JP6309367B2 - カゼイン加水分解物の製造方法 - Google Patents

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本技術は、カゼイン加水分解物の製造方法に関する。より詳しくは、KPV(Lys−Pro−Val)配列(配列番号1、以下同じ)からなるペプチドを、トリペプチドの状態で含むカゼイン加水分解物の製造方法に関する。
アレルギー、リウマチ疾患などの炎症現象は、炎症メディエーターの作用により引き起こされることが知られている。炎症メディエーターとは、皮膚の肥満細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、線維芽細胞、メラニン細胞、ランゲルハンス細胞等から放出される生理活性物質であり、ブラジキニン、ヒスタミン、セロトニン、ヘパリン、ロイコトリエン、プロスタグランジン、サイトカイン、一酸化窒素、活性酸素種等が挙げられる。炎症現象は、特に、サイトカインであるインターロイキン−1などにより誘発され、これに応答して、皮膚の表層に存在するケラチノサイトからインターロイキン−8が放出されることにより引き起こされることが知られている。
このような炎症を治療するために、従来から、様々な医薬品が探求されてきた。既に非常に多くの医薬品が、ステロイド性抗炎症薬、非ステロイド性抗炎症薬等の命名で知られている。
しかしながら、これらの医薬品は、満月様顔貌、骨粗鬆症、胃腸炎等の様々な副作用を示すことも知られており、副作用が少なく、かつ、抗炎症活性を有する新規な物質が求められていた。
特許文献1には、副作用が少なく、かつ、抗炎症活性を有する新規な物質の一つとして、KPV(Lys−Pro−Val)配列からなるトリペプチドが提案されている。
KPV配列からなるトリペプチドは、α型メラニン細胞刺激ホルモン(以下、α−MSHという)のカルボキシ末端配列である。α−MSHは、インターロイキン8により引き起こされる炎症現象を抑制し、抗炎症活性を示すことが知られており、α−MSHの活性シグナルは、そのカルボキシ末端配列であるKPV配列に局在化している。また、KPV配列からなるトリペプチドは、単独で抗炎症活性を有することも知られている。
一方、ペプチドの製造方法について、例えば、特許文献2には、乳酸菌発酵法を用いることにより、Val−Pro−Pro及び/又はIle−Pro−Pro配列からなるトリペプチドを高収率で得ることが可能な製造方法が開示されている。
しかしながら、KPV配列からなるトリペプチドの製造方法については、工業的に有用なものとすることができる程度の収率や安定性が得られる方法が未だ見出されていない。
特開2000−80024号公報 特開平11−98978号公報
そこで、本技術は、Lys−Pro−Val(KPV)配列からなるペプチドをトリペプチドの状態で含むカゼイン加水分解物を、効率的、かつ、安定的に製造可能な方法を提供することを主目的とする。
本願発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、Lys−Pro−Val(KPV)配列からなるトリペプチドを切り出すことが不可能なパンクレアチンを、アスペルギルス属微生物由来の酵素と併用してカゼインを分解することにより、意外にも、KPV配列からなるペプチドをトリペプチドの状態で含むカゼイン加水分解物を、効率的、かつ、安定的に製造できることを見出し、本技術を完成するに至った。
すなわち、本技術は、
アスペルギルス属微生物由来の酵素と、
パンクレアチンと、
を用いてカゼインを分解することにより、Lys−Pro−Val(KPV)配列からなるペプチドを、トリペプチドの状態で含むカゼイン加水分解物を製造する、カゼイン加水分解物の製造方法を提供する。
また、本技術に係る製造方法において、前記アスペルギルス属微生物由来の酵素は、前記パンクレアチンと同時、又は、前記パンクレアチンを添加後、に用いることができる。
本技術に係る製造方法において、前記アスペルギルス属微生物由来の酵素の使用量の下限は特に限定されないが、カゼインに対して3.0質量%以上とすることができる。
また、前記パンクレアチンの使用量の下限も特に限定されないが、カゼインに対して0.02質量%以上とすることができる。
本技術に係る製造方法において、前記アスペルギルス属微生物由来の酵素の使用量の上限も特に限定されないが、カゼインに対して20.0質量%以下とすることができる。
また、前記パンクレアチンの使用量の上限も特に限定されないが、カゼインに対して15.0質量%以下とすることができる。
本技術に係る製造方法によって得られる前記カゼイン加水分解物は、前記ペプチドをトリペプチドの状態で含有するが、その含有量も特に限定されず、例えば、0.012質量%以上含有するカゼイン加水分解物を得られるように、各酵素の添加量などを工夫することができる。
本技術によれば、Lys−Pro−Val(KPV)配列からなるペプチドをトリペプチドの状態で含むカゼイン加水分解物を、効率的、かつ、安定的に製造可能である。なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本技術中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
以下、本技術を実施するための好適な実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。なお、本願において、数値範囲を「下限〜上限」で表現するものに関しては、上限は「以下」であっても「未満」であってもよく、下限は「以上」であっても「超」であってもよい。
1.カゼイン加水分解物の製造方法
本技術に係るカゼイン加水分解物の製造方法は、アスペルギルス属微生物由来の酵素と、パンクレアチンと、を用いてカゼインを分解することを特徴とする。
本技術は、アスペルギルス属微生物由来の酵素及びパンクレアチンを併用することで、Lys−Pro−Val配列からなるペプチド(以下、「KPV配列からなるトリペプチド」ともいう。)をトリペプチドの状態で含むカゼイン加水分解物を、効率よく、かつ、安定的に製造することができる。
本技術において、アスペルギルス属微生物由来の酵素とパンクレアチンは、同時又はどちらか一方を先に添加することも可能であるが、特に、同時又はパンクレアチンを添加後にアスペルギルス属微生物由来の酵素を添加することが好ましく、同時に添加することがより好ましい。これにより、カゼイン加水分解物中のKPV配列からなるトリペプチドの収率が向上するからである。
本技術に係る製造方法によって得られるカゼイン加水分解物は、KPV配列からなるトリペプチドをトリペプチドの状態で含有することを特徴とするが、その含有量は特に限定されず、カゼイン加水分解物の用途などに応じて、自由に設定することができる。本技術では特に、様々な用途への応用のし易さや、前記トリペプチドが有する様々な効果を確実に発揮させるために、KPV配列からなるトリペプチドを0.012質量%以上含有するカゼイン加水分解物を得られるように、各酵素の添加量などを工夫することが好ましい。
以下、本技術に係る製造方法に用いる各材料等について、詳細に説明する。
(1)原料(カゼイン)
原料であるカゼインは、乳由来の蛋白質を主成分とするものであり、該カゼインは特に限定されないが、例えば、市販の各種カゼイン、カゼイネート等が利用することができる。
具体的には、乳酸カゼイン、硫酸カゼイン、塩酸カゼイン、ナトリウムカゼイネート、カリウムカゼイネート、カルシウムカゼイネート、マグネシウムカゼイネート又はこれらの任意の混合物等が挙げられる。また、牛乳、脱脂乳、全脂粉乳、脱脂粉乳から常法により精製したカゼイン等を利用することもできる。
ここで、一般的なカゼイン中の構成成分は、単一のタンパク質ではなく、大別してα−カゼイン、β−カゼイン、κ−カゼインの3種類に分類されることが知られている。本願発明者らは、その中でも、κ−カゼイン中にLys−Pro−Val(KPV)配列が存在することを確認した。したがって、本技術に係るカゼイン加水分解物の製造方法においては、κ−カゼインを主たる基質源とする。
本技術に係る製造方法により生産されるカゼイン加水分解物は、生体材料として比較的安価な乳由来の原料であるカゼインを分解することにより生産され、安定して簡便に、しかも大量に製造することができる。
(2)アスペルギルス属微生物由来の酵素
本技術に係る製造方法において用いることが可能なアスペルギルス属微生物由来の酵素としては、通常、医薬品・食品分野において用いることができるアスペルギルス属微生物由来の酵素を、1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。例えば、Aspergillus oryzae、Aspergillus glaucus、Aspergillus sojae、Aspergillus tamari、Aspergillus awamoriなどを挙げることができる。本技術においては、この中でも特に、Aspergillus oryzaeを用いることが好ましい。
本技術において、アスペルギルス属微生物由来の酵素の使用量は特に限定されず、製造するカゼイン加水分解物中のKPV配列の目的の収量や、併用するパンクレアチンの使用量などに応じて、適宜、設定することができる。本技術では特に、原料のカゼインに対して3.0質量%以上用いることが好ましい。3.0質量%以上用いることにより、KPV配列からなるペプチドをトリペプチドの状態で含むカゼイン加水分解物を、効率的かつ安定的に製造することができる。
また、アスペルギルス属微生物由来の酵素を多量に用いると、カゼインの分解が過度に進み、KPV配列からなるペプチドの収率が低下する場合があるため、本技術では、アスペルギルス属微生物由来の酵素をカゼインに対して20.0質量%以下用いることが好ましい。
更に、後述するパンクレアチンの使用量との関係では、例えば、パンクレアチンの使用量が0.1質量%〜0.5質量%の場合には、アスペルギルス属微生物由来の酵素を6.0質量%以上用いることができ、パンクレアチンの使用量が0.02質量%〜0.1質量%の場合には、アスペルギルス属微生物由来の酵素を10.0質量%以上用いることができる。
加えて、例えば、パンクレアチンの使用量が6.0質量%〜10.0質量%の場合には、アスペルギルス属微生物由来の酵素の使用量を15.0質量%以下にすることができ、パンクレアチンの使用量が10.0%〜15.0質量%の場合には、アスペルギルス属微生物由来の酵素の使用量を10.0質量%以下にすることができる。
(3)パンクレアチン
パンクレアチンは、哺乳類の膵臓から得られる様々な生理活性成分の混合物であり、トリプシン、キモトリプシン、リパーゼ、アミラーゼ、その他多くの酵素を含み、デンプン、脂肪、タンパク質のすべてに有効な消化酵素の混合物である。古くから、消化機能障害時などに、安全性が高い治療剤として医薬品組成物などに使用されている。通常、パンクレアチン製剤は、ウシやブタなどの膵臓から抽出されたパンクレアチンが用いられており、本技術においても、医薬品・食品分野において用いることができるパンクレアチンを自由に選択して用いることができる。
パンクレアチンを用いてκ−カゼインを分解した場合、その切断断片は、理論的にはGln−Gln−Lys−Pro−Val−Ara−Leu(QQKPVAL)となり、KPV配列からなるトリペプチドを切り出すことは不可能である。実際に、本願発明者らは、後述する実施例において、パンクレアチンのみを用いてカゼインを分解した場合、カゼイン加水分解物にはKPV配列からなるトリペプチドが含有されていないことを確認している。
しかし、KPV配列からなるトリペプチドを切り出すことが不可能なパンクレアチンを、アスペルギルス属微生物由来の酵素と併用してカゼインを分解することにより、意外にも、KPV配列からなるトリペプチドを、高効率で切り出すことが可能であることを突き止めた。
本技術において、パンクレアチンの使用量も特に限定されず、製造するカゼイン加水分解物中のKPV配列の目的の収量や、併用するアスペルギルス属微生物由来の酵素の使用量などに応じて、適宜、設定することができる。本技術では特に、原料のカゼインに対して0.02質量%以上用いることが好ましい。0.02質量%以上用いることにより、KPV配列からなるペプチドをトリペプチドの状態で含むカゼイン加水分解物を、効率的かつ安定的に製造することができる。
また、パンクレアチンを多量に用いると、カゼインの分解が過度に進み、KPV配列からなるトリペプチドの収率が低下する場合があるため、本技術では、パンクレアチンをカゼインに対して15.0質量%以下用いることが好ましい。
更に、アスペルギルス属微生物由来の酵素の使用量との関係では、例えば、アスペルギルス属微生物由来の酵素の使用量が6.0質量%〜10.0質量%の場合には、パンクレアチンを0.1質量%以上用いることができ、アスペルギルス属微生物由来の酵素の使用量が3.0質量%〜6.0質量%の場合には、アスペルギルス属微生物由来の酵素を0.5質量%以上用いることができる。
加えて、例えば、アスペルギルス属微生物由来の酵素の使用量が10.0質量%〜15.0質量%の場合には、パンクレアチンの使用量を10.0質量%以下にすることができ、アスペルギルス属微生物由来の酵素の使用量が15.0%〜20.0質量%の場合には、アスペルギルス属微生物由来の酵素の使用量を6.0質量%以下にすることができる。
以上のように、本技術に係る製造方法では、アスペルギルス属微生物由来の酵素とパンクレアチンの使用量をそれぞれ調整することで、カゼイン加水分解物中のKPV配列からなるトリペプチドの含有量を、目的の量に設定することが可能である。例えば、前述の通り、様々な用途への応用のし易さや、前記トリペプチドが有する様々な効果を確実に発揮させるために、KPV配列からなるトリペプチドを0.012質量%以上含有するカゼイン加水分解物を得られるようにしたいが、アスペルギルス属微生物由来の酵素の量は低く抑えたい場合は、パンクレアチンを0.5質量%以上用いることで、アスペルギルス属微生物由来の酵素の使用量を3.0質量%程度まで低減することができる。また、例えば、パンクレアチンの量を低く抑えたい場合は、アスペルギルス属微生物由来の酵素を10.0質量%以上用いることで、パンクレアチンの使用量を0.02質量%程度まで低減することができる。
(4)製造方法の具体例
本技術に係るカゼイン加水分解物の製造方法は、アスペルギルス属微生物由来の酵素と、パンクレアチンと、を用いてカゼインを分解し、KPV配列からなるペプチドを、トリペプチドの状態で含むカゼイン加水分解物を製造できれば、詳細な工程については特に限定されず、公知のカゼイン加水分解物の製造方法で用いられる様々な工程を自由に選択して採用することができる。以下、製造方法の一例について、具体的に説明する。
[基質溶液の調製]
まず、原料(カゼイン)を水などの溶媒に溶解又は分散させ、カゼイン溶液を調製する。
溶媒は特に限定されないが、蒸留水を用いることが好ましい。
また、前記溶解液の濃度は特に限定されないが、通常、蛋白質換算で5〜15質量%前後の濃度範囲とすることが、効率性及び操作性の点から好ましい。
次に、前記溶解液のpHを、使用する酵素の至適pH付近に調整することにより基質溶液を調製する。
本技術においては、少なくともアスペルギルス属微生物由来の酵素とパンクレアチンとを併用することを特徴とするため、前記溶解液のpHを、両者の至適pH付近に調整することが考えられる。
具体的には、pH5〜10に調整することが好ましく、pH7〜8に調整することがより好ましい。
pH調整に用いるアルカリ剤は特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
[酵素反応]
次に、前記基質溶液にアスペルギルス属微生物由来の酵素と、パンクレアチンを添加する。
本技術において、アスペルギルス属微生物由来の酵素とパンクレアチンは、同時又はどちらか一方を先に添加することも可能であるが、特に、同時又はパンクレアチンを添加後にアスペルギルス属微生物由来の酵素を添加することが好ましく、同時に添加することがより好ましい。これにより、カゼイン加水分解物中のKPV配列からなるトリペプチドの収率が向上するからである。
なお、この際、その他の蛋白質分解酵素を添加することもできる。
その他の蛋白質分解酵素としては、細菌由来、動物由来、植物由来の蛋白質分解酵素等があり、本技術においては、いずれのものも使用することができる。
細菌由来の蛋白質分解酵素は特に限定されないが、例えば、バシラス属由来のエンドプロテアーゼとして、アルカラーゼ(ノボザイムズ社製)、ニュートラーゼ(ノボザイムズ社製)、プロチンA(大和化成社製)、プロチンP(大和化成社製)、プロレザー(天野エンザイム社製)、プロテアーゼN(天野エンザイム社製)、コロラーゼ7089(樋口商会社製)、ビオプラーゼ(ナガセケムテック社製)、オリエンターゼ90N(エイチビイアイ社製)、オリエンターゼ22BF(エイチビイアイ社製)等が挙げられる。
動物由来の蛋白質分解酵素は特に限定されないが、例えば、トリプシンを主成分とするPTN(ノボザイムズ社製)、トリプシンV(日本バイオコン社製)等が挙げられる。
植物由来の蛋白質分解酵素は特に限定されないが、パパイン(天野エンザイム社製)、ブロメライン(天野エンザイム社製)等が挙げられる。
また、これらの蛋白質分解酵素は、単独又は2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
その他の蛋白質分解酵素の使用量は特に限定されず、基質濃度、酵素力価、反応温度、及び反応時間等により、適宜決定して用いることができる。一般的には、カゼインの蛋白質換算質量1g当たり1000〜20000単位(活性単位)で使用することが好ましい。
なお、活性単位は、使用するその他の蛋白質分解酵素の種類に応じて測定することが可能である。
また、アスペルギルス属微生物由来の酵素及びパンクレアチン並びにその他の蛋白質分解酵素は、効率性及び操作性の観点から、4〜10℃の冷水に分散し、溶解してから使用することが好ましい。
本技術において、酵素反応中の反応系の温度は、酵素作用の発現する最適温度範囲を含む実用に供され得る範囲内で、適宜決定することができる。
本技術においては、少なくともアスペルギルス属微生物由来の酵素とパンクレアチンとを併用することを特徴とするため、両者の作用を十分に発現可能な温度範囲を反応系の温度として決定することが考えられる。
具体的には、反応系の温度を、40〜60℃とすることが好ましく、45〜55℃とすることがより好ましい。
また、本技術において、反応継続時間は、反応温度、初発pH等の反応条件によって進行状態が異なる。例えば、酵素反応の反応継続時間を一定とすると、製造バッチ毎に異なる理化学的性質を有する分解物が生じる可能性等の問題があるため、一該に決定することができない。
したがって、酵素反応をモニターすることにより、カゼイン加水分解物の理化学的性質が所望の値となるように反応継続時間を決定する。
本技術においては、少なくともアスペルギルス属微生物由来の酵素とパンクレアチンとを併用することを特徴とするため、反応継続時間は、1〜48時間の間で決定することが好ましく、4〜18時間の間で決定することがより好ましい。
なお、酵素反応のモニタリング方法としては、例えば、前記反応溶液の一部を採取し、蛋白質の分解率等を測定する方法等が挙げられる。
次に、酵素反応を停止させる。
酵素反応の停止は、加水分解液中の酵素を失活させることにより行われる。失活処理は、常法、例えば、加熱失活処理等により実施することができる。
加熱失活処理の条件(加熱温度、加熱時間等)は、使用した酵素の熱安定性を考慮し、十分に失活できる条件を適宜設定することができる。
本技術においては、アスペルギルス属微生物由来の酵素及びパンクレアチンを併用していることから、例えば、80〜130℃の温度範囲で30分間〜2秒間の保持時間で、これらの酵素を失活させることができる。
[精製]
酵素反応停止後、得られた加水分解失活液を、(a)濾過、(b)精密濾過、限外濾過膜等の膜分離処理、(c)樹脂吸着分離、(d)カラムクロマトグラフィーからなる群から選択される、いずれか1種又はこれらの2種以上の組合せによって精製することが好ましい。
上述した精製を行うことにより、前記加熱分解失活液中に含まれる不溶物の除去、脂肪や乳糖、その他の不要な成分の低減等を行うことができる。その結果、溶液状態で透明であり、かつ、溶液状態での長期保存においても混濁、沈殿、凝集及び褐変等が生じない、いわゆる保存安定性に優れたカゼイン加水分解物を得ることができる。
また、上述した精製を行うことにより、カゼイン加水分解物の風味、外観等も向上させることができる。
(a)の濾過は、公知の方法により実施することができ、例えば、珪藻土を用い、公知の装置により実施することができる。
濾過を行うことにより、前記加水分解失活液中に存在する加水分解反応時及び/又は酵素加熱失活時に生成した不溶物を除去できる。
なお、濾過の方法には、分子篩いの効果を有するゲル濾過樹脂を用いたゲル濾過クロマトグラフィーも含まれる。
(b)の膜分離処理は、公知の装置を用いて行うことができる。公知の装置としては特に限定されないが、例えば、精密濾過モジュール等、限外濾過モジュールSEP1053(旭化成社製、分画分子量3,000)、SIP1053(旭化成社製、分画分子量6,000)、SLP1053(旭化成社製、分画分子量10,000)等が挙げられる。
この場合、膜分離処理後の膜透過画分としてカゼイン加水分解物を含有する溶液が得られる。
膜分離処理を行うことにより、(a)の濾過と同様、加水分解失活液中に存在する加水分解反応時及び/又は酵素加熱失活時に生成した不溶物を除去できる。
(c)の樹脂吸着分離は、公知の方法により実施することができ、例えば、樹脂をカラムに充填し、前記加水分解失活液を、当該カラムを通過させることにより実施することができる。樹脂としては特に限定されないが、イオン交換樹脂、キレート樹脂、アフィニティー吸着樹脂、合成吸着剤、高速液体クロマトグラフィー用樹脂等が例示され、例えば、商品名:ダイヤイオン、セパビーズ(三菱化学社製)、アンバーライトXAD(オルガノ社製)、KS−35(味の素ファインテクノ社製)等が挙げられる。
樹脂吸着分離は、これらの樹脂をカラムに充填して前記加水分解失活液を連続的に流入させ、流出させることによる連続方式で行うこともでき、また、前記加水分解失活液中に樹脂を投入し、一定時間接触させた後、加水分解失活液と樹脂とを分離するバッチ方式で行うこともできる。
加水分解失活液中には、保存期間中に混濁、沈殿、凝集及び褐変等を惹起する因子(例えば、疎水性アミノ酸を多く含むペプチド等)が残存している可能性があり、樹脂吸着分離を行うことにより、これらの因子を除去できる。
[殺菌処理]
また、精製後、得られたカゼイン加水分解物を含有する溶液を殺菌してもよい。
殺菌方法は、常法による加熱処理方法等を用いることができる。
加熱処理時の加熱温度と保持時間は、充分に殺菌できる条件を適宜設定すればよく、例えば、70〜140℃で2秒間〜30分間加熱処理することにより殺菌できる。
加熱殺菌の方式は、バッチ方式、連続方式のいずれの方式も可能であり、連続方式においてもプレート熱交換方式、インフュージョン方式、インジェクション方式等の方式を用いることができる。
[濃縮処理・乾燥処理・粉末化処理・二次的処理]
更に、得られたカゼイン加水分解物を含有する溶液は、そのまま使用することもでき、また、必要に応じて、該溶液を公知の方法により、濃縮した濃縮液として使用することもできる。また、該濃縮液を公知の方法により乾燥し、粉末にして使用することもできる。
加えて、本技術のカゼイン加水分解物の前記不溶物の成分を除去した後、風味改善又は物性改善等を目的として、エンドプロテアーゼ又はエキソプロテアーゼを添加して、二次的な加水分解を行い、以後の処理を行うこともできる。
(5)カゼイン加水分解物の用途
本技術に係る製造方法により得られたカゼイン加水分解物は、様々な医薬品、飲食品、飼料等に配合して使用することができる。本技術に係る製造方法により得られたカゼイン加水分解物は、乳由来の原料を用いているため、生体への安全性が高く、長期間、連続的な摂取にも適している。加えて、生体材料として比較的安価な乳由来の原料から生産しているため、安定して簡便に、しかも大量に製造することができ、需要者に対して安価に提供することも可能である。
カゼイン加水分解物を医薬品に利用する場合、該医薬品は、経口投与及び非経口投与のいずれでもよいが、経口投与が好ましい。非経口投与としては、例えば、注射(血液、皮膚、筋肉等)、直腸投与、吸入等が挙げられる。経口投与の剤形としては、例えば、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、シロップ剤、顆粒剤、散剤、軟膏等が挙げられる。
また、製剤化に際しては、カゼイン加水分解物の他に、通常製剤化に用いられている賦形剤、pH調整剤、着色剤、矯味剤等の成分を用いることができる。更に、公知の又は将来的に見出される疾患の予防又は治療の効果を有する成分を、目的に応じて併用することも可能である。
更に、投与方法に応じて、適宜所望の剤形に製剤化することができる。例えば、経口投与の場合、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤等の固形製剤;溶液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤等の液剤等に製剤化することができる。また、非経口投与の場合、座剤、噴霧剤、軟膏剤、貼付剤、注射剤等に製剤化することができる。
加えて、製剤化は剤形に応じて適宜公知の方法により実施できる。製剤化に際しては、カゼイン加水分解物のみを製剤化してもよく、適宜、製剤担体を配合する等して製剤化してもよい。
また、前記製剤担体としては、剤形に応じて、各種有機又は無機の担体を用いることができる。固形製剤の場合の担体としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤沢剤、安定剤、矯味矯臭剤等が挙げられる。
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビット等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α−デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプン等のデンプン誘導体;結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等の珪酸塩誘導体;リン酸カルシウム等のリン酸塩誘導体;炭酸カルシウム等の炭酸塩誘導体;硫酸カルシウム等の硫酸塩誘導体等が挙げられる。
結合剤としては、例えば、上記賦形剤の他、ゼラチン;ポリビニルピロリドン;マクロゴール等が挙げられる。
崩壊剤としては、例えば、上記賦形剤の他、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾されたデンプン又はセルロース誘導体等が挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、タルク;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;コロイドシリカ;ピーガム、ゲイロウ等のワックス類;硼酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸等のカルボン酸類;安息香酸ナトリウム等のカルボン酸ナトリウム塩;硫酸ナトリウム等の硫酸塩類;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム等のラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物等の珪酸類;デンプン誘導体等が挙げられる。
安定剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;無水酢酸;ソルビン酸等が挙げられる。
矯味矯臭剤としては、例えば、甘味料、酸味料、香料等が挙げられる。
なお、経口投与用の液剤の場合に使用する担体としては、水等の溶剤、矯味矯臭剤等が挙げられる。
カゼイン加水分解物をヒト若しくは動物用の飲食品に利用する場合、公知の飲食品に添加して調製することもできるし、飲食品の原料中混合して新たな飲食品を製造することもできる。
前記飲食品は、液状、ペースト状、固体、粉末等の形態を問わず、錠菓、流動食、飼料(ペット用を含む)等のほか、例えば、小麦粉製品、即席食品、農産加工品、水産加工品、畜産加工品、乳・乳製品、油脂類、基礎調味料、複合調味料・食品類、冷凍食品、菓子類、飲料、これら以外の市販品等が挙げられる。
小麦粉製品としては、例えば、パン、マカロニ、スパゲッティ、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等が挙げられる。
即席食品類としては、例えば、即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品、その他の即席食品等が挙げられる。
農産加工品としては、例えば、農産缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)等が挙げられる。
水産加工品としては、例えば、水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類等が挙げられる。
畜産加工品としては、例えば、畜産缶詰め・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ等が挙げられる。
乳・乳製品としては、例えば、加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料類、チーズ、アイスクリーム類、調製粉乳類、クリーム、その他の乳製品等が挙げられる。
油脂類としては、例えば、バター、マーガリン類、植物油等が挙げられる。
基礎調味料としては、例えば、しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類等が挙げられ、前記複合調味料・食品類として、調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料等が挙げられる。
冷凍食品としては、例えば、素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等が挙げられる。
菓子類としては、例えば、キャラメル、キャンディー、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子、その他の菓子等が挙げられる。
飲料類としては、例えば、炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、その他の嗜好飲料等が挙げられる。
上記以外の市販食品としては、例えば、ベビーフード、ふりかけ、お茶潰けのり等が挙げられる。
また、本技術で定義される飲食品は、保健用途が表示された飲食品として提供・販売されることも可能である。
「表示」行為には、需要者に対して前記用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、前記用途を想起・類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、全て本技術の「表示」行為に該当する。
また、「表示」は、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により行われることが好ましい。具体的には、飲食品に係る商品又は商品の包装に前記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が挙げられる。
一方、表示内容としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示等)であることが好ましい。また、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。
また、「表示」には、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、医薬用部外品等としての表示も挙げられる。この中でも特に、消費者庁によって認可される表示、例えば、特定保健用食品制度、これに類似する制度にて認可される表示等が挙げられる。後者の例としては、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク減少表示等を挙げることができる。より具体的には、健康増進法施行規則(平成15年4月30日日本国厚生労働省令第86号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)及びこれに類する表示が典型的な例である。
カゼイン加水分解物を飼料に利用する場合、公知の飼料に添加して調製することもできるし、飼料の原料中混合して新たな飼料を製造することもできる。
前記飼料の原料としては、例えば、トウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦等の穀類;ふすま、麦糠、米糠、脱脂米糠等の糠類;コーングルテンミール、コーンジャムミール等の製造粕類;脱脂粉乳、ホエー、魚粉、骨粉等の動物性飼料類;ビール酵母等の酵母類;リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の鉱物質飼料;油脂類;アミノ酸類;糖類等が挙げられる。また、前記飼料の形態としては、例えば、愛玩動物用飼料(ペットフード等)、家畜飼料、養魚飼料等が挙げられる。
なお、本発明に係る製造方法により生産されたカゼイン加水分解物を利用した、上記飲食品又は飼料は、低温殺菌又は滅菌することも可能である。
以下、実施例に基づいて本技術を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本技術の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
1.試験方法
本実施例においては、まず、カゼイン加水分解物を調製し、その後、該カゼイン加水分解物について、KPV配列からなるトリペプチドの含有率を測定した。
(1)カゼイン加水分解物の調製
牛乳由来の乳酸カゼイン(フォンテラ社製)、67.5gを、約60℃に調整した蒸留水430.5gに加えて充分に撹拌した後、水酸化ナトリウム(関東化学社製)を添加してpH8.0に調整し、基質溶液とした。
得られた基質溶液に、アスペルギルス属微生物由来の酵素:Aspergillus oryzae由来酵素プロテアーゼAアマノ(天野エンザイム社製)と、パンクレアチン:豚膵臓由来酵素パンクレアチン×4.0滅菌品(天野エンザイム社製)とを、後述する表1に示す質量比で添加して、55℃で4時間反応させ、次いで85℃で10分間加熱して酵素を失活させ、カゼイン酵素分解物溶液を得た。
得られた酵素分解物溶液を、更に凍結乾燥により乾燥し、粉末状のカゼイン加水分解物を調製した。
(2)KPVトリペプチド含有率の測定
得られた粉末状のカゼイン加水分解物を、1mg/mLとなるように、0.2%ギ酸水溶液に希釈溶解し、10分間超音波破砕した後、0.22μm口径のPVDFフィルター(Millipore社製)でろ過し、カゼイン加水分解物溶液を調製した。
また、このカゼイン加水分解物溶液とは別に、KPV配列からなるトリペプチドを有する化学合成標準ペプチド(東レリサーチセンター社製)の、0.01μg/mL、0.05μg/mL、0.1μg/mL、1.0μg/mL、3.0μg/mL溶液をそれぞれ調製し、これらの溶液を下記条件によるLC/MSにより分析した。
<分析機器>
・質量分析計:TSQ Quantum Discovery MAX(サーモフィッシャーサイエンス社製)
<高速液体クロマトグラフの構成>
・システムコントローラー:CBM−20A
・オートインジェクター:SIL−20AC
・送液ポンプ:LC−20AD×2
・カラムオーブン:CTO−20AC
・UV/VIS検出器:SPD−20A
・オンラインデガッサ:DGU−20A(以上、全て島津製作所社製)
・カラム:TSKgel ODS−100V 5μm(2.0mm I.D.×250mm L)(東ソー社製)
<測定条件>
・移動相A:0.2質量% ギ酸−水溶液
・移動相B:0.2質量% ギ酸−アセトニトリル溶液
・タイムプログラム:1% B(0分)〜2% B(7分)〜80% B(10分)〜80% B(15分)〜1% B(17分)〜STOP(20分)
・試料注入量:10μL
・カラム温度:40℃
・イオン化モード:ESI(+)
・液体流量:200μL/min
・スプレー電圧:+4.5kV
・キャピラリー温度:320℃
・シースガス圧:30(Arb)
・補助ガス圧:4(Arb)
・分析モード:SRM測定
・分析範囲:m/z=215.1、226.1(parent m/z=343)
前記カゼイン加水分解物溶液の分析におけるピークのうち、標準ペプチドと分子量及びリテンションタイムが一致するものを、標準ペプチドと同一の配列として同定した。
標準ペプチドのピークとピーク面積とを対比することにより、前記粉末溶液中にKPVトリペプチドが含まれる割合を求めた。
2.試験結果
アスペルギルス属微生物由来の酵素とパンクレアチンの添加量、及び、各カゼイン加水分解物中のKPVトリペプチド含量の測定結果について、下記表1に示す。
Figure 0006309367
3.考察
アスペルギルス属微生物由来の酵素とパンクレアチンとを併用することにより生産したカゼイン加水分解物は、KPV配列からなるペプチドをトリペプチドの状態で含むことが明らかとなった。
また、表1に示す通り、アスペルギルス属微生物由来の酵素とパンクレアチンの使用量によって、カゼイン加水分解物中のKPV配列からなるトリペプチドの含有量が異なることから、アスペルギルス属微生物由来の酵素とパンクレアチンの使用量をそれぞれ調整することで、カゼイン加水分解物中のKPV配列からなるトリペプチドの含有量を、目的の量に設定することが可能であることが分かった。
特に、パンクレアチンのみを用いてカゼインを分解した場合に、理論的にはκ−カゼインから生じるとされるGln−Gln−Lys−Pro−Val−Ara−Leu(QQKPVAL)の配列からなるペプチドに対して、アスペルギルス属微生物由来の酵素を特定の濃度で併用してカゼインを分解することにより、Lys−Pro−Val(KPV)配列からなるトリペプチドを高効率で生産できることが可能となった点は、酵素の基質特異性等を如何に組み合わせたとしても到底予測できない意外な効果を示すものであった。

Claims (7)

  1. アスペルギルス属微生物由来のタンパク質分解酵素と、
    パンクレアチンと、
    を用いてκ−カゼインを含むカゼインを分解することにより、Lys−Pro−Val配列からなるペプチドを、トリペプチドの状態で含むカゼイン加水分解物を製造する工程と
    前記カゼイン加水分解物中に存在する前記トリペプチドを確認する工程と、
    を行う、カゼイン加水分解物の製造方法。
  2. 前記パンクレアチンと同時、又は、前記パンクレアチンを添加後に、前記アスペルギルス属微生物由来のタンパク質分解酵素を用いる、
    請求項1に記載のカゼイン加水分解物の製造方法。
  3. 前記アスペルギルス属微生物由来のタンパク質分解酵素を、カゼインに対して3.0質量%以上用いる、
    請求項1又は2に記載のカゼイン加水分解物の製造方法。
  4. 前記パンクレアチンを、カゼインに対して0.02質量%以上用いる、
    請求項1から3のいずれか一項に記載のカゼイン加水分解物の製造方法。
  5. 前記アスペルギルス属微生物由来のタンパク質分解酵素を、カゼインに対して20.0質量%以下用いる、
    請求項1から4のいずれか一項に記載のカゼイン加水分解物の製造方法。
  6. 前記パンクレアチンを、カゼインに対して15.0質量%以下用いる、
    請求項1から5のいずれか一項に記載のカゼイン加水分解物の製造方法。
  7. 前記カゼイン加水分解物は、前記ペプチドをトリペプチドの状態で0.012質量%以上含有する、
    請求項1から6のいずれか一項に記載のカゼイン加水分解物の製造方法。
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