JP2021011109A - 昇華物捕集タンク及びそれを用いたフィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、オリゴマによるフィルタの目詰まりが少なく、フィルタを交換せずに長期間の使用が可能な昇華物捕集タンクを提供することをその課題とする。【解決手段】押出機のベントボックスから吸引した気体中の昇華物を捕集する第1の昇華物捕集トラップを有する昇華物捕集タンクであって、第1の昇華物捕集トラップが、側面に突起状物を有する筒体Aと、筒体Aの外側に位置する筒状フィルタと底面フィルタとを備え、筒体Aと筒状フィルタとの間に空隙が存在することを特徴とする、昇華物捕集タンク。【選択図】図1
Description
本発明は、フィルタの目詰まりを軽減し、長期間利用が可能な昇華物捕集タンクに関する。
従来、フィルム等の熱可塑性樹脂成形体の製造時には、熱可塑性樹脂組成物を溶融混錬する押出機が使用されている。このような押出機を用いる場合、最終的に得られる熱可塑性樹脂成形体の品質を向上させるには、押出機での溶融混錬過程で熱可塑性樹脂組成物より水分や気体を取り除く必要があり、押出機のベント(脱気口)より内部の気体を取り除くために真空ポンプ等の吸引装置で吸引を行う。
このとき、真空ポンプで吸引された気体には熱可塑性樹脂組成物を溶融することにより発生する昇華物(例えば、オリゴマ、酸化防止剤分解物、及びUV吸収剤等)が豊富に含まれており、これが析出すると真空ラインや真空ポンプの汚染に繋がる。このような汚染を軽減するために、ベントと真空ポンプとの間にこのような昇華物を捕集して気体を浄化するための昇華物捕集タンクが設けられる。
通常、昇華物捕集タンクはこのような昇華物を捕集するためのフィルタ等を備えており、これまでにも昇華物捕集タンクの捕集能力を向上させるために様々な検討がなされてきた。例えば、特許文献1には筒状メッシュを有する筒体を複数備えることにより、昇華物の捕集量を増加させた昇華物捕集タンク(オリゴマ捕集タンク)が提案されている。
しかしながら、特許文献1の昇華物捕集タンクにおけるフィルタは筒状のメッシュフィルタのみで構成されている。そのため、使用に応じて昇華物による目詰まりが生じやすく、長時間の使用が困難である点で課題があった。また、昇華物捕集タンクのフィルタに目詰まりがあると、押出機中の溶融熱可塑性樹脂組成物に混錬不足や滞留が発生する他、最終的に得られるフィルム等の成型体の厚みむらや加水分解特性が悪化するなど、押出機の運転支障の他、最終製品の品質にまで影響が及ぶことがあった。
本発明は、上記課題を解決し、昇華物によるフィルタの目詰まりが少なく、フィルタを交換せずに長期間の使用が可能な昇華物捕集タンク、及びそれを用いたフィルムの製造方法を提供することをその課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は次の構成を有するものである。
(1) 押出機のベントボックスから吸引した気体中の昇華物を捕集する第1の昇華物捕集トラップを有する昇華物捕集タンクであって、第1の昇華物捕集トラップが、側面に突起状物を有する筒体Aと、筒体Aの外側に位置する筒状フィルタと底面フィルタとを備え、筒体Aと筒状フィルタとの間に空隙が存在することを特徴とする、昇華物捕集タンク。
(2) 前記突起状物が、前記筒体Aの内側及び外側に位置することを特徴とする、(1)に記載の昇華物捕集タンク。
(3) 前記第1の昇華物捕集トラップの上流に、第2の昇華物捕集トラップを有し、第2の昇華物捕集トラップが、前記第1の昇華物捕集トラップの筒体Aの底面に平行な板状体を2枚以上備え、板状体の少なくとも一つが突起状物を有し、前記第1の昇華物捕集トラップに最も近接する板状体以外の板状体に形成された通気口が前記第1の昇華物捕集トラップに通ずる構造を有することを特徴とする、(1)又は(2)に記載の昇華物捕集タンク。
(4) 前記昇華物がオリゴマであることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の昇華物捕集タンク。
(5) (1)〜(4)のいずれかに記載の昇華物捕集タンクを少なくとも一つ備える押出機により、熱可塑性樹脂組成物を押し出す工程を有することを特徴とする、フィルムの製造方法。
(1) 押出機のベントボックスから吸引した気体中の昇華物を捕集する第1の昇華物捕集トラップを有する昇華物捕集タンクであって、第1の昇華物捕集トラップが、側面に突起状物を有する筒体Aと、筒体Aの外側に位置する筒状フィルタと底面フィルタとを備え、筒体Aと筒状フィルタとの間に空隙が存在することを特徴とする、昇華物捕集タンク。
(2) 前記突起状物が、前記筒体Aの内側及び外側に位置することを特徴とする、(1)に記載の昇華物捕集タンク。
(3) 前記第1の昇華物捕集トラップの上流に、第2の昇華物捕集トラップを有し、第2の昇華物捕集トラップが、前記第1の昇華物捕集トラップの筒体Aの底面に平行な板状体を2枚以上備え、板状体の少なくとも一つが突起状物を有し、前記第1の昇華物捕集トラップに最も近接する板状体以外の板状体に形成された通気口が前記第1の昇華物捕集トラップに通ずる構造を有することを特徴とする、(1)又は(2)に記載の昇華物捕集タンク。
(4) 前記昇華物がオリゴマであることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の昇華物捕集タンク。
(5) (1)〜(4)のいずれかに記載の昇華物捕集タンクを少なくとも一つ備える押出機により、熱可塑性樹脂組成物を押し出す工程を有することを特徴とする、フィルムの製造方法。
本発明によれば、昇華物によるフィルタの目詰まりが少なく、フィルタを交換せずに長期間の使用が可能な昇華物捕集タンク、及びそれを用いたフィルムの製造方法を提供することができる。
本発明の昇華物捕集タンクは、押出機のベントボックスから吸引した気体中の昇華物を捕集する第1の昇華物捕集トラップを有する昇華物捕集タンクであって、第1の昇華物捕集トラップが、側面に突起状物を有する筒体Aと、筒体Aの外側に位置する筒状フィルタと底面フィルタとを備え、筒体Aと筒状フィルタとの間に空隙が存在することを特徴とする。以下、本発明の昇華物捕集タンクについて具体的に説明する。
本発明の昇華物捕集タンクは、押出機のベントボックスから吸引した気体中の昇華物を捕集する第1の昇華物捕集トラップを有する昇華物捕集タンクである。このような態様とすることにより、昇華物による真空ラインや気体吸引装置の汚染を軽減することができる。ここで昇華物捕集タンクとは、気体中の昇華物を捕集する装置であってベントボックスと気体吸引装置との間に位置するものをいい、ベントボックスとは、押出機の本体に設けられたベント(脱気口)若しくはそれを覆う筐体をいう。
また、昇華物とは、熱可塑性樹脂組成物を溶融混練する過程において発生する昇華物をいい、主な具体例としては、熱可塑性樹脂が溶融することで発生する低分子化合物であるオリゴマが挙げられる。また、熱可塑性樹脂組成物が添加物として酸化防止剤やUV吸収剤等を含む場合は、酸化防止剤の分解物やUV吸収剤等も昇華物となることがある。これらの昇華物は、一般的に気体中の濃度が飽和に達すると析出する。
本発明の昇華物捕集タンクで捕集する昇華物は、熱可塑性樹脂組成物を溶融混練する過程において発生する昇華物であれば特に限定されないが、添加物の有無にかかわらず発生する観点から、主にオリゴマとなる。オリゴマの具体例としては、例えば、熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレート(以下、PETということがある。)である場合における、線状オリゴマ(テレフタル酸、モノヒドロキシエチルテレフタル酸、ビス−β−ヒドロキシエチルテレフタル酸等)や、環状オリゴマ(前記線状オリゴマの環状三量体や環状二量体)等が挙げられる。
通常、最終的に得られるフィルム等の熱可塑性樹脂成形体の品質を向上させるには、気泡の混入や熱可塑性樹脂成分の加水分解を抑えることが求められるため、押出機での溶融混錬過程で熱可塑性樹脂組成物より水分や気体を取り除く。ベントボックスは真空ラインを介して気体吸引装置に連結されており、この気体吸引装置を稼働させることで溶融した熱可塑性樹脂組成物より気体や水分を除去することができる。気体吸引装置は本発明の効果を損なわない限り特に制限されず公知のものを用いることができ、具体例としては真空ポンプが挙げられる。
但し、このようにして吸引した気体には、押出機内で熱可塑性樹脂が溶融することにより発生する昇華物が豊富に含まれており、これらが析出すると真空ラインや気体吸引装置の汚染に繋がる。そのため、気体吸引装置とベントボックスとを繋ぐ真空ラインの途中に昇華物捕集タンクを設け、昇華物捕集タンクの下流の気体を昇華物量の少ないものとすることが重要となる。
本発明の昇華物捕集タンクにおける第1の昇華物捕集トラップは、捕集能力向上とフィルタの目詰まり軽減の観点から、側面に突起状物を有する筒体Aを有することが重要である。第1の昇華物捕集トラップは、押出機のベントボックスより流入した気体より昇華物を取り除く役割を担うものである。筒体Aは少なくとも筒状フィルタと、その側面に位置する少なくとも一本以上の突起状物を備え、筒状フィルタは析出した昇華物を捕捉し気体を通過させる。また、突起状物はその表面に昇華物を吸着させる。なお、以下筒体Aを構成する筒状フィルタを、筒体Aの筒状フィルタということがある。
このような態様とした場合、側面の突起状物によって気体の通過が可能な筒体Aの筒状フィルタ部分の表面積は小さくなるものの、側面の突起状物の分だけ筒体A全体の表面積が増加するため、昇華物の捕集能力自体は向上し、結果、筒体Aの筒状フィルタの目詰まりも軽減される。
筒体Aの筒状フィルタは、析出した昇華物を捕捉し気体を通過させるものであれば、本発明の効果を損なわない範囲で公知のフィルタ等から適宜選定することができる。具体的には、メッシュサイズが縦横方向共に200メッシュ以上300メッシュ以下の金属メッシュであることが好ましく、さらに線径が0.04mm以上0.05mm以下であるものが好ましい。このようなフィルタを用いることで捕集率を70%以上とすることができ、昇華物捕集タンクの捕集能力が向上する。捕集率の上限は制限されるものではないが、空気がフィルタを通過すること等を考慮すると実質的には99%となる。
なお、フィルタの捕集率が高くなると、ベントボックスの真空度の最大変化量が高くなる傾向にあり、フィルタの交換周期も短くなる。一方、フィルタの捕集率が低くなるとベントボックスの真空度の最大変化量が低くなる傾向にあり、フィルタの交換時期は長くなるが、溶融した樹脂が押出機内からベント孔に流入しやすくなり安定した樹脂溶融混錬が難しくなる場合がある。これらの点から、フィルタの好ましい捕集率は、80%以上90%以下である。この他、上記の金属メッシュにかえて不織布等を用いることもでき、不織布等をフィルタとして用いる場合においても、前記の金属メッシュと同程度の捕集率のものを使用することが好ましい。
メッシュサイズとは縦線若しくは横線25.4mm(1インチ)間による目数をいい(単位:メッシュ)、線径とはメッシュを構成するワイヤの直径(mm)をいう。捕集率は質量法にて測定されものであり、具体的には、大小の粒子の混合物100gをフィルタで濾過した際にフィルタ上に確認される粒子の残量の割合で求められる。
筒体Aを構成する突起状物は、昇華物が吸着するものであれば、その大きさや形状、材質等は特に制限されず、例えば、金属製のピン状突起物等を用いることができる。このとき、金属の種類は本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、例えばアルミニウム等を用いることができる。また、単位面積あたりの突起状物の本数を多くすれば昇華物の捕集能力は向上するが、筒体Aの筒状フィルタ部分の面積が小さくなるため空気が通過しにくくなる。すなわち、単位面積あたりの突起状物の本数は、空気の通過に支障がない範囲で多くすることが、昇華物の捕集能力の面で好ましい。
本発明の昇華物捕集タンクは、筒体Aの外側に位置する筒状フィルタと底面フィルタとを備えることが重要である。「筒体Aの外側に位置する筒状フィルタと底面フィルタとを備える」とは、筒体Aが、上面を除き筒状フィルタと底面フィルタとで囲まれている状態をいう。これらのフィルタは、筒体Aを通過せずに流れてきた気体中の昇華物や、筒体Aを通過した気体からその後析出した昇華物等を捕集する役割を担う。このような態様とすることにより、筒体Aのみが存在する場合よりも昇華物を捕集する機会が増えるため、さらに昇華物捕集タンクの捕集能力を向上させることができる。なお、以下筒体Aの外側に位置する筒状フィルタを、筒体Aの筒状フィルタと区別するため、外側の筒状フィルタということがある。
外側の筒状フィルタと底面フィルタは、析出した昇華物を捕捉し気体を通過させるものであれば、本発明の効果を損なわない範囲で公知のフィルタ等から適宜選定することができるが、捕集能力の観点から、上述した筒体Aのメッシュと同様のものを用いることが好ましい。
本発明の昇華物捕集タンクは、フィルタとして機能する部分の面積を増やす観点から、筒体Aと筒状フィルタとの間に空隙が存在することが重要である。このような態様とすることにより、外側の筒状フィルタの面積が大きくなるため、第1の昇華物捕集トラップの捕集能力が向上する。また、筒体Aと筒状フィルタとの間に空隙が存在することにより、筒体Aの外側に突起状物を設けることが可能となるため、第1の昇華物捕集トラップの捕集能力をさらに向上させることも容易となる。
本発明の昇華物捕集タンクは、捕集能力を向上させる観点から、突起状物が、筒体Aの内側及び外側に位置することが好ましい。「突起状物が、筒体Aの内側及び外側に位置する」とは、筒体Aの内面と外面が、共に少なくとも一本以上の突起状物を有することをいう。このような態様とすることで、内面側の突起状物により筒体Aを通過する気体の昇華物を捕集し、外面側の突起状物により、筒体Aを通過せずに流れてきた気体中の昇華物や、筒体Aを通過した気体からその後析出した昇華物等も捕集することができる。結果、昇華物捕集タンクの捕集能力が向上し、ベントボックスの真空度の最大変化量の上昇を抑えることができるため、フィルタの交換周期も長くすることができる。
なお、筒体Aの内面と外面が、共に少なくとも一本以上の突起状物を有する限り、内面側と外面側で突起状物の位置、長さ、太さ、及び本数はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、同一面側における突起状物の長さや太さも、同一であっても異なっていてもよい。また、本発明の効果を損なわない限り、突起状物は筒体Aの表面に貼り付けて形成しても、筒体Aを貫通させて形成してもよい。
本発明の昇華物捕集タンクは、第1の昇華物捕集トラップの上流に、第2の昇華物捕集トラップを有することが好ましい。「第1の昇華物捕集トラップの上流に、第2の昇華物捕集トラップを有する」とは、昇華物捕集タンクに流入した気体が第1の昇華物捕集トラップに到達する前に第2の昇華物捕集トラップを通過する構造を有することをいう。このような態様とすることにより、第1の昇華物捕集トラップに到達する気体中の昇華物量を減少させることができるため、第1の昇華物捕集トラップを構成する各筒状フィルタや底面フィルタの昇華物による目詰まりを大きく軽減できる。
第2の昇華物捕集トラップは、第1の昇華物捕集トラップの筒体Aの底面に平行な板状体を2枚以上備え、板状体の少なくとも一つが突起状物を有し、第1の昇華物捕集トラップに最も近接する板状体以外の板状体に形成された通気口が前記第1の昇華物捕集トラップに通じていることを特徴とする。ここで「筒体Aの底面に平行」とは、筒体Aの底面側の切り口上に蓋をするように描いた平面と平行であることをいう。
第2の昇華物捕集トラップが、第1の昇華物捕集トラップの筒体Aの底面に平行な板状体を2枚以上備え、第1の昇華物捕集トラップに最も近接する板状体以外の板状体に形成された通気口が第1の昇華物捕集トラップに通じていることにより、昇華物を豊富に含む気体が第2の昇華物捕集トラップを通過せずに、直接第1の昇華物捕集トラップに流入するのを防ぐことができる。すなわち、第1の昇華物捕集トラップに最も近接する板状体は、通気口を有する板状体側に気体を通す孔を有し、かつ直接第1の昇華物捕集トラップ側に気体を通す孔を有さないことが好ましい。
第2の昇華物捕集トラップの板状体の少なくとも一つが突起状物を有することにより、突起状物に昇華物を吸着させることで、第1の昇華物捕集トラップに到達する気体中の昇華物量を減少させることができる。そのため、このような態様とすることにより、第1の昇華物捕集トラップを構成する各筒状フィルタや底面フィルタの昇華物による目詰まりを大きく軽減できる。
なお、本発明の効果を損なわない限り、板状体は片側にのみに突起状物を有しても、両側に突起状物を有していてもよいが、昇華物の捕集効率を高めると同時にベントボックスの真空度の最大変化量の上昇を抑えることで、フィルタの交換周期を長くする観点から、両側に突起状物を有することが好ましい(但し、第1の昇華物捕集トラップに最も近接する板状体は、前述の通り2つの昇華物捕集トラップを隔離する役割を果たすため、気体が通過する側のみに突起状物を有することが可能である。)。なお、その他、突起状物の位置、長さ、太さ、及び本数については第1の昇華物捕集トラップ同様、適宜設定することができる。
本発明においてベントボックスの真空度の最大変化量は、0.8kPa未満であることが好ましく、さらには、0.5kPa以下である。下限は特段に限定されるものではないが、押出し溶融物間に含まれる空隙や押出機内での溶融斑などにより、実際には、0.1kPaが限界である。つまり、上述したフィルタの捕集率を下げて真空度の最大変化量を低下させようとしても0.1kPaが限界であり、本発明の昇華物捕集タンクの構成とすることで、捕集率が70%以上としながらもベント孔への樹脂流入が抑制されフィルタの交換周期が長く、さらには、フィルムの製膜安定性も得られる。
続いて、本発明のフィルムの製造方法について説明する。本発明のフィルムの製造方法は、本発明の昇華物捕集タンクを少なくとも一つ備える押出機により、熱可塑性樹脂組成物を押し出す工程を有する。本発明の昇華物捕集タンクは、捕集能力が高く、かつフィルタの目詰まりを軽減できるため、フィルタの交換をせずに長期間の運転が可能である。また、フィルタの目詰まりが軽減されることで、吸引ポンプ稼働時の真空度低下も軽減される。そのため、押出機中の溶融熱可塑性樹脂組成物の混錬不足や滞留が抑えられ、最終的に得られるフィルムの厚みむらや加水分解特性の悪化も抑えられる。このように、本発明のフィルムの製造方法を用いることにより、生産性が向上するだけでなく、最終製品であるフィルムの品質も向上する。
本発明のフィルムの製造方法における熱可塑性樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、例えば、PET、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル樹脂の他、ポリアミド樹脂やポリオレフィン樹脂等を単独で又は組み合わせて用いることができる。また、この熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、無機粒子等の熱可塑性樹脂以外の成分を含むこともできる。
以下、本発明のフィルムの製造方法について、PETフィルムを例に挙げて具体的に説明するが、本発明は以下の態様に限定されるものではない。
先ず、PETの未乾燥ペレットを200kg/hr〜400kg/hrで二軸押出機に供給し、押出機にて260℃〜300℃で溶融混練する。このとき、二軸押出機には各ベント部に設けられた各ベントボックスに、配管、バルブ、及び本発明の昇華物捕集タンクを介して真空ポンプを接続することで真空ラインを形成する。このとき、各ベントボックスから本発明の昇華物捕集タンクまでの真空ラインは、昇華物の析出を抑えるためにヒータで200℃〜255℃に加熱することが好ましい。昇華物捕集タンクは、昇華物を昇華させて真空ポンプに向かう空気の昇華物量を減らす観点から、冷却ジャケット等により10℃以上50℃以下に冷却することが好ましい。
本発明の昇華物捕集タンクは、押出機のベントボックスから吸引した気体中の昇華物を捕集する第1の昇華物捕集トラップを有する昇華物捕集タンクであって、第1の昇華物捕集トラップが、側面に突起状物を有する筒体Aと、筒体Aの外側に位置する筒状フィルタと底面フィルタとを備え、筒体Aと筒状フィルタとの間に空隙が存在することを特徴とする。また、第1の昇華物捕集トラップの上流に、第2の昇華物捕集トラップを有することが好ましい。この第2の昇華物捕集トラップは、第1の昇華物捕集トラップの筒体Aの底面に平行な板状体を2枚以上備え、板状体の少なくとも一つが突起状物を有し、第1の昇華物捕集トラップに最も近接する板状体以外の板状体に形成された通気口が第1の昇華物捕集トラップに通ずる構造を有する。以下、本発明の一実施態様に係る昇華物捕集タンクを表す模式図(筒体Aの中心軸を含む面で切断した断面図)である図1を参照しながら、本発明の昇華物捕集タンクの具体例について説明する。
図1に示す昇華物捕集タンク1は、その筐体2の内部に、第1の昇華物捕集トラップ3と第2の昇華物捕集トラップ4を有する。この昇華物捕集タンク1において、押出機のベントボックス(図示しない)から吸引された気体は、気体流入口5より昇華物捕集タンク1内に流入し、第2の昇華物捕集トラップ4、及び第1の昇華物捕集トラップ3を経て、やがて気体流出口6より排出される。なお、図1において気体の流れは白色の矢印で示す。
第2の昇華物捕集トラップ4は、第1の昇華物捕集トラップ3の筒体A7の底面に平行な板状体を2枚有する(第1の昇華物捕集トラップに最も近接する板状体を内側の板状体8、もう一つの板状体を外側の板状体9とする。)。内側の板状体8は、第2の昇華物捕集トラップ4を経ずに直接第1の昇華物捕集トラップ3に昇華物を豊富に含む気体が流入するのを防ぐ役割を担っており、内側の板状体8の存在により、第1の昇華物捕集トラップ3の各フィルタの目詰まりを軽減できる。また、外側の板状体9は両面に複数の突起状物10を有し、さらに、内側の板状体8と外側の板状体9との間の気体を内側の板状体8と筐体2の天板との間の空間に流入させるための貫通孔11、及び気体を外側の板状体9と筐体2の天板との間から第1の昇華物捕集トラップ3に流入させるための通気口12を備える。通気口12は内側の板状体8も貫通しているが、内側の板状体8と外側の板状体9の間から気体が流入しない構造を有する。外側の板状体9は突起状物10に昇華物を吸着させることで、気体から昇華物を除去する役割を担う。すなわち、気体流入口5より流入した気体は貫通孔11及び通気口12を経て第1の昇華物捕集トラップ3に到達し、その過程で主に外側の板状体9の突起状物10により気体中の昇華物量が減少する。
第1の昇華物捕集トラップ3は、側面に突起状物10を有する筒体A7と、筒体A7の外側に位置する筒状フィルタ(外側の筒状フィルタ13)と底面フィルタ14とを備え、筒体A7と外側の筒状フィルタ13との間に空隙が存在する。筒体A7は筒状フィルタ(筒体Aの筒状フィルタ15)の側面の両側に突起状物10を有する。通気口12を経て第1の昇華物捕集トラップ3に到達した気体は、外側の筒状フィルタ13と底面フィルタ14で囲まれた空間に入り、筒体A7の内側若しくは外側に流入する。筒体A7の内側に流入した気体は、筒体A7の内側の突起状物10、底面フィルタ14、及び筒体Aの筒状フィルタ15により昇華物を捕捉されて、筒体Aの筒状フィルタ15や底面フィルタ14を通じて筒体Aの外若しくは第1の昇華物捕集トラップ3の外に排出される。筒体A7の外側に流入した気体、及び筒体Aの筒状フィルタ15を内側から外側に通過した気体は、筒体A7の外側の突起状物10、底面フィルタ14、及び外側の筒状フィルタ13により昇華物を捕捉されて、外側の筒状フィルタ13や底面フィルタ14を通じて第1の昇華物捕集トラップ3の外に排出される。
このようにして第1の昇華物捕集トラップ3の外に排出された気体は、第2の昇華物捕集トラップ4、及び第1の昇華物捕集トラップ3により昇華物を除去されているため、気体流入口5より流入した気体よりも昇華物量が少ない。第1の昇華物捕集トラップ3の外に排出された気体は、その後気体流出口6より昇華物捕集タンク1の下流の真空ライン(図示しない)に排出される。
前述の通り、第2の昇華物捕集トラップ4、及び第1の昇華物捕集トラップ3は共に、突起状物10を備えており、これが昇華物を捕捉する。そのため、突起状物10が存在しない場合に比べて、フィルタ(外側の筒状フィルタ13、底面フィルタ14、及び筒体Aの筒状フィルタ15)で捕捉する昇華物量を減らすことができ、これらのフィルタの目詰まりが軽減される。その結果、フィルタの交換をせずに長期間の運転が可能となり、目詰まりによる真空ポンプ稼働時の真空度低下も軽減される。この効果により、さらに押出機中の溶融熱可塑性樹脂組成物の混錬不足や滞留が抑えられ、最終的に得られるフィルムの厚みむらや加水分解特性の悪化も抑えられる。
このように、本発明の昇華物捕集タンクを備える押出機で溶融混練されたPETは、その後、口金ダイよりシート状に冷却ドラム上へ吐出され、冷却ドラムで急冷固化されて無配向フィルムとなる。また、必要に応じて無配向フィルムを長手方向及び幅方向の少なくとも一方向に延伸し、一軸配向フィルム若しくは二軸配向フィルムとすることもできる。さらに、得られたPETフィルムを巻き取りコアに巻き取ることにより、PETフィルムロールを得ることができる。延伸装置は本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、公知のものから適宜選択することができる。具体的には、長手方向への延伸にはロールの周速差によって延伸を施すロール式延伸機や、テンターオーブン等を用いることができ、幅方向への延伸にはテンターオーブン等を用いることができる。また、テンターオーブンにより、長手方向と幅方向に同時に延伸することもできる。なお、長手方向とは製造工程中にフィルムが走行する方向をいい、幅方向とは長手方向とフィルム面内で直交する方向をいう。
本発明により、昇華物によるフィルタの目詰まりが少なく、フィルタを交換せずに長期間の使用が可能な昇華物捕集タンク、及びそれを用いたフィルムの製造方法を提供することができる。本発明の昇華物捕集タンクを用いることにより、押出機の操業効率向上に寄与できる。また、本発明のフィルムの製造方法を用いることにより、厚みむらや加水分解を軽減できるためフィルム品質が向上する。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。但し、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における使用装置、評価項目は以下の通りとした。
<使用装置>
(1)二軸押出機
最外径が105mmであり、2つのベント及びこれらを覆う2つのベントボックスを有する二軸押出機を用いた(以下、上流側のベントボックスを第1ベントボックス、下流側のベントボックスを第2ベントボックスということがある。)。第1、第2ベントボックスは、それぞれ途中にバルブ及び昇華物捕集タンクを有する真空ライン介して真空ポンプに接続されており、また、各ベントボックスから各昇華物捕集タンク入口までの区間はヒータで250℃に温度を制御した。
(1)二軸押出機
最外径が105mmであり、2つのベント及びこれらを覆う2つのベントボックスを有する二軸押出機を用いた(以下、上流側のベントボックスを第1ベントボックス、下流側のベントボックスを第2ベントボックスということがある。)。第1、第2ベントボックスは、それぞれ途中にバルブ及び昇華物捕集タンクを有する真空ライン介して真空ポンプに接続されており、また、各ベントボックスから各昇華物捕集タンク入口までの区間はヒータで250℃に温度を制御した。
(2)昇華物捕集タンク
実施例1において、図1に示す態様の昇華物捕集タンクを使用した。以下、この昇華物捕集タンクについて具体的に説明する。昇華物捕集タンク1は、その筐体2の内部に第1の昇華物捕集トラップ3と第2の昇華物捕集トラップ4を有する。この昇華物捕集タンク1は、吸引された気体が気体流入口5より昇華物捕集タンク1内に流入し、第2の昇華物捕集トラップ4、及び第1の昇華物捕集トラップ3を経て気体流出口6より排出される構造を備える。第2の昇華物捕集トラップ4は、第1の昇華物捕集トラップ3の筒体A7の底面に平行な内側の板状体8及び外側の板状体9を有し、外側の板状体9は両面に複数の突起状物10を有し、さらに、内側の板状体8と外側の板状体9との間の気体を内側の板状体8と筐体2の天板との間の空間に流入させるための貫通孔11、及び気体を外側の板状体9と筐体2の天板との間から第1の昇華物捕集トラップ3に流入させるための通気口12を備える。通気口12は内側の板状体8も貫通しているが、内側の板状体8と外側の板状体9の間から気体が流入しない構造を有する。また、第1の昇華物捕集トラップ3は、側面に突起状物10を有する筒体A7と、筒体A7の外側に位置する筒状フィルタ(外側の筒状フィルタ13)と底面フィルタ14とを備え、筒体A7と外側の筒状フィルタ13との間に空隙が存在する。筒体A7は筒状フィルタ(筒体Aの筒状フィルタ15)の側面の両側に突起状物10を有する。 なお、外側の筒状フィルタ13、底面フィルタ14、及び筒体Aの筒状フィルタ15は、呉羽テック製“ボンデン”(登録商標)エアフィルタ(不織布製 質量法で測定した捕集率98% 未使用)を使用し、突起状物10はアルミニウム製のピンを使用した。
実施例1において、図1に示す態様の昇華物捕集タンクを使用した。以下、この昇華物捕集タンクについて具体的に説明する。昇華物捕集タンク1は、その筐体2の内部に第1の昇華物捕集トラップ3と第2の昇華物捕集トラップ4を有する。この昇華物捕集タンク1は、吸引された気体が気体流入口5より昇華物捕集タンク1内に流入し、第2の昇華物捕集トラップ4、及び第1の昇華物捕集トラップ3を経て気体流出口6より排出される構造を備える。第2の昇華物捕集トラップ4は、第1の昇華物捕集トラップ3の筒体A7の底面に平行な内側の板状体8及び外側の板状体9を有し、外側の板状体9は両面に複数の突起状物10を有し、さらに、内側の板状体8と外側の板状体9との間の気体を内側の板状体8と筐体2の天板との間の空間に流入させるための貫通孔11、及び気体を外側の板状体9と筐体2の天板との間から第1の昇華物捕集トラップ3に流入させるための通気口12を備える。通気口12は内側の板状体8も貫通しているが、内側の板状体8と外側の板状体9の間から気体が流入しない構造を有する。また、第1の昇華物捕集トラップ3は、側面に突起状物10を有する筒体A7と、筒体A7の外側に位置する筒状フィルタ(外側の筒状フィルタ13)と底面フィルタ14とを備え、筒体A7と外側の筒状フィルタ13との間に空隙が存在する。筒体A7は筒状フィルタ(筒体Aの筒状フィルタ15)の側面の両側に突起状物10を有する。 なお、外側の筒状フィルタ13、底面フィルタ14、及び筒体Aの筒状フィルタ15は、呉羽テック製“ボンデン”(登録商標)エアフィルタ(不織布製 質量法で測定した捕集率98% 未使用)を使用し、突起状物10はアルミニウム製のピンを使用した。
また、実施例2では、筒体Aの筒状フィルタ15の突起状物10が外側の側面のみに存在する点を除き、実施例1と同様のものを使用した。実施例3では、筒体Aの筒状フィルタ15の突起状物10が内側の側面のみに存在する点を除き、実施例1と同様のものを使用した。実施例4では、外側の板状体9とその両面に設けられた突起状物10を除いた以外は実施例1と同様のものを使用した。比較例1では筒体A7を除いた以外は実施例4と同様のものを使用した。
実施例5では、実施例1の外側の筒状フィルタ13、底面フィルタ14、及び筒体Aの筒状フィルタ15に代えて、呉羽テック製“ボンデン”(登録商標)エアフィルタ(不織布製 質量法で測定した捕集率83% 未使用)を用いた。実施例6では、実施例4の外側の筒状フィルタ13、底面フィルタ14、及び筒体Aの筒状フィルタ15に代えて、呉羽テック製“ボンデン”(登録商標)エアフィルタ(不織布製 質量法で測定した捕集率83% 未使用)を用いた。実施例7では、実施例1の外側の筒状フィルタ13、底面フィルタ14、及び筒体Aの筒状フィルタ15に代えて、呉羽テック製“ボンデン”(登録商標)エアフィルタ(不織布製 質量法で測定した捕集率76% 未使用)を用いた。
<評価項目>
(1)ベントボックスの真空度の最大変化量
フィルムの生産開始時より15日間にわたり、第1、第2ベントボックスに取り付けた真空計(横河電機製 EJA310絶対圧力電送器)により各ベントボックスの真空度を継続してモニタリングし、データを記録した。得られた測定データより測定期間における第1ベントボックスの真空度の最大値を特定し、この値よりフィルムの生産開始時における第1ベントボックスの真空度の値を差し引いて得られた値を第1ベントボックスの真空度の最大変化量とした。同様に第2ベントボックスの真空度の最大変化量も求めた。その後、第1、第2ベントボックスの真空度の最大変化量を比較し、大きい値をベントボックスの真空度の最大変化量(kPa)とした。なお、フィルムの生産開始時より15日間の期間においては、途中で停止することなくフィルムの生産を継続した。ベントボックスの真空度は、主に昇華物捕集タンクを構成するフィルタの目詰まりによって上昇するものであり、その最大変化量は昇華物捕集タンクを構成するフィルタの目詰まりの程度の指標である。すなわち、ベントボックスの真空度の最大変化量は、小さければ小さいほど長期使用の点で好ましい。
(1)ベントボックスの真空度の最大変化量
フィルムの生産開始時より15日間にわたり、第1、第2ベントボックスに取り付けた真空計(横河電機製 EJA310絶対圧力電送器)により各ベントボックスの真空度を継続してモニタリングし、データを記録した。得られた測定データより測定期間における第1ベントボックスの真空度の最大値を特定し、この値よりフィルムの生産開始時における第1ベントボックスの真空度の値を差し引いて得られた値を第1ベントボックスの真空度の最大変化量とした。同様に第2ベントボックスの真空度の最大変化量も求めた。その後、第1、第2ベントボックスの真空度の最大変化量を比較し、大きい値をベントボックスの真空度の最大変化量(kPa)とした。なお、フィルムの生産開始時より15日間の期間においては、途中で停止することなくフィルムの生産を継続した。ベントボックスの真空度は、主に昇華物捕集タンクを構成するフィルタの目詰まりによって上昇するものであり、その最大変化量は昇華物捕集タンクを構成するフィルタの目詰まりの程度の指標である。すなわち、ベントボックスの真空度の最大変化量は、小さければ小さいほど長期使用の点で好ましい。
(2)フィルタの交換周期/真空ポンプの清掃周期
(1)のベントボックスの真空度の最大変化量が0.8kPaに達したタイミングでフィルタを交換し、また、ベントボックス内に樹脂が盛り上がった段階(ベントアップ)で真空ポンプを止めて、その清掃を行った。フィルムの生産開始からフィルタ交換又は真空ポンプ清掃のいずれかに至るまでの日数をフィルタの交換周期/真空ポンプの清掃周期(日)とした。
(1)のベントボックスの真空度の最大変化量が0.8kPaに達したタイミングでフィルタを交換し、また、ベントボックス内に樹脂が盛り上がった段階(ベントアップ)で真空ポンプを止めて、その清掃を行った。フィルムの生産開始からフィルタ交換又は真空ポンプ清掃のいずれかに至るまでの日数をフィルタの交換周期/真空ポンプの清掃周期(日)とした。
(実施例1)
ガラス転移温度Tgが78℃、融点Tmが255℃、固有粘度が0.62dl/gであるPETの未乾燥ペレットを、300kg/hrで二軸押出機に供給し、第1の昇華物捕集トラップと第2の昇華物捕集トラップを備える図1に示す態様の昇華物捕集タンクを介して各ベントボックスに繋がる真空ポンプで吸引しながら温度280℃で溶融混錬した。このとき、昇華物捕集タンクは取り付けた冷却ジャケット(図1には明示しない)により50℃以下まで冷却し、真空計により各ベントボックスの真空度を継続してモニタリングした。
ガラス転移温度Tgが78℃、融点Tmが255℃、固有粘度が0.62dl/gであるPETの未乾燥ペレットを、300kg/hrで二軸押出機に供給し、第1の昇華物捕集トラップと第2の昇華物捕集トラップを備える図1に示す態様の昇華物捕集タンクを介して各ベントボックスに繋がる真空ポンプで吸引しながら温度280℃で溶融混錬した。このとき、昇華物捕集タンクは取り付けた冷却ジャケット(図1には明示しない)により50℃以下まで冷却し、真空計により各ベントボックスの真空度を継続してモニタリングした。
続いて、二軸押出機より溶融PETを排出し、その厚みが990μmとなるようにシート状に成型した後、静電印加にて表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し無配向フィルムとした。その後、無配向フィルムを85℃〜98℃に加熱したロール群に導き長手方向に倍率3.1倍で延伸して一軸配向フィルムを得た。さらに、一軸配向フィルムの両端をクリップで把持しながら、テンターオーブン内に導き130℃に加熱された雰囲気中で幅方向に倍率3.6倍で延伸した。その後テンターオーブン内で230℃の熱固定を行い、均一に除冷後、室温まで冷やし巻き取り、厚み89μmのフィルムを得た。上記のフィルム製造工程を継続し、各項目の評価を行った。評価結果を表1に示す。
(実施例2〜7、比較例1)
昇華物捕集タンクを表1に記載の態様のものとした以外は実施例1と同様に、フィルムの製造及び各項目の評価を行った。評価結果を表1に示す。
昇華物捕集タンクを表1に記載の態様のものとした以外は実施例1と同様に、フィルムの製造及び各項目の評価を行った。評価結果を表1に示す。
フィルタの交換周期/真空ポンプの清掃周期については、実施例1〜6、比較例1ではフィルタの交換までの日数、実施例7では真空ポンプの清掃までの日数となった。
本発明により、昇華物によるフィルタの目詰まりが少なく、フィルタを交換せずに長期間の使用が可能な昇華物捕集タンク、及びそれを用いたフィルムの製造方法を提供することができる。本発明の昇華物捕集タンクを用いることにより、押出機の操業効率向上に寄与できる。
1 昇華物捕集タンク
2 筐体
3 第1の昇華物捕集トラップ
4 第2の昇華物捕集トラップ
5 気体流入口
6 気体流出口
7 筒体A
8 内側の板状体
9 外側の板状体
10 突起状物
11 貫通孔
12 通気口
13 外側の筒状フィルタ
14 底面フィルタ
15 筒体Aの筒状フィルタ
2 筐体
3 第1の昇華物捕集トラップ
4 第2の昇華物捕集トラップ
5 気体流入口
6 気体流出口
7 筒体A
8 内側の板状体
9 外側の板状体
10 突起状物
11 貫通孔
12 通気口
13 外側の筒状フィルタ
14 底面フィルタ
15 筒体Aの筒状フィルタ
Claims (5)
- 押出機のベントボックスから吸引した気体中の昇華物を捕集する第1の昇華物捕集トラップを有する昇華物捕集タンクであって、
第1の昇華物捕集トラップが、側面に突起状物を有する筒体Aと、筒体Aの外側に位置する筒状フィルタと底面フィルタとを備え、筒体Aと筒状フィルタとの間に空隙が存在することを特徴とする、昇華物捕集タンク。 - 前記突起状物が、前記筒体Aの内側及び外側に位置することを特徴とする、請求項1に記載の昇華物捕集タンク。
- 前記第1の昇華物捕集トラップの上流に、第2の昇華物捕集トラップを有し、
第2の昇華物捕集トラップが、前記第1の昇華物捕集トラップの筒体Aの底面に平行な板状体を2枚以上備え、板状体の少なくとも一つが突起状物を有し、前記第1の昇華物捕集トラップに最も近接する板状体以外の板状体に形成された通気口が前記第1の昇華物捕集トラップに通ずる構造を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の昇華物捕集タンク。 - 前記昇華物がオリゴマであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の昇華物捕集タンク。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の昇華物捕集タンクを少なくとも一つ備える押出機により、熱可塑性樹脂組成物を押し出す工程を有することを特徴とする、フィルムの製造方法。
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JP2019124194 | 2019-07-03 | ||
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JP (1) | JP2021011109A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN115008672A (zh) * | 2022-06-17 | 2022-09-06 | 浙江创富新材料有限公司 | 一种电子交联辐射聚乙烯导电泡棉制备装置及工艺 |
-
2020
- 2020-06-30 JP JP2020112483A patent/JP2021011109A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN115008672A (zh) * | 2022-06-17 | 2022-09-06 | 浙江创富新材料有限公司 | 一种电子交联辐射聚乙烯导电泡棉制备装置及工艺 |
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