JP2021001288A - 潤滑油用粘度調整剤、潤滑油用添加剤組成物および潤滑油組成物 - Google Patents

潤滑油用粘度調整剤、潤滑油用添加剤組成物および潤滑油組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、粘度指数と低温粘度のバランスに優れる潤滑油組成物を得るための潤滑油用粘度調整剤および潤滑油用添加剤組成物の提供を目的とする。【解決手段】エチレンから導かれる構造単位が87〜99mol%の範囲にあり融点(Tm)が50〜100℃の範囲にある特定の樹脂(α)と、エチレンから導かれる構造単位が30〜65mol%の範囲にあり融点を持たない特定の樹脂(β)とを含む潤滑油用粘度調整剤。【選択図】なし

Description

本発明は、潤滑油用粘度調整剤、およびそれを含む潤滑油用添加剤組成物および潤滑油組成物に関する。
石油製品は一般に温度変化により粘度が大きく変化する、いわゆる粘度の温度依存性を有しているが、自動車用のエンジン油・ギア油や作動油等として使用される潤滑油は、低温から高温まで広い範囲にわたって粘度ができるだけ変化しないことが実用上望ましい。この尺度として粘度指数が用いられ、粘度指数が大きいほど温度変化に対する安定性が高い。そこで潤滑油には、粘度の温度依存性を小さくする目的で、鉱物油等の潤滑油基油に可溶な、ある種の重合体が粘度指数向上剤として用いられている。
このような潤滑油用粘度調整剤としてエチレン・α−オレフィン共重合体が広く用いられており、潤滑油の性能を改良する方法としては、モノマーの種類、モル比などを調整する方法、ランダム、ブロックなどのモノマー配列を変える方法、組成の異なるポリマーをブレンドする方法、エチレン・α−オレフィン共重合体に極性モノマーをグラフト共重合する方法などがあり、従来から種々の方法が試みられている。
特許文献1に記載された粘度調整剤は、該調整剤を含む潤滑油組成物の低温粘度低減をもたらし、エンジン内温が低温条件下(例えばエンジン始動時)における燃費の向上に一定の寄与がなされている。しかしながら、省燃費化に対する要求が高まる中、さらなる低温粘度の低減が求められている。
潤滑油組成物の高温特性と低温特性をバランス良く改良する方法として、エチレン含量の高いエチレン・プロピレン共重合体を粘度調整剤として使用する方法(たとえば、特許文献2参照)があるが、エチレン含量を高めると、低温特性は向上するものの、粘度調整剤のエチレン連鎖部が低温で結晶化してしまい、潤滑油組成物の低温化における貯蔵安定性が低下するおそれがある。このような状況において、低温下における貯蔵安定性に優れ、かつ低温での粘度特性に優れる潤滑油組成物を得るための潤滑油用粘度調整剤が求められている。
潤滑油組成物の低温貯蔵安定性と低温特性を改良する方法として、エチレン由来の構成単位量の異なるエチレン・αオレフィンコポリマーのブレンドを潤滑油の粘度調整剤として使用する方法(たとえば、特許文献3、4参照)や、エチレン由来の構成単位量の異なるエチレン・αオレフィンの重合体ブロックを有するオレフィンブロック共重合体を潤滑油の粘度調整剤として使用する方法(たとえば、特許文献5参照)が知られている。
国際公開第2000/060032号 国際公開第2000/034420号 特開2003−105365号公報 米国特許第3,697,429号公報 国際公開第2008/047878号
しかしながら、従来のエチレン・α−オレフィン共重合体を使用した潤滑油粘度調整剤を用いた潤滑油組成物は、粘度指数と低温粘度のバランスで不十分であった。
本発明は、粘度指数と低温粘度のバランスに優れる潤滑油組成物を得るための潤滑油用粘度調整剤および潤滑油用添加剤組成物の提供を目的とする。
本発明者は、鋭意研究した結果、特定の要件を満たす潤滑油用粘度調整剤を潤滑油用添加剤組成物に用いると上記課題を解決できることを見出した。すなわち本発明は、次の〔1〕〜〔11〕に関する。
〔1〕樹脂(α)と樹脂(β)とを含む潤滑油用粘度調整剤であって、
前記樹脂(α)が下記要件(I)−1および(I)−2を満たし、
前記樹脂(β)が下記要件(II)−1および(II)−2を満たし、かつ、
前記樹脂(α)および前記樹脂(β)の両方が、下記要件(III)−1を満たすことを特徴とする潤滑油用粘度調整剤。
(I)−1:エチレンと、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとの共重合体であって、エチレンから導かれる構造単位が87〜99mol%の範囲にある。
(I)−2:示差走査熱量分析(DSC)によって測定された融点(Tm)が50〜100℃の範囲にある。
(II)−1:エチレンと、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとの共重合体であって、エチレンから導かれる構造単位が30〜65mol%の範囲にある。
(II)−2:示差走査熱量分析(DSC)によって測定された融点(Tm)を持たない。
(III)−1:135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5〜2.5dl/gの範囲にある。
〔2〕前記樹脂(α)1〜99質量部と、前記樹脂(β)99〜1質量部と(ただし、樹脂(α)と樹脂(β)の合計を100質量部とする)を含む、前記〔1〕に記載の潤滑油用粘度調整剤。
〔3〕前記樹脂(α)および前記樹脂(β)の両方が、エチレンから導かれる構造単位とプロピレンから導かれる構造単位とからなる、前記〔1〕または〔2〕に記載の潤滑油用粘度調整剤。
〔4〕前記樹脂(α)および前記樹脂(β)の両方が、下記要件(III)−2をさらに満たす、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の潤滑油用粘度調整剤。
(III)−2:JIS K7112に準拠し密度勾配管法により測定した密度が850〜880kg/m3の範囲にある。
〔5〕前記樹脂(α)が、下記要件(I)−3をさらに満たす、前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の潤滑油用粘度調整剤。
(I)−3:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される重量平均分子量(Mw)が70000〜400000の範囲にある。
〔6〕前記樹脂(β)が、下記要件(II)−3をさらに満たす、前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の潤滑油用粘度調整剤。
(II)−3:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される重量平均分子量(Mw)が1000〜70000の範囲にある。
〔7〕前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の潤滑油用粘度調整剤(A)1〜50質量部と、油(B)50〜99質量部と(ただし、潤滑油用粘度調整剤(A)と、油(B)の合計を100質量部とする)を含む、潤滑油用添加剤組成物。
〔8〕前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の潤滑油用粘度調整剤(A)0.1〜5質量部と、潤滑油基材(BB)95〜99.9質量部と(ただし、潤滑油用粘度調整剤(A)と、潤滑油基材(BB)の合計を100質量部とする)を含む、潤滑油組成物。
〔9〕流動点降下剤(C)を、該潤滑油組成物100質量%中に、0.05〜5質量%の量で含む、前記〔8〕に記載の潤滑油組成物。
〔10〕前記潤滑油基材(BB)が鉱物油である、前記〔8〕または〔9〕に記載の潤滑油組成物。
〔11〕前記潤滑油基材(BB)が合成油である、前記〔8〕または〔9〕に記載の潤滑油組成物。
本発明の潤滑油用粘度調整剤を用いることで、高温での粘度特性に優れるとともに、低温特性にも優れ、粘度指数と低温粘度のバランスが良好な潤滑油組成物を提供することができる。また本発明によれば、当該潤滑油組成物を提供することができる、潤滑油用添加剤組成物を提供することができる。
以下、本発明について具体的に説明する。なお、以下の説明において、数値範囲を示す「〜」は、特に断りがなければ以上から以下を表す。
<潤滑油用粘度調整剤>
本発明の潤滑油用粘度調整剤は、樹脂(α)と樹脂(β)とを含む。以下に各構成成分につき詳述する。
樹脂(α)
本発明の潤滑油用粘度調整剤を構成する樹脂(α)は、下記要件(I)−1、(I)−2、および要件(III)−1を満たす。また該樹脂(α)は、これらの要件に加え、好ましくはさらに要件(I)−3、(I)−4、(III)−2のうち少なくとも1つを満たす。
・(I)−1:エチレンと、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとの共重合体であって、エチレンから導かれる構造単位が87〜99mol%の範囲にある。
エチレンから導かれる構造単位の割合が上記上限値以下であることにより、低温下における貯蔵安定性に優れ、上記下限値以上にあることにより低温での粘度特性に優れる。炭素原子数3〜12のα−オレフィンから導かれる構造単位の割合が上記上限値以下であることにより、低温での粘度特性に優れ、上記下限値以上にあることにより低温下における貯蔵安定性に優れる。エチレンから導かれる構造単位と、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから選択される少なくとも一種のα−オレフィンから導かれる構造単位とのモル比は、原料のモノマー比を調整することにより上記範囲内とすることができる。
樹脂(α)中のエチレン由来の構造単位は、「高分子分析ハンドブック」(日本分析化学会、高分子分析研究懇談会編、紀伊国屋書店発行、1995年1月12日発行)に記載の方法に従って、13C−NMRで測定することができる。
樹脂(α)を構成する炭素原子数3〜12のα−オレフィンは、一種を単独で用いることもできるし、複数種を組み合わせて用いることもできる。
炭素原子数3〜12のα−オレフィンとしては具体的にはプロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、メチルエチル−1−ブテン、1−オクテン、メチル−1−ペンテン、エチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、プロピル−1−ヘプテン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等が挙げられる。
より好ましくは、炭素原子数3〜12のα−オレフィンは、炭素原子数3〜10のα−オレフィンであり、さらにより好ましくは炭素原子数3〜8のα−オレフィンである。具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどの直鎖状オレフィン、および4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン等の分岐状オレフィンを挙げることができ、中でもプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましく、プロピレンが更に好ましい。プロピレンを用いることが剪断安定性に優れる点から好ましい。すなわち、樹脂(α)は、最も好ましくは、エチレンから導かれる構造単位とプロピレンから導かれる構造単位からなる。
・(I)−2:示差走査熱量分析(DSC)によって測定された融点(Tm)が50〜100℃の範囲にある。
融点(Tm)は種々の因子によって調整されるが、主に樹脂の構造単位の構成により調整され、樹脂(α)では、エチレンから導かれる構造単位の含有割合が大きくなると融点(Tm)は高くなり、含有割合が小さくなると融点(Tm)は低くなる傾向となる。すなわち、樹脂(α)を製造する際の重合反応系中に存在させるエチレンの濃度とα−オレフィンの濃度との割合を制御することにより上記範囲に調整できる。融点(Tm)は、エチレンから導かれる構造単位の含有割合を大きくすることで高くなる傾向がある。示差走査型熱量測定(DSC)による融点(Tm)の測定方法は実施例の項で詳述する。
本発明に係る樹脂(α)の示差走査熱量分析(DSC)によって測定された融点(Tm)は、より好ましくは50〜150の範囲である。
・(I)−3:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される重量平均分子量(Mw)が70000〜400000の範囲にある。より好ましくは80000〜300000の範囲、さらに好ましくは100000〜250000の範囲にある。
本発明において、重量平均分子量は、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を示す。GPCの測定方法は実施例の項で詳述する。
該重量平均分子量(Mw)は、樹脂(α)の重合時の重合温度、水素などの分子量調節剤などを制御することで上記範囲内とすることができる。
・(I)−4:樹脂(α)の、GPCにより測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との割合(分子量分布、Mw/Mn)は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、1.0〜20.0の範囲にあることが好ましく、1.4〜15.0の範囲にあることがより好ましく、1.8〜10.0の範囲にあることがさらに好ましい。
・(III)−1:135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5〜2.5dl/gの範囲にある。
樹脂(α)の極限粘度[η]は、好ましくは0.55〜2.0dl/gであり、より好ましくは0.6〜1.8dl/gである。樹脂(α)の極限粘度[η]が上記範囲にあることで剪断安定性に優れる。
該極限粘度[η]は、樹脂(α)の重合時の重合温度、水素などの分子量調節剤などを制御することで上記範囲内とすることができる。
・(III)−2:好ましくは、JIS K7112に準拠し密度勾配管法により測定した密度が850〜880kg/m3の範囲にある。樹脂(α)の密度は、より好ましくは850〜877kg/m3の範囲、特に好ましくは850〜874kg/m3の範囲にある。上記範囲にあることは低温粘度を低減できる点において好ましい。
上述のような樹脂(α)を含有する潤滑油用粘度調整剤を含む潤滑油組成物は、従来の潤滑油組成物よりも低温下における貯蔵安定性に優れ、かつ低温での粘度特性に優れる。
樹脂(β)
本発明の潤滑油用粘度調整剤を構成する樹脂(β)は、下記要件(II)−1、(II)−2、および要件(III)−1を満たす。また該樹脂(β)は、好ましくはさらに要件(II)−3、(III)−2のうち少なくとも1つを満たす。
・(II)−1:エチレンと、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとの共重合体であって、エチレンから導かれる構造単位が30〜65mol%の範囲にある。
樹脂(β)は、エチレンから導かれる構造単位の割合が全構造単位に対し30〜65mol%、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから導かれる構造単位単位の割合が全構造単位に対し35〜70mol%(ただしエチレンから導かれる構造単位と、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから導かれる構造単位との合計を100mol%とする)の範囲にある。エチレンから導かれる構造単位の割合は、好ましくは35〜60mol%、より好ましくは40〜58mol%であり、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから導かれる構造単位の割合は、好ましくは40〜65mol%、より好ましくは42〜60mol%である。
樹脂(β)を構成する炭素原子数3〜12のα−オレフィンは、一種を単独で用いることもできるし、複数種を組み合わせて用いることもできる。樹脂(β)を構成する炭素原子数3〜12のα−オレフィンとしては、樹脂(α)を構成する炭素原子数3〜12のα−オレフィンとして上述したものを挙げることができる。
・(II)−2:示差走査熱量分析(DSC)によって測定された融点(Tm)を持たない。
樹脂の結晶性が低い(非晶性である)場合には、示差走査熱量分析(DSC)で観測される融点ピークを示さない傾向があり、この場合には融点(Tm)を持たないと評価される。樹脂(β)が融点(Tm)を持たないのは、エチレンから導かれる構造単位量が比較的多く、エチレンから導かれる構造単位とα−オレフィンから導かれる構造単位とがランダムに結合することに起因する。
・(II)−3:好ましくは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される重量平均分子量(Mw)が1000〜100000の範囲にある。樹脂(β)の重量平均分子量(Mw)は、より好ましくは5000〜100000の範囲、さらに好ましくは10000〜100000の範囲にある。
・(III)−1:135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5〜2.5dl/gの範囲にある。
樹脂(β)の極限粘度[η]が、樹脂(α)と同様に上記範囲にあることで剪断安定性に優れる。樹脂(β)の極限粘度[η]は、好ましくは0.55〜2.0dl/gであり、より好ましくは0.6〜1.8dl/gである。該極限粘度[η]は、樹脂(β)の重合時の重合温度、水素などの分子量調節剤などを制御することで上記範囲内とすることができる。
・(III)−2:好ましくは、JIS K7112に準拠し密度勾配管法により測定した密度が850〜880kg/m3の範囲にある。樹脂(β)の密度は、より好ましくは850〜877kg/m3の範囲、特に好ましくは850〜874kg/m3の範囲にある。樹脂(β)の密度が上記範囲にあることは低温粘度を低減できる点において好ましい。本発明では、樹脂(α)と樹脂(β)の両方の密度が、上記範囲を満たすことがより好ましい。
<樹脂(α)および樹脂(β)の調製>
樹脂(α)と樹脂(β)は、公知のチーグラー触媒やメタロセン触媒等の重合触媒を用いて得ることができる。
樹脂(α)を好適に製造し得る触媒としては、たとえば、後述する架橋メタロセン化合物[A]を含む重合触媒が挙げられ、好ましくは、架橋メタロセン化合物[A]とともに、後述する化合物[C]を含む重合触媒が挙げられる。また、樹脂(β)を好適に製造し得る触媒としては、たとえば、後述する遷移金属化合物[B]を含む重合触媒が挙げられ、好ましくは、遷移金属化合物[B]とともに、後述する化合物[C]を含む重合触媒が挙げられる。
・架橋メタロセン化合物[A]
樹脂(α)の製造に好適に用いられる架橋メタロセン化合物[A]は、下記一般式[A]で表される化合物である。
Figure 2021001288
(式[A]中、R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9およびR12はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示し、R1〜R4のうち相互に隣り合う二つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよい。
6およびR11は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、R7およびR10は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、R6およびR7は互いに結合して環を形成していてもよく、R10およびR11は互いに結合して環を形成していてもよく;ただし、R6、R7、R10およびR11が全て水素原子であることはない。
1はジルコニウム原子またはハフニウム原子を示す。
Qはハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭素数4〜10の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示し、jは1〜4の整数を示し、jが2以上の整数の場合は複数あるQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
架橋メタロセン化合物[A]は、好ましくは後述する化合物[C]との組み合わせにより、融点(Tm)が50〜100℃の範囲にあるエチレン・α−オレフィンである樹脂(α)を製造する重合触媒として好適に機能する。
以下、本発明で用いられうる架橋メタロセン化合物[A]の化学構造上の特徴について説明する。
架橋メタロセン化合物[A]は、構造上、次の特徴[m1]および[m2]を備える。
[m1]二つの配位子のうち、一つは置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基であり、他の一つは置換基を有するフルオレニル基(以下「置換フルオレニル基」ともいう。)である。
[m2]二つの配位子が、エチレン架橋部(以下「架橋部」ともいう。)によって結合されている。
以下、架橋メタロセン化合物[A]が有する、置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基、置換フルオレニル基、架橋部およびその他特徴について、順次説明する。
(置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基)
式[A]中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示すものであり、好ましくは、R1、R2、R3およびR4は全て水素原子であるか、またはR1、R2、R3およびR4のいずれか一つ以上がメチル基であり残りは水素原子である構造が特に好ましい。
(置換フルオレニル基)
式[A]中、R5、R8、R9およびR12はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示し、水素原子、炭化水素基またはケイ素含有基が好ましい。R6およびR11は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、水素原子、炭化水素基およびケイ素含有基が好ましく;R7およびR10は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、水素原子、炭化水素基およびケイ素含有基が好ましく;R6およびR7は互いに結合して環を形成していてもよく、R10およびR11は互いに結合して環を形成していてもよく;ただし、R6、R7、R10およびR11が全て水素原子であることはない。
重合活性の視点からは、R6およびR11がいずれも水素原子でないことが好ましく;R6、R7、R10およびR11がいずれも水素原子ではないことがさらに好ましく;R6およびR11が炭化水素基およびケイ素含有基から選ばれる同一の基であり、且つR7とR10が炭化水素基およびケイ素含有基から選ばれる同一の基であることが特に好ましい。また、R6およびR7が互いに結合して脂環または芳香環を形成し、R10およびR11が互いに結合して脂環または芳香環を形成していることも好ましい。
5〜R12における好ましい基としては、例えば、炭化水素基(好ましくは炭素原子数1〜20の炭化水素基、以下「炭化水素基(f1)」として参照することがある。)またはケイ素含有基(好ましくは炭素原子数1〜20のケイ素含有基、以下「ケイ素含有基(f2)」として参照することがある。)が挙げられる。その他、ハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、窒素含有基などのヘテロ原子含有基(ケイ素含有基(f2)を除く)を挙げることもできる。
炭化水素基(f1)としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基、アリル(allyl)基などの直鎖状炭化水素基;イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、アミル基、3−メチルペンチル基、ネオペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1−メチル−1−プロピルブチル基、1,1−プロピルブチル基、1,1−ジメチル−2−メチルプロピル基、1−メチル−1−イソプロピル−2−メチルプロピル基などの分岐状炭化水素基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの環状飽和炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの環状不飽和炭化水素基およびこれらの核アルキル置換体;ベンジル基、クミル基などの、飽和炭化水素基が有する少なくとも1つの水素原子がアリール基で置換された基が挙げられる。
5〜R12におけるケイ素含有基(f2)としては、好ましくは炭素原子数1〜20のケイ素含有基であり、例えば、シクロペンタジエニル基の環炭素にケイ素原子が直接共有結合している基が挙げられ、具体的には、シクロペンタジエニル基の環炭素にアルキルシリル基(例:トリメチルシリル基)、アリールシリル基(例:トリフェニルシリル基)が結合している基が挙げられる。
ヘテロ原子含有基(ケイ素含有基(f2)を除く)としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基N−メチルアミノ基、トリフルオロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基が挙げられる。
炭化水素基(f1)の中でも、炭素原子数1〜20の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基などが好適な例として挙げられる。
6およびR7(R10およびR11)が互いに結合して脂環または芳香環を形成した場合の置換フルオレニル基としては、後述する一般式[II]〜[VI]で表される化合物に由来する基が好適な例として挙げられる。
(架橋メタロセン化合物[A]のその他の特徴)
式[A]中、Qはハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭素原子数4〜10の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示し、jは1〜4の整数を示し、jが2以上の整数の場合は複数あるQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
Qにおける炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜10の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基、炭素原子数3〜10の脂環族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1,1,2,2−テトラメチルプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,1,3−トリメチルブチル基、ネオペンチル基が挙げられる。脂環族炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1−メチル−1−シクロヘキシル基が挙げられる。
Qにおけるハロゲン化炭化水素基としては、Qにおける上記炭化水素基が有する少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
1はジルコニウム原子またはハフニウム原子を示し、ジルコニウム原子がより好ましい。
(好ましい架橋型メタロセン化合物[A]の例示)
以下に架橋型メタロセン化合物[A]の、置換フルオレニル基部分の具体例を示す。なお、例示化合物中、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニルとは式[II]で示される構造の化合物に由来する基を指し、オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニルとは式[III]で示される構造の化合物に由来する基を指し、ジベンゾフルオレニルとは式[IV]で示される構造の化合物に由来する基を指し、1,1',3,6,8,8'−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニルとは式[V]で示される構造の化合物に由来する基を指し、1,3,3',6,6',8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニルとは式[VI]で示される構造の化合物に由来する基を指す。
Figure 2021001288
Figure 2021001288
Figure 2021001288
Figure 2021001288
Figure 2021001288
架橋メタロセン化合物[A]としては、例えば、
エチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(1,1',3,6,8,8'−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3',6,6',8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、が挙げられる。
架橋メタロセン化合物[A]としては、上記例示の化合物の「ジクロリド」を「ジフロライド」、「ジブロミド」、「ジアイオダイド」、「ジメチル」または「メチルエチル」などに代えた化合物、「シクロペンタジエニル」を「3−tert−ブチル−5−メチル−シクロペンタジエニル」、「3,5−ジメチル−シクロペンタジエニル」、「3−tert−ブチル−シクロペンタジエニル」または「3−メチル−シクロペンタジエニル」などに替えた化合物を挙げることもできる。
以上の架橋メタロセン化合物[A]は公知の方法によって製造可能であり、特に製造方法が限定されるわけではない。公知の方法としては、例えば、本出願人による国際公開第01/27124号パンフレット、国際公開第04/029062号パンフレットに記載の方法が挙げられる。
以上のような架橋メタロセン化合物[A]は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
・遷移金属化合物[B]
遷移金属化合物[B]は、ジメチルシリルビスインデニル骨格を有する配意子を含む周期表第4族の遷移金属化合物である。遷移金属化合物[B]は、好ましくは後述する化合物[C]との組み合わせにより、本発明に係る樹脂(β)を製造する重合触媒として好適に機能する。
ジメチルシリルビスニンデニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物[A]としては、Resconi, L. JACS 1992, 114, 1025−1032などで例示されている化合物が知られており、末端不飽和非晶性重合体を製造するオレフィン重合用触媒を好適に用いることが出来る。
そのほかに、ジメチルシリルビスニンデニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物[B]として、特開平6−100579、特表2001−525461、特開2005−336091、特開2009−299046、特開平11−130807、特開2008−285443等により開示されている化合物を好適に用いることができる。
上記ジメチルシリルビスニンデニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物[B]としてより具体的には、架橋ビス(インデニル)ジルコノセン類又はハフノセン類からなる群から選択される化合物を好適な例として挙げることができる。より好ましくは、ジメチルシリル架橋ビス(インデニル)ジルコノセン又はハフノセンである。さらに好ましくは、ジメチルシリル架橋ビス(インデニル)ジルコノセンであり、ジルコノセンを選択することで、末端不飽和エチレン・α−オレフィン共重合体の挿入反応により生じる長鎖分岐ポリマーの生成が抑制される。
より具体的には、ジメチルシリルビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド又はジメチルシリルビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジメチルを好適な遷移金属化合物[B]として用いることができる。
・化合物[C]
本発明における樹脂(α)は、重合触媒として上述した架橋メタロセン化合物[A]とともに化合物[C]を用いることにより、好適に製造することができる。また、本発明における樹脂(β)は、重合触媒として上述した遷移金属化合物[B]とともに化合物[C]を用いることにより、好適に製造することができる。以下、化合物[C]について具体的に説明する。
化合物[C]は、架橋メタロセン化合物[A]または遷移金属化合物[B]と反応して、オレフィン重合用触媒として機能するものであり、具体的には、[C1]有機金属化合物、[C2]有機アルミニウムオキシ化合物、および、[C3]架橋メタロセン化合物[A]または遷移金属化合物[B]と反応してイオン対を形成する化合物、から選ばれるものである。以下、[C1]〜[C3]の化合物について順次説明する。
([C1]有機金属化合物)
本発明で用いられる[C1]有機金属化合物として、具体的には下記の一般式(C1−a)で表わされる有機アルミニウム化合物、一般式(C1−b)で表わされる周期表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物、および一般式(C1−c)で表わされる周期表第2族または第12族金属のジアルキル化合物が挙げられる。なお、[C1]有機金属化合物には、後述する[C2]有機アルミニウムオキシ化合物は含まないものとする。
Figure 2021001288
上記一般式(C1−a)中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Yはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3、qは0≦q<3、rは0≦r<3、sは0≦s<3の数であり、かつp+q+r+s=3である。)
Figure 2021001288
上記一般式(C1−b)中、M3はLi、NaまたはKを示し、Rcは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す。)
Figure 2021001288
上記一般式(C1−c)中、RdおよびReは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、M4はMg、ZnまたはCdである。
上記一般式(C1−a)で表わされる有機アルミニウム化合物としては、次のような一般式(C−1a−1)〜(C−1a−4)で表わされる化合物を例示できる。
Figure 2021001288
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、pは好ましくは1.5≦p≦3の数である。)
Figure 2021001288
(式中、Raは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Yはハロゲン原子を示し、pは好ましくは0<p<3の数である。)
Figure 2021001288
(式中、Raは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、pは好ましくは2≦p<3の数である。)
Figure 2021001288
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Yはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3、qは0≦q<3、sは0≦s<3の数であり、かつp+q+s=3である。)
一般式(C1−a)に属する有機アルミニウム化合物としてより具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリn−アルキルアルミニウム;
トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec−ブチルアルミニウム、トリtert−ブチルアルミニウム、トリ2−メチルブチルアルミニウム、トリ3−メチルブチルアルミニウム、トリ2−メチルペンチルアルミニウム、トリ3−メチルペンチルアルミニウム、トリ4−メチルペンチルアルミニウム、トリ2−メチルヘキシルアルミニウム、トリ3−メチルヘキシルアルミニウム、トリ2−エチルヘキシルアルミニウムなどのトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;
トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム;
トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウム;ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド;
(i−C49xAly(C510z(式中、x、y、zは正の数であり、z≧2xである。)などで表されるトリイソプレニルアルミニウムなどのトリアルケニルアルミニウム;イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシド、イソブチルアルミニウムイソプロポキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド;
ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
a 2.5Al(ORb0.5で表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す);
ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)、エチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)、ジイソブチルアルミニウム(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)、イソブチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)などのジアルキルアルミニウムアリーロキシド;
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド;
エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;
エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;
エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
また(C1−a)に類似する化合物も本発明に使用することができ、そのような化合物として例えば、窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。このような化合物として具体的には、(C252AlN(C25)Al(C252などを挙げることができる。
上記一般式(C1−b)に属する化合物としては、LiAl(C254、LiAl(C7154などを挙げることができる。
上記一般式(C1−c)に属する化合物としては、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛、ジ−n−プロピル亜鉛、ジイソプロピル亜鉛、ジ−n−ブチル亜鉛、ジイソブチル亜鉛、ビス(ペンタフルオロフェニル)亜鉛、ジメチルカドミウム、ジエチルカドミウムなどを挙げることができる。
またその他にも、[C1]有機金属化合物としては、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、プロピルマグネシウムブロミド、プロピルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリドなどを使用することもできる。
また重合系内で上記有機アルミニウム化合物が形成されるような化合物、例えばハロゲン化アルミニウムとアルキルリチウムとの組み合わせ、またはハロゲン化アルミニウムとアルキルマグネシウムとの組み合わせなどを、上記[C1]有機金属化合物として使用することもできる。
上記のような[C1]有機金属化合物は、1種類単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
([C2]有機アルミニウムオキシ化合物)
本発明で用いられる[C2]有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。[C2]有機アルミニウムオキシ化合物としては、具体的には、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン等が挙げられる。
従来公知のアルミノキサンは、例えば下記のような方法によって製造することができ、通常、炭化水素溶媒の溶液として得られる。
(1)吸着水を含有する化合物または結晶水を含有する塩類、例えば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水または結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法。
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷または水蒸気を作用させる方法。
(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
なお上記アルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。また回収された上記のアルミノキサンの溶液から溶媒または未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、得られたアルミノキサンを溶媒に再溶解またはアルミノキサンの貧溶媒に懸濁させてもよい。
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として具体的には、上記一般式(C1−a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。
上記のような有機アルミニウム化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
アルミノキサンの調製に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ガソリン、灯油、軽油などの石油留分または上記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素のハロゲン化物とりわけ、塩素化物、臭素化物などの炭化水素溶媒が挙げられる。さらにエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を用いることもできる。これらの溶媒のうち特に芳香族炭化水素または脂肪族炭化水素が好ましい。
また本発明で用いられるベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物は、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で通常10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であるもの、すなわち、ベンゼンに対して不溶性または難溶性であることが好ましい。
本発明で用いられる[C2]有機アルミニウムオキシ化合物としては、下記一般式(III)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物を挙げることもできる。
Figure 2021001288
(一般式(III)中、R17は炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示し、4つのR18は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示す。)
上記一般式(III)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物は、下記一般式(IV)で表されるアルキルボロン酸と、有機アルミニウム化合物とを、不活性ガス雰囲気下に不活性溶媒中で、−80℃〜室温の温度で1分〜24時間反応させることにより製造できる。
Figure 2021001288
(一般式(IV)中、R19は上記一般式(III)におけるR17と同じ基を示す。)
上記一般式(IV)で表されるアルキルボロン酸の具体的な例としては、メチルボロン酸、エチルボロン酸、イソプロピルボロン酸、n−プロピルボロン酸、n−ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、n−ヘキシルボロン酸、シクロヘキシルボロン酸、フェニルボロン酸、3,5−ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸などが挙げられる。これらの中では、メチルボロン酸、n−ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、3,5−ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸が好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
このようなアルキルボロン酸と反応させる有機アルミニウム化合物として具体的には、上記一般式(C1−a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
上記有機アルミニウム化合物としては、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、特にトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
上記のような[C2]有機アルミニウムオキシ化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
([C3]架橋メタロセン化合物[A]または遷移金属化合物[B]と反応してイオン対を形成する化合物)
架橋メタロセン化合物[A]または遷移金属化合物[B]と反応してイオン対を形成する化合物[C3](以下、「イオン化イオン性化合物」という。)としては、特表平1−501950号公報、特表平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、USP−5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。
具体的には、上記ルイス酸としては、BR3(Rは、フッ素、メチル基、トリフルオロ
メチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素である。)で示される化合物が挙げられ、例えばトリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p−トリル)ボロン、トリス(o−トリル)ボロン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ボロンなどである。
上記イオン性化合物としては、例えば下記一般式(V)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2021001288
(一般式(V)中、R20はH+、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオンまたは遷移金属を有するフェロセニウムカチオンであり、R21〜R24は、互いに同一でも異なっていてもよく、有機基、好ましくはアリール基または置換アリール基である。)。
上記カルボニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンなどが挙げられる。
上記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n−ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
上記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
20としては、カルボニウムカチオンおよびアンモニウムカチオンが好ましく、特にトリフェニルカルボニウムカチオン、N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
またイオン性化合物として、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N−ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩などを挙げることもできる。
上記トリアルキル置換アンモニウム塩として具体的には、例えばトリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p−トリル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(o−トリル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p−ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(m,m−ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(o−トリル)ホウ素などが挙げられる。
上記N,N−ジアルキルアニリニウム塩として具体的には、例えばN,N−ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N−ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
上記ジアルキルアンモニウム塩として具体的には、例えばジ(1−プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
さらにイオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロ
フェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、N,N−ジエチルアニリニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、下記式(VI)または(VII)で表されるホウ素化合物などを挙げることもできる。
Figure 2021001288
(式(VI)中、Etはエチル基を示す。)
Figure 2021001288
(式(VII)中、Etはエチル基を示す。)
イオン化イオン性化合物(化合物[C3])の例であるボラン化合物として具体的には、例えば、デカボラン;
ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ウンデカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ドデカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕デカクロロデカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ドデカクロロドデカボレートなどのアニオンの塩;
トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ドデカハイドライドドデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げられる。
イオン化イオン性化合物の例であるカルボラン化合物として具体的には、例えば4−カルバノナボラン、1,3−ジカルバノナボラン、6,9−ジカルバデカボラン、ドデカハイドライド−1−フェニル−1,3−ジカルバノナボラン、ドデカハイドライド−1−メチル−1,3−ジカルバノナボラン、ウンデカハイドライド−1,3−ジメチル−1,3−ジカルバノナボラン、7,8−ジカルバウンデカボラン、2,7−ジカルバウンデカボラン、ウンデカハイドライド−7,8−ジメチル−7,8−ジカルバウンデカボラン、ドデカハイドライド−11−メチル−2,7−ジカルバウンデカボラン、トリ(n−ブチル)アンモニウム1−カルバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム1−カルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム1−カルバドデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム1−トリメチルシリル−1−カルバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムブロモ−1−カルバドデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム6−カルバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム6−カルウンバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム7−カルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム7,8−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム2,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムドデカハイドライド−8−メチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−8−エチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−8−ブチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−8−アリル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−9−トリメチルシリル−7,8−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−4,6−ジブロモ−7−カルバウンデカボレートなどのアニオンの塩;
トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド−1,3−ジカルバノナボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)銅酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)金酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド−7,8−ジメチル−7,8−ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド−7,8−ジメチル−7,8−ジカルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(トリブロモオクタハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)マンガン酸塩(IV)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩などが挙げられる。
イオン化イオン性化合物の例であるヘテロポリ化合物は、ケイ素、リン、チタン、ゲルマニウム、ヒ素および錫から選ばれる原子と、バナジウム、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選ばれる1種または2種以上の原子とを含む化合物である。具体的には、リンバナジン酸、ゲルマノバナジン酸、ヒ素バナジン酸、リンニオブ酸、ゲルマノニオブ酸、シリコノモリブデン酸、リンモリブデン酸、チタンモリブデン酸、ゲルマノモリブデン酸、ヒ素モリブデン酸、錫モリブデン酸、リンタングステン酸、ゲルマノタングステン酸、錫タングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンタングストバナジン酸、ゲルマノタングストバナジン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、ゲルマノモリブドタングストバナジン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドニオブ酸、およびこれらの酸の塩が挙げられるが、この限りではない。また、上記塩としては、上記酸の、例えば周期表第1族または2族の金属、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等との塩、トリフェニルエチル塩等の有機塩が挙げられる。
イオン化イオン性化合物の例であるイソポリ化合物は、バナジウム、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選ばれる1種の原子の金属イオンから構成される化合物であり、金属酸化物の分子状イオン種であるとみなすことができる。具体的には、バナジン酸、ニオブ酸、モリブデン酸、タングステン酸、およびこれらの酸の塩が挙げられるが、この限りではない。また、上記塩としては、上記酸の例えば周期表第1族または第2族の金属、具体的にはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等との塩、トリフェニルエチル塩等の有機塩が挙げられる。
上記のようなイオン化イオン性化合物([C3]架橋メタロセン化合物[A]または遷移金属化合物[B]と反応してイオン対を形成する化合物)は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
架橋メタロセン化合物[A]または遷移金属化合物[B]に加えて、助触媒成分としてのメチルアルミノキサンなどの[C2]有機アルミニウムオキシ化合物を併用すると、オレフィン化合物に対して非常に高い重合活性を示す。
上記のような[C3]イオン化イオン性化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
有機金属化合物[C1]は、有機金属化合物[C1]と、遷移金属化合物[A]を触媒とする反応(以下、反応(A)ともいう)においては遷移金属化合物[A]中の遷移金属原子(M)とのモル比(C1/M)が、架橋メタロセン化合物[B]を触媒とする反応(以下、反応(B)ともいう)においては架橋メタロセン化合物[B]中の遷移金属原子(M)とのモル比(C1/M)が、通常0.01〜100000、好ましくは0.05〜50000となるような量で用いられる。
有機アルミニウムオキシ化合物[C2]は、有機アルミニウムオキシ化合物[C2]中のアルミニウム原子と、架橋メタロセン化合物[A]中の遷移金属原子(M)とのモル比(C2/M)、および、遷移金属化合物[B]中の遷移金属原子(M)とのモル比(C2/M)が、それぞれ通常10〜500000、好ましくは20〜100000となるような量で用いられる。
イオン化イオン性化合物[C3]は、イオン化イオン性化合物[C3]と、架橋メタロセン化合物[A]中の遷移金属原子(M)とのモル比(C3/M)、および遷移金属化合物[B]中の遷移金属原子(M)(ジルコニウム原子またはハフニウム原子)とのモル比(C3/M)が、それぞれ通常1〜10、好ましくは1〜5となるような量で用いられる。
本発明における重合方法は気相重合、スラリー重合、バルク重合、溶液(溶解)重合のいずれの方法においても実施可能であり、特に重合形態は限定されないが、グラフト共重合体を効率的に得る観点から溶液重合がより好ましい。
溶液重合で実施される場合、重合溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素などが挙げられる。具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられ、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。なお、これらのうち、後処理工程の負荷低減の観点から、ヘプタンまたはヘキサンが好ましい。
また、重合温度は、通常50℃〜200℃、好ましくは80℃〜150℃の範囲、より好ましくは、80℃〜130℃の範囲である。
重合圧力は、通常常圧〜10MPaゲージ圧、好ましくは常圧〜5MPaゲージ圧の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。本発明ではこのうち、モノマーを連続して反応器に供給して共重合を行う方法を採用することが好ましい。
反応時間(共重合が連続法で実施される場合には平均滞留時間)は、触媒濃度、重合温度などの条件によっても異なるが、通常0.5分間〜5時間、好ましくは5分間〜3時間である。
ポリマー濃度は、定常運転時は、5〜50質量%であり、好ましくは、10〜40質量%である。重合能力における粘度制限、後処理工程(脱溶媒)の負荷及び生産性の観点から、15〜50質量%であることが好ましい。
得られる共重合体の分子量は、重合温度を変化させることによって調節することができる。さらに、前述の化合物[C1]の使用量により調節することもできる。具体的には、トリイソブチルアルミニウム、メチルアルミノキサン、ジエチル亜鉛等の使用量を増やすことで分子量が下がる。
水素を添加する場合も分子量を調節することは可能であるが、水素存在下の重合ではマクロモノマーの末端不飽和度が低減されるため、水素無添加条件での製造が好ましい。
本発明の樹脂組成物の製造方法は、重合反応工程に加え、必要に応じて、生成する重合体を回収する工程を含んでも良い。本反応は、重合反応において用いられる有機溶剤を分離してポリマーを取り出し製品形態に変換する反応であり、溶媒濃縮、押し出し脱気、ペレタイズ等の既存のポリオレフィン樹脂を製造する過程であれば特段制限はない。
潤滑油用粘度調整剤
本発明の潤滑油用粘度調整剤は、上述した樹脂(α)および樹脂(β)を含む。本発明の潤滑油用粘度調整剤は、前記樹脂(α)と前記樹脂(β)の合計を100質量部としたとき、好ましくは樹脂(α)1〜99重量部と樹脂(β)99〜1重量部とを含み、より好ましくは樹脂(α)5〜95重量部と樹脂(β)95〜5重量部とを含む。
このような本発明の潤滑油用粘度調整剤は、潤滑油基材(潤滑油基油)に添加して用いた場合に、得られる潤滑油組成物の粘度指数と低温粘度のバランスを良好なものとすることができる。
樹脂(α)および樹脂(β)を含む、本発明の潤滑油用粘度調整剤を含む潤滑油組成物が、高温での粘度特性に優れるとともに、低温特性にも優れ、粘度指数と低温粘度のバランスが良好なものとなる理由について、本発明者は次のように考えている。すなわち、低温の潤滑油組成物中では、樹脂(α)が凝集体を形成することにより、流量(有効容積)が低減し、低温での粘度特性に優れるものになることが推定される。また樹脂(β)を含むことにより、その凝集体は、潤滑油組成物中から析出したり、凝集体間での結晶化によるゲル化したりしにくく、潤滑油組成物は低温貯蔵性にも優れると推定する。そして、高結晶性の樹脂(α)と低結晶性の樹脂(β)との両方が配合されることにより、粘度指数と低温年度のバランスが改善するものと推定する。
本発明の潤滑油用粘度調整剤は、直接潤滑油基材に添加して用いてもよく、また、潤滑油用粘度調整剤とともに後述する油(B)を含有する潤滑油用添加剤組成物の形態で潤滑油基材に添加してもよい。
<潤滑油用添加剤組成物>
本発明の潤滑油添加剤組成物は、上述した本発明の潤滑油用粘度調整剤(A)1〜50質量部と、油(B)50〜99質量部(ただし、潤滑油用粘度調整剤(A)と、油(B)の合計を100質量部とする)を含む。好ましくは潤滑油用粘度調整剤(A)を2〜40質量部、油(B)を60〜98質量部の範囲で、より好ましくは潤滑油用粘度調整剤(A)を3〜30質量部、油(B)を70〜97質量部の範囲で含む。
潤滑油用添加剤組成物に含有する油(B)としては、鉱物油;および、ポリα−オレフィン、ジエステル類、ポリアルキレングリコールなどの合成油が挙げられる。
油(B)としては、鉱物油または合成油、あるいは鉱物油と合成油とのブレンド物のいずれを用いてもよい。ジエステル類としては、ポリオールエステル、ジオクチルフタレート、ジオクチルセバケートなどが挙げられる。
鉱物油は、一般に脱ワックスなどの精製工程を経て用いられ、精製の仕方により幾つかの等級がある。一般に0.5〜10%のワックス分を含む鉱物油が使用される。例えば、水素分解精製法で製造された流動点の低い、粘度指数の高い、イソパラフィンを主体とした組成の高度精製油を用いることもできる。40℃における動粘度が10〜200cStの鉱物油が一般的に使用される。
鉱物油は、前述のように一般に脱ワックスなどの精製工程を経て用いられ、精製の仕方により幾つかの等級があり、本等級はAPI(米国石油協会)分類で規定される。表1に各グループに分類される潤滑油基剤の特性を示す。
Figure 2021001288
表1におけるポリα−オレフィンは、少なくとも炭素原子数10以上のα−オレフィンを原料モノマーの一種として重合して得られる炭化水素系のポリマーであって、1−デセンを重合して得られるポリデセンなどが例示される。
本発明で使用される油(B)は、上記のグループ(i)〜グループ(iv)のいずれかに属する鉱物油が好ましい。特に鉱物油の中でも100℃における動粘度が1〜50mm2/sで、かつ粘度指数が80以上のもの、またはポリα−オレフィンが好ましい。また、油(B)としては、グループ(ii)またはグループ(iii)に属する鉱物油、またはグループ(iv)に属するポリα−オレフィンが好ましい。グループ(i)よりもグループ(ii)およびグループ(iii)の方が、ワックス濃度が少ない傾向にある。特に、油(B)としては、鉱物油であって、100℃における動粘度が1〜50mm2/sで、かつ粘度指数が80以上でありグループ(ii)またはグループ(iii)に属するもの、またはグループ(iv)に属するポリα−オレフィンが好ましい。
また、本発明の潤滑油用添加剤組成物には、上述の潤滑油用粘度調整剤(A)および油(B)以外の他の成分(添加剤)が含まれていてもよい。他の成分としては、具体的には、後述する1以上の添加剤を挙げることができる。
このような添加剤の一つが清浄剤である。エンジン潤滑の分野で用いられる従来の清浄剤の多くは、塩基性金属化合物(典型的にはカルシウム、マグネシウムやナトリウムなどのような金属をベースとする、金属水酸化物、金属酸化物や金属炭酸塩)が存在することによって、潤滑油に塩基性またはTBNを付与する。このような金属性の過塩基性清浄剤(過塩基性塩や超塩基性塩ともいう)は、通常、金属と、該金属と反応する特定の酸性有機化合物との化学量論に従って中和のために存在すると思われる量を超える金属含有量によってに特徴づけられる単相(single phase)均一ニュートン系(homogeneous Newtonian systems)である。過塩基性の材料は、酸性の材料(典型的には、二酸化炭素などのような無機酸や低級カルボン酸)を、酸性の有機化合物(基質ともいう)および化学量論的に過剰量の金属塩の混合物と、典型的には、酸性の有機基質にとって不活性な有機溶媒(例えば鉱物油、ナフサ、トルエン、キシレンなど)中で、反応させることによって、典型的には調製される。フェノールやアルコールなどの促進剤が、任意に少量存在する。酸性の有機基質は、通常、ある程度の油中の溶解性を付与するために、充分な数の炭素原子を有するだろう。
このような従来の過塩基性材料およびこれらの調製方法は、当業者に周知である。スルホン酸、カルボン酸、フェノール、リン酸、およびこれら二種以上の混合物の塩基性金属塩を作製する技術を記載している特許としては、米国特許第2,501,731号;第2,616,905号;第2,616,911号;第2,616,925号;第2,777,874号;第3,256,186号;第3,384,585号;第3,365,396号;第3,320,162号;第3,318,809号;第3,488,284号;および第3,629,109号が挙げられる。サリキサレート[salixarate]清浄剤は米国特許第6,200,936号および国際公開第01/56968号に記載されている。サリゲニン清浄剤は米国特許第6,310,009号に記載されている。
潤滑油添加剤組成物中の典型的な清浄剤の量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、通常1〜10質量%、好ましくは1.5〜9.0質量%、より好ましくは2.0〜8.0質量%である。なお、該量はすべて、油がない(すなわち、それらに従来供給される希釈油がない)状態をベースにする。
添加剤の他のもう一つは分散剤である。分散剤は潤滑油の分野では周知であり、主に、無灰型分散剤、ポリマー分散剤として知られるものが挙げられる。無灰型分散剤は、比較的分子量の大きい炭化水素鎖に付いた極性基によって特徴付けられる。典型的な無灰分散剤として、スクシンイミド分散剤としても知られる、N置換長鎖アルケニルスクシンイミドなどのような窒素含有分散剤が挙げられる。スクシンイミド分散剤は米国特許第4,234,435号および第3,172,892号にさらに充分に記載されている。無灰分散剤の他のもう一つのクラスは、グリセロール、ペンタエリスリトールやソルビトールなどの多価脂肪族アルコールとヒドロカルビルアシル化剤との反応によって調製される高分子量エステルである。このような材料は米国特許第3,381,022号により詳細に記載されている。無灰分散剤の他のもう一つのクラスはマンニッヒ塩基である。これらは、高分子量のアルキル置換フェノール、アルキレンポリアミン、およびホルムアルデヒドなどのようなアルデヒドの縮合によって形成される材料であり、米国特許第3,634,515号により詳細に記載されている。他の分散剤としては多価分散性添加剤が挙げられ、一般的に、上記ポリマーに分散特性を付与する極性の官能性を含む、炭化水素をベースとしたポリマーである。
分散剤は、様々な物質のいずれかと反応させることによって後処理がされていてもよい。これらとしては、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類、炭化水素で置換された無水コハク酸類、ニトリル類、エポキシド類、ホウ素化合物類、およびリン化合物類があげられる。このような処理を詳述する参考文献が、米国特許第4,654,403号に載っている。本発明の組成物中の分散剤の量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、典型的には、1〜10質量%、好ましくは1.5〜9.0質量%、より好ましくは2.0〜8.0質量%となり得る(すべて、油がない状態をベースとする)。
別の成分としては抗酸化剤である。抗酸化剤はフェノール性の抗酸化剤を包含し、これは、2〜3個のt−ブチル基を有するブチル置換フェノールを含んでいてもよい。パラ位は、ヒドロカルビル基または2個の芳香環を結合する基によって占有されてもよい。後者の抗酸化剤は米国特許第6,559,105号により詳細に記載されている。抗酸化剤は、ノニレート化された[nonylated]ジフェニルアミンなどのような芳香族アミンも含む。他の抗酸化剤としては、硫化オレフィン類、チタン化合物類、およびモリブデン化合物類が挙げられる。例えば米国特許第4,285,822号には、モリブデンと硫黄を含む組成物を含む潤滑油組成物が開示されている。抗酸化剤の典型的な量は、具体的な抗酸化剤およびその個々の有効性にもちろん依存するだろうが、例示的な合計量は、0.01〜5質量%、好ましくは0.15〜4.5質量%、より好ましくは0.2〜4質量%となり得る。さらに、1以上の抗酸化剤が存在していてもよく、これらの特定の組合せは、これらを組み合わせた全体の効果に対して、相乗的となり得る。
また、本発明の潤滑油添加剤組成物には、増粘剤(ときに粘度指数改良剤または粘度調整剤ともいう)が含まれてもよい。増粘剤は通常ポリマーであり、ポリイソブテン類、ポリメタクリル酸エステル類、ジエンポリマー類、ポリアルキルスチレン類、エステル化されたスチレン−無水マレイン酸共重合体類、アルケニルアレーン共役ジエン共重合体類およびポリオレフィン類が挙げられる。分散性および/または抗酸化性も有する多機能性増粘剤は公知であり、任意に用いてもよい。
添加剤の他のもう一つは、磨耗防止剤である。磨耗防止剤の例として、チオリン酸金属塩類、リン酸エステル類およびそれらの塩類、リン含有のカルボン酸類・エステル類・エーテル類・アミド類;ならびに亜リン酸塩などのようなリン含有磨耗防止剤/極圧剤が挙げられる。特定の態様において、リンの磨耗防止剤は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、通常0.01〜0.2質量%、好ましくは0.015〜0.15質量%、より好ましくは0.02〜0.1質量%、さらに好ましくは0.025〜0.08質量%のリンを与える量で存在してもよい。
多くの場合、上記磨耗防止剤はジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDP)である。典型的なZDPは、11質量%のP(オイルがない状態をベースに算出)を含んでもよく、好適な量として0.09〜0.82質量%を挙げてもよい。リンを含まない磨耗防止剤としては、ホウ酸エステル類(ホウ酸エポキシド類を含む)、ジチオカルバメート化合物類、モリブデン含有化合物類、および硫化オレフィン類が挙げられる。
潤滑油用添加剤組成物に任意に用いてもよい他の添加剤としては、上述した極圧剤、磨耗防止剤のほか、流動点降下剤、摩擦調整剤、色安定剤、および消泡剤が挙げられ、それぞれ従来の量で用いてもよい。
本発明の潤滑油用添加剤組成物は、上述した潤滑油用粘度調整剤(A)および油(B)を上記範囲で含むことが好ましい。潤滑油用粘度調整剤(A)および油(B)を上記範囲で含む潤滑油用添加剤組成物を用いて、潤滑油組成物を製造する際には、潤滑油用添加剤組成物と、潤滑油組成物の他の成分とを混合することで、少ない潤滑油用粘度調整剤(A)含有量で、粘度指数と低温粘度のバランスに優れた潤滑油組成物を得ることができる。
また本発明の潤滑油用添加剤組成物は、油(B)を含有するため、潤滑油組成物を製造する際の作業性も良好であり、潤滑油組成物の他の成分と容易に混合することができる。
本発明の潤滑油用添加剤組成物は、従来公知の方法で、任意に他の所望する成分とともに、潤滑油用粘度調整剤(A)および油(B)を混合することにより調製することができる。ここで、潤滑油用粘度調整剤(A)は、あらかじめ調製したものを用いてもよく、また、潤滑油用粘度調整剤(A)を構成する各成分を、本発明の潤滑油用添加剤組成物の製造に直接用いてもよい。すなわち、本発明の潤滑油用添加剤組成物は、従来公知の方法で、任意に他の所望する成分とともに、潤滑油用粘度調整剤(A)を構成する各成分および油(B)を逐次または同時に混合することによっても調製することができる。
<潤滑油組成物>
本発明の潤滑油組成物は、本発明の潤滑油用粘度調整剤(A)0.1〜5質量部と、潤滑油基剤(BB)95〜99.9質量部と(ただし、潤滑油用粘度調整剤と、潤滑油基材(BB)の合計を100質量部とする)を含む。潤滑油用粘度調整剤(A)は、好ましくは0.2〜4質量部、より好ましくは0.4〜3質量部、さらに好ましくは0.6〜2質量部、潤滑油基材(BB)は好ましくは96〜99.8質量部、より好ましくは97〜99.6質量部、さらに好ましくは98〜99.4質量部の割合で含有される。潤滑油用粘度調整剤(A)は、一種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
本発明の潤滑油組成物は、さらに流動点降下剤(C)を含有してもよい。流動点降下剤(C)の含有量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、潤滑油組成物100質量%中に通常0.05〜5質量%、好ましくは0.05〜3質量%、より好ましくは0.05〜2質量%、さらに好ましくは0.05〜1質量%の量で含有される。
本発明の潤滑油組成物において、本発明の潤滑油用粘度調整剤(A)の含有量が上記範囲内であると、潤滑油組成物は、低温貯蔵性、低温粘度に優れ、粘度指数と低温年度のバランスに優れるため特に有用である。
潤滑油組成物が含有する潤滑油基剤(BB)としては、鉱物油、およびポリα−オレフィン、ジエステル類、ポリアルキレングリコールなどの合成油が挙げられる。
鉱物油または鉱物油と合成油とのブレンド物を用いてもよい。ジエステル類としては、ポリオールエステル、ジオクチルフタレート、ジオクチルセバケートなどが挙げられる。
鉱物油は、一般に脱ワックスなどの精製工程を経て用いられ、精製の仕方により幾つかの等級がある。一般に0.5〜10質量%のワックス分を含む鉱物油が使用される。例えば、水素分解精製法で製造された流動点の低い、粘度指数の高い、イソパラフィンを主体とした組成の高度精製油を用いることもできる。40℃における動粘度が10〜200cStの鉱物油が一般的に使用される。
鉱物油は、前述のように一般に脱ワックスなどの精製工程を経て用いられ、精製の仕方により幾つかの等級があり、本等級はAPI(米国石油協会)分類で規定される。各グループに分類される潤滑油基剤の特性は、上記表1に示したとおりである。
表1におけるポリα−オレフィンは、少なくとも一種の炭素原子数10以上のα−オレフィンを原料モノマーとして重合して得られる炭化水素系のポリマーであって、1−デセンを重合して得られるポリデセンなどが例示される。
本発明で使用される潤滑油基剤(BB)は、グループ(i)〜グループ(iv)のいずれかに属する油であってもよい。一つの態様において、上記油は、鉱物油の中でも100℃における動粘度が1〜50mm2/sで、かつ粘度指数が80以上のもの、またはポリα−オレフィンである。また、潤滑油基剤(BB)としては、グループ(ii)またはグループ(iii)に属する鉱物油、またはグループ(iv)に属するポリα−オレフィンが好ましい。グループ(i)よりもグループ(ii)およびグループ(iii)の方が、ワックス濃度が少ない傾向にある。
特に、潤滑油基剤(BB)としては、鉱物油であって、100℃における動粘度が1〜50mm2/sで、かつ粘度指数が80以上でありグループ(ii)またはグループ(iii)に属するもの、またはグループ(iv)に属するポリα−オレフィンが好ましい。
潤滑油組成物が含有してもよい流動点降下剤(C)としては、アルキル化ナフタレン、メタクリル酸アルキルの(共)重合体、アクリル酸アルキルの(共)重合体、フマル酸アルキルと酢酸ビニルの共重合体、α−オレフィンポリマー、α−オレフィンとスチレンの共重合体などが挙げられる。特に、メタクリル酸アルキルの(共)重合体、アクリル酸アルキルの(共)重合体を用いてもよい。
本発明の潤滑油組成物には、上記潤滑油用粘度調整剤(A)、上記潤滑油基剤(BB)および流動点降下剤(C)以外に配合剤(添加剤)を含んでもよい。
本発明の潤滑油組成物が、配合剤を含有する場合の含有量は特に限定されないが、上記潤滑油基剤(BB)と配合剤との合計を100質量%とした場合に、配合剤の含有量としては、通常0質量%を超え、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上である。また、配合剤の含有量としては、通常40質量%以下であり、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下である。
配合剤(添加剤)としては、潤滑油基剤(BB)および流動点降下剤(C)と異なるものであって、潤滑油用添加剤組成物(A)の項で詳述したような添加剤が挙げられ、例えば、水添SBR(スチレンブタジエンラバー)、SEBS(スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体)などの粘度指数向上効果を有する添加剤、清浄剤、錆止め添加剤、分散剤、極圧剤、消泡剤、酸化防止剤、金属不活性化剤などが挙げられる。
本発明の潤滑油組成物は、従来公知の方法で、本発明の潤滑油用粘度調整剤(A)、潤滑油基剤(BB)および必要に応じて流動点降下剤(C)、さらに必要に応じてその他の配合剤(添加剤)を混合または溶解することにより調製することができる。
また、本発明の潤滑油組成物は、本発明の潤滑油用粘度調整剤(A)を含む上述した本発明の潤滑油用添加剤組成物を、潤滑油基剤(BB)および必要に応じて流動点降下剤(C)、さらに必要に応じてその他の配合剤(添加剤)を混合または溶解することにより調製することもできる。
本発明の潤滑油組成物は、低温貯蔵性、低温粘度に優れる。従って、本発明の潤滑油組成物は、例えば、自動車用エンジンオイル、大型車両用ディーゼルエンジン用の潤滑油、船舶用ディーゼルエンジン用の潤滑油、二行程機関用の潤滑油、自動変速装置用およびマニュアル変速機用の潤滑油、ギア潤滑油ならびにグリース等として、多様な公知の機械装置のいずれにも注油することができる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
測定・評価方法
以下の実施例および比較例において、各物性は、以下の方法により測定あるいは評価した。
[融点(Tm)(℃)]
実施例または比較例で製造する樹脂を、インジウム標準にて較正したSII社製示差走査型熱量計(X−DSC7000)を用いて、DSC測定を行い、融点(Tm)を求める。
約10mgになるようにアルミニウム製DSCパン上に上記測定サンプルを秤量する。蓋をパンにクリンプして密閉雰囲気下とし、サンプルパンを得る。
サンプルパンをDSCセルに配置し、リファレンスとして空のアルミニウムパンを配置する。DSCセルを窒素雰囲気下にて30℃(室温)から、150℃まで10℃/分で昇温する(第一昇温過程)。
次いで、150℃で5分間保持した後、10℃/分で降温し、DSCセルを−100℃まで冷却する(降温過程)。−100℃で5分間保持した後、DSCセルを150℃まで10℃/分で昇温する(第二昇温過程)。
第二昇温過程で得られるエンタルピー曲線の融解ピークトップ温度を融点(Tm)とする。融解ピークが2個以上存在する場合には、最大のピークを有するものが融点(Tm)として定義される。また、融解ピークが観測されないものを融点なしと評価する。
[結晶化温度(Tc)(℃)]
結晶化温度Tcは、上記した融点(Tm)を測定したDSCを用いて測定した。具体的には、まず、測定試料を200℃まで昇温し、5分間保持した。その後、2℃/minの条件で降温し、得られたDSC曲線の発熱ピークの温度を結晶化温度(Tc)とした。
[極限粘度[η](dL/g)]
極限粘度[η]は、デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した。具体的には、重合パウダー、ペレットまたは樹脂塊約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求めた(下式参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
[密度]
実施例または比較例で製造または使用する樹脂の密度は、JIS K7112に記載の方法に従い、測定する。
[重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)]
実施例または比較例で製造または使用する共重合体の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により以下の方法により測定する。
(試料の前処理)
実施例または比較例で製造または使用する共重合体30mgをo−ジクロロベンゼン20mlに145℃で溶解した後、その溶液を孔径が1.0μmの焼結フィルターで濾過したものを分析試料とする。
(GPC分析)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布曲線を求める。計算はポリスチレン換算で行う。求めた重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)から分子量分布(Mw/Mn)を算出する。
(測定装置)
ゲル浸透クロマトグラフHLC−8321 GPC/HT型(東ソー社製)
(解析装置)
データ処理ソフトEmpower2(Waters社、登録商標)
(測定条件)
カラム:TSKgel GMH6−HTを2本、およびTSKgel GMH6−HTLを2本(いずれも直径7.5mm×長さ30cm、東ソー社)
カラム温度:140℃
移動相:o−ジクロロベンゼン(0.025%BHT含有)
検出器:示差屈折率計
流速:1mL/分
試料濃度:0.15%(w/v)
注入量:0.4mL
サンプリング時間間隔:1秒
カラム較正:単分散ポリスチレン(東ソー社)
分子量換算:PS換算/標品換算法
[エチレン由来の構造単位]
実施例または比較例で製造または使用する共重合体のエチレンおよびα−オレフィン由来の構造単位(モル%)については、13C−NMRスペクトルの解析により求める。
(測定装置)
ブルカーバイオスピン社製AVANCEIII500CryoProbe Prodigy型核磁気共鳴装置
(測定条件)
測定核:13C(125MHz)、測定モード:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング、パルス幅:45°(5.00μ秒)、ポイント数:64k、測定範囲:250ppm(−55〜195ppm)、繰り返し時間:5.5秒、積算回数:512回、測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/ベンゼン−d6(4/1 v/v)、試料濃度:ca.60mg/0.6mL、測定温度:120℃、ウインドウ関数:exponential(BF:1.0Hz)、ケミカルシフト基準:ベンゼン−d6(128.0ppm)。
[粘度特性(動粘度、粘度指数)]
JIS K2283に記載の方法により、100℃および40℃での動粘度を測定し、粘度指数を算出した。粘度指数の数値が大きい程、温度による粘度変化が小さいことを示す。
[Cold Cranking Simulator(CCS)粘度]
実施例または比較例で調製する鉱物油配合系潤滑油組成物のCCS粘度(−30℃)を、ASTM D2602に基づいて測定する。CCS粘度は、クランク軸における低温での摺動性(始動性)の評価に用いられる。値が小さい程、潤滑油の低温粘度(低温特性)が優れることを示す。
なお、100℃動粘度が同程度となるよう潤滑油組成物として配合を行い、SSIが同程度となる潤滑油組成物を比較した場合、該潤滑油組成物のCCS粘度が小さいほど、該潤滑油組成物は、低温時の省燃費性(低温始動性)に優れる。
以下、実施例および比較例で用いる樹脂の製造、該樹脂を用いた潤滑油用粘度調整剤を含む潤滑油組成物の製造について記載する。なお、分析および評価に必要な量を確保するため、複数回の重合を実施していることがある。
以下の重合例において、触媒成分として使用する下記式で示される化合物(1)は、公知の方法に従って合成した。
また、触媒成分として使用するジメチルシリルビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド(化合物(2))は特許第3737134号に開示されている方法に従って合成した。
Figure 2021001288
[重合例1](樹脂α−1(結晶性EPR)の製造)
圧力制御バルブを備えた内容積1Lのステンレス製オートクレーブに、ヘプタンを1457mL/hr、化合物(1)とトリイソブチルアルミニウム(iBu3Alとも記す)を混合したトルエン溶液(化合物(1):0.055mmol/L、iBu3Al:8.25mmol/L)を41mL/hr、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Ph3CB(C654とも記す)のトルエン溶液(0.4mmol/L)を68mL/hr、エチレンを200g/L、プロピレンを247g/Lでそれぞれ連続的に装入し、圧力制御バルブは0.74MPaに設定し、重合器内部の温度を110℃に保ちながら、重合器内の液量が950mLになるよう連続的に重合反応液を抜き出した。上記全ての溶媒、モノマーおよび触媒等の装入を開始してから2時間後、重合反応液を50分間採取した。得られた重合反応液を少量の塩酸を含む1.5リットルのメタノール(750mL)とアセトン(750mL)の混合液中に加え重合体を析出させた。メタノールで洗浄後、140℃にて10時間減圧乾燥し、オレフィン系樹脂(α−1)80.1gを得た。得られたオレフィン系樹脂(α−1)の分析結果を表2に示す。
[重合例2](樹脂α−2(結晶性EPR)の製造)
圧力制御バルブを備えた内容積1Lのステンレス製オートクレーブに、ヘプタンを1672mL/hr、化合物(1)とトリイソブチルアルミニウム(iBu3Alとも記す)を混合したトルエン溶液(化合物(1):0.040mmol/L、iBu3Al:6.0mmol/L)を114mL/hr、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Ph3CB(C654とも記す)のトルエン溶液(0.5mmol/L)を36mL/hr、エチレンを250g/L、プロピレンを190g/Lでそれぞれ連続的に装入し、圧力制御バルブは0.74MPaに設定し、重合器内部の温度を110℃に保ちながら、重合器内の液量が950mLになるよう連続的に重合反応液を抜き出した。上記全ての溶媒、モノマーおよび触媒等の装入を開始してから2時間後、重合反応液を50分間採取した。得られた重合反応液を少量の塩酸を含む1.5リットルのメタノール(750mL)とアセトン(750mL)の混合液中に加え重合体を析出させた。メタノールで洗浄後、140℃にて10時間減圧乾燥し、オレフィン系樹脂(α−2)43.3gを得た。得られたオレフィン系樹脂(α−2)の分析結果を表2に示す。
[重合例3](樹脂β−1(非晶性EPR)の製造)
圧力制御バルブを備えた内容積1Lのステンレス製オートクレーブに、ヘプタンを1614mL/hr、トリイソブチルアルミニウム(iBu3Alとも記す)のトルエン溶液(iBu3Al:2.0mmol/L)を95mL/hr、化合物(2)のトルエン溶液(0.05mmol/L)を38mL/hr、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Ph3CB(C654とも記す)のトルエン溶液(0.5mmol/L)を38mL/hr、エチレンを245g/L、プロピレンを300g/Lでそれぞれ連続的に装入し、圧力制御バルブは0.74MPaに設定し、重合器内部の温度を110℃に保ちながら、重合器内の液量が950mLになるよう連続的に重合反応液を抜き出した。上記全ての溶媒、モノマーおよび触媒等の装入を開始してから2時間後、重合反応液を30分間採取した。得られた重合反応液を少量の塩酸を含む1.5リットルのメタノール(750mL)とアセトン(750mL)の混合液中に加え重合体を析出させた。メタノールで洗浄後、140℃にて10時間減圧乾燥し、オレフィン系樹脂(β−1)80gを得た。得られたオレフィン系樹脂(β−1)の分析結果を表2に示す。
Figure 2021001288
[実施例1]
重合例1で得たオレフィン系樹脂(α−1)80質量部と、重合例3で得られたオレフィン系樹脂(β−1)20質量部とをブレンド配合したものを潤滑油用粘度指数向上剤−1として用いて、潤滑油組成物を調製する。
(1)ポリマーコンセントレイトの調製
Yubase−4(SK Lubricants社製)をベースオイルとして用い、上記潤滑油用粘度指数向上剤−1の10質量パーセント溶液を調製し、潤滑油添加剤組成物であるポリマーコンセントレイト−1を得た。
(2)潤滑油組成物の調製
Yubase−4(SK Lubricants社製)をベースオイルとして用い、流動点降下剤(ルブラン165、東邦化学株式会社製)、添加剤(CaおよびNaの過塩基性清浄剤、N含有分散剤、アミン性[aminic]およびフェノール性の抗酸化剤、ジアルキルジチオリン酸亜鉛類、摩擦調整剤、および消泡剤を含む従来のエンジン潤滑油用添加剤パッケージ)を添加した後、100℃において一定粘度(約8mm2/s)となるようにポリマーコンセントレイト−1の配合量を調整して添加し、配合油である潤滑油組成物を調製した。得られた潤滑油組成物の性能評価を行なった。配合比、及び評価結果を表3に示す。
[実施例2]
重合例1で得たオレフィン系樹脂(α−1)60質量部と、重合例3で得られたオレフィン系樹脂(β−1)40質量部とをブレンド配合したものを、潤滑油用粘度指数向上剤として用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリマーコンセントレイトおよび潤滑油組成物を調製し、評価した。配合比、及び評価結果を表3に示す。
[実施例3]
重合例1で得たオレフィン系樹脂(α−1)40質量部と、重合例3で得られたオレフィン系樹脂(β−1)60質量部とをブレンド配合したものを、潤滑油用粘度指数向上剤として用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリマーコンセントレイトおよび潤滑油組成物を調製し、評価した。配合比、及び評価結果を表3に示す。
[実施例4]
重合例1で得たオレフィン系樹脂(α−1)20質量部と、重合例3で得られたオレフィン系樹脂(β−1)80質量部とをブレンド配合したものを、潤滑油用粘度指数向上剤として用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリマーコンセントレイトおよび潤滑油組成物を調製し、評価した。配合比、及び評価結果を表3に示す。
[実施例5]
重合例2で得たオレフィン系樹脂(α−2)80質量部と、重合例3で得られたオレフィン系樹脂(β−1)20質量部とをブレンド配合したものを、潤滑油用粘度指数向上剤として用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリマーコンセントレイトおよび潤滑油組成物を調製し、評価した。配合比、及び評価結果を表3に示す。
[実施例6]
重合例2で得たオレフィン系樹脂(α−2)60質量部と、重合例3で得られたオレフィン系樹脂(β−1)40質量部とをブレンド配合したものを、潤滑油用粘度指数向上剤として用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリマーコンセントレイトおよび潤滑油組成物を調製し、評価した。配合比、及び評価結果を表3に示す。
[実施例7]
重合例2で得たオレフィン系樹脂(α−2)40質量部と、重合例3で得られたオレフィン系樹脂(β−1)60質量部とをブレンド配合したものを、潤滑油用粘度指数向上剤として用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリマーコンセントレイトおよび潤滑油組成物を調製し、評価した。配合比、及び評価結果を表3に示す。
[実施例8]
重合例2で得たオレフィン系樹脂(α−2)20質量部と、重合例3で得られたオレフィン系樹脂(β−1)80質量部とをブレンド配合したものを、潤滑油用粘度指数向上剤として用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリマーコンセントレイトおよび潤滑油組成物を調製し、評価した。配合比、及び評価結果を表3に示す。
[比較例1]
重合例1で得たオレフィン系樹脂(α−1)100質量部を、潤滑油用粘度指数向上剤として用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリマーコンセントレイトおよび潤滑油組成物を調製し、評価した。配合比、及び評価結果を表3に示す。
[比較例2]
重合例2で得たオレフィン系樹脂(α−2)100質量部を、潤滑油用粘度指数向上剤として用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリマーコンセントレイトおよび潤滑油組成物を調製し、評価した。配合比、及び評価結果を表3に示す。
Figure 2021001288

Claims (11)

  1. 樹脂(α)と樹脂(β)とを含む潤滑油用粘度調整剤であって、
    前記樹脂(α)が下記要件(I)−1および(I)−2を満たし、
    前記樹脂(β)が下記要件(II)−1および(II)−2を満たし、かつ、
    前記樹脂(α)および前記樹脂(β)の両方が、下記要件(III)−1を満たすことを特徴とする潤滑油用粘度調整剤。
    (I)−1:エチレンと、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとの共重合体であって、エチレンから導かれる構造単位が87〜99mol%の範囲にある。
    (I)−2:示差走査熱量分析(DSC)によって測定された融点(Tm)が50〜100℃の範囲にある。
    (II)−1:エチレンと、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとの共重合体であって、エチレンから導かれる構造単位が30〜65mol%の範囲にある。
    (II)−2:示差走査熱量分析(DSC)によって測定された融点(Tm)を持たない。
    (III)−1:135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5〜2.5dl/gの範囲にある。
  2. 前記樹脂(α)1〜99質量部と、前記樹脂(β)99〜1質量部と(ただし、樹脂(α)と樹脂(β)の合計を100質量部とする)を含む、請求項1に記載の潤滑油用粘度調整剤。
  3. 前記樹脂(α)および前記樹脂(β)の両方が、エチレンから導かれる構造単位とプロピレンから導かれる構造単位とからなる、請求項1または2に記載の潤滑油用粘度調整剤。
  4. 前記樹脂(α)および前記樹脂(β)の両方が、下記要件(III)−2をさらに満たす、請求項1〜3のいずれかに記載の潤滑油用粘度調整剤。
    (III)−2:JIS K7112に準拠し密度勾配管法により測定した密度が850〜880kg/m3の範囲にある。
  5. 前記樹脂(α)が、下記要件(I)−3をさらに満たす、請求項1〜4のいずれかに記載の潤滑油用粘度調整剤。
    (I)−3:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される重量平均分子量(Mw)が70000〜400000の範囲にある。
  6. 前記樹脂(β)が、下記要件(II)−3をさらに満たす、請求項1〜5のいずれかに記載の潤滑油用粘度調整剤。
    (II)―3:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される重量平均分子量(Mw)が1000〜70000の範囲にある。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の潤滑油用粘度調整剤(A)1〜50質量部と、油(B)50〜99質量部と(ただし、潤滑油用粘度調整剤(A)と、油(B)の合計を100質量部とする)を含む、潤滑油用添加剤組成物。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の潤滑油用粘度調整剤(A)0.1〜5質量部と、潤滑油基材(BB)95〜99.9質量部と(ただし、潤滑油用粘度調整剤(A)と、潤滑油基材(BB)の合計を100質量部とする)を含む、潤滑油組成物。
  9. 流動点降下剤(C)を、該潤滑油組成物100質量%中に、0.05〜5質量%の量で含む、請求項8に記載の潤滑油組成物。
  10. 前記潤滑油基材(BB)が鉱物油である、請求項8または9に記載の潤滑油組成物。
  11. 前記潤滑油基材(BB)が合成油である、請求項8または9に記載の潤滑油組成物。
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