JP2021025654A - 動力伝達構造体、ブーツおよびブーツセット - Google Patents
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Abstract
【課題】動力伝達構造体においてシャフトに対してブーツが移動する可能性を低減する。【解決手段】動力伝達構造体100は、外周面21に環状の突起部22が設けられたシャフト20と、シャフト20が連結された自在継手10と、シャフト20において突起部22を含む範囲Qを包囲する環状の取付部33を含むブーツ30と、取付部33をシャフト20に締着する環状の第1固定部50と、シャフト20の軸方向Xに沿って第1固定部50から自在継手10側に離間した位置において取付部33をシャフト20に締着する環状の第2固定部60とを具備し、突起部22は、軸方向Xにおいて第1固定部50と第2固定部60との間に位置する。【選択図】図1
Description
本発明は、動力伝達構造体、ブーツおよびブーツセットに関する。
等速ジョイント等の自在継手を介して動力を伝達する動力伝達構造体は、例えばプロペラシャフト等の回転機構に利用される。動力伝達構造体においては、例えば特許文献1または特許文献2に開示される通り、自在継手の内部機構を保護するためのブーツが利用される。ブーツは、ブーツバンドによりシャフトに締着される。シャフトの外周面のうちブーツバンドよりも自在継手側の位置には、環状の突起部が形成される。以上の構造により、ブーツがシャフトに対して自在継手側に移動する可能性が低減される。
例えばシャフトの回転に起因した遠心力またはブーツの内部空間に収容されたグリースからの圧力等の押圧力によりブーツが外側に膨張すると、シャフトの突起部からブーツが離間する場合がある。以上の状態では、ブーツにのうちブーツバンドにより締着された部分が突起部を乗越えて自在継手側に移動する現象(以下「軸抜け」という)が発生する可能性がある。以上の事情を考慮して、本発明は、シャフトに対してブーツが移動する可能性を低減することを目的とする。
本発明のひとつの態様に係る動力伝達構造体は、外周面に環状の突起部が設けられたシャフトと、前記シャフトが連結された継手と、前記シャフトにおいて前記突起部を含む範囲を包囲する環状の取付部を含むブーツと、前記取付部を前記シャフトに締着する環状の第1固定部と、前記シャフトの軸方向に沿って前記第1固定部から前記継手側に離間した位置において前記取付部を前記シャフトに締着する環状の第2固定部とを具備し、前記突起部は、前記軸方向において前記第1固定部と前記第2固定部との間に位置する。
本発明のひとつの態様に係るブーツは、外周面に環状の突起部が設けられたシャフトと、前記シャフトが連結された継手と、を具備する動力伝達構造体に使用されるブーツであって、前記シャフトにおいて前記突起部を含む範囲を包囲する環状の取付部を具備し、前記取付部は、環状の第1固定部と、前記シャフトの軸方向において前記突起部からみて前記第1固定部とは反対側に位置する環状の第2固定部と、により前記シャフトに締着される。
本発明のひとつの態様に係るブーツセットは、外周面に環状の突起部が設けられたシャフトと、前記シャフトが連結された継手と、を具備する動力伝達構造体に使用されるブーツセットであって、前記シャフトにおいて前記突起部を含む範囲を包囲する環状の取付部を含むブーツと、前記取付部を前記シャフトに締着する環状の第1固定部と、前記シャフトの軸方向において前記突起部からみて前記第1固定部とは反対側において前記取付部を前記シャフトに締着する環状の第2固定部とを具備する。
本発明の好適な形態について図面を参照しながら以下に説明する。なお、各図面における各要素の寸法および縮尺は実際の製品とは適宜に相違する。
A:第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係る動力伝達構造体100の構成を例示する断面図である。動力伝達構造体100は、駆動源(図示略)からのトルクを動力として伝達する構造体である。動力伝達構造体100は、例えば自動車等の移動体に搭載されるプロペラシャフト等の回転機構として利用される。
図1は、本発明の第1実施形態に係る動力伝達構造体100の構成を例示する断面図である。動力伝達構造体100は、駆動源(図示略)からのトルクを動力として伝達する構造体である。動力伝達構造体100は、例えば自動車等の移動体に搭載されるプロペラシャフト等の回転機構として利用される。
図1に例示される通り、動力伝達構造体100は、自在継手10とシャフト20とブーツ30と支持体40と第1固定部50と第2固定部60とを具備する。動力伝達構造体100を構成する各要素は、例えば金属材料または繊維強化プラスチック等の各種の材料により形成される。ブーツ30と第1固定部50と第2固定部60との組合せは、「ブーツセット」として観念される。支持体40をブーツセットに含ませてもよい。
シャフト20は、略円柱状の構造体である。シャフト20の中心軸に沿う軸線を以下では「X軸」と表記する。X軸の方向(正方向または負方向)は「軸方向」の一例である。また、シャフト20の中心軸を中心とする任意の直径の仮想円における円周の方向を以下では単に「周方向」と表記し、当該仮想円の半径の方向を以下では「径方向」と表記する。
自在継手10は、ダブルオフセット型の摺動式等速自在継手である。第1実施形態の自在継手10は、第1部材11と第2部材12と複数のボール13とを具備する。第1部材11と第2部材12とは、相互に姿勢を変更可能な状態で接続される。複数のボール13を介して第1部材11と第2部材12の一方から他方にトルクが伝達される。第1実施形態の自在継手10は、「継手」の一例である。
第1部材11は、開口部110が形成された略円筒状の構造体である。第2部材12は、開口部120が形成された略円筒状の構造体である。第2部材12は第1部材11の内部空間Sに収容される。第2部材12の外周面は第1部材11の内周面に間隔をあけて対向する。
第1部材11の内周面には、複数の溝部112が周方向に間隔をあけて形成される。第2部材12の外周面には、複数の溝部122が周方向に間隔をあけて形成される。複数の溝部112と複数の溝部122とは1対1に対応する。各溝部112および各溝部122はX軸に沿って延在する。複数のボール13の各々は、溝部112と溝部122との間で第1部材11と第2部材12とに接触する。以上の説明から理解される通り、第1部材11は、周方向における各ボール13の移動を規制するアウターレースであり、第2部材12は、周方向における各ボール13の移動を規制するインナーレースである。以上の構成においては、第1部材11の中心軸と第2部材12の中心軸との角度の変化が許容される。また、X軸の方向における第1部材11と第2部材12との相対的な移動が許容される。
図1のシャフト20は、動力伝達構造体100における駆動側または従動側の軸部材である。シャフト20は、第2部材12の開口部120に嵌合されることで第2部材12に連結される。シャフト20は、第1部材11の開口部110を介して第1部材11の内外にわたり設置される。
シャフト20の外周面21には、当該外周面21から突出する環状の突起部22が形成される。突起部22は、外周面21の周方向に沿う鍔状の段差である。具体的には、突起部22は、外周面21の全周にわたり周方向に連続する環状に形成される。突起部22は、シャフト20と一体に形成される。ただし、シャフト20と別体に形成された環状の突起部22をシャフト20に接合してもよい。
ブーツ30は、第1部材11の開口部110をシャフト20とともに閉塞することで当該第1部材11の内部空間Sを密閉する環状の構造体である。ブーツ30は、例えばゴムまたはエラストマー等の弾性材料で形成される。ブーツ30により密閉された内部空間Sには、例えばグリース等の潤滑剤(図示略)が充填される。潤滑剤は、自在継手10の各部材が相互に接触する箇所における摩擦を低減する。例えば、第1部材11と各ボール13とが接触する部分、または第2部材12と各ボール13とが接触する部分の摩擦が、潤滑剤により低減される。
図2は、動力伝達構造体100のうちブーツ30の近傍を拡大した断面図である。図2においては、シャフト20の中心軸を挟んで一方側の断面のみが図示されている。図1および図2に例示される通り、ブーツ30は、周縁部31と胴体部32と取付部33とを含む構造体である。周縁部31と胴体部32と取付部33とは、共通の材料により一体に構成される。周縁部31はブーツ30の一方の端部を構成し、取付部33はブーツ30の他方の端部を構成する。胴体部32は周縁部31と取付部33との間の部分である。周縁部31の外径は取付部33の外径を上回る。なお、周縁部31と胴体部32と取付部33とを相異なる材料で形成してもよい。
図1に例示される通り、周縁部31は支持体40に固定される。支持体40は、例えば金属材料により形成された環状の構造体である。支持体40は、装着部41と装着部42とを具備する。装着部41は、第1部材11の外周面に固定される環状の部分である。例えば装着部41は、第1部材11の外周面に嵌合される。他方、装着部42にはブーツ30の周縁部31が固定される。例えば周縁部31は、装着部42にカシメ固定される。以上の説明から理解される通り、周縁部31は、支持体40を介して自在継手10の第1部材11に固定される。なお、ブーツ30を第1部材11に対して直接に(すなわち支持体40を介することなく)固定してもよい。すなわち、支持体40は省略されてもよい。
胴体部32は、周縁部31と取付部33とを連結する筒状のベロー部である。具体的には、胴体部32は、取付部33から周縁部31にかけて連続的に拡径する曲面状に形成される。なお、胴体部32の形状は図2の例示に限定されない。例えば蛇腹形状の胴体部32を採用してもよい。
取付部33は、シャフト20を包囲する環状(具体的には筒状)のリップ部である。取付部33はシャフト20に固定される。取付部33の内径はシャフト20の外径と略等しい。したがって、取付部33の内周面F1はシャフト20の外周面21に接触する。図1および図2に例示される通り、第1実施形態の取付部33は、シャフト20の外周面21のうちX軸の方向において突起部22を含む範囲Qを包囲する。X軸の方向において範囲Qの略中央に突起部22が位置する。取付部33の厚さ(径方向の寸法)は胴体部32の厚さを上回る。
取付部33の内周面F1には環状の溝部330が形成される。溝部330は、取付部33の内周面F1の全周にわたり周方向に連続する所定幅の窪みである。シャフト20の突起部22は溝部330に収容される。突起部22が溝部330に嵌合すると換言してもよい。以上のように突起部22が溝部330の段差に引掛かることで、取付部33がシャフト20に対してX軸の方向に移動することが抑制される。溝部330は、取付部33の内周面F1において突起部22に対向する部分とも換言される。
第1固定部50は、取付部33をシャフト20に締着するための環状の構造体である。同様に、第2固定部60は、取付部33をシャフト20に締着する環状の構造体である。第1固定部50および第2固定部60の各々は、取付部33よりも剛性が高い材料で形成される。例えば第1固定部50および第2固定部60は金属材料で形成される。すなわち、例えば金属材料で形成された所定幅のバンドを環状に成形した金属環が第1固定部50および第2固定部60として利用される。第1固定部50の幅Waは、第2固定部60の幅Wbを上回る(Wa>Wb)。
図1および図2に例示される通り、第1固定部50および第2固定部60の各々はシャフト20および取付部33を包囲する。第1固定部50および第2固定部60の各々の内周面とシャフト20の外周面21との間で取付部33が圧縮されることで、取付部33がシャフト20に固定される。図2には、取付部33のうち第1リップ部341と第2リップ部342とが図示されている。第1リップ部341は、取付部33のうち溝部330に対してX軸の負方向(自在継手10から離れる方向)に位置する部分である。第2リップ部342は、取付部33のうち溝部330に対してX軸の正方向(自在継手10に近づく方向)に位置する部分である。第1固定部50による圧縮で第1リップ部341の内周面がシャフト20の外周面21に密着する。第2固定部60による圧縮で第2リップ部342の内周面がシャフト20の外周面21に密着する。
取付部33の外周面F2には第1溝部331および第2溝部332が形成される。第1溝部331と第2溝部332とは、X軸の方向に相互に間隔をあけて形成される。第1溝部331および第2溝部332の各々は、取付部33の外周面F2の全周にわたり周方向に連続する窪みである。第1溝部331は、第1固定部50の幅Wa以上の幅に形成され、第2溝部332は、第2固定部60の幅Wb以上の幅に形成される。また、第1溝部331の深さは第1固定部50の厚さを上回り、第2溝部332の深さは第2固定部60の厚さを上回る。
第1固定部50は第1溝部331に収容される。すなわち、第1固定部50の内周面が第1溝部331の底面に密着する。第2固定部60は第2溝部332に収容される。すなわち、第2固定部60の内周面が第2溝部332の底面に密着する。以上の説明から理解される通り、第1固定部50と第2固定部60とは、X軸の方向に相互に間隔をあけて設置される。すなわち、第2固定部60は、X軸の方向に沿って第1固定部50から自在継手10側に離間した位置において取付部33をシャフト20に締着する。
図2から理解される通り、シャフト20の突起部22は、X軸の方向において第1固定部50と第2固定部60との間に位置する。図2には、第1固定部50のうち第2固定部60側の周縁Ea1と、第2固定部60のうち第1固定部50側の周縁Ea2とが図示されている。突起部22は、X軸の方向において周縁Ea1と周縁Ea2との間の範囲Ra内に位置する。また、シャフト20の突起部22は、第1溝部331と第2溝部332との間に位置する。具体的には、突起部22は、第1溝部331における第2溝部332側の周縁Eb1と、第2溝部332における第1溝部331側の周縁Eb2との間の範囲Rb内に位置する。
取付部33に形成された溝部330も、突起部22と同様に、第1固定部50と第2固定部60との間に位置する。具体的には、範囲Ra内に溝部330が形成される。さらに、溝部330は、第1溝部331と第2溝部332との間に位置する。具体的には、範囲Rb内に溝部330が形成される。以上の説明から理解される通り、X軸の方向において突起部22の一方側(自在継手10とは反対側、またはX軸の負方向)に第1固定部50が設置される。また、X軸の方向において突起部22の他方側(自在継手10側、またはX軸の正方向)に第2固定部60が設置される。
以上に説明した通り、第1実施形態においては、第1固定部50と第2固定部60とによりブーツ30の取付部33がシャフト20に固定され、かつ、シャフト20の外周面21に形成された突起部22がX軸の方向において第1固定部50と第2固定部60との間に位置する。したがって、以下に詳述する通り、第2固定部60が設置されない構成(以下「対比例」という)と比較して、取付部33が突起部22を乗越えて自在継手10側に移動する軸抜けが発生する可能性を低減できる。
図3および図4は、対比例の問題点を説明するための断面図である。図3および図4に例示される通り、対比例においては、金属材料で形成された環状の第1固定部50によりブーツ30の取付部33がシャフト20に締着される。シャフト20の外周面21のうち第1固定部50からみて自在継手10側の位置に突起部22が形成される。対比例においては第2固定部60が設置されない。
ブーツ30には径方向の押圧力が作用する。径方向の押圧力は、例えばシャフト20の回転に起因した遠心力、または、内部空間Sに充填された潤滑剤からの圧力である。径方向の押圧力の作用により、図4の例示のようにブーツ30が外側に膨張する場合がある。具体的には、取付部33および胴体部32のうち第1固定部50の周縁Ea1よりも自在継手10側の部分Pがシャフト20の外周面21から離間する。以上の状態では、X軸の方向における取付部33の移動を抑制する突起部22の作用が減殺される。したがって、図4に矢印で例示される通り、取付部33がシャフト20に対して自在継手10側に移動する軸抜けが発生する可能性がある。
対比例とは対照的に、第1実施形態においては、突起部22からみて一方側に位置する第1固定部50に加えて、突起部22からみて他方側に位置する第2固定部60により、取付部33がシャフト20に締着される。以上の構成では、径方向の押圧力がブーツ30に作用する状態でも、取付部33は第1固定部50および第2固定部60の双方により強固に保持されるから、当該取付部33はシャフト20の外周面21から離間しない。したがって、第1実施形態によれば、取付部33がシャフト20の突起部22を乗越えて自在継手10側に移動する軸抜けの可能性を低減できる。
第1実施形態においては、X軸の方向において第1固定部50と第2固定部60との間に、突起部22を収容する環状の溝部330が形成される。すなわち、突起部22が溝部330の段差に引掛かる。したがって、取付部33が継手側に移動する軸抜けの可能性を低減できるという前述の効果は格別に顕著である。
また、取付部33の外周面F2には、第1固定部50を収容する第1溝部331と、第2固定部60を収容する第2溝部332とが形成される。したがって、第1溝部331および第2溝部332が形成されない構成と比較して、第1固定部50および第2固定部60がX軸の方向に移動する可能性を低減できる。
第1実施形態においては、第1固定部50の幅Waが第2固定部60の幅Wbを上回る。したがって、幅Waが幅Wbを下回る構成と比較して、第1固定部50により取付部33をシャフト20に対して強固に固定できる。他方、第2固定部60の幅Wbが第1固定部50の幅Waを下回るから、幅Wbが幅Waを上回る構成と比較して、X軸の方向においてブーツ30が変形可能な範囲を確保し易いという利点もある。
B:第2実施形態
本発明の第2実施形態を説明する。以下に例示する各構成において機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
本発明の第2実施形態を説明する。以下に例示する各構成において機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
図5は、第2実施形態に係るブーツ30のうち取付部33の近傍を拡大した断面図である。図5に例示される通り、第2実施形態においては、第2溝部332の底面(すなわち第2リップ部342の表面)に溝部35が形成される。溝部35は、取付部33の全周にわたり周方向に連続する所定幅の窪みである。具体的には、溝部35は、第2溝部332におけるX軸の正方向の周縁Ec1から所定幅にわたる窪みである。
図5に例示される通り、第2固定部60のうちX軸の正方向に位置する周縁の近傍は、溝部35の周縁からX軸の正方向に張り出す。すなわち、第2固定部60のうちX軸の正方向に位置する周縁Ec2は、X軸の方向において溝部35の幅内に位置し、取付部33の表面には接触しない。以上の説明から理解される通り、第2実施形態における取付部33の外周面には、第2固定部60の周縁Ec2に沿う溝部35が形成される。なお、第2固定部60の周縁Ec2と溝部35におけるX軸の負方向の周縁とが、X軸の方向において相互に重なる構成も想定される。
第2実施形態における第2リップ部342の厚さ(径方向の寸法)は、第1実施形態における第2リップ部342の厚さを上回る。また、第2実施形態における第2リップ部342の幅(X軸の方向の寸法)は、第2実施形態における第2リップ部342の幅を上回る。以上の説明から理解される通り、第2実施形態においては、溝部35の形成による第2リップ部342の機械的な強度の低下が、第2リップ部342の厚さおよび幅を増加させることで補強される。
第2実施形態においても第1実施形態と同様に、第1固定部50と第2固定部60とにより取付部33がシャフト20に固定され、かつ、シャフト20の外周面21に形成された突起部22がX軸の方向において第1固定部50と第2固定部60との間に位置する。したがって、第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。
ところで、第2固定部60の周縁Ec2が取付部33の外周面に接触する構成(例えば第1実施形態)においては、第2固定部60の周縁Ec2からの圧力が取付部33の表面に局所的に作用する可能性がある。以上の構成とは対照的に、第2実施形態によれば、取付部33に溝部35が形成されるから、第2固定部60の周縁Ec2から取付部33に作用する圧力の集中が抑制される。したがって、第2固定部60から局所的に作用する圧力に起因して取付部33が破損する可能性を低減できる。
図6は、第2実施形態の変形例に係るブーツ30のうち取付部33の近傍を拡大した断面図である。図6の構成においては、第2溝部332の底面(すなわち第2リップ部342の表面)に溝部35および溝部36が形成される。溝部35は、前述の通り、第2固定部60の周縁Ec2に沿って環状に形成された窪みである。他方、溝部36は、第2固定部60のうちX軸の負方向に位置する周縁Ea2に沿って環状に形成された窪みである。具体的には、溝部36は、第2溝部332におけるX軸の負方向の周縁Eb2から所定幅にわたる窪みである。
図6に例示される通り、第2固定部60のうちX軸の負方向に位置する周縁の近傍は、溝部36の周縁からX軸の負方向に張り出す。すなわち、第2固定部60のうちX軸の負方向に位置する周縁Ea2は、X軸の方向において溝部36の幅内に位置し、取付部33の表面には接触しない。以上の説明から理解される通り、図6に例示された取付部33には、第2固定部60の周縁Ea2に沿う溝部36が形成される。溝部36の形成による第2リップ部342の強度の低下が、第2リップ部342の厚さおよび幅を増加させることで補強される点は第2実施形態と同様である。なお、第2固定部60の周縁Ea2と溝部36におけるX軸の正方向の周縁とが、X軸の方向において相互に重なる構成も想定される。
図6の構成によれば、第2固定部60の周縁Ea2から取付部33に作用する圧力の集中を抑制できる。したがって、第2固定部60から局所的に作用する圧力に起因して取付部33が破損する可能性を低減できる。
C:第3実施形態
図7は、第3実施形態に係るブーツ30のうち取付部33の近傍を拡大した断面図である。第3実施形態においては、第2固定部60を設置するための構造が第1実施形態とは相違する。具体的には、図7に例示される通り、第2固定部60はブーツ30に埋設される。すなわち、ブーツ30の内部に第2固定部60が設置される。具体的には、取付部33の内周面F1と外周面F2との間に第2固定部60が位置する。第2固定部60の形態は第1実施形態と同様である。なお、取付部33の外周面F2に第2溝部332は形成されない。
図7は、第3実施形態に係るブーツ30のうち取付部33の近傍を拡大した断面図である。第3実施形態においては、第2固定部60を設置するための構造が第1実施形態とは相違する。具体的には、図7に例示される通り、第2固定部60はブーツ30に埋設される。すなわち、ブーツ30の内部に第2固定部60が設置される。具体的には、取付部33の内周面F1と外周面F2との間に第2固定部60が位置する。第2固定部60の形態は第1実施形態と同様である。なお、取付部33の外周面F2に第2溝部332は形成されない。
第3実施形態における突起部22は、シャフト20の外周面21のうち第1固定部50に包囲される領域から突出する段差である。第1実施形態と同様に、突起部22は、第1固定部50と第2固定部60との間に位置する。具体的には、第1固定部50の周縁Ea1と第2固定部60の周縁Ea2との間の範囲Ra内に突起部22が形成される。したがって、第3実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。
なお、以上のように第2固定部60が埋設されたブーツ30は、例えばインサート成形により製造される。具体的には、第2固定部60を金型に支持した状態で当該金型の内部空間に樹脂材料を注入することで、図7のブーツ30が製造される。ただし、ブーツ30の製造方法は以上の例示に限定されない。
第3実施形態によれば、取付部33とは別体の第2固定部60が当該取付部33に装着される第1実施形態と比較して、動力伝達構造体100の部品点数が削減されるという利点がある。他方、第1実施形態によれば、例えばインサート成形等の加工が不要であるため、第2固定部60が取付部33に埋設される第3実施形態と比較して製造コストが低減されるという利点がある。
なお、図7においては第2固定部60の全部が取付部33に埋設された構成を例示したが、第2固定部60の一部のみを取付部33に埋設してもよい。例えば図8に例示される第2固定部60は、周方向に沿う環状の環状部61と、環状部61の外周面から径方向に突出する突起部62とを含む。環状部61は取付部33の内部に埋設される。他方、突起部62の先端部は取付部33の外部に露出する。
図8の構成でも第3実施形態と同様の効果が実現される。なお、図8の構成では、第2固定部60のうち突起部62の先端部をインサート成形の過程において容易に金型に対して支持できるから、図7の構成と比較してブーツ30の製造が簡素化されるという利点がある。他方、図7の構成では、第2固定部60の形態が簡素化されるから、図8の構成と比較して第2固定部60の製造コストが低減されるという利点がある。
D:変形例
以上に例示した各態様に付加される具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
以上に例示した各態様に付加される具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
(1)図9に例示される通り、取付部33の外周面のうち第2固定部60の内周面との対向面に突起部37を形成してもよい。図9においては、第2固定部60を収容する第2溝部332の底面に複数の突起部37が形成された構成が例示されている。各突起部37は、第2溝部332の底面から突出するビード部であり、取付部33の全周にわたり周方向に連続する環状に形成される。複数の突起部37は、X軸の方向に相互に間隔をあけて形成される。なお、図9においては第1固定部50および第2固定部60の図示が便宜的に省略されている。
複数の突起部37は、第2固定部60の内周面により押圧されることで変形する。第2固定部60の内周面は、各突起部37を押し潰した状態で第2溝部332の底面に密着する。すなわち、第2固定部60の内周面には、突起部37から径方向に反発力が作用する。以上の構成によれば、第2固定部60の内周面が取付部33を押圧する圧力が低減される。したがって、第2固定部60から作用する圧力により取付部33が破損する可能性を低減できる。なお、図9においては第2溝部332の底面に複数の突起部37を形成したが、第1溝部331の底面に複数の突起部37を形成してもよい。第1溝部331の底面に形成された複数の突起部37は、第1固定部50の内周面により押し潰される。
(2)前述の各形態では、取付部33の外周面F2に第1溝部331および第2溝部332を形成したが、第1溝部331および第2溝部332の一方または双方を省略してもよい。また、前述の各形態では、取付部33の内周面F1に溝部330を形成したが、溝部330を省略してもよい。
(3)前述の各形態では、第1固定部50の幅Waが第2固定部60の幅Wbを上回る構成を例示したが、幅Waと幅Wbとの大小は以上の例示に限定されない。例えば、幅Waと幅Wbとが相等しい構成、または、幅Wbが幅Waを上回る構成も想定される。
(4)前述の各形態では、ダブルオフセット型の摺動式等速自在継手を自在継手10として例示したが、自在継手10の具体的な構成は以上の例示に限定されない。例えば、ダブルオフセット型以外の摺動式等速自在継手、または等速自在継手以外の自在継手を、自在継手10として採用してもよい。
(5)前述の各形態では、プロペラシャフトに利用される動力伝達構造体100を例示したが、本発明に係る動力伝達構造体の用途は以上の例示に限定されない。例えば、ドライブシャフトまたはステアリングシャフト等の各種の機構に、本発明の好適な態様に係る動力伝達構造体が利用される。動力伝達構造体は、動力を伝達するための構造体として包括的に表現される。
100…動力伝達構造体、10…自在継手、11…第1部材、110…開口部、112…溝部、12…第2部材、120…開口部、122…溝部、13…ボール、20…シャフト、21…外周面、22…突起部、30…ブーツ、31…周縁部、32…胴体部、33…取付部、330…溝部、331…第1溝部、332…第2溝部、35,36…溝部、37…突起部、40…支持体、41…装着部、42…装着部、50…第1固定部、60…第2固定部、61…環状部、62…突起部、Ea1,Ea2,Eb1,Eb2…周縁、F1…内周面、F2…外周面、Q…範囲、Ra…範囲、Rb…範囲、S…内部空間。
Claims (8)
- 外周面に環状の突起部が設けられたシャフトと、
前記シャフトが連結された継手と、
前記シャフトにおいて前記突起部を含む範囲を包囲する環状の取付部を含むブーツと、
前記取付部を前記シャフトに締着する環状の第1固定部と、
前記シャフトの軸方向に沿って前記第1固定部から前記継手側に離間した位置において前記取付部を前記シャフトに締着する環状の第2固定部とを具備し、
前記突起部は、前記軸方向において前記第1固定部と前記第2固定部との間に位置する
動力伝達構造体。 - 前記取付部の内周面には、前記軸方向において前記第1固定部と前記第2固定部との間に、前記突起部を収容する環状の溝部が設けられる
請求項1の動力伝達構造体。 - 前記取付部の外周面には、
前記第1固定部を収容する環状の第1溝部と、
前記第2固定部を収容する環状の第2溝部とが設けられる
請求項1または請求項2の動力伝達構造体。 - 前記第2固定部の少なくとも一部は、前記ブーツに埋設される
請求項1または請求項2の動力伝達構造体。 - 前記第1固定部の幅は、前記第2固定部の幅を上回る
請求項1から請求項4の何れかの動力伝達構造体。 - 前記取付部の外周面には、前記第2固定部のうち前記第1固定部とは反対側の周縁に沿う溝部が形成される
請求項1から請求項5の何れかの動力伝達構造体。 - 外周面に環状の突起部が設けられたシャフトと、前記シャフトが連結された継手と、を具備する動力伝達構造体に使用されるブーツであって、
前記シャフトにおいて前記突起部を含む範囲を包囲する環状の取付部を具備し、
前記取付部は、環状の第1固定部と、前記シャフトの軸方向において前記突起部からみて前記第1固定部とは反対側に位置する環状の第2固定部と、により前記シャフトに締着される
ブーツ。 - 外周面に環状の突起部が設けられたシャフトと、前記シャフトが連結された継手と、を具備する動力伝達構造体に使用されるブーツセットであって、
前記シャフトにおいて前記突起部を含む範囲を包囲する環状の取付部を含むブーツと、
前記取付部を前記シャフトに締着する環状の第1固定部と、
前記シャフトの軸方向において前記突起部からみて前記第1固定部とは反対側において前記取付部を前記シャフトに締着する環状の第2固定部と
を具備するブーツセット。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2019145209 | 2019-08-07 | ||
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JP2020092162A Pending JP2021025654A (ja) | 2019-08-07 | 2020-05-27 | 動力伝達構造体、ブーツおよびブーツセット |
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2020
- 2020-05-27 JP JP2020092162A patent/JP2021025654A/ja active Pending
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