図1は、本発明の一実施形態に係る粘着シートXの断面模式図である。粘着シートXは、基材10および粘着剤層20を備え、これらを含む積層構造を有する。基材10および粘着剤層20は、直接に接合していてもよいし、他の層を介して接合していてもよい。具体的に、粘着シートXは、基材10と、その一方面側に配置される粘着剤層20とを備え、好ましくは、基材10とのその一方面に接触するように配置される粘着剤層20とを備える。
基材10は、粘着シートXにおいて透明な支持体として機能する要素である。基材10は、例えば、可撓性を有するプラスチックフィルムである。プラスチックフィルムの構成材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース、ポリスチレン、およびポリカーボネートが挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、およびエチレン・ビニルアルコール共重合体が挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびポリブチレンテレフタレートが挙げられる。ポリアミドとしては、例えば、ナイロン6、ナイロン6,6、および部分芳香族ポリアミドが挙げられる。基材10は、一種類の材料からなってもよいし、二種類以上の材料からなってもよい。基材10は、単層構造を有してもよいし、多層構造を有してもよい。基材10は、無延伸フィルムであってもよいし、一軸延伸フィルムであってもよいし、二軸延伸フィルムであってもよい。基材10において、その透明性と機械的強度とを両立させる観点からは、基材10構成用のプラスチック材料は、好ましくはポリエステルであり、より好ましくはポリエチレンテレフタレートである。
基材10は透明性を有する。基材10のヘイズは、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下である。ヘイズ値は、JIS K7136(2000年)に準拠して、ヘイズメーター(日本電色工業社製の「NDH2000」や村上色彩技術研究所社製の「HM-150型」)によって測定される。
基材10における粘着剤層20側の面11は、粘着剤層20との密着性を高めるための物理的処理、化学的処理、または下塗り処理が施されていてもよい。物理的処理としては、例えば、コロナ処理およびプラズマ処理が挙げられる。化学的処理としては例えば酸処理およびアルカリ処理が挙げられる。
基材10の厚さは、基材10が支持体として機能するための強度を確保する観点からは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上である。また、粘着シートXにおいて適度な可撓性を実現する観点からは、基材10の厚さは、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下である。
粘着シートXにおける粘着剤層20は、粘着シートXを被着体に貼着させるための要素であり、基材10とは反対の側に粘着面21を有する。この粘着剤層20は、第1外部刺激に因って着色可能であり、且つ第2外部刺激に因って粘着力が上昇可能である。具体的には、粘着剤層20は、第1外部刺激に因って波長550nmでの可視光透過率が相対的に高い状態から相対的に低い状態へと変化可能であり、且つ、第2外部刺激に因って粘着面21の粘着力が相対的に低い状態(低粘着力状態)から相対的に高い状態(高粘着力状態)へと変化可能である。
未使用の粘着シートXにおいて、粘着剤層20は、波長550nmでの可視光透過率が相対的に高い状態にあり、且つ低粘着力状態にある。このような粘着シートXでは、粘着剤層20に対して第1外部刺激を付与して同層の可視光透過率を低下させた後に、粘着剤層20に対して第2外部刺激を付与して同層の粘着力を上昇させることが可能である。或いは、粘着剤層20に対して第2外部刺激を付与して同層の粘着力を上昇させた後に、粘着剤層20に対して第1外部刺激を付与して同層の可視光透過率を低下させることも可能である。
第1外部刺激としては、例えば、活性エネルギー線照射および加熱が挙げられる。活性エネルギー線としては、例えば、紫外線および電子線が挙げられる。第2外部刺激は、第1外部刺激とは異なる種類の刺激であり、例えば、加熱および活性エネルギー線照射が挙げられる。粘着剤層20は、活性エネルギー線照射に因って波長550nmでの可視光透過率が低下可能であって加熱に因り粘着力が上昇可能である粘着剤層(第1タイプの粘着剤層)であってもよいし、加熱に因って波長550nmでの可視光透過率が低下可能であって活性エネルギー線照射に因り粘着力が上昇可能である粘着剤層(第2タイプの粘着剤層)であってもよい。
粘着剤層20が第1タイプの粘着剤層である場合、粘着剤層20は、ベースポリマーと、オルガノシロキサン構造含有ポリマーと、酸との反応により発色する化合物(発色性化合物)と、光酸発生剤とを含む第1粘着性組成物からなる。オルガノシロキサン構造含有ポリマーのオルガノシロキサン構造部位は、その極性の低さから、粘着剤層20の初期状態にて粘着面21(被着体に貼着することとなる面)に偏在化する傾向を有する(粘着剤層20の低粘着力状態)。粘着剤層20が加熱されると、粘着剤層20内のベースポリマーとオルガノシロキサン構造含有ポリマーのそれぞれの流動性および互いの相溶性が高まる傾向にあり、従って、オルガノシロキサン構造含有ポリマーのオルガノシロキサン構造部位が熱拡散しやすくなる。そして、粘着面21とその近傍において、それまでそこに偏在していたポリオルガノシロキサン構造部位が熱拡散して、粘着面21でのベースポリマーの存在割合が上昇することにより、粘着面21の粘着力は上昇する(即ち、粘着剤層20が高粘着力状態に至る)。また、粘着剤層20は、発色性化合物と光酸発生剤由来の酸との反応が生じることにより、着色する。
ベースポリマーとは、粘着剤層20中のポリマー成分のうち最も大きな質量割合を占める。このようなベースポリマーとしては、例えば、アクリルポリマー、ゴム系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、フッ素系ポリマー等の、室温域でゴム弾性を示すポリマーが挙げられる。粘着剤層20における粘着力の制御のしやすさの観点からは、ベースポリマーとしてはアクリルポリマーが好ましい。第1粘着性組成物は、ベースポリマーとともに他のポリマーを含んでもよい。また、第1粘着性組成物におけるベースポリマーの含有割合は、粘着剤層20においてベースポリマーの機能を適切に発現させるという観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。
アクリルポリマーは、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを50質量%以上の割合で含むモノマー成分(第1モノマー成分)を重合することにより得られるポリマー(具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するユニットを50質量%以上の割合で含むポリマー)である。「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸をいうものとする。第1モノマー成分における(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、粘着剤層20において粘着性等の基本特性を適切に発現させる観点からは、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。同割合は、例えば90質量%以下である。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、直鎖状または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。そのような(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソトリドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸イソテトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソオクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、および(メタ)アクリル酸エイコシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルは、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。
アクリルポリマーのガラス転移温度を調整する観点からは、アルキル基の炭素数が4〜12のアクリル酸アルキルエステル(アクリル酸C4−12アルキルエステル)と、メタクリル酸メチルとが併用されるのが好ましい。この場合、第1モノマー成分におけるアクリル酸C4−12アルキルエステルとメタクリル酸メチルとの総量100質量部に対し、アクリル酸C4−12アルキルエステルの量は、好ましくは80質量部以上であって、好ましくは95質量部以下であり、メタクリル酸メチルの量は、好ましくは5質量部以上であって、好ましくは20質量部以下である。
第1モノマー成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な一種または二種以上の他のモノマー(共重合性モノマー)を含んでいてもよい。共重合性モノマーを用いることによる効果を得る観点から、第1モノマー成分における共重合性モノマーの割合は、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上である。同割合は、例えば50質量%以下であり、好ましくは40質量%以下である。
共重合性モノマーとしては、極性基を有するモノマーが挙げられる。極性基含有モノマーは、アクリルポリマーへの架橋点の導入、アクリルポリマーの凝集力の確保など、アクリルポリマーの改質に役立つ。極性基含有モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、および、窒素原子含有環を有するモノマーが挙げられる。共重合性モノマーは、好ましくは、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、および、窒素原子含有環を有するモノマーからなる群から選択される少なくとも一種を含む。より好ましくは、共重合性モノマーは、水酸基含有モノマーおよび/またはカルボキシ基含有モノマーを含む(即ち、アクリルポリマーは、水酸基および/またはカルボキシ基を有する)。
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、および(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレートが挙げられる。水酸基含有モノマーは、好ましくは(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルであり、より好ましくはアクリル酸2-ヒドロキシエチルである。
第1モノマー成分における水酸基含有モノマーの割合は、アクリルポリマーへの架橋構造の導入、および、粘着剤層20における凝集力の確保の観点からは、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。同割合は、アクリルポリマー重合時の重合反応溶液の粘度調整、および、粘着剤層20における各種添加剤成分とアクリルポリマーとの相溶性に関わる アクリルポリマーの極性の調整の観点からは、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、およびイソクロトン酸が挙げられる。
第1モノマー成分におけるカルボキシ基含有モノマーの割合は、アクリルポリマーへの架橋構造の導入、粘着剤層20における凝集力の確保、および、粘着剤層20における対被着体密着力の確保の観点からは、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。同割合は、アクリルポリマーのガラス転移温度の調整、および、酸による被着体の腐食リスクの回避の観点からは、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
窒素原子含有環を有するモノマーとしては、例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-メチルビニルピロリドン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール、N-(メタ)アクリロイル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-ビニルモルホリン、N-ビニル-3-モルホリノン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-1,3-オキサジン-2-オン、N-ビニル-3,5-モルホリンジオン、N-ビニルピラゾール、N-ビニルイソオキサゾール、N-ビニルチアゾール、およびN-ビニルイソチアゾールが挙げられる。窒素原子含有環を有するモノマーは、好ましくはN-ビニル-2-ピロリドンである。
第1モノマー成分における、窒素原子含有環を有するモノマーの割合は、粘着剤層20における凝集力の確保、および、粘着剤層20における対被着体密着力の確保の観点からは、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。同割合は、アクリルポリマーのガラス転移温度の調整、および、粘着剤層20における各種添加剤成分とアクリルポリマーとの相溶性に関わる アクリルポリマーの極性の調整の観点からは、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
第1モノマー成分は、他の共重合性モノマーを含んでいてもよい。他の共重合性モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸および無水イタコン酸などの酸無水物モノマー、スルホン酸基含有モノマー、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマー、2-イソシアナートエチル(メタ)アクリレートなどのイソシアネート基含有モノマー、アミド基含有モノマー、スクシンイミド骨格を有するモノマー、マレイミド類、イタコンイミド類、(メタ)アクリル酸アミノアルキル類、アルコキシ基含有モノマー、酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、ビニルエーテル類、芳香族ビニル化合物、オレフィン類、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、および、芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルが、挙げられる。
スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、および(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸が挙げられる。
エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルおよび(メタ)アクリル酸-2-エチルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有アクリレート、アリルグリシジルエーテル、および(メタ)アクリル酸グリシジルエーテルが挙げられる。
アミド基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルアセトアミドなどのN-ビニルカルボン酸アミド類、N-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、およびN-(メタ)アクリロイルモルホリンが挙げられる。N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(n-ブチル)(メタ)アクリルアミド、およびN,N-ジ(t-ブチル)(メタ)アクリルアミドが挙げられる。N-アルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、およびN-n-ブチル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。N-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(1-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、およびN-(4-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミドが挙げられる。N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、およびN-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
スクシンイミド骨格を有するモノマーとしては、例えば、N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、およびN-(メタ)アクリロイル-8-オキシヘキサメチレンスクシンイミドが挙げられる。
マレイミド類としては、例えば、N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、およびN-フェニルマレイミドが挙げられる。
イタコンイミド類としては、例えば、N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルへキシルイタコンイミド、N-シクロへキシルイタコンイミド、およびN-ラウリルイタコンイミドが挙げられる。
(メタ)アクリル酸アミノアルキル類としては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジエチルアミノエチル、および(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチルが挙げられる。
アルコキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル類および(メタ)アクリル酸アルコキシアルキレングリコール類が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル類としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、および(メタ)アクリル酸エトキシプロピルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキレングリコール類としては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、および(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールが挙げられる。
ビニルエーテル類としては、例えば、メチルビニルエーテルおよびエチルビニルエーテルなどのビニルアルキルエーテルが挙げられる。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、およびビニルトルエンが挙げられる。オレフィン類としては、例えば、エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンが挙げられる。
脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、およびジシクロペンタニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、およびベンジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
第1モノマー成分は、粘着剤層20の凝集力調整等の目的で、一種または二種以上の多官能性モノマーを含んでいてもよい。多官能性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ブチルジオール(メタ)アクリレート、および、ヘキシルジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。第1モノマー成分における多官能性モノマーの割合は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上である。同割合は、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である。
アクリルポリマーの重量平均分子量は、粘着剤層20における凝集力の確保の観点からは、好ましくは100000以上、より好ましくは300000以上、より好ましくは500000以上である。アクリルポリマーの流動性の確保の観点からは、同重量平均分子量は、好ましくは5000000以下、より好ましくは3000000以下、より好ましくは2000000以下である。アクリルポリマーの重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)によって測定してポリスチレン換算により算出される。
ベースポリマーのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは0℃以下、より好ましくは−10℃以下、より好ましくは−20℃以下である。同ガラス転移温度は、例えば−80℃以上である。このような構成は、ベースポリマーの流動性を確保するうえで好適であり、従って、加熱による粘着剤層20の高粘着化の観点から好適である。
ポリマーのガラス転移温度(Tg)については、下記のFoxの式に基づき求められるガラス転移温度(理論値)を用いることができる。Foxの式は、ポリマーのガラス転移温度Tgと、当該ポリマーを構成するモノマーのホモポリマーのガラス転移温度Tgiとの関係式である。下記のFoxの式において、Tgはポリマーのガラス転移温度(℃)を表し、Wiは当該ポリマーを構成するモノマーiの重量分率を表し、Tgiは、モノマーiから形成されるホモポリマーのガラス転移温度(℃)を示す。ホモポリマーのガラス転移温度については文献値を用いることができ、例えば、「Polymer Handbook」(第4版,John Wiley & Sons, Inc., 1999年)および「新高分子文庫7 塗料用合成樹脂入門」(北岡協三著,高分子刊行会,1995年)には、各種のホモポリマーのガラス転移温度が挙げられている。一方、モノマーのホモポリマーのガラス転移温度については、特開2007−51271号公報に具体的に記載されている手法によって求めることも可能である。
Foxの式 1/(273+Tg)=Σ[Wi/(273+Tgi)]
アクリルポリマーは、上述の第1モノマー成分を重合させることによって形成することができる。重合手法としては、例えば溶液重合、塊状重合、および乳化重合が挙げられ、好ましくは溶液重合が挙げられる。溶液重合では、例えば、第1モノマー成分と重合開始剤とを溶媒に配合して反応溶液を調製した後、その反応溶液を加熱する。そして、反応溶液中での第1モノマー成分の重合反応を経ることによって、アクリルポリマーを含むアクリルポリマー溶液を得ることができる。重合開始剤としては、重合方法に応じて、熱重合開始剤および光重合開始剤を用いることができる。重合開始剤の使用量は、例えば、第1モノマー成分100質量部に対して、例えば0.01〜5質量部であり、好ましくは0.05〜3質量部である。
熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤、および、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩が、挙げられる。アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4'-アゾビス-4-シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2'-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、および、2,2'-アゾビス(N,N'-ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライドが挙げられる。過酸化物系重合開始剤としては、例えば、ジベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルマレエート、および過酸化ラウロイルが挙げられる。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、および、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤が挙げられる。
第1粘着性組成物は、ベースポリマーへの架橋構造の導入の観点から、架橋剤を含有してもよい。ベースポリマーが架橋点を有する場合に当該架橋点と反応して架橋構造を形成するための架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、および金属キレート系架橋剤が挙げられる。架橋剤は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、およびポリメチレンポリフェニルイソシアネートが挙げられる。また、イソシアネート系架橋剤としては、これらイソシアネートの誘導体(例えば、イソシアヌレート変性体およびポリオール変性体など)も挙げられる。イソシアネート系架橋剤の市販品としては、例えば、コロネートL(トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体,東ソー製)、コロネートHL(へキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体,東ソー製)、コロネートHX(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体,東ソー製)、およびタケネートD110N(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体,三井化学製)が挙げられる。
エポキシ系架橋剤としては、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、および1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンが挙げられる。エポキシ系架橋剤の市販品としては、例えば、テトラッドC(1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン,三菱ガス化学社製)が挙げられる。
架橋剤の使用量は、粘着剤層20の凝集力を確保する観点からは、ベースポリマー100質量部に対して、例えば0.01質量部以上であり、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上である。粘着剤層20において良好なタック性を確保する観点からは、ベースポリマー100質量部に対する架橋剤の使用量は、例えば10質量部以下であり、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
ベースポリマーに架橋構造が導入される場合、架橋反応を効果的に進行させるために架橋触媒が用いられてもよい。架橋触媒としては、例えば、テトラ-n-ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ナーセム第二鉄、ブチルスズオキシド、ジオクチルスズジラウレートなどの金属系架橋触媒が挙げられる。架橋触媒の使用量は、ベースポリマー100質量部に対して例えば0.0001〜1質量部である。
オルガノシロキサン構造含有ポリマーとしては、例えば、オルガノシロキサン構造を有するアクリル系、ウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、およびポリブタジエン系のポリマーが挙げられる。オルガノシロキサン構造含有ポリマーは、例えばその側鎖に、オルガノシロキサン構造を有する。粘着力の制御のしやすさの観点からは、オルガノシロキサン構造含有ポリマーとして、オルガノシロキサン構造含有アクリルポリマーが好適に用いられる。
オルガノシロキサン構造含有ポリマーは、好ましくは、オルガノシロキサン骨格を有するモノマーを含むモノマー成分(第2モノマー成分)を重合することにより得られるポリマー(具体的には、オルガノシロキサン骨格を有するモノマーに由来するユニットを含むポリマー)である。オルガノシロキサン骨格を有するモノマーとしては、例えば、下記の一般式(1)で表される化合物または一般式(2)で表される化合物が挙げられる。一般式(1)(2)において、R1は水素またはメチル基を表し、R2はメチル基または1価の有機基を表し、mおよびnは0以上の整数である。
オルガノシロキサン骨格含有モノマーとしては、市販品を用いることもできる。その市販品としては、例えば、X−22−174ASX、X−22−2426、X−22−2475、およびKF−2012(以上、信越化学工業株式会社製の片末端反応性シリコーン)が挙げられる。
オルガノシロキサン骨格含有モノマーの官能基当量は、粘着剤層20において粘着力上昇前の低粘着性(即ち、粘着シートXの軽剥離性)を確保する観点からは、好ましくは700g/mol以上、より好ましくは800g/mol以上、より好ましくは850g/mol以上、より好ましくは1500g/mol以上である。粘着剤層20において粘着力上昇後の粘着力を確保する観点からは、同官能基当量は、好ましくは20000g/mol以下、より好ましくは15000g/mol以下、より好ましくは10000g/mol以下、より好ましくは6000g/mol以下、より好ましくは5000g/mol以下である。
オルガノシロキサン骨格含有モノマーの官能基当量(g/mol)とは、重合反応に関与するビニル基などの官能基(1mol)あたりに結合しているオルガノシロキサン骨格の質量(g)を意味する。この官能基当量は、例えば、1H-NMRのスペクトル強度から算出することができる。1H-NMRのスペクトル強度に基づく当該官能基当量(g/mol)は、1H-NMRスペクトル解析に係る一般的な構造解析手法に基づいて、必要であれば特許第5951153号公報の記載を参照して求められる。
第2モノマー成分におけるオルガノシロキサン骨格含有モノマーの割合は、粘着剤層20において粘着力上昇前の低粘着性(即ち、粘着シートXの軽剥離性)を確保する観点からは、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。粘着剤層20において粘着力上昇後の粘着力を確保する観点からは、同割合は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
第2モノマー成分は、好ましくは、オルガノシロキサン骨格含有モノマーと共に、当該モノマーと共重合可能な一種または二種以上の他のモノマーを含んでいてもよい。そのようなモノマーとしては、例えば、ベースポリマーとしてのアクリルポリマーに関して上記した(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび各種の共重合性モノマーが挙げられる。第2モノマー成分における当該他のモノマーの割合は、粘着剤層20がベースポリマーとしてアクリルポリマーを含む場合の当該アクリルポリマーとオルガノシロキサン構造含有ポリマーとの相溶性を確保する観点からは、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。同割合は、例えば90質量%以下である。
第2モノマー成分は、好ましくは、ホモポリマーのガラス転移温度が40℃以上のモノマーを含む。当該モノマーのガラス転移温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上である。第2モノマー成分における当該モノマーの割合は、粘着剤層20における粘着力の調整などの観点からは、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。オルガノシロキサン構造含有ポリマーとベースポリマーとの相溶性の確保などの観点からは、同割合は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
ホモポリマーのガラス転移温度が40℃以上のモノマーとしては、例えば、ジシクロペンタニルメタクリレート(Tg:175℃)、ジシクロペンタニルアクリレート(Tg:120℃)、イソボルニルメタクリレート(Tg:173℃)、イソボルニルアクリレート(Tg:97℃)、メチルメタクリレート(Tg:105℃)、1-アダマンチルメタクリレート(Tg:250℃)、および1-アダマンチルアクリレート(Tg:153℃)が挙げられる。
オルガノシロキサン構造含有ポリマーは、上述の第2モノマー成分を重合させることによって形成することができる。重合手法としては、例えば溶液重合、塊状重合、および乳化重合が挙げられ、好ましくは溶液重合が挙げられる。溶液重合では、例えば、第2モノマー成分と例えば上述の重合開始剤とを溶媒に配合して反応溶液を調製した後、その反応溶液を加熱する。そして、反応溶液中での第2モノマー成分の重合反応を経ることによって、オルガノシロキサン構造含有ポリマーを含むポリマー溶液を得ることができる。この重合反応においては、形成されるポリマーの分子量を調整するために連鎖移動剤を用いてもよい。
オルガノシロキサン構造含有ポリマーの重量平均分子量は、ベースポリマーからのオルガノシロキサン構造含有ポリマーのブリードアウトの抑制、および、粘着剤層20における粘着力の調整の観点からは、好ましくは3000以上、より好ましくは5000以上、より好ましくは10000以上である。オルガノシロキサン構造含有ポリマーとベースポリマーとの相溶性の確保の観点からは、同分子量は、好ましくは1000000以下、より好ましくは500000以下、より好ましくは300000以下である。オルガノシロキサン構造含有ポリマーの重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)によって測定してポリスチレン換算により算出される。
ベースポリマー100質量部に対するオルガノシロキサン構造含有ポリマーの配合量は、粘着剤層20における粘着力の調整などの観点からは、例えば0.1質量部以上であり、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。ヘイズなどの光学特性の調整の観点からは、同配合量は、例えば30質量部以下、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
発色性化合物は、酸との反応によって無色(透明)から有色に変化する化合物であって、例えば、ロイコ系色素、p,p’,p”-トリス-ジメチルアミノトリフェニルメタンなどのトリアリールメタン系色素、4,4-ビス-ジメチルアミノフェニルベンズヒドリルベンジルエーテルなどのジフェニルメタン系色素、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオランなどのフルオラン系色素、3-メチルスピロジナフトピランなどのスピロピラン系色素、および、ローダミン-B-アニリノラクタムなどのローダミン系色素が、挙げられる。第1粘着性組成物は、一種類の発色性化合物を含んでもよいし、二種類以上の発色性化合物を含んでもよい。粘着剤層20において良好な着色性を確保する観点からは、粘着剤層20は、好ましくは、発色性化合物としてロイコ系色素を含む。
ベースポリマー100質量部に対する発色性化合物の配合量は、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。同配合量は、好ましくは5質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。
光酸発生剤は、活性エネルギー線が照射されることによって酸を発生する化合物であって、例えば、オニウム化合物が挙げられる。オニウム化合物は、例えば、オニウムカチオンとアニオンとのオニウム塩の形態で提供される。オニウムカチオンとしては、ヨードニウムおよびスルホニウムが挙げられる。オニウム塩をなすアニオンとしては、例えば、Cl−,Br−,I−,ZnCl3 −,HSO3 −,BF4 −,PF6 −,AsF6 −,SbF6 −,CH3SO3 −,CF3SO3 −,(C6F5)4B−,(C4H9)4B−が挙げられる。粘着剤層20は、一種類の光酸発生剤を含んでもよいし、二種類以上の光酸発生剤を含んでもよい。粘着剤層20は、好ましくは、スルホニウムと(C6F5)4B−とからなるオニウム塩をオニウム化合物として含む。光酸発生剤の市販品としては、例えば、サンアプロ社製のCPI−310B(スルホニウムと(C6F5)4B−とのオニウム塩)が挙げられる。
ベースポリマー100質量部に対する光酸発生剤の配合量は、好ましくは0.5質量部以上であり、より好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。同配合量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。また、発色性化合物1質量部に対する光酸発生剤の配合量は、例えば1質量部以上であり、好ましくは2質量部以上、より好ましくは2.5質量部以上、より好ましくは3.5質量部以上、より好ましくは5質量部以上、より好ましくは7質量部以上である。同配合量は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
粘着剤層20は、必要に応じて他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、シランカップリング剤、粘着性付与剤、可塑剤、軟化剤、劣化防止剤、充填剤、着色剤、酸化防止剤、界面活性剤、および帯電防止剤が挙げられる。
粘着剤層20が上述の第2タイプの粘着剤層である場合、粘着剤層20は、例えば、ベースポリマーと、光硬化剤と、光重合開始剤と、上述の発色性化合物と、熱酸発生剤とを含む第2粘着性組成物により構成され、活性エネルギー線による照射を受けて粘着力が上昇する。また、第2タイプの粘着剤層20は、発色性化合物と熱酸発生剤由来の酸との反応が生じることにより、着色する。
ベースポリマーとしては、例えば、第1タイプの粘着剤層20に関して上述したベースポリマーを用いることができる。
光硬化剤としては、例えば、多官能(メタ)アクリレートを用いることができる。多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、アルカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、およびトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート挙げられる。
光重合開始剤としては、例えば、光カチオン開始剤および光ラジカル開始剤が挙げられる。光ラジカル開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのヒドロキシケトン類、ベンジルジメチルケタール類、アミノケトン類、アシルフォスフィンオキサイド類、ベンゾフェノン類、およびトリクロロメチル基含有トリアジン誘導体挙げられる。上述の光硬化剤として多官能(メタ)アクリレートが用いられる場合には、光重合開始剤としては、好ましくは光ラジカル開始剤が用いられ、より好ましくはヒドロキシケトン類が用いられる。
第2粘着性組成物は、ベースポリマーへの架橋構造の導入の観点から、架橋剤を含有してもよい。ベースポリマーが架橋点を有する場合に当該架橋点と反応して架橋構造を形成するための架橋剤としては、例えば、上述の各種架橋剤、即ち、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、および金属キレート系架橋剤が挙げられる。
熱酸発生剤は、加熱によって酸を発生する化合物であって、例えば、アリールスルホニウム塩およびアリールヨードニウム塩が挙げられる。
粘着剤層20の厚さは、被着体に対する充分な粘着性を確保するという観点から、例えば5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上である。粘着シートXのハンドリング性の観点からは、粘着剤層20の厚さは、例えば300μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。
粘着シートXにおいて、ステンレス板に対する貼り合せを経た後に23℃、剥離角度180°および剥離速度300mm/分の剥離条件での剥離試験において当該ステンレス板に対して示す第1粘着力に対する、ステンレス板に対する貼り合せと、照射波長365nmおよび照射光量4000mJ/cm2の照射条件での紫外線照射とを経た後に、上記剥離条件での剥離試験において当該ステンレス板に対して示す第2粘着力の比率は、好ましくは2以下、より好ましくは1.7以下、より好ましくは1.5以下である。第1粘着力は、好ましくは1.5N/25mm以下、より好ましくは1.2N/25mm以下、より好ましくは1N/25mm以下である。第2粘着力は、好ましくは2N/25mm以下、より好ましくは1.7N/25mm以下、より好ましくは1.4N/25mm以下である。これら構成は、粘着シートXの粘着剤層20において、第1外部刺激を受けることによる対被着面粘着力上昇率を押さえて、第2外部刺激を受けることによる高い対被着面粘着力上昇率を確保するのに適する。
本発明の粘着シートXに関し、ステンレス板に対する貼り合せを経た後に23℃、剥離角度180°および剥離速度300mm/分の剥離条件での剥離試験において当該ステンレス板に対して示す第1粘着力に対する、ステンレス板に対する貼り合せと、照射波長365nmおよび照射量4000mJ/cm2の照射条件での紫外線照射と、80℃での5分間の加熱とを経た後に、上記剥離条件での剥離試験において当該ステンレス板に対して示す第3粘着力の比率は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、より好ましくは15以上である。第3粘着力は、好ましくは5N/25mm以上、より好ましくは10N/25mm以上、より好ましくは15N/25mm以上である。これら構成は、被着面に貼り合わせられた粘着シートXにおいて、被着面に対する高い接着信頼性を確保するのに適する。
粘着シートXにおける粘着剤層20が第1外部刺激を受ける前における波長550nmでの可視光透過率は、好ましくは85%以上、より好ましくは87%以上、より好ましくは90%以上である。このような構成は、粘着シートXを所定表面に貼り合わせた後に粘着シートXとその被着面との間における異物や気泡の有無を検査するのに適する。
粘着シートXにおける粘着剤層20が第1外部刺激を受けた後における波長550nmでの可視光透過率は、好ましくは80%以下、より好ましくは78%以下、より好ましくは76%以下である。このような構成は、粘着シートXが貼り合わされた被着面を視認されにくくするのに適し、また、被着面での上述の外光反射を防止・抑制するのに適する。
粘着シートXにおける粘着剤層20が第1外部刺激を受ける前における波長300〜700nmでの可視平均光透過率は、好ましくは83%以上、より好ましくは84%以上である。このような構成は、粘着シートXを所定表面に貼り合わせた後に粘着シートXとその被着面との間における異物や気泡の有無を検査するのに適する。
粘着シートXにおける粘着剤層20が第1外部刺激を受けた後における波長300〜700nmでの可視平均光透過率は、好ましくは75%以下、より好ましくは72%以下、より好ましくは70%以下である。このような構成は、粘着シートXが貼り合わされた被着面を視認されにくくするのに適し、また、被着面での上述の外光反射を防止・抑制するのに適する。
第1外部刺激を受ける前における粘着シートXのヘイズは、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下である。このような構成は、粘着シートXを所定表面に貼り合わせた後に粘着シートXとその被着面との間における異物や気泡の有無を検査するのに適する。
粘着シートXは、例えば、粘着剤層20を構成するための各種成分を含有する粘着性組成物を基材10上に塗布して塗膜を形成し、塗膜から必要に応じて溶媒を乾燥除去することによって、製造することができる。粘着性組成物の塗布方法としては、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、およびダイコートが挙げられる。溶媒除去のための乾燥温度は、例えば50℃〜200℃である。その乾燥時間は、例えば5秒〜10分である。用いる粘着性組成物が架橋剤を含む場合、上述の乾燥と同時に又はその後のエージングによって、粘着性組成物中の架橋剤が関与する架橋反応を進行させる。エージング条件は、架橋剤の種類によって適宜設定される。エージング温度は、例えば20℃〜160℃である。エージング時間は、例えば、1分から7日である。また、製造後の粘着シートXについては、必要に応じて、粘着剤層20の粘着面21側に剥離フィルムを積層してもよい。そのような剥離フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエステルフィルムなどの可撓性のプラスチックフィルムが挙げられる。
粘着シートXにおける粘着剤層20は、上述のように、第1外部刺激に因って波長550nmでの可視光透過率が低下可能である(可視光の波長域において波長550nmは中間領域内に位置するので、粘着剤層20における波長550nmの光の透過率は、粘着剤層20の色味や可視光域での透明性に影響を与えやすい)。このような構成は、粘着シートXにおいて、可視光域における透明性が相対的に高い状態と相対的に低い状態とを使い分けるのに適する。例えば、粘着シートXを所定表面に貼り合わせた後、粘着シートXの透明性が相対的に高い状態で同シートと被着面との間における異物や気泡の有無を検査し、当該検査の通過の後、同シートの粘着剤層20に第1外部刺激を与えて同シートの透明性を相対的に低い状態へと変化させることが可能である。被着面に貼り合わせられた粘着シートXの透明性が低いほど、被着面の色味や質感、被着面内でのこれらの違いなどは視認されにくく、また、被着面が外光反射を生じやすい面であってもその外光反射は抑制される。
粘着シートXにおける粘着剤層20は、上述のように、第2外部刺激に因って粘着力が上昇可能である。このような構成は、粘着シートXないしその粘着剤層20において、被着体に対する粘着力が相対的に低い状態(低粘着力状態)と相対的に高い状態(高粘着力状態)とを使い分けるのに適する。例えば、所定表面への粘着シートXの貼り合わせに関して不良が生じた場合には、貼り合わせ不良を生じた粘着シートXの粘着剤層20の粘着力が相対的に低い状態で、同シートを被着面から剥離することが可能である。その一方で、所定表面に適切に貼り合わせられた粘着シートXについては、その粘着剤層20に第2外部刺激を与えて同層の粘着力を相対的に高い状態へと変化させることが可能である。被着面に貼り合わせられた粘着シートXないしその粘着剤層20の対被着面粘着力が高いほど、粘着シートXにおいて、被着面に対する高い接着信頼性を実現しやすい。
以上のように、粘着シートXは、被着面への貼り合わせに関して検査のしやすさとリワーク性とを確保するのに適するとともに、貼り合わせられた被着面上において高接着信頼性および低透明性を実現するのに適する。このような粘着シートXは、例えば、光学デバイスや電子デバイスなど各種デバイスの表面に貼り合わせられる補強用粘着シートXとして好適に使用することが可能である。また、粘着シートXは、例えば、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイなど表示装置の備える表示パネルに組み付けられる外光反射防止材として好適に使用することが可能である。
図2は、本発明の一実施形態に係る、粘着シート貼付品の製造方法を表す。この製造方法は、用意工程と、貼合せ工程と、着色工程と、粘着力上昇工程とを含む。
用意工程では、図2Aに示すように、粘着シートXおよび被着体30を用意する。被着体30としては、例えば、フレキシブルディスプレイパネルなどフレキシブルな光学デバイス、フレキシブルプリント配線基板(FPC)などのフレキシブルな電子デバイス、および、これらの構成部品たるフレキシブル基材が挙げられる。
貼合せ工程では、図2Bに示すように、粘着シートXをその粘着剤層20にて被着体30に貼り合わせる。
次に、着色工程では、被着体30上の粘着剤層20に第1外部刺激を与える。粘着剤層20が第1タイプの粘着剤層である場合、第1外部刺激は活性エネルギー線照射であり、粘着剤層20が第2タイプの粘着剤層である場合、第1外部刺激は加熱である。本工程では、粘着剤層20において波長550nmでの可視光透過率が低下し、従って、粘着シートXの可視光透過率が低下する。これにより、図2Cに示すように、粘着剤層20が着色する。粘着剤層20が第1タイプの粘着剤層である場合、本工程では、可視光透過率低下領域をパターン形成することができる。具体的には、粘着剤層20における所定領域をマスクするためのマスクパターンを介して粘着剤層20に対して活性エネルギー線を照射することにより、図3に示すように、粘着剤層20における当該マスクパターンでマスクされていない領域について可視光透過率を低下させて着色させ、着色領域20Aをパターン形成することができる。
次に、粘着力上昇工程では、被着体30上の粘着剤層20に第2外部刺激を与える。粘着剤層20が第1タイプの粘着剤層である場合、第2外部刺激は加熱であり、粘着剤層20が第2タイプの粘着剤層である場合、第2外部刺激は活性エネルギー線照射である。本工程では、被着体30に対する粘着剤層20の粘着力が低下する。
本製造方法では、貼合せ工程より後であって着色工程および粘着力上昇工程より前に、粘着シートXの透明性が相対的に高い状態で、粘着シートXと被着体30の表面(被着面31)との間における異物や気泡の有無を検査することが可能である。その検査の結果、粘着シート貼合せ作業のやり直しが必要な場合、本製造方法では、着色工程および粘着力上昇工程より前に、粘着力が相対的に低い状態にある粘着シートXを被着面31から剥離することが可能であり、その後、別の粘着シートXを貼合せることができる(即ち、貼合せ作業についてリワークすることができる)。そして、適切な貼合せ作業を経た粘着シートXについては、着色工程を経ることによって粘着剤層20の透明性を低下させることができ、その後に粘着力上昇工程を経ることによって、粘着剤層20において、その粘着力を上昇させて、被着面に対する高い接着信頼性を確保することが可能である。
以上のように、本製造方法は、粘着シート貼付品の製造過程において、粘着シートXの被着面31への貼り合わせに関して検査のしやすさとリワーク性とを確保するのに適するとともに、被着面31に貼り合わせられた粘着シートXおいて高接着信頼性および低透明性を実現するのに適する。
加えて、粘着剤層20が第1タイプの粘着剤層であり且つ着色工程にて粘着剤層20に着色領域をパターン形成した場合において、着色領域20Aに仮に位置ずれが生じたとしても、本製造方法では、粘着力上昇工程より前に、粘着力が相対的に低い状態にある粘着シートXを被着面から剥離することが可能であり、その後、粘着シート貼合せ作業についてリワークすることができる。
本発明の他の実施形態に係る、粘着シート貼付品の製造方法は、用意工程と、貼合せ工程と、粘着力上昇工程と、着色工程とを含む。
用意工程では、図2Aに示すように、粘着シートXおよび被着体30を用意する。貼合せ工程では、図2Bに示すように、粘着シートXをその粘着剤層20にて被着体30に貼り合わせる。
次に、粘着力上昇工程では、被着体30上の粘着剤層20に第2外部刺激を与える。粘着剤層20が第1タイプの粘着剤層である場合、第2外部刺激は加熱であり、粘着剤層20が第2タイプの粘着剤層である場合、第2外部刺激は活性エネルギー線照射である。本工程では、被着体30に対する粘着剤層20の粘着力が上昇する。
次に、着色工程では、被着体30上の粘着剤層20に第1外部刺激を与える。粘着剤層20が第1タイプの粘着剤層である場合、第1外部刺激は活性エネルギー線照射であり、粘着剤層20が第2タイプの粘着剤層である場合、第1外部刺激は加熱である。本工程では、粘着剤層20において波長550nmでの可視光透過率が低下し、従って、粘着シートXの可視光透過率が低下する。これにより、図2Cに示すように、粘着剤層20が着色する。
本製造方法では、貼合せ工程より後であって着色工程および粘着力上昇工程より前に、粘着シートXの透明性が相対的に高い状態で、粘着シートXと被着体30の表面(被着面31)との間における異物や気泡の有無を検査することが可能である。その検査の結果、粘着シート貼合せ作業のやり直しが必要な場合、本製造方法では、着色工程および粘着力上昇工程より前に、粘着力が相対的に低い状態にある粘着シートXを被着面31から剥離することが可能であり、その後、別の粘着シートXを貼合せることができる(即ち、粘着シート貼合せ作業についてリワークすることができる)。そして、適切な貼合せ作業を経た粘着シートXについては、粘着力上昇工程を経ることによって、粘着剤層20において、その粘着力を上昇させて、被着面に対する高い接着信頼性を確保することが可能である。その後、着色工程を経ることによって粘着剤層20の透明性を低下させることができる。
以上のように、本製造方法は、粘着シート貼付品の製造過程において、粘着シートXの被着面31への貼り合わせに関して検査のしやすさとリワーク性とを確保するのに適するとともに、被着面31に貼り合わせられた粘着シートXおいて高接着信頼性および低透明性を実現するのに適する。
〔実施例1〕
〈ベースポリマーの調製〉
撹拌機、温度計、還流冷却器、および窒素ガス導入管を備える反応容器内で、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)63質量部と、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)15質量部と、メタクリル酸メチル(MMA)9質量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)13質量部と、重合開始剤としての2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2質量部と、溶媒としての酢酸エチル233質量部とを含む混合物(第1モノマー成分を含有する反応溶液)を、60℃で7時間、窒素雰囲気下で撹拌した(重合反応)。これにより、アクリルポリマー(ポリマーP1)を含有するポリマー溶液を得た。このポリマー溶液中のポリマーP1の重量平均分子量(Mw)は46万であった。
〈オルガノシロキサン構造含有ポリマーの調製〉
撹拌機、温度計、還流冷却器、窒素ガス導入管、および滴下ロートを備える四つ口フラスコに、メタクリル酸メチル(MMA)40質量部と、メタクリル酸n-ブチル(BMA)20質量部と、メタクリル酸2-エチルヘキシル(2EHMA)20質量部と、第1ポリオルガノシロキサン骨格含有メタクリレートモノマー(商品名:X−22−174ASX,官能基当量900g/mol,信越化学工業製)8.7質量部と、第2ポリオルガノシロキサン骨格含有メタクリレートモノマー(商品名:KF−2012,官能基当量4600g/mol,信越化学工業社製)11.3質量部と、連鎖移動剤としてのチオグリコール酸メチル0.51質量部と、溶剤としてのトルエン100質量部とを含む混合物(第2モノマー成分を含有する反応溶液)を、70℃で1時間、窒素雰囲気下で撹拌した後、当該混合物に熱重合開始剤としてのAIBN0.2質量部を加え、70℃で2時間、窒素雰囲気下で撹拌した(重合反応)。その後、反応混合物にAIBN0.1質量部を加え、80℃で5時間、窒素雰囲気下で撹拌した(重合反応)。このようにして、オルガノシロキサン構造含有ポリマー(ポリマーP2)を含有するポリマー溶液を得た。このポリマーP2のMwは22000であった。
〈粘着性組成物の調製〉
ポリマーP1を含有する上述のポリマー溶液に、ポリマーP1100質量部あたり、ポリマーP22質量部と、架橋剤(架橋剤C1)としてのイソシアネート系架橋剤(商品名:タケネートD110N,キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体,三井化学製)1.1質量部と、発色性化合物としてのロイコ系色素(商品名:BLACK ND1,山田化学工業製)1質量部と、光酸発生剤(商品名:CPI−310B,スルホニウムと(C6F5)4B−とのオニウム塩,サンアプロ社製)2質量部とを加えて混合して、粘着性組成物を得た。
〈粘着シートの作製〉
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上に、ファウンテンロールを使用して粘着性組成物を塗布して塗膜を形成した。次に、この塗膜について130℃で1分間の加熱乾燥を行い、PETフィルム上に厚さ25μmの粘着剤層を形成した。次に、PETフィルム上の粘着剤層に、セパレータ(表面がシリコーン離型処理された厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム)の離型処理面を貼り合わせた。その後、25℃で4日間のエージング処理を行い、粘着剤層中の架橋反応を進行させた。以上のようにして、実施例1の粘着シートを作製した。実施例1の粘着シートの粘着剤層における組成について、単位を質量部として表1に掲げる(後記の実施例および比較例についても同様である)。
〔実施例2〕
粘着性組成物の調製において、ロイコ系色素の配合量を1質量部に代えて2質量部としたこと、および、光酸発生剤の配合量を2質量部に代えて5質量部としたこと以外は、実施例1の粘着シートと同様にして、実施例2の粘着シートを作製した。
〔実施例3〕
粘着性組成物の調製において、ロイコ系色素の配合量を1質量部に代えて2質量部としたこと、および、光酸発生剤の配合量を2質量部に代えて7質量部としたこと以外は、実施例1の粘着シートと同様にして、実施例3の粘着シートを作製した。
〔実施例4〕
粘着性組成物の調製において、ベースポリマーとして上記ポリマーP1100質量部に代えて下記のポリマーP3100質量部を用いたこと、架橋剤として上記架橋剤C1に代えて架橋剤C2(商品名「テトラッドC」,1,3−ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン,三菱ガス化学社製)0.075質量部を用いたこと、ロイコ系色素の配合量を1質量部に代えて2質量部としたこと、および、光酸発生剤の配合量を2質量部に代えて7質量部としたこと以外は、実施例1の粘着シートと同様にして、実施例4の粘着シートを作製した。
〈ポリマーP3の調製〉
撹拌機、温度計、還流冷却器、窒素ガス導入管、および滴下ロートを備える反応容器内で、アクリル酸n-ブチル(BA)95質量部と、アクリル酸(AA)5質量部と、重合開始剤としての2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2質量部と、溶媒としての酢酸エチル233質量部とを含む混合物を、60℃で8時間、窒素雰囲気下で撹拌した(重合反応)。これにより、アクリルポリマー(ポリマーP3)を含有するポリマー溶液を得た。このポリマー溶液中のポリマーP3の重量平均分子量(Mw)は60万であった。
〔比較例1〕
粘着性組成物の調製においてロイコ系色素および光酸発生剤を用いなかったこと以外は実施例1の粘着シートと同様にして、比較例1の粘着シートを作製した。
〔比較例2〕
粘着性組成物の調製においてポリマーP2を用いなかったこと以外は実施例1の粘着シートと同様にして、比較例2の粘着シートを作製した。
<透過率>
実施例1〜4および比較例1,2の各粘着シートについて、透過率測定装置(商品名:分光光度計U4100,日立ハイテクノロジーズ社製)を使用して、波長550nmでの可視光透過率と、波長300〜700nmでの可視光平均透過率とを測定した(UV照射前の透過率)。また、実施例1〜4および比較例1,2の各粘着シートについて、紫外線を照射した後、上記透過率測定装置を使用して、波長550nmでの可視光透過率と、波長300〜700nmでの可視光平均透過率とを測定した(UV照射後の透過率)。紫外線照射においては、光源としてLEDランプを使用し、照射波長を365nmとし、照射光量を4000mJ/cm2とした。また、これら透過率測定では、光源とディテクターを備える透過率測定装置において、粘着シートの粘着剤層が光源側に位置し且つ同シートの基材がディテクター側に位置するように粘着シートを装置内に設置したうえで、測定を行った。
測定結果を表1に掲げる。
<第1粘着力>
実施例1〜4および比較例1,2の各粘着シートにおける粘着剤層について、次のようにして、初期粘着力としての第1粘着力を調べた。まず、粘着シートから試料片(幅25mm×長さ100mm)を切り出した。次に、試料片を被着体たるSUS板に貼り合わせ、2kgのローラーを1往復させる圧着作業によって試料片と被着体とを圧着させた。次に、25℃および相対湿度50%の環境下での30分間の放置(第1の放置)の後、引張試験機(商品名「オートグラフAGS-J」,島津製作所製)を使用して、SUS板に対する粘着シート試料片の180°剥離粘着力(N/25mm)を第1粘着力F1として測定した。本測定では、測定温度を25℃とし、SUS板に対する試料片の剥離角度すなわち引張角度を180°とし、試料片の引張速度を300mm/分とした。その結果を表1に掲げる。
<第2粘着力>
実施例1〜4および比較例1,2の各粘着シートにおける粘着剤層について、紫外線照射による着色後の第2粘着力を調べた。具体的には、上述の第1の放置の後、粘着シート試料片の粘着剤層に対する紫外線照射と、25℃および相対湿度50%の環境下での30分間の放置(第2の放置)とを更に経ること以外は、第1粘着力測定と同様にして、SUS板に対する粘着シート試料片の180°剥離粘着力(N/25mm)を第2粘着力F2として測定した。紫外線照射においては、光源としてLEDランプを使用し、照射波長を365nmとし、照射光量を4000mJ/cm2とした。測定結果を表1に掲げる。表1には、第1粘着力に対する第2粘着力の比率(F2/F1)も掲げる。
<第3粘着力>
実施例1〜4および比較例1,2の各粘着シートにおける粘着剤層について、紫外線照射による着色と加熱とを経た後の第3粘着力を調べた。具体的には、上述の第1の放置の後、粘着シート試料片の粘着剤層に対する紫外線照射と、上述の第2の放置と、80℃で5分間の粘着シート試料片の加熱とを更に経ること以外は、第1粘着力測定と同様にして、SUS板に対する粘着シート試料片の180°剥離粘着力(N/25mm)を第3粘着力F3として測定した。紫外線照射においては、光源としてLEDランプを使用し、照射波長を365nmとし、照射光量を4000mJ/cm2とした。測定結果を表1に掲げる。表1には、第1粘着力に対する第3粘着力の比率(F3/F1)も掲げる。