JP2021001629A - 軸受部材およびこれを備えた流体動圧軸受装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】高強度でラジアル軸受面の寸法精度に優れた焼結金属製の軸受部材を提供する。【解決手段】円筒状の焼結体からなり、内周面8aの軸方向に離間した二箇所にサイジングにより成形されたラジアル軸受面Aを有する軸受部材8であって、焼結体は、それぞれがラジアル軸受面Aを有する一対の第1円筒部81と、両第1円筒部81と軸方向に接触した状態で両第1円筒部81と共に焼結された第2円筒部82とを備える。両円筒部81,82は、20〜60質量%の銅を含有し、かつ鉄組織が、銅と錫の合金組織を介して結合された銅鉄系の焼結金属からなり、第2円筒部82に占める銅の質量比を第1円筒部81に占める銅の質量比よりも低くすると共に、第2円筒部82に占める錫の質量比を第1円筒部81に占める錫の質量比よりも高くした。【選択図】 図3
Description
本発明は、軸受部材およびこれを備えた流体動圧軸受装置に関する。
HDD等のディスク駆動装置に組み込まれるスピンドルモータ、PC等に組み込まれるファンモータ、あるいはレーザビームプリンタに組み込まれるポリゴンスキャナモータなどの小型モータ用の軸受装置として重用されている流体動圧軸受装置は、ラジアル軸受隙間に形成される油膜で支持すべき軸をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部を備える。このラジアル軸受部は、流体動圧軸受装置(モータ)のトルク上昇を抑えつつ、高い荷重負荷能力(特にモーメント荷重に対する負荷能力)を確保するため、流体動圧軸受装置の軸方向に離間した二箇所に設けられる場合が多い。
ラジアル軸受部が形成されるラジアル軸受隙間は、通常、円筒状の軸受部材に設けられたラジアル軸受面によって形成される。そのため、ラジアル軸受部を軸方向に離間した二箇所に設ける場合、軸受部材の軸方向に離間した二箇所にラジアル軸受面が設けられる。
軸受部材としては、加工性(量産性)やラジアル軸受隙間での油膜形成能力に優れた金属焼結体からなる、いわゆる焼結軸受が重用されている。但し、例えば、支持すべき軸が長寸であるが故に、軸受部材を軸方向に長寸化する必要があるような場合には、所定の密度や機械的強度等を有する焼結体(の基材である圧粉体)を容易にかつ安定的に得るために、複数の焼結体が結合一体化された軸受部材を採用する場合がある。例えば、下記の特許文献1には、それぞれがラジアル軸受面を有する二つの焼結体を結合一体化してなる軸受部材や、それぞれがラジアル軸受面を有する二つの焼結体と、これら二つの焼結体の間に配置されたラジアル軸受面を有さない円筒体とを備え、これら三つの部材を結合一体化してなる軸受部材が開示されている。
特許文献1では、軸方向に連ねて同軸配置した複数の焼結体に対してまとめてサイジングを施すことにより、ラジアル軸受面を軸方向に離間した二箇所に成形するのと同時に、隣り合う二つの部材同士を結合一体化するようにしている。しかしながら、所望の寸法・形状精度を有するラジアル軸受面と、所望の結合強度を有する結合部とをサイジングによって同時に得るのは容易ではない。そのため、所望のラジアル軸受面の寸法精度や部材同士の結合強度(軸受部材全体としての強度)を確保することができず、支持すべき軸を安定的に支持することができないおそれがある。
そこで、本発明の目的は、軸方向に離間した二箇所にラジアル軸受面が設けられる焼結金属製の軸受部材において、これを軸方向に長寸化(二つのラジアル軸受面の離間距離を拡大)した場合であっても、必要とされる強度や各ラジアル軸受面の寸法・形状精度を確保可能とし、もって支持すべき軸を精度良く支持可能な軸受部材を提供することにある。
上記の目的を達成するために創案された本発明に係る軸受部材は、円筒状の焼結体からなり、内周面の軸方向に離間した二箇所にサイジングにより成形されたラジアル軸受面を有する軸受部材であって、上記焼結体は、それぞれがラジアル軸受面を有する一対の第1円筒部と、両第1円筒部の間に介在し、両第1円筒部と軸方向に接触した状態で両第1円筒部と共に焼結された第2円筒部とを備え、第1円筒部および第2円筒部は、何れも、20〜60質量%の銅を含有し、かつ鉄組織が銅および銅よりも低融点の物質の合金組織を介して結合された銅鉄系の焼結金属からなり、第2円筒部に占める銅の質量比を第1円筒部に占める銅の質量比よりも低くすると共に、第2円筒部に占める低融点物質の質量比を第1円筒部に占める低融点物質の質量比よりも高くしたことを特徴とする。なお、ここでいう「ラジアル軸受面」とは、支持すべき軸の外周面との間にラジアル軸受隙間を形成する面を意味し、この面に動圧溝等の動圧発生部が形成されているか否かは問わない。
上記構成の軸受部材(円筒状の焼結体)は、個別に作製した両円筒部の基材である圧粉体を軸方向に連ねて配置したアセンブリを加熱・焼結することにより得られ、ラジアル軸受面は、この焼結体にサイジング加工(寸法矯正加工)を施すことによって得られる。この場合、軸受部材の強度(第1円筒部と第2円筒部の結合強度)およびラジアル軸受面の寸法・形状精度は、それぞれ、焼結処理の処理条件およびサイジング加工の加工条件に大きく依存することになるので、ラジアル軸受面の成形と部材同士の結合とをサイジング加工でまとめて行っていた従来構成に比べ、必要とされる強度やラジアル軸受面の寸法精度を容易にかつ安定的に確保することができる。
また、第1円筒部および第2円筒部を、何れも、20〜60質量%の銅を含有し、かつ鉄組織が銅および銅よりも低融点の物質の合金組織を介して結合された銅鉄系の焼結金属で構成し、さらには、第2円筒部に占める銅の質量比を第1円筒部に占める銅の質量比よりも低くすると共に、第2円筒部に占める低融点物質の質量比を第1円筒部に占める低融点物質の質量比よりも高くしている。この場合、第1円筒部と第2円筒部とを対比すると、第2円筒部においては、低融点物質の含有率が第1円筒部のそれよりも高い銅−低融点物質の合金組織、つまり高強度の金属組織を介して鉄組織同士を結合することができるので、一対の第1円筒部を、第1円筒部よりも高強度の第2円筒部を介して結合することができる。このため、軸受部材全体としての強度を高めることができる。その一方、第1円筒部を銅の質量比率が比較的大きい銅鉄系の焼結金属で形成し、かつ第1円筒部に占める銅の質量比を第2円筒部に占める銅の質量比よりも高く、また、第1円筒部に占める錫の質量比を第2円筒部に占める錫の質量比よりも低くしているので、第1円筒部の金属組織は、第2円筒部の金属組織よりも軟質でかつ摺動性に優れた銅リッチの金属組織となる。これにより、変形容易性を高めて高精度のラジアル軸受面を容易に成形することができる他、支持すべき軸との摺動性に優れたラジアル軸受面を得ることができるので、支持すべき軸を精度良く支持することができる。
上記の低融点物質としては、例えば、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、リン(P)等を使用することができ、この中でも銅との相性(銅に対する濡れ性)や取り扱い性に優れた錫を使用するのが好ましい。このとき、第2円筒部、ひいては軸受部材全体の高強度化を図る観点から言えば、第2円筒部には、銅に対して15質量%以上の錫を含めるのが好ましい。但し、銅に対する錫の質量比率をあまりに高めると、銅−錫合金の強度・硬度が却って低下する懸念がある。そのため、銅に対する錫の質量比の上限は20%程度とするのが好ましい。
上記構成において、第2円筒部の気孔率を第1円筒部の気孔率よりも高くする(換言すると、第2円筒部を第1円筒部よりも低密度にする)ことができる。このようにすれば、軸受部材をいわゆる含油軸受として使用する場合、第2円筒部の多孔質組織内で多くの潤滑油を保持することができるので、ラジアル軸受隙間における油量不足(ラジアル軸受隙間での油膜切れ)に起因した軸受性能の低下を防止する上で有利となる。
第1円筒部の内部気孔と第2円筒部の内部気孔とを互いに連通させておけば、軸受部材をいわゆる含油軸受として使用する場合、両円筒部間で潤滑油を行き来させることができる。この場合、ラジアル軸受隙間における油量不足や潤滑油の特性変化等に起因した軸受性能の低下を防止する上で有利となる。
第2円筒部の内径寸法は、第1円筒部の内径寸法(第1円筒部に設けられるラジアル軸受面)の内径寸法よりも大きくすることができる。このようにすれば、第2円筒部と支持すべき軸との間に、いわゆる中逃げ部を形成することができるので、軸受部材と支持すべき軸とが相対回転する際の回転トルクを低減することができる。このとき、第2円筒部の外径寸法と第1円筒部の外径寸法とを同寸にしておけば、第1および第2円筒部の外周面を基準として両円筒部間での芯出しがなされた軸受部材を得ることができる。
また、第2円筒部の外径寸法は、第1円筒部の外径寸法よりも小さくすることができる。このようにすれば、例えば軸受部材の外周面を流体動圧軸受装置のハウジングに固定すると、第2円筒部とハウジングとの間に円筒状空間を画成することができる。この円筒状空間は、例えば潤滑油を貯留する潤滑油溜りとして活用することができる。このとき、第2円筒部の内径寸法と第1円筒部(に設けられるラジアル軸受面)の内径寸法とを同寸にしておけば、第1および第2円筒部の内周面を基準として両円筒部間での芯出しがなされた軸受部材を得ることができる。
以上で説明した本発明に係る軸受部材と、この軸受部材を内周に保持したハウジングとを備えた流体動圧軸受装置は、本発明に係る軸受部材が上述したような作用効果を奏し得るものであることから、支持すべき軸が長寸であっても、これを精度良く支持することができる。
以上より、本発明によれば、軸方向に離間した二箇所にラジアル軸受面が設けられる焼結金属製の軸受部材において、これを軸方向に長寸化(二つのラジアル軸受面の離間距離を拡大)した場合であっても、必要とされる強度や各ラジアル軸受面の寸法・形状精度を確保することができる。これにより、支持すべき軸を精度良く支持することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に、スピンドルモータの一例を概念的に示す。同図に示すスピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるものであって、流体動圧軸受装置1と、流体動圧軸受装置1の軸部材2に固定されたディスクハブ3と、径方向隙間を介して対向するステータコイル4およびロータマグネット5と、内周に流体動圧軸受装置1のハウジング7を固定したモータベース6とを備える。ロータマグネット5はディスクハブ3に固定され、ステータコイル4はモータベース6に固定されている。ディスクハブ3には、所定枚数(図示例では2枚)のディスクDが保持されている。このような構成を有するスピンドルモータにおいて、ステータコイル4に通電すると、ステータコイル4とロータマグネット5との間の電磁力でロータマグネット5が回転し、これに伴って軸部材2、ディスクハブ3およびディスクDが一体的に回転する。
図2に、本発明の一実施形態に係る軸受部材を備えた流体動圧軸受装置1の一例を示す。以下では、説明の便宜上、図2の紙面下側を「下側」、図2の紙面上側を「上側」と言うが、流体動圧軸受装置1の使用態様を限定するものではない。図2に示す流体動圧軸受装置1は、軸部材2と、ハウジング7と、ハウジング7の内周に固定的に保持された円筒状の軸受部材8と、ハウジング7の下端開口部を閉塞する蓋部材9とを備える。ハウジング7の内部空間には、流体としての潤滑油(密な散点ハッチングで示す)が充填されている。
軸部材2は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料で形成され、軸部2aと、軸部2aの下端に一体又は別体に設けられたフランジ部2bとを有する。軸部2aは、軸受部材8の内周に挿入され、フランジ部2bは、ハウジング7、軸受部材8および蓋部材9の間に画成される空間内に配置される。
ハウジング7は、金属材料又は樹脂材料で形成され、円筒状の筒部7aと、筒部7aの上側に配置され、筒部7aよりも径方向内側に突出した短円筒状のシール部7bとを一体に有する。
シール部7bの内周面7b1は、下方に向けて漸次縮径したテーパ面状に形成されており、対向する軸部材2の軸部2aの外周面2a1との間に、下方に向けて漸次縮径したくさび状のシール空間Sを形成している。シール空間Sは、ハウジング7の内部空間に充填された潤滑油の温度変化に伴う容積変化量を吸収するバッファ機能を有し、想定される温度変化の範囲内で潤滑油の油面を常にシール空間Sの軸方向範囲内に保持する。図示は省略するが、くさび状のシール空間Sは、径一定の円筒面状に形成されたシール部7bの内周面7b1と、上方に向けて漸次縮径するテーパ面状に形成された軸部2aの外周面2a1とで形成することもできる。
軸受部材8は、焼結金属の多孔質体からなり、本実施形態ではその上端面をシール部7bの下端に当接させた状態でハウジング7の筒部7aの内周面に適宜の手段で固定されている。この軸受部材8の内部気孔には、ハウジング7の内部空間に充填した潤滑油と同種の潤滑油が含浸している。
図3に示すように、軸受部材8の内周面8aには、対向する軸部材2の外周面2a1との間にラジアル軸受隙間を形成する円筒状のラジアル軸受面Aが上下に離間した二箇所に設けられている。二つのラジアル軸受面Aのそれぞれには、ラジアル軸受隙間内の潤滑油に動圧作用を発生させるための動圧発生部(ラジアル動圧発生部)が設けられている。図示例のラジアル動圧発生部は、軸方向に対して傾斜し、周方向に離間して設けられた複数の上側動圧溝Aa1と、上側動圧溝Aa1とは反対方向に傾斜し、周方向に離間して設けられた複数の下側動圧溝Aa2と、両動圧溝Aa1,Aa2を区画する凸状の丘部(図中クロスハッチングで示す)とで構成され、丘部は全体としてヘリングボーン形状に形成されている。すなわち、凸状の丘部は、周方向で隣り合う動圧溝間に設けられた傾斜丘部Abと、上下の動圧溝Aa1,Aa2間に設けられた環状丘部Acとからなる。
軸受部材8の下端面8bには、対向するフランジ部2bの上端面2b1との間にスラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間を形成する円環状のスラスト軸受面Bが設けられており、このスラスト軸受面Bには、スラスト軸受隙間内の潤滑油に動圧作用を発生させるためのスラスト動圧発生部が設けられている。図示は省略するが、スラスト動圧発生部は、例えばスパイラル形状の動圧溝と、動圧溝を区画する凸状の丘部とを周方向に交互に配して構成される。詳細は後述するが、ラジアル軸受面Aおよびスラスト軸受面Bは、軸受部材8(軸受素材8’:図6(a)参照)にサイジングを施すのと同時に型成形されている。従って、ラジアル軸受面Aおよびスラスト軸受面Bは、サイジングにより成形された成形面とされる。
蓋部材9は、金属材料又は樹脂材料で円板状に形成され、ハウジング7の筒部7aの内周面に適宜の手段で固定される。蓋部材9の上端面9aは円環状のスラスト軸受面Cを有し、このスラスト軸受面Cには、スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間内の潤滑油に動圧作用を発生させるためのスラスト動圧発生部が形成されている。図示は省略するが、このスラスト動圧発生部は、例えば、スラスト軸受面Bに設けられるスラスト動圧発生部と同様に、スパイラル形状の動圧溝と、動圧溝を区画する凸状の丘部とを周方向に交互に配して構成される。
以上の構成を有する流体動圧軸受装置1において、軸部材2が回転すると、軸受部材8の内周面8aに設けられたラジアル軸受面A,Aと、これに対向する軸部材2の外周面2a1との間にラジアル軸受隙間がそれぞれ形成される。また、軸部材2が回転すると、軸部材2の回転に伴う圧力(負圧)の発生と昇温による潤滑油の熱膨張により、軸受部材8の内部気孔に含浸させた潤滑油が軸受部材8の表面開孔を介して軸受部材8の外部に次々と滲み出す。軸受部材8から滲み出た潤滑油は、ラジアル軸受隙間に引き込まれて油膜を形成し、この油膜の圧力がラジアル動圧発生部の動圧作用によって高められる。これにより、軸部材2をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部R1,R2が軸方向の二箇所に離間して形成される。
これと同時に、軸受部材8の下端面8bに設けたスラスト軸受面Bとこれに対向するフランジ部2bの上端面2b1との間、および蓋部材9の上端面9aとこれに対向するフランジ部2bの下端面2b2との間にスラスト軸受隙間がそれぞれ形成される。そして、軸部材2の回転に伴い、両スラスト軸受隙間に形成される油膜の圧力がスラスト動圧発生部の動圧作用によって高められる。これにより、軸部材2を両スラスト方向に非接触支持するスラスト軸受部T1,T2が形成される。
以下、上記の流体動圧軸受装置1で採用している本発明の一実施形態に係る軸受部材8について詳細に説明する。
軸受部材8は、それぞれが上記のラジアル軸受面Aを有する一対の第1円筒部81,81と、両第1円筒部81,81の間に介在し、内周面が凹凸のない平滑な円筒面に形成された第2円筒部82とを備える。本実施形態において、第1円筒部81(に設けたラジアル軸受面A)の内径寸法と第2円筒部82の内径寸法は同寸であり、また、第1円筒部82の外径寸法と第2円筒部82の外径寸法は同寸である。
第2円筒部82は、両第1円筒部81,81と軸方向に接触した状態で両第1円筒部81,81と共に焼結されている。要するに、軸方向に離間して配置された一対の第1円筒部81,81は、これらと共に焼結された第2円筒部82を介して結合一体化している。そのため、一対の第1円筒部81の内部気孔と第2円筒部82の内部気孔は連通している。
以上の構成を有する軸受部材8において、第1円筒部81は、鉄(Fe)組織と、鉄組織同士を結合した銅(Cu)と銅よりも低融点の物質(ここでは、錫(Sn))の合金組織とを備えた銅鉄系の焼結金属からなり、金属組織中には遊離黒鉛が点在している。第1円筒部81における各金属の含有率は、銅が20〜60質量%、錫が1〜3質量%、残りが鉄であり、ここでは、鉄を40質量%、銅を58質量%、錫を2質量%としている。第1円筒部81中の錫は、その大半が銅−錫合金の金属組織として存在しており、錫単体の金属組織は殆ど存在しない。また、第1円筒部81中の銅は、銅−錫合金の金属組織および銅単体の金属組織として存在している。
第2円筒部82は、第1円筒部81と同様に、鉄(Fe)組織と、鉄組織同士を結合した銅(Cu)と錫(Sn)の合金組織とを備えた銅鉄系の焼結金属からなり、金属組織中には遊離黒鉛が点在している。第2円筒部82における各金属の含有率は、銅が20〜60質量%、錫が3〜12質量%、残りが鉄であり、ここでは、第2円筒部82における銅および錫の含有率を第1円筒部81のそれとは意図的に異ならせている。具体的には、第2円筒部82に占める銅の質量比を第1円筒部81に占める銅の質量比よりも低くすると共に、第2円筒部82に占める錫の質量比を第1円筒部81に占める錫の質量比よりも高くしており、さらに、銅に対する錫の質量比を15%以上にしている。ここでは、鉄を40質量%、銅を52質量%、錫を8質量%としている。第2円筒部82中の錫は、その大半が銅−錫合金の金属組織として存在しており、錫単体の金属組織は殆ど存在しない。また、第2円筒部82中の銅は、銅−錫合金の金属組織および銅単体の金属組織として存在しているが、銅単体の金属組織は、第1円筒部81を構成する銅単体の金属組織よりも少ない。
以上の構成を有する軸受部材8は、圧縮成形工程、焼結工程、サイジング工程および含油工程を順に経ることで製造される。以下、各工程の実施態様について詳細に述べる。
[圧縮成形工程]
圧縮成形工程は、軸受部材8を構成する第1円筒部81および第2円筒部82の基材である円筒状の圧粉体を得る工程であり、ここでは、図4および図5に示すような、第1円筒部81の基材である第1圧粉体M1と、第2円筒部82の基材である第2圧粉体M2とが個別に作製される。
圧縮成形工程は、軸受部材8を構成する第1円筒部81および第2円筒部82の基材である円筒状の圧粉体を得る工程であり、ここでは、図4および図5に示すような、第1円筒部81の基材である第1圧粉体M1と、第2円筒部82の基材である第2圧粉体M2とが個別に作製される。
第1圧粉体M1の成形用粉末、および第2圧粉体M2の成形用粉末は、何れも、金属粉末としての鉄粉、銅粉および錫粉を混合した混合粉末とされ、さらに微量の黒鉛粉末が添加されている。第1圧粉体M1の成形用粉末における各金属粉末の配合割合は、第1円筒部81を構成する金属の質量比に倣って、鉄粉:40質量%、銅粉:58質量%、錫粉:2質量%としている。また、第2圧粉体M2の成形用粉末における各金属粉末の配合割合は、第2円筒部82を構成する金属の質量比に倣って、鉄粉:40質量%、銅粉:52質量%、錫粉:8質量%としている。両成形用粉末には、圧粉体の成形性や離型性を高めるための成形助剤(例えば、ステアリン酸亜鉛等の固体潤滑剤)を添加しても良い。
鉄粉としては、還元鉄粉やアトマイズ鉄粉等の公知の鉄粉を使用することができるが、軸受部材8が上記のように含油焼結軸受として使用されることを考慮すると、多孔質(海綿状)で含油性に優れた還元鉄粉を使用するのが好ましい。銅粉としては、焼結金属用として汎用されている銅粉、例えば電解銅粉やアトマイズ銅粉等を使用することができる。また、錫粉としては、アトマイズ錫粉等の公知のものが使用される。
詳細な図示は省略するが、第1圧粉体M1は、その外周面を成形する円筒状のダイ、その内周面を成形する軸状のコア、およびその両端面を成形する一対の上下パンチを有する成形金型に画成されるキャビティに上記の成形用粉末を充填した後、上下パンチを相対的に接近移動させて成形用粉末を軸方向に圧縮することによって圧縮成形される。但し、第1圧粉体M1の内周面は凹凸のない平滑な円筒面に成形され、また、第1圧粉体M1の端面は凹凸のない平滑な平坦面に成形される。要するに、この圧縮成形工程では、ラジアル動圧発生部およびスラスト動圧発生部は型成形されない。
また、第2圧粉体M2も、その外周面を成形する円筒状のダイ、その内周面を成形する軸状のコア、およびその両端面を成形する一対の上下パンチを有する成形金型に画成されるキャビティに上記の成形用粉末を充填した後、上下パンチを相対的に接近移動させて成形用粉末を軸方向に圧縮することによって圧縮成形される。第2圧粉体M2の内周面は凹凸のない平滑な円筒面に成形され、第2圧粉体M2の端面は凹凸のない平滑な平坦面に成形される。第2圧粉体M2の密度は第1圧粉体M1の密度と同程度としても構わないが、本実施形態では第2圧粉体M2を第1圧粉体M1よりも低密度に成形している。
[焼結工程]
この焼結工程では、まず、図4に示すように、対向二面を接触(圧接)させた状態で第2圧粉体M2の軸方向両側に第1圧粉体M1が配置されたアセンブリ11を作製する。このアセンブリ11は、三つの圧粉体(第2圧粉体M2およびその軸方向両側に配置される一対の第1圧粉体M1。以下同じ。)を上記態様で保持する治具を含む。この治具は、三つの圧粉体を三つの圧粉体の内周に挿入される支持ピン12と、三つの圧粉体を下方側から支持する支持部材13と、支持部材13と協働して三つの圧粉体を互いに圧接させる重錘部材14とを備える。支持ピン12の外径寸法は、三つの圧粉体の内周面を拘束可能な寸法(例えば三つの圧粉体の内径寸法と同寸、あるいは僅かに大きい寸法)に設定されている。そのため、三つの圧粉体の内周に支持ピン12を挿入すると、三つの圧粉体の間での芯出しが行われる。そして、支持ピン12に外嵌された状態で支持部材13によって下方側から支持された三つの圧粉体の上側に重錘部材14を載置するようにして、重錘部材14を支持ピン12に固定する。これにより、図4に示すアセンブリ11が得られる。
この焼結工程では、まず、図4に示すように、対向二面を接触(圧接)させた状態で第2圧粉体M2の軸方向両側に第1圧粉体M1が配置されたアセンブリ11を作製する。このアセンブリ11は、三つの圧粉体(第2圧粉体M2およびその軸方向両側に配置される一対の第1圧粉体M1。以下同じ。)を上記態様で保持する治具を含む。この治具は、三つの圧粉体を三つの圧粉体の内周に挿入される支持ピン12と、三つの圧粉体を下方側から支持する支持部材13と、支持部材13と協働して三つの圧粉体を互いに圧接させる重錘部材14とを備える。支持ピン12の外径寸法は、三つの圧粉体の内周面を拘束可能な寸法(例えば三つの圧粉体の内径寸法と同寸、あるいは僅かに大きい寸法)に設定されている。そのため、三つの圧粉体の内周に支持ピン12を挿入すると、三つの圧粉体の間での芯出しが行われる。そして、支持ピン12に外嵌された状態で支持部材13によって下方側から支持された三つの圧粉体の上側に重錘部材14を載置するようにして、重錘部材14を支持ピン12に固定する。これにより、図4に示すアセンブリ11が得られる。
なお、アセンブリ11を構成する治具は、図5に示すように、複数の支持ピン12が立設された支持部材13と、支持ピン12の嵌合孔が複数設けられた重錘部材14とを備えたもので構成することも可能である。このようにすれば、複数の焼結体を一度に得ることが可能となるので、焼結処理を簡略化することができる。
詳細な図示は省略するが、焼結処理は、上記のアセンブリ11の状態で焼結炉に投入された圧粉体M1,M2を所定条件で加熱することにより行われる。焼結温度は、圧粉体M1,M2に含まれる錫の融点(231℃)よりも高く、かつ銅の融点(1085℃)よりも低くなるように設定され、例えば750℃〜950℃、好ましくは800℃〜900℃に設定される。この温度(温度範囲)は、溶融した錫が銅と接触して合金状態で液相化する温度であり、鉄系焼結体を得る際の一般的な焼結温度(1100〜1300℃程度)よりも格段に低い。
焼結工程における焼結時には、まず、第1圧粉体M1および第2圧粉体M2に含まれる錫粉が溶融する。錫の融液が銅粉を濡らすと、銅粉の一部が溶融する。また、錫の融液は、鉄粉末の間に入り込んで鉄粉末同士を結合する他、鉄粉末と銅粉末を結合する。以上のような金属粉末の結合は、個々の圧粉体M1,M2のうち、隣り合う圧粉体との接触部から離れた領域で生じる他、第1圧粉体M1と第2圧粉体M2の接触部でも生じる。これにより、圧粉体M1,M2の焼結体である上記の円筒部81,82が形成されるのと同時に、円筒部81,82同士を結合(焼結結合)してなる結合部が形成される。以上により、一対の第1円筒部81,81と、両第1円筒部81,81間に介在する第2円筒部82とが一体的に設けられた軸受素材8’[図6(a)参照]が形成される。
なお、軸受素材8’(を構成する第1円筒部81および第2円筒部82)のうち、圧粉体M1,M2の段階で錫粉が介在していた部分には、錫粉が溶融するのに伴って気孔(比較的径の大きい気孔)が形成される。これにより、多孔質組織内での潤滑油の流通性に優れた軸受部材8を得ることができる。
[サイジング工程]
サイジング工程では、焼結工程で得られた上記の軸受素材8’に対して、図6(a)および図6(b)に示すようなサイジング金型20を用いてサイジング加工が施される。サイジング金型20は、同軸に配置されたコア21、円筒状のダイ22、および一対の上下パンチ23,24を備える。図示は省略しているが、コア21の外周面21aの上下に離間した二箇所には、ラジアル動圧発生部を有するラジアル軸受面Aの形状に対応した型部が設けられており、また、下パンチ24の上端面24aには、スラスト動圧発生部を有するスラスト軸受面Bの形状に対応した型部が設けられている。
サイジング工程では、焼結工程で得られた上記の軸受素材8’に対して、図6(a)および図6(b)に示すようなサイジング金型20を用いてサイジング加工が施される。サイジング金型20は、同軸に配置されたコア21、円筒状のダイ22、および一対の上下パンチ23,24を備える。図示は省略しているが、コア21の外周面21aの上下に離間した二箇所には、ラジアル動圧発生部を有するラジアル軸受面Aの形状に対応した型部が設けられており、また、下パンチ24の上端面24aには、スラスト動圧発生部を有するスラスト軸受面Bの形状に対応した型部が設けられている。
上記の構成において、まず、図6(a)に示すように、ダイ22の上端面22aに軸受素材8’を起立姿勢で載置してから、コア21および上パンチ23を下降させて軸受素材8’の内周にコア21を挿入する。次いで、図6(b)に示すように、コア21および上パンチ23を一体的に下降させることにより、軸受素材8’をダイ22の内周に圧入(軸受素材8’の外周面を拘束)してから、コア21および上パンチ23をさらに下降させ、上パンチ23および下パンチ24で軸受素材8’を軸方向に圧縮すると、軸受素材8’が径方向に膨張変形し、軸受素材8’の外周面および内周面がダイ22の内周面22bおよびコア21の外周面21aにそれぞれ押し付けられる。これにより、軸受素材8’の外周面および内周面が、ダイ22の内周面22bおよびコア21の外周面21aに倣って変形し、一対の第1円筒部81の内周面(小径内周面)のそれぞれに、ラジアル動圧発生部を有するラジアル軸受面Aが成形される。また、軸受素材8’を上下パンチ23,24で軸方向に圧縮した際には、軸受素材8’の下端面(下側の第1円筒部81の下端面)に、スラスト動圧発生部を有するスラスト軸受面Bが成形される。以上により、サイジングによって内周面、外周面および両端面が完成品形状に仕上げられた軸受素材8’(軸受部材8)、すなわちサイジングにより成形されたラジアル軸受面Aおよびスラスト軸受面Bを有する軸受部材8が得られる。
[含油工程]
含油工程では、サイジング工程を経て得られた軸受部材8の内部気孔に、例えば真空含浸等の公知の手法により潤滑油を含浸させる。これにより、図2および図3に示す軸受部材8が得られる。
含油工程では、サイジング工程を経て得られた軸受部材8の内部気孔に、例えば真空含浸等の公知の手法により潤滑油を含浸させる。これにより、図2および図3に示す軸受部材8が得られる。
以上で説明したように、本発明の実施形態に係る軸受部材8は、個別に作製した第1円筒部81の基材である第1圧粉体M1と第2円筒部82の基材である第2圧粉体M2とを軸方向に連ねて配置したアセンブリ11を加熱・焼結することにより得られ、ラジアル軸受面Aは、焼結体からなる第1円筒部81にサイジング加工を施すことによって得られる。この場合、軸受部材8の強度(第1円筒部81と第2円筒部82の結合強度)およびラジアル軸受面Aの寸法・形状精度は、それぞれ、焼結処理の処理条件およびサイジング加工の加工条件に大きく依存することになるので、ラジアル軸受面の成形と部材同士の結合とをサイジング加工でまとめて行っていた従来構成に比べ、必要とされる強度やラジアル軸受面Aの寸法精度を容易にかつ安定的に確保することができる。
また、第1円筒部81および第2円筒部82の双方を、20〜60質量%の銅を含有し、かつ鉄組織が銅−錫合金の金属組織を介して結合された銅鉄系の焼結金属で構成し、さらには、第2円筒部82に占める銅の質量比を第1円筒部81に占める銅の質量比よりも低くすると共に、第2円筒部に占める錫の質量比を第1円筒部81に占める錫の質量比よりも高くしている。この場合、第1円筒部81と第2円筒部82とを対比すると、第2円筒部82においては、錫の含有率が第1円筒部81のそれよりも高い銅−錫合金の金属組織、つまり高強度の金属組織を介して鉄組織同士を結合することができるので、一対の第1円筒部81を、第1円筒部81よりも高強度の第2円筒部82を介して結合することができる。このため、軸受部材8全体の強度が高まる。特に、本実施形態では、第2円筒部82を、銅に対して15質量%以上の錫を含む焼結金属で形成しているので、第2円筒部82自体の強度、さらには第1円筒部81同士の結合強度(軸受部材8全体の強度)を十分に高めることができる。但し、銅に対する錫の質量比率をあまりに高めると、銅−錫合金の強度・硬度が却って低下する懸念がある。そのため、銅に対する錫の質量比の上限は20%程度とするのが好ましい。
その一方、第1円筒部81を銅の質量比率が比較的大きい銅鉄系の焼結金属で形成し、かつ第1円筒部81に占める銅の質量比を第2円筒部82に占める銅の質量比よりも高く、また、第1円筒部81に占める錫の質量比を第2円筒部82に占める錫の質量比よりも低くしているので、第1円筒部81の金属組織は、第2円筒部82の金属組織よりも軟質でかつ摺動性に優れた銅リッチの金属組織となる。これにより、変形容易性を高めて高精度のラジアル軸受面Aを容易に成形することができる他、支持すべき軸(軸部材2)との摺動性に優れたラジアル軸受面Aを得ることができるので、軸部材2を精度良く支持することができる。
また、本実施形態では、第2円筒部82を第1円筒部81よりも低密度に形成しているので、第2円筒部82の気孔率が第1円筒部81の気孔率よりも高くなっている。そのため、本実施形態のように軸受部材8を含油軸受として使用する場合には、第2円筒部82で多くの潤滑油を保持することができる。また、第1円筒部81の内部気孔と第2円筒部82の内部気孔は互いに連通しているので、軸受部材8の内部気孔に含浸させた潤滑油を第1円筒部81と第2円筒部82の間で行き来させることが(第2円筒部82の内部気孔で保持した潤滑油を第1円筒部81に補充することが)できる。従って、流体動圧軸受装置1の運転時(軸部材2の回転時)にラジアル軸受隙間で必要とされる潤滑油の量が不足することに起因する軸受性能の低下や、潤滑油の特性変化に起因した軸受性能の低下を効果的に防止することができる。
以上で説明したような作用効果が相俟って、本発明に係る軸受部材8であれば、これを軸方向に長寸化(二つのラジアル軸受面Aの離間距離を拡大)する必要がある場合でも、必要とされる強度や各ラジアル軸受面Aの寸法・形状精度を確保することができる。従って、軸部材2を長期間に亘って精度良く支持することができる流体動圧軸受装置1を実現することができる。
以上、本発明の一実施形態に係る軸受部材8、およびこれを備えた流体動圧軸受装置1について説明を行ったが、軸受部材8には本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことができる。
例えば、以上で説明した軸受部材8は、第1円筒部81と第2円筒部82の内径寸法が同寸であると共に、第1円筒部81と第2円筒部82の外径寸法が同寸であるが、図7に示すように、第2円筒部82の内径寸法を第1円筒部81の内径寸法よりも大きくしても良い。このような軸受部材8を図2に示す流体動圧軸受装置1に組み込んだ場合には、軸受部材8の第2円筒部82の内周面と軸部材2の外周面2a1との間にいわゆる中逃げ部を形成することができるので、軸部材2の回転トルク、ひいてはモータの消費電力を低減することができる。係る構成の軸受部材8を採用する場合、第1円筒部81と第2円筒部82の間で必要とされる同軸度を確保する観点から、第1円筒部81の外径寸法と第2円筒部82の外径寸法は同寸に設定する。このようにすれば、両円筒部81,82の外周面を基準として両円筒部81,82間での芯出しがなされた軸受部材8を得ることができる。
図7に示す軸受部材8の製造過程に含まれる焼結工程では、図8に示すように、第1円筒部81の基材である第1圧粉体M1の外周面と、第2円筒部82の基材である第2圧粉体M2の外周面とをまとめて拘束し得るようなアセンブリ11を作製する。つまり、このアセンブリ11を得るための治具は、図4に示すものに加えて、両圧粉体M1,M2の外周面をまとめて拘束可能な外周拘束部材15を備えている。これにより、第1圧粉体M1および第2圧粉体M2の外周面を基準として両圧粉体M1,M2間での芯出しがなされた状態で両圧粉体M1,M2を焼結することができるので、第1円筒部81と第2円筒部82の間に必要とされる同軸度に大きな狂いが生じるのを防止することができる。
また、軸受部材8は、図9に示すように、第2円筒部82の外径寸法が第1円筒部81の外径寸法よりも小さく設定されたものとすることもできる。このような軸受部材8を図2に示す流体動圧軸受装置1に組み込んだ場合には、軸受部材8の第2円筒部82の外周面とハウジング7の筒部7aの内周面2a1との間に、油溜りとして機能する円筒状空間を画成することができる。このようにすれば、流体動圧軸受装置1の内部空間により多くの潤滑油を介在させることができるので、ラジアル軸受部R1,R2のラジアル軸受隙間や、スラスト軸受部T1,T2のスラスト軸受隙間での油量不足に起因した軸受性能の低下を防止する上で有利となる。
なお、図9に示す軸受部材8は、図3等に示す軸受部材8と同様に、第1円筒部81(に設けられるラジアル軸受面A)の内径寸法と第2円筒部82の内径寸法とを同寸にしている。これにより、両円筒部81,82の内周面を基準として両円筒部81,82間での芯出しを行うことができる。
以上で説明した実施形態では、軸受部材8を構成する第1円筒部81および第2円筒部82に含めるべき低融点物質として錫を採用したが、ラジアル軸受面Aを精度良く成形可能としつつ、軸受部材8の高強度化を達成するという本発明による作用効果は、上記低融点物質として亜鉛(Zn)やリン(P)を採用した場合にも同様に享受することができる。但し、銅との相性(銅に対する濡れ性)や単体での取り扱い性を考慮すると、上述した錫の方が好ましい。
また、以上で説明した軸受部材8においては、ラジアル軸受面Aにラジアル動圧発生部を設けているが、本発明は、ラジアル軸受面Aが平滑な円筒面に形成された軸受部材8、すなわちラジアル動圧発生部を有さない軸受部材8にも適用可能である。また、以上で説明した軸受部材8は、その下端面(下側の第1円筒部81の下端面)8bにスラスト軸受面Bを有しているが、軸受部材8の下端面8bにはスラスト軸受面Bが設けられない場合もある。つまり、流体動圧軸受装置1のスラスト軸受部が、軸部材2を接触支持する、いわゆるピボット軸受で構成される場合には、軸受部材8にスラスト軸受面Bは設けられない。
また、以上で説明した流体動圧軸受装置1においては軸受部材8を静止側としたが、軸受部材8は、流体動圧軸受装置1の回転側を構成する場合もある。
1 流体動圧軸受装置
2 軸部材(支持すべき軸)
7 ハウジング
8 軸受部材
20 サイジング金型
21 コア
81 第1円筒部
82 第2円筒部
A ラジアル軸受面
B スラスト軸受面
M1 第1圧粉体
M2 第2圧粉体
R1,R2 ラジアル軸受部
T1,T2 スラスト軸受部
2 軸部材(支持すべき軸)
7 ハウジング
8 軸受部材
20 サイジング金型
21 コア
81 第1円筒部
82 第2円筒部
A ラジアル軸受面
B スラスト軸受面
M1 第1圧粉体
M2 第2圧粉体
R1,R2 ラジアル軸受部
T1,T2 スラスト軸受部
Claims (8)
- 円筒状の焼結体からなり、内周面の軸方向に離間した二箇所にサイジングにより成形されたラジアル軸受面を有する軸受部材であって、
前記焼結体は、それぞれが前記ラジアル軸受面を有する一対の第1円筒部と、両第1円筒部の間に介在し、両第1円筒部と軸方向に接触した状態で両第1円筒部と共に焼結された第2円筒部とを備え、
前記第1円筒部および前記第2円筒部は、何れも、20〜60質量%の銅を含有し、かつ鉄組織が、銅および銅よりも低融点の物質の合金組織を介して結合された銅鉄系の焼結金属からなり、
前記第2円筒部に占める銅の質量比を前記第1円筒部に占める銅の質量比よりも低くすると共に、前記第2円筒部に占める前記低融点物質の質量比を前記第1円筒部に占める前記低融点物質の質量比よりも高くしたことを特徴とする軸受部材。 - 前記低融点物質が錫であり、前記第2円筒部は、銅に対して15質量%以上の錫を含んでいる請求項1に記載の軸受部材。
- 前記第2円筒部の気孔率を前記第1円筒部の気孔率よりも高くした請求項1又は2に記載の軸受部材。
- 前記第1円筒部の内部気孔と前記第2円筒部の内部気孔が互いに連通している請求項1〜3の何れか一項に記載の軸受部材。
- 前記第2円筒部の内径寸法を前記第1円筒部の内径寸法よりも大きくし、前記第2円筒部の外径寸法と前記第1円筒部の外径寸法とを同寸にした請求項1〜4の何れか一項に記載の軸受部材。
- 前記第2円筒部の外径寸法を前記第1円筒部の外径寸法よりも小さくし、前記第2円筒部の内径寸法と前記第1円筒部の内径寸法とを同寸にした請求項1〜4の何れか一項に記載の軸受部材。
- 前記第1円筒部および前記第2円筒部の内部気孔に潤滑油を含浸させてなる請求項1〜6の何れか一項に記載の軸受部材。
- 請求項1〜7の何れか一項に記載の軸受部材と、該軸受部材を内周に保持したハウジングとを備える流体動圧軸受装置。
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