JP2021031558A - 粘土鉱物とカチオン性有機色素との複合体を含む可逆性感温材料及びその製造方法 - Google Patents

粘土鉱物とカチオン性有機色素との複合体を含む可逆性感温材料及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】表面温度に対応した色彩を的確かつ可逆的に示す可逆性感温材料を得ること、特に100℃以上の温度に対応した色彩を的確かつ可逆的に示す可逆性感温材料を提供すること。【解決手段】粘土鉱物とカチオン性有機色素との複合体を含む可逆性感温材料であって、前記複合体は、前記粘土鉱物の層間に存在する陽イオンが前記カチオン性有機色素で交換された複合体である可逆性感温材料。【選択図】図3

Description

本発明は、粘土鉱物とカチオン性有機色素との複合体を含む可逆性感温材料及びその製造方法に関する。
従来発色して温度を検知する材料に使用されてきたものは、主成分が高分子ポリマーであり、この高分子ポリマーと色素とが化学的に結合したものや、高分子ポリマーに単純に色素を分散させたものが多い。例えば、特許文献1には食材を煮たり茹でたりする際に、温度変化に対して可逆的に変色して色調変化するサーモクロミズムを示すことにより温度の上昇又は降下の際に所定温度で可逆的に変色する鉄トリアゾール錯化合物及びバインダーを含有する可逆性示温材が、熱を経時的に内部へ伝播して所定温度に達する立体状又はシート状の樹脂成型材に埋め込まれ又は密封されている発明が開示されている。また、非特許文献1には、ワックスの融点を利用して電線などの表面温度を発色により判別するシールが記載されている。非特許文献2には、従来の感熱記録材料のロイコ色素と顕色材の系に、高分子と長鎖アミドを添加した記録材としての複合材料が、温度によって着色と消色することが示されている。しかし、特許文献1は可逆的な温度変化を示すが、煮炊きする料理器具内の温度を計測するために、感温部は樹脂で密封されているため、測定対象となる物体表面の温度を的確に計測することができない。非特許文献1は、表面温度に応じてシール表面の色が変わるものであるが色の変化が可逆的でないものである。非特許文献2は可逆的とも思えるが、同一温度でもその温度までの温度履歴により発色する場合としない場合があり、温度対応した色の変化をするものとは言えない。
一方、色素と無機系の材料を複合させた材料として、特許文献2には、色素と分子内に環状構造を有さない直鎖状ポリカチオン化合物と層状粘土鉱物からなる色素複合体が記載され、特許文献3には、粘土鉱物の層間に有機陽イオンがイオン交換結合されると共にインターカラントが保持されてなる粘土鉱物複合体が記載されている。しかし、これらはいずれも温度変化に対して可逆的に変色するサーモクロミズムを示すものではない。このように従来は、表面温度に対応した色彩を的確かつ可逆的に示す可逆性感温材料を得ることは難しく、特に100℃以上の温度に対応する可逆性感温材料を得ることは難しかった。
特開2013−090882号公報 特開平11−116837号公報 特開平2−293315号公報
高田洋一、"新型感温シール"、AEW技報(古河電工パワーシステムズ(株)、旧旭電機)、2004年12月、第34号、p.39 松井宏樹ら、"熱モードで着色・消色可能な高分子複合フィルム"、色材、1996年、第69巻、第3号、pp.144-149
本発明は、上記従来の問題点を解決し、表面温度に対応した色彩を的確かつ可逆的に示す可逆性感温材料を得ることを課題とし、特に100℃以上の温度に対応した色彩を的確かつ可逆的に示す可逆性感温材料を提供することを課題とする。
本発明者らは、サーモクロミズムを発現する可逆性感温材料の研究を開始し、層状化合物である粘土鉱物の層間にカチオン性有機色素をイオン交換により閉じ込め、その構造・組成を固定化することに成功した。こうして得られた複合体はサーモクロミズムを発現するものであった。当初、複合体を高温にさらすと、層間隙内に存在する水分子が徐々に脱離し、層間隙が狭まるため、層間隙内に閉じ込められた有機色素の構造が強制的に、より平面的な構造に変わることでサーモクロミズムを発現すると考えられた。しかし、更に研究をすすめたところ、構造的な変化よりも、層間隙内に残った水分子の分極が大きくなり、その結果生じた水素イオン(H)がカチオン性有機色素に付加することで、100℃近くの温度以上では室温の状態とは異なった光吸収特性を示す機構が色調変化に大きく寄与していることが明らかになった。すなわち、外部環境温度が90℃以上あるいは100℃以上となったときに、粘土層間に閉じ込められた有機色素に水素イオンが付加した化学種の含有量が増大するため、材料の色調が変化することが明らかになった。この系の高温度への応答は、10分程度で完結する現象であり、90℃以下あるいは100℃以下の温度では、大気中の水分子が再び層間隙に吸着するため、材料の色調は高温にする前に戻り、温度に応答する材料の色調変化は繰り返し観察できた。この知見により、色の変化が立体構造の変化に起因しない色素と粘土鉱物を使用して可逆性感温材料を得ることが可能となり、酸性側に酸解離定数(pKa)を有する色素で水溶液中での色調変化が確認できれば、利用可能となることが分かった。本発明は、このようにして見出されたものである。
すなわち、本発明は、以下に示す事項により特定されるものである。
(1)粘土鉱物とカチオン性有機色素との複合体を含む可逆性感温材料であって、前記複合体は、前記粘土鉱物の層間に存在する陽イオンが前記カチオン性有機色素で交換された複合体である可逆性感温材料。
(2)複合体におけるCEC比が、2〜7%であることを特徴とする上記(1)記載の可逆性感温材料。
(3)複合体における色素導入量が、0.02〜0.06mmol/gであることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の可逆性感温材料。
(4)複合体における粘土鉱物のCECが、60〜150meq/100gであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか記載の可逆性感温材料。
(5)粘土鉱物が、サポナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、スティーブンサイト及びバーミキュライトからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか記載の可逆性感温材料。
(6)カチオン性有機色素が、酸性側に酸解離定数(pKa)を有する色素であってpHが0〜5の間でその水溶液の色が変化する色素であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか記載の可逆性感温材料。
(7)粘土鉱物とカチオン性有機色素とを液中で混合し、混合後の前記液をろ過して、サーモクロミズムを発現する粘土鉱物とカチオン性有機色素との複合体を得ることを特徴とする可逆性感温材料の製造方法。
(8)粘土鉱物とカチオン性有機色素とを、CEC比が2〜7%となるように混合することを特徴とする上記(7)記載の可逆性感温材料の製造方法。
本発明の可逆性感温材料は、表面温度に対応した色彩を的確かつ可逆的に示すことができる。特に100℃以上の温度に対応した色彩を的確かつ可逆的に示すことができる。
図1は、実施例13〜15の膜の吸収スペクトルを示す図である。 図2は、実施例13の膜の温度変化による吸収スペクトルの変化を測定する方法を示す模式図である。 図3は、実施例13の膜の温度変化による吸収スペクトルと膜の色調の変化を示す図である。 図4は、実施例16〜20の加熱による色の変化を示す図である。 図5は、実施例13で得られた複合膜の30℃から120℃までの温度上昇に伴う吸収スペクトルの変化を示す図である。 図6は、実施例13の膜表面の一部にジメチルスルホキシドを塗布及び除去した際の加熱・冷却による膜の色調変化を示す図である。
本発明の可逆性感温材料は、粘土鉱物とカチオン性有機色素との複合体を含む可逆性感温材料であって、前記複合体は、前記粘土鉱物の層間に存在する陽イオンが前記カチオン性有機色素で交換された複合体であることを特徴とする。本発明における粘土鉱物としては、特に制限されるものではなく、一般的に粘土鉱物と呼ばれるものであれば使用でき、例えば、サポナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、スティーブンサイト、バーミキュライト等の層状ケイ酸塩化合物を挙げることができる。また、本発明における粘土鉱物には、天然に産するもの及び合成されたものが含まれる。本発明における色素としては、カチオン性を有する有機色素であれば特に制限されるものではなく、例えば、トリフェニルメタン骨格を有する色素、フェナジン環を有する色素等を挙げることができ、また例えば、クリスタルバイオレット、マカライトグリーン、ニューフクシン、チモールブルー、ニュートラルレッド、コンゴーレッド、メチルオレンジ、パラローズアニリン、ブロモチモールブルー、アリザリンスルホン酸ナトリウム、ピクラミン酸、アントシアニン系色素、メタニルイエロー、トロペオリンOO、メチルイエロー、メチルレッド、ナフチルレッド等を挙げることができる。本発明においては、粘土鉱物の層間に存在する陽イオンとイオン交換されたカチオン性有機色素が、前記粘土鉱物の層間に存在することにより、粘土鉱物とカチオン性有機色素とが複合体を形成している。粘土鉱物は層表面に負電荷を帯びており、その負電荷を補償するために層間に陽電荷を有するナトリウムイオンやカルシウムイオンなどのカチオンを有する。このカチオンは、他のカチオン性分子と容易に交換され、他のカチオン性分子が層表面に吸着される。本発明におけるカチオン性有機色素は、このようなイオン交換により粘土鉱物の層間に存在する。本発明における色素は、例えば、チモールブルー、ブロモチモールブルー、メチルオレンジ等の中性溶液中においては分子内にカチオン部位を持たない色素であっても、前記溶液中に塩酸等の酸を加え溶液を酸性にすることにより分子内にカチオン部位を発生させてもよく、このような色素も本発明におけるカチオン性有機色素に含まれる。本発明におけるカチオン性有機色素として、酸性側に酸解離定数(pKa)を有する色素でpHがおおよそ0〜5の間でその水溶液の色調変化が確認できる色素であれば使用できる。本発明の可逆性感温材料は、本発明における複合体のみからなってもよく、必要に応じて、例えばバインダー等の他の成分を含んでもよい。また、粉末状、薄膜状等の様々な形態でも使用できる。
本発明における複合体では、カチオン性有機色素がイオン交換により粘土鉱物の層表面に吸着されるとき、層表面に水分子も吸着される。本発明における複合体を高温にさらすと、層間隙内に存在する水分子が徐々に脱離し、層間隙内に残った水分子の分極が大きくなる。その結果生じた水素イオン(H)がカチオン性有機色素に付加することで、100℃近くの温度になると室温の状態とは異なった光吸収特性を示す。すなわち、外部環境温度が100℃近くの温度、あるいは100℃以上の温度、例えば、90〜160℃、又は100〜150℃の温度では、粘土鉱物層間に閉じ込められた有機色素に水素イオンが付加した化学種の含有量が増大するため、材料の色調が変化する。この系の高温度への応答は、10分程度で完結する現象である。さらに、温度を100℃以下に下げていくと大気中の水分子が再び層間隙に吸着するため、材料の色調は温度を上げる前の状態に戻る。この温度に応答する材料の色調変化は繰り返し観察できる。そのため、本発明の可逆性感温材料は、従来材料と比べて、特定の温度(100℃)より低温側と高温側での可逆的な色調変化を示す。これにより、感温材料の塗布が困難な箇所の高温警戒または危険警報を視覚的に検出することや、温度管理を繰り返しモニターすることが可能になる。また、外部環境の温度よりも沸点が高い液体又は液体と固体の混合物で複合体の表面を覆うと、覆った部分の変色を抑制することができる。これは、前記液体又は混合物で覆った部分にある有機色素の周りの環境は加熱によって前記液体又は混合物中の液体が脱離しないため酸性を示さないが、覆っていない部分にある有機色素の周りの環境は脱水により酸性を示すためと考えられる。複合体の表面を覆う方法としては特に制限されず、例えば、塗布等を挙げることができる。このような液体として、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、エチレングリコール等を挙げることができる。前記液体としては、粘土鉱物を膨潤させる性質を有するものが好ましい。変色を部分的に抑制することにより、例えば、文字、図形等の形状になるように複合体の表面を覆うことにより、特定の温度になったときに、文字や図形を色の違いにより浮き上がらせることができ、温度変化の識別性を高めることができる。
本発明では、複合体におけるCEC比が2〜20%であることが好ましく、2〜10%であることがより好ましく、2〜7%であることがより好ましく、4〜7%であることが更に好ましい。ここで、CECとは陽イオン交換容量(Cation Exchange Capacity)のことである。粘土鉱物の陽イオン交換容量(CEC)は、通常粘土鉱物の乾燥質量100gあたりの交換ミリ当量(meq/100g)で表され、粘土鉱物が有する交換可能な陽イオンの量を表す。また、本発明におけるCEC比とは、粘土鉱物のCEC(陽イオン交換容量)に対して加えたカチオン性有機色素の物質量の割合のことで、パーセントを使って表す。CEC比が前記範囲内にあると、常温での色に対する100℃以上での色の変化がより明確になる。また、可逆性がより向上する。本発明では、複合体における色素導入量が0.02〜0.2mmol/gであることが好ましく、0.02〜0.06mmol/gであることがより好ましく、0.04〜0.06mmol/gであることが更に好ましい。ここで、色素導入量とは粘土鉱物の乾燥質量1gあたりの色素の前記粘土鉱物へ導入された物質量のことである。色素導入量が前記範囲内にあると、常温での色に対する100℃以上での色の変化がより明確になる。また、可逆性がより向上する。本発明では、複合体における粘土鉱物のCECが60〜150meq/100gであることが好ましく、60〜120meq/100gであることがより好ましい。CEC比が前記範囲内にあると、常温での色に対する100℃以上での色の変化がより明確になる。また、可逆性がより向上する。
本発明の可逆性感温材料の製造方法は、特に制限されるものではないが、例えば、粘土鉱物とカチオン性有機色素とを液中で混合し、混合後の前記液をろ過して得ることができる。具体的には、粘土鉱物を溶媒に分散させて粘土鉱物分散液を調製する。また、色素を溶媒に溶解して色素溶液を調製する。この際、色素にカチオン部位を発生させるために酸を添加してpHを調整してもよい。粘土鉱物を分散させる溶媒及び色素を溶解させる溶媒は、特に制限されるものでないが、例えば、水を好適な例として挙げることができる。このように調製した粘土鉱物分散液と色素溶液を混合する。混合する粘土鉱物分散液の濃度と色素溶液の濃度は、特に制限されるものでないが、粘土鉱物分散液の濃度としては0.05〜0.1g/Lが好ましい。粘土鉱物分散液の濃度が0.05g/L未満では、所定の膜厚にするためにろ過する分散液の体積が増えるためろ過時間がかかる。また、粘土鉱物分散液の濃度が0.1g/Lを越えると、粘土鉱物の分散が難しくなるため分散液中で粘土鉱物が単層で存在することが難しくなり、色素が粘土鉱物の層間に十分に吸着できないおそれがある。混合方法は特に制限されず、例えば、機械的撹拌、超音波照射等の混合方法を使用することができる。混合過程で粘土鉱物の層間の陽イオンがイオン交換反応により色素と交換されて本発明における複合体が得られる。得られた複合体の混合液からの分離方法は、層間に必要な水分が除去されない方法であれば特に制限されないが、例えば、濾紙等を使用して吸引ろ過等によりろ過して分離することができる。こうして得られた複合体は可逆性感温材料として使用できる。前記複合体を可逆性感温材料膜として使用する場合は、例えば、濾紙上に作製された膜をガラス等の基材に押しつけることにより圧着して転写して使用することができる。必要に応じてバインダーを添加して膜を作製してもよい。前記複合体を含む可逆性感温材料の膜の厚みは、特に制限されるものでないが、膜厚が厚いほど熱伝導に時間がかかり発色の応答性が鈍くなるため1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。本発明の可逆性感温材料は、このように調製が簡便である。また、分離した複合体をほぐして使用すれば粉末として使用でき、上記のように膜として使用することもできる。
[実施例1〜12]
表1〜表4に記載された粘土鉱物を超純水(Millipore社製Milli-Q Integral 10 超純水製造装置により製造)に分散させて、表1〜表4に記載された濃度の粘土鉱物水分散液を調製した。また、表1〜表4に記載された色素を超純水に溶解させて、表1〜表4に記載された濃度の色素水溶液を調製した。調製した粘土鉱物水分散液と色素水溶液を表1〜表4に記載された量で充分に混合した。得られた混合液を、直径25mm、ポアサイズ0.1μmの濾紙で真空ポンプを接続した吸引ろ過器を用いてろ過し、濾紙上に作製された膜をガラス基板に圧着して転写し、粘土鉱物と色素の複合体の膜を作製した。使用した濾紙は、(製造元)ADVANTEC社、(名称)メンブレンフィルター、(型式)セルロース混合エステルタイプである。膜をガラス基板ごとオーブン(サクラ精機株式会社製、櫻式電気定温乾燥機)に入れ、表1〜表4に記載された温度まで加熱した。加熱にあたっては、オーブン内の温度が表1〜表4に記載の温度に達した後、その温度で20分維持して、複合体膜が当該温度で熱平衡状態になるようにした。加熱前の常温での色及び加熱後の色のRGB及びカラーコードを測定した。結果を表1〜表4に示す。RGB及びカラーコードの測定は、一般に使用される測定器やソフトを使用して行うことができるが、本実施例においては、RGBの測定は、オーブンに入れる前と加熱後オーブンから取り出した膜の画像を撮影し、撮影した画像をソフト(Adobe photoshop)に読み込み、丸い画像の上下左右及び中央の5点にスポイトツールをあててクリックして、それぞれの位置でのRGB値を求め、これらを平均することにより求めた。カラーコードは、得られたRGB値を換算して求めた。色の表現は、カラーコードに対応した色の表現が掲載されたネットサイト(https://ironodata.info/search/)の表現を使用した。実施例1〜12のいずれも、120℃又は100℃に加熱することにより複合体膜の色が変化した。以下、実施例の表中でSSAは合成サポナイト、Montは天然モンモリロナイト、LapはLAPONITE(登録商標)(合成ヘクトライト)、SSTは合成スティーブンサイト、Hectはフルオロヘクトライトをそれぞれ表し、CVはクリスタルバイオレット、MGはマカライトグリーン、PAはパラローズアニリン、NFはニューフクシン、BTBはブロモチモールブルー、TBはチモールブルー、NRはニュートラルレッド、MOはメチルオレンジ、CRはコンゴーレッドをそれぞれ表す。また、実施例1〜31で使用した各粘土鉱物のCECは、Montで115meq/100g、SSAで99.7meq/100g、Lapで74meq/100g、SSTで57meq/100g、Hectで51meq/100gであった。CEC比は、文献値あるいは製造業者から提供された上記CECの値を用いて、粘土鉱物水分散液と色素水溶液を混合した際の混合溶液中に含まれる粘土鉱物の質量と色素の物質量より計算して求めた。具体的には、CECの値に分散液中の粘土鉱物の質量を乗ずることにより粘土鉱物の電荷を求め、溶液中の色素の物質量を粘土鉱物の電荷で除することによりCEC比を求めた。色素導入量は、粘土鉱物水分散液と色素水溶液を混合した際の混合溶液中に含まれる粘土鉱物の重量と色素の物質量より計算して求めた。具体的には、溶液中の色素の物質量を分散液中の粘土鉱物の質量で除することにより色素導入量を求めた。本願明細書における実施例では、CEC比が4〜20%であり、この条件下において混合した色素はすべてイオン交換反応により粘土鉱物層表面に吸着する。また、粘土鉱物水分散液と色素水溶液の混合液を吸引ろ過したときのろ液に色素が含まれていないことを紫外線可視吸収スペクトルで確認した。
[実施例13〜15]
実施例1〜12と同様に、表5に記載された粘土鉱物と色素を使用して表5に記載された濃度の粘土鉱物水分散液と色素水溶液を調製し、表5に記載された量で充分に混合した。得られた混合液を用いて実施例1〜12と同様に粘土鉱物と色素の複合体の膜を作製し、実施例1〜12と同様の方法で表5に記載された温度(120℃)まで加熱した。実施例1〜12と同様に加熱前の常温での色及び加熱後の色のRGB及びカラーコードを測定した。また、それぞれの膜について常温での吸収スペクトルと加熱後の吸収スペクトルを測定した。吸収スペクトルの測定は、ガラス基板に圧着し転写された状態の膜を測定対象とし、紫外可視近赤外分光光度計(Jasco V670、日本分光株式会社製)を使用して行った。吸収スペクトルの測定結果を図1に示す。図1(a)は実施例13、図1(b)は実施例14、図1(c)は実施例15の結果である。表5及び図1(a)〜(c)から分かるようにCEC比が5%であり、色素導入量が0.05mmol/gである実施例13が色の変化が大きく明確な色の変化がみられた。また、実施例13については、図2の方法で常温(30℃)から120℃までの温度(30℃、60℃、90℃、120℃)での膜の吸収スペクトルを測定した。図2では、膜をガラス基板ごと銅製の熱伝導部分に密着させ、温度調整コントローラー(株式会社ミスミ製)を測定したい温度に加熱する。目標温度に到達した状態から5分後の吸収スペクトルを測定した。結果を図3に示す。600nmの波長において吸光度の高い方から30℃、60℃、90℃、120℃でのそれぞれの吸収スペクトルを示す。図3から分かるように、90℃〜120℃で吸収スペクトルが大きく変化した。また、図3の各温度の右側に、各温度における膜の色を示す。
[実施例16〜20]
実施例1〜12と同様に、表6及び表7に記載された粘土鉱物と色素を使用して表6及び表7に記載された濃度の粘土鉱物水分散液と色素水溶液を調製し、表6及び表7に記載された量で充分に混合した。得られた混合液を用いて実施例1〜12と同様に粘土鉱物と色素の複合体の膜を作製して加熱し、オーブン内の温度が表6及び表7に記載された温度(120℃)に到達してから30分間当該温度を維持した。実施例1〜12と同様に加熱前の常温での色及び加熱後の色のRGB及びカラーコードを測定した。それぞれ加熱することにより色の変化がみられ、常温に戻すことにより加熱前の色に戻った。特に実施例16〜18においては、加熱による色の変化がより明確であり、常温に戻すことにより加熱前の色に戻る可逆性により優れていた。図4に加熱前後の色の写真を示す。また、MontとMG、SSAとMG、LapとMGの組合せである実施例16〜18は加熱により暖色系の色に変化するため、色の変化の識別がしやすいものであった。
[実施例21〜25]
実施例1〜12と同様に、表8及び表9に記載された粘土鉱物と色素を使用して表8及び表9に記載された濃度の粘土鉱物水分散液と色素水溶液を調製し、表8及び表9に記載された量で充分に混合した。粘土鉱物はCECが実施例16〜20と同じものを用いた。得られた混合液を用いて実施例1〜12と同様に粘土鉱物と色素の複合体の膜を作製して加熱し、オーブン内の温度が表8及び表9に記載された温度(120℃)に到達してから20分間当該温度を維持した。実施例1〜12と同様に加熱前の常温での色及び加熱後の色のRGB及びカラーコードを測定した。それぞれ加熱することにより色の変化がみられ、常温に戻すことにより加熱前の色に戻った。特に実施例21〜23において、加熱による色の変化がより明確であり、常温に戻すことにより加熱前の色に戻る可逆性により優れていた。
[実施例26〜30]
加熱温度を150℃とした以外は実施例16〜20と同様に膜を作製して、同様用の方法で加熱した。実施例1〜12と同様に加熱前の常温での色及び加熱後の色のRGB及びカラーコードを測定した。結果を表10及び表11に示す。それぞれ加熱することにより色の変化がみられた。特に実施例26〜28では、加熱による色の変化がより明確であり、常温に戻すことにより加熱前の色に戻る可逆性により優れていた。実施例29及び30では、加熱により色の変化がみられ、常温に戻すことにより加熱前の色とは少し異なるものの、加熱時の色から変化して加熱前に近い色となった。150℃と常温の間でも可逆的な色の変化が確認できた。
[実施例31]
実施例13で使用した複合膜を、転写面を上にしてホットプレートに置き加熱したところ、濃い青緑(RGBはR:6,G:131,B:128、カラーコードは#068380)となり、ホットプレートの設定温度を更に上げたところ、ぼやけた緑みの黄(RGBはR:188,G:193,B:162、カラーコードは#BCC1A2)となった。予め実施例13で使用した複合膜を使用して、30℃〜120℃まで10℃毎の膜のRGBを測定しておいて、前記RGBと比較したところ、濃い青緑は70℃相当の色であり、ぼやけた緑みの黄は120℃相当の色であった。オーブン加熱は、膜全体を両面から加熱するものであるが、ホットプレートを使用して片面からのみ加熱しても膜の色は変化し片面表面温度を計測できることがわかる。なお、図5に実施例13で使用した複合膜の30℃〜120℃まで10℃ごとの吸収スペクトルの変化を示す。波長623nmでの吸光度が最も高いスペクトルが30℃であり、温度が高くなるにしたがって順に波長623nmでの吸光度が下がっている。
[実施例32]
実施例13と同様にSSAとMGの複合膜を作製した。作製した膜の表面にジメチルスルホキシド(DMSO:沸点189℃)を「山」という文字の形に塗布した。その後、実施例1〜12と同様に120℃まで加熱したところ、DMSOを塗布した部分は変色せず、塗布していない部分のみが変色した。次に、常温に戻したところ、元の色に戻った。さらに、元に戻った膜からDMSOを除去して、再度120℃まで加熱したところ、膜全体が変色し、これを常温に戻したところ元の色に戻った。このように、加熱による色調変化を部分的に抑制することができた。色の変化の様子を図6に示す。
本発明の可逆性感温材料は、可逆的色調の変化が常温と100℃程度の温度あるいは100℃以上の温度との間で起こるので、高温での温度検知が必要な箇所に好適に使用でき、例えば、プラント等の配管、モータ、送電線等における高温警戒温度警報、高温または低温の熱ストレスを繰り返し加えるような電子部品等の耐熱性検査、あるいは材料加工の温度管理などへ好適に使用できる。

Claims (8)

  1. 粘土鉱物とカチオン性有機色素との複合体を含む可逆性感温材料であって、前記複合体は、前記粘土鉱物の層間に存在する陽イオンが前記カチオン性有機色素で交換された複合体である可逆性感温材料。
  2. 複合体におけるCEC比が、2〜7%であることを特徴とする請求項1記載の可逆性感温材料。
  3. 複合体における色素導入量が、0.02〜0.06mmol/gであることを特徴とする請求項1又は2記載の可逆性感温材料。
  4. 複合体における粘土鉱物のCECが、60〜150meq/100gであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の可逆性感温材料。
  5. 粘土鉱物が、サポナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、スティーブンサイト及びバーミキュライトからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の可逆性感温材料。
  6. カチオン性有機色素が、酸性側に酸解離定数(pKa)を有する色素であってpHが0〜5の間でその水溶液の色が変化する色素であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の可逆性感温材料。
  7. 粘土鉱物とカチオン性有機色素とを液中で混合し、混合後の前記液をろ過して、サーモクロミズムを発現する粘土鉱物とカチオン性有機色素との複合体を得ることを特徴とする可逆性感温材料の製造方法。
  8. 粘土鉱物とカチオン性有機色素とを、CEC比が2〜7%となるように混合することを特徴とする請求項7記載の可逆性感温材料の製造方法。

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