(第1実施形態)
以下、制御装置の第1実施形態について、図1〜図8および図10を参照して説明する。
図1は、制御装置10と、制御装置10の制御対象である車両90と、を示している。
車両90は、車両90の始動スイッチ91を備えている。始動スイッチ91の操作状態は、制御装置10に入力される。制御装置10によって車両90の動力源の駆動が許容されたり、動力源の駆動が停止されたりする。以下では、動力源の駆動が許容されている状態を運転状態IGonという。また、動力源の駆動が停止されている状態を停止状態IGoffという。始動スイッチ91によって、運転状態IGonと停止状態IGoffとが切り換えられる。
車両90は、制動装置70を備えている。制動装置70は、制動アクチュエータ71と制動機構73とを有している。制動アクチュエータ71には、たとえば、ABS(Antilock Brake System)ユニット、横滑り防止機構としてのESC(Electronic Stability Control)ユニット、マスタシリンダ、および負圧ブースタ等が含まれる。制動機構73は、車両90の各車輪に設けられている。制動機構73は、ディスクブレーキであり、回転体としてのブレーキディスク75と、摩擦材としてのパッド76と、ホイールシリンダ74とを備えている。パッド76は、フェノール樹脂を結合材として非金属の繊維を補強材として製造される、いわゆるNAO材である。ブレーキディスク75は、車輪と一体に回転する円板である。ブレーキディスク75は、たとえば、鋳鉄製である。
制動装置70では、ホイールシリンダ74にブレーキ液が供給されてホイールシリンダ74内の液圧が上昇すると、パッド76がブレーキディスク75に接近して押し付けられる。パッド76とブレーキディスク75との間に摩擦を発生させることによって、車両90に制動力が付与される。制動装置70では、ホイールシリンダ74内の液圧が高いほど、大きな制動力が車両90に付与される。
なお、ホイールシリンダ74には制動アクチュエータ71を通じてブレーキ液が供給される。車両90のブレーキペダル93が操作されると、制動アクチュエータ71から制動機構73にブレーキ液が供給される。ブレーキペダル93の操作量が大きいほど、多くのブレーキ液が制動機構73に供給される。
車両90は、報知装置92を備えている。報知装置92は、制御装置10からの指令によって制御される。報知装置92は、制御装置10が出力した情報を車両90の乗員に報知する機能を有している。たとえば、報知装置92は、警告灯、スピーカーまたはディスプレイ等を有している。
車両90は、各種センサを備えている。図1には、各種センサの例として、車輪速センサ82とブレーキペダルセンサ81とを示している。図1に示すように、車両90が備える各種センサからの検出信号は、制御装置10に入力される。
なお、ブレーキペダルセンサ81としては、ブレーキペダル93の操作量を検出するストロークセンサ、ブレーキペダル93の位置を検出する回転センサ、または、ブレーキペダル93の操作力を検出する踏力センサ等を採用することができる。
制御装置10は、機能部として車速算出部11とブレーキ検出部12と温度導出部20とを備えている。
車速算出部11は、車輪速センサ82からの検出信号に基づいて、車輪速度VWを算出する。車速算出部11は、車輪速度VWに基づいて車速VSを算出する。
ブレーキ検出部12は、ブレーキペダルセンサ81からの検出信号に基づいて、ブレーキペダル93の操作状態を検出する。すなわち、ブレーキ検出部12は、ブレーキペダル93が操作されていることを検出できる。たとえば、ブレーキペダルセンサ81がストロークセンサである場合、ブレーキ検出部12は、ストローク量が「0(零)」から変動したとき、ブレーキペダル93の操作の開始を検出する。そして、ストローク量が「0(零)」に戻ったとき、ブレーキ検出部12は、ブレーキペダル93の操作の終了を検出する。
温度導出部20は、ブレーキディスク75の温度の推定値として推定温度TEを導出する温度導出処理を実行する導出部である。温度導出部20は、増加温度算出部21と冷却温度算出部22とを備えている。温度導出部20は、後述するように増加温度算出部21が算出する増加温度量ΔTと、冷却温度算出部22が算出する冷却温度TCと、の和に基づいて推定温度TEを導出する。
ここで、図2を用いて、制動機構73による制動力の付与が開始された場合のブレーキディスク75の温度変化について説明する。図2は、制動力の付与が開始されることを起因として変化する車両90の状態を車速VSで示した一例である。
図2に示す例では、タイミングt1から制動が開始されて車速VSが低下し始める。タイミングt2では制動が終了される。ここでは、タイミングt2において車速VSが「0(零)」になる。タイミングt2以降では、車速VSが増加し始める。タイミングt3以降では、車速VSの変化が小さくなって車速VSが維持されている。タイミングt4では制動が再び開始されるため、車速VSが低下する。
タイミングt1からタイミングt2までの間では、制動機構73のパッド76がブレーキディスク75に押圧されている。押圧による摩擦によって、ブレーキディスク75の温度が上昇する。以下では、押圧による摩擦によってブレーキディスク75の温度が上昇する期間を減速期間という。
図2に示す例においては、タイミングt2からタイミングt4までの期間では、パッド76がブレーキディスク75に押圧されていない。しかし、ディスクブレーキである制動機構73では、パッド76がブレーキディスク75に押圧されていないときでも、パッド76がブレーキディスク75に僅かに接触していることがある。パッド76がブレーキディスク75に接触している場合、車輪の回転に伴って引き摺りトルクが発生する。このように引き摺りトルクが発生する場合、摩擦によってブレーキディスク75の温度が上昇する。
減速期間の終了後においてタイミングt2からタイミングt3までの期間のように車両90が加速している期間では、パッド76がブレーキディスク75に僅かに接触している場合、引き摺りトルクの発生に起因してブレーキディスク75の温度が上昇する。以下では、タイミングt2からタイミングt3までの期間のように車両90が加速している期間を加速期間という。
タイミングt3からタイミングt4のように車速VSが一定である期間でも、パッド76がブレーキディスク75に僅かに接触している場合、加速期間と同様に、引き摺りトルクの発生に起因してブレーキディスク75の温度が上昇する。以下では、タイミングt3からタイミングt4のように車両90が定速走行している期間を定常期間という。
また、以下では、引き摺りトルクの発生に起因してブレーキディスク75の温度が上昇しうる加速期間と定常期間とを併せて引き摺り期間という。引き摺り期間は、減速期間の終了後においてブレーキディスク75にパッド76が押しつけられていない期間ということもできる。
なお、ブレーキディスク75の熱は、減速期間、加速期間または定常期間にかかわらず常にブレーキディスク75外に放出される。すなわち、ブレーキディスク75の温度は、パッド76とブレーキディスク75との間で発生する摩擦に起因する温度上昇と、放熱に起因する温度低下と、の関係に基づいて変化する。このため、車速VSが推移する期間を減速期間と加速期間と定常期間とに区分けすることによって、ブレーキディスク75の温度変化を推定することが可能である。本実施形態の制御装置10は、図2に示す増加温度算出期間である減速期間、加速期間および定常期間の各期間において、ブレーキディスク75の温度の上昇量としての増加温度量ΔTをそれぞれ算出する。さらに、制動が開始されてから次の制動が開始されるまでの冷却温度算出期間において、ブレーキディスク75の冷却温度TCを算出する。こうして算出した増加温度量ΔTと冷却温度TCとによって推定温度TEを導出することができる。
温度導出部20は、推定温度TEを導出するため、車速VSが推移する期間を、上述した減速期間と加速期間と定常期間とに区分けする。
具体的には、温度導出部20は、減速期間の開始点として減速開始点Dsを設定し、減速期間の終了点として減速終了点Deを設定する。温度導出部20は、制動装置70による制動力の付与の開始と終了とに基づいて減速開始点Dsおよび減速終了点Deを設定する。たとえば、ブレーキペダルセンサ81によって検出されるブレーキペダル93の操作状態に基づいて、ブレーキペダル93の操作が開始されたときを減速開始点Dsとして設定して、ブレーキペダル93の操作が終了されたときを減速終了点Deとして設定する。
さらに温度導出部20は、加速期間の開始点として加速開始点Asを設定し、加速期間の終了点として加速終了点Aeを設定する。温度導出部20は、車両90が加速しているか否か、たとえば車両90の加速度の大きさに基づいて、加速開始点Asおよび加速終了点Aeを設定する。温度導出部20は、車両90の加速を検出したときを加速開始点Asとして設定し、加速の終了を検出したときを加速終了点Aeとして設定する。
図2に示す例では、減速開始点Dsとしてタイミングt1が設定される。減速終了点Deとしてタイミングt2が設定される。加速開始点Asとしてタイミングt2が設定される。加速終了点Aeとしてタイミングt3が設定される。また、次のサイクルの減速開始点Dsとしてタイミングt4が設定される。
増加温度算出部21は、減速期間における増加温度量ΔTを算出する処理として、制動昇温算出処理を実行する。制動昇温算出処理では、増加温度算出部21は、減速期間を等間隔に分割した小期間毎に、ブレーキディスク75の温度の上昇量として増加温度量ΔTを算出する。
減速期間における増加温度量ΔTを算出する一例について説明する。小期間の開始時点における車速VSを「V1」として、小期間の終了時点における車速VSを「V2」とする。車速VSが「V1」から「V2」に変化したときの運動エネルギーの全てが熱エネルギーに変換されるとすると、四輪の車両90における一輪分の増加温度量ΔTは、以下の関係式(式1)を用いて算出することができる。
関係式(式1)において、「M」は、車両90の質量である。「m」は、ブレーキディスク75の質量である。「c」は、ブレーキディスク75の比熱である。なお、「α」は、大気または車体等への伝熱による損失を考慮した熱損失係数αである。熱損失係数αは、実験等によって算出した値を用いることができる。「β」は、車両90の前輪および後輪の各軸による仕事の割合を示す軸配分βである。関係式(式1)に示すように、小期間における車速VSの変化量が大きいほど、算出される増加温度量ΔTは、大きくなる。
さらに、増加温度算出部21は、加速期間における増加温度量ΔTを算出する処理として、加速昇温算出処理を実行する。加速昇温算出処理では、加速期間を等間隔に分割した小期間毎に、ブレーキディスク75の温度の上昇量として増加温度量ΔTを算出する。加速昇温算出処理では、加速期間において、パッド76とブレーキディスク75とが接触しており引き摺りトルクが常に発生するとして、増加温度量ΔTを算出する。
加速期間における増加温度量ΔTを算出する一例について説明する。四輪の車両90における一輪分の増加温度量ΔTは、以下の関係式(式2)を用いて算出することができる。
関係式(式2)において、「α」は、熱損失係数αである。熱損失係数αは、実験等によって算出した値を用いることができる。「N」は、引き摺りトルクの大きさである。「D」は、車両90の移動距離である。「R」は、車輪に取り付けられているタイヤの半径である。「m」は、ブレーキディスク75の質量である。「c」は、ブレーキディスク75の比熱である。加速期間が分割された小期間における車両90の移動距離を「D」として用いることで、小期間における増加温度量ΔTを算出することができる。関係式(式2)を用いて算出される増加温度量ΔTは、移動距離が長いほど大きくなる。
また、増加温度算出部21は、定常期間における増加温度量ΔTを算出する処理として、定速昇温算出処理を実行する。定速昇温算出処理では、定常期間において、パッド76とブレーキディスク75とが接触しており引き摺りトルクが常に発生するとして、増加温度量ΔTを算出する。定常期間における増加温度量ΔTを算出する一例について説明する。四輪の車両90における一輪分の増加温度量ΔTは、定常期間における車両90の移動距離を「D」として用いることで、上記の関係式(式2)によって算出することができる。
冷却温度算出部22は、冷却温度TCを算出する。冷却温度TCは、冷却の法則に基づく以下の関係式(式3)を用いて算出される。
関係式(式3)において、「Θ」は、ブレーキディスク75の初期温度である。初期温度とは、冷却温度算出期間の開始時点でのブレーキディスク75の温度である。たとえば、導出されている推定温度TEを初期温度として用いることができる。また、初期温度は、常温でのブレーキディスク75の温度として予め定められた規定の温度を設定してもよい。「θ0」は、ブレーキディスク75が設置されている雰囲気下の温度、すなわち雰囲気温度である。「t」は、冷却温度算出期間の開始時点からの経過時間である。「bv」は、ブレーキディスク75の伝熱の大きさを表す冷却係数bvである。冷却係数bvは、ブレーキディスク75の熱伝達率とブレーキディスク75の表面積およびブレーキディスク75の熱容量から算出した値を設定するとよい。
さらに制御装置10は、機能部として判定部23と報知処理部24とを備えている。
判定部23は、ブレーキディスク75の温度として導出された推定温度TEが閾値よりも大きいか否かを判定する。判定部23は、三個の閾値を記憶している。各閾値は、実験等によって予め算出された値が設定されている。
第1閾値は、摩耗促進温度Tth1である。ブレーキディスク75の温度が上昇すると、パッド76の摩耗が進行する。図10には、パッド76の摩耗度合と、ブレーキディスク75の温度と、の関係を例示している。図10に示すように、パッド76の摩耗が進行しにくい温度領域と摩耗が進行しやすい温度領域との境界となる温度が存在する。制動前の車輪速度VW、制動後の車輪速度VW、路面状態、および車両特性等の条件を揃えた場合、摩耗が進行しやすい温度領域では、摩耗が進行しにくい温度領域と比較して、一回の制動当たりの摩耗量が二倍以上に増える傾向がある。温度領域の境界となる当該温度が摩耗促進温度Tth1として判定部23に記憶されている。摩耗促進温度Tth1は、一般的に大気の温度よりも200℃以上高い値である。ブレーキディスク75の温度が高い状態でブレーキディスク75にパッド76が押し付けられると、パッド76の温度も上昇しやすい。そして、パッド76の温度が高いと、パッド76の材質の特性上、温度が低いときと比較してパッド76が摩耗しやすくなる。すなわち、ブレーキディスク75の温度が摩耗促進温度Tth1よりも大きい状態でパッド76にブレーキディスク75が押し付けられると、パッド76の摩耗度合が大きく進行する。
なお、パッドおよびブレーキディスクの材質によっては、パッドの温度が高いときにパッドの温度が低いときと比較してパッドが摩耗しやすくなるという現象が生じないこともある。たとえば、スチール繊維を補強材として約10%〜約30%含むロースチール材を採用したパッド、スチール繊維を補強材として約30%〜約50%含むセミメタル材を採用したパッド、および、金属を主成分としたメタル材を採用したパッドでは、NAO材のパッド76とは異なる傾向を示す。参考例として、ロースチール材をパッドとして採用した場合、ブレーキディスクおよびパッドの温度が高くなると、パッドではなくブレーキディスクが摩耗しやすくなることがある。
第2閾値は、振動発生温度Tth2である。ブレーキディスク75の温度が上昇すると、車輪が回転している状況下でパッド76にブレーキディスク75が押し付けられているときに大きな振動が発生することがある。たとえば、パッド76とブレーキディスク75とが接触する態様が変化すると、振動が発生しやすい。当該振動が発生しにくい温度領域と当該振動が発生しやすい温度領域との境界となる温度が振動発生温度Tth2として設定されている。ブレーキディスク75の温度が振動発生温度Tth2よりも大きくなると振動が発生しやすくなる。一般的に、振動発生温度Tth2は、摩耗促進温度Tth1よりも高温である。
第3閾値は、摩擦材のフェード現象が発生するフェード温度Tth3である。ブレーキディスク75の温度が上昇すると、パッド76が蒸発するフェード現象が発生する。一般的に、フェード温度Tth3は、振動発生温度Tth2よりも高温である。
本実施形態では、摩耗促進温度Tth1よりも大きい値として振動発生温度Tth2を設定し、振動発生温度Tth2よりも大きい値としてフェード温度Tth3を設定している。
報知処理部24は、判定部23による判定結果を車両90の乗員に報知する報知処理を実行する。報知処理では、制御装置10と接続されている報知装置92に情報を送信する。たとえば、報知処理部24は、推定温度TEが摩耗促進温度Tth1よりも高いと判定部23によって判定されたときには、パッド76またはブレーキディスク75の摩耗が促進されやすい状態である旨を報知装置92に報知させる。また、報知処理部24は、推定温度TEが振動発生温度Tth2よりも高いと判定部23によって判定されたときには、制動機構73で振動が発生する可能性がある旨を報知装置92に報知させる。また、報知処理部24は、推定温度TEがフェード温度Tth3よりも高いと判定部23によって判定されたときには、フェード現象が発生する可能性がある旨を報知装置92に報知させる。
図3〜図7を用いて、温度導出処理および判定処理を実行する処理の流れについて説明する。
図3に示す処理ルーチンは、温度導出処理を実行するための処理ルーチンである。本処理ルーチンは、所定の周期毎に繰り返し実行される。
本処理ルーチンが開始されると、まずステップS101において、温度導出部20は、停止状態IGoffから運転状態IGonに移行したか否かを判定する。始動スイッチ91によって車両90が始動された場合に停止状態IGoffから運転状態IGonに移行したと判定される。停止状態IGoffから運転状態IGonに移行していない場合(S101:NO)、ステップS101の処理が繰り返し実行される。一方で、停止状態IGoffから運転状態IGonに移行した場合(S101:YES)、処理がステップS102に移行される。
ステップS102では、温度導出部20は、停止状態IGoffが継続されていた停止期間Tioffが規定期間Tithよりも長いか否かを判定する。規定期間Tithの長さが規定時間に相当する。停止状態IGoffである場合、ブレーキディスク75とパッド76との間で摩擦熱が発生しないため、ブレーキディスク75の温度は、自然冷却によって低下する。すなわち、停止状態IGoffになった直後ではブレーキディスク75の温度が高温であったとしても、停止状態IGoffの継続時間が長い場合には、ブレーキディスク75の温度は、雰囲気温度θ0まで低下する。その後、ブレーキディスク75の温度が雰囲気温度θ0とほぼ等しい状態が保持されることになる。そこで、ブレーキディスク75の温度が雰囲気温度θ0まで低下したか否かの判断基準値として、規定期間Tithが設定されている。停止期間Tioffが規定期間Tithよりも長い場合(S102:YES)、処理がステップS103に移行される。ステップS103では、温度導出部20は、推定温度TEを初期化する。本実施形態では、推定温度TEとして雰囲気温度θ0が設定される。その後、処理がステップS104に移行される。ステップS104では、温度導出部20は、温度導出処理の実行を開始する。
一方、ステップS102の処理において停止期間Tioffが規定期間Tith以下である場合(S102:NO)、処理がステップS104に移行されて温度導出処理の実行が開始される。すなわち、推定温度TEが初期化されることなく温度導出処理の実行が開始される。
ステップS104において温度導出処理の実行が開始されると、処理がステップS105に移行される。ステップS105では、温度導出部20は、運転状態IGonから停止状態IGoffに移行したか否かを判定する。始動スイッチ91によって車両90が停止された場合に運転状態IGonから停止状態IGoffに移行したと判定される。運転状態IGonから停止状態IGoffに移行していない場合(S105:NO)、ステップS105の処理が繰り返し実行される。
一方、運転状態IGonから停止状態IGoffに移行した場合(S105:YES)、処理がステップS106に移行される。ステップS106では、温度導出部20は、温度導出処理の実行を終了する。その後、本処理ルーチンが終了される。
図4に示す処理ルーチンは、温度導出処理において減速期間、加速期間および定常期間を設定するための処理ルーチンである。本処理ルーチンは、図3のステップS104の処理によって実行が開始され、図3のステップS106の処理が実行されるまで繰り返し実行される。
本処理ルーチンが開始されると、まずステップS201において、温度導出部20は、制動開始が検出されているか否かを判定する。ブレーキ検出部12によってブレーキペダル93の操作が検出された場合に制動開始が検出されていると判定される。制動開始が検出されていない場合(S201:NO)、ステップS201の処理が繰り返し実行される。
一方、制動開始が検出されている場合(S201:YES)、処理がステップS202に移行される。ステップS202では、温度導出部20は、ステップS201の判定が「NO」から「YES」に切り換わった時点を減速開始点Dsとして設定する。すなわち、ステップS202の処理において温度導出部20は、減速期間が開始されたと判断する。その後、処理がステップS203に移行される。
ステップS203では、温度導出部20は、制動終了が検出されているか否かを判定する。制動終了が検出されていない場合(S203:NO)、ステップS203の処理が繰り返し実行される。
一方、制動終了が検出されている場合(S203:YES)、処理がステップS204に移行される。ステップS204では、温度導出部20は、ステップS203の判定が「NO」から「YES」に切り換わった時点を減速終了点Deとして設定する。すなわち、ステップS204の処理において温度導出部20は、減速期間が終了されたと判断する。その後、処理がステップS205に移行される。
ステップS205では、温度導出部20は、車両90が加速しているか否かを判定する。車両90が加速している場合(S205:YES)、処理がステップS206に移行される。ステップS206では、温度導出部20は、ステップS205の判定が「NO」から「YES」に切り換わった時点を加速開始点Asとして設定する。すなわち、ステップS206の処理において温度導出部20は、加速期間が開始されたと判断する。その後、処理がステップS207に移行される。
ステップS207では、温度導出部20は、車両90が加速しているか否かを判定する。すなわち、加速開始点Asが設定されてから加速が継続しているか否かが判定される。車両90が加速している場合(S207:YES)、加速期間中であると判断して、ステップS207の処理が繰り返し実行される。
一方、ステップS207の処理において車両90が加速していない場合(S207:NO)、処理がステップS208に移行される。ステップS208では、温度導出部20は、ステップS207の判定が「YES」から「NO」に切り換わった時点を加速終了点Aeとして設定する。すなわち、ステップS208の処理において温度導出部20は、加速期間が終了されたと判断する。その後、処理がステップS209に移行される。
ステップS209では、温度導出部20は、制動開始が検出されているか否かを判定する。制動開始が検出されていない場合(S209:NO)、処理が再びステップS205に移行される。一方で、制動開始が検出されている場合(S209:YES)、本処理ルーチンが終了される。
また、ステップS205の処理において、車両90が加速していない場合にも(S205:NO)、処理がステップS209に移行される。
なお、本処理ルーチンの実行中に図3のステップS106の処理が実行された場合、温度導出部20は、減速終了点Deまたは加速終了点Aeを設定して本処理ルーチンを終了する。具体的には、減速期間中にステップS106の処理が実行された場合、温度導出部20は、ステップS106の処理の実行時点を減速終了点Deとして設定して本処理ルーチンを終了する。加速期間中にステップS106の処理が実行された場合、温度導出部20は、ステップS106の処理の実行時点を加速終了点Aeとして設定して本処理ルーチンを終了する。
また、ステップS209の処理において制動開始が検出されたとき、平行して実行されている別の処理ルーチンにおけるステップS201の処理において制動開始が検出されたと判定されることによって(S201:YES)、再びステップS202以降の処理の実行が開始される。
なお、温度導出部20は、減速期間の終了後であって加速期間ではない期間を定常期間とする。すなわち、温度導出部20は、ステップS205の判定が「NO」であり、且つステップS209の判定が「NO」である期間を定常期間とする。これによって、温度導出部20は、減速期間の終了後の引き摺り期間を加速期間と定常期間とに区分けする。
図5に示す処理ルーチンは、温度導出処理において増加温度算出部21が実行する処理を示す処理ルーチンである。本処理ルーチンは、図3のステップS104の処理によって実行が開始され、図3のステップS106の処理が実行されるまで繰り返し実行される。
本処理ルーチンが開始されると、まずステップS301において、増加温度算出部21は、減速開始点Dsおよび減速終了点Deの双方が設定されているか否かを判定する。減速開始点Dsおよび減速終了点Deの双方が設定されている場合(S301:YES)、処理がステップS302に移行される。ステップS302では、増加温度算出部21は、上記制動昇温算出処理を実行する。すなわち、減速期間における増加温度量ΔTが算出される。その後、処理がステップS303に移行される。
ここで、一例として減速期間を二分割した場合について説明する。減速期間における前半の小期間を第1減速期間として、減速期間における後半の小期間を第2減速期間とする。この場合、第1減速期間の開始時点である減速開始点Dsの車速VSが上記関係式(式1)の「V1」に代入され、第1減速期間の終了時点の車速VSが上記関係式(式1)の「V2」に代入される。第1減速期間の終了時点は、減速開始点Dsと、減速終了点Deとの間の時点である。また、第2減速期間の開始時点の車速VSが上記関係式(式1)の「V1」に代入され、第2減速期間の終了時点である減速終了点Deの車速VSが上記関係式(式1)の「V2」に代入される。第2減速期間の開始時点は、第1減速期間の終了時点と同じである。そして、第1減速期間中の増加温度量ΔTと、第2減速期間中の増加温度量ΔTとが各小期間の増加温度量ΔTとしてそれぞれ算出されて、各小期間の増加温度量ΔTの合計値が減速期間における増加温度量ΔTとして算出される。
一方、ステップS301の処理において、減速開始点Dsおよび減速終了点Deの双方が設定されていない場合(S301:NO)、処理がステップS303に移行される。
ステップS303では、増加温度算出部21は、加速開始点Asおよび加速終了点Aeの双方が設定されているか否かを判定する。加速開始点Asおよび加速終了点Aeの双方が設定されている場合(S303:YES)、処理がステップS304に移行される。ステップS304では、増加温度算出部21は、加速昇温算出処理を実行する。すなわち、加速期間における増加温度量ΔTが算出される。その後、本処理ルーチンが終了される。
ここで、一例として加速期間を二分割した場合について説明する。加速期間における前半の小期間を第1加速期間として、加速期間における後半の小期間を第2加速期間とする。第1加速期間中の増加温度量ΔTと、第2加速期間中の増加温度量ΔTとが各小期間の増加温度量ΔTとしてそれぞれ算出されて、各小期間の増加温度量ΔTの合計値が加速期間における増加温度量ΔTとして算出される。
一方、ステップS303の処理において、加速開始点Asおよび加速終了点Aeの双方が設定されていない場合(S303:NO)、本処理ルーチンが終了される。
なお、温度導出処理において増加温度算出部21は、引き摺り期間中の定常期間、すなわち、減速期間の終了後であって加速開始点Asと加速終了点Aeとの間ではない期間において、定速昇温算出処理を実行する。定速昇温算出処理の実行によって、定常期間における増加温度量ΔTが算出される。
図6に示す処理ルーチンは、温度導出処理において冷却温度算出部22が実行する処理を示す処理ルーチンである。本処理ルーチンは、図3のステップS104の処理によって実行が開始され、図3のステップS106の処理が実行されるまで繰り返し実行される。
本処理ルーチンが開始されると、まずステップS401において、冷却温度算出部22は、制動開始が検出されているか否かを判定する。制動開始が検出されていない場合(S401:NO)、ステップS401の処理が繰り返し実行される。
一方、制動開始が検出されている場合(S401:YES)、処理がステップS402に移行される。ステップS402では、冷却温度算出部22は、冷却温度算出処理の実行を開始する。すなわち、冷却温度TCの算出が開始される。冷却温度算出処理の実行が開始されると、処理がステップS403に移行される。
ステップS403では、冷却温度算出部22は、制動開始が検出されているか否かを判定する。制動開始が検出されていない場合(S403:NO)、ステップS403の処理が繰り返し実行される。
一方、制動開始が検出されている場合(S403:YES)、処理がステップS404に移行される。ステップS404では、冷却温度算出部22は、冷却温度算出処理の実行を終了する。すなわち、冷却温度TCの算出が終了される。その後、本処理ルーチンが終了される。
また、ステップS403の処理において制動開始が検出されたとき、平行して実行されている別の処理ルーチンにおけるステップS401の処理において制動開始が検出されたと判定されることによって(S401:YES)、再びステップS402以降の処理の実行が開始される。
図7に示す処理ルーチンは、判定処理を実行する処理の流れを示す処理ルーチンである。本処理ルーチンは、図3のステップS104の処理によって実行が開始され、図3のステップS106の処理が実行されるまで繰り返し実行される。
本処理ルーチンが開始されると、まずステップS501において、温度導出部20は、冷却温度TCおよび増加温度量ΔTに基づいて、推定温度TEを導出する。温度導出部20は、減速期間における増加温度量ΔTを第1増加温度量として、加速期間における増加温度量ΔTを第2増加温度量とする。また、定常期間における増加温度量ΔTを第3増加温度量とする。そして、温度導出部20は、冷却温度TCと第1〜第3増加温度量との和に基づいて、推定温度TEを導出する。推定温度TEは、当該和が大きいほど高い値となる。推定温度TEを導出すると、処理がステップS502に移行される。
ステップS502では、判定部23は、推定温度TEが摩耗促進温度Tth1よりも高いか否かを判定する。推定温度TEが摩耗促進温度Tth1以下である場合(S502:NO)、本処理ルーチンが一旦終了される。
一方、推定温度TEが摩耗促進温度Tth1よりも高い場合(S502:YES)、処理がステップS503に移行される。ステップS503では、判定部23は、早期摩耗判定を行う。その後、処理がステップS504に移行される。
ステップS504では、判定部23は、推定温度TEが振動発生温度Tth2よりも高いか否かを判定する。推定温度TEが振動発生温度Tth2以下である場合(S504:NO)、本処理ルーチンが一旦終了される。
一方、推定温度TEが振動発生温度Tth2よりも高い場合(S504:YES)、処理がステップS505に移行される。ステップS505では、判定部23は、ブレーキ振動判定を行う。その後、処理がステップS506に移行される。
ステップS506では、判定部23は、推定温度TEがフェード温度Tth3よりも高いか否かを判定する。推定温度TEがフェード温度Tth3以下である場合(S506:NO)、本処理ルーチンが一旦終了される。
一方、推定温度TEがフェード温度Tth3よりも高い場合(S506:YES)、処理がステップS507に移行される。ステップS507では、判定部23は、制動能力低下判定を行う。その後、本処理ルーチンが終了される。
本実施形態の作用および効果について説明する。
制御装置10では、制動時の運動エネルギーが熱エネルギーに変換されることに基づいて、温度導出部20が実行する温度導出処理においてブレーキディスク75の増加温度量ΔTが算出される(S302)。さらに、制御装置10によって、引き摺りトルクの発生による増加温度量ΔTが算出される(S304)。また、制動の開始時点からの経過時間tと、雰囲気温度θ0と、ブレーキディスク75の冷却係数bvとに基づいて、ブレーキディスク75の冷却温度TCが算出される。
そして、温度導出処理では、上記のように算出された増加温度量ΔTと、冷却温度TCとの和に基づいてブレーキディスク75の温度として推定温度TEが導出される(S501)。すなわち、ブレーキディスク75の温度の検出を直接行うセンサ等を用いることなく、ブレーキディスク75の温度を推定することができる。
なお、温度導出部20は、減速期間および加速期間を設定する(S201〜S209)。これによって、車両90が運転状態IGonである期間を、ブレーキディスク75の温度の上昇量に応じて区分けすることが可能である。
また、制御装置10では、停止状態IGoffに移行してから規定期間Tithが経過すると推定温度TEが初期化される(S103)。すなわち、温度導出部20は、運転状態IGonが開始された時点から、運転状態IGonから停止状態IGoffに移行して規定期間Tithが経過する時点までの期間を、ブレーキディスク75の温度を導出する温度導出期間としている。温度導出部20は、停止状態IGoffに移行してから規定期間Tithが経過する前に再び運転状態IGonに移行した場合には、保持されている推定温度TEの値をブレーキディスク75の初期温度Θとして用いて冷却温度TCの算出を行う。一方で、停止状態IGoffに移行してから規定期間Tithが経過した後に再び運転状態IGonに移行した場合には、雰囲気温度θ0がブレーキディスク75の初期温度Θとして用いられる。これによって、実際のブレーキディスク75の温度と推定温度TEとが乖離することを抑制できる。すなわち、推定温度TEの精度が低下することを抑制できる。
さらに、制御装置10の判定部23は、推定温度TEが閾値よりも大きいか否かを判定することができる。
図8には、温度導出処理が七回実行された例を示している。図8に示すように、第2実行期D2および第4実行期D4では、推定温度TEが摩耗促進温度Tth1よりも大きくなっている。このため、判定部23によって、早期摩耗判定がなされる(S503)。すなわち、制御装置10によれば、ブレーキディスク75の温度に基づいて、パッド76の摩耗が著しく進行する虞のある早期摩耗状態を判定することができる。この場合、報知処理が実行されることで、パッド76の摩耗が進行しやすい状態である旨を車両90の乗員に伝えることができる。
第5実行期D5では、推定温度TEが振動発生温度Tth2よりも大きくなっている。このため、判定部23によって、早期摩耗判定に加えてブレーキ振動判定がなされる(S505)。この場合、報知処理が実行されることで、制動時に制動機構73で振動が発生する可能性がある旨を車両90の乗員に伝えることができる。
第6実行期D6では、推定温度TEがフェード温度Tth3よりも大きくなっている。このため、判定部23によって、早期摩耗判定およびブレーキ振動判定とともに制動能力低下判定がなされる(S507)。この場合、報知処理が実行されることで、フェード現象の発生によって制動能力が低下する可能性がある旨を車両90の乗員に伝えることができる。
第1実行期D1、第3実行期D3および第7実行期D7では、推定温度TEが摩耗促進温度Tth1よりも大きくなっていない。このため、判定部23は、いずれの判定も行わない。
すなわち、制御装置10の判定部23によれば、ブレーキディスク75の温度が過度に上昇した場合に、ブレーキディスク75の温度の過度な上昇によって生じ得る異常の発生を予測することができる。
なお、摩耗促進温度Tth1は、一般的に大気の温度よりも200℃以上高い値である。このため、早期摩耗状態を判定するためのブレーキディスク75の温度には、センサを用いて検出するような精度が要求されることがない。すなわち、ブレーキディスク75の温度の推定値である推定温度TEを用いても、早期摩耗状態の検出が可能である。推定温度TEの算出に用いる雰囲気温度θ0についても、センサを用いて検出するような精度は要求されない。
(第2実施形態)
第2実施形態では、上記第1実施形態における図3に示す処理に替えて図9に示す処理を実行する。その他の構成については、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
図9に示す処理ルーチンは、温度導出処理を実行するための処理ルーチンである。本処理ルーチンは、所定の周期毎に繰り返し実行される。
本処理ルーチンが開始されると、まずステップS601において、温度導出部20は、停止状態IGoffから運転状態IGonに移行したか否かを判定する。停止状態IGoffから運転状態IGonに移行していない場合(S601:NO)、ステップS601の処理が繰り返し実行される。一方で、停止状態IGoffから運転状態IGonに移行した場合(S601:YES)、処理がステップS602に移行される。
ステップS602では、冷却温度算出部22は、停止期間冷却温度を算出する。停止期間冷却温度は、停止状態IGoffが継続されている期間においてブレーキディスク75が冷却されることによるブレーキディスク75の温度として、上記関係式(式3)に基づいて算出される。たとえば、冷却温度算出部22は、停止状態IGoffが継続されていた期間を取得して、停止期間冷却温度を算出する。停止期間冷却温度が算出されると、処理がステップS603に移行される。
ステップS603では、温度導出部20は、推定温度TEの校正を行う。保持されている推定温度TEが、停止期間冷却温度を考慮して校正される。その後、処理がステップS604に移行される。
ステップS604以降の処理が実行されることによって、温度導出処理が実行される。なお、ステップS604、ステップS605、ステップS606の処理は、それぞれステップS104、ステップS105、ステップS106の処理と同様であるため、説明を省略する。
本実施形態の作用および効果について説明する。
第1実施形態では、停止状態IGoffに移行してから規定期間Tithが経過すると推定温度TEが初期化される。
これに対して、第2実施形態では、停止状態IGoffが継続されている期間中にブレーキディスク75が冷却されることを考慮して、停止期間冷却温度を算出することによって推定温度TEを校正することができる。これによって、実際のブレーキディスク75の温度と推定温度TEとが乖離することを抑制できる。
なお、本実施形態では、停止状態IGoffから運転状態IGonに移行したときに、停止状態IGoffが継続されている期間を取得して停止期間冷却温度を算出している。しかし、冷却温度算出部22は、運転状態IGonから停止状態IGoffに移行された時点から停止期間冷却温度の算出を開始して、停止状態IGoffから運転状態IGonに移行された時点において停止期間冷却温度の算出を終了するようにしてもよい。
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記各実施形態の報知装置92は、判定処理を実行した結果を車両90の乗員に報知する機能を備えている。報知装置92は、車両90の外部に位置するデータセンター等と通信する機能を備えていてもよい。すなわち、判定処理を実行した結果を車両90の外部に送信することもできる。このような場合にあっては、判定処理を実行した結果を車両90の乗員に伝えるような報知処理を実行しなくてもよい。
・上記各実施形態では、判定処理として、推定温度TEが第1閾値である摩耗促進温度Tth1よりも大きいか否かの判定を行っている。ここで、一般的に車両では、前輪と後輪とで制動機構によって制動力が付与されるタイミングおよび期間が異なっている。このため、前輪と後輪とで判定の方法を変更することによって早期摩耗状態の検出精度が向上する場合がある。たとえば、摩耗促進温度Tth1は、車両90の前輪と後輪とで異なる値を設定してもよい。
摩耗促進温度Tth1と同様に、振動発生温度Tth2およびフェード温度Tth3についても、車両90の前輪と後輪とで異なる値を設定してもよい。また、各閾値は、車輪毎に異なる値を設定することもできる。
・判定処理として、推定温度TEが第1閾値である摩耗促進温度Tth1よりも大きいか否かの判定を行うのであれば、他の判定処理を実行しなくてもよい。すなわち、推定温度TEが摩耗促進温度Tth1よりも大きいか否かを判定する判定処理を判定部23に実行させるのであれば、推定温度TEが振動発生温度Tth2よりも大きいか否かを判定する判定処理を判定部23に実行させなくてもよい。また、推定温度TEが摩耗促進温度Tth1よりも大きいか否かを判定する判定処理を判定部23に実行させるのであれば、推定温度TEがフェード温度Tth3よりも大きいか否かを判定する判定処理を判定部23に実行させなくてもよい。
・上記各実施形態では、増加温度算出部21は、制動昇温算出処理を実行して、減速期間を等間隔に分割した小期間毎に増加温度量ΔTを算出する。また、増加温度算出部21は、加速昇温算出処理を実行して、加速期間を等間隔に分割した小期間毎に増加温度量ΔTを算出する。減速期間と加速期間のそれぞれの期間について、小期間の数は、適宜設定が可能である。
・増加温度算出部21は、定速昇温算出処理において、制動昇温算出処理または加速昇温算出処理と同様に、定常期間を等間隔に分割した小期間毎に増加温度量ΔTを算出してもよい。小期間の数は、適宜設定が可能である。
・増加温度算出部21は、加速期間と定常期間とを合わせて一つの期間として扱って増加温度量ΔTを算出することもできる。すなわち、加速昇温算出処理および定速昇温算出処理を実行することに替えて、引き摺り期間における増加温度量ΔTを算出する処理を実行してもよい。この処理では、引き摺り期間を等間隔に分割した小期間毎に増加温度量ΔTを算出してもよいし、引き摺り期間を複数に分割することなく増加温度量ΔTを算出してもよい。
・上記各実施形態では、制動昇温算出処理において、減速期間を小期間に分割している。制動昇温算出処理では、減速期間を複数に分割しなくてもよい。この場合、減速期間における減速開始点Dsの車速VSを上記関係式(式1)の「V1」に代入し、減速期間における減速終了点Deの車速VSを上記関係式(式1)の「V2」に代入することによって、減速期間中の増加温度量ΔTを算出できる。
・上記各実施形態では、加速昇温算出処理において、加速期間を小期間に分割している。加速昇温算出処理では、加速期間を複数に分割しなくてもよい。
・上記各実施形態において、温度導出部20は、ブレーキペダル93の操作が終了されたときを減速終了点Deとして設定している。これに替えて、車速VSが増加し始めたときを減速終了点Deとして設定することもできるし、車速VSの減少が停止した時点を減速終了点Deとして設定することもできる。こうした場合でも上記各実施形態と同様に減速期間の設定が可能である。
・制御装置10は、発電機による発電によって回生制動力を車両90に付与する回生制動装置を備える車両90に適用することもできる。この場合の増加温度量ΔTは、上記関係式(式1)によって算出される増加温度量ΔTを、制動力のうち回生制動力の割合を示す回生比率γによって補正することで算出が可能である。
なお、回生制動装置によって回生制動力を付与しているときには、加速期間または定常期間と同様に引き摺りトルクが発生しうる。このため、回生制動力を付与したときの推定温度TEについては、回生制動力を付与している期間における引き摺りトルクによる増加温度量ΔTを考慮するとよい。すなわち、回生制動力を付与したときの推定温度TEの算出には、上記関係式(式2)によって算出される引き摺りトルクによる増加温度量ΔTも用いるとよい。
・上記各実施形態では、冷却係数bvとして、ブレーキディスク75の特性に基づいて算出される値を採用している。ここで、ブレーキディスク75の冷却は、車両90の走行状態によっても変化する。すなわち、冷却係数bvは、車速VSに応じて異なる値となるように実験から導かれた値を採用してもよい。
・上記第1実施形態では、図3のステップS101において、停止状態IGoffから運転状態IGonに移行した場合に処理がステップS102に移行される。車両90が停止状態IGoffから運転状態IGonに移行した場合に図3に示す処理ルーチンの実行が開始されるように構成すれば、ステップS101の処理を省略することもできる。
上記第2実施形態でも同様に、車両90が停止状態IGoffから運転状態IGonに移行した場合に図9に示す処理ルーチンの実行が開始されるように構成すれば、ステップS601の処理を省略することもできる。
・運転状態IGonが開始された時点から、運転状態IGonから停止状態IGoffに移行する時点までの期間を、ブレーキディスク75の温度を導出する温度導出期間としてもよい。すなわち、運転状態IGonが継続されている期間を温度導出期間としてもよい。たとえば、図3のステップS102の処理を省略して、停止状態IGoffから運転状態IGonに移行した場合に処理がステップS101からステップS103に移行されるようにしてもよい。なお、この場合に、ステップS103の処理をさらに省略することもできる。すなわち、温度導出処理を開始する前に推定温度TEを初期化してもよいし、推定温度TEを初期化しない構成を採用してもよい。
・上記各実施形態では、制動機構73としてディスクブレーキを採用している。制動機構73としては、回転体であるドラムに摩擦材であるブレーキシューが押し付けられることによって制動力を付与可能なドラムブレーキを採用することもできる。制動機構73がドラムブレーキである場合でも、ディスクブレーキの場合と同様に、回転体の温度が閾値を超えると摩擦材の摩耗が著しく進行するという問題がある。このため、ドラムブレーキを採用する車両90の制御装置10であっても、回転体の温度が摩耗促進温度Tth1よりも大きいか否かを判定することによって、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
・上記各実施形態では、車両90の運転者によってブレーキペダル93が操作されている期間を、制動機構73の作動によって車両90に制動力が付与される期間である減速期間としている。しかし、運転者によるブレーキペダル93の操作に限らず制動機構73の作動によって車両90に制動力が付与されることもある。たとえば、制御装置10によって制動機構73が作動される場合がある。この場合、制御装置10に制動指示が入力されたことに起因する制動アクチュエータ71の駆動によってホイールシリンダ74の液圧が調整されている期間を減速期間としてもよい。
・上記各実施形態では、ブレーキ検出部12は、ブレーキペダルセンサ81からの検出信号に基づいて、ブレーキペダル93の操作状態を検出する。ブレーキペダル93の操作状態は、ブレーキペダルセンサ81以外のセンサからの検出信号に基づいて検出することもできる。たとえば、ブレーキ検出部12は、マスタシリンダ液圧を検出する圧力センサからの検出信号に基づいて、ブレーキペダル93の操作状態を検出することもできる。また、ブレーキ検出部12は、ホイールシリンダ液圧を検出する圧力センサからの検出信号に基づいて、ブレーキペダル93の操作状態を検出することもできる。
・上記各実施形態では、制御装置10が適用される車両90は、ブレーキディスク75の温度を検出する温度センサを備えていない。制御装置10は、ブレーキディスク75の温度として推定温度TEを導出して、推定温度TEが閾値よりも大きいか否かを判定する判定処理を実行する。
車両90は、ブレーキディスク75の温度を検出する温度センサを備えていてもよい。制御装置10は、温度センサの検出信号に基づいて算出されるブレーキディスク75の温度を用いて判定処理を実行してもよい。こうした構成であっても、上記実施形態と同様に、ブレーキディスク75の温度の過度な上昇を検知することができる。