する。蛋白質分解酵素は、プロテアーゼ、トリプシン、キモトリプシン、キモシン、プラスミン、ペプシン、パパイン、ペプチダーゼ、及びアミノペプチダーゼ等が挙げられるが、ラクトフェリン分解能を有する消化酵素が好ましい。特に、胃消化酵素であるペプシンが好ましい。
蛋白質分解酵素としては、細菌由来、動物由来の蛋白質分解酵素等があり、いずれのものも使用することができる。
細菌由来の蛋白質分解酵素は特に限定されないが、例えば、バシラス属、ビフィドバクテリウム属、エンテロコッカス属、ラクトバシラス属、ラクトコッカス属、ロイコノストック属、ペディオコッカス属、プロピオンバクター属、シュードモナス属、ストレプトコッカス属又はそれらの混合物に由来するものが挙げられる。
動物由来の蛋白質分解酵素は特に限定されないが、例えば、ヒツジ、ヤギ、ブタ、マウス、水牛、ラクダ、ヤク、ウマ、ロバ、ラマ、ウシ又はヒト等の胃液由来ペプシンが挙げられる。
また、上述した蛋白質分解酵素は、単独又は2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
蛋白質分解酵素は、4〜10℃の冷水に分散し、溶解して使用することが好ましい。該蛋白質分解酵素の溶解液の濃度は特に限定されないが、通常、酵素濃度が3〜10%程度となる量で使用することが効率性及び操作性の点から望ましい。
ラクトフェリンの加水分解に用いる蛋白質分解酵素の使用量は、基質濃度、酵素力価、反応温度、及び反応時間等により異なるが、一般的には、ラクトフェリンの蛋白質換算質量1g当たり1000〜20000単位(活性単位)の割合が望ましい態様として挙げられる。
蛋白質分解酵素の活性単位は、使用する蛋白質分解酵素の種類に応じて測定することができる。
蛋白質分解酵素の添加に当たっては、1種類ずつ溶解し、添加することが望ましいが、添加の順番は特に制限されない。
酵素反応中、反応系の温度は特に限定されず、酵素作用が発現する最適温度範囲を含む実用に供され得る範囲から選ばれ、通常30〜60℃の範囲から選ばれる。
反応継続時間は、反応温度、初発pH等の反応条件によって進行状態が異なり、例えば、酵素反応の反応継続時間を一定とすると、製造バッチ毎に異なる理化学的性質を有する分解物が生じる可能性等の問題があるため、一該に決定することができない。したがって、酵素反応をモニターすることにより、ラクトフェリン加水分解物の理化学的性質が所望の値となるように反応継続時間を決定する。
なお、酵素反応のモニタリング方法としては、例えば、前記反応溶液の一部を採取し、蛋白質の分解率等を測定する方法等が挙げられる。
蛋白質の分解率の算出方法は、ケルダール法(日本食品工業学会編、「食品分析法」、第102頁、株式会社光琳、昭和59年)により試料の全窒素量を測定し、ホルモール滴定法(満田他編、「食品工学実験書」、上巻、第547ページ、養賢堂、1970年)により試料のホルモール態窒素量を測定し、これらの測定値から分解率を次式により算出する。
分解率(%)=(ホルモール態窒素量/全窒素量)×100
次に、酵素反応を停止させる。
酵素反応の停止は、加水分解液中の酵素を失活させることにより行われる。失活処理は、常法、例えば、加熱失活処理等により実施することができる。
加熱失活処理の条件(加熱温度、加熱時間等)は、使用した酵素の熱安定性を考慮し、十分に失活できる条件を適宜設定することができ、例えば、80〜130℃の温度範囲で30分間〜2秒間の保持時間で行うことができる。
酵素反応停止後、得られた加水分解失活液に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のアルカリ溶液を添加してpHを弱酸性〜中性付近に調整する。その後、(a)濾過、(b)精密濾過、限外濾過膜等の膜分離処理及び(c)樹脂吸着分離からなる群から選択される、いずれか1種又はこれらの2種以上の組合せによって精製することが好ましい。
上述した精製を行うことにより、当該失活液中に含まれる不溶物の除去、脂肪や乳糖、その他の不要な成分の低減等を行うことができる。その結果、溶液状態で透明であり、かつ、溶液状態での長期保存においても混濁、沈殿、凝集及び褐変等がほとんど生じない、いわゆる保存安定性に優れたラクトフェリン加水分解物を得ることができる。
また、上述した精製を行うことにより、本技術に係るラクトフェリン加水分解物の風味、外観等も向上させることができる。
(a)の濾過は、公知の方法により実施することができ、例えば、珪藻土を用い、公知の装置により実施することができる。
濾過を行うことにより、加水分解失活液中に存在する加水分解反応時及び/又は酵素加熱失活時に生成した不溶物を除去できる。
(b)の膜分離処理は、公知の装置を用いて行うことができる。公知の装置としては特に限定されないが、例えば、精密濾過モジュール等、限外濾過モジュールSEP1053(旭化成社製、分画分子量3,000)、SIP1053(旭化成社製、分画分子量6,000)、SLP1053(旭化成社製、分画分子量10,000)等が挙げられる。
この場合、膜分離処理後の膜透過画分としてラクトフェリン加水分解物を含有する溶液が得られる。
膜分離処理を行うことにより、(a)の濾過と同様、加水分解失活液中に存在する加水分解反応時及び/又は酵素加熱失活時に生成した不溶物を除去できる。
(c)の樹脂吸着分離は、公知の方法により実施することができ、例えば、樹脂をカラムに充填し、前記加水分解失活液を、当該カラムを通過させることにより実施することができる。樹脂としては特に限定されないが、例えば、商品名:ダイヤイオン、セパビーズ(三菱化学社製)、アンバーライトXAD(オルガノ社製)、KS−35(味の素ファインテクノ社製)等が挙げられる。
樹脂吸着分離は、これらの樹脂をカラムに充填して前記加水分解失活液を連続的に流入させ、流出させることによる連続方式で行うこともでき、また、前記加水分解失活液中に樹脂を投入し、一定時間接触させた後、加水分解失活液と樹脂とを分離するバッチ方式で行うこともできる。
加水分解失活液中には、保存期間中に混濁、沈殿、凝集及び褐変等を惹起する因子(例えば、疎水性アミノ酸を多く含むペプチド等)が残存している可能性があり、樹脂吸着分離を行うことにより、これらの因子を除去できる。
また、精製後、得られたラクトフェリン加水分解物を含有する溶液を殺菌してもよい。
殺菌方法は、常法による加熱処理方法等を用いることができる。
加熱処理時の加熱温度と保持時間は、充分に殺菌できる条件を適宜設定すればよく、例えば、70〜140℃で30分間〜2秒間加熱処理することにより殺菌できる。
加熱殺菌の方式は、バッチ方式、連続方式のいずれの方式も可能であり、連続方式においてもプレート熱交換方式、インフュージョン加熱方式、インジェクション加熱方式等の方式を用いることができる。
さらに、得られたラクトフェリン加水分解物を含有する溶液は、そのまま使用することもでき、また、必要に応じて、該溶液を公知の方法により、濃縮した濃縮液として使用することもできる。また、該濃縮液を公知の方法により乾燥し、粉末にして使用することもできる。
加えて、本技術のラクトフェリン加水分解物の前記不溶物の成分を除去した後、風味改善又は物性改善等を目的として、エンドプロテアーゼ又はエキソプロテアーゼを添加して、二次的な加水分解を行い、以後の処理を行うこともできる。
(3)表皮基底膜保護剤の特徴及び効果
以上のようにして得られた、本技術で用いるラクトフェリン加水分解物は、表皮基底膜の構成成分を特異的に分解するゼラチナーゼ(IV型コラゲナーゼともいう)に対して作用する。ここで、表皮基底膜の構成成分として、例えば、IV型コラーゲン、ラミニン、VII型コラーゲンが挙げられる。また、ゼラチナーゼとして、例えば、マトリックスメタロプロテアーゼファミリーのMMP−2、MMP−9が挙げられる。前記ラクトフェリン加水分解物は、MMP−2、MMP−9の産生を抑制し、表皮基底膜のコラーゲン、ラミニン等の分解を防ぐ。
また、本発明で用いるラクトフェリン加水分解物は、紫外線照射等により放出される表皮の炎症性ケモカインの産生を抑制する作用を有する。ここで、炎症性ケモカインは、例えば、MIP−2、MCP−1が挙げられる。
本技術で用いる、酵素分解されたラクトフェリン加水分解物は、未分解のラクトフェリンよりも高い活性を有し、より効果的に表皮基底膜を保護し、しわ等の皮膚のダメージを改善できる。
本技術に係る表皮基底膜保護剤の投与量は、用法、患者の年齢、性別、疾患の程度、その他の条件等に応じて適宜設定することができる。
以上説明した表皮基底膜保護剤は、食品として長年使用されてきた乳由来の成分を有効成分とするため、生体への安全性が高い。そのため、副作用や依存性が生じる等の危険性がなく、長期間、連続的に摂取することが可能である。
また、本技術に係る表皮基底膜保護剤の有効成分であるラクトフェリン加水分解物は、生体材料として比較的安価な乳由来の原料から安定して簡便に製造することができるので、表皮基底膜保護剤を安価に提供することが可能である。そのため、費用負担の面からも、長期間に渡って継続して摂取することが容易な表皮基底膜保護剤を提供することができる。
<2.表皮基底膜の保護、皮膚のダメージの予防、治療用の化粧品又は医薬品>
本技術に係る表皮基底膜保護剤の有効成分であるラクトフェリン加水分解物は、抗原性が低く水溶性に優れ、かつ、後述するように表皮基底膜保護効果を有する。そのため、紫外線等による皮膚への刺激に起因した皮膚のダメージや、日光黒子、炎症後色素沈着等の色素沈着症の予防又は治療のための化粧品又は医薬品として用いることができる。
また、本技術に係る表皮基底膜保護剤は、食品として長年使用されてきた乳由来の成分を有効成分とするため、種々の疾患を罹患した患者に対しても安心して投与できる可能性が高い。また、長期間、連続的に投与しても副作用を心配する必要性も少ない。更に、他の薬剤との併用においても安全性が高い。
本技術に係る表皮基底膜保護剤は、化粧品又は医薬品に利用することができる。化粧品の場合、クリーム、化粧水、乳液等のいずれでもよい。また、医薬品は、経口投与及び非経口投与のいずれでもよい。非経口投与としては、軟膏、クリーム剤等の形態による皮膚への塗布の他、例えば、静注、直腸投与、吸入等が挙げられる。経口投与の剤形としては、例えば、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、シロップ剤、顆粒剤、散剤等が挙げられる。
また、製剤化に際しては、本技術に係るラクトフェリン加水分解物の他に、通常製剤化に用いられている賦形剤、pH調整剤、着色剤、矯味剤等の成分を用いることができる。また、本技術に係る表皮基底膜保護剤を含有しているものであれば、公知の又は将来的に見出される皮膚への刺激に起因した皮膚のダメージや色素沈着症の予防又は治療の効果を有する成分を、本技術に係る表皮基底膜保護剤と併用することもできる。
さらに、適用方法に応じて、適宜所望の剤形に製剤化することができる。例えば、非経口投与の場合、軟膏剤、貼付剤等の他に、座剤、噴霧剤、注射剤等に製剤化することができる。経口投与の場合、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤等の固形製剤;溶液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤等の液剤等に製剤化することができる。
加えて、製剤化は剤形に応じて適宜公知の方法により実施できる。製剤化に際しては、有効成分であるラクトフェリン加水分解物のみを製剤化してもよく、適宜、製剤担体を配合して製剤化してもよい。
なお、製剤担体を配合する場合、表皮基底膜保護剤の有効成分であるラクトフェリン加水分解物の含有量は特に限定されず、剤形に合わせて適宜選択することができるが、0.01〜99質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜99質量%の範囲であることがより好ましい。
また、前記製剤担体としては、剤形に応じて、各種有機又は無機の担体や基剤を用いることができる。化粧品や皮膚塗布用の医薬品製剤の場合の基剤として、例えば、水溶性基剤、油脂性基剤、乳剤性基剤等が挙げられる。固形製剤の場合の担体として、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤等が挙げられる。
水溶性基剤としては、例えば、水、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。
油脂性基剤としては、例えば、ワセリン、パラフィン、ミリスチン酸イソプロピル、ミツロウ、ラノリン、ステアリン酸、ステアリルアルコール、セタノール等が挙げられる。
乳剤性基剤としては、例えば、前記水溶性基剤と前記油脂性基剤とを界面活性剤で乳化したもの等が挙げられる。
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビット等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α−デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプン等のデンプン誘導体;結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等の珪酸塩誘導体;リン酸カルシウム等のリン酸塩誘導体;炭酸カルシウム等の炭酸塩誘導体;硫酸カルシウム等の硫酸塩誘導体等が挙げられる。
結合剤としては、例えば、上記賦形剤の他、ゼラチン;ポリビニルピロリドン;マクロゴール等が挙げられる。
崩壊剤としては、例えば、上記賦形剤の他、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾されたデンプン又はセルロース誘導体等が挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、タルク;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;コロイドシリカ;ピーガム、ゲイロウ等のワックス類;硼酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸等のカルボン酸類;安息香酸ナトリウム等のカルボン酸ナトリウム塩;硫酸ナトリウム等の硫酸塩類;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム等のラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物等の珪酸類;デンプン誘導体等が挙げられる。
安定剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;無水酢酸;ソルビン酸等が挙げられる。
矯味矯臭剤としては、例えば、甘味料、酸味料、香料等が挙げられる。
なお、経口投与用の液剤の場合に使用する担体としては、水等の溶剤、矯味矯臭剤等が挙げられる。
<3.飲食品>
上述した通り、本技術に係る表皮基底膜保護剤の有効成分であるラクトフェリン加水分解物は、腸管からの吸収性に優れ、かつ、後述するように表皮基底膜保護効果を有する。そのため、皮膚への刺激等に起因した皮膚のダメージや色素沈着症の予防又は治療のための飲食品等の有効成分としてこれらに配合して使用することができる。
本技術に係る表皮基底膜保護剤を飲食品に利用する場合、公知の飲食品に添加して表皮基底膜保護効果を有する飲食品を調製することもできるし、飲食品の原料中に混合して表皮基底膜保護効果を有する新たな飲食品を製造することもできる。
前記飲食品は、液状、ペースト状、固体、粉末等の形態を問わず、錠菓、流動食、飼料(ペット用を含む)等のほか、例えば、小麦粉製品、即席食品、農産加工品、水産加工品、畜産加工品、乳・乳製品、油脂類、基礎調味料、複合調味料・食品類、冷凍食品、菓子類、飲料、これら以外の市販品等が挙げられる。
小麦粉製品としては、例えば、パン、マカロニ、スパゲッティ、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等が挙げられる。
即席食品類としては、例えば、即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品、その他の即席食品等が挙げられる。
農産加工品としては、例えば、農産缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)等が挙げられる。
水産加工品としては、例えば、水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類等が挙げられる。
畜産加工品としては、例えば、畜産缶詰め・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ等が挙げられる。
乳・乳製品としては、例えば、加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料類、チーズ、アイスクリーム類、調製粉乳類、クリーム、その他の乳製品等が挙げられる。
油脂類としては、例えば、バター、マーガリン類、植物油等が挙げられる。
基礎調味料としては、例えば、しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類等が挙げられ、前記複合調味料・食品類として、調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料等が挙げられる。
冷凍食品としては、例えば、素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等が挙げられる。
菓子類としては、例えば、キャラメル、キャンディー、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子、その他の菓子等が挙げられる。
飲料類としては、例えば、炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、その他の嗜好飲料等が挙げられる。
上記以外の市販食品としては、例えば、ベビーフード、ふりかけ、お茶潰けのり等が挙げられる。
また、本技術で定義される飲食品は、皮膚のダメージや色素沈着症の予防又は治療用との保健用途が表示された飲食品として提供・販売されることが可能である。
「表示」行為には、需要者に対して前記用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、前記用途を想起・類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、全て本技術の「表示」行為に該当する。
また、「表示」は、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により行われることが好ましい。具体的には、飲食品に係る商品又は商品の包装に前記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が挙げられる。
一方、表示内容としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示等)であることが好ましい。また、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP(Point of purchase advertising)等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。
また、「表示」には、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、医薬用部外品等としての表示も挙げられる。この中でも特に、消費者庁によって認可される表示、例えば、特定保健用食品制度、これに類似する制度にて認可される表示等が挙げられる。後者の例としては、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク減少表示等を挙げることができ、より具体的には、健康増進法施行規則(平成15年4月30日日本国厚生労働省令第86号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)及びこれに類する表示が典型的な例である。
なお、飲食品を製造する際に添加する表皮基底膜保護剤の有効成分であるラクトフェリン加水分解物の含有量は特に限定されず、適宜選択することができるが、0.01〜99質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜99質量%の範囲であることがより好ましい。
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
(1)製造例1
ウシラクトフェリン(森永乳業社製)を精製水にて5質量%となるように溶解し、塩酸溶液にてpH3に調製した。調製したラクトフェリンを45℃に加温し、次いでラクトフェリンの質量に対して3%のペプシンを添加して攪拌しながら6時間反応させて加水分解行った。
加水分解反応が終了後、反応液を80℃に加温し、10分間保温して酵素を失活させた。反応液を冷却後、水酸化ナトリウム溶液を添加して反応液のpHを6に調整し、その後反応液を凍結乾燥してラクトフェリン加水分解物を製造した。
なお、製造したラクトフェリン加水分解物の平均分子量は、1600Daであることを確認した。
(2)試験例1:抗原性試験
本試験は、本発明で用いたラクトフェリン加水分解物の抗原性について検討するために行った。
前記製造例1において製造したラクトフェリン加水分解物について、抗原性試験(ELISA法)により抗原性の試験を行った。抗体は抗ウシラクトフェリン抗体(Bethyl社製)を用いた。
その結果、製造例1で製造したラクトフェリン加水分解物中に含まれるラクトフェリンの測定値は236.6μg/gであり、ラクトフェリン加水分解物の抗原性は、同量のラクトフェリンに比べて0.0236%(1/1000以下)であることが確認された。
(3)試験例2:ラクトフェリン加水分解物の経口摂取による表皮基底膜保護作用
本試験では、ラクトフェリン及び前記製造例1で得られたラクトフェリン加水分解物の経口摂取による表皮基底膜保護作用について、ゼラチナーゼ及び炎症性ケモカインの抑制効果を調べた。
[試験方法]
ラクトフェリン加水分解物及び比較品として未分解のラクトフェリン(森永乳業社製)を使用し、皮膚の基底膜分解酵素の産生に及ぼす効果について検討した。
動物実験には、ヘアレスマウス(Hos:HR−1、日本エスエルシー社)を使用した。餌及び水は自由摂取させ、温度22±2℃、湿度50±5%、12時間明暗周期、紫外線の影響のない環境下で飼育を行った。マウスを1週間馴化させた後、被検物質を生理食塩水に溶解し、マウス体重1kgあたり200mgを1日1回、6日間投与した。その後、マウスを個別ケージに入れ、UVBランプ(三共電気製)を用いて、2日間連続で紫外線を照射し皮膚に急性の炎症を誘導した(紫外線照射量360mJ/cm)。UVB照射強度は、デルマレイUV強度計(テルモクリニカルサプライ社)を用いて測定した。なお、非照射対照群(1群)については紫外線照射を行わなかった。群の構成は以下のとおりである。
群構成(n=5〜6)
1群:紫外線を照射せずに生理食塩水を投与する対照群
2群:紫外線照射前に生理食塩水を投与する溶媒対照群
3群:紫外線照射前に未分解のラクトフェリンをマウス体重1kgあたり200mg投与する群
4群:紫外線照射前にラクトフェリン加水分解物をマウス体重1kgあたり200mg投与する群
2日目の紫外線照射から6時間後に、セボフレン麻酔下でマウスを解剖し、皮膚組織の採取を行った。皮膚は凍結粉砕し、破砕液で懸濁した後に不溶性組織の遠心分離を行い、破砕液上清を測定サンプルとして回収した。皮膚中のMCP−1、MIP−2はMILLIPLEX Mouse Cytokine/Chemokine Magnetic Bead Panel(ミリポア社)、MMP−9はQuantikine Mouse pro−MMP−9 ELISA Kit(R&D Sytems社)を用いて測定した。
[結果]
本試験結果を表1、表2、表3に示す。皮膚中のMMP−9、MCP−1、MIP−2は皮膚タンパク質1mgあたりの量として表記した。値は各濃度の平均値±標準誤差を表し、統計解析(Tukey検定)において2群との間に統計的有意差(P<0.05)が認められたものに*を付記した。なお、表中のLFはラクトフェリンを示す。
Figure 2016121109
表1に示すとおり、紫外線照射を施した2群のマウスの皮膚のMMP−9量は、1群の非照射対照群の16.7倍であり、著しいMMP−9の産生増加が確認された。一方、3群のLF投与群では溶媒対照群のMMP−9量と比較して19.7%低下が見られた。これに対して、4群のLF加水分解物投与群ではMMP−9量が溶媒対照群と比べて45.5%低下しており、LF投与群よりもさらに2.3倍の産生阻害率であった。
Figure 2016121109
表2に示すとおり、紫外線照射を施した2群のマウスの皮膚のMCP−1量は、1群の非照射対照群の14.5倍であり、著しいMCP−1量の産生増加が確認された。一方、3群のLF投与群では溶媒対照群のMCP−1量と比較して27.5%低下が見られた。これに対して、4群のLF加水分解物投与群ではMCP−1量が溶媒対照群と比べて50.6%低下しており、LF投与群よりもさらに1.8倍の産生阻害率であった。
Figure 2016121109
表3に示すとおり、紫外線照射を施した2群のマウスの皮膚のMIP−2量は、1群の非照射対照群の22.3倍であり、著しいMIP−2量の産生増加が確認された。一方、3群のLF投与群では溶媒対照群のMIP−2量と比較して24.0%低下が見られた。これに対して、4群のLF加水分解物投与群ではMIP−2量が溶媒対照群と比べて48.2%低下しており、LF投与群よりもさらに2.0倍の産生阻害率であった。
(4)試験例3:ラクトフェリン加水分解物によるしわの改善
本試験では、ラクトフェリン及び試験例1で得られたラクトフェリン加水分解物を用いて、表皮基底膜保護作用によるしわの改善効果について調べた。
[試験方法]
ラクトフェリン加水分解物及び比較品として未分解のラクトフェリン(森永乳業社製)を、また陽性対照として加水分解されたヒアルロン酸を使用して、皮膚のしわ改善効果について検討した。
動物は、ヘアレスマウス(SKH1、日本チャールスリバー社)を使用した。餌及び水は自由摂取させ、温度22±2℃、湿度50±5%、12時間明暗周期、紫外線の影響のない環境下で飼育を行った。試験物質投与前に、マウスを個別ケージに入れ、UVBランプ(三共電気製)を用いて週3回、12週間にわたって紫外線を照射し、背部に慢性的な光老化ダメージを与え深いしわを形成させた。UVB照射強度(1.0mW/cm)は、デルマレイUV強度計(テルモクリニカルサプライ社)を用いて測定した。なお、非照射対照群(1群)については紫外線照射を行わなかった。群の構成は以下のとおりである。
群構成(n=6〜7)
1群:紫外線を照射せずに生理食塩水を投与する対照群
2群:紫外線照射後に生理食塩水を投与する照射対照群
3群:紫外線照射後に加水分解ヒアルロン酸をマウス体重1kgあたり200mg投与する群
4群:紫外線照射後に未分解のラクトフェリンをマウス体重1kgあたり200mg投与する群
5群:紫外線照射後にラクトフェリン加水分解物をマウス体重1kgあたり200mg投与する群
12週間の紫外線照射後に、投与開始前のしわスコアが均一になるように群分けを行った。次に、それぞれの試験物質を生理食塩水に溶解し、マウス体重1kgあたり200mgを1日1回、週7回4週間連続でゾンデによる経口投与を行った。非照射対照群、溶媒対照群には生理食塩水を投与した。
試験開始時(12週間の紫外線照射後)と試験終了時(投与終了時)に、マウスの背部皮膚の写真を撮影し、それぞれの個体の試験群をブラインド化した上で、6名によるしわのスコア化を行った。しわ目視評価は、前記非特許文献3(Inomata et al., 2003)の評価基準(表4)に準拠し、しわスコア0,2,4,6,8の5段階にて評価した。
Figure 2016121109
[結果]
結果を表5に示す。値はしわスコアの平均値±標準偏差を表し、統計解析(Dunnett検定)において2群との間に統計的有意差(P<0.05)が認められたものに*を付記した。なお、表中のLFはラクトフェリンを示し、HAは加水分解ヒアルロン酸を示す。
Figure 2016121109
12週間の紫外線照射により、マウスの背部皮膚には非照射対照群と比べて深いしわが形成した。表5に示すとおり、投与終了時のしわスコアは、2群の溶媒対照群では5.14±0.55であった。これに対し、陽性対照の3群(加水分解ヒアルロン酸)では、4.14±0.24群であり、2群の溶媒対照と比べて19.5%低下し、しわの改善が認められた。
一方、LF加水分解物群のしわスコアは3.52±0.34であり、溶媒対照群と比較して31.5%低下し、顕著なしわの改善が認められた。なお、未分解のラクトフェリン(4群)投与群のしわスコアは5.05±0.34であり、1.8%の低下であった。
これらの結果から、ラクトフェリンの加水分解物では、未分解のラクトフェリンあるいは加水分解ヒアルロン酸と比べて、顕著なしわ改善効果が得られることが確認された。
(5)まとめ
以上の結果から、本技術に係る表皮基底膜保護剤を投与することにより、マウスの紫外線照射による皮膚のダメージが改善することが明らかとなった。この効果は、しわや色素沈着症の改善に非常に有効であると考えられる。

Claims (7)

  1. ラクトフェリンの加水分解物を有効成分として含有する、表皮基底膜保護剤。
  2. 基底膜分解酵素及び/又はケモカインの産生を抑制する、請求項1に記載の表皮基底膜保護剤。
  3. 基底膜分解酵素はMMP−2及び/又はMMP−9である、請求項2に記載の表皮基底膜保護剤。
  4. ケモカインはMCP−1及び/又はMIP−2である、請求項2に記載の表皮基底膜保護剤。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の表皮基底膜保護剤を含有する医薬組成物。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の表皮基底膜保護剤を含有する化粧料。
  7. 請求項1〜4のいずれかに記載の表皮基底膜保護剤を含有する飲食品。
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