JP2021031646A - ゴム組成物及びタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】タイヤへ適用した際の転がり抵抗の悪化を招くことなく、耐カット性に優れたゴム組成物を提供する。【解決手段】上記課題を解決するべく、本発明は、スチレンブタジエンゴムと、前記スチレンブタジエンゴム100質量部に対して5〜40質量部のシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンと、を含むことを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、ゴム組成物及びタイヤに関するものである。
一般に、トレッド等のタイヤ部材として用いられるゴム組成物には、高い耐久性が求められている。しかしながら、ゴム業界において従来から頻繁に用いられる、ブタジエンゴム(BR)やスチレン−ブタジエンゴム(SBR)等のジエン系ゴムは、高歪の入力下における破壊特性、特に耐カット性が十分でないという問題があった。このような状況下、様々なゴム成分やゴム組成物が開発されている。
耐カット性を向上させる手段の一つとして、ゴム組成物中にシンジオタクチック1,2−ポリブタジエン(以下、sPBと略称することがある。)を含有するポリブタジエンゴムを配合させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1の技術では、加硫ゴム組成物の耐カット性が十分とはいえず、さらなる改良が求められていた。
また、ゴム組成物の耐カット性をさらに向上させるためには、充填剤を増やすことや、樹脂を含有させる等の方法も知られている。ただし、ゴム組成物中に多くの充填剤や樹脂を含有させたゴム組成物は、タイヤに適用した際に転がり抵抗の悪化を招くおそれがあることから、転がり抵抗の悪化を損なうことなく耐カット性を向上できる技術の開発が望まれていた。
特開平8−85303号公報
そこで、本発明は、転がり抵抗の悪化を招くことなく、耐カット性に優れた、ゴム組成物及びタイヤを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため検討を重ねた結果、スチレンブタジエンゴムからなるゴム成分に対して、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンを特定量配合することによって、加硫後のゴム組成物の補強性を高めることができ、タイヤへ適用した際の転がり抵抗の悪化を損なうことなく、耐カット性を大幅に向上できることを見出した。
上記課題を解決する本発明の要旨構成は、以下の通りである。
本発明のゴム組成物は、スチレンブタジエンゴムと、前記スチレンブタジエンゴム100質量部に対して5〜40質量部のシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンと、を含むことを特徴とする。
上記構成を具えることで、タイヤへ適用した際の転がり抵抗の悪化を損なうことなく、耐カット性を向上させることができる。
本発明のゴム組成物では、前記シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンの数平均分子量が、50000〜500000であることが好ましい。この場合、転がり抵抗の低減効果及び耐カット性をより高いレベルで両立できる。
本発明のゴム組成物では、前記シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンの結晶化度が、25〜80%であることが好ましい。この場合、転がり抵抗の低減効果及び耐カット性をより高いレベルで両立できる。
本発明のゴム組成物では、前記シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンの融点が、100〜180℃であることが好ましい。この場合、転がり抵抗の低減効果及び耐カット性をより高いレベルで両立できる。
本発明のゴム組成物では、前記シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンの1,2−結合含有量が、80質量%以上であることが好ましい。この場合、転がり抵抗の低減効果及び耐カット性をより高いレベルで両立できる。
本発明のゴム組成物では、充填剤をさらに含むことが好ましく、該充填剤が、少なくともカーボンブラックを含むことがより好ましく、該カーボンブラックの含有量が、前記スチレンブタジエンゴム100質量部に対して10〜80質量部であることがさらに好ましい。この場合、ゴム組成物の転がり抵抗の低減効果及び耐カット性をより高いレベルで両立できる。
本発明のゴム組成物では、前記充填剤として、シリカを含まないことが好ましい。この場合、タイヤへ適用した際の転がり抵抗低減効果をさらに向上できる。
また、本発明のタイヤは、上述した本発明のゴム組成物をトレッド部へ用いたことを特徴とする。
上記構成を具えることで、本発明のタイヤは、転がり抵抗の悪化を招くことなく、耐カット性に優れる。
本発明によれば、タイヤへ適用した際の転がり抵抗の悪化を招くことなく、耐カット性に優れた、ゴム組成物及びタイヤを提供することができる。
以下に、本発明のゴム組成物及びタイヤの一実施形態について、例示説明する。
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、スチレンブタジエンゴムと、前記スチレンブタジエンゴム100質量部に対して5〜40質量部のシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンと、を含むことを特徴とする。
前記シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン(以下、「sPB」ということがある。)は、結晶性高分子であり、高歪下で、その結晶構造が犠牲破壊することで、ゴム組成物の補強性を高めることが可能となる。また、前記sPBは、低歪みの入力に対して、結晶破壊することはないことに加えて、耐カット性を高めるために通常配合される汎用性の樹脂に比べると分子量が大きく、末端鎖の運動が小さくなる結果、転がり抵抗の悪化を抑えることが可能となる。
そのため、本発明のゴム組成物では、ゴム成分としてのスチレンブタジエンゴムに加えて、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン(以下、「sPB」ということがある。)を特定量含有させることによって、タイヤへ適用した際の転がり抵抗の悪化を招くことなく、耐カット性を大きく向上させることができる。
なお、本発明のゴム組成物では、前記スチレンブタジエンゴムと、前記シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンとを、それぞれ別個の材料として配合したものであり、前記SBRに前記sPBを重合させた重合体とは異なるものである。
(スチレンブタジエンゴム)
本発明のゴム組成物は、ゴム成分としてスチレンブタジエンゴム(SBR)を含む。前記ゴム成分がSBRから構成されることによって、タイヤへ適用した際のウェット性能や、氷上性能、耐カット性等を得ることができる。
ここで、前記スチレンブタジエンゴムの種類については、特に限定はされず、乳化重合SBRや、溶液重合SBRを用いることができる。さらに、市販品を使用することもでき、SBRに要求される性能に応じて、適宜選択すればよい。
また、前記スチレンブタジエンゴムについては、より優れた補強性や、転がり抵抗の低減効果を得る点から、変性スチレンブタジエンゴム(変性SBR)を含有することもできる。なお、前記変性SBRにおける変性官能基の位置については、特に限定はされず、例えば、主鎖の末端でも良いし、主鎖中や、主鎖の末端から全鎖長の1/4の範囲のみであってもよい。また、前記変性官能基の数についても特に限定はされず、目的に応じて適宜選択することができる。
さらに、前記変性ブタジエンゴム及び変性スチレンブタジエンゴムからなる群より選択される少なくとも一種を変性するための変性剤については、要求される変性官能基の種類に応じて適宜選択することができる。
また、前記SBRの結合スチレン量については、特に限定はされないが、10%以上であることが好ましい。タイヤへ用いた際の耐カット性を悪化させることなく、グリップ性を高めることができる。
さらに、前記前記SBRのビニル結合量については、特に限定はされないが、10%以上であることが好ましい。タイヤへ用いた際の転がり抵抗を悪化させることなく、グリップ性を高めることができる。
なお、本発明のゴム組成物では、前記ゴム成分中に占める前記SBRの割合が基本的に100%であるが、本発明の効果を害しない範囲で、他の種類のゴムを少量含有することもできる。
(シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン)
また、本発明のゴム組成物は、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン(sPB)を含む。前記スチレンブタジエンゴムとともに、sPBを特定量含むことによって、ゴム組成物の補強性を高めることができ、タイヤへ適用した際の転がり抵抗を悪化させることなく、優れた耐カット性を実現できる。
本発明のゴム組成物における前記シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンの含有量については、前記スチレンブタジエンゴム100質量部に対して5〜40質量部である。前記sPBを、前記スチレンブタジエンゴム100質量部に対して5質量部以上含むことによって、結晶の犠牲破壊によるエネルギー散逸効果が高まり、より優れた耐カット性が得られる。同様の観点から、前記sPBの含有量は、前記スチレンブタジエンゴム100質量部に対して10質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることがより好ましい。一方、前記sPBの含有量が、前記スチレンブタジエンゴム100質量部に対して40質量部以下であることで、タイヤへ適用した際の転がり抵抗の悪化を抑えることができる。同様の観点から、前記sPBの含有量は、前記スチレンブタジエンゴム100質量部に対して35質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましい。
前記シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンは、sPBの1,2−結合の量(sPBのミクロ構造における1,2−結合の量)が、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましい。結晶の犠牲破壊によるエネルギー散逸効果が得られるため、より優れた耐カット性及び転がり抵抗の低減効果を得ることができる。同様の観点から、sPBの1,2−結合の量は、90質量%以上、91質量%以上、92質量%以上、93質量%以上、94質量%以上又は95質量%以上とすることもできる。
なお、本発明では、sPBの1,2−結合の量を、1H及び13C核磁気共鳴(NMR)分析によって求めることができる。
また、前記シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンは、sPBの1,2−結合におけるシンジオタクチシティが、60%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましい。より高いエネルギー散逸効果が得られるため、耐カット性をより向上できるためである。同様の観点から、sPBの1,2−結合におけるシンジオタクチシティは、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上又は100%とすることができる。
なお、本発明では、sPBの1,2−結合におけるシンジオタクチシティを、1H及び13C核磁気共鳴(NMR)分析によって求めることができる。
なお、前記シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンは、1,3−ブタジエンの他に、1,3−ペンタジエン、1−ペンチル−1,3−ブタジエンなどの共役ジエンが少量、共重合した共重合体であってもよいし、1,3−ブタジエンの単独重合体であってもよい。
前記sPBが、1,3−ブタジエン以外の共役ジエン由来の単位を含む場合、一実施形態では、sPBの全繰り返し単位中の1,3−ブタジエン由来の単位の割合は、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上又は99%以上とすることができる。
さらに、前記シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンの結晶化度は、25〜80%であることが好ましい。前記sPBの結晶化度が25%以上あることで、より高いエネルギー散逸効果が得られるため、耐カット性をより向上できる。同様の観点から、前記sPBの結晶化度は、30%以上であることがより好ましく、36%以上であることがさらに好ましく、40%以上であることが特に好ましい。一方、sPBの結晶化度が80%以下の場合には、ゴム組成物の亀裂成長性の悪化を抑えることができる。同様の観点から、前記sPBの結晶化度は、70%以下であることがより好ましく、60%以下であることがさらに好ましい。
なお、前記sPBの結晶化度とは、sPBがどれくらいの割合で結晶化しているかを示す指標であり、結晶化度0%の(結晶がない)1,2−ポリブタジエンの密度を0.889g/cm3、結晶化度100%の(全て結晶化している)1,2−ポリブタジエンの密度を0.963g/cm3として、水中置換法により測定した密度から換算して算出することができる。
また、前記シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンの数平均分子量については、特に限定はされないが、ゴム組成物の耐カット性及び転がり抵抗の低減効果をより良好に両立させる観点から、50000〜500000であることが好ましい。前記sPBの数平均分子量を50000以上とすることで、タイヤへ適用した際の転がり抵抗の悪化をより確実に抑えることができる。同様の観点から、前記sPBの数平均分子量は、100000以上、110000以上、120000以上、130000以上、140000以上、150000以上、160000以上、170000以上、180000以上、190000以上、200000以上とすることができる。一方、前記sPBの数平均分子量を500000以下とすることで、耐亀裂成長性等の悪化を抑制できる。同様の観点から、前記sPBの数平均分子量は、400000以下、390000以下、380000以下、370000以下、360000以下、350000以下、340000以下、330000以下、320000以下、310000以下、300000以下とすることができる。
さらに、前記シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンの融点については、特に限定はされないが、ゴム組成物の耐カット性をより向上させる観点から、100〜180℃であることが好ましい。前記sPBの融点を180℃以下とすることで、ゴム組成物の加硫時に前記sPBの結晶化が進みやすくなり、より優れたエネルギー散逸効果を得ることができる。同様の観点から、前記sPBの融点を、170℃以下、160℃以下とすることができる。一方、前記sPBの融点を100℃以上とすることで、加硫ゴムの耐熱性や強度が低下するのを抑えることができる。同様の観点から、前記sPBの融点を、110℃以上、120℃以上とすることができる。
なお、前記sPBを得る方法としては、特に限定はされず、自ら製造することもできるし、市販のものを用いることも可能である。
例えば、1,3-ブタジエンモノマーを、脂肪族系溶媒を含む有機溶媒中で、鉄系触媒組成物、クロム系触媒組成物、コバルト系触媒組成物等を用いて重合して得ることができる。具体的には、特開2006−063183号公報、特開2000−119324号公報、特表2004−528410号公報、特表2005−518467号公報、特表2005−527641号公報、特開2009−108330号公報、特開平7−25212号公報、特開平6−306207号公報、特開平6−199103号公報、特開平6−92108号公報、特開平6−87975号公報等に記載された重合方法により調製することができる。
前記鉄系触媒組成物としては、例えば、(a)鉄含有化合物、(b)α−アシルホスホン酸ジエステル及び(c)有機アルミニウム化合物を混合してなる触媒組成物、(a)鉄含有化合物、(b)α−アシルホスホン酸ジエステル、(c)有機アルミニウム化合物及び他の有機金属化合物又はルイス塩基を混合してなる触媒組成物、又は(a)鉄含有化合物と(b)ジヒドロカルビル水素ホスファイトと(c)有機アルミニウム化合物を含んで成る触媒組成物等が挙げられる。
前記(a)鉄含有化合物としては、特に限定されるものではないが、好適な例としては、カルボン酸鉄、有機リン酸鉄、有機ホスホン酸鉄、有機ホスフィン酸鉄、カルバミン酸鉄、ジチオカルバミン酸鉄、キサントゲン酸鉄、鉄α−ジケトネート、鉄アルコキシド又はアリールオキシド、及び有機鉄化合物等が挙げられる。
前記クロム系触媒組成物としては、(a)クロム含有化合物、(b)水素化アルキルアルミニウム化合物及び(c)亜リン酸水素エステルを含んで成る3成分触媒系が例示される。本発明に係るクロム系触媒組成物の成分(a)としては、種々のクロム含有化合物を用いることができる。一般的には、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素又は脂環族炭化水素のような炭化水素溶媒に可溶なクロム含有化合物を用いるのが有利であるけれども、重合媒体中に単に分散した不溶性のクロム含有化合物が触媒活性種を生成することも可能である。従って、溶解性を確保するために、クロム含有化合物に何らかの限定を設けるべきではない。
また、(a)クロム含有化合物中のクロムの例として、これには限定されないが、カルボン酸クロム、クロムβ−ジケトナート、クロムアルコキシド又はアリーロキシド、ハロゲン化クロム、疑似ハロゲン化クロム、及び有機クロム化合物が挙げられる。
前記コバルト系触媒組成物としては、可溶性コバルト、例えばコバルトオクトエート、コバルト1−ナフテート、コバルトベンゾエート等と、有機アルミニウム化合物、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム等と、二硫化炭素とからなる触媒系等が挙げられる。
また、市販品としては、例えば、JSR社のJSR RB(登録商標)810、820、830、840等のJSR RB(登録商標)シリーズ等を、用いることも可能である。
(充填剤)
本発明のゴム組成物は、上述したスチレンブタジエンゴム及びシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンに加えて、充填剤をさらに含むことが好ましい。
前記充填剤を含むことによって、ゴム組成物の耐カット性や、タイヤへ適用した際の転がり抵抗の低減効果をより良好に実現できることに加え、ゴム組成物の補強性や耐摩耗性についても向上を図ることができる。
前記充填剤については、特に制限はなく、カーボンブラック、シリカ、水酸化アルミニウム、クレー、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、硫酸バリウム等が挙げられる。これらの中でも、前記充填剤は、カーボンブラックを含むことが好ましい。これらの充填剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記カーボンブラックとしては、特に制限はなく、例えば、SAF、ISAF、IISAF、N339、HAF、FEF、GPFグレードのカーボンブラックなどが用いることができる。また、前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA、JIS K 6217−2:2001に準拠して測定する)は、20〜160m2/gであることが好ましく、より好ましくは25〜160m2/g、さらに好ましくは25〜150m2/g、特に好ましくは30〜150m2/gである。
また、前記カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量(DBP、JIS K 6217−4:2008に準拠して測定する)は、40〜160ml/100gであることが好ましく、40〜150ml/100gであることがより好ましく、50〜150ml/100gであることがさらに好ましく、60〜150ml/100gがよりさらに好ましく、60〜140ml/100gが特に好ましい。
なお、前記カーボンブラックは、1種類のカーボンブラックを用いてもよく、2種類以上のカーボンブラックを組み合わせて用いてもよい。
また、前記シリカとしては、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムなどが挙げられるが、中でも湿式シリカを用いることが好ましい。
さらに、全充填剤中の、前記カーボンブラックの含有量は、ゴム組成物の補強性を高める観点から、前記スチレンブタジエンゴム100質量部に対して10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることが特に好ましい。一方、前記カーボンブラックの含有量は、低ロス性の悪化、ひいては転がり抵抗の悪化を抑える観点から、前記スチレンブタジエンゴム100質量部に対して80質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがより好ましい。
なお、前記充填剤としてカーボンブラックを含むものの、シリカを含まない配合とすることもできる。この場合、転がり抵抗の低減効果をより向上できる点で好ましい。
また、前記充填剤としてシリカを用いる場合には、加硫前のゴム組成物中に、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド及び3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィド等のシランカップリング剤をさらに含むこともできる。
(その他の成分)
本発明のゴム組成物は、上述したゴム成分、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン及び充填剤以外にも、要求される性能に応じて、通常ゴム工業界で用いられるその他の成分を適宜含むことができる。
前記その他の成分としては、加硫剤(架橋剤)、加硫促進剤、加硫遅延剤、老化防止剤、補強剤、軟化剤、加硫助剤、着色剤、難燃剤、滑剤、発泡剤、可塑剤、加工助剤、酸化防止剤、スコーチ防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、着色防止剤、オイル等を含むことができる。これらは、それぞれ、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記加硫剤としては、硫黄架橋の場合は、硫黄(粉末硫黄等)、モルホリン・ジスルフィド、高分子多硫化物等の含硫黄架橋剤等が挙げられる。非硫黄架橋の場合は、tert−ブチルヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、di−tert−ブチルペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシド等のパーオキサイド架橋が挙げられる。
前記加硫促進剤としては、スルフェンアミド系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、ジチオカルバミン系加硫促進剤、キサントゲン酸塩系加硫促進剤等が挙げられる。
また、前記パーオキサイド架橋における共架橋剤としては、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、メタクリル酸亜鉛、メタクリル酸マグネシウム等が挙げられる。
なお、本発明のゴム組成物の調製方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、各配合成分を、同時又は任意の順序で添加して、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサー等の混練り機を用いて混練りすることによって得られる。
<加硫ゴム組成物の製造方法>
本発明のゴム組成物を加硫し、加硫ゴム組成物とする条件については、特に限定はされない。
例えば、加硫ゴム組成物中に結晶性の前記sPBをより確実に形成できる観点からは、未加硫ゴム組成物の調製において、前記シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンと前記スチレンブタジエンゴムとを混練する際(マスターバッチ練り段階の混練時)の温度を、前記sPBの融点より10〜100℃高い温度に設定し、各成分を混練する工程と、得られた未加硫ゴム組成物を、前記sPBの融点以上の温度で加硫する工程と、を具える製造方法を用いることができる。
前記製造方法における、前記sPBと前記天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムとの混練時(マスターバッチ練り段階の混練時)において、混練時の温度が前記sPBの融点より10℃高い温度に達することで、結晶性の前記sPBをより確実に形成できる。
一方、前記製造方法における、前記sPBと前記天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムとの混練時(マスターバッチ練り段階の混練時)において、混練時の温度が前記sPBの融点より100℃高い温度以下、好ましくは50℃高い温度以下であれば、前記ゴム成分及び前記sPBが熱劣化することを好適に防止することができる結果、得られた加硫ゴム組成物の耐カット性の向上に寄与できる。
なお、前記製造方法における、前記sPBと前記天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムとの混練は、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサー等の混練り機等を用いることができる。
なお、前記製造方法における混練時の温度とは、未加硫ゴム組成物のマスターバッチが混練装置から排出される時点でのマスターバッチの温度をいい、具体的には、マスターバッチ練りにおいて、混練装置から排出された直後のマスターバッチの内部温度を温度センサー等で測定した温度である。但し、混練装置内に未加硫ゴム組成物の温度測定手段がある場合は、排出される時点のマスターバッチの温度を測定してもよい。
ここで、マスターバッチとは、架橋剤及び加硫促進剤を配合しない混練段階で、前記ゴム成分と、前記sPBとを混練する段階で得られるゴム組成物のことである。
前記製造方法における加硫温度は、前記sPBの融点以上の温度であることが好ましい。前記加硫温度が、前記sPBの融点以上であれば、結晶性を有する前記sPBをより確実に形成でき、所望のエネルギー散逸効果を得ることができる。
なお、前記製造方法における加硫時の温度とは、加硫開始から加硫が進行し、到達した最高温度(通常は、加硫装置の設定温度である。)のことである。
また、前記製造方法における加硫は、公知の加硫系を用いることができ、硫黄加硫系でもよいし、非硫黄加硫系でもよい。
<タイヤ>
本発明に係るタイヤは、上述した本発明のゴム組成物をトレッド部へ用いたことを特徴とする。
これによって、本発明のタイヤは、転がり抵抗の悪化を招くことなく、優れた耐カットを実現できる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1〜4、比較例1〜5>
表1に示す配合で、非生産混練工程を行った。その混練時温度は150℃であった。次いで、非生産混練工程から得られたマスターバッチに表1に示す成分を加えて、生産加硫工程を行い、加硫ゴム組成物を得た。加硫時の温度は145℃であった。
得られた加硫ゴム組成物の各サンプルに対して、下記の方法で、転がり抵抗及び耐カット性の評価を行った。結果を表1に示す。
(1)転がり抵抗
加硫ゴム組成物の各サンプルについて、粘弾性測定装置(上島製作所製)を使用して、周波数15Hz、引張歪み2%、温度24℃の条件で、正接損失tanδを測定した。
評価については、tanδの測定値の逆数をとり、比較例1の逆数値を100としたときの、指数として表示した。指数値が大きいほど、tanδが小さく、転がり抵抗が低減されていることを示す。
(2)耐カット性
引張試験装置(株式会社島津製作所)を使用し、pure shear型の試験片を引張した状態で切り込みを入れてき裂が進展する様子を観察する試験を行い、き裂進展速度が不連続に増大するエネルギー解放率(転移エネルギー)を測定した。評価については、比較例1における転移エネルギーを100としたときの指数値として表示し、指数値が大きいほど、耐カット性に優れることを示す。
Figure 2021031646
*1 SBR1: スチレンブタジエンゴム、JSR株式会社製、Mn=138000、Tg=−22℃、結合スチレン量24%、ビニル結合量16%
*2 SBR2: スチレンブタジエンゴム、JSR株式会社製、Mn=139000、T=−5℃、結合スチレン量47%、ビニル結合量6%」
*3 sPB: シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、JSR社製「JSR RB(登録商標)840」、1,2−結合量=94質量%、シンジオタクチシティ=68%、融点=126℃
*4 カーボンブラック: HAF級カーボンブラック、旭カーボン社製「旭#70L」
*5 樹脂A: 石油系樹脂、 山下樹脂製「サブロジンB」
*6 樹脂B: アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、SI GROUP−RIBECOURT S.A.S 製「R7510PJ」
*7 樹脂C: DCPD樹脂、新日本石油化学株式会社製「日石ネオレジン B−100」
*8 ワックス: マイクロクリスタリンワックス、精工化学社製
*9 老化防止剤6C: N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業社製「ノクラック(登録商標)6C」
*10 老化防止剤TMQ: 2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、大内新興化学工業社製「ノクラック(登録商標)224」
*11 加硫促進剤DPG:1,3-ジフェニルグアニジン、大内新興化学工業社製「ノクセラー(登録商標)D」
*12 加硫促進剤CZ:N−(シクロヘキシル)−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、大内新興化学工業社製「ノクセラー(登録商標)CZ」
*13 加硫促進剤MBTS:ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、大内新興化学工業社製「ノクセラー(登録商標)DM−P(DM)」
表1から、本発明に従う実施例の加硫ゴム組成物は、転がり抵抗及び耐カット性のいずれも優れた効果を示すことがわかる。特に実施例の耐カット性は、各比較例に比べて優れた結果を示しており、sPBを配合することにより補強性が向上した効果であると推測できる。
本発明によれば、タイヤへ適用した際の転がり抵抗の悪化を招くことなく、耐カット性に優れた、ゴム組成物及びタイヤを提供することができる。

Claims (10)

  1. スチレンブタジエンゴムと、前記スチレンブタジエンゴム100質量部に対して5〜40質量部のシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンと、を含むことを特徴とする、ゴム組成物。
  2. 前記シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンの数平均分子量が、50000〜500000であることを特徴とする、請求項1に記載のゴム組成物。
  3. 前記シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンの結晶化度が、25〜80%であることを特徴とする、請求項1に記載のゴム組成物。
  4. 前記シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンの融点が、100〜180℃であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  5. 前記シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンの1,2−結合含有量が、80質量%以上であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  6. 充填剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  7. 前記充填剤が、少なくともカーボンブラックを含むことを特徴とする、請求項6に記載のゴム組成物。
  8. 前記カーボンブラックの含有量が、前記スチレンブタジエンゴム100質量部に対して10〜80質量部であることを特徴とする、請求項7に記載のゴム組成物。
  9. 前記充填剤として、シリカを含まないことを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のゴム組成物をトレッド部へ用いたことを特徴とする、タイヤ。
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