JP2021007982A - オーステナイト系ステンレス鋼フラックス入りワイヤ、溶接金属及び溶接方法 - Google Patents

オーステナイト系ステンレス鋼フラックス入りワイヤ、溶接金属及び溶接方法 Download PDF

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秀徳 名古
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圭人 石▲崎▼
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純一 河田
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雄太 木下
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【課題】極低温靱性が優れた溶接金属を得ることができるオーステナイト系ステンレス鋼フラックス入りワイヤ、優れた極低温靱性を有する溶接金属及び溶接方法を提供する。【解決手段】鋼製外皮にフラックスが充填されたフラックス入りワイヤであって、ワイヤ全質量あたり、Si、Mn、Ni、Cr、C、P及びNをそれぞれ所定範囲で含有するとともに、残部がFe及び不可避的不純物であり、下記式(1)により算出されるX1が17.5以上22.0以下である、オーステナイト系ステンレス鋼フラックス入りワイヤ。X1=[Ni]W+0.5×[Cr]W+1.6×[Mn]W+0.5×[Si]W+15×[C]W・・・(1)ただし、式(1)中において、[Ni]W、[Cr]W、[Mn]W、[Si]W及び[C]Wは、それぞれ、ワイヤ全質量あたり、ワイヤ中のNi、Cr、Mn、Si及びCの含有量(質量%)を表す。【選択図】なし

Description

本発明は、極低温靱性に優れる溶接金属を得ることができるオーステナイト系ステンレス鋼フラックス入りワイヤ、溶接金属及び溶接方法に関する。
近年、二酸化炭素(温室効果ガス)の排出を削減する観点から、エネルギー源として液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)が汎用されており、液化天然ガスを貯蔵する貯蔵タンクの建設も進められている。このような貯蔵タンクは、液体の温度域である−162℃以下で液化天然ガスを貯蔵する必要があるため、構造物(タンク等)を構成する母材及び溶接金属は、例えば−196℃付近の温度領域における優れた極低温靱性を有していることが要求される。
極低温での靱性を有する鋼材としては、例えばオーステナイト系ステンレス鋼が公知であり、上記ステンレス鋼と同様の組成を有する溶接金属を得る溶接方法としては、ガスタングステンアーク溶接(GTAW:Gas Tungsten Arc Welding)が一般的に使用されている。
しかしながら、ガスタングステンアーク溶接は溶接金属の溶着速度が遅いため、施工効率が悪いという問題点がある。
そこで、特許文献1には、ワイヤ中の不可避的不純物であるAl、B及びOの含有量を低減することにより、優れた溶接作業性を得ることができるミグ溶接(MIG溶接:Metal Inert Gas Welding)用のオーステナイト系ステンレス鋼ワイヤが開示されている。
また、特許文献2には、フラックスの組成を制御することにより、溶接作業性を向上させるとともに、高温割れを防止することができるステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤが開示されている。
さらに、特許文献3には、ステンレス鋼外皮中のC含有量並びにワイヤ中の金属成分及びフラックス成分の含有量を調整することにより、安定した低温靱性を有する溶接金属を得ることができる、低温用鋼のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤが開示されている。
特開平6−690号公報 特開2002−1580号公報 特開2019−887号公報
しかし、特許文献1及び特許文献2に記載のワイヤは、いずれも極低温靱性については考慮されていないため、液化天然ガス等の貯蔵用タンクの建設に適用することは困難である。また、特許文献3に記載のワイヤは、−140℃において良好な低温靱性を有するものであるが、より低温である−196℃の靱性が十分であるとはいえない。
したがって、従来の溶接ワイヤと比較して、より一層極低温靱性が優れた溶接金属を得ることができるワイヤ及び溶接方法の開発が要求されている。
本発明は、上述した状況に鑑みてなされたものであり、極低温靱性が優れた溶接金属を得ることができるオーステナイト系ステンレス鋼フラックス入りワイヤ、優れた極低温靱性を有する溶接金属及び溶接方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、ワイヤ又は溶接金属中のNi、Cr、Mn、Si及びCの含有量を用いた式により算出される値を適切に調整することにより、破壊亀裂進展時にオーステナイト相からマルテンサイト相に変態する変態誘起塑性(TRIP:Transformation induced Plasticity)を発現させることができ、極低温靱性を向上させることができることを見出した。
また、本発明者らは、溶接金属中のC含有量とN含有量との合計量、並びにMn含有量を適切に調整することにより、極低温靱性が極めて優れた溶接金属を得ることができることを見出した。
さらに、本発明者らは、ワイヤ及び溶接金属中の金属成分を所定の範囲に制限することにより、強度等の過剰な上昇を抑制し、その結果、極低温靱性を向上させることができることも見出した。また更に、種々の金属含有量を上記の通り調整したワイヤを用いて、所定のシールドガスでアーク溶接を実施することにより、溶接効率を向上させることができることも見出した。本発明は、これら知見に基づいてなされたものである。
本発明の上記目的は、オーステナイト系ステンレス鋼フラックス入りワイヤに係る下記[1]の構成により達成される。
[1] 鋼製外皮にフラックスが充填されたフラックス入りワイヤであって、
ワイヤ全質量あたり、
C:0.018質量%以下、
Si:0.57質量%以上1.00質量%以下、
Mn:0.70質量%以上3.00質量%以下、
P:0.021質量%以下、
Ni:7.00質量%以上13.00質量%以下、
Cr:12.00質量%以上21.00質量%以下、
N:0.030質量%以下、
残部がFe及び不可避的不純物であり、
下記式(1)により算出されるXが17.5以上22.0以下であることを特徴とする、オーステナイト系ステンレス鋼フラックス入りワイヤ。
=[Ni]+0.5×[Cr]+1.6×[Mn]+0.5×[Si]+15×[C]・・・(1)
ただし、式(1)中において、[Ni]、[Cr]、[Mn]、[Si]及び[C]は、それぞれ、ワイヤ全質量あたり、ワイヤ中のNi、Cr、Mn、Si及びCの含有量(質量%)を表す。
オーステナイト系ステンレス鋼フラックス入りワイヤに係る本発明の好ましい実施形態は、下記[2]〜[6]に関する。
[2] さらに、ワイヤ全質量あたり、
LiO:0.13質量%以上、を含有することを特徴とする上記[1]に記載のオーステナイト系ステンレス鋼フラックス入りワイヤ。
[3] さらに、ワイヤ全質量あたり、
Al:2.00質量%以下、
Mg:2.00質量%以下、
REM:0.70質量%以下、
Ca:0.50質量%以下、
Zr:0.40質量%以下、の少なくとも1種を含有することを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のオーステナイト系ステンレス鋼フラックス入りワイヤ。
[4] さらに、ワイヤ全質量あたり、
Na及びKのいずれか一方又は両方の合計:0.60質量%以下、
F:0.50質量%以下、
LiO:0.50質量%以下、
BaF:10.0質量%以下、
SrF:10.0質量%以下、
CaF:10.0質量%以下、
Fe:2.00質量%以下、の少なくとも1種を含有することを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載のオーステナイト系ステンレス鋼フラックス入りワイヤ。
[5] さらに、ワイヤ全質量あたり、
Cu:1.0質量%以下、
Mo:1.0質量%以下、
Ti:0.5質量%以下、
W:1.0質量%以下、
B:0.01質量%以下、の少なくとも1種を含有することを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれか1つに記載のオーステナイト系ステンレス鋼フラックス入りワイヤ。
[6] さらに、Si酸化物、Al酸化物、Ti酸化物、及びZr酸化物から選択された少なくとも1種を含有し、
ワイヤ全質量あたり、
前記Si酸化物、前記Al酸化物、前記Ti酸化物、及び前記Zr酸化物の合計量が0質量%超5質量%以下であることを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれか1つに記載のオーステナイト系ステンレス鋼フラックス入りワイヤ。
また、本発明の上記目的は、溶接金属に係る下記[7]の構成により達成される。
[7] 溶接金属全質量あたり、
C:0.065質量%以下、
Si:0.59質量%以上1.00質量%以下、
Mn:0.80質量%以上3.00質量%以下、
P:0.025質量%以下、
Ni:8.00質量%以上15.00質量%以下、
Cr:15.00質量%以上24.00質量%以下、
N:0.080質量%以下、
O:0.030質量%以下、
残部がFe及び不可避的不純物であり、
下記式(2)により算出されるXが18.8以上23.0以下であることを特徴とする、溶接金属。
=[Ni]+0.5×[Cr]+1.6×[Mn]+0.5×[Si]+15×[C]・・・(2)
ただし、式(2)中において、[Ni]、[Cr]、[Mn]、[Si]及び[C]は、それぞれ、溶接金属全質量あたり、溶接金属中のNi、Cr、Mn、Si及びCの含有量(質量%)を表す。
溶接金属に係る本発明の好ましい実施形態は、下記[8]〜[10]に関する。
[8] 溶接金属全質量あたり、
前記Mn:0.90質量%以上であり、
下記式(3)により算出されるXが0.054以下であることを特徴とする、上記[7]に記載の溶接金属。
=[C]+[N]・・・(3)
ただし、式(3)中において、[C]及び[N]は、それぞれ、溶接金属全質量あたり、溶接金属中のC及びNの含有量(質量%)を表す。
[9] さらに、溶接金属全質量あたり、
Al:0.80質量%以下、
Mg:0.040質量%以下、
REM:0.080質量%以下、
Ca:0.005質量%以下、
Zr:0.100質量%以下、の少なくとも1種を含有することを特徴とする上記[7]又は[8]に記載の溶接金属。
[10] さらに、溶接金属全質量あたり、
Cu:1.0質量%以下、
Mo:1.0質量%以下、
W:1.0質量%以下、
Ti:0.5質量%以下、
B:0.01質量%以下、の少なくとも1種を含有することを特徴とする上記[7]〜[8]のいずれか1つに記載の溶接金属。
また、本発明の上記目的は、溶接方法に係る下記[11]の構成により達成される。
[11] 上記[1]〜[6]のいずれか1つに記載のオーステナイト系ステンレス鋼フラックス入りワイヤを使用し、
シールドガスとして、100体積%Arガス、Oガスを20体積%以下含有するAr−O混合ガス及びCOガスを5体積%以下含有するAr−CO混合ガスから選択される1種を使用して溶接することを特徴とする溶接方法。
本発明のオーステナイト系ステンレス鋼フラックス入りワイヤによれば、溶接金属の極低温靱性をより一層向上させることができる。また、本発明の溶接方法によれば、極低温靱性が優れた溶接金属を得ることができるとともに、溶接の施工効率を向上させることができる。
図1は、本実施例における溶接方法を示す模式図である。 図2は、シャルピー衝撃試験の試験片の採取位置を示す模式図である。
以下、本発明を実施するための形態(本実施形態)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。
まず、本実施形態に係るフラックス入りワイヤについて説明する。
〔フラックス入りワイヤ〕
本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、鋼製外皮(フープ)内にフラックスが充填されたものである。詳細には、フラックス入りワイヤは、筒状の鋼製外皮と、その外皮の内部に充填されるフラックスとからなる。なお、フラックス入りワイヤは、外皮に継目のないシームレスタイプ、C断面、重ね断面等のように外皮に継目のあるシームタイプのいずれの形態であってもよい。
なお、本実施形態に係るフラックス入りワイヤの鋼製外皮の厚さ、及びワイヤ径(直径)は、特に限定されるものではないが、ワイヤ送給安定性の観点から、好ましいワイヤ径は1.0〜2.8mmであり、より好ましいワイヤ径は1.2〜2.4mmである。
次に、本実施形態に係るフラックス入りワイヤの化学成分組成について、その成分添加理由及び組成限定理由について詳細に説明する。なお、所要の特性を有する溶接金属を得るための各元素は、鋼製外皮、充填フラックスのいずれから添加されていても良い。したがって、以下の説明において特に断りのない限り、フラックス入りワイヤ中の各成分量は鋼製外皮中及びフラックス中に含有される成分の合計量を、ワイヤ全質量(鋼製外皮と、外皮内のフラックスの合計量)あたりの含有量とした値で規定される。
また、本明細書において、フラックス入りワイヤの化学成分組成(質量割合)はいずれも設計値であるが、該設計値と概ね同組成のフラックス入りワイヤが得られる。また、ワイヤの化学成分組成は、電子線マイクロアナライザやX線回折法によるフラックス粒子の組成同定とワイヤ全体を溶解した溶液の化学分析(ICP発光分光分析法、原子吸光光度法等)により同定することができる。なお、後述する溶接金属の化学成分組成についても同様にして同定することができる。
<C:0.018質量%以下(0質量%を含む)>
Cは、溶接金属中でオーステナイト相を安定化させて、マルテンサイト相への変態を起こりにくくさせる成分である。また、Cは、溶接金属の強度上昇に寄与する成分でもある。
ワイヤ中のC含有量が0.018質量%を超えると、強度が過剰に上昇して、優れた極低温靱性を得ることが困難となる。また、本実施形態に係るフラックス入りワイヤにおいては、後述するように、低温靱性をより一層向上させるために、溶接金属中のC含有量とN含有量との合計量を低減することが好ましい。したがって、溶接金属中のC含有量とN含有量との合計量を低減するためには、ワイヤ中のC含有量を低減することが好ましい。したがって、ワイヤ中のC含有量は0.018質量%以下とし、好ましくは0.015質量%以下とし、より好ましくは0.010質量%以下とする。
<Si:0.57質量%以上1.00質量%以下>
Siは、脱酸を促進させる効果を有する成分である。
ワイヤ中のSi含有量が0.57質量%未満では、脱酸効果が不足して、溶接金属中の酸素量が上昇するため、優れた極低温靱性を得ることができない。したがって、ワイヤ中のSi含有量は0.57質量%以上とし、好ましくは0.60質量%以上とし、より好ましくは0.65質量%以上とする。
一方、ワイヤ中のSi含有量が1.00質量%を超えると、溶接金属の強度が過剰に上昇するため、優れた極低温靱性を得ることができない。したがって、ワイヤ中のSi含有量は1.00質量%以下とし、好ましくは0.90質量%以下とし、より好ましくは0.85質量%以下とする。
<Mn:0.70質量%以上3.00質量%以下>
Mnは、オーステナイト安定化元素であるとともに、脱酸剤として溶接金属中の酸素をスラグとして除去し、機械的強度を向上させる効果を有する成分である。
ワイヤ中のMn含有量が0.70質量%未満では、脱酸効果が不足して、溶接金属中の酸素量が上昇するため、優れた極低温靱性を得ることができない。したがって、ワイヤ中のMn含有量は0.70質量%以上とし、好ましくは0.90質量%以上とし、より好ましくは1.00質量%以上とする。
一方、ワイヤ中のMn含有量が3.00質量%を超えると、溶接金属の強度が過剰に上昇して、極低温靱性が低下する。したがって、ワイヤ中のMn含有量は3.00質量%以下とし、好ましくは2.50質量%以下とし、より好ましくは2.20質量%以下とする。
<P:0.021質量%以下(0質量%を含む)>
本実施形態に係るフラックス入りワイヤにおいて、Pは不純物元素である。
ワイヤ中のP含有量が0.021質量%を超えると、粒界が脆化して、極低温靱性が低下する。したがって、ワイヤ中のP含有量は0.021質量%以下とし、好ましくは0.020質量%以下とし、より好ましくは0.019質量%以下とする。
<Ni:7.00質量%以上13.00質量%以下>
Niは、溶接金属中でオーステナイト相を安定化させて、マルテンサイト相への変態を起こりにくくさせる成分である。
ワイヤ中のNi含有量が7.00質量%未満では、オーステナイト相が不安定となって、溶接まま(すなわち、溶接が終わった段階)で、部分的にフェライト変態が起こる。その結果、破壊亀裂進展時にTRIP(Transformation Induced plasticity)効果の前提となるオーステナイト相が不足し、極低温靱性が低下する。したがって、ワイヤ中のNi含有量は7.00質量%以上とし、好ましくは7.50質量%以上とし、より好ましくは8.00質量%以上とする。
一方、ワイヤ中のNi含有量が13.00質量%を超えると、オーステナイト相が過度に安定化して、破壊亀裂進展時にTRIP効果を発現させることができないため、優れた極低温靱性を得ることができない。したがって、ワイヤ中のNi含有量は13.00質量%以下とし、好ましくは12.80質量%以下とし、より好ましくは12.50質量%以下とする。
<Cr:12.00質量%以上21.00質量%以下>
Crは、溶接金属中でフェライト相を安定化させて、マルテンサイト相への変態を起こりにくくさせる成分である。
ワイヤ中のCr含有量が12.00質量%未満では、フェライト相が不安定となって、破壊亀裂進展時にTRIP効果を発現させることができないため、優れた極低温靱性を得ることができない。したがって、ワイヤ中のCr含有量は12.00質量%以上とし、好ましくは13.00質量%以上とし、より好ましくは14.00質量%以上とする。
一方、ワイヤ中のCr含有量が21.00質量%を超えると、フェライト相が過度に安定化して、溶接ままで、部分的にフェライト変態が起こる。その結果、破壊亀裂進展時にTRIP効果の前提となるオーステナイト相が不足し、極低温靱性が低下する。したがって、ワイヤ中のCr含有量は21.00質量%以下とし、好ましくは20.50質量%以下とし、より好ましくは20.00質量%以下とする。
<N:0.030質量%以下(0質量%を含む)>
Nは、溶接金属中でオーステナイト相を安定化させて、マルテンサイト相への変態を起こりにくくさせる成分である。また、Nは溶接金属の強度上昇に寄与する成分でもある。
ワイヤ中のN含有量が0.030質量%を超えると、強度が過剰に上昇して、優れた極低温靱性を得ることが困難となる。また、本実施形態に係るフラックス入りワイヤにおいては、後述するように、低温靱性をより一層向上させるために、溶接金属中のC含有量とN含有量との合計量を低減することが好ましい。したがって、溶接金属中のC含有量とN含有量との合計量を低減するためには、ワイヤ中のN含有量を低減することが好ましい。したがって、ワイヤ中のN含有量は0.030質量%以下とし、好ましくは0.025質量%以下とし、より好ましくは0.020質量%以下とする。
<残部:Fe及び不可避的不純物>
本実施形態に係るフラックス入りワイヤに含有しうるその他の成分としては、Fe及び不可避的不純物があり、不可避的不純物としては、例えばAs、Sb、Sn、Bi、S、Nb、V及びO等が挙げられる。
<式(1)により算出されるX:17.5以上22.0以下>
上述の通り、ワイヤ中のNi、Cr、Mn、Si及びCの含有量をバランスよく調整することにより、破壊亀裂進展時にオーステナイト相からマルテンサイト相に変態するTRIPを発現させて、極低温靱性を向上させることができる。すなわち、本実施形態はワイヤ中の上記成分を所定の範囲で調整するとともに、下記式(1)により算出されるXが所望の範囲となるように各元素を調整するものである。
=[Ni]+0.5×[Cr]+1.6×[Mn]+0.5×[Si]+15×[C]・・・(1)
ただし、式(1)中において、[Ni]、[Cr]、[Mn]、[Si]及び
[C]は、それぞれ、ワイヤ全質量あたり、ワイヤ中のNi、Cr、Mn、Si及びCの含有量(質量%)を表す。
式(1)により算出されるXが17.5未満であると、オーステナイト相が不安定となって、溶接ままで、部分的にフェライト変態が起こる。その結果、破壊亀裂進展時にTRIP効果の前提となるオーステナイト相が不足し、極低温靱性が低下する。したがって、式(1)により算出されるXは17.5以上とし、好ましくは18.0以上とし、より好ましくは18.5以上とする。
一方、式(1)により算出されるXが22.0を超えると、オーステナイト相が過度に安定化して、破壊亀裂進展時にTRIP効果を発現させることができないため、優れた極低温靱性を得ることができない。したがって、式(1)により算出されるXは22.0以下とし、好ましくは21.0以下とし、より好ましくは20.0以下とする。
以上の通り、本実施形態に係るフラックス入りワイヤは上記各元素、Fe及び不可避的不純物からなるが、以下に示す成分を、任意成分として所定の含有量で含有していてもよい。
Al、Mg、REM、Ca、及びZrは脱酸元素であるため、本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、更にAl、Mg、REM、Ca、及びZrの少なくとも1種を所定の範囲で含有していてもよい。以下に各成分の限定範囲について説明する。
<Al:2.00質量%以下(0質量%を含む)>
Alは脱酸元素であるため、本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、更にAlを含有していてもよい。しかし、ワイヤ中のAl含有量が2.00質量%を超えると、溶接作業性が低下する。したがって、ワイヤ中にAlを含有させる場合は、ワイヤ中のAl含有量は2.00質量%以下とし、好ましくは1.80質量%以下とし、より好ましくは1.50質量%以下とする。
<Mg:2.00質量%以下(0質量%を含む)>
Mgは脱酸元素であるため、本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、更にMgを含有していてもよい。しかし、ワイヤ中のMg含有量が2.00質量%を超えると、溶接作業性が低下する。したがって、ワイヤ中にMgを含有させる場合は、ワイヤ中のMg含有量は2.00質量%以下とし、好ましくは1.50質量%以下とし、より好ましくは0.60質量%以下とする。
<REM:0.70質量%以下(0質量%を含む)>
REM(希土類元素)は脱酸元素であるため、本実施形態に係るフラックス入りワイヤは更にREMを含有していてもよい。しかし、ワイヤ中のREM含有量が0.70質量%を超えると、溶接作業性が低下する。したがって、ワイヤ中にREMを含有させる場合は、ワイヤ中のREM含有量は0.70質量%以下とし、好ましくは0.60質量%以下とし、より好ましくは0.50質量%以下とする。
なお、本実施形態に係るフラックス入りワイヤ中のREMは、周期律表のLaからLuまでの15のランタノイド系列希土類元素を意味する。これらの元素は単独で添加しても良いし、二種類以上を併用しても良い。また、本実施形態に係るフラックス入りワイヤにおいては、REMとしてLa及びCeが好適に用いられる。
<Ca:0.50質量%以下(0質量%を含む)>
Caは脱酸元素であるため、本実施形態に係るフラックス入りワイヤは更にCaを含有していてもよい。しかし、ワイヤ中のCa含有量が0.50質量%を超えると、溶接作業性が低下する。したがって、ワイヤ中にCaを含有させる場合は、ワイヤ中のCa含有量は0.50質量%以下とし、好ましくは0.40質量%以下とし、より好ましくは0.30質量%以下とする。
<Zr:0.40質量%以下(0質量%を含む)>
Zrは脱酸元素であるため、本実施形態に係るフラックス入りワイヤは更にZrを含有していてもよい。しかし、ワイヤ中のZr含有量が0.40質量%を超えると、溶接作業性が低下する。したがって、ワイヤ中にZrを含有させる場合は、ワイヤ中のZr含有量は0.40質量%以下とし、好ましくは0.30質量%以下とし、より好ましくは0.20質量%以下とする。
Na及びK、F、LiO、BaF、SrF、CaF、並びにFeは、溶接作業性を向上させることができる成分であるため、本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、更にNa及びK、F、LiO、BaF、SrF、CaF、並びにFeの少なくとも1種を所定の範囲で含有していてもよい。以下に各成分の限定範囲について説明する。
<Na及びKのいずれか一方又は両方の合計:0.60質量%以下(0質量%を含む)>
Na及びKは、アーク安定性を向上させ、溶滴移行及びビード形成を安定化する等、溶接作業性を向上させることができる元素であるため、本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、溶接作業性を高める観点で、更にNa及びKのいずれか一方又は両方を含有していてもよい。しかし、ワイヤ中のNa及びK含有量が合計で0.60質量%を超えると、かえって溶接作業性が低下する。したがって、ワイヤ中にNa及びKのいずれか一方又は両方を含有させる場合は、ワイヤ中のNa及びKのいずれか一方又は両方の合計の含有量は0.60質量%以下とし、好ましくは0.40質量%以下とし、より好ましくは0.30質量%以下とする。
<F:0.50質量%以下(0質量%を含む)>
Fは、アーク安定性を向上させ、溶滴移行及びビード形成を安定化する等、溶接作業性を向上させることができる元素であるため、本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、溶接作業性を高める観点で、更にFを含有していてもよい。しかし、ワイヤ中のF含有量が0.50質量%を超えると、かえって溶接作業性が低下する。したがって、ワイヤ中にFを含有させる場合は、ワイヤ中のF含有量は0.50質量%以下とし、好ましくは0.40質量%以下とし、より好ましくは0.30質量%以下とする。なお、ここで規制するFとは、後述するBaF、SrF、及びCaF以外の化合物から添加されるFであり、例えばNaFやKSiF、氷晶石(NaAlF)、及びNaSiF等の化合物から添加できる。
<LiO:0.13質量%以上0.50質量%以下>
LiOは、アーク安定性を向上させ、溶滴移行及びビード形成を安定化する等、溶接作業性を向上させることができる成分であるため、本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、溶接作業性を高める観点で、スラグ形成剤として、更にLiOを含有していてもよい。
なお、後述するように、本実施形態に係るフラックス入りワイヤにおいては、低温靱性をより一層向上させるために、溶接金属中のC含有量とN含有量との合計量を低減することが好ましい。ワイヤ中に適切な含有量でLiOが含有されていると、溶接時のアーク中において、Liイオンと酸素イオンとに分離し、その後、Liイオンと窒素とが結合して、Li窒化物が形成される。このLi窒化物は、最終的に溶接金属の中からスラグとして排出されるため、ワイヤ中に所定量のLiOが含有されると、結果として、溶接金属中のC含有量とN含有量との合計量を低減することができる。したがって、低温靱性をより一層向上させるためには、ワイヤ中に0.13質量%以上の含有量でLiOを含有させることが好ましく、0.14質量%以上であることがより好ましい。
一方、ワイヤ中のLiO含有量が0.50質量%を超えると、かえって溶接作業性が低下する。したがって、ワイヤ中にLiOを含有させる場合は、ワイヤ中のLiO含有量は0.50質量%以下であることが好ましく、0.40質量%以下であることがより好ましく、0.30質量%以下であることが更に好ましい。
<BaF:10.0質量%以下(0質量%を含む)>
BaFは、アーク安定性を向上させ、溶滴移行及びビード形成を安定化する等、溶接作業性を向上させることができる成分であるため、本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、溶接作業性を高める観点で、スラグ形成剤として更にBaFを含有していてもよい。しかし、ワイヤ中のBaF含有量が10.0質量%を超えると、かえって溶接作業性が低下する。したがって、ワイヤ中にBaFを含有させる場合は、ワイヤ中のBaF含有量は10.0質量%以下とし、好ましくは9.0質量%以下とし、より好ましくは8.0質量%以下とする。
<SrF:10.0質量%以下(0質量%を含む)>
SrFは、アーク安定性を向上させ、溶滴移行及びビード形成を安定化する等、溶接作業性を向上させることができる成分であるため、本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、溶接作業性を高める観点で、スラグ形成剤として更にSrFを含有していてもよい。しかし、ワイヤ中のSrF含有量が10.0質量%を超えると、かえって溶接作業性が低下する。したがって、ワイヤ中にSrFを含有させる場合は、ワイヤ中のSrF含有量は10.0質量%以下とし、好ましくは9.0質量%以下とし、より好ましくは7.0質量%以下とする。
<CaF:10.0質量%以下(0質量%を含む)>
CaFは、アーク安定性を向上させ、溶滴移行及びビード形成を安定化する等、溶接作業性を向上させることができる成分であるため、本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、溶接作業性を高める観点で、スラグ形成剤として更にCaFを含有していてもよい。しかし、ワイヤ中のCaF含有量が10.0質量%を超えると、かえって溶接作業性が低下する。したがって、ワイヤ中にCaFを含有させる場合は、ワイヤ中のCaF含有量は10.0質量%以下とし、好ましくは9.0質量%以下とし、より好ましくは7.0質量%以下とする。
<Fe:2.00質量%以下(0質量%を含む)>
Feは、アーク安定性を向上させ、溶滴移行及びビード形成を安定化する等、溶接作業性を向上させることができる成分であるため、本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、溶接作業性を高める観点で、スラグ形成剤として更にFeを含有していてもよい。しかし、ワイヤ中のFe含有量が2.00質量%を超えると、かえって溶接作業性が低下する。したがって、ワイヤ中にFeを含有させる場合は、ワイヤ中のFe含有量は2.00質量%以下とし、好ましくは1.50質量%以下とし、より好ましくは1.00質量%以下とする。
<Cu:1.0質量%以下、Mo:1.0質量%以下、W:1.0質量%以下、Ti:0.5質量%以下、B:0.01質量%以下(0質量%を含む)>
Cu、Mo、W、Ti及びBは、溶接金属の強度向上に有効な成分であるため、本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、強度を高める観点で、更にCu、Mo、W、Ti及びBの少なくとも1種を所定の範囲で含有していてもよい。しかし、所定の量を超えて添加されると、強度が過剰に上昇して靭性低下を招く。したがって、ワイヤ中にCu、Mo、W、Ti及びBを含有させる場合は、ワイヤ中のCu、Mo、W含有量はそれぞれ1.0質量%以下とし、好ましくは0.8質量%以下とし、より好ましくは0.5質量%以下とする。また、ワイヤ中のTi含有量は0.5質量%以下とし、好ましくは0.3質量%以下とし、より好ましくは0.2質量%以下とする。また、ワイヤ中のB含有量は0.01質量%以下とし、好ましくは0.008質量%以下とし、より好ましくは0.005質量%以下とする。
<その他の成分>
また、本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、上記した任意成分以外のその他の成分として、更にSi酸化物、Al酸化物、Ti酸化物、及びZr酸化物等を含有していてもよい。なお、これらの合計量として、例えば、0質量%超5質量%以下の範囲で含むことができる。
〔溶接金属〕
本実施形態に係る溶接金属は、上記したオーステナイト系ステンレス鋼フラックス入りワイヤを用いて溶接することにより形成することができる。以下、本実施形態に係る溶接金属の化学成分組成について、その成分添加理由及び組成限定理由について詳細に説明する。
なお、各元素は、母材の組成に影響されない所定の領域の溶接金属中に含有される成分の合計量を、溶接金属全質量あたりの含有量とした値で規定される。
<C:0.065質量%以下(0質量%を含む)>
Cは、溶接金属中でオーステナイト相を安定化させて、マルテンサイト相への変態を起こりにくくさせる成分である。また、Cは、溶接金属の強度上昇に寄与する成分でもある。
溶接金属中のC含有量が0.065質量%を超えると、強度が過剰に上昇して、優れた極低温靱性を得ることが困難となる。したがって、溶接金属中のC含有量は0.065質量%以下とし、好ましくは0.050質量%以下とし、より好ましくは0.045質量%以下とする。
<Si:0.59質量%以上1.00質量%以下>
Siは、脱酸を促進させる効果を有する成分である。
溶接金属中のSi含有量が0.59質量%未満では、脱酸効果が不足して、溶接金属中の酸素量が上昇するため、優れた極低温靱性を得ることができない。したがって、溶接金属中のSi含有量は0.59質量%以上とし、好ましくは0.60質量%以上とし、より好ましくは0.61質量%以上とする。
一方、溶接金属中のSi含有量が1.00質量%を超えると、溶接金属の強度が過剰に上昇するため、優れた極低温靱性を得ることができない。したがって、溶接金属中の金属Siの含有量は1.00質量%以下とし、好ましくは0.90質量%以下とし、より好ましくは0.80質量%以下とする。
<Mn:0.80質量%以上3.00質量%以下>
Mnは、オーステナイト安定化元素であるとともに、脱酸剤として溶接金属中の酸素をスラグとして除去し、機械的強度を向上させる効果を有する成分である。
溶接金属中のMn含有量が0.80質量%未満では、脱酸効果が不足して、溶接金属中の酸素量が上昇するため、優れた極低温靱性を得ることができない。したがって、溶接金属中のMn含有量は0.80質量%以上とし、好ましくは0.90質量%以上とし、より好ましくは1.00質量%以上とする。
一方、溶接金属中のMn含有量が3.00質量%を超えると、溶接金属の強度が過剰に上昇して、極低温靱性が低下する。したがって、溶接金属中のMn含有量は3.00質量%以下とし、好ましくは2.20質量%以下とし、より好ましくは1.80質量%以下とする。
<P:0.025質量%以下(0質量%を含む)>
本実施形態に係る溶接金属において、Pは不純物元素である。
溶接金属中のP含有量が0.025質量%を超えると、粒界が脆化して、極低温靱性が低下する。したがって、溶接金属中のP含有量は0.025質量%以下とし、好ましくは0.022質量%以下とし、より好ましくは0.020質量%以下とする。
<Ni:8.00質量%以上15.00質量%以下>
Niは、溶接金属中でオーステナイト相を安定化させて、マルテンサイト相への変態を起こりにくくさせる成分である。
溶接金属中のNi含有量が8.00質量%未満では、オーステナイト相が不安定となって、溶接ままで、部分的にフェライト変態が起こる。その結果、破壊亀裂進展時にTRIP効果の前提となるオーステナイト相が不足し、極低温靱性が低下する。したがって、溶接金属中のNi含有量は8.00質量%以上とし、好ましくは8.20質量%以上とし、より好ましくは9.00質量%以上とする。
一方、溶接金属中のNi含有量が15.00質量%を超えると、オーステナイト相が過度に安定化して、破壊亀裂進展時にTRIP効果を発現させることができないため、優れた極低温靱性を得ることができない。したがって、溶接金属中のNi含有量は15.00質量%以下とし、好ましくは13.00質量%以下とし、より好ましくは12.00質量%以下とする。
<Cr:15.00質量%以上24.00質量%以下>
Crは、溶接金属中でフェライト相を安定化させて、マルテンサイト相への変態を起こりにくくさせる成分である。
溶接金属中のCr含有量が15.00質量%未満では、フェライト相が不安定となって、破壊亀裂進展時にTRIP効果を発現させることができないため、優れた極低温靱性を得ることができない。したがって、溶接金属中のCr含有量は15.00質量%以上とし、好ましくは15.50質量%以上とし、より好ましくは16.00質量%以上とする。
一方、溶接金属中のCr含有量が24.00質量%を超えると、フェライト相が過度に安定化して、溶接ままで、部分的にフェライト変態が起こる。その結果、破壊亀裂進展時にTRIP効果の前提となるオーステナイト相が不足し、極低温靱性が低下する。したがって、溶接金属中のCr含有量は24.00質量%以下とし、好ましくは21.00質量%以下とし、より好ましくは20.00質量%以下とする。
<N:0.080質量%以下(0質量%を含む)>
Nは、溶接金属中でオーステナイト相を安定化させて、マルテンサイト相への変態を起こりにくくさせる成分である。また、Nは、溶接金属の強度上昇に寄与する成分でもある。
溶接金属中のN含有量が0.080質量%を超えると、強度が過剰に上昇して、優れた極低温靱性を得ることが困難となる。したがって、溶接金属中のN含有量は0.080質量%以下とし、好ましくは0.050質量%以下とし、より好ましくは0.030質量%以下とする。
<O:0.030質量%以下(0質量%を含む)>
Oは、溶接金属中で酸化物を形成する元素である。
溶接金属中のO含有量が0.030質量%を超えると、酸化物が増加し、酸化物を起点とする破壊が発生しやすくなって靱性を低下させる。したがって、溶接金属中のO含有量は0.030質量%以下とし、好ましくは0.027質量%以下とし、より好ましくは0.022質量%以下とする。
<残部:Fe及び不可避的不純物>
本実施形態に係る溶接金属に含有しうるその他の成分としては、Fe及び不可避的不純物があり、不可避的不純物としては、例えばNb、V、As、Sb、Sn、Bi及びS等が挙げられる。
<式(2)により算出されるX:18.8以上23.0以下>
上述の通り、溶接金属中のNi、Cr、Mn、Si及びCの含有量をバランスよく調整することにより、破壊亀裂進展時にオーステナイト相からマルテンサイト相に変態するTRIPを発現させて、極低温靱性を向上させることができる。すなわち、本実施形態は溶接金属中の上記成分を所定の範囲で調整するとともに、下記式(2)により算出されるXが所望の範囲となるように各元素を調整するものである。
=[Ni]+0.5×[Cr]+1.6×[Mn]+0.5×[Si]+15×[C]・・・(2)
ただし、式(2)中において、[Ni]、[Cr]、[Mn]、[Si]及び[C]は、それぞれ、溶接金属全質量あたり、溶接金属中のNi、Cr、Mn、Si及びCの含有量(質量%)を表す。
式(2)により算出されるXが18.8未満であると、オーステナイト相が不安定となって、溶接ままで、部分的にフェライト変態が起こる。その結果、破壊亀裂進展時にTRIP効果の前提となるオーステナイト相が不足し、極低温靱性が低下する。したがって、式(2)により算出されるXは18.8以上とし、好ましくは19.8以上とし、より好ましくは20.5以上とする。
一方、式(2)により算出されるXが23.0を超えると、オーステナイト相が過度に安定化して、破壊亀裂進展時にTRIP効果を発現させることができないため、優れた極低温靱性を得ることができない。したがって、式(2)により算出されるXは23.0以下とし、好ましくは22.8以下とし、より好ましくは22.6以下とする。
<式(3)により算出されるX:0.054以下、かつ、Mn:0.90質量%以上>
溶接金属における上記Xの値を調整した上で、更に、溶接金属中のC含有量とN含有量との合計量を低減するとともに、Mn含有量を適切に調整すると、オーステナイトの積層欠陥エネルギーが低下し、HCP(hexagonal close−packed:稠密六方構造)マルテンサイト(εマルテンサイト)がより一層生成しやすくなる。εマルテンサイトは、破壊亀裂進展時に、オーステナイトからBCC(body−centered cubic:体心立方格子構造)マルテンサイトに変態するTRIPの前駆体となることで、TRIPを促進し、その結果、より一層極低温靱性を向上させることができる。
上記効果は、下記式(3)により算出されるXが0.054以下であるとともに、溶接金属中のMn含有量が0.90質量%以上である場合に得ることができる。したがって、溶接金属中において、Xは0.054以下、かつ、Mnは0.90質量%以上であることが好ましい。なお、Xは0.052以下であることがより好ましく、0.050以下であることが更に好ましい。また、Mnは1.00質量%以上であることが更に好ましい。
=[C]+[N]・・・(3)
ただし、式(3)中において、[C]及び[N]は、それぞれ、溶接金属全質量あたり、溶接金属中のC及びNの含有量(質量%)を表す。
以上の通り、本実施形態に係る溶接金属は上記各元素、Fe及び不可避的不純物からなるが、以下に示す成分を、任意成分として所定の含有量で含有していてもよい。
Al、Mg、REM、Ca、及びZrは、脱酸元素であるため、本実施形態に係る溶接金属は、更にAl、Mg、REM、Ca、及びZrの少なくとも1種を所定の範囲で含有していてもよい。以下に各成分の限定範囲について説明する。
<Al:0.80質量%以下(0質量%を含む)>
Alは脱酸元素であるため、本実施形態に係る溶接金属は、更にAlを含有していてもよい。しかし、溶接金属中のAl含有量が0.80質量%を超えると、溶接作業性が低下する。したがって、溶接金属中にAlを含有させる場合は、溶接金属中のAl含有量は0.80質量%以下とし、好ましくは0.70質量%以下とし、より好ましくは0.50質量%以下とする。
<Mg:0.040質量%以下(0質量%を含む)>
Mgは脱酸元素であるため、本実施形態に係る溶接金属は、更にMgを含有していてもよい。しかし、溶接金属中のMg含有量が0.040質量%を超えると、溶接作業性が低下する。したがって、溶接金属中にMgを含有させる場合は、溶接金属中のMg含有量は0.040質量%以下とし、好ましくは0.030質量%以下とし、より好ましくは0.020質量%以下とする。
<REM:0.080質量%以下(0質量%を含む)>
REM(希土類元素)は脱酸元素であるため、本実施形態に係る溶接金属は、更にREMを含有していてもよい。しかし、溶接金属中のREM含有量が0.080質量%を超えると、溶接作業性が低下する。したがって、溶接金属中にREMを含有させる場合は、溶接金属中のREM含有量は0.080質量%以下とし、好ましくは0.050質量%以下とし、より好ましくは0.030質量%以下とする。
なお、本実施形態に係る溶接金属中のREMは、周期律表のLaからLuまでの15のランタノイド系列希土類元素を意味する。これらの元素は単独で添加しても良いし、二種類以上を併用しても良い。また、本実施形態に係る溶接金属においては、REMとしてLa及びCeが好適に用いられる。
<Ca:0.005質量%以下(0質量%を含む)>
Caは脱酸元素であるため、本実施形態に係る溶接金属は、更にCaを含有していてもよい。しかし、溶接金属中のCa含有量が0.005質量%を超えると、溶接作業性が低下する。したがって、溶接金属中にCaを含有させる場合は、溶接金属中のCa含有量は0.005質量%以下とし、好ましくは0.004質量%以下とし、より好ましくは0.003質量%以下とする。
<Zr:0.100質量%以下(0質量%を含む)>
Zrは脱酸元素であるため、本実施形態に係る溶接金属は、更にZrを含有していてもよい。しかし、溶接金属中のZr含有量が0.100質量%を超えると、溶接作業性が低下する。したがって、溶接金属中にZrを含有させる場合は、溶接金属中のZr含有量は0.100質量%以下とし、好ましくは0.080質量%以下とし、より好ましくは0.050質量%以下とする。
<Cu:1.0質量%以下、Mo:1.0質量%以下、W:1.0質量%以下、Ti:0.5質量%以下、B:0.01質量%以下(0質量%を含む)>
Cu、Mo、W、Ti及びBは、溶接金属の強度向上に有効な成分であるため、本実施形態に係る溶接金属は、強度を高める観点で、更にCu、Mo、W、Ti及びBの少なくとも1種を含有していてもよい。しかし、所定の量を超えて含有されると、強度が過剰に上昇して靭性低下を招く。したがって、溶接金属中にCu、Mo、W、Ti及びBを含有させる場合は、溶接金属中のCu、Mo、W含有量はそれぞれ1.0質量%以下とし、好ましくは0.8質量%以下とし、より好ましくは0.5質量%以下とする。また、溶接金属中のTi含有量は0.5質量%以下とし、好ましくは0.3質量%以下とし、より好ましくは0.2質量%以下とする。また、溶接金属中のB含有量は0.01質量%以下とし、好ましくは0.008質量%以下とし、より好ましくは0.005質量%以下とする。
〔フラックス入りワイヤの製造方法〕
本実施形態に係るフラックス入りワイヤの製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、以下に示す方法で製造することができる。
まず、鋼製外皮を構成する鋼帯を準備し、この鋼帯を長手方向に送りながら成形ロールにより成形して、U字状のオープン管にする。次に、所定の成分組成となるように、各種原料を配合したフラックスを鋼製外皮に充填し、その後、断面が円形になるように加工する。その後、冷間加工により伸線し、例えば1.2〜2.4mmのワイヤ径のフラックス入りワイヤとする。なお、冷間加工途中に焼鈍を施してもよい。
〔溶接方法〕
本発明は、ガスシールドアーク溶接方法に関するものでもある。上記した本実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼フラックス入りワイヤは、種々の溶接方法に適用することができるが、ガスタングステンアーク溶接と比較して、溶接の施工効率が優れたガスシールドアーク溶接(FCAW:Flux Cored Arc Welding)用として好適に用いることができる。なお、以下に示す溶接方法以外の溶接条件に関しては、一般的に使用されている条件と同様にすることができるため、詳細な説明は省略する。
上記オーステナイト系ステンレス鋼フラックス入りワイヤを使用して、ガスシールドアーク溶接により溶接する場合に、シールドガスとして、100体積%Arガス、Ar−O混合ガス又はAr−CO混合ガスを用いることができる。ただし、所定の濃度を超えるOガス、COガスを含む混合ガスを使用すると、溶接金属中の酸素量が上昇するため、優れた極低温靱性を得ることができない。
また、本実施形態に係るフラックス入りワイヤにおいては、溶接金属中のC含有量とN含有量との合計量を低減することが好ましいが、COガス含有量が多いシールドガスを使用して溶接を行うと、溶接金属中のC含有量が増加するため、シールドガス中のCOガス含有量は少ない方が好ましい。
したがって、本実施形態に係る溶接方法は、上記オーステナイト系ステンレス鋼フラックス入りワイヤを使用してガスシールドアーク溶接により溶接するものであり、シールドガスとしては、100体積%Arガス、Oガスを20体積%以下含有するAr−O混合ガス及びCOガスを5体積%以下含有するAr−CO混合ガスから選択される1種のガスを使用して溶接することができる。
なお、シールドガスとしてAr−O混合ガスを用いる場合、Oガスの含有量は10体積%以下であることが好ましい。また、シールドガスとしてAr−CO混合ガスを用いる場合、COガスの含有量は2体積%以下であることが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明についてより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[ワイヤの製造]
AWS A5.22/A5.22Mに準拠して、鋼製外皮にフラックスが充填された種々の化学成分組成を有するフラックス入りワイヤを作製した。得られたフラックス入りワイヤ中に含有される化学成分の含有量を、下記表1に示す。なお、表1に示すワイヤの化学成分組成はいずれも設計値である。また、表1中において「0」とは、ワイヤ作製時に該成分を意図的に添加していないことを示す。また、ワイヤNo.J〜N、No.V及びNo.Wは、その他の成分としてSi酸化物、Al酸化物、Ti酸化物、及びZr酸化物等を含有している(表1の「その他」の欄を参照)。
Figure 2021007982
[ワイヤの評価]
作製したフラックス入りワイヤを用いて、ガスシールドアーク溶接を実施することにより、溶接金属の極低温靱性を評価した。
図1は、本実施例における溶接方法を示す模式図である。図1に示すように、板厚が20mmである2枚の炭素鋼板1を準備し、開先角度が45°となるように加工した後、作製したワイヤを使用して、開先部の表面と裏当て材2の表面に2〜3層のバタリング層1a、2aを形成し、炭素鋼板1をV開先となるように配置した。その後、以下に示す溶接条件で溶接を実施し、開先部に溶接金属3を形成した。母材とした炭素鋼板1の化学成分組成を、下記表2に示す。
(溶接条件)
供試鋼板:炭素鋼板 SM490
溶接電流:200−300A
溶接電圧:28−30V
溶接速度:30−50cm/分
溶接入熱:7−16kJ/cm
コンタクトチップ距離:15〜20mm
電源極性:DC−EN又はDC−EP
溶接姿勢:下向
シールドガス:98体積%Ar−2体積%O、90体積%Ar−10体積%O、98体積%Ar−2体積%CO、90体積%Ar−10体積%CO、80体積%Ar−20体積%CO、100体積%CO
Figure 2021007982
(シャルピー衝撃試験)
上記ガスシールドアーク溶接により得られた溶接金属3から、試験片を採取した。
図2は、シャルピー衝撃試験の試験片の採取位置を示す模式図である。図2に示すように、鋼板1の表面から10mmの深さの位置から、溶接線に直角にJIS Z2242に準じてVノッチを形成した、シャルピーVノッチ試験片4を採取した。
その後、各試験片に対して−196℃及び0℃でシャルピー衝撃試験を実施することにより吸収エネルギーvE(J)を測定し、極低温靱性を評価した。試験片は、3箇所で採取し、平均値を算出した。なお、0℃におけるシャルピー衝撃吸収エネルギー(vE0℃)が80Jを超え、かつ、−196℃におけるシャルピー衝撃吸収エネルギー(vE−196℃)が36Jを超えたものを、極低温靱性に優れると評価した。
さらに、作製した溶接金属3の中央部から切粉を採取し、化学成分組成を分析した。
各試験片における溶接金属の化学成分組成を下記表3に示し、溶接条件及びシャルピー衝撃試験による吸収エネルギーの測定結果を下記表4に示す。なお、下記表3中において、「0」とは、ワイヤ作製時及び溶接時に該成分を意図的に添加していないか、又は、検出限界以下であることを示し、下記表3及び表4中において、「−」は、分析又は測定を実施していないことを示す。
Figure 2021007982
Figure 2021007982
上記表1、表3及び表4に示すように、発明例であるワイヤNo.A〜Nは、ワイヤ全質量あたりのワイヤ成分の含有量、及び上述の式(1)により算出されるXが、本発明で規定する数値範囲内であるため、極低温靱性に優れる溶接金属を得ることができた。
また、発明例である溶接金属の試験片No.1〜14は、溶接金属全質量あたりの溶接金属成分の含有量、及び上述の式(2)により算出されるXが、本発明で規定する数値範囲内であるため、−196℃におけるシャルピー衝撃吸収エネルギー(vE−196℃)が36J以上となり、極低温靱性に優れていた。
さらに、試験片No.1〜14は、本発明で規定する溶接方法を用いているので、優れた溶接作業性を得ることができた。
また、ワイヤNo.A〜Iは、ワイヤ中に更にAl、Mg、REM、Ca、Zrの少なくとも一部が添加されているが、これらの含有量が本発明の好ましい条件として規定する数値範囲内であるため、脱酸効果により優れた極低温靱性を得ることができた。さらに、溶接金属の試験片No.8及びNo.9についても、Al、Mg、REM、Ca、Zrの含有量が、本発明の好ましい条件として規定する数値範囲内であるため、優れた極低温靱性を得ることができた。
なお、溶接金属の試験片No.1〜7、及び10〜14については、Mg、REM、Ca及びZrの含有量を測定していないが、溶接母材である炭素鋼板にはこれらの元素は含まれてないため、ワイヤに含有される含有成分から、溶接金属中のMg、REM、Ca、Zrについても、本発明の好ましい条件として規定する数値範囲内であると推測される。
また、溶接金属の試験片No.8及びNo.9は、0℃におけるシャルピー衝撃吸収エネルギー(vE0℃)は測定していないが、−196℃におけるシャルピー衝撃吸収エネルギー(vE−196℃)が優れた値を示しているため、0℃でも優れた値を示すと推測される。
続いて、発明例のうち、ワイヤNo.A〜Iは、ワイヤ中に本発明の好ましい条件として規定する数値範囲内、すなわち0.13質量%以上でLiOが添加されているため、溶接金属中のN含有量が低減された。よって、溶接金属の試験片No.1〜9については、溶接金属中のMn含有量が0.90質量%以上、かつ、式(3)により算出されるXが本発明の好ましい条件として規定する数値範囲内、すなわち0.054以下を満足するため、−196℃におけるシャルピー衝撃吸収エネルギー(vE−196℃)が57Jを超える、より優れた極低温靱性を得ることができた。
なお、発明例のうち、溶接金属の試験片No.10〜13については、上記Xが0.054を超えたため、また、溶接金属の試験片No.14については、溶接金属中のMn含有量が0.90質量%未満であったため、vE−196℃は57J以下の値となった。
さらに、ワイヤNo.A〜Iは、ワイヤ中に更にNa、F、LiO、BaF、SrF、Feの少なくとも一部が添加されているが、これらの各含有量が本発明の好ましい条件として規定する数値範囲内であるため、溶接作業性が良好となった。
一方、比較例であるワイヤNo.O〜Sは、ワイヤ全質量あたりのSi含有量が本発明範囲の下限未満であるため、優れた極低温靱性を有する溶接金属を得ることができなかった。
ワイヤNo.T及びNo.Vは、ワイヤ全質量あたりのSi含有量が本発明範囲の下限未満であるとともに、式(1)により算出されるXが本発明範囲の上限を超えているため、優れた極低温靱性を有する溶接金属を得ることができなかった。
ワイヤNo.Uは、ワイヤ全質量あたりのMn含有量及びN含有量、並びに、式(1)により算出されるXが本発明範囲の上限を超えているため、優れた極低温靱性を有する溶接金属を得ることができなかった。
ワイヤNo.Wは、式(1)により算出されるXが本発明範囲の下限未満であるため、優れた極低温靱性を有する溶接金属を得ることができなかった。
なお、溶接金属の試験片No.22は、−196℃におけるシャルピー衝撃吸収エネルギー(vE−196℃)を測定していないが、0℃におけるシャルピー衝撃吸収エネルギー(vE0℃)が極めて低い値を示しているため、−196℃においてもより低い値を示すと推測される。
また、溶接金属の試験片No.15〜18及びNo.20は、溶接金属全質量あたりのSi含有量が本発明範囲の下限未満であるとともに、式(2)により算出されるXが本発明範囲の上限を超えているため、優れた極低温靱性を有する溶接金属を得ることができなかった。
溶接金属の試験片No.19は、溶接金属全質量あたりのSi含有量が本発明範囲の下限未満であるとともに、溶接金属全質量あたりのO含有量及び式(2)により算出されるXが本発明範囲の上限を超えているため、優れた極低温靱性を有する溶接金属を得ることができなかった。
溶接金属の試験片No.21は、溶接金属全質量あたりのMn含有量及びN含有量、並びに式(2)により算出されるXが本発明範囲の上限を超えているため、優れた極低温靱性を有する溶接金属を得ることができなかった。
溶接金属の試験片No.22は、溶接金属全質量あたりのO含有量が本発明範囲の上限を超えているため、優れた極低温靱性を有する溶接金属を得ることができなかった。
溶接金属の試験片No.23は、式(2)により算出されるXが本発明範囲の下限未満であるため、優れた極低温靱性を有する溶接金属を得ることができなかった。
1 炭素鋼板
1a、2a バタリング層
2 裏当て材
3 溶接金属
4 試験片

Claims (11)

  1. 鋼製外皮にフラックスが充填されたフラックス入りワイヤであって、
    ワイヤ全質量あたり、
    C:0.018質量%以下、
    Si:0.57質量%以上1.00質量%以下、
    Mn:0.70質量%以上3.00質量%以下、
    P:0.021質量%以下、
    Ni:7.00質量%以上13.00質量%以下、
    Cr:12.00質量%以上21.00質量%以下、
    N:0.030質量%以下、
    残部がFe及び不可避的不純物であり、
    下記式(1)により算出されるXが17.5以上22.0以下であることを特徴とする、オーステナイト系ステンレス鋼フラックス入りワイヤ。
    =[Ni]+0.5×[Cr]+1.6×[Mn]+0.5×[Si]+15×[C]・・・(1)
    ただし、式(1)中において、[Ni]、[Cr]、[Mn]、[Si]及び[C]は、それぞれ、ワイヤ全質量あたり、ワイヤ中のNi、Cr、Mn、Si及びCの含有量(質量%)を表す。
  2. さらに、ワイヤ全質量あたり、
    LiO:0.13質量%以上、を含有することを特徴とする請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼フラックス入りワイヤ。
  3. さらに、ワイヤ全質量あたり、
    Al:2.00質量%以下、
    Mg:2.00質量%以下、
    REM:0.70質量%以下、
    Ca:0.50質量%以下、
    Zr:0.40質量%以下、の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のオーステナイト系ステンレス鋼フラックス入りワイヤ。
  4. さらに、ワイヤ全質量あたり、
    Na及びKのいずれか一方又は両方の合計:0.60質量%以下、
    F:0.50質量%以下、
    LiO:0.50質量%以下、
    BaF:10.0質量%以下、
    SrF:10.0質量%以下、
    CaF:10.0質量%以下、
    Fe:2.00質量%以下、の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼フラックス入りワイヤ。
  5. さらに、ワイヤ全質量あたり、
    Cu:1.0質量%以下、
    Mo:1.0質量%以下、
    W:1.0質量%以下、
    Ti:0.5質量%以下、
    B:0.01質量%以下、の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼フラックス入りワイヤ。
  6. さらに、Si酸化物、Al酸化物、Ti酸化物、及びZr酸化物から選択された少なくとも1種を含有し、
    ワイヤ全質量あたり、
    前記Si酸化物、前記Al酸化物、前記Ti酸化物、及び前記Zr酸化物の合計量が0質量%超5質量%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼フラックス入りワイヤ。
  7. 溶接金属全質量あたり、
    C:0.065質量%以下、
    Si:0.59質量%以上1.00質量%以下、
    Mn:0.80質量%以上3.00質量%以下、
    P:0.025質量%以下、
    Ni:8.00質量%以上15.00質量%以下、
    Cr:15.00質量%以上24.00質量%以下、
    N:0.080質量%以下、
    O:0.030質量%以下、
    残部がFe及び不可避的不純物であり、
    下記式(2)により算出されるXが18.8以上23.0以下であることを特徴とする、溶接金属。
    =[Ni]+0.5×[Cr]+1.6×[Mn]+0.5×[Si]+15×[C]・・・(2)
    ただし、式(2)中において、[Ni]、[Cr]、[Mn]、[Si]及び[C]は、それぞれ、溶接金属全質量あたり、溶接金属中のNi、Cr、Mn、Si及びCの含有量(質量%)を表す。
  8. 溶接金属全質量あたり、
    前記Mn:0.90質量%以上であり、
    下記式(3)により算出されるXが0.054以下であることを特徴とする、請求項7に記載の溶接金属。
    =[C]+[N]・・・(3)
    ただし、式(3)中において、[C]及び[N]は、それぞれ、溶接金属全質量あたり、溶接金属中のC及びNの含有量(質量%)を表す。
  9. さらに、溶接金属全質量あたり、
    Al:0.80質量%以下、
    Mg:0.040質量%以下、
    REM:0.080質量%以下、
    Ca:0.005質量%以下、
    Zr:0.100質量%以下、の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項7又は8に記載の溶接金属。
  10. さらに、溶接金属全質量あたり、
    Cu:1.0質量%以下、
    Mo:1.0質量%以下、
    W:1.0質量%以下、
    Ti:0.5質量%以下、
    B:0.01質量%以下、の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の溶接金属。
  11. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼フラックス入りワイヤを使用し、
    シールドガスとして、100体積%Arガス、Oガスを20体積%以下含有するAr−O混合ガス及びCOガスを5体積%以下含有するAr−CO混合ガスから選択される1種を使用して溶接することを特徴とする溶接方法。
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