JP3828345B2 - 軽水炉炉心及び燃料集合体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、軽水炉炉心及び炉心を構成する燃料集合体に係り、特に沸騰水型原子炉(BWR,Boiling Water Reactor)において、経済性や安全性が現在運転中のBWRと同程度、すなわち炉内構造の変更を最小限にとどめ、負のボイド係数を維持しつつ、増殖比を1.0近傍又は1.0を若干上まわるプルトニウム(Pu)マルチリサイクルを指向した軽水炉炉心及び燃料集合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
原子炉の内部では核分裂反応により、ウラン−235やプルトニウム−239などの核分裂性物質の消耗とともに、ウラン−238やプルトニウム−240などの燃料親物質の核分裂性物質への変換が起っている。炉心から取り出される燃料に含まれる核分裂性物質量と炉心に装荷される燃料に含まれる核分裂性物質量の比を増殖比と言うが、従来の軽水冷却原子炉では、増殖比は0.5 程度である。ウラン資源を有効に活用する方法として、増殖比を高めることが考えられている。
【0003】
特開昭55−10591号公報や、1982年のNuclear Technology 誌59巻の第212〜227頁には、加圧水型原子炉において、燃料棒を三角格子に稠密配置し、水対燃料体積比を小さくすることで増殖比を向上できることが示されている。しかしながら、増殖比は、高々0.9 程度であり、出力を落さず運転を継続するには、核分裂性物質を補給する必要がある。増殖比をさらに高めるには、燃料棒間隙を狭くし、水対燃料体積比をさらに小さくすることが考えられるが、燃料集合体の製作や熱的余裕の確保などの点で限界があり、実現は困難である。
【0004】
一方、特開平1−227993 号公報には、沸騰水型原子炉の特徴である炉心内で発生する蒸気ボイドを活用して、水対燃料体積比を実効的に小さくする方法が示されている。しかしながら、この従来例では、プルトニウム増倍比(炉心から取り出される燃料に含まれる核分裂性プルトニウム量と炉心に装荷される燃料に含まれる核分裂性プルトニウム量の比;核分裂性プルトニウムに対する増殖比)を1近傍にすることは示されているが、増殖比(天然ウランにプルトニウムを富化した場合プルトニウム増倍比より4〜5%程度小さい値となる)を1近傍又は1以上にすることは示されていない。プルトニウム増倍比が1近傍の場合、出力を落さず運転を継続するには、プルトニウムを天然ウランに富化することが必要となり、全ウラン資源を使いきることができない。なお、本発明において、増殖比1近傍とは0.98 以上を意味している。
【0005】
更に、特開平8−21890号公報には、劣化ウラン,天然ウラン,減損ウラン,低濃縮ウランの少なくとも1つを含むウランに、PuあるいはPuとアクチノイド核種を富化した燃料を有する炉心において、増殖比が1.0近傍又は1.0以上で、ボイド係数が負である炉心が示されている。しかしながら、この従来例は制御棒の製造性,経済性に関してさらなる改善をめざしたものでは無かった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、発電コスト,熱的余裕と安全性を現在運転中の軽水炉と同程度に保ち、エネルギー長期安定供給に寄与する炉心,燃料集合体を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成する本発明によれば、劣化ウラン,天然ウラン,減損ウラン,低濃縮ウラン(以下、劣化ウラン等という)の少なくとも1つを含むウランに、PuあるいはPuとアクチノイド核種(以下、Pu等という)を富化した燃料を有する炉心において、増殖比が1.0近傍または1.0以上で、ボイド係数が負であることを特徴とする炉心が提供される。本発明によれば、エネルギーの長期安定供給に寄与するため、劣化ウランにPuを富化した燃料で、増殖比1.0 を実現できる(以下、第1効果という)。本発明によれば、劣化ウラン等にPuを添加した燃料で、増殖比1.0近傍又は1.0以上を達成することで、Puを触媒のようにして、劣化ウラン等を燃焼されることができ、エネルギー長期安定供給に寄与できる。
【0008】
好ましい第1の実施形態は、劣化ウラン等の少なくとも1つを含むウランに、Pu等を富化した燃料を有する燃料集合体において、この燃料集合体の増殖比が1.0近傍または1.0以上であることにある。第1実施形態によれば、第1効果を得ることができる。第1実施形態によれば、劣化ウラン等にPuを添加した燃料で、増殖比1.0近傍又は1.0以上を達成することで、Puを触媒のようにして、劣化ウラン等を燃焼されることができ、エネルギー長期安定供給に寄与できる。
【0009】
また、好ましい第2の実施形態は、軽水炉炉心が、燃料棒が三角形の格子状に配列された燃料集合体と、横断面積が燃料棒単位格子セルの断面積より大きな1本以上の吸収棒を有し、燃料集合体内に挿入される太径制御棒とを備えていることにある。第2実施形態によれば、第1効果を得ることができると共に、エネルギーの長期安定供給に寄与するため水対燃料体積比を低減して、劣化ウランにPuを富化した燃料で、増殖比1.0 を実現できる(以下、第2効果という)。また、第2実施形態では、制御棒を太径化することにより、制御棒の機械的強度が増し、制御棒の挿入および引き抜き時の曲がりや座屈を抑制することができる。また、太径制御棒の採用により、燃料集合体当たりの吸収棒の本数を少なくすることができ、制御棒の製造性が容易となり、製造コストを低減することができる。
【0010】
また、好ましい第3の実施形態は、軽水炉炉心が、太径制御棒が挿入されるガイドチューブ表面に軽水より減速能の小さな物質からなる水排除領域を有する燃料集合体によって構成されることにある。この第3実施形態によれば、第2効果を得ることができる。
【0011】
また、好ましい第4の実施形態は、燃料集合体が、燃料棒が三角形の格子状に配列された稠密燃料集合体であり、その燃料棒の間隙が0.7〜2.0mmであることにある。この燃料集合体を用いて軽水炉炉心を構成してもよい。第4実施形態によれば、第2効果を得ることができる。
【0012】
また、好ましい第5の実施形態は、燃料集合体の実効的な水対燃料体積比が0.1から0.6の間にあることにある。この燃料集合体を用いて軽水炉炉心を構成してもよい。第5実施形態によれば、第2効果を得ることができる。第5実施形態によれば、劣化ウラン等にPuを添加した燃料からなる稠密燃料集合体,太径制御棒を組合せ、実効的な水対燃料体積比を0.1〜0.6としたことにより、増殖比1.0近傍又は1.0以上が達成でき、エネルギー長期安定供給に寄与できる。
【0013】
また、好ましい第6の実施形態は、軽水炉炉心が、炉心外周部および上下端部のブランケット部分を除いた炉心部における核分裂性Puの平均富化度が6〜20wt%であることにある。第6実施形態によれば、第2効果を得ることができる。
【0014】
また、好ましい第7の実施形態は、燃料集合体における、上下両端のブランケット部分を除いた領域の平均核分裂性Puの富化度が、6〜20wt%であることにある。第7実施形態によれば、第2効果を得ることができる。
【0015】
また、好ましい第8の実施形態は、沸騰水型軽水炉炉心が、定格出力の50%以上で運転されているときの炉心の平均ボイド率が45〜70%になることにある。第8実施形態によれば、第2効果を得ることができる。第8実施形態によれば、稠密形燃料集合体と高ボイド率冷却材の組合せにより、共鳴エネルギー領域の中性子の割合が増加し、ドップラー効果が増大するとともに、負のボイド係数の絶対値が小さくなるので、出力上昇事象,加圧事象,冷却材ボイド率減少事象等の安全性が向上する。
【0016】
また、好ましい第9の実施形態は、軽水炉炉心において、1つの制御棒駆動機構に接続された太径制御棒が全て、1体の燃料集合体内に挿入され、かつ太径制御棒は、炉心最外周を除いた領域に装荷される全ての燃料集合体に挿入されることにある。第9実施形態によれば、炉停止余裕を損なうことなく第2効果を得ることができる。
【0017】
また、好ましい第10の実施形態は、軽水炉炉心において、1つの制御棒駆動機構に接続された太径制御棒が全て、1体の六角形あるいは正方形燃料集合体内に挿入され、かつ太径制御棒は、炉心最外周を除いた領域に装荷される全ての燃料集合体に挿入されることにある。第9実施形態によれば、炉停止余裕を損なうことなく第2効果を得ることができる。
【0018】
また、好ましい第11の実施形態は、軽水炉炉心において、1つの制御棒駆動機構に接続された複数の太径制御棒が3体の六角形燃料集合体に挿入され、かつ太径制御棒は、炉心最外周を除いた領域に装荷される全ての燃料集合体に挿入されることにある。第11実施形態によれば、炉停止余裕を損なうことなく第2効果を得ることができる。
【0019】
また、好ましい第12の実施形態は、軽水炉炉心において、1つの制御棒駆動機構に接続された複数の太径制御棒が4体の正方形燃料集合体に挿入され、かつ太径制御棒は、炉心最外周を除いた領域に装荷される全ての燃料集合体に挿入されることにある。第12実施形態によれば、炉停止余裕を損なうことなく第2効果を得ることができる。
【0020】
また、好ましい第13の実施形態は、軽水炉炉心が制御棒先端部に減速材を排除するために軽水より減速能が小さな物質、例えば炭素,重水素,ベリリウム,Zr合金,ステンレス等からなるフォロアー部が設置された制御棒を備えていることにある。第13実施形態によれば、第2効果を得ることができる。
【0021】
また、好ましい第14の実施形態は、燃料集合体において、太径制御棒が挿入されるガイドチューブに隣接する領域に配置された燃料棒と、燃料集合体の中心から最も離れた領域に配置された燃料棒の核分裂性プルトニウム富化度の平均値が、その他の領域に配置された燃料棒の核分裂性プルトニウム富化度の平均値より小さいことにある。第14実施形態によれば、第2効果を得ることができる。また、第14実施形態によれば、燃料集合体内の出力ピーキングが低減し、熱的余裕が増大する。
【0022】
また、好ましい第15の実施形態は、軽水炉炉心が炉心外周部および上下端部のブランケット部を除く炉心部平均の出力密度を100kW/lから300kW/lの範囲にしていることにある。第15実施形態によれば、エネルギーの長期安定供給に寄与するため、単位出力あたりの所要Puインベントリーを低減し、一定のPu量で、できるだけ多くの発電用原子炉を運転でき(以下、第3効果という)、発電コストを現在の軽水炉と同程度にするため、現在運転中の炉と同じ材料,同程度の圧力容器の大きさで、同程度の出力,燃焼度を同程度の熱的余裕で達成でき(以下、第4効果という)、更に、安全性を現在の軽水炉と同程度にするため、炉心の高さ方向の中性子漏洩の増大や、出力上昇時の炉心高さ方向の出力分布スウィングにより、負のボイド係数を実現できる(以下、第5効果という)。
【0023】
また、第15実施形態によれば、現在運転中のBWRと圧力容器の直径や、出力等の運転条件,使用材料をほぼ同じにしたことにより、性能が大幅に向上したにもかかわらず、発電コストを現行のBWRと同程度に抑えることができる。第15実施形態によれば、炉心の出力密度を100〜300kW/lに高めることにより、単位出力あたりのPuインベンリー量が低減し、一定のPuに対して運転できる本発明の発電設備容量が増大し、エネルギーの長期安定供給に寄与できる。
【0024】
また、好ましい第16の実施形態は、軽水炉炉心が、炉心上下両端部のブランケット部を除く高さ方向において、燃料集合体水平断面の核分裂性Pu平均富化度が6wt%以上の部分が、40cmから140cmの間にあることにある。第16実施形態によれば、第3効果,第4効果及び第5効果を得ることができる。第16実施形態によれば、現在建設中のABWRと同程度の直径の圧力容器で同じ出力を出し、炉心の高さを40〜140cmと短尺の燃料集合体にしたことにより、Puのインベントリーを少なくでき、限られた世界の天然ウラン埋蔵量の下で、軽水炉の使用済燃料から発生するPuで、多くの本発明の炉が運転できることになり、エネルギー長期安定供給に寄与できる。
【0025】
また、第16実施形態によれば、短尺燃料集合体により、炉心上下方向の中性子漏洩の増大,出力分布の炉心上下方向のスウィング等の活用により、負のボイド係数の炉心が実現でき、燃料燃やしきり型の現行軽水炉と同程度の安全性を有することができる。すなわち、燃料集合体の高さ方向について水平断面の核分裂性Puの平均富化度が6wt%以上の部分が40〜140cmの間であることにより、単位出力あたりのPuインベントリー量が低減し、一定のPuに対して運転できる本発明の発電設備容量が増大し、エネルギーの長期安定供給に寄与するとともに、蒸気発生量が増加したときの炉心高さ方向の中性子漏洩効果が増大して、負のボイド係数を大きくし、安全性に寄与する。
【0026】
また、好ましい第17の実施形態は、燃料集合体が、上下両端部のブランケット部を除く燃料集合体の高さ方向において、水平断面の核分裂性Pu平均富化度が6wt%以上である部分が、40cmと140cmの間にあることにある。第17実施形態によれば、第3効果,第4効果及び第5効果を得ることができる。第17実施形態によれば、現在建設中のABWRと同程度の直径の圧力容器で同じ出力を出し、炉心の高さを40〜140cmと短尺の燃料集合体にしたことにより、Puのインベントリーを少なくでき、限られた世界の天然ウラン埋蔵量の下で、軽水炉の使用済燃料から発生するPuで、多くの本発明の炉が運転できることになり、エネルギー長期安定供給に寄与できる。
【0027】
また、第17実施形態によれば、短尺燃料集合体により、炉心上下方向の中性子漏洩の増大,出力分布の炉心上下方向のスウィング等の活用により、負のボイド係数の炉心が実現でき、燃料燃やしきり型の現行軽水炉と同程度の安全性を有することができる。すなわち、燃料集合体の高さ方向について水平断面の核分裂性Puの平均富化度が6wt%以上の部分が40〜140cmの間であることにより、単位出力あたりのPuインベントリー量が低減し、一定のPuに対して運転できる本発明の発電設備容量が増大し、エネルギーの長期安定供給に寄与するとともに、蒸気発生量が増加したときの炉心高さ方向の中性子漏洩効果が増大して、負のボイド係数を大きくし、安全性に寄与する。
【0028】
また、好ましい第18の実施形態は、軽水炉炉心が、炉心最外周を除き炉心を径方向に等面積に二分割して、炉心外側領域の燃料集合体炉心滞在サイクル数の平均値が、炉心内側領域のそれより小さくなるように燃料集合体を装荷したことにある。第18実施形態によれば、第4効果を得ることができる。第18実施形態によれば、現在運転中のBWRと圧力容器の直径や、出力等の運転条件,使用材料をほぼ同じにしたことにより、性能が大幅に向上したにもかかわらず、発電コストを現行のBWRと同程度に抑えることができる。
【0029】
また、好ましい第19の実施形態は、炉心最外周およびそれに隣接する燃料集合体のオリフィス圧損係数の平均値が、それ以外の領域のオリフィス圧損係数の平均値より大きいことにある。第19実施形態によれば、第4効果を得ることができる。第19実施形態によれば、現在運転中のBWRと圧力容器の直径や、出力等の運転条件,使用材料をほぼ同じにしたことにより、性能が大幅に向上したにもかかわらず、発電コストを現行のBWRと同程度に抑えることができる。
【0030】
また、好ましい第20の実施形態は、燃料集合体が、上下両端部のブランケット部を除いて、核分裂性Pu富化度が上半部の平均値より下半分の平均値が低いことにある。第20実施形態によれば、第5効果を得ることができる。第20実施形態によれば、上下二領域燃料集合体により、炉心上下方向の中性子漏洩の増大,出力分布の炉心上下方向のスウィング等の活用により、負のボイド係数の炉心が実現でき、燃料燃やしきり型の現行軽水炉と同程度の安全性を有することができる。すなわち、上下両端部のブランケット部を用いた燃料集合体の上半部の核分裂性Pu富化度の平均値より、下半部の平均値が低いことにより、炉心高さ方向の出力分布が平坦化して、熱的余裕が増大するとともに、蒸気発生量が増加した時に、炉心高さ方向の出力分布のスウィングが働き、負のボイド反応度係数が増大して安全性に寄与できる。
【0031】
また、好ましい第21の実施形態は、燃料集合体が、上下両端部のブランケット部を除く燃料集合体の高さ方向において、核分裂性Pu富化度が6wt%以上の部分が上下にあり、その間の中央付近の領域の核分裂性Pu富化度が6wt%以下であることにある。第21実施形態によれば、第5効果を得ることができる。第21実施形態によれば、軸方向非均質燃料集合体により、炉心上下方向の中性子漏洩の増大,出力分布の炉心上下方向のスウィング等の活用により、負のボイド係数の炉心が実現でき、燃料燃やしきり型の現行軽水炉と同程度の安全性を有することができる。すなわち、燃料集合体の上下両端のブランケット部を除く高さ方向について、核分裂性Pu富化度が6wt%以上の部分が上下にあり、その間の中央付近の領域の核分裂性Pu富化度を6wt%以下にすることにより、炉の出力が上昇し、炉心内の蒸気量が増加したときの炉心上下方向の出力分布スウィングによる負のボイド係数が大きくなり、安全性が向上する。さらに、炉心軸方向中央付近の領域の中性子吸収効果により、炉心に装荷できるPuインベントリーが大きくなり、Pu貯蔵炉としての機能が向上する。そして、炉心高さも相対的に高くなり、燃料棒の全長も長くなるので、最大線出力密度に対する熱的余裕も大きくなる。
【0032】
また、好ましい第22の実施形体は、沸騰水型軽水炉炉心が、定格出力の50%以上で運転されているときの冷却材の炉心の出口の蒸気重量率が20wt%から40wt%の間であることにある。第22実施形態によれば、安全性を現在の軽水炉と同程度にするため、沸騰による蒸留機能を維持し、炉内に存在する放射化物質の圧力容器内への閉じ込めを達成できる(以下、第6効果という)。第22実施形態によれば、冷却材の炉心出口の蒸気重量率を40wt%以下におさえたため、炉内に蓄積されたコロージョン生成物等の放射性物質を、沸騰による蒸溜機能を維持することにより、炉内に閉じ込めることができ、現在運転中のBWRと同程度のタービン側の放射性レベルを維持できるとともに、従来の増殖炉の概念である蒸気冷却高速炉より、大幅な放射性レベルの低減が図れる。
【0033】
また、好ましい第23の実施形態は、燃料集合体が、使用済燃料から取り出されたPuとウランを同時に装荷していることにある。この燃料集合体を用いて軽水炉炉心を構成してもよい。第23実施形態によれば、核不拡散に対応するため、Pu単独抽出を撤廃し、PuとUを一体としてリサイクルできる(以下、第7効果という)。第23実施形態によれば、Puとウランを同時にリサイクルすることにより、核不拡散に対する防止効果が大きくなる。
【0034】
また、好ましい第24の実施形態は、燃料集合体が、使用済燃料から取り出されたPuとウランおよびアクチノイドを同時に装荷していることにある。この燃料集合体を用いて軽水炉炉心を構成してもよい。第24実施形態によれば、長寿命の放射性廃棄物を後世に残さないために、アクチノイド核種をウラン、Puと一緒に炉内に滞在させ、リサイクルできる(以下、第8効果という)。第24実施形態によれば、Pu,ウランおよびアクチノイド核種を同時にリサイクルすることにより、アクチノイド核種の発生量と消滅量をバランスさせて増加量を零とするとともに放射性廃棄物の中で、特に問題になっている長半減期のアクチノイド核種を原子炉,再処理施設,燃料製造施設の中のみに閉じ込めることができ、環境に対する特性が向上する。
【0035】
本願発明者等の検討によれば、以下のことが判明している。
【0036】
世界の天然ウラン資源量は、1500万トン前後と推定されており、電気出力100万kWの現行軽水炉1000基を約100年間運転可能な量に対応している。その結果として、1500万トン弱の劣化ウランと1.5 万トンの核分裂性Puが残される。したがって、劣化ウランにPuを富化した燃料で、電気出力100万kWあたりの炉内と炉外を含めた核分裂性Puのインベントリーが10トンで、増殖比1.0の発電炉(RBWR,Resource-Renewable Boiling Water Reactor)は、Puを触媒のようにして、劣化ウランで核分裂を継続することが可能となり、ウランは1gあたり約1MWDの熱エネルギーを発生するので、1500基のRBWRを1万年間運転することが可能となり、全ウラン資源量を使いきることができる。このため、前述の第1効果である長期安定供給が可能になる。
【0037】
また、以下の作用により前述の第2効果を生じる。本願発明者等の検討によれば、軽水炉炉心における増殖比と実効的な水対燃料体積比の関係について、以下のことが判明している。実効的な水対燃料体積比(Vm/Vf)effは、炉心内で蒸気ボイドが発生することを考慮して、幾何学的な水対燃料体積比(Vm/Vf)geo (蒸気ボイドが発生しない水対燃料体積比)を拡張したものである。蒸気ボイドが発生することでの水素密度の減少割合をFとすると、両者には下記の関係がある。
【0038】
【数1】
(Vm/Vf)eff=F(Vm/Vf)geo (数1)
また、Fは、炉心平均の蒸気ボイド率V(%)と以下の関係にある。
【0039】
F=(100−V)/100+fV/100
ここで、fは飽和水密度に対する飽和蒸気密度の比である。
【0040】
一般に、fは約1/20という小さな値であり、Fは以下のように近似できる。
【0041】
F≒(100−V)/100
図2に実効的な水対燃料体積比と中性子バランスから定義される転換比および転換比を構成する三つの因子の関係を示す。
【0042】
【数2】
転換比=α(1+β)−(1+γ) (数2)
ここで、
α:核分裂性物質に中性子が吸収され、核分裂性物質が1個消滅した時に発生する新しい中性子の個数
β:燃料親物質の高速エネルギー領域における核分裂による追加分
γ:核分裂性物質による中性子吸収量に対する中性子の無駄捕獲(中性子漏洩を含む)の割合
現在運転中の軽水炉は、実効的な水対燃料体積比は、約2.0 で、増殖比は約0.5 である。増殖比1近傍を実現するには、上記転換比を1近傍にする必要がある。本願発明者等の検討によれば、後述の範囲で核分裂性Puの富化度を高くし、かつ、ブランケットへの中性子漏洩を増加することで、転換比0.85 以上で増殖比1近傍を実現できることがわかった。そのための実効的な水対燃料体積比は0.6以下となる。一方、実効的な水対燃料体積比を0.1以下とするためには、炉心平均の蒸気ボイド率が70%を超える値にしなければならず、過渡事象時に、炉心出口で二相流状態が維持できなくなる。
【0043】
実効的な水対燃料体積比0.1〜0.6は、燃料棒を稠密に配置する、または、炉心内で発生する蒸気ボイドを活用する、または、制御棒が挿入されないときには制御棒挿入位置にフォロアーを挿入し減速材を排除することで実現する。あるいは、以上の三つを組合せることで実現する。図3に燃料棒間隙と幾何学的な水対燃料体積比の関係例を示す。図3では、燃料棒直径を現在軽水炉で使用されている約9.5〜12.3mmの範囲とし、正三角形の燃料棒格子を対象とした。燃料棒間隙を2mm以下にすると燃料棒格子の(Vm/Vf)geoは、約0.9以下になる。燃料棒を正三角形の格子状に稠密配列した燃料集合体の場合、燃料集合体間のギャップ領域や制御棒挿入領域等を考慮すると燃料集合体体系の(Vm/Vf)geoは、燃料棒格子の(Vm/Vf)geoより0.1から0.2大きな値となる。したがって、この幾何学的な水対燃料体積比のもとで、実効的な水対燃料体積比0.6以下を実現するためには、数1より炉心平均の蒸気ボイド率を45%以上(図6に示す関係図より炉心出口の蒸気重量率は20wt%以上)にする必要がある。一方、燃料棒間隙が0.7(燃料集合体の製作や熱的余裕の確保などの点からの燃料棒間隙の最小値)〜1.0mmの範囲(燃料棒直径が9.5mmより太い場合には1.0mm以上にすることが可能)では、蒸気ボイド率0%で、(Vm/Vf)geoを約0.6以下にできる。
【0044】
図4は、燃料集合体の平均核分裂性Pu富化度と増殖比の関係を示す。炉心を、運転期間を通じて臨界状態に維持するためには、核分裂性Pu富化度を6wt%以上にすることが必要である。一方、増殖比は、核分裂性Pu富化度とともに減少するが、前述のように、余剰反応度の増加を活用し、ブランケットへの中性子漏洩を増加することで20wt%(重量%)までは増殖比1近傍を実現できることがわかった。
【0045】
また、その際、炉の反応度を制御する手段としては、燃料集合体の中に断面積が燃料棒単位格子セルの断面積より大きな吸収棒からなる太径制御棒を挿入するする方法が考えられる。以上の組合せにより増殖比1.0 の炉心が実現できる。
【0046】
また、以下の作用により前述の第3,4,5の効果を生じる。本願発明者等の検討によれば、炉心の単位水平断面あたりの燃料集合体の出力を現行沸騰水型軽水炉と同程度にすることで、熱的余裕を確保しつつ、燃料集合体の高さ(有効炉心長:水平断面平均核分裂性Pu富化度が6wt%以上の領域の長さ)を減少できることがわかった。実効的な水対燃料体積比を0.6 以下とするため、燃料棒を稠密に配置した結果、炉心の単位水平断面あたりの燃料棒本数は現行沸騰水型軽水炉の3〜4倍となる。従って、平均線出力密度が同等となる燃料集合体の高さ(有効炉心長)は現行沸騰水型軽水炉の約1/3〜1/4倍となる。
【0047】
更に、現行沸騰水型軽水炉に比べ、減速材が均一に分散した構成であるため、燃料棒の局所出力ピーキング係数を(必要な場合は富化度分布の採用により)、約30%以上低減できる。また、燃焼反応度変化やボイド反応度変化が小さいこと、さらに以下で述べる他の手段と合わせて、出力ピーキング係数を約40%以上低減できる。したがって、平均線出力密度が同等以上となる燃料集合体の高さ(有効炉心長)は現行沸騰水型軽水炉の約1/10倍である40cm以上となる。
【0048】
一方、有効炉心長を短尺にし、軸方向の中性子漏洩を増大することで、ボイド係数低減効果が活用できる。本願発明者等の検討によれば、有効炉心長を140cm以下にすれば、以下で述べる他の手段と合わせて、負のボイド係数が実現できることがわかった。短尺化によりブランケット部での出力発生割合は増加するが、有効炉心長を減少したことで、ブランケット部を除く領域での平均出力密度は約100〜300kW/lとなる。
【0049】
その結果、現行炉とほぼ同じ直径の圧力容器の中に同一出力のRBWRがおさまるので、発電コストを現行軽水炉と同程度に保つことができ、安全性においても、現行軽水炉と同程度の水準に保つことができる。また、これにより、Puインベントリーを減少でき、したがって、一定のPu量で多くの発電炉を運転することが可能で、エネルギー安定供給が実現できる。
【0050】
また、以下の作用により前述の第5効果が生じる。本願発明者等の検討によれば、炉心の上部の核分裂性Puの富化度を炉心の下部より高くすることにより、炉心の軸方向出力分布を平坦化できるとともに、その結果、Puインベントリーを減少させることができる。また、出力が上昇した時や、炉心冷却材流量が低下した時に、炉心内の蒸気ボイド率が上昇するが、その際、図5に示すように、比較的核分裂性Puの富化度が低く、中性子インポータンスの小さい炉心下部に出力分布がスウィングして、炉心の反応度を低下(負のボイド係数と)できる。
【0051】
また、以下の作用により前述の第2効果を生じる。本願発明者等の検討によれば、燃料集合体内に太径制御棒を挿入することで、燃料棒を正三角形の格子状に稠密配列した炉心構成が実現できる。さらに、本願発明者等の検討によれば、太径制御棒と六角形燃料集合体を組み合わせる場合には、1体の制御棒駆動機構に接続された太径制御棒を全て、1体の六角形燃料集合体内に挿入し、かつ太径制御棒を炉心最外周を除いた領域に装荷される全ての六角形燃料集合体に挿入する炉心構成と、1体の制御棒駆動機構に接続された複数の太径制御棒を3体の六角形燃料集合体内に挿入し、かつ太径制御棒を炉心最外周を除いた領域に装荷される全ての六角形燃料集合体に挿入する炉心構成が可能である。
【0052】
いずれも炉停止余裕を確保することが可能であり、前者では燃料集合体を大型化して炉心への装荷体数を減らすことができ、後者では制御棒駆動機構の数を減らすことができる。さらに、本願発明者等の検討によれば、正方形燃料集合体と太径制御棒を組み合わせても、燃料棒を正三角形の格子状に稠密配列した炉心構成が実現できる。
【0053】
また、本願発明者等の検討によれば、横断面が六角形あるいは正方形の燃料集合体と太径制御棒の組み合わせにおいて、燃料集合体内の燃料棒の核分裂性プルトニウム富化度を同一にすると、ガイドチューブに隣接した燃料棒や、燃料集合体中心から最も離れた領域の燃料棒で、出力ピーキングが発生する。そこで、これらの領域の燃料棒の核分裂性プルトニウム富化度を、他の領域の燃料棒の核分裂性プルトニウム富化度より小さくする事により、燃料集合体内の出力分布を平坦化させた燃料集合体が実現できる。
【0054】
また、以下の作用により前述の第4効果を生じる。本願発明者等の検討によれば、炉心内の燃料集合体配置やオリフィス構成を適正化することで、炉心内燃料集合体の出力と流量を平坦化でき熱的余裕を向上することができる。炉心の最外周を除く領域を半径方向に等面積に二分割し、炉心外側領域の燃料集合体炉心滞在サイクル数の平均値が、炉心内側領域のそれより小さくなるように燃料集合体を装荷することで、炉心外側領域の中性子無限増倍率を内側より高くでき、径方向の出力分布が平坦化できる。中性子インポータンスが低い炉心の最外周領域には、滞在サイクル数が大きな燃料集合体を装荷することで、所要核分裂性Puの富化度低減が実現できる。
【0055】
本願発明者等の検討によれば、炉心外周部からの中性子漏洩の影響は、炉心最外層およびそれに隣接する燃料集合体で特に大きく、その結果、燃料集合体出力が他の領域に比べ低くなり、燃料集合体内を流れる流量が大きくなる。したがって、炉心の最外周及び、それに隣接する燃料集合体のオリフィス圧損係数の平均値が、それ以外の領域のオリフィス圧損係数の平均値より大きくなるように設定することで、流量配分を平坦化できる。これにより、炉心の最外周近傍の流量を低減し、全炉心流量を低減することができる。また、オリフィス圧損係数を大きくした領域で蒸気ボイド率を増大でき、ボイド係数の改善,増殖比の増大に寄与することができる。
【0056】
また、以下の作用により前述の第6効果が生じる。本発明者等の検討によれば、軽水蒸気冷却により増殖比を1.0 以上とすることが可能であるが、蒸気温度が飽和温度を越えることにより、現行のBWRで使用されているものより耐高温性の強い材料を開発することが必要となるとともに、コロージョン生成物等の放射性核種が、蒸気とともに炉心外に流出する。本発明においては、炉心出口の蒸気重量率を40wt%以下におさえて、異常な過渡変化で出力が上昇した時にも、冷却材が飽和温度の二相流状態を保ち、飽和温度を維持して、現行軽水炉と同じ構造材が使用でき、炉内における沸騰による蒸留機能により、タービンに行く蒸気中に、コロージョン生成物等の放射性核種が含まれることを防止しつつ、増殖比1.0 以上の炉心が実現できる。
【0057】
また、以下の作用により前述の第1及び第7の効果が生じる。本発明者等の検討によれば、エネルギー長期安定供給をめざして、現行軽水炉で使用される濃縮ウラン製造時に、その残渣として発生する劣化ウランにPuを富化した燃料について実施例を検討するが、現在のようにまだ天然ウランや、使用済み燃料から回収される減損ウランが多量に存在する時には、劣化ウランのかわりに天然ウランや減損ウランさらには低濃縮ウラン(0.71wt%〜2.0wt%)にPuを富化することによっても、核分裂性Puの富化度を劣化ウラン使用の場合に比べて、約0.5wt% 以上低くすることにより、劣化ウランにPuを富化した場合に比べ、増殖比,ボイド係数に関し同等以上の性能を有する炉心を実現できる。
【0058】
また、以下の作用により前述の第8の効果が生じる。本発明者等の検討によれば、劣化ウランにPuを富化するだけでなく、アクチノイド核種も同時にリサイクルすることにより、長寿命の放射性核種が炉内に平衡状態になり、一定量に達する。したがって、本発明の炉ではアクチノイド核種は、発生量と消滅量がバランスして、増加量は零となり、放射性廃棄物の中で特に問題となっている長半減期アクチノイド核種の全発生量を大幅に低減するのみならず、Puを含むアクチノイド核種を原子炉,再処理施設,燃料製造施設の中のみに閉じ込めることができる原子炉システムが実現できる。
【0059】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面を用いて詳細に説明する。以下の実施例では、電気出力135万kW級の炉心を対象にしたが、出力規模はこれに限定されるものではない。燃料集合体の体数を変更することで、他の出力規模にも適用できる。(第1の実施例)
本発明の第1の実施例を図1及び図7〜図12により説明する。図1に、本実施例の電気出力1356MWeの水平断面を示す。504体の燃料集合体1と、燃料集合体3体に挿入される太径制御棒を1つの制御棒駆動機構で作動させる157本の制御棒駆動機構2が示されている。図7に燃料集合体格子の断面を示す。チャンネルボックス3内には、直径10.1mmの燃料棒4が燃料棒間隙1.3mmで正三角形に配置され、燃料棒列12列の正六角形集合体を形成している。燃料集合体中心部には、燃料棒列3列分、すなわち、燃料棒単位格子セル19個分の領域に太径制御棒5が入るガイドチューブ6が配置されている。太径制御棒はB4C が充填されたステンレス管の吸収棒で構成されている。また、太径制御棒の先端部には、軽水より減速能が小さな物質である炭素で構成されたフォロアー部を有している。
【0060】
図8に平衡炉心の燃料配置を示す。燃料集合体1に記された番号は、炉心に滞在している期間をサイクル数で示している。中性子インポータンスが低い炉心最外周には、炉内滞在期間が最も長い5サイクル目燃料が装荷されている。その内側である炉心外側領域には、中性子無限増倍率が最も高い、炉内滞在期間1サイクル目燃料を装荷し、炉心径方向の出力分布平坦化を図っている。炉心内側領域には、炉内滞在期間2から4サイクル目の燃料が分散装荷されており、内側領域の出力分布平坦化を図っている。図9に、平衡炉心におけるオリフィスの状態を示しており、燃料集合体に記された番号は、燃料支持部に設置されたオリフィスの開閉度が異なることを示しており、2領域になっている。燃料集合体出力が小さな炉心最外周領域(番号1)のオリフィス口径は、内側領域のオリフィス口径より小さくなっている。
【0061】
図10に平衡炉心用の燃料集合体の水平断面で平均した核分裂性Puの富化度の高さ方向分布を示す。なお、Puが富化されるウランは劣化ウランである。炉心の高さは70cmで、炉心の下端から、20cm,49cmのところで、3領域に分割され、それぞれの核分裂性Pu富化度は、19wt%,0wt%,19wt%,平均で11.1wt% である。また、炉心部の上下にそれぞれ20cmと25cmの劣化ウランのブランケットが付設されている。図11に核分裂性Pu富化度19wt%領域の燃料集合体水平断面図を示す。核分裂性Puの富化度は19.1wt%,18.5wt%,17.5wt%、の3種類、平均富化度は19wt%である。図12に、炉心平均の高さ方向の出力分布とボイド率分布を示す。炉心平均ボイド率は60%、炉心出口の蒸気重量率は32wt%である。
【0062】
次に、本実施例の作用を説明する。燃料棒間隙1.3mm の正三角形格子の稠密六角形燃料集合体,炉心平均ボイド率60%,太径制御棒の組合せにより、水対燃料の実効体積比0.27が達成され、炉内増殖比0.87,ブランケット増殖比0.14,合計1.01の増殖比が実現した。即ち、本実施例では、実効的な水対燃料体積比を、現行炉の約2.0から0.27に低減することにより、増殖比1.01の軽水炉が実現する。
【0063】
本炉心の出力は、現行のABWRと同じ出力135万kWeで、炉心の外接半径は2.9m で、ABWRの値とほぼ同じである。炉心高さは70cmで、その上下に、それぞれ20cm,25cmのブランケットが付いており、短尺燃料集合体になっている。しかし、燃料棒が稠密になっているため、燃料棒の全長は、ABWRと大差なく、MCPRは1.31で、熱的な設計基準値、1.24を十分満たしている。稠密にかかわらず炉心部70cmの短尺燃料としたため、Puインベントリーは、100万kWe出力あたりの核分裂性Pu量に換算して6.0 トンと少なく、再処理等のPuの炉外滞在期間を考慮しても、100万kWeあたり10トン以下となる。
【0064】
以上の理由により、増殖比1.01の本実施例では、世界のウラン埋蔵量1500万トンから生じる1.5 万トンの核分裂性Puと劣化ウラン1500万トンを使って、100万kWe炉1500基を1万年間運転を続けることができ、エネルギーの長期安定供給体制が実現する。
【0065】
本実施例では、燃料集合体の高さ方向について、核分裂性Puの富化度が19wt%の部分が上下にあり、その間の中央領域は核分裂性Puを含まない劣化ウランとなっている。出力が上昇した時や、炉心冷却材流量が低下した時に、炉心内の蒸気ボイド率が上昇するが、その際、炉心上部の出力分布は、中央の核分裂性Puを含まない領域にスウィングする。これにより、負のボイド反応度果が投入される。又、本実施例では、炉心出口の蒸気重量率が32wt%で、異常な過渡変化時においても、全冷却材が蒸気になることはなく、常に2相流状態を保ち、現在のBWRと同様、炉心内に蓄積されたコロージョン生成物等の放射性物質を沸騰による蒸留作用により炉心内に閉じ込め、タービン側への移行を防いでいる。
【0066】
以上の理由により、本実施例では、現在運転中の燃料燃やしきりの軽水炉と同程度の安全性の下で、エネルギー長期安定供給に対応できるBWRが実現しつつ、現在運転中のABWRとほぼ同じ大きさの圧力容器で、同じ出力を出し、65GWd/tが達成される。
【0067】
現在運転中のBWRのボイド係数(現状値)は−7.0×10-4Δk/k/%voidである。本実施例の値は−0.5×10-4Δk/k/%voidで、現状値よりも絶対値が小さく設計されている。その結果、圧力が上昇する事象とか、冷却水の温度が低下する事象での熱的余裕が比較的大きくなる。以上の理由により、本実施例では、現在運転中のBWRより、かなりの過渡事象において、より安全余裕の大きなBWR炉心が実現する。
【0068】
本実施例では、吸収棒として燃料棒より外径が太い太径制御棒を採用している。制御棒を太径化することにより、制御棒の機械的強度が増し、制御棒の挿入および引き抜き時の曲がりや座屈を抑制することができる。また、太径制御棒の採用により、燃料集合体当たりの吸収棒の本数を少なくすることができ、制御棒の製造性が容易となり、製造コストを低減することができる。
【0069】
本実施例によれば、稠密の六角形燃料集合体,太径制御棒と炉心平均ボイド率60%の組合せにより、劣化ウランに平均11.1wt% の核分裂性Puを富化した燃料により、増殖比1.01 が実現され、世界の天然ウラン埋蔵量1500万トンで、百万kWの炉1500基を1万年間運転できるBWRで、エネルギー長期安定供給が図れる。又、現在運転中のBWRと圧力容器の直径や出力等の運転条件,使用材料をほぼ同じにしたことにより、性能の大幅向上にもかかわらず、発電コストを現行BWRと同程度に押えることができる。又、短尺燃料集合体,軸方向燃料分布による負のボイド係数の維持や、炉心出口の蒸気重量率を約32wt%におさえたことにより、沸騰による蒸留機能を維持して放射化物質を圧力容器内に閉じ込める等、現行BWRと同程度の安全余裕を保つことができる。
【0070】
本実施例では、エネルギー長期安定供給をめざして、現行軽水炉で使用される濃縮ウラン製造時に、その残渣として発生する劣化ウランにPuを富化した燃料についての構成,作用,効果を述べた。しかし、劣化ウランのかわりに、天然ウランや、使用済み燃料から回収される減損ウラン,低濃縮ウランにPuを富化した燃料でも同等以上の効果が得られる。この場合、燃料に含まれるウラン−235の重量割合が増加することで、核分裂性Puの富化度を劣化ウラン使用の場合に比べて、0.5wt% 以上低くすることができる。その結果、核分裂性Puに対する増倍比を約3%以上高くできるとともに、ボイド係数をより負にすることができる。また、Puインベントリーが低減できるので、RBWR運転基数をさらに増加できる。
【0071】
本実施例ではボイド係数は負となっているが、ボイド係数が0あるいは若干正を有しても、ドップラー係数を含めた出力係数は負にすることができる。本願発明者らの検討によれば、安全性の評価結果から、出力係数が負であれば、ボイド係数の正負は本質的には問題ないことが示されている。したがって、炉心部をより長くして、熱的余裕をさらに増大させることができる。また、燃料棒間隙を1.3mmより狭くして、増殖比を増大することも可能である。
【0072】
本実施例では、ウランにPuのみを富化した燃料について述べたが、Puとともにその他のアクチノイド核種を富化することもできる。この場合には、RBWRは中性子の平均エネルギーが高いので、Puが質量数の高いアクチノイド核種に移行しにくくなるとともに、アクチノイド核種を核分裂反応により消滅することができる。さらに、本実施例では、燃料集合体の高さ方向について、核分裂性のPu富化度が等しい部分が上下にあり、その間に核分裂性Puを含まない劣化ウランの構成となっている。しかしながら、上下の核分裂性Puの富化度は、必ずしも等しくする必要はない。また、本実施例では、劣化ウランの領域が炉心部中央よりやや上部に配置されているが、これに限定されるものではない。上下の核分裂性Puの富化度、劣化ウラン領域の位置を組み合わせることで、軸方向出力ピーキングを同等にすることは可能である。
(第2の実施例)
本発明の第2の実施例を図13により説明する。本実施例は、電気出力1356MWeで、燃料をさらに短尺化した炉心である。本実施例の炉心水平断面,燃料集合体格子の断面は、実施例1の図1,図7と同じである。図13に平衡炉心用燃料集合体の水平断面で平均した核分裂性Pu富化度の高さ方向分布を示す。なお、Puが富化されるウランは劣化ウランである。炉心の高さは45cmで、炉心下端から8/12のところで2領域に分割され、上部の富化度が13wt%,下部が12wt%である。また、炉心部の上下にそれぞれ25cm,20cmの劣化ウランのブランケットが付設されている。
【0073】
次に、本実施例の作用を説明する。燃料集合体構成は実施例1と同じであり、燃料集合体は燃料棒間隙1.3mm の正三角形格子の稠密六角形燃料集合体,太径制御棒と炉心平均ボイド率60%の組合せにより、水対燃料の実効体積比0.27が達成され、増殖比1.01が実現した。
【0074】
本実施例は、第1の実施例と比べ、燃料集合体の高さ方向について、中央領域に核分裂性Puを含まない劣化ウランの領域が存在せず、炉心部が45cmとさらに短くなっている。また、燃料集合体の高さ方向について上端から15cmの所で、核分裂性Puの富化度が異なる上下2領域燃料になっており、上部の富化度が13wt%,下部の富化度が12wt%である。一方、炉心のボイド量が増加した時には、すでに飽和状態に達している炉心上部より、ボイド率の低い炉心下部の方がボイド率の相対的な増加量は大きく、その結果、中性子インポータンスの高い炉心上部から、中性子インポータンスの低い炉心下部への中性子束分布のスウィングが起こり、負のボイド反応度が投入される。
【0075】
本実施例では、現在建設中のABWRとほぼ同じ大きさの圧力容器で、同じ出力を出し、45GWd/tが達成される。本実施例においても、劣化ウランのかわりに、天然ウラン,使用済み燃料から回収される減損ウラン,低濃縮ウランを用い、これにPuを富化した燃料でも同等以上の効果が得られる。さらに、Puとともにその他のアクチノイド核種を富化することもできる。
(第3の実施例)
本発明の第3の実施例を図14〜図17により説明する。本実施例は、実施例1と同一の電気出力において、燃料集合体数と燃料集合体構成を変更した炉心である。図14に、本実施例の電気出力1356MWeの水平断面を示す。609体の燃料集合体7と、燃料集合体3体に挿入される太径制御棒を1つの制御棒駆動機構で作動させる193本の制御棒駆動機構8が示されている。
【0076】
図15に燃料集合体格子の断面を示す。チャンネルボックス9内には、直径10.1mmの燃料棒4が燃料棒間隙1.3mmで正三角形に配置され、燃料棒列11列の正六角形集合体を形成している。燃料集合体内の2ヶ所には、燃料棒列2列分、すなわち、燃料棒単位格子セル7個分の領域に太径制御棒10が入るガイドチューブ11が配置されている。太径制御棒はB4C が充填されたステンレス管の吸収棒で構成されている。また、太径制御棒の先端部には、軽水より減速能が小さな物質である炭素で構成されたフォロアー部を有している。
【0077】
図16に平衡炉心の燃料配置を示す。燃料集合体1に記された番号は、炉心に滞在している期間をサイクル数で示している。中性子インポータンスが低い炉心最外周には、炉内滞在期間が最も長い5サイクル目燃料が装荷されている。その内側である炉心外側領域には、中性子無限増倍率が最も高い、炉内滞在期間1サイクル目燃料を装荷し、炉心径方向の出力分布平坦化を図っている。炉心内側領域には、炉内滞在期間2から4サイクル目の燃料が分散装荷されており、内側領域の出力分布平坦化を図っている。
【0078】
図17に、平衡炉心におけるオリフィスの状態を示しており、燃料集合体に記された番号は、燃料支持部に設置されたオリフィスの開閉度が異なることを示しており、2領域になっている。燃料集合体出力が小さな炉心最外周領域(番号1)のオリフィス口径は、内側領域のオリフィス口径より小さくなっている。燃料集合体の水平断面で平均した核分裂性Pu富化度の高さ方向の分布は、実施例1の図10と同じである。
【0079】
本実施例では、制御棒の占める領域が、実施例1の燃料棒単位格子セル19個分1本から燃料棒単位格子セル7個分2本と減少するが、吸収棒が集合体内に分散して挿入されるため、制御棒価値は実施例1とほぼ同等である。一方、本実施例では、炉心に装荷される燃料棒本数は実施例1より増加し、平均線出力密度が下がり、熱的余裕が改善される。本実施例においても、稠密の六角形燃料集合体,太径制御棒と炉心平均ボイド率60%の組合せにより、水対燃料の実効体積比0.28 が達成される。その結果、炉心特性は、実施例1と同等であり、同等の効果が得られる。
【0080】
本実施例においても、劣化ウランのかわりに、天然ウラン,使用済み燃料から回収される減損ウラン,低濃縮ウランを用い、これにPuを富化した燃料でも同等以上の効果が得られる。さらに、Puとともにその他のアクチノイド核種を富化することもできる。
(第4の実施例)
本発明の第4の実施例を図18により説明する。本実施例は、実施例1の構成をベースに炉心性能を高性能化した炉心である。本実施例は、電気出力1356MWeで、炉心断面図は実施例1の図1と同じである。図18に燃料集合体格子の断面を示す。チャンネルボックス3内には、直径10.1mm の燃料棒4が燃料棒間隙1.3mm で正三角形に配置され、燃料棒列12列の正六角形集合体を形成している。燃料集合体中心部には、燃料棒列3列分、すなわち、燃料棒単位格子セル19個分の領域に太径制御棒5が入るガイドチューブ6が配置されている。
【0081】
ガイドチューブの外側には、ガイドチューブとこれに隣接する燃料棒の間の減速材を排除するための水排除棒12が設置されている。太径制御棒はB4C が充填されたステンレス管の吸収棒で構成されている。また、太径制御棒の先端部には、軽水より減速能が小さな物質である炭素で構成されたフォロアー部を有している。炉心の燃料の配置,オリフィスの状態,平衡炉心用の燃料集合体の水平断面で平均した核分裂性Puの富化度の高さ方向の分布は、いずれも、実施例1の図8,図9,図10と同じである。
【0082】
本実施例は、ガイドチューブの周りの減速材を排除することにより、実施例1に比べ、水対燃料の実効体積比を改善でき、また、集合体内の出力ピーキングを抑えることができる。炉心特性は、実施例1と同等であり、同等の効果が得られる。
【0083】
本実施例においても、劣化ウランのかわりに、天然ウラン,使用済み燃料から回収される減損ウラン,低濃縮ウランを用い、これにPuを富化した燃料でも同等以上の効果が得られる。さらに、Puとともにその他のアクチノイド核種を富化することもできる。
(第5の実施例)
本発明の第5の実施例を図19により説明する。本実施例は、実施例1の構成をベースに炉心性能を高性能化した炉心である。本実施例は、電気出力1356MWeで、炉心断面図は実施例1の図1と同じである。図19に燃料集合体格子の断面を示す。チャンネルボックス3内には、直径10.1mm の燃料棒4が燃料棒間隙1.3mm で正三角形に配置され、燃料棒列12列の正六角形集合体を形成している。
【0084】
燃料集合体内の3ヶ所には、燃料棒列2列分、すなわち、燃料棒単位格子セル7個分の領域に太径制御棒10が入るガイドチューブ11が配置されている。太径制御棒はB4C が充填されたステンレス管の吸収棒で構成されている。また、太径制御棒の先端部には、軽水より減速能が小さな物質である炭素で構成されたフォロアー部を有している。炉心の燃料の配置、オリフィスの状態、平衡炉心用の燃料集合体の水平断面で平均した核分裂性Puの富化度の高さ方向の分布は、いずれも、実施例1の図8,図9,図10と同じである。
【0085】
本実施例では、制御棒の占める領域を、実施例1の燃料棒単位格子セル19個分1本から燃料棒単位格子セル7個分3本とすることにより、吸収棒を集合体内に分散して挿入することが可能となり、制御棒価値は実施例1より向上する。その他の炉心特性は、実施例1と同等であり、同等の効果が得られる。
【0086】
本実施例においても、劣化ウランのかわりに、天然ウラン,使用済み燃料から回収される減損ウラン,低濃縮ウランを用い、これにPuを富化した燃料でも同等以上の効果が得られる。さらに、Puとともにその他のアクチノイド核種を富化することもできる。
(第6の実施例)
本実施例は、本発明を正方形燃料集合体に適用した場合である。本実施例の燃料集合体構成を図20に示す。チャンネルボックス13内には、直径10.8mmの燃料棒14を最小燃料棒間隙1.3mm で三角形の格子状に稠密に配置した。燃料集合体中心部には、燃料棒列2列分、すなわち、燃料棒単位格子セル7個分の領域に太径制御棒15が入るガイドチューブ16が配置されている。
【0087】
太径制御棒はB4C が充填されたステンレス管の吸収棒で構成されており、太径制御棒の先端部には、軽水より減速能が小さな物質である炭素で構成されたフォロアー部を有している。また、燃料集合体4体に挿入される太径制御棒を1つの制御棒駆動機構で作動させている。燃料集合体内の燃料棒出力ピーキングを平坦にするため、本実施例では、チャンネルボックスに面した燃料棒とガイドチューブに面した燃料棒の核分裂性Pu富化度を他の領域の燃料棒のそれより低くしている。
【0088】
本実施例では、最小燃料棒間隙1.3mm の三角形格子の稠密正方形燃料集合体,太径制御棒と炉内平均ボイド率60%の組み合わせにより、実効的な水対燃料体積比0.34が達成され、他の実施例と同様、増殖比1.01が実現した。
【0089】
本実施例においても、劣化ウランのかわりに、天然ウラン,使用済み燃料から回収される減損ウラン,低濃縮ウランを用い、これにPuを富化した燃料を使用することができる。さらに、Puとともにその他のアクチノイド核種を富化することもできる。
(第7の実施例)
本発明の第7の実施例を図21〜図25により説明する。本実施例は、実施例1と同一の電気出力において、燃料集合体数と燃料集合体構成,制御棒駆動機構を変更した炉心である。図21に、本実施例の電気出力1356MWeの炉心の水平断面を示す。313体の燃料集合体17と、燃料集合体1体に挿入される太径制御棒を1つの制御棒駆動機構で作動させる313本の制御棒駆動機構18が示されている。図22に燃料集合体格子の断面を示す。チャンネルボックス19内には、直径10.1mmの燃料棒4が燃料棒間隙1.3mmで正三角形に配置され、燃料棒列15列の正六角形集合体を形成している。燃料集合体中心部には、燃料棒列4列分、すなわち、燃料棒単位格子セル37個分の領域に太径制御棒20が入るガイドチューブ21が配置されている。太径制御棒はB4C が充填されたステンレス管の吸収棒で構成されている。また、太径制御棒の先端部には、軽水より減速能が小さな物質である炭素で構成されたフォロアー部を有している。
【0090】
図23に平衡炉心の燃料配置を示す。燃料集合体17に記された番号は、炉心に滞在している期間をサイクル数で示している。中性子インポータンスが低い炉心最外周には、炉内滞在期間が最も長い5サイクル目燃料が装荷されている。その内側である炉心外側領域には、中性子無限増倍率が最も高い、炉内滞在期間1サイクル目燃料を装荷し、炉心径方向の出力分布平坦化を図っている。炉心内側領域には、炉内滞在期間2から4サイクル目の燃料を分散装荷し、炉心中心には、炉内滞在期間5サイクル目の燃料を装荷することにより、内側領域の出力分布平坦化を図っている。
【0091】
図24に、平衡炉心におけるオリフィスの状態を示す。燃料集合体に記された番号は、燃料支持部に設置されたオリフィスの開閉度が異なることを示している。オリフィスの開閉度は図23で示した炉内滞在サイクル毎の5領域と、炉心中心の1領域の合計6領域となっている。燃料集合体出力が小さな炉心最外周領域(番号5)のオリフィス口径は、内側領域のオリフィス口径より小さくなっている。図25に平衡炉心用の燃料集合体の水平断面で平均した核分裂性Puの富化度の高さ方向分布を示す。なお、Puが富化されるウランは劣化ウランである。
【0092】
本実施例では、燃料集合体1体当たりの燃料棒本数を増やして燃料集合体を大型化する事により、炉心に装荷する燃料集合体数を実施例1の504体から313体に減らし、炉心を小型化した。燃料集合体の大型化とともに制御棒の占める領域を、実施例1の燃料棒単位格子セル19個分から37個分に増加することにより、制御棒価値を実施例1とほぼ同等とした。また、制御棒駆動機構を燃料集合体に挿入される制御棒1体につき1体とした。本実施例においても、稠密の六角形燃料集合体、太径制御棒と炉心平均ボイド率60%の組合せにより、水対燃料の実効体積比0.27 が達成される。その結果、炉心特性は、実施例1と同等であり、同等の効果が得られる。
【0093】
本実施例では、最外周に装荷される燃料集合体にも太径制御棒が挿入される炉心構成としたが、炉停止余裕確保の点で効果が小さい最外周の燃料集合体には制御棒を挿入しない炉心構成とすることもできる。
【0094】
本実施例においても、劣化ウランのかわりに、天然ウラン,使用済み燃料から回収される減損ウラン,低濃縮ウランを用い、これにPuを富化した燃料でも同等以上の効果が得られる。さらに、Puとともにその他のアクチノイド核種を富化することもできる。
(第8の実施例)
本発明の第8の実施例を図26により説明する。本実施例は、実施例1と同一の電気出力において、燃料集合体数と燃料集合体構成、制御棒駆動機構を変更した炉心である。本実施例は、電気出力1356MWeで、炉心断面図は実施例7の図21と同じである。図26に燃料集合体格子の断面を示す。チャンネルボックス19内には、直径10.1mmの燃料棒4が燃料棒間隙1.3mmで正三角形に配置され、燃料棒列15列の正六角形集合体を形成している。燃料集合体内の2ヶ所には、燃料棒列3列分、すなわち、燃料棒単位格子セル19個分の領域に太径制御棒5が入るガイドチューブ6が配置されている。
【0095】
太径制御棒はB4C が充填されたステンレス管の吸収棒で構成されている。また、太径制御棒の先端部には、軽水より減速能が小さな物質である炭素で構成されたフォロアー部を有している。炉心の燃料の配置,オリフィスの状態,平衡炉心用の燃料集合体の水平断面で平均した核分裂性Puの富化度の高さ方向の分布は、いずれも、実施例7の図23,図24,図25と同じである。
【0096】
本実施例では、制御棒の占める領域を、実施例7の燃料棒単位格子セル37個分1本から燃料棒単位格子セル19個分2本とすることにより、吸収棒を集合体内に分散して挿入することが可能となり、制御棒価値は実施例7より向上する。その他の炉心特性は、実施例7と同等であり、同等の効果が得られる。
【0097】
本実施例においても、劣化ウランのかわりに、天然ウラン,使用済み燃料から回収される減損ウラン,低濃縮ウランを用い、これにPuを富化した燃料でも同等以上の効果が得られる。さらに、Puとともにその他のアクチノイド核種を富化することもできる。
(第9の実施例)
本実施例は、本発明を正方形燃料集合体に適用した場合である。本実施例の燃料集合体構成を図27に示す。チャンネルボックス22内には、直径9.8mm の燃料棒23を最小燃料棒間隙1.3mm で三角形の格子状に稠密に配置した。燃料集合体中心部には、燃料棒列4列分、すなわち、燃料棒単位格子セル37個分の領域に太径制御棒24が入るガイドチューブ25が配置されている。
【0098】
太径制御棒はB4C が充填されたステンレス管の吸収棒で構成されており、太径制御棒の先端部には、軽水より減速能が小さな物質である炭素で構成されたフォロアー部を有している。また、燃料集合体1体に挿入される太径制御棒を1つの制御棒駆動機構で作動させている。燃料集合体内の燃料棒出力ピーキングを平坦にするため、本実施例では、チャンネルボックスに面した燃料棒とガイドチューブに面した燃料棒の核分裂性Pu富化度を他の領域の燃料棒のそれより低くしている。
【0099】
本実施例では、最小燃料棒間隙1.3mm の三角形格子の稠密正方形燃料集合体,太径制御棒と炉内平均ボイド率60%の組み合わせにより、実効的な水対燃料体積比0.34が達成され、他の実施例と同様、増殖比1.01が実現した。
【0100】
本実施例においても、劣化ウランのかわりに、天然ウラン,使用済み燃料から回収される減損ウラン,低濃縮ウランを用い、これにPuを富化した燃料を使用することができる。さらに、Puとともにその他のアクチノイド核種を富化することもできる。
(第10の実施例)
本発明の第10の実施例を図28により説明する。本実施例は、実施例8の変形であり実施例1と同一の電気出力において、燃料集合体数と燃料集合体構成、御棒駆動機構を変更した炉心である。本実施例は、電気出力1356MWeで、炉心断面図は実施例7の図21と同じである。図28に燃料集合体格子の断面を示す。チャンネルボックス19内には、直径10.1mm の燃料棒4が燃料棒間隙3mmで正三角形に配置され、燃料棒列15列の正六角形集合体を形成している。燃料集合体内の6ヶ所には、燃料棒列2列分、すなわち、燃料棒単位格子セル7個分の領域に太径制御棒5が入るガイドチューブ6が配置されている。
【0101】
太径制御棒はB4C が充填されたステンレス管の吸収棒で構成されている。また、太径制御棒の先端部には、軽水より減速能が小さな物質である炭素で構成されたフォロアー部を有している。炉心の燃料の配置,オリフィスの状態,平衡炉心用の燃料集合体の水平断面で平均した核分裂性Puの富化度の高さ方向の分布は、いずれも、実施例7の図23,図24,図25と同じである。
【0102】
本実施例では、制御棒の占める領域を、実施例7の燃料棒単位格子セル37個分1本から燃料棒単位格子セル7個分6本とすることにより、吸収棒を集合体内に分散して挿入することが可能となり、制御棒価値は実施例7より向上する。その他の炉心特性は、実施例7と同等であり、同等の効果が得られる。
【0103】
本実施例においても、劣化ウランのかわりに、天然ウラン,使用済み燃料から回収される減損ウラン,低濃縮ウランを用い、これにPuを富化した燃料でも同等以上の効果が得られる。さらに、Puとともにその他のアクチノイド核種を富化することもできる。
【0104】
【発明の効果】
本発明によれば、劣化ウラン,天然ウラン,減損ウランや低濃縮ウランにPuを添加した燃料で増殖比1.0近傍又は1.0以上を達成することにより、Puを触媒のようにして、劣化ウラン、天然ウラン,減損ウランや低濃縮ウランを燃焼されることができ、エネルギー長期安定供給に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例における炉心の水平断面図。
【図2】転換比を表わすのに必要な燃料棒格子定数と実効的な水対燃料体積比の関係を表わす特性図。
【図3】燃料棒間隙と幾何学的な水対燃料体積比の関係を表わす特性図。
【図4】核分裂性Pu富化度と増殖比の関係を表わす特性図。
【図5】蒸気ボイド率上昇時の出力分布変動を示す説明図。
【図6】炉心平均のボイド率と炉心出口における上記重量率の関係を示した特性図。
【図7】図1の炉心に装荷される燃料集合体の水平断面図。
【図8】図1の実施例の平衡炉心時の燃料集合体配置図。
【図9】図1の実施例におけるオリフィスの分布図。
【図10】図1の炉心に装荷される燃料集合体の軸方向富化度分布図。
【図11】図1の炉心に装荷される燃料集合体内の燃料棒富化度分布図。
【図12】図1の実施例における炉心の軸方向出力、及びボイド率分布を示した特性図。
【図13】本発明の第2の実施例の炉心に装荷される燃料集合体の軸方向富化度分布図。
【図14】本発明の第3の実施例における炉心の水平断面図。
【図15】図13の炉心に装荷される燃料集合体の水平断面図。
【図16】図13の実施例の平衡炉心時の燃料集合体配置図。
【図17】図13の実施例におけるオリフィスの分布図。
【図18】本発明の第4の実施例の炉心に装荷される燃料集合体の水平断面図。
【図19】本発明の第5の実施例の炉心に装荷される燃料集合体の水平断面図。
【図20】本発明の第6の実施例の炉心に装荷される燃料集合体の水平断面図。
【図21】本発明の第7の実施例における炉心の水平断面図。
【図22】図21の炉心に装荷される燃料集合体の水平断面図。
【図23】図21の実施例の平衡炉心時の燃料集合体配置図。
【図24】図21の実施例におけるオリフィスの分布図。
【図25】図21の炉心に装荷される燃料集合体の軸方向富化度分布図。
【図26】本発明の第8の実施例の炉心に装荷される燃料集合体の水平断面図。
【図27】本発明の第9の実施例の炉心に装荷される燃料集合体の水平断面図。
【図28】本発明の第10の実施例の炉心に装荷される燃料集合体の水平断面図。
【符号の説明】
1,7,17…燃料集合体、2,8,18…制御棒駆動機構、3,9,13,19,22…チャンネルボックス、4,14,23…燃料棒、5,10,15,20,24…太径制御棒、6,11,16,21,25…ガイドチューブ、12…水排除棒。
Claims (31)
- 劣化ウラン,天然ウラン,減損ウラン,低濃縮ウランの少なくとも1つを含むウランに、プルトニウムまたはプルトニウムとアクチノイド核種を富化した核燃料を含む複数の燃料棒を有する炉心において、前記燃料棒が三角形の格子状に配列され、横断面中心部に配置された1本のガイドチューブを有する燃料集合体と、横断面積が燃料棒単位格子セルの断面積より大きな1本以上の吸収棒を有し、前記燃料集合体の前記ガイドチューブ内に挿入される1本の太径制御棒とを備え、前記ガイドチューブの横断面積が燃料棒単位格子セルの断面積よりも大きくなっており、増殖比が1.0近傍又は1.0以上で、ボイド係数が負であることを特徴とする軽水炉炉心。
- 劣化ウラン,天然ウラン,減損ウラン,低濃縮ウランの少なくとも1つを含むウランに、プルトニウムまたはプルトニウムとアクチノイド核種を富化した核燃料を含む複数の燃料棒を有する炉心において、前記燃料棒が三角形の格子状に配列され、横断面中心部に配置された1本のガイドチューブを有する燃料集合体と、横断面積が燃料棒単位格子セルの断面積より大きな1本以上の吸収棒を有し、前記燃料集合体の前記ガイドチューブ内に挿入される1本の太径制御棒とを備え、前記ガイドチューブの横断面積が燃料棒単位格子セルの断面積よりも大きくなっており、増殖比が1.0近傍又は1.0以上で、出力係数が負でかつボイド係数が正または零であることを特徴とする軽水炉炉心。
- 請求項1又は2において、増殖比が1.0から1.15の範囲であることを特徴とする軽水炉炉心。
- 劣化ウラン,天然ウラン,減損ウラン,低濃縮ウランの少なくとも1つを含むウランに、プルトニウムまたはプルトニウムとアクチノイド核種を富化した核燃料を含む複数の燃料棒を有する燃料集合体において、三角形の格子状に配列された前記燃料棒と、燃料集合体横断面の中心部に配置され、横断面積が燃料棒単位格子セルの断面積より大きく、1本の太径制御棒が挿入される1本のガイドチューブとを備えた燃料集合体で、増殖比が1.0近傍又は1.0以上であることを特徴とする燃料集合体。
- 請求項4において、前記ガイドチューブの表面に軽水より減速能の小さな物質で構成させた水排除領域を有することを特徴とする燃料集合体。
- 請求項4又は5において、前記燃料棒が三角形の格子状に稠密配列された燃料集合体で、前記燃料棒の間隙が0.7〜2.0mmであることを特徴とする燃料集合体。
- 請求項6の燃料集合体で構成されることを特徴とする軽水炉炉心。
- 請求項4又は5において、前記燃料棒が三角形の格子状に稠密配列された燃料集合体で、実効的な水対燃料体積比が0.1から0.6の間であることを特徴とする燃料集合体。
- 請求項8の燃料集合体で構成されることを特徴とする軽水炉炉心。
- 請求項1,2,3,7及び9の何れかにおいて、炉心外周部および上下端部のブランケット部分を除いた炉心部における平均核分裂性プルトニウム富化度が6〜20wt%であることを特徴とする軽水炉炉心。
- 請求項4,5,6及び8の何れかにおいて、上下端のブランケット部分を除いた燃料領域における平均核分裂性プルトニウム富化度が6〜20wt%であることを特徴とする燃料集合体。
- 請求項1,2,3,7,9及び10の何れかにおいて、定格出力の50%以上で運転されている時の炉心平均のボイド率が45〜70%であることを特徴とする沸騰水型軽水炉炉心。
- 請求項1,2,3,7,9,10及び12の何れかにおいて、1つの制御棒駆動機構に接続された前記1本の太径制御棒は、1体の燃料集合体内に挿入され、かつ前記太径制御棒は、炉心最外周を除いた領域に装荷される全ての前記燃料集合体に挿入されること特徴とする軽水炉炉心。
- 請求項13の燃料集合体の横断面形状が六角形あるいは正方形であることを特徴とする軽水炉炉心。
- 請求項1,2,3,7,9,10及び12の何れかにおいて、1つの制御棒駆動機構に接続された3本の前記太径制御棒は3体の六角形燃料集合体内に1本づつ挿入され、かつ前記太径制御棒は、炉心最外周を除いた領域に装荷される全ての前記燃料集合体に挿入されること特徴とする軽水炉炉心。
- 請求項1,2,3,7,9,10及び12の何れかにおいて、1つの制御棒駆動機構に接続された前記1本の太径制御棒は4体の正方形燃料集合体内に挿入され、かつ前記太径制御棒は、炉心最外周を除いた領域に装荷される全ての前記燃料集合体に挿入されること特徴とする軽水炉炉心。
- 請求項1,2,3,7,9,10,12,13,14,15及び16の何れかにおいて、前記太径制御棒の先端部に軽水より減速能が小さな物質から構成されたフォロアー部を有することを特徴とする軽水炉炉心。
- 請求項6,8及び11の何れかにおいて、前記ガイドチューブに隣接する領域に配置された前記燃料棒と、前記燃料集合体中心から最も離れた領域に配置された前記燃料棒の核分裂性プルトニウム富化度の平均値が、その他の領域に配置された前記燃料棒の核分裂性プルトニウム富化度の平均値より小さいことを特徴とする燃料集合体。
- 請求項1,2,3,7,9,10,12,13,14,15,16、及び17の何れかにおいて、炉心外周部および上下端部のブランケット部を除く炉心部の平均出力密度が100〜300kW/lであることを特徴とする軽水炉炉心。
- 請求項1,2,3,7,9,10,12,13,14,15,16、及び17の何れかにおいて、上下両端部のブランケット部を除く炉心高さ方向について、燃料集合体水平断面の核分裂性プルトニウム平均富化度が6wt%以上の部分が、40cmから140cmの間であることを特徴とする軽水炉炉心。
- 請求項4,5,6,8,11及び18の何れかにおいて、上下両端部のブランケット部を除く燃料集合体高さ方向について、燃料集合体水平断面の核分裂性プルトニウム平均富化度が6wt%以上の部分が、40cmから140cmの間であることを特徴とする燃料集合体。
- 請求項4,5,6,8,11,18及び21の何れかにおいて、上下両端部のブランケット部を除いて、燃料集合体上半分の核分裂性プルトニウム富化度平均値より下半分の平均値が低いことを特徴とする燃料集合体。
- 請求項4,5,6,8,11,18,21及び22の何れかにおいて、上下両端部のブランケット部を除いた燃料集合体高さ方向について、核分裂性プルトニウム富化度が6wt%以上の部分が上下にあり、その間の中央付近の領域の核分裂性プルトニウム富化度が6wt%以下であることを特徴とする燃料集合体。
- 請求項23において、上下両端部のブランケット部を除いた燃料集合体高さ方向について、核分裂性プルトニウム富化度が6wt%以下の中央付近の領域を挟む上下領域の核分裂性プルトニウム富化度が異なることを特徴とする燃料集合体。
- 請求項1,2,3,7,9,10,12,13,14,15,16,17,19及び20の何れかにおいて、定格出力の50%以上で運転されている時の冷却材の炉心出口蒸気重量率が20wt%〜40wt%であることを特徴とする沸騰水型軽水炉炉心。
- 請求項1,2,3,7,9,10,12,13,14,15,16,17,19,20及び25の何れかにおいて、炉心の最外周を除く領域を半径方向に等面積に二分割し、炉心外側領域に装荷された燃料集合体の炉心滞在サイクル数の平均値が、炉心内側領域のそれより小さくなるように燃料集合体を装荷することを特徴とする軽水炉炉心。
- 請求項1,2,3,7,9,10,12,13,14,15,16,17,19,20,25及び26の何れかにおいて、炉心の最外周及び、それに隣接する燃料集合体のオリフィス圧損係数の平均値が、それ以外の領域のオリフィス圧損係数の平均値より大きくなるように設定することを特徴とする軽水炉炉心。
- 請求項4,5,6,8,11,18,21,22,23及び24の何れかにおいて、使用済み燃料から取り出されたプルトニウムとウランを同時に装荷することを特徴とする燃料集合体。
- 請求項28の燃料集合体で構成されることを特徴とする軽水炉炉心。
- 請求項4,5,6,8,11,18,21,22,23及び24の何れかにおいて、使用済み燃料から取り出されたプルトニウム,ウランおよびアクチノイド核種を同時に装荷することを特徴とする燃料集合体。
- 請求項30の燃料集合体で構成されることを特徴とする軽水炉炉心。
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