JP2021009852A - 端子付き電線の製造方法および端子付き電線 - Google Patents

端子付き電線の製造方法および端子付き電線 Download PDF

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Abstract

【課題】電線の導体を構成している金属素線の断線を効果的に抑制することができる端子付き電線の製造方法及び端子付き電線を提供する。【解決手段】本発明の端子付き電線の製造方法は、絶縁被覆5を剥がして導体4の一部を露出させる工程と、それぞれ半円形の第1加圧面22を有する一対の振動子21を用いて導体4の露出部4aを加圧面22で挟み込み、その状態で一対の振動子21により導体4の露出部4aに超音波振動を一対の振動子21による圧力の印加方向と直交する方向に加えることにより、導体4の露出部4aの断面形状が円形に維持された状態で導体4を構成する金属素線どうしを接合する工程と、導体4の接合部4aを筒部8内に挿入した状態で、それぞれ多面形の第2加圧面26を有する一対の圧縮ダイス25を用いて筒部8の複数箇所それぞれを第2加圧面26で挟み込むことにより、導体4の接合部4aに筒部8を複数箇所において接続する工程と、を含む。【選択図】図3

Description

本発明は、端子付き電線の製造方法および端子付き電線に関する。
従来、車両などに使用される電線の導体を、軽量化等を目的に、アルミニウムまたはアルミニウム合金で構成し、この導体に圧着端子を圧着した構成の端子付き電線が知られている(たとえば、特許文献1を参照)。
この種の端子付き電線では、図9(A)に示すように、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる導体100が酸素101に触れると、同図(B)に示すように、導体100の表面に酸化膜102が形成される。このため、同図(C)に示すように、電線の導体100に圧着端子103を圧着する際に、酸化膜102の介在によって導体100と圧着端子103間の電気抵抗が大きくなってしまう。なお、図9(C)は圧着端子103を圧着する前の状態を示している。
特開2011−82127号公報
従来においては、上記特許文献1に記載されているように、電線の導体に圧着される圧着端子のバレル内面に、セレーションと呼ばれる凹凸のパターンを形成し、圧着時(加圧時)にこのパターンのエッジ部分で酸化膜を破壊することにより、電気抵抗の増加を抑制している。
本発明者は、端子付き電線を製造するにあたって、これに用いる電線を大口径化(導体を大径化)しようとした際に、この電線に圧縮端子を接続する工程で、電線の導体を構成している金属素線の歪み(特に、導体の外周部に存在する金属素線の歪み)が大きくなり、素線切れを起こすリスクが大になるという知見を得た。
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであって、主な目的は、電線の導体を構成している金属素線の断線を効果的に抑制することができる端子付き電線の製造方法および端子付き電線を提供することにある。
本発明の第1の態様は、
複数の金属素線からなり断面形状が円形かつ実効断面積が50sq以上である導体と、この導体を被覆する絶縁被覆と、を有する電線と、前記電線の導体に接続され円筒状の筒部を有する圧縮端子と、を備える端子付き電線の製造方法であって、
前記金属素線は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、
前記絶縁被覆を剥がして前記導体の一部を露出させる露出工程と、
それぞれ半円形の第1加圧面を有する一対の振動子を用いて所定の圧力で前記導体の露出部を前記第1加圧面で挟み込み、その状態で前記一対の振動子により前記導体の露出部に超音波振動を前記一対の振動子による圧力の印加方向と直交する方向に加えることにより、前記導体の露出部の断面形状が円形に維持された状態で前記導体を構成する前記金属素線どうしを接合する接合工程と、
前記導体の接合部を前記筒部内に挿入した状態で、それぞれ多面形の第2加圧面を有する一対の圧縮ダイスを用いて前記筒部の複数箇所それぞれを前記第2加圧面で挟み込むことにより、前記導体の接合部と前記筒部を前記複数箇所において接続する接続工程と、
を含む端子付き電線の製造方法である。
本発明の第2の態様は、
複数の金属素線からなり断面形状が円形かつ実効断面積が50sq以上である導体と、前記導体を被覆する絶縁被覆と、を有する電線と、
前記電線の導体に接続される円筒状の筒部を有する圧縮端子と、を備え、
前記絶縁被覆が剥がされて前記導体の一部が露出しているとともに、当該露出部に前記圧縮端子の前記筒部が接続されている端子付き電線であって、
前記金属素線は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、
前記導体の前記露出部は、前記金属素線どうしが溶接接合された溶接接合部を有し、
前記溶接接合部の断面形状は、円形であり、
前記導体の前記溶接接合部と前記圧縮端子の前記筒部とは、複数箇所において圧縮されてなる複数の圧縮部を有し、
複数の前記圧縮部の断面形状は、それぞれ多面形である
端子付き電線である。
本発明によれば、電線の導体を構成している金属素線の断線を効果的に抑制することができる。
本発明の実施形態に係る端子付き電線の構成を説明するための模式図である。 本発明の実施形態に係る電線の構成を示す断面図である。 第2工程を説明する図(その1)である。 第2工程を説明する図(その2)である。 第3工程を説明する図(その1)である。 第3工程を説明する図(その2)である。 第3工程を説明する図(その3)である。 圧縮ダイスの他の形状例を示す断面図である。 アルミニウム系の端子付き電線で生じる問題を説明する図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
<端子付き電線の構成>
図1は本発明の実施形態に係る端子付き電線の構成を説明するための模式図である。
本発明の実施形態に係る端子付き電線1は、電線2と、圧縮端子3と、を備えた構成となっている。
(電線)
電線2は、導体4と、この導体4を被覆する絶縁被覆5と、を備えた構成となっている。
(導体)
導体4は、電線2の芯線を構成している。導体4は、たとえば、複合撚り線によって構成されている。複合撚り線とは、図2に示すように、複数の金属素線11を撚り合わせて集合撚り線12とし、この集合撚り線12を複数撚り合わせて構成されるものである。この場合、1本の集合撚り線12を構成する金属素線11の本数を「m」とし、1本の複合撚り線を構成する集合撚り線12の本数を「n」とすると、1本の導体(複合撚り線)4を構成する金属素線11の総本数は「m×n」となる。金属素線11は、たとえば、アルミニウムまたはアルミニウム合金によって構成されている。導体4の断面形状は、全体的に円形になっている。
電線2の導体4を複合撚り線によって構成する主な理由は、電線2の大電流化と高屈曲性を両立させることにある。すなわち、より多くの電流を電線2に流せるようには導体4の実効断面積(sq値;sqは平方ミリメートルの略)を大きくすることが有効であるが、そのために太い金属素線11を用いると屈曲性が低下する。また、屈曲性を高めるには細い金属素線11を用いることが有効であるが、細い金属素線11を集合撚りによって太くするにも限界がある。これに対して、本実施形態のように、複数の金属素線11を撚り合わせて集合撚り線12とし、この集合撚り線12を複数撚り合わせた複合撚り線によって導体4を構成すれば、細い金属素線11を使用した場合でも導体4の実効断面積を大きく確保することができる。このため、電線2の大電流化と高屈曲性を両立させることが可能となる。
(絶縁被覆)
絶縁被覆5は、絶縁材料によって構成されている。絶縁被覆5は、導体4の外周部を囲むように断面円形に形成されている。絶縁被覆5は、電線2の長さ方向の全長にわたって導体4を被覆している。ただし、図1に示すように、電線2の長さ方向の端部では絶縁被覆5が剥がされ、これによって導体4の一部(以下、「露出部」という。)4aが露出している。
電線2の径方向において、導体4と絶縁被覆5との間には押さえテープ6が介在している。押さえテープ6は、導体4と絶縁被覆5とを物理的に分離するように、導体4の外周部に巻かれている。
(圧縮端子)
圧縮端子3は、筒部8と、接続部9と、を一体に有している。圧縮端子3は、たとえば、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる端子素材の表面に、錫メッキ、ニッケルメッキ又は銀メッキを施したものである。ただし、圧縮端子3は、アルミニウム以外の材料(たとえば、銅など)で構成してもよい。
筒部8は、電線2の導体4に接続される部分となる。筒部8は、断面円形の筒状(円筒状)に形成されている。筒部8の内部は、電線2の導体4の露出部4aを挿入可能な中空部14になっている。中空部14の一端(入口部分)は、電線2の導体4の外径よりも大きく開口している。
接続部9は、板状に形成されている。接続部9には、図示しない相手側端子との接続用孔15が設けられている。接続用孔15は、接続部15を厚み方向に貫通する状態で平面視円形に形成されている。接続部9の形状等は、相手側端子の形態に応じて任意に変更可能である。
<端子付き電線の製造方法>
続いて、本発明の実施形態に係る端子付き電線の製造方法について説明する。この端子付き電線の製造方法は、第1工程としての電線の剥がし工程と、第2工程としての金属素線の接合工程と、第3工程としての接続工程と、を含む。以下、各工程について説明する。
(第1工程:電線の剥がし工程)
まず、導体4と、絶縁被覆5と、を有する電線2を用意したら、この電線2の長さ方向の端部で、導体4を被覆する絶縁被覆5と押さえテープ6とを剥がすことにより、導体4の一部(露出部)4aを露出させる(図1参照)。この段階では、導体4の露出部4aの断面形状が、全体的にほぼ円形になっている。
(第2工程:金属素線の接合工程)
次に、導体4を構成している金属素線11どうしを接合する。この接合工程では、図3に示すように、半割構造を有する一対の振動子21,21を用いる。一対の振動子21,21は、導体4の露出部4aに超音波振動Uvを加えるためのものである。一対の振動子21,21は、図の奥行き方向に露出部4aの長さと同等の寸法を有している。一対の振動子21、21は、それぞれ半円形の加圧面(第1加圧面)22を有している。加圧面22は、第2工程で導体4の露出部4aに超音波振動を印加する際に露出部4aに接触して適度な圧力を加えるものである。加圧面22は、半円形の周面を形成している。加圧面22の曲率半径は、第1工程を終えた後の露出部4aの外径に対応して適宜設定すればよい。
一対の振動子21は、互いの加圧面22どうしを対向させた状態で配置されている。また、本実施形態では一例として、一方(図の下側)の振動子21が固定状態で保持され、この固定状態の振動子21に対して他方(図の上側)の振動子21が接離移動可能に設けられている。ただし、これに限らず、一対の振動子21を互いに接離移動可能に設けたものであってもよい。
一対の振動子21を用いて金属素線11どうしを接合する場合は、まず、一方の振動子21の加圧面22に導体4の露出部4aを載せる。このとき、電線2の長さ方向では、露出部4aのほぼ全域を振動子21の加圧面22に載せるとよい。次に、一方の振動子21に対して他方の振動子21を接近移動させることにより、一対の振動子21の加圧面22で導体4の露出部4aを両側から挟み込む。このとき、他方の振動子21に所定の圧力Paを加えることにより、導体4の露出部4aを所定の圧力Paで挟み込む。
これにより、導体4の露出部4aは、断面円形の形状を保ったままで、一対の振動子21の加圧面22により挟み込まれる。また、各々の振動子21の加圧面22は、露出部4aの外周部に存在する集合撚り線12に接触した状態となる。また、他方の振動子21に加えられた圧力Paは、各々の振動子21の加圧面22を通して導体4の露出部4a全体に伝わる。このため、導体4の露出部4aは、一対の振動子21の加圧面22に押されて少し外径が縮小(圧縮)された状態となる。ただし、一対の振動子21の加圧面22はそれぞれ半円形になっているため、露出部4aの断面形状は円形に維持される。
このように導体4の露出部4aを所定の圧力Paで挟み込んだら、その状態で一対の振動子21により導体4の露出部4aに超音波振動Uvを加える。超音波振動Uvの振動方向は、導体4の径方向に設定する。本実施形態では、超音波振動Uvの振動方向を、圧力Paの印加方向と直交する方向に設定している。
このように一対の振動子21,21を用いて導体4の露出部4aに圧力Paと超音波振動Uvを加えると、導体4の露出部4aを構成している集合撚り線12どうしが擦れ合うとともに、各々の集合撚り線12を構成している金属素線11どうしが擦れ合う。これにより、金属素線11が超音波溶接の原理で互いに接合される。すなわち、金属素線11どうしが擦れ合う部分では、金属素線11の表面を覆っている酸化膜が破壊(剥離)され、これによって露出した金属素地面どうしが接合(溶接)される。
その後、所定の時間が経過したら、超音波振動Uvの印加を停止するとともに、一方の振動子21に対して他方の振動子21を離間移動させる。これにより、図4に示すように、導体4の露出部4aを構成している集合撚り線12の接触界面Eや、各々の集合撚り線12を構成している金属素線11の接触界面(不図示)で、それぞれ金属素線11どうしが接合された状態の電線2が得られる。この場合、導体4の露出部4aを構成している金属素線11は、導体4の径方向全体にわたって電気的に接続(導通)された状態となる。以降の説明では、第2工程において導体4の金属素線11どうしを接合して得られる接合部分を、導体4の「接合部4b」という。
(第3工程:接続工程)
次に、図5に示すように、圧縮端子3の筒部8内(中空部14)に導体4の接合部4bを挿入し、その状態で導体4の接合部4bに圧縮端子3の筒部8を接続する。このとき、導体4の接合部4bの外表面を覆っている酸化膜の除去(破壊等)を目的に、筒部8内に接合部4bを挿入する前に、必要に応じて、接合部4bの表面をブラシで擦ったりしてもよい。圧縮時の加圧方向は、接続部9の厚み方向(板厚方向)で筒部8を挟み込む方向に設定されている。
この第3工程では、図6に示すように、半割構造を有する一対の圧縮ダイス25,25を用いる。一対の圧縮ダイス25,25は、圧縮端子3の筒部8に所定の圧力を加えて筒部8の被加圧部を圧縮変形(塑性変形)させるためのものである。一対の圧縮ダイス25,25は、図の奥行き方向に接合部4bの長さよりも短い寸法を有している。各々の圧縮ダイス25は、それぞれ半円形の加圧面(第2加圧面)26を有している。加圧面26は、第3工程で筒部8の外周面に接触して所定の圧力を加えるものである。加圧面26は、半円形の周面を形成している。加圧面26の曲率半径は、圧縮後の筒部8の外径に対応して適宜設定すればよい。
一対の圧縮ダイス25は、互いの加圧面26どうしを対向させた状態で配置されている。また、一対の圧縮ダイス25は、互いに接離移動可能に設けられている。ただし、これに限らず、一方の圧縮ダイス25を固定状態に保持し、この固定状態の圧縮ダイス25に対して他方の圧縮ダイス25を接離移動可能に設けたものであってもよい。
導体4の接合部4bに圧縮端子3の筒部8を接続する場合は、筒部8の中空部14に導体4の接合部4bを挿入した状態の筒部8を、一対の圧縮ダイス25の間に配置する。そして、その状態で一対の圧縮ダイス25を互いに接近する方向に移動させることにより、一対の圧縮ダイス25で筒部8を両側から挟み込む。このとき、一対の圧縮ダイス25に所定の圧力Pbを加えることにより、図7に示すように、筒部8の被加圧部を圧縮変形させる。そうすると、一対の圧縮ダイス25に加えられた圧力Pbが、各々の圧縮ダイス25の加圧面26を通して筒部8に伝わり、この圧力Pbを受けて筒部8が圧縮変形する。また、筒部8が所定量だけ圧縮変形すると、筒部8の内周面が導体4の接合部4bに接触する。このため、導体4の接合部4bは、筒部8の内周面に押されて外径が縮小(圧縮)された状態となる。これにより、導体4の接合部4bに対して筒部8が電気的かつ機械的に接続された状態となる。ただし、一対の圧縮ダイス25の加圧面26はそれぞれ半円形になっているため、導体4の接合部4bの断面形状は円形に維持されたままになる。
その後、一対の圧縮ダイス25を互いに離間する方向に移動させる。これにより、一対の圧縮ダイス25が筒部8から分離する。以上で1回の圧縮動作が完了となる。この圧縮動作は、所定の回数だけ繰り返して行う。本実施形態では、筒部8の中心軸方向に位置をずらして合計4箇所に圧縮予定位置が設定されている。このため、接続工程においては、各々の圧縮予定位置に順に圧力Pb(P1〜P4)を加え、これによって筒部8をたとえば4箇所にわたって圧縮変形(塑性変形)させることになる。
以上の製造方法により、絶縁被覆5の剥がしによって露出させた導体4の接合部4bに圧縮端子3の筒部8が接続された構成の端子付き電線1が得られる。
<実施形態の効果>
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果が得られる。
本実施形態においては、それぞれ半円形の加圧面22を有する一対の振動子21を用いて、超音波振動Uvの印加により金属素線11どうしを接合している。また、それぞれ半円形の加圧面26を有する一対の圧縮ダイス25を用いて、導体4の接合部4bに筒部8を接続している。このため、絶縁被覆5を剥がして露出させた導体4の露出部4aの断面形状が、製造の途中で大きく崩れることがない。また、筒部8を圧縮する前に、超音波振動を利用して金属素線11どうしを接合しているため、従来よりも導体4の圧縮度合いを弱めた軽圧縮によって筒部8を接続することができる。
このため、導体4を構成する金属素線11の歪みを小さく抑えて、金属素線11にかかる負担を軽減することができる。したがって、導体4を構成する金属素線11が製造中に断線することを効果的に抑制することが可能となる。また、端子付き電線1の製造後においても、電線2の屈曲などにともなう金属素線11の断線を効果的に抑制することが可能となる。さらに、端子付き電線1の製造途中や製造後において金属素線11の断線が抑制されると、電線2と圧縮端子3との電気的な接続や機械的な接続に寄与する金属素線11の本数が増える。このため、電線2と圧縮端子3との間の電気抵抗を小さくすることができる。また、電線2と圧縮端子3との機械的な接続強度を高めることができる。よって、接続特性に優れた信頼性の高い端子付き電線1を提供することが可能となる。
ちなみに、軽圧縮とは、圧縮による導体4の圧縮率を相対的に下げることである。導体4の圧縮率は、圧縮前の導体の断面積(見かけ上の断面積)を「D1」とし、圧縮後の導体の断面積を「D2」とすると、「D2/D1」の比率(%)で表すことができる。このため、従来における導体4の圧縮率がたとえば80%であると仮定すると、これを90%に変更することが圧縮率を下げることになる。
また、本実施形態においては、第2工程で用いる振動子21の加圧面22と、第3工程で用いる圧縮ダイス25の加圧面26を、いずれも半円形としているため、第2工程後の第3工程で金属素線11の位置ずれが小さく抑えられる。また、第1工程から第2工程を経て第3工程に至るまでの間、導体4の露出部4aの断面形状は円形に維持される。したがって、露出部4aの形状的な崩れを最小限に抑えることができる。また、第2工程で接合された金属素線11の接合部には、その接合強度を強める方向に圧力が働くように第3工程で筒部8の接続が行われる。このため、第2工程で接合させた金属素線11の接合部が、第3工程で破断してしまうリスクを下げることができる。
ここで、本実施形態との比較例として、たとえば、特許文献1に記載の技術では、複数の金属素線からなる導体にバレルタイプの圧着端子を圧着している。このため、電線の導体に圧着端子のバレルを圧着する際に、導体を構成する金属素線が大きく歪み、それだけ金属素線に大きな負荷がかかる。特に、導体の外周部やこれに近い部分に存在する金属素線には大きな負荷が加わり、そこで金属素線が断線しやすくなる。また、特許文献1に記載の技術では、圧着工程の前に超音波振動の印加によって金属素線どうしを接合(溶接)している。ただし、その後の圧着工程では、導体の露出部を圧着端子のバレルで押し潰し、これによって露出部の断面形状が大きく変化している。このため、金属素線の接合部が破断するおそれがある。
本実施形態は、上記の比較例で起こり得る課題の解決に大いに寄与するものとなり、特に、導体4の実効断面積が50sq以上の大口径の電線2を用いる場合に適用して好適なものとなる。すなわち、大口径の電線2を用いて端子付き電線1を製造する場合は、導体4の接合部4bに筒部8を接続する際に、導体4の外周部やこれに近い部分に存在する金属素線11の歪みが相対的に大きくなる。また、導体4の大口径化を、電線2の屈曲性を維持して実現しようとすると、細い金属素線11を多数用いて導体4を構成する必要がある。このため、金属素線11の径が小さくなる分だけ、素線1本あたりの金属素線11の機械強度(引っ張り強度等)が弱くなる。このため、大口径の電線2、具体的には導体4の実効断面積が50sq以上の電線2を用いる場合は、金属素線11の断線がより一層生じやすい状況になる。そのような状況であっても、上記実施形態の製造方法を適用すれば、金属素線11の断線を効果的に抑制することが可能となる。
<変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
たとえば、一対の振動子21の加圧面22と、一対の圧縮ダイス25の加圧面26とは、同じ形状であることが好ましいものの、これに限らず、互いに類似する形状であってもよい。たとえば、上記実施形態では、特に好ましい例として、一対の圧縮ダイス25の加圧面26を、一対の振動子21の加圧面22と同じ半円形としたが、これに限らず、一対の圧縮ダイス25の加圧面26を、半円形に類似する形状にしてもよい。「類似する形状」とは、ある形状を基準形状としたときに、この基準形状に倣う形状をいう。具体的には、上記実施形態のように一対の振動子21の加圧面22が半円形である場合は、たとえば図8に示すように、一対の圧縮ダイス25の加圧面26を、複数(図例では3つ)の面26a,26b,26cからなる多面形としてもよい。また、図示はしないが、一対の振動子21の加圧面22や、一対の圧縮ダイス25の加圧面26を、半楕円形(楕円形を半分に切った形状)にしてもよい。また、一対の振動子21の加圧面22を多面形にする一方、一対の圧縮ダイス25の加圧面26をそれと同じ多面形、またはそれに類似する半円形、半楕円形等にしてもよい。
また、電線2に関しては、導体4を集合撚り線12だけで構成してもよい。また、導体4を構成する金属素線11は、必ずしも撚り線である必要はない。また、電線2の断面構造は、上記図2に示す構造に限らない。また、絶縁被覆5は単層ではなく複数の層で構成してもよい。また、絶縁被覆5を構成する材料はフッ素系のゴムでなくてもよい。また、電線2は単芯に限らず、複数の芯線(たとえば、三芯など)を有するものであってもよい。
また、圧縮端子3に関しては、筒部8を加圧して圧縮変形させる箇所は、4箇所に限らず、4箇所よりも少ない箇所、または、多い箇所を加圧してもよい。また、圧縮端子3の素材には、アルミニウム系以外の材料を用いてもよい。
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
(付記1)
複数の金属素線からなる導体と、この導体を被覆する絶縁被覆と、を有する電線と、前記電線の導体に接続される筒部を有する圧縮端子と、を備える端子付き電線の製造方法であって、
前記絶縁被覆を剥がして前記導体の一部を露出させる第1工程と、
それぞれ所定形状の第1加圧面を有する一対の振動子を用いて前記導体の露出部を前記第1加圧面で挟み込み、その状態で前記一対の振動子により前記導体の露出部に超音波振動を加えることにより、前記導体を構成する前記金属素線どうしを接合する第2工程と、
前記導体の接合部を前記筒部内に挿入した状態で、それぞれ所定形状の第2加圧面を有する一対の圧縮ダイスを用いて前記筒部を前記第2加圧面で挟み込むことにより、前記導体の接合部に前記筒部を接続する第3工程と、
を含む端子付き電線の製造方法。
(付記2)
前記一対の振動子は、それぞれ半円形の第1加圧面を有し、
前記一対の圧縮ダイスは、それぞれ半円形または多面形の第2加圧面を有する
付記1に記載の端子付き電線の製造方法。
(付記3)
前記金属素線は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる
付記1または2に記載の端子付き電線の製造方法。
(付記4)
前記導体は、複数の金属素線を撚り合わせて集合撚り線とし、この集合撚り線を複数撚り合わせた複合撚り線によって構成されている
付記1〜3のいずれか1つに記載の端子付き電線の製造方法。
(付記5)
前記導体の実効断面積が50sq以上である
付記1〜4のいずれか1つに記載の端子付き電線の製造方法。
1…端子付き電線
2…電線
3…圧縮端子
4…導体
4a…露出部
4b…接合部
5…絶縁被覆
8…筒部
11…金属素線
12…集合撚り線
21…振動子
22…加圧面(第1加圧面)
25…圧縮ダイス
26…加圧面(第2加圧面)

Claims (4)

  1. 複数の金属素線からなり断面形状が円形かつ実効断面積が50sq以上である導体と、この導体を被覆する絶縁被覆と、を有する電線と、前記電線の導体に接続され円筒状の筒部を有する圧縮端子と、を備える端子付き電線の製造方法であって、
    前記金属素線は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、
    前記絶縁被覆を剥がして前記導体の一部を露出させる露出工程と、
    それぞれ半円形の第1加圧面を有する一対の振動子を用いて所定の圧力で前記導体の露出部を前記第1加圧面で挟み込み、その状態で前記一対の振動子により前記導体の露出部に超音波振動を前記一対の振動子による圧力の印加方向と直交する方向に加えることにより、前記導体の露出部の断面形状が円形に維持された状態で前記導体を構成する前記金属素線どうしを接合する接合工程と、
    前記導体の接合部を前記筒部内に挿入した状態で、それぞれ多面形の第2加圧面を有する一対の圧縮ダイスを用いて前記筒部の複数箇所それぞれを前記第2加圧面で挟み込むことにより、前記導体の接合部と前記筒部を前記複数箇所において接続する接続工程と、
    を含む端子付き電線の製造方法。
  2. 前記圧縮端子は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる端子素材の表面に、錫メッキ、ニッケルメッキ又は銀メッキを施したものである、
    請求項1に記載の端子付き電線の製造方法。
  3. 前記導体は、複数の金属素線を撚り合わせて集合撚り線とし、この集合撚り線を複数撚り合わせた複合撚り線によって構成されている
    請求項1または2に記載の端子付き電線の製造方法。
  4. 複数の金属素線からなり断面形状が円形かつ実効断面積が50sq以上である導体と、前記導体を被覆する絶縁被覆と、を有する電線と、
    前記電線の導体に接続される円筒状の筒部を有する圧縮端子と、を備え、
    前記絶縁被覆が剥がされて前記導体の一部が露出しているとともに、当該露出部に前記圧縮端子の前記筒部が接続されている端子付き電線であって、
    前記金属素線は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、
    前記導体の前記露出部は、前記金属素線どうしが溶接接合された溶接接合部を有し、
    前記溶接接合部の断面形状は、円形であり、
    前記導体の前記溶接接合部と前記圧縮端子の前記筒部とは、複数箇所において圧縮されてなる複数の圧縮部を有し、
    複数の前記圧縮部の断面形状は、それぞれ多面形である
    端子付き電線。
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