本発明者等は、種々の検討を重ね、運転サイクルを通して制御棒価値を向上させることができる新たな燃料集合体を見出した。この検討結果及び新たに見出した燃料集合体の概要について以下に説明する。
沸騰水型原子炉(BWR)に用いられるMOX燃料集合体に用いられるMOX燃料(ウランとプルトニウムの混合酸化物燃料)において、核分裂性プルトニウムの富化度を高めた場合、前述したように、制御棒価値が減少するという問題が生じる。
沸騰水型原子炉で用いられる制御棒は、中心軸から四方に伸びる、中性子吸収材を含む4枚のブレードを有する。この制御棒は横断面が十字形をしており、2枚のブレードが、炉心内で、燃料集合体のチャンネルボックス(横断面が正方形状の角筒)の1つのコーナー部から伸びる、チャンネルボックスの2つの側壁部に対向している。なお、そのチャンネルボックスは、4つの側壁部により構成される。
制御棒価値の向上には、燃料集合体内の燃料棒で発生し、燃料集合体相互間に存在する水ギャップ領域等で熱エネルギーまで減速された中性子が、より多く制御棒まで到達し、この制御棒で吸収される必要がある。そのため、燃料集合体の横断面において、チャンネルボックスの側壁部のうち、制御棒と対向する側壁部の内面に面する、最外周領域の部分に、熱中性子を吸収しやすい物質を配置しないという対策が考えられる。熱中性子を吸収しやすい代表的な物質としては、燃料棒に充填されたU235等の核分裂性核種がある。このため、燃料集合体の横断面において、チャンネルボックスの4つの側壁部のうち、制御棒と対向する側壁部の内面に面する、最外周領域の部分に配置される燃料棒に充填された核燃料物質の核分裂性プルトニウムの富化度を低下させることにより、制御棒価値が向上すると考えられる。
また、沸騰水型原子炉で用いられる燃料集合体では、燃料棒内の核燃料物質に含まれる核分裂性核種(例えば、U235,Pu239等)の核分裂によって発生する中性子は、主に水ギャップ領域で減速される。この水ギャップ領域は、燃料集合体相互間に形成される。燃料集合体の最外周領域に配置された燃料棒内の核燃料物質による熱中性子の吸収は、制御棒価値を悪化させる要因となる。その燃料棒内には、U238等の親核種が存在しており、この親核種は、中速中性子を共鳴吸収する。すなわち、チャンネルボックスの4つの側壁部のうち、制御棒と対向する2つの側壁部のそれぞれの内面に面する、最外周領域の部分に配置される燃料棒に充填された核燃料物質の核分裂性プルトニウムの富化度を低下させるだけではなく、核燃料物質を排除することによって、制御棒価値はさらに改善できると考えられる。
以上に述べたことを考慮すると、チャンネルボックスの、制御棒と対向する2つの側壁部のそれぞれの内面に面する、最外周領域の部分に配置される燃料棒内の核燃料物質の一部を排除することにより、その最外周の部分での熱中性子の吸収量が減り、制御棒価値が向上すると考えられる。ただし、その部分に配置される燃料棒内の一部の核燃料物質を排除する替りに、排除する核燃料物質と同量の軽水をその部分に設けると、最外周領域のその部分でその軽水による熱中性子の吸収が発生する。
燃料集合体内で核燃料物質による熱中性子の吸収量が少なくなり、特に、燃料集合体内の最外周領域の上記の部分で軽水中の熱中性子束が増大し、その部分における軽水による熱中性子の吸収量が増加する。このため、運転サイクルの末期における制御棒価値が悪化する。
その課題を解消するために、発明者らは、チャンネルボックスを構成する複数の側壁部(例えば、4つの側壁部)のうち、制御棒と対向する2つの側壁部のそれぞれの内面に面する、最外周領域の部分に配置される燃料棒内に、軽水よりも中性子吸収断面積が小さいガスを充填したガス充填領域を形成することを思い付いた。このガス充填領域をそれらの燃料棒内に形成することによって、制御棒価値を効果的に向上できるのではと考えた。
発明者らは、以上の検討結果を基に、種々の燃料集合体による制御棒価値の向上度合いを評価した。以下にその評価結果について説明する。
ケース1ないし4の4つのケースのそれぞれに対し、制御棒価値の向上度合いを評価した。ケース1では、一般的な沸騰水型原子炉で使用される燃料集合体、すなわち、図9に示す燃料集合体10Aが用いられる。図9は、燃料集合体10Aの上部、すなわち、燃料集合体10Aの後述の部分長燃料棒の上端よりも上方の位置での横断面を示している。燃料集合体10Aのチャンネルボックス16は、4つの側壁部、すなわち、側壁部16A,16B,16C及び16Dを有し、隣り合う側壁部同士が互いに繋がっている。側壁部16A及び16Bのそれぞれが、水ギャップ領域44内に存在する制御棒33の2枚のブレードのそれぞれと対向している。燃料集合体10Aは、チャンネルボックス16内に、10行10列に配列された複数の燃料棒11を有する。10行10列に配列された全ての燃料棒11は、下端部が下部タイプレート(図示せず)によって支持されて上端部が上部タイプレート(図示せず)によって支持される全長燃料棒12であり、充填された核燃料物質に含まれる核分裂性プルトニウム(Puf)の富化度が5.61wt%である燃料棒1である。チャンネルボックス16内に配置された燃料棒11の本数は、78本である。図9のチャンネルボックス16の内面から2列目の燃料棒配列の、燃料棒を示す丸印が記載されていない位置、及び燃料集合体10Aの横断面の中央部の、燃料棒を示す丸印が記載されていない位置には、全長燃料棒よりも軸方向の長さが短く、下端部が下部タイプレートに支持されて上端部が上部タイプレートに支持されていない部分長燃料棒が配置される。燃料経済性、及び燃料集合体の横断面での出力平坦化のため、2本のウォーターロッドWRが燃料集合体の横断面の中央部に配置される。燃料集合体の横断面において、2本のウォーターロッドWRが占める領域は、8本の燃料棒11の配置が可能な領域に相当する。
後述の燃料集合体10Bないし10Dのそれぞれの燃料集合体でも、燃料集合体10Aの横断面と同じ位置に部分長燃料棒が配置される。
以降に述べるケース2ないし4の各燃料集合体10Bないし10Dのそれぞれも、プルトニウム装荷量を同等にするため、燃料棒11の本数をケース1の燃料集合体10Aと同じにしている。図10、図11および図12のそれぞれは、燃料集合体10B,10C及び10Dのそれぞれにおける、部分長燃料棒の上端より上方の位置での横断面を示している。
ケース2では、図10に示す燃料集合体10Bが用いられる。燃料集合体10Bは、燃料集合体10Aと同様に、10行10列に配列された複数の燃料棒11として全長燃料棒12を用いている。燃料集合体10Aでは、チャンネルボックス16の内面に隣接する最外周領域35、及び最外周領域35よりも内側の中央領域のそれぞれに配置される燃料棒11は、それぞれ燃料棒1であって核燃料物質に含まれる核分裂性プルトニウムの富化度が5.61wt%と同じであるのに対し、燃料集合体10Bでは、最外周領域35に配置される燃料棒11は全て燃料棒3であり、最外周領域35よりも内側の中央領域に配置される燃料棒11は全て燃料棒2である。各燃料棒3に充填された核燃料物質に含まれる核分裂性プルトニウムの富化度は、前述の燃料棒1に充填された核燃料物質のその富化度よりも低く、4.30wt%であり、各燃料棒2に充填された核燃料物質に含まれる核分裂性プルトニウムの富化度は、前述の燃料棒1に充填された核燃料物質のその富化度よりも高く、6.73wt%である。燃料集合体10Bでは、最外周領域35に配置される燃料棒3の核分裂性プルトニウムの富化度は、中央領域に配置される燃料棒2の核分裂性プルトニウムの富化度よりも低くなっている。しかしながら、燃料集合体10Bにおける核分裂性プルトニウムの平均富化度は、燃料集合体10Aにおける核分裂性プルトニウムの平均富化度と同じである。
燃料集合体10Bでも、この燃料集合体の横断面の中央部に、燃料集合体10AのウォーターロッドWRと同じ太さを有する2本のウォーターロッドWRを配置している。
ケース3では、図11に示す燃料集合体10Cが用いられる。燃料集合体10Cは、ケース1の燃料集合体10Aの横断面の中央に配置された2本のウォーターロッドWRの替りに燃料棒11の外径と同じ外径を有する8本のウォーターロッドWRを有している。燃料集合体10Cは、燃料集合体10Aの横断面の中央部で2本のウォーターロッドWRが配置された位置に8本の燃料棒1を配置し、8本のウォーターロッドWRは、チャンネルボックス16の、制御棒33と対向する2つの側壁部16A及び16Bの各内面に面する最外周領域35のそれぞれの部分に、4本ずつ分けて配置される。78本の燃料棒1及び8本のウォーターロッドWRが、図11に示すように、10行10列に配列されている。燃料棒1の核分裂性プルトニウムの富化度は、燃料集合体10Aと同じく5.61wt%である。また、燃料集合体10Cにおける核分裂性プルトニウムの平均富化度は、燃料集合体10Aにおける核分裂性プルトニウムの平均富化度と同じである。
ケース4では、図12に示す燃料集合体10Dが用いられる。燃料集合体10Dは、燃料集合体10Cにおいてチャンネルボックス16の4つの側壁部のうち、制御棒33と対向する2つの側壁部16A及び16Bの各内面に面する、最外周領域35のそれぞれの部分で、ウォーターロッドWRが配置された各位置に燃料棒H1を配置している。すなわち、燃料集合体10Dは、チャンネルボックス16の2つの側壁部16A及び16Bの各内面に面する、最外周領域35のそれぞれの部分に燃料棒H1を配置している。燃料集合体10Dでは、78本の燃料棒1及び8本の燃料棒H1が、図12に示すように、10行10列に配列されている。燃料棒1及び燃料棒H1のそれぞれの核分裂性プルトニウムの富化度は、燃料集合体10Aと同じく5.61wt%である。燃料集合体10Dにおける核分裂性プルトニウムの平均富化度も、燃料集合体10Aにおける核分裂性プルトニウムの平均富化度と同じである。燃料棒H1は、内部に核分裂性プルトニウムを含むMOX燃料(核燃料物質)を充填した核燃料物質充填領域、及びガス充填領域である、ヘリウムガスを充填したHe充填領域を形成しており、その核燃料物質充填領域及びHe充填領域のそれぞれのノード数は図2に示す燃料棒H2におけるそれらの領域のノード数と同じである。
以上のケース1〜ケース4の各燃料集合体について、燃料集合体の冷温時における制御棒価値を求め、燃焼度に対応して変化する制御棒価値の平均値を求めた。この得られた制御棒価値の平均値を図13に示す。図13に示されたケース1〜4のそれぞれの燃料集合体に対する各制御棒価値は、燃料集合体10Aの、部分長燃料棒の上端よりも上方における図9に示された横断面での燃料棒配置、燃料集合体10Bの、部分長燃料棒の上端よりも上方における図10に示された横断面での燃料棒配置、燃料集合体10Cの、部分長燃料棒の上端よりも上方における図11に示された横断面での燃料棒配置、及び燃料集合体10Dの、部分長燃料棒の上端よりも上方における図12に示された横断面での燃料棒配置が各燃料集合体の軸方向において持続されるとして求められた。
ケース1〜4のうち、ケース4の、チャンネルボックス16の4つの側壁部のうち、制御棒と対向する2つの側壁部の各内面に面する、最外周領域35のそれぞれの部分に、燃料棒H1を配置している燃料集合体10D(ケース4)で、制御棒価値が最も大きくなった。燃料集合体10Dで制御棒価値が最も大きくなる理由は、上記のように最外周領域35に配置された燃料棒H1の作用により、最外周領域35での核分裂性核種による熱中性子の吸収、U238等の親核種による中速中性子の吸収、及び軽水による中性子の吸収が減少するからである。
次に、発明者らは、炉心の反応度を効率的に抑制するために、ケース4の燃料集合体10Dにおいて図12に示す横断面を軸方向のどの部分に設置するかを検討した。
一般的に、冷温時の炉心においては、中性子束のピークは炉心の軸方向において上部に存在する。そのため、燃料集合体10Dの、部分長燃料棒の上端よりも上方における図12に示された横断面での燃料棒配置を、軸方向において、燃料集合体10Dの上部に形成することにより、炉心の反応度を効率的に抑制できると考えられる。
以上の検討を反映し、発明者らは、燃料集合体10Dの上記の横断面での燃料棒配置を、燃料集合体10Dの燃料有効長(第1燃料有効長)の上端からその下端に向かってどの程度の範囲に形成すればよいかを見極めるために、その燃料有効長の上端から下方に向かって、ノードに対応した制御棒価値の改善率を求め、この改善率がどのように変化するかを確認した。なお、炉心に装荷した燃料集合体が全てMOX燃料集合体である全MOX平衡炉心の冷温時の出力分布を用いることによって、燃料集合体10Dの、特定のノードにおける横断面を変更した際の制御棒価値の改善率を求めることができる。なお、プルトニウムを含んでいる燃料集合体10Dの燃料有効長(第1燃料有効長)を軸方向において24分割したときの一つが1ノードであり、この燃料有効長は24ノードとなる。燃料集合体10Dの燃料有効長をLとしたとき、その1ノードの長さはL/24である。
燃料棒の燃料有効長は、燃料棒内で核燃料物質が充填されている領域の軸方向の長さである。また、燃料集合体の燃料有効長(第1燃料有効長)は、燃料集合体内で核燃料物質が存在している領域の軸方向の長さである。燃料集合体に燃料有効長が異なる複数の燃料棒が含まれている場合には、燃料有効長が最も長い燃料棒における燃料有効長が、その燃料集合体の燃料有効長となる。燃料有効長Lは、燃料集合体の燃料有効長及びこの燃料有効長と同じである燃料棒の燃料有効長を表している。
燃料集合体10Dの燃料有効長の24ノードに亘って、燃料集合体10Dの部分長燃料棒の上端よりも上方の位置での図12に示された横断面における燃料棒配置が形成されたときの、制御棒価値の改善率を100%とする場合において、図12に示された横断面におけるその燃料棒配置が、燃料集合体10Dの燃料有効長の上端から下方に向かう或るノード範囲で形成された際の、そのノード範囲に対する制御棒価値の改善率(%)の変化を、図14に示す。
燃料集合体10Dの、部分長燃料棒の上端よりも上方の位置での図12に示された横断面における燃料棒配置を、燃料有効長の上端から下方に向かう18ノードの範囲に形成すれば、すなわち、チャンネルボックス16の4つの側壁部のうち、制御棒と対向する2つの側壁部の各内面に面する、最外周領域35のそれぞれの部分に配置される複数の燃料棒H1の、燃料集合体10Dの燃料有効長の上端から下方に向かって伸びるHe充填領域の軸方向の長さを、18ノード(18L/24)にすれば、制御棒価値の改善率は、図14に示すように、100%まで向上する。チャンネルボックス16の、制御棒と対向する2つの側壁部の各内面に面する、最外周領域35のそれぞれの部分に配置される複数の燃料棒H1のHe充填領域の長さを、18ノード(18L/24)を超える長さにしても、燃料集合体10Dの燃料インベントリーがさらに減少するだけであり、制御棒価値の改善率はさらに向上しない。
燃料集合体10Dにおいて、チャンネルボックス16の、制御棒と対向する2つの側壁部の各内面に面する、最外周領域35のそれぞれの部分に配置される複数の燃料棒H1において、燃料集合体10Dの燃料有効長の上端から下方に向かって伸びるHe充填領域の軸方向の長さを、2ノード(2L/24)以上にすれば、制御棒価値の改善率は、図14に示すように、著しく増加する。ここで、制御棒価値の改善率とは、He充填領域の軸方向の長さを「0」であるときの制御棒価値に対する制御棒価値の増加割合である。なお、He充填領域の軸方向の長さを「0」であるときの制御棒価値は0%である。
このため、燃料棒H1を含む燃料集合体10Dでは、チャンネルボックス16のそれらの側壁部の各内面に面する最外周領域35のそれぞれの部分に配置される複数の燃料棒H1の、燃料集合体10Dの燃料有効長の上端から下方に向かって伸びるHe充填領域の軸方向の長さを、2ノード(2L/24)以上18ノード(18L/24)以下の範囲内の長さにすればよい。これにより、制御棒価値は著しく向上する。
また、「チャンネルボックス16のそれらの側壁部の各内面に面する最外周領域35のそれぞれの部分に配置される複数の燃料棒H1の、燃料集合体10Dの燃料有効長の上端から下方に向かって伸びるHe充填領域の軸方向の長さを、2ノード(2L/24)以上18ノード(18L/24)以下の範囲内の長さにする」ことは、「ガス充填領域の下端と燃料棒H1の燃料有効長(第2燃料有効長)の上端との境界の位置が、燃料集合体10Dの燃料有効長(第1燃料有効長)の上端から2L/24だけ下方に位置する位置と、第1燃料有効長の上端から18L/24だけ下方に位置する位置の範囲内に存在する位置である」ことに該当する。
チャンネルボックス16の4つの側壁部のうち、制御棒と対向する2つの側壁部の各内面に面する、最外周領域35のそれぞれの部分に配置された燃料棒H1の、燃料集合体10Dの燃料有効長の上端から下方に向かって伸びるHe充填領域の軸方向の長さを、7ノード(7L/24)の長さにすれば、図14において点線で示すように、制御棒価値の改善率は、50%を超える。
好ましくは、そのHe充填領域の軸方向の長さを、7ノード(7L/24)以上18ノード(18L/24)以下の範囲内の長さにすることよって、制御棒価値の改善率を50%を超え100%以下の範囲内にすることができ、制御棒価値がさらに向上する。
また、「そのHe充填領域の軸方向の長さを、7ノード(7L/24)以上18ノード(18L/24)以下の範囲内の長さにする」ことは、「第2燃料有効長の上端とHe充填領域の下端の境界の位置が、第1燃料有効長の上端から7L/24だけ下方に位置する位置と、第1燃料有効長の上端から18L/24だけ下方に位置する位置の範囲内に存在する位置である」ことに該当する。
He充填領域は、中性子吸収断面積が軽水よりも小さいガスを充填したガス充填領域である。このガス充填領域に充填される、中性子吸収断面積が軽水よりも小さいガスとしては、Heガス、アルゴンガス、窒素ガス、酸素ガス及び空気のいずれかが用いられる。
中性子吸収断面積が軽水よりも小さいガスの替りに、中性子吸収断面積が軽水よりも小さい固体物質を用いても、中性子吸収断面積が軽水よりも小さいガス、例えば、Heガスで生じる効果を得ることができる。中性子吸収断面積が軽水よりも小さい固体物質としては、黒鉛、ベリリウム、酸化ベリリウム及び炭化ベリリウムのいずれかが用いられる。中性子吸収断面積が軽水よりも小さいガス及び中性子吸収断面積が軽水よりも小さい固体物質は、中性子吸収断面積が軽水よりも小さい物質である。なお、中性子吸収断面積が軽水よりも小さい物質としては、中性子吸収断面積が軽水よりも小さいガス及び中性子吸収断面積が軽水よりも小さい固体物質の少なくとも一つを用いるとよい。
中性子吸収断面積が軽水よりも小さいガス及び中性子吸収断面積が軽水よりも小さい固体物質等の、中性子吸収断面積が軽水よりも小さい物質の充填領域(物質充填領域)の、燃料集合体の燃料有効長Lの上端から下方に向かって伸びる軸方向の長さは、2L/24以上18L/24以下の範囲内の長さである。その物質充填領域の軸方向の長さは、好ましくは、7L/24以上18L/24以下の範囲内の長さである。
上記の検討結果を反映した、本発明の好適な実施例を、以下に図面を用いて説明する。
本発明の好適な一実施例である、改良型沸騰水型原子力プラントに適用される実施例1の燃料集合体を、図1、図2及び図4を用いて説明する。
本実施例の燃料集合体を説明する前に、この燃料集合体が適用される改良型沸騰水型原子力プラント(ABWRプラント)の原子炉の概略構造を、図3に基づいて説明する。この原子炉20は、原子炉圧力容器21を有し、複数の燃料集合体(図示せず)が装荷された炉心23を原子炉圧力容器21内に配置している。原子炉圧力容器21内において、円筒状の炉心シュラウド22が炉心23を取り囲む。さらに、炉心23の上方に配置された上部格子板24が炉心シュラウド22に取り付けられ、炉心23の下方に配置された炉心支持板25が炉心シュラウド22に取り付けられる。原子炉圧力容器21内で上部格子板24よりも上方に配置された気水分離器26が、炉心シュラウド22の上端部に設置される。さらに、蒸気乾燥器27が、気水分離器26の上方に配置されて原子炉圧力容器21の内面に設置される。
環状のダウンカマ28が、炉心シュラウド22の外面と原子炉圧力容器21の内面の間に形成される。ダウンカマ28内に配置されたインターナルポンプ30が、原子炉圧力容器21の底部を貫通して下方に向かって伸びており、原子炉圧力容器21に取り付けられる。主蒸気配管31および給水配管32が、原子炉圧力容器21に接続される。
下部プレナム29が、原子炉圧力容器21内で炉心23の下方に形成される。下部プレナム29には、複数の制御棒案内管(図示せず)が配置されている。燃料集合体10(図1参照)の核分裂を制御する、横断面が十字形をしている制御棒33(図11参照)が、それらの制御棒案内管内に別々に配置される。複数の制御棒駆動機構ハウジング(図示せず)が、原子炉圧力容器21の底部に取り付けられ、その底部から下方に向かって伸びている。制御棒駆動機構(図示せず)が、それぞれの制御棒駆動機構ハウジング内に配置され、制御棒33に連結されている。制御棒33は中性子吸収材を含む4枚のブレードを有し、4枚のブレードは制御棒の中心軸から四方に向かって伸びている。
炉心23に装荷された複数の燃料集合体10は、図4に示すように、複数の燃料棒11、上部タイプレート(上部燃料支持部材)14、下部タイプレート15(下部燃料支持部材)、軸方向に配置された複数の燃料スペーサ17、及びチャンネルボックス16を有する。
複数の燃料棒11は、下端部が下部タイプレート15に支持されて上端部が上部タイプレート14に支持される複数の全長燃料棒12、及び軸方向の長さが全長燃料棒12よりも短く、下端部が下部タイプレート(下部燃料支持部材)15に支持されて上端部が上部タイプレート(上部燃料支持部材)14に支持されていない複数の部分長燃料棒13を含んでいる。
全長燃料棒12及び部分長燃料棒13は、被覆管(図示せず)を有し、この被覆管の下端部を下部端栓(図示せず)で封鎖して被覆管の上端部を上部端栓(図示せず)で封鎖し、核燃料物質を用いて製造された複数の燃料ペレット(図示せず)を被覆管内に充填して構成される。ガスプレナム(図示せず)が、被覆管内で、それらの燃料ペレットが充填された領域の上方に形成される。
全ての燃料棒11は、相互間に冷却水流路となる所定幅のスペースを形成するように、燃料棒11の軸方向において所定の間隔に配置された複数の燃料スペーサ17によって束ねられている。複数の燃料スペーサ17によって束ねられた燃料棒11の束は、横断面が正方形状の角筒であるチャンネルボックス16内に配置される。このチャンネルボックス16は、互いに繋がっている4つの側壁部16A,16B,16C及び16Dにより構成されている。側壁部16A,16B,16C及び16Dを有するチャンネルボックス16は、横断面が正方形状の角筒である。チャンネルボックス16は、上端部が上部タイプレート14に取り付けられ、上部タイプレート14から下部タイプレート15に向かって伸びている。チャンネルボックス16は、上部タイプレート14及び下部タイプレート15のそれぞれの側面を取り囲んでいる。ハンドル20Aが、上部タイプレート14の上面に設けられ、上部タイプレート14から上方に向かって伸びている。
チャンネルボックス16の上部タイプレート14への取り付けは、チャンネルファスナ18によって行われる。チャンネルボックス16の上端部に設けられたチャンネルクリップ43A及び43B(図7参照)のそれぞれが、上部タイプレート14の4つのコーナー部のうちで2つのコーナー部に設けられ上部タイプレート14の上面から上方に向かって伸びる2つのポストの上に置かれる。上部タイプレート14の4つのコーナー部のうちで制御棒33側に位置する1つのポスト14Aの上に置かれた、チャンネルボックス16の上端部の1つのコーナー部に設けられたチャンネルクリップ43A(図7及び図8参照)が、チャンネルファスナ18に係合されたねじ19Aによりポスト14Aに取り外し可能に固定される(図8参照)。このように、チャンネルファスナ18は、チャンネルボックス16をポスト14Aに固定される。他のチャンネルクリップ43Bが、チャンネルボックス16の横断面において、チャンネルクリップ43Aが設けられた、チャンネルボックス16の一つのコーナー部を通る対角線方向でそのコーナー部と対向する他のコーナー部でチャンネルボックス16の上端部に取り付けられている。チャンネルクリップ43Bは、上部タイプレート14の上面から上方に向かって伸びる他のポストの上に置かれる。
1つのチャンネルファスナ18は2つの板バネ19を有する。各板バネ19は、チャンネルボックス16の側面に沿い、ポスト14Aの上端から下方に向かって伸びている。チャンネルファスナ18の各板バネ19は、チャンネルファスナ18が取り付けられる燃料集合体10において、チャンネルボックス16の1つのコーナー部から直交する二方向に伸びる、チャンネルボックス16の2つの側壁部16A及び16Bの各外面に別々に対向して配置される。
燃料集合体10は、4体ずつ、上端部が上部格子板24に形成された正方形の矩形孔内に挿入される。この矩形孔内に挿入された4体の燃料集合体10において、隣り合う2体の燃料集合体10に取り付けられた各チャンネルファスナ18の1つの板バネ19が、互いに接触し(図8参照)、該当する2体の燃料集合体10を、上部格子板24に形成されたその矩形孔に面する、上部格子板24の側面に押圧する。上部格子板24に形成された1つの矩形孔内に挿入された4体の燃料集合体は、それぞれに取り付けられたチャンネルファスナ18の板バネ19が、図7に示されるように、それぞれ接触することによって、上部格子板24の、その矩形孔に面する側面に押し付けられる。このため、上部格子板24に形成された1つの矩形孔内に挿入された4体の燃料集合体10の相互間に、制御棒33を挿入できる間隙、すなわち、水ギャップ領域44が形成される。制御棒33が燃料集合体10の相互間に全挿入されたとき、制御棒33の上端は、板バネ19の下端よりも下方に位置する(図8参照)。
燃料集合体10は、図1に示すように、複数の燃料棒11を、燃料集合体10の横断面において、10行10列の正方格子でチャンネルボックス16内に配置している。複数の燃料棒11のうち複数の全長燃料棒12は、78本の燃料棒4及び8本の燃料棒(He燃料棒)H2を含んでいる(図2参照)。部分長燃料棒13である燃料棒5は、14本存在する(図2参照)。
燃料棒4の燃料有効長は燃料有効長Lである。各燃料棒4は、図2に示すように、核分裂性プルトニウム(Puf)の富化度が5.61wt%であるMOX燃料の複数の燃料ペレットを、燃料有効長Lの下端の位置から、燃料有効長Lの下端から23L/24の位置まで充填し、劣化ウランであるU2Oの複数の燃料ペレットを、燃料有効長Lの下端から23L/24の位置と燃料有効長Lの上端の間に充填している。各燃料棒H2の燃料有効長は20L/24である。各燃料棒H2は、核分裂性プルトニウムの富化度が5.61wt%であるMOX燃料の複数の燃料ペレットを、燃料有効長の下端の位置から、燃料有効長の下端から20L/24の位置まで充填し、中性子吸収断面積が軽水よりも小さいガス、例えば、Heを充填したHe充填領域48(図5参照)を、燃料棒4の燃料有効長の下端から20L/24の位置から、燃料集合体10の燃料有効長Lの上端に亘って形成している。He充填領域48は、燃料棒4の燃料有効長L、すなわち、燃料集合体10の燃料有効長Lの上端の位置とこの位置よりも下方の位置の間である4L/24の範囲に形成される。He充填領域48の軸方向の長さは、4L/24である。燃料棒H2は、MOX燃料等の核燃料物質を、そのHe充填領域(燃料有効長の下端から20L/24の位置と燃料有効長Lの上端の間)48に充填していない。燃料棒H2の燃料有効長は燃料棒4のそれよりも短くなっている。燃料棒H2の燃料有効長とガス充填領域であるHe充填領域48の軸方向長さの合計は、燃料棒4の燃料有効長Lと同じである。
なお、燃料集合体10の燃料有効長Lは、燃料集合体10に含まれる、燃料有効長が最も長い燃料棒4の燃料有効長Lに等しい。
燃料棒5は、燃料有効長が燃料棒4の燃料有効長Lの14/24であり、核分裂性プルトニウムの富化度が5.61wt%であるMOX燃料の複数の燃料ペレットを、14L/24の燃料有効長に充填している。
燃料集合体10では、最外周領域35における核分裂性プルトニウムの平均富化度と最外周領域35よりも内側の中央領域における核分裂性プルトニウムの平均富化度は同じである。
燃料棒4,5及びH2のそれぞれは、燃料ペレットから各燃料棒の被覆管の外面に接触する冷却水への熱の伝導を良好に維持するために、熱伝導率が高いヘリウムガスを密封された被覆管内に充填する。燃料棒内に熱伝導率が高いヘリウムガスを充填することは、従来から行われている。燃料棒4では、下端部が下部端栓により上端部が上部端栓により密封された被覆管内で、燃料有効長Lの上端よりも上方にヘリウムガスが充填されるガスプレナムが形成される。燃料棒5では、密封された被覆管内で、燃料棒5の燃料有効長(14L/24)の上端よりも上方にヘリウムガスが充填されるガスプレナム49が形成される。燃料棒H2では、He充填領域48の上端よりも上方に、すなわち、燃料棒4の燃料有効長Lの上端よりも上方に、ヘリウムガスが充填されるガスプレナム49が形成される。さらに、燃料棒4,5及びH2のそれぞれでは、各燃料棒内で燃料ペレットの外面と被覆管の内面の間の間隙(第1間隙という)にもヘリウムガスが充填されている。
制御棒33が複数の燃料集合体10の相互間に挿入されているとき、制御棒33の2枚のブレードは、図1に示すように、チャンネルボックス16の、制御棒33に面する1つのコーナー部、すなわち、チャンネルファスナ18が配置された、チャンネルボックス16の1つのコーナー部から、直交する二方向に伸びる2つの側壁部16A及び16Bの外面に対向している。横断面が正方形状のチャンネルボックス16は4つの側壁部を有しており、制御棒33の二枚のブレードは、チャンネルボックス16の4つの側壁部16A〜16Dのうち上記の1つのコーナー部から伸びる2つの側壁部16A及び16Bに対向している。
チャンネルボックス16の4つの側壁部のうち、2つの側壁部16A及び16Bの各内面に面する、最外周領域35のそれぞれの部分、すなわち、チャンネルファスナ18によって上部タイプレート14に取り付けられたチャンネルボックス16の、チャンネルファスナ18側の1つのコーナー部から直交する二方向に伸びる2つの側壁部16A及び16Bの各内面に面する、最外周領域35のそれぞれの部分に、図1に示すように、4本の燃料棒H2が配置される。それらの側壁部16A及び16Bの各内面に面する、最外周領域35のそれぞれの部分では、この部分の中央に2本の燃料棒H2が隣接して配置され、この2本の燃料棒H2からチャンネルファスナ18側に1本の燃料棒4を介在させて1本の燃料棒H2が配置され、その2本の燃料棒H2からチャンネルファスナ18とは反対側に他の1本の燃料棒4を介在させて1本の燃料棒H2が配置される。
さらに、燃料集合体10の横断面における、チャンネルボックス16の内面から2列目の燃料棒配列(最外周領域35に内側で隣接する燃料棒配列)に、12本の燃料棒5が配置され、燃料集合体10の横断面の中央に2本の燃料棒5がチャンネルボックス16の1本の対角線の方向で隣接して配置される。燃料集合体の横断面では、燃料棒H2及び燃料棒5のそれぞれの配置位置以外の位置には、燃料棒4が配置される。
燃料集合体10の燃料棒H2では、図5に示すように、ヘリウムガスが、ガスプレナム49、He充填領域48、及び燃料ペレット46の外面と被覆管45の内面の間の第1間隙に充填されている。被覆管45の上端部は、上部端栓47によって封鎖されている。このため、ガスプレナム49とHe充填領域48の間、及びHe充填領域48とその第1間隙の間には、それぞれを仕切る仕切り部材が配置されていない。図5に示された破線50は、燃料集合体10の燃料有効長の上端、すなわち、燃料棒4の燃料有効長の上端を示している。He充填領域48は、燃料棒H2において、複数の燃料ペレット46を充填した、被覆管45内の核燃料物質充填領域の上端と破線50で示される燃料集合体10の燃料有効長の上端の間に形成され、ガスプレナム49は、被覆管45内で燃料集合体10の燃料有効長の上端(破線50)よりも上方に形成される。
燃料棒H2内に、Heガスを充填するHe充填領域48の替りに、アルゴンガス、窒素ガス、酸素ガス及び空気のいずれかを充填するガス充填領域を形成してもよい。燃料棒H2内にこのようなガス充填領域を形成する場合には、ガス充填領域に充填したアルゴンガス、窒素ガス、酸素ガスまたは空気が、ヘリウムガスが充填されるガスプレナム49及び上記の第1間隙に拡散することを防ぐ必要がある。
Heガス以外の、軽水よりも中性子吸収断面積が小さいガスとして、アルゴンガス、窒素ガス、酸素ガス及び空気のいずれかを用いた燃料集合体を以下に説明する。
この燃料集合体は、チャンネルボックス16の、制御棒33に対向する側壁部16A及び16Bの内面に面する最外周領域35の部分に、He充填領域48の替りにガス充填領域を形成した燃料棒H4を配置する。燃料棒H4を用いて燃料集合体10では、燃料棒H4は、燃料棒H2を用いた前述の燃料集合体10において燃料棒H2が配置された各位置に配置される。燃料棒H4を、図6を用いて説明する。
燃料棒H4は、アルゴンガス、窒素ガス、酸素ガス及び空気のいずれかを内部に封入した、密封された円柱状のジルコニウム合金(例えば、ジルカロイ2)製の中空の容器51を、燃料棒H4の密封された被覆管45内で燃料棒H4の核燃料物質充填領域(複数の燃料ペレット46を配置)の上端上に配置する。被覆管45の上端部は上部端栓47によって封鎖される。その容器51は、燃料棒H4内で核燃料物質充填領域とガスプレナム49の間に配置される。軽水よりも中性子吸収断面積が小さいガスを充填したガス充填領域48Aが、その容器51内に形成されており、燃料棒H4内で核燃料物質充填領域とガスプレナム49の間に存在する。燃料棒H4において、複数の燃料ペレット46が充填された核燃料物質充填領域の軸方向長さとガス充填領域48Aが内部に形成された容器51の軸方向長さの合計は、燃料棒H4を有する燃料集合体の燃料有効長と同じである。
内部にガス充填領域48Aが形成された容器51の外径は燃料棒H4の被覆管45の内径よりも小さく、その容器51の外面とその被覆管45の内面の間に、間隙(第2間隙という)が形成される。この第2間隙によって、核燃料物質充填領域内の燃料ペレット46の外面と被覆管45の内面に形成される第1間隙とガスプレナム49が連通される。ガス充填領域48Aを形成する容器51が内部に配置された燃料棒H4でも、第1間隙及びガスプレナム49にはヘリウムガスが充填される。ガス充填領域48Aを内部に形成する容器51が燃料棒H4の被覆管45内に配置されているため、この容器51内に充填されたアルゴンガス、窒素ガス、酸素ガスまたは空気が、第1間隙及びガスプレナム49内のヘリウムガス中に拡散することを防止できる。
中性子吸収断面積が軽水よりも小さい固体物質として、黒鉛、ベリリウム、酸化ベリリウム及び炭化ベリリウムのいずれかを用いた燃料集合体について説明する。
この燃料集合体は、チャンネルボックス16の、制御棒33に対向する側壁部16A及び16Bの内面に面する最外周領域35の部分に、中性子吸収断面積が軽水よりも小さい固体物質である、例えば、黒鉛を充填した固体物質充填燃料棒を配置している。固体物質充填燃料棒は、燃料棒H2またはH4に相当する燃料棒である。その固体物質充填燃料棒は、燃料棒H2を用いた前述の燃料集合体10において燃料棒H2が配置された各位置に配置される。
固体物質充填燃料棒は、被覆管45内において、複数の燃料ペレット46が配置された核燃料物質充填領域の上端よりも上方に、黒鉛、ベリリウム、酸化ベリリウム及び炭化ベリリウムのいずれか、例えば、黒鉛の複数のペレットを充填する。黒鉛の複数のペレットが充填された黒鉛充填領域、すなわち、固体物質充填領域の軸方向長さと複数の燃料ペレット46が充填された核燃料物質充填領域の軸方向長さの合計は、固体物質充填燃料棒を有する燃料集合体の燃料有効長と同じである。
黒鉛のペレットの外径は固体物質充填燃料棒の被覆管45の内径よりも小さく、黒鉛のペレットの外面と固体物質充填燃料棒のその被覆管45の内面の間に、間隙(第3間隙という)が形成される。固体物質充填燃料棒の被覆管45内で、第1間隙、第3間隙及びガスプレナム49には、Heガスが充填される。第1間隙とガスプレナム49は第3間隙によって連絡される。
なお、上記の固体物質充填領域の軸方向長さを短くし、固体物質充填領域の軸方向長さを短くした分だけ、固体物質充填領域の上方にHe充填領域48を形成してもよい。すなわち、固体物質充填燃料棒の被覆管45内で、核燃料物質充填領域の上方に、固体物質充填領域及びHe充填領域48が形成される。固体物質充填燃料棒における核燃料物質充填領域、固体物質充填領域及びHe充填領域48のそれぞれの軸方向長さの合計は、固体物質充填燃料棒を有する燃料集合体の燃料有効長と同じである。また、核燃料物質充填領域、固体物質充填領域及びHe充填領域48のそれぞれが形成された固体物質充填燃料棒において、He充填領域48を形成する替りに、アルゴンガス、窒素ガス、酸素ガス及び空気のいずれかを含むガス充填領域48Aを内部に形成した容器51を、固体物質充填領域の上方に配置してもよい。核燃料物質充填領域、固体物質充填領域及び容器51のそれぞれを密封した被覆管45内に配置した固体物質充填燃料棒における、核燃料物質充填領域、固体物質充填領域及び容器51のそれぞれの軸方向長さの合計は、この固体物質充填燃料棒を有する燃料集合体の燃料有効長と同じである。
燃料交換及び保守点検が終了したABWRプラントは、次の運転サイクルでの運転を実施するために再起動される。炉心23から制御棒33が引き抜かれて炉心23が未臨界状態から臨界状態になり、炉心23内の冷却水(以下、炉水という)が、炉心23に装荷された各燃料集合体10内の核燃料物質に含まれる核分裂性核種(例えば、Pu239等)の核分裂で生じる熱で加熱される。さらに、昇温昇圧過程を経て、原子炉出力を上昇させ、ABWRプラントが定格運転状態(炉水温度が定格温度の280℃、原子炉圧力容器21内の圧力が定格圧力)になる。ABWRプラントの定格運転は、その運転サイクルが終了するまで継続される。
運転中のABWRプラントでは、原子炉圧力容器21内の炉水は、インターナルポンプ30で昇圧され、下部プレナム29を経て炉心23の装荷された各燃料集合体10内に供給される。燃料集合体10に供給される炉水は、各燃料集合体10内の核燃料物質に含まれる核分裂性核種の核分裂で生じる熱で加熱される。加熱された炉水の一部が蒸気になる。この蒸気は炉心23から気水分離器26に導かれ、気水分離器26において蒸気に含まれる水分が除去される。気水分離器26から排出された蒸気は蒸気乾燥器27に導かれ、蒸気に含まれる湿分が蒸気乾燥器27で除去される。蒸気乾燥器27から排出された蒸気は、主蒸気配管31を経てタービン(図示せず)に導かれ、発電機(図示せず)に連結されたタービンを回転させる。タービンから排出された蒸気は復水器(図示せず)で凝縮されて水になり、この水は、給水として、給水配管32を通り原子炉圧力容器21に供給される。
ABWRプラントの炉心23に装荷された燃焼度0GWd/tの燃料集合体10は、一般的に、4サイクルの運転サイクルの期間中、炉心23に装荷される。運転サイクルごとに、この炉心23に装荷されている全燃料集合体10の1/4ずつが、4サイクル目の運転サイクルでの炉内滞在が終了した時点で、運転が停止されたABWRプラントの炉心23から使用済燃料集合体として取り出される。取り出された使用済燃料集合体と同じ体数の燃焼度0GWd/tの燃料集合体10が炉心23に装荷される。
ABWRプラントの運転中、炉心内23に装荷された燃料集合体10の各燃料棒11にいて、燃料ペレットに含まれた核分裂性核種(例えば、Pu239,Pu241等)の核分裂により発生した核分裂生成ガス(Xe,Kr等)が、被覆管内において、燃料ペレットから第1間隙に放出される。燃料集合体10の燃焼度が増加するに伴って、すなわち、燃料集合体10の炉内滞在期間が長くなるに伴って、燃料棒14,5及びH1のそれぞれにおいて燃料ペレットから第1間隙に放出された核分裂生成ガスは、被覆管内に蓄積され、被覆管内の圧力を上昇させる。炉心23に装荷された燃料集合体10の各燃料棒の被覆管内の圧力は、4サイクル目の運転サイクルでのABWRプラントの運転が終了するときに最も高くなる。燃料ペレットから放出された核分裂生成ガスは第1間隙からガスプレナム49に導かれ各燃料棒内のガスプレナム49に蓄積され、各燃料棒内のガスプレナム49は被覆管内の圧力を低減するために形成されている。燃料棒H2では、燃料ペレットから放出された核分裂生成ガスは、第1間隙及びガスプレナム49だけでなく、燃料棒H2内の第2間隙及びHe充填領域48内にも存在する。
なお、前述したように、軽水よりも中性子吸収断面積が小さいガスを充填した容器51を内部に配置した燃料棒H4においては、その容器51の肉厚は、4サイクル目の運転サイクルでのABWRプラントの運転が終了するときでも、核分裂生成ガスの蓄積により被覆管45内で上昇した圧力によってもその容器51が潰れないように設定される。内部にガス充填領域48Aを形成したその容器51を燃料棒H4の被覆管45内に配置する場合には、燃料ペレット46から放出された核分裂生成ガスは、容器51内に侵入することができず、被覆管45内でその容器51の外側に存在する。
燃料棒4,5及びH2のそれぞれは、コイルバネをガスプレナム49内に配置している。このコイルバネは、燃料集合体10の輸送中に各燃料棒内の燃料ペレットが移動して損傷しないように、最も上方に位置する燃料ペレットの上端を燃料棒の下部端栓側に向かって押圧している。燃料棒H2では、そのコイルバネが、ガスプレナム49及びHe充填領域48内に連続して配置され、最も上方に位置する燃料ペレットの上端を燃料棒の下部端栓側に向かって押圧している。燃料棒H2でも、He充填領域48を、アルゴンガス、窒素ガス、酸素ガスまたは空気を用いた燃料棒H4と同様に、密封された上記の容器51内にヘリウムガスを充填して形成してもよい。ヘリウムガスを充填した容器51を被覆管45内で最も上方に位置する燃料ペレットの上に配置することによって、He充填領域48をその燃料ペレット46の上方でガスプレナム49の下方に形成することができ、燃料棒H2のガスプレナム49内に配置されたコイルバネの軸方向の長さを短くすることができる。このコイルバネは、ヘリウムガスを充填した容器51を介して最も上方に位置する燃料ペレット46の上端を押圧する。
ABWRプラントの運転中、炉心23に装荷された燃料集合体10に含まれる燃料棒4,5及びH2内の核燃料物質に含まれる核分裂性核種の核分裂によって発生した高速中性子の一部は、水ギャップ領域44に存在する冷却水(軽水)等により減速されて熱中性子となり、炉心23に挿入された制御棒33に吸収される。チャンネルボックス16の4つの側壁部16A〜16Dのうち側壁部16A及び16Bの各内面に面する、最外周領域35のそれぞれの部分、すなわち、チャンネルファスナ18によって上部タイプレート14に取り付けられたチャンネルボックス16の、チャンネルファスナ18側の1つのコーナー部から直交する二方向に伸びる2つの側壁部16A及び16Bの各内面に面する、最外周領域35のそれぞれの部分に配置された4本の燃料棒H2にHe充填領域48が形成されているために、最外周領域35のそれらの部分では、He充填領域48により核燃料物質の量及び冷却水(軽水)の量が減少し、核燃料物質及び冷却水による熱中性子の吸収が減少する。このため、制御棒33に吸収される熱中性子が増加する。また、チャンネルボックス16の側壁部16A及び16Bの各内面に面する最外周領域35のそれぞれの部分に燃料棒H2を配置することによって、その部分における冷却水(軽水)による熱中性子の吸収が減少するため、スウィング、すなわち、冷温時における燃料集合体への反応度添加量が大きく負になることを防止でき、燃料集合体10のボイド係数を負に維持することができる。燃料棒H2を配置した燃料集合体10は、冷温時における燃料集合体10への反応度添加量を大きく負にすることなく、制御棒価値を向上させることができる。
また、燃料集合体10の横断面における最外周領域35の上記した部分に燃料棒H2を配置しているため、各燃料棒内のU238等の親物質による中速中性子の吸収も減少する。各燃料棒内のU238等の親物質による中速中性子の吸収減少は、制御棒価値を向上させることになる。
本実施例の燃料集合体10は、前述したように、チャンネルボックス16の4つの側壁部6A〜16Dのうち、側壁部16A及び16Bの各内面に面する、最外周領域35のそれぞれの部分、すなわち、チャンネルファスナ18によって上部タイプレート14に取り付けられたチャンネルボックス16の、チャンネルファスナ18側の1つのコーナー部から直交する二方向に伸びる側壁部16A及び16Bの各内面に面する、最外周領域35のそれぞれの部分に燃料棒H2を配置しており、さらに、その燃料棒H2では、軸方向において、He充填領域48を、燃料集合体10の燃料有効長の上端から、この上端の下方に位置する、燃料棒H2の燃料有効長の上端に亘って形成している。このため、本実施例の燃料集合体10ではそれらの側壁部16A及び16Bの各内面に面する最外周領域35のそれぞれの部分における冷却水(軽水)が燃料棒H2のHe充填領域48により排除されるので、横断面の最外周領域に部分長燃料棒を配置した、特開平10−311889号公報に記載された燃料集合体とは異なり、燃料集合体10は、それらの側壁部16A及び16Bの各内面に面する最外周領域35のそれぞれの部分における冷却水(軽水)が減少し、冷却水(軽水)によって吸収される中性子の量が減少する。燃料集合体10内の核燃料物質の燃焼が進むと、すなわち、運転サイクルの末期に近づくと、核燃料物質による熱中性子の吸収量が少なくなるが、運転サイクルの末期においても制御棒価値は、特開平10−311889号公報に記載された従来の燃料集合体よりも向上する。このように、本実施例では、運転サイクルを通して制御棒価値を向上させることができる。
燃料棒H4を有する燃料集合体、黒鉛充填領域等の固体物質充填領域を形成した固体物質充填燃料棒を有する燃料集合体、及びHe充填領域48及びガス充填領域48Aのいずれか及びその固体物質充填領域のそれぞれを形成した燃料棒を有する燃料集合体は、燃料棒H2を有する燃料集合体10で生じる各効果を得ることができる。
本発明の好適な他の実施例である、改良型沸騰水型原子力プラントに適用される実施例2の燃料集合体を、図15を用いて説明する。
本実施例の燃料集合体は、横断面における燃料棒配置が実施例1の燃料集合体10の図1に示された横断面における燃料棒配置と同じであり、この横断面で燃料棒11が10行10列に配置されている。本実施例の燃料集合体は、実施例1の燃料集合体と同様に、78本の燃料棒4、部分長燃料棒である14本の燃料棒5及び8本の燃料棒H2を有する。本実施例の燃料集合体は、燃料棒H2が実施例1の燃料集合体10における燃料棒H2と異なっており、燃料棒4及び5のそれぞれが実施例1の燃料集合体10における燃料棒4及び5のそれぞれと同じである。本実施例の燃料集合体の燃料棒H2、及び燃料集合体10における燃料棒H2は、核分裂性プルトニウムの富化度が5.61wt%と同じであるが、燃料有効長とHe充填領域48の境界の位置が異なっている。燃料集合体10の燃料棒H2における燃料有効長とHe充填領域48の境界の位置が燃料集合体の燃料有効長Lの下端から20L/24の位置にあるのに対し、本実施例の燃料集合体の燃料棒H2における燃料有効長とHe充填領域48の境界の位置が燃料集合体の燃料有効長Lの下端から16L/24の位置にある。この結果、燃料集合体の燃料有効長の上端を起点とした、本実施例の燃料集合体におけるHe充填領域48のノード数は、実施例1の燃料集合体10のHe充填領域48のノード数よりも4だけ多くなる。本実施例におけるHe充填領域48の軸方向の長さは、8L/24である。
本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例では、He充填領域48の軸方向の長さが実施例1の燃料集合体10のHe充填領域48のその長さよりも長いため、本実施例における制御棒価値は、実施例1におけるそれよりも大きくなる。また、本実施例では、48が長い分、炉心の軸方向におけるHe充填領域48が位置する部分において、制御棒33による反応度制御能力が向上し、冷温時における炉心23の中性子束ピークを抑制することができる。このため、炉心23の反応度は大きく抑制され、実施例1よりも炉停止余裕が向上する。
本実施例の燃料集合体において、燃料棒H2のHe充填領域48の替りに、内部にガス充填領域48Aが形成された容器51、黒鉛、ベリリウム、酸化ベリリウム及び炭化ベリリウムのいずれかの複数のペレットを充填した固体物質充填領域、及びHe充填領域48及び容器51のいずれか及び固体物質充填領域の両方を、核燃料物質充填領域の上端よりも上方に配置してもよい。
本発明の好適な他の実施例である、改良型沸騰水型原子力プラントに適用される実施例3の燃料集合体を、図16及び図17を用いて説明する。
本実施例の燃料集合体10Eは、図16に示すように、複数の燃料棒11を、燃料集合体10Eの横断面において、10行10列の正方格子で横断面が正方形状のチャンネルボックス16内に配置している。複数の燃料棒11は、全長燃料棒12である燃料棒6、7及びH3を含み、部分長燃料棒13である燃料棒8を含む。燃料集合体10Eは、図17に示すように、燃料棒6を50本、燃料棒7を28本、燃料棒8を14本、及び燃料棒H3を8本含んでいる。
燃料棒6及び7の燃料有効長は、実施例1の燃料集合体10の燃料棒4の燃料有効長と同じであり、Lとなっている。燃料棒6では、核分裂性プルトニウムの富化度が6.73wt%であるMOX燃料の複数の燃料ペレットを燃料有効長Lの下端の位置から23L/24の位置まで充填し、劣化ウランであるU2Oの複数の燃料ペレットを燃料有効長Lの下端から23L/24の位置と燃料有効長Lの上端の間に充填している。燃料棒7では、核分裂性プルトニウムの富化度が4.30wt%であるMOX燃料の複数の燃料ペレットを燃料有効長Lの下端の位置から23L/24の位置まで充填し、劣化ウランであるU2Oの複数の燃料ペレットを燃料有効長Lの下端から23L/24の位置と燃料有効長Lの上端の間に充填している。
各燃料棒H3の燃料有効長は16L/24である。各燃料棒H3は、核分裂性プルトニウムの富化度が4.30wt%であるMOX燃料の複数の燃料ペレットを、燃料有効長の下端の位置から、燃料有効長の下端から16L/24の位置まで充填し、He充填領域48を、燃料棒H3の燃料有効長の下端、すなわち、燃料集合体10Eの燃料有効長Lの下端から16L/24の位置から、燃料集合体10Eの燃料有効長Lの上端に亘って形成している。He充填領域48は、燃料棒6の燃料有効長L、すなわち、燃料集合体10Eの燃料有効長Lの上端の位置から、この燃料有効長Lの上端から8L/24だけ下方にある位置に亘って形成される。He充填領域48の軸方向の長さは、8L/24である。燃料棒H3は、MOX燃料等の核燃料物質を、そのHe充填領域(燃料有効長Lの下端から16L/24の位置と燃料有効長Lの上端の間)48に充填していない。燃料棒H3の燃料有効長は燃料棒6及び7のそれよりも短くなっている。燃料棒H3の燃料有効長とガス充填領域であるHe充填領域48の軸方向長さの合計は、燃料棒6及び7の燃料有効長L、すなわち、燃料集合体10Eの燃料有効長Lと同じである。
燃料棒8は、燃料有効長が燃料棒6の燃料有効長Lの14/24であり、核分裂性プルトニウムの富化度が6.73wt%であるMOX燃料の複数の燃料ペレットを、14L/24の燃料有効長に充填している。
燃料棒6,7及び8は、被覆管内で燃料有効長の上端よりも上方にガスプレナム49を形成している。燃料棒H3は、被覆管内でHe充填領域48の上方にガスプレナム49を形成している。これらのガスプレナム49には、ヘリウムガスが充填されている。また、燃料棒6,7,8及びH3では、燃料ペレットの外面と被覆管の内面の間に形成される第1間隙にもヘリウムガスが充填されている。燃料棒H3では、ガスプレナム49、He充填領域48および第1間隙が連通している。
燃料集合体10Eの横断面において、複数の燃料棒7が、図16に示すように、チャンネルボックス16の内面に隣接している最外周領域35に配置される。複数の燃料棒H3は、チャンネルボックス16の、制御棒33と対向する2つの側壁部16A及び16Bの各内面に面する、最外周領域35のそれぞれの部分、すなわち、チャンネルファスナ18によって上部タイプレート14に取り付けられたチャンネルボックス16の、チャンネルファスナ18側の1つのコーナー部から直交する二方向に伸びる2つの側壁部16A及び16Bの各内面に面する、最外周領域35のそれぞれの部分に、図16に示すように、4本ずつ配置される。
複数の燃料棒6が、燃料集合体10Eの横断面における、最外周領域35よりも内側の領域(以下、中央領域という)に配置される。この中央領域には、複数の燃料棒8が配置される。燃料集合体10Eの横断面における、チャンネルボックス16の内面から2列目の燃料棒配列(最外周領域35に内側で隣接する燃料棒配列)に、12本の燃料棒8が配置され、燃料集合体10Eの横断面の中央に2本の燃料棒8が、チャンネルボックス16の、制御棒33に面する一つのコーナー部を通る1本の対角線の方向において隣接して配置される。燃料集合体10Eの中央領域では、燃料棒H3が配置された位置以外には、燃料棒6が配置される。
本実施例の燃料集合体10Eでは、最外周領域35における核分裂性プルトニウムの平均富化度(例えば、4.30wt%)は、最外周領域35の内側である中央領域における核分裂性プルトニウムの平均富化度(例えば、6.73wt%)よりも低くなっている。
燃料棒H3内には、He充填領域48の替りに、実施例1における燃料棒H2と同様に、アルゴンガス、窒素ガス、酸素ガス及び空気いずれかを密封した容器51を配置してもよい。
本実施例の燃料集合体10Eにおいて、燃料棒H3における燃料有効長の上端とHe充填領域48の下端との境界の位置を、実施例1の燃料集合体10の燃料棒H2における燃料有効長の上端とHe充填領域48の下端との境界の位置、すなわち、燃料有効長の下端から20L/24の位置にしてもよい。
なお、燃料集合体10及び10Eでは、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス、酸素ガス及び空気いずれかを充填したガス充填領域が内部に形成され、最外周領域35に配置された燃料棒(例えば、燃料棒H2またはH3)における燃料有効長の上端とそのガス充填領域の下端との境界の位置を、好ましくは、燃料集合体の燃料有効長Lの上端の位置から、下方に向かって2L/24〜18L/24(2L/24以上18L/24以下)の範囲内の位置に設定するとよい。
本実施例は、実施例1及び2で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例では、燃料集合体10Eの最外周領域35における核分裂性プルトニウムの平均富化度を燃料集合体10Eの中央領域におけるその平均富化度よりも低くすることにより、最外周領域35における中性子の吸収をさらに抑制できる。このため、本実施例では、実施例1よりも制御棒価値をさらに向上させることができる。また、燃料集合体10Eの最外周領域35において、ガス充填領域(例えば、He充填領域48)を有する燃料棒H3に隣接する他の燃料棒の出力は、燃料棒H3が隣に存在しない場合に比べて上昇する。最外周領域35に配置された燃料棒の核分裂性プルトニウムの富化度を低下させることにより、燃料棒H3に隣接する燃料棒の出力ピークを抑制することができる。このため、本実施例の燃料集合体10Eは、実施例1の燃料集合体10よりも熱的余裕を改善することができる。
本実施例の燃料集合体10Eにおいて、燃料棒H2のHe充填領域48の替りに、内部にガス充填領域48Aが形成された容器51、黒鉛、ベリリウム、酸化ベリリウム及び炭化ベリリウムのいずれかの複数のペレットを充填した固体物質充填領域、及びHe充填領域48及び容器51のいずれか及び固体物質充填領域の両方を、核燃料物質充填領域の上端よりも上方に配置してもよい。
以上に述べた実施例1ないし3の各燃料集合体は、インターナルポンプを備えた改良型沸騰水型原子力プラント(ABWRプラント)だけでなく、再循環系ポンプを備えた沸騰水型原子力プラント(BWRプラント)にも適用することができる。