JP2021003527A - 生体親和性多孔質膜、バイオカプセルデバイスおよび生体親和性多孔質膜の製造方法 - Google Patents

生体親和性多孔質膜、バイオカプセルデバイスおよび生体親和性多孔質膜の製造方法 Download PDF

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広貴 佐久間
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Abstract

【課題】移植された細胞や組織の生存率を向上できる生体親和性多孔質膜、バイオカプセルデバイスおよび生体親和性多孔質膜の製造方法を提供する。【解決手段】本発明に係る生体親和性多孔質膜10は、多孔質樹脂基材11と、前記多孔質樹脂基材11の表面に共有結合した生体親和性素材12と、を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、生体親和性多孔質膜、バイオカプセルデバイスおよび生体親和性多孔質膜の製造方法に関する。
再生医療等における細胞・組織移植では、免疫細胞による治療用細胞への攻撃や表面の線維化のため移植の効果が長期間維持されないという問題がある。
このような問題に対し、例えば、特許文献1に、生存性ないし生きている組織を膜内に封入する方法が記載されている。特許文献1には、具体的には、当該方法が、A.前記組織に生理学上適合し得る水性媒質にしてしかも、(a)同じく前記組織に生理学上適合し得かつ(b)保形性凝集塊を形成すべくゲル化することのできる水溶性物質を含有する前記媒質に、微細な生存性組織を懸濁させ、B.得られた懸濁物を、組織を包封するのに十分な大きさの小滴に形成し、C.該小滴をゲル化して互いに分離せる保形性の一時的なカプセルを形成し、D.該一時的カプセルの周囲に耐久的な膜を形成する諸工程を含む方法が記載されている。また、この特許文献1には、一時的カプセルを形成するのに好適な材料としてアルギン酸のアルカリ金属塩が挙げられている。
特開昭55−157502号公報
特許文献1に記載の方法は、一時的カプセルの周囲に形成された膜が耐久性に優れている点で好ましいものである。しかしながら、特許文献1に記載の方法で形成された膜には、酸素や栄養分などを取り込み難く、また、分泌物や老廃物を排出し難いという欠点があった。つまり、特許文献1に記載の方法には、物質の透過性が低いという欠点があった。そして、そのために、特許文献1に記載の方法には、移植された細胞や組織が酸素不足や栄養不足などで死ぬことが多く、これらの生存率が低いという問題があった。
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、移植された細胞や組織の生存率を向上できる生体親和性多孔質膜、バイオカプセルデバイスおよび生体親和性多孔質膜の製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決した本発明に係る生体親和性多孔質膜は、多孔質樹脂基材と、前記多孔質樹脂基材の表面に共有結合した生体親和性素材と、を有する。
本発明によれば、移植された細胞や組織の生存率を向上できる生体親和性多孔質膜、バイオカプセルデバイスおよび生体親和性多孔質膜の製造方法を提供できる。
前述した以外の課題、構成および効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本実施形態に係る生体親和性多孔質膜の模式図である。 本実施形態に係るバイオカプセルデバイスの模式図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において参照する図面は、実施形態を概略的に示したものであるため、各部材のスケールや間隔、位置関係などが誇張、変形、または、部材の一部の図示が省略されている場合がある。また、模式図において、各部材のスケールや間隔が一致しない場合もある。なお、以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明はこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
本明細書に記載される「〜」は、その前後に記載される数値を下限値および上限値として有する意味で使用する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された下限値または上限値は、他の段階的に記載されている下限値または上限値に置き換えてもよい。
[生体親和性多孔質膜10]
図1は、本実施形態に係る生体親和性多孔質膜10の模式図である。本実施形態に係る生体親和性多孔質膜10は、免疫隔離膜として好適に用いられる。なお、図1は、本実施形態に係る生体親和性多孔質膜10を拡大して示しており、孔13が大きく描かれているが、その孔径は免疫細胞が通過できずに溶質(酸素、栄養、分泌物、老廃物など)が通過できる孔径であるのが好ましく、より好ましくは後述するように0.2μm〜1.0μm程度である。なお、分泌物および老廃物を代謝物ということがある。
また、図1では、本実施形態に係る生体親和性多孔質膜10を矩形のシートとして図示しているが、これに限定されない。なお、本明細書において、免疫隔離膜とは、免疫細胞と治療用の細胞102(図2参照)との隔離と、酸素、栄養、代謝物などの高い透過性と、を両立できる膜をいう。これらを両立させることによって、生体親和性多孔質膜10を用いて移植された細胞102や組織の生存率が向上する。
また、本実施形態に係る生体親和性多孔質膜10は、図2に示す細胞102を移植するために用いられる本実施形態に係るバイオカプセルデバイス100の外装部(容器101)を構成する必須要素である(バイオカプセルデバイス100については後述する)。免疫隔離膜として用いられるために要求される仕様として、移植した細胞102を移植先の免疫細胞から隔離する一方で、体液からの栄養および液性因子(例えば、酸素やグルコースなど)の取り込みや、移植した細胞102の代謝物および液性因子(例えば、乳酸やインスリンなど)の体液への流入を阻害しないことが挙げられる。
このような要求を満たすため、本実施形態に係る生体親和性多孔質膜10は、図1に示すように、多孔質樹脂基材11と、この多孔質樹脂基材11の表面に共有結合した生体親和性素材12と、を有することとしている。
多孔質膜とは、微細な孔(細孔)13が多数形成された膜をいう。このように、本実施形態に係る生体親和性多孔質膜10は、多孔質膜であるので、移植した細胞102を移植先の免疫細胞から隔離できるとともに、体液からの栄養および液性因子の取り込みや、移植した細胞102の代謝物および液性因子の体液への流入を阻害しない。なお、多孔質樹脂基材11に形成されている孔13は、後述するように、免疫細胞が通過できず、酸素、栄養、代謝物などの溶質が通過できる孔径(例えば、0.2μm〜1.0μm程度)であることが好ましい。このようにすると、より確実に酸素、栄養、代謝物などを移植先の免疫細胞から隔離できるとともに、体液からの栄養および液性因子の取り込みや、代謝物および液性因子の体液への流入を阻害しないようにできる。
<多孔質樹脂基材11>
多孔質樹脂基材11は、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリウレタン樹脂などを用いて形成できるが、用いることのできる樹脂はこれらに限定されない。生体親和性多孔質膜10を免疫隔離膜として用いる場合、具体的には、移植する細胞102を内部に封入したバイオカプセルデバイス100のような生体内に長期間埋め込む用途の場合、多孔質樹脂基材11を形成するための樹脂としてはポリエステル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂が好ましい。
<膜厚>
生体親和性多孔質膜10の膜厚は、体液からの栄養および液性因子の取り込みや、移植した細胞102の代謝物および液性因子の体液への流入を阻害しないこと、および、孔あけ加工の難易度の観点から薄い方が好ましい。生体親和性多孔質膜10の膜厚は、例えば、50μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましい。また、生体親和性多孔質膜10の膜厚は、例えば、0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。ただし、生体親和性多孔質膜10の膜厚が薄い場合には生体親和性多孔質膜10の強度や信頼性が低下するため、サポート材(図示せず)を生体親和性多孔質膜10と組み合わせて強度を確保してもよい。サポート材としては、孔径が十分大きく、体液からの栄養および液性因子の取り込みや、移植した細胞102の代謝物および液性因子の体液への流入を阻害しない一方で、強度が十分あり免疫隔離膜としての強度を増大させる部材であればどのようなものでも用いることができる。サポート材としては、例えば、10μm以上の孔径を有する高密度ポリエチレン多孔質膜などを用いることができる。
<表面処理>
生体親和性多孔質膜10は、生体内での長期間の信頼性を確保するため、多孔質樹脂基材11の表面に生体親和性素材12が付与されている。生体親和性素材12の付与方法としては共有結合を介さずに生体親和性素材12を導入する物理的手段と、共有結合を介して導入する化学的手段が考えられるが、前記信頼性の観点から、化学的手段が適している。
化学的手段は、多孔質樹脂基材11の表面に活性点(化学反応の基点、反応活性種、ラジカルなどとも呼ばれている)を形成し、その活性点に対して後記する生体親和性素材12を共有結合させるものである。このようにすることで、化学的手段は、多孔質樹脂基材11の表面に親水性の素材(生体親和性素材12)を付与することができる。
活性点の形成方法としては、例えば、紫外光照射、電子線照射、放射線(γ線)照射などが挙げられる。活性点の形成効率、処理後の基材表面粗さ、多孔質樹脂基材11の機械的強度の観点から、紫外光照射による活性点の形成が適している。紫外光照射で活性点を形成して何らかの素材を重合させる手法は紫外光照射グラフト重合法などと呼ばれている。紫外光照射によるエネルギーは、多孔質樹脂基材11の樹脂の化学結合を切るか切らないか程度の弱いものであるので、紫外光が照射されることによって受ける多孔質樹脂基材11のダメージは軽微である。また、紫外光照射によるエネルギーは、前記したように弱いものであるので、紫外光照射によって改質・変質される(すなわち、化学結合が切られる)深さは浅く、多孔質樹脂基材11のごく表面しか改質・変質を受けない。そのため、多孔質樹脂基材11が劣化し難く、生体親和性多孔質膜10を生体内で長期間使用するのに好適である。
紫外光照射による活性点形成のために紫外光を照射する場合、多孔質樹脂基材11に直接照射してもよいが、多孔質樹脂基材11の表面に光増感剤層(図示せず)を形成した上で紫外光照射をしてもよい。光増感剤層を形成してから紫外光を照射すると、より効率的に活性点を形成できる。光増感剤層を形成する材料としては、例えば、キサントンや過酸化ベンゾイルなどを用いることができるが、紫外光を吸収しラジカルを発生する材料であればこれらに限定されない。また、1段階での反応に限らず、グリシジルアクリレートのような反応性官能基を有するモノマ(図示せず)を導入した後に別のモノマ(図示せず)を作用することで生体親和性素材12を導入する手法(Tsuneda S, Saito K, Sugo T and Makuuchi K: Radiat. Phys. Chem., 46 239 (1995))などが考えられる。
<紫外光光源>
照射する紫外光は、波長140nm〜400nmの範囲内において、照射対象となる多孔質樹脂基材11や光増感剤にあわせて選択することができる。紫外光光源としては、例えば、エキシマーランプ、重水素ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、UV−LEDなどを用いることができるが、前記波長を発生させることが可能であればこれらに限定されない。
<生体親和性素材12>
免疫隔離膜として機能する生体親和性多孔質膜10の内外の栄養、代謝物、液性因子などの交換は間質液を介して行われるため、生体親和性多孔質膜10の表面は親水性を有している必要がある。また、生体親和性多孔質膜10を用いたバイオカプセルデバイス100が移植先で長期間治療効果を発現するために、多孔質樹脂基材11の表面での炎症や線維化を抑制し、毛細血管を多孔質樹脂基材11近傍まで誘引することが求められている。
生体親和性素材12を多孔質樹脂基材11の表面に共有結合させることで、前述の親水性の付与、線維化抑制、炎症抑制、血管新生などの効果を当該表面に付与できる。これらの効果を得るため、生体親和性素材12としては、メトキシエチルアクリレート(MEA)、ホスホリルコリン誘導体(例えば、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)など)、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルラジカル誘導体、ヒドロキシエチルメタクリレート誘導体、これらの重合体およびこれらの共重合体の群から選択される少なくとも一種を用いることが好ましいが、これらに限定されない。前記生体親和性素材12は単独で用いてもよいが、複数の効果が発現するのを狙って複数種混合して用いてもよい。
生体親和性素材12は、多孔質樹脂基材11の少なくとも一方の表面に共有結合していればよいが、生体親和性多孔質膜10をバイオカプセルデバイス100とした場合に、線維化抑制、炎症抑制、血管新生などの効果をより高く得るため、少なくともバイオカプセルデバイス100の外側となる表面に共有結合していることが好ましい。なお、生体親和性多孔質膜10の両方の表面に生体親和性素材12を共有結合させると、バイオカプセルデバイス100とした場合に、バイオカプセルデバイス100に内包された細胞102が生体親和性多孔質膜10に近付き易くなるので、生体親和性多孔質膜10の内外の栄養、代謝物、液性因子などの交換をより効率的に行うことができるようになる。
<細孔>
前述の通り、生体親和性多孔質膜10の内外の栄養、代謝物、液性因子などの交換のために多孔質樹脂基材11には多数の孔13が形成されている。必ずしも均一な孔径の孔13を備える必要はないため目安程度ではあるが、望ましい孔径は0.2μm〜1.0μm程度である。また、孔13の密度(開口率)は高い方が間質液の交換効率が高いため好ましい。開口率は、例えば、20%以上70%以下とすることが好ましく、30%以上50%以下とすることがより好ましい。このようにすると、生体親和性多孔質膜10の内外の栄養、代謝物、液性因子などの交換をよりスムーズに行うことができる。多孔質樹脂基材11における孔13の形成法としては、例えば、相分離法、延伸法、フォトリソグラフィ法でパターニングしエッチングで孔形成する方法、ナノインプリント法、トラックエッチング法などが挙げられるが、これらに限定されない。
[バイオカプセルデバイス100]
次に、図2を参照して、本実施形態に係るバイオカプセルデバイス100について説明する。
図2は、本実施形態に係るバイオカプセルデバイス100の模式図である。
図2に示すように、本実施形態に係るバイオカプセルデバイス100は、前述した生体親和性多孔質膜10を用いたものである。具体的には、図2に示すように、本実施形態に係るバイオカプセルデバイス100は、前述した生体親和性多孔質膜10で容器101を形成し、その中に所望の細胞102を内包させたものである(カプセル化したものである)。
細胞102としては、例えば、全能性幹細胞、多能性幹細胞、単能性幹細胞(例えば、神経幹細胞、上皮幹細胞、肝幹細胞、生殖幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、骨格筋幹細胞など)、人工多能性幹細胞などの幹細胞や、これらの幹細胞が分化してなる各種細胞(例えば、神経細胞、肝細胞、筋肉細胞、白血球など)などが挙げられる。細胞102は、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ラット、マウス、トリなどの動物から得ることもできる。また、細胞102は、前記したものに限定されず、真正細菌、古細菌、藻類、原生生物などの微生物の細胞や植物細胞なども用いることができる。細胞102として、好ましくは、例えば、インスリン産生細胞、単離された膵島、間葉系幹細胞などが挙げられる。なお、本実施形態においては、細胞102の由来、種類、フェノタイプ、遺伝子改変の有無、継代数などは限定されない。また、細胞102は、浮遊細胞、接着細胞、シングル(単一)細胞、細胞シート、オルガノイドなどの性質・形態も限定されない。また、細胞102の用途も限定されない。細胞102は、任意のゲルや培養していた寒天培地や液体培地とともにバイオカプセルデバイス100に内包させることもできる。
本実施形態に係るバイオカプセルデバイス100は、孔13の細孔径を所定の範囲、例えば、前記したように0.2μm〜1.0μmとすることにより、免疫隔離膜として極めて有効に機能する。
容器101は、生体親和性多孔質膜10を袋状に加工した形態や、枠に生体親和性多孔質膜10を固定した形態などとすることができる。容器101は、その一部または全体に生体親和性多孔質膜10が用いられていればよい。また、前記袋状とする加工のために物理的な封止や生体適合性の接着剤を用いることができる。物理的な封止とは、例えば、熱圧着や折り込み、枠のはめ込みなどである。また、生体適合性の接着剤とは、生体適合性の熱可塑性樹脂や医療用接着剤、手術用接着剤、止血剤などであり、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、スチレン−イソブチレン共重合体(SIB)、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(SIBS)、ポリアミド合成樹脂(例えば、ナイロン(登録商標)など)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)などである。物理的な封止や熱可塑性樹脂を用いる場合、全体もしくは局所の加熱が必要になるが、オーブン、ヒートシーラー、超音波溶着機などを用いることができる。
本実施形態に係るバイオカプセルデバイス100の寸法は、例えば、縦30mm×横50mm×高さ5mmなどとできるが、移植部位や用途に応じてその寸法や形状は任意に設定でき、これに限定されない。
本実施形態に係るバイオカプセルデバイス100は、例えば、2枚の生体親和性多孔質膜をあわせ、その三辺を封止した後、開口部より細胞を注入しその部分を封止する方法や生体親和性多孔質膜を筐体に貼り付けて作製した空デバイスに針付シリンジを用いて細胞を注入する方法などによって、容器101の内部に細胞102を内包させることができる。
[生体親和性多孔質膜10の製造方法]
次に、本実施形態に係る生体親和性多孔質膜10の製造方法(以下、単に「本製造方法」ということがある)について説明する。
本製造方法は、多孔質樹脂基材11の表面に紫外光照射グラフト重合法で生体親和性素材12を共有結合させるというものである。このようにすると、紫外光を照射することによって多孔質樹脂基材11の表面に活性点を形成でき、さらに当該活性点に生体親和性素材12を共有結合できる。本製造方法は、このようにして前述した本実施形態に係る生体親和性多孔質膜10を製造できる。
また、本製造方法は、紫外光照射グラフト重合法を行う前に、多孔質樹脂基材11の表面に予め光増感剤層(図示せず)を形成しておくことが好ましい。このようにすると、これに次いで行う紫外光の照射で活性点をより効率的に形成できる。
光増感剤層は、紫外光を照射して生体親和性素材12をグラフト重合させた後(共有結合させた後)、適宜の溶媒などを用いて除去するとよい。また、光増感剤層を除去した後は、必要に応じて乾燥等するとよい。
以上に説明した本実施形態に係る生体親和性多孔質膜10、バイオカプセルデバイス100によれば、多孔質樹脂基材11の表面に共有結合した生体親和性素材12を有しているので、移植された細胞102や組織の生存率を向上できる。
また、本実施形態に係る生体親和性多孔質膜10の製造方法によれば、移植された細胞102や組織の生存率を向上できる生体親和性多孔質膜10を確実に製造できる。
次に、実施例および比較例を示しながら、本発明の効果を説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
多孔質樹脂基材としてポリエステル(PET)膜にトラックエッチングによって細孔径0.4μmの孔を形成したものを用いた。また、生体親和性素材としてはメトキシエチルアクリレート(MEA)を用いた。
表面処理は、(1)光増感剤層の形成、(2)紫外光照射下でのグラフト重合の2段階で行った。具体的には次のようにして行った。
まず、光増感剤であるキサントンのアセトン溶液に多孔質樹脂基材を浸漬し、次いで、これを乾燥させることで多孔質樹脂基材の表面に光増感剤層を形成した。
その後、水/アセトン/MEA(質量比で50/8/5)からなる反応溶液を調整し、脱気を行った後、光増感剤層を形成した多孔質樹脂基材を当該反応溶液中に浸漬させた。
そして、前記光増感剤層を形成した多孔質樹脂基材を浸漬させた反応容器を2kWの高圧水銀ランプを光源とする紫外光照射装置内に設置した。
そして、反応溶液を60℃に加温した後、紫外光を2時間照射してグラフト重合を行った。なお、照射エリア内の照度は9.5mW/cmとした。
紫外光照射後、トルエンで洗浄することにより、光増感剤層を除去した。その後、乾燥させることで、多孔質樹脂基材の表面に生体親和性素材を共有結合した実施例1に係る生体親和性多孔質膜を得た。
〔実施例2〕
多孔質樹脂基材として相分離法によって細孔径0.5μmの孔を形成したポリエーテルエーテルケトン(PEEK)膜を用いた。なお、相分離法によって形成される孔は、孔径に分布が生じるため、前記細孔径0.5μmは、分布の中心孔径が0.5μmであることを示している。実施例2では、生体親和性素材として、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)を用いた。
表面処理は光増感剤を用いず、紫外光照射下のグラフト重合のみで行った。
水/アセトン/MPC(質量比で50/8/5)からなる反応溶液を調整し、脱気を行った後、多孔質樹脂基材を反応溶液中に浸漬させた。
そして、前記多孔質樹脂基材を浸漬させた反応容器を2kWの高圧水銀ランプを光源とする紫外光照射装置内に設置した。
そして、反応溶液を60℃に加温した後、紫外光を2時間照射してグラフト重合を行った。なお、照射エリア内の照度は9.5mW/cmとした。
紫外光照射後、トルエンで洗浄し、乾燥を行い、多孔質樹脂基材の表面に生体親和性素材を共有結合した実施例2に係る生体親和性多孔質膜を得た。
〔比較例1〕
多孔質樹脂基材としてポリエステル(PET)膜にトラックエッチングによって細孔径0.4μmの細孔を形成したものを用いた。その後、表面に生体親和性素材を共有結合させる表面処理を行わずに、比較例1に係る生体親和性多孔質膜として用いた。
〔比較例2〕
多孔質樹脂基材としてポリエステル(PET)膜にトラックエッチングによって細孔径12μmの細孔を形成したものを用いた。その後、表面に生体親和性素材を共有結合させる表面処理を行わずに、比較例2に係る生体親和性多孔質膜として用いた。
〔物質透過性および細胞非透過性〕
前記のようにして得た実施例1、2および比較例1、2に係る生体親和性多孔質膜を用いて物質および細胞の透過性評価を以下の手順に従って行った。
得られた生体親和性多孔質膜を直径25mmの円形に切断し、12ウェル用インサートに固定した。その後、オートクレーブで滅菌処理を行い、培地をプレートにセットした。そして、評価対象の物質および細胞をインサート内に注入し、インキュベータ内で所定時間培養した。
なお、物質透過性の評価には、蛍光性デキストラン(分子量:10000)を用い、インサート内外の培地の蛍光強度から透過量を見積もった。物質透過性の評価は、透過率50%以上のものを良好(○)と評価し、10%以上50%未満のものを普通(△)と評価し、10%未満のものを不良(×)と評価した。「○」が合格であり、「△」および「×」が不合格である。
また、細胞非透過性の評価には、V−79線維芽細胞を使用し、インサート外の細胞の有無を確認した。細胞非透過性の評価は、インサート外に細胞がなかったものを良好(○)と評価し、インサート外に細胞があったものを不良(×)と評価した。「○」が合格であり、「×」が不合格である。
実施例1、2および比較例1、2に係る生体親和性多孔質膜の物質透過性および細胞非透過性の評価結果を表1に示す。
Figure 2021003527
表1に示すように、実施例1、2に係る生体親和性多孔質膜は、物質透過性が高く、細胞非透過性に優れていることが確認された。従って、本発明の要件を満たす生体親和性多孔質膜は、免疫隔離膜として有用であることが確認された。つまり、本発明の要件を満たす生体親和性多孔質膜は、免疫細胞と治療用細胞の隔離と、酸素や分泌物等の高い透過性を両立する免疫隔離膜として提供できることが確認された。
一方、比較例1に係る生体親和性多孔質膜は、表面に生体親和性素材を共有結合させていないので、物質透過性が劣っていることが確認された。
また、比較例2に係る生体親和性多孔質膜は、細孔の細孔径が大き過ぎたので、細胞非透過性が劣っていることが確認された。
従って、本発明の要件を満たさない生体親和性多孔質膜は、免疫隔離膜として有用でないことが確認された。
以上、本発明に係る生体親和性多孔質膜、バイオカプセルデバイスおよび生体親和性多孔質膜の製造方法について実施形態および実施例により詳細に説明したが、本発明の主旨はこれに限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
10 生体親和性多孔質膜
11 多孔質樹脂基材
12 生体親和性素材
13 孔
100 バイオカプセルデバイス
101 容器
102 細胞

Claims (9)

  1. 多孔質樹脂基材と、
    前記多孔質樹脂基材の表面に共有結合した生体親和性素材と、
    を有する生体親和性多孔質膜。
  2. 請求項1において、
    前記多孔質樹脂基材の少なくとも一方の表面に前記生体親和性素材を有する生体親和性多孔質膜。
  3. 請求項1において、
    前記多孔質樹脂基材が、ポリエステル樹脂およびポリエーテルエーテルケトン樹脂のうちの少なくとも一方である生体親和性多孔質膜。
  4. 請求項1において、
    前記生体親和性素材が、メトキシエチルアクリレート、ホスホリルコリン誘導体、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルラジカル誘導体、ヒドロキシエチルメタクリレート誘導体、これらの重合体およびこれらの共重合体の群から選択される少なくとも一種である生体親和性多孔質膜。
  5. 請求項1において、
    前記多孔質樹脂基材の細孔径が0.2μm以上1.0μm以下である生体親和性多孔質膜。
  6. 請求項1から5のうちのいずれか1項に記載の生体親和性多孔質膜を用いたバイオカプセルデバイス。
  7. 請求項6において、
    前記生体親和性多孔質膜を免疫隔離膜として用いたバイオカプセルデバイス。
  8. 多孔質樹脂基材の表面に紫外光照射グラフト重合法で生体親和性素材を共有結合させる生体親和性多孔質膜の製造方法。
  9. 請求項8において、
    前記多孔質樹脂基材の表面に予め光増感剤層を形成する生体親和性多孔質膜の製造方法。
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