以下、把持装置を具体化した一実施形態を図1〜図11を参照して説明する。本明細書において、把持装置の把持爪が開閉する方向を幅方向X、把持装置の幅方向Xと垂直な方向を厚さ方向Y、把持爪が延びる方向を高さ方向Zとしてそれぞれ説明する。
図1に示すように、把持装置10は、一対の把持爪11を幅方向Xに移動させることで把持対象物を把持可能とする装置である。特に、本実施形態において、把持装置10は、把持対象物の把持を解除するときに一対の把持爪11の開度を、操作部としての操作環63の操作に応じて調整可能な調整機構を備える。
図2に示すように、把持装置10は、把持対象物W1を把持する一対の把持爪11を開閉させる流体圧シリンダ12を備えている。流体圧シリンダ12は、有底筒状のシリンダチューブ14を有している。シリンダチューブ14は、底壁14aと、底壁14aの外周部からシリンダチューブ14の軸方向に延びる円筒状の外周壁14bとを有している。シリンダチューブ14の開口は、ヘッドカバー15によって閉塞されている。そして、シリンダチューブ14及びヘッドカバー15によってシリンダチューブ14内にシリンダ室16が区画されている。
シリンダチューブ14の外周壁14bにおけるヘッドカバー15寄りの部位には、シリンダ室16に開口する第1流体給排ポート17aが形成されている。シリンダチューブ14の外周壁14bにおける底壁14a寄りの部位には、シリンダ室16に開口する第2流体給排ポート17bが形成されている。
シリンダ室16には、シリンダ室16内をシリンダチューブ14の軸方向に往復動可能な円環状のピストン18が収容されている。ピストン18は、シリンダ室16を、ヘッドカバー15側の第1圧力作用室16aと、底壁14a側の第2圧力作用室16bとに区画している。第1圧力作用室16aは第1流体給排ポート17aに連通するとともに、第2圧力作用室16bは第2流体給排ポート17bに連通している。ピストン18の外周面には、第1圧力作用室16aと第2圧力作用室16bとの間をシールするゴム製のピストンパッキン18sと、ピストン位置検出用のマグネット19とが装着されている。
ピストン18には、ピストンロッド20が一体的に設けられている。ピストンロッド20は、ピストン18における底壁14a側から突出する第1ロッド部20aと、ピストン18におけるヘッドカバー15側から突出する第2ロッド部20bとを有している。第1ロッド部20aと第2ロッド部20bとの外径は同じになっている。ピストン18は、円環状のクッションゴム18gを有している。
シリンダチューブ14における開口側の端面には、筒状のケーシング21が設けられている。ケーシング21は、ヘッドカバー15の外周部に嵌め込まれている。ケーシング21におけるシリンダチューブ14とは反対側の開口は、蓋部材60によって閉塞されている。
第1ロッド部20aは、底壁14aを貫通してシリンダチューブ14の外部に突出している。第1ロッド部20aは、シリンダチューブ14に対して出没可能になっている。第2ロッド部20bは、ヘッドカバー15を貫通してケーシング21の内部を貫通し、ケーシング21の外部に突出している。よって、第2ロッド部20bは、ケーシング21の内部を貫通しており、ケーシング21に対して出没可能になっている。
第1ロッド部20aの突出端部には、第1ロッド部20aの軸方向に対して直交する方向に貫通するリンクピン51が設けられている。よって、リンクピン51の両端部は、第1ロッド部20aの外周面に対して、第1ロッド部20aの周方向で互いに180度離れた位置にそれぞれ突出している。リンクピン51の両端部には、平面視L字状のリンク部52の一端がそれぞれ係止されている。
シリンダチューブ14におけるケーシング21とは反対側の端面には、支持ブロック53が取り付けられている。各リンク部52は、支軸54を介して支持ブロック53に対して回動可能にそれぞれ支持されている。また、支持ブロック53は、第1ロッド部20aの軸方向に対して直交する方向に延びるガイドレール55を有している。ガイドレール55には、各把持爪11の基端部11aが係合されている。各把持爪11の基端部11aには、支軸56が設けられている。各リンク部52の他端は、各支軸56を介して各把持爪11に連結されている。このように、第1ロッド部20aの軸方向への動力は、リンクピン51を介して各リンク部52の一端に伝達され、各リンク部52は、支軸54を中心として両リンク部52の他端が互いに接離する方向へ揺動可能になっている。
ピストン18は、第1圧力作用室16aの流体(例えばエア)の圧力を受圧するとともに、第2圧力作用室16bの流体の圧力を受圧する。第1ロッド部20aと第2ロッド部20bとの外径は同じになっているため、ピストン18における第1圧力作用室16a側の受圧面積と、ピストン18における第2圧力作用室16b側の受圧面積とは同じになっている。
第1流体給排ポート17aと第2流体給排ポート17bとには流体が供給されている。シリンダ室16の第1圧力作用室16a側のピストン18と第2圧力作用室16b側のピストン18との受圧面積は等しいため、流体による力は釣り合い、ピストン18の動作のための力が発生していない。ここで、第2流体給排ポート17bから流体を排出する。このときの排出速度に合わせて、ピストン18が、第1圧力作用室16aの流体の圧力を受圧して、ピストン18が底壁14aに向けて移動し始める。すると、第2圧力作用室16bの流体が第2流体給排ポート17bを介して外部へ排出され、ピストン18が底壁14a側のストロークエンドに到達するまで移動する。これにより、ピストンロッド20の第1ロッド部20aがシリンダチューブ14に対して突出する方向へ移動する。ピストン18が底壁14a側のストロークエンドに到達すると、クッションゴム18gが底壁14aに当接する。これにより、クッションゴム18gが押し潰されてピストン18からの衝撃が吸収され、ピストン18が底壁14a側のストロークエンドで緩衝的に停止する。ピストン18の底壁14a側のストロークエンドは、ピストンロッド20の出没方向の一方のストロークエンドに相当する。
ピストンロッド20の第1ロッド部20aがシリンダチューブ14に対して突出する方向へ移動すると、一対のリンク部52は、リンクピン51を介して伝達された動力により、支軸54を中心として一対のリンク部52の他端が互いに離間する方向へ揺動する。これにより、一対の把持爪11の基端部11aがガイドレール55に沿って互いに離間する方向へ移動し、一対の把持爪11が互いに離間する方向へ移動して一対の把持爪11の開度が大きくなっていく。そして、ピストン18が底壁14a側のストロークエンドに到達すると、一対の把持爪11の開度が最大になる。
図3に示すように、第2流体給排ポート17bから第2圧力作用室16bに流体が供給されると、第1流体給排ポート17aから流体を排出する。このときの排出速度に合わせて、ピストン18のクッションゴム18gの端面が、第2圧力作用室16bの流体の圧力を受圧して、ピストン18がヘッドカバー15に向けて移動し始める。すると、第1圧力作用室16aの流体が第1流体給排ポート17aを介して外部へ排出され、ピストン18がヘッドカバー15に向けて移動する。これにより、ピストンロッド20の第1ロッド部20aがシリンダチューブ14に対して没入する方向へ移動する。
ピストンロッド20の第1ロッド部20aがシリンダチューブ14に対して没入する方向へ移動すると、一対のリンク部52は、リンクピン51を介して伝達された動力により、支軸54を中心として一対のリンク部52の他端が互いに接近する方向へ揺動する。これにより、一対の把持爪11の基端部11aがガイドレール55に沿って互いに接近する方向へ移動し、一対の把持爪11が互いに接近する方向へ移動して一対の把持爪11の開度が小さくなっていき、一対の把持爪11が把持対象物W1を把持する。一対の把持爪11が把持対象物W1を把持しているときには、第2流体給排ポート17bのみの流体の供給が維持される。よって、ピストンロッド20は、シリンダチューブ14に対して出没して一対の把持爪11を開閉させる。
図4に示すように、ケーシング21内には斜板23が設けられている。斜板23は、ピストンロッド20が貫通する貫通孔23hを有している。斜板23は、ピストンロッド20の軸方向に対して傾斜して、貫通孔23hを形成する斜板23の内周面とピストンロッド20の外周面とが圧接することにより、ピストンロッド20にロックすることができる。
ケーシング21内には、ピストンロッド20にロックした斜板23と係止してピストンロッド20と一体的にピストンロッド20の出没方向に移動可能な浮動ピストン24が設けられている。ピストンロッド20は、浮動ピストン24を貫通している。浮動ピストン24は、斜板23を取り囲むように配置される円筒状のピストン部25と、ピストン部25の軸方向一端側の開口を閉塞する第1閉塞部26と、ピストン部25の軸方向他端側の開口を閉塞する第2閉塞部27とを有している。第1閉塞部26は、円環状の第1抜け止め部材28aによって、ピストン部25からの抜け止めがなされている。第2閉塞部27は、円環状の第2抜け止め部材28bによって、ピストン部25からの抜け止めがなされている。
斜板23は、ピストン部25の内側であって、且つ第1閉塞部26と第2閉塞部27との間に配置されており、浮動ピストン24に内蔵されている。浮動ピストン24の内部において、斜板23と第1閉塞部26との間には、斜板23をピストンロッド20の軸方向に対して傾斜させる方向に斜板23を付勢する斜板ばね28が収容される。
第2抜け止め部材28bと蓋部材60との間には、浮動ピストン24をヘッドカバー15に向けて付勢する付勢ばね30が介在されている。よって、付勢ばね30は、浮動ピストン24をピストンロッド20の出没方向の一方に向けて付勢する。さらに、ケーシング21内において、ヘッドカバー15と浮動ピストン24との間には、付勢ばね30の付勢力に抗して浮動ピストン24を蓋部材60に向けて付勢するための流体が供給される浮動ピストン室31が設けられている。よって、浮動ピストン室31に供給される流体は、付勢ばね30の付勢力に抗して浮動ピストン24をピストンロッド20の出没方向の他方に向けて付勢する。
図3に示すように、ケーシング21内において、ピストン部25の内側であって、且つ斜板23と第2閉塞部27との間には、斜板23を、ピストンロッド20の軸方向に対して傾斜していない状態に位置決めするための流体が供給されるロック解除圧力室32が設けられている。斜板23が、ピストンロッド20の軸方向に対して傾斜していない状態では、斜板23の内周面とピストンロッド20の外周面とが圧接しておらず、斜板23におけるピストンロッド20に対するロックが解除された状態になっている。よって、ロック解除圧力室32に供給される流体は、斜板23におけるピストンロッド20に対するロックが解除された状態に斜板23を位置決めする。
また、ケーシング21は、給排ポート33を有している。給排ポート33には、図示しない切換弁が接続されており、切換弁によって、外部から給排ポート33への流体の供給と、給排ポート33から外部への流体の排出とが切換可能になっている。
ピストン部25には、給排ポート33とロック解除圧力室32とを連通させる連通孔25aが形成されている。そして、切換弁の切り換えによって、外部から給排ポート33への流体の供給が許容されると、給排ポート33から連通孔25aを介してロック解除圧力室32に流体が供給される一方で、給排ポート33から外部への流体の排出が許容されると、ロック解除圧力室32の流体が、連通孔25a及び給排ポート33を介して外部へ排出される。
ピストン部25の外周面におけるヘッドカバー15寄り、及びピストン部25の外周面における蓋部材60寄りには、ウェアリング34,35が装着されている。ウェアリング34,35の外周面は、ピストン部25の外周面よりもピストン部25の径方向外側に位置している。そして、ウェアリング34,35の外周面がケーシング21の内周面に摺接することにより、浮動ピストン24が偏心してしまうことが抑制されている。
給排ポート33と浮動ピストン室31とは、ピストン部25の外周面とケーシング21の内周面との間、及びウェアリング34の外周面とケーシング21の内周面との間を介して連通している。ウェアリング34の外周面とケーシング21の内周面との間のクリアランスは、ピストン部25の外周面とケーシング21の内周面との間のクリアランスよりも小さくなっている。よって、ウェアリング34の外周面とケーシング21の内周面との間は、給排ポート33と浮動ピストン室31とを連通する絞り部として機能している。また、シリンダチューブ14及びケーシング21の内部には、シール部材36〜42が装着されており、各空間の気密性が保たれている。
図2及び図3に示すように、給排ポート33から連通孔25aを介してロック解除圧力室32に流体が供給されているときには、斜板ばね28の付勢力に抗して、斜板23が押圧されて、ピストンロッド20の軸方向に対して傾斜していない状態に位置決めされる。
一方、図4に示すように、ロック解除圧力室32の流体が連通孔25a及び給排ポート33を介して外部へ排出されているときには、斜板ばね28の付勢力によって、斜板23がピストンロッド20の軸方向に対して傾動し、斜板23の内周面とピストンロッド20の外周面とが圧接し、斜板23がピストンロッド20にロックする。
図5に示すように、第1圧力作用室16a及び第2圧力作用室16bに流体がそれぞれ供給されて、ピストン18におけるシリンダ室16での移動が停止し、バランス状態となっている場合、浮動ピストン室31の流体が外部へ排出されると、付勢ばね30の付勢力によって、浮動ピストン24がヘッドカバー15に向けて付勢される。そして、浮動ピストン24は、ピストンロッド20と一体的にヘッドカバー15に向けて移動し、ヘッドカバー15側のストロークエンドに到達するが、シリンダ室16において、ピストン18は、底壁14a側のストロークエンドに到達していない。このように、図3に示すように、一対の把持爪11が把持対象物W1を把持した状態から、図5に示すように、一対の把持爪11が浮動ピストン24の動作ストローク分、僅かに開いた状態となる。
図2及び図6に示すように、蓋部材60は、浮動ピストン室31に流体が供給される場合におけるピストンロッド20の軸方向(出没方向)に対する浮動ピストン24の位置を操作に応じて調整することによって、ピストンロッド20の軸方向に対する浮動ピストン24のストローク(移動量)を調整可能な調整機構を備える。蓋部材60は、ケーシング21側に調整ボディ61を備えるとともに、調整ボディ61のケーシング21とは反対側にエンドカバー62を備える。
調整ボディ61は、ピストンロッド20の軸方向に延びる円筒状の第1外周壁61aと、第1外周壁61aよりもエンドカバー62側に、ピストンロッド20の軸方向に延びる円筒状の第2外周壁61bとを備える。第2外周壁61bは、第1外周壁61aよりも内径が大きく、第1外周壁61aと第2外周壁61bとの間には、段差部61cが設けられる。調整ボディ61は、第1外周壁61aと第2外周壁61bとにより形成された収容部61dを備え、その収容部61dには、円環状の操作環63と、円環状の調整環64と、有底筒状のすべり軸受65とが収容される。調整ボディ61には、ピストンロッド20の軸方向に貫通するねじ挿入孔61eを備える。
図6及び図8に示すように、調整ボディ61は、厚さ方向Yに面する前後の両面において、エンドカバー62側に、矩形状の切欠き61fを備える。調整ボディ61とエンドカバー62とが固定されることにより、切欠き61fは、収容部61dに収容された操作環63の外周面63aが視認可能であって、操作環63の回動操作を可能とする複数の窓部として機能する。
図2及び図6に示すように、エンドカバー62は、調整ボディ61側の当接面62aに、円穴状の軸受収容部62bを備え、その軸受収容部62bには、すべり軸受65のエンドカバー62側の端部が収容される。エンドカバー62は、軸受収容部62bの底面にねじ挿入孔62cを備える。ねじ挿入孔62cは、固定ねじ70が挿入された場合に、エンドカバー62から突出しないように、固定ねじ70が収容可能な形状である。エンドカバー62は、有底円筒状のプランジャ収容部62dを当接面62aに備え、プランジャ収容部62dには、ボールプランジャ66が収容される。エンドカバー62は、ピストンロッド20の中心軸を中心とした円弧状のガイド溝62eを当接面62aに備え、ガイド溝62eには、ピストンロッド20の軸方向に延びる円筒丸棒状のスプリングピン67の一方が挿入され、他方が操作環63の係止穴63e8に固定されている。エンドカバー62は、ピストンロッド20の軸方向に貫通するねじ挿入孔62fを備える。ケーシング21にも、ピストンロッド20の軸方向に貫通するねじ挿入孔が形成されており、シリンダチューブ14には、ケーシング21側に雌ねじ孔が形成されている。そして、固定ねじ69が、エンドカバー62のねじ挿入孔62f、調整ボディ61のねじ挿入孔61e及びケーシング21のねじ挿入孔に挿入された状態でシリンダチューブ14の雌ねじ孔に螺合されることにより、シリンダチューブ14、ケーシング21、調整ボディ61及びエンドカバー62が固定される。
操作環63は、内周面63bにねじ山が形成された送りねじナットである。操作環63は、その外周面63aが調整ボディ61の第2外周壁61bの内周面に当接し、かつ、ケーシング21側の一端面63cが調整ボディ61の段差部61cに当接し、かつ、エンドカバー62側の他端面63dがエンドカバー62の当接面62aに当接するように配設される。このように、操作環63は、調整ボディ61の段差部61cとエンドカバー62の当接面62aとに当接しており、ピストンロッド20の軸方向に移動することなく、ピストンロッド20の中心軸を中心として回動可能である。
図7(a)に示すように、操作環63は、その他端面63dに円穴状の複数の係止穴63eを備え、複数の係止穴63eとして、操作環63の外周に沿って180度の領域に均等な角度を空けて8個の係止穴63e1〜63e8が設けられており、各係止穴63eの角度が約25.7度となるが、これに限らない。
図7(a)及び図8に示すように、複数の係止穴63eは、操作環63が回動操作されると、所定角度毎に、複数の係止穴63e1〜63e7の何れかにボールプランジャ66のボール66aが係止されることにより、所定角度毎に操作環63の回動操作にクリック感を与えることができ、操作環63の操作性を高めることができる。このように、ボールプランジャ66と操作環63の複数の係止穴63e1〜63e7とが、操作環63の回動を所定角度毎に係止する回動係止機構として機能する。
係止穴63e8には、スプリングピン67の一端部が挿入可能であり、スプリングピン67の一端部が操作環63に挿入されることにより、操作環63の回動操作に応じて、スプリングピン67の他端部が、エンドカバー62のガイド溝62eに沿ってガイド溝62eの一端部と他端部との間で移動する。このように、スプリングピン67と、操作環63の係止穴63e8と、エンドカバー62のガイド溝62eとが、操作環63の回動量及び移動量を規制することにより浮動ピストン24の位置の調整量を規制する調整規制機構として機能する。操作環63の最大回動角度が約154.3度となるが、これに限らない。
図8に示すように、操作環63は、その外周面63aの一段凹んだ位置に、浮動ピストン24の調整量を示す目盛が施されており、調整ボディ61の切欠き61fから浮動ピストン24の調整量が視認可能となる。特に、操作環63の外周面63aにおいて、180度裏側に対応する位置にも同じ目盛が施されており、調整ボディ61の厚さ方向Yに面する前後の両面に形成された切欠き61fから同じ目盛が視認可能となる。このように、操作環63には、浮動ピストン24の位置の調整量が切欠き61fから視認可能なように複数箇所に表されている。
図2及び図6に示すように、調整環64は、その外周面64aのうち、エンドカバー62側にねじ山が形成された送りねじである。調整環64は、その外周面64aが、ケーシング21側で第1外周壁61aの内周面に当接し、エンドカバー62側で操作環63のねじ山と螺合する。
調整環64のねじ山及び操作環63のねじ山は、リード角が大きい多条ねじとして形成されており、調整環64は、操作環63の回動に応じた送り量が大きくなる。このため、操作環63の最大回動角度が約154.3度であっても、ピストンロッド20の軸方向に移動する調整環64の移動量を確保することができる。このように、調整環64は、操作環63の操作量に応じた浮動ピストン24の位置の調整量が大きくなる多条ねじを有するといえる。
図9に示すように、調整環64は、その内周面64bにおいて、エンドカバー62側からピストンロッド20の軸方向に延びるキー溝64cを備える。キー溝64cには、ピストンロッド20の軸方向に延びるキー68が挿入されており、調整環64は、操作環63の回動操作に応じて、回動することなく、キー溝64cに沿ってピストンロッド20の軸方向に移動する。
図2及び図6に示すように、調整環64は、ケーシング21側の一端面64dが浮動ピストン24の第2閉塞部27側に当接する。このため、調整環64は、蓋部材60からケーシング21側に突出しない状態において、操作環63の回動により、蓋部材60からケーシング21側に突出するようにピストンロッド20の軸方向に移動する。これにより、調整環64は、浮動ピストン24をピストンロッド20の軸方向に移動させることができ、ピストンロッド20の移動量を調整することができる。このように、操作環63と調整環64とが、浮動ピストン24のエンドカバー62側復帰動作位置を操作環63の操作に応じて調整する送りねじ機構として機能し、調整環64の一端面64dが、ピストンロッドの軸方向に対して蓋部材60側から浮動ピストン24と当接する当接部として機能する。
図2及び図6に示すように、すべり軸受65は、調整環64のすべり軸受となる。すべり軸受65は、ピストンロッド20を軸方向に挿入可能な筒状の挿入部65aを備え、その挿入部65aの底面には、ピストンロッド20の軸方向に延びる雌ねじ孔65bを備える。すべり軸受65は、その外周面65cが調整環64の内周面64bに当接し、かつ、ケーシング21側の一端面65dに付勢ばね30が配設された状態で、エンドカバー62側の端部が軸受収容部62bに収容される。すべり軸受65は、固定ねじ70がねじ挿入孔62cに挿入された状態で雌ねじ孔65bに螺合されることにより、エンドカバー62の軸受収容部62bに収容された状態で固定される。
図6及び図9に示すように、すべり軸受65は、その外周面65cに、エンドカバー62側からピストンロッド20の軸方向に延びるキー溝65fを備える。キー溝65fには、ピストンロッド20の軸方向に延びるキー68が挿入される。このように、エンドカバー62に固定されたすべり軸受65のキー溝65fと、操作環63と螺合する調整環64のキー溝64cとにキー68が挿入されており、操作環63の回動操作が行われても、調整環64が回動することはなく、キー溝64cに沿ってピストンロッド20の軸方向に移動することとなる。このように、キー68は、操作環63の回動に応じて、調整環64の回動を規制する一方で、調整環64のピストンロッド20の軸方向への移動に変換する。
図2及び図6に示すように、固定ねじ70は、エンドカバー62の外側からエンドカバー62のねじ挿入孔62cに挿入された状態で、すべり軸受65の雌ねじ孔65bに螺合されることにより、すべり軸受65をエンドカバー62に固定する。このように、操作環63、調整環64、すべり軸受65及び固定ねじ70が初期角度調整機構として機能する。
次に、本実施形態の作用について説明する。
蓋部材60の組立時において、操作環63の一端面63cから調整環64の一端面64dが突出する長さが最短となるように、操作環63のねじ山と調整環64のねじ山とが螺合されている。そして、ボールプランジャ66のボール66aが操作環63の係止穴63e1に係止され、調整ボディ61の切欠き61fから操作環63の目盛が初期値となるように操作環63、調整環64及びすべり軸受65が初期位置に配設される。続いて、固定ねじ70が、エンドカバー62のねじ挿入孔62cに挿入された状態で、すべり軸受65の雌ねじ孔65bに螺合される。つまり、操作環63、調整環64及びすべり軸受65が初期角度に調整可能であり、すべり軸受65が固定ねじ70によりエンドカバー62に固定される。これによって、調整ボディ61の切欠き61fから操作環63の目盛が初期値となり、調整環64が蓋部材60から突出しない状態で蓋部材60を組み立てることができる。
図7(a)及び図7(b)に示すように、調整ボディ61の切欠き61fから操作環63の目盛が初期値となっている場合、ボールプランジャ66のボール66aが操作環63の係止穴63e1に係止されている。一方、操作環63の係止穴63e8には、スプリングピン67が挿入されており、エンドカバー62のガイド溝62eの一端部に配置される。
図7(c)に示すように、操作環63が回動操作されると、ボールプランジャ66のボール66aが操作環63の係止穴63e2に係止される。一方、操作環63の係止穴63e8に挿入されたスプリングピン67は、操作環63と一体的に回動し、エンドカバー62のガイド溝62eに沿って移動する。
図7(d)に示すように、更に操作環63が回動操作されると、ボールプランジャ66のボール66aが、操作環63の係止穴63e3〜63e6に係止された後に、操作環63の係止穴63e7に係止される。一方、操作環63の係止穴63e8に挿入されたスプリングピン67は、操作環63と一体的に回動し、エンドカバー62のガイド溝62eに沿って移動し、エンドカバー62のガイド溝62eの他端部に配置される。
図3に示すように、操作環63は、その一端面63cが調整ボディ61の段差部61cに、その他端面63dがエンドカバー62の当接面62aにそれぞれ当接するように配設されている。このため、操作環63が回動操作されても、ピストンロッド20の軸方向に沿っては移動しない。
操作環63が回動操作されると、調整環64は、操作環63のねじ山と螺合しているが、キー溝64cにおいてキー68と係止し、操作環63の回動操作に応じて、キー溝64cが延びるピストンロッド20の軸方向に沿ってケーシング21側に移動する。調整環64がピストンロッド20の軸方向に沿ってケーシング21側に移動すると、調整環64の一端面64dが浮動ピストン24の第2閉塞部27側に当接し、浮動ピストン24をピストンロッド20の軸方向に沿ってヘッドカバー15に近づくように移動させる。このように、浮動ピストン24がヘッドカバー15に近づくことにより、浮動ピストン24に内蔵されている斜板23もヘッドカバー15に近づく。
図10は、操作環63の操作により調整環64をピストン18方向へ繰り出して、図4の浮動ピストン24のストロークが最大である状態から小さく調整した状態を示している。図10に示すように、一対の把持爪11によって把持された把持対象物W1を一対の把持爪11から解放する際には、両方の流体給排ポート17a,17bへの流体が供給された状態として、ピストン18におけるシリンダ室16での移動が停止し、バランス状態となる。そして、給排ポート33から外部への流体の排出が許容されるように、切換弁を切り換えると、ロック解除圧力室32の流体が外部へ排出され、斜板ばね28の付勢力によって、斜板23がピストンロッド20の軸方向に対して傾動し、斜板23がピストンロッド20にロックする。
図11に示すように、浮動ピストン室31の流体が給排ポート33から外部へ排出されると、付勢ばね30の付勢力によって、浮動ピストン24がヘッドカバー15に向けて付勢される。この場合、浮動ピストン24がピストンロッド20と一体的にヘッドカバー15に向けて移動し、ヘッドカバー15側のストロークエンドに到達するが、図5に示す状態よりも浮動ピストン24の移動量が小さくなる。そして、ピストンロッド20の第1ロッド部20aは、浮動ピストン24のストローク分だけシリンダチューブ14に対して突出する方向へ移動する。これにより、一対の把持爪11によって把持された把持対象物W1を一対の把持爪11から解放する際には、一対の把持爪11の開度が小さくなる。
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)把持対象物を一対の把持爪11から解放する際に、一対の把持爪11の開度が最大にならないように構成したときであっても、調整環64の一端面64dの位置を操作環63の回動操作に応じて調整することができ、浮動ピストン24のエンドカバー62側復帰動作位置を操作環63の回動操作に応じて調整することができる。これによって、浮動ピストン24の移動量を調整することができ、一対の把持爪11の開度を意図する開度に調整することができ、把持対象物の把持を解放する確実性を高めることができる。
(2)操作環63は、調整ボディ61の複数の切欠き61fから同じように操作可能であるとともに、浮動ピストン24の位置の調整量が複数の切欠き61fから同じように視認可能であり、浮動ピストン24のエンドカバー62側復帰動作位置を調整するための操作性を向上させることができる。
(3)多条ねじを有する送りねじ及び送りねじナットにより、操作環63の回動操作の操作量が少なくても、浮動ピストン24の位置の調整量が大きくなり、浮動ピストン24の位置の調整量を確保することができ、浮動ピストン24のエンドカバー62側復帰動作位置を調整するための操作性を向上させることができる。
(4)操作環63が回動操作される場合、所定角度毎に操作環63の係止穴63eがボールプランジャ66に係止することにより、一対の把持爪11の開度を調整するための操作性を向上させることができる。
(5)スプリングピン67がガイド溝62eの各端部に当接することによって、浮動ピストン室31に流体が供給される場合におけるピストンロッド20の軸方向に対する浮動ピストン24の位置の調整量を規制することができ、浮動ピストン24の位置が調整範囲外とならないように調整することができる。
(6)浮動ピストン24が内蔵されたケーシング21と、調整機構が内蔵された蓋部材60とが別体で構成されることにより、調整機構が内蔵されていない蓋部材を、調整機構が内蔵された蓋部材60に取り換えることができる。
(7)操作環63、調整環64及びすべり軸受65が初期角度に調整可能であり、調整した初期角度ですべり軸受65を固定ねじ70によりエンドカバー62に固定させることができる。したがって、操作環63のねじ山と調整環64のねじ山との螺合位置が、ねじ加工の切り始め位置のばらつきに応じて一定とならないときでも、操作環63及び調整環64の初期角度を正確に調整することができる。
次に、本発明を具体化した第2実施形態について説明する。第2実施形態では、例えば、操作部としての調整環の回動操作に応じて調整環自体がピストンロッド20の軸方向に沿って移動するように構成する。以下の説明では、既に説明した実施形態と同一構成及び同一制御内容について同一符号を付すなどし、その重複する説明を省略又は簡略する。
図12及び図13に示すように、第2実施形態において、把持装置100の蓋部材80では、調整ボディ81は、調整ボディ61と同じように、第1外周壁81aと、第2外周壁81bと、段差部81cと、収容部81dと、ねじ挿入孔81eとを備える。収容部81dには、円環状の調整環84と、有底筒状のすべり軸受85とが収容される。
図13及び図14に示すように、調整ボディ81は、厚さ方向Yに面する前後の両面において、エンドカバー82側に、矩形状の切欠き81fを備える。調整ボディ81とエンドカバー82とが固定されることにより、切欠き81fは、複数の窓部として機能する。
図12及び図13に示すように、エンドカバー82は、調整ボディ81側の当接面82aに、有底筒状の収容部82bを備え、その収容部82bには、調整環84及びすべり軸受85が収容される。エンドカバー82は、その収容部82bの底面に、円穴状の軸受収容部82cを備え、その軸受収容部82cには、すべり軸受85のエンドカバー62側の端部が収容される。
エンドカバー82は、収容部82bの底面に雌ねじ孔82dを備える。エンドカバー82は、収容部82bの内周面に、ピストンロッド20の軸方向に対して垂直方向に延びる円穴状のプランジャ収容部82eを備え、プランジャ収容部82eには、ボールプランジャ86が収容される。エンドカバー82は、ピストンロッド20の軸方向に貫通するねじ挿入孔82fを備える。
調整環84は、ピストンロッド20の軸方向に長手が延び、内周面84cの一部にねじ山が形成された円環状の送りねじナットである。調整環84は、調整ボディ81側に延びる円環状の第1円環部84dを有している。調整環84は、第1円環部84dからエンドカバー82側の端部から外方に突出する円環状の鍔部84aを有している。調整環84は、鍔部84aからエンドカバー82側の端部から、エンドカバー82側に延びる円環状の第2円環部84eを有している。調整環84は、その内周面84cのうち、第2円環部84eの内周面には、ねじ山が形成されている。
調整環84は、第1円環部84dの外周面84fが調整ボディ81の第1外周壁81aの内周面に当接し、かつ、鍔部84aの外周面84bが調整ボディ81の第2外周壁81bの内周面に当接し、かつ、第2円環部84eの外周面84gがエンドカバー82の収容部82bの内周面に当接するように配設される。
鍔部84aは、第1円環部84d及び第2円環部84eから突出する突出部84hが、ピストンロッド20の軸方向に対して調整ボディ81の段差部81cとエンドカバー82の当接面82aとの間に配置される。
調整環84は、回動操作が行われると、ピストンロッド20の中心軸を中心として回動するとともに、すべり軸受85の外周面85cの一部に形成されたねじ山と螺合することにより、ピストンロッド20の軸方向に移動する。
調整環84の回動操作が行われると、調整環84がピストンロッド20の軸方向に移動し、鍔部84aの突出部84hの調整ボディ81側の端部が調整ボディ81の段差部81cに当接するまで、調整環84がピストンロッド20の軸方向に移動可能である。このように、調整環84の鍔部84aの突出部84hと、調整ボディ81の段差部81cと、エンドカバー82の当接面82aとが調整規制機構として機能する。調整環84の最大回動角度が約154.3度となるが、これに限らない。
調整環84は、ケーシング21側の一端面84iが浮動ピストン24の第2閉塞部27側に当接する。このため、調整環84は、蓋部材80からケーシング21側に突出しない状態において、回動操作によりピストンロッド20の中心軸を中心に回動するとともに、蓋部材80からケーシング21側に突出するようにピストンロッド20の軸方向に移動する。これにより、調整環84は、浮動ピストン24をピストンロッド20の軸方向に移動させることができ、ピストンロッド20の移動量を調整することができる。
図13〜図15に示すように、調整環84は、その第2円環部84eの外周面84gに、ピストンロッド20の軸方向に延びる複数の係止溝84jを備え、複数の係止溝84jとして、第2円環部84eの外周面84gに沿って360度の領域に均等な角度を空けて14個の係止溝84jが設けられている。このため、各係止溝84jの角度が約25.7度となるが、これに限らない。
複数の係止溝84jは、調整環84が回動操作されると、所定角度毎に、複数の係止溝84jの何れかにボールプランジャ86のボール86aが係止される。複数の係止溝84jは、調整環84のピストンロッド20の軸方向に対する移動量と比べて、ピストンロッド20の軸方向に長くなるように延びる。このように、ボールプランジャ86と調整環84の複数の係止溝84jとが回動係止機構として機能する。
図14に示すように、調整環84は、その鍔部84aの外周面84bから凹んだ位置に、浮動ピストン24の調整量を示す目盛が施されており、調整ボディ81の切欠き81fから浮動ピストン24の調整量が視認可能となる。特に、調整環84の鍔部84aの外周面84bにおいて、180度裏側に対応する位置にも同じ目盛が施されており、調整ボディ81の厚さ方向Yに面する前後の両面に形成された切欠き81fから同じ目盛が視認可能となる。このように、調整環84には、浮動ピストン24の位置の調整量が切欠き81fから視認可能なように複数箇所に表されている。
図12及び図13に示すように、すべり軸受85は、調整環84のすべり軸受となる。すべり軸受85は、ピストンロッド20を軸方向に挿入可能な筒状の挿入部85aを備え、その挿入部85aの底面には、ピストンロッド20の軸方向に延びるねじ挿入孔85bを備える。すべり軸受85は、収容部82b及び軸受収容部82cに収容されており、固定ねじ70がねじ挿入孔85bに挿入された状態でエンドカバー82の雌ねじ孔82dに螺合されることにより、エンドカバー82に固定される。このため、すべり軸受85は、ピストンロッド20の中心軸を中心に回動することなく、ピストンロッド20の軸方向にも移動しない。このように、調整環84、すべり軸受85及び固定ねじ70が初期角度調整機構として機能する。
すべり軸受85は、その外周面85cにおいて、エンドカバー82側にねじ山が形成された送りねじでもある。すべり軸受85は、その外周面85cが、ケーシング21側で、調整環84の第1円環部84dの内周面と当接する。すべり軸受85は、その外周面85cにおいて、エンドカバー82側で調整環84のねじ山と螺合する。このように、調整環84とすべり軸受85とが送りねじ機構として機能し、調整環84の一端面84iが、ピストンロッドの軸方向に対して蓋部材80側から浮動ピストン24と当接する当接部として機能する。
すべり軸受85のねじ山及び調整環84のねじ山は、リード角が大きい多条ねじとして形成されており、調整環84は、調整環84の回動に応じた送り量が大きくなる。このため、調整環84の最大回動角度が約154.3度であっても、ピストンロッド20の軸方向に移動する調整環84の移動量を確保することができる。
次に、本実施形態の作用について説明する。
蓋部材80の組立時において、調整環84のエンドカバー82側の端面がエンドカバー82の収容部82bの底面に当接し、調整環84の鍔部84aの突出部84hがエンドカバー82の当接面82aに当接し、すべり軸受85のエンドカバー82側の端部が軸受収容部82cの底面に当接するように調整環84とすべり軸受85とが収容される。そして、調整環84とすべり軸受85とが初期位置に配設され、固定ねじ70がすべり軸受85のねじ挿入孔85bに挿入された状態でエンドカバー82の雌ねじ孔82dに螺合されることにより、エンドカバー82にすべり軸受85が固定される。つまり、調整環84及びすべり軸受85が初期角度に調整可能であり、すべり軸受85が固定ねじ70によりエンドカバー62に固定される。これによって、調整ボディ81の切欠き81fから調整環84の目盛が初期値となり、調整環84が蓋部材80から突出しない状態で蓋部材80を組み立てることができる。
図15に示すように、調整ボディ81の切欠き81fから調整環84の目盛が初期値となっている場合、エンドカバー82のプランジャ収容部82eに収容されたボールプランジャ86のボール86aがエンドカバー82の収容部82bの内周面から突出しており、調整環84の係止溝84j1に係止されている。
調整環84が回動操作されると、ボールプランジャ86のボール86aが調整環84の係止溝84j2に係止される。更に調整環84が回動操作されると、ボールプランジャ86のボール86aが、調整環84の係止溝84j3〜84j6に係止された後に、調整環84の係止溝84j7に係止される。
図12及び図13に示すように、すべり軸受85は、固定ねじ70によりエンドカバー82に固定されており、調整環84が回動操作されても、ピストンロッド20の中心軸を中心として回動せず、ピストンロッド20の軸方向に沿って移動しない。このため、調整環84が回動操作されると、調整環84のねじ山とすべり軸受85のねじ山とが螺合され、調整環84自体が、ピストンロッド20の中心軸を中心に回動するとともに、ピストンロッド20の軸方向に沿ってケーシング21側に移動する。調整環84がピストンロッド20の軸方向に沿ってケーシング21側に移動すると、調整環84の一端面84iが浮動ピストン24の第2閉塞部27側に当接し、浮動ピストン24をピストンロッド20の軸方向に沿ってヘッドカバー15に近づくように移動させる。このように、浮動ピストン24がヘッドカバー15に近づくことにより、浮動ピストン24に内蔵されている斜板23もヘッドカバー15に近づく。
このように、図16(a)に示すように、調整環84が初期位置に配設されているときと比べて、図16(c)に示すように、調整環84の回動操作に応じて調整環84が初期位置からピストンロッド20の軸方向に沿ってケーシング21側に移動したときには、斜板23及び浮動ピストン24がケーシング21側に移動している。このため、斜板23がピストンロッド20にロックする位置がケーシング21側に移動しており、浮動ピストン24の第1閉塞部26の位置がヘッドカバー15に近づくこととなる。
図16(d)に示すように、ヘッドカバー15側のストロークエンドに到達した場合、図16(a)及び図16(b)に示すように、調整環84が初期位置に配設されているときと比べて、浮動ピストン24の移動量が小さくなる。これにより、一対の把持爪によって把持された把持対象物を一対の把持爪から解放する際には、一対の把持爪の開度が小さくなる。
次に、本発明を具体化した第3実施形態について説明する。第3実施形態では、例えば、すべり軸受にはねじ山が形成されておらず、すべり軸受とは別体の初期位置調整部材にねじ山が形成されている。
図17及び図18に示すように、第3実施形態において、把持装置101の蓋部材90では、調整ボディ91は、調整ボディ81と同じように、第1外周壁91aと、第2外周壁91bと、段差部91cと、収容部91eと、ねじ挿入孔91fとを備える。収容部91eには、円環状の調整環94と、有底筒状のすべり軸受95と、円環状の初期位置調整部材97と、円環状のすべり軸受98とが収容される。第1外周壁91aには、エンドカバー82側の端部に円環状の凸部91dが形成されている。
図18に示すように、調整ボディ91は、厚さ方向Yに面する前後の両面において、エンドカバー82側に、矩形状の切欠き91gを備える。調整ボディ91とエンドカバー82とが固定されることにより、切欠き91gは、複数の窓部として機能する。
図17及び図18に示すように、調整環94は、ピストンロッド20の軸方向に長手が延び、外周面の一部にねじ山が形成された円環状の送りねじである。調整環94は、調整環84と同じように、第1円環部94dと、鍔部94aと、第2円環部94eとを有している。第1円環部94dの外周面94fには、ねじ山が形成されている。調整環94は、第1円環部94dの外周面94fが初期位置調整部材97の内周面97aに螺合し、第2円環部94eの内周面にすべり軸受98の外周面が当接するように配設される。
すべり軸受95は、すべり軸受85と同じように、挿入部95aと、ねじ挿入孔95bとを備え、収容部82b及び軸受収容部82cに収容されており、固定ねじ70がねじ挿入孔95bに挿入された状態でエンドカバー82の雌ねじ孔82dに螺合されることにより、エンドカバー82に固定される。このため、すべり軸受95は、ピストンロッド20の中心軸を中心に回動することなく、ピストンロッド20の軸方向にも移動しない。すべり軸受95は、その外周面95cがすべり軸受98の内周面が当接するように配設される。
初期位置調整部材97は、その内周面97aにねじ山が形成された送りねじナットであり、その内周面97aに形成されたねじ山が、調整環94の第1円環部94dの外周面94fに形成されたねじ山に螺合するように配設される。
初期位置調整部材97は、その外周面97bが、調整ボディ91の第1外周壁91aの内周面と当接する。初期位置調整部材97は、その外周面97bにおいて、エンドカバー82側に、円環状の凹部97cが形成されている。初期位置調整部材97は、その外周面97bが調整ボディ91の第1外周壁91aの内周面に当接し、かつ、その凹部97cが凸部91dと当接し、ケーシング21側の一端面97dが、調整ボディ91のケーシング21側の一端面と同じ面となるように配設される。このため、調整ボディ91がケーシング21に固定された場合、初期位置調整部材97は、ケーシング21の調整ボディ91側の端面と調整ボディ91の第1外周壁91aの凸部91dとに挟持されることによって、ピストンロッド20の中心軸を中心として回動することはなく、ピストンロッド20の軸方向にも移動しない。調整環94が回動操作された場合、初期位置調整部材97が回動及び移動しないため、調整環94がピストンロッド20の中心軸を中心として回動するとともにピストンロッド20の軸方向に移動することとなる。このように、調整環94と初期位置調整部材97とが送りねじ機構として機能し、調整環94の一端面94iが、ピストンロッドの軸方向に対して蓋部材90側から浮動ピストン24と当接する当接部として機能する。また、調整環94、すべり軸受95、初期位置調整部材97及び固定ねじ70が初期角度調整機構として機能する。
初期位置調整部材97のねじ山及び調整環94のねじ山は、リード角が大きい多条ねじとして形成されており、調整環94は、調整環94の回動に応じた送り量が大きくなる。このため、調整環94の最大回動角度が約154.3度であっても、ピストンロッド20の軸方向に移動する調整環94の移動量を確保することができる。
すべり軸受98は、調整環94の第2円環部94eの内周面と、すべり軸受95の外周面との間に配設されるすべり軸受であり、調整環94の回動及びピストンロッド20の軸方向への移動を円滑することができる。
次に、本実施形態の作用について説明する。
蓋部材90の組立時において、調整環94のエンドカバー82側の端面がエンドカバー82の収容部82bの底面に当接し、調整環94の鍔部94aの突出部94hがエンドカバー82の当接面82aに当接するように、調整環84がエンドカバー82の収容部82bに収容される。すべり軸受95のエンドカバー82側の端面が軸受収容部82cの底面に当接するように、すべり軸受95がエンドカバー82の軸受収容部82cに収容され、固定ねじ70がすべり軸受95のねじ挿入孔95bに挿入された状態でエンドカバー82の雌ねじ孔82dに螺合されることにより、エンドカバー82にすべり軸受95が固定される。調整環94が初期位置に配設された状態で、初期位置調整部材97の凹部97cが調整ボディ91の第1外周壁91aの凸部91dに当接するまで、初期位置調整部材97が回動される。つまり、調整環94、すべり軸受95及び初期位置調整部材97が初期角度に調整可能であり、すべり軸受95が固定ねじ70によりエンドカバー82に固定される。これによって、調整ボディ91の切欠き91gから調整環94の目盛が初期値となり、調整環94が蓋部材90から突出しない状態で蓋部材90を組み立てることができる。
調整環94が回動操作されると、調整環94のねじ山と初期位置調整部材97のねじ山とが螺合され、調整環94自体が、ピストンロッド20の中心軸を中心に回動するとともに、ピストンロッド20の軸方向に沿ってケーシング21側に移動する。調整環94がピストンロッド20の軸方向に沿ってケーシング21側に移動すると、調整環94のケーシング21側の一端面94iが浮動ピストン24の第2閉塞部27側に当接し、浮動ピストン24をピストンロッド20の軸方向に沿ってヘッドカバー15に近づくように移動させる。このように、浮動ピストン24がヘッドカバー15に近づくことにより、浮動ピストン24に内蔵されている斜板23もヘッドカバー15に近づく。
このように、図19(a)に示すように、調整環94が初期位置に配設されているときと比べて、図19(c)に示すように、調整環94の回動操作に応じて調整環94が初期位置からピストンロッド20の軸方向に沿ってケーシング21側に移動したときには、斜板23及び浮動ピストン24がケーシング21側に移動している。このため、斜板23がピストンロッド20にロックする位置がケーシング21側に移動しており、浮動ピストン24の第1閉塞部26の位置がヘッドカバー15に近づくこととなる。
図19(d)に示すように、ヘッドカバー15側のストロークエンドに到達した場合、図19(a)及び図19(b)に示すように、調整環94が初期位置に配設されているときと比べて、浮動ピストン24の移動量が小さくなる。これにより、一対の把持爪によって把持された把持対象物を一対の把持爪から解放する際には、一対の把持爪の開度が小さくなる。
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態において、例えば、1個又は3個以上の切欠き61f,81f,91gにより1個又は3個以上の窓部が設けられてもよい。また、例えば、エンドカバー62,82に切欠きが設けられてもよく、調整ボディ61,81,91とエンドカバー62,82との両方に切欠きが設けられてもよい。例えば、操作環63及び調整環84,94の1箇所又は3箇所以上に目盛が表されてもよい。
・上記実施形態において、例えば、操作環63及び調整環84,94の操作量に応じた浮動ピストン24の位置の調整量が大きくなる多条ねじをねじ送り機構に備えなくてもよい。
・上記実施形態において、例えば、操作環63及び調整環84,94の回動を係止する回動係止機構について、同じ角度で回動が係止しなくてもよく、浮動ピストン24の調整量に応じた所定角度毎に回動を係止してもよい。
・上記実施形態では、例えば、筒状の把持対象物W1の内側に一対の把持爪11を配置して、一対の把持爪11の開度を大きくすることにより把持対象物W1を内側から支持するように把持する把持装置であってもよい。