ところが、特許文献1に開示されたフリクション巻軸では、巻取途中に巻取りを停止して中心支持軸の回転力が失われると、巻芯と巻取カラーとの間の相対的な回転力も失われ、ボールが傾斜溝の浅部から深部に戻ってしまうことがある。その場合、ボールは巻芯の内周面から後退して巻芯をカラー本体に固定することができなくなり、巻芯がカラー本体に対して帯状シート幅方向にずれることがある。そして、この状態で巻取りを再開すると、巻取再開後に巻取った帯状シートは、既に巻芯のまわりに巻取っている帯状シートに対して幅方向のズレを生じ、巻終わった巻取ロールの端面に段差ができ、その巻取ロールは不良品になる。そして巻取再開前に多数の巻芯について横ズレの有無を調べて、横ズレしている巻芯を正確に正規の位置に戻す作業は極めて難しく非常に手間がかかるので実質的に不可能といえる。
また、特許文献2に開示されているフリクション巻軸では、巻取カラー相互間に横ズレ防止リングを備えているため、このフリクション巻軸に装着可能な巻芯の最小幅を小さくするのが困難であり、スリッターワインダーにおける巻取可能な帯状シートの細幅化の要望に応えることができなくなりつつある。また横ズレ防止リングは、それが備える係合部を圧縮空気により巻芯の内周面に押付けて巻芯を保持する構造であるので、フリクション巻軸の構造が複雑で高価なものになる。
本発明は、従来のこのような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の主な目的は、巻取停止中でも巻芯を横ズレしないように保持することができ、装着可能な巻芯の最小幅を小さくすることができ、かつ比較的簡素な構造のフリクション巻軸を得ることにある。
また本発明の他の目的は、フリクション巻軸に巻芯を比較的円滑に装着することができ、細幅の帯状シートを一斉に巻取ることができる帯状シート巻取装置を得ることにある。
課題を解決するための手段及び発明の効果
本発明の第1の側面に係るフリクション巻軸によれば、中心支持軸と、該中心支持軸の外周に回転可能に装着した、中空の巻芯の内周を帯状シート巻取中に固く保持する多数の巻取カラーと、前記中心支持軸から前記巻取カラーに所要の回転力を伝達する回転力伝達機構とを備えるフリクション巻軸において、前記巻取カラーは、前記中心支持軸の外周に軸受を介して装着した環状のカラー本体と、前記カラー本体の円周方向の少なくとも3箇所以上に配設した底面傾斜溝と、前記底面傾斜溝に夫々配置した、前記巻芯の内周面に係合可能な転動体と、前記転動体を脱落不能かつ転動可能に保持する、前記カラー本体に同心に回転可能に装着したリテーナと、前記転動体が前記底面傾斜溝の深部から浅部へ移動する方向に前記リテーナが前記カラー本体に対して回転するように当該リテーナに回転力を付与するリテーナ付勢機構と、を備えるように構成することができる。
前記構成により、巻芯と巻取カラーとの間に相対的な回転力が生じていなくても、リテーナ付勢機構によって付勢されたリテーナがカラー本体に対して回転することで、少なくとも3箇所の底面傾斜溝から夫々転動体が突出し、その転動体により巻芯の内周面を押圧するので、従来のように横ズレ防止リングを巻取カラー相互間に備える必要がなくなり、フリクション巻軸に装着可能な巻芯の最小幅を小さくすることができ、かつ比較的簡素な構造のフリクション巻軸を得ることができる。
また、本発明の第2の側面に係るフリクション巻軸によれば、前記リテーナ付勢機構は、前記カラー本体の外周面に円周方向に形成した溝と、前記溝に収容した弾力的に伸縮する伸縮部材と、前記伸縮部材の一端に係合する、前記カラー本体に設けたピンと、前記伸縮部材の他の一端に係合する、前記リテーナに設けたピンとからなるように構成することができる。
前記構成により、比較的コンパクトな巻取カラーを得ることができる。
また、本発明の第3の側面に係るフリクション巻軸によれば、前記回転力伝達機構は、前記カラー本体に押付け可能に前記中心支持軸に装着した摩擦部材と、前記摩擦部材を前記カラー本体の内周面に押付ける押付機構と、を備え、前記軸受は、前記カラー本体に固着した合成樹脂製の1個の環状の滑り軸受であり、前記摩擦部材は、金属製であり、前記軸受の内周面に接触するように構成することができる。
前記構成により、金属製の摩擦部材は機械的強度が大きく小型化できるので、巻取カラーの狭幅化を図ることができる。また従来においては合成樹脂製の摩擦部材を中心駆動軸側に設け、その摩擦部材を金属製のカラー本体の内周面に押付けていたので、カラー本体に比べて摩擦部材の方が摩耗し易く、しかも一つのカラー本体に対して複数個の摩擦部材を押圧するので、この摩擦部材の交換作業が面倒であったが、前記構成により、中心駆動軸側の金属製の摩擦部材よりカラー本体側の軸受の方が早く摩耗するようになるため、交換作業が面倒な中心駆動軸側の摩擦部材を交換する代わりに、交換作業が比較的容易なカラー本体側の軸受を交換すればよくなり、保守作業が容易になる。
また、本発明の第4の側面に係る帯状シート巻取装置によれば、フリクション巻軸の外周に複数の巻芯を装着し、前記中心支持軸を巻取モータにより所要の巻取速度に応じた回転速度で回転駆動すると共に、前記中心支持軸から前記巻取カラーへ伝達される回転力が所要の巻取トルクとなるように前記回転力伝達機構を操作しながら、複数の帯状シートを前記複数の巻芯のまわりに一斉に巻取る帯状シート巻取装置において、前記フリクション巻軸は、前記本発明の第1の側面〜第3の側面の何れか一に係るフリクション巻軸であり、前記巻取モータは、巻芯着脱時に前記中心支持軸を、帯状シート巻取時の回転方向と逆の方向に、予め設定された逆転速度で回転駆動し、前記回転力伝達機構は、巻芯着脱時に前記中心支持軸から前記巻取カラーに、予め設定された逆転トルクに応じた回転力を伝達するように構成することができる。
前記構成により、本発明に係るフリクション巻軸への巻芯の装着を比較的円滑に短時間で行うことができるようになる。
更にまた、本発明の第5の側面に係る帯状シート巻取装置によれば、巻芯着脱時に、前記中心支持軸を予め設定した逆転速度で回転駆動するよう前記巻取モータに指令する逆転速度設定部と、巻芯着脱時に、帯状シート巻取時の回転方向と逆の方向に回転するよう前記巻取モータに回転方向の切替えを指令する回転方向切替部と、巻芯着脱時に、前記回転力伝達機構を操作する操作部に、前記中心支持軸から前記巻取カラーへ伝達する回転力が予め設定した逆転トルクとなるように該逆転トルクに応じた操作量を出力する逆転トルク設定部と、を備えるように構成することができる。
前記構成により、巻芯の種類や材質等の巻取条件に応じて試行錯誤により巻芯の着脱に適した逆転速度や逆転トルクを求める場合に都合がよくなる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するためのフリクション巻軸及び帯状シート巻取装置を例示するものであって、本発明はそれらを以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
図1は、本発明の一実施例に係る帯状シート巻取装置の説明図であり、図1に示す帯状シート巻取装置は、本発明の一実施例に係るフリクション巻軸1を備えているので、先ず、このフリクション巻軸1について図2〜図6を参照して説明する。
(フリクション巻軸)
フリクション巻軸1は、中心支持軸2と、該中心支持軸2の外周に回転可能に装着した、中空の巻芯Cの内周を帯状シート巻取中に固く保持する多数の巻取カラー3と、中心支持軸2から巻取カラー3に所要の回転力を伝達する回転力伝達機構4とを備えている。
巻取カラー3は、中心支持軸2の外周に軸受5を介して装着した環状のカラー本体6と、カラー本体6の円周方向の6箇所に配設した底面傾斜溝7と、底面傾斜溝7に夫々配置した、巻芯Cの内周面に係合可能な転動体8、この転動体8を脱落不能かつ転動可能に保持する、カラー本体6に同心に回転可能に装着したリテーナ9と、リテーナ9を、カラー本体6に対して転動体8が底面傾斜溝7の深部から浅部へ移動する方向に回転するように付勢するリテーナ付勢機構10とを備えている。
底面傾斜溝7は、底面の幅方向がカラー本体6の中心軸線に平行になるように形成してある。転動体8は、この実施例の場合コロであり、鋼製で円柱状に形成されている。リテーナ9は、円筒体状に形成されており、その円周方向の6箇所に等間隔に形成した切欠きに転動体8を収容してカラー本体6の外周に隙間嵌してある。なお、転動体8は、その外周が平坦な円柱側面になっているものに限らず、その外周部が巻芯Cの円筒状の内周面に、その転動体8の中心軸線に平行に線接触可能なものであれば、凹凸部を有していてもよい。
回転力伝達機構4は、カラー本体6に押付け可能に中心支持軸2に装着した摩擦部材11と、摩擦部材11をカラー本体6の内周面に押付ける押付機構12とを備える。中心支持軸2は、当該中心支持軸2上の各巻取カラー3に対応するように伸長した中空部13と、カラー本体6毎に半径方向に形成した多数の孔14とを有する。摩擦部材11は、棒状に形成して孔14に挿入してあり、押付機構12は、圧縮空気を内部に受けて弾力的に膨張収縮する、中空部13に挿入したチューブ15と、摩擦部材11の下部に設けた、チューブ15の外周面に当接するフランジ部16とからなる。
チューブ15は、左側の端部に圧縮空気の受入孔15aを有しており、チューブ15の右側の端部は閉塞している。受入孔15aは、中心支持軸2の左側の端部に設けた、図示しない圧縮空気の導通路から、中心支持軸2の左端に設けた、図1に示す回転継手17に通じているので、チューブ15には、中心支持軸2の回転中にも圧縮空気を供給することができる。
図2に示すように隣り合う巻取カラー3の相互間隔が狭くてもフランジ部16が干渉し合わないようにするために、隣り合う巻取カラー3の摩擦部材11は、図3に示すように互いに中心支持軸2の回転角度において90度隔てて配置してある。
軸受5は、カラー本体6に固着した合成樹脂製の1個の円筒状の滑り軸受であり、摩擦部材11は金属でできている。金属製の摩擦部材11は機械的強度が大きく、棒状の摩擦部材11の外径を小さくすることができるため、巻取カラー3の相互間隔を小さくするのに有利である。フランジ部16はチューブ15に対する受圧面積が大きいので、チューブ15の膨張力が小さくても大きい押し上げ力で摩擦部材11を押し上げることができ、摩擦部材11の上端を軸受5の内周面を比較的大きい力で押圧することが可能になる。
図4に示すように、リテーナ付勢機構10は、カラー本体6の外周面に円周方向に形成した溝18と、この溝18に収容した弾力的に伸縮する伸縮部材19と、伸縮部材19の一端に係合する、カラー本体6に設けたピン20と、伸縮部材19の他の一端に係合する、リテーナ9に設けたピン21とからなる。この実施例では、ピン20及びピン21は夫々スプリングピンであり、伸縮部材19は引っ張りコイルバネである。この伸縮部材19は、その一端にフック部19a、他の一端にフック部19bを有し、フック部19a、19bはピン20、ピン21に掛けてある。なお、伸縮部材19は、引っ張りコイルバネに限らず、圧縮コイルバネやゴム等であってもよい。
図5は巻芯Cを装着してしない状態の巻取カラー3を示しており、図6は、図5の矢印A1の方向に見た巻取カラー3を示している。なお図4及び図5において底面傾斜溝7を実線で示した部分は、図2におけるA−A矢視断面を示している。
上述のように構成されている巻取カラー3では、その外周に巻芯Cを装着していないとき、リテーナ9は、引っ張りコイルバネ19により引っ張られ、カラー本体6に対して転動体8が底面傾斜溝7の深部から浅部に移動する方向に回転し、それによって図5に示すように転動体8が底面傾斜溝7の浅部に配置され、底面傾斜溝7からカラー本体6からの半径方向に大きく突出する。
巻芯Cを巻取カラー6の外周に装着するには、リテーナ9をカラー本体6に対し、伸縮部材19の収縮力による回転力に抗して回転させて、転動体8を底面傾斜溝7の深部に移動させることで、図4に示すように転動体8の突出量を零又は極僅かにし、この状態で巻取カラー3の外周に巻芯Cを被せる。巻取カラー3の外周に巻芯Cを被せて、伸縮部材19の回転力に抗する回転力を無くすると、リテーナ9はカラー本体6に対し、伸縮部材19の収縮力によって、転動体8が底面傾斜溝7の浅部に戻る方向に回転し、図3に示すように転動体8が底面傾斜溝7の浅部へ移動して巻芯Cの内周面を押圧する。それによって巻芯Cはカラー本体6上に拘束される。この実施例の場合、転動体8がコロであり、巻芯Cの内周面に中心軸線と平行に線接触することができるので、転動体8に内周面を押圧された巻芯Cは、その中心軸線が、カラー本体6の中心軸線、延いてはフリクション巻軸1の中心軸線に同心になるように比較的安定性良く保持される。
(帯状シート巻取装置)
図1において、帯状シート巻取装置は、フリクション巻軸1の外周に複数の巻芯Cを装着し、中心支持軸2を巻取モータ24により所要の巻取速度で回転駆動すると共に、中心支持軸2から巻取カラー3へ伝達される回転力が所要の巻取トルクとなるように、フリクション巻軸1に備えた回転力伝達機構4を操作しながら、複数の巻芯Cのまわりに複数の帯状シートSを一斉に巻取る。
フリクション巻軸1は、帯状シート巻取時に支持体25、26間に両端支持される。左側の支持体25の先端部には軸受部27が設けてあり、この軸受部27に中心支持軸2の左端部が装着してある。軸受部27は中心支持軸2を回転自在に保持している。右側の支持体26の先端部には、帯状シート巻取時に中心支持軸2の右端部を支持するための円錐台状の押しコップ28と、押しコップ28を回転自在に保持する押しコップ保持部29と、押しコップ28を中心支持軸2に向けて中心軸線方向に進出後退させるための押しコップ進退機構30が設けてある。右側の支持体26の基部は軸体31の右端部に回動可能に装着してあり、右側の支持体26は、図示しないアクチュエータに駆動されて軸体31の中心軸線を中心に傾動し、押しコップ28が中心支持軸2と同心になる支持姿勢と、中心支持軸2から退避する退避姿勢をとることができ、帯状シート巻取時には支持姿勢をとり、巻芯着脱時つまりフリクション巻軸1に巻芯Cを装着するとき並びにフリクション巻軸1から巻取ロールRを抜き取るときには、押しコップ28が中心支持軸2の右端から後退した後、退避姿勢をとるようになっている。そして右側の支持体26が退避姿勢をとったとき、中心支持軸2は左側の支持体25の先端部に片持ち支持された状態になる。
支持体25の外側には中心支持軸2に巻取モータ24の動力を伝達するためのベルト伝動装置32が設けてあり、巻取モータ24は、その起動停止、回転速度及び回転方向を制御するためのドライバ34を備えている。
中心支持軸2の左端には回転継手33が装着してあり、回転継手33には電空変換器35から圧縮空気が供給される。電空変換器35は、中心支持軸2から巻取カラー3に所要の回転力が伝達されるよう回転力伝達機構4を操作する操作部であり、出力すべき圧力の指令を受け、圧縮空気の供給源から供給された圧縮空気の圧力を、指令に応じた圧力に変えて出力することができる。電空変換器35から出力される圧縮空気の圧力は、回転力伝達機構4を操作する操作量である。回転継手33に供給された圧縮空気は、図2に示す受入孔15aで通じて、回転力伝達機構4を構成している押付機構12のチューブ15に供給され、チューブ15を膨張させ、摩擦部材11に軸受5の内周面への押付力を生じさせる。
この帯状シート巻取装置は、帯状シート巻取時に、中心支持軸2から巻取カラー3へ伝達される回転力が所要巻取トルクとなるよう回転力伝達機構4を操作する公知の巻取張力制御部36と、巻取中の帯状シートが弛まず、かつ中心支持軸2と巻取カラー3との間に適度のスリップが生じるように、帯状シートの供給速度に応じて巻取モータ24の回転速度を制御する公知の巻取速度制御部37とを備えている。
巻取張力制御部36は、巻取張力と巻取量との関係を設定する設定部36aをもち、巻取量検出部38からの巻取量検出値を受け入れて、設定部36aに設定された巻取張力と巻取量(巻取径)との関係に基づき時々刻々所要巻取トルクを演算し、その所要巻取トルクに基づき、その所要巻取トルクを得るために必要な、押付機構12のチューブ15に供給すべき圧縮空気の圧力を演算し、その押付機構12に供給すべき圧縮空気の圧力を電空変換器35に指令することができる。所要巻取トルクを得るために回転力伝達機構4の押付機構12に供給すべき圧縮空気の圧力と、所要巻取トルクとの関係は、公知であるため詳細な説明は省略する。
巻取速度制御部37は、帯状シート供給速度検出部又は設定部37aからの帯状シートの供給速度の検出値又は設定値と、巻取量検出部38からの巻取量検出値とを受け入れて、巻取中の巻取ロールRの周速度が、スリップがなければ帯状シートSの供給速度より僅かに大になる回転数で中心支持軸2を回転駆動するように巻取モータ24の回転速度をドライバ34に指令する。
ドライバ34は、巻取モータ24への動力の供給を断続するために用いる端子39、40と、巻取モータ24の回転方向を変えるために用いる端子41、42及び43を有している。そして端子39と端子40とに導線を接続して導通させると、ドライバ34は巻取モータ24に電力を供給し、その巻取モータ24は起動し、端子39と端子40との導通を断つと、ドライバ34は巻取モータ24への電力の供給を断ち、その巻取モータ24は回転を停止するようになっており、また端子41と端子42とに導線を接続して導通させているとき、巻取モータ24は正転し、端子41と端子43に導線を接続して導通させているとき、巻取モータ24は逆転するようになっている。巻取モータ24が逆転すると、中心支持軸2は、図3において矢印A2が指し示す方向に回転する。
図1に示す帯状シート巻取装置では、フリクション巻軸1への巻芯Cの着脱を比較的円滑に短時間で行えるようにするために、巻取モータ24は、巻芯着脱時に中心支持軸2を、帯状シート巻取時の回転方向と逆の方向に、予め設定された逆転速度で回転駆動し、回転力伝達機構4は、巻芯着脱時に中心支持軸2から巻取カラー3に、予め設定された逆転トルクつまり巻芯着脱時に必要な回転力を伝達することができるようにしてある。中心支持軸2から巻取カラー3に、予め設定された逆転トルクを伝達するには、回転力伝達機構4のチューブ15に圧縮空気を供給する電空変換器35は、前述の所要巻取トルクを得る場合と同様に逆転トルクに応じた圧力の圧縮空気を出力する。
巻芯着脱時に巻取モータ24が中心支持軸2を、所要速度で回転駆動することができるようにするために、帯状シート巻取装置には、巻芯着脱時に必要な中心支持軸2の回転速度、つまり必要な逆転速度を設定する逆転速度設定部44が備えてある。この逆転速度設定部44は、例えば、設定値を多様に変更することができる設定つまみのような設定操作部(図示せず)を有しており、この設定つまみを操作して多様な大きさの逆転速度を設定することができ、設定した逆転速度に基づき、その逆転速度を得るための巻取モータ24の回転速度を算出してドライバ34に指令する。
また、巻芯着脱時に、中心支持軸2から巻取カラー3へ伝達される回転力が、予め設定された逆転トルクになるように、電空変換器35が、回転力伝達機構4のチューブ15に必要な圧力の圧縮空気を供給することができようにするために、帯状シート巻取装置には、巻芯着脱時に必要な逆転トルク、中心支持軸2から巻取カラー3へ伝達されるべき逆転トルクを設定する逆転トルク設定部45が備えてある。この逆転トルク設定部45は、例えば、設定値を多様に変更することができる設定つまみのような設定操作部(図示せず)を有しており、この設定操作部を操作して多様な大きさの逆転トルクを設定することができ、設定した逆転トルクに基づき、その逆転トルクを得るために必要な、チューブ15に供給すべき圧縮空気の圧力を算出し、その算出した圧縮空気の圧力を出力するよう電空変換器35に指令することができる。巻取速度制御部35及び巻取張力制御部36は巻取速度、巻取トルクを指令するために電気的な信号を出力するので、逆転速度設定部44及び逆転トルク設定部45も逆転速度、逆転トルクを指令するために電気的な信号を出力してする。
更に、巻芯着脱時に、フリクション巻軸1が逆転速度設定部44に設定された逆転速度で逆転し、中心支持軸2から巻取カラー3に伝達される回転力が逆転トルク設定部45に設定された逆転トルクになるように、ドライバ34への回転速度の指令を、巻取速度制御部37から逆転速度設定部44の指令に切替えると共に、ドライバ34への回転方向の指令を正転から逆転に切替え、かつ電空変換器35への圧縮空気の所要圧力の指令を巻取張力制御部36から逆転トルク設定部45の指令に切替える切替手段46を備えている。
切替手段46は、この実施例では巻芯着脱時に作動する継電器R1であり、継電器R1のA接点r1aを介して逆転速度設定部44とドライバ34とを、並びに逆転トルク設定部45と電空変換器35とを、及びドライバ34の端子41と端子43とを夫々つないでおり、継電器R1のB接点r1bを介して、巻取速度制御部37とドライバ34とを、並びに巻取張力制御部36と電空変換器35とを、及びドライバ34の端子41と端子42とを夫々つないでいる。そして切替手段46のうち、ドライバ34の端子41と端子43とつなぐ継電器R1のA接点r1a及びドライバ34の端子41と端子42とをつなぐ継電器R1のB接点r1bは、巻取モータ24の回転方向の切替えを指令する回転方向切替部46aとなっている。
継電器R1が作動しているときA接点r1aは閉じ、B接点r1bは開き、継電器R1の作動が停止しているときしているときA接点r1aは開き、B接点r1bは閉じるようになっている。継電器R1は、押釦スイッチ47を押すと作動し、押釦スイッチ48を押すと作動を停止する。
ドライバ34の、巻取モータ24の起動用の端子39及び40は、継電器R1のA接点r1aと、帯状シート巻取時に作動する継電器R2のA接点r2aとの並列回路を介してつないでおり、継電器R1又は継電器R2のいずれかが作動しているとき、巻取モータが起動するようになっている。
図1に示す帯状シート巻取装置においてフリクション巻軸1に巻芯Cを装着するには、先ず、巻取停止中に、支持体26をフリクション巻軸1から待避させてフリクション巻軸1の右端を自由端にする。
次に、押釦スイッチ47を押して継電器R1を作動させることで、巻取モータ24を逆転方向に起動し、フリクション巻軸1の中心支持軸2を、逆転速度設定部44で設定した逆転速度で逆転させ、中心支持軸2からカラー本体6に、逆転トルク設定部45で設定した逆転トルクを生じさせる。
カラー本体6に伝達される逆転トルクが、巻取カラー3の引っ張りコイルバネ19の収縮力によるリテーナ9の回転力より小さいと、リテーナ9がカラー本体6に対して回転せず、転動体8が底面傾斜溝7の深部に移動しないので、逆転トルク設定部45には、引っ張りコイルバネ19の収縮力によるリテーナ9の回転力より十分大きい逆転トルクを設定しておくことが望ましい。
次に、巻芯Cを手又は治具で回転しないように保持して、フリクション巻軸1の自由端になっている右端部の外周に嵌め、その巻芯Cに左方への推力を与えて左側の支持体25の方へスライドさせる。このとき右端の巻取カラー3の転動体8は底面傾斜溝7の浅部に位置しており、カラー本体6の外周面から大きく突出しているので、スライドした巻芯Cの左側の端面が、コロである転動体8の右側の端面に当たり、巻芯Cのスライドが妨げられる。しかし、転動体8及びリテーナ9は、巻芯Cとの摩擦力により巻芯Cに拘束されると共に、カラー本体6には、回転力伝達機構4により中心支持軸2から十分な逆転トルクが伝達されるので、カラー本体6は中心支持軸2と共に逆転する。つまりカラー本体6は、図3において矢印A2が指し示す方向に回転する。そのためカラー本体6はリテーナ9に対して転動体8が底面傾斜溝7の深部に移動する方向に回転することになり、その結果、転動体8が底面傾斜溝7の深部に移動して、その転動体8のカラー本体6の外周面からの突出量は僅かになるか又は零になる。そして、この状態で巻芯Cに左方への推力を与えると、巻芯Cはスライドして右端の巻取カラー3上の各転動体8に被さり、右端の巻取カラー3に装着することができる。そして巻芯Cに更に左方への推力を付与すると、その巻芯Cは右端の巻取カラー3を通過して、右から2番目の巻取カラー3の転動体8の右側端面まで円滑にスライドする。
右から2番目以降の巻取カラー3についても、右端の巻取カラー3のときと同様の方法により巻芯Cを巻取カラー3の転動体8に被せることができ、当該巻取カラー3を通過させることができ、フリクション巻軸1の所要位置に装着することができる。また2番目以降の巻芯Cについても、その巻芯Cを最初の巻芯Cと同様の方法によりフリクション巻軸1の所要位置に装着することができる。
フリクション巻軸1に全ての巻芯Cを装着して所要位置に配置し終わると、後退している押しコップ28とフリクション巻軸1とが同心になる位置まで支持体26を回動させて固定した後、押しコップ進退機構31によって押しコップ28を中心支持軸2へ向けて進出させ、押しコップ28を中心支持軸2の右端部の穴に嵌める。
図1に示す帯状シート巻取装置においてフリクション巻軸1から巻取ロールRを抜取るには、巻取ロールRをスライドさせるとき、巻取モータ24を逆転方向に起動し、フリクション巻軸1の中心支持軸2を、逆転速度設定部44で設定した逆転速度で逆転させ、中心支持軸2からカラー本体6に、逆転トルク設定部45で設定した逆転トルクを生じさせること以外、従来の帯状シート巻取装置においてフリクション巻軸から巻取ロールRを抜取る場合と同様の操作を同様の手順で行えばよい。即ち、フリクション巻軸1を片持ち支持状態にし、カラー本体6に逆転トルクを生じさせながら、図1では左端の巻取ロールRの巻芯Cの左側端面に、図示しない係合体を係合させて、その係合体をフリクション巻軸1に沿いに右側へスライドさせる。或いは各巻取ロールRの巻芯Cの左側端面に夫々、巻取ロールR毎の図示しない係合体を係合させて、その係合体を一斉にフリクション巻軸1に沿い右側へスライドさせる。
図7は、本発明の他の実施例に係る帯状シート巻取装置を示し、この帯状シート巻取装置では、圧縮空気を押しコップ28を通じてフリクション巻軸1の自由端に供給するようになっている点が、図1に示す帯状シート巻取装置と相違している。巻取モータ24は中心支持軸2の左端に配置してあり、その巻取モータ24の出力軸と中心支持軸2の軸受部27からの突出部分とが軸継手50で連結してある。回転継手33は押しコップ28の軸部28aの右端に装着してあり、圧縮空気は回転継手33から、押しコップ28の軸部28aに形成した導通路28bを通じて中心支持軸2の右端部に供給することができるようになっている。チューブ15は、その左端部が閉塞しており、その右端部に圧縮空気を受けるようになっている。
帯状シート巻取時には、押しコップ28が中心支持軸2の右端部の穴に嵌まっているので、中心支持軸2の右端部に圧縮空気を供給することができるが、押しコップ28を中心支持軸2から後退させると、中心支持軸2内のチューブ15に圧縮空気を供給することができない。そこで、図8に示すように、中心支持軸2の右端部に逆止弁51を設け、押しコップ28を後退させる前に、逆転トルク設定部45で設定した逆転トルクを生じさせるための圧縮空気をチューブ15に供給しておき、押しコップ28が中心支持軸2の右端部から後退すると、逆止弁51が作動して圧縮空気をチューブ15内に密封することができるようにしている。そのため、巻芯着脱時には、チューブ15内に密封された圧縮空気によってチューブ15が膨張して摩擦部材11をカラー本体6の軸受5の内周面に押付けることができるので、中心支持軸2から巻取カラー3へ所要の逆転トルクを伝達することができる。
中心支持軸2の右端部から押しコップ28を後退させたとき、圧縮空気が、押しコップ28に設けた導通路28bの先端から漏れないようにするために、押しコップ28の先端部には逆止弁52が設けてある。
巻芯装着前に、逆転トルク設定部45で設定した逆転トルクを生じさせるための圧縮空気をチューブ15に供給することができるようにするために、巻取張力制御部36と電空変換器35とを継電器R2のA接点r2aを介してつないでおり、逆転トルク設定部45と電空変換器35とを継電器R2のB接点r2bを介してつないでいる。この場合、巻取停止により継電器R2の作動が停止するので、巻取停止から巻芯装着開始までの間は、逆転トルク設定部45は、設定された逆転トルクを得るために必要な圧縮空気を、B接点r2を通じて電空変換器35に指令することができる。
巻取速度制御部37の指令と逆転速度設定部44の指令と切替えると同時に、巻取モータ24の回転方向を切替える継電器R1は、フットスイッチ53を足で踏むことにより作動するようになっており、巻芯着脱時に作業者は両手を使用することができるので便利である。なお図1に示す継電器R1も図7に示す継電器R1と同様にフットスイッチで作動するようにすることができる。
押しコップ28を中心支持軸2の右端に形成した穴に嵌めると、押しコップ28側の、圧縮コイルバネ51aで付勢されている逆止弁51の頭部が、中心支持軸2側の、圧縮コイルバネ52aで付勢されている逆止弁52の頭部を押して、導通路28bの圧縮空気が中心支持軸2側の、チューブ15に通じる受入孔15aに供給される。
図9は、図1に示す帯状シート巻取装置の回転力伝達機構及び駆動モータを制御する制御回路の別の態様を示し、図9において逆転トルク設定部45は、圧縮空気源から供給される圧縮空気を所要圧力に調整して出力することができる圧力調整弁からなる。この逆転トルク設定部45から出力される、逆転トルクに応じた圧力の圧縮空気と、電空変換器35から出力される、巻取トルクの指令に応じた所要圧力の圧縮空気とは、電磁切替弁54により切り替えて回転力伝達機構4のチューブ15へ供給することができる。電磁切替弁54のソレノイド54aは継電器R1が作動したとき励磁され、電磁切替弁54は、ソレノイド54aが励磁されると、逆転トルク設定部45から出力される圧縮空気が回転継手33へ供給することができ、ソレノイド54aが励磁されていないとき、電空変換器35から出力される圧縮空気を回転継手33へ供給することができるようになっている。図9に示す逆転トルク設定部の場合、出力される圧縮空気の圧力は、圧力調整弁が有するノブを回して変えることができ、圧縮空気の圧力に応じた逆転トルクを多様に設定することができる。