JP2020532949A - 足場タンパク質 - Google Patents

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JP2020532949A JP2019570496A JP2019570496A JP2020532949A JP 2020532949 A JP2020532949 A JP 2020532949A JP 2019570496 A JP2019570496 A JP 2019570496A JP 2019570496 A JP2019570496 A JP 2019570496A JP 2020532949 A JP2020532949 A JP 2020532949A
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Abstract

本発明は、配列番号1のアミノ酸残基1〜11、13〜15、17〜19、21〜25、27〜28、35〜37、39、41、43〜44、46〜47、49〜50、52〜53、55〜58、63〜64、66、68〜82、84〜85、及び87〜98に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、Affimerポリペプチドなどのポリペプチドであって、配列番号1と比べて、T51L、T51V、M65V、N32G、A59I、L38A、V20I、A40I、L38V、A12I、A12V、I16L、V20L、Q26E、E29M、T31K、N32D、N32H、T34V、T34R、T34D、T34P、A40V、Q42D、T45I、T45V、V48E、V48G、V48A、T51F、T51A、A59L、L67I、(V20I、L38A)、(V20L、L38A)、(V20I、L38V)、(V20L、L38V)、(E29K、K30E、E33K)、(Y54D、T83D、Q86E)、(A59L、G60N、D61G、N62K)、(A59V、D61N、N62K)、(G60N、D61G、N62K)、(G60N、ΔD61、N62G)、ΔD61、(A59L、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、ΔD61)、(G60P、ΔD61、N62P)、(G60P、D61P、N62K)、(G60P、ΔD61、N62G)、(G60P、D61G、N62K)、(D61N、N62K)及び(T83D、Q86E)からなる群から選択される1つ又は2つ以上の変異を含むことを特徴とするポリペプチドに関する。本発明は、様々な方法及び核酸にも関する。

Description

国際公開第2009/136182号パンフレットには、D48L及びG50Sを使用する、先行技術足場STMの変異が開示されおり、この変異が細菌系における発現増加をもたらすと開示されている(22頁、12〜13行目)。
国際公開第2009/136182号パンフレット及び国際公開第2006/131749号パンフレットには、各々、野生型ステフィンAのV48部位の変異、特に、ドメインスワップ二量体化の消滅に有用であるV48Dの変異(国際公開第2006/131749号パンフレット、35頁、25行目)が、以前に開示されている。
E78AとL80Rの同時変異は、国際公開第2009/136182号パンフレットにおいて足場SQTについて開示されており、SQM足場におけるL82RとT83Sの同時変異も開示されている(国際公開第2009/136182号パンフレットの22〜23頁に渡る段落)。これらの同時変異ペアは、大腸菌(E. coli)において高発現を示すと開示されている。
国際公開第2009/136182号パンフレットには、修飾ステフィンA足場タンパク質が開示されている。特に、この文書における開示は、ステフィンAのG4部位又はSTMのW4部位に対応する「4位変異」に焦点を当てている。特に、この文書は、G4Rミュータントの特別な利点を教示している。この文書は、足場タンパク質の熱安定性(thermal stability)の変化に関するいかなる教示も行っていない。熱安定性は、この文書の中のたった1段落に、標的ペプチドによる変形に対する足場タンパク質の耐性をアセスメントするために測定されうる複数の特性のうちの1つとして言及されているに過ぎない(国際公開第2009/136182号パンフレット、13頁、最初の段落)。
国際公開第2006/131749号パンフレットには、足場タンパク質としてのステフィンAの使用が開示されており、足場の生物学的中立性を確保するのに有用な複数の突然変異が開示されている。この文書には、熱的安定性アッセイが開示されており(32頁、最初の段落)、STMの熱的安定性に関するデータが示されている(35頁、9〜12行目)。この文書における熱的安定性は、標的ペプチドによる変形に対する足場タンパク質の耐性をアセスメントするために測定されうる特性として開示されているに過ぎない(国際公開第2006/131749号パンフレットの6〜7頁に渡る段落を参照されたい)。この文書には熱安定性の変化又はモジュレーションに関するいかなる教示もない。
国際公開第2014/125290号パンフレットには、植物シスタチンに由来する足場タンパク質が開示されている。特に、この文書には、3つの好ましい合成タンパク質が、国際公開第2014/125290号パンフレットの配列番号1、配列番号2及び配列番号3として開示されている。この文書には、示差走査熱量測定によるそれらの好ましい足場の熱安定性の測定が開示されている(48頁、31〜32行目、及び図7a)。熱安定性に影響を与えるために行われる変異についての開示は、この文書の何処にもない。実際、発明者らは、彼らの足場タンパク質の熱安定性に影響を及ぼすいかなる方法についてもコメントしていない。彼らは、彼らの好ましい足場の熱安定性は「高い」と断言しているが、これは、彼らの足場が本質的にコンパクトである結果であるとしている:
「ステフィン又はシスタチンの他の構造に見られるものより顕著である、足場が本質的にコンパクトであることが、その高い熱安定性の一因となる可能性が高いように思われる(The compact nature of the scaffold, which is more pronounced than seen in other structures of stefins or cystatins seems likely to contribute to its high thermal stability)」。
(国際公開第2014/125290号パンフレット、53頁、17〜19行目)。
熱安定性をどのようにしてモジュレート(modulate)をするのか又は変化させるのかについての教示も、この文書にはない。さらに、この文書では、変異について、先行技術の変異に関連してしか、又はフレームシフト変異を生じさせないために三量体挿入若しくは欠失を使用する必要性に関連してしか、論じられていない。この文書の科学的焦点は、植物シスタチンタンパク質に由来するコンセンサス配列を設計することに集中しており、熱安定性に影響を及ぼすための配列の操作に関する開示はない。
国際公開第2009/136182号パンフレット 国際公開第2006/131749号パンフレット 国際公開第2014/125290号パンフレット
本発明者らは、ステフィンA足場タンパク質を、その熱安定性などのその特性を改善することを目的として、研究した。タンパク質構造及び機能への洞察に基づいて事を進めて、本発明者らは、それらの特性を改善するために様々な変化及び置換を計画した。これは、例えば、タンパク質についてある特定の様式で挙動すると予測された可能性があるが、それについての客観的な知見はその予測と食い違っていた予測されなかった異常(例えば、下で詳細に論じられるQ42D/E異常)を含む様々な意外な結果をもたらした。この相当な研究及び知的努力の結果は、ステフィンAタンパク質の熱安定性をどのようにして変化させるのか、及び熱安定性のそれらの変化が足場タンパク質としてのその使用にどのようなメリットをもたらすのかについての包括的教示である。
したがって、本発明は、配列番号1のアミノ酸残基1〜11、13〜15、17〜19、21〜25、27〜28、35〜37、39、41、43〜44、46〜47、49〜50、52〜53、55〜58、63〜64、66、68〜82、84〜85、及び87〜98に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、Affimer(Affimer)ポリペプチドなどのポリペプチドであって、
配列番号1に対して、
T51L、T51V、M65V、N32G、A59I、L38A、V20I、A40I、L38V、A12I、A12V、I16L、V20L、Q26E、E29M、T31K、N32D、N32H、T34V、T34R、T34D、T34P、A40V、Q42D、T45I、T45V、V48E、V48G、V48A、T51F、T51A、A59L、L67I、(V20I、L38A)、(V20L、L38A)、(V20I、L38V)、(V20L、L38V)、(E29K、K30E、E33K)、(Y54D、T83D、Q86E)、(A59L、G60N、D61G、N62K)、(A59V、D61N、N62K)、(G60N、D61G、N62K)、(G60N、ΔD61、N62G)、ΔD61、(A59L、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、ΔD61)、(G60P、ΔD61、N62P)、(G60P、D61P、N62K)、(G60P、ΔD61、N62G)、(G60P、D61G、N62K)、(D61N、N62K)及び(T83D、Q86E)
からなる群から選択される1つ又は2つ以上の変異を含むことを特徴とするポリペプチドに関する。
本発明は、配列番号1に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、Affimerポリペプチドなどのポリペプチドであって、
配列番号1に対して、
T51L、T51V、M65V、N32G、A59I、L38A、V20I、A40I、L38V、A12I、A12V、I16L、V20L、Q26E、E29M、T31K、N32D、N32H、T34V、T34R、T34D、T34P、A40V、Q42D、T45I、T45V、V48E、V48G、V48A、T51F、T51A、A59L、L67I、(V20I、L38A)、(V20L、L38A)、(V20I、L38V)、(V20L、L38V)、(E29K、K30E、E33K)、(Y54D、T83D、Q86E)、(A59L、G60N、D61G、N62K)、(A59V、D61N、N62K)、(G60N、D61G、N62K)、(G60N、ΔD61、N62G)、ΔD61、(A59L、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、ΔD61)、(G60P、ΔD61、N62P)、(G60P、D61P、N62K)、(G60P、ΔD61、N62G)、(G60P、D61G、N62K)、(D61N、N62K)及び(T83D、Q86E)
からなる群から選択される1つ又は2つ以上の変異を含むことを特徴とするポリペプチドに関する。
本発明は、配列番号1のアミノ酸残基1〜98に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、Affimerポリペプチドなどのポリペプチドであって、
配列番号1に対して、
T51L、T51V、M65V、N32G、A59I、L38A、V20I、A40I、L38V、A12I、A12V、I16L、V20L、Q26E、E29M、T31K、N32D、N32H、T34V、T34R、T34D、T34P、A40V、Q42D、T45I、T45V、V48E、V48G、V48A、T51F、T51A、A59L、L67I、(V20I、L38A)、(V20L、L38A)、(V20I、L38V)、(V20L、L38V)、(E29K、K30E、E33K)、(Y54D、T83D、Q86E)、(A59L、G60N、D61G、N62K)、(A59V、D61N、N62K)、(G60N、D61G、N62K)、(G60N、ΔD61、N62G)、ΔD61、(A59L、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、ΔD61)、(G60P、ΔD61、N62P)、(G60P、D61P、N62K)、(G60P、ΔD61、N62G)、(G60P、D61G、N62K)、(D61N、N62K)及び(T83D、Q86E)
からなる群から選択される1つ又は2つ以上の変異を含むことを特徴とするポリペプチドに関する。
適切には、配列番号1に対する前記1つ又は2つ以上の変異は、
T51L、T51V、M65V、N32G、A59I、E29M、T34V、T34R、T45I、T45V、T51F、A59L、L67I、(E29K、K30E、E33K)、(A59L、G60N、D61G、N62K)、(A59V、D61N、N62K)、(G60N、D61G、N62K)、(G60N、ΔD61、N62G)、ΔD61、(A59L、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、ΔD61、N62G)、及び(A59V、ΔD61)
からなる群から選択され、好ましくは、前記ポリペプチドは、配列番号1のTmより高いTmを有する。
適切には、配列番号1に対する前記1つ又は2つ以上の変異は、
L38A、V20I、A40I、L38V、A12I、A12V、I16L、V20L、Q26E、T31K、N32D、N32H、T34D、T34P、A40V、Q42D、V48E、V48G、V48A、T51A、(V20I、L38A)、(V20L、L38A)、(V20I、L38V)、(V20L、L38V)、(Y54D、T83D、Q86E)、(G60P、ΔD61、N62P)、(G60P、D61P、N62K)、(G60P、ΔD61、N62G)、(G60P、D61G、N62K)、(D61N、N62K)及び(T83D、Q86E)
からなる群から選択され、好ましくは、前記ポリペプチドは、配列番号1のTmより低いTmを有する。
本発明の別の態様は、一般式:
MIP-Xaa1-GLSEAKPA12TPEI16QEIV20DKVKPQ26LEE29K30T31N32E33T34YGKL38EA40VQ42YKT45QVV48A-(Xaa)n-Xaa2-T51NYY54IKVRA59G60D61N62KYM65HL67KVF-Xaa3-Xaa4-Xaa5-(Xaa)m-Xaa6-D-Xaa7-VLT83GYQ86VDKNKDDELTGF
(配列中、
Xaaは、各存在について個々に、アミノ酸残基であり;
n及びmは、各々、独立して、3〜20の整数であり;
Xaa1は、Gly、Ala、Val、Arg、Lys、Asp又はGluであり;
Xaa2は、Gly、Ala、Val、Ser又はThrであり;
Xaa3は、Arg、Lys、Asn、Gln、Ser、Thrであり;
Xaa4は、Gly、Ala、Val、Ser又はThrであり;
Xaa5は、Ala、Val、Ile、Leu、Gly又はProであり;
Xaa6は、Gly、Ala、Val、Asp又はGluであり;及び
Xaa7は、Ala、Val、Ile、Leu、Arg又はLysである)で表されるアミノ酸配列を含む、Affimerポリペプチドなどのポリペプチドであって、;
以下のアミノ酸位置の少なくとも1つが、列挙される代替アミノ酸残基から選択される:
12は、Alaであるか、又はVal、Ile若しくはLeuから選択される代替アミノ酸残基、好ましくはIle若しくはValであり;
16は、Ileであるか、又はVal若しくはLeuから選択される代替アミノ酸残基、好ましくはLeuであり;
20は、Valであるか、又はAla、Ile若しくはLeuから選択される代替アミノ酸残基、好ましくはIle若しくはLeuであり;
26は、Glnであるか、又はAsp若しくはGluから選択される代替アミノ酸残基、好ましくはGluであり;
29は、Gluであるか、又はAsp又はMetから選択される代替アミノ酸残基、好ましくはMetであり;
30は、Lysであるか、又はArg、His、Glu若しくはAspから選択される代替アミノ酸残基、好ましくはGluであり;
31は、Thrであるか、又はSer、Arg若しくはLysから選択される代替アミノ酸残基、好ましくはLysであり;
32は、Asnであるか、又はGly、Asp、Glu若しくはHisから選択される代替アミノ酸残基、好ましくはGly、Asp若しくはHisであり;
33は、Gluであるか、又はArg、His、Lys若しくはAspから選択される代替アミノ酸残基、好ましくはLysであり;
34は、Thrであるか、又はSer、Ala、Val、Ile、Leu、Arg、Lys、Asp、Glu若しくはProから選択される代替アミノ酸残基、好ましくはVal、Arg、Asp若しくはProであり;
38は、Leuであるか、又はGly、Ala若しくはValから選択される代替アミノ酸残基、好ましくはAla若しくはValであり;
40は、Alaであるか、又はGly、Val、Leu若しくはIleから選択される代替アミノ酸残基、好ましくはIle若しくはValであり;
42は、Glnであるか、又はAsp、Glu若しくはAsnから選択される代替アミノ酸残基、好ましくはAspであり;
45は、Thrであるか、又はSer、Ala、Val、Ile若しくはLeuから選択される代替アミノ酸残基、好ましくはIle若しくはValであり;
48は、Valであるか、又はGly、Ala、Ile、Leu、Glu若しくはAspから選択される代替アミノ酸残基、好ましくはGly、Ala若しくはGluであり;
51は、Thrであるか、又はGly、Ala、Val、Ile、Leu、Ser若しくはPheから選択される代替アミノ酸残基、好ましくはPhe、Ala、Val若しくはLeuであり;
54は、Tyrであるか、又はAsp若しくはGluから選択される代替アミノ酸残基、好ましくはAspであり;
59は、Alaであるか、又はGly、Val、Ile若しくはLeuから選択される代替アミノ酸残基、好ましくはIle、Leu若しくはValであり;
60は、Glyであるか、又はAsn、Gln、Gly若しくはProから選択される代替アミノ酸残基、好ましくはAsn若しくはProであり;
61は、Aspであるか、又はΔD61(非存在)、Gly、Pro、Glu、Asn若しくはGlnから選択される代替アミノ酸残基、好ましくはΔD61(非存在)、Gly、Pro若しくはAsnであり;
62は、Asnであるか、又はGln、Lys、Arg、His、Gly若しくはProから選択される代替アミノ酸残基、好ましくはLys、Pro若しくはGlyであり;
65は、Metであるか、又はAla、Val、Ile、Leuから選択される代替アミノ酸残基、好ましくはValであり;
67は、Leuであるか、又はAla、Val若しくはIleから選択される代替アミノ酸残基、好ましくはIleであり;
83は、Thrであるか、又はSer、Asp若しくはGluから選択される代替アミノ酸残基、好ましくはAspであり;
86は、Glnであるか、又はAsn、Glu若しくはAspから選択される代替アミノ酸残基、好ましくはGluである、ポリペプチドを提供する。
一態様において、本発明は、少なくとも1つの異種ペプチド挿入をさらに含む上記のポリペプチドであって、
前記異種ペプチド挿入が、配列番号1に対して、以下の位置のうちの1つに挿入された異種ペプチド:
a)47−<異種ペプチド>−55
b)46−<異種ペプチド>−54
c)46−<異種ペプチド>−50
d)48−<異種ペプチド>−50
e)49−<異種ペプチド>−51
f)50−<異種ペプチド>−52
g)66−<異種ペプチド>−85
h)67−<異種ペプチド>−84
i)70−<異種ペプチド>−74
j)72−<異種ペプチド>−74
k)71−<異種ペプチド>−73
l)72−<異種ペプチド>−81
m)73−<異種ペプチド>−80
n)79−<異種ペプチド>−81
o)80−<異種ペプチド>−81
p)82−<異種ペプチド>−83
q)72−<異種ペプチド>−77
r)73−<異種ペプチド>−78
s)74−<異種ペプチド>−79
t)4−<異種ペプチド>−5
を含む、ポリペプチドに関する。
適切には、前記ポリペプチドは、位置(a)〜(f)のいずれかにおける第1の異種ペプチド挿入、及び位置(g)〜(s)のいずれかにおける第2の異種ペプチド挿入の、2つの異種ペプチド挿入を含む。
適切には、前記ポリペプチドは、位置(a)〜(f)のいずれかにおける第1の異種ペプチド挿入、及び位置(t)における第2の異種ペプチド挿入の、2つの異種ペプチド挿入を含む。
適切には、前記ポリペプチドは、位置(g)〜(s)のいずれかにおける第1の異種ペプチド挿入、及び位置(t)における第2の異種ペプチド挿入の、2つの異種ペプチド挿入を含む。
適切には、前記ポリペプチドは、位置(a)〜(f)のいずれかにおける第1の異種ペプチド挿入、及び位置(g)〜(s)のいずれかにおける第2の異種ペプチド挿入、及び位置(t)における第3の異種ペプチド挿入の、3つの異種ペプチド挿入を含む。
一態様において、本発明は、配列番号1のアミノ酸残基1〜11、13〜15、17〜19、21〜25、27〜28、35〜37、39、41、43〜44、46〜47、49〜50、52〜53、55〜58、63〜64、66、68〜82、84〜85、及び87〜98に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、少なくとも1つの異種ペプチド挿入を含む、Affimerポリペプチドなどのポリペプチドであって、
前記ペプチドが、配列番号1に対して、
M65I、T51I、T51L、T51V、M65V、A59V、N32G、A59I、L38A、V20A、V20I、A40I、L38V、G50S、L38F、A12I、A12V、I16L、V20L、Q26E、E29M、T31K、N32D、N32H、T34V、T34R、T34K、T34D、T34P、A40V、Q42E、Q42D、T45I、T45V、V48E、V48D、V48G、V48A、V48L、T51F、T51A、A59L、K63R、L67I、N90T、(V20I、L38A)、(V20L、L38A)、(V20I、L38V)、(V20L、L38V)、(E29K、K30E、E33K)、(Y54D、T83D、Q86E)、(A59L、G60N、D61G、N62K)、(A59V、D61N、N62K)、(G60N、D61G、N62K)、(G60N、ΔD61、N62G)、ΔD61、(A59L、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、ΔD61)、(G60P、ΔD61、N62P)、(G60P、D61P、N62K)、(G60P、ΔD61、N62G)、(G60P、D61G、N62K)、(D61N、N62K)、及び(T83D、Q86E)
からなる群から選択される1つ又は2つ以上の変異を含むことを特徴とし、
前記異種ペプチド挿入が、配列番号1に対して、以下の位置のうちの1つに挿入された異種ペプチド:
d)48−<異種ペプチド>−50、
e)49−<異種ペプチド>−51、
f)50−<異種ペプチド>−52、
q)72−<異種ペプチド>−77、
r)73−<異種ペプチド>−78、又は
s)74−<異種ペプチド>−79
を含む、ポリペプチドに関する。
一態様において、本発明は、配列番号1に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、少なくとも1つの異種ペプチド挿入を含む、Affimerポリペプチドなどのポリペプチドであって、
前記ポリペプチドが、配列番号1に対して、
M65I、T51I、T51L、T51V、M65V、A59V、N32G、A59I、L38A、V20A、V20I、A40I、L38V、G50S、L38F、A12I、A12V、I16L、V20L、Q26E、E29M、T31K、N32D、N32H、T34V、T34R、T34K、T34D、T34P、A40V、Q42E、Q42D、T45I、T45V、V48E、V48D、V48G、V48A、V48L、T51F、T51A、A59L、K63R、L67I、N90T、(V20I、L38A)、(V20L、L38A)、(V20I、L38V)、(V20L、L38V)、(E29K、K30E、E33K)、(Y54D、T83D、Q86E)、(A59L、G60N、D61G、N62K)、(A59V、D61N、N62K)、(G60N、D61G、N62K)、(G60N、ΔD61、N62G)、ΔD61、(A59L、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、ΔD61)、(G60P、ΔD61、N62P)、(G60P、D61P、N62K)、(G60P、ΔD61、N62G)、(G60P、D61G、N62K)、(D61N、N62K)、及び(T83D、Q86E)
からなる群から選択される1つ又は2つ以上の変異を含むことを特徴とし、
前記異種ペプチド挿入が、配列番号1に対して、以下の位置のうちの1つに挿入された異種ペプチド:
d)48−<異種ペプチド>−50、
e)49−<異種ペプチド>−51、
f)50−<異種ペプチド>−52、
q)72−<異種ペプチド>−77、
r)73−<異種ペプチド>−78、又は
s)74−<異種ペプチド>−79
を含む、ポリペプチドに関する。
一態様において、本発明は、配列番号1のアミノ酸残基1〜98に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、少なくとも1つの異種ペプチド挿入を含む、Affimerポリペプチドなどのポリペプチドであって、
前記ポリペプチドが、配列番号1に対して、
M65I、T51I、T51L、T51V、M65V、A59V、N32G、A59I、L38A、V20A、V20I、A40I、L38V、G50S、L38F、A12I、A12V、I16L、V20L、Q26E、E29M、T31K、N32D、N32H、T34V、T34R、T34K、T34D、T34P、A40V、Q42E、Q42D、T45I、T45V、V48E、V48D、V48G、V48A、V48L、T51F、T51A、A59L、K63R、L67I、N90T、(V20I、L38A)、(V20L、L38A)、(V20I、L38V)、(V20L、L38V)、(E29K、K30E、E33K)、(Y54D、T83D、Q86E)、(A59L、G60N、D61G、N62K)、(A59V、D61N、N62K)、(G60N、D61G、N62K)、(G60N、ΔD61、N62G)、ΔD61、(A59L、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、ΔD61)、(G60P、ΔD61、N62P)、(G60P、D61P、N62K)、(G60P、ΔD61、N62G)、(G60P、D61G、N62K)、(D61N、N62K)、及び(T83D、Q86E)
からなる群から選択される1つ又は2つ以上の変異を含むことを特徴とし、
前記異種ペプチド挿入が、配列番号1に対して、以下の位置のうちの1つに挿入された異種ペプチド:
d)48−<異種ペプチド>−50、
e)49−<異種ペプチド>−51、
f)50−<異種ペプチド>−52、
q)72−<異種ペプチド>−77、
r)73−<異種ペプチド>−78、又は
s)74−<異種ペプチド>−79
を含む、ポリペプチドに関する。
適切には、前記ポリペプチドは、位置(d)〜(f)のいずれかにおける第1の異種ペプチド挿入、及び位置(q)〜(s)のいずれかにおける第2の異種ペプチド挿入の、2つの異種ペプチド挿入を含む。
適切には、配列番号1に対する前記1つ又は2つ以上の変異は、
M65I、T51I、T51L、T51V、M65V、A59V、N32G、A59I、E29M、T34V、T34R、T34K、Q42E、T45I、T45V、T51F、A59L、K63R、L67I、N90T、(E29K、K30E、E33K)、(A59L、G60N、D61G、N62K)、(A59V、D61N、N62K)、(G60N、D61G、N62K)、(G60N、ΔD61、N62G)、ΔD61、(A59L、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、ΔD61、N62G)、及び(A59V、ΔD61)
からなる群から選択され、好ましくは、前記ポリペプチドは、配列番号1のTmより高いTmを有する。
適切には、配列番号1に対する前記1つ又は2つ以上の変異は、
L38A、V20A、V20I、A40I、L38V、G50S、L38F、A12I、A12V、I16L、V20L、Q26E、T31K、N32D、N32H、T34D、T34P、A40V、Q42D、V48E、V48D、V48G、V48A、V48L、T51A、(V20I、L38A)、(V20L、L38A)、(V20I、L38V)、(V20L、L38V)、(Y54D、T83D、Q86E)、(G60P、ΔD61、N62P)、(G60P、D61P、N62K)、(G60P、ΔD61、N62G)、(G60P、D61G、N62K)、(D61N、N62K)及び(T83D、Q86E)
からなる群から選択され、
好ましくは、前記ポリペプチドは、配列番号1のTmより低いTmを有する。
適切には、配列番号1に対する前記1つ又は2つ以上の変異は、
T51L、T51V、M65V、N32G、A59I、L38A、V20I、A40I、L38V、A12I、A12V、I16L、V20L、Q26E、E29M、T31K、N32D、N32H、T34V、T34R、T34D、T34P、A40V、Q42D、T45I、T45V、V48E、V48G、V48A、T51F、T51A、A59L、L67I、(V20I、L38A)、(V20L、L38A)、(V20I、L38V)、(V20L、L38V)、(E29K、K30E、E33K)、(Y54D、T83D、Q86E)、(A59L、G60N、D61G、N62K)、(A59V、D61N、N62K)、(G60N、D61G、N62K)、(G60N、ΔD61、N62G)、ΔD61、(A59L、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、ΔD61)、(G60P、ΔD61、N62P)、(G60P、D61P、N62K)、(G60P、ΔD61、N62G)、(G60P、D61G、N62K)、(D61N、N62K)及び(T83D、Q86E)
からなる群から選択される。
適切には、配列番号1に対する前記1つ又は2つ以上の変異は、
T51L、T51V、M65V、N32G、A59I、E29M、T34V、T34R、T45I、T45V、T51F、A59L、L67I、(E29K、K30E、E33K)、(A59L、G60N、D61G、N62K)、(A59V、D61N、N62K)、(G60N、D61G、N62K)、(G60N、ΔD61、N62G)、ΔD61、(A59L、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、ΔD61、N62G)、及び(A59V、ΔD61)
からなる群から選択され、好ましくは、前記ポリペプチドは、配列番号1のTmより高いTmを有する。
適切には、配列番号1に対する前記1つ又は2つ以上の変異は、
L38A、V20I、A40I、L38V、A12I、A12V、I16L、V20L、Q26E、T31K、N32D、N32H、T34D、T34P、A40V、Q42D、V48E、V48G、V48A、T51A、(V20I、L38A)、(V20L、L38A)、(V20I、L38V)、(V20L、L38V)、(Y54D、T83D、Q86E)、(G60P、ΔD61、N62P)、(G60P、D61P、N62K)、(G60P、ΔD61、N62G)、(G60P、D61G、N62K)、(D61N、N62K)及び(T83D、Q86E)
からなる群から選択され、好ましくは、前記ポリペプチドは、配列番号1のTmより低いTmを有する。
一態様において、本発明は、配列番号1のTmより高いTmを有する、上記のポリペプチドに関する。
一態様において、本発明は、配列番号1のTmより低いTmを有する、上記のポリペプチドに関する。
適切には、前記ポリペプチドは、配列番号1に対して、G4R、G4W、V48D、V48E、G50S、Y35W、Y43W、Y53W、Y54W、Y64W、F70W、Y85W、F98W、(K71N S72G L73P)及び(E78A L80R)からなる群から選択される1つ又は2つ以上の変異をさらに含む。
適切には、上記のポリペプチドは、配列番号1に対して5つ又はそれ未満の変異を含む。
適切には、前記5つ又はそれ未満の変異は、Y35W、N32G、V48D、M65I、Q42E及びT51Lからなる群から選択される。
一態様において、本発明は、前記5つ又はそれ未満の変異が、N32G、V48D、M65I、Q42E及びT51Lからなる群から選択される、上記のポリペプチドに関する。
一実施形態において、本発明は、
i)N32G V48D
ii)N32G V48D M65I
iii)N32G V48D M65I T51L
iv)N32G V48D M65I Q42E
v)N32G V48D M65I Q42E T51L
のうちの1つの群の、各々の変異を有する、上記のポリペプチドに関する。
一実施形態において、本発明は、
i)N32G V48D
ii)N32G V48D M65I
iii)N32G V48D M65I T51L
iv)N32G V48D M65I Q42E
v)N32G V48D M65I Q42E T51L
のうちの1つの群の、各々の変異を有し、配列番号1に対してさらなる変異を有さない、上記のポリペプチドに関する。
一実施形態において、本発明は、変異iv)N32G、V48D、M65I及びQ42Eの各々を有する、上記のポリペプチドに関する。
一実施形態において、本発明は、変異iv)N32G、V48D、M65I及びQ42Eの各々を有し、配列番号1に対してさらなる変異を有さない、上記のポリペプチドに関する。
一実施形態において、本発明は、
a)Y35W N32G V48D M65I Q42E T51L(A59V ΔD61)(E29K K30E E33K)
b)Y35W N32G V48D M65I Q42E T51L(A59V G60N ΔD61 N62G)(E29K K30E E33K)
のうちの1つの群の、各々の変異を有する、上記のポリペプチドに関する。
一実施形態において、本発明は、
a)Y35W N32G V48D M65I Q42E T51L(A59V ΔD61)(E29K K30E E33K)
b)Y35W N32G V48D M65I Q42E T51L(A59V G60N ΔD61 N62G)(E29K K30E E33K)
のうちの1つの群の、各々の変異を有し、配列番号1に対してさらなる変異を有さない、上記のポリペプチドに関する。
一実施形態において、本発明は、変異b)Y35W N32G V48D M65I Q42E T51L(A59V G60N ΔD61 N62G)(E29K K30E E33K)の各々を有する、上記のポリペプチドに関する。
一実施形態において、本発明は、変異b)Y35W N32G V48D M65I Q42E T51L(A59V G60N ΔD61 N62G)(E29K K30E E33K)の各々を有し、配列番号1に対してさらなる変異を有さない、上記のポリペプチドに関する。
適切には、前記異種ペプチドは、6〜36アミノ酸長である。
一態様において、本発明は、
− 上記のポリペプチドと、
− 分泌シグナル配列、ペプチドリンカー配列、親和性タグ、膜貫通ドメイン、細胞表面滞留配列、翻訳後修飾のための基質認識配列、タンパク質間相互作用によって凝集しているタンパク質の多量体構造を作出するための多量体化ドメイン、半減期延長ポリペプチド部分、抗体の組織局在及び抗原結合部位を変化させるポリペプチド配列、同じ又は異なる標的と結合する上記の1つ又は2つ以上の追加のポリペプチド、並びに同じ又は異なる標的と結合する1つ又は2つ以上の追加のAffimerポリペプチド配列
からなる群から選択れる、1つ又は2つ以上の追加のアミノ酸配列と
を含む融合タンパク質に関する。
適切には、前記融合タンパク質は、Fcドメイン又はその一部分(portion)、アルブミンタンパク質又はその一部分、アルブミン結合ポリペプチド部分、トランスフェリン又はその一部分、トランスフェリン結合ポリペプチド部分、フィブロネクチン又はその一部分、及びフィブロネクチン結合ポリペプチド部分からなる群から選択される、1つ又は2つ以上の半減期延長ポリペプチド部分を含む。
適切には、Fcドメイン又はその一部分は、FcN結合を保持する。
適切には、Fcドメイン又はその一部分は、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM、又はそれらのサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1若しくはIgA2からのものである。
適切には、Fcドメイン又はその一部分は、C1q結合、補体依存性細胞毒性(CDC:complement dependent cytotoxicity)、抗体依存性細胞介在性細胞毒性(ADCC:antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity)、ファゴサイトーシス、B細胞受容体のダウンレギュレーション、又はこれらの組合せから選択されるエフェクター機能を保持する。
適切には、半減期延長ポリペプチド部分は、タンパク質が存在しない場合と比べ、タンパク質の血清半減期を少なくとも5倍増大する。
適切には、ポリペプチドは、affimer又はaffimerポリペプチドである。Affimers/affimerポリペプチドは、より詳細に下に記載される。
一態様において、本発明は、上記のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸に関する。
一態様において、本発明は、上記の核酸を含むベクターに関する。
一態様において、本発明は、上記のポリペプチドの集団を含むライブラリーであって、前記集団内の少なくとも2つの個々のポリペプチドが、様々な異種ペプチド挿入を含む、ライブラリーに関する。
一態様において、本発明は、核酸の集団を含むライブラリーであって、前記核酸が、上記のポリペプチドの集団をコードするヌクレオチド配列を含む、ライブラリーに関する。適切には、各核酸は、上記の単一のポリペプチドをコードする。
一態様において、本発明は、上記のポリペプチド、上記の核酸又は上記のライブラリーを含む宿主細胞に関する。
一態様において、本発明は、医療における使用のための、上記のポリペプチドに関する。
一態様において、本発明は、所望の構造に結合することができるポリペプチドを同定する方法であって、
(i)異種ペプチド挿入を含む、上記のポリペプチドを用意するステップと、
(ii)前記ポリペプチドを前記所望の構造と接触させるステップと、
(iii)前記ポリペプチドと前記所望の構造との会合をモニターするステップと
を含み、
ポリペプチドと所望の構造の会合により、ペプチドが、構造に結合することができる候補ペプチドとして同定される、方法に関する。
一態様において、本発明は、足場タンパク質としての、上記のポリペプチドの使用に関する。
より適切には、本発明は、前記異種ペプチド挿入が、配列番号1に対して、以下の位置のうちの1つに挿入された異種ペプチド:
d)48−<異種ペプチド>−50
e)49−<異種ペプチド>−51
f)50−<異種ペプチド>−52
q)72−<異種ペプチド>−77
r)73−<異種ペプチド>−78
s)74−<異種ペプチド>−79
t)4−<異種ペプチド>−5
を含む、上記のポリペプチドに関する。
より適切には、前記ポリペプチドは、位置(d)〜(f)のいずれかにおける第1の異種ペプチド挿入、及び位置(q)〜(s)のいずれかにおける第2の異種ペプチド挿入の、2つの異種ペプチド挿入を含む。
より適切には、前記ポリペプチドは、位置(d)〜(f)のいずれかにおける第1の異種ペプチド挿入、及び位置(t)における第2の異種ペプチド挿入の、2つの異種ペプチド挿入を含む。
より適切には、前記ポリペプチドは、位置(q)〜(s)のいずれかにおける第1の異種ペプチド挿入、及び位置(t)における第2の異種ペプチド挿入の、2つの異種ペプチド挿入を含む。
より適切には、前記ポリペプチドは、位置(d)〜(f)のいずれかにおける第1の異種ペプチド挿入、及び位置(q)〜(s)のいずれかにおける第2の異種ペプチド挿入、及び位置(t)における第3の異種ペプチド挿入の、3つの異種ペプチド挿入を含む。
適切には、本発明のポリペプチドは、記載の変異を含む、配列番号1のアミノ酸1〜98に対応するアミノ酸配列を含む。少数の記載される変異は、欠失であり、例えば、配列番号1のアミノ酸61に対応するアミノ酸は、置換により又は欠失により変異されていることがある。欠失により変異されている場合、得られる最終ポリペプチドは、配列番号1に対応するアミノ酸を97個だけ含む、言い換えると、D61が欠失している場合には、ΔD61は、配列番号1のD61に対応することがあり、当業者は、そのような特徴を相応に解釈することになる。最も適切には、変異は、置換である。
広範な態様において、配列番号1のアミノ酸1〜98に対応するアミノ酸配列を含む、Affimerポリペプチドなどのポリペプチドであって、
配列番号1に対して、
M65I、T51I、T51L、T51V、M65V、A59V、N32G、A59I、L38A、V20A、V20I、A40I、L38V、G50S、L38F、A12I、A12V、I16L、V20L、Q26E、E29M、T31K、N32D、N32H、T34V、T34R、T34K、T34D、T34P、A40V、Q42E、Q42D、T45I、T45V、V48E、V48D、V48G、V48A、V48L、T51F、T51A、A59L、K63R、L67I、N90T、(V20I、L38A)、(V20L、L38A)、(V20I、L38V)、(V20L、L38V)、(E29K、K30E、E33K)、(Y54D、T83D、Q86E)、(A59L、G60N、D61G、N62K)、(A59V、D61N、N62K)、(G60N、D61G、N62K)、(G60N、ΔD61、N62G)、ΔD61、(A59L、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、ΔD61)、(G60P、ΔD61、N62P)、(G60P、D61P、N62K)、(G60P、ΔD61、N62G)、(G60P、D61G、N62K)、(D61N、N62K)、及び(T83D、Q86E)
からなる群から選択される変異を含み、異種ペプチド挿入をさらに含む、ポリペプチドも開示される。適切には、前記異種ペプチド挿入は、配列番号1に対して、以下の位置のうちの1つに挿入された異種ペプチド:
d)48−<異種ペプチド>−50、
e)49−<異種ペプチド>−51、
f)50−<異種ペプチド>−52、
q)72−<異種ペプチド>−77、
r)73−<異種ペプチド>−78、又は
s)74−<異種ペプチド>−79
を含む。
Affimer(登録商標)は、改変された非抗体結合タンパク質(すなわち、ポリペプチド親和性試薬)である。Affimer(AFFIMER)は、登録商標である。
当技術分野において公知であるように、アプタマー及びAffimer(登録商標)試薬は、同じではない。Affimer技術は、アプタマーに又は抗体に関連する問題の多くを克服するように改変されたものであり、いくつかのメリットがある。例えば、アッセイ環境に対する感受性が改善された。なぜなら、Affimer(登録商標)足場は、広いpH範囲に対して耐性であり、このことが、これらの足場を広範なアッセイ条件に適するものにするからである。Affimer(登録商標)分子はまた、EDTAに対する感受性(フォールディング及び機能のためにMg++を必要とするアプタマーにとっての問題)がない。アプタマーは、拘束されないが、Affimer(登録商標)タンパク質は、提示される異種ペプチドを拘束する。
適切には、本明細書に記載されるAffimer(登録商標)足場/ポリペプチドなどの、Affimer(登録商標)試薬は、ヒトステフィンAタンパク質に基づく、又はそれに由来する。このことは、より詳細に下に記載される。
適切には、ポリペプチドは、ステフィンAポリペプチドである。
一態様において、本発明は、ポリペプチドの熱安定性(Tm)などの安定性及び異種ペプチド挿入に影響を与えることが実証されることになる各々の共通の技術的特徴を全てが共有する一連の被定義変異からの1つ又は2つ以上の変異の組合せを有する、ステフィンAポリペプチドに関する。本出願日の時点で本発明者らが知る又は信じる限り、これらの組合せは新規である。
本発明者らにより教示される特定の位置における少数のアミノ酸は、当技術分野に以前に(例えば、関連性の薄いステフィンAホモログ中に天然に存在する、すなわち、異種ペプチド挿入のない、したがって、上記新規組合せ中に存在しない、残基として)存在した可能性があり、又は、例えば先行技術足場STM中に、異種ペプチド挿入と組み合わせて存在した可能性がある。当技術分野に以前に存在した可能性がある、そのような変異(置換)の例としては、V20A、T34K、L38F、Q42E、V48D、G50S、T51I、A59V、K63R、M65I及びN90Tが挙げられる。一実施形態において、適切には、本発明のポリペプチドは、この群から選択される変異を含まない。適切には、本発明のポリペプチドが、この群から選択される変異を有する場合、それは、少なくとも1つの異種ペプチド挿入、最も適切には、配列番号1に対して、以下の位置のうちの1カ所又は2カ所以上における少なくとも1つの異種ペプチド挿入:
d)48−<異種ペプチド>−50、
e)49−<異種ペプチド>−51、
f)50−<異種ペプチド>−52、
q)72−<異種ペプチド>−77、
r)73−<異種ペプチド>−78、又は
s)74−<異種ペプチド>−79
も有する。
適切には、本発明のポリペプチドが、この群から選択される変異を有する場合、それは、表Aから選択される少なくとも1つのさらなる変異も有する。
Figure 2020532949
ステフィンAポリペプチドのTmを上昇させることに関して、当技術分野に以前に存在した可能性があるそのような変異(置換)の例としては、T34K、Q42E、G50S、T51I、A59V、K63R、M65I、及びN90Tが挙げられる。一実施形態において、適切には、本発明のポリペプチドは、この群から選択される変異を含まない。適切には、本発明のポリペプチドが、この群から選択される変異を有する場合、それは、少なくとも1つの異種ペプチド挿入、最も適切には、配列番号1に対して、以下の位置のうちの1カ所又は2カ所以上における少なくとも1つの異種ペプチド挿入:
d)48−<異種ペプチド>−50、
e)49−<異種ペプチド>−51、
f)50−<異種ペプチド>−52、
q)72−<異種ペプチド>−77、
r)73−<異種ペプチド>−78、又は
s)74−<異種ペプチド>−79
も有する。
適切には、本発明のポリペプチドが、この群から選択される変異を有する場合、それは、表Bから選択される少なくとも1つのさらなる変異も有する。
Figure 2020532949
ステフィンAポリペプチドのTmを低下させることに関して、当技術分野に以前に存在した可能性があるそのような変異(置換)の例としては、V20A、L38F及びV48Dが挙げられる。一実施形態において、適切には、本発明のポリペプチドは、この群から選択される変異を含まない。適切には、本発明のポリペプチドが、この群から選択される変異を有する場合、それは、少なくとも1つの異種ペプチド挿入、最も適切には、配列番号1に対して、以下の位置のうちの1カ所又は2カ所以上における少なくとも1つの異種ペプチド挿入:
d)48−<異種ペプチド>−50、
e)49−<異種ペプチド>−51、
f)50−<異種ペプチド>−52、
q)72−<異種ペプチド>−77、
r)73−<異種ペプチド>−78、又は
s)74−<異種ペプチド>−79
も有する。
適切には、本発明のポリペプチドが、この群から選択される変異を有する場合、それは、表Cから選択される少なくとも1つのさらなる変異も有する。
Figure 2020532949
適切には、ポリペプチドは、上記の変異を含む、配列番号1のアミノ酸1〜98に対応するアミノ酸配列を含む。
したがって、一態様において、本発明は、配列番号1のアミノ酸残基1〜98に対応するアミノ酸配列を含む、Affimerポリペプチドなどのポリペプチドであって、
前記アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸残基1〜11、13〜15、17〜19、21〜25、27〜28、35〜37、39、41、43〜44、46〜47、49〜50、52〜53、55〜58、63〜64、66、68〜82、84〜85、及び87〜98に対して少なくとも80%の同一性を有し、
前記ポリペプチドが、配列番号1に対して、上で開示された群から選択される1つ又は2つ以上の変異を含むことを特徴とする、ポリペプチドに関する。
適切には、ポリペプチドは、少なくとも80アミノ酸、適切には少なくとも81アミノ酸、適切には少なくとも82アミノ酸、適切には少なくとも83アミノ酸、適切には少なくとも84アミノ酸、適切には少なくとも85アミノ酸、適切には少なくとも86アミノ酸、適切には少なくとも87アミノ酸、適切には少なくとも88アミノ酸、適切には少なくとも89アミノ酸、適切には少なくとも90アミノ酸、適切には少なくとも91アミノ酸、適切には少なくとも92アミノ酸、適切には少なくとも93アミノ酸、適切には少なくとも94アミノ酸、適切には少なくとも95アミノ酸、適切には少なくとも96アミノ酸、より適切には少なくとも97アミノ酸、最も適切には少なくとも98アミノ酸(いかなる異種ペプチド挿入も除外する)を含む。適切には、ポリペプチドは、完全長hSteAに対応するアミノ酸配列を含む。適切には、完全長hSteAは、98アミノ酸を意味し、最も適切には、配列番号1で示されるものに対応する。
足場
当技術分野において周知であるように、用語「足場」は、それ自体の構造が標的ペプチドにより変形されることなく標的ペプチドを溶媒に提示することができる、タンパク質を指す。
溶媒へのペプチドの提示に関しては、免疫沈降実験を使用してこれを試験することができる。例えば、ペプチドが溶媒に提示されていることの証拠は、それを認識することができる抗体によるその利用可能性によって得ることができる。したがって、溶媒にペプチドを提示する足場タンパク質の能力を試験するために、ペプチドを含む足場を発現させ、ペプチドを認識する抗体を使用して、足場−ペプチド融合体の免疫沈降を試みることになる。このタンパク質を抗体で免疫沈降させること又は捕捉することができた場合、これは、ペプチドが、足場タンパク質により要求される通り溶媒に提示されたことを示す。ペプチドが溶媒に提示されていることの別の、又は代替的な、証拠は、リン酸化研究によって得ることができる。標的ペプチドにリン酸アクセプター(acceptor)部位を組み込み、次いで、リン酸化を許容する条件下で足場−ペプチド融合体をコグネイトキナーゼと接触させることにより、その結果、溶媒へのペプチドの提示を検証することができる。ペプチドのリン酸化は、溶媒への適正な提示を示す。
足場タンパク質は、ペプチドインサート、すなわち、本明細書で教示されるような異種ペプチド挿入(「標的ペプチド」)、を受け入れることができなければならない。好ましくは、ペプチドインサートは、36アミノ酸又はそれ未満、好ましくは、20アミノ酸又はそれ未満である。好ましくは、ペプチドインサートは、12アミノ酸又はそれ未満である。
足場タンパク質が有する標的ペプチドによる変形に対する足場タンパク質の耐性に関しては、円偏光二色性などの手法を使用してこれを試験することができる。具体的には、標的ペプチドが挿入されていない足場タンパク質の円偏光二色性分析は、標的ペプチドを有する場合の同じ足場タンパク質の円偏光二色特性と実質的に同じであるべきである。同じであることにより、足場タンパク質中の標的ペプチドの存在が、それを有する足場タンパク質の構造を損なわせることも変形させることもなかったことが実証される。
例えば、近UV CDスペクトルは、芳香族側鎖の環境について報告する。近UV CDスペクトルにおける正又は負のピークは、芳香族残基の周りの環境が固定されていることを示す。これは、固定された三次構造を有するタンパク質と解釈される。本明細書において教示されるような挿入部位への異種ペプチドの組込みは、適切には、「空の」足場と同じ形状を有する近UV CDスペクトルをもたらし、これは、異種ペプチドの付加が足場タンパク質の三次構造を破壊しなかったことを示す。当業者には分かるであるが、スペクトルは、様々な大きさを有することがあり、例えば、ピークがより高いこともあり及び/又はトラフがより低いこともあるが、同じ形状のスペクトルの保持が重要な要因である。
例えば、遠UV CDスペクトルは、全体的な二次構造について報告する。アルファヘリックス、ベータストランド(beta-strand)及びランダムコイルは全て、明確に異なる遠UV CDスペクトルを有する。本明細書において教示されるような挿入部位への異種ペプチドの組込みは、適切には、「空の」足場と同じ形状を有する遠UV CDスペクトルをもたらし、異種ペプチドの付加が足場タンパク質の全体的な二次構造を破壊しなかったことを示す。当業者には分かるであろうが、スペクトルは、様々な大きさを有することがあり、例えば、ピークがより高いこともあり及び/又はトラフがより低いこともあるが、同じ形状のスペクトルの保持が重要な要因である。
適切には、足場タンパク質は、標的ペプチドを拘束する。足場タンパク質における拘束効果の存在は、標的ペプチドが足場タンパク質中に存在するときに標的ペプチドに結合する実体の親和性を、ペプチドが足場タンパク質中に存在しないときの親和性と比較することによって、実証することができる。これら2つの親和性の差異は、足場タンパク質が、特定の三次元立体構造になるようにペプチドを拘束していることを示す。適切には、足場タンパク質は、ペプチドを拘束し、したがって、ペプチドが足場タンパク質に関連して存在するときに結合親和性増大を明示する。言い換えると、適切には、足場タンパク質は、結合のエントロピー消費を減少させ、そのため、遊離ペプチドの結合と比較した場合に測定される親和性を増大させる。
足場タンパク質は、適切には、生物学的に中立である。「生物学的に中立(の)」は、他のタンパク質との既知相互作用が消失されたことを意味する。さらに、タンパク質が有するいかなるシグナル伝達能力も、好ましくは除去される。ステフィンAベースの足場の生物学的中立性のための変異は公知であり、好ましい例は本明細書中で論じられる。生物学的中立性のためのそのような変異と熱安定性のモジュレーションのための本明細書において教示される変異の組合せは、明確に企図される。
適切には、本発明のポリペプチドは、足場タンパク質である。
別の態様では、本発明は、本明細書において開示されるようなポリペプチドの足場タンパク質としての使用に関する。
熱安定性
本発明の肝要な部分は、熱安定性のモジュレーションである。本発明の知識がなくても、原則的には、本発明のポリペプチド中の任意の残基を変異させると熱安定性が変化することになりうる。しかし、本発明者らは、タンパク質をその構造についてあらゆるレベルで詳細に研究し、熱安定性に影響を及ぼすためのタンパク質の特定の変化を設計した。意外にも、本発明者らが設計した変異の全てが、必ずしも予想された結果を生じさせるとは限らなかった。したがって、足場タンパク質の熱安定性に影響を及ぼすように変異を起こすことに伴う予測不能度は大きい。膨大な知的努力及び実験の結果として、本発明者らは、どの残基を使用して熱安定性に影響を及ぼすことができるのかに関して本明細書において提示される非常に詳細な教示に辿り着いた。
Tmなどの安定性に対して効果がない又は中立的効果がある残基を意外にも示す様々なデータも、比較のために含まれ、これらのデータは、当技術分野からの予測によりどのようにして本発明に辿り着くことができなかったのかを、さらに例証する。
熱安定性は、当技術分野において公知の任意の適する手段によってアセスメントすることができる。最も適切には、熱安定性は、Tmを測定することによって適切に読み取られる、又はアセスメントされる。したがって、適切には、「熱安定性」への言及を「Tm」への言及と解することができる。文脈からそうではないことが明らかでない限り、熱安定性「の改善」/Tmは、熱安定性の増大/Tmの上昇を意味する。「増加/増大/上昇(した)(increased)」は、相対語であり、文脈からそうではないことが明らかでない限り、「増加/増大/上昇した」は、「野生型ステフィンAと比べ(言い換えると、規定された位置における野生型アミノ酸残基を有するステフィンAと比べ、最も適切には、配列番号1のアミノ酸配列を有する野性型ステフィンAと比べ)、増加/増大/上昇した」を意味する。
本明細書において提示される測定値の大多数は、hSteA Y35Wに対するものであり、hSteAに対するその相対的差異が、科学的前提であることに留意されたい。
熱安定性のアセスメントを提供することに加えて、Tmは、足場タンパク質を作製することが如何に容易であるかをアセスメントするための良好なプロキシであり、高いTmを有する足場ほど、有利なことに作製が容易である。さらに、Tmの上昇は、タンパク質が「より硬い」こと、そのため異種ペプチド挿入の受入れにより適していることを示すことができる。さらに、Tmは、安定性の良好な指標であり、例えば、タンパク質の有効期間は、それがより安定している、すなわち、より高いTmを有する場合、有利なことに増加されうる。さらに、Tmの上昇は、下流フォーマッティングの性能、長期安定性及び/又はアッセイ設計の自由度の改善などの、さらなる利点をもたらしうる。
タンパク質のTmは、変性中点としても公知であり、フォールディングされた状態とフォールディングされていない状態の両方が同量で存在する又は平衡状態で集団内に存在する温度と定義される。Tmは、このように、2状態タンパク質フォールディングを前提として決定される。
本明細書において与えられるTm値は、本発明の「空の」ポリペプチド/足場タンパク質、すなわち、異種ペプチド挿入のない足場タンパク質を(別段の指示がない限り)指す。異種配列の挿入は、Tmなどの熱安定性を低減させることがあり、低減させることが多く、したがって、最も有意義な値は、空の足場タンパク質が比較されたときに得られる。
融解温度は、タンパク質安定性の特に有用な指標である。本明細書において使用される場合、融解温度は、熱アンフォールディング遷移の見かけの中点を意味する。フォールディングされたタンパク質及びフォールディングされていないタンパク質の相対的割合は、示差走査熱量測定、UV差分光法、蛍光、円偏光二色性(CD:circular dichroism)又はNMRを含む、当業者に公知の任意の手法により判定することができる(例えば、Pace, C. Nick, and J. Martin Scholtz. "Measuring the conformational stability of a protein." Protein structure: A practical approach 2 (1997): 299-321.を参照されたい)。
測定手法
Tmなどの同じ特性をアセスメントするために、複数の別の測定手法を使用することが可能である。Tmを測定するための好ましい手法は、Optim(最も適切にはOptim 2)及び/又は示差走査熱量測定(DSC:differential scanning calorimetry)を含む。最も適切には、Tmなどの熱安定性のアセスメントは、任意の市販の計器を使用する示差走査熱量測定(DSC)により、並びに/又はAvacta Analytical社(Unit 20、Ash Way Thorp Arch Estate、Wetherby LS23 7FA、UK)から及び/若しくはUnchained Labs社(6870 Koll Center Parkway、Pleasanton、CA 94566、USA)から入手可能な「Optim 2」ハイスループットタンパク質安定性測定装置(UNitとしても公知)を使用することにより行われる。
より詳細には、特性が2つの異なる手法により測定された場合に同じ絶対値になる可能性が低いことは、いずれの科学者/当業者にも理解されるであろう。そうは言っても、Optimにより測定される及びDSCにより測定されるTmは、非常に類似した、しかし厳密には同一でないこともある、値になる。DSCにより測定されるTmとOptimにより測定されるTmは、変化の同じ示度をもたらす。したがって、ポリペプチドのTmが、Optimにより測定され、同じペプチドがDSCにより測定された場合、それらの測定により、厳密に同じ絶対値を得ることはできないが、それら両方により、同じ変化の示度、例えば、+10℃が得られるであろう。さらに、個々のポリペプチドの順位付けは、どちらの手法を使用しても同じである。したがって、通常の科学的規範に従って値が付けられる絶対値は、測定を行うために使用される手法に依存してわずかに変わることがあることを念頭に置いておくべきである。別段の記述がない限り、本明細書における値は、Optimにより適切に決定される。Optimの利点としては、迅速であること、及び非常に少ない投入材料を使用して信頼度が高いことが挙げられる。Optimの1つの制限は、Tmが95℃未満、適切には92℃未満、最も適切には90℃未満であるとき、測定の信頼度が最も高いことである。DSCの利点は、より高温で非常によく機能し、干渉効果を回避するのに、わずかながら、より良好でありうる。したがって、絶対Tmを決定することを試みることが望まれる場合には、DSCが最適な測定手法であるであろう。しかし、現実問題として、「デルタ」又は個々のポリペプチド間の差異を測定するときには、Optimは、使用するのに非常に便利な、非常に信頼度の高い、堅牢な手法である。別段の記述がない限り、本明細書において提供される値は、Optimを使用して決定される。全ての状況で、同じ測定手法を使用して決定された個々のポリペプチド間の測定値を比較することが、良好な科学的規範である。適切には、Tmは、DSC又はOptimにより決定されたTmである。最も適切には、Tmは、Optimにより決定された場合のTmである。
最も適切には、Tmなどの安定性は、Tmなどの安定性が、本明細書において開示されるような変異を有するポリペプチド/足場タンパク質についてアセスメントされるのと同じ様式で、野生型ステフィンAについてアセスメントされる。参照目的のために、DSC(r/t)によりアセスメントされた場合の野生型ステフィンAのTmは、89.0℃である。
比較目的のために、先行技術SQT足場タンパク質は、同じ手法によりアセスメントされた場合、64.6℃のTmを有する。
測定手法は、下でより詳細に論じられる。
同様に、ヒトSteAは、記載の異種ペプチドを変異させる及び/又は挿入する前の足場についての好ましい出発点である。有利には、Y35W変異は、熱安定性を容易にモニターするために測定することができるシグナルをもたらすために含まれる。したがって、提供される測定の多く又は大部分は、Y35Wを含む足場において行われた。例えば、本発明者らが、安定性を3度増大させるN32Gについてのデータを示す場合、この測定値は、hSteA Y35W N32Gが、hSteA Y35Wと比較して安定性を3度増大させるものであった。
hSteA Y35Wに関して測定されるような変異の効果が、hSteAに対して同じ効果を及ぼすことは、合理的にかつロバストに科学的に予想されることである。このことを注意深く検証した。本発明者らは、このことを支持するためのデータを提示する:本発明者らは、hSteAとhSteA Y35Wの両方における複数の変異に関するDSC実験を行った。本発明者らは、これらのデータを下記に収載し、それによって、hSteA/hSteA Y35Wからの安定性の差異を与え、この予想が科学的に容認されることを示す:
Figure 2020532949
適切には、本発明のポリペプチド/足場タンパク質は、少なくとも90℃、より好ましくは少なくとも91℃、より好ましくは少なくとも92℃、より好ましくは少なくとも94℃、より好ましくは少なくとも95℃、より好ましくは少なくとも98℃、及び最も好ましくは少なくとも100℃の融解温度(Tm)を有する。
一態様において、本発明は、本明細書において教示されるような変異の使用により、ステフィンA足場タンパク質などのステフィンAポリペプチドの熱安定性を増大させることに関する。
別の態様において、本発明は、本明細書において教示されるような変異の使用による、ステフィンA足場タンパク質などのステフィンAポリペプチドの熱安定性の低減に関する。
したがって、一態様において、本発明は、ステフィンA足場タンパク質などのステフィンAポリペプチドにおいて1つ又は2つ以上の変異を起こすことにより、ステフィンA足場タンパク質などの前記ステフィンAポリペプチドの熱安定性を増大させる方法であって、変異が、
E29M、N32G、T34V、T34R、T34K、Q42E、T45I、T45V、T51F、T51V、T51L、T51I、A59L、A59I、A59V、K63R、M65V、M65I、L67I、N90T、(E29K、K30E、E33K)、(A59L、G60N、D61G、N62K)、(A59V、D61N、N62K)、(G60N、D61G、N62K)、(G60N、ΔD61、N62G)、ΔD61、(A59L、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、ΔD61、N62G)、及び(A59V、ΔD61)
からなる群から選択され、より適切には、
E29M、N32G、T34V、T34R、T45I、T45V、T51F、T51V、T51L、A59L、A59I、M65V、L67I、(E29K、K30E、E33K)、(A59L、G60N、D61G、N62K)、(A59V、D61N、N62K)、(G60N、D61G、N62K)、(G60N、ΔD61、N62G)、ΔD61、(A59L、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、ΔD61、N62G)、及び(A59V、ΔD61)
からなる群から選択される、方法に関する。
したがって、一態様において、本発明は、ステフィンA足場タンパク質などのステフィンAポリペプチドにおいて1つ又は2つ以上の変異を起こすことにより、ステフィンA足場タンパク質などの前記ステフィンAポリペプチドの熱安定性を低下させる方法であって、変異が、
A12I、A12V、I16L、V20A、V20I、V20L、Q26E、T31K、N32D、N32H、T34D、T34P、L38A、L38V、L38F、A40I、A40V、Q42D、V48E、V48D、V48G、V48A、V48L、T51A、(V20I、L38A)、(V20L、L38A)、(V20I、L38V)、(V20L、L38V)、(Y54D、T83D、Q86E)、(G60P、ΔD61、N62P)、(G60P、D61P、N62K)、(G60P、ΔD61、N62G)、(G60P、D61G、N62K)、(D61N、N62K)及び(T83D、Q86E)
からなる群から選択され、より適切には、
A12I、A12V、I16L、V20I、V20L、Q26E、T31K、N32D、N32H、T34D、T34P、L38A、L38V、A40I、A40V、Q42D、V48E、V48G、V48A、T51A、(V20I、L38A)、(V20L、L38A)、(V20I、L38V)、(V20L、L38V)、(Y54D、T83D、Q86E)、(G60P、ΔD61、N62P)、(G60P、D61P、N62K)、(G60P、ΔD61、N62G)、(G60P、D61G、N62K)、(D61N、N62K)及び(T83D、Q86E)
からなる群から選択される、方法に関する。
本発明は、教示される変異が(本文に別段の記述がない限り)相互依存的でない点で優れている。言い換えると、熱安定性に影響を及ぼすための本明細書において教示される変異(又は本文において別段の言及がある場合には変異の群)は、本発明の同技術的なメリットを獲得するために、すなわち、熱安定性を増大させる(又は低下させる)ために、様々な順列で組み合わせることができる。したがって、変異の特定のサブセットが、本発明によるペプチドにおいて使用されることが所望される場合には、本明細書において開示される一連の変異全体からサブセットを選択することができる。有利なことに、これらの変異は、それらの有利な効果をもたらすためにタンパク質の他の部分に依存しないからである。したがって、熱安定性の大きな変化が求められる場合には、当業者は、開示されるような変異をより多数選択することになる。熱安定性の増大が求められる場合には、当業者は、熱安定性を増大させる本明細書において開示される変異を選択することができる、又は熱安定性の所望の増大レベルをもたらすように組み合わせられたそれらの変異の任意のサブセットを選択することができる。
同様に、熱安定性の低減が求められる場合には、当業者は、熱安定性を低減させる、本明細書において開示される変異を選択することができ、又は熱安定性の所望の低減レベルをもたらすように組み合わせられたそれらの変異の任意のサブセットを選択することができる。
本発明のポリペプチドの熱安定性(例えば、Tm)の操作又はモジュレーションに有用と本明細書において開示される変異の各々を、独立して使用することができる。説明された通り、一部の実施形態において、熟練オペレーターは、より高い熱安定性を有するポリペプチドを得るためにTmを上昇させるのに有用な変異の各々を選択しようとすることもある(別段の記述がない限り、より高い/増大した又はより低い/低下したとは、野生型ステフィンAの熱安定性と比べたものであり、野生型ステフィンAの配列は、本明細書中で既に提供されている)。実施形態の別のセットにおいて、熟練オペレーターは、足場タンパク質などのポリペプチドの熱安定性(例えば、Tm)を野生型ステフィンAと比べ、低下又は低減させるために、開示される変異の各々を選択することができる。実施形態の別のセットにおいて、熟練オペレーターは、熱安定性を増大させるものから、及び熱安定性を低下させるものから、変異を選択することができ、そのような「混合」実施形態によって、有利なことに、熟練オペレーターは、このようにして産生されたポリペプチド/足場タンパク質についてのより正確な予め選択された熱安定性(例えば、Tm)に到達することができる。例えば、特定の熱安定性(例えば、Tm)が所望される場合には、使用すべき特定のミュータントを選択する際、当業者は、熱安定性を所望の値の方に(例えば)増大させる可能性がある変異を選択するために計算を行うことになる。しかし、各変異は、熱安定性(例えば、Tm)の増大にわずかに異なる値をもたらすので、その場合、所望の選択された熱安定性値全体の「バランスをとる」ために、熱安定性を低下させるものから1つ又は2つ以上の変異を選択することも必要になりうる。例えば、所望の熱安定性が、野生型ステフィンAより6°高い場合、各々が熱安定性を4°増大させる2つの異なる変異と、熱安定性を2°低下させる1つのさらなる変異とを選択することによって、野生型ステフィンAと比べて6°(+4、+4、−2)増大された熱安定性の総合効果に到達することが可能でありうる。野生型ステフィンAと比べてTmを上昇させるものとTmを低下させるものの両方から選択される変異の組合せを明確に含む、変異の任意のそのような組合せが、熟練オペレーターによって使用されうる。これは、さらなる変異、例えば、生物学的中立性を達成するのに有用な変異をさらに組み込む足場を設計する場合、重要でありうる。特に、V48DなどのV48変異を使用することが所望される場合、これは、ドメインスワップ二量体化を阻害し、そのため、生物学的中立性を証明するのに明確に有用である。しかし、この変異には、ポリペプチド/足場タンパク質に対する不安定化(Tmなどの熱安定性を低下させる)効果もある。したがって、熱安定性に影響を与えて所望の値に到達するために、V48D生物学的中立性変異の選択の効果の「バランスをとる」ように変異を選択することが重要になる。このようにして設計された例示的ポリペプチド/足場タンパク質は、次の変異を有する可能性がある:V48D、N32G、M65I(本明細書では3T2と呼ばれる)。
したがって、例示的3tシリーズ足場は、「混合」実施形態の例である。これらは、不安定化V48D変異に加えて、Tmを「回復し」(すなわち、不安定化された、よりTmの低いV48DミュータントからTmを上昇させることによって野生型Tmに戻り)そしてさらに上昇させるための様々な数の安定化変異を有する。以下の通り、そのような混合実施形態の様々な例のTmを実証するデータ:
hSteA N32G V48D=3t1=85.6℃
hSteA N32G V48D M65I=3t2=89.2℃
hSteA N32G V48D M65I T51L=3t3=91.6℃
hSteA N32G V48D M65I Q42E=3t4=92.4℃
hSteA N32G V48D Q42E T51L M65I=3t5=94.7℃
明らかに、野生型ステフィンAと比べ、熱安定性、例えばTm、の若干の最終的変化をもたらす組み合わせた変異を有する本発明によるポリペプチド/足場タンパク質を産生することは、可能であろう。例えば、1つのそのような実施形態は、Tmを低下させるV48D変異を有し、Tmを上昇させる本発明による1つ又は2つ以上の変異も有するポリペプチド/足場タンパク質を含むことができ、したがって、そのポリペプチド/足場タンパク質の最終Tmは、選択される変異に依存して、野生型ステフィンAのTmより高いこともあり、又は低いこともある。それ故、適切には、野生型ステフィンAと比べ、Tmの変化は、足場タンパク質が、本発明の足場タンパク質であるか否か(特許請求の範囲で定義される通りである)を問わず、決定的ではなく、重要なのは、本発明の足場タンパク質が、Tmに影響を与える、例えば、ステフィンAと比べてTmを上昇させる又はTmを低減させるための本明細書で教示されるような少なくとも1つの変異を含むことである。それらの変異が、既知V48D変異などの他の変異と組み合わせてポリペプチド/足場タンパク質において使用される場合には、得られたポリペプチド/足場タンパク質もやはり、Tmなどの熱安定性に影響を及ぼすための本明細書において開示される変異を含むため、最終産物が野生型ステフィンAより高い又は低いTmを有するか否かを問わず、本発明の一部とみなされる。
変異が、野生型ステフィンAと比べてTmを上昇させるのか又は低下させるのかのアセスメントは、適切には、変異(又は文脈から明らかな場合は、適宜、相互依存的変異の群)ついて個別に、すなわち、個々に(又は文脈から明らかである場合は、適宜、相互依存的変異の単一の群として)行われるときに、及びそのように変異されたポリペプチド/足場タンパク質が野生型ステフィンAと比較されるときに、判定される。
とは言え、本発明の好ましい実施形態において、ポリペプチド/足場タンパク質は、野生型ステフィンAと比べ、増大した熱安定性を有する。したがって、適切には、ポリペプチド/足場タンパク質が、野生型ステフィンAと比べてTmなどのその熱安定性を低下させる変異(例えば、V48D変異)を含む場合、適切には、前記ポリペプチド/足場タンパク質は、その変異(単数又は複数)(例えば、V48D変異)によって引き起こされるTmなどの熱安定性の低下を補償するのに十分な、本明細書において開示されるような変異をさらに含み、それによって、野生型ステフィンAと比べ、熱安定性が増大したポリペプチド/足場タンパク質がやはり得られる。
したがって、適切には、ポリペプチド/足場タンパク質は、野生型ステフィンAと比べ、少なくとも+1℃上昇した、野生型ステフィンAと比べ、適切には少なくとも+2℃上昇した、適切には少なくとも+3℃上昇した、適切には少なくとも+4℃上昇した、適切には少なくとも+5℃上昇した、適切には少なくとも+6℃上昇した、適切には少なくとも+7℃上昇した、適切には少なくとも+10℃上昇した、適切には少なくとも+13℃上昇した、適切には少なくとも+14℃上昇した、適切には少なくとも+17℃上昇したTmを有する。
特定の変異又は変異の組合せについてのそのような値の例としては、
hSteA N32G M65I +7.6℃
hSteA N32G M65I Q42E +10.0℃
hSteA N32G M65I Q42E T51L +14.4℃
hSteA N32G M65I Q42E T51L A59V dD61 +13.6℃
hSteA N32G M65I Q42E T51L A59V G60N dD61 N62G +17.1℃
が挙げられる。
混合実施形態(すなわち、不安定化変異を含むが、補償安定化変異を伴う配列)の例を作製することができる。例として、V48Dを含む足場が作製され、それらのTm(下に示される値)が決定される:
hSteA N32G V48D M65I=3t2;Tm 89.2°C
hSteA N32G V48D M65I T51L=3t3;Tm 91.6℃
hSteA N32G V48D M65I Q42E=3t4;Tm 92.4℃
hSteA N32G V48D Q42E T51L M65I=3t5;Tm 94.7℃
hSteA Y35W V48D N32G Q42E T51L M65I(A59V ΔD61)(E29K K30E E33K)=3r1;Tm 95.1℃
hSteA Y35W V48D N32G Q42E T51L M65I(A59V G60N ΔD61 N62G)(E29K K30E E33K)=3r2;Tm>98.3℃。
3t1などの例示的足場は、野生型hSteAより安定性がわずかに低いことがあり、3t2は、hSteAとほぼ同じ安定性である(hSteAより安定性がわずかに高い)が、そのような足場は、なお有用である。例えば、3t1は、野生型と比較して非常に少ない変異(3つだけの変異)を有し、そのため、野生型に近い配列を維持することと、その一方で、良好な安定性を有する有用な足場をなお設計することとの間の優れた妥協案を表す。3t1の場合、不安定化V48Dは、2つの追加の安定化変異によって強力に補償され、その結果、生物学的中立性に有用なV48D変異をさらになお有する非常に安定した足場が得られる。
適切には、本発明のポリペプチドは、48位にD、例えば、V48Dを含む。
熱安定性の低下
同様に、本発明のある特定の周辺実施形態において、ポリペプチド/足場タンパク質は、野生型ステフィンAと比べ、低下した熱安定性を有する。したがって、適切には、ポリペプチド/足場タンパク質が、野生型ステフィンAと比べてTmなどのその熱安定性を上昇させる変異(例えば、N32G変異)を含む場合、適切には、前記ポリペプチド/足場タンパク質は、その変異(単数又は複数)(例えば、N32G変異)によって引き起こされる、Tmなどの熱安定性の増大を補償するのに十分な、ここで(herein)開示されるような変異をさらに含み、それによって、結果として、野生型ステフィンAと比べ、熱安定性が低下したポリペプチド/足場がやはり得られる。
参照のために、野生型ヒトステフィンAは、89.0℃のTmを有する。
したがって、一部の実施形態において、適切には、ポリペプチド/足場タンパク質は、野生型ステフィンAと比べて少なくとも−1℃低減した、野生型ステフィンAと比べて、適切には少なくとも−2℃低減した、適切には少なくとも−3℃低減した、適切には少なくとも−4℃低減した、適切には少なくとも−5℃低減した、適切には少なくとも−6℃低減した、適切には少なくとも−7℃低減した、適切には少なくとも−8℃低減した、適切には少なくとも−9℃低減した、適切には少なくとも−10℃低減した、適切には少なくとも−11℃低減した、適切には少なくとも−12℃低減した、適切には少なくとも−13℃低減した、適切には少なくとも−15℃低減した、適切には少なくとも−16℃低減した、適切には少なくとも−21℃低減したTmを有する。
特定の変異又は変異の組合せについてのそのような値の例としては、
hSteA Y35W V20I L38A −16.7℃
hSteA Y35W V20L L38A −15.3℃
hSteA Y35W Y54D T83D Q86E −21.1℃
が挙げられる。
より適切な例は、
hSteA N32D V48D Y54D T83D Q86E (Tm おおよそ58℃)
hSteA V48D Y35W V20A L38A (Tm おおよそ57℃)
hSteA V48D Y35W A40I T31K A12I V20I (Tm おおよそ50℃)
である。
当業者は、例えば、室温、例えば18〜24℃で、適正にフォールディングする足場タンパク質を同時に維持する不安定化変異を選択すべきであることを、分かっているであろう。明らかに、本明細書において教示される不安定化変異の全てがSteAポリペプチドに同時に導入された場合、そのペプチドは、室温より低いTmを有する可能性があり、実際の使用が制限されるものになる。したがって、この実施形態において、適切には、本明細書において教示されるような変異は、25℃以上、適切には30℃以上、適切には40℃以上、適切には50℃以上のTmを有するポリペプチドが得られる結果となる組合せで使用される。したがって、この実施形態において、適切には、本明細書において教示されるような変異は、25℃又はそれを超える、適切には30℃又はそれを超える、適切には40℃又はそれを超える、適切には50℃又はそれを超えるTmを有するポリペプチドが得られる結果となる組合せで使用される。したがって、この実施形態において、適切には、本明細書において教示されるような変異は、25〜88℃又はそれを超える、適切には30〜88℃又はそれを超える、適切には40〜88℃又はそれを超える、適切には50〜88℃又はそれを超えるTmを有するポリペプチドが得られる結果となる組合せで使用される。
適正なフォールディング(例えば、構造又は立体構造)のアセスメントは、例えば、近及び遠UV CDスペクトルを使用して、本明細書において教示される。したがって、何らかの疑いがある場合、当業者は、チェックすべき変異の組合せを有するタンパク質を作製し、次いで、適正なフォールディング(例えば、構造若しくは立体構造)をアセスメントするだけで、及び/又は本明細書において教示されるようにTmを測定するだけでよい。
最も好ましい実施形態は、野生型ステフィンAと比べ、熱安定性が増大されたものである。
P25部位
P25を変異させることができる。P25SなどのP25変異は、ペプチド/足場タンパク質を、例えば、それをより硬くすることにより、改善するのに有用でありうる。P25部位は、ステフィンAベースの足場タンパク質のヘリックス内のキンクに位置する。P25の別の残基への変異(例えば、P25S)は、ヘリックス内のキンクを保持する。P25SなどのP25変異は、熱安定性に対して有意な効果を示さず、又は全く効果を示さない。
V48部位
V48は、ドメインスワップ二量体化に重要である。適切には、V48は、ドメインスワップ二量体化を防止又は阻害するように変異される。最も適切には、V48は、V48Dである。
V48は、カテプシン結合にも重要である。それ故、優れた生物学的中立性のために、適切には、V48は変異される。最も適切には、V48は、V48Dに変異される。
V48G又はV48D変異、最も適切にはV48Dを、使用することができる。
N32部位
有利には、N32部位は、変異される。例えば、それをN32Gに変異させることができる。これには、ペプチド/足場タンパク質の熱安定性を増大させる点で有利な効果がある。加えて、これは、ポリペプチド/足場タンパク質からグリコシル化部位を除去することによって生物学的中立性を確保するのに役立つという有利な特性を有する。
N32部位における他の変異を使用してもよい。例えば、N32G変異は、グリコシル化されることになる残基を除去することによりグリコシル化を防止する。しかし、Nは、NXS/Tモチーフ(Xは、Pを除く任意の残基である)においてNが認識される場合にのみ、グリコシル化される。hSteAの場合、この部位における配列は、NETである。Nを他の何かに変異させること、又はTをS以外の何かに変異させることのどちらかによって、グリコシル化を防止することができる。N32Gには、追加の熱的安定性の利点がある。適切には、T34で、Sを除く任意のアミノ酸が置換される。T34Eは、熱的安定性を変化させない特性を有する。N32変異又はT34変異のどちらかは、必要モチーフを除去することによりN32におけるグリコシル化を停止させることになる。
N32Gには、ヘリックスキャッピングにおいてさらなるメリットがある。Gは、この位置において平均の2倍を超える頻度で見いだされる。2番目に好適なのは、ヒスチジン、その次はNである。他の全ての変異は、ヘリックスキャッピングにはNほど好適でない。適切には、32におけるヒスチジン(N32H)は使用されない。このアミノ酸残基は、望ましくないことがある滴定可能な側鎖を加えるからである。
N32G変異の追加の利点は、この変異が、ポリペプチド/足場タンパク質のこの領域内のヘリックスの末端におけるキャップを最適化することである。したがって、他のN32ミュータントを使用してもよいが、N32Gは、上述の特定の利点をもたらす。
慣例として、ある特定の変異が、例えば、一部の図の又は本明細書中の表に示されているように、一緒にカッコでくくられている場合、これは、それらの変異が、一緒に、すなわち、組み合わせて、適切に起こされることを示す。例えば、「(T83D、Q86E)」は、同じポリペプチドにおける「T83Dの置換及びQ86Eの置換」を意味する。言い換えると、一緒にカッコでくくられている変異は、本発明によるポリペプチド/足場タンパク質において、ひとまとめにして適切に起こされる。これは、例えば、ペアの変異が「電荷交換」構成で起こされる場合に重要でありうる。この場合、第1の位置を、電荷を交換するように変異させ、第2の部位で対応する反対の電荷交換変異を起こし、それによって、最終ポリペプチド/足場タンパク質におけるこれら2残基間の電荷間相互作用を防止することが、重要である。例えば、E29K K30E E33K変異は、表面電荷変異であり、ひとまとめにして適切に起こされ、そのため、一緒にカッコでくくられた単一選択肢:「(E29K K30 E33K)」として記載される。すなわち、適切には、本発明による個々のポリペプチド/足場タンパク質において、3つの変異E29K K30E E33Kが全て起こされるか、又は3つの変異のいずれも起こされない。(E29K K30E E33K)変異セットの利点は、足場の表面での好適なクーロン相互作用の形成である。
参照配列
適切には、本明細書における全ての配列は、配列Uniprot P01040(最も適切には、Uniprot P01040−1)を有するヒト野生型ステフィンA(シスタチンA)を基準にして論じられる。誤解を避けるために、この配列が下に提示される:
配列番号1 − Uniprot P01040 − 野生型ヒトシスタチンA
Figure 2020532949
特定のアミノ酸残基が、数値アドレスを使用して本明細書において言及される場合、番号付けは、野生型ステフィンA(シスタチンA)アミノ酸配列を基準にして(又は核酸に言及する場合はそれをコードするポリヌクレオチド配列を基準にして)行われる。野生型ステフィンA(シスタチンA)をコードする例示的核酸は、次のものである:
配列番号2(DNA配列;人工(天然でない);アミノ酸配列 配列番号1を使用して、大腸菌における発現に適しているコドン最適化DNA配列を生成した):
ATGATTCCTGGTGGTTTGTCGGAAGCCAAACCGGCTACTCCGGAAATCCAGGAGATTGTGGACAAAGTCAAACCGCAACTGGAGGAAAAGACCAATGAAACCTATGGCAAACTCGAAGCGGTACAGTACAAAACCCAAGTCGTTGCGGGTACGAACTACTACATCAAAGTACGCGCAGGAGATAACAAGTATATGCATCTGAAAGTGTTCAAAAGCTTACCAGGGCAGAATGAGGATCTGGTTCTTACGGGCTATCAGGTGGATAAGAACAAAGACGATGAACTGACAGGCTTT
適切には、配列データベースの最新版に依拠する。あるいは、本出願日時点で現行のリリースに依拠する。誤解を避けるために、UniProtリリース2017_02に依拠する。より詳細には、UniProt consortium European Bioinformatics Institute(EBI)、SIB Swiss Institute of Bioinformatics and Protein Information Resource(PIR)の2017年2月15日に発行されたUniProt Knowledgebase(UniProtKB)Release 2017_02に依拠する。UniProt(Universal Protein Resource)は、タンパク質に関する情報の包括的カタログである(“UniProt: the universal protein knowledgebase” Nucleic Acids Res. 45: D158-D169 (2017))。
これは、所望の残基の位置を特定するために当技術分野においてよく理解されているように使用されるものである。これは、常に厳密な計数実行であるとは限らず、コンテキストに注意を払わなければならない。例えば、所望のタンパク質が、わずかに異なる長さのものである場合には、その配列内の正しい残基の位置特定は、アラインメントすべき配列と、精選される等価の又は対応する残基とを必要としうる。これは、十分に、熟練読者の範囲内である。
変異させることは、当技術分野におけるその通常の意味を有し、1つ又は2つ以上の残基、モチーフ又はドメインの置換又は短縮化又は欠失を指すことがある。変異は、例えば、変異配列を有するポリペプチドの合成により、ポリペプチドレベルで行われることもあり、又は例えば、変異配列をコードするポリヌクレオチドを作製することにより、ヌクレオチドレベルで行われることもあり、ポリヌクレオチドは、その後、変異ポリペプチドを産生するように翻訳されることもある。適切には、使用される変異は、本明細書に記載される通りである。文脈からそうではないことが明らかでない限り、本明細書において言及される変異は、置換である。例えば、「N32G」は、野生型ステフィンA(配列番号1)における「N32」に対応する残基がGで置換されることを意味する。
配列バリエーション
本明細書に記載されるポリペプチドは、Tmなどの熱安定性をモジュレートするための本明細書に記載される肝要な変異に加えて、野生型配列と比べて配列変化を含むこともある。具体的には、本明細書に記載されるポリペプチドは、本明細書に記載されるポリペプチドの機能又は動作を有意に損なわせない部位に追加の配列変化を含むことがある。配列変化は、ポリペプチドレベルであることもあり、又はヌクレオチドレベルであることもある。
ポリペプチド機能は、例えば、ペプチド構造又は立体構造が有意に変更されていないことを検証するために、実施例セクションにおいて示されるような方法を使用して容易に試験することができる。したがって、ポリペプチドが、本明細書において示されるように容易に試験することができる、その構造又は立体構造を保持することを条件に、ポリペプチドにおいて野生型参照配列と比べて配列バリエーションを生じさせることができる。
例えば、ポリペプチドを試験して、それがその構造又は立体構造を保持するかどうかを、近UV及び遠UV CDスペクトルをアセスメントすることによって確かめることができ、これらのスペクトルは、適合性緩衝剤(例えば、50mMリン酸ナトリウム、pH7.4)中、それぞれ、0.6mg/mL及び0.2mg/mLで記録される。スペクトルは、試料スペクトルから緩衝剤スペクトルを減算し、単位をモル楕円率(近UV CDスペクトルについて)に又は平均残基楕円率(遠UV CDスペクトルについて)に変換することによって、処理される。近UV CDスペクトルは、275nm〜280nmの間(between 275 nm - 280 nm)の最大値、及び単一トリプトファンが35位に存在する場合には295nm付近に追加の最小値を有するはずである。これは、異なる位置がトリプトファンに選択された場合、最大値になることもあるだろう。遠UV CDスペクトルは、218nm付近に最小値を有する、典型的なベータシートタンパク質のものに似ているはずである。これらの条件が満たされた場合、ポリペプチドは、適正な構造又は立体構造を保持している。近UV CDスペクトルがない場合、又は遠UV CDスペクトルが、208nm及び222nmに最小値、若しくは198nmに最小値を有する場合、ポリペプチドは、適正な構造又は立体構造を保持しておらず、有意に変更されている可能性がある。
ポリペプチドは、計画的に改変することができる任意のタイプの追加の変更(例えば、アミノ酸の挿入、欠失又は置換;グリコシル化状態の変化;リフォールディング若しくは異性体化、三次元構造、又は自己会合状態に影響を与える変化)を導入することにより産生されたバリアントを含む。バリアントは、サイレント変化を生じさせる変更であり、機能的に等価のポリペプチドが得られる結果となる変更を有することもある。ポリペプチドの構造又は立体構造が保持されるのであれば、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性及び両親媒性の類似性に基づいて計画的アミノ酸置換を行ってもよい。例えば、負荷電アミノ酸は、アスパラギン酸及びグルタミン酸を含み、正荷電アミノ酸は、リジン(lysine)及びアルギニンを含み、並びに類似の親水性値を有する非荷電極性ヘッド基を有するアミノ酸は、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン及びチロシンを含む。
保存的置換は、例えば下記の表に従って行うことができる。第2列の同じブロック内にあり、適切には第3列の同じ行にあるアミノ酸を互いに置換することができる:
Figure 2020532949
野生型配列と比べて、どのような変異、置換又は他のそのような変化を生じさせることができるのかを考慮する上で、ポリペプチドの構造又は立体構造の保持は、重要である。典型的に、保存的アミノ酸置換は、機能に悪影響を与える可能性が低いであろう。
本明細書において教示されるように熱安定性をモジュレートするためにポリペプチドを改変する場合、アミノ酸
A12I、A12V、I16L、V20A、V20I、V20L、Q26E、E29M、T31K、N32G、N32D、N32H、T34V、T34R、T34K、T34D、T34P、L38A、L38V、L38F、A40I、A40V、Q42E、Q42D、T45I、T45V、V48E、V48D、V48G、V48A、V48L、G50S、T51F、T51V、T51L、T51I、T51A、A59L、A59I、A59V、K63R、M65V、M65I、L67I、N90T、(V20I、L38A)、(V20L、L38A)、(V20I、L38V)、(V20L、L38V)、(E29K、K30E、E33K)、(Y54D、T83D、Q86E)、(A59L、G60N、D61G、N62K)、(A59V、D61N、N62K)、(G60N、D61G、N62K)、(G60N、ΔD61、N62G)、ΔD61、(A59L、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、ΔD61)、(G60P、ΔD61、N62P)、(G60P、D61P、N62K)、(G60P、ΔD61、N62G)、(G60P、D61G、N62K)、(D61N、N62K)、及び(T83D、Q86E)
の1つ又は2つ以上が、ここで教示されるように置換されるべきであり、又は置換されない場合、配列番号1に適切に対応するべきである。配列番号1で示される通りのもの以外の残基、又はここで教示された通りのもの以外の置換は、適切には、これらの位置において使用されない。
本明細書において教示されるように熱安定性を増大させるためにポリペプチドを改変する場合、アミノ酸
E29M、N32G、T34V、T34R、T34K、Q42E、T45I、T45V、T51F、T51V、T51L、T51I、A59L、A59I、A59V、K63R、M65V、M65I、L67I、N90T、(E29K、K30E、E33K)、(A59L、G60N、D61G、N62K)、(A59V、D61N、N62K)、(G60N、D61G、N62K)、(G60N、ΔD61、N62G)、ΔD61、(A59L、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、ΔD61、N62G)、及び(A59V、ΔD61)
の1つ又は2つ以上が、ここで教示されるように、置換されるべきであり、又は置換されない場合、配列番号1に適切に対応するべきである。配列番号1で示される通りのもの以外の残基、又はここで教示された通りのもの以外の置換は、適切には、これらの位置において使用されない。
本明細書において教示されるように熱安定性を低下させるためにポリペプチドを改変する場合、アミノ酸
A12I、A12V、I16L、V20A、V20I、V20L、Q26E、T31K、N32D、N32H、T34D、T34P、L38A、L38V、L38F、A40I、A40V、Q42D、V48E、V48D、V48G、V48A、V48L、G50S、T51A、(V20I、L38A)、(V20L、L38A)、(V20I、L38V)、(V20L、L38V)、(Y54D、T83D、Q86E)、(G60P、ΔD61、N62P)、(G60P、D61P、N62K)、(G60P、ΔD61、N62G)、(G60P、D61G、N62K)、(D61N、N62K)及び(T83D、Q86E)
の1つ又は2つ以上が、ここで教示されるように、置換されるべきであり、又は置換されない場合、配列番号1に適切に対応するべきである。配列番号1で示される通りのもの以外の残基、又はここで教示された通りのもの以外の置換は、適切には、これらの位置において使用されない。
本明細書において教示されるような蛍光/吸光度のために芳香族残基を備えさせるようにポリペプチドを改変する場合、アミノ酸Y35W、Y43W、Y53W、Y54W、Y64W、F70W若しくはY85Wの1つ又は2つ以上が、ここで教示されるように置換されるべきであり、又は置換されない場合、配列番号1に適切に対応するべきである。配列番号1で示される通りのもの以外の残基、又はここで教示された通りのもの以外の置換は、適切には、これらの位置において使用されない。
適切には、本発明のポリペプチドは、35位にW、例えば、Y35Wを含む。
Y85Wは、BCMの内在蛍光発光スペクトルによって判断してアンフォールディング時に明瞭な転移を示し、hSteAと比較して改善された吸光度特性を示すが、生の蛍光発光スペクトルの振幅の明らかな改善を示さないことに、留意されたい。誤解を避けるために、Y85Wは、それでもやはり、アンフォールディングの際の転移に使用することができ、小さな改善がもたらされる。したがって、この変異は、転移を観察するのになお有用であるが、蛍光をほとんど増加させず、それでもやはり、この設定で機能する。
本明細書において教示されるような生物学的中立性のためにポリペプチドを改変する場合、下記の表からの1つ又は2つ以上のアミノ酸が、ここで教示されるように置換されるべきであり、又は置換されない場合、配列番号1に適切に対応するべきである。配列番号1で示される通りのもの以外の残基、又はここで教示される通りのもの以外の置換は、適切には、これらの位置において使用されない:
Figure 2020532949
Figure 2020532949
タンパク質間で保存性の低い残基のほうが、変異を許容する可能性が高い。
熱安定性を増大させるために、合計で配列番号1と比べて合計で15もの置換を起こすことができる。
加えて、生物学的中立性のために、配列番号1と比べて2つもの置換を起こすことができる。
加えて、蛍光/吸光度のために芳香族残基を備えるために、配列番号1と比べて1つ置換を起こすことができる。
したがって、一実施形態において、本発明は、配列番号1と比べて18までの置換を有するポリペプチドに関する。
例として、一実施形態において、本発明は、配列番号1と比べて、以下の置換を有するポリペプチドに関する:
蛍光のための1つの置換(例えば、Y35W);生物学的中立性のための2つの置換(例えば、N32G、V48D);Tmのための15の置換(T34、Q42、T45、T51、K63、M65、L67、N90(これらは全て単一変異である)、E29K K30E E33K(電荷相互作用)、A59 G60 D61 N62(bターン))。
上記で明確に述べたもの以外の1つ又は2つ以上の残基の追加の変異、最も適切には置換を、ポリペプチドの構造又は立体構造が保持されることを条件に、行うことができる。したがって、一実施形態において、本発明は、配列番号1と比べて25までの変異、最も適切には置換を有するポリペプチドに関する。
例えば、(1 − 新規であり、Tmが上昇又は低下されるもの):
Figure 2020532949
野生型がAであり、変異がI、Vである、X1
野生型がIであり、変異がLである、X2
野生型がVであり、変異がI、Lである、X3
野生型がQであり、変異がEである、X4
野生型がEであり、変異がMである、X5
野生型がTであり、変異がKである、X7
野生型がNであり、変異がG、D、Hである、X8
野生型がTであり、変異がV、R、D、Pである、X10
野生型がLであり、変異がA、Vである、X11
野生型がAであり、変異がI、Vである、X12
野生型がQであり、変異がDである、X13
野生型がTであり、変異がI、Vである、X14
野生型がVであり、変異がE、G、Aである、X15
野生型がTであり、変異がF、V、L、Aである、X16
野生型がAであり、変異がL、Iである、X18
野生型がDであり、変異がΔである、X20
野生型がMであり、変異がVである、X22
野生型がLであり、変異がIである、X23
野生型が(V、L)であり、変異が(I、A)、(L、A)、(I、V)、(L、V)である、(X3、X11)
野生型が(E、K、E)であり、変異が(K、E、K)である、(X5、X6、X9)
野生型が(Y、T、Q)であり、変異が(D、D、E)である、(X17、X24、X25)
野生型が(A、G、D、N)であり、変異が(L、N、G、K)、(L、N、Δ、G)、(V、N、G、K)、(I、N、G、K)、(I、N、Δ、G)、(V、N、Δ、G)である、(X18、X19、X20、X21)
野生型が(A、D、N)であり、変異が(V、N、K)である、(X18、X20、X21)
野生型が(A、D)であり、変異が(V、Δ)である、(X18、X20)
野生型が(G、D、N)であり、変異が(N、G、K)、(N、Δ、G)、(P、Δ、P)、(P、P、K)、(P、Δ、G)、(P、G、K)である、(X19、X20、X21)
野生型が(T、Q)であり、変異が(D、E)である、(X24、X25)
野生型が(D、N)であり、変異が(N、K)である、(X20、X21)
したがって、一実施形態において、本発明は、配列番号1と比べて13までの変異、最も適切には置換を有するポリペプチドに関する。例えば、(2 − 新規であり、Tmが上昇されるもの):
Figure 2020532949
野生型がEであり、変異がMである、X1
野生型がNであり、変異がGである、X3
野生型がTであり、変異がV、Rである、X5
野生型がTであり、変異がI、Vである、X6
野生型がTであり、変異がF、V、Lである、X7
野生型がAであり、変異がL、Iである、X8
野生型がDであり、変異がΔである、X10
野生型がMであり、変異がVである、X12
野生型がLであり、変異がIである、X13
野生型が(E、K、E)であり、変異が(K、E、K)である、(X1、X2、X4)
野生型が(A、G、D、N)であり、変異が(L、N、G、K)、(L、N、Δ、G)、(V、N、G、K)、(I、N、G、K)、(I、N、Δ、G)、(V、N、Δ、G)である、(X8、X9、X10、X11)
野生型が(A、D、N)であり、変異が(V、N、K)である、(X8、X10、X11)
野生型が(G、D、N)であり、変異が(N、G、K)、(N、Δ、G)である、(X9、X10、X11)
野生型が(A、D)であり、変異が(V、Δ)である、(X8、X10)
したがって、一実施形態において、本発明は、配列番号1と比べて18までの変異、最も適切には置換を有するポリペプチドに関する。例えば、(3 − 新規であり、Tmが低下されるもの):
Figure 2020532949
野生型がAであり、変異がI、Vである、X1
野生型がIであり、変異がLである、X2
野生型がVであり、変異がI、Lである、X3
野生型がQであり、変異がEである、X4
野生型がTであり、変異がKである、X5
野生型がNであり、変異がD、Hである、X6
野生型がTであり、変異がD、Pである、X7
野生型がLであり、変異がA、Vである、X8
野生型がAであり、変異がI、Vである、X9
野生型がQであり、変異がDである、X10
野生型がVであり、変異がE、G、Aである、X11
野生型がTであり、変異がAである、X12
野生型が(V、L)であり、変異が(I、A)、(L、A)、(I、V)、(L、V)である、(X3、X8)
野生型が(Y、T、Q)であり、変異が(D、D、E)である、(X13、X17、X18)
野生型が(G、D、N)であり、変異が(P、Δ、P)、(P、P、K)、(P、Δ、G)、(P、G、K)である、(X14、X15、X16)
野生型が(D、N)であり、変異が(N、K)である、(X15、X16)
野生型が(T、Q)であり、変異が(D、E)である、(X17、X18)
したがって、一実施形態において、本発明は、配列番号1と比べて28までの変異、最も適切には置換を、適切には異種ペプチド挿入と一緒に有するポリペプチドであって、前記異種ペプチド挿入が、配列番号1と比べて、以下の位置のうちの1つに挿入された異種ペプチド:
d)48−<異種ペプチド>−50、
e)49−<異種ペプチド>−51、
f)50−<異種ペプチド>−52、
q)72−<異種ペプチド>−77、
r)73−<異種ペプチド>−78、又は
s)74−<異種ペプチド>−79
を含む、ポリペプチドに関する。例えば、(9 − Tmが上昇又は低下されるもの):
Figure 2020532949
野生型がAであり、変異がI、Vである、X1
野生型がIであり、変異がDである、X2
野生型がVであり、変異がA、I、Lである、X3
野生型がQであり、変異がEである、X4
野生型がEであり、変異がMである、X5
野生型がTであり、変異がKである、X7
野生型がNであり、変異がG、D、Hである、X8
野生型がTであり、変異がV、R、K、D、Pである、X10
野生型がLであり、変異がA、V、Fである、X11
野生型がAであり、変異がI、Vである、X12
野生型がQであり、変異がE、Dである、X13
野生型がTであり、変異がI、Vである、X14
野生型がVであり、変異がE、D、G、A、Lである、X15
野生型がGであり、変異がSである、X16
野生型がTであり、変異がF、V、L、I、Aである、X17
野生型がAであり、変異がL、I、Vである、X19
野生型がDであり、変異がΔである、X21
野生型がKであり、変異がRである、X23
野生型がMであり、変異がV、Iである、X24
野生型がLであり、変異がIである、X25
野生型がNであり、変異がTである、X28
野生型が(V、L)であり、変異が(I、A)、(L、A)、(I、V)、(L、V)である、(X3、X11)
野生型が(E、K、E)であり、変異が(K、E、K)である、(X5、X6、X9)
野生型が(Y、T、Q)であり、変異が(D、D、E)である、(X18、X26、X27)
野生型が(A、G、D、N)であり、変異が(L、N、G、K)、(L、N、Δ、G)、(V、N、G、K)、(I、N、G、K)、(I、N、Δ、G)、(V、N、Δ、G)である、(X19、X20、X21、X22)
野生型が(A、D、N)であり、変異が(V、N、K)である、(X19、X21、X22)
野生型が(G、D、N)であり、変異が(N、G、K)、(N、Δ、G)、(P、Δ、P)、(P、P、K)、(P、Δ、G)、(P、G、K)である、(X20、X21、X22)
野生型が(A、D)であり、変異が(V、Δ)である、(X19、X21)
野生型が(D、N)であり、変異が(N、K)である、(X21、X22)
野生型が(T、Q)であり、変異が(D、E)である、(X26、X27)
適切には、配列同一性を考慮する場合、「X」と記されたアミノ酸は考慮されず;適切には、配列同一性は、上記の通り指定又は定義されたアミノ酸残基(すなわち、非X残基)にわたってアセスメントされる。
参照配列がその中に可変残基(例えば、「X」)を有するときの配列同一性をアセスメントするために、何らかのさらなガイダンスが求められる場合、配列同一性は、NIHからのProtein BLASTサーバー(https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)を使用して計算される。問い合わせ配列は、全てのX(Xn)が除去されたアミノ酸参照配列である。対象配列は、等価残基が除去された問い合わせ配列と比較される、所望の配列である。次いで、分析が実行され、Ident値が結果として得られる。
例えば、
X1〜X25を含有するhSteAの配列(参照配列)は、所望の配列、つまりこの例ではイヌSteA(cSteA)と結びつけられる:
hSteA(配列番号1)
MIPGGLSEAKPX1TPEX2QEIX3DKVKPX4LEX5X6X7X8X9X10YGKX11EX12VX13YKX14QVX15AGX16NYX17IKVRX18X19X20X21KYX22HX23KVFKSLPGQNEDLVLX24GYX25VDKNKDDELTGF
cSteA(配列番号3)
MMPGGLTEAKPA TPEV QEIA NEVKPQ LEE K T N E T YQEF EA VE YKT QVV AGI NYY IKVRV G D N SYI HL KIFKGLPGQNPTLTLT GYQ TDKSKDDELTGF
全てのXnが除去され、所望の配列cSteA中の対応する残基も除去される:
hSteA−問い合わせ配列
MIPGGLSEAKPTPEQEIDKVKPLEYGKEVYKQVAGNYIKVRKYHKVFKSLPGQNEDLVLGYVDKNKDDELTGF
cSteA−対象配列
MMPGGLTEAKPTPEQEINEVKPLEYQEEVYKQVAGNYIKVRSYHKIFKGLPGQNPTLTLGYTDKSKDDELTGF
これらの問い合わせ配列及び対象配列が、Protein BLASTを使用して比較される。結果は、これらの配列が73残基のうち59の同一残基を有し、81%の配列同一性となるということである。
同様に、所望の配列が「ギャップ」又は短縮化を有する、例えば、配列番号1などの参照配列より短い場合、そのようなギャップ又は短縮化は、配列比較によりアセスメントされ、相応じてより低い配列同一性値の一因となる。この関連で、配列同一性は、適切には、配列番号1の全長にわたってアセスメントされるべきである。慣例により、より短い配列は、所望のより短い配列の長さのみにわたって参照配列(配列番号1)と比較されうる。しかし、文脈からそうではないことが明らかでない限り、配列同一性(及び本明細書において言及される配列同一性値)についての論述/判定は、短縮化を「ギャップ」として適切に処理する。実例を挙げれば、所望の配列が、49アミノ酸長しかなく、配列番号1(これは、98アミノ酸長である)と比較された場合には、最大配列同一性スコアは、50%となる(配列番号1と比べてのいかなる置換も、配列同一性スコアをさらに低減させることになる)。したがって、配列番号1と比較した所望のポリペプチドについての50%という配列同一性スコアは、所望のポリペプチド中の少なくとも49のアミノ酸残基(この49は、配列番号1におけるそれらの対応する残基と同一である)の存在を含意する。
適切には、残基が上記のように変異されない場合、それは、上記の通り「野生型」である。言い換えると、適切には、残基が上記のように変異されない場合、それは、hSteA(配列番後1)で示される通りである。
配列同一性
正確さを期して、配列の関係を配列番号1(野生型ヒトステフィンA)と比べての置換の観点から論じてきた。しかし、配列同一性の観点から配列の関係を考慮することが望ましいこともある。
配列比較は、目視により行うことができ又は、より通常は、容易に利用できる配列比較プログラムを活用して行うことができる。これらの公開及び市販されているコンピュータプログラムは、2つ又は3つ以上の配列間の相同性パーセント(例えば、同一性パーセント)を計算することができる。
同一性パーセントは、連続する配列にわたって算出されうる。すなわち、一方の配列が他方の配列とアラインメントされ、一方の配列内の各アミノ酸が他方の配列内の対応するアミノ酸と一度に1残基ずつ直接比較される。これは、「ギャップなしの」アラインメントと呼ばれる。典型的に、そのようなギャップなしのアラインメントは、比較的少数の残基(例えば、50個未満の連続するアミノ酸)にわたってしか行われない。
これは、非常に簡単で一貫性のある方法であるが、例えば、他の点では同一の配列ペアに関して、1つの挿入又は欠失に起因して後続のアミノ酸残基がアラインメントできなくなり、したがって包括アラインメント(全配列にわたってのアラインメント)が行われたときに相同性パーセント(同一性%)が大きく低減される結果となる可能性があるということを、考慮することができない。それ故、ほとんどの配列比較法は、相同性(同一性)スコア全体に過度にペナルティを科さない可能な挿入及び欠失を考慮する最適なアラインメントを生成するように設計される。これは、配列アラインメントの際に局所相同性/同一性を最大にするように「ギャップ」を挿入することによって実現される。
これらのより複雑な方法は、「ギャップペナルティ」をそのアラインメント内に存在する各ギャップに割り当て、その結果、同一のアミノ酸の同じ番号について、可能な限り少ないギャップでの配列アラインメント(2つの比較される配列間のより高い関連性を示す)によって、多くのギャップを伴う1より高いスコアが得られることになる。ギャップの存在に比較的高いコストを科し、ギャップ内の後続の残基各々により小さいペナルティを科す、「アファインギャップコスト」が典型的には、使用される。これは、最も一般的に使用されているギャップスコアリングシステムである。高いギャップペナルティは、もちろん、ギャップがより少ない最適化アラインメントを生成することになる。ほとんどのアラインメントプログラムにより、ギャップペナルティを変更することが可能である。しかし、そのようなソフトウェアを配列比較に使用する場合にはデフォルト値を使用することが好ましい。例えば、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(下記参照)を使用する場合、アミノ酸配列についてのデフォルトギャップペナルティは、ギャップについて−12、及び各伸長部について−4である。
したがって、最大相同性%の計算には、ギャップペナルティを考慮する最適なアラインメントの生成が先ず求められる。そのようなアラインメントの実行に適するコンピュータプログラムが、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(University of Wisconsin, U.S.A; Devereux et al., 1984, Nucleic Acids Research 12:387)である。配列比較を行うことができる他のソフトウェアの例としては、BLASTパッケージ、FASTA(Altschul et al., 1990, J. Mol.Biol.215:403-410)及びGENEWORKS社製の比較ツールスイートが挙げられるが、これらに限定されない。
最終相同性パーセントを同一性の観点から測定することができるが、アラインメントプロセス自体は、全か無かのペア比較に通常は基づかない。その代わりに、化学的類似性又は進化距離に基づいて各ペアワイズ比較にスコアを割り当てる、尺度化された類似性スコアの行例が一般に使用される。一般に使用されるそのような行列の例は、BLOSUM62行列(BLASTプログラムスイート用のデフォルト行列)である。GCG Wisconsinプログラムは、一般に、公開デフォルト値又は提供されている場合にはカスタムシンボル比較表のどちらかを使用する。GCGパッケージには公開デフォルト値を、又は他のスフとウェアの場合はBLOSUM62などのデフォルト行列を、使用することが好ましい。ソフトウェアが最適なアラインメントを生成してしまえば、相同性パーセント、好ましくは配列同一性パーセントを計算することが可能である。ソフトウェアは、通常は、これを配列比較の一部として行い、数値の結果を生成する。
適切には、本発明のポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも80%の配列同一性、配列番号1に対して、より適切には85%、より適切には88%、より適切には90%、より適切には92%、より適切には94%、より適切には95%、より適切には96%、より適切には97%、より適切には98%、より適切には99%の同一性を有する。
一実施形態において、より適切には、本発明のポリペプチドは、考慮されている本発明のポリペプチドの定義の際に(例えば、添付の特許請求の範囲において)置換されていると具体的に述べられるもの以外である配列番号1のそれらの残基に対して少なくとも80%の配列同一性、より適切には85%、より適切には88%、より適切には90%、より適切には92%、より適切には94%、より適切には95%、より適切には96%、より適切には97%、より適切には98%、より適切には99%の同一性を有する。言い換えると、この実施形態において、より適切には、配列同一性パーセントは、考慮されているポリペプチドの特定の実施形態において具体的に定義される残基(例えば、置換)を除外して配列番号1と比較される所望の配列についてアセスメントされる。
適切には、いかなる異種ペプチド挿入も、同一性パーセント計算から除外される。
一実施形態において、適切には、置換及びいかなる異種ペプチド挿入も、定義された通りであり、配列同一性は、配列番号1の対応する残基と比較されるポリペプチドの残りの「バックグラウンド」又は「主鎖」配列に対して判断される。
配列同一性についての全ての論述において、配列番号1が98アミノ酸長であることに留意されたい。したがって、各単一置換は、98個のアミノ酸全てが考慮される場合、同一性の1.020408%変化に相当する。上記値は、整数パーセンテージポイントに与えられたものであり、ポリペプチド配列内の一部のアミノ酸を置換することができないことを考慮して相応に解釈されたい。明らかに、98個未満のアミノ酸が考慮される場合(例えば、考慮されている本発明のポリペプチドの定義の際に置換されていると具体的に述べられるもの以外である配列番号1の残基に対する配列同一性を考慮する場合)には、各々の単一アミノ酸置換は、同一性の1.020408%より大きい変化に相当しうる。熟練読者は、ポリペプチド配列内の一部のアミノ酸を置換することができないことを考慮して値を相応に解釈することができる。
何らかのさらなるガイダンスが必要とされる場合、下記の表は、比較される残基の数、及び比較されるその数の残基内で行われるアミノ酸置換の数を考慮に入れて、配列同一性パーセント値がどのように変化するのかを示す。表中の例以外のいずれのさらなる値も、熟練研究者には容易に計算することができる。
Figure 2020532949
アミノ酸配列同一性値が特定のポリペプチドについて与えられる場合、この特定のポリペプチドが、異種ペプチド挿入を含むこともあること、及びこのことを、配列同一性をアセスメントするときに念頭に置かなければならないことは、熟練読者には分かっているであろう。適切には、配列同一性は、配列番号1の野生型ステフィンA中のものに対応するアミノ酸残基にわたってアセスメントされる。言い換えると、適切には、配列同一性のアセスメントは、配列番号1中に存在するものに対応するアミノ酸にわって考慮されるが、異種ペプチド挿入(も、挿入の欠如も)含まない。
一実施形態において、より適切には、配列同一性は、配列番号1中に存在するものに対応するアミノ酸にわたって、しかし、いかなる異種ペプチド挿入も除外し、既に請求項に定義されるいかなる置換も考慮に含めずに、考慮される。
最も適切には、配列同一性パーセントは、熱安定性の理由で置換されたものを除外して、アミノ酸残基について計算される。
一部の応用では、例えば、企図された治療応用では、使用されるポリペプチド/足場タンパク質における変異の数を最少にすることが望ましい。したがって、一部の実施形態では、適切には、ポリペプチド/足場タンパク質は、野生型ヒトステフィンAと比較して5つ又はそれ未満、適切には4つ又はそれ未満、適切には3つ又はそれ未満、適切には2つ又はそれ未満の変異を含む。この文脈において、「変異」は、点変異、又は少数、例えば5つ若しくはそれ未満のアミノ酸の挿入若しくは欠失を指す。本発明のポリペプチド/足場タンパク質への異種ペプチドの挿入は、別途論じられる。1つ又は2つ以上の異種ペプチドの挿入は、この文脈では「変異」と見なされない。最も適切には、変異は、置換を意味する。
当技術分野における標準は、国際公開第2009/136182号パンフレットにおいて開示されているようなSQT足場タンパク質であることに留意されたい。これは、低い熱安定性/64.6℃のTmを有する。適切には、SQT足場は、国際公開第2009/136182号パンフレットの配列番号24の配列(SQT):MIPRGLSEAK PATPEIQEIV DKVKPQLEEK TNETYGKLEA VQYKTQVLAS TNYYIKVRAG DNKYMHLKVF NGPPGQNADR VLTGYQVDKN KDDELTGFを有する足場である。
したがって、本発明の実施形態は、先行技術SQT足場と比較して有意な利点を示す。しかし、本明細書において示される比較値は、文脈からそうではないことが明らかでない限り、野生型ステフィンAと比べてのものであることに留意されたい。したがって、野生型ステフィンAと比較してTmが低減された(より低い)が、それにもかかわらず、SQTと比べて改善された(より高い)Tmの利点をもたらす、本明細書において開示される通りのポリペプチド/足場タンパク質を有することが、可能である。値は全て、理解のしやすさ及び一貫性のために(文脈からそうではないことが明らかでない限り)野生型ステフィンAと比べて表されるが、本発明の利点は、得られたTmが野生型ステフィンAのものより高いか又は低いかを問わず、Tmをモジュレートすることで得ることができる。本発明のオペレーターにより所望されるTmは、野生型ステフィンAの若しくはSQTのものより高いこともあり、又は低いこともある。肝要な利点は、熟練読者が、本明細書において教示されるようにポリペプチド/足場タンパク質のTmを変更/モジュレートすることが今やできるということである。
適切には、本発明の足場は、SQTより高い、すなわち、64.6℃より高いTmを有する。最も適切には、本発明の足場は、野生型ステフィンAより高い、すなわち、89.0℃より高いTmを有する。
生物学的に中立であるポリペプチド/足場タンパク質が提供されることは、本発明の利点である。
グリコシル化部位を欠いているポリペプチド/足場タンパク質が提供されることは、本発明の利点である。
二量体化する傾向が低減又は改善されたポリペプチド/足場タンパク質が提供されることは、本発明の利点である。これは、足場が薬物である場合、二量体化が薬物動態を変化させうるので、有利である。これはまた、二量体化が親和性に影響を与えうる、したがって、標的との相互作用に影響を与えうるので、有利である。これはまた、二量体化が免疫原性に影響を与えうるので、有利である。二量体化は、ある特定の分子の効果をアゴニストからアンタゴニストへ(又は逆にアンタゴニストからアゴニストに)変化させることもある。加えて、一部の場合には、二量体化は、高次構造形成及び不安定化を経時的に促進することがある。さらに、単量体を有すること(すなわち、二量体化を低減させること)には、ある特定の利点がある。例えば、単量体は小さい(例えば、腫瘍侵入を改善する)。
明らかに、熟練オペレーターが二量体を所望する場合には、二量体化残基を相応に処理することができ、例えば、V48などの野生型として保持して、ドメインスワップ二量体化を、これが特定の応用に有利であると思われる場合、可能にする/促進することができる。
異種ペプチド挿入
適切には、異種ペプチドは、36又はそれ未満のアミノ酸、より適切には、20又はそれ未満のアミノ酸、より適切には12又はそれ未満のアミノ酸を含む。
適切には、異種ペプチドは、3又は4以上のアミノ酸、より適切には、12又は13以上のアミノ酸、より適切には20又は21以上のアミノ酸、より適切には36までのアミノ酸を含む。
適切には、異種ペプチドは、3〜36アミノ酸、より適切には3〜20アミノ酸、より適切には3〜12アミノ酸、より適切には3〜9アミノ酸、より適切には6〜36アミノ酸、より適切には6〜20アミノ酸、より適切には6〜12アミノ酸、より適切には6〜9アミノ酸、最も適切には9アミノ酸を含む。
異種ペプチド挿入が本明細書において教示されるように本発明のポリペプチドに含まれる場合に熱安定性の小さな増大が観察されることは、本発明の利点である。
異種ペプチド挿入の位置
異種ペプチド配列を、両端のアミノ酸を含むアミノ酸46〜54の間に(例えば、国際公開第2006/131749号パンフレット(「STM」などの足場を記載している)又は例えば、国際公開第2009/136182号パンフレット(「SQT」などの足場を記載している)に記載されているように)、より適切には両端のアミノ酸を含むアミノ酸46〜50の間、より適切には両端のアミノ酸を含むアミノ酸48〜50の間に挿入することができる。この文脈での「両端のアミノ酸を含む...の間」は、述べられているアミノ酸を異種ペプチド挿入に有利に欠失させることができること、すなわち、(例えば)46〜54のアミノ酸のいずれか又は全てを欠失させ、それらの場所に異種ペプチド挿入を加えることができることを意味する。したがって、アミノ酸46〜54を欠失させてそれらに置き換わる挿入は、句「アミノ酸46〜54の間」に包含される。アミノ酸46及びアミノ酸54を保持する必要はない。つまり、これらの「間」にあるためにアミノ酸46及びアミノ酸54の実際の存在を必要とするのではなく、配列番号1に関するこれらの位置間にペプチドが挿入される。アミノ酸46〜54の全てが欠失される場合、このことを、「45−<異種ペプチド>−55」と表すことができる。
異種ペプチド配列を、両端のアミノ酸を含むアミノ酸67〜84の間に挿入することができる。異種ペプチド配列を、両端のアミノ酸を含むアミノ酸71〜73の間に挿入することができる。異種ペプチド配列を、両端のアミノ酸を含むアミノ酸82〜83の間に挿入することができる。「Leu 73」部位は、異種ペプチド(「標的ペプチド」と呼ばれることもある)のための挿入部位である。これは、ステフィンAタンパク質の溶媒露出ループを表し、したがって、溶媒接触可能な方法での標的ペプチドの提示に適用可能である。用語「Leu73挿入」は、ヒトSteAのL73〜L80ループの近くへの、又は適切には、そのループへの(例えば、内への)異種ペプチドの挿入を記述するために本明細書において使用される。この用語は、ヒトステフィンAのLeu 80への付加若しくはそこでの挿入、又はその置き換えを指すことがある。より適切には、この用語は、ヒトステフィンAのLeu 73への付加若しくはそこでの挿入、又はその置き換えを指す。一実施形態において、Leu73変異は、異種ペプチド配列でのL73〜L80間の全ループの置き換えを含むことができる。両端のアミノ酸を含むアミノ酸73〜80の間に異種ペプチド配列が挿入することができる。
例えば、挿入を(例としてSQT配列を使用して)このように行うことができる:
Figure 2020532949
したがって、適切には、ループ2は、49〜50の間に挿入された異種ペプチド配列(49−<異種ペプチド>−50)を有し、ループ4は、残基74〜77が置き換えられている場合、73〜78の間に挿入された異種ペプチド配列(73−<異種ペプチド>−78)を有する。
異種ペプチド配列をG4部位に挿入することができる。異種ペプチド配列を4位に挿入することができる。異種ペプチド配列を4位に近接して、すなわち、4位とポリペプチドの中心の間に、例えば、両端のアミノ酸を含むアミノ酸4〜45の間に、又は両端のアミノ酸を含むアミノ酸4〜44の間に挿入することができる。適切には、G4残基は、保持される。最も適切には、G4残基は、G4Rに変異される。したがって、適切には、異種ペプチド配列を、両端のアミノ酸を含むアミノ酸5〜45の間に、又は両端のアミノ酸を含むアミノ酸5〜44の間に挿入することができる。より適切には、異種ペプチド配列を、両端のアミノ酸を含むアミノ酸4〜5の間に、最も適切にはアミノ酸4の直後に挿入することができ、例えば、5位への挿入でありうる。
異種ペプチドをタンパク質中の次位置のうちの1つに挿入することができる(例えば、国際公開第2014/125290号パンフレット(「植物アドヒロン」などの足場を記載している)を参照されたい):βシートの第1のストランドと第2のストランドとの間のループ(ループ1と称されることもある);及び/又はβシートの第3のストランドと第4のストランドとの間のループ(ループ2と称されることもある)。この文脈において、第1、第2、第3及び第4は、タンパク質配列に関連して、すなわち、タンパク質のN末端からC末端へのことを意味する。適切には、異種ペプチドは、これらの位置の両方に、すなわち、ループ1及びループ2に挿入される。
ループ命名法
ポリペプチド/足場タンパク質の二次構造を、オープンソースソフトウェアを使用して、最も適切には、Technical University of Munich、Germanyから入手できる「PPopen」を使用して、モデル化することができる。本発明のポリペプチド/足場タンパク質におけるループなどの構造の番号付けは、PPopenソフトウェアを使用して得られる体系的命名に準拠する。
先行技術文書が非公式の命名法を使用したことに留意されたい。したがって、国際公開第2006/131749号パンフレット及び/又は国際公開第2009/136182号パンフレット及び/又は国際公開第2014/125290号パンフレットなどの先行技術文書における開示は、非公式の名称「ループ1」に言及したかもしれないが、これは、実際には、PPopenソフトウェアによる体系的命名を使用したときの「ループ2」に関することになる。下記の表は、タンパク質の様々な構造部分の命名法を示すものであり、本文による別段の指示がない限り、本文を通してこれに準拠することになる。
文脈からそうではないことが明らかでない限り、以下のループ命名法に準拠する。アミノ酸残基番号は、配列番号1における通りであり、又は配列番号1に対応する。
Figure 2020532949
ここで使用される場合、語「ループ」は、「結合正規二次構造」(すなわち、アルファ/ベータ)を意味する。
ときには、非公式の命名法が、本発明の特定の実施形態に関連して使用される。例えば、好ましい足場は、「3T」又は「3R」と呼ばれることもある。本発明の好ましい実施形態の特定の構成は、本文において示される通りの変異した残基に具体的に言及して常に開示される。
適切には、異なる異種ペプチド配列(最も適切には、足場ポリペプチド1つにつき1つ)を各々が有する、足場ポリペプチドの集団、すなわち、ライブラリーが作成される。
「異種(の)」は、その普通の意味を有し、すなわち、挿入されたポリペプチドは、使用されるステフィンA配列、例えば、配列番号1に由来又は対応する配列に対して異種である、アミノ酸配列を有する。したがって、異種(の)は、別の種から(の)を意味することもあり、及び/又はヒト野生型ステフィンA(配列番号1)以外のポリペプチドから(の)を意味することもある。最も適切には、異種ポリペプチド挿入は、人工アミノ酸配列、最も適切には、オペレーターにより設計された人工アミノ酸配列を含む。
試験異種ペプチド挿入を使用することができ、例えば、GGSGGSGGSを含む九量体ペプチドなどのGGSリピートを使用することができる。これは、エントロピー的に接近が非常に困難であるため、特に要求が厳しいペプチドである。それ故、これを異種ペプチドとして本発明のポリペプチド/足場タンパク質に挿入することにより、足場が、そのような可溶性でエントロピー的に接近が困難なループを提示する点で非常によく機能することが実証される。そのようなループを提示する能力は、本発明のポリペプチド/足場タンパク質の安定性の非常に強力な指標である。
異種ポリペプチド挿入に特に適する部位
本発明のポリペプチド/足場タンパク質における異種ポリペプチド挿入に最も好ましい部位自体が、ステフィンAベースのポリペプチド/足場タンパク質の先行技術開示において挿入のために開示された部位と異なることに、留意されたい。
単一挿入 − ループ2
48−<異種ペプチド>−50
49−<異種ペプチド>−51
50−<異種ペプチド>−52
単一挿入 − ループ4
72−<異種ペプチド>−77
73−<異種ペプチド>−78
74−<異種ペプチド>−79
誤解を避けるために、「48−<異種ペプチド>−50」は、配列番号1の48位に対応するアミノ酸と配列番号1の50位に対応するアミノ酸との間などを意味する。同様に、「72−<異種ペプチド>−77」は、配列番号1の72位に対応するアミノ酸と配列番号1の77位に対応するアミノ酸との間(介在アミノ酸が欠失されている(すなわち、異種ペプチド挿入により置き換えられている))などを意味する。
組合せ − 二重挿入
ループ2へのもの及びループ4へのものである、2つの挿入の組合せを、図1において開示されるように、行うことができる。
さらなる組合せ
上述の特定の挿入例に加えて、単一挿入又は二重挿入を、タンパク質のN末端への、例えば、上で開示されたようなG4部位の近位への、追加の挿入と組み合わせ、それによって、二重挿入(G4部位+ループ2又はG4部位+ループ4)又は三重挿入(G4部位+ループ2+ループ4)を行うことができる。
最も適切には、異種ペプチドは、残基A49を欠失させて残基D48〜G50の間に挿入される(「48−<異種ペプチド>−50」と呼ばれる)。
最も適切には、異種ペプチドは、残基P74、G75、Q76及びN77を欠失させて、残基L73〜E78の間に挿入される(「73−<異種ペプチド>−78」と呼ばれる)。
最も適切には、二重挿入は、48−<第1の異種ペプチド>−50に第1の異種ペプチドを挿入し、73−<第2の異種ペプチド>−78に第2の異種ペプチドを導入することにより、行われる。
第1及び第2の異種ペプチドは、適切には互いに異なる。
第1及び第2及び第3の異種ペプチドは、適切には互いに異なる。
例示的挿入を示す例示的配列は、下記である(X=任意のアミノ酸;これらの例において、異種ペプチド挿入は9アミノ酸長である):
例示的足場3r2
MIPGGLSEAKPATPEIQEIVDKVKPQLEKETGKTWGKLEAVEYKTQVD48XXXXXXXXXG50LNYYIKVRVN-GKYIHLKVFKSL73XXXXXXXXXE78DLVLTGYQVDKNKDDELTGF
例示的足場3t4
MIPGGLSEAKPATPEIQEIVDKVKPQLEEKTGETYGKLEAVEYKTQVD48XXXXXXXXXG50TNYYIKVRAGDNKYIHLKVFKSL73XXXXXXXXXE78DLVLTGYQVDKNKDDELTGF
本明細書において教示される特定の好ましい挿入点は、ある特定の追加の利点をもたらす。これらの利点は、挿入部位の選択に起因し、したがって、本明細書において開示されるものとは異なる変異を有するポリペプチド/足場タンパク質に対して有利に用いることができるだろう。言い換えると、本文書において行われる特定の挿入部位の開示は、技術的特徴によりもたらされる有利な特性の個別の開示である。したがって、一態様において、本発明は、本明細書において開示されるような特定の位置(単数又は複数)に挿入された異種ペプチド(単数又は複数)を有する、ステフィンAベースのポリペプチド/足場タンパク質などの、ポリペプチド/足場タンパク質に関しうる。例えば、単一挿入 − ループ2:48−<異種ペプチド>−50;49−<異種ペプチド>−51;50−<異種ペプチド>−52;単一挿入 − ループ4 − 72−<異種ペプチド>−77;73−<異種ペプチド>−78;74−<異種ペプチド>−79;組合せ − 二重挿入 − ループ2に挿入されるもの及びループ4に挿入されるものである2つの挿入の組合せを、図1において開示されるように行うことができる。
親和性成熟
当技術分野において公知のいずれの適する方法によって親和性成熟を行ってもよい。例えば、所望の結合剤からの1つの異種ペプチドを一定に保ちつつ第2の又はさらなる異種ペプチド挿入のみを変化させて、「ミニライブラリー」を構築することができる。
別のアプローチは、標的との相互作用に最も重要であるアミノ酸を同定するための、異種ペプチド挿入のアラニンスキャンである。
代替アプローチは、「スリッピーPCR(slippy PCR)」の実行、及び標的に対する異種ペプチド挿入の生じたバリアントの再スクリーニングである。
野生型ステフィンAにおいて、その結合パートナーの1つ(カテプシン)がステフィンA分子の関連表面に3つ全てのループを介して結合することは、理解される。したがって、親和性成熟へのもう1つのアプローチは、タンパク質のN末端における第3の位置(ステフィンAのG4残基を含む領域)への異種ペプチドの導入、及び標的に対するその異種ペプチドセットを担持する足場タンパク質の再スクリーニングである。
本明細書に記載される場合、「d」は、「の欠失」を意味する(例えば、「dD61」は、「D61の欠失」を意味する)これは、当技術分野において一般的であるように、通常は「ΔD61」(すなわち、デルタD61)と示される。残基の番号付けは、常に、ヒト野生型SteA、すなわち、配列番号1に従う。
言い換えると、欠失変異が本発明によるポリペプチド/足場タンパク質において起こされるときにもやはりヒト野生型ステフィンAタンパク質による番号付けに準拠する。例えば、アミノ酸61が欠失された場合、本発明のポリペプチド/足場タンパク質のその特定の実施形態の番号付けは、アミノ酸60から直接アミノ酸62にとぶことになる。言い換えると、アミノ酸番号付けは、本発明のポリペプチド/足場タンパク質の特に好ましい実施形態に存在するアミノ酸の各々に連続番号を付与するように調整するよりはむしろ、ヒト野生型ステフィンA参照配列と比較して保持される。これは、従来通りであり、分子生物学の分野において当たり前のことであるので当業者には容易に理解される。
異種ペプチドのための複数の挿入部位が開示されることに留意されたい。したがって、ポリペプチド/足場タンパク質は、単一の異種ペプチド挿入を含むこともあり、2つの異なる挿入部位への2つの異種ペプチド挿入(すなわち、合計で2つの異種ペプチド挿入となる、第1及び第2の部位への単一の挿入)を含むこともあり、又は3つの異なる挿入部位への3つの異種ペプチド挿入(すなわち、合計で3つの異種ペプチド挿入となる第1、第2及び第3の部位への単一の挿入)を含むこともある。ポリペプチド/足場タンパク質を含むライブラリーは、ポリペプチド/足場タンパク質1つ当たり単一の異種ペプチド挿入を含むこともあり、ポリペプチド/足場タンパク質1つ当たり2つの異種ペプチド挿入を含むこともあり、又はポリペプチド/足場タンパク質1つ当たり3つの異種ペプチド挿入を含むこともある。
熱的安定性を低下させる結果となる本発明の実施形態は、熱処理によりポリペプチド/足場タンパク質の機能性を除去することが所望される状況での応用を見いだす。一例は、設定温度に加熱することにより機能することが可能になる酵素(例えば、ホットスタートポリメラーゼ)のような酵素を阻害するように設計されたAffimer(登録商標)タンパク質のTmを低減させることである。例えば、本明細書に記載の異種ペプチド挿入を含むポリペプチド/足場タンパクなどの、Affimer(登録商標)試薬を使用して、耐熱性核酸ポリメラーゼを阻害することができる。これらは、PCR反応混合物での応用を見いだす。例えば、Affimer(登録商標)試薬、例えば、耐熱性核酸ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ機能を阻害する本発明によるポリペプチド/足場タンパクを産生することは、有用でありうる。これは、プライマーが、PCR反応混合物に予混され、その後、使用されるまで保存される場合、特に有用である。耐熱性核酸ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ機能が阻害されない場合には、そのエキソヌクレアーゼ機能が反応混合物中のプライマーを分解しうる。しかし、そのポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ機能を阻害することができる本発明によるポリペプチド/足場タンパクを反応混合物に含めることにより、先行技術反応混合物におけるこの欠点を回避することができる。このシナリオにおいて重要なのは、PCR反応の進行を可能にするためにポリペプチド/足場タンパクの機能を失わせる(例えば、変性させる)ことができることである。
したがって、適切には、この応用に使用されるポリペプチド/足場タンパクは、熱安定性が低下しており、したがって、PCR反応の第1の熱サイクル中に分解され(例えば、変性され)、それによって、耐熱性ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ機能の阻害が除去され、反応の進行が可能になる。
別の例は、標的タンパク質と共溶出されうるが、その後、加熱ステップによって除去されうる(又はその機能が除去されうる)、親和性リガンドであり、この場合、Affimer(登録商標)タンパク質が標的タンパク質より低いTmを有するように設計される。
蛍光
フェニルアラニンなどのタンパク質中の芳香族アミノ酸を、蛍光及び/又は280nmでの吸光度特性を提示する代替芳香族アミノ酸に交換することは、有用でありうる。例えば、フェニルアラニンを(弱い蛍光特性を有する)チロシンに変異させることができ、又は(強い蛍光特性を有する)トリプトファンに変異させることができる。野生型ステフィンA中にはこれらの変異が可能な部位が8つある。本発明者らは、これらを試験した。変異及びこれらの応用におけるそれらの有用性が下記の表に示される。
Figure 2020532949
このことから、上記変異のいくつかは、280nmでの吸光度に、例えば、タンパク質濃度を決定する際に、有用であると結論付けることができる。さらに、ある特定の変異は、タンパク質フォールディングなどのタンパク質の立体構造の変化のモニタリングに役立つ蛍光を導入するのに有用でありうる。
より適切には、本発明のポリペプチドは、配列番号1と比べて、Y35W、Y43W、Y53W、Y54W、Y64W、F70W及びY85Wからなる群から選択される置換を含む。これらの全てが、良好な蛍光特性を有する。
適切には、本発明のポリペプチドは、配列番号1と比べて、Y35W、Y43W及びY53Wからなる群から選択される置換を含む。これらは、最良の蛍光特性を有する。
上記の表によれば、本発明によるポリペプチド/足場タンパクにおける最も好ましい変異は、Y35Wとなる。これには、変異のうちで不安定化が最も小さいという利点があり、分析のための最良のスペクトルを提供するという利点もある。
本発明のポリペプチド/足場タンパクに導入される各トリプトファンが、ある程度まで不安定化することになることに留意されたい。これは、熱安定性の低減をもたらす本発明の実施形態を考慮する場合に有利であろう。あるいは、これらの変異の安定性効果の低減を、本願を通してより詳細に教示されるように熱安定性を増大させるための他の変異を起こすことによって、改善することができる。したがって、一部の実施形態において、本発明のポリペプチド/足場タンパクは、その特定のポリペプチド/足場タンパクの目的又は特性に依存して安定化変異と不安定化変異の両方を含むことがある。
熱安定性の特に強力な増大、例えば、おおよそ3℃上昇をもたらすことが、N32G変異の利点である。
+6℃という、熱安定性のとりわけ強力な増大をもたらすことが、好ましいM65I変異の利点である。
本発明のポリペプチド/足場タンパクの熱安定性を増大させると本明細書に記載される各変異の記載、それ自体が新規であることに注目される。
シスタチンCが、シスタチンA(ステフィンA)の配列と薄い関連性しかないことに留意されたい。シスタチンCは、天然に二量体であり、ステフィンAと比較して、より長いタンパク質であり、低い配列同一性レベルを有する。シスタチンのフォールディング構造(fold)は、シスタチンAとシスタチンCとの間で類似しているが、これらのタンパク質は、シスタチンAのアミノ酸16〜60位に対応するシスタチンCのアミノ酸49〜95に対応する1つの相同性領域しか共有しない。この関連領域にわたって、13/47のアミノ酸しか同一でなく、これは28%の配列同一性に相当する。
変異のサブセット
疎水性コアのパッキングを増加させるために、一群から変異を選択することができる。
ポリペプチド/足場タンパクの表面での電荷相互作用を増加させるために、一群から変異を選択することができる。
ポリペプチド構造内の特定のターンのジオメトリーを増加させるために、一群から変異を選択することができる。「増加させる」とは、ターンをエネルギー的により好適なものにする、例えば、エネルギー的により安定したものにするという意味である。1つのそのような変異の例は、D61の欠失(ΔD61)である。
安定性を増大させ、その上、例えばβターンの末端における三次元構造の制約の中でなお動作するように、一群から変異を選択することができる。より具体的には、ある特定のβターンの末端におけるI−I+4水素結合構成を保存するために、注意深く変異を選択することができる。
安定性を改善し、その上、タンパク質の三次元構造内のターンのタイプを有利に変化させるために、一群から変異を選択することができる。例えば、所望される場合にはタイプ1からタイプ2にβターンを変化させるように変異を起こすことができる。
開示される技術的特徴及び利点をもたらすのに有用である変異が本願において包括的に教示されることに留意されたい。例えば、Q42位における変異に関して、EからDに変異させることは、アミノ酸の側鎖から単一のメチレン基のみを効果的に失うので、広くは保存的置換と見なされる。しかし、本願に含まれるデータから分かるように、Q42E変異は、+3℃の熱安定性の増大をもたらすが、Q42D変異は、−3℃の熱安定性の低下をもたらす。したがって、この位置におけるアミノ酸残基の構造に一見とても小さい変化をもたらす一見保存的な置換は、2つのポリペプチド/足場タンパクバリアントのTm間に6℃という劇的な差異をもたらしうる。それ故、本願におけるデータは、開示される様々な変異の各々の間での本発明の単一性を支持する。それらは、注意深く選択され、設計され、試験され、同じ単一の特別な技術的効果を各々がもたらすことが実証されたからである。さらに、本願の特許請求の範囲は、その判明した特別な技術的効果を有すること及びもたらすことが判明し、証明されたバリアントのみに限定される。このため、添付の特許請求の範囲に記載される多様な変異は、実際に、単一の発明のみに関し、単一性の要件を満たす。
全ての場合、例えば、特定のポリペプチド/足場タンパクのTmの上昇又は低下によって反映されるような、安定性の「増大」又は「低下」についての言及は、ヒトステフィンA、すなわち、配列番号1で示される通りのアミノ酸配列を有する野生型ヒトステフィンAポリペプチドの特性と比べて引用される。同様に、全ての変異は、同じ野生型ステフィンA配列・配列番号1を基準にして記載される。
変異の以下の群は、以下の理由のため特に有利である。
・溶媒露出型
これらの位置における変異は、タンパク質の表面の電荷ネットワークを改善し、これは、そのタンパク質をより安定したものにするのに役立つ。電荷を変化させるアミノ酸置換をステフィンAタンパク質の表面で起こすことは、より容易でありえ、これは有利である。加えて、タンパク質表面の残基を変異させることによって、より自由に置換を選択することが可能になる。加えて、対応する構造変化は、他の位置と比較してタンパク質表面の残基を変化させたときのほうが、予測可能性がより大きくなりうることは、利点である。
溶媒露出型残基の1つ又は2つ以上の置換は、
(E29K K30E E33K)、N32G、N90T、K63R、T34V、T34K及びT34R
からなる群から選択することができる。
本文を通して、変異の群が一緒にカッコでくくられている場合(例えば、「(E29K K30E E33K)」)、適切には、これらの変異は、一緒に、すなわち、一群として/所与のリストからの単一の選択肢として同時に、起こされることに留意されたい。
特に、N32Gは、ヘリックスの安定性の改善をもたらす。
特に、K63Rは鎖を延長し、その結果、疎水性部分が増加されて荷電原子が再配置される。
・部分的埋没型
これらの残基を変異させることは、有利なことに、タンパク質のコアに追加の疎水性質量/面積を加える。これは、タンパク質コアにおける相互作用量を増加させる。これには、タンパク質の安定性を改善する利点がある。
「脂肪族鎖延長」変異に関して、それらは、有利なことに、より大きい側鎖を加え、やはり有利なことに、タンパク質のコアに追加の疎水性質量が加えられる。
部分的埋没型残基の1つ又は2つ以上の置換は、
Q42E、T51I、T51V、T51L及びT51F
からなる群から選択することができる。
置換の特定のサブグループによって共有される追加の有利な特性が、下に示される:
脂肪族鎖延長
T51I、T51L、T51F
両親媒性から脂肪族へ
T51I、T51V、T51L
両親媒性から芳香族へ
T51F
アミンから酸へ
Q42E
Q42E変異に関して、これは、有利なことにアミノ酸残基の鎖長を同じに保ち、及び有利なことに化学的性質の変化をアミノ酸側鎖の全体サイズへの変化から切り離すことを可能にする。
・疎水性コア(三次構造)
これらの変異は、疎水性部分の埋没を増加させ、したがって、これらの変異には、このようにして安定性を増大させる利点がある。
疎水性コア(三次構造)残基の1つ又は2つ以上の置換は、
T45V、T45I、A59V、A59I、A59L、M65V及びM65I
からなる群から選択することができる。
置換の特定のサブグループによって共有される追加の有利な特性が、下に示される:
鎖延長
T45I、A59V、A59I、A59L
両親媒性から脂肪族へ
T45V、T45I
ベータ分岐
M65V、M65I、A59V、A59I
「鎖延長」変異に関して、これらは、追加の疎水性接触数を加え、したがって、安定性をさらに増大させるのに役立つ。これは、導入されるアミノ酸中のより長い及び/又は分岐した側鎖に特に当てはまる。さらに、ある特定の変異は、極性基をアミノ酸残基から除去し、完全疎水性残基をもたらすが、野生型は、両親媒性になっているだろう。
理論により拘束されることを望まないが、安定性の増加は、フォールディングされた状態の埋没している疎水性側鎖と比較してフォールディングされていない状態の露出している疎水性部分の相対的不安定性に起因すると思われる。したがって、良好なパッキングが、フォールディングされた状態のコアにおいて起こることを前提として、疎水性部分が多いほど、フォールディングされていない状態と比較してネイティブ状態のほうが安定している。本発明者らがTm(フォールディングのギブズ自由エネルギー(DG)のプロキシ)を用いて測定するのはこれである。したがって、安定性増加は、埋没している疎水性のものの量を他の疎水性のものの効率的パッキングにより最大にすることによってもたらされる。
部分的埋没型と疎水性コア(三次元構造)との両方の変異群に関して、これらは、タンパク質構造内での接触数が多い傾向があるという利点の共通の特性を共有する。これらの残基を標的とすることの効果は、タンパク質の他の部分を標的とするものと比較して、タンパク質安定性に対する潜在的により大きい効果を、より少ない置換数によって得ることができることである。したがって、これらの変異群は一緒に、同じ単一の特別な技術的特徴を全てが共有する置換のスーパーセットを形成する。
・二次構造
アミノ酸61の欠失は、残基59〜63からの5アミノ酸パッチを、正規のβターンモチーフと一致する配列に変換することに留意されたい。アミノ酸61の欠失によって生じるこの4アミノ酸モチーフは、正規のβターンモチーフに相当する。本発明者らが取るこの革新的アプローチは、野生型タンパク質中の既存の残基を利用して、出発ポリペプチドに対する最小限の変異を可能にしつつ安定性に相当な変化をもたらす。この変異の群によってもたらされる利点は、タンパク質中のターンを安定化する(及び/又はN32Gの場合はヘリックスを安定化する)という利点である。どちらにせよ、これらの残基を標的とすることは、タンパク質の影響を受ける領域全体にわたって安定した水結合を促進し、それによって安定性を有利に増大させるという利点をもたらす。
二次構造残基の1つ又は2つ以上の置換は、
N32G、59AN−GK、59IN−GK、59VN−GK、59LN−GK、59AG−NK、59VG−NK、A59V、A59I、A59L、T34K及びT34R
からなる群から選択することができる。
本文を通して、変異群がペア(例えば、「59AN−GK」)として提示される場合、適切には、これらの変異は、一緒に、すなわち、ペアとして/所与のリストからの単一の選択肢として同時に起こされる。
置換の特定のサブグループによって共有される追加の有利な特性が、下に示される:
C末端ヘリックスキャップ
N32G、T34K、T34R
ターン
A59V、A59I、A59L、59AN−GK、59IN−GK、59VN−GK、59LN−GK、59AG−NK、59VG−NK
I’型(1型プライム)
59AN−GK、59IN−GK、59VN−GK、59LN−GK
II’型(2型プライム)
59AG−NK、59VG−NK
ストランド増加傾向
T45V、T45I、M65V、M65I
・電荷間相互作用
これらの変異は、電荷相互作用を改善させ、それによって安定性を増大させるという、技術的利点をもたらす。
電荷間相互作用残基の1つ又は2つ以上の置換は、
Q42E、(E29K K30E E33K)、T34K及びT34R
からなる群から選択することができる。
置換の特定のサブグループによって共有される追加の有利な特性が、下に示される:
表面
(E29K K30E E33K)、T34K、T34R
部分的埋没型
Q42E
酸性から塩基性へ及び逆に塩基性から酸性へ
(E29K K30E E33K)
アミンから酸へ
Q42E
極性から塩基性へ
T34R、T34K
Q42Eの特定の場合、これは、表面電荷ネットワークを改善する。理論により拘束されることを望まないが、Q42Eは電荷を加えて、それなしではタンパク質の三次元空間内で遠すぎてそのような相互作用を形成することができない塩架橋(最も可能性が高いのは、リジン残基への塩架橋)を可能にすると思われる。塩架橋は、典型的には、4Å以下離れている原子間の電荷間相互作用であると考えられる。したがって、この変異は、Q42EからLysへの塩架橋の形成を促進すると思われる。
・位置
本明細書において教示される置換の圧倒的多数がステフィンAベースのポリペプチド/足場タンパク質の裏面、すなわち、タンパク質の非結合末端にあることは、有利である。これは、本発明者らにとって驚きである。予想は、変異がポリペプチドの配列全体にわたって散在するだろうということであった。しかし、提示される教示は、タンパク質の裏面を標的とすることにより、タンパク質の結合末端を未変異の状態又は最小限にしか変異されていない状態のままにして、安定性の有意な増加を得ることができる。
特定の位置における残基の1つ又は2つ以上の置換は、
T51、A59、M65、N32、Q42、N90、K63、59AN−GK、59IN−GK、59VN−GK、59LN−GK、59AG−NK、59VG−NK及びT34
からなる群から選択することができる。
ポリペプチド内の特定の位置に変異を限定することが望まれる場合、これは、下に示す個々の群のうちの1つから変異を選択することによって有利に遂行することができる。
表の面(結合末端)
T51。
裏面(非結合末端)
A59、M65、N32、Q42、N90、K63、59AN−GK、59IN−GK、59VN−GK、59LN−GK、59AG−NK、59VG−NK及びT34。
このことに関して、本発明者らにより行われた包括的分析において、タンパク質の疎水性コアにおけるそのあらゆる残基が個々に研究されたことに留意されたい。最も有用な安定性増強変異がタンパク質の裏面領域に集中していることは、本発明者らにとって驚きである。
・翻訳後修飾
これらの変異のいくつかについての追加の利点は、分子の化学的安定性を促進することである。例えば、メチオニン残基を酸化することができるが、バリン/イソロイシン残基を酸化することはできない。したがって、本発明者らにより教示される変異には、望ましくない、タンパク質におけるこの箇所での酸化を回避する、及びそのため、そうしなければ酸化によって引き起こされる可能性がある変化に対して耐性である分子を有利にもたらす、という追加の利点がある。
翻訳後修飾残基の1つ又は2つ以上の置換は、
N32G、M65V、M65I、T34V、T34K及びT34R
からなる群から選択することができる。
特定のタイプの翻訳後修飾をなくすことが望まれる場合、これは、下に示す個々の群のうちの1つから変異を選択することによって有利に遂行することができる:
潜在的グリコシル化
N32G、T34V、T34K、T34R
潜在的酸化
M65V、M65I
N32Gミュータントが脱アミドのリスクも除去することに、さらに留意されたい。脱アミドによるN残基の分解は、問題でありうる−この変異は、そのような問題を有利に除去する。Q残基も脱アミドされやすいので、同じことがQ42Eに当てはまる。
潜在的脱アミド
N32G、Q42E
・hSteAとSQTとの間で異なる
N90Tは、タンパク質のこの領域におけるターンの一部でありうること、したがって、そのターンを安定化するさらなる利点をもたらすことに、留意されたい。
例示的足場
研究応用のための例示的足場:
3r(このrは、研究(research)のrである)と名付けられた足場:
3r1 − hSteA Y35W N32G V48D M65I Q42E T51L (A59V ΔD61) (E29K K30E E33K)
3r2 − hSteA Y35W N32G V48D M65I Q42E T51L (A59V G60N ΔD61 N62G) (E29K K30E E33K)
治療応用のための例示的足場:
3t(このtは治療用(therapeutic)のtである)と名付けられた足場:
3t1 − hSteA N32G V48D
3t2 − hSteA N32G V48D M65I
3t3 − hSteA N32G V48D M65I T51L
3t4 − hSteA N32G V48D M65I Q42E
3t5 − hSteA N32G V48D M65I Q42E T51L
本明細書において使用される標準/従来型命名法に鑑みて、完全足場タンパク質の配列は、配列番号1を基準にして及び述べられる変異に関して、開示される。しかし、説明のために、以下は、好ましい足場タンパク質配列の代表例である:
2つの異種ペプチド挿入を有する3r1。この例では、n=9:配列番号18
MIPGGLSEAKPATPEIQEIVDKVKPQLEKETGKTWGKLEAVEYKTQVD(Xn)GLNYYIKVRVGNKYIHLKVFKSL(Xn)EDLVLTGYQVDKNKDDELTGF
2つの異種ペプチド挿入を有する3r2。この例では、n=9:配列番号19
MIPGGLSEAKPATPEIQEIVDKVKPQLEKETGKTWGKLEAVEYKTQVD(Xn)GLNYYIKVRVNGKYIHLKVFKSL(Xn)EDLVLTGYQVDKNKDDELTGF
2つの異種ペプチド挿入を有する3t1。この例では、n=9:配列番号20
MIPGGLSEAKPATPEIQEIVDKVKPQLEEKTGETYGKLEAVQYKTQVD(Xn)GTNYYIKVRAGDNKYMHLKVFKSL(Xn)EDLVLTGYQVDKNKDDELTGF
2つの異種ペプチド挿入を有する3t2。この例では、n=9:配列番号21
MIPGGLSEAKPATPEIQEIVDKVKPQLEEKTGETYGKLEAVQYKTQVD(Xn)GTNYYIKVRAGDNKYIHLKVFKSL(Xn)EDLVLTGYQVDKNKDDELTGF
2つの異種ペプチド挿入を有する3t3。この例では、n=9:配列番号22
MIPGGLSEAKPATPEIQEIVDKVKPQLEEKTGETYGKLEAVQYKTQVD(Xn)GLNYYIKVRAGDNKYIHLKVFKSL(Xn)EDLVLTGYQVDKNKDDELTGF
2つの異種ペプチド挿入を有する3t4。この例では、n=9:配列番号23
MIPGGLSEAKPATPEIQEIVDKVKPQLEEKTGETYGKLEAVEYKTQVD(Xn)GTNYYIKVRAGDNKYIHLKVFKSL(Xn)EDLVLTGYQVDKNKDDELTGF
2つの異種ペプチド挿入を有する3t5。この例では、n=9:配列番号24
MIPGGLSEAKPATPEIQEIVDKVKPQLEEKTGETYGKLEAVEYKTQVD(Xn)GLNYYIKVRAGDNKYIHLKVFKSL(Xn)EDLVLTGYQVDKNKDDELTGF
配列中、Xは、任意のアミノ酸であり、nは、0〜36の整数である。最も適切には、nは、9である。
シスタチンA又はシスタチンB
ヒトステフィンAは、シスタチンスーパーファミリーのファミリー1に属する。シスタチンA及びシスタチンBは異なる。シスタチンBは、典型的には、ほぼ中性のpIを有し、C末端付近にシステイン残基を有する。全てのシスタチンBは、このシステインを有し、全てのシスタチンBは、ジスルフィドで結合された二量体を形成するが、シスタチンAは、より酸性のpIを有し、このC末端システインを有するシスタチンAはないと、考えられている。
核酸、プロモーター、ライブラリー、宿主細胞
本発明による組換えポリペプチド及び/又は核酸の製造/産生は、当業者に周知であり、ポリペプチド若しくはポリヌクレオチドを合成する方法、及び/又は実験室用の若しくは大規模な市販のバイオリアクターにおいてポリヌクレオチドを発現させてポリペプチドを産生させる方法などの、通例の知識しか必要としない。世界中の非常に多くの会社が、そのような通例の産生サービスを提供しており、それらの会社に産生すべき配列を指示するだけでよい。
宿主、本発明によるポリペプチドの発現のためのベクター、そのような系における使用のためのプロモーター、及びそれらをコードする核酸の(もしあれば)コドン最適化は全て、当業者に周知である。ファージ、ファージミド、プラスミドなどの特定のベクターの選択、又は本明細書に記載されるポリペプチド若しくはライブラリーの産生のためのプロモーター若しくは宿主細胞若しくは他のそのような「ツール」の選択は、本発明を行う当業者の問題である。同様に、PCR又はクローニング戦略、ライゲーション、形質転換/エレクトロポレーション手法は、全て通例のものであり、本発明の一部を構成せず、オペレーターにより決定される。
さらなるガイダンスが必要とされる場合、一般的な分子生物学的手法は、当技術分野において周知であり、例えば、(2000 Current Protocols in Molecular Biology F.M. Ausubel et al, Eds. ISBN: 978-0-471-50338-5 published by John Wiley & Sons Ltd, Oldlands Way, Bognor Regis, West Sussex, PO22 9NQ, UK)における通りである。
例示的細胞株(cell strain):
TG1(Lucigen社、カタログ番号60502−2)
ER2738(New England Biolabs社、カタログ番号E4104)
例示的ファージ株:
M13KO7(New England Biolabs社、カタログ番号N0315)
例示的ファージミドベクター:
lacプロモーターを含有する、pUC119(Clontech社製、カタログ番号3319)
例示的プロモーター:
lacプロモーター(上記参照)
本発明のポリペプチド/足場タンパクは、精製用のものなどのタグ、例えば、6hisタグ、マルトース結合タンパク質(MBP:maltose binding protein)タグ、又は精製を補助するための任意の他の適する配列をさらに含むことができる。
本発明のポリペプチド/足場タンパクは、別のポリペプチドに連結させるための、グリシンリンカーなどの、リンカーをさらに含むことができる。
本発明のポリペプチド/足場タンパクは、抗体による検出用のものなどの検出配列、例えば、mycタグ又はflagタグ又は検出を助長するための任意の他の適する配列を含むことができる。
本発明のポリペプチド/足場タンパクは、標識されることがあり、例えば、蛍光標識がポリペプチド/足場タンパクに連結される。
本発明のポリペプチド/足場タンパクを、輸送タンパク質などの担体タンパク質に連結させて、細胞への侵入を助長することができる。
本発明のポリペプチド/足場タンパクを、標的化タンパク質、例えば、抗体若しくはその断片、又はアプタマー、又はAffimer(登録商標)試薬に連結させて、本発明のポリペプチド/足場タンパクを特定の位置に、例えば、それを標的細胞又は標的化細胞が結合できる任意の他の実体に結合させるための特定の位置に方向付けることができる。
本発明のポリペプチド/足場タンパクを、基材又は構造、例えば、ビーズ、又はナノスフェア、又は電極(例えば、電極アレイの一部として)、又は膜(例えば、ニトロセルロース膜)、又は反応容器、例えばELISAプレート若しくは微量遠心管、又は任意の他のそのような物品に結合させることができる。
適切には、本発明のポリペプチド/足場タンパクを固定化することができる。
他の部分へのポリペプチド/足場タンパクの連結は、当技術分野において公知の任意の適する手段によるものであってよく、例えば、共有結合性連結による、ジスルフィド架橋による、単一ポリペプチド(融合タンパク質)としての調製による、システイン残基などの適するアミノ酸残基とのコンジュゲーション、ポリペプチドのN若しくはC末端への連結、又は当技術分野において公知の任意の他の適する手段によるものであってよい。
ポリペプチドの作製
配列番号1と比較して安定性が変化した、例えば、熱安定性が増大した又は熱安定性が低下したポリペプチドを作製する方法であって、
配列番号1と比べて、
A12I、A12V、I16L、V20A、V20I、V20L、Q26E、E29M、
T31K、N32G、N32D、N32H、T34V、T34R、T34K、T34D、
T34P、L38A、L38V、L38F、A40I、A40V、Q42E、Q42D、
T45I、T45V、V48E、V48D、V48G、V48A、V48L、G50S、
T51F、T51V、T51L、T51I、T51A、A59L、A59I、A59V、
K63R、M65V、M65I、L67I、N90T、(V20I、L38A)、
(V20L、L38A)、(V20I、L38V)、(V20L、L38V)、
(E29K、K30E、E33K)、(Y54D、T83D、Q86E)、
(A59L、G60N、D61G、N62K)、(A59V、D61N、N62K)、
(G60N、D61G、N62K)、(G60N、ΔD61、N62G)、
ΔD61、(A59L、G60N、ΔD61、N62G)、
(A59V、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、D61G、N62K)、
(A59I、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、ΔD61、N62G)、
(A59V、ΔD61)、(G60P、ΔD61、N62P)、
(G60P、D61P、N62K)、(G60P、ΔD61、N62G)、
(G60P、D61G、N62K)、(D61N、N62K)、及び
(T83D、Q86E)
からなる群から選択される1つ又は2つ以上の置換を含むポリペプチドを合成するステップを含み、
より適切には、置換が、
A12I、A12V、I16L、V20I、V20L、Q26E、E29M、T31K
N32G、N32D、N32H、T34V、T34R、T34D、T34P、L38A
L38V、A40I、A40V、Q42D、T45I、T45V、V48E、V48G
V48A、T51F、T51V、T51L、T51A、A59L、A59I、M65V
L67I
(V20I、L38A)、(V20L、L38A)、(V20I、L38V)、(V20L、L38V)
(E29K、K30E、E33K)、(Y54D、T83D、Q86E)
(A59L、G60N、D61G、N62K)、(A59V、D61N、N62K)
(G60N、D61G、N62K)、(G60N、ΔD61、N62G)
ΔD61、(A59L、G60N、ΔD61、N62G)
(A59V、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、D61G、N62K)
(A59I、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、ΔD61、N62G)
(A59V、ΔD61)、(G60P、ΔD61、N62P)
(G60P、D61P、N62K)、(G60P、ΔD61、N62G)
(G60P、D61G、N62K)、(D61N、N62K)及び
(T83D、Q86E)からなる群から選択される、方法も開示される。
配列番号1と比較して安定性が変化した、例えば、熱安定性が増大したポリペプチドを作製する方法であって、
配列番号1と比べて、
E29M、N32G、T34V、T34R、T34K、Q42E、T45I、T45V
G50S、T51F、T51V、T51L、T51I、A59L、A59I、A59V
K63R、M65V、M65I、L67I、N90T
(E29K、K30E、E33K)、(A59L、G60N、D61G、N62K)
(A59V、D61N、N62K)、(G60N、D61G、N62K)
(G60N、ΔD61、N62G)、ΔD61
(A59L、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、D61G、N62K)
(A59I、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、ΔD61、N62G)
(A59V、G60N、ΔD61、N62G)、及び(A59V、ΔD61)からなる群から選択される1つ又は2つ以上の置換を含むポリペプチドを合成するステップを含み、
より適切には、置換が、
E29M、N32G、T34V、T34R、T45I、T45V、T51F、T51V
T51L、A59L、A59I、M65V、L67I
(E29K、K30E、E33K)、(A59L、G60N、D61G、N62K)
(A59V、D61N、N62K)、(G60N、D61G、N62K)
(G60N、ΔD61、N62G)、ΔD61
(A59L、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、D61G、N62K)
(A59I、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、ΔD61、N62G)
(A59V、G60N、ΔD61、N62G)、及び(A59V、ΔD61)
からなる群から選択される、方法も開示される。
配列番号1と比較して安定性が変化した、例えば、熱安定性が低下したポリペプチドを作製する方法であって、
配列番号1と比べて、
A12I、A12V、I16L、V20A、V20I、V20L、Q26E、T31K
N32D、N32H、T34D、T34P、L38A、L38V、L38F、A40I
A40V、Q42D、V48E、V48D、V48G、V48A、V48L、T51A
(V20I、L38A)、(V20L、L38A)、(V20I、L38V)、(V20L、L38V)
(Y54D、T83D、Q86E)、(G60P、ΔD61、N62P)
(G60P、D61P、N62K)、(G60P、ΔD61、N62G)
(G60P、D61G、N62K)、(D61N、N62K)及び
(T83D、Q86E)からなる群から選択される1つ又は2つ以上の置換を含むポリペプチドを合成するステップを含み、
より適切には、置換が、
A12I、A12V、I16L、V20I、V20L、Q26E、T31K、N32D
N32H、T34D、T34P、L38A、L38V、A40I、A40V、Q42D
V48E、V48G、V48A、T51A
(V20I、L38A)、(V20L、L38A)、(V20I、L38V)、(V20L、L38V)
(Y54D、T83D、Q86E)、(G60P、ΔD61、N62P)
(G60P、D61P、N62K)、(G60P、ΔD61、N62G)
(G60P、D61G、N62K)、(D61N、N62K)及び
(T83D、Q86E)からなる群から選択される、方法も開示される。
適切には、合成するステップは、前記ポリペプチドをコードする核酸を調製すること、及びポリペプチドを産生するように前記核酸の翻訳を調整することを含む。適切には、核酸は、ファージゲノム、例えば、ファージディスプレイライブラリーの1つ又は2つ以上のメンバーに含まれうる。
追加の変異
G4R、E18Q、P25S、N32Q、T34E、T34Q、G36E、M65F
M65L、E78A、(K91E、D92K)、(K91P、D93G)、NPDG
からなる群から選択される1つ又は2つ以上のさらなる変異を起こすことには、追加の利点がありうる。
変異のこの群は、各々が熱安定性に対する小さな効果に寄与する特性を共有することに留意されたい。個々に測定する場合、測定の実験誤差によって、低い効果の示度、又はさらには無効果若しくは効果の小さな反転の示度が得られる可能性がある(例えば、個々の測定における実験誤差が℃変化の+/−0.7C以内である場合、効果を+0.5℃と示すのではなく、ゼロ又は−0.2℃と示す可能性がある)ので、これらを測定には注意を払わなければならない。これは、実験誤差が、測定される効果の大きさにほぼ等しい又はその大きさ超えるとき、全ての科学的測定に当てはまる。
アミノ酸90で始まるNPDG変異(「90NPDG」)に関して、これは、タンパク質のこの箇所で1型ターンを形成する統計的尤度を増加させ、したがってこのメカニズムによって安定性を増大させる。
・小さい効果 − 熱安定性の増大
G4R +0.05℃
E18Q +0.57℃
P25S +0.01℃
N32Q +0.37℃
T34Q +0.29℃
G36E +0.18℃
M65F +0.19℃
E78A +0.50℃
(K91E、D92K) +0.56℃
(K91P、D93G) +0.22℃
90NPDG +0.7℃
(N90 K91P D92 D93G) +0.22℃
・小さい効果 − 熱安定性の低下
T34E −0.39℃
M65L −0.23℃
PK効果
ある特定の実施形態において、Affimerポリペプチドなどのポリペプチドは、標的部分、好ましくはタンパク質、より好ましくはヒトタンパク質に結合する、Affimerポリペプチド部分などの、ポリペプチド部分を単量体として含み、約1μM若しくはそれ未満、約100nM若しくはそれ未満、約40nM若しくはそれ未満、約20nM若しくはそれ未満、約10nM若しくはそれ未満、約1nM若しくはそれ未満、又は約0.1nM若しくはそれ未満の解離定数(K)を有する。
ある特定の実施形態において、Affimerポリペプチドなどのポリペプチドは、標的部分、好ましくはタンパク質、より好ましくはヒトタンパク質に結合する、Affimerポリペプチド部分などの、ポリペプチド部分を単量体として含み、約10−3−1(すなわち、1/秒の単位)の若しくはそれより遅い、約10−4−1の若しくはそれより遅い、又はさらには約10−5−1の若しくはそれより遅い、例えばBiacoreにより測定された、解離速度定数(koff)を有する。
ある特定の実施形態において、Affimerポリペプチドなどのポリペプチドは、標的部分、好ましくはタンパク質、より好ましくはヒトタンパク質に結合する、Affimerポリペプチド部分などの、ポリペプチド部分を含み、少なくとも約10−1−1の若しくはそれより速い、少なくとも約10−1−1の若しくはそれより速い、少なくとも約10−1−1の若しくはそれより速い、又はさらには少なくとも約10−1−1の若しくはそれより速い、例えば、Biacoreにより測定された、結合速度定数(kon)を有する、
ある特定の実施形態において、Affimerポリペプチドなどのポリペプチドは、コグネート結合パートナーを有する標的部分、好ましくはタンパク質、より好ましくはヒトタンパク質に結合する、Affimerポリペプチド部分などの、ポリペプチド部分を単量体として含み、コグネート結合パートナーとの競合的結合アッセイにおいて1μM若しくはそれ未満、約100nM若しくはそれ未満、約40nM若しくはそれ未満、約20nM若しくはそれ未満、約10nM若しくはそれ未満、約1nM若しくはそれ未満、又は約0.1nM若しくはそれ未満のIC50を有する。
利点
卓越した発現特性を有する足場が提供されることは、本発明の利点である。
若干の又は低減された免疫原性(低い免疫原性)を有する足場が提供されることは、本発明の利点である。
記載されるポリペプチド/足場タンパクが、凝集/沈殿の問題がないことは、本発明の利点である。より詳細には、本発明の足場は、アンフォールディングする前に凝集/沈殿が観察されず、したがって、本発明の足場がhSteAと比べてTmが上昇している場合、その足場は、有利なことに、凝集/沈殿に対する増大した耐性も有する。
異種ペプチド挿入を受け入れることは、記載されるポリペプチド/足場タンパクの利点である。
異種ペプチド挿入が適切に提示されることは、本発明のポリペプチド/足場タンパクの利点である。
記載されるポリペプチド/足場タンパクが、導入される変異により安定性/プロテアーゼ耐性に関する負の影響を受けないことは、本発明の利点である。言い換えると、本発明のポリペプチド/足場タンパクは、有利なことに、それらの安定性及び/又はプロテアーゼ耐性を保持する。これは、本明細書において教示される特定の変異の別の有利な特性である。
さらなる実施形態
特定の標的に結合することができる特性についてのスクリーニング、及び/又は特定の活性(単数/複数)を有するペプチドについてのスクリーニングなどの、研究応用における、上記の足場の使用も開示される。
化合物を体内の特定の細胞若しくは位置に標的化することなどの医学的応用における上記の足場の使用、及び/又は特定の代謝活性の阻害若しくは促進における使用も開示される。
上記のポリペプチド/足場タンパク質を含む医薬組成物などの組成物も開示される。
上記の1つ又は2つ以上のポリペプチド/足場タンパク質を薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤と一緒に含む組成物も開示される。
診断薬、治療薬、バイオマーカー、バイオマーカーを特異的に検出する薬剤、合理的薬物設計鋳型、創薬のための標的若しくは試薬、抗体代用品、アプタマー、Affimer(登録商標)試薬、又は研究ツールとしての、上記のポリペプチド/足場タンパク質の使用も開示される。
足場タンパク質としての上記のポリペプチドの使用も開示される。
一実施形態において、配列番号3(イヌ野生型SteA)のアミノ酸残基1〜11、13〜15、17〜19、21〜25、27〜28、35〜37、39、41、43〜44、46〜47、49〜50、52〜53、55〜58、63〜64、66、68〜82、84〜85、及び87〜98に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、Affimerポリペプチドなどのポリペプチドであって、
配列番号3と比べて、
T51L、T51V、M65V、N32G、A59I、L38A、V20I、A40I、L38V、A12I、A12V、I16L、V20L、Q26E、E29M、T31K、N32D、N32H、T34V、T34R、T34D、T34P、A40V、Q42D、T45I、T45V、V48E、V48G、V48A、T51F、T51A、A59L、L67I、(V20I、L38A)、(V20L、L38A)、(V20I、L38V)、(V20L、L38V)、(E29K、K30E、E33K)、(Y54D、T83D、Q86E)、(A59L、G60N、D61G、N62K)、(A59V、D61N、N62K)、(G60N、D61G、N62K)、(G60N、ΔD61、N62G)、ΔD61、(A59L、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、ΔD61)、(G60P、ΔD61、N62P)、(G60P、D61P、N62K)、(G60P、ΔD61、N62G)、(G60P、D61G、N62K)、(D61N、N62K)及び(T83D、Q86E)
からなる群から選択される1つ又は2つ以上の変異を含むことを特徴とするポリペプチドが、記載される。
適切には、配列番号1と比べての前記1つ又は2つ以上の変異は、
T51L、T51V、M65V、N32G、A59I、E29M、T34V、T34R、T45I、T45V、T51F、A59L、L67I、(E29K、K30E、E33K)、(A59L、G60N、D61G、N62K)、(A59V、D61N、N62K)、(G60N、D61G、N62K)、(G60N、ΔD61、N62G)、ΔD61、(A59L、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、ΔD61、N62G)、及び(A59V、ΔD61)
からなる群から選択され、好ましくは、前記ポリペプチドは、配列番号3のTmより高い、より好ましくは配列番号1のTmより高い、Tmを有する。別の実施形態において、適切には、配列番号1と比べての前記1つ又は2つ以上の変異は、
L38A、V20I、A40I、L38V、A12I、A12V、I16L、V20L、Q26E、T31K、N32D、N32H、T34D、T34P、A40V、Q42D、V48E、V48G、V48A、T51A、(V20I、L38A)、(V20L、L38A)、(V20I、L38V)、(V20L、L38V)、(Y54D、T83D、Q86E)、(G60P、ΔD61、N62P)、(G60P、D61P、N62K)、(G60P、ΔD61、N62G)、(G60P、D61G、N62K)、(D61N、N62K)及び(T83D、Q86E)
からなる群から選択され、好ましくは、前記ポリペプチドは、配列番号3のTmより低い、より好ましくは配列番号1のTmより低い、Tmを有する。
別の実施形態において、配列番号3のアミノ酸残基1〜11、13〜15、17〜19、21〜25、27〜28、35〜37、39、41、43〜44、46〜47、49〜50、52〜53、55〜58、63〜64、66、68〜82、84〜85、及び87〜98に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、少なくとも1つの異種ペプチド挿入を含む、Affimerポリペプチドなどのポリペプチドであって、
前記ポリペプチドが、配列番号1と比べて、
M65I、T51I、T51L、T51V、M65V、A59V、N32G、A59I、L38A、V20A、V20I、A40I、L38V、G50S、L38F、A12I、A12V、I16L、V20L、Q26E、E29M、T31K、N32D、N32H、T34V、T34R、T34K、T34D、T34P、A40V、Q42E、Q42D、T45I、T45V、V48E、V48D、V48G、V48A、V48L、T51F、T51A、A59L、K63R、L67I、N90T、(V20I、L38A)、(V20L、L38A)、(V20I、L38V)、(V20L、L38V)、(E29K、K30E、E33K)、(Y54D、T83D、Q86E)、(A59L、G60N、D61G、N62K)、(A59V、D61N、N62K)、(G60N、D61G、N62K)、(G60N、ΔD61、N62G)、ΔD61、(A59L、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、ΔD61)、(G60P、ΔD61、N62P)、(G60P、D61P、N62K)、(G60P、ΔD61、N62G)、(G60P、D61G、N62K)、(D61N、N62K)、及び(T83D、Q86E)
からなる群から選択される1つ又は2つ以上の変異を含むことを特徴とし、
前記異種ペプチド挿入が、配列番号1と比べて、以下の位置のうちの少なくとも1つに挿入された異種ペプチド:
d)48−<異種ペプチド>−50、
e)49−<異種ペプチド>−51、
f)50−<異種ペプチド>−52、
q)72−<異種ペプチド>−77、
r)73−<異種ペプチド>−78、又は
s)74−<異種ペプチド>−79
を含む、ポリペプチドが記載される。
棒グラフを示す図である。 棒グラフを示す図である。 棒グラフを示す図である。 グラフを示す図である。 グラフを示す図である。 グラフを示す図である。 グラフを示す図である。 グラフを示す図である。 グラフを示す図である。 グラフを示す図である。 プロットを示す図である。 表を示す図である。 表を示す図である。 表を示す図である。 プロットを示す図である。 プロットを示す図である。 表を示す図である。 グラフを示す図である。 グラフを示す図である。
I.定義
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語及び句が下で定義される。
用語「Affimer」(又は「Affimerポリペプチド」)は、ステフィンポリペプチドの組換え改変バリアントである、小さい、高安定性タンパク質を指す。Affimerタンパク質は、ペプチドループ(通常は2つ)及びN末端配列を示し、これらの全てを、モノクローナル抗体と同様に高い親和性及び特異性で所望の標的タンパク質と結合するように無作為に選ぶことができる。ステフィンタンパク質足場によるペプチドループの安定化は、ペプチドがとることができる可能な立体構造を拘束し、したがって、遊離ペプチドのライブラリーと比較して結合親和性及び特異性を増大させる。これらの改変非抗体結合タンパク質は、様々な応用においてモノクローナル抗体の分子認識特性を模倣するように設計される。ステフィンポリペプチド配列の他の部分に変更を施すことができ、そのような変更は、これらの親和性試薬の特性を改善し、例えば、安定性を増大させること、様々な温度及びpHの範囲にわたってそれらを頑強なものにすること、並びにこれらに類することができる。
「コードされたAffimer」は、遺伝子送達プロセスによって患者の体内の細胞により発現されたとき、対象となるAffimerポリペプチドをインビボで産生する核酸コンストラクトを指す。
「Affimer連結コンジュゲート」は、Affimerポリペプチド配列を含有するAffimerポリペプチドのポリペプチド部分のC末端又はN末端を介して結合された連続ペプチドの形成によってではなく、化学的コンジュゲーションによって、1つ又は2つ以上の部分がコンジュゲートした、Affimerポリペプチドを指す。Affimer連結コンジュゲートは、「Affimer−薬物コンジュゲート」であってもよく、この「Affimer−薬物コンジュゲート」は、それにコンジュゲートされた1つ又は2つ以上の薬理学的に活性な部分を含むAffimerポリペプチドを指す。Affimer連結コンジュゲートは、「Affimer−タグコンジュゲート」であってもよく、この「Affimer−タグコンジュゲート」は、それにコンジュゲートされた1つ又は2つ以上の検出可能な部分(すなわち、検出可能な標識)を含むAffimerポリペプチドを指す。
用語「ポリペプチド」及び「ペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書において同義で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。ポリマーは、直鎖状であってもよく、又は分岐していてもよく、修飾されたアミノ酸を含んでいてもよく、ポリマーに非アミノ酸が割り込んでいてもよい。これらの用語は、天然に又は介入により、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は任意の他の操作若しくは修飾、例えば標識構成成分とのコンジュゲーションにより、修飾されたアミノ酸ポリマーも包含する。この定義には、例えば、アミノ酸の1つ又は2つ以上のアナログ(例えば、非天然アミノ酸を含む)を含有するポリペプチド、並びに当技術分野において公知の他の修飾を含有するポリペプチドも含まれる。
用語「アミノ酸残基」及び「アミノ酸」は、同義で使用され、ポリペプチドの文脈ではポリペプチドの1つ又は2つ以上のペプチド結合に関与しているアミノ酸を意味する。一般に、アミノ酸を指名するために本明細書において使用される略号は、IUPAC−IUB生化学命名委員会の提言に基づく(Biochemistry (1972) 11:1726-1732を参照されたい)。例えば、Met、Ile、Leu、Ala及びGlyは、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、アラニン及びグリシンの「残基」をそれぞれ表す。残基とは、カルボキシル基のOH部分及びαアミノ基のH部分を除去することにより、対応するαアミノ酸から誘導されるラジカルを意味する。用語「アミノ酸側鎖」は、K. D. Kopple, "Peptides and Amino Acids", W. A. Benjamin Inc., New York and Amsterdam, 1966, pages 2 and 33により定義された通り、−−CH(NH2)COOH部分を含まないアミノ酸の部分である。
ほとんどの場合、本発明の応用に使用されるアミノ酸は、タンパク質中に見られる天然に存在するアミノ酸、又はアミノ及びカルボキシル基を含有するそのようなアミノ酸の天然に存在する同化若しくは異化産物である。特に適するアミノ酸側鎖としては、次のアミノ酸のものから選択される側鎖が挙げられる:グリシン、アラニン、バリン、システイン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、メチオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、アスパラギン、リジン、アルギニン、プロリン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン、並びにペプチドグリカン細菌細胞壁の構成要素として同定されたアミノ酸及びアミノ酸アナログ。
「塩基性側鎖」を有するアミノ酸残基としては、Arg、Lys及びHisが挙げられる。「酸性側鎖」を有するアミノ酸残基としては、Glu及びAspが挙げられる。「中性極性側鎖」を有するアミノ酸残基としては、Ser、Thr、Asn、Gln、Cys及びTyrが挙げられる。「中性非極性側鎖」を有するアミノ酸残基としては、Gly、Ala、Val、Ile、Leu、Met、Pro、Trp及びPheが挙げられる。「非極性脂肪族側鎖」を有するアミノ酸残基としては、Gly、Ala、Val、Ile及びLeuが挙げられる。「疎水性側鎖」を有するアミノ酸残基としては、Ala、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Tyr及びTrpが挙げられる。「小さい疎水性側鎖」を有するアミノ酸残基としては、Ala及びValが挙げられる。「芳香族側鎖」を有するアミノ酸残基としては、Tyr、Trp及びPheが挙げられる。
用語アミノ酸残基は、本明細書において言及される任意の特定のアミノ酸のアナログ、誘導体及び同族体をさらに含む。例として、Affimerなどの対象ポリペプチド(特に、化学合成により生成された場合)は、例えば、シアノアラニン、カナバニン、ジエンコル酸、ノルロイシン、3−ホスホセリン、ホモセリン、ジヒドロキシ−フェニルアラニン、5−ヒドロキシトリプトファン、1−メチルヒスチジン、3−メチルヒスチジン、ジアミノピメリン酸、オルニチン又はジアミノ酪酸などの、アミノ酸アナログを含みうる。本明細書において適している側鎖を有する他の天然に存在するアミノ酸代謝物又は前駆体は、当業者には分かるであろうし、本発明の範囲内に含まれる。
2つ又は3つ以上の核酸又はポリペプチドの文脈における用語「同一の」又は「同一性」パーセントは、いかなる保存的アミノ酸置換も配列同一性の一部と見なさず、比較され、最大一致のために(必要に応じてギャップを導入して)アラインメントされたとき、同じである、又は同じであるヌクレオチド若しくはアミノ酸残基の指定パーセントを有する、2つ又は3つ以上の配列又は部分配列を指す。同一性パーセントは、配列比較ソフトウェア若しくはアルゴリズムを使用して又は目視検査により測定することができる。アミノ酸又はヌクレオチド配列のアラインメントを得るするために使用することができる様々なアルゴリズム及びソフトウェアが、当技術分野において周知である。これらには、BLAST、ALIGN、Megalign、BestFit、GCG Wisconsin Package、及びこれらのバリアントが挙げられるが、それらに限定されない。一部の実施形態において、本発明の2つの核酸又はポリペプチドは、実質的に同一であり、これは、それらが、配列比較アルゴリズムを使用して又は目視検査により測定して、比較され、最大一致のためにアラインメントされたとき、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、及び一部の実施形態において、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%ヌクレオチド又はアミノ酸残基同一性を有することを意味する。一部の実施形態において、同一性は、少なくとも約10残基、少なくとも約20残基、少なくとも約40〜60残基、少なくとも約60〜80残基長、又はこれらの間の任意の整数値である、アミノ酸配列の領域にわたって存在する。一部の実施形態において、同一性は、60〜80残基より長い領域、例えば、少なくとも80〜100残基にわたって存在し、一部の実施形態において、配列は、比較される配列の全長、例えば、標的タンパク質又は抗体のコード領域にわたって、実質的に同一である。一部の実施形態において、同一性は、少なくとも約10塩基、少なくとも約20塩基、少なくとも約40〜60塩基、少なくとも約60〜80塩基長、又はこれらの間の任意の整数値である、ヌクレオチド配列の領域にわたって存在する。一部の実施形態において、同一性は、60〜80塩基より長い領域、例えば、少なくとも80〜100塩基又は101塩基以上にわたって存在し、一部の実施形態において、配列は、比較される配列の全長、例えば、所望のタンパク質をコードするヌクレオチド配列にわたって、実質的に同一である。
「保存的アミノ酸置換」は、1つのアミノ酸残基が、類似した側鎖を有する別のアミノ酸残基で置き換えられることである。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において一般に定義されており、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電性極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐状側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。例えば、フェニルアラニンでのチロシンの置換は、保存的置換である。一般に、本発明のポリペプチド、可溶性タンパク質及び/又は抗体の配列における保存的置換は、そのアミノ酸配列を含有するポリペプチド、可溶性タンパク質又は抗体の、標的結合部位への結合を無効にしない。結合を除去させないアミノ酸保存的置換を同定する方法は、当技術分野において周知である。
「単離され」ているポリペプチド、可溶性タンパク質、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞又は組成物は、自然界に見いだせない形態であるポリペプチド、可溶性タンパク質、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞又は組成物である。単離されているポリペプチド、可溶性タンパク質、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞又は組成物は、もはやそれらが自然界に見いだせる形態でない程度に精製されたものを含む。一部の実施形態において、単離されているポリペプチド、可溶性タンパク質、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞又は組成物は、実質的に純粋である。
用語「実質的に純粋(な)」は、本明細書において使用される場合、少なくとも50%純粋(すなわち、夾雑物がない)、少なくとも90%純粋、少なくとも95%純粋、少なくとも98%純粋、又は少なくとも99%純粋である材料を指す。
用語「融合タンパク質」又は「融合ポリペプチド」は、本明細書において使用される場合、少なくとも2遺伝子のヌクレオチド配列を含む核酸分子により発現されたハイブリッドタンパク質を指す。
用語「リンカー」又は「リンカー領域」は、本明細書において使用される場合、第1のポリペプチド(例えば、Affimerのコピー)と第2のポリペプチド(例えば、別のAffimer、Fcドメイン、リガンド結合ドメインなど)との間に挿入されるリンカーを指す。一部の実施形態において、リンカーは、ペプチドリンカーである。リンカーは、ポリペプチドの発現にも、分泌にも、生物活性(bioactivity)にも、悪影響を与えてはならない。好ましくは、リンカーは、抗原性でなく、免疫応答を惹起しない。
用語「ポリヌクレオチド」及び「核酸」及び「核酸分子」は、本明細書において同義で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド若しくは塩基、及び/又はそれらのアナログ、又はDNA若しくはRNAポリメラーゼによりポリマーに組み込まれうる任意の基質でありうる。
本明細書において使用される場合、用語「をコードする核酸分子」、「をコードするDNA配列」、及び「をコードするDNA」は、デオキシリボ核酸デオキシリボヌクレオチドのストランドに沿ってのヌクレオチドの順序又は配列を指す。これらのデオキシリボヌクレオチドの順序が、ポリペプチド(タンパク質)鎖に沿ってアミノ酸の順序を、したがって、アミノ酸配列をコードする核酸配列を決める。
ヌクレオチド配列に関して使用される場合、本明細書において使用される「配列」、この用語の文法上の形態及び他の形態は、DNA又はRNAを含むこともあり、一本鎖状又は二本鎖状であってもよい。核酸配列は、変異されていることもある。核酸配列は、任意の長さ、例えば、2〜100,000又は100,001以上のヌクレオチド(又は上記の若しくはこれらの間の任意の整数値)を、核酸は、例えば、約100〜約10,000、又は約200ヌクレオチド〜約500ヌクレオチドの長さを有することができる。
用語「ベクター」は、本明細書において使用される場合、所望の1つ又は2つ以上の遺伝子又は配列を宿主細胞内に送達すること及び通常は宿主細胞において発現させることができるコンストラクトを意味する。ベクターの例としては、ウイルスベクター、裸のDNA又はRNA発現ベクター、プラスミド、コスミド又はファージベクター、カチオン性縮合剤を伴うDNA又はRNA発現ベクター、及びリポソームに封入されたDNA又はRNA発現ベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書において使用される場合、用語「トランスフェクション」は、真核細胞への外因性核酸を指す。トランスフェクションは、リン酸カルシウム−DNA共沈、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、ポリブレン媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポソーム融合、リポフェクション、プロトプラスト融合、レトロウイルス感染、及び微粒子銃技術(微粒子銃)を含む、当技術分野において公知の様々な手段により達成することができる。
用語「担体」は、本明細書において使用される場合、細胞の内部に組成物を送達するために使用することができる単離された核酸を含む、単離された核酸である。直鎖状ポリヌクオチド、イオン性又は両親媒性化合物と会合しているポリヌクレオチド、プラスミド及びウイルスを含むがこれらに限定されない、いくつかの担体が、当技術分野において公知である。したがって、用語「ベクター」は、自律増殖プラスミド又はウイルスを含む。この用語はまた、細胞への核酸の移入を助長するための、非プラスミド及び非ウイルス性化合物、例えば、ポリリジン化合物、リポソーム及びこれらに類するものを含むように解釈されたい。ウイルスベクターの例としては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター及びこれらに類するものが挙げられるが、それらに限定されない。
本明細書において使用される場合、用語「発現ベクター」は、作動可能に連結されている発現制御配列と発現されるヌクレオチド配列とを含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、発現に使用される十分なcis作用性エレメント(cis作用性エレメント)を含み、発現のための他のエレメントは、宿主細胞又はインビトロ発現系により供給されうる。発現ベクターは、当技術分野において公知の全てのもの、例えば、コスミド、プラスミド(例えば、裸の、又はリポソームに含有された)及びウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)を含む。
本明細書において使用される場合、用語「作動可能に連結された/されている」は、異種核酸配列の発現をもたらす、調節配列と異種核酸配列との間の機能的連結を指す。例えば、第1の核酸配列及び第2の核酸配列が、機能的な関係であるとき、第1の核酸配列と第2の核酸配列との間は、作動可能に連結されている。例えば、プロモーターが、コード配列の転写又は発現に影響を与える場合、プロモーターは、コード配列に作動可能に連結されている。通常は、作動可能に連結されたDNAシークエンシングは、隣接しており、必要に応じて、同じリーディングフレーム内の2つのタンパク質コード領域を接合させる。
本明細書において使用される場合、用語「プロモーター」は、ポリヌクレオチド配列の細胞特異的転写の合成機構に必要される又は導入される、合成機構により認識されるプロモーターDNA配列と定義される。
用語「構成的発現」は、本明細書において使用される場合、生理条件下で発現される全てを指す。
用語「誘導性発現」は、本明細書において使用される場合、細胞内シグナル伝達経路の活性化(又は不活性化)、又は発現コンストラクトを保有する細胞と、小分子の濃度に感受性の誘導性プロモーターに作動可能に連結された遺伝子の発現(又は発限度)を調節する小分子との接触などの、ある特定の条件下での発現を指す。
用語「エレクトロポレーション」は、生体膜において微視的経路(細孔)を誘導するための膜貫通電場パルスの使用を指し、それらの経路の存在により、生体分子、例えば、プラスミド又は他のオリゴヌクレオチドは、細胞膜の片側から反対側に通過することができる。
適切には、本発明のポリペプチドは、本明細書に記載される通りのアミノ酸配列を含む。適切には、本発明のポリペプチドは、本明細書に記載される通りのアミノ酸配列から本質的になる。適切には、本発明のポリペプチドは、本明細書に記載される通りのアミノ酸配列からなる。
II.融合タンパク質 − 概要
一部の実施形態において、Affimerポリペプチドは、Affimerポリペプチドの生物学的活性をモジュレートする1つ又は2つ以上の追加のポリペプチド配列をAffimer配列の一方又は両方の末端に、さらに含むことができる。例えば、これらの追加物は、親和性などの修飾Affimerの1つ若しくは2つ以上の特性を、例えば、標的分子との結合及びその阻害のために、モジュレートすることができ、循環半減期をモジュレートすることができ、治療薬半減期をモジュレートすることができ、Affimerポリペプチドの安定性をモジュレートすることができ、プロテアーゼによる切断をモジュレートすることができ、用量をモジュレートすることができ、放出又はバイオアベイラビリティをモジュレートすることができ、精製を容易にすることができ、脱アミドを減少させることができ、有効期間を改善することができ、又は特定の投与経路を改善若しくは変更することができる。同様に、Affimerポリペプチドは、プロテアーゼ切断配列、反応性基、抗体結合ドメイン(FLAG又はポリHisを含むがこれらに限定されない)、若しくは他の親和性ベースの配列(FLAG、ポリHis、GSTなどを含むがこれらに限定されない)、又はポリペプチドの検出、精製若しくは他の特質を改善する連結された分子(ビオチンを含むがこれに限定されない)を含むことができる。
したがって、本発明のある特定の態様において、Affimerポリペプチドは、少なくとも1つのAffimerポリペプチド配列と1つ又は2つ以上の異種ポリペプチド配列とを有する融合タンパク質(ここでは「融合ドメイン」)である。単なる例として、細胞からの分泌若しくは細胞表面での保持(すなわち、コードされたAffimerについて)などの、所望の特性を付与するために、翻訳後修飾のための基質若しくは他の認識配列として役立てるために、タンパク質間相互作用によって凝集している多量体構造を作出するために、血清半減期を変更するために(多くの場合、延長するために)、又は組織局在若しくは組織排除及び他のADME特性を変更するために、融合ドメインを選択することができる。
例えば、一部の融合ドメインは、融合タンパク質の、親和性クロマトグラフィーなどによる、単離及び/又は精製に特に有用である。発現又は精製を助長するそのような融合ドメインの周知の例としては、単に説明するために、親和性タグ、例えばポリヒスチジン(すなわち、Hisタグ)、Strep IIタグ、ストレプトアビジン結合ペプチド(SBP:streptavidin-binding peptide)タグ、カルモジュリン結合ペプチド(CBP:calmodulin-binding peptide)、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST:glutathione S-transferase)、マルトース結合タンパク質(MBP:maltose-binding protein)、Sタグ、HAタグ、c−Mycタグ、チオレドキシン、プロテインA及びプロテインGが挙げられる。
Affimerポリペプチドは、分泌されるために、小胞体の内腔へのタンパク質の輸送を指示するシグナル配列であり、最終的に分泌される(又は膜貫通ドメイン若しくは他の細胞表面滞留シグナルの場合は細胞表面に滞留される)ことになるシグナル配列を一般に含有する。シグナル配列(シグナルペプチド又はリーダー配列とも呼ばれる)は、新生ポリペプチドのN末端に位置する。それらは、ポリペプチドを小胞体に標的化し、タンパク質は、それらの目的地に、例えば、細胞小器官の内部空間に、細胞内膜に、細胞の外膜に、又は分泌によって細胞外部にソートされる。大部分のシグナル配列は、タンパク質が小胞体に輸送された後、シグナルペプチダーゼによりタンパク質から切断される。ポリペプチドからのシグナル配列の切断は、通常は、アミノ酸配列の特定の部位で起こり、シグナル配列内のアミノ酸残基に依存する。
一部の実施形態において、シグナルペプチドは、約5〜約40アミノ酸長(例えば、約5〜約7、約7〜約10、約10〜約15、約15〜約20、約20〜約25、又は約25〜約30、約30〜約35、又は約35〜約40アミノ酸長)である。
一部の実施形態において、シグナルペプチドは、ヒトタンパク質からのネイティブシグナルペプチドである。他の実施形態において、シグナルペプチドは、非ネイティブシグナルペプチドである。例えば、一部の実施形態において、非ネイティブシグナルペプチドは、対応するネイティブ分泌ヒトタンパク質からのミュータントネイティブシグナルペプチドであり、1つ又は2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10又は11以上)の置換、挿入又は欠失を含みうる。
一部の実施形態において、シグナルペプチドは、免疫グロブリン(例えば、IgG重鎖若又はIgG−カッパ軽鎖)、サイトカイン(例えば、インターロイキン−2(IL−2:interleukin-2)、又はCD33)、血清アルブミンタンパク質(例えば、HSA又はアルブミン)、ヒトアズロシジンプレタンパク質シグナル配列、ルシフェラーゼ、トリプシノーゲン(例えば、キモトリプシノーゲン又はトリプシノーゲン)、又は細胞からタンパク質を効率的に分泌させることができる他のシグナルペプチドからの、シグナルペプチド又はそのミュータントである。例示的シグナルペプチドとしては、以下のものが挙げられるが、それらに限定されない:
Figure 2020532949
分泌されたAffimerポリペプチドの一部の実施形態において、組換えポリペプチドは、発現された場合シグナルペプチドを含み、このシグナルペプチド(又はその一部分)は、分泌時にAffimerポリペプチドから切断される。
対象融合タンパク質は、異種タンパク質配列又はドメインを隔てる1つ又は2つ以上のリンカーも含むことができる。本明細書において使用される場合、用語「リンカー」は、第1のポリペプチド(例えば、Affimer)と第2のポリペプチド(例えば、第2のAffimer、Fc領域、受容体トラップ、アルブミンなど)との間に挿入されるリンカーアミノ酸配列を指す。研究者により設計される実験的リンカーは、それらの構造に従って3つのカテゴリー:フレキシブルリンカー、剛性リンカー及びインビボ切断性リンカーに、一般に分類される。機能性ドメインを一緒に連結させる(フレキシブルリンカー及び剛性リンカーにおけるような)又は遊離機能性ドメインをインビボで放出する(インビボ切断性リンカーにおけるような)基本的な役割に加えて、リンカーは、生物学的活性を改善すること、発現収率を増大させること、及び望ましい薬物動態プロファイルを達成することなどの、融合タンパク質の産生にとっての多くの他の利点をもたらす。リンカーは、融合タンパク質の発現にも、分泌にも、生物活性にも、悪影響を与えてはならない。リンカーは、抗原性であってはならず、免疫応答を惹起してはならない。
適切なリンカーは、当業者に公知であり、グリシン残基とセリン残基の混合物を含むことが多く、立体障害のないアミノ酸を含むことが多い。有用なリンカーに組み込むことができる他のアミノ酸としては、トレオニン及びアラニン残基が挙げられる。リンカーは、長さに関して、例えば、1〜50アミノ酸長、1〜22アミノ酸長、1〜10アミノ酸長、1〜5アミノ酸長、又は1〜3アミノ酸長の範囲でありうる。一部の実施形態において、リンカーは、切断部位を含むことができる。一部の実施形態において、リンカーは、酵素切断部位を含むことができ、その結果、第2のポリペプチドを第1のポリペプチドから隔てることができる。
ある特定の好ましい実施形態において、リンカーをフレキシブルであると特徴付けることができる。フレキシブルリンカーは、連結されたドメインにある程度の動き又は相互作用が求められるときに通常は適用される。それらは、一般に、小さい、非極性(例えば、Gly)又は極性(例えば、Ser又はThr)アミノ酸で構成される。例えば、Argos P. (1990) “An investigation of oligopeptides linking domains in protein tertiary structures and possible candidates for general gene fusion” J Mol Biol.211:943-958を参照されたい。これらのアミノ酸の小さいサイズがフレキシビリティーをもたらし、接続機能性ドメインの移動性を可能にする。Ser又はThrの組込みは、水分子と水素結合を形成することにより水溶液中でのリンカーの安定性を維持することができ、したがって、リンカーとタンパク質部分との間の好ましくない相互作用を低減させる。最もよく使用されているフレキシブルリンカーは、Gly及びSer残基のストレッチから主としてなる配列を有する(「GS」リンカー)。最も広く使用されているフレキシブルリンカーの一例は、(Gly−Gly−Gly−Gly−Ser)nの配列を有する。コピー数「n」を調整することにより、このGSリンカーの長さを、機能性ドメインの適切な隔離を達成するように又は必要ドメイン間相互作用を維持するように最適化することができ、このGSリンカーの長さは、好ましくは、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10である。GSリンカーに加えて、多くの他のフレキシブルリンカーが、組換え融合タンパク質用に設計されてきた。これらのフレキシブルリンカーもまた、Gly及びSerなどの小さい又は極性のアミノ酸を多く含むが、しかし、フレキシビリティーを維持するためにThr及びAlaなどの追加のアミノ酸を含有することができ、溶解度を改善するためにLys及びGluなどの極性アミノ酸を含有することもできる。
ある特定の好ましい実施形態において、リンカーを剛性と特徴付けることができる。フレキシブルリンカーには、機能性ドメインを受動的に接続し、ある程度の移動を可能にするという利点があるが、これらのリンカーの剛性の欠如は、ある特定の融合タンパク質実施形態を、例えば、発現収率又は生物学的活性を制限することになりうる。これらの場合のフレキシブルリンカーの無効性は、タンパク質ドメインの不十分な隔離、又はそれらの互いに対する干渉の不十分な低減に起因する。これらの状況下で、ドメイン間の固定距離を保つために、及びそれらの独立した機能を維持するために、剛性リンカーがうまく適用されてきた。
多くの天然リンカーがαヘリックス構造を示した。αヘリックス構造は、セグメント間水素結合及び緊密にパッキングされた主鎖のため、剛性であり、安定している。したがって、硬いαヘリックスリンカーは、タンパク質ドメイン間の剛性スペーサーとして動作することができる。George et al. (2002) “An analysis of protein domain linkers: their classification and role in protein folding” Protein Eng. 15(11):871-9。一般に、剛性リンカーは、αヘリックス構造を採ることにより又は複数のPro残基を含有することにより、比較的硬い構造を示す。多くの環境下で、それらは、機能性ドメインをフレキシブルリンカーよりも効率的に隔てる。ドメイン間の最適な距離を達成するようにコピー数を変えることによって、リンカーの長さを容易に調整することができる。結果として、剛性リンカーは、融合タンパク質の安定性又は生物活性を保存するためにドメインの空間的隔離が必要不可欠であるときに選択される。この関連で、(EAAAK)n(式中、nは、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10である)の配列を有するアルファヘリックス形成リンカーが、多くの組換え融合タンパク質の構築に適用されてきた。別のタイプの剛性リンカーは、Proリッチ配列である(XP)nを有し、Xは、任意のアミノ酸、好ましくはAla、Lys又はGluを示し、nは、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10である。
単に説明するために、例示的リンカーとしては、以下のものが挙げられる:
Figure 2020532949
対象融合タンパク質において使用することができる他のリンカーは、これらに限定されないが、SerGly、GGSG(配列番号59)、GSGS(配列番号60)、GGGS(配列番号61)、S(GGS)n(配列番号62)(nは、1〜7である)、GRA、ポリ(Gly)、ポリ(Ala)、GGGSGGG(配列番号63)、ESGGGGVT(配列番号64)、LESGGGGVT(配列番号65)、GRAQVT(配列番号66)、WRAQVT(配列番号67)及びARGRAQVT(配列番号68)を含む。下に記載されるFc融合体のヒンジ領域もリンカーと見なすことができる。
様々なエレメントを用いて、細胞の原形質膜上にタンパク質を繋留することができる。例えば、I型(N末端が細胞外に向いている)及びII型(N末端がサイトゾル内に向いている)膜内在性タンパク質の膜貫通(TM:transmembrane)ドメインを使用して、キメラタンパク質を原形質膜に標的化することができる。グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI:glycophosphatidylinositol)脂質シグナルを遺伝子の3’末端に融合させることにより、タンパク質を細胞表面に結合させることもできる。短いカルボキシ末端ペプチドの切断は、新たに露出されたC末端への糖脂質のアミド結合(amide linkage)による結合を可能にする。Udenfriend et al.(1995) “How Glycosylphoshpatidylinositol Anchored Membrane Proteins are Made” Annu Rev Biochem 64:563-591を参照されたい。
ある特定の実施形態において、融合タンパク質は、膜貫通ポリペプチド配列(膜貫通ドメイン)を含む。適切な膜貫通ポリペプチドの際立った特徴は、細胞の表面で発現される能力含み、その細胞の表面にAffimerポリペプチドを提示することができる。ある特定の実施形態において、それは、免疫細胞、特に、リンパ球細胞又はナチュラルキラー(NK:Natural killer)細胞であってもよく、そこで腫瘍細胞と相互作用することにより細胞表面特徴が発現されると、免疫細胞表面のAffimerポリペプチドがそれに結合して、所定の標的腫瘍細胞に対する免疫細胞の細胞応答を指示する。膜貫通ドメインは、天然供給源に又は合成供給源に由来しうる。膜貫通ドメインは、任意の膜結合又は膜貫通タンパク質に由来しうる。非限定的な例として、膜貫通ポリペプチドは、T細胞受容体のサブユニット、例えばα、β、γ又はδ、CD3複合体を構成するポリペプチド、IL2受容体p55(a鎖)、p75(β鎖)又はγ鎖、Fc受容体の、特にFey受容体III又はCDタンパク質のサブユニット鎖でありうる。あるいは、膜貫通ドメインは、合成でありえ、ロイシン及びバリンなどの疎水性残基を主として含みうる。
ある特定の他の実施形態において、Affimerポリペプチドは、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーの翻訳後付加のためのシグナルを伝達する配列を、Affimerポリペプチドに加えて含む融合タンパク質である。GPIアンカーは、多くの真核生物タンパク質のC末端に翻訳後に付加される糖脂質構造である。Affimerポリペプチドへのこの修飾は、それを細胞の細胞膜の細胞外表面に繋留(結合)させ、その細胞においてAffimerポリペプチドが組換えタンパク質(すなわり、下記のコードされたAffimer)として再発現される。これらの実施形態において、GPIアンカードメインは、Affimerポリペプチド配列のC末端側にあり、好ましくは、融合タンパク質のC末端に存在する。
一実施形態において、GPIアンカードメインは、それが一部である融合タンパク質が真核細胞系において発現されるときに、GPIアンカーの翻訳後付加のためのシグナルを伝達するポリペプチドである。GPIアンカーシグナル配列は、疎水性スペーサーが後に続き、疎水性ストレッチで終わる、アンカー付加部位(ω部位)における一連の小さいアミノ酸からなる(Low, (1989) FASEB J. 3:1600-1608)。このシグナル配列の切断は、アンカーの付加の前にERにおいて起こり、中心構成成分は保存されるが末梢部分は可変である(Homans et al., Nature, 333:269-272 (1988))。GPI繋留タンパク質のC末端は、高度に保存されるコアグリカンであるマンノース(α1−2)マンノース(α1−6)マンノース(α1−4)グルコサミン(α1−6)ミオイノシトールに、ホスホエタノールアミン架橋によって連結されている。リン脂質テールがGPIアンカーを細胞膜に結合させる。
対象Affimer含有融合タンパク質において使用することができる例示的GPIアンカードメインとしては、以下のものが挙げられる:
配列番号69 SGTTSGTTRLLSGHTCFTLTGLLGTLVTMGLLT
配列番号70 SGTSPGLSAGATVGIMIGVLVGVALI
配列番号71 SAPVLSAVATVGITIGVLARVALI
配列番号72 SSPDLSAGTAVSIMIGVLAGMALI
配列番号73 TLGGNSASYTFVSLLFSAVTLLLLC
配列番号74 SGTSPGLSAGATVGIMIGVLVGVALI
GPIアンカー結合は、GPI翻訳後修飾を行うことができる真核細胞系におけるGPIアンカードメインを含有するAffimer融合タンパク質の発現により達成することができる。膜貫通ドメイン融合タンパク質と同様に、リンパ球又は抗腫瘍の開始若しくは促進に関与する他の細胞を含むヒト細胞は、発現されたAffimer含有融合体を改変された細胞の表面に保持するために、GPIアンカードメインを含むコードされたAffimerを発現するのに十分な能力があり、それを発現するように改変することができる。
Affimerポリペプチド配列自体に行うことができる、又は融合タンパク質の一部として備えられている隣接ポリペプチド部分に行うことができる、さらに他の修飾は、酵素による翻訳後修飾のための部位である1つ又は2つ以上の配列である。これらは、グリコシル化、アセチル化、アシル化、脂質修飾、パルミトイル化、パルミチン酸付加、リン酸化、糖脂質連結修飾、及びこれらに類するものを含むが、それらに限定されない。
a.PK及びADME特性の改変
ある特定の態様において、Affimerポリペプチドは、非経口治療投薬などの投与経路に最適である、半減期及び/又はPKプロファイルを有さないことがある。用語「半減期」は、本発明のAffimerポリペプチドなどの物質が、その薬理学的又は生理学的活性又は濃度の半分を喪失するのにかかる時間の量を指す。生物学的半減期は、物質の排出、排泄、分解(例えば、酵素的)、又は身体のある特定の器官若しくは組織における吸収及び濃度による影響を受けうる。一部の実施形態において、生物学的半減期は、物質の血漿濃度がその定常状態レベルの半分(「血清半減期」)に達するのにかかる時間を決定することによりアセスメントすることができる。この欠点に対処するために、半減期の延長のための様々な一般的な戦略があり、そのような戦略は、他のタンパク質療法の場合に使用されており、半減期延長部分をAffimerポリペプチドの一部として組み込むことを含む。
用語「半減期延長部分」は、本明細書に記載されるAffimerポリペプチドを形成するために、天然にコードされていないアミノ酸を介してでもよく、直接にでもよく、又はリンカーを介してでもよいが、Affimerポリペプチドに共有結合で連結(「コンジュゲート」又は「融合」)されている、薬学的に許容される部分、ドメイン又は分子であって、これらに限定されないが、非コンジュゲート形態の修飾Affimerポリペプチドなどの比較対照と比較して、修飾Affimerポリペプチドの吸収速度を上昇させること、毒性を低減させること、溶解度を改善すること、タンパク質凝集を低減させること、生物学的活性及び/又は標的選択性を増大させること、修飾Affimerポリペプチドの製造可能性を増大させること及び/又は免疫下性を低減させることを含めて、Affimerポリペプチドのインビボでのタンパク質分解若しくは他の活性を低下させる修飾を防止する若しくは弱める、半減期を増大する、及び/又は他の薬理学的若しくは生物物理学的特性を改善もしく変化させる部分、ドメイン又は分子を指す。用語「半減期延長部分」は、非タンパク質性の半減期延長部分、例えば、水溶性ポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG:polyethylene glycol)又は離散PEG、ヒドロキシエチルデンプン(HES:hydroxyethyl starch)、脂質、分岐状又は非分岐状アシル基、分岐状又は非分岐状C8−C30アシル基、分岐状又は非分岐状アルキル基、及び分岐状又は非分岐状C8−C30アルキル基;並びにタンパク質性の半減期延長部分、例えば、血清アルブミン、トランスフェリン、アドネクチン(例えば、アルブミン結合又は、薬物動態延長(PKE:pharmacokinetics extending)アドネクチン)、Fcドメイン、及び非構造化タンパク質、例えばXTEN及びPASポリペプチド(例えば、アミノ酸Pro、Ala及び/又はSerで構成される立体構造的に無秩序なポリペプチド配列)、並びに前述のもののいずれかについての断片を含む。
ある特定の態様において、半減期延長部分は、哺乳動物血清中での結果として生じたAffimerポリペプチド循環の半減期を、部分とそのようにコンジュゲートされていないタンパク質の半減期と比較して(例えば、単独のAffimerポリペプチドと比べて)延長する。一部の実施形態において、半減期は、約1.2倍、1.5倍、2.0倍、3.0倍、4.0倍、5.0倍、又は6.0倍より大きく延長される。一部の実施形態において、半減期は、半減期延長部分のないタンパク質と比較して、インビボ投与後、6時間より長く、12時間より長く、24時間より長く、48時間より長く、72時間より長く、96時間より長く、又は1週間より長く延長される。
さらなる例示の手段として、本発明のAffimerポリペプチドの生成の際に使用することができる半減期延長部分は、以下のものを含む:
・薬理活性Affimer配列と半減期が天然に長いタンパク質又はタンパク質ドメインとの遺伝子融合(例えば、Fc融合、トランスフェリン[Tf:transferrin]融合、又はアルブミン融合)。例えば、Beck et al. (2011) “Therapeutic Fc-fusion proteins and peptides as successful alternatives to antibodies. MAbs. 3:1-2; Czajkowsky et al. (2012) “Fc-fusion proteins: new developments and future perspectives. EMBO Mol Med. 4:1015-28; Huang et al. (2009) “Receptor-Fc fusion therapeutics, traps, and Mimetibody technology” Curr Opin Biotechnol. 2009;20:692-9; Keefe et al. (2013) “Transferrin fusion protein therapies: acetylcholine receptor-transferrin fusion protein as a model. In: Schmidt S, editor. Fusion protein technologies for biopharmaceuticals: applications and challenges. Hoboken: Wiley; p. 345-56; Weimer et al. (2013) “Recombinant albumin fusion proteins. In: Schmidt S, editor. Fusion protein technologies for biopharmaceuticals: applications and challenges.Hoboken: Wiley; 2013. p. 297-323; Walker et al. (2013) “Albumin-binding fusion proteins in the development of novel long-acting therapeutics. In: Schmidt S, editor.Fusion protein technologies for biopharmaceuticals: applications and challenges.Hoboken: Wiley; 2013. p. 325-43を参照されたい。
・薬理活性Affimer配列と、不活性ポリペプチド、例えばXTEN(組換えPEG又は「rPEG」としても公知)、ホモアミノ酸ポリマー(HAP:homoamino acid polymer;HAP化)、プロリン−アラニン−セリンポリマー(PAS:proline-alanine-serine polymer;PAS化)、又はエラスチン様ペプチド(ELP:elastin-like peptide;ELP化)との、遺伝子融合。例えば、Schellenberger et al. (2009) “A recombinant polypeptide extends the in vivo half-life of peptides and proteins in a tunable manner. Nat Biotechnol. 2009;27:1186-90; Schlapschy et al. Fusion of a recombinant antibody fragment with a homo-amino-acid polymer: effects on biophysical properties and prolonged plasma half-life. Protein Eng Des Sel. 2007;20:273-84; Schlapschy (2013) PASylation: a biological alternative to PEGylation for extending the plasma half-life of pharmaceutically active proteins. Protein Eng Des Sel. 26:489-501. Floss et al. (2012) “Elastin-like polypeptides revolutionize recombinant protein expression and their biomedical application. Trends Biotechnol. 28:37-45.Floss et al. “ELP-fusion technology for biopharmaceuticals. In: Schmidt S, editor. Fusion protein technologies for biopharmaceuticals: application and challenges. Hoboken: Wiley; 2013. p. 372-98を参照されたい。
・薬理活性ペプチド又はタンパク質と反復化学的部分との、例えば、PEG(PEG化)又はヒアルロン酸との化学的コンジュゲーションにより、流体力学的半径を増加させること。例えば、Caliceti et al. (2003) “Pharmacokinetic and biodistribution properties of poly(ethylene glycol)-protein conjugates” Adv Drug Delivery Rev. 55:1261-77; Jevsevar et al. (2010) PEGylation of therapeutic proteins. Biotechnol J 5:113-28; Kontermann (2009) “Strategies to extend plasma half-lives of recombinant antibodies” BioDrugs. 23:93-109; Kang et al. (2009) “Emerging PEGylated drugs” Expert Opin Emerg Drugs. 14:363-80; 及びMero et al. (2013) “Conjugation of hyaluronan to proteins” Carb Polymers. 92:2163-70を参照されたい。
・ポリシアル化による薬理活性ペプチド若しくはタンパク質の融合の負電荷を有意に増加させること、又は代替的に、(b)ヒトCG b−サブユニットなどの天然タンパク質の半減期を延長することが公知である、負荷電、高シアル化ペプチド(例えば、カルボキシ末端ペプチド[CTP:carboxy-terminal peptide;絨毛性ゴナドトロピン(CG:chorionic gonadotropin)b鎖のもの])を生物学的製剤候補と融合させること。例えば、Gregoriadis et al. (2005) “Improving the therapeutic efficacy of peptides and proteins: a role for polysialic acids” Int J Pharm. 2005; 300:125-30; Duijkers et al. “Single dose pharmacokinetics and effects on follicular growth and serum hormones of a long-acting recombinant FSH preparation (FSHCTP) in healthy pituitary-suppressed females” (2002) Hum Reprod. 17:1987-93; and Fares et al. “Design of a long-acting follitropin agonist by fusing the C-terminal sequence of the chorionic gonadotropin beta subunit to the follitropin beta subunit” (1992) Proc Natl Acad Sci USA. 89:4304-8. 35; 及びFares “Half-life extension through O-glycosylationを参照されたい。
・ペプチド又はタンパク質結合ドメインの生物活性タンパク質への結合によって、半減期が通常は長いタンパク質、例えばHSA、ヒトIgG、トランスフェリン又はフィブロネクチンと非共有結合させること。例えば、Andersen et al. (2011) “Extending half-life by indirect targeting of the neonatal Fc receptor (FcRn) using a minimal albumin binding domain” J Biol Chem. 286:5234-41; O’Connor-Semmes et al. (2014) “GSK2374697, a novel albumin-binding domain antibody (albudAb), extends systemic exposure of extendin-4: first study in humans-PK/PD and safety” Clin Pharmacol Ther. 2014;96:704-12. Sockolosky et al. (2014) “Fusion of a short peptide that binds immunoglobulin G to a recombinant protein substantially increases its plasma half-life in mice” PLoS One. 2014;9:e102566を参照されたい。
長寿命血清タンパク質との古典的遺伝子融合は、PEG又は脂質との化学的コンジュゲーションとは明確に異なる代替半減期延長方法をもたらす。2つの主要タンパク質:抗体Fcドメイン及びヒト血清アルブミン(HSA:human serum albumin)が、融合パートナーとして旧来使用されてきた。Fc融合は、抗体のFc部分へのペプチド、タンパク質又は受容体細胞外ドメインの融合を含む。Fc融合とアルブミン融合の両方は、ペプチド薬のサイズを増加させることによるばかりでなく、両方とも、身体の自然な再循環メカニズム:新生児型Fc受容体、FcRnを活用することによっても、半減期延長を達成する。これらのタンパク質のFcRnとのpH依存性結合は、エンドソームにおける融合タンパク質の分解を防止する。これらのタンパク質に基づく融合体は、典型的なPEG化又は脂質化ペプチドよりはるかに長い、3〜16日の範囲の半減期を有することができる。抗体Fcドメインとの融合は、ペプチド又はタンパク質薬の溶解度及び安定性を改善することができる。ペプチドFc融合体の一例は、目下、後期臨床試験中のGLP−1受容体アゴニストである、デュラグルチドである。ヒト血清アルブミン、脂肪アシル化ペプチドにより利用される同タンパク質は、他の一般的な融合パートナーである。アルビグルチドは、このプラットフォームに基づくGLP−1受容体アゴニストである。Fcとアルブミンとの間の大きな差異は、Fcの二量体的性質対HSAの単量体構造であり、その結果、融合パートナーの選択に依存して二量体又は単量体としての融合ペプチドが提示されることになる。Affimer−Fc融合体の二量体的性質は、標的細胞上の細胞表面タンパク質などの、Affimer標的が、互いに十分に密集している場合、又はそれら自体が二量体若しくはより高次の多量体である場合、アビディティー効果を生じさせることができる。これは、望ましいこともあり、又は標的に依存性でないこともある。
(i)Fc融合体
一部の実施形態において、Affimerポリペプチドは、免疫グロブリンFcドメイン(「Fcドメイン」)との融合タンパク質、又はその断片若しくはバリアントの一部分、例えば、機能性Fc領域でありうる。これに関連して、Fc融合体(「Fc−融合体」)、例えば、Affimer−Fc融合タンパク質として作出されたAffimerポリペプチドは、ペプチド主鎖によって(直接又は間接的に)免疫グロブリンのFc領域に共有結合で連結されている1つ又は2つ以上のAffimer配列を含むポリペプチドである。Fc−融合体は、例えば、抗体のFc領域(これは、エフェクター機能及び薬物動態を助長する)とAffimer配列とを同じポリペプチドの一部として含みうる。免疫グロブリンFc領域は、1つ又は2以上のAffimerに間接的に連結されていることもある。様々なリンカーが当技術分野において公知であり、Affimer配列を含むポリペプチドにFcを連結させてFc−融合体を生成するためにそれらを使用してもよい。ある特定の実施形態において、Fc−融合体は、Fc−融合体ホモ二量体を形成するように、又は非同一のFcドメインを使用してFc−融合体ヘテロ二量体を形成するように、二量体化されうる。
対象AffimerポリペプチドをAffimer融合タンパク質として生成する際の使用にヒト抗体のFc領域を選択するのには、複数の理由がある。主な理論的根拠は、抗体のものと比較して同様の薬物動態プロファイルを明示するのに十分な大きさの安定したタンパク質を産生すること、及びFc領域により付与される特性を利用することであり;これは、リソソーム分解を回避し、血流に放出しなおす結果となり、したがって血清半減期の延長の一因となる、エンドサイトーシス後の細胞表面への融合タンパク質のFcRn媒介再循環に関わる、サルベージ新生児型FcRn受容体経路を含む。別の明らかな利点は、プロテインAへのFcドメインの結合であり、これは、Affimerポリペプチドの産生中の下流のプロセシングを単純化すること、及びAffimerポリペプチドの高純度の調製物の生成を可能にすることができる。
一般に、Fcドメインは、第1の定常領域免疫グロブリンドメインを除く、抗体の定常領域を含むことになる。したがって、Fcドメインは、IgA、IgD及びIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメインと、IgE及びIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメインと、これらのドメインのN末端側のフレキシブルヒンジとを指す。IgA及びIgMについては、FcはJ鎖を含みうる。IgGについては、Fcは、免疫グロブリンドメインCγ2及びCγ3、並びにCγ1とCγ2との間のヒンジを含む。Fcドメインの境界は変動しうるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、残基C226又はP230をそのカルボキシル末端側に含むと定義され、番号付けは、Kabat(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, NIH, Bethesda, Md. (1991))に記載のEUインデックスに従う。Fcは、単体でこの領域を指すこともあり、又は全抗体、抗体断片若しくはFc融合タンパク質に関連してこの領域を指すこともある。多型が、いくつかの異なるFc位置で観察されており、これらもまた、本明細書において使用される場合のFcドメインとして含まれる。
ある特定の実施形態において、本明細書において使用される場合のFc、「機能性Fc領域」は、FcRnに結合する能力を保持する、Fcドメイン又はその断片を指す。機能性Fc領域は、FcRnと結合するが、エフェクター機能を有さない。FcRnと結合するFc領域又はその断片の能力は、当技術分野において公知の標準的結合アッセイによって判定することができる。例示的「エフェクター機能」としては、C1q結合;補体依存性細胞毒性(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞介在性細胞毒性(ADCC)、ファゴサイトーシス;細胞表面受容(例えば、B細胞受容体;BCR:B cell receptor)のダウンレギュレーションなどが挙げられる。そのようなエフェクター機能は、そのような抗体エフェクター機能を評価するための当技術分野において公知の様々なアッセイを使用してアセスメントすることができる。
例示的実施形態において、Fcドメインは、IgG1サブクラスに由来するが、他のサブクラス(例えば、IgG2、IgG3、及びIgG4)も使用することができる。使用することができるヒトIgG1免疫グロブリンFcドメインの例示的配列は、
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号75)
である。
一部の実施形態において、融合タンパク質において使用されるFc領域は、Fc分子のヒンジ領域を含むことができる。例示的ヒンジ領域は、上で提供された例示的ヒトIgG1免疫グロブリンFcドメイン配列の1〜16位に及ぶコアヒンジ残基(すなわち、DKTHTCPPCPAPELLG(配列番号76))を含む。ある特定の実施形態において、Affimer含有融合タンパク質は、一つには、上で提供された例示的ヒトIgG1免疫グロブリンFcドメイン配列のヒンジ領域内の6及び9位におけるシステイン残基のため、多量体構造(例えば、二量体)を採ることができる。他の実施形態において、本明細書において使用される場合のヒンジ領域は、上で提供された例示的ヒトIgG1免疫グロブリンFcドメイン配列のコアヒンジ配列に隣接するCH1及びCH2領域に由来する残基をさらに含むことができる。さらに他の実施形態において、ヒンジ配列は、GSTHTCPPCPAPELLG(配列番号77)又はEPKSCDKTHTCPPCPAPELLG(配列番号78)を含むことができ、又はそれからなることができる。
一部の実施形態において、ヒンジ配列は、望ましい薬物動態学的、生物物理学的及び/又は生物学的特性を付与する1つ又は2つ以上の置換を含むことができる。一部の例示的ヒンジ配列としては、
配列番号79 EPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPS
配列番号80 EPKSSDKTHTCPPCPAPELLGGPS;
配列番号81 EPKSSDKTHTCPPCPAPELLGGSS;
配列番号82 EPKSSGSTHTCPPCPAPELLGGSS;
配列番号83 DKTHTCPPCPAPELLGGPS及び
配列番号84 DKTHTCPPCPAPELLGGSS
が挙げられる。
一実施形態において、上で提供された例示的ヒトIgG1免疫グロブリンFcドメイン配列の18位における残基PをSで置き換え、Fcエフェクター機能を取り除くことができ、この置き換えは、配列EPKSSDKTHTCPPCPAPELLGGSS(配列番号85)、EPKSSGSTHTCPPCPAPELLGGSS(配列番号86)、及びDKTHTCPPCPAPELLGGSS(配列番号87)を有するヒンジにおいて例示される。別の実施形態において、上で提供された例示的ヒトIgG1免疫グロブリンFcドメイン配列の1〜2位における残基DKをGSで置き換え、潜在的クリップ部位を除去することができ、この置き換えは、配列EPKSSGSTHTCPPCPAPELLGGSS(配列番後88)で例示される。別の実施形態において、ヒトIgG1の重鎖定常領域(すなわちドメインCH1〜CH3)の103位におけるCをSで置き換えて、軽鎖の非存在下での不適切なシステイン結合形成を防止することができ、この置き換えは、EPKSSDKTHTCPPCPAPELLGGPS(配列番号89)、EPKSSDKTHTCPPCPAPELLGGSS(配列番号90)、及びEPKSSGSTHTCPPCPAPELLGGSS(配列番号91)によって例示される。
一部の実施形態において、Fcは、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4に由来するFcドメインを含む、ヒトFcなどの、哺乳動物Fcである。Fc領域は、ネイティブFc領域との及び/又は親ポリペプチドのFc領域との少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有することができる。一部の実施形態において、Fc領域は、ネイティブFc領域との及び/又は親ポリペプチドのFc領域との少なくとも約90%の配列同一性を有することができる。
一部の実施形態において、Fcドメインは、配列番号4〜16により提供される例から選択されるアミノ酸配列を含む。FcドメインのC末端リジンが、Fcドメインを含む融合タンパク質の任意選択の構成成分であることを理解されたい。一部の実施形態において、Fcドメインは、配列番号4〜16から選択されるアミノ酸配列を、そのC末端リジンを除いて、含む。
Figure 2020532949
Figure 2020532949
Affimer配列を、FcドメインのN末端又はC末端のどちらかで配置することができ、直接結合してもよく、又は融合タンパク質は、FcドメインとAffimerポリペプチド配列との間に位置する他のポリペプチド配列を有してもよい。
「抗体依存性細胞介在性細胞毒性」又は「ADCC」は、ある特定の細胞毒性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR:Fc receptor)に結合している分泌されたIgが、これらの細胞毒性エフェクター細胞を、抗原を有する標的細胞と特異的に結合させること及びその後、標的細胞を細胞毒で殺滅することが可能である、細胞毒性の形態を指す。
ある特定の実施形態において、融合タンパク質は、Fcドメイン配列を含み、そのため、得られたAffimerポリペプチドは、ADCC及び/又は補体活性化又はエフェクター機能性を有さない(又は低減している)。例えば、Fcドメインは、IgG2若しくはIgG4アイソタイプの天然に無効である定常領域、又は変異したIgG1定常領域を含むこともある。適する修飾の例は、欧州特許第0307434号に記載されている。一例は、235及び237位(EUインデックス番号付け)におけるアラニン残基の置換を含む。
他の実施形態において、融合タンパク質は、Fcドメイン配列を含み、そのため、得られたAffimerポリペプチドは、一部又は全ての機能性を保持することになり、例えば、融合タンパク質がヒトIgG1又はIgG3からのFcドメインを含む場合のように、例えば、ADCC活性とCDC活性の一方又は両方が可能であることになるであろう。エフェクター機能のレベルを、公知の手法に従って、例えば、CH2ドメインにおける変異(例えば、IgG1 CH2ドメインが、239及び332及び330から選択される位置における1つ又は2つ以上の変異を有する場合、例えば、抗体が、増強されたエフェクター機能を有するために、変異は、S239D及びI332E及びA330Lから選択される)によって、及び/又は本発明の抗原結合タンパク質のグリコシル化プロファイルをFc領域のフコシル化の低減があるように変更することによって、変化させることができる。
(ii)アルブミン融合体
他の実施形態において、Affimerポリペプチドは、少なくとも1つのAffimer配列に加えてアルブミン配列又はアルブミン断片を含む融合タンパク質である。他の実施形態において、Affimerポリペプチドは、Affimerを含むポリペプチド配列への組込み以外の化学的連結によってアルブミン配列又はアルブミン断片にコンジュゲートされる。一部の実施形態において、アルブミン、アルブミンバリアント、又はアルブミン断片は、ヒト血清アルブミン(HSA)、ヒト血清アルブミンバリアント、又はヒト血清アルブミン断片である。HSAと同等のアルブミン血清タンパク質は、例えば、カニクイザル、ウシ、イヌ、ウサギ及びラットに見られる。非ヒト種のうち、ウシ血清アルブミン(BSA:bovine serum albumin)は、HSAに最も構造的に類似している。例えば、Kosa et al., (2007) J Pharm Sci.96(11):3117-24を参照されたい。本開示は、カニクイザル血清アルブミン又はウシ血清アルブミンに由来するアルブミン配列を含むがこれに限定されない、非ヒト種からのアルブミンの使用を企図している。
約20日の血清半減期を有する585アミノ酸ポリペプチド(おおよそ67kDa)である、成熟HSAは、血液膠質浸透圧、血液pH、並びに非常に多くの内因性及び外因性リガンドの輸送及び分布を、主に担う。このタンパク質は、3つの構造的に相同なドメイン(ドメインI、II及びIII)を有し、ほぼ全てがアルファヘリックス立体構造内にあり、17のジスルフィド架橋によって高度に安定化されている。ある特定の好ましい実施形態において、Affimerポリペプチドは、1つ又は2つ以上のAffimerポリペプチド配列と、その融合タンパク質において望ましい程度に、成熟ヒト血清アルブミン(配列番号17)、又は成熟アルブミンのPK及び/若しくは生体内分布特性を維持するそのバリアント若しくは断片の配列とを含むアルブミン融合タンパク質であることができる。
DAHKSEVAHRFKDLGEENFKALVLIAFAQYLQQCPFEDHVKLVNEVTEFAKTCVADESAENCDKSLHTLFGDKLCTVATLRETYGEMADCCAKQEPERNECFLQHKDDNPNLPRLVRPEVDVMCTAFHDNEETFLKKYLYEIARRHPYFYAPELLFFAKRYKAAFTECCQAADKAACLLPKLDELRDEGKASSAKQRLKCASLQKFGERAFKAWAVARLSQRFPKAEFAEVSKLVTDLTKVHTECCHGDLLECADDRADLAKYICENQDSISSKLKECCEKPLLEKSHCIAEVENDEMPADLPSLAADFVESKDVCKNYAEAKDVFLGMFLYEYARRHPDYSVVLLLRLAKTYETTLEKCCAAADPHECYAKVFDEFKPLVEEPQNLIKQNCELFEQLGEYKFQNALLVRYTKKVPQVSTPTLVEVSRNLGKVGSKCCKHPEAKRMPCAEDYLSVVLNQLCVLHEKTPVSDRVTKCCTESLVNRRPCFSALEVDETYVPKEFNAETFTFHADICTLSEKERQIKKQTALVELVKHKPKATKEQLKAVMDDFAAFVEKCCKADDKETCFAEEGKKLVAASQAALGL
(配列番号17)
アルブミン配列を、上記のリンカー配列の使用により、Affimerポリペプチド配列又はAffimerポリペプチド中の他の隣接配列から離すことができる。
別段の指示がない限り、「アルブミン」への又は「成熟アルブミン」への本明細書における言及は、HSAに言及することを意図している。しかし、完全長HSAは、6アミノ酸(RGVFRR)のプロドメインが後に続く18アミノ酸(MKWVTFISLLFLFSSAYS)のシグナルペプチドを有することに注目され、この24アミノ酸残基のペプチドは、プレプロドメインと呼ばれることもある。組換えタンパク質コード配列内のHSAプレプロドメインを使用して、Affimer−HSA融合タンパク質を発現及び分泌させることができる。あるいは、上に記載されたものなどの、他の分泌シグナル配列を含めることによって、Affimer−HSA融合体を発現及び分泌させることができる。
代替実施形態において、Affimerポリペプチドとの融合タンパク質の一部として提供されるのではなく、血清アルブミンポリペプチドを、Affimer含有ポリペプチドと、主鎖アミド結合以外の結合によって共有結合でカップリングさせることができ、例えば、アルブミンポリペプチド及びAffimer含有ポリペプチドの各々のアミノ酸側鎖間の化学的コンジュゲーションによって架橋させうる。
(iii)アルブミン結合ドメイン
ある特定の実施形態において、Affimerポリペプチドは、血清結合部分を、Affimerポリペプチド配列との融合タンパク質(ポリペプチドの場合も)の一部として含むこともあり、又は連続ポリペプチド鎖の一部であるもの以外の部位を介して化学的にコンジュゲートされた部分として含むこともある。
ある特定の実施形態において、血清結合ポリペプチドは、アルブミン結合部分である。アルブミンは、複数の疎水性結合ポケットを含有し、様々な異なるリガンド、例えば脂肪酸及びステロイドの輸送体並びに異なる薬物の輸送体としての機能を天然に果たす。さらに、アルブミンの表面は、負に荷電しており、そのため高水溶性である。
用語「アルブミン結合部分」は、本明細書において使用される場合、アルブミンと結合することができる任意の化学基を指し、すなわち、アルブミン結合親和性を有する。アルブミンは、脂肪酸などの内因性リガンドと結合するが、ワルファリン、ペニシリン及びジアゼパムなどの、外因性リガンドとも相互作用する。これらの薬物のアルブミンとの結合は可逆的であるので、アルブミン−薬物複合体は、薬物の生体内分布及びバイオアベイラビリティを向上させることができる薬物リザーバーとしての役割を果たす。脂肪酸などの内因性アルブミン結合リガンドを模倣する構成成分の組込みは、アルブミン会合を増強するために及び薬物有効性を増大させるために使用されている。
ある特定の実施形態において、タンパク質半減期を延長するために対象Affimerポリペプチドの生成の際に適用することができる化学的修飾方法は、脂肪酸をペプチド側鎖と共有結合させることを含む脂質化である。元々はインスリンの半減期を延長する方法として考案され、開発された脂質化は、半減期延長についてPEG化と同じ基本メカニズム、すなわち、流体力学的半径を増加させて腎臓濾過を低減させるメカニズムを共有する。しかし、脂質部分自体が比較的小さく、効果は、脂質部分の循環アルブミンへの非共有結合によって間接的に媒介される。脂質化の1つの意義は、脂質化はペプチドの水溶性を低減させるが、ペプチドと脂肪酸との間のリンカーを改変することで、例えば、リンカー内でのグルタミン酸又はミニPEGの使用により、これをモジュレートすることができることである。リンカー改変及び脂質部分の変更は、アルブミンとは無関係に生体内分布を緩徐化することにより半減期延長に寄与しうる自己凝集に影響を与えることができる。例えば、Jonassen et al. (2012) Pharm Res. 29(8):2104-14を参照されたい。
ある特定のAffimerポリペプチドの生成における使用のためのアルブミン結合部分の他の例としては、アルブミン結合(PKE2)アドネクチン(国際公開第2011140086号パンフレット"Serum Albumin Binding Molecules"、国際公開第2015143199号パンフレット"Serum albumin-binding Fibronectin Type III Domains"及び国際公開第2017053617号パンフレット"Fast-off rate serum albumin binding fibronectin type iii domains"を参照されたい)、連鎖球菌属(Streptococcus)株G148のプロテインGのアルブミン結合ドメイン3(ABD3:albumin binding domain 3)、及びATN−103の(オゾラリズマブ)のアルブミン結合ドメイン抗体(「AlbudAb:albumin binding domain antibody)GSK2374697又はアルブミン結合ナノボディ部分が挙げられる。
(iv)PEG化、XTEN、PAS及び他のポリマー
多種多様な高分子ポリマー及び他の分子を、本開示のAffimer含有ポリペプチドに連結させて、得られたAffimerポリペプチドの生物学的特性をモジュレートすること及び/又はAffimerポリペプチドに新たな生物学的特性を与えることができる。これらの高分子ポリマーは、天然にコードされているアミノ酸を介して、天然にコードされていないアミノ酸、又は天然若しくは非天然アミノ酸の任意の官能性置換基、又は天然若しくは非天然アミノ酸に付加された任意の置換基若しくは官能基を介して、Affimer含有ポリペプチドに連結させることができる。ポリマーの分子量は、約100Da〜約100,000Daの間又はそれを超えるDaを含むがこれらに限定されない、広範なものでありうる。ポリマーの分子量は、100,000Da、95,000Da、90,000Da、85,000Da、80,000Da、75,000Da、70,000Da、65,000Da、60,000Da、55,000Da、50,000Da、45,000Da、40,000Da、35,000Da、30,000Da、25,000Da、20,000Da、15,000Da、10,000Da、9,000Da、8,000Da、7,000Da、6,000Da、5,000Da、4,000Da、3,000Da、2,000Da、1,000Da、900Da、800Da、700Da、600Da、500Da、400Da、300Da、200Da、及び100Daを含むがこれらに限定されない、約100Da〜約100,000Daの間でありうる。一部の実施形態において、ポリマーの分子量は、約100Da〜約50,000Daの間である。一部の実施形態において、ポリマーの分子量は、約100Da〜約40,000Daの間である。一部の実施形態において、ポリマーの分子量は、約1,000〜約40,000Daの間である。一部の実施形態において、ポリマーの分子量は、約5,000〜約40,000Daの間である。一部の実施形態において、ポリマーの分子量は、約10,000〜約40,000Daの間である。
このために、PEG化、ポリシアル化、HES化、グリコシル化、又はフレキシブルな親水性アミノ酸鎖(500〜600アミノ酸)に融合された組換えPEGアナログを含む、様々な方法が、開発されている(Chapman, (2002) Adv Drug Deliv Rev. 54. 531-545; Schlapschy et al., (2007) Prot Eng Des Sel. 20, 273-283; Contermann (2011) Curr Op Biotechnol. 22, 868-876; Jevsevar et al., (2012) Methods Mol Biol. 901, 233-246を参照されたい)。
ポリマーの例としては、ポリアルキルエーテル及びアルコキシでキャップされたそのアナログ(例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレン/プロピレングリコール、及びメトキシ又はエトキシでキャップされたそのアナログ、特に、ポリオキシエチレングリコール、後者は、ポリエチレングリコール又はPEGとしても公知である);離散PEG(dPEG:discrete PEG);ポリビニルピロリドン;ポリビニルアルキルエーテル;ポリオキサゾリン、ポリアルキルオキサゾリン及びポリヒドロキシアルキルオキサゾリン;ポリアクリルアミド、ポリアルキルアクリルアミド、及びポリヒドロキシアルキルアクリルアミド(例えば、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド及びその誘導体);ポリヒドロキシアルキルアクリレート;ポリシアル酸及びそのアナログ;親水性ペプチド配列;多糖類及びそれらの誘導体(デキストラン及びデキストラン誘導体、例えば、カルボキシメチルデキストラン、硫酸デキストラン、アミノデキストランを含む);セルロース及びその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース;キチン及びその誘導体、例えば、キトサン、スクシニルキトサン、カルボキシメチルキチン、カルボキシメチルキトサン;ヒアルロン酸及びその誘導体;デンプン;アルギン酸塩;硫酸コンドロイチン;アルブミン;プルラン及びカルボキシメチルプルラン;ポリアミノ酸及びそれらの誘導体、例えば、ポリグルタミン酸、ポリリジン、ポリアスパラギン酸、ポリアスパルタミド;無水マレイン酸コポリマー、例えば、スチレン・無水マレイン酸コポリマー、ジビニルエチルエーテル・無水マレイン酸コポリマー;ポリビニルアルコール;これらのコポリマー;これらのターポリマー;これらの混合物;並びに前述のものの誘導体が挙げられるが、それらに限定されない。
選択されるポリマーは、それが結合されるAffimerポリペプチドが、生理的環境などの水性環境で沈殿しないように、水溶性でありうる。水溶性ポリマーは、直鎖状、フォーク型又は分岐状を含むがこれらに限定されない、任意の構造形態であってよい。典型的には、水溶性ポリマーは、ポリ(アルキレングリコール)、例えば、ポリ(エチレングリコール)(PEG)であるが、他の水溶性ポリマーも用いることができる。例として、PEGは、本開示のある特定の実施形態を説明するために使用される。Affimerポリペプチドの治療使用のために、ポリマーは、薬学的に許容されるものでありうる。
用語「PEG」は、PEGのサイズにも末端における修飾にも関係なく、あらゆるポリエチレングリコール分子を包含するように広く使用され、Affimer含有ポリペプチドに連結されている場合、式:
XO−(CHCHO)−CHCH
又は
XO−(CHCHO)
(式中、nは、2〜10,000であり、Xは、H又は末端修飾であり、C1−4アルキル、保護基若しくは末端官能基を含むがこれらに限定されない)によって表されうる。一部の場合には、本開示のポリペプチドに使用されるPEGは、一端がヒドロキシ又はメトキシで終わり、すなわち、Xが、H又はCH3(「メトキシPEG」)である。
上の式中に末端「−」により示されているPEGの他端は、Affimer含有ポリペプチドに、天然に存在するアミノ酸を介して結合していることもあり、又は天然にコードされていないアミノ酸を介して結合していることもある。例えば、結合は、アミド、カルバミン酸又は尿素結合によるポリペプチドのアミン基(リジンのイプシロンアミン、又はN末端を含むが、これに限定されない)への結合でありうる。あるいは、ポリマーは、チオール基(システインのチオール基を含むが、これに限定されない)にマレイミド結合により連結される、つまり、これは、Affimerポリペプチド配列自体への結合の場合、Affimer配列中の残基のシステインへの変更を必要とする。
Affimer含有ポリペプチドに連結された水溶性ポリマーの数(すなわち、PEG化又はグリコシル化の程度)を、得られたAffimerポリペプチドにおけるインビボ半減期などの、薬理学的、薬物動態学的又は薬力学的特性の変化(増加又は減少を含むが、これらに限定されない)をもたらすように調整することができる。一部の実施形態において、得られたAffimerポリペプチドの半減期は、未修飾ポリペプチドと比較して、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90パーセント、2倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、50倍、又は少なくとも約100倍延長される。
得られたAffimerポリペプチドのPK又は他の生物学的特性を修飾するのに有用なポリマー系の別の変形形態は、PEGの機能性アナログである不定形親水性アミノ酸ポリマーの、特に、Affimerポリペプチド配列との融合体の一部としての使用である。ポリペプチドプラットフォームの固有の生分解性が、それを、潜在的により良好なPEG代替物として魅力的なものにする。別の利点は、PEGの多分散性とは対照的な組換え分子のより正確な分子構造である。融合パートナーの三次元フォールディングを維持する必要がある、HSA及びFcペプチド融合体とは異なり、不定形パートナーとの組換え融合体は、多くの場合、より高温又はより厳しい条件、例えばHPLC精製に付すことができる。
このクラスのポリペプチドのより進んだものは、XTEN(Amunix社製)と呼ばれ、864アミノ酸長であり、6種のアミノ酸(A、E、G、P、S及びT)から構成される。Schellenberger et al. “A recombinant polypeptide extends the in vivo half-life of peptides and proteins in a tuneable manner” 2009 Nat Biotechnol. 27(12):1186-90を参照されたい。ポリマーの生分解性の性質によって可能になるこれは、通常使用される40kDa PEGよりはるかに大きく、付随してより大幅な半減期延長をもたらす。XTENのAffimer含有ポリペプチドへの融合は、未修飾ペプチドと比較して最終Affimerポリペプチドの半減期を60倍〜130倍延長する結果となるはずである。
類似の概念的考察に基づく第2のポリマーは、PAS(XL-Protein有限会社)である。Schlapschy et al. “PASYlation: a biological alternative to PEGylation for extending the plasma half-life of pharmaceutically active proteins” 2013 Protein Eng Des Sel. 26(8):489-501。ランダムコイルポリマーは、3種の小さい非荷電アミノ酸、プロリン、アラニン及びセリンのみの、よりいっそう限定されたセットから構成される。Fc、HAS及びXTENと同様に、PAS修飾を、発現された場合にインライン融合タンパク質を産生するように、Affimerポリペプチド配列を用いて遺伝子にコードすることができる。
b.多重特異性融合タンパク質
ある特定の実施形態において、Affimerポリペプチドは、例えば、第1の標的と結合する第1のAffimerポリペプチドと、第1の標的とは異なる第2の標的と結合する少なくとも1つの追加の結合ドメイン(完全に異なる分子であることもあり(二重特異性)、又は同じ部位に同じ分子タイプがあることもあり(多価)、又は異なる部位にだが同じ分子があることもある(バイパラトピック又はマルチパラトピック(biparatopic or multiparatopic)))とを含む多重特性及び/又は多価ポリペプチドである。追加の結合ドメインは、ポリペプチド配列でありえ、このポリペプチド配列は、説明のために、第2のAffimerポリペプチド配列(これは、第1のAffimerポリペプチド配列と同じであってもよく、異なってもよい)、抗体若しくはその断片又は他の抗原結合ポリペプチド、受容体のリガンド結合部分(例えば、受容体トラップポリペプチド)、受容体結合リガンド(例えば、サイトカイン、増殖因子若しくはこれらに類するもの)、改変T細胞受容体、酵素若しくはその触媒性断片、又は何らかの__を付与する他のポリペプチド配列の中から選択される。
ある特定の実施形態において、Affimerポリペプチドは、抗体からの1つ又は2つ以上の抗原結合部位を含む。得られtaAffimerポリペプチドは、Affimer配列も、抗体抗原結合部位についての配列も含む(例えば、scFVの場合)、単鎖であることができ、又はAffimerの配列も融合している重鎖及び/若しくは軽鎖で組み立てられた抗体におけるものなどの、多量体タンパク質複合体であることができる。
完全長免疫グロブリンを含む多重特異性Affimerポリペプチドに関する一部の実施形態において、Affimerポリペプチド配列の抗体への融合は、免疫グロブリンのFc領域のFc機能を妨げることになる。例えば、ある特定の実施形態において、Affimerポリペプチドは、Fc部分を介して、Fc受容体陽性細胞のFc受容体と結合することができるであろう。一部のさらなる実施形態において、Affimerポリペプチドは、Fc受容体陽性細胞との結合によりFc受容体陽性細胞を活性化し、それによって、サイトカイン及び/又は共刺激抗原の発現を開始又は増加させることができる。さらに、Affimerポリペプチドは、T細胞の生理的活性化に必要な少なくとも第2の活性化シグナルを共刺激抗原及び/又はサイトカインによってT細胞に移入することができる。
一部の実施形態において、免疫細胞、肝細胞及び内皮細胞などの、免疫系からのエフェクター細胞の表面に存在するFc受容体を発現する他の細胞とのFc部分の結合に起因して、Affimerポリペプチドは、免疫系のエフェクター細胞が、その膜表面抗原に抗体が結合している標的細胞を能動的に溶解する、細胞介在性免疫防御メカニズムである、抗体依存性細胞毒性(ADCC:antibody-dependent cellular cytotoxicity)機能を有することができ、したがって、ADCCによって腫瘍細胞死を誘発することができる。一部のさらなる実施形態において、Affimerポリペプチドは、ADCC機能を明示することができる。
上に記載したような、Fc介在性細胞毒性のほかに、Fc融合体は、体内でのその安定性及び存続性にとって必要不可欠である、Affimerポリペプチドの血清レベルの維持に寄与することができる。例えば、Fc部分が内皮細胞上及び貪食細胞上のFc受容体と結合すると、Affimerポリペプチドは、内在化され、再循環されて血流に戻って、体内でのその半減期を向上させることができる。
追加のAffimerポリペプチドの例示的標的としては、単に説明するために、別の免疫チェックポイントタンパク質、及び免疫共刺激受容体(特に、追加のAffimerが共刺激受容体を認識する場合)、受容体、サイトカイン、増殖因子、又は腫瘍関連抗原が挙げられるが、これらに限定されない。
c.コンジュゲート
対象Affimerポリペプチドは、検出可能性又は追加の薬理活性をAffimerポリペプチドに付与することを意図した1つ又は2つ以上の機能性部分も含むことができる。検出のための機能性部分は、Affimerポリペプチドと細胞又は組織(例えば、腫瘍細胞)の会合をインビボで検出するために用いることができるものである。薬理活性を有する機能性部分は、Affimerポリペプチドの標的を発現する組織に送達されること、及びそうすることで標的組織又は細胞に薬理学的な影響を与えることが意図されている、薬剤である。
本開示は、多種多様な官能基、置換基又は部分を有する物質と機能性部分のコンジュゲートを含むAffimerポリペプチドであって、これらの機能性部分が、標識;色素;免疫接着分子;放射性核種;細胞毒性化合物;薬物;親和性標識;光親和性標識;反応性化合物;樹脂;第2のタンパク質若しくはポリペプチド若しくはポリペプチドアナログ;抗体若しくは抗体断片;金属キレート剤;補因子;脂肪酸;炭水化物;ポリヌクレオチド;DNA;RNA;アンチセンスポリヌクレオチド;糖類;水溶性デンドリマー;シクロデキストリン;阻害性リボ核酸;生体材料;ナノ粒子;スピン標識;フルオロフォア、金属含有部分;放射性部分;新規官能基;他の分子と共有結合的に若しくは非共有結合的に相互作用する基;光ケージされた部分;化学線励起性部分;光異性体化性部分;ビオチン;ビオチンの誘導体;ビオチンアナログ;重原子を組み込んだ部分;化学的に切断可能な基;光切断性の基;伸長された側鎖;炭素連結糖;酸化還元活性薬剤;アミノチオ酸;毒性部分;同位体標識された部分;生物物理学的プローブ;リン光基;化学発光基;電子密度の高い基;磁性基;挿入基;クロモフォア;エネルギー移動剤;生物学的に活性な薬剤;検出可能な標識;小分子;量子ドット;ナノ伝達物質(nanotransmitter);放射性ヌクレオチド;放射性伝達物質(radiotransmitter);中性子捕獲剤;又は上記のものの任意の組合せ;又は任意の他の望ましい化合物若しくは物質を含むがこれらに限定されない、Affimerポリペプチドを提供する。
(i)標識及び検出可能な部分
部分が検出可能な標識である場合、それは、蛍光標識、放射性標識、酵素的標識、又は当業者に公知の任意の他の標識でありうる。ある特定の実施形態において、機能性部分は、医用イメージングに適するある特定のAffimerポリペプチドを形成するためにコンジュゲートの一部として含めることができる、検出可能な標識である。「医用イメージング」とは、診断、研究又は治療的処置を目的として、ヒト又は動物の体の内部領域を可視化するために使用される任意の手法を意味する。例えば、Affimerポリペプチドを、ラジオシンチグラフィー、磁気共鳴画像法(MRI:magnetic resonance imaging)、コンピュータ断層撮影(CT:computed tomography)(CTスキャン)、核イメージング、金属を含む陽電子放出断層撮影(PET:positron emission tomography)造影剤、光学イメージング(例えば、近赤外蛍光(NIRF:near-infrared fluorescence)イメージングを含む蛍光イメージング)、生物発光イメージング、又はこれらの組合せによって、検出(及び定量)することができる。機能性部分は、X線イメージング用の造影剤であってもよい。そのような手法を向上させるのに有用な薬剤は、体内の特定の位置、器官若しくは疾患部位の可視化を可能にする、及び/又はイメージング手法により生成される画像の質の何らかの改善に至って、これらの画像の改善された、より容易な解釈をもたらす、物質である。そのような薬剤は、本明細書において造影剤と呼ばれ、その使用は、画像の異なる領域間の「対比」を増大させることにより、画像の異なる部分の識別を助長する。したがって、用語「造影剤」は、そのような薬剤の非存在下で(例えば、MRIの場合のように)生成されることもあるとはいえ、画像の質を向上させるために使用される薬剤、及び画像の生成に(例えば、核イメージングの場合のように)前もって必要な薬剤を包含する。
ある特定の好ましい実施形態において、検出可能な標識は、金属をキレート化するためのキレート部分、例えば、放射性金属又は常磁性イオン用のキレート剤を含む。ある特定の好ましい実施形態において、検出可能な標識は、放射線療法又はイメージング手順に有用な放射性核種用のキレート剤である。本発明の中で有用な放射性核種は、ガンマ放射体、陽電子放射体、オージェ電子放射体、X線放射体及び蛍光放射体を、治療使用に好ましいベータ又はアルファ放射体とともに含む。放射線療法において毒素として有用な放射性核種の例としては、43K、47Sc、51Cr、57Co、58Co、59Fe、64Cu、67Ga、67Cu、68Ga、71Ge、75Br、76Br、77Br、77As、81Rb、90Y、97Ru、99mTc、100Pd、101Rh、103Pb、105Rh、109Pd、111Ag、111In、113In、119Sb、121Sn、123I、125I、127Cs、128Ba、129Cs、131I、131Cs、143Pr、153Sm、161Tb、166Ho、169Eu、177Lu、186Re、188Re、189Re、191Os、193Pt、194Ir、197Hg、199Au、203Pb、211At、212Pb、212Bi及び213Biが挙げられる。キレート剤が金属に配位する条件は、例えば、Gansowらにより、米国特許第4,831,175号明細書、同第4,454,106号明細書及び同第4,472,509号明細書に記載されている。キレート剤の例としては、単に説明するために、1,4,7−トリアザシクロノナン−N,N’、N"−三酢酸(NOTA)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N’’’−四酢酸(DOTA)、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−N,N’,N",N’’’−四酢酸(TETA)が挙げられる。
Affimerポリペプチドのアミノ酸残基に直接組み込むことができるか、そうでなければキレート剤を必要としない、他の検出可能な同位体としては、3H、14C、32P、35S及び36Clが挙げられる。
診断手順に有用な常磁性イオンも投与することができる。常磁性イオンの例としては、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、エルビウム(III)、又はこれらの常磁性イオンの組合せが挙げられる。
蛍光標識の例としては、有機色素(例えば、シアニン、フルオレセイン、ローダミン、Alexa Fluor、Dylight fluor、ATTO Dye、BODIPY色素など)、生物学的フルオロフォア(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP:green fluorescent protein)、R−フィコエリトリンなど)、及び量子ドットが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明において使用することができる非限定的蛍光化合物としては、Cy5、Cy5.5(Cy5++としても公知)、Cy2、フルオレセインイソチオシアネート(FITC:fluorescein isothiocyanate)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC:tetramethylrhodamine isothiocyanate)、フィコエリトリン、Cy7、フルオレセイン(FAM)、Cy3、Cy3.5(CY3++としても公知)、Texas Red、LightCycler−Red 640、LightCycler Red 705、テトラメチルローダミン(TMR:tetramethylrhodamine)、ローダミン、ローダミン誘導体(ROX:rhodamine derivative)、ヘキサクロロフルオレセイン(HEX:hexachlorofluorescein)、ローダミン6G(R6G:rhodamine 6G)、ローダミン誘導体JA133、Alexa蛍光色素(例えば、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 555、及びAlexa Fluor 647)、4’、6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI:4′,6-diamidino-2-phenylindole)、ヨウ化プロピジウム、AMCA、Spectrum Green、Spectrum Orange、Spectrum Aqua、リサミン、及び蛍光遷移金属錯体、例えばユーロピウムが挙げられる。使用することができる蛍光化合物としては、蛍光タンパク質、例えば、GFP(緑色蛍光タンパク質)、増強GFP(EGFP:enhanced GFP)、青色蛍光タンパク質及び誘導体(BFP、EBFP、EBFP2、Azurite、mKalama1)、シアン蛍光タンパク質及び誘導体(CFP、ECFP、Cerulean、CyPet)並びに黄色蛍光タンパク質及び誘導体(YFP、Citrine、Venus、YPet)も挙げられる。国際公開第2008142571号パンフレット、国際公開第2009056282号パンフレット、国際公開第9922026号パンフレット。
酵素的標識の例としては、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP:horseradish peroxidase)、アルカリホスファターゼ(AP:alkaline phosphatase)、グルコースオキシダーゼ及び_−ガラクトシダーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
別の周知の標識は、ビオチンである。ビオチン標識は、ビオチニル基と、スペーサーアームと、タンパク質上の標的官能基への結合に関与する反応性基とで、通常は構成されている。ビオチンは、標識されたタンパク質を、アビジン部分を含む他の部分に結合させるのに有用でありうる。
(ii)Affimer−薬物コンジュゲート
ある特定の実施形態において、Affimerポリペプチドは、例えば、Affimer−薬物コンジュゲートを形成するために、1つ又は2つ以上の治療剤を含む。本明細書において使用される場合、用語「治療剤」は、ヒト又は別の動物における疾患の治癒、緩和、治療又は予防に使用することができる物質を指す。そのような治療剤は、公式米国薬局方、公式米国ホメオパシー薬局方、公式国民医薬品集、又はその任意の補遺編で認知されている物質を含み、これらに限定されないが、小分子、ヌクレオチド、オリゴペプチド、ポリペプチドなどを含む。Affimer含有ポリペプチドに結合させることができる治療剤としては、細胞毒剤、代謝拮抗薬、アルキル化剤、抗生物質、増殖因子、サイトカイン、抗血管新生剤、抗有糸分裂剤、毒素、アポトーシス剤又はこれらに類するもの、例えば、例示として、DNAアルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、小胞体ストレス誘導剤、白金化合物、代謝拮抗薬、ビンカアルカロイド、タキサン、エポチロン、酵素阻害剤、受容体アンタゴニスト、治療用抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、放射線増感剤、及び化学療法併用治療薬が挙げられるが、これらに限定されない。
DNAアルキル化剤の非限定的な例は、ナイトロジェンマスタード、例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド(イホスファミド、トロホスファミド)、クロラムブシル(メルファラン、プレドニムスチン)、ベンダムスチン、ウラムスチン及びエストラムスチン;ニトロソウレア、例えば、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(セムスチン)、ホテムスチン、ニムスチン、ラニムスチン及びストレプトゾシン;アルキルスルホン酸、例えば、ブスルファン(マンノスルファン、トレオスルファン);アジリジン、例えば、カルボコン、チオTEPA、トリアジコン、トリエチレンメラミン;ヒドラジン(プロカルバジン);トリアゼン、例えば、ダカルバジン及びテモゾロミド;アルトレタミン並びにミトブロニトールである。
トポイソメラーゼI阻害剤の非限定的な例としては、Pommier Y. (2006) Nat. Rev. Cancer 6(10):789-802及び米国特許出願公開第200510250854号明細書に記載されているような、CPT−11(イリノテカン)、SN−38、APC、NPC、カンプトテシン、トポテカン、メシル酸エキサテカン、9−ニトロカンプトテシン、9−アミノカンプトテシン、ルートテカン、ルビデカン、シラテカン、ギマテカン、ジフロモテカン、エクスタテカン(extatecan)、BN−80927、DX−8951f、及びMAG−CPTを含む、カンプトテシン誘導体;Li et al.(2000) Biochemistry 39(24):7107-7116及びGatto et al. (1996) Cancer Res. 15(12):2795-2800に記載されているような、ベルベルビン及びコラリンを含む、プロトベルベリンアルカロイド及びそれらの誘導体;Makhey et al. (2003) Bioorg. Med.Chem. 11 (8): 1809-1820に記載されているような、ベンゾ[i]フェナントリジン、ニチジン及びファガロニンを含む、フェナントロリン誘導体;Xu (1998) Biochemistry 37(10):3558-3566に記載されているような、テルベンズイミダゾール及びその誘導体;並びにFoglesong et al. (1992) Cancer Chemother. Pharmacol. 30(2):123-]25、Crow et al. (1994) J. Med. Chem.37(19):31913194、及びCrespi et al.(1986) Biochem.Biophys.Res. Commun. 136(2):521-8に記載されているような、ドキソルビシン、ダウノルビシン及びミトキサントロンを含む、アントラサイクリン誘導体が挙げられる。トポイソメラーゼII阻害剤としては、エトポシド及びテニポシドが挙げられるが、これらに限定されない。二重トポイソメラーゼI及びII阻害剤としては、Denny and Baguley (2003) Curr. Top. Med. Chem. 3(3):339-353に記載されているような、サイントピン及び他のナフタセンジオン、DACA及び他のアクリジン−4−カルボキサミド、イントプリシン及び他のベンゾピリドインドール、TAS−103及び他の7H−インデノ[2,1−c]キノリン−7−オン、ピラゾロアクリジン、XR11576及び他のベンゾフェナジン、XR5944及び他の二量体化合物、7−オキソ−7H−ジベンズ[f,ij]イソキノリン及び7−オキソ−7H−ベンゾ[e]ピリミジン、並びにアントラセニル−アミノ酸コンジュゲートが挙げられるが、これらに限定されない。これらに限定されないが、アントラサイクリン(アクラルビシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、アムルビシン、ピラルビシン、バルルビシン、ゾルビシン)及びアントラセンジオン(ミトキサントロン及びピクサントロン)などの、一部の薬剤は、トポイソメラーゼIIを阻害し、DNA挿入活性を有する。
小胞体ストレス誘導剤の例としては、ジメチルセレコキシブ(DMC:dimethyl-celecoxib)、ネルフィナビル、セレコキシブ、及びホウ素放射線増感剤(すなわち、ベルケイド(ボルテゾミブ))が挙げられるが、これらに限定されない。
白金系化合物の非限定的な例としては、カルボプラチン、シスプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、四硝酸トリプラチン、サトラプラチン、アロプラチン、ロバプラチン及びJM−216が挙げられる(McKeage et al. (1997) J. Clin. Oncol.201:1232-1237、及び一般に、CHEMOTHERAPY FOR GYNECOLOGICAL NEOPLASM, CURRENT THERAPY AND NOVEL APPROACHES, in the Series Basic and Clinical Oncology, Angioli et al.Eds., 2004を参照されたい)。
代謝拮抗剤の非限定的な例としては、葉酸に基づくもの、すなわち、ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤、例えば、アミノプテリン、メトトレキサート及びペメトレキセド;チミジル酸シンターゼ阻害剤、例えば、ラルチトレキセド、ペメトレキセド;プリンに基づくもの、すなわち、アデノシンデアミナーゼ阻害剤、例えばペントスタチン、チオプリン、例えばチオグアニン及びメルカプトプリン、ハロゲン化/リボヌクレオチドレダクターゼ阻害剤、例えばクラドリビン、クロファラビン、フルダラビン、若しくはグアニン/グアノシン:チオプリン、例えばチオグアニン;又はピリミジンに基づくもの、すなわち、シトシン/シチジン:低メチル化剤、例えばアザシチジン及びデシタビン、DNAポリメラーゼ阻害剤、例えばシタラビン、リボヌクレオチドレダクターゼ阻害剤、例えばゲムシタビン、若しくはチミン/チミジン:チミジル酸シンターゼ阻害剤、例えばフルオロウラシル(5−FU)が挙げられる。5−FUの等価物としては、例えばPapamicheal (1999) The Oncologist 4:478-487に記載されているような、そのプロドラッグ、アナログ及び誘導体、例えば、5’−デオキシ−5−フルオロウリジン(ドキシフルリジン)、1−テトラヒドロフラニル−5−フルオロウラシル(フトルフル)、カペシタビン(ゼローダ)、S−I(MBMS−247616、これは、テガフールと2つのモジュレーター、5−クロロ−2,4−ジヒドロピリジン及びオキソン酸カリウムからなる)、ラルチトレキセド(トムデックス)、ノラトレキセド(チミタク、AG337)、LY231514及びZD9331が挙げられる。
ビンカアルカロイドの例としては、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンフルニン、ビンデシン及びビノレルビンが挙げられるが、これらに限定されない。
タキサンの例としては、ドセタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、パクリタキセル及びテセタキセルが挙げられるが、これらに限定されない。エポチロンの一例は、イクサベピロンである。
酵素阻害剤の例としては、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(チピファルニブ);CDK阻害剤(アルボシジブ、セリシクリブ);プロテアソーム阻害剤(ボルテゾミブ);ホスホジエステラーゼ阻害剤(アナグレリド;ロリプラム);IMPデヒドロゲナーゼ阻害剤(チアゾフリン);及びリポキシゲナーゼ阻害剤(マソプロコール)が挙げられるが、これらに限定されない。受容体アンタゴニストの例としては、ERA(アトラセンタン);レチノイドX受容体(ベキサロテン);及び性ステロイド(テストラクトン)が挙げられるが、これらに限定されない。
治療用抗体の例としては、抗HER1/EGFR抗体(セツキシマブ、パニツムマブ)、抗HER2/neu(erbB2)受容体(トラスツズマブ);抗EpCAM抗体(カツマキソマブ、エドレコロマブ);抗VEGF−A抗体(ベバシズマブ);抗CD20抗体(リツキシマブ、トシツモマブ、イブリツモマブ);抗CD52抗体(アレムツズマブ);及び抗CD33抗体(ゲムツズマブ)が挙げられるが、これらに限定されない。米国特許第5,776,427号明細書及び同第7,601,355号明細書。
チロシンキナーゼ阻害剤の例としては、ErbB:HER1/EGFR(エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、バンデタニブ、スニチニブ、ネラチニブ);HER2/neu(ラパチニブ、ネラチニブ);RTKクラスIII:C−kit(アキシチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ)、FLT3(レスタウルチニブ)、PDGFR(アキシチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ);及びVEGFR(バンデタニブ、セマキサニブ、セジラニブ、アキシチニブ、ソラフェニブ);bcr−abl(イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ);Src(ボスチニブ)及びヤヌスキナーゼ2(レスタウルチニブ)に対する阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。
本Affimer含有ポリペプチドに結合させることができる化学療法剤としては、アムサクリン、トラベクテジン、レチノイド(アリトレチノイン、トレチノイン)、三酸化二ヒ素、アスパラギン枯渇剤(アスパラギナーゼ/ペグアスパルガーゼ)、セレコキシブ、デメコルシン、エレクスロモル、エルサミトルシン、エトグルシド、ロニダミン、ルカントン、ミトグアゾン、ミトタン、オブリメルセン、テムシロリムス、及びボリノスタットも挙げることができる。
本発明のAffimer含有ポリペプチドと連結、ライゲーション又は会合させることができる特定の治療剤の例は、フロモキセフ;ホルチミシン;ゲンタマイシン;グルコスルホン;ソラスルホン;グラミシジンS;グラミシジン;グレパフロキサシン;グアメサイクリン(guamecycline);ヘタシリン;イセパマイシン;ジョサマイシン;カナマイシン;フロモキセフ;ホルチミシン;ゲンタマイシン;グルコスルホン;ソラスルホン;グラミシジンS;グラミシジン;グレパフロキサシン;グアメサイクリン;ヘタシリン;イセパマイシン;ジョサマイシン;カナマイシン;バシトラシン;バンベルマイシン;ビアペネム;ブロジモプリム;ブチロシン;カプレオマイシン;カルベニシリン;カルボマイシン;カルモナム;セファドロキシル;セファマンドール;セファトリジン;セフブペラゾン;セフクリジン;セフジニル;セフジトレン;セフェピム;セフェタメト;セフィキシム;セフメノキシム;セフミノクス;クラドリビン;アパルシリン;アピサイクリン;アプラマイシン;アルベカシン;アスポキシシリン;アジダムフェニコール;アズトレオナム;セフォジジム;セフォニシド;セフォペラゾン;セフォラニド;セフォタキシム;セフォテタン;セフォチアム;セフォゾプラン;セフピミゾール;セフピラミド;セフピロム;セフプロジル;セフロキサジン;セフテラム;セフチブテン;セフゾナム;セファレキシン;セファログリシン;セファロスポリンC;セフラジン;クロラムフェニコール;クロルテトラサイクリン;クリナフロキサシン;クリンダマイシン;クロモサイクリン;コリスチン;シクラシリン;ダプソン;デメクロサイクリン;ジアチモスルホン;ジベカシン;ジヒドロストレプトマイシン;6−メルカプトプリン;チオグアニン;カペシタビン;ドセタキセル;エトポシド;ゲムシタビン;トポテカン;ビノレルビン;ビンクリスチン;ビンブラスチン;テニポシド;メルファラン;メトトレキサート;2−p−スルファニルアニリノエタノール;4,4’−スルフィニルジアニリン;4−スルファニルアミドサリチル酸;ブトルファノール;ナルブフィン;ストレプトゾシン;ドキソルビシン;ダウノルビシン;プリカマイシン;イダルビシン;マイトマイシンC;ペントスタチン;ミトキサントロン;シタラビン;フルダラビンリン酸エステル;ブトルファノール;ナルブフィン;ストレプトゾシン;ドキソルビシン;ダウノルビシン;プリカマイシン;イダルビシン;マイトマイシンC;ペントスタチン;ミトキサントロン;シタラビン;フルダラビンリン酸エステル;アセジアスルホン;アセトスルホン;アミカシン;アンホテリシンB;アンピシリン;アトルバスタチン;エナラプリル;ラニチジン;シプロフロキサシン;プラバスタチン;クラリスロマイシン;シクロスポリン;ファモチジン;ロイプロリド;アシクロビル;パクリタキセル;アジスロマイシン;ラミブジン;ブデソニド;アルブテロール;インジナビル;メトホルミン;アレンドロネート;ニザチジン;ジドブジン;カルボプラチン;メトプロロール;アモキシシリン;ジクロフェナク;リシノプリル;セフトリアキソン;カプトプリル;サルメテロール;キシナホ酸塩;イミペネム;シラスタチン;ベナゼプリル;セファクロル;セフタジジム;モルヒネ;ドーパミン;ビアラミコール;フルバスタチン;フェナミジン;ポドフィリン酸2−エチルヒドラジン;アクリフラビン;クロロアゾジン;アルスフェナミン;アミカルビリド(amicarbilide);アミノキヌリド;キナプリル;オキシモルフォン;ブプレノルフィン;フロクスウリジン;ジリスロマイシン;ドキシサイクリン;エノキサシン;エンビオマイシン;エピシリン;エリスロマイシン;ロイコマイシン;リンコマイシン;ロメフロキサシン;ルセンソマイシン;リメサイクリン;メクロサイクリン;メロペネム;メタサイクリン;ミクロノマイシン;ミデカマイシン;ミノサイクリン;モキサラクタム;ムピロシン;ナジフロキサシン;ナタマイシン;ネオマイシン;ネチルマイシン;ノルフロキサシン;オレアンドマイシン;オキシテトラサイクリン;p−スルファニルベンジルアミン;パニペネム;パロモマイシン;パズフロキサシン;ペニシリンN;ピパサイクリン;ピペミド酸;ポリミキシン;プリマイシン;キナシリン;リボスタマイシン;リファミド;リファンピン;リファマイシンSV;リファペンチン;リファキシミン;リストセチン;リチペネム;ロキタマイシン;ロリテトラサイクリン;ロサラマイシン;ロキシスロマイシン;サラゾスルファジミジン;サンサイクリン;シソマイシン;スパルフロキサシン;スペクチノマイシン;スピラマイシン;ストレプトマイシン;サクシスルホン;スルファクリソイジン;スルファロクス酸;スルファミドクリソイジン;スルファニル酸;スルホキソン;テイコプラニン;テマフロキサシン;テモシリン;テトロキソプリム;チアンフェニコール;チアゾールスルホン;チオストレプトン;チカルシリン;チゲモナム;トブラマイシン;トスフロキサシン;トリメトプリム;トロスペクトマイシン;トロバフロキサシン;ツベラクチノマイシン;バンコマイシン;アザセリン;カンジシン;クロルフェネシン;デルモスタチン;フィリピン;ファンギクロミン;メパルトリシン;ニスタチン;オリゴマイシン;ペリマイシンA;ツベルシジン;6−アザウリジン;6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン;アクラシノマイシン;アンシタビン;アントラマイシン;アザシチジン;アザセリン;ブレオマイシン;ビスクマ酢酸エチル;エチリデンジクマロール;イロプロスト;ラミフィバン;タプロステン;チオクロマロール;チロフィバン;アミプリロース;ブシラミン;グルペリムス;ゲンチジン酸;グルカメタシン;サリチル酸グリコール;メクロフェナム酸;メフェナム酸;メサラミン;ニフルミン酸;オルサラジン;オキサセプロール;S−エノシルメチオニン(S-enosylmethionine);サリチル酸;サルサレート;スルファサラジン;トルフェナム酸;カルビシン;カルジノフィリンA;クロロゾトシン;クロモマイシン;デノプテリン;ドキシフルリジン;エダトレキサート;エフロルニチン;エリプチニウム;エノシタビン;エピルビシン;マンノムスチン;メノガリル;ミトブロニトール;ミトラクトール;モピダモール;ミコフェノール酸;ノガラマイシン;オリボマイシン;ペプロマイシン;ピラルビシン;ピリトレキシム;プレドニムスチン;プロカルバジン;プテロプテリン;ピューロマイシン;ラニムスチン;ストレプトニグリン;チアミプリン;ミコフェノール酸;プロコダゾール;ロムルチド;シロリムス(ラパマイシン);タクロリムス;ブテタミン;フェナルコミン;ヒドロキシテトラカイン;ネパイン;オルトカイン;ピリドカイン;サリチルアルコール;3−アミノ−4−ヒドロキシ酪酸;アセクロフェナク;アルミノプロフェン;アンフェナク;ブロムフェナク;ブロモサリゲニン;ブマジゾン;カルプロフェン;ジクロフェナク;ジフルニサル;ジタゾール;エンフェナム酸;エトドラク;エトフェナメート;フェンドサル;フェプラジノール;フルフェナム酸;トムデックス(N−[[5−[[(1,4−ジヒドロ−2−メチル−4−オキソ−6−キナゾリニル)メチル]メチルアミノ]−2−チエニル]カルボニル]−L−グルタミン酸)、トリメトレキサート、ツベルシジン、ウベニメクス、ビンデシン、ゾルビシン;アルガトロバン;クメタロール又はジクマロールである。
ある特定の実施形態において、Affimerポリペプチドは、コンジュゲートされた細胞毒性因子、例えば、ジフテリア毒素、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ−サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質及び化合物(例えば、脂肪酸)、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytoiacca americana)タンパク質PAPI、PAPII、及びPAP−S、ツルレイシ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ(saponaria officinalis)阻害剤、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン、及びエノマイシンを含む。
抗体及び他のタンパク質とコンジュゲートするための当技術分野において公知の任意の方法であって、Hunter, et al., (1962) Nature 144:945;David, et al., (1974) Biochemistry 13:1014; Pain, et al., (1981) J. Immunol.Meth.40:219;及びNygren, J., (1982) Histochem. and Cytochem.30:407によって記載された方法を含む方法が本発明のコンジュゲートの生成に用いられうる。ペプチド、ポリペプチド並びに有機及び無機部分を抗体及び他のタンパク質にコンジュゲートする方法は、従来的なものであり、当技術分野において周知であり、対象Affimerポリペプチドのそれらのバージョンの生成に容易に適応される。
コンジュゲートされる部分がペプチド又はポリペプチドである場合、その部分をAffimer含有ポリペプチドに化学的に架橋させることができ、又はAffimer含有ポリペプチドどの融合タンパク質の一部として含めることができる。そして例示的な例は、ジフテリア毒素−Affimer融合タンパク質であろう。非ペプチド実体の場合、Affimer含有ポリペプチドへの付加は、一般に、アフィマー含有ポリペプチドへの化学的コンジュゲーションによる(例えば、ポリペプチドのアミノ酸側鎖の官能基又はC末端のカルボキシル基又はN末端のアミノ基を介する)ことになる。ある特定の実施形態において、融合タンパク質としてであろうと、化学的に架橋された部分としてであろうと、コンジュゲートされた部分は、酵素により切断されうる1つ若しくは2つ以上の部位、又はそうでなければ、コンジュゲートされた部分をAffimer含有ポリペプチドから放出することを可能にする環境条件(例えば、pH)、例えば、腫瘍若しくは他の罹患組織(又はコンジュゲートされた部分が健常組織を保護するように機能する場合、保護されることになる組織)における環境条件に感受性である1つ又は2つ以上の部位を含むことになる。
III.発現方法及び系
本明細書に記載される組換えAffimer含有タンパク質は、当技術分野において公知の任意の適する方法により産生することができる。そのような方法は、直接タンパク質合成方法から、ポリペプチド配列をコードするDNA配列を構築し、それらの配列を適する宿主において発現させる方法までに及ぶ。化学的修飾又はコンジュゲーションなどの、さらなる修飾を含む、これらの組換えAffimerポリペプチドについては、組換えAffimerポリペプチドを、宿主細胞からの単離又は化学合成後に化学的に又は酵素的にさらに操作することができる。
本発明は、本発明の組換えAffimerポリペプチドの組換え発現のための組換え方法及び核酸であって(i)前記Affimerポリペプチドのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドであって、例えば、ベクター内にある及び/又はプロモーターに作動可能に連結されているポリヌクレオチドを、宿主細胞に導入するステップと、(ii)ポリヌクレオチドの発現に好適な条件下で宿主細胞(例えば、真核細胞又は原核細胞)を培養するステップと、(iii)宿主細胞から、及び/又は宿主細胞が増殖される培地から、Affimerポリペプチドを単離する任意のステップを含む、組換え方法及び核酸を含む。例えば、国際公開第04/041862号パンフレット、国際公開第2006/122786号パンフレット、国際公開第2008/020079号パンフレット、国際公開第2008/142164号パンフレット、又は国際公開第2009/068627号パンフレットを参照されたい。
一部の実施形態において、所望の組換えAffimerポリペプチドをコードするDNA配列は、オリゴヌクレオチド合成装置を使用して化学合成により構築することができる。所望のポリペプチドのアミノ酸配列と、所望の組換えポリペプチドが産生されることになる宿主細胞において有利であるこれらのコドンの選択とに基づいて、オリゴヌクレオチドを設計することができる。標準的な方法を適用して、所望の単離されたポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を合成することができる。例えば、完全アミノ酸配列を使用して、逆翻訳遺伝子を構築することができる。さらに、特定の単離されたポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含有するDNAオリゴマーを合成することができる。例えば、所望のポリペプチドの部分をコードする複数の小さいオリゴヌクレオチドを合成し、次いでライゲーションすることができる。個々のオリゴヌクレオチドは、相補的組立てのために5’又は3’オーバーハングを典型的に含有する。
本発明の組換えAffimerポリペプチドをコードする核酸配列が得られたら、組換えAffimerポリペプチドの産生用のベクターを、当技術分野において周知の手法を使用する組換えDNA技術により産生することができる。当業者に周知である方法を使用して、組換えAffimerポリペプチドコード配列と適切な転写及び翻訳制御シグナルとを含有する発現ベクターを構築することができる。これらの方法は、例えば、インビトロ組換えDNA手法、合成手法、及びインビボ遺伝子組換えを含む。(例えば、Sambrook et al, 1990, MOLECULAR CLONING, A LABORATORY MANUAL, 2d Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y. 及びAusubel et al. eds., 1998, CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons, NYに記載されている手法を参照されたい)。
組換えAffimerポリペプチドのヌクレオチド配列を含む発現ベクターを従来の手法(例えば、エレクトロポレーション、リポソームトランスフェクション、及びリン酸カルシウム沈殿法)によって宿主細胞に移入することができ、次いで、それらのトランスフェクトされた細胞は、本発明の組換えAffimerポリペプチドを産生するために従来の手法により培養される。特定の実施形態において、組換えAffimerポリペプチドの発現は、構成的、誘導性又は組織特異的プロモーターにより調節される。
発現ベクターは、複製起点、例えば、発現に使用される宿主細胞の種類に基づいて選択されうる複製起点を含むことがある。例として、プラスミドpBR322(製品番号303−3s、New England Biolabs社、Beverly、Mass.)からの複製起点は、ほとんどのグラム陰性菌に有用であり、その一方で、SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV:vesicular stomatitus virus)又はパピローマウイルス(例えば、HPV若しくはBPV)からの様々な起点は、哺乳動物細胞におけるベクターのクローニングに有用である。一般に、複製起点構成成分は、哺乳動物発現ベクターには必要とされない(例えば、SV40由来のものは、初期プロモーターを含有するため、使用されることが多い)。
ベクターは、1つ又は2つ以上の選択可能マーカー(selectable marker)遺伝子、例えば、選択培養培地において増殖する宿主細胞の製造及び増殖に必要なタンパク質をコードする遺伝的エレメントを含むこともある。典型的な選択マーカー遺伝子は、(a)抗生物質若しくは他の毒素、例えば、アンピシリン、テトラサイクリン若しくはカナマイシン、に対する耐性を原核生物宿主細胞に付与する、(b)細胞の栄養要求不全を補完する、又は(c)複合培地から入手できない必要不可欠な栄養素を補給するタンパク質をコードする。好ましい選択可能マーカーは、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、及びテトラサイクリン耐性遺伝子である。ネオマイシン耐性遺伝子も、原核生物及び真核生物宿主細胞における選択に使用することができる。他の選択遺伝子を使用して、発現される遺伝子を増幅することができる。増幅は、増殖に必要不可欠なタンパク質の産生に対するより大きな需要がある遺伝子が組換え細胞の連続する世代の染色体内でタンデムに反復されるプロセスである。哺乳動物細胞の選択可能マーカーの例としては、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR:dihydrofolate reductase)及びチミジンキナーゼが挙げられる。哺乳動物細胞形質転換体は、ベクター中に存在するマーカーによって形質転換体のみが唯一適応して生存する選択圧下に置かれる。選択圧は、培地中の選択剤の濃度をうまく変えられる条件下で形質転換細胞を培養することによりかけられ、それによって、選択遺伝子と組換えAffimerポリペプチドをコードするDNAとの両方が増幅されることになる。結果として、増加された量の組換えAffimerポリペプチドが、増幅されたDNAから合成される。
ベクターはまた、組換えAffimerポリペプチドのコード配列を含むmRNAに転写されることになる、1つ又は2つ以上のリボソーム結合部位を含むことがある。例えば、そのような部位は、シャイン・ダルガーノ配列(原核生物)又はコザック配列(真核生物)を特徴とする。このエレメントは、プロモーターの3’側、及び発現されるポリペプチドのコード配列の5’側に典型的に位置する。シャイン・ダルガーノ配列は、多様であるが、通常、ポリプリン(高いA−G含有量を有する)である。多くのシャイン・ダルガーノ配列が同定されており、それらの各々を、上述の方法を使用して容易に合成することができ、原核生物ベクターにおいて使用することができる。
発現ベクターは、宿主生物により認識され、組換えAffimerポリペプチドをコードする核酸分子に作動可能に連結されているプロモーターを、通常は含有するであろう。発現に使用される宿主細胞、及び所望される収率に依存して、ネイティブプロモーター又は異種プロモーターのどちらかが使用されうる。
原核生物宿主とともに使用するためのプロモーターは、ベータラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系;アルカリホスファターゼ;トリプトファン(trp:tryptophan)プロモーター系;並びにハイブリッドプロモーター、例えばtacプロモーターを含む。他の公知の細菌プロモーターも適している。それらの配列は公開されており、制限部位を供給するために所望に応じてリンカー又はアダプターを使用して、所望の核酸配列にそれらをライゲーションすることができる。
酵母宿主物とともに使用するためのプロモーターも、当技術分野において公知である。酵母エンハンサーは、酵母プロモーターとともに使用されると有利である。哺乳動物宿主細胞とともに使用するための適するプロモーターは、周知であり、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス2)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、及び最も好ましくはサルウイルス40(SV40:Simian Virus 40)などの、ウイルスのゲノムから得られるものを含む。他の適する哺乳動物プロモーターとしては、異種哺乳動物プロモーター、例えば、熱ショックプロモーター及びアクチンプロモーターが挙げられる。
本発明の選択的結合剤を発現させるために使用することができる追加のプロモーターとしては、SV40初期プロモーター領域(Bernoist and Chambon, Nature, 290:304-310, 1981);CMVプロモーター;ラウス肉腫ウイルスの3’の長い末端反復配列に含有されるプロモーター(Yamamoto et al. (1980), Cell 22: 787-97);ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner et al. (1981), Proc. Natl.Acad.Sci.U.S.A.78: 1444-5);メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinster et al, Nature, 296; 39-42, 1982);原核生物発現ベクター、例えばベータラクタマーゼプロモーター(Villa-Kamaroff, et al., Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A., 75; 3727-3731, 1978);又はtacプロモーター(DeBoer, et al. (1983), Proc. Natl.Acad.Sci. U.S.A., 80: 21-5)が挙げられるが、これらに限定されない。組織特異性を示し、トランスジェニック動物において利用されている、以下の動物転写制御領域も、興味深い:膵腺房細胞において活性であるエラスターゼI遺伝子制御領域(Swift et al.(1984), Cell 38: 639-46; Ornitz et al. (1986), Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 50: 399-409; MacDonald (1987), Hepatology 7: 425-515);膵ベータ細胞において活性であるインスリン遺伝子制御領域(Hanahan (1985), Nature 315: 115-22);リンパ系細胞において活性である免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedl et al. (1984), Cell 38; 647-58; Adames et al. (1985), Nature 318; 533-8; Alexander et al. (1987), Mol. Cell.Biol. 7: 1436-44);精巣、乳房、リンパ系及びマスト細胞において活性であるマウス乳がんウイルス制御領域(Leder et al.(1986), Cell 45: 485-95)、肝臓において活性であるアルブミン遺伝子制御領域(Pinkert et al. (1987), Genes and Devel. 1: 268-76);肝臓において活性であるアルファフェトプロテイン遺伝子制御領域(Krumlauf et al.(1985), Mol.Cell.Biol.5: 1639-48; Hammer et al. (1987), Science, 235: 53-8);肝臓において活性であるアルファ1−アンチトリプシン遺伝子制御領域(Kelsey et al. (1987), Genes and Devel. 1: 161-71);骨髄系細胞において活性であるベータグロビン遺伝子制御領域(Mogram et al., Nature, 315 338-340, 1985; Kollias et al. (1986), Cell 46: 89-94);脳内のオリゴデンドロサイト細胞において活性であるミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readhead et al. (1987), Cell, 48: 703-12);骨格筋において活性であるミオシン軽鎖−2遺伝子制御領域(Sani (1985), Nature, 314: 283-6);及び視床下部において活性である性腺刺激ホルモン放出ホルモン(gonadotropic releasing hormone)遺伝子制御領域(Mason et al. (1986), Science 234: 1372-8)。
エンハンサー配列をベクターに挿入して、真核生物宿主細胞における転写を増加させることができる。哺乳動物遺伝子から入手できる複数のエンハンサー配列(例えば、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、アルファフェトプロテイン及びインスリン)が、公知である。しかし、通常は、ウイルスからのエンハンサーが使用されることになる。SV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、ポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサーは、真核生物プロモーターの活性化の例示的増強エレメントである。
エンハンサーをベクターにポリペプチドコード領域の5’側の位置でスプライシングしてもよく、又は3’側の位置でスプライシングしてもよいが、エンハンサーは、通常はプロモーターから5’側の部位に位置する。
核酸を発現させるためのベクターは、細菌、昆虫及び哺乳動物宿主細胞と適合性であるものを含む。そのようなベクターとしては、とりわけ、pCRII、pCR3、及びpcDNA3.1(Invitrogen社、San Diego、Calif.)、pBSII(Stratagene Company社、La Jolla、Calif.)、pET15(Novagen社、Madison、Wis.)、pGEX(Pharmacia Biotech社、Piscataway、N.J.)、pEGFP−N2(Clontech社、Palo Alto、Calif.)、pETL(BlueBacII;Invitrogen社)、pDSR−アルファ(PCT公開番号国際公開第90/14363号パンフレット)及びpFastBacDual(Gibco/BRL社、Grand Island、N.Y.)が挙げられる。
追加の可能なベクターは、これらに限定されずにコスミド、プラスミド又は修飾ウイルスを含むが、ベクター系は、選択された宿主差細胞と適合性でなければならない。そのようなベクターとしては、プラスミド、例えば、Bluescript(登録商標)プラスミド誘導体(高コピー数ColElベースのファージミド、Stratagene Cloning Systems Inc社、La Jolla Calif.)、Taq増幅PCR産物のクローニング用に設計されたPCRクローニングプラスミド(例えば、TOPO(商標).TA Cloning(登録商標)キット、PCR2.1プラスミド誘導体、Invitrogen社、Carlsbad、Calif.)、及び哺乳動物、酵母又はウイルスベクター、例えば、バキュロウイルス発現系(pBacPAKプラスミド誘導体、Clontech社、Palo Alto、Calif.)が挙げられるが、これらに限定されない。組換え分子は、形質転換、トランスフェクション、感染、エレクトロポレーション又は他の公知の手法によって宿主細胞に導入することができる。
本明細書において開示される組換えAffimerポリペプチドの発現のための宿主としての哺乳動物細胞を含む、真核生物及び原核生物宿主細胞は、当技術分野において周知であり、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC:American Type Culture Collection)から入手できる多くの不死化細胞株を含む。これらは、とりわけ、チャイニーズハムスター卵巣(CHO:Chinese hamster ovary)細胞、NSO、SP2細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK:baby hamster kidney)細胞、サル腎臓細胞(COS:monkey kidney cells)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、A549細胞、3T3細胞、HEK−293細胞、及びいくつかの他の細胞株を含む。哺乳動物宿主細胞は、ヒト、マウス、ラット、イヌ、サル、ブタ、ヤギ、ウシ、ウマ及びハムスター細胞を含む。特に好ましい細胞株は、どの細胞株が高い発現レベルを有するのかを判定することによって選択される。使用することができる他の細胞株は、昆虫細胞株、例えばSf9細胞、両生類細胞、細菌細胞、植物細胞及び真菌細胞である。真菌細胞としては、例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・フィンランディカ(Pichia finlandica)、ピキア・トレハロフィラ(Pichia trehalophila)、ピキア・コクラマエ(Pichia koclamae)、ピキア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)、ピキア・ミニュータ(Pichia minuta)(オガタエア・ミニュータ(Ogataea minuta)、ピキア・リンドネリ(Pichia lindneri))、ピキア・オプンチアエ(Pichia opuntiae)、ピキア・サーモトレランス(Pichia thermotolerans)、ピキア・サリクタリア(Pichia salictaria)、ピキア・グエルキューム(Pichia guercuum)、ピキア・ピジュペリ(Pichia pijperi)、ピキア・スティプティス(Pichia stiptis)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピキア種(Pichia sp.)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス種(Saccharomyces sp.)、ハンゼヌラ ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クリベロマイセス種(Kluyveromyces sp.)、クリベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、偽巣性コウジ菌(Aspergillus nidulans)、クロコウジカビ(Aspergillus niger)、ニホンコウジカビ(Aspergillus oryzae)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、クリソスポリウム・ラクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)、フザリウム種(Fusarium sp.)、フザリウム・グラミネウム(Fusarium gramineum)、フザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)、ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)及びアカパンカビ(Neurospora crassa)、ピキア種(Pichia sp.)、任意のサッカロミセス種、ハンゼヌラ・ポリモルファ、任意のクリベロマイセス種、カンジダ・アルビカンス、任意のコウジカビ種(Aspergillus sp.)、トリコデルマ・リーゼイ、クリソスポリウム・ラクノウェンス、任意のフザリウム種、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、及びアカパンカビを含む、酵母及び糸状菌細胞が挙げられる。
本発明の組換えAffimerポリペプチドを発現させるために、様々な宿主発現ベクター系を利用することができる。そのような宿主発現系は、組換えAffimerポリペプチドのコード配列を産生し、その後、精製することができる、ビヒクルを表すが、適切なヌクレオチドコード配列で形質転換されたときに又は適切なヌクレオチドコード配列がトランスフェクトされたときに本発明のAffimerポリペプチドをインサイチュで発現することができる細胞も表す。これらは、微生物、例えば、Affimerポリペプチドコード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA若しくはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、大腸菌及び枯草菌(B. subtilis));Affimerポリペプチドコード配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、サッカロミセス属、ピキア属);Affimerポリペプチドコード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;Affimerポリペプチドコード配列を含有する、組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CμMV:cauliflower mosaic virus)及びタバコモザイクウイルス(TMV:tobacco mosaic virus)に感染した、若しくは組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された、植物細胞系;又は哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)若しくは哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含有する組換え発現コンストラクトを保有する、哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、293T、3T3細胞、リンパ性細胞(米国特許第5,807,715号明細書を参照されたい)、Per C.6細胞(Crucell社により開発されたラット網膜細胞))を含むが、それらに限定されない。
細菌系では、有利なことに、発現される組換えAffimerポリペプチドについて意図された使用に依存していくつかの発現ベクターを選択することができる。例えば、組換えAffimerポリペプチド医薬組成物の生成のために、大量のそのようなタンパク質を産生するべきである場合、容易に精製される高レベルの融合タンパク質産物の発現を指示するベクターが望ましいことがある。そのようなベクターとしては、融合タンパク質が産生されるようにAffimerポリペプチドコード配列をlacZコード領域とインフレームでベクターに個々にライゲーションすることができる大腸菌発現ベクターpUR278(Ruther et al. (1983) "Easy Identification Of cDNA Clones," EMBO J. 2:1791-1794);pINベクター(Inouye et al. (1985) "Up-Promoter Mutations In The Lpp Gene Of Escherichia coli," Nucleic Acids Res. 13:3101-3110; Van Heeke et al. (1989) "Expression Of Human Asparagine Synthetase In Escherichia coli," J. Biol. Chem. 24:5503-5509);及びこれらに類するものが挙げられるが、それらに限定されない。pGEXベクターも、外来ペプチドをグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST:glutathione S-transferase)との融合タンパク質として発現させるために使用することができる。一般に、そのような融合タンパク質は可溶性であり、そのような融合タンパク質を、マトリックスグルタチオン−アガロースビーズへの吸着及び結合、続いての遊離グルタチオンの存在下での溶出により、溶解細胞から容易に精製することができる。pGEXベクターは、トロンビン又は第Xa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計されており、したがって、クローニングされた標的遺伝子産物をGST部分から放出することができる。
昆虫系では、オートグラファ・カリフォルニア(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV:Autographa californica nuclear polyhedrosis virus)が、外来遺伝子を発現させるためのベクターとして使用される。このウイルスは、ツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)細胞において増殖する。Affimerポリペプチドコード配列をウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)に個々にクローニングし、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下に置くことができる。
哺乳動物宿主細胞では、いくつかのウイルスベースの発現系を利用することができる。アデノウイルスが発現ベクターとして使用される場合、所望のAffimerポリペプチドコード配列を、アデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば、後期プロモーター及び3要素リーダー配列にライゲーションすることができる。次いで、このキメラ遺伝子をインビトロ又はインビボ組換えによりアデノウイルスゲノムに挿入することができる。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、領域E1又はE3)への挿入により、感染した宿主において生存可能であり、免疫グロブリン分子を発現することができる、組換えウイルスが得られる結果となる。(例えば、Logan et al. (1984) "Adenovirus Tripartite Leader Sequence Enhances Translation Of mRNAs Late After Infection," Proc. Natl.Acad. Sci. (U.S.A.) 81:3655-3659を参照されたい)。挿入されたAffimerポリペプチドコード配列の効率的翻訳のために特異的開始シグナルも必要とさることがある。これらのシグナルは、ATG開始コドン及び隣接配列を含む。さらに、開始コドンは、インサート全体を確実に翻訳するために所望のコード配列のリーディングフレームと同相でなければならない。これらの外因性翻訳制御シグナル及び開始コドンは、天然及び合成両方の、様々な起源のものでありうる。適切な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含めることにより、発現の効率を向上させることができる(Bitter et al. (1987) "Expression And Secretion Vectors For Yeast," Methods in Enzymol. 153:516-544を参照されたい)。
加えて、挿入された配列の発現をモジュレートする、又は所望される特定様式で遺伝子産物を修飾及びプロセシングする宿主細胞株を、選択することができる。タンパク質産物のそのような修飾(例えば、グリコシル化)及びプロセシング(例えば、切断)は、タンパク質の機能にとって重要でありうる。異なる宿主細胞は、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳後プロセシング及び修飾のための特徴的かつ特異的なメカニズムを有する。発現される外来タンパク質の正確な修飾及びプロセシングを確実にするために、適切な細胞株又は宿主系を選択することができる。このために、一次転写産物の適切なプロセシング、グリコシル化及び遺伝子産物のリン酸化のための細胞機構を有する真核生物宿主細胞を、使用することができる。そのような哺乳動物宿主細胞としては、CHO、VERY、BHK、Hela、COS、MDCK、293、293T、3T3、WI38、BT483、Hs578T、HTB2、BT20及びT47D、CRL7030及びHs578Bstが挙げられるが、これらに限定されない。
組換えタンパク質の長期、高収率産生のために、安定的発現が好ましい。例えば、本発明の抗体を安定的に発現する細胞株を改変することができる。ウイルス複製起点を含有する発現ベクターを使用するのではなく、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)及び選択可能マーカーによって制御されたDNAで宿主細胞を形質転換することができる。外来DNAの導入後、改変細胞を濃縮培地中で1〜2日間増殖させることができ、その後、選択培地に切り替える。組換えプラスミド中の選択可能マーカーは、選択に対する耐性をもたらし、細胞がプラスミドをそれらの染色体に安定的に組み込むこと及び増殖してフォーカスを形成することを可能にし、次にそれらのフォーカスをクローニングし、拡大させて細胞株にすることができる。有利なことに、この方法を使用して、本発明の組換えAffimerポリペプチドを発現する細胞株を改変することができる。そのような改変細胞株は、組換えAffimerポリペプチドと直接的又は間接的に相互作用する化合物のスクリーニング及び評価に特に有用でありうる。
tk−、hgprt−又はaprt−細胞においてそれぞれ利用されうる、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler et al.(1977) "Transfer Of Purified Herpes Virus Thymidine Kinase Gene To Cultured Mouse Cells," Cell 11:223-232)、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska et al. (1962) "Genetics Of Human Cess Line.IV. DNA-Mediated Heritable Transformation Of A Biochemical Trait," Proc. Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)48:2026-2034)、及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al. (1980) "Isolation Of Transforming DNA: Cloning The Hamster Aprt Gene," Cell 22:817-823)遺伝子を含むがこれらに限定されない、いくつかの選択系を使用することができる。また、代謝拮抗薬耐性を、以下の遺伝子についての選択の基礎として使用することができる:メトトレキサートに対する耐性を付与するdhfr(Wigler et al. (1980) "Transformation Of Mammalian Cells With An Amplfiable Dominant-Acting Gene," Proc. Natl.Acad. Sci. (U.S.A.) 77:3567-3570; O'Hare et al. (1981) "Transformation Of Mouse Fibroblasts To Methotrexate Resistance By A Recombinant Plasmid Expressing A Prokaryotic Dihydrofolate Reductase," Proc. Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)78:1527-1531);ミコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt(Mulligan et al. (1981) "Selection For Animal Cells That Express The Escherichia coli Gene Coding For Xanthine-Guanine Phosphoribosyltransferase," Proc. Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)78:2072-2076);アミノグリコシドG−418に対する耐性を付与するneo(Tachibana et al. (1991) "Altered Reactivity Of Immunoglobutin Produced By Human-Human Hybridoma Cells Transfected By pSV2-Neo Gene," Cytotechnology 6(3):219-226; Tolstoshev (1993) "Gene Therapy, Concepts, Current Trials And Future Directions," Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32:573-596; Mulligan (1993) "The Basic Science Of Gene Therapy," Science 260:926-932;及びMorgan et al. (1993) "Human gene therapy," Ann. Rev. Biochem.62:191-217)。使用することができる組換えDNA技術についての当技術分野において一般に公知の方法は、Ausubel et al.(eds.), 1993, CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons, NY; Kriegler, 1990, GENE TRANSFER AND EXPRESSION, A LABORATORY MANUAL, Stockton Press, NYに、及びChapters 12 and 13, Dracopoli et al. (eds), 1994, CURRENT PROTOCOLS IN HUMAN GENETICS, John Wiley & Sons, NY.; Colbere-Garapin et al. (1981) "A New Dominant Hybrid Selective Marker For Higher Eukaryotic Cells," J. Mol. Biol.150:1-14に記載されている;及びハイグロマイシンに対する耐性を付与するhygro(Santerre et al.(1984) "Expression Of Prokaryotic Genes For Hygromycin B And G418 Resistance As Dominant-Selection Markers In Mouse L Cells," Gene 30:147-156)。
組換えAffimerポリペプチドの発現レベルをベクター増幅により増加させることができる(総説については、Bebbington and Hentschel, "The Use Of Vectors Based On Gene Amplification For The Expression Of Cloned Genes In Mammaian Cells," in DNA CLONING, Vol. 3.(Academic Press, New York, 1987)を参照されたい)。組換えAffimerポリペプチドを発現するベクター系中のマーカーが増幅可能である場合、宿主細胞の培地中に存在する阻害剤のレベルの増加は、マーカー遺伝子のコピー数を増加させることになる。増幅領域は、組換えAffimerポリペプチドのヌクレオチド配列と関連しているので、組換えAffimerポリペプチドの産生も増加することになる(Crouse et al. (1983) "Expression And Amplification Of Engineered Mouse Dihydrofolate Reductase Minigenes," Mol. Cell.Biol.3:257-266)。
Affimerポリペプチドが、Affimer抗体融合体又は他の多タンパク質複合体である場合、一方又は両方がAffimerポリペプチドコード配列を含む、2つの発現ベクター、例えば、重鎖をコードする第1のベクター及び軽鎖由来のポリペプチドをコードする第2のベクターを、宿主細胞にコトランスフェクトすることができる。2つのベクターは、重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドの同等の発現を可能にする同一の選択可能マーカーを含有することができる。あるいは、重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドの両方をコードする単一のベクターが使用されることもある。そのような状況では、過剰な毒性遊離重鎖を回避するために重鎖の前に軽鎖を配置するべきである(Proudfoot (1986) "Expression And Amplification Of Engineered Mouse Dihydrofolate Reductase Minigenes," Nature 322:562-565; Kohler (1980) "Immunoglobulin Chain Loss In Hybridoma Lines," Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)77:2197-2199)。重鎖及び軽鎖のコード配列は、cDNAを含むこともあり、又はゲノムDNAを含むこともある。
一般に、特定の細胞株又はトランスジェニック動物において産生される糖タンパク質は、その細胞株又はトランスジェニック動物において産生される糖タンパク質に特有であるグリコシル化パターンを有することになる。したがって、組換えAffimerポリペプチドの特定のグリコシル化パターンは、タンパク質を産生するために使用される特定の細胞株又はトランスジェニック動物に依存することになる。Affimer/抗体融合体のある特定の実施形態において、非フコシル化N−グリカンのみを含むグリコシル化パターンは、抗体の場合、フコシル化対応物より強力な有効性を典型的には、示すことがインビトロでもインビボでも証明されているため、有利でありうる(例えば、Shinkawa et al., J. Biol.Chem.278: 3466-3473 (2003);米国特許第6,946,292号明細書及び同第7,214,775号明細書を参照されたい)。
さらに、産生細胞株からのAffimerポリペプチドの発現を、いくつかの公知の手法を使用して増強することができる。例えば、グルタミンシンテターゼ遺伝子発現系(GS系)は、ある特定の条件下で発現を増強するための一般的アプローチである。GS系は、全体又は一部が、欧州特許第0216846号、同第0256055号及び同第0323997号、並びに欧州特許出願第89303964.4号に関連して論じられる。したがって、本発明の実施形態において、哺乳動物宿主細胞(例えば、CHO)は、グルタミンシンテターゼ遺伝子を欠いているが、しかし、免疫グロブリン鎖をコードするポリヌクレオチドが、宿主細胞における遺伝子の欠如を補足するグルタミンシンテターゼ遺伝子を含む場合、培地においてグルタミンの非存在下で増殖される。本明細書において論じられるような結合剤又はポリヌクレオチド又はベクターを含有するそのような宿主細胞、及びそのような宿主細胞を使用して結合剤を作製するための、本明細書において論じられるような、発現方法は、本発明の一部である。
昆虫細胞培養系(例えば、バキュロウイルス)における組換えタンパク質の発現はまた、適正にフォールディングされた生物学的機能性タンパク質を産生するための堅牢な方法をもたらす。昆虫細胞における異種タンパク質の産生のためのバキュロウイルス系は、当業者に周知である。
形質転換宿主により産生された組換えAffimerポリペプチドを任意の適する方法に従って精製することができる。標準的方法は、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、及びサイジングカラムクロマトグラフィー(sizing column chromatography))、遠心分離、較差溶解度、又はタンパク質精製のための任意の他の標準的技術によるものを含む。親和性タグ、例えば、ヘキサヒスチジン、マルトース結合ドメイン、インフルエンザコート配列、及びグルタチオン−S−トランスフェラーゼをタンパク質に結合させて、適切な親和性カラムを通過させることによる容易な精製を可能にすることができる。単離されたタンパク質を、タンパク質分解、質量分析(MS:mass spectrometry)、核磁気共鳴(NMR:nuclear magnetic resonance)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC:high performance liquid chromatography)及びX線結晶解析のような手法を使用して、物理的に特徴付けることもできる。
一部の実施形態において、細菌培養において産生される組換えAffimerポリペプチドを、例えば、細胞ペレットからの最初の抽出、続いて、1又は2以上の濃縮、塩析、水溶液系イオン交換、又はサイズ排除クロマトグラフィーステップによって、単離することができる。HPLCを最終精製ステップに用いることができる。組換えタンパク質の発現に用いられる微生物細胞は、凍結解凍サイクリング、音波処理、機械的破壊、又は細胞溶解剤の使用を含む、任意の従来の方法によって、破壊することができる。
IV.インビトロ送達用のコードされたAffimer
治療用Affimerポリペプチドの送達の代替アプローチは、治療用ポリペプチドの産生を身体自体に任せるアプローチである。多数の臨床研究が、様々な異なる送達系を使用する細胞へのインビボ遺伝子移入の有用性を例証してきた。インビボ遺伝子移入は、Affimerポリペプチドではなく、「コードされたAffimer」ヌクレオチド配列の患者への投与を模索する。これは、患者の身体が、所望の治療用Affimerポリペプチドを長期間にわたって産生し、産生部位に依存して全身的又は局所的にそれを分泌することを可能にする。遺伝子ベースのコードされたAffimerは、Affimerポリペプチドのポリペプチドバージョンの従来の産生、精製及び投与に対する作業効率及びコスト効率の高い代替案を提示することができる。コードされたAffimerの送達を適応させることができるいくつかの抗体発現プラットフォームが、インビボで追求されたきた:これらは、ウイルスベクター、裸のDNA及びRNAを含む。コードされたAffimer遺伝子移入は、商品コスト及び産生コストを低減させることによってコスト節約を可能にすることができるばかりでなく、薬物投与の頻度を低減させることも可能性でありうる。全体的に見て、コードされたAffimerの発現による治療用Affimerポリペプチドの持続的インビボ産生は、(i)価格に敏感な状況でのAffimerポリペプチドのより広い治療又は予防応用、(ii)先進国と途上国の両方における治療の受けやすさの改善、及び(iii)より有効で手頃な価格の治療モダリティーに寄与することができる。インビボ遺伝子移入に加えて、細胞を宿主(又はドナー)から採取し、コードされたAffimer配列を用いてAffimerポリペプチドを産生するように改変し、患者に再投与することができる。
筋肉内抗体遺伝子投与は、最も広く評価されおり(Deal et al. (2015) “Engineering humoral immunity as prophylaxis or therapy” Curr Opin Immunol. 35:113-22.において概説されている)、コードされたAffimerに適用された場合、最も高度な臨床的翻訳可能性及び応用ももたらす。実際、骨格筋の固有の解剖学的、細胞学的及び生理的特性が、骨格筋を、長期のコードされたAffimer発現及び体循環のための安定した環境にさせる。骨格筋には容易に到達でき、そのため複数回投与又は反復投与が可能である。大量血液血管供給は、分泌された治療用Affimerポリペプチドの血液循環への効率的輸送系をもたらす。筋線維の合胞体性が、線維内の多数の隣接する核への限られた侵入部位からのヌクレオチドの分散を可能にする。骨格筋線維は、最終分化細胞でもあり、線維内の核は、有糸分裂後である。したがって、宿主ゲノム内への組込みは、持続的mAb発現を達成するための必要条件ではない。肝臓は、前臨床抗体遺伝子移入に使用されることが多い別の部位であり、典型的には、i.v.注射によってトランスフェクトされ、Affimerポリペプチドの局所送達(例えば、肝臓がん及び/若しくは異形成の治療の場合)、又は体循環のために血管に分泌されるAffimerポリペプチドの生成、いずれかのためのコードされたAffimerの遺伝子移入部位でもありうる。この器官は、血漿タンパク質の合成を含む、様々な生理的機能を有する。この器官は、コードされたAffimerのインビボ発現に特によく適したものでありうる。
腫瘍は、i.v.又は直接注射/エレクトロポレーションのいずれかによって標的化される、コードされたAffimerの移入のための別の部位を提示する。実際、腫瘍内のコードされたAffimerの発現は、治療用Affimerポリペプチドの局所産生を可能にし、したがって、そうでなければ固形腫瘍に侵入して影響を及ぼすために必要とされうる高い全身性Affimerポリペプチドレベルの必要を、差し控えることができる。同様の原理が、脳に当てはまり、脳は、脳血管関門輸送に伴う困難を回避するために抗体遺伝子移入に関連して標的化されることが多く、また同じく、コードされたAffimerの送達の標的となる。例えば、Beckman et al. (2015) “Antibody constructs in cancer therapy: protein engineering strategies to improve exposure in solid tumors” Cancer 109(2):170-9; Dronca et al. (2015) “Immunomodulatory antibody therapy of cancer: the closer, the better” Clin Cancer Res. 21(5):944-6;及びNeves et al. (2016) “Antibody approaches to treat brain diseases” Trends Biotechnol. 34(1):36-48を参照されたい。
遺伝子療法の成功は、非ウイルス性及びウイルス性遺伝子移入ベクターの改善によって大いに推進されている。一連の物理的及び化学的非ウイルス性の方法は、DNA及びmRNAを哺乳動物細胞に移入するために使用されており、これらのうちの相当な数が、エクスビボ及びインビボ両方で遺伝子療法の臨床ステージ技術として開発されおり、本発明のコードされたAffimerの送達に容易に適応される。説明すると、カチオン性リポソーム技術を用いることができ、この技術は、正荷電ヘッド基と疎水性テールとを有する両親媒性脂質が、負荷電DNA又はRNAと結合し、一般にエンドサイトーシスにより細胞に進入する粒子を形成できることに基づく。一部のカチオン性リポソームは、哺乳動物細胞によるリポソーム取込みを増進させると考えられる、中性共脂質も含有する。例えば、Felgner et al. (1987) Lipofection: a highly efficient, lipid-mediated DNA-transfection procedure. MNAS 84:7413-7417; San et al. (1983) “Safety and short term toxicity of a novel cationic lipid formulation for human gene therapy” Hum. Gene Ther. 4:781-788; Xu et al. (1996) “Mechanism of DNA release from cationic liposome/DNA complexes used in cell transfection” Biochemistry 35,:5616-5623;及びLegendre et al. (1992) “Delivery of plasmid DNA into mammalian cell lines using pH-sensitive liposomes: comparison with cationic liposomes” Pharm. Res.9, 1235-1242を参照されたい。
同様に、コードされたAffimerを送達するために他のポリカチオン、例えば、ポリ−l−リジン及びポリエチレン−イミンを使用することができる。これらのポリカチオンは、電荷相互作用によって核酸と複合体化し、DNA又はRNAのナノ粒子への縮合を助け、これらのナノ粒子が、その後、エンドソーム媒介取込みの基質になる。これらのカチオン性核酸複合体技術のうちの複数が、プラスミドDNAとの複合体、オリゴデオキシリボヌクレオチドとの複合体及び様々な形態の合成RNAとの複合体を含めて、可能性のある臨床製品として開発されている。修飾(及び未修飾又は「裸の」)DNA及びRNAも、いくつかの状況で遺伝子移入成功を媒介することが示されており、コードされたAffimerの送達のための系として使用することもできる。これらは、直接筋肉内注射によるプラスミドDNAの使用、プラスミドDNAの腫瘍内注射の使用を含む。例えば、Rodrigo et al. (2012) “De novo automated design of small RNA circuits for engineering synthetic riboregulation in living cells” PNAS 109:15271-15276; Oishi et al. (2005) “Smart polyion complex micelles for targeted intracellular delivery of PEGylated antisense oligonucleotides containing acid-labile linkages” Chembiochem. 6:718-725; Bhatt et al. (2015) “Microbeads mediated oral plasmid DNA delivery using polymethacrylate vectors: an effectual groundwork for colorectal cancer” Drug Deliv. 22:849-861; Ulmer et al. (1994) Protective immunity by intramuscular injection of low doses of influenza virus DNA vaccines” Vaccine 12: 1541-1544;及びHeinzerling et al. (2005) “Intratumoral injection of DNA encoding human interleukin 12 into patients with metastatic melanoma: clinical efficacy” Hum. Gene Ther.16:35-48を参照されたい。
ウイルスベクターは、現在、送達ビヒクルとして、前臨床及び臨床遺伝子療法試験の圧倒的多数において並びに最初に認可された指向性遺伝子療法において使用されている。Gene Therapy Clinical Trials Worldwide 2017(http://www.abedia.com/wiley/)を参照されたい。その主な原動力は、それらの並外れた遺伝子送達効率であり、これは、自然進化的発生を反映する。ウイルスベクター系は、遺伝子送達にとって魅力的なものである。なぜなら、ウイルスは、感染により細胞膜を横断する能力を進化させており、それによって、コードされたAffimerなどの核酸を標的細胞に送達するからである。アデノウイルス系が先駆けとなって、ウイルスベクター媒介抗体遺伝子移入の分野は、過去数十年間に有意な発展を遂げた。評価に成功した無数の投与経路、前臨床モデル及び疾患の兆候により、抗体遺伝子移入能力が存分に発揮され、これにより、当業者は、コードされたAffimerコンストラクトのインビボ送達のための抗体遺伝子移入系及び手法を容易に同定すること、並びに抗体遺伝子移入系及び手法をコードされたAffimerコンストラクトのインビボ送達に容易に適応させることができることになった。筋肉は、持続的mAb発現に選ばれる投与部位として浮上し、同様に、持続的Affimerポリペプチド発現に適する標的組織になった。コードされたAffimerのベクター利用腫瘍内遺伝子移入の文脈において、腫瘍溶解性ウイルスには、明確な利点がある。それらは、腫瘍細胞を特異的に標的とし、Affimerポリペプチドの発現を後押しし、及び治療応答、例えば、チェックポイント阻害性又は共刺激アゴニストAffimerポリペプチドに対する治療応答を増幅することができるからである。
コードされたAffimerのインビボ遺伝子移入を発現プラスミドなどの非ウイルス性ベクターの使用により果たすこともできる。非ウイルス性ベクターは、容易に産生され、特異的免疫応答を誘導しないようである。筋肉組織は、トランスフェクションの標的組織として使用されることが最も多い。なぜなら、筋肉組織は、よく可視化され、容易に到達でき、筋細胞は、長寿命細胞であるからである。裸のプラスミドDNAの筋肉内注射は、ある特定の割合の筋細胞へのトランスフェクションをもたらす。このアプローチを使用して、サイトカイン及びサイトカイン/IgG1キメラタンパク質をコードするプラスミドDNAが、インビボで導入され、(自己免疫)疾患の転帰に正の影響を及ぼしている。
一部の事例では、いわゆる血管内送達によってトランスフェクション効率を上昇させるために、この場合は、遺伝子送達及び発現レベルの上昇が、静脈において短期間の一過性高血圧を誘導することにより達成される。血管圧を一時的に上昇させることにより局所取込みを助長することができ、ヒト患者においてこのタイプの遺伝子送達のための使用に適応されうる、特殊な血圧測定用カフ。例えば、Zhang et al. (2001) “Efficient expression of naked DNA delivered intraarterially to limb muscles of nonhuman primates” Hum. Gene Ther., 12:427-438を参照されたい。
例えば、核酸の送達が、化学的担体(カチオン性ポリマー若しくは脂質)又は物理的アプローチ(遺伝子銃送達若しくはエレクトロポレーション)の使用によって改善される、他の手法によって、効率上昇を獲得することもできる。Tranchant et al.(2004) “Physicochemical optimisation of plasmid delivery by cationic lipids” J. Gene Med., 6 (Suppl. 1):S24-S35;及びNiidome et al.(2002) “Gene therapy progress and prospects: nonviral vectors” Gene Ther., 9:1647-1652を参照されたい。エレクトロポレーションは、非ウイルス性遺伝子送達のための興味深い手法と特に目されている。Somiari, et al. (2000) “Theory and in vivo application of electroporative gene delivery” Mol. Ther.2:178-187;及びJaroszeski et al. (1999) “In vivo gene delivery by electroporation” Adv. Drug Delivery Rev., 35:131-137。エレクトロポレーションを用いて、パルス電流が局所組織領域に印加されて細胞透過性を増強し、その結果、膜を横断して遺伝子が移入される。研究により、インビボ遺伝子送達は、エレクトロポレーションを用いるほうが、用いないより少なくとも10〜100倍効率的でありうることが示されている。例えば、Aihara et al. (1998) “Gene transfer into muscle by electroporation in vivo” Nat. Biotechnol. 16:867-870; Mir, et al. (1999) “High-efficiency gene transfer into skeletal muscle mediated by electric pulses” PNAS 96:4262-4267; Rizzuto, et al. (1999) “Efficient and regulated erythropoietin production by naked DNA injection and muscle electroporation” PNAS 96: 6417-6422;及びMathiesen (1999) “Electropermeabilization of skeletal muscle enhances gene transfer in vivo” Gene Ther., 6:508-514を参照されたい。
コードされたAffimerを、ウイルス性遺伝子送達系、非ウイルス性遺伝子送達系又は物理的遺伝子送達系を含む、遺伝子療法に一般に使用される広範な遺伝子送達系により、送達することができる。例えば、Rosenberg et al., Science, 242:1575-1578, 1988, and Wolff et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:9011-9014 (1989)を参照されたい。遺伝子療法における使用のための方法及び組成物についての論考は、Eck et al., in Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, Ninth Edition, Hardman et al., eds., McGraw-Hill, New York, (1996), Chapter 5, pp. 77-101; Wilson, Clin.Exp.Immunol.107 (Suppl. 1):31-32, 1997; Wivel et al., Hematology/Oncology Clinics of North America, Gene Therapy, S. L. Eck, ed., 12(3):483-501, 1998; Romano et al., Stem Cells, 18:19-39, 2000、及びそれらに引用されている参考文献を含む。米国特許第6,080,728号明細書もまた、多種多様な遺伝子送達方法及び組成物についての論考を提供している。送達経路は、例えば、全身投与及びインサイチュ投与を含む。
コードされたAffimerの効率的遺伝子移入アプローチは、それが必要とされる特定の組織/細胞に方向付けられなければならず、生じた導入遺伝子発現は、特定の応用に適切であるレベルであるべきである。プロモーターは、発現の総合強度及び細胞特異性を決定付けることができる、ベクターゲノム設計の中の主cis作用性エレメントである。
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一部のケースでは、全ての細胞型におけるコードされたAffimerコンストラクトの普遍的発現が所望される。構成的プロモーター、例えば、ヒト伸長因子1α(EF1α:elongation factor 1α)サブユニット、最初期サイトメガロウイルス(CMV:cytomegalovirus)、ニワトリβ−アクチン(CBA:chicken β-actin)及びその誘導体CAG、βグルクロニダーゼ(GUSB)、又はユビキチンC(UBC:ubiquitin C)を使用して、ほとんどの組織においてコードされたAffimerコンストラクトの発現を促進することができる。一般に、CBA及びCAGは、構成的プロモーターの中でより大きい発現を促進するが、CMV(約0.8kb)又はEF1α(約1.2kb)と比較して約1.7kbというそれらのサイズは、AAVなどのパッケージング拘束を有するベクターにおいて、特に、コードされたAffimerコンストラクトの発現により産生されるAffimerポリペプチドが大きい場合、使用を限定しうる。GUSB又はUBCプロモーターは、それぞれ、378bp及び403bpというより小さいサイズを有し、普遍的遺伝子発現をもたらすことができるが、CMV又はCBAプロモーターよりかなり弱い。したがって、その発現に影響を与えることなくサイズを低減させるための構成的プロモーターへの修飾が追求されており、CBh(約800bp)及びミニCBA(約800bp)などの例は、選択された組織において匹敵する発現及びよりいっそう高度な発現を促進することができる(Gray et al., Hum Gene Ther.2011 22:1143-1153)。
コードされたAffimerコンストラクトの発現を器官内のある特定の細胞型に制限すべき場合、プロモーターを使用してこの特異性を媒介することができる。例えば、神経系内で、ニューロン、アストロサイト又はオリゴデンドロサイトに発現を制限するために、プロモーターが使用されている。ニューロンにおいて、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE:neuron-specific enolase)プロモーターは、普遍的プロモーターより強い発現を駆動する。加えて、血小板由来増殖因子B鎖(PDGF−β:platelet-derived growth factor B-chain)、シナプシン(Syn:synapsin)、及びメチル−CpG結合タンパク質2(MeCP2:methyl-CpG binding protein 2)プロモーターは、NSEより低レベルでニューロン特異的発現を駆動することができる。アストロサイトにおいて、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP:glial fibrillary acidic protein、2.2kb)プロモーターの680bp長短縮バージョン[gfaABC(1)D]は、GFAPプロモーターと同じアストロサイト特異性で、より高レベルの発現をもたらすことができる。オリゴデンドロサイトの標的化は、その発現をグリア細胞に制限する、ミエリン塩基性タンパク質(MBP:myelin basic protein)プロモーターの選択により果たすこともできるが、1.9kbというそのサイズ及び低い発現レベルが、その使用を限定する。
コードされたAffimerコンストラクトを骨格筋細胞において発現させるケースでは、筋クレアチンキナーゼ(MCK:muscle creatine kinase)及びデスミン(1.7kb)に基づく例示的プロモーターが、高い特異性率を(所望される場合には、肝臓における最小限の発現とともに)示した。α−ミオシン重鎖(α−MHC:α-myosin heavy chain;1.2kb)のプロモーターは、他の筋プロモーターと比較して有意な心臓特異性を示した(Lee et al., 2011 J Cardiol.57(1):115-22)。造血幹細胞において、合成MNDプロモーター(Li et al., 2010 J Neurosci Methods.189(1):56-64)、及び2AUCOE(普遍的クロマチン開放エレメント)に含有されるプロモーターは、全ての細胞系列において、EF1α及びCMVプロモーターとそれぞれ比較してより高い導入遺伝子発現を駆動することが示されている(Zhang et al., 2007 Blood. 110(5):1448-57; Koldej 2013 Hum Gene Ther Clin Dev. 24(2):77-85; Dighe et al., 2014 PLoS One. 9(8):e104805.)。逆に、ベクター媒介遺伝子移入後に肝細胞のみに発現を制限するためのプロモーターの使用は、それがリスクである系において導入遺伝子特異的免疫応答を低減させること、及び発現されたタンパク質に対する免疫寛容をそれでもやはり誘導することが示されており(Zhang et al., 2012 Hum Gene Ther.23(5):460-72)、これは、ある特定のAffimerポリペプチドにとって有益でありうる。α1−アンチトリプシン(hAAT;347bp)及びチロキシン結合グロブリン(TBG:thyroxine binding globulin;約400bp)プロモーターは、他の組織への侵入がほとんどない、肝臓に制限された遺伝子発現を駆動する(Yan et al., 2012 Gene. 506(2):289-94; Cunningham et al., 2008 Mol Ther. 16(6):1081-8)。
ある特定の実施形態において、コードされたAffimerのインビボ発現の継続期間及び量を制御するメカニズムが、典型的には、所望されることになる。ウイルスベクターを利用した、プラスミドDNAベースの、コードされたAffimerの遺伝子移入に関する使用に適応することができる、様々な誘導性プロモーターがある。Fang et al. (2007) “An antibody delivery system for regulated expression of therapeutic levels of monoclonal antibodies in vivo” Mol Ther. 5(6):1153-9;及びPerez et al. (2004) “Regulatable systemic production of monoclonal antibodies by in vivo muscle electroporation” Genet Vaccines Ther. 2(1):2を参照されたい。現在臨床評価されている例示的な、調節可能なメカニズムは、小分子リガンドにより活性化される、エクジソンベースの遺伝子スイッチである。Cai et al. (2016) “Plasma pharmacokinetics of veledimex, a small-molecule activator ligand for a proprietary gene therapy promoter system, in healthy subjects” Clin Pharmacol Drug Dev. 2016。
コードされたAffimerコンストラクトのある特定の実施形態において、ウイルスの翻訳後調節エレメント(PRE:post-transcriptional regulatory element)を使用することができる。これらのcis作用性エレメントは、イントロン無しのウイルスRNAの核外輸送に必要とされる(Huang and Yen, 1994 J Virol.68(5):3193-9;及び1995 Mol Cell Biol.15(7):3864-9)。例としては、B型肝炎ウイルスPRE(HPRE:Hepatitis B Virus PRE、533bp)及びウッドチャック肝炎ウイルスPRE(WPRE:Woodchuck Hepatitis Virus PRE、600bp)であり、これらは、ある特定の事例では導入遺伝子発現レベルをほぼ10倍増加させることができる(Donello et al., 1998 J Virol.72(6):5085-92)。さらに説明すると、レンチウイルス及びAAVベクターを使用して、WPREは、CMVプロモーターにより駆動される導入遺伝子発現を増加させること、並びにPPE、PDGF及びNSEプロモーターにより駆動される導入遺伝子発現を増加させることが見いだされた。WPREの別の効果は、コードされたAffimerコンストラクトの導入遺伝子を発現停止しないようすることでありうる(Paterna et al., 2000 Gene Ther. 7(15):1304-11; Xia et al., 2007 Stem Cells Dev. 2007 Feb; 16(1):167-76)。
転写された、コードされたAffimer転写物のポリアデニル化も、核外輸送、翻訳及びmRNA安定性に重要でありうる。したがって、ある特定の実施形態において、コードされたAffimerコンストラクトは、ポリアデニル化シグナル配列を含むことになる。遺伝子発現及びmRNA安定性に対する異なるポリAシグナルの効果を判定した様々な研究を利用することができる。例示的ポリアデニル化シグナル配列は、後期SV40ポリAシグナル配列又はウシ成長ホルモンポリA(bGHpA:bovine growth hormone polyA)シグナル配列、並びに最小の合成ポリA(SPA:synthetic polyA)シグナルを含む(Levitt et al., 1989 Genes Dev. 3(7):1019-25; Yew et al., 1997 Hum Gene Ther. 1997 8(5):575-84)。ポリアデニル化の効率は、他のポリAシグナルの上流に配置される後期SV40ポリAシグナル上流エンハンサー(USE:upstream enhancer)によって上昇される(Schek et al., 1992 Mol Cell Biol.12(12):5386-93)。ある特定の実施形態においては、単に説明するためであるが、コードされたAffimerコンストラクトは、後期SV40+2xUSEポリAシグナルを含むことになる。
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ある特定の実施形態において、コードされたAffimerコンストラクトは、1つ又は2つ以上の調節エンハンサーを、すなわち、任意のプロモーター配列に加えて含むことが望ましいこともある。CMVエンハンサーは、−598〜−68におけるCMVプロモーター(Boshart et al., 1985 Cell.41(2):521-30)の上流(約600bp)にあり、転写結合部位を含有する。ある特定の実施形態において、心房性ナトリウム利尿因子(ANF:atrial natriuretic factor)プロモーター、クラブ細胞10(CC10:club cell 10)プロモーター、サーファクタントタンパク質C(SP−C:surfactant protein C)プロモーター、又は血小板由来増殖因子−β(PDGF−β:platelet-derived growth factor-β)プロモーター(単に例として)を使用するものなどの、プロモーターにより駆動される組織特異的導入遺伝子発現を増加させために、CMVエンハンサーをコンストラクトに含めることができる。要するに、CMVエンハンサーは、異なる細胞特異的プロモーター及び異なる細胞型のもとで導入遺伝子発現を増加させ、このことから導入遺伝子発現レベルを上昇させるために幅広く適用できるツールにされている。筋肉においては、例えば、AAV発現系において、筋肉特異的プロモーターを伴うCMVエンハンサーを使用する導入遺伝子発現は、導入遺伝子によりコードされたタンパク質の発現レベルを上昇させることができ、そのため、本発明において、患者の筋肉細胞に導入された、コードされたAffimerコンストラクトからAffimerポリペプチドを発現させるのに、特に有用となる。
対象のコードされたAffimerコンストラクトは、1つ又は2つ以上のイントロン配列も含むことがある。mRNA中のイントロン又は介在配列の存在は、最初は、インビトロでmRNAプロセシングに及び導入遺伝子発現増加に重要であると記載された(Huang and Gorman, 1990 Mol Cell Biol. 10(4):1805-10; Niwa et al., 1990 Genes Dev. 4(9):1552-9)。イントロンを、Affimerポリペプチドのコード配列内で配置することができ、及び/又はプロモーターと導入遺伝子との間に配置することができる。プロモーターと導入遺伝子との間に配置された様々なイントロン(表3)が、マウスにおいてAAV2を使用して肝臓導入遺伝子発現について比較された(Wu et al., 2008)。マウス微小ウイルス(MVM:minute virus of mice)イントロンは、導入遺伝子発現を、試験された他のいずれのイントロンよりも増加させ、無イントロンより80倍大きく増加させた(Wu et al., 2008)。しかし、AAV発現カセットを使用して培養されたニューロンにおいて、導入遺伝子発現は、導入遺伝子とポリAシグナルとの間にキメライントロン(ヒトβグロビンドナー及び免疫グロブリン重鎖アクセプター)があるCaMPKIIプロモーターのもとでは、WPREと比較して少なかった(Choi et al., 2014)。まとめると、イントロンは、導入遺伝子発現を増加させるために発現カセットに含める価値のあるエレメントでありうる。
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エピソームベクターの場合、対象のコードされたAffimerコンストラクトは、1つ又は以2つ以上の複製起点、ミニ染色体維持エレメント(MME:minichromosome maintenance element)及び/又は核局在化エレメントを含むことがある。本発明のエピソームベクターは、そのようなベクターが自己複製するために、したがって、数世代にわたって宿主細胞内で存続するために必要である、複製起点(ori:origin of replication)をコードする、ウイルスゲノムDNAの一部分を含む。加えて、本発明のエピソームベクターは、複製に必要とされるウイルスタンパク質、すなわちレプリケータータンパク質をコードする1つ又は2つ以上の遺伝子も含有することがある。複製を開始させるのに役立つレプリケータータンパク質を、本発明の自己複製エピソーム発現ベクターを含有する宿主細胞において、別のDNA分子上で、例えば、別のベクター上又は宿主ゲノムDNA上で、トランスで発現させてもよい。本発明の好ましい自己複製エピソームLCR含有発現ベクターは、感染性ウイルス粒子を産生するコア若しくはカプシドタンパク質をコードするウイルスゲノムDNAの領域、又は完全長ウイルスゲノムDNA分子内に存在しうるウイルス発癌性配列などの、真核生物宿主細胞における長期の安定した維持に必要とされないウイルス配列を、含有しない。本明細書における用語「安定した維持」は、非分裂細胞において又は分裂細胞の子孫細胞において、連続選択の非存在下、ベクターのコピー数を有意に(例えば、50%を超えて)喪失することなく、2世代、好ましくは5世代又は6世代以上にわたって存続すること又は維持される、本発明の自己複製エピソーム発現ベクターの能力を指す。最も好ましいベクターは、10〜15又は16世代以上の細胞世代にわたって維持されることになる。対照的に、宿主細胞におけるプラスミドの「一過性」又は「短期」持続は、ベクターが宿主細胞において安定的に複製及び分離することができないことを指し、すなわち、ベクターは、1若しくは2世代後に喪失されることになり、又は連続する世代間にそのコピー数の51%を超える喪失を被ることになる。
本発明に関して有用な複数の代表的な自己複製、LCR含有、エピソームベクターは、下にさらに記載される。あるいは、自己複製機能は、Wohlgeuth et al., 1996, Gene Therapy 3:503; Vos et al., 1995, Jour.Cell. Biol., Supp. 21A, 433;及びSun et al., 1994, Nature Genetics 8:33により記載されたものなどの1つ又は2つ以上の哺乳動物配列によって提供されることもあり、この提供は、核内滞留(nuclear retention)のために必要とされうる1つ又は2つ以上の配列と組み合わせた哺乳動物配列によるものであってもよい。自己複製機能の提供に哺乳動物、特にヒト配列を使用する利点は、毒性又は発癌性の特性を有しうる外因性活性化因子を必要としないことである。本発明が、いかなる1つの複製起点にも、いかなる1つのエピソームベクターにも限定されず、エピソームベクター内のLCRの組織制限制御の組合せを包含することは、当業者には理解されるであろう。国際公開第1998007876号パンフレット"Self-replicating episomal expression vectors conferring tissue-specific gene expression"、及び米国特許第7790446号明細書"Vectors, cell lines and their use in obtaining extended episomal maintenance replication of hybrid plasmids and expression of gene products"も参照されたい。
エプスタイン・バーウイルスベースの自己複製エピソーム発現ベクター。エプスタイン・バーウイルス(EBV:Epstein-Barr Virus)からの潜在的起点oriPは、Yates et. al., Proc . Natl . Acad . Sci . USA 81:3806-3810 (1984); Yates et al., Nature 313:812-815 (1985); Krysan et al., Mol . Cell . Biol . 9:1026-1033 (1989); James et al.. Gene 86: 233-239 (1990), Peterson and Legerski, Gene 107:279-284 (1991);及びPan et al., Som . Cell Molec. Genet . 18:163-177 (1992)に記載されている。本発明に従って有用なEBVベースのエピソームベクターは、EBVの2.61kb断片上に担持されているEBVのoriP領域と、EBVの2.18kb断片上に担持されているEBNA−1遺伝子とを含有することができる。oriPを含有するベクターのトランスでのエピソーム複製を支持するために必要とされる唯一のウイルス遺伝子産物であるEBNA−1タンパク質を、oriPを含有する同じエピソーム発現ベクター上に備えていることもある。また当然のことながら、トランスでのウイルスプラスミドの複製を支持するために必要とされることが公知であるEBNA−1などの任意のタンパク質と同様に、異なるDNAベクターなどの別のDNA分子を用いて遺伝子を発現させることもできることも理解される。
パピローマウイルスベースの、自己複製、エピソーム発現ベクター。本発明のエピソーム発現ベクターは、ウシパピローマウイルス(BPV:Bovine Papilloma Virus)及びヒトパピローマウイルス(HPV:Human Papilloma Viruses)を含むがこれらに限定されない、ウイルスのパピローマファミリーの複製機能に基づくこともある。BPV及びHPVは、哺乳動物細胞内で安定的に維持されるプラスミドとして存続する。BPV及びHPVによりコードされた−S trans作用性因子、すなわちEl及びE2、も同定されており、これらは、多くの細胞型において最小複製起点による複製を媒介するために必要かつ十分なものである(Ustav et al., EMBO J. 10: 449-457 (1991); Ustavet al., EMBO J. 10:4231-4329, (1991); Ustav et al., Proc. Natl.Acad. Sci. USA 90: 898-902 (1993))。
本発明に従って有用なエピソームベクターは、Piirsoo et al., EMBO J., 15:1 (1996)に及び国際公開94/12629号パンフレットに記載されている、BPV−lベクター系である。Piirsoo et al.に記載されているBPV−1ベクター系は、BPV−1複製起点(最小起点に加えて染色体外維持エレメント)を保有しているプラスミドであって、El及びE2遺伝子を保有していてもよいプラスミドを含む。BPV−l El及びE2遺伝子は、BPVエピソームベクターの安定した維持に必要とされる。これらの因子により、プラスミドは、細胞周期状態とは無関係に1細胞当たり30コピーまでの安定したコピー数まで確実に複製される。したがって、遺伝子コンストラクトは、分裂細胞においても、非分裂細胞においても、安定的に存続する。このことにより、造血幹細胞及びよりコミットされた前駆細胞などの細胞において遺伝子コンストラクトの維持が可能になる。
BPV複製起点は、El及びE2複製因子の結合部位を含む60塩基対(bp:base pair)DNA断片(ヌクレオチド(nt:nucleotides)7914〜7927)の中の上流調節領域の3’末端に位置している。HPVの最小複製起点も特徴付けられており、HPVのURR断片(nt7022〜7927)内に位置する(例えば、Chiang et al., Proc.Natl.Acad. Sci. USA 89:5799-5803 (1992)を参照されたい)。本明細書において使用される場合、「El」は、BPVサブタイプ1のヌクレオチド(nt)849〜2663により若しくはサブタイプ11のHPVのnt832〜2779によりコードされているタンパク質を指すか、他のパピローマウイルスの等価のElタンパク質を指すか、又はパピローマウイルスElタンパク質の機能性断片若しくはミュータント、すなわち、Elの複製特性を有するElの断片若しくはミュータントを指す。
本明細書において使用される場合、「E2H」は、BPVサブタイプ1のnt2594〜3837により若しくはHPVサブタイプ11のnt2723〜3823によりコードされているタンパク質を指すか、他のパピローマウイルスの等価のE2タンパク質を指すか、又はパピローマウイルスE2タンパク質の機能性断片若しくはミュータント、すなわち、E2の複製特性を有するE2の断片若しくはミュータントを指す。「ミニ染色体維持エレメント」(MME)は、パピローマウイルス複製結合に不可欠なウイルス又はヒトタンパク質が結合するパピローマウイルスゲノムの染色体外維持エレメントを指し、この領域は、Piirsoo et al.(上掲)に記載されているように、宿主細胞内でのパピローマウイルスMOの安定したエピソーム維持に不可欠である。好ましくは、MMEは、転写活性化因子E2のための複数の結合部位を含有する配列である。BPVにおけるMMEは、本明細書では、上流調節領域内に位置するBPVの領域であって、最低約6つの逐次的E2結合部位を含み、最適な安定した維持を約10の逐次的E2結合部位によってもたらす、領域と定義される。逐次的部位が、約4〜10ヌクレオチド、最適には6ヌクレオチドのスペーサーによって隔てられている場合、E2結合部位9が、本明細書において下で説明するように、この部位に好ましい配列である。El及びE2は、国際公開第94/12629号パンフレットに及びPiirsoo et al.(上掲)にも記載されているように、プラスミドにcisで備えさせることもでき、又はtransで備えさせることもできる。
「E2結合部位」は、E2タンパク質が結合するパピローマウイルス二本鎖DNAの最小配列を指す。E2結合部位は、BPV−1 URRの高親和性E2結合部位9である、配列5ACCGTTGCCGGT 3’を含むこともあり、あるいは、E2結合部位は、結合部位9の順列であって、URR内に見られ、一般E2結合配列5’ACCN6GGT 3’に含まれる、順列を含むこともある。1つ又は2つ以上の転写活性化因子E2結合部位は、ほとんどのパピローマウイルスにおいて、BPV及びHPVの場合のように上流調節領域に位置する。本発明に従って同じく有用であるベクターは、BPV遺伝子地図上の6959〜7945/1〜470間のBPVの領域(国際公開第94/12629号パンフレットに記載されている通り)を含むことがあり、この領域は、複製起点と、所望の遺伝子と動作可能に会合している第1のプロモーターと、El遺伝子の転写を駆動するための第2のプロモーターと動作可能に会合しているBPV El遺伝子と、E2遺伝子の転写を駆動するための第3のプロモーターと動作可能に会合しているBPV E2遺伝子とを含む。
BPVからのEl及びE2は、BPV起点又は多くのHPVサブタイプの起点を含有するベクターを複製することになる(Chiang et al.、上掲)。HPVからのEl及びE2は、BPV起点によって及び多くのHPVサブタイプの起点によってベクターを複製することになる(Chiang et al.、上掲)。本発明の全てのベクターと同様に、本発明のBPVベースのエピソーム発現ベクターは、宿主細胞の2〜5又は6分裂以上を通して存続しなければならない。
米国特許第7790446号明細書、及びAbroi et al. (2004) “Analysis of chromatin attachment and partitioning functions of bovine papillomavirus type 1 E2 protein. Journal of Virology 78:2100-13も参照されたく、これらには、BPV1 E2タンパク質依存性MME及びEBV EBNA1依存性FR分離/分配活性がプラスミドの複製とは無関係に機能することが示されている。EBNA1/FR及びE2/MMEの安定した維持機能を使用して、細胞複製起点の長期エピソーム維持を確実にすることができる。
パポーバウイルスベースの、自己複製、エピソーム発現ベクター。本発明のベクターは、ヒトパポーバウイルスBKゲノムDNA分子に由来することもある。例えば、BKウイルスゲノムを制限酵素EcoRI及びBamHIで消化して、ベクター上での安定した維持をもたらすことができるBKウイルス複製起点配列を含有する5キロベース(kb:kilobase)断片を産生させることができ(例えば、De Benedetti and Rhoads, Nucleic Acids Res.19:1925 (1991)を参照されたい)、BKウイルスの3.2kb断片を産生させることもできる(Cooper and Miron, Human Gene Therapy 4:557 (1993))。
本発明のコードされたAffimerコンストラクトを、環状又は直鎖状核酸として提供することができる。環状及び直鎖状核酸は、適切な対象細胞においてAffimerポリペプチドコード配列の発現を指示することができる。Affimerポリペプチドを発現させるための1つ又は2つ以上の核酸系は、キメラであってもよく、これは、その構成成分の少なくとも1つが、その他の構成成分のうちの少なくとも1つに対して異種であることを意味する。
ウイルスベクター
本発明においける使用に容易に適応される例示的なウイルスの遺伝子療法用の系は、プラスミド、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV:adeno-associated virus)、レトロウイルス、レンチウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、レオウイルス、麻疹ウイルス、セムリキ森林ウイルス、及びこれらに類するものを含む。好ましいウイルスベクターは、非必須遺伝子が、エピトープをコードする核酸配列を有し、所望の配列を標的とする、核酸コンストラクトで置き換えられている、非細胞変性真核生物ウイルスに基づく。
さらに説明すると、コードされたAffimerを、遺伝子療法においてヒトへの使用が既に認可されている二本鎖DNAウイルスである、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス(AAV)を使用して、インビボで送達することができる。
アデノウイルスベクター
1つ又は2つ以上の核酸配列のインビボ送達のための1つの例示的な方法は、アデノウイルス(「AdV」:adenovirus)発現ベクターの使用を含む。AdVは、宿主ゲノムに組み込まれず、細胞分裂中に複製もしない、非エンベロープ型二本鎖DNAウイルスである。AdV媒介抗体遺伝子移入は、臨床に進んでいる様々な異なる疾患モデルにおいて治療有効性を示している。s.c.並びに特にi.v.及び筋肉内AdV注射による全身性mAb発現が、主として推進されている。Wold et al. (2013) “Adenovirus vectors for gene therapy, vaccination and cancer gene therapy” Curr Gene Ther. 13(6):421-33;及びDeal et al. “Engineering humoral immunity as prophylaxis or therapy” 2015 Curr Opin Immunol. 35:113-22を参照されたい。他の送達経路、例えば、コードするAdVの鼻腔内、気管内又は胸膜内投与によるものは、より局所的なmAb産生に重点を置いている。腫瘍溶解性ベクターとしてのAdVの使用は、特に、腫瘍部位でのコードされた抗体の生成のための、一般的なアプローチである。現行のアデノウイルス遺伝子送達系により送達される外来遺伝子は、エピソーム遺伝子であり、したがって、宿主細胞に対して低い遺伝毒性を有する。したがって、アデノウイルス遺伝子送達系を使用する遺伝子療法は、かなり安全でありうる。本発明は、アデノウイルスベクター及び送達系の形態で送達されるコードされたAffimerコンストラクトの発現による、コードされたAffimerポリペプチドの送達を特に企図している。
アデノウイルスは、その中等度のサイズのゲノム、操作の容易さ、高い力価、広い標的細胞範囲及び高い感染力のため、遺伝子送達ベクターとして通常用いられている。ウイルスゲノムの両端は、ウイルスDNA複製及びパッケージングに必要なcisエレメントである、100〜200bpの逆位末端反復配列(ITR:inverted terminal repeat)を含有する。ゲノムのE1領域(E1A及びE1B)は、ウイルスゲノム及び少数の細胞遺伝子の転写の調節に関与するタンパク質をコードする。E2領域(E2A及びE2B)は、ウイルスDNA複製に関与するタンパク質をコードする。これまでに開発されたアデノウイルスベクターのうち、E1領域が欠失された複製不全アデノウイルスは、通常使用されており、本発明のコードされたAffimerコンストラクトを生成するためのAdVの1つの例示的選択肢の代表である。アデノウイルスベクターにおける欠失E3領域は、導入遺伝子の挿入部位を提供しうる(Thimmappaya, B. et al., Cell, 31:543-551(1982);及びRiordan, J. R. et al., Science, 245:1066-1073(1989))。
「アデノウイルス発現ベクター」は、(a)コンストラクトのパッケージングを支持するのに十分な、及び(b)Affimerポリペプチド(コードされたAffimer配列)を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現させるのに十分な、アデノウイルス配列を含有するコンストラクトを含むことを意味する。ある特定の実施形態において、コードされたAffimerの配列は、DAプロモーター領域に挿入されることがある。例示的実施形態によれば、組換えアデノウイルスは、欠失E1B及びE3領域を含み、コードされたAffimerのヌクレオチド配列がその欠失E1B及びE3領域に挿入される。
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター
AAV(又は組換えAAVについては「rAAV」)は、分裂細胞と非分裂細胞の両方に感染することができる、非エンベロープ型の小さい一本鎖DNAウイルスである。AdVに類似して、AAVベースのベクターは、核内でエピソーム状態のままであり、わずかな組込みリスクしか示さない。AdV媒介遺伝子移入の一般にわずかな継続期間とは対照的に、導入遺伝子発現は、筋肉内組換えAAV(rAAV:recombinant AAV)ベクター送達後、何年にもわたって存続することができる。
ヒトリポタンパク質リパーゼ遺伝子をコードするrAAVである、アリポジーン・チパルボベック(Glybera(商標))は、2012年に欧州において最初の遺伝子治療製品として認可された。それ以来、様々なrAAVベースの遺伝子治療製品が、現在、臨床評価中である。抗体遺伝子移入の文脈において、様々な報告により、mAbをコードしているrAAVの筋肉内注射後にマウスにおいて抗ヒト免疫不全ウイルス(HIV:human immune deficiency virus)のインビボ産生が実証されている。併用療法についてのrAAVベクターの可能性も、すなわち、2つのmAbを発現させることにより、実証されている。AdVに類似して、筋肉内及びi.v.rAAV投与が、最も多く遂行されている。Deal et al.“Engineering humoral immunity as prophylaxis or therapy” 2015 Curr Opin Immunol.35:113-22において概説されている。様々な追加の送達部位も、頭蓋内、鼻腔内、硝子体内、くも膜下腔内、胸膜内及び腹腔内経路を含む、より局所的な治療の効果を達成することが実証されている。抗体遺伝子移入について実証されたrAAVの有用性から、本発明は、インビボでのコードされたAffimer配列の送達のためのrAAV系の使用、及びrAAVコンストラクトの発現の結果としての患者の体内でのAffimerポリペプチドの産生も、特に企図している。
AAVにとっての1つの重要な特徴は、これらの遺伝子移入ウイルスは、非分裂細胞及び様々な細胞型に感染することができることであり、本発明のコードされたAffimer送達系の構築に有用なものとなる。例示的なAAVベクターの使用及び調製についての詳細な記述は、例えば、米国特許第5,139,941号明細書及び同第4,797,368号明細書、並びにLaFace et al, Viology, 162:483486 (1988)、Zhou et al., Exp.Hematol.(NY), 21:928-933 (1993)、Walsh et al, J. Clin.Invest., 94:1440-1448(1994) 及びFlotte et al., Gene Therapy, 2:29-37(1995)において見つけられる。AAVは、その安全性のため送達ビヒクルの良好な選択肢であり、すなわち、遺伝子改変されたもの(組換え体)は宿主ゲノムに組み込まれない。同様に、AAVは、病原性でなく、いかなる疾患にも関連しない。ウイルスコード配列の除去は、ウイルスゲノム発現に対する免疫反応を最小限に抑え、したがって、組換えAAVは、炎症応答を誘発しない。
通常は、組換えAAVウイルスは、2つのAAV末端反復配列と隣接している所望の遺伝子(すなわち、Affimerポリペプチドのコード配列)を含有するプラスミド(McLaughlin et al., J. Virol., 62:1963-1973(1988); Samulski et al., J. Virol., 63:3822-3828(1989))と、末端反復配列のない野生型AAVコード配列を含有する発現プラスミド(McCarty et al., J. Virol., 65:2936-2945(1991))とをコトランスフェクトすることにより作製される。通常は、コードされたAffimerコンストラクトを含有するウイルスベクターは、Affimer含有ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、適する調節エレメントと、細胞形質導入を媒介するコードされたAffimerの発現に必要なエレメントとから組み立てられる。一実施形態において、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが用いられる。より具体的な実施形態において、AAVベクターは、AAV1、AAV6、又はAAV8である。
AAV ITRにより結合された、コードされたAffimer配列を保有するAAV発現ベクターは、主要オープンリーディングフレーム(「ORF」:open reading frame)がそこから切除されたAAVゲノムへの選択された配列の直接挿入によって、構築することができる。
真核細胞のための発現制御配列は、プロモーターと、エンハンサー、例えば、免疫グロブリン遺伝子、SV40、サイトメガロウイルスなどに由来するもの(上記参照)と、スプライスドナー及びアクセプター部位を含みうるポリアデニル化配列とを通常は含む。ポリアデニル化配列は、一般に、導入遺伝子配列の後、3’ITR配列の前に挿入される。
これら及び他の一般的ベクター及び調節エレメントの選択は、従来的なことであり、多くのそのような配列を利用することができる。例えば、Sambrook et al.並びにそこに、例えば、3.18-3.26及び16.17-16.27頁に、引用されている参考文献、並びにAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, 1989を参照されたい。もちろん、全てのベクター及び発現制御配列が、本発明の導入遺伝子の全てを発現するために同じようによく機能するとは限らない。しかし、当業者は、本発明の範囲を逸脱することなくこれらの発現制御配列の中から選択することができる。当業者は、本願により提供されるガイダンスを使用して、適するプロモーター/エンハンサー配列を選択することができる。そのような選択は、通例のことであり、分子の限定でも、コンストラクトの限定でもない。
レトロウイルスベクター
コードされたAffimerコンストラクトの送達に関して有用な非細胞変性ウイルスは、レトロウイルスを含み、レトロウイルスの生活環は、ゲノムウイルスRNAのDNAへの逆転写とその後の宿主細胞DNAへのプロウイルス組込みを含む。レトロウイルスは、ヒト遺伝子療法試験用に認可されている。複製欠損性である(すなわち、所望のタンパク質の合成を指示することはできるが、感染粒子を製造することができない)レトロウイルスが、最も有用である。そのような遺伝子を変化させたレトロウイルス発現ベクターには、インビボでの遺伝子の高効率形質導入に対する一般的有用性がある。複製欠損レトロウイルスを産生するための標準的プロトコール(外因性遺伝物質をプラスミドに組み込むステップ、パッケージング細胞株にプラスミドをトランスフェクトするステップ、パッケージング細胞株により組換えレトロウイルスを産生させるステップ、ウイルス粒子を組織培養培地から収集するステップ、及び標的細胞にウイルス粒子を感染させるステップを含む)は、当業者に公知である。
レトロウイルスベクターを構築するために、Affimerポリペプチドコード配列が、ある特定のウイルス配列の代わりにウイルスゲノムに挿入されて、複製欠損ウイルスが産生される。ビリオン(virion)を産生させるために、gag、pol及びenv遺伝子を含有するが長い末端反復配列(LTR:long terminal repeat)及びプサイ(_)構成成分のないパッケージング細胞株が、構築される(Mann et al., Cell, 33:153-159(1983))。サイトカイン遺伝子とLTRとプサイとを含有する組換えプラスミドが、この細胞株に導入された場合、プサイ配列により、組換えプラスミドのRNA転写物をウイルス粒子にパッケージングすることが可能になり、次いで、それらのウイルス粒子は、培養培地に分泌される(Nicolas and Rubinstein "Retroviral vectors," In: Vectors: A survey of molecular cloning vectors and their uses, Rodriguez and Denhardt (eds.), Stoneham: Butterworth, 494-513(1988))。次いで、組換えレトロウイルスを含有する培地は収集され、濃縮し、遺伝子送達系に使用してもよい。
そのような第2世代レトロウイルスベクターを使用する遺伝子移入成功が報告されている。Kasaharaら(Science, 266:1373-1376(1994))は、モロニーマウス白血病ウイルスのバリアントを調製した。この調製では、エリスロポエチン(EPO:erythropoietin)配列が、エンベロープ領域の代わりに挿入され、その結果として、新規結合特性を有するキメラタンパク質が産生される。恐らく、この第2世代レトロウイルスベクターの構築戦略に従って、本遺伝子送達系を構築することができる。
ある特定の実施形態において、レトロウイルスは、「ガンマレトロウイルス」であり、これは、レトロウイルスファミリーの属を指す。例示的ガンマレトロウイルスは、マウス幹細胞ウイルス、マウス白血病ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ肉腫ウイルス、及びトリ細胞内皮症ウイルスを含む。
ある特定の好ましい実施形態において、本発明における使用のためのレトロウイルスベクターは、レンチウイルスベクターであり、これは、分裂及び非分裂細胞に感染することができ、高ウイルス力価を通常生じさせることができる、レトロウイルスの属を指す。レンチウイルスの複数の例としては、HIV(ヒト免疫不全ウイルス;HIV1型及びHIV2型を含む);ウマ伝染性貧血ウイルス;ネコ免疫不全ウイルス(FIV:feline immunodeficiency virus);ウシ免疫不全ウイルス(BIV:bovine immune deficiency virus);及びサル免疫不全ウイルス(SIV:simian immunodeficiency virus)が挙げられる。
コードされたAffimerの送達及び発現に使用することができる広く使用されているレトロウイルスベクターの別のクラスは、マウス白血病ウイルス(MuLV:murine leukemia virus)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV:gibbon ape leukemia virus)及びこれらの組合せに基づくものを含む(例えば、Buchscher et al., J. Virol. 66:2731-2739, 1992; Johann et al., J. Virol. 66: 1635-1640, 1992; Sommerfelt et al., Virol. 176:58-59, 1990; Wilson et al., J. Virol. 63:2374-2378, 1989; Miller et al., J. Virol. 65:2220-2224, 1991;及びPCT/US94/05700を参照されたい)。
本発明において同じく使用することができるさらに他のレトロウイルスベクターは、例えば、ヒト泡沫状ウイルス(HFV:human foamy virus)又はスプーマウイルス属(Spumavirus genera)内の他のウイルスに基づくベクターを含む。泡沫状ウイルス(FV:Foamy virus)は、今日公知の最大のレトロウイルスであり、全ての非ヒト霊長類種(primate species)を含む種々の哺乳動物間に広範に存在するが、ヒトには非存在ある。この完全な非病原性により、FVベクターは、ヒトにおける遺伝子療法に理想的な遺伝子移入ビヒクルと見なされ、遺伝子送達系としてのFVベクターは、HIV由来ベクター及びまたガンマレトロウイルス由来ベクターと明確に区別される。
本明細書における使用に適するレトロウイルスベクターは、例えば、米国特許第5,399,346号明細書及び同第5,252,479号明細書に、並びにWIPO公報国際公開第92/07573号パンフレット、国際公開第90/06997号パンフレット、国際公開第89/05345号パンフレット、国際公開第92/05266号パンフレット及び国際公開第92/14829号パンフレットに記載されており、これらは、そのようなレトロウイルスベクターを使用してヒト細胞に核酸を効率的に導入する方法の記載を提供している。他のレトロウイルスベクターとしては、例えば、マウス乳がんウイルスベクター(例えば、Shackleford et al., Proc.Natl.Acad. Sci. U.S.A.85:9655-9659, 1998)、レンチウイルス、及びこれらに類するものが挙げられる。
Affimerポリペプチドをコードする導入遺伝子の送達に容易に適応させることができる追加のレトロウイルス送達系としては、単に説明のために、公開PCT出願国際公開第2010/045002号パンフレット、国際公開第2010/148203号パンフレット、国際公開第2011/126864号パンフレット、国際公開第2012/058673号パンフレット、国際公開第2014/066700号パンフレット、国際公開第2015/021077号パンフレット、国際公開第2015/148683号パンフレット、国際公開第2017/040815号パンフレットが挙げられ、これら参考特許文献の各々についての明細書及び図面は、参照により本明細書に組み入れられる。
ある特定の実施形態において、レトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムのパッケージング及び組み込みに必要なcis作用性配列の全て、すなわち、(a)ベクターの各末端に、長い末端反復配列(LTR)又はその部分;(b)マイナス及びプラスストランドDNA合成のためのプライマー結合部位;及び(c)ゲノムRNAのビリオンへの組込みに必要なパッケージングシグナルを含有する。レトロウイルスベクターに関するさらなる詳細は、Boesen, et al., 1994, Biotherapy 6:291-302; Clowes, et ai, 1994, J. Clin.Invest. 93:644-651; Kiem, et al., 1994, Blood 83: 1467-1473; Salmons and Gunzberg, 1993, Human Gene Therapy 4: 129-141; Miller, et al., 1993, Meth. Enzymol.217:581- 599;及びGrossman and Wilson, 1993, Curr. Opin. in Genetics and Devel. 3: 110-1 14において見いだすことができる。
ある特定の実施形態において、レトロウイルスは、レトロウイルスGAGタンパク質をコードする核酸配列;レトロウイルスPOLタンパク質をコードする核酸配列;レトロウイルスエンベロープをコードする核酸配列;オンコレトロウイルスポリヌクレオチド配列の5’及び3’末端に長い末端反復(LTR)配列を含むオンコレトロウイルスポリヌクレオチド配列;及びAffimerポリペプチドのコード配列に作動可能に連結された配列内リボソーム進入部位(IRES:internal ribosome entry site)を含むカセットであって、3’LTRのU3領域の5’側、及びレトロウイルスエンベロープをコードする配列の3’側に位置する、カセット;並びに標的細胞内への逆転写、パッケージング及び組込みのためのcis作用性配列を含む、複製可能な組換えレトロウイルスである。
ある特定の実施形態において、レトロウイルスは、レトロウイルスGAGタンパク質;レトロウイルスPOLタンパク質;レトロウイルスエンベロープ;レトロウイルスポリヌクレオチド配列の3’末端に長い末端反復(LTR)配列を含み、レトロウイルスポリヌクレオチド配列の5’末端に、哺乳動物細胞における発現に適する、プロモーター配列を含み、gag核酸ドメイン、pol核酸ドメイン及びenv核酸ドメインを含む、レトロウイルスポリヌクレオチド;及びコードされたAffimer配列を含むカセットであって、3’LTRの5’側に位置し、レトロウイルスエンベロープをコードするenv核酸ドメインの3’側に作動可能に連結されている、カセット;並びに標的細胞内への逆転写、パッケージング及び組込みに必要なcis作用性配列を含む、複製可能な組換えレトロウイルスである。
複製可能な組換えレトロウイルスの、ある特定の好ましい実施形態において、エンベロープは、両種指向性、多種指向性、異種指向性、10A1、GALV、ヒヒ内在性ウイルス、RD114、ラブドウイルス、アルファウイルス、麻疹及びインフルエンザウイルスエンベロープのものから選択される。
複製可能な組換えレトロウイルスの、ある特定の好ましい実施形態において、レトロウイルスポリヌクレオチド配列は、マウス白血病ウイルス(MLV:murine leukemia virus)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV:Moloney murine leukemia virus)、ネコ白血病ウイルス(FeLV:Feline leukemia virus)、ヒヒ内在性レトロウイルス(BEV:Baboon endogenous retrovirus)、ブタ内在性ウイルス(PERV:porcine endogenous virus)、ネコ由来レトロウイルスRD114、リスザルレトロウイルス、異種指向性マウス白血病ウイルス関連ウイルス(XMRV:Xenotropic murine leukemia virus-related virus)、トリ細胞内皮症ウイルス(REV:reticuloendotheliosis virus)、及びテナガザル白血病ウイルス(GALV:Gibbon ape leukemia virus)からなる群から選択されるウイルスから改変される。
複製可能な組換えレトロウイルスの、ある特定の好ましい実施形態において、レトロウイルスは、ガンマレトロウイルスである。
複製可能な組換えレトロウイルスの、ある特定の好ましい実施形態において、例えば、カセットの下流には、別のチェックポイント阻害剤ポリペプチド、共刺激ポリペプチド及び/又は免疫賦活性サイトカイン(単なる例として)などの、第2の治療用タンパク質のコード配列を含む第2のカセットがある。ある特定の事例では、第2のカセットは、第2の治療用タンパク質のコード配列に作動可能に連結された、配列内リボソーム進入部位(IRES)又はミニプロモーター又はpolIIIプロモーターを含むことができる。
複製可能な組換えレトロウイルスの、ある特定の好ましい実施形態において、それは、好ましくは、腫瘍微小環境の細胞に選択的に感染し、そのような細胞内で複製する、非溶解性、両種指向性レトロウイルス複製ベクターである。
発現コンストラクトとしての他のウイルスベクター
コードされたAffimerのベクター利用腫瘍内遺伝子移入に関して、腫瘍溶解性ウイルスには、明確な利点がある。それらは、腫瘍細胞を特異的に標的とすること、治療用Affimerポリペプチドの発現を後押し、抗腫瘍治療応答を増幅することができるからである。上に記載されたある特定のウイルス系と重複する腫瘍溶解性ウイルスは、選択的腫瘍細胞殺滅及び全身性抗腫瘍免疫の誘導によって、抗腫瘍応答を促進する。作用機序は、十分に解明されていないが、形質転換細胞内でのウイルス複製、初代細胞死の誘導、腫瘍細胞抗ウイルスエレメントとの相互作用、並びに自然及び適応抗腫瘍免疫の開始に依存する可能性が高い。Kaufman et al. 2015 “Oncolytic viruses: a new class of immunotherapy drugs” Nat Rev Drug Discov. 14(9):642-62において概説されている。現在臨床に用いられている腫瘍溶解性ウイルスの多くは、がん細胞により異常発現される細胞表面タンパク質に対する自然親和性を有する。今までに、AdV、ポックスウイルス、コクサッキーウイルス、ポリオウイルス、麻疹ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、レオウイルスなどが、初期臨床試験に入っている。2015年に、FDA及びEMAによって、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF:granulocyte-macrophage colony-stimulating factor)の遺伝子で武装された腫瘍溶解性ヘルペスウイルスである、タリモジーン・ラハーパレプベック(T−VEC:talimogene laherparepvec;Imlygic(商標))が認可された。腫瘍溶解性ウイルスの自己増殖性のため、腫瘍溶解性ウイルスは、導入遺伝子産物をウイルス複製とともに増幅することができ、それによって治療効果を最大にすることができるので、本発明のコードされたAffimer遺伝子移入の魅力的なプラットフォームとなる。Liu et al. 2008 “Oncolytic adenoviruses for cancer gene therapy” Methods Mol Biol. 433:243-58。
大きい融合タンパク質である、すなわち、単一Affimerドメイン以外に他のタンパク質ドメインを含む、Affimerポリペプチドの場合、局所腫瘍内発現は、固形腫瘍内への侵入不良を、それが問題となりうる場合及び場所で、克服するための魅力的な戦略を提示することができる。Beckman et al. (2007) “Antibody constructs in cancer therapy: protein engineering strategies to improve exposure in solid tumors” Cancer 109(2):170-9;及びDronca et al. 2015 “Immunomodulatory antibody therapy of cancer: the closer, the better” Clin Cancer Res. 21(5):944-6。同様に、コードされたAffimerコンストラクトの腫瘍内送達、及びAffimerポリペプチドの付随する局所発現は、より良好な治療指数を生じさせることができ、Affimerポリペプチドが全身送達(又は発現)されるときには、そうではなく、有効性のための有効腫瘍内濃度への到達が用量制限毒性により妨げられる。
チェックポイント阻害剤又は共刺激アゴニストなどの、本発明のがん免疫療法活性Affimerポリペプチドの場合、これらのAffimerの免疫調節性(immunomodulatory)の性質は、腫瘍溶解性ウイルスの使用に非常に適切である。実際、腫瘍溶解性ウイルス療法には、免疫チェックポイント阻害剤ネットワークを無効にすること、及びそれによってがんの中に炎症誘発性の環境を作り出すことが望ましい。腫瘍溶解性ウイルスと従来の免疫調節性mAb投与の組合せを評価するために、非常に多くの臨床試験が、現在進行中である。Kaufman et al. 2015 “Oncolytic viruses: a new class of immunotherapy drugs” Nat Rev Drug Discov.14(9):642-62;及びLichty et al. 2014 “Going viral with cancer immunotherapy” Nat Rev Cancer. 14(8):559-67。しかし、チェックポイント遮断mAbでの全身的治療は、重篤な免疫関連有害作用につながることがあり、その結果、局所療法、例えば、コードされたAffimerで武装した腫瘍溶解性ウイルスによる局所療法の機会が強調される。種々の研究がこのアプローチを推進しており、それらを対象のコードされたAffimerとの使用に容易に適応されうる。Diasらは、複製欠損AdV及び複製可能なAdVを抗ヒトCTLA−4 mAb(anti-human CTLA-4 mAb)で武装させた。Dias et al. 2012 “Targeted cancer immunotherapy with oncolytic adenovirus coding for a fully human monoclonal antibody specific for CTLA-4” Gene Ther. 19(10):988-98。最近記載された(及び本発明のコードされたAffimerとの使用に適応させることができる)別の系は、抗マウスプログラム細胞死タンパク質1(PD−1:programmed cell death protein 1)Fab、scFv又は完全長mAbでの武装化腫瘍溶解性ワクチンウイルスを含む。ウイルス複製を反映する腫瘍中のmAbレベルは、腫瘍モデルに依存して9又は30μg/mlの腫瘍内注射の3〜5日後にピークに達した。血清mAbレベルは、3倍又は4倍以上低いが同じ傾向を辿ったが、5日後にはmAbは検出されなくなった。腫瘍内に発現されたmAbは、注射の11日後までの限られた経過観察で、抗PD−1 mAbタンパク質の腫瘍内注射と比較して長く続いた。Fab及びscFv発現は、報告されなかった。抗PD−1 scFv又はmAbのどちらかで武装されたウイルスの抗腫瘍応答は、武装されていないウイルスより優れており、武装されていないウイルス注射と全身性抗PD−1 mAbタンパク質注射の組合せと同様に有効であった。Kleinpeter et al. 2016 “Vectorization in an oncolytic vaccinia virus of an antibody, a Fab and a scFv against programmed cell death-1 (PD-1) allows their intratumoral delivery and an improved tumor-growth inhibition” Oncoimmunology. 5(10):e1220467(オンライン)。また最近、抗PD−L1ミニ抗体(scFv CH2−CH3融合タンパク質)で武装された、腫瘍溶解性AdVとヘルパー依存性AdVとの組合せの腫瘍内投与により、マウスにおけるキメラ抗原受容体(CAR:chimeric antigen receptor)T細胞療法の抗腫瘍効果が改善された。局所的に産生される抗PD−L1ミニ抗体のメリットを、抗PD−L1 IgG注入とCAR T細胞とにより、及び武装されていないAdVの併用投与により、達成することができなかった。Tanoue et al 2017 “Armed oncolytic adenovirus expressing PD-L1 mini-body enhances anti-tumor effects of chimeric antigen receptor T-cells in solid tumors” Cancer Res. 77(8):2040-51。その系の、特にCAR T細胞療法と組み合わせての使用も、コードされたAffimerを標的腫瘍に送達する際の使用に企図される。
他のウイルスベクターを本発明の遺伝子送達系として利用することができる。ワクシニアウイルス(Puhlmann M. et al., Human Gene Therapy, 10:649-657(1999); Ridgeway, "Mammalian expression vectors," In: Vectors: A survey of molecular cloning vectors and their uses. Rodriguez and Denhardt, eds. Stoneham: Butterworth, 467-492(1988); Baichwal and Sugden, "Vectors for gene transfer derived from animal DNA viruses: Transient and stable expression of transferred genes," In: Kucherlapati R, ed. Gene transfer. New York: Plenum Press, 117-148(1986) 及びCoupar et al., Gene, 68:1-10(1988))、レンチウイルス(Wang G. et al., J. Clin.Invest., 104(11):R55-62(1999))、単純ヘルペスウイルス(Chamber R., et al., Proc.Natl.Acad.Sci USA, 92:1411-1415(1995))、ポックスウイルス(GCE, NJL, Krupa M, Esteban M., The poxvirus vectors MVA and NYVAC as gene delivery systems for vaccination against infectious diseases and cancer Curr Gene Ther 8(2):97-120(2008))、レオウイルス、麻疹ウイルス、セムリキ森林ウイルス及びポリオウイルスなどのウイルスに由来するベクターを、細胞に所望の遺伝子を移入するための本送達系において使用することができる。それらは、様々な哺乳動物細胞に複数の魅力的な特徴をもたらす。B型肝炎ウイルスも含まれる。
b.非ウイルスベクター
1990年に、Wolfらは、裸のプラスミドDNA(pDNA:plasmid DNA)のマウスの骨格筋への注射が、コードされたタンパク質の局所発現にどのようにして至るのかを示し、これが、DNAベースの治療薬の分野を始動させた。Wolff et al. 1990 “Direct gene transfer into mouse muscle in vivo” Science. 247(4949 Pt 1):1465-8を参照されたい。本発明のコードされたAffimerを送達するための「pDNA」の使用は、生物学的ベクターとしてのウイルスの必要性を放棄し、コードされたAffimer遺伝子移入の魅力的なプラットフォームを提示する。ウイルスベクターと比較して、pDNAは、免疫原性が低いと考えられ(例えば、反復投薬が可能になる)、産生、出荷及び保管コストが安く、はるかに長い有効期間を有する。核への進入後、pDNAは、非複製、非組込みエピソーム状態のままであり、有糸分裂時の核エンベロープの破壊中に喪失される。pDNAには、ウイルスベクターと比較して導入遺伝子のサイズに関して規定された制限がなく、そのモジュール的性質が、単純な分子クローニングを可能にし、そのため、治療使用のための操作及び設計が容易である。Hardee et al. 2017 “Advances in non-viral DNA vectors for gene therapy” Genes. 8(2):65。プラスミドは、進行中又は完了した遺伝子療法臨床試験の約17%に使用され、良好に耐容されること及び安全であることが示された。
DNA投与方法は、一般に、導入遺伝子発現に影響を及ぼしうる。コードされたAffimerのインビボでのDNA媒介遺伝子移入は、エレクトロポレーション又はハイドロダイナミックインジェクション(hydrodynamic injection)などの、抗体遺伝子移入に使用されるそのような物理的トランスフェクション方法を利用することができる。エレクトロポレーションは、細胞膜透過性の一過性の増大を誘導する、組織内の電場の伝播をもたらす。DNAのエレクトロトランスファーは、(i)原形質膜へのDNAの電気泳動と、(ii)DNA蓄積及び原形質膜との相互作用と、(iii)核へのDNAの細胞内輸送とを含む、マルチステッププロセスであり、細胞内輸送後に遺伝子発現が開始しうる。Heller LC. 2015 “Gene electrotransfer clinical trials” Adv Genet. 89:235-62。筋肉内、腫瘍内及び皮内投与は、臨床試験で評価されており、コードされたAffimerコンストラクトのエレクトロポレーションのための適切な標的組織でもある。
流体力学ベースのトランスフェクションは、大容量のpDNAのi.v.注射を利用して、DNA分子を血液循環から追い出し、組織に追い込む。他の潜在的に低侵襲性の物理的送達方法としては、ソノポレーション及びマグネトフェクションが挙げられる。DNA取込みは、分子を化学的送達ビヒクル(例えば、カチオン性脂質又はポリマー及び脂質ナノ粒子)と複合体化することにより改善することもできる。そのような手法を、コードされたAffimerのインビボでのDNA媒介遺伝子移入にも適用することができる。
送達方法の選択に加えて、コードされたAffimer導入遺伝子発現を、pDNAコンストラクトの構成を修飾することにより改善することができる。例えば、Hardee et al.2017 “Advances in non-viral DNA vectors for gene therapy” Genes 8(2):65;及びSimcikova et al.2015 “Towards effective non-viral gene delivery vector” Biotechnol Genet Eng Rev. 31(1-2):82-107を参照されたい。従来のpDNAは、転写ユニット及び細菌バックボーンからなる。転写ユニットは、コードされたAffimer配列を調節エレメントとともに有する。細菌バックボーンは、抗生物質耐性遺伝子、複製起点、非メチル化CpGモチーフ、及び潜在的クリプティック発現シグナルのようなエレメントを含む。これらの配列の一部は、プラスミドDNAの産生に必要とされる。しかし、一般に、治療用のコードされたAffimerによる遺伝子療法については、細菌バックボーンの存在は、望む結果をもたらさない可能性が高い。しかし、選択することができる様々な異なるタイプの利用可能な最小ベクターがあり、それらには、抗体遺伝子移入に既に使用されており、コードされたAffimer遺伝子移入に容易に適応させることができる、ミニサークルDNA(mcDNA:minicircle DNA)が含まれる。ミニサークルは、細菌配列を欠くプラスミド分子であり、組換え、制限及び/又は精製プロセスによって生成される。Simcikova et al. 2015 上掲。細菌バックボーンの排除は、より高いトランスフェクション効率及び持続的導入遺伝子発現を様々な組織において示した。
エレクトロポレーションによって対象に効率的に送達することができ、その中に含まれているコードされたAffimer配列を発現することができる、直鎖状核酸、又は直鎖状発現カセット(「LEC」:linear expression cassette)も、本明細書において提供される。LECは、いかなるリン酸エステル主鎖も欠くいかなる直鎖状DNAであってもよい。LECは、プロモーター、イントロン、終止コドン、及び/又はポリアデニル化シグナルを含有しうる。コードされたAffimerのコード配列の発現を、プロモーターにより制御することができる。
プラスミドベクター
ある特定の実施形態において、対象のコードされたAffimerコンストラクトは、プラスミドベクターとして送達される。プラスミドベクターは、当技術分野において詳しく記載されており、当業者に周知である。例えば、上で引用したSambrook et al., 1989を参照されたい。この数年間、プラスミドベクターは、抗原をコードしている遺伝子をインビボで細胞に送達するためのDNAワクチンとして使用されている。それらは、他のベクターと比べて安全性の懸念を低減させたため、この使用に特に有利である。しかし、宿主細胞と適合性のプロモーターを有するこれらのプラスミドは、プラスミド内の核酸によりコードされたペプチドエピトープを発現しうる。他のプラスミドは、当業者に周知である。加えて、DNAの特定の断片を除去する及び付加させるために制限酵素及びライゲーション反応使用して、プラスミドを注文設計することができる。様々な非経口、粘膜及び局所経路により、プラスミドを送達することができる。例えば、DNAプラスミドを筋肉内、皮内、皮下又は他の経路により注射することができる。それを鼻腔内噴霧剤又は滴剤により投与してもよく、肛門坐剤により投与してもよく、経口投与してもよい。遺伝子銃を使用してそれを表皮又は粘膜表面に投与してもよい。プラスミドを、水溶液で与えてもよく、金粒子上で乾燥された状態で与えてもよく、又はこれらに限定されないがリポソーム、デンドリマー、コクレエート(cochleate)及びマイクロカプセル化を含む、別のDNA送達系に関連して与えてもよい。
コードされたAffimerコンストラクトをインビボで組織に送達するためのプラスミドDNAの使用の応用及び効率を拡大するために、先行技術報告書におけるより高度なmAb発現又は全般的有効性を生じさせる原理に基づいて、種々のアプローチを推進することができる。第1の戦略は、複数回又は反復pDNA用量を与えることに単に依存する。Kitaguchi et al. 2005 “Immune deficiency enhances expression of recombinant human antibody in mice after nonviral in vivo gene transfer” Int J Mol Med 16(4):683-8;及びYamazaki et al. 2011 “Passive immune-prophylaxis against influenza virus infection by the expression of neutralizing anti-hemagglutinin monoclonal antibodies from plasmids” Jpn J Infect Dis. 64(1):40-9。別のアプローチは、送達アジュバントの使用に関する。ヒアルロン酸を一過性に破壊する酵素であるヒアルロニダーゼで筋肉を前処置すること、細胞外マトリックスの粘度を低下させ、DNA拡散を助長することにより、pDNAエレクトロトランスファーを増進することができる。Yamazaki et al. 2011、上掲;及びMcMahon et al. 2001 “Optimisation of electrotransfer of plasmid into skeletal muscle by pretreatment with hyaluronidase: increased expression with reduced muscle damage” Gene Ther. 8(16):1264-70。抗体遺伝子移入については、これは、30μgのpDNAで3.5μg/mlの血漿ピーク力価に達する、mAb発現のおおよそ3.5倍増加をもたらし、当業者は、コードされたAffimer遺伝子移入にこれを適応させることができるであろう。さらに別の戦略は、抗体又はカセット改変に重点を置く。コドン、RNA及びリーダー配列の最適化後、「最適化された」pDNAの筋肉内エレクトロトランスファーを用いてピーク血清mAb又はFab力価に到達した。例えば、Flingai et al. 2015 “Protection against dengue disease by synthetic nucleic acid antibody prophylaxis/immunotherapy” Sci Rep. 5:12616を参照されたい。
プラスミドの目的は、細胞又は組織への核酸配列の効率的送達、及び細胞又は組織における治療用Affimerポリペプチドの発現である。特に、プラスミドの目的は、高コピー数を達成し、プラスミド不安定性の潜在的原因を回避し、及びプラスミド選択手段をもたらすことでありうる。発現に関しては、核酸カセットは、コードされたAffimerの発現の必要エレメントをカセット内に含有する。発現は、挿入された遺伝子、核酸配列又は核酸カセットのプラスミドでの効率的転写を含む。したがって、一態様において、プラスミドは、Affimerポリペプチドのコード配列を含む発現カセットを含む、コードされたAffimerコンストラクトの発現のために提供され、転写ユニットとも呼ばれる。プラスミドが、エピトープ発現に適する環境に置かれたとき、転写ユニットは、Affimerポリペプチド、及びコンストラクトにコードされた他のあらゆるものを発現することになる。転写ユニットは、細胞免疫応答エレメントコード配列と転写により連結される、転写制御配列を含む。転写制御配列は、上に記載したものなどの、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター/エンハンサー配列などの、プロモーター/エンハンサー配列を含むことができる。しかし、ヒト患者細胞を含む、哺乳動物細胞における発現に適する様々な他のプロモーター配列が公知であり、本明細書において開示されるコンストラクトにおいてそれらを同様に使用することができることは、当業者には分かるであろう。Affimerポリペプチドの発現レベルは、関連プロモーターに、並びに関連エンハンサーエレメントの存在及び活性化に依存することになる。
ある特定の実施形態において、コードされたAffimer配列(所望のAffimerポリペプチドをコードする)を、転写、翻訳、RNA安定性及び複製のための調節エレメントを含有する(すなわち、転写制御配列を含む)発現プラスミドに、クローニングすることができる。そのような発現プラスミドは、当技術分野において周知であり、当業者は、組換えAffimerポリペプチドのインビボでの産生に適切な発現コンストラクトを設計することができるであろう。
ミニサークル
ミニサークル(mcDNA)ベースの抗体遺伝子移入も、コードされたAffimerの組織へのインビボでの送達に適応させることができる。ある特定の環境下では、非ウイルス遺伝子送達に使用されるプラスミドDNAは、許容され難い炎症応答を引き起こしうる。これが起こった場合の免疫毒性応答は、プラスミドDNAの細菌による伝播後のプラスミド上の非メチル化CpGモチーフ及びそれらの関連刺激配列の存在に、主として起因する。インビトロでのDNAの単純なメチル化は、炎症応答を低減させるのに十分でありうるが、遺伝子発現を低減させる結果となることがある。クローニングによるCpGアイランドの除去、又は非必須配列の排除が、炎症応答を低減させる成功手法となった。Yew et al. 2000 “Reduced inflammatory response to plasmid DNA vectors by elimination and inhibition of immunostimulatory CpG motifs” Mol Ther 1(3), 255-62。
細菌DNAは、哺乳動物DNAより平均4倍多いのCpGアイランドを含有するので、良い解決策は、プラスミド産生過程で遺伝子送達ベクターから細菌制御領域、例えば複製起点及び抗生物質耐性遺伝子を完全に排除することである。それ故、「親」プラスミドは、送達すべき遺伝子(この場合、コードされたAffimerコード配列)とこの発現に適する制御領域とを一般に含む「ミニサークル」、及び親プラスミドの残部を一般に含むミニプラスミドへと、組み換えられる。
細菌配列の除去は、効率的である必要があり、それ故、最小限の切除可能部位を使用するが、適切な−−好ましくは哺乳動物の−−制御領域下の遺伝子発現エレメントのみからなるスーパーコイルDNAミニサークルを作出する。ミニサークル産生のための一部の手法は、細菌ファージラムダ(λ)インテグラーゼ媒介組換えを使用してミニサークルDNAを産生する。例えば、Darquet, et al. 1997 Gene Ther 4(12): 1341-9; Darquet et al. 1999 Gene Ther 6(2): 209-18;及びKreiss, et al.1998 Appl Micbiol Biotechnol 49(5):560-7を参照されたい)。
したがって、本明細書に記載される核酸コンストラクトの実施形態をミニサークルDNAの形態でプロセシングすることができる。ミニサークルDNAは、いかなる原核生物ベクター部分も使われていない、小さい(2〜4kb)環状プラスミド誘導体に関連する。ミニサークルDNAベクターは、細菌DNA配列を含有しないので、外来と受け取られて破壊される可能性が低い。結果として、これらのベクターを、ある特定の従来のプラスミドと比較してより長期間にわたって発現させることができる。ミニサークルのより小さいサイズもまた、それらのクローニング能力を伸ばし、細胞へのそれらの送達を容易にする。ミニサークルDNAを産生するためのキットは、当技術分野において公知であり、市販されている(System Biosciences, Inc社、Palo Alto、Calif.)。ミニサークルDNAに関する情報は、Dietz et al., Vector Engineering and Delivery Molecular Therapy (2013); 21 8, 1526-1535及びHou et al., Molecular Therapy-Methods & Clinical Development, Article number: 14062 (2015) doi:10.1038/mtm.2014.62に提供されている。ミニサークルDNAに関するさらなる情報は、Chen Z Y, He C Y, Ehrhardt A, Kay M A. Mol Ther.2003 September; 8(3):495-500に提供されており、ミニサークルDNAベクターは、持続発現を達成し、活性クロマチン及び転写レベルによって反映される。Gracey Maniar L E, Maniar J M, Chen Z Y, Lu J, Fire A Z, Kay M A. Mol Ther. 2013 January; 21(1):131-8。
非限定的な例として、ミニサークルDNAベクターは、次のように産生されうる。コードされたAffimerコード配列をその発現のための制御エレメントとともに含む発現カセットに、リコンビナーゼの結合部位が隣接される。リコンビナーゼをコードする配列は、発現カセットの外部に位置し、誘導性発現のためのエレメント(例えば、誘導性プロモーターなど)を含む。リコンビナーゼ発現の誘導時に、ベクターDNAが組み換えられ、その結果、2つの明確に異なる環状DNA分子が得られる。環状DNA分子の一方は、比較的小さく、コードされたAffimerのための発現カセットを含むミニサークルを形成し、このミニサークルDNAベクターは、いかなる細菌DNA配列も欠く。第2の環状DNA配列は、細菌配列とリコンビナーゼをコードする配列とを含む、残りのベクター配列を含有する。次いで、コードされたAffimer配列を含有するミニサークルDNAが、別途、単離及び精製されうる。ある特定の実施形態において、ミニサークルDNAベクターは、pBAD.Φ.C31.hFIX及びpBAD.Φ.C31.RHBに類似したプラスミドを使用して産生されうる。例えば、Chen et al. (2003) Mol. Ther.8:495-500を参照されたい。
ミニサークルDNAベクターの作出に使用することができる例示的リコンビナーゼとしては、ストレプトマイセス属(Streptomyces)バクテリオファージΦ31インテグラーゼ、Creリコンビナーゼ、及びλインテグラーゼ/DNAトポイソメラーゼIV複合体が挙げられるが、これらに限定されない。これらのリコンビナーゼの各々は、明確に異なる部位間の組換えを触媒する。例えば、Φ31インテグラーゼは、対応するattP部位とattB部位との間の組換えを触媒し、Creリコンビナーゼは、loxP部位間の組換えを触媒し、λインテグラーゼ/DNAトポイソメラーゼIV複合体は、バクテリオファージλ attP部位とattB部位との間の組換えを触媒する。例えば、Φ31インテグラーゼを用いる、又はλ isタンパク質の非存在下でλインテグラーゼを用いるなどの、ある特定の実施形態において、リコンビナーゼは、不可逆的反応を媒介して、環状産物の特有の集団を生じさせ、したがって高収率をもたらす。例えば、Creリコンビナーゼを用いる、又はλ isタンパク質の存在下でλインテグラーゼを用いるなどの、他の実施形態において、リコンビナーゼは、可逆的反応を媒介して、最大の環状産物を生じさせ、したがってより低い収率をもたらす。高効率で組み換わって、ミニサークル分子上に機能が低下したP71/66部位と、ミニサークル分子上に野生型loxP部位とを生じさせる、ミュータントloxP71及びloxP66部位を用いることによって、平衡をミニサークルDNA産物の産生の方にシフトさせることにより、Creリコンビナーゼによる可逆的反応を操作することができる。
米国特許出願公開第20170342424号明細書にも、組換え部位で組換えを引き起こす酵素に曝露される親プラスミドを使用する系であって、それによって、(i)コードされたAffimer配列を含むミニサークルと、(ii)親プラスミドの残部を含むミニプラスミドとを形成する、系が記載されている。一方の組換え部位は、5’末端が修飾され、したがって、酵素とのその反応が野生型部位より効率が低く、他方の組換え部位は、3’末端が修飾され、したがって、酵素とのその反応が野生型部位より効率が低く、両方の修飾部位は、組換え後にミニサークル内に位置する。これは、ミニサークルの形成に有利に働く。
c.コードされたAffimerのRNA媒介遺伝子移入
本発明のコードされたAffimerポリペプチドについての例示的核酸又はポリヌクレオチドとしては、リボ核酸(RNA:ribonucleic acid)、デオキシリボ核酸(DNA:deoxyribonucleic acid)、トレオース核酸(TNA:threose nucleic acid)、グリコール核酸(GNA:glycol nucleic acid)、ペプチド核酸(PNA:peptide nucleic acid)、ロックド核酸(LNA:locked nucleic acid、これは、β−D−リボ立体配置を有するLNA、a−L−リボ立体配置を有するa−LNA(LNAのジアステレオマー)、2’−アミノ官能化を有する2’−アミノLNA、及び2’−アミノ官能化を有する2’−アミノ−a−LNAを含む)、エチレン核酸(ENA:ethylene nucleic acid)、シクロヘキセニル核酸(CeNA:cyclohexenyl nucleic acid)、又はこれらのハイブリッド若しくは組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
mRNAは、当業者が本発明のコードされたAffimerコンストラクトの送達に適応させることができる、抗体遺伝子移入のための新たなプラットフォームを提示する。現在の結果は、かなり異なるが、ある特定の事例では、mRNAコンストラクトは、生じる血清mAb力価の点からウイルスベクターと肩を並べることができるように見える。レベルは、mRNA投与後数時間以内に治療に妥当な範囲内になった。これは、DNAと比較して速度の顕著なシフトである。DNAに通常必要とされる物理的方法ではなく、mRNAトランスフェクションのための脂質ナノ粒子(LNP:lipid nanoparticle)の使用は、ある特定の実施形態では応用範囲に対して有意な利点をもたらすことができる。
彼らの1990年の研究において、Wolffら(1990、上掲)は、pDNAに加えて、インビトロ転写(IVT:in vitro transcribed )mRNAの筋肉内注射も、コードされたタンパク質の局所発現に至ることを見いだした。mRNAは、その時点ではその低い安定性のためDNAほど活発には探求されなかった。過去数年にわたる進展により、mRNAは、遺伝子移入ツールとしてDNA及びウイルスベクターに追いつくことができた。Sahin et al. (2014) “mRNA-based therapeutics: developing a new class of drugs” Nat Rev Drug Discov. 13(10):759-80において概説されている。概念上は、これらの発現プラットフォームに関して複数の差がある。mRNAは、機能性になるために核に進入する必要がない。細胞質に到達すると、mRNAは、即座に翻訳される。mRNAベースの治療薬は、DNA媒介又はウイルスベクター媒介遺伝子移入と比較してより一過性に発現され、宿主ゲノムにおける挿入変異のリスクを課さない。mRNA産生は、比較的単純かつ安価である。投与に関しては、エレクトロポレーションを使用してmRNA取込みを増進することができる。Broderick et al. 2017 “Enhanced delivery of DNA or RNA vaccines by electroporation” Methods Mol Biol. 2017;1499:193-200。しかし、最大の焦点は、非物理的トランスフェクション方法に移行した。実際、様々な組織における投与及びi.v.投与のための安全であり、非常に効率的なmRNA担体であることが証明された、脂質ナノ粒子(LNP)を含む、様々なmRNA複合製剤が開発されてきた。Pardi et al. 2015 “Expression kinetics of nucleoside-modified mRNA delivered in lipid nanoparticles to mice by various routes” J Control Release 217:345-51。この進展に合わせて、IVT mRNAは、臨床評価ステージに達した。
Beissertら国際公開第2017162266号パンフレット"RNA Replicon for Versatile and Efficient Gene Expression"には、本発明のAffimerの効率的発現に適する、例えば、腫瘍の予防及び治療のための免疫療法処置に適する、薬剤及び方法が記載されている。例えば、Affimerポリペプチドコード配列を、アルファウイルス5’複製認識配列からのものなどの、5’複製認識配列を含むRNAレプリコンとして備えさせることができる。ある特定の実施形態において、RNAレプリコンは、(修飾された)5’複製認識配列と、Affimerポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム、特に、5’複製認識配列から下流に位置するオープンリーディングフレームとを含み、例えば、5’複製認識配列とオープンリーディングフレームは、重複せず、例えば、5’複製認識配列は、機能性開始コドンを含有せず、好ましくは、いかなる開始コドンも含有しない。より好ましくは、Affimerポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームの開始コドンは、RNAレプリコンの5’→3’方向で存在する。
ある特定の実施形態において、免疫活性化を防止するために、修飾ヌクレオチドをインビトロ転写mRNAに組み込むことができる。ある特定の実施形態において、IVT RNAは、m7G5’ppp5’G2’−O−Met−キャップIVTのような、5’キャップされたものでありうる。修飾mRNAの効率的翻訳を、二本鎖RNAを除去することにより確保することができる。さらに、5’及び3’UTR並びにポリ(A)テールを、細胞内安定性及び翻訳効率改善のために最適化することができる。例えば、Stadler et al.(2017) Nature Medicine 23:815-817及びKariko et al.国際公開第2017/036889号パンフレット"Method for Reducing Immunogenicity of RNA"を参照されたい。
ある特定の実施形態において、AffimerポリペプチドをコードするmRNAは、本明細書に記載される少なくとも1つの化学的修飾を含みうる。非限定的な例として、化学的修飾は、1−メチルプソイドウリジン、5−メチルシトシン、又は1−メチルプソイドウリジン及び5−メチルシトシンでありうる。一実施形態において、インビトロ転写(IVT)酵素的合成方法のみを使用して作製される本発明の1つ又は2つ以上のAffimerポリペプチドをコードする直鎖状ポリヌクレオチドは、「IVTポリヌクレオチド」と呼ばれる。IVTポリヌクレオチドを作製する方法は、当技術分野において公知であり、PCT出願国際公開第2013/151666号パンフレットに記載されており、その内容は、それら全体が参照により本明細書に組み入れられる。
別の実施形態において、本発明のAffimerポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、サイズ及び/又は化学的修飾パターン、化学的修飾位置、化学的修飾パーセント若しくは化学的修飾集団が異なる部分又は領域を有し、前述のものの組合せは、「キメラポリヌクレオチド」として公知である。本発明による「キメラ」は、2つ又は3つ以上の不連続又は異種部分若しくは領域を有する実体である。本明細書において使用される場合、ポリヌクレオチドの「部分」又は「領域」は、ポリヌクレオチドの全長未満である、ポリヌクレオチドの任意の一部分と定義される。そのようなコンストラクトは、例えば、PCT出願国際公開第2015/034928号パンフレットにおいて教示されている。
さらに別の実施形態において、環状である本発明のポリヌクレオチドは、「環状ポリヌクレオチド」又は「circP」として公知である。本明細書において使用される場合、「環状ポリヌクレオチド」又は「circP」は、RNAと実質的に同様に動作し、RNAの特性を有する、一本鎖環状ポリヌクレオチドを意味する。用語「環状」は、circPの任意の二次又は三次立体配置を包含するように意図される。そのようなコンストラクトは、例えば、PCT出願国際公開第2015/034925号パンフレット及び国際公開第2015/034928号パンフレットにおいて教示されており、それらの各々の内容は、それら全体が参照により本明細書に組み入れられる。
本発明のAffimerポリペプチドをコードするために使用することができる例示的mRNA(及び他のポリヌクレオチド)は、例えば、PCT公報国際公開第2017/049275号パンフレット、国際公開第2016/118724号パンフレット、国際公開第2016/118725号パンフレット、国際公開第2016/011226号パンフレット、国際公開第2015/196128号パンフレット、国際公開第2015/196130号パンフレット、国際公開第2015/196118号パンフレット、国際公開第2015/089511号と、国際公開第2015/105926号パンフレット(この最後のものは、発明の名称が「抗体のインビボ産生のためのポリヌクレオチド(Polynucleotides for the In Vivo Production Of Antibodies)」である)の明細書及び図から適応させることができるものを含み、それらの各々は、参照により本明細書に組み入れられる。
エレクトロポレーションは、下に記載される通り、mRNA又は他のポリヌクレオチドを細胞に導入するための1つの例示的方法である。
脂質含有ナノ粒子組成物は、様々なRNA(及び本明細書に記載される関連ポリヌクレオチド)のための細胞及び/又は細胞内区画への輸送ビヒクルとして有効と証明された。これらの組成物は、1つ又は2つ以上の「カチオン性」及び/又はイオン化可能な脂質、リン脂質(多不飽和脂質を含む)、構造脂質(例えば、ステロール)、並びにポリエチレングリコールを含有する脂質(PEG脂質)を、一般に含む。カチオン性及び/又はイオン化可能な脂質には、例えば、容易にプロトン化されうるアミン含有脂質が含まれる。
d.コードされたAffimerコンストラクトの標的細胞への送達
遺伝子送達系の宿主細胞への導入は、当業者に公知の様々な方法によって行うことができる。
本遺伝子送達系が、ウイルスベクターコンストラクトに基づいて構築される場合、当技術分野において公知の従来の感染方法のように、送達を行うことができる。
ウイルス性及び非ウイルス性両方のコードされたAffimerコンストラクトの送達を増進する物理的方法としては、エレクトロポレーション(Neumann, E. et al., EMBO J., 1:841(1982);及びTur-Kaspa et al., Mol.Cell Biol., 6:716-718(1986));DNAを(例えば、金)粒子上に担持して細胞へのDNAの侵入を強制的に果たす遺伝子ボンバードメント(Yang et al., Proc.Natl.Acad.Sci., 87:9568-9572 (1990));ソノポレーション;マグネトフェクション;流体力学的送達;及びこれらに類するものが挙げられ、それらの全てが当業者に公知である。
エレクトロポレーション
ここ数年で、タンパク質のインビボ産生に利用されるプラスミドDNA送達技術は、大幅に進歩した。これには、ヒト細胞における発現のためのコドン最適化、mRNA安定性を改善するためのRNA最適化、並びにリボソームレベルでのより効率的な翻訳、翻訳効率を向上させるための特定のリーダー配列の付加、インビボでの産生をさらに増進するための合成インサートの作出、及びインビボ送達を改善するための適応エレクトロポレーション(EP:electroporation)送達プロトコールの使用が含まれる。EPは、DNAの細胞内へのより効率的な進入を可能にする電場を発生させることにより、プラスミドDNAの送達を支援する。インビボエレクトロポレーションは、多くの異なる組織へのプラスミドDNAの効率的送達のための使用に成功した、遺伝子送達手法である。Kim et al. “Gene therapy using plasmid DNA-encoded anti-HER2 antibody for cancers that overexpress HER2” (2016) Cancer Gene Ther. 23(10): 341-347は、血清中で高度で、持続的な抗体発現を生じさせる結果となる、プラスミドの筋肉内注射及びインビボエレクトロポレーションのためのベクター及びエレクトロポレーションシステムを教示しており、Kimらのプラスミド及びエレクトロポレーションシステムを、本発明のコードされたAffimerを発現させるためのプラスミドのインビボ送達に容易に適応させることができる。
したがって、本開示のある特定の実施形態において、コードされたAffimerコンストラクトは、エレクトロポレーションによって標的細胞に導入される。
可逆的細孔を細胞膜に形成させるのに有効なエネルギーのパルスを哺乳動物の所望の組織に送達するように構成することができ、エネルギーのパルスが、ユーザーにより入力された予め設定された電流に類似した定電流であることが好ましい、エレクトロポレーションデバイスを使用して、エレクトロポレーションによる組成物の投与を遂行することができる。エレクトロポレーションデバイスは、エレクトロポレーション構成要素と電極集合体又はハンドル集合体とを具備することができる。エレクトロポレーション構成要素は、エレクトロポレーションデバイスの様々な要素の1つ又は2つ以上を具備すること及び組み入れることができ、以下:、制御器、電流波形発生器、インピーダンステスター、波形ロガー、入力要素、ステータス報告要素、通信ポート、記憶構造要素、電源、及び電源スイッチが挙げられる。インビボエレクトロポレーションデバイス、例えば、CELLECTRA EPシステム(VGX Pharmaceuticals社、Blue Bell、Pa.)又はElgenエレクトロポレーター(Genetronics社、San Diego、Calif.)を使用してエレクトロポレーションを遂行して、プラスミドによる細胞のトランスフェクションを助長することができる。
エレクトロポレーション構成要素は、エレクトロポレーションデバイスの1つの要素として機能するこがもあり、他の要素は、エレクトロポレーション構成要素と通信している別の要素(又は構成要素)である。エレクトロポレーション構成要素は、エレクトロポレーションデバイスの1つより多くの要素として機能することもあり、これらの要素は、エレクトロポレーション構成要素から離れているエレクトロポレーションデバイスのさらに他の要素と通信していることもある。1つの電気機械又は機械デバイスの一部として存在するエレクトロポレーションデバイスの要素は、1つのデバイスとして機能することも、互いに通信している別々の要素として機能することもできるので、限定されない可能性がある。エレクトロポレーション構成要素は、所望の組織において定電流を生じさせるエネルギーパルスを送達することが可能でありえ、フィードバック機構を具備する。エレクトロポレーション要素からエネルギーパルスを受信し、電極によって所望の組織にそれを送達する、電極集合体は、空間的配置で複数の電極を有する電極アレイを具備することもある。複数の電極のうちの少なくとも1つは、エネルギーパルスの送達中は中性であり、所望の組織におけるインピーダンスを測定し、そのインピーダンスをエレクトロポレーション構成要素に伝える。フィードバック機構は、測定されたインピーダンスを受信することができ、エレクトロポレーション構成要素により送達されるエネルギーパルスを、定電流を維持するように調整することができる。
複数の電極は、分散パターンでエネルギーパルスを送達することができる。複数の電極は、プログラムされたシーケンスのもとで電極の制御によって分散パターンでエネルギーパルスを送達することができ、このプログラムされたシーケンスは、ユーザーによりエレクトロポレーション構成要素に入力される。プログラムされたシーケンスは、順次送達される複数のパルスを含むことができ、複数のパルスの各パルスは、インピーダンスを測定する1つの中性電極を伴う少なくとも2つの活性電極によって送達され、複数のパルスの後続のパルスは、インピーダンスを測定する1つの中性電極を伴う少なくとも2つの活性電極のうちの異なる1つによって送達される。
フィードバック機構は、ハードウェア、又はソフトウェアにより実行されることもある。フィードバック機構は、アナログ閉ループ回路により実行されることもある。フィードバックは、50μs、20μs、10μs又は1μsごとに発生するが、好ましくは、リアルタイムフィードバック又は瞬間的(すなわち、応答時間を決定するための利用可能な手法により決定して実質的に瞬間的)である。中性電極は、所望の組織におけるインピーダンスを測定し、インピーダンスをフィードバック機構に伝えることができ、フィードバック機構は、インピーダンスに応答し、予め設定された電流に類似した値で定電流を維持するようにエネルギーパルスを調整する。フィードバック機構は、エネルギーパルスの送達中、継続的かつ瞬時に定電流を維持することができる。
本発明のコードされたAffimerコンストラクトの送達を助長することができるエレクトロポレーションデバイス及びエレクトロポレーション方法の例としては、米国特許第7,245,963号明細書、同第6,302,874号明細書、同第5,676,646号明細書、同第6,241,701号明細書、同第6,233,482号明細書、同第6,216,034号明細書、同第6,208,893号明細書、同第6,192,270号明細書、同第6,181,964号明細書、同第6,150,148号明細書、同第6,120,493号明細書、同第6,096,020号明細書、同第6,068,650号明細書、及び同第5,702,359号明細書に記載されているものが挙げられ、それらの内容は、それら全体が参照により本明細書に組み入れられる。エレクトロポレーションを、最小侵襲性デバイスによって行うことができる。
ある特定の実施形態において、エレクトロポレーションは、最小侵襲性エレクトロポレーションデバイス(「MID」:minimally invasive electroporation device)を使用して行われる。デバイスは、中空針、DNAカセット、及び流体送達手段を具備することがあり、このデバイスは、使用時に流体送達手段を作動させて、コードされたAffimer核酸コンストラクトを体組織に、該体組織への針の挿入中に、同時に(例えば、自動的に)注射するように構成される。これには、針が挿入されているときに徐々にDNA及び関連流体を注射することができることにより、流体が体組織全体にわたってより均一に分配されることになるという利点がある。注射されるDNAがより広い領域にわたって分配されるため、注射中に経験される疼痛を低減することができる。
MIDは、コードされたAffimer核酸コンストラクトを、針を使用せずに組織に注射することができる。MIDは、コードされたAffimer核酸コンストラクトを、核酸が組織の表面に穴を空けて、下にある組織及び/又は筋肉に進入するような力で、小さい流れ又はジェットとして、注射することができる。小さい流れ又はジェットを推進する力は、瞬時に微小開口部を通る二酸化炭素などの圧縮ガスの膨張により提供されることもある。最小侵襲性エレクトロポレーションデバイス及びそれらを使用する方法の例は、米国特許出願公開第20080234655号明細書、米国特許第6,520,950号明細書、米国特許第7,171,264号明細書、米国特許第6,208,893号明細書、米国特許第6,009,347号明細書、米国特許第6,120,493号明細書、米国特許第7,245,963号明細書、米国特許第7,328,064号明細書、及び米国特許第6,763,264号明細書に記載されており、それらの各々の内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
MIDは、組織に無痛で穴を空ける液体の高速ジェットを生じさせる注射器を具備することがある。そのような無針注射器は、市販されている。本明細書において利用されうる無針注射器の例としては、米国特許第3,805,783号明細書、同第4,447,223号明細書、同第5,505,697号明細書及び同第4,342,310号明細書に記載されているものが挙げられ、それらの各々の内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
直接又は間接的エレクトロトランスファーに適する形態での所望のコードされたAffimer核酸コンストラクトを、治療すべき組織に、無針注射器を使用して、通常は、組織表面を注射器と接触させて、核酸を組織に侵入させるのに十分な力での薬剤のジェットの送達を作動させることにより、導入(例えば、注射)することができる。例えば、治療すべき組織が粘膜、皮膚又は筋肉である場合、薬剤は、角質層を通って皮層に、又は下にある組織及び筋肉に薬剤を侵入させるのに十分な力で、粘膜又は皮膚表面にそれぞれ射出される。無針注射器は、コードされたAffimer核酸コンストラクトの、腫瘍内への送達(腫瘍内送達)を含む、あらゆる組織型への送達に、よく適している。
MIDは、組織をエレクトロポレーションする針電極を有することもある。例えば長方形又は正方形パターンで構成された、複数の電極のアレイの複数の電極対の間へのパルス印加によって、1対の電極間へのパルス印加の結果より改善された結果が得られる。例えば、発明の名称が「薬物及び遺伝子の媒介送達のための針電極(Needle Electrodes for Mediated Delivery of Drugs and Genes)」である、米国特許第5,702,359号明細書には、治療的処置中に複数の対の針にパルス印加することができる、針のアレイが、開示されている。あたかも完全に記載されるがごとく参照により本明細書に組み入れられるその出願において、針は、円形配列で配置されたが、針電極の対向する対間へのパルス印加を可能にするコネクター及びスイッチング装置を有する。コードされたAffimer核酸コンストラクトを細胞に送達するために1対の針電極を使用することができる。そのようなデバイス及びシステムは、米国特許第6,763,264号明細書に記載されており、その内容は、参照により本明細書に組み入れられる。あるいは、通常の注射針に似ている単針でDNAの注射及びエレクトロポレーションを可能にする、単針デバイスであって、現在使用されているデバイスより送達されるものより低い電圧のパルスを印加し、したがって、患者が経験する電気が走ったような感覚を低減する、単針デバイスを使用することができる。
MIDは、1つ又は2つ以上の電極アレイを具備することがある。アレイは、同じ直径の2つ若しくは3つ以上の針を具備することもあり、又は異なる直径の2つ若しくは3つ以上の針を具備することもある。針は、等間隔で配置されていてもよく、又は不等間隔で配置されていてもよい。針は、0.005インチ〜0.03インチの間、0.01インチ〜0.025インチの間、又は0.015インチ〜0.020インチの間であってもよい。針は、直径0.0175インチであってもよい。針は、0.5mm、1.0mm、1.5mm、2.0mm、2.5mm、3.0mm、3.5mm、4.0mm、又は4.1mm以上の間隔であってもよい。
MIDは、パルス発生器と、1ステップでコードされたAffimer核酸コンストラクト及びエレクトロポレーションパルスを送達する、2本針又は3本針以上のワクチン注射器とからなることもある。パルス発生器によって、フラッシュカードで操作されるパーソナルコンピュータを介したパルス及び注射パラメーターの柔軟なプログラミング、並びにエレクトロポレーション及び患者データの包括的な記録及び保存が可能になる。パルス発生器は、短期間の間に様々なボルトのパルスを送達することができる。例えば、パルス発生器は、100msの期間に15ボルトのパルスを3回送達することができる。そのようなMIDの一例は、Inovio Biomedical社によるElgen 1000システムであり、米国特許第7,328,064号明細書に記載され、その内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
MIDは、体内の選択された組織の細胞への、コードされたAffimer核酸コンストラクトなどの、高分子の導入を助長するモジュール電極システムである、CELLECTR(Inovio Pharmaceuticals社製、Plymouth Meeting、Pa.)デバイス及びシステムであってもよい。モジュール電極システムは、複数の針電極と、皮下針と、プログラム可能な定電流パルス制御器から複数の針電極への導電性リンクをもたらす電気コネクターと、電源とを具備することができる。オペレーターは、支持構造に載置されている複数の針電極を把持し、それらを体内又は植物内の選択された組織へしっかりと挿入することができる。すると、核酸が、選択された組織に皮下針経由で送達される。プログラム可能な定電流パルス制御器が作動され、定電流電気パルスが複数の針電極に印加される。印加された定電流電気パルスが、複数の電極間の細胞内への核酸の導入を助長する。定電流パルスにより組織内の電力散逸を制限することによって、細胞の過熱による細胞死が最小限に抑えられる。Cellectraデバイス及びシステムは、米国特許第7,245,963号明細書に記載されており、その内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
MIDは、Elgen 1000システム(Inovio Pharmaceuticals社)であってもよい。Elgen 1000システムは、中空針を提供するデバイスと流体送達手段とを具備することができ、この装置は、使用時に前記流体送達手段を作動させて、本明細書において記載のコードされたAffimer核酸コンストラクトである流体を体組織に、前記体組織への針の挿入中に、同時に(例えば、自動的に)注射するように構成される。針が挿入されているときに流体を徐々に注射することができることにより、流体が体組織全体にわたって均一に分配されることになることが、利点である。また、注射される流体の体積がより広い領域にわたって分配されるため、注射中に経験される疼痛が低減されると考えられる。
加えて、流体の自動注射は、注射される流体の実際の用量の自動監視及び登録を容易にする。このデータは、所望される場合には証拠書類の作成のために制御ユニットによって保存されうる。
注射の速度が、線形になることもあり、又は非線形になることもあること、及び治療すべき対象の皮膚を通して針を挿入した後、そして体組織の中に針をさらに挿入している間、注射を行うことができることは、理解されるであろう。
流体を本発明の装置により注射することができる適切な組織としては、単に例として、腫瘍組織、皮膚及び他の上皮組織、肝臓組織及び筋肉組織が挙げられる。
装置は、体組織への針の挿入を誘導するための針挿入手段をさらに具備する。流体注射速度は、針の挿入速度によって制御される。これには、挿入速度が所望通りの注射速度と一致し得るように針の挿入と流体の注射の両方を制御することができるという利点がある。またこれにより、ユーザーは、装置をより操作し易くなる。所望される場合には、体組織に針を自動的に挿入するための手段を備えさせることもできるだろう。
ユーザーは、流体の注射を開始するときを選択することができるだろう。しかし、理想的には、注射は、針の先端が標的組織に到達したときに開始され、装置は、流体の注射を開始するのに十分な深さまで針が挿入されたとき感知する手段を具備しうる。これは、針が望ましい深さ(通常は、筋肉組織が始まる深さとなる)に到達したときに流体の注射が自動的に開始するよう促すことができることを意味する。筋肉組織が始まる深さは、例えば、針が皮膚層を通過するのに十分であると見なされる4mmの値などの、予め設定された挿入深さであると考えることができるだろう。
感知手段は、超音波プローブを含むこともある。感知手段は、インピーダンス又は抵抗の変化を感知する手段を含むこともある。この場合、手段は、それ自体が体組織内の針の深さを記録することはできるものではなく、針が異なる種類の体組織から筋肉内へと移動したときのインピーダンス又は抵抗の変化を感知するように構成されることになる。これらの代替手段はどちらも、注射が開始しうることを感知する比較的正確で操作が単純な手段を提供する。所望される場合には針の挿入の深さをさらに記録することができ、流体の注射を制御するために使用することができ、したがって、針挿入の深さが記録されている場合に注射される流体の体積が決定される。
装置は、針を支持するための基部と、その中に基部を受け入れるための筐体とをさらに具備することができ、基部が筐体に対して第1の後方位置にあるときには針が筐体内で後退し、基部が筐体内の第2の前方位置にあるときには針が筐体から伸長するように、基部は筐体に対して移動可能である。これはユーザーにとって有利である。筐体を患者の皮膚上に並べることができ、次いで、筐体を基部に対して移動させることにより針を患者の皮膚内に挿入することができるからである。
上述のように、針が皮膚に挿入されるときに流体が針の長さにわたって均一に分配されるように、制御された流体注射速度を達成することが望ましい。流体送達手段は、制御された速度で流体を注射するように構成されたピストン駆動手段を具備することができる。ピストン駆動手段は、例えば、サーボモーターによって作動させることができるだろう。しかし、ピストン駆動手段を、筐体に対して軸方向に移動させられる基部によって作動してもよい。流体送達の代替手段を備えさせることができることは、理解されるであろう。したがって、例えば、制御された又は非制御の速度で流体を送達するために圧搾することができる密封容器を、シリンジ及びピストンシステムの代わりに備えさせることもできるだろう。
上に記載された装置は、あらゆるタイプの注射に使用することができるだろう。しかし、エレクトロポレーションの分野において特に有用であると予想され、そのため針に電圧を印加する手段をさらに具備することがある。これにより、針を注射のためにだけでなく、エレクトロポレーション中に電極としても使用することが可能になる。これは、注射される流体と同じ領域に電場が印加されることを意味するため、特に有利である。旧来、エレクトロポレーションには、前に注射された流体と電極を正確に位置合わせることが非常に困難であるため、ユーザーは、必要とされる体積より大きな体積の流体をより広い領域にわたって注射する傾向、及び注射された物質と電場との重複を確実にするためにより広い領域にわたって電場を印加する傾向があるという問題があった。本発明を使用すると、注射される流体の体積と印加される電場のサイズの両方を低減させ、その上、電場と流体との間の良好な適合を達成することができる。
Draghia-Akliらによる米国特許第7,245,963号明細書には、モジュラー電極システム、及び体内又は植物内の選択された組織の細胞への生体分子の導入を助長するためのそれらの使用が記載されている。モジュール電極システムは、複数の針電極と、皮下針と、プログラム可能な定電流パルス制御器から複数の針電極への導電性リンクをもたらす電気コネクターと、電源とを具備することができる。オペレーターは、支持構造に載置されている複数の針電極を把持し、それらを体内又は植物内の選択された組織へしっかりと挿入することができる。すると、生体分子が、選択された組織に皮下針経由で送達される。プログラム可能な定電流パルス制御器が作動され、定電流電気パルスが複数の針電極に印加される。印加された定電流電気パルスが、複数の電極間の細胞内への生体分子の導入を助長する。米国特許第7,245,963号明細書の全内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
Smithらにより出願された米国特許出願公開第2005/0052630号明細書には、体内又は植物内の選択された組織の細胞への生体分子の導入を有効に助長するために使用することができるエレクトロポレーションデバイスが記載されている。エレクトロポレーションデバイスは、その操作がソフトウェア又はファームウェアにより指定される、電動デバイス(「EKDデバイス」)を具備する。EKDデバイスは、ユーザー制御及びパルスパラメーター入力に基づき、アレイ内の電極の間で一連のプログラム可能な定電流パルスパターンを生成し、電流波形データの保存及び獲得を可能にする。エレクトロポレーションデバイスはまた、針電極のアレイを有する交換可能な電極ディスクと、注射針のための中央注射チャネルと、取り外し可能なガイドディスクとを具備する。米国特許出願公開第2005/0052630号明細書の全内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
米国特許第7,245,963号明細書及び米国特許出願公開第2005/0052630号明細書に記載されている電極アレイ及び方法は、筋肉などの組織ばかりでなく、他の組織又は器官内への深い侵入にも適応させることができる。電極アレイの構成のため、(選択される生体分子を送達するための)注射針はまた、標的器官内に完全に挿入され、注射は、電極によって予め定められた領域内の標的組織に垂直に施される。米国特許第7,245,963号明細書及び米国特許出願公開第2005/005263号明細書に記載されている電極は、好ましくは、20mm長、及び21ゲージである。
インビボでのエレクトロポレーションの使用は、腫瘍組織内へのプラスミドDNAの取込みを増進させ、その結果、腫瘍内で発現されることになり、プラスミドを筋肉組織に送達し、その結果、サイトカインなどの分泌されたタンパク質が全身的に発現されることになる(米国特許第8026223号明細書を参照されたい)。Affimerポリペプチド導入遺伝子をインビボで細胞にエレクトロポレーションするための追加の例示的手法、ベクター及びデバイスは、PCT公報国際公開第2017/106795号パンフレット、国際公開第2016/161201号パンフレット、国際公開第2016/154473号パンフレット、国際公開第2016/112359号パンフレット、及び国際公開第2014/066655号パンフレットを含む。
典型的には、インビボ細胞エレクトロポレーションに必要とされる電場は、インビトロで細胞に必要とされる電場と一般に同様の大きさである。一実施形態において、電場の大きさは、おおよそ10V/cm〜約1500V/cm、好ましくは約300V/cm〜1500V/cm、及び好ましくは約1000V/cm〜1500V/cmの範囲である。あるいは、電場強度がより低い(約10V/cm〜約100V/cm、より好ましくは約25V/cm〜75V/cm)と、パルス長は長い。例えば、公称電場が約25〜75V/cmであるとき、パルス長は約10ミリ秒であることが好ましい。
パルス長は、約10s〜約100msでありうる。任意の所望されるパルス数、通常は、1秒当たり1〜100パルスでありうる。パルスセット間の遅れは、1秒などの任意の所望の時間でありうる。波形、電場強度及びパルス持続時間はまた、細胞の種類に依存することがあり、エレクトロポレーションによって細胞に進入することになる分子の種類に依存することもある。
電気化学インピーダンス分光測定(「EIS」:electrochemical impedance spectroscopy)を組み入れているエレクトロポレーションデバイスも包含される。そのようなデバイスは、条件の最適化を可能にする、インビボでの、特に、腫瘍内のエレクトロポレーション効率に関するリアルタイム情報を提供する。EISを組み入れているエレクトロポレーションデバイスの例は、例えば、国際公開第2016/161201号パンフレットにおいて見いだすことができ、それは、参照により本明細書に組み入れられる。
本発明のコードされたAffimer核酸コンストラクトの取込みを、雪崩トランスフェクションとも呼ばれるプラズマエレクトロポレーションにより増進することもできる。簡単に説明すると、マイクロ秒放電は、電極表面にキャビテーションマイクロバブルを生じさせる。磁場と組み合わせられた、マイクロバブルの崩壊により生じる機械力が、細胞膜を横断する輸送の効率を、従来のエレクトロポレーションに関連する拡散媒介輸送と比較して上昇させるのに役立つ。プラズマエレクトロポレーションの手法は、米国特許第7,923,251号及び同第8,283,171号明細書に記載されている。この手法を、インビボで細胞の形質転換に用いることもできる。Chaiberg, et al (2006) Investigative Ophthalmology & Visual Science 47:4083-4090; Chaiberg, et al United States Patent No 8, 101 169 Issued January 24, 2012。
他の代替エレクトロポレーション手法も企図される。コールドプラズマ(cold plasma)を使用してインビボ核酸送達を実施することもできる。プラズマは、物質の4つの基本状態のうちの1つであり、その他は、固体、液体及び気体である。プラズマは、結合していない正及び負の粒子の電気的に中性の媒体である(すなわち、プラズマの総電荷は、ほぼゼロである)。プラズマは、気体を加熱すること、又はレーザー若しくはマイクロ波発生器を用いて印加される強電磁場に気体を付すことによって、生じさせることができる。これは、電子の数を減少又は増加させて、イオンと呼ばれる正又は負荷電粒子を生じさせ(Luo, et al. (1998) Phys. Plasma 5:2868-2870)、存在する場合には分子結合の解離によって果たされる。
コールドプラズマ(すなわち、非熱プラズマ)は、パルス高電圧シグナルの適する電極への送達によって生成される。コールドプラズマデバイスは、ガス噴射デバイスの形態をとることもあり、又は誘電体バリア放電(DBD:dielectric barrier discharge)デバイスの形態をとることもある。低温プラズマは、比較的低い気体温度でプラズマを提供するため大きな関心及び注目を集めている。そのような温度でのプラズマの提供は、創傷治癒、抗菌プロセス、様々な他の医学的治療及び消毒を含む、様々な応用にとって興味深い。前に述べたように、コールドプラズマ(すなわち、非熱プラズマ)は、パルス高電圧シグナルの適する電極への送達によって生成される。コールドプラズマデバイスは、ガス噴射デバイスの形態をとることもあり、誘電体バリア放電(DBD)デバイスの形態をとることもあり、又はマルチ周波数、高調和性、電力供給装置の形態をとることもある。
誘電体バリア放電デバイスは、コールドプラズマを発生させるために種々のプロセスに依存する。誘電体バリア放電(DBD)デバイスは、誘電体層によって覆われた少なくとも1つの導電性電極を含有する。電気帰還路は、コールドプラズマ処理を受ける標的基板により提供されうるグランドによって、又は内蔵グランドを電極に設けることによって形成される。誘電体バリア放電デバイスのエネルギーは、上で言及されたものなどの高電圧電力供給装置により提供されうる。より一般的には、エネルギーがパルスDC電圧の形態で誘電体バリア放電デバイスに投入されて、プラズマ放電が形成される。誘電体層によって、放電は導電性電極から隔てられ、電極エッチング及び気体加熱が低減される。パルスDC電圧を振幅及び周波数に関して変化させて、様々な操作レジメを達成することができる。そのようなコールドプラズマ発生原理を組み入れている任意のデバイス(例えば、DBD電極デバイス)は、本発明の様々な実施形態に含まれる。
コールドプラズマは、細胞に外来核酸をトランスフェクトするために用いられている。特に、腫瘍細胞のトランスフェクション(例えば、Connolly, et al. (2012) Human Vaccines & Immune-therapeutics 8: 1729-1733;及びConnolly et al (2015) Bioelectrochemistry 103: 15-21を参照されたい)。
ある特定の例示的な実施形態において、本発明のAffimerポリペプチドをコードする導入遺伝子コンストラクトは、アプリケーター;アプリケーターから伸びる複数の電極であって、カバー領域を伴う電極;電極と電気通信している電力供給装置であって、カバー領域内で細胞に対する1つ又は2つ以上のエレクトロポレーションシグナルを発生するように構成されている電力供給装置;及び電極に結合された導材であって、電極のカバー領域を調整するように構成されている導材とを具備するエレクトロポレーションデバイスを使用して、送達される。電極の少なくとも一部分をアプリケーター内に円錐状に配置することができる。1つ又は2つ以上のエレクトロポレーションシグナルは、各々、電場を伴いうる。デバイスは、電力供給装置及び電極に結合されたポテンショメーターをさらに具備することができる。ポテンショメーターは、電場を所定の範囲内に実質的に維持するように構成することができる。
1つ又は2つ以上のエレクトロポレーションシグナルは、各々、電場を伴いうる。デバイスは、電力供給装置及び電極に結合されたポテンショメーターをさらに具備することができる。ポテンショメーターは、カバー領域内の細胞の永久損傷を実質的に防止するために、及び/又は疼痛を実質的に最小限に抑えるために、電場を所定の範囲内に維持するように構成することができる。例えば、ポテンショメーターは、電場を約1300V/cmに維持するように構成することができる。
電力供給装置は、第1の電気シグナルを第1の電極に提供し、第2の電気シグナルを第2の電極に提供することができる。第1の電気シグナルと第2の電気シグナルを組み合わせて、うなり周波数を有する波を生じさせることができる。第1及び第2の電気シグナルは、各々、単極波形及び双極波形の少なくとも一方を有することができる。第1の電気シグナルは、第1の周波数及び第1の振幅を有することができる。第2の電気シグナルは、第2の周波数及び第2の振幅を有することができる。第1の周波数は、第2の周波数と異なることもあり、又は同じこともある。第1の振幅は、第2の振幅と異なることもあり、又は同じこともある。
ある特定の実施形態において、本発明は、腫瘍を有する対象を治療する方法であって、Affimerポリペプチドをコードするプラスミドの有効用量を腫瘍に注射するステップと、腫瘍にエレクトロポレーション療法を施すステップとを含む方法を提供する。ある特定の実施形態において、エレクトロポレーション療法は、約100マイクロ秒〜約20ミリ秒のパルス幅にわたって約200V/cm〜約1500V/cmの少なくとも1回の電圧パルスを施すことをさらに含む。
ある特定の実施形態において、プラスミド(又は第2のエレクトロポレーションされるプラスミド)は、例えば、IL−12、IL−15、及びIL−12とIL−15の組合せをコードする群から選択されるものなどの、少なくとも1つの免疫賦活性サイトカインをさらにコードする。
トランスフェクション増進製剤
コードされたAffimer核酸コンストラクトを、リポソーム、好ましくはカチオン性リポオーム(Wong, T. K. et al., Gene, 10:87(1980); Nicolau and Sene, Biochim.Biophys.Acta, 721:185-190 (1982);及びNicolau et al., Methods Enzymol., 149:157-176 (1987))に、又は細胞膜と相互作用し、融合して、若しくはエンドサイトーシスを受けて、細胞への核酸移入を果たすことができるポリマーソーム(合成リポソーム)に、封入することもできる。DNAをポリマーとの複合体(ポリプレックス)又はデンドリマーとの複合体に形成することもでき、これらの複合体は、細胞の細胞質にそれらの担持物を直接放出することができる。
これに関連して有用な例示的な担体としては、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリアクリレート、ラテックス、デンプン、セルロース、デキストラン及びこれらに類するものの微粒子が挙げられる。他の例示的な担体としては、非液体親水性コア(例えば、架橋多糖又はオリゴ糖)を含み、リン脂質などの両親媒性化合物を含む外層を含んでいてもよい、超分子バイオベクターが挙げられる(例えば、米国特許第5,151,254号明細書、並びにPCT出願国際公開第94/20078号パンフレット、国際公開第94/23701号パンフレット及び国際公開第96/06638号パンフレットを参照されたい)。徐放性製剤の中に含有される活性薬剤の量は、移植部位、放出速度及び予想される放出期間、並びに治療又は予防される状態の性質に依存する。
生分解性マイクロスフェア(例えば、ポリアセテート、ポリグリコレート)を、組成物の担体として用いることができる。適する生分解性マイクロスフェアは、例えば、米国特許第4,897,268号明細書、同第5,075,109号明細書、同第5,928,647号明細書、同第5,811,128号明細書、同第5,820,883号明細書、同第5,853,763号明細書、同第5,814,344号明細書、同第5,407,609号明細書及び同第5,942,252号明細書において開示されている。国際公開第9940934号パンフレット及びそこに引用されている参考文献に記載されているものなどの、修飾B型肝炎コアタンパク質担体系も、多くの応用に有用であろう。別の例示的な担体/送達系は、Affimerのコード配列を送達するために腫瘍内に使用された場合、追加メリットを有することができる、米国特許第5,928,647号明細書に記載されているものなどの、微粒子−タンパク質複合体を含む担体を用いる。
生分解性ポリマーナノ粒子は、細胞への非ウイルス性核酸移入を助長する。小さい(おおよそ200nm)、正荷電(おおよそ10mV)粒子は、カチオン性の加水分解により分解可能なポリ(ベータアミノエステル)とプラスミドDNAとの自己集合によって形成される。
ポリヌクレオチドを、直接マイクロインジェクション、一時的細胞透過処理(例えば、抑制因子及び/又は活性化因子と細胞透過処理剤の併用投与)、膜内移行ペプチドへの融合、並びにこれらに類することにより、細胞に投与することもできる。
mRNAを含む、外来核酸の、インビボ及びインビトロでの脂質媒介核酸送達及び発現は、大きな成功を収めている。脂質ベースの非ウイルス性製剤は、ウイルス遺伝子療法の代替案を提供する。現行のインビボ脂質送達方法は、皮下、皮内、腫瘍内、又は頭蓋内注射を使用する。脂質製剤の進歩は、インビボでの遺伝子移入効率を改善した(PCT出願国際公開第98/07408号パンフレットを参照されたい)。例えば、等モル比のl,2−ビス(オレオイルオキシ)−3−(トリメチルアミノ)プロパン(DOTAP)とコレステロールで構成される脂質製剤は、全身性インビボ遺伝子移入を有意に増進させることができる。DOTAP:コレステロール脂質製剤は、「サンドイッチリポソーム」と呼ばれる特有の構造を形成する。この製剤は、陥入二層又は「花瓶」構造の間にDNAを「サンドイッチする」と報告されている。これらの脂質構造の有益な特性としては、正のp、コレステロールによるコロイド安定化、二次元核酸パッキング、及び血清安定性増大が挙げられる。
カチオン性リポソーム技術は、正荷電ヘッド基と疎水性テールとを有する両親媒性脂質が、負荷電DNA又はRNAと結合し、一般にエンドサイトーシスにより細胞に進入する粒子を形成できることに基づく。一部のカチオン性リポソームは、哺乳動物細胞によるリポソーム取込みを増進させると考えられる、中性共脂質も含有する。同様に、ポリ−L−リジン及びポリエチレンイミンなどの、他のポリカチオンは、電荷相互作用によって核酸と複合体化し、DNA又はRNAのナノ粒子への縮合を助け、これらのナノ粒子が、その後、エンドソーム媒介取込みの基質になる。これらのカチオン性核酸複合体技術のうちの複数が、プラスミドDNA(pDNA)との複合体、オリゴヌクレオチドとの複合体及び様々な形態の合成RNAとの複合体を含む、可能性のある臨床製品として開発され、本発明のコードされたAffimer核酸コンストラクトの送達系の一部として使用された。
本明細書において開示されるコードされたAffimer核酸コンストラクトを、細胞内への取込みを増進するのに役立つポリカチオン性分子と会合させることができる。核酸コンストラクトをポリカチオン性分子と複合体化することは、それらのサイズを低減させるようにコンストラクトをパッケージングするのにも役立ち、これは、細胞取込みを支援すると考えられる。エンドソーム内に入ると、複合体は、より低いpHに起因して解離し、ポリカチオン性分子は、エノソームの膜を破壊して、DNAが分解されうる前に細胞質に逃避するのを助長することができる。予備的データは、核酸コンストラクト実施形態が、ポリカチオン性分子ポリリジン又はポリエチレンイミンと複合体化されたとき、DCよりSCへの取込みを増進したことを示す。
核酸コンストラクトとの複合体化に有用なポリカチオン性分子の一例は、細胞膜透過性ペプチド(CPP:cell penetrating peptide)を含み、例としては、ポリリジン(上記)、ポリアルギニン及びTatペプチドが挙げられる。細胞侵入ペプチド(cell penetrating peptide)(CPP)は、DNAと結合することができる小さいペプチドであり、放出されると、細胞膜に侵入して、エンドソームから細胞質へのDNAの逃避を助長する。CPPの別の例は、MPGと呼ばれる27残基キメラペプチドに関連し、ss−及びds−オリゴヌクレオチドに安定した様式で結合し、その結果、DNaseにより分解されないように核酸を保護し、インビボで細胞にオリゴヌクレオチドを有効に送達する、非共有結合性複合体になることが以前に示された(Mahapatro A, et al., J Nanobiotechnol, 2011, 9:55)。複合体は、異なるペプチド:DNA比が試験され、10:1及び5:1比(それぞれ、150nm及び1um)であったとき、おおよそ150nm〜1umの小粒子を形成した。別のCPPは、修飾ターペプチド[グアニジノカルボニルピロール(GCP:guanidinocarbonylpyrrole)基を含有するテトラリジン(TL−GCP)]に関連し、これは、高親和性で6.2kbプラスミドDNAと結合し、その結果、700〜900nmの正荷電凝集体となることが報告された(Li et al., Agnew Chem Int Ed Enl 2015; 54(10):2941-4)。RNAも、インビボ送達のためにそのようなポリカチオン性分子により複合体化されうる。
本明細書に記載される核酸コンストラクトと複合体化することができるポリカチオン性分子の他の例としては、JETPRIME(登録商標)及びIn Vivo JET(Polypus-transfection, S.A.社、Illkirch、France)として市販されているポリカチオン性ポリマーが挙げられる。
ある特定の実施形態において、本発明は、(i)式(I)の化合物、リン脂質、構造脂質及びPEG脂質を含む脂質構成成分と、(ii)mRNA(又は他のポリヌクレオチド)fとを含む、ナノ粒子組成物を投与することにより、患者の細胞にAffimerポリペプチドをコードするmRNA(又は他のポリヌクレオチド)fを送達する方法であって、前記投与することが、前記哺乳動物細胞を前記ナノ粒子組成物と接触させることを含み、それによって前記mRNA(又は他のポリヌクレオチド)fが前記細胞に送達される、方法を企図している。
例示的実施形態において、PEG脂質は、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチド酸、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール及びPEG修飾ジアルキルグリセロールからなる群から選択される。例示的実施形態において、構造脂質は、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、トマチジン、ウルソール酸、及びアルファトコフェロールからなる群から選択される。ある特定の好ましい実施形態において、構造脂質は、コレステロールである。
例示的実施形態において、リン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、2−リゾホスファチジルコリン、及びスフィンゴミエリンからなる群から選択される部分を含む。ある特定の実施形態において、リン脂質は、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アルファリノレイン酸、エルカ酸、アラキジン酸、アラキドン酸、フィタン酸、エイコサペンタエン酸、ベヘン酸、ドコサペンタエン酸、及びドコサヘキサエン酸からなる群から選択される、1つ又は2つ以上の脂肪酸部分を含む。ある特定の好ましい実施形態において、リン脂質は、1,2−ジリノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DLPC)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−ホスホコリン(DMPC)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)、1,2−ジウンデカノイル−sn−グリセロ−ホスホコリン(DUPC)、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(POPC)、1,2−ジ−0−オクタデセニル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(18:0 ジエーテルPC)、1−オレオイル−2−コレステリルヘミスクシノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(OChemsPC)、1−ヘキサデシル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(C16 Lyso PC)、1,2−ジリノレノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1,2−ジアラキドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1,2−ジドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(ME 16.0 PE)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、1,2−ジリノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、1,2−ジリノレノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、1,2−ジアラキドノニル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、1,2−ジドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−rac−(1−グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)、及びスフィンゴミエリンからなる群から選択される。ある特定の好ましい実施形態において、リン脂質は、DOPE又はDSPCである。
さらに説明すると、リン脂質は、DOPEであることができ、前記構成成分は、約35mol%〜約45mol%前記化合物、約10mol%〜約20mol%DOPE、約38.5mol%〜約48.5mol%構造脂質、及び約1.5mol%PEG脂質を含むことができる。脂質成分は、約40mol%前記化合物、約15mol%リン脂質、約43.5mol%構造脂質、及び約1.5mol%PEG脂質を含むことができる。
ある特定の実施形態において、脂質構成成分の、AffimerポリペプチドをコードしているmRNA(又は他のポリヌクレオチド)に対するwt/wt比は、約5:1〜約50:1、より好ましくは約10:1〜約40:1である。
ある特定の実施形態において、前記ナノ粒子組成物の平均サイズは、約50nm〜約150nmであり、よりいっそう好ましくは、約80nm〜約120nmである。
ある特定の実施形態において、前記ナノ粒子組成物の多分散指数は、約0〜約0.18、より好ましくは、約0.13〜約0.17である。
ある特定の実施形態において、ナノ粒子組成物は、約−10〜約+20mVのゼータ電位を有する。
ある特定の実施形態において、ナノ粒子組成物は、3−(ジドデシルアミノ)−N1,N1,4−トリドデシル−1−ピペラジンエタンアミン(KL10)、14,25−ジトリデシル−15,18,21,24−テトラアザ−オクタトリアコンタン(KL25)、1,2−ジリノレイルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLin−DMA)、2,2−ジリノレイル−4−ジメチルアミノメチル−[1,3]−ジオキソラン(DLin−K−DMA)、ヘプタトリアコンタ−6,9,28,31−テトラエン−19−イル4−(ジメチルアミノ)ブタン酸(DLin−MC3−DMA)、2,2−ジリノレイル−4−(2−ジメチルアミノエチル)−[1,3]−ジオキソラン(DLin−KC2−DMA)、1,2−ジオレイルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DODMA)、及び(2R)−2−({8−[(3P)−コレスト−5−エン−3−イルオキシ]オクチル}オキシ)−N,N−ジメチル−3−[(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ]プロパン−1−アミン(オクチル−CLinDMA(2R))からなる群から選択される、カチオン性の及び/又はイオン化可能な脂質をさらに含む。
本発明は、次に、実施例によって説明される。これらの実施例は、例示的なものであり、本発明を制限するものと見なされることを意図したものではなく、本発明は、特許請求の範囲に記載の範囲によって規定される。
これらの実施例における一部のデータは、C末端G6Hタグ(すなわち、ポリペプチドのC末端への付加物としてのGHHHHHH(配列番号104))を有する足場を用いて産生された。これは、例えば、ATUM社製、Newark、California、USAの標準「オフザシェルフ」electra vector system(登録商標)を使用することにより、示される実験を行うための操作/検出の容易さのため、当技術分野において標準的なことである。pMOTHER及びpDAUGHTERプラスミド、又はそれらから誘導されたベクターは、特に適する。もちろん、熟練オペレーターは、同じ原理に基づく並行クローニング系、又はオペレーターの選択に基づく異なる系を、容易に使用することができる。
V.医薬組成物
本発明は、本明細書に記載されるAffimerポリペプチドと、薬学的に許容されるビヒクルとを含む、医薬組成物も提供する。一部の実施形態において、医薬組成物は、免疫療法における使用を見いだす。一部の実施形態において、医薬組成物は、がん免疫療法における使用を見いだす。一部の実施形態において、組成物は、腫瘍増殖の阻害における使用を見いだす。一部の実施形態において、医薬組成物は、対象(例えば、ヒト患者)に、腫瘍増殖の阻害における使用を見いだす。一部の実施形態において、組成物は、がんの治療における使用を見いだす。一部の実施形態において、医薬組成物は、対象(例えば、ヒト患者)に、がんの治療における使用を見いだす。
製剤は、本発明の精製されたAffimerポリペプチドを薬学的に許容されるビヒクル(例えば、担体又は賦形剤)と合わせることにより、保管及び使用のために調製される。当業者は、一般に、薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は安定剤を、製剤又は医薬組成物の不活性成分であると見なす。
一部の実施形態において、本明細書に記載されるAffimerポリペプチドは、凍結乾燥される、及び/又は凍結乾燥形態で保管される。一部の実施形態において、本明細書に記載されるAffimerポリペプチドを含む製剤は、凍結乾燥される。
好適な薬学的に許容されるビヒクルとしては、非毒性緩衝剤、例えば、リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸;塩、例えば、塩化ナトリウム;抗酸化剤(アスコルビン酸及びメチオニンを含む);保存剤、例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ヘキサメトニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド、フェノール、ブチル又はベンジルアルコール、アルキルパラベン、例えばメチル又はプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、及びm−クレゾール;低分子量ポリペプチド(例えば、アミノ酸残基約10未満);タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジン;炭水化物、例えば、単糖類、二糖類、グルコース、マンノース又はデキストリン;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール;塩形成性対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体、例えば、Zn−タンパク質錯体;及び非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN又はポリエチレングリコール(PEG)が挙げられるが、これらに限定されない。(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 22.sup.nd Edition, 2012, Pharmaceutical Press, London.)。
本発明の医薬組成物は、局所的治療又は全身的治療のどちらかのための任意の数の方式で投与することができる。投与は、表皮若しくは経皮パッチ剤、軟膏剤、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、滴剤、坐剤、スプレー剤、液剤及び散剤による、局所的投与;ネブライザーによる投与、気管内投与及び鼻腔内投与を含む、散剤若しくはエアロゾル剤の吸入若しくは通気による肺投与;経口投与;又は静脈内、動脈内、腫瘍内、皮下、腹腔内、筋肉内(例えば、注射又は注入)若しくは頭蓋内(例えば、くも膜下腔内又は脳室内)投与を含む、非経口投与であることができる。
治療用製剤は、単位剤形であることができる。そのような製剤としては、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、水若しくは非水性媒体中の液剤若しくは懸濁剤、又は坐剤が挙げられる。錠剤などの固体組成物の場合、主活性成分が医薬担体と混合される。従来の錠剤形成成分としては、トウモロコシデンプン、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム又はゴム、及び希釈剤(例えば、水)が挙げられる。これらを使用して、本発明の化合物、又はその非毒性の薬学的に許容される塩の均一混合物を含有する固体プレフォーミュレーション組成物を形成することができる。次いで、固体プレフォーミュレーション組成物は、上記のタイプの単位剤形に細分される。製剤又は組成物の錠剤、丸剤などは、持続性作用の利点をもたらす剤形を提供するために、コーティングすること又は別様に配合することができる。例えば、錠剤又は丸剤は、外側の構成成分によって覆われた内側の組成物を含むことができる。さらに、2つの構成成分を腸溶性の層によって隔てることができ、腸溶性の層は、崩壊に耐えるのに役立ち、内側の構成成分の、無傷での胃の通過又は放出の遅延を可能にする。様々な材料をそのような腸溶性の層又はコーティングに使用することができ、そのような材料としては、いくつかのポリマー酸、及びポリマー酸と、セラック、セチルアルコール及び酢酸セルロースのような材料との混合物が挙げられる。
本明細書に記載されるAffimerポリペプチドをマイクロカプセル内に封入することもできる。そのようなマイクロカプセルは、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 22nd Edition, 2012, Pharmaceutical Press, Londonに記載されているように、コアセルベーション手法により、又は界面重合により、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルが、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)の状態で、又はマクロエマルジョンの状態で調製される。
ある特定の実施形態において、医薬製剤は、リポソームと複合体化された本発明のAffimerポリペプチドを含む。リポソームを産生する方法は、当業者に公知である。例えば、一部のリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を有する脂質組成物を用いて、逆相蒸発により生成することができる。リポソームを被定義孔径のフィルターに通して押し出して、所望の直径を有するリポソームを得ることができる。
ある特定の実施形態において、本明細書に記載されるAffimerポリペプチドを含む徐放性調製物を生成することができる。徐放性調製物の適する例としては、Affimerポリペプチドを含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、造形品(例えば、フィルム又はマイクロカプセル)の形態である。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル、例えばポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール)、ポリラクチド、L−グルタミン酸と7エチル−L−グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマー及びリュープロリド酢酸塩で構成された注射可能なマイクロスフェア)、スクロース酢酸イソブチル、及びポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
[実施例]
安定性をモジュレートするために変異を独立して組み合わせることができる
配列番号1と比べて、以下の変異を起こした:
Figure 2020532949
これらの全てが、hSteA Y35WのTmも上昇させた。
これは、変異の順序が問題でないことを示す。言い換えると、これは、安定性(例えば、Tm)をモジュレートするための本明細書において教示する変異を、独立して起こすことができる、又は独立して組み合わせることができることを実証する。
安定性をモジュレートするための本明細書において教示する特定の変異が、それらの個々の効果を果たすために互いに依存しないことは、本発明の利点である。
異種ペプチド挿入
試験異種ペプチドGGSGGSGGSをL2及びL4に挿入
ループごとに3つの異なる位置(9つの組合せ)
Optim2で熱安定性を測定
3r2を変性剤の非存在下で測定、しかし、安定性が範囲にわたって存在した
Tmを範囲内に持って行くために、1M GuHClの存在下で3r2を再び測定
3t4を、このポリペプチド中に内在トリプトファン蛍光がないので、SYPRO Orangeの存在下で測定
要約して、説明した様々な選択肢を下に示す:
Figure 2020532949
結果を図1に示す。
これは、有利なことに、異種ペプチドのループへの挿入3r2が安定性に悪影響を及ぼさないことを実証する。
L2 Tmについて、48−L2−50>49−L2−51>50−L2−52
L4 Tmについて、73−L4−78は、安定性が間違いなく最も小さい50−L2−52との組合せを除いて、通常は最も安定している。
最も安定している組合せは、48−L2−50と73−L4−78である。
3t4は、明らかに残部よりはるかに安定性が低かった1つのバリアントを除いて、SYPROの存在下であっても良好なデータを与えなかった。これは、3r2の場合と同じ組合せである。
したがって、最も適切には、3r2と3t4の両方についての挿入/ループは、以下の通りである:
残基A49を欠失させて、残基D48とG50との間に挿入したL2
残基P74、G75、Q76及びN77(hSteA番号付けを使用)を欠失させて、L73とE78との間に挿入したL4
例示的足場タンパク質
例示的足場タンパク質を実証する。
この実験では、TmをDSC(r/t)及びOptim2(3r)により測定する。
研究応用のための例示的足場:
3r1 − hSteA Y35W N32G V48D M65I Q42E T51L(A59V ΔD61)(E29K K30E E33K)(配列番号18)
3r2 − hSteA Y35W N32G V48D M65I Q42E T51L(A59V G60N ΔD61 N62G)(E29K K30E E33K)(配列番号19)
治療応用のための例示的足場:
配列番号20 3t1 − hSteA N32G V48D
配列番号21 3t2 − hSteA N32G V48D M65I
配列番号22 3t3 − hSteA N32G V48D M65I T51L
配列番号23 3t4 − hSteA N32G V48D M65I Q42E
配列番号24 3t5 − hSteA N32G V48D M65I Q42E T51L
図2は、熱安定性の尺度としてTmについてのデータを示す。
図3は、異なるpH値で測定したTmを示す。
図4は、CDスペクトルを示す。
本発明者らは、上記の例示的足場についてのDSCデータを生成し、以下のTm値を観察した:
3t1=85.6℃
3t2=89.2℃
3t3=91.6℃
3t4=92.4℃
3t5=94.7℃
したがって、本発明者らは、例示的足場タンパク質が安定性向上を示すことを実証する。
足場タンパク質の構造一体性
本発明の足場タンパク質は、有利なことに、標的ペプチド挿入を備えている場合もそれらの構造一体性を維持する。これを実証するために、本発明者らは、異種ペプチド挿入を有する3r2及び3t4足場について近UV及び遠UV CDスペクトルを測定した。この実施例において、異種ペプチド挿入は、配列(GGS)3、すなわち、GGSGGSGGS(配列番号92)を有する、9mer挿入である。
近UV CDスペクトルは、芳香族側鎖の環境について報告する。近UV CDスペクトルにおける正又は負のピークは、芳香族残基の周りの環境が固定されていることを示す。これは、固定された三次構造を有するタンパク質と解釈される。ループ2及び4への異種ペプチド(GGS)3の付加は、異なる大きさでではあるが「空の」足場と同じ形状を有する近UV CDスペクトルを生じさせる結果となり、これは、異種ペプチドの付加が足場タンパク質の三次構造を破壊しなかったことを示す。
遠UV CDスペクトルは、全体的な二次構造について報告する。アルファヘリックス、ベータストランド及びランダムコイルは全て、明確に異なる遠UV CDスペクトルを有する。ループ2及び4への異種ペプチド(GGS)3の付加は、異なる大きさでではあるが「空の」足場と同じ形状を有する遠UV CDスペクトルを生じさせる結果となり、これは、異種ペプチドの付加が足場タンパク質の全体的な二次構造を破壊しなかったことを示す。
図5を参照して、平均残基楕円率([θ]MRE)を示す、3r2(実線)及び3r2(GGS)(破線)の遠UV CDスペクトル。3r2は、そのループが異種ペプチドを含有しない、「空」の足場である。3r2(GGS)は、異種ペプチド配列GGSGGSGGS(配列番号92)を、A49(ループ2)の代わりに含有し(すなわち、48−<異種ペプチド>−50)、及びP74−G75−Q76−N77(ループ4)の代わりに含有する(すなわち、73−<異種ペプチド>−78)。
図6への参照:平均残基楕円率([θ]MRE)を示す、3t4(実線)及び3t4(GGS)(破線)の遠UV CDスペクトル。3t4は、そのループが異種ペプチドを含有しない、「空」の足場である。3t4(GGS)は、異種ペプチド配列GGSGGSGGS(配列番号92)を、A49(ループ2)の代わりに及びP74−G75−Q76−N77(ループ4)の代わりに含有する。
図7への参照:モル楕円率([θ])を示す、3r2(実線)及び3r2(GGS)(破線)の近UV CDスペクトル。3r2は、そのループが異種ペプチドを含有しない、「空」の足場である。3r2(GGS)は、異種ペプチド配列GGSGGSGGS(配列番号92)を、A49(ループ2)の代わりに及びP74−G75−Q76−N77(ループ4)の代わりに含有する。
図8への参照:モル楕円率([θ])を示す、3t4(実線)及び3t4(GGS)(破線)の近UV CDスペクトル。3t4は、そのループが異種ペプチドを含有しない、「空」の足場である。3t4(GGS)は、異種ペプチド配列GGSGGSGGS(配列番号92)を、A49(ループ2)の代わりに及びP74−G75−Q76−N77(ループ4)の代わりに含有する。
したがって、測定された波長に関して、異種ペプチド挿入を有する足場についてのスペクトルの形状は、挿入のない足場と本質的に差がないことが分かる。これは、異種ペプチド挿入があっても構造が維持されたことを示す。このことは、本発明の異なる例示的足場についても示される。
免疫原性
本発明によるポリペプチドの免疫原性をモデル化した。
ランク%は、200000の無作為の天然ヒトペプチドのセットと比較した予測親和性のランク%であり、例えば、1%という値は、15merペプチドが、200000の無作為のペプチドの上位1%と同様に強く結合すると予測されることを意味する。10%未満(すなわち、10%〜100%)のいずれのランクも免疫原性と見なさない。これらの計算は、NetMHCIIpan (v3.1)サーバーを使用して行った。合計で41のMHCアレルを配列ごとに試験した。このプロットは、1つのアレル(DRB1 1502アレル)についての結果を代表例として示す。
図9を参照して、本明細書において教示する変異は免疫原性に関して上下のほんの小さい動きしか生じさせないと、結論付けることができる。プロットは、hSteAとほぼ同じである。大きい免疫原性領域は、導入されなかった。野生型からの大きい変化/偏差は、導入されなかった。
血清安定性
血清安定性などの安定性を試験した。
各タンパク質を、ヒト血清(Sigma社)中、37℃で16日間まで、インキュベートした。試料を0、1、2、4、8及び16日目に回収し、測定まで凍結状態を保った。全ての試料は、単量体及び存在する任意の他の種の存在を検出するために、Wes simple westernシステム(Protein Simple社)を使用して分析した。検出は、抗(His6)モノクローナル抗体によった。この実験経過を通して、SQTは、単量体ピーク面積の着実な減少を示した(図6a)が、他のタンパク質は、一定に保たれた。SQT単量体の量の減少に匹敵するのが、SQT二量体の増加であった(図6b)。これは、SQTがV48Lを有するため依然として二量体化することができると予想される。
より低い分子量で、例えばプロテアーゼ消化から現れるいかなる材料についての証拠もなかった。
同じ結果が、(血清ではなく)緩衝液中で見られた。
したがって、本発明によるポリペプチドが安定しており、示す時間経過にわたってヒト血清中で、又は実際に標準的な保存用緩衝液中で、有意に分解しないことを、実証する。
生物学的中立性(パパイン結合)
ヒトステフィンAは、システインプロテアーゼパパインの阻害剤である。ヒトステフィンA、SQT、並びに3r2及び3t4と呼ぶhSteAのバリアントを、パパイン活性アッセイにおいて試験した。3r2及び3t4はまた、残基48〜50及び73〜78(hSteA残基番号付け)の間に異種ペプチド(GGSGGSGGS)(配列番号92)を挿入して試験した。活性化パパインを、各バリアントの希釈系列とともにインキュベートした後、基質(N−カルボベンジルオキシ−Phe−Arg−7−アミド−4−メチルクマリン)を添加した。各反応の蛍光を、基質発光後5分間、測定した(380nmで励起、460nmで発光)。データを図11に提示する。hSteAは、パパインの強力な阻害剤であるが、試験したいずれのバリアントも、試験した濃度についてはパパインの有意な阻害を示さない。これは、生物学的中立性が本発明の例示的足場タンパク質において達成されたことを実証する。
例示的ライブラリー構築
1.ベクター調製
a.SapI消化
●反応混合物:
60μL SapI(10U/μL)
7.5μL MfeI−HF(20U/μL)
150μgベクター(短縮化遺伝子IIIを含有する;ライブラリーは、足場 − リンカー − 遺伝子IIIとなる)
150μL CutSmart緩衝液(10x)
H2Oを添加して1500μLにする
●37℃で1時間インキュベートする(500μL 分割量)。
●アガロースゲル上で消化の成功をチェックする。
b.フェノール/クロロホルム抽出
●1体積のフェノール/クロロホルム(Sigma社;77617)を1.5mLチューブの中の1体積の自分の試料(体積が大きいほど取り扱いが容易である;500μLが理想的である)に添加し、チューブが完全に密閉されていることを確認し、反転により完全に混合する。
●試料を13,000xgで5分間(室温で)遠心する。
●上の層を新たなチューブに注意深く移す(最初に400μL、次いで残部)。
●1体積のクロロホルム(Sigma社;C0549)を試料に添加し、チューブが完全に密閉されていることを確認し、反転により完全に混合する。
●試料を13,000xgで5分間(室温で)遠心する。
●上の層を新たな2mLチューブに注意深く移す(最初に400μL、次いで残部)。
●DNAを直ちに抽出する。
c.エタノール沈殿
●0.1x体積の3M酢酸ナトリウム(pH5.2;ThermoFisher社;R1181)、1μLグリコーゲン(Roche社;10901393001)及び2.5x体積の予冷した(−20℃)無水エタノールを、フェノール/クロロホルム抽出試料に添加し、反転により完全に混合する。
●試料を−80℃で少なくとも2時間(一晩のほうがよいだろう)インキュベートする。
●予冷した遠心分離器において16,000xg/4℃で15分間、沈殿DNAを遠心する。
●ピペッティングにより上清を除去し、ペレットの反対側に400μLの予冷した70%(v/v)エタノールを添加することによりペレットを洗浄する。
●16,000xg/4℃で5分間、再び遠心する。
●注意深いピペッティングにより、できる限り多くのエタノールを除去する。
●室温でペレットが乾燥するようにチューブを開けたままにしておく。
●DNAを分子グレードの水(通常は100μL)に再懸濁させる。
d.Chromaspin TE−1000カラムでの精製
●300bpより小さい消化断片を除去するための、消化されたベクターDNAのChromaspin TE−1000カラムによるさらなる精製。精製されたベクターDNAは、フロースルー中にあるであろう。これは、濃縮ステップではない。70〜100μL DNAを最高濃度1mg/mLでアプライすることができる。
●カラムのスラリーを反転(Takara Clontech社;636079)により混合する。
●カラムの末端部を閉め、採取用チューブの中に入れる。
●カラムの蓋を取り外し、採取用チューブと一緒に15mLファルコンチューブの中に入れる。
●700xg/4℃で5分間、遠心する。
●カラムを新たな採取用チューブの中に移し、15mLファルコンチューブの中に戻す。
●注意深いピペッティングにより試料をスラリーの上にアプライする。
●700xg/4℃で5分間、遠心する。
●精製されたベクターDNAは、このときフロースルー中にあり、それを−20℃での保管のために1.5mLチューブに移す。
2.インサート調製
a.SapI消化
●反応混合物:
15μg ライブラリーDNA(ビオチン化)
75μL CutSmart緩衝液(10x)
30μL SapI(10U/μL)
Oを添加して750μLにする
●3×250μLの分割量に分割する。
●37℃で1時間(Eppendorf Thermomixer)インキュベートし、その後、65℃/20分(ヒートブロック)で熱不活性化する。
b.ビーズ精製I(ストレプトアビジンビーズ)
●洗浄緩衝液(2×)を調製する:
10mM Tris−HCl(pH7.5)
1mM EDTA
2M NaCl
●50μLのM280ストレプトアビジンビーズ(LifeTechnologies社 11205D)を1mLの洗浄緩衝液(1x)と混合する。5秒以上ボルテックスにかけることにより混合する。
●磁気ラック上で1分間、ビーズを固定化する。
●上清を除去し、1mLの洗浄緩衝液(1x)を再び添加する。
●磁気ラック上で1分間、ビーズを固定化する。
●上清を除去し、ビーズを250μLの洗浄緩衝液(2x)に再懸濁させる。
●洗浄されたビーズに250μLの消化物を添加し、ローラーミキサーを用いて室温で15分間インキュベートする。
●磁気ラック上で2〜3分間、ビーズを固定化する。
●上清を新たなチューブ(消化されたライブラリーインサートが入っている)に移す。
c.ビーズ精製II(AMPureビーズ)
・上清を新たなチューブ(消化されたライブラリーインサートが入っている)に移す。
●600μLのAMPureビーズを、250μLの消化され、ストレプトアビジン精製されたインサートに添加する。ローラーミキサー上で10分間インキュベートする。
●磁石上で2〜3分間、ビーズを固定化する。上清を廃棄する。
●ビーズを1.1mLの70%(v/v)エタノールで洗浄する。
●磁石上で2〜3分間、ビーズを固定化する。上清を廃棄する。
●ビーズを1.1mLの70%(v/v)エタノールで再び洗浄する。
●磁気上で2〜3分間、ビーズを固定化する。上清を廃棄する。
●ビーズを10分間、空気乾燥させる。
●ビーズを50μLの水に2分間、再懸濁させる。
●磁石上で2〜3分間、ビーズを固定化し、上清を新たなチューブに移す。
●ビーズを50μLの水に2分間、再懸濁させる。
●磁石上で2〜3分間、ビーズを固定化し、上清を前のものと同じチューブに移す。
●分析用アガロースゲル上で消化及び精製の成功をチェックする。
3.試験ライゲーション及び初期QC
a.ライゲーション
異なるベクター:インサート比を試験する。
●ライゲーション混合物(インサートのない陰性対照を含む):
100ng 消化されたベクター
Xng 消化されたライブラリーインサート(Xは、ライゲーション比によって変わる)
0.5μL T4 DNAリガーゼ(2000U/μL)
2μL T4 DNAリガーゼ緩衝液(10x)
Oを添加して20μLにする
●ライゲーション混合物を室温で30分間インキュベートする。リガーゼを65℃で10分間、不活性化する。
b.エレクトロポレーション
●エレクトロポレーションキュベット(2mm)をそれらのバッグに入れ、1.5mLエッペンドルフチューブ及び滅菌水を氷上に置いて予冷する。
●エレクトロコンピテントTG1細胞の分割量を氷上に置いて解凍する。
●60μL氷冷滅菌水を60μL TG1細胞に添加する。
●2μLライゲーション混合物を、予冷した1.5mLチューブに分取する。
●25μLの希釈されたTG1細胞を各チューブに添加し、軽くはじくことにより混合する。
●細胞/DNA混合物を、予冷したキュベットに移し、キュベットをエレクトロポレーター内に置き、細胞にパルス印加する(25μF/200オーム/2500V)。
●直ちに975μLの回復培地を添加し、ピペットでの吸上げ・吐出しを3回行い、細胞懸濁液を新たな1.5mLチューブに移す。
●細胞を37℃/1000rpmで1時間インキュベートする。
●細胞10−2及び10−3個を2YTで希釈し、50μLを、25μg/mLのクロラムフェニコールと2%グルコースとを補充した2YT寒天プレートに播種する。プレートを30℃で16時間インキュベートする。
●翌日、cfuを計数する。
c.シークエンシング
●最良のベクター:インサート比を選択し、計数用プレートからコロニー(合計192)を、25μg/mLのクロラムフェニコールと2%グルコースとを補充した1mLの2YTに採取する。
●37℃/800rpm/湿度35%で一晩インキュベートする。
●ファージミドDNAを単離し、M13−RPプライマーを用いてシークエンシングする。
4.バルクライゲーション
a.ライゲーション
●ライゲーション混合物(2×3.5mL):
15〜20μg SapI消化pALSphm−dummyT2
Xμg SapI消化ライブラリーインサート(Xは、決定された最適ライゲーション比に依存する)
70μL T4 DNAリガーゼ(2000U/μL)
350μL T4 DNAリガーゼ緩衝液(10x)
ヌクレアーゼフリー水を添加して3.5mLにする
→14x500μLの分割量に分割する
●16℃で一晩インキュベートする。
●リガーゼを65℃で10分間、不活性化する。
b.フェノール/クロロホルム抽出
●1.bを参照されたい
c.Amiconフィルターユニットでの再緩衝
●抽出されたDNAをAmiconフィルターユニット(50K)に添加する。合計体積は、500μLであるべきである。必要に応じてヌクレアーゼフリー水を添加して500μLにすることができる。
●カラムを3,000xgで10〜15分間、上のカラムの液体体積が30〜50μLに低下するまで、遠心する。
●フロースルーを廃棄し、濃縮試料に400μLのヌクレアーゼフリー水を注ぎ足す。水と試料とを混合し、3,000xgで10〜15分間、上部のカラムの液体体積が30〜50μLに低下するまで、再び遠心する。
●試料を合計8x400μLのヌクレアーゼフリー水で再緩衝する。
●最後の遠心ステップ後、カラムを上下逆にして注意深く新たな採取用チューブに移す。1,000xgで2分間、遠心し、溶出したDNAを採取用チューブからDNA−LoBindチューブに移す。
●DNA濃度を測定する。
5.大規模形質転換
a.ライブラリーのシューティング
●回復培地を37℃で解凍し(defrost)、それを予温状態で保持する。
●18〜19mL 2YT培地が入っている使い捨て125mLフラスコを用意し、それを37℃で予温する(1×形質転換用に19mL、2×形質転換用に18mL)。
●氷上のそれらのバッグにキュベット(2mm)を入れる。
●氷上でヌクレアーゼフリー水を予冷する。
●バルクライゲーションを解凍し、それを氷上で保持する。
●TG1細胞を氷上で約10分間、解凍する。
●60μLの予冷したヌクレアーゼフリー水を細胞及び10μLのライゲーション混合物に添加する。軽くはじくことにより混合する。
●希釈された細胞/ライゲーション混合物を、予冷したキュベットに移し、ベンチに穏やかにコツコツと打ちつけることによって細胞がキュベットの底部にあることを確認する。
●キュベットをエレクトロポレーター内に置き、パルス(25μF/200オーム/2500V)を印加する。
●パルス後10秒以内に870μLの回復培地を添加し、ピペットでの吸上げ及び吐き出しを穏やかに3回行う。
●形質転換された細胞を、用意した125mLフラスコに移し、37℃/220rpmで1時間インキュベートする。(2回の連続した形質転換の産物(transformations)を1つのフラスコにプールする)。
●培養物を50mLチューブに移し、3,220xgで5分間、遠心する。上清を廃棄し、細胞ペレットを1mLの2YTに再懸濁させる。系列希釈(10−2/−4/−5/−6/−7)のために10μLを除去し、残りの細胞を、2YT寒天(25μg/mLのクロラムフェニコール、2%グルコース)が入っている、1形質転換当たり2つのバイオアッセイディッシュに播種する。播種した体積を書き留める。
●20μLの10−5/−6/−7希釈物を小寒天プレート(25μg/mLのクロラムフェニコール、2%グルコースを有する、2YT寒天)上に播種する。
●バイオアッセイディッシュ及び寒天プレートを30℃で一晩インキュベートする。
●十分な形質転換細胞(ライブラリーの目標サイズの約10倍)が回収されるまで、形質転換を繰り返す。バイオアッセイディッシュをパラフィンで密封し、全ての形質転換が完了するまで4℃で保管する。
b.サンガーシークエンシングによるQC
●3.cのステップを繰り返す。
c.形質転換細胞のプーリング及びグリセロールの作製
●15%(v/v)グリセロール(最終濃度)を補充した2YT培地を調製する。
●10〜15mLの2YT/グリセロール混合物を1つのバイオアッセイディッシュに添加し、コロニーを擦り取る。
●全てのコロニーを擦り取ったら、細胞懸濁液を隣のトレーに移し、コロニーの擦り落としを続ける。懸濁液が非常に粘稠になる場合には、それに新鮮培地を注ぎ足すことができる。しかし、最終体積は、14mLを超えてはならない。
●全ての形質転換の(同じバッチから生じる)コロニーをプールしたら、細胞懸濁液を15mLファルコンチューブに移す。
●各チューブのOD600を測定し、各形質転換バッチの計数用プレートから計算した多様性に依存して細胞懸濁液を合わせる。
●ライブラリー多様性を15倍過剰に表す細胞を含有する分割量を作製し、−80℃で保管する。
d.グリセロールの生存性の試験
●プールされたライブラリーグリセロールの1つの分割量を解凍する。
●プールされたグリセロールストックの系列希釈物(10−6/10−7)を2YTで作製する。
●20μLの各希釈物を、25μg/mLのクロラムフェニコールと2%グルコースとを補充したLB寒天プレート(二連!)に播種する。
プレートを37℃で一晩インキュベートする。
●Cfu数は、1mL当たりの生細胞の実際の濃度を示す。
6.ファージ増殖
a.必要なグリセロールストックの計算
●グリセロールの生存性に関する前の計算に基づいて、10xライブラリー多様性をカバーするために必要となるグリセロールの数を計算する。
b.ファージ培養
●25μg/mLのクロラムフェニコール及び2%グルコースとグリセロールを含有する、6x500mlの予温した2xYTを、良好な通気を可能にするために2リットルの使い捨てフラスコに、OD600=0.08〜0.1まで接種する。
●OD600が0.5になるまで(75〜90分)、250rpmで振盪しながら37℃で増殖させる。
●選択肢:細胞の計算量を6つのフラスコにおいてOD600=0.08〜0.1で得ることができない場合には、多少の予備培養物(同じ培地及び滅菌フラスコ)を用意し、培養物を1時間、増殖させ、それらの予備培養物を使用して、6つの主要培養フラスコに接種する。
●培養物を円錐形500mL遠心分離ポット(最大500mL)に移し、培養物500mL当たり2x1012のM13K07ヘルパーファージを添加する。よく混合する。
●振盪せずに37℃水浴中で60分間インキュベートする。
●3,300xg、20℃で15分間、遠心する。チェックし、必要な場合には再遠心する。各遠心分離チューブのペレットを、25μg/mlのクロラムフェニコールと50μg/mlのカナマイシン(及び0.1%グルコース)とを含有する2xYTに再懸濁させる。元の培養物250mL当たり500mlを使用する。
●培養物を使い捨て2Lフラスコ(1フラスコ当たり最大500mL)に移す。予備感染ステップからのフラスコを再使用する。
●振盪(170rpm)しながら25℃で一晩インキュベートする。
c.ファージ精製
●PEG−NaCl分割量(及び利用可能な場合は0.5L又は0.25Lの遠心分離ポット)を低温室に移して、一晩、予備冷却する。
●一晩培養物を3,300xg/4℃で30分間、遠心分離する。上清を回収し、上清400mL当たり100mLの予冷したPEG/NaClを添加する。PEG/NaClを前日に予め分取しておき、それを一晩、低温室に放置するのが賢明である。これにより、チューブ及びPEGが確実に冷却されることになり、ファージが回収しやすくなるからである。
●混合物を低温室において2〜3時間、氷上でインキュベートする。PEGとともに一晩インキュベートしない。これは、より大きいペレットをもたらすことになるが、主として、宿主DNA及び細菌残骸に起因するものであろう。
●混合物を3,300xg/4℃で30分間、遠心分離し、上清を廃棄する。
●得られたペレットを各々PBS(400mL SN+100mL PEG/NaCl当たり、8mL)に再懸濁させる。ペレットが完全に再懸濁されたら、ファージ溶液を50mLファルコンチューブに移し、11,600xg/4℃で10分間、再び遠心する。
●上清を新たな50mLチューブに移し、予冷したPEG/NaCl(8mL PBS当たり、2mL)を添加する。溶液を反転によってよく混合し、氷上に1時間、放置する。
●混合物を3,300xg/4℃で30分間、遠心分離し、上清を廃棄する。
●ペレットをPBS(最初の沈殿後に使用した8mL PBS当たり、5mL)に再懸濁させ、11,600xgで10分間、遠心分離して、いかなる残存する細菌残骸も除去する。
●上清をプールする(濾過しない)。グリセロールをファージ溶液に添加し(最終濃度15%)、完全に混合する。
●ファージストックを直ちに調製し、PBS/15%グリセロール中、4℃で(力価及び提示レベルを判定するまで2、3日以内)保管し、その後、−80℃で、作業サイズの分割量で保管するべきである(各ファージ分割量は、ラブラリーの少なくとも10倍過剰表現を有するべきである)。protein LoBindチューブを使用する。
●光学密度と大腸菌感染の両方によってファージの力価を決定するのが賢明である。提示レベルは、ウェスタンブロットによって決定するべきである。
d.夾雑/感染力試験
●単一コロニーからのER2738大腸菌細胞の5ml培養物(12μg/mlのテトラサイクリンを補充した2YT培地)を14cm通気チューブの中に配置する。
●軌道インキュベーターにおいて37℃、220rpmで一晩インキュベートする。
●一晩ER2738培養物の10−1希釈物のOD600を測定する。
●OD600が5未満である場合、これは、それらが感染に適切でないことを示しうる。一晩培養物を廃棄し、新鮮な一晩培養物を調製する。
●12μg/mLのテトラサイクリンを補充した2YTでONを希釈することにより、OD600nm=0.18〜0.20で20mLの培養物を調製する。OD600nmをチェックする。
●37℃、220rpmで45〜90分間、細胞が0.50〜0.70のOD600範囲に達するまで、インキュベートする。
●このインキュベーションの間に、以下のものを調製する:
○上層寒天対照(夾雑チェック):
・水浴を45℃に設定し、上層寒天をマイクロ波照射装置で融解する。
・4x3mlの融解した上層寒天を14cm通気チューブに分取し、使用前に少なくとも30分間、水浴中に入れて冷却する。
・ファージ試料をPBS中での系列希釈により調製し、氷上に置く:
1E10ph/mL
1E9ph/mL
1E8ph/mL
・インキュベーションの後半の間に、10μlのファージを2ml遠心分離チューブに添加する。
・10μLのPBSを入れた別の2ml遠心分離チューブ(これは陰性対照である)を用意する。
・必要になるまでチューブを室温で放置する。
○増幅ファージ対照:
・ファージ試料を系列希釈により調製し、氷上に置く:
2E9ph/mL
2E8ph/mL
2E7ph/mL
2E6ph/mL
2E5ph/mL
・インキュベーションの後半の間に、10μlの希釈精製されたファージを1.5mLチューブに添加する。
・必要になるまでチューブを室温で放置する。
●ER2738細胞がOD600=0.50〜0.70に達したら、用意した1.5及び2mLチューブ各々に1mLの細胞を添加する。全てのチューブを反転により混合する。
●直ちに、全てのチューブを振盪せずに37℃で15分間インキュベートする。
●15分のインキュベーション後:
○増幅ファージ対照:3x2ml遠心分離チューブを、37℃、1000rpmのチューブシェーカーに移し、さらに1時間インキュベートする。
○上層寒天対照(溶出ファージ):300μlの細胞/ファージ混合物を、上層寒天を有する、用意した14cm通気チューブに添加する。チューブを旋回させることによって穏やかに混合し、12μg/mlのテトラサイクリンを補充したLB−寒天プレート上に直ちに注入し、上層寒天溶液がプレートを覆うようにプレートを傾ける。寒天を下にしてプレートを暗所に放置して、上層寒天を固まらせる。
●増幅ファージ対照:各希釈物からの50μlを、100μg/mlのカルベニシリン又は25μg/mLのクロラムフェニコール又は50μg/mLのカナマイシンを補充したLB−寒天プレート上に播種する。
●全てのプレートを、寒天を上にして37℃で一晩、静的インキュベーターにおいてインキュベートする。
●感染性ファージ[pfu/ml]を計算する。
7.提示レベル(抗gIIIp抗体ウェスタンブロット)
a.SDS−PAGE
●6.5μL PBS中の1E11ファージを調製し、2.5μLの4xローディング色素及び1μLの10x還元剤を添加する。二連反復試料を調製する。
●70℃で10分間インキュベートする。
●ファージ調製物を12ウェルBOLT Bis−Trisゲルのウェルに移す。
●ゲルを200Vで22分間、泳動させる。
b.ブロッティング
●濾紙(青色バッグ)をMilliQ水で湿潤させる。
●NC Mini/Regular Stacksからフォイルを剥ぎ取り、プラスチックトレーを用いてスタックをiBlot2デバイス内に置く。
●銅/ゲル層を持ち上げてスタックから外し、それを、除去したフォイルの上に載せる。
●スタックのニトロセルロース膜を覆っている薄いプラスチックを除去して廃棄する。
●SDSゲルを保持するカセットを開け、ウェル及び下端を取り出し、それをNC膜の上に(理想的には位置を変えずに)載せる。湿潤手袋でゲルを注意深くなでることにより、いかなる気泡も除去することができる。
●前に湿潤させた濾紙をゲルの上に載せ、濾紙全体にわたってローラーを転がすことによりいかなる気泡も除去する。
●銅/ゲル層を濾紙上に(ゲル側を下に向けて)戻し、再びローラーを使用する。
●NC Miniスタックの箱から付属の電極を用いて濾紙を取り、電極を用いてiBlot2デバイス内の電子機器を覆っているスタックの上にそれを載せる。
●iBlot2デバイスの蓋を閉め、ディスプレイの「最終泳動を開始する」が点灯するのを待つ。必要に応じて電極を用いて濾紙の位置を変える。
●「テンプレート」の中からP0プログラム(7分かかる)を選択する。
c.gIIIpの検出
●ブロットされたニトロセルロース膜を50mLファルコンチューブに移し、TBS pH7.5中の3%(w/v)脱脂乳 5mLをそれに添加する。
●混合ローラー上で室温で1時間、インキュベートする。
●ブロッキング溶液を廃棄し、5mL TBS−T(0.05%)を添加することにより膜を洗浄する。
●混合ローラー上で室温で5分間、混合する。さらに2回繰り返す。
●一次抗体:抗gIIIp抗体の1:1000希釈物5mLを、TBS pH7.5中の1%(w/v)脱脂乳に添加する。
●混合ローラー上で室温で1時間、インキュベートする。
●前と同様にTBS−Tで膜を3x洗浄する。
●二次抗体:HRP結合抗マウスp抗体の1:2000希釈物 5mLを、TBS pH7.5中の1%(w/v)脱脂乳に添加する。
●混合ローラー上で室温で1時間、インキュベートする。
●前と同様にTBS−Tで膜を3x洗浄する。
●1.5mLの化学発光基質(例えば、ECL)で結合抗体を検出する。溶液を膜上に1分間放置し、次いでトレーを傾け、いかなる過剰なECL溶液もペーパータオルで捕らえる。
●膜を撮像する。
●得られた画像を保存し、バンドを定量し、提示レベルを評価する。
さらなる例示的足場タンパク質
本発明は、特許請求の範囲において述べる通りのヒトステフィンA(配列番号1)を基準にして上記の変異とある特定の被定義配列同一性を有する、ステフィンA足場を包含する。ここで、本発明者らは、本発明による有用な足場の例を提供して、異なる配列同一性レベルで機能性を例証する。
この実施例における本発明のポリペプチドは、イヌSteAに由来するアミノ酸配列を含む。
イヌ野生型配列と比べての変異に下線を引く(配列番号1と比べての変異は、配列アラインメントにより同定することができる)。
cSteA3r2:配列番号93
Figure 2020532949
(GGS)異種ペプチド挿入(囲み線付き)を有するcSteA3r2:配列番号94
Figure 2020532949
これらの発現に成功した。
例示的Tm測定値は、以下の通りである:
cSteA 3r2 Tm=79.2℃
ループ2及び4に(GGS)を有するcSteA 3r2 Tm=83.6℃
これは、hSteAに関して教示した通りの位置に異種ペプチドを挿入することができることを実証する。
cSteAに基づくさらなる例示的配列(野生型cSteAからの変化に下線を引く)としては、以下のものが挙げられる:
cSteAtA 配列番号95
Figure 2020532949
cSteAtAは、翻訳の起こりうる不明瞭な開始を防止する利点がある変異(M2I − hSteA配列に復帰する)、グリコシル化部位を除去する利点がある変異(N32G)、及びドメインスワップ二量体化を最小限に抑える利点がある変異(V48D、既に記載した)の最小限のセットを含む。これらの変異は、有用であり、個々に起こすことができる。
cSteAtB 配列番号96
Figure 2020532949
cSteAtBは、最小限の変異と、有利なことにループ4の「進入」及び「退出」をhSteAと同じにするためのさらなる変異(G72S、P78E及びT79D、全てhSteA配列に復帰する)とを含む。
cSteAtC 配列番号97
Figure 2020532949
cSteAtCは、最小限の変異と、残基をヒト配列に「復帰」させるための野生型cSteAと比べてのさらなる変異(これらの残基は、hSteAにおいて不安定化していることが判明した(A20V、F38L、両方ともhSteA配列に復帰する))とを含む。これには、cSteAに基づくポリペプチドをより安定にさせる利点がある。
cSteAtD 配列番号98
Figure 2020532949
cSteAtDは、最小限の変異と、ループ4の「進入」及び「退出」をhSteAと同じにするためのさらなる変異(G72S、P78E及びT79D、全てhSteA配列に復帰する)とを合わせる/含む。
cSteAt1AL 配列番号99
Figure 2020532949
cSteAtAと同様だが、GGSGGSGGS(配列番号92)異種ペプチド挿入(囲み線付き)を(1つは残基48の代わりに及び1つは残基74〜77の代わりに)含む。
cSteAt2BL 配列番号100
Figure 2020532949
cSteAtBと同様だが、GGSGGSGGS(配列番号92)異種ペプチド挿入(囲み線付き)を(1つは残基48の代わりに及び1つは残基74〜77の代わりに)含む。
cSteAt3CL(配列番号101)
Figure 2020532949
cSteAtCと同様だが、GGSGGSGGS(配列番号92)異種ペプチド挿入(囲み線付き)を(1つは残基48の代わりに及び1つは残基74〜77の代わりに)含む。
cSteAt4DL(配列番号102)
Figure 2020532949
cSteAtDと同様だが、GGSGGSGGS(配列番号92)異種ペプチド挿入(囲み線付き)を(1つは残基48の代わりに及び1つは残基74〜77の代わりに)含む。
追加の例示的足場
野生型cSteAは、有益な残基E42及びI65及びI51を既に含有する(T51Lは、最も好ましいが、T51Iも同様に良好である)。最小のミュータントcSteAA(上記)は、hSteA配列に由来する3t5に等しい。
ここで、本発明者らは、下に与えるイヌ配列(cSteAr1)を使用してhSteA 3r1の等価物を示す。
cSteAr1(配列番号103)
Figure 2020532949
cSteA 3r2は、既に上に提示した(配列番号93)。
Tm上昇
変異を有するポリペプチドを、本明細書に記載の通りに作製した。
この実施例におけるポリペプチドは、記載の通りの変異を有するヒトSteA配列(配列番号1)に基づくものであった。野生型ヒトSteAと比べてのデータを下に示す。
Figure 2020532949
Figure 2020532949
Tmの低下
変異を有するポリペプチドを、本明細書に記載の通りに作製した。
この実施例におけるポリペプチドは、記載の通りの変異を有するヒトSteA配列(配列番号1)に基づくものであった。野生型ヒトSteAと比べてのデータを下に示す。
Figure 2020532949
Figure 2020532949
様々な3r2結合剤及び様々な4型(イヌ)結合剤の実証
3r2型ライブラリー
図12〜14は、「iQueアッセイ」において試験した、ヒト上皮増殖因子受容体2(Her2:human epidermal growth factor receptor 2)、ヒト化モノクローナル治療用抗体トラスツズマブ、及びヒトプログラム死−リガンド1(PD−L1:programmed death-ligand 1)に対する選択についての結果を示す。これらのデータは、Affimer試薬が、標的と緊密、及び特異的に結合することができ、関連及び非関連タンパク質との交差反応性を有さないことを示す。これらのデータは、Affimer試薬からの結果が、反復可能であること示す。ループ配列が、iQueアッセイにおいて何度も提示され、同様の結果を与えることが多いからである。
Intellicyt iQue Screenerは、標的タンパク質及び関連対照が蛍光インデックス付きビーズ上に固定化される、フローサイトメトリーに基づく多重ビーズアッセイである。Affimer試薬をビーズとともにインキュベートし、Affimer試薬が標的タンパク質と結合し、その後、その複合体を抗HA Alex 488標識抗体で検出する。スクリーニングには、iQueアッセイを使用して、最良のAffimer試薬を、所望の標的に対するそれらの親和性及び選択性に基づいて選択する。理想的には、Affimer試薬は、それらの標的中でコーティングされたビーズに対して強い陽性シグナルを示すが、他のビーズのいずれにも示さない。
図12〜14において、Affimer作業IDは、内部識別子であり、異種ペプチドは、ループ2及びループ4位置に存在する(挿入されている)。アミノ酸配列は、DNAシークエンシングデータから決定する。iQueアッセイにおいて試験した標的は、EGFR、mIgG2b、hIgGG1 Fc、hPD−L2、Her2(R&D)、hPD−L1、トラスツズマブ、hIgG、Her2(カニクイザル)、Her 3、mPD−L1、アバスチン、ヒュミラ、リツキシマブ、mPD−L2、Her 4及び無標的対照であった。FL1−Aは、測定シグナルである。QSHxx(ここでのxxは、番号である)は、特定のタイプの蛍光インデックス付きビーズを指す。
図12は、Her2との結合剤についてのiQueアッセイの結果を示す。
図13は、トラスツズマブとの結合剤についてのiQueアッセイの結果を示す。
図14は、ヒトPD−L1との結合剤についてのiQueアッセイの結果を示す。
図15及び16は、Affimer試薬を96ウェルプレートにコーティングし、捕捉試薬として使用する、典型的な多点ELISAデータを示す。これらのデータは、ファージELISA(プレートで、しかしファージに結合されたAffimer試薬を用いて)又はiQueアッセイ(ビーズで、しかし精製されたAffimer試薬)のどちらかで同定された結合剤が、シグナルが滴定可能である典型的なELISA利用で標的を検出でき、特に、PD−L1について、低濃度の標的を検出することができることを示す。
ここでは、PD−L1(図15)及びHer2(図16)に同定されたAffimer試薬を固定濃度でELISAプレートにコーティングした。洗浄及びブロッキング後、適切なビオチン化標的を滴定し、放置して、コーティングされたAffimer試薬と結合させる。さらなる洗浄後、ストレプトアビジン−HRPを使用して、適切な基質の使用で捕捉された標的の存在を検出する。両方の抗PD−L1抗体Affimer試薬は、低濃度でビオチン化PD−L1に結合し、ビオチン化PD−L1は、ELISAプレートと結合しない(無コーティング対照;各々のクローンは、別個のELISAプレート上にあり、各々が、それ自体の無コーティング対照を含有した)。抗Her2抗体Affimer試薬は、抗PD−L1抗体Affimer試薬ほど良好に機能せず、全体的シグナルがより低いが、それらは、滴定可能な応答を実証する。ここで、ビオチン化Her2は、試験した最高濃度でELISAプレートと軽度に相互作用する。
図15は、2つの異なる抗PD−L1Affimer試薬(クローンA8及びG8)についてのELISAデータを示す。
図16は、2つの異なる抗Her2Affimer試薬(クローンC4及びE10)についてのELISAデータを示す。
4型ライブラリー(イヌ足場)
ステフィンAの推定イヌホモログに基づく4型ライブラリーを使用して、イヌPD−L1に対するAffimer試薬、特に、イヌPD−1とイヌPD−L1との間の相互作用を阻害することになるものを選択した。これらの試薬のiQueアッセイの結果(図17;上記のiQue Screenerの記述)は、本発明者らが、このイヌ足場を使用して特異的結合試薬を見いだすこともできることを示す。ここで、上位6つのAffimer試薬は、ヒトFcとの交差反応性を示しており、選択プロセスにおいて使用したイヌPD−L1は、イヌPD−L1/ヒトFc融合タンパク質である。イヌPD−L1と実際に結合するのではなく、それらは、実施には、ヒトFcドメインに対する非常に良好な結合試薬である。イヌタンパク質などの非ヒトタンパク質に基づく足場の使用は、異なる種に由来する治療薬より免疫原性がはるかに低く、それのため良好に耐容されるはずである、イヌ(バイオ)治療薬などの、非ヒト(バイオ)治療薬の産生に有用である。
図17は、イヌステフィンAベースのAffimer試薬によるイヌPD−L1に対する結合剤についてのiQueアッセイの結果を示す。図17でのiQueアッセイにおいて試験した試薬は、イヌPD−L1、ヒトVEGFR2、SMA(4A6)+BA−ペプチド、ヒトFc、イヌPD−1、アミンPEG11、mIgG2b、フモニシン及びSMA(2A9)+BA−ペプチド、並びに無標的対照であった。
イヌ足場についての1つの産業利用は、イヌ治療用試薬の生成である。適切には、イヌAffimer試薬は、それらの標的と結合し、適切には、天然リガンドの結合を破壊して生物学的効果をもたらすような方式で結合する。この選択において、本発明者らは、イヌPD−L1とのイヌPD−1の結合を防止するイヌAffimer試薬であって、がん治療におけるチェックポイント阻害剤としての使用の見込みがあるイヌAffimer試薬を見つけたかった。ここで、抗イヌPD−L1抗体Affimer試薬のうちの11個を、競合ELISAにおいてイヌPD−L1とイヌPD−1の相互作用を阻害するそれらの能力について試験した。結果は、一部のイヌAffimer試薬は、イヌPD−1とほぼ同じ親和性でイヌPD−L1と、及びより低い親和性範囲で他のものと結合することができることを示した。
次に、ELISAプレートをイヌPD−1でコーティングした。別途、ビオチン化イヌPD−L1を、異なるAffimer試薬の滴定量、及び対照としてのイヌPD−1とともにインキュベートする(競合反応)。インキュベーション後に、これらの競合反応物を、コーティングされたELISAプレートとともにインキュベートする。阻害がない場合、ビオチン化PD−L1は遊離していてプレートの表面のPD−1と結合することになり、これは、ストレプトアビジン−HRP試薬及び適する基質を用いて検出したとき、高シグナルを生じさせることになる。しかし、Affimer試薬が、PD−1との結合を阻害する方式でイヌPD−L1と結合する場合、それは、低シグナルを生じさせることになる。図18は、PD−1と同様の親和性を有するイヌAffimer試薬についての競合ELISAデータを示し、図19は、PD−1より低い親和性を有するイヌAffimer試薬についてのデータを示す。
図18は、イヌPD−1に対してと同様の親和性でcPD−L1と結合するイヌAffimer試薬についての競合ELISAを示す。曲線を4パラメーターロジスティックモデルに当てはめる。
図19は、イヌPD−1に対してよりも低い親和性でcPD−L1と結合するイヌAffimer試薬についての競合ELISAを示す。曲線を4パラメーターロジスティックモデルに当てはめる。
図12〜14における全てのAffimerは、mIgG2b G12及びZika NS1 C12(下記参照)を除いて、3r2(配列番号19)である。
マウスIgG2b G12は、アドヒロン足場(「2型足場」、植物ステフィンのコンセンサス、そのためヒトステフィンAと無関係)を有する。配列は、以下の通りである:
MSAATGVRAVPGNENSLEIEELARFAVDEHNKKENALLEFVRVVKAKEQXXXXXXXXXTMYYLTLEAKDGGKKKLYEAKVWVKXXXXXXXXXNFKELQEFKPVGDAAAAHHHHHHG(配列番号105)
イヌAffimerは、野生型cSteAからの変異M2I、N32G及びV48D(下線付き)を有する;以下の配列:
Figure 2020532949
この実施例におけるZika NS1 C12もまた、アドヒロン足場に基づく:
MSAATGVRAVPGNENSLEIEELARFAVDEHNKKENALLEFVRVVKAKEQXXXXXXXXXTMYYLTLEAKDGGKKKLYEAKVWVKXXXXXXXXXNFKELQEFKPVGDG(配列番後107)

Claims (42)

  1. 配列番号1のアミノ酸残基1〜11、13〜15、17〜19、21〜25、27〜28、35〜37、39、41、43〜44、46〜47、49〜50、52〜53、55〜58、63〜64、66、68〜82、84〜85、及び87〜98に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、
    配列番号1に対して、
    T51L、T51V、M65V、N32G、A59I、E29M、T34V、T34R、T45I、T45V、T51F、A59L、L67I、(E29K、K30E、E33K)、(A59L、G60N、D61G、N62K)、(A59V、D61N、N62K)、(G60N、D61G、N62K)、(G60N、ΔD61、N62G)、ΔD61、(A59L、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、ΔD61、N62G)、及び(A59V、ΔD61)
    からなる群から選択される1つ又は2つ以上の変異を含むことを特徴とし、
    配列番号1のTmより高いTmを有する、前記ポリペプチド。
  2. 89.0℃より高いTmを有する、請求項1に記載のポリペプチド。
  3. 配列番号1のアミノ酸残基1〜11、13〜15、17〜19、21〜25、27〜28、35〜37、39、41、43〜44、46〜47、49〜50、52〜53、55〜58、63〜64、66、68〜82、84〜85、及び87〜98に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、
    配列番号1に対して、
    L38A、V20I、A40I、L38V、A12I、A12V、I16L、V20L、Q26E、T31K、N32D、N32H、T34D、T34P、A40V、Q42D、V48E、V48G、V48A、T51A、(V20I、L38A)、(V20L、L38A)、(V20I、L38V)、(V20L、L38V)、(Y54D、T83D、Q86E)、(G60P、ΔD61、N62P)、(G60P、D61P、N62K)、(G60P、ΔD61、N62G)、(G60P、D61G、N62K)、(D61N、N62K)、及び(T83D、Q86E)
    からなる群から選択される1つ又は2つ以上の変異を含むことを特徴とし、
    配列番号1のTmより低いTmを有する、前記ポリペプチド。
  4. 少なくとも1つの異種ペプチド挿入をさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載のポリペプチドであって、前記異種ペプチド挿入が、配列番号1に対して、以下の位置のうちの少なくとも1つに挿入された異種ペプチド:
    a)47−<異種ペプチド>−55
    b)46−<異種ペプチド>−54
    c)46−<異種ペプチド>−50
    d)48−<異種ペプチド>−50
    e)49−<異種ペプチド>−51
    f)50−<異種ペプチド>−52
    g)66−<異種ペプチド>−85
    h)67−<異種ペプチド>−84
    i)70−<異種ペプチド>−74
    j)72−<異種ペプチド>−74
    k)71−<異種ペプチド>−73
    l)72−<異種ペプチド>−81
    m)73−<異種ペプチド>−80
    n)79−<異種ペプチド>−81
    o)80−<異種ペプチド>−81
    p)82−<異種ペプチド>−83
    q)72−<異種ペプチド>−77
    r)73−<異種ペプチド>−78
    s)74−<異種ペプチド>−79
    t)4−<異種ペプチド>−5
    を含む、前記ポリペプチド。
  5. 位置(a)〜(f)のいずれかにおける第1の異種ペプチド挿入、及び位置(g)〜(s)のいずれかにおける第2の異種ペプチド挿入の、2つの異種ペプチド挿入を含む、請求項4に記載のポリペプチド。
  6. 位置(a)〜(f)のいずれかにおける第1の異種ペプチド挿入、及び位置(t)における第2の異種ペプチド挿入の、2つの異種ペプチド挿入を含む、請求項4に記載のポリペプチド。
  7. 位置(g)〜(s)のいずれかにおける第1の異種ペプチド挿入、及び位置(t)における第2の異種ペプチド挿入の、2つの異種ペプチド挿入を含む、請求項4に記載のポリペプチド。
  8. 位置(a)〜(f)のいずれかにおける第1の異種ペプチド挿入、位置(g)〜(s)のいずれかにおける第2の異種ペプチド挿入、及び位置(t)における第3の異種ペプチド挿入の、3つの異種ペプチド挿入を含む、請求項4記載のポリペプチド。
  9. 配列番号1のアミノ酸残基1〜11、13〜15、17〜19、21〜25、27〜28、35〜37、39、41、43〜44、46〜47、49〜50、52〜53、55〜58、63〜64、66、68〜82、84〜85、及び87〜98に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、
    前記ポリペプチドが、少なくとも1つの異種ペプチド挿入を含み、配列番号1に対して、
    M65I、T51I、T51L、T51V、M65V、A59V、N32G、A59I、L38A、V20A、V20I、A40I、L38V、G50S、L38F、A12I、A12V、I16L、V20L、Q26E、E29M、T31K、N32D、N32H、T34V、T34R、T34K、T34D、T34P、A40V、Q42E、Q42D、T45I、T45V、V48E、V48D、V48G、V48A、V48L、T51F、T51A、A59L、K63R、L67I、N90T、(V20I、L38A)、(V20L、L38A)、(V20I、L38V)、(V20L、L38V)、(E29K、K30E、E33K)、(Y54D、T83D、Q86E)、(A59L、G60N、D61G、N62K)、(A59V、D61N、N62K)、(G60N、D61G、N62K)、(G60N、ΔD61、N62G)、ΔD61、(A59L、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、ΔD61)、(G60P、ΔD61、N62P)、(G60P、D61P、N62K)、(G60P、ΔD61、N62G)、(G60P、D61G、N62K)、(D61N、N62K)、及び(T83D、Q86E)
    からなる群から選択される1つ又は2つ以上の変異を含むことを特徴とし、
    前記異種ペプチド挿入が、配列番号1に対して、以下の位置のうちの少なくとも1つに挿入された異種ペプチド:
    d)48−<異種ペプチド>−50、
    e)49−<異種ペプチド>−51、
    f)50−<異種ペプチド>−52、
    q)72−<異種ペプチド>−77、
    r)73−<異種ペプチド>−78、又は
    s)74−<異種ペプチド>−79
    を含む、前記ポリペプチド。
  10. 位置(d)〜(f)のいずれかにおける第1の異種ペプチド挿入、及び位置(q)〜(s)のいずれかにおける第2の異種ペプチド挿入の、2つの異種ペプチド挿入を含む、請求項9に記載のポリペプチド。
  11. 配列番号1に対する1つ又は2つ以上の変異が、
    M65I、T51I、T51L、T51V、M65V、A59V、N32G、A59I、E29M、T34V、T34R、T34K、Q42E、T45I、T45V、T51F、A59L、K63R、L67I、N90T、(E29K、K30E、E33K)、(A59L、G60N、D61G、N62K)、(A59V、D61N、N62K)、(G60N、D61G、N62K)、(G60N、ΔD61、N62G)、ΔD61、(A59L、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、ΔD61、N62G)、及び(A59V、ΔD61)
    からなる群から選択される、請求項9に記載のポリペプチドであって、
    好ましくは、配列番号1のTmより高いTmを有する、前記ポリペプチド。
  12. 配列番号1に対する1つ又は2つ以上の変異が、
    L38A、V20A、V20I、A40I、L38V、G50S、L38F、A12I、A12V、I16L、V20L、Q26E、T31K、N32D、N32H、T34D、T34P、A40V、Q42D、V48E、V48D、V48G、V48A、V48L、T51A、(V20I、L38A)、(V20L、L38A)、(V20I、L38V)、(V20L、L38V)、(Y54D、T83D、Q86E)、(G60P、ΔD61、N62P)、(G60P、D61P、N62K)、(G60P、ΔD61、N62G)、( G60P、D61G、N62K)、(D61N、N62K)、及び(T83D、Q86E)
    からなる群から選択される、請求項9に記載のポリペプチドであって、
    好ましくは、配列番号1のTmより低いTmを有する、前記ポリペプチド。
  13. 配列番号1に対する1つ又は2つ以上の変異が、
    T51L、T51V、M65V、N32G、A59I、L38A、V20I、A40I、L38V、A12I、A12V、I16L、V20L、Q26E、E29M、T31K、N32D、N32H、T34V、T34R、T34D、T34P、A40V、Q42D、T45I、T45V、V48E、V48G、V48A、T51F、T51A、A59L、L67I、(V20I、L38A)、(V20L、L38A)、(V20I、L38V)、(V20L、L38V)、(E29K、K30E、E33K)、(Y54D、T83D、Q86E)、(A59L、G60N、D61G、N62K)、(A59V、D61N、N62K)、(G60N、D61G、N62K)、(G60N、ΔD61、N62G)、ΔD61、(A59L、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、ΔD61)、(G60P、ΔD61、N62P)、(G60P、D61P、N62K)、(G60P、ΔD61、N62G)、(G60P、D61G、N62K)、(D61N、N62K)、及び(T83D、Q86E)
    からなる群から選択される、請求項9に記載のポリペプチド。
  14. 配列番号1に対する1つ又は2つ以上の変異が、
    T51L、T51V、M65V、N32G、A59I、E29M、T34V、T34R、T45I、T45V、T51F、A59L、L67I、(E29K、K30E、E33K)、(A59L、G60N、D61G、N62K)、(A59V、D61N、N62K)、(G60N、D61G、N62K)、(G60N、ΔD61、N62G)、ΔD61、(A59L、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、D61G、N62K)、(A59I、G60N、ΔD61、N62G)、(A59V、G60N、ΔD61、N62G)、及び(A59V、ΔD61)
    からなる群から選択される、請求項13に記載のポリペプチドであって、
    好ましくは、配列番号1のTmより高いTmを有する、前記ポリペプチド。
  15. 配列番号1に対する1つ又は2つ以上の変異が、
    L38A、V20I、A40I、L38V、A12I、A12V、I16L、V20L、Q26E、T31K、N32D、N32H、T34D、T34P、A40V、Q42D、V48E、V48G、V48A、T51A、(V20I、L38A)、(V20L、L38A)、(V20I、L38V)、(V20L、L38V)、(Y54D、T83D、Q86E)、(G60P、ΔD61、N62P)、(G60P、D61P、N62K)、(G60P、ΔD61、N62G)、(G60P、D61G、N62K)、(D61N、N62K)、及び(T83D、Q86E)
    からなる群から選択される、請求項13に記載のポリペプチドであって、
    好ましくは、配列番号1のTmより低いTmを有する、前記ポリペプチド。
  16. 配列番号1のTmより高いTmを有する、請求項11又は14に記載のポリペプチド。
  17. 配列番号1のTmより低いTmを有する、請求項12又は15に記載のポリペプチド。
  18. 配列番号1に対して、G4R、G4W、V48D、V48E、G50S、Y35W、Y43W、Y53W、Y54W、Y64W、F70W、Y85W、F98W、(K71N S72G L73P)、及び(E78A L80R)からなる群から選択される1つ又は2つ以上の変異をさらに含む、請求項1〜17のいずれかに記載のポリペプチド。
  19. 配列番号1に対して、5つ又はそれ未満の変異を含む、請求項1〜18のいずれかに記載のポリペプチド。
  20. 5つ又はそれ未満の変異が、Y35W、N32G、V48D、M65I、Q42E、及びT51Lからなる群から選択される、請求項19に記載のポリペプチド。
  21. 5つ又はそれ未満の変異が、N32G、V48D、M65I、Q42E、及びT51Lからなる群から選択される、請求項19に記載のポリペプチド。
  22. i)N32G V48D
    ii)N32G V48D M65I
    iii)N32G V48D M65I T51L
    iv)N32G V48D M65I Q42E
    v)N32G V48D M65I Q42E T51L
    のうちの1つの群の、各々の変異を有する、請求項19に記載のポリペプチド。
  23. 変異iv)N32G、V48D、M65I、及びQ42Eの各々を有する、請求項22に記載のポリペプチド。
  24. a)Y35W N32G V48D M65I Q42E T51L(A59V ΔD61)(E29K K30E E33K)
    b)Y35W N32G V48D M65I Q42E T51L(A59V G60N ΔD61 N62G)(E29K K30E E33K)
    のうちの1つの群の、各々の変異を有する、請求項1〜18のいずれかに記載のポリペプチド。
  25. 変異b)Y35W N32G V48D M65I Q42E T51L(A59V G60N ΔD61 N62G)(E29K K30E E33K)の各々を有する、請求項24に記載のポリペプチド。
  26. 異種ペプチドが、6〜36アミノ酸長である、請求項1〜25のいずれかに記載のポリペプチド。
  27. a.請求項1〜26のいずれかに記載のポリペプチドと、
    b.分泌シグナル配列、ペプチドリンカー配列、親和性タグ、膜貫通ドメイン、細胞表面滞留配列、翻訳後修飾のための基質認識配列、タンパク質間相互作用によって凝集しているタンパク質の多量体構造を作出するための多量体化ドメイン、半減期延長ポリペプチド部分、抗体の組織局在及び抗原結合部位を変化させるポリペプチド配列、同じ又は異なる標的と結合する請求項1〜26のいずれかに記載の1つ又は2つ以上の追加のポリペプチド、並びに同じ又は異なる標的と結合する1つ又は2つ以上の追加のAffimerポリペプチド配列からなる群から選択れる、1つ又は2つ以上の追加のアミノ酸配列と
    を含む融合タンパク質。
  28. Fcドメイン又はその一部分、アルブミンタンパク質又はその一部分、アルブミン結合ポリペプチド部分、トランスフェリン又はその一部分、トランスフェリン結合ポリペプチド部分、フィブロネクチン又はその一部分、及びフィブロネクチン結合ポリペプチド部分からなる群から選択される、1つ又は2つ以上の半減期延長ポリペプチド部分を含む、請求項27に記載の融合タンパク質。
  29. Fcドメイン又はその一部分が、FcN結合を保持する、請求項28に記載のポリペプチド。
  30. Fcドメイン又はその一部分が、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM、又はそれらのサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1若しくはIgA2からのものである、請求項28に記載のポリペプチド。
  31. Fcドメイン又はその一部分が、C1q結合、補体依存性細胞毒性(CDC)、抗体依存性細胞介在性細胞毒性(ADCC)、ファゴサイトーシス、B細胞受容体のダウンレギュレーション、又はこれらの組合せから選択されるエフェクター機能を保持する、請求項28に記載のポリペプチド。
  32. 半減期延長ポリペプチド部分が、タンパク質が存在しない場合と比べ、前記タンパク質の血清半減期を少なくとも5倍延長する、請求項20に記載のポリペプチド。
  33. affimerポリペプチドである、請求項1〜32のいずれかに記載のポリペプチド。
  34. 請求項1〜33のいずれかに記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸。
  35. 請求項34に記載の核酸を含むベクター。
  36. 請求項1〜33のいずれかに記載のポリペプチドの集団を含むライブラリーであって、前記集団内の少なくとも2つの個々のポリペプチドが、異なる異種ペプチド挿入を含む、前記ライブラリー。
  37. 核酸の集団を含むライブラリーであって、前記核酸が、請求項36に記載のポリペプチドの集団をコードするヌクレオチド配列を含む、前記ライブラリー。
  38. 請求項1〜33のいずれかに記載のポリペプチド、請求項34に記載の核酸、又は請求項36若しくは37に記載のライブラリーを含む宿主細胞。
  39. 医療における使用のための、請求項1〜33のいずれかに記載ポリペプチド。
  40. 医薬の製造における使用のための、請求項1〜33のいずれかに記載のポリペプチド。
  41. 所望の構造に結合することができるペプチドを同定する方法であって、
    (i)異種ペプチド挿入を含む、請求項1〜33のいずれかに記載ポリペプチドを用意するステップと、
    (ii)前記ポリペプチドを前記所望の構造と接触させるステップと、
    (iii)前記ポリペプチドと前記所望の構造との間の会合をモニターするステップと
    を含み、
    前記ポリペプチドと前記所望の構造の会合により、前記ペプチドが、前記構造に結合することができる候補ペプチドとして同定される、前記方法。
  42. 足場タンパク質としての、請求項1〜33のいずれかに記載ポリペプチドの使用。
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