JP2021025044A - 熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物 - Google Patents

熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】高い摩擦力を有する熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物を提供する。【解決手段】熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)と石油樹脂(B)を含む熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物であって、熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)および石油樹脂(B)を合計100質量部に対して、熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)が75〜99質量部、石油樹脂(B)が1〜25質量部であり、石油樹脂(B)がクマロン・インデン樹脂または石油C9留分由来の芳香族炭化水素樹脂である、熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物に関する。
結晶性芳香族ポリエステル単位をハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールのような脂肪族ポリエーテル単位またはポリラクトンのような脂肪族ポリエステル単位をソフトセグメントとする熱可塑性ポリエステルエラストマは、強度、耐衝撃性、弾性回復性、柔軟性等の機械物性や、低温、高温特性に優れ、さらに熱可塑性で成形加工が容易であることから、シート、フィルム、繊維などの産業資材や自動車および電気・電子部品用途に広く使用されている。
熱可塑性ポリエステルエラストマは、その柔軟性からディスクや紙などを搬送するローラー表皮や、電気機器筐体の滑り止めなどに応用されている。このような用途では、摩擦力が重要であり、より高い摩擦力を有する材料が求められている。
特許文献1では、摩擦力を向上させる手法として、石油樹脂が用いられている。同時に、石油樹脂を配合したのみでは離型性などの成形性が悪化するため、その改善のためにシリコーンオイルが配合されている。
特開2007−231280号
しかし、特許文献1のようにシリコーンオイルを配合すると、摩擦力が低下するという問題があった。
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するために検討した結果達成されたものであり、成形性を維持したまま高い摩擦力を有する熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物を提供することを目的とするものである
本発明のさらに好ましい態様においては、低温静置後も摩擦力の低下が少ない熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物を提供すること、また、さらにペレット同士が合着しにくく成形性を向上させた熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決するべく検討を重ねた結果、熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)75〜99質量部と石油樹脂(B)1〜25質量部からなる樹脂組成物であって、石油樹脂(B)がクマロン・インデン樹脂、石油C9留分由来の炭化水素樹脂である樹脂組成物により、上記課題を解決し得ることを見出した。
本発明によれば、成形性を維持したまま高摩擦力を有する熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物を提供することができる。本発明の好ましい態様によれば、低温静置後も摩擦力を大きく損なわない熱可塑性ポリエステルエラストマ組成物、また、さらにペレット同士が合着しにくく成形性を向上させた熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物が得られる。この熱可塑性エラストマー組成物は、その特徴を活かして、搬送ローラー表皮や、滑り止め部材として有用である。
以下、本発明について詳述する。
[熱可塑性ポリエステルエラストマ]
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)は、高融点結晶性重合体セグメントと低融点重合体セグメントの共重合体である。
高融点結晶性重合体セグメントは、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体から形成されるポリエステルである。
前記芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ジフェニル−4,4' −ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4' −ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸、および3−スルホイソフタル酸ナトリウムなどが挙げられる。本発明においては、前記芳香族ジカルボン酸を主として用いるが、この芳香族ジカルボン酸の一部を、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、4,4' −ジシクロヘキシルジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸や、アジピン酸、コハク酸、シュウ酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、およびダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸に置換してもよい。さらに、ジカルボン酸のエステル形成性誘導体、たとえば低級アルキルエステル、アリールエステル、炭酸エステル、および酸ハロゲン化物なども同等に用い得る。
本発明においては、上記酸成分を2種以上使用することができる。例えばテレフタル酸とイソフタル酸、テレフタル酸とドデカンジオン酸、テレフタル酸とダイマー酸などの組み合わせが挙げられる。
次に、高融点結晶性重合体セグメント中のジオールの具体例としては、分子量400以下のジオール、例えば1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ジシクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールなどの脂環族ジオール、およびキシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニルプロパン、2,2' −ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4' −ジヒドロキシ−p−ターフェニル、および4,4' −ジヒドロキシ−p−クオーターフェニルなどの芳香族ジオールが好ましく、かかるジオールは、エステル形成性誘導体、例えばアセチル体、アルカリ金属塩などの形でも用い得る。これらのジカルボン酸、その誘導体、ジオール成分およびその誘導体は、2種以上併用してもよい。
低融点重合体セグメントは、脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる。
かかる脂肪族ポリエーテルの具体例としては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(トリメチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、およびエチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体などが挙げられる。これらのなかでも、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールおよび/またはポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物および/またはエチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体が好ましく用いられる。
かかる脂肪族ポリエステルの具体例としては、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、およびポリブチレンアジペートなどが挙げられる。これらのなかでも、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールおよび/またはポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物および/またはエチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体が好ましい。
また、これらの低融点重合体セグメントの数平均分子量としては、共重合された状態において300〜6000であることが好ましい。
高融点結晶性重合体セグメントと低融点重合体セグメントの共重合比に関しては、低融点セグメントの比率が大きいほど好ましい。具体的には、低融点重合体セグメントの共重合比率は40%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。
[石油樹脂]
石油樹脂は、摩擦力を上昇させるために用いられ、一般的には、石油化学工業で行われるナフサ分解の副生油の一部を原料として共重合して得られる樹脂を指す。例えば、C5系(脂肪族)モノマーを原料とした脂肪族炭化水素樹脂、C9系(芳香族)を主原料としたすなわち、石油C9留分由来の芳香族炭化水素樹脂、それらの共重合系炭化水素樹脂、テルペン系樹脂、クマロン・インデン樹脂、クマロン樹脂混合物(クマロン樹脂、ナフテン系油、フェノール樹脂などの混合品)が挙げられる。また、これらの樹脂が水素添加または変性されているものも含まれる。本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物に用いられる石油樹脂(B)は、石油C9留分由来の芳香族系炭化水素樹脂またはクマロン・インデン樹脂を指し、これらの樹脂が水素添加または変性されているものも含まれる。これらを添加することで、ペレット合着がしにくく、成形性を維持することができる。
[熱可塑性ポリエステルエラストマと石油樹脂の配合量]
前記熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)と前記石油樹脂(B)の配合量は、熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)および石油樹脂(B)を合計100質量部とした場合に、石油樹脂(B)が1〜25質量部であり、5〜20質量部が好ましい。すなわち、熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)が、75〜99質量部であり、80〜95質量部が好ましい。石油樹脂(B)が1質量部未満の場合、摩擦力の十分な上昇が得られず、25質量部より大きい場合はコンパウンド工程後のペレット同士の合着が著しくなり、射出成形などの溶融加工時の取り扱いが困難になる場合がある。
[増粘剤]
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物には、さらに増粘剤(C)を添加することが好ましい。熱可塑性ポリエステルエラストマを搬送ローラーや滑り止め部品用途に応用した場合、5℃以下の低温に一定時間静置すると、ポリエステルエラストマ中の添加剤および/またはオリゴマが成形品表面に析出し、摩擦力が低下する場合がある。増粘剤(C)は、ポリエステルエラストマ中の添加剤および/またはオリゴマの析出を低減させるために用いられ、2官能以上のエポキシ化合物を用いることができる。
具体的には、ビスフェノールA とエピクロルヒドリンとの縮合反応によって生成するビスフェノールA型エポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルなどのグリコールのジグリシジルエーテル化合物、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテルなどのポリオールのポリグリシジルエーテル化合物、フタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル、ビ安息香酸ジグリシジルエステル、メチルテレフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、ドデカンジカルボン酸ジグリシジルエステル、オクタデカンジカルボン酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステルなどのジカルボン酸のジグリシジルエステル化合物、トリメリット酸トリグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステルなどのポリカルボン酸のポリグリシジルエステル化合物などが挙げられる。これらの中でもグリシジルエステル化合物が好ましい。
[増粘剤の配合量]
前記増粘剤(C)の添加量は、熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)および石油樹脂(B)を合計100質量部に対して、0.1〜7質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。0.1質量部未満の場合、十分なオリゴマの析出を低減効果が得られない場合があり、7質量部より大きい場合はポリエステルエラストマ樹脂組成物の粘度が過剰に大きくなること、増粘剤そのものの表面析出が懸念される場合がある。
[高融点熱可塑性ポリエステル]
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物には、さらに融点200℃以上の熱可塑性ポリエステル(D)を添加することが好ましい。石油樹脂を一定量以上添加した場合、摩擦力は向上するが、コンパウンド工程後にペレット同士が合着し、射出成形などの溶融加工時にスクリューへの噛み込みが不安定になる場合がある。融点200℃以上の熱可塑性ポリエステル(D)は、ペレットの合着低減のために用いられる。
具体的には、低融点重合体セグメントの共重合比率が40%未満の熱可塑性ポリエステルエラストマ、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリヘキシレンテレフタレート(PHT)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリシクロヘキサン―1,4―ジメチロールテレフタレートなどのほか、ポリエチレンイソフタレート・テレフタレート(PET/I)、ポリブチレン(テレフタレート・イソフタレート)(PET/I)などのような共重合ポリエステルなどを挙げることができる。これらポリエステル樹脂の中でもポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート・イソフタレート)、低融点重合体セグメントの共重合比率が40%未満の熱可塑性ポリエステルエラストマが好ましい。
[高融点熱可塑性ポリエステル添加量]
前記融点200℃以上の熱可塑性ポリエステル(D)の添加量は、熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)および石油樹脂(B)を合計100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、1〜15質量部がより好ましい。0.1質量部未満の場合、十分なペレットの合着低減効果が得られない場合があり、20質量部より大きい場合は摩擦力が低下する場合がある。
[その他添加剤]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、目的を損なわない範囲で必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、染料、顔料、可塑剤、難燃剤等の添加剤や、タルク、マイカ、ガラスフレーク、炭酸カルシウム、クレー、硫酸バリウム、ガラスビーズ、ガラス繊維、炭素繊維などの補強材を添加することができる。
以下に実施例によって本発明の効果を説明する。なお、実施例中の%及び部とは、断りのない場合、すべて重量基準である。また、実施例中に示される物性は次のように測定した。
[熱可塑性ポリエステルエラストマ(A−1)]
結晶性芳香族ポリエステルからなる高融点結晶性重合体セグメントとなるテレフタル酸270部、脂肪族ポリエーテル単位からなる低融点重合体セグメントとなる数平均分子量約1400のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール686部、さらに1,4−ブタンジオール311部、チタンテトラブトキシド1.8部をヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190〜225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった。反応混合物に”イルガノックス”1098(チバガイギー社製ヒンダ−ドフェノ−ル系酸化防止剤)0.5部を添加した後、243℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で2時間45分重合を行わせた。得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングを行ってペレットとした。この熱可塑性ポリエステルエラストマの融点は、160℃であった。
[熱可塑性ポリエステルエラストマ(A−2)]
結晶性芳香族ポリエステルからなる高融点結晶性重合体セグメントとなるテレフタル酸ジメチル312部およびイソフタル酸ジメチル91部、脂肪族ポリエーテル単位からなる低融点重合体セグメントとなる数平均分子量約1000のポリ(エイチレンオキサイド)プロピレングリコール537部、さらに1,4−ブタンジオール167部、チタンテトラブトキシド4部をヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190〜225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった。反応混合物に”イルガノックス”1098および1019(チバガイギー社製ヒンダ−ドフェノ−ル系酸化防止剤)各2部を添加した後、243℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で3時間重合を行った。得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングを行ってペレットとした。この熱可塑性ポリエステルエラストマの融点は、154℃であった。
[石油樹脂(B−1)]
ノバレスLA100(ノバレス・ルトガース社製、フェノール変性クマロン・インデン樹脂)。
[石油樹脂(B−2)]
ネオポリマーL―90(ENEOS社製、C9系石油樹脂)。
[増粘剤(C)]
ボンドファーストBF−E(住友化学(株)社製、エチレンーグリシジルメタクリレート共重合体)。
[高融点熱可塑性ポリエステル(D−1)]
結晶性芳香族ポリエステルからなる高融点結晶性重合体セグメントとなるテレフタル酸505部、脂肪族ポリエーテル単位からなる低融点重合体セグメントとなる数平均分子量約1400のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール354部、さらに1,4−ブタンジオール251部、チタンテトラブトキシド1.8部をヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190〜225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった。反応混合物に”イルガノックス”1098(チバガイギー社製ヒンダ−ドフェノ−ル系酸化防止剤)0.5部を添加した後、243℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で2時間45分重合を行わせた。得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングを行ってペレットとした。この熱可塑性ポリエステルの融点は、208℃であった。
[高融点熱可塑性ポリエステル(D−2)]
トレコン1100S(東レ(株)社製、ポリブチレンテレフタレート)この熱可塑性ポリエステルの融点は、224℃であった。
[試験片の成形]
日精樹脂工業(株)製の射出成形機NEX−1000を用いて、ポリエステルエラストマ樹脂組成物の射出成形を行い、ペレットから126x63x2mmの角板状の試験片を得た。
[動摩擦係数]
(株)トリニティラボ製の静・動摩擦測定機TL201Ttを用いて、下記条件で動摩擦係数を測定した。動摩擦係数が2.2以上を○とし、2.1以下を×とした。また、後述の[低温静置]後に、同様に動摩擦係数を測定した。低温静置後動摩擦係数が2.2以上を○とし、2.1以下を△とした。評価結果を表1に示す。
荷重:20g
摺動速度:28mm/s
摺動距離:30mm
摩擦相手材:SUS
摩擦係数測定範囲:3〜30mm。
[低温静置]
エスペック(株)製の小型環境試験器SU−641を用いて、5℃条件下で1週間静置した。
[ふるい通過率]
ポリエステルエラストマ樹脂組成物ペレットの合着性を評価するため、4mm四方のふるいにポリエステルエラストマ樹脂組成物ペレットを400g投入した。1分間ふるいを振動させ、ふるいを通過したペレットの重量を測定した。その後、下記計算式を用いて、ふるい通過率を算出した。70以上を○とし、70未満を△とし、30未満を×とした。評価結果を表1に示す。
[ふるい通過率(%)]=[ふるい通過ペレット(g)]/[ポリエステルエラストマ樹脂組成物投入量(g)]x100
摩擦係数、ふるい通過率の評価結果を表1に示す。
[実施例1、4]熱可塑性ポリエステルエラストマ(A−1)または(A−2)を95質量部、石油樹脂(B−1)を5質量部で構成された合計100質量部の樹脂組成物では、高い動摩擦係数が得られた。
[実施例2、3、5]熱可塑性ポリエステルエラストマ(A−1)または(A−2)を90または80質量部、石油樹脂(B−1)を10または20質量部で構成された合計100質量部の樹脂組成物では、より高い動摩擦係数が得られた。
[実施例6]熱可塑性ポリエステルエラストマ(A−1)を90質量部、石油樹脂(B−1)を10質量部で構成された合計100質量部の樹脂組成物に対して、さらに増粘剤(C)を添加すると、低温静置後であっても、高い動摩擦係数が得られた。
[実施例7、8]熱可塑性ポリエステルエラストマ(A−1)を89または83質量部、石油樹脂(B−1)を11または17質量部で構成された合計100質量部の樹脂組成物に対して、増粘剤(C)を添加し、さらに高融点熱可塑性ポリエステル(D−1)を添加することで、高い動摩擦係数を維持しつつ、高いふるい通過率を有する樹脂組成物が得られた。
[実施例9]熱可塑性ポリエステルエラストマ(A−1)を89質量部、石油樹脂(B−1)を11質量部で構成された合計100質量部の樹脂組成物に対して、高融点熱可塑性ポリエステル(D−2)を添加することで、高い動摩擦係数を維持しつつ、高いふるい通過率を有する樹脂組成物が得られた。このことから高融点熱可塑性ポリエステル(D)はポリブチレンテレフタレートを用い得ることがわかる。
[実施例10、11]熱可塑性ポリエステルエラストマ(A−2)を95または90質量部、石油樹脂(B−2)を5または10質量部で構成された合計100質量部の樹脂組成物で、高い動摩擦係数が得られた。
[比較例1、2]熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)のみでは、動摩擦係数が低いことがわかる。
Figure 2021025044

Claims (3)

  1. 熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)と石油樹脂(B)を含む熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物であって、熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)および石油樹脂(B)を合計100質量部に対して、熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)が75〜99質量部、石油樹脂(B)1〜25質量部であり、石油樹脂(B)がクマロン・インデン樹脂または石油C9留分由来の芳香族炭化水素樹脂である、熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物。
  2. さらに増粘剤(C)を、熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)および石油樹脂(B)を合計100質量部に対して、0.1〜7質量部含む請求項1に記載の熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物。
  3. さらに融点200℃以上の熱可塑性ポリエステル(D)を、前記増粘剤(C)の添加量は、熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)および石油樹脂(B)を合計100質量部に対して、1〜20質量部を含む請求項1に記載の熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物。
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