JP2021021151A - カーボンナノチューブ含有セルロース繊維およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、特許文献1には、複合繊維としてのCNTを含有させたセルロース繊維を湿式紡糸法により紡糸することが開示されている。
さらに、耐熱性に優れた高強度な繊維として、ビスコース法セルロース繊維が多用されているが、このビスコース法セルロース繊維であってもフィブリル化の低減および強度の向上を十分に実現することができていない。
なお、本発明において、「化学修飾カーボンナノチューブの表面」とは、最表面から深さ5nmまでの領域を意味する。
また、本発明において、化学修飾カーボンナノチューブの表面における窒素炭素結合および酸素炭素結合の存在は、X線光電子分光法(XPS法)により確認することができる。
なお、本発明において、「化学修飾カーボンナノチューブの表面における窒素原子(N)および酸素原子(O)の合計含有量」は、X線光電子分光法(XPS法)により測定することができる。
なお、本発明において、化学修飾カーボンナノチューブの表面における官能基の存在は、X線光電子分光法(XPS法)により確認することができる。
なお、本発明において、ある物質が「水溶性」であるとは、25℃において、当該物質0.5gを100gの水に溶解した際に、不溶分が0質量%以上1.0質量%未満となることをいう。
また、本発明において、ある液体が「セルロース繊維原料を溶解可能」とは、当該セルロース繊維原料0.5gを100gの当該液体に溶解した際に、不溶分が0質量%以上1.0質量%未満となることをいう。
ここで、本発明のCNT含有セルロース繊維は、特に限定されることなく、ベルト、ホースなどの補強材や、繊維強化プラスチック、アスベスト代替繊維材料、セメント補強繊維などの産業資材用繊維として用いることができる。そして、本発明のCNT含有セルロース繊維を製造するCNT含有セルロース繊維の製造方法は、フィブリル化が十分に低減されると共に、強度が十分に向上されたCNT含有セルロース繊維を製造する際に用いることができる。
本発明のCNT含有セルロース繊維は、化学修飾カーボンナノチューブと、セルロース繊維とを含み、任意に、化学修飾カーボンナノチューブおよびセルロース繊維以外の成分(その他の成分)をさらに含む。
化学修飾カーボンナノチューブは、その表面に、窒素炭素結合および酸素炭素結合の少なくともいずれかを有する。
また、化学修飾カーボンナノチューブの表面における窒素炭素結合および酸素炭素結合は、所定の官能基に由来するものであり、この所定の官能基は、例えばカーボンナノチューブに所定のプラズマ処理を施すことにより導入することができる。
ここで、官能基は、窒素原子、炭素原子、水素原子および酸素原子からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。官能基の具体例としては、例えば、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミド基などが挙げられる。
また、化学修飾カーボンナノチューブの表面における窒素原子(N)および酸素原子(O)の合計含有量については、上述した通り、X線光電子分光法(XPS法)により測定することができる。
具体的には、先ず、試料ホルダーに貼付したカーボンテープ上に測定対象とする化学修飾カーボンナノチューブを振り掛けて固定し、例えば、走査型X線光電子分光装置「VG Theta Probe(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製」を用い、「照射X線;単結晶分光AlKα、X線スポット径;800μm×400μmの楕円形)」の測定条件で、有視状態面についてサーベイスキャン測定(定性分析)を行い、その後、着目元素や検出元素に関するナロースキャン測定(状態分析)を行うことで、結合状態や官能基成分の情報を得ることができる。
カーボンナノチューブ(CNT)としては、特に限定されることなく、単層カーボンナノチューブおよび/または多層カーボンナノチューブを用いることができるが、CNTは、単層カーボンナノチューブであることが好ましい。単層カーボンナノチューブを使用すれば、多層カーボンナノチューブを使用した場合と比較し、CNT含有セルロース繊維の強度をさらに向上させることができる。
なお、本発明において、「比表面積」とは、BET法を用いて測定したBET比表面積を指す。
ここで、「マイクロ孔容積(Vp)」は、CNTの液体窒素温度(77K)での窒素吸脱着等温線を測定し、相対圧P/P0=0.19における窒素吸着量をVとして、式(I):Vp=(V/22414)×(M/ρ)より、算出することができる。なお、Pは吸着平衡時の測定圧力、P0は測定時の液体窒素の飽和蒸気圧であり、式(I)中、Mは吸着質(窒素)の分子量28.010、ρは吸着質(窒素)の77Kにおける密度0.808g/cm3である。マイクロ孔容積は、例えば、「BELSORP(登録商標)−mini」〔日本ベル(株)製〕を使用して容易に求めることができる。
なお、スーパーグロース法とは、CVD法において、原料ガスと共に水などの触媒賦活物質を触媒に接触させることにより、触媒の活性および寿命を著しく増大させる方法である。
カーボンナノチューブのプラズマ処理は、例えば、アルゴン、ネオン、ヘリウム、窒素、二酸化炭素、酸素、大気(空気)等を含む容器内に表面処理対象であるカーボンナノチューブを配置し、グロー放電により生ずるプラズマにカーボンナノチューブを曝すことにより行なうことができる。なお、プラズマ発生の放電形式としては、(1)直流放電および低周波放電、(2)ラジオ波放電、(3)マイクロ波放電などを用いることができる。
プラズマ処理の条件は、特に限定されるものではないが、処理強度は、プラズマ照射面の単位面積当たりのエネルギー出力が0.05〜2.0W/cm2であることが好ましく、ガス圧力は、5〜150Paが好ましい。処理時間は、適時選択すればよいが、通常、1〜300分間、好ましくは10〜180分間、より好ましくは15〜120分間である。
上述したようなプラズマ処理をカーボンナノチューブに対して行うことによりカーボンナノチューブの表面に所定の官能基を導入して、化学修飾CNTを調製することができる。
セルロース繊維としては、特に限定されることなく、レーヨン、ポリノジックレーヨン、キュプラ、テンセル(商標)、リヨセル(商標)等のセルロース系再生繊維、および、綿、亜麻(リネン)、ラミー、バナナ、竹、ケナフ、月桃、ヘンプ、カポック等のセルロース系天然繊維などを用いることができる
ここで、高強度繊維を得るという観点からは、セルロース繊維として、比較的高分子量(重合度が1000〜1400程度)で物性の高い良質のパルプを原料とするレーヨンを用いることが好ましい。
価格という観点からは、セルロース繊維として、サトウキビ由来のバガスなどから得られる低分子量の安価なセルロース繊維を用いることが好ましい。ここで、低分子量とは、重合度が800以下であることを指し、より好適には重合度が200〜600程度である。
なお、本発明において「重合度」とは平均重合度を意味し、公知の方法に従い、繊維の銅/アンモニア水溶液を使用し、ウベローデ型粘度計を用いて測定することができる。
化学修飾CNTおよびセルロース繊維以外の成分としては、特に制限はない。本発明のCNT含有セルロース繊維には、その他の成分として、例えば、上述したドデシル硫酸ナトリウム等の分散剤、分散安定剤(ポリビニルアルコール等の水溶性高分子)や、CNT含有セルロース繊維の製造に用いたアルコール類や水が含まれていてもよい。また、本発明のCNT含有セルロース繊維には、例えば、上述したセルロース繊維、分散剤および分散安定剤以外の各種高分子が含まれていてもよい。
具体的には、本発明のCNT含有セルロース繊維は、例えば、4.50cN/dtex以上(好ましくは5.00cN/dtex以上、より好ましくは5.50cN/dtex以上)の強度を有する高強度繊維である。強度が上記下限以上であれば、産業資材としての使用に十分に耐えることができる。
そして、本発明のCNT含有セルロース繊維は、CNTの配向度が、セルロース繊維横断面内の中心部よりも外周部において低いことが好ましい。CNTは、セルロース繊維の分子構造同士(セルロース結晶構造同士)を固く結束させることでセルロース繊維の強度を増加させるため、セルロース繊維軸方向に配向されるCNTの度合いが中心部よりも外周部において高い場合、セルロース繊維表面に近いCNTが剥離する可能性が相対的に高まり、セルロース繊維の強度を損なう虞があるからである。一方、セルロース繊維横断面内の中心部よりも外周部においてCNTの配向度を低くすれば、CNTが剥離する可能性を相対的に低くして、より高い強度のセルロース繊維を得ることが可能となる。
なお、セルロース繊維横断面内におけるCNTの配向度は、紡糸する際の巻き取り速度を調整することにより制御することができ、例えば巻き取り速度を高速とするほど、中心部のCNTの配向度が高くなり、外周部のCNTの配向度が低くなる。
本発明のCNT含有セルロース繊維の製造方法は、上述のカーボンナノチューブ含有セルロース繊維を製造する方法であって、上述の化学修飾カーボンナノチューブと、水と、水溶性キシランとを含む混合液を分散処理してなるカーボンナノチューブ分散液を調製するカーボンナノチューブ分散液調製工程と、調製されたカーボンナノチューブ分散液と、セルロース繊維原料と、該セルロース繊維原料を溶解可能な非プロトン性極性溶媒および/またはイオン液体とを混合して紡糸原液を調製する紡糸原液調製工程と、調製された紡糸原液を湿式凝固法により凝固させた後に紡糸する紡糸工程とを含むことを特徴とする。
カーボンナノチューブ分散液調製工程では、上述の化学修飾カーボンナノチューブと、水と、水溶性キシランとを含む混合液を分散処理してなるカーボンナノチューブ分散液を調製する。
混合液は、上述の化学修飾カーボンナノチューブと、水と、水溶性キシラン(グルクロノキシラン)とを含み、必要に応じて、ドデシル硫酸ナトリウム等の界面活性剤(分散剤)をさらに含む。
水溶性キシラン(グルクロノキシラン)は、化学修飾カーボンナノチューブを水溶媒に可溶化または分散させる分散剤として機能し、後述するセルロース繊維原料を溶解可能な非プロトン性溶媒および/またはイオン液体の存在下であっても良好に機能し、CNT凝集体の形成を抑制する。
混合液中における化学修飾カーボンナノチューブの含有量は、水100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、1質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下であることがより好ましい。ここで、混合液中における化学修飾カーボンナノチューブの含有量が上記範囲内であれば、凝集のない安定な分散状態を得ることができる。
混合液中における水溶性キシラン(グルクロノキシラン)の含有量は、水100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、1質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下であることがより好ましい。ここで、混合液中における水溶性キシラン(グルクロノキシラン)の含有量が上記範囲内であれば、化学修飾CNTを安定に分散することができる。
分散処理は、超音波照射などの既知の手法を用いて行うことができる。
カーボンナノチューブ分散液は、上記混合液が分散処理されたものであり、分散安定剤として、例えば、水溶性高分子がさらに添加されていてもよい。
水溶性高分子としては、例えば、重合度200〜600のポリビニルアルコールであることが好ましい。
紡糸原液調製工程では、上述のカーボンナノチューブ分散液調製工程で得られたカーボンナノチューブ分散液と、セルロース繊維原料と、該セルロース繊維原料を溶解可能な非プロトン性極性溶媒および/またはイオン液体とを混合して紡糸原液を調製する。
セルロース繊維を原料として用いることにより、強度に優れるCNT含有セルロース繊維を低コストで製造することができる。
ここで、セルロース繊維原料は、上述したセルロース繊維をそのまま用いてもよいが、特に限定されることなく、セルロース繊維を、任意に分散剤の存在下で溶媒中に溶解または分散させて調製することができる。そして、溶媒としては、例えば、DMSO(ジメチルスルホキシド)、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルモルホリン−N−オキシド等の有機溶媒や、水を用いることができる。また、分散剤としては、既知の分散剤を用いることができる。さらに、セルロース繊維を用いる場合、例えば、没食子酸プロピルなどの酸化防止剤を添加するのが好ましい。酸化防止剤を添加することにより、変色の少ない、力学的特性に優れたセルロース繊維が得られる。
非プロトン性極性溶媒は、セルロース繊維原料を溶解可能な液体であり、例えば、DMSO(ジメチルスルホキシド)、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルモルホリン−N−オキシド、DMAc(ジメチルアセトアミド)、DMF(ジメチルホルムアミド)などが挙げられる。
イオン液体は、セルロース繊維原料を溶解可能な液体であり、例えば、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(BMIMCI)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(BMIMAc)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムホスフィネート(BMIMH2PO2)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムメチルホスホネイト(BMIMMeOHPO2)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(EMIMCl)、N,N−ジメチル−N−(2−メトキシエチル)−N−メチルアンモニウム、2−メトキシアセテート、などが挙げられる。
なお、非プロトン性極性溶媒およびイオン液体は混合して用いてもよい。また、非プロトン性極性溶媒およびイオン液体は、それぞれ、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
紡糸原液は、上述したカーボンナノチューブ分散液と、上述したセルロース繊維原料と、上述した非プロトン性極性溶媒および/またはイオン液体とを、撹拌、混練等を行いつつ均一に混合することにより得ることができる。なお、紡糸原液には、化学修飾CNTやセルロース繊維原料の分散性を阻害しない範囲において、各種アルコール類、多糖類、界面活性剤などを配合してもよい。
(1)非プロトン性極性溶媒および/またはイオン液体を含むセルロース繊維原料に、CNT分散物を添加する方法
(2)非プロトン性極性溶媒および/またはイオン液体を含むセルロース繊維原料と、CNTの溶媒分散液とを混合する方法
(3)CNTの溶媒分散液に固体のセルロース繊維原料を添加し、さらに非プロトン性極性溶媒および/またはイオン液体を添加する方法
なお、紡糸原液中で化学修飾CNTを均一に分散させることによりCNT含有セルロース繊維中での化学修飾CNTの分散性を高め、強度に優れるCNT含有セルロース繊維を得る観点からは、紡糸原液の調製方法としては、上記(1)または(2)の方法が好ましい。
通常は、紡糸原液中の化学修飾CNTの含有量を高めるほど得られるCNT含有セルロース繊維の強度は向上する一方、製造コストは増加する。そこで、本発明に係るCNT含有セルロース繊維の製造方法では、紡糸原液調製工程において、セルロース繊維原料100質量部当たりの化学修飾CNTの含有量が0.01質量部以上1.0質量部以下の割合となるように化学修飾CNTとセルロース繊維原料とを混合することが好ましく、化学修飾CNTの含有量は、0.02質量部以上0.5質量部以下の割合とすることが更に好ましい。セルロース繊維原料100質量部当たりの化学修飾CNTの含有量を1.0質量部以下とすれば、高価なCNTの使用量を抑制して、製造コストを低減することができる。一方、セルロース繊維原料100質量部当たりの化学修飾CNTの含有量を0.01質量部以上とすれば、化学修飾CNT配合による効果が得られる。
また、本発明に係るCNT含有セルロース繊維の製造方法では、紡糸原液調製工程において、セルロース繊維原料100質量部当たりの水溶性キシランの含有量が0.01質量部以上1.0質量部以下の割合となるように水溶性キシランとセルロース繊維原料とを混合することが好ましく、水溶性キシランの含有量は、0.05質量部以上0.5質量部以下の割合とすることが更に好ましい。本発明に係るCNT含有セルロース繊維の製造方法において、セルロース繊維原料100質量部当たりの水溶性キシランの含有量を上記範囲内にすれば、紡糸原液中でも凝集のない安定な分散状態を得ることができ、水溶性キシラン配合による効果が十分に得られる。
紡糸工程では、上述した紡糸原液調製工程で得られた紡糸原液を湿式凝固法により凝固させた後に紡糸し、CNT含有セルロース繊維を調製する。
湿式凝固法は、溶媒に溶かした繊維原料を凝固浴(水などの、繊維原料を溶かさない液体を満たした浴)に吐出し、凝固させる紡糸法である。そして、湿式凝固法では、繊維原料が凝固する際に組織化する。具体的には、湿式凝固法では、繊維原料は組織化し、一部が結晶化した状態で凝固する。
なお、紡糸原液を凝固させる液体としては、特に限定されることなく、水、上述したイオン液体と水との混合液、上述した非プロトン性極性溶媒と水との混合液などが挙げられる。また、凝固条件としては、従来の湿式凝固法で用いられている条件を採用することができる。紡糸原液を凝固浴中に吐出する速度は、製造する繊維の繊度と巻き取り速度に応じて適宜決定すればよい。
紡糸原液を凝固させて得た凝固物は、任意に水洗および乾燥した後、高速回転するローラなどを用いて、20m/min以上2000m/min以下の巻き取り速度、好ましくは50m/min以上1500m/min以下、より好ましくは100m/min以上1000m/min以下の巻き取り速度で巻き取られ(即ち、紡糸され)、CNT含有セルロース繊維となる。なお、凝固物を巻き取ってCNT含有セルロース繊維とする際には、凝固と脱溶媒が一層進行するとともに延伸が同時に行われ、化学修飾CNTが繊維軸方向に配向される。
<化学修飾CNTの調製>
カーボンナノチューブ(ゼオンナノテクノロジー株式会社製、「ZEONANO SG101」)をガス導入可能な真空プラズマ装置(株式会社魁半導体製、「YHS−DΦS」)を用い、圧力40Pa、パワー200W(単位面積当たりのエネルギー出力:1.28W/cm2)、回転速度30rpm、窒素導入条件下で、0.5時間処理を実施することにより、化学修飾CNTを得た。
得られた化学修飾CNTを試料ホルダーに貼付したカーボンテープ上に振り掛けて固定し、走査型X線光電子分光装置「VG Theta Probe(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製」を用い、「照射X線;単結晶分光AlKα、X線スポット径;800μm×400μmの楕円形)」の測定条件で、有視状態面についてサーベイスキャン測定(定性分析)を行い、その後、ナロースキャン測定(状態分析)を行った。その結果、得られた化学修飾CNTの表面(最表面から深さ5nmまでの領域)に窒素炭素結合が存在することを確認し、化学修飾CNTの表面における窒素原子(N)および酸素原子(O)の合計含有量は9.9原子%であった。
<紡糸原液の調製>
次いで、得られた化学修飾CNT0.1質量部と、水100質量部と、界面活性剤としてのドデシル硫酸ナトリウム1質量部と、水溶性キシラン(グルクロノキシラン)0.1質量部を混合して、超音波照射により超音波分散処理して、化学修飾CNT分散液を得た。
さらに、混練機に、イオン液体としての1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(BMIMCl)90質量部と、得られた化学修飾CNT分散液をCNT量で0.01質量部、セルロース繊維原料としてのパルプ(GeorgiaPacific社製、商品名「VFC」、DP630)9.99質量部を投入し、BMIMClがパルプに均一に行き渡るように撹拌した。その後、110℃に加熱し、減圧下で水分を蒸発除去しながら撹拌することでセルロースの溶解を行い、化学修飾CNT複合セルロース溶液(紡糸原液)を得た。
<CNT含有セルロース繊維の製造および評価>
得られた紡糸原液を、直径(内径)270μmの1Holeのノズルから0.1mL/minで吐出させ、150mmの空気層を通した後に15℃の水に浸漬させ、凝固および脱溶媒を行い、巻き取り速度126m/minで巻き取ることでCNT含有セルロース繊維を得た。
そして、得られたCNT含有セルロース繊維について、自動繊度測定器(LENZING TECHNIK社製、商品名「Vibroskop400」)を用いて、繊度を測定した。結果を表1に示す。さらに、得られたCNT含有セルロース繊維について、自動強伸度測定器(LENZING TECHNIK社製、商品名「Vibrodyn500」)を用いて、試験(測定条件:温度20℃±2℃、相対湿度65±2%)を行い、強度、結節強度、伸度、および結節伸度を測定した。結果を表1に示す。
化学修飾CNTを用いる代わりに、化学修飾していないCNT(ゼオンナノテクノロジー株式会社製、「ZEONANO SG101」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、紡糸原液およびセルロース繊維を製造し、得られたCNT含有セルロース繊維について、繊度、強度、結節強度、伸度、および結節伸度を測定した。結果を表1に示す。
化学修飾CNTを配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、紡糸原液およびセルロース繊維を製造し、得られたセルロース繊維について、繊度、強度、結節強度、伸度、および結節伸度を測定した。結果を表1に示す。
また、化学修飾CNTを含有させた(化学修飾CNTを複合した)セルロース繊維(実施例1)では、未修飾のCNTを含有させた(未修飾のCNTを複合した)セルロース繊維(比較例1)と比べて強度及び結節強度が向上していた。これは、化学修飾CNTでは未修飾のCNTよりもセルロース溶液中でのCNTの分散が良好な状態であるためと考えられる。更に、実施例1のセルロース繊維は、比較例1のセルロース繊維と比べて結節強度及び伸度の向上が確認され、このことから、実施例1のセルロース繊維は、比較例1のセルロース繊維よりもフィブリル化を低減しうると言える。
以上より、化学修飾CNTをセルロース繊維に複合することで、フィブリル化が低減され、且つ強度に優れたセルロース繊維の製造が可能となることが分かった。
Claims (4)
- 化学修飾カーボンナノチューブと、セルロース繊維と、を含むカーボンナノチューブ含有セルロース繊維であって、
前記化学修飾カーボンナノチューブが、その表面に、窒素炭素結合および酸素炭素結合の少なくともいずれかを有する、カーボンナノチューブ含有セルロース繊維。 - 前記化学修飾カーボンナノチューブの表面における窒素原子(N)および酸素原子(O)の合計含有量が2原子%以上である、請求項1記載のカーボンナノチューブ含有セルロース繊維。
- 前記化学修飾カーボンナノチューブが、その表面に、窒素原子、炭素原子、水素原子および酸素原子からなる群から選択される少なくとも1種を含む官能基を有する、請求項1または2記載のカーボンナノチューブ含有セルロース繊維。
- 請求項1から3のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有セルロース繊維を製造する方法であって、
前記化学修飾カーボンナノチューブと、水と、水溶性キシランとを含む混合液を分散処理してなるカーボンナノチューブ分散液を調製するカーボンナノチューブ分散液調製工程と、
前記調製されたカーボンナノチューブ分散液と、セルロース繊維原料と、該セルロース繊維原料を溶解可能な非プロトン性極性溶媒およびイオン液体の少なくとも一方と、を混合して紡糸原液を調製する紡糸原液調製工程と、
前記調製された紡糸原液を湿式凝固法により凝固させた後に紡糸する紡糸工程と、を含むカーボンナノチューブ含有セルロース繊維の製造方法。
Priority Applications (4)
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