JP2020528278A - Gタンパク質共役受容体の活性化の変化を測定する方法 - Google Patents
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Abstract
Description
・休止している不活性状態では、Gタンパク質のαサブユニットはヌクレオチドGDPに結合している(GDPに結合した完全なGタンパク質)。
・GPCRの活性化後、GPCRはGタンパク質のαサブユニットに結合し、以下の2つの工程からなるGタンパク質活性化プロセスを引き起こす:1)Gタンパク質のGDPが放出されて空のGタンパク質となり、不活性なGPCR/空のGタンパク質複合体が形成される。2)GTPが結合してGTP型の活性Gタンパク質が形成される(GTPに結合した完全なGタンパク質)。第一の工程では、受容体に結合したGタンパク質は「空の形態」と呼ばれる状態である。文献では、この状態は一過性とされている。というのは、ヌクレオチドGTPが、Gタンパク質のαサブユニットにすぐに結合するといわれているからである。また、活性化Gタンパク質のβ/γサブユニットがαサブユニットから解離する。
・次いで、GTPに結合した完全なGタンパク質のαサブユニットは、エフェクターに結合してエフェクターを活性化する。すると、エフェクターはシグナル伝達経路を活性化して、細胞応答が起こる。
・次いで、GTPはGタンパク質αサブユニットにより加水分解されてGDPとなり、αサブユニットはβ/γサブユニットと再結合して、GDPに結合した完全なGタンパク質を再形成する(不活性状態)。
a)1種以上のGPCRと1種以上のGタンパク質とを担持する膜標本、
GDP源またはGTP源、
RETパートナー対の第一のメンバーで標識されたGタンパク質αサブユニット(Gαタンパク質)の第一のリガンド、および上記RETパートナー対の第二のメンバーで標識されたGαタンパク質の第二のリガンドであって、それぞれ個別にまたは組み合わせて空のGαタンパク質または完全なGαタンパク質に特異的に結合することができる第一および第二のリガンド
を第一の容器に導入する工程と;
b)第一の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
c)(i)工程a)と同じ試薬および試験分子を第二の容器に、あるいは(ii)試験分子を第一の容器に導入する工程と;
d)工程c)で得られた第二の容器中または第一の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
e)工程b)およびd)で得られたシグナルを比較する工程であって、
GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示し、
GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示し、
GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示し、
GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示す、工程と
を含む方法に関する。
a)1種以上のGPCRと1種以上のGタンパク質とを担持する膜標本、
GDP源またはGTP源、
RETパートナー対の第一のメンバーで標識されたGタンパク質αサブユニット(Gαタンパク質)の第一のリガンド、および上記RETパートナー対の第二のメンバーで標識されたGαタンパク質の第二のリガンドであって、それぞれ個別にまたは組み合わせて空のGαタンパク質または完全なGαタンパク質に特異的に結合することができる第一および第二のリガンド、
GPCR作動薬
を第一の容器に導入する工程と;
b)第一の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
c)工程a)と同じ試薬および試験分子を第二の容器に導入する工程と;
d)工程c)で得られた第二の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
e)工程b)およびd)で得られたシグナルを比較する工程であって、
GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示し、
GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示し、
GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示し、
GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示す、工程と
を含む方法に関する。
RETパートナー対の第一のメンバーで標識されたGタンパク質αサブユニット(Gαタンパク質)の第一のリガンド、および上記RETパートナー対の第二のメンバーで標識されたGαタンパク質の第二のリガンドであって、それぞれ個別にまたは組み合わせて空のGαタンパク質または完全なGαタンパク質に特異的に結合することができる第一および第二のリガンド;
一連の指示;
任意で上記試薬用の1種以上の希釈緩衝液;
任意でGDP源またはGTP源;
任意で1種以上のGPCRおよび/または1種以上のタンパク質を担持する膜標本;ならびに
任意でGαタンパク質
を含むキットに関する。
本発明において、用語「Gタンパク質」は、Gαタンパク質、Gβタンパク質、およびGγタンパク質という3つのサブユニットからなるヘテロ3量体タンパク質を指す。
1)Gαタンパク質の空の形態に優先的に結合することができるリガンド対、すなわち、2つのリガンドのうち少なくとも1つが、単独でまたは第二のリガンドと組み合わせて、Gαタンパク質の完全な形態に比べてGαタンパク質の空の形態に対して良好な親和性(すなわち、低いKd)を有するリガンド対。選択性係数(完全な形態のKdに対する空の形態のKdの比)は、例えば少なくとも2倍である。
2)Gαタンパク質の完全な形態に優先的に結合することができるリガンド対、すなわち、2つのリガンドのうち少なくとも1つが、単独でまたは第二のリガンドと組み合わせて、Gαタンパク質の空の形態に比べてGαタンパク質の完全な形態に対して良好な親和性(すなわち、低いKd)を有するリガンド対。選択性係数(空の形態のKdに対する完全な形態のKdの比)は、例えば少なくとも2倍である。
第一の態様によれば、本発明は、分子がGタンパク質共役受容体(GPCR)の活性化を変化させる能力を決定する方法に関し、上記方法は、
a)
・1種以上のGPCRと1種以上のGタンパク質とを担持する膜標本、
・GDP源またはGTP源、
・RETパートナー対の第一のメンバーで標識されたGタンパク質αサブユニット(Gαタンパク質)の第一のリガンド、およびRETパートナー対の第二のメンバーで標識されたGαタンパク質の第二のリガンドであって、それぞれ個別にまたは組み合わせて空のGαタンパク質または完全なGαタンパク質に特異的に結合することができる第一および第二のリガンド
を第一の容器に導入する工程と;
b)第一の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
c)(i)工程a)と同じ試薬および試験分子を第二の容器に、あるいは(ii)試験分子を第一の容器に導入する工程と;
d)工程c)で得られた第二の容器中または第一の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
e)工程b)およびd)で得られたシグナルを比較する工程であって、
・GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
・GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示し、
・GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
・GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示し、
・GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
・GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示し、
・GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
・GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示す、工程と
を含む。
a)
・1種以上のGPCRと1種以上のGタンパク質とを担持する膜標本、
・GDP源またはGTP源、
・RETパートナー対の第一のメンバーで標識されたGタンパク質αサブユニット(Gαタンパク質)の第一のリガンド、およびRETパートナー対の第二のメンバーで標識されたGαタンパク質の第二のリガンドであって、それぞれ個別にまたは組み合わせて空のGαタンパク質または完全なGαタンパク質に特異的に結合することができる第一および第二のリガンド、
・GPCR作動薬
を第一の容器に導入する工程と;
b)第一の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
c)工程a)と同じ試薬および試験分子を第二の容器に導入する工程と;
d)工程c)で得られた第二の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
e)工程b)およびd)で得られたシグナルを比較する工程であって、
・GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示す、工程と
を含む。
a)
・1種以上のGPCRと1種以上のGタンパク質とを担持する膜標本、
・GDP源またはGTP源、
・RETパートナー対の第一のメンバーで標識されたGタンパク質αサブユニット(Gαタンパク質)の第一のリガンド、およびRETパートナー対の第二のメンバーで標識されたGαタンパク質の第二のリガンドであって、それぞれ個別にまたは組み合わせて空のGαタンパク質または完全なGαタンパク質に特異的に結合することができる第一および第二のリガンド
を第一の容器に導入する工程と;
b)第一の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
c)(i)工程a)と同じ試薬、およびGPCR活性化を変化させることができる分子を第二の容器に、あるいは(ii)GPCR活性化を変化させることができる分子を第一の容器に導入する工程と;
d)工程c)で得られた第二の容器中または第一の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
e)工程b)およびd)で得られたシグナルを比較する工程であって、工程b)で得られたシグナルと比較した工程d)で得られたシグナルの増加または減少はGPCR活性化の変化を示す、工程と
を含む。
a)
・1種以上のGPCRと1種以上のGαタンパク質とを担持する膜標本、
・GDP源またはGTP源、
・RETパートナー対の第一のメンバーで標識されたGタンパク質αサブユニット(Gαタンパク質)の第一のリガンド、およびRETパートナー対の第二のメンバーで標識されたGαタンパク質の第二のリガンドであって、それぞれ個別にまたは組み合わせて空のGαタンパク質または完全なGαタンパク質に特異的に結合することができる第一および第二のリガンド
を第一の容器に導入する工程と;
b)第一の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
c)(i)工程a)と同じ試薬、およびGPCR活性化を変化させることができる分子を第二の容器に、あるいは(ii)GPCR活性化を変化させることができる分子を第一の容器に導入する工程と;
d)工程c)で得られた第二の容器中または第一の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
e)工程b)およびd)で得られたシグナルを比較する工程であって、工程b)で得られたシグナルと比較した工程d)で得られたシグナルの増加または減少は、空のGタンパク質または完全なGタンパク質の出現または消失を示す、工程と
を含む。
a)
・1種以上のGPCRと1種以上のGタンパク質とを担持する膜標本、
・GDP源およびGTP源、
・RETパートナー対の第一のメンバーで標識されたGタンパク質αサブユニット(Gαタンパク質)の第一のリガンド、およびRETパートナー対の第二のメンバーで標識されたGαタンパク質の第二のリガンドであって、それぞれ個別にまたは組み合わせて空のGαタンパク質または完全なGαタンパク質に特異的に結合することができる第一および第二のリガンド
を第一の容器に導入する工程と;
b)第一の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
c)(i)工程a)と同じ試薬および試験分子を第二の容器に、あるいは(ii)試験分子を第一の容器に導入する工程と;
d)工程c)で得られた第二の容器中または第一の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
e)工程b)およびd)で得られたシグナルを比較する工程であって、
・GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
・GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示し、
・GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
・GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示し、
・GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
・GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示し、
・GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
・GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示す、工程と
を含む。
a)
・1種以上のGPCRと1種以上のGタンパク質とを担持する膜標本、
・GDP源およびGTP源、
・RETパートナー対の第一のメンバーで標識されたGタンパク質αサブユニット(Gαタンパク質)の第一のリガンド、およびRETパートナー対の第二のメンバーで標識されたGαタンパク質の第二のリガンドであって、それぞれ個別にまたは組み合わせて空のGαタンパク質または完全なGαタンパク質に特異的に結合することができる第一および第二のリガンド、
・GPCR作動薬
を第一の容器に導入する工程と;
b)第一の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
c)工程a)と同じ試薬および試験分子を第二の容器に導入する工程と;
d)工程c)で得られた第二の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
e)工程b)およびd)で得られたシグナルを比較する工程であって、
・GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示す、工程と
を含む。
本発明の第一の態様によれば、工程a)は、以下の3つの要素を第一の容器に導入することからなる。
・1種以上のGPCRと1種以上のGタンパク質とを担持する膜標本、
・GDP源またはGTP源、
・RETパートナー対の第一のメンバーで標識されたGタンパク質αサブユニット(Gαタンパク質)の第一のリガンド、およびRETパートナー対の第二のメンバーで標識されたGαタンパク質の第二のリガンドであって、それぞれ個別にまたは組み合わせて空のGαタンパク質または完全なGαタンパク質に特異的に結合することができる第一および第二のリガンド。
・1種以上のGPCRと1種以上のGタンパク質とを担持する膜標本、
・GDP源またはGTP源、
・RETパートナー対の第一のメンバーで標識されたGタンパク質αサブユニット(Gαタンパク質)の第一のリガンド、およびRETパートナー対の第二のメンバーで標識されたGαタンパク質の第二のリガンドであって、それぞれ個別にまたは組み合わせて空のGαタンパク質または完全なGαタンパク質に特異的に結合することができる第一および第二のリガンド、
・GPCR作動薬。
本発明の3つの態様によれば、工程b)は、第一の容器中、すなわち工程a)で得られた容器中で放出されたRETシグナルを測定することからなる。測定されたシグナルは、試験分子の非存在下、容器中で得られたシグナルに相当する。この測定は、当業者に広く知られている従来の方法によって行うことができ、特に問題はない。通常、TR−FRETまたは生物発光読取りモードを備えたPHERAstar FSマイクロプレートリーダー(BMG Labtech)など、RETシグナルを検出および測定する装置が用いられる。
本発明の第一の態様によれば、
・一実施形態では、工程c)は、工程a)と同じ試薬および試験分子を第二の容器に導入することからなる。有利には、第二の容器は第一の容器と同様に準備されるが、第二の容器には試験分子が存在することのみが異なっている。この実施形態は、第一の容器中および第二の容器中で放出されたRETシグナルの測定を同時に行うことができるので有利である。この実施形態はまた、1つ以上の第二の容器中で放出されたRETシグナルを同時に測定することができる。したがって、この実施形態は、いくつかの異なる分子を並行して試験することができるので特に有利である。
・他の態様では、工程c)は、試験分子を第一の容器に導入することからなる。この実施形態は、本発明による方法を実施するために容器を1つだけしか用いないという利点がある。
本発明の3つの態様によれば、工程d)は、工程c)で得られた第二の容器中または第一の容器中で放出されたRETシグナルを測定することからなる。測定されたシグナルは、試験分子(第二の態様では、±作動薬)の存在下、容器中で得られたシグナルに相当する。工程b)のように、この測定は、当業者に広く知られている従来の方法によって行うことができ、特に問題はない。通常、TR−FRETまたは生物発光読取りモードを備えたPHERAstar FSマイクロプレートリーダー(BMG Labtech)など、RETシグナルを検出および測定する装置が用いられる。
本発明の3つの態様によれば、工程e)は、工程b)およびd)で得られたシグナルを比較することからなる。
・GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
・GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示し、
・GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
・GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示し、
・GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
・GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示し、
・GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
・GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示す。
・GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示す。
リガンドは、直接的または間接的に標識することができる。
特定の実施形態では、第一のリガンドおよび第二のリガンドはそれぞれ、FRETパートナー対のメンバー、すなわち蛍光供与体化合物または蛍光エネルギー受容化合物で標識されている。
寿命の長いエネルギー供与蛍光化合物(>0.1ミリ秒、好ましくは0.5〜6ミリ秒の範囲)、特に希土類キレートまたはクリプテートは、測定培地から放出されたバックグラウンドノイズの大部分を処理する必要がなく、時間分解FRETを行うことができるため、有利である。このため、これらは本発明による方法の実施に一般に好ましい。これら化合物はランタニド錯体であることが有利である。これら錯体(例えば、キレートまたはクリプテート)はエネルギー供与FRET対のメンバーとして特に好適である。
・1つ以上のピリジン単位を含むランタニドクリプテート。そのような希土類クリプテートは、例えば、欧州特許第0180492号、欧州特許第0321353号、欧州特許第0601113号、および国際公開第01/96877号に記載されている。テルビウム(Tb3+)およびユウロピウム(Eu3+)のクリプテートは本発明の目的に特に好適である。ランタニドクリプテートは、Cisbio Bioassaysにより市販されている。この例としては、下記式のユウロピウムクリプテート(反応性基(ここでは例えばNH2基)を介して標識対象の化合物に結合させることができる)が挙げられるが、これらに限定されない。
蛍光受容体化合物は、以下の群から選択されてもよい:アロフィコシアニン、特に商品名XL665で知られているもの;発光有機分子、例えば、ローダミン、シアニン(Cy5など)、スクアライン、クマリン、プロフラビン、アクリジン、フルオレセイン、ボロンジピロメテン誘導体(「Bodipy」として市販)、「Atto」として知られているフルオロフォア、「DY」として知られているフルオロフォア、「Alexa」として知られている化合物、ニトロベンゾオキサジアゾール。蛍光受容体化合物は、アロフィコシアニン、ローダミン、シアニン、スクアライン、クマリン、プロフラビン、アクリジン、フルオレセイン、ボロンジピロメテン誘導体、ニトロベンゾオキサジアゾールから選択されることが有利である。
特定の実施形態では、第一のリガンドおよび第二のリガンドはそれぞれ、BRETパートナー対のメンバー、すなわち発光供与体化合物または蛍光エネルギー受容化合物で標識されている。
特定の実施形態では、発光供与体化合物は、ルシフェラーゼ(luc)、ウミシイタケルシフェラーゼ(Rluc)、ウミシイタケルシフェラーゼ変異体(Rluc8)、およびホタルルシフェラーゼから選択されるBRETパートナーである。
特定の実施形態では、蛍光受容体化合物は、アロフィコシアニン、ローダミン、シアニン、スクアライン、クマリン、プロフラビン、アクリジン、フルオレセイン、ボロンジピロメテン誘導体、ニトロベンゾオキサジアゾール、量子ドット、GFP、GFP変異体(GFP10、GFP2、eGFP)、YFP、YFP変異体(eYFP、YFP topaz、YFP citrine、YFP venus、YPet)、mOrange、DsRedから選択されるBRETパートナーである。
本発明はまた、本発明による方法を実施するためのキットに関し、上記キットは、
・RETパートナー対の第一のメンバーで標識されたGタンパク質αサブユニット(Gαタンパク質)の第一のリガンド、およびRETパートナー対の第二のメンバーで標識されたGαタンパク質の第二のリガンドであって、それぞれ個別にまたは組み合わせて空のGαタンパク質または完全なGαタンパク質に特異的に結合することができる第一および第二のリガンド、ならびに
・一連の指示
を含む。
組換えTST−Gαi1タンパク質(TEVリンカーを介してN末端がTwinStreptag(TST)タグ(IBA)で標識されたUniProt配列P63096−1のGαi1タンパク質)をSf9昆虫細胞(上記タンパク質をコードするバキュロウイルスに感染)内で産生してから、TwinStreptag(TST)タグを介した親和性カラム(Strep−Tactin Superflow高容量樹脂(IBA、カタログ:2−1208−002))で精製した。
●研究した受容体およびGαiタンパク質を発現する細胞膜は、Perkin Elmerから購入した。下記表に、用いた各種試料の細胞株および品番を示す。
●DSV36S、DSV3S、DSV39S、DSV26S抗体は、Cisbio Bioassaysにより生成されたものであり、注文に応じてCisbio Bioassaysから入手可能である(それぞれ製品番号DSV36S、DSV3S、DSV39S、DSV26S)。これらの抗体を適合したTR−FRET検出用蛍光プローブ(red−d2受容体またはLumi4Tb供与体)で標識した。ビオチン化ペプチドKB1753は、Cisbio Bioassaysにより生成された。
・DSV36S抗体は、空のGαタンパク質およびGDPの形態に比べて、Gαタンパク質GTPまたは非加水分解性もしくは低加水分解性GTPの形態に特異的に結合する。
・DSV3S抗体は、GDPおよびGTPまたは非加水分解性もしくは低加水分解性GTPの形態に比べて、空のGαタンパク質の形態に特異的に結合する。
・DSV26S抗体は、GDPおよびGTPまたは非加水分解性もしくは低加水分解性GTPの形態に比べて、空のGαタンパク質の形態に特異的に結合する。
・DSV39S抗体は、Gαタンパク質の3つの形態(空のGαタンパク質、GDPに結合した完全なGαタンパク質、およびGTPまたは非加水分解性もしくは低加水分解性GTPに結合した完全なGαタンパク質)に非特異的に結合する。
・ペプチドKB1753は、空のGαタンパク質およびGDPの形態に比べて、Gαタンパク質GTPまたは非加水分解性もしくは低加水分解性GTPの形態に特異的に結合する。
・リガンド対のペプチドKB1753/抗Gαi抗体SC13533は、空のGαタンパク質およびGDPの形態に比べて、Gαタンパク質GTPまたは非加水分解性もしくは低加水分解性GTPの形態に特異的に結合する。
・リガンド対の抗Gαi抗体DSV36S/抗Gαi抗体SC13533は、空のGαタンパク質およびGDPの形態に比べて、Gαタンパク質GTPまたは非加水分解性もしくは低加水分解性GTPの形態に特異的に結合する。
・リガンド対の抗Gαi抗体DSV39S/抗Gαi抗体SC13533は、空のGαタンパク質およびGDPの形態に比べて、Gαタンパク質GTPまたは非加水分解性もしくは低加水分解性GTPの形態に特異的に結合する。
・リガンド対の抗Gαi抗体DSV3S/抗Gαi抗体DSV36Sは、空のGαタンパク質およびGDPの形態に比べて、Gαタンパク質GTPまたは非加水分解性もしくは低加水分解性GTPの形態に特異的に結合する。
・リガンド対の抗Gαi抗体DSV39S/抗Gαi抗体DSV26Sは、Gαタンパク質GDPおよびGTPまたは非加水分解性もしくは低加水分解性GTPの形態に比べて、空のGαタンパク質の形態に特異的に結合する。
●赤色受容体XL665で標識したストレプトアビジンは、Cisbio Bioassaysにより生成された(カタログ番号610SAXLB)。
●GTP、GDP、およびGTPγSヌクレオチドは、Sigma Aldrichから購入した(それぞれカタログ番号G8877、G7127、およびG8634)。
●デルタオピオイドGPCR作動薬SNC162およびデルタオピオイドGPCR拮抗薬ナルトリンドールは、Tocrisから購入した(それぞれカタログ番号1529および0740)。
●384ウェル低容量白色プレート(背面白色)は、Greiner Bio Oneから購入した(カタログ番号784075)。
●試薬の調製:
すべての試薬を緩衝液(50mMのTrisHCl、pH7.4、10mMのMgCl2、10mMのNaCl、0.1%のBSA)で希釈した。膜を4倍調製して1μg/ウェルで分配した(他の仕様は除く)。GDP、GTP、またはGTPγSヌクレオチドおよび試験化合物(作動薬または拮抗薬)を予め混合し、4倍調製して、グラフに記載したウェル中の最終濃度を得た。検出に用いたすべての抗Gαi試薬を4倍調製して、以下のウェル中の最終濃度にした:sdAbs−d2(50nM);抗体SC13533−d2(0.1nM);抗体SC13533−Lumi4Tb(0.25nM);抗体DSV36S−d2(0.1nM);抗体DSV36S−Lumi4Tb(0.25nM);抗体DSV3S−d2(10nM);抗体DSV39S−d2(10nM);抗体DSV26S−Lumi4Tb(0.25nM);ペプチドKB1753−ビオチン(50nM)と組み合わせたストレプトアビジン−XL665(SA−XL)(25nM)(プレートに分配する前に室温で30分間プレインキュベート)。
●384ウェルプレートでの試薬の分配:
・GPCRおよびGタンパク質を発現する膜:5μL
・ヌクレオチド(GDP、GTP、またはGTPγS)±試験化合物(作動薬および/または拮抗薬):5μL
・抗Gαiリガンド−受容体(d2またはXL665):5μL
・抗Gαiリガンド−供与体(Lumi4Tb):5μL
●HTRFシグナルの読取り:
プレートを21℃で3時間または20時間インキュベートし、次いでHTRFシグナルを以下の構成を有するPHERAstarリーダー(BMG Labtech)で測定した。
・モジュール:HTRF(励起:337nm、発光:665nmおよび620nm)
・励起:レーザー、40フラッシュ
・読取りウィンドウ:遅延:60μs−積算:400μs
●シグナル処理:
665nmおよび620nmでの生シグナルから、HTRF比を下記式により算出した。
HTRF比=(665nmでのシグナル/620nmでのシグナル)×10,000
図3Aは、空のGαタンパク質形態と、GDPに結合した完全なGαタンパク質形態との識別(フォーマット1A)を示す。GPCR作動薬によってGPCRおよびGαタンパク質が活性化された後、RETパートナーで標識された2種のリガンドを用いて、空のGαタンパク質形態の割合の増加が特異的に検出される。GPCRの活性化によりRETシグナルが増加する。
まず、デルタオピオイドGPCRおよびGαiタンパク質を発現するHEK293細胞膜を用いて、検出リガンド対が、空のGαタンパク質に対してGTPまたはGTPγSに結合した完全なGαタンパク質を特異的に検出する能力を確認した。膜を過剰のGTPγS(10μM)とともにインキュベートして、Gタンパク質にヌクレオチドを積載させるか(GTPγSに結合した完全なGαタンパク質形態)、あるいは緩衝液のみでインキュベートした(空のGαタンパク質形態)。これらの2つの条件で観察されたTR−FRETシグナル(HTRF比)の差から、用いた4つの検出リガンド対(ペプチドKB1753−ビオチン/SA−XL/抗Gαi抗体SC13533−Lumi4Tb(実施例1/図4A);抗Gαi抗体DSV36S−d2/抗Gαi抗体SC13533−Lumi4Tb(実施例2/図5A);抗Gαi抗体DSV39S−d2/抗Gαi抗体SC13533−Lumi4Tb(実施例3/図6A);抗Gαi抗体DSV3S−d2/抗Gαi抗体DSV36S−Lumi4Tb(実施例4/図7A))によって、GTPγSに結合したGαタンパク質形態と空のGαタンパク質形態とを識別することができることが示された。
まず、デルタオピオイドGPCRおよびGαiタンパク質を発現するHEK293細胞膜を用いて、検出リガンド対が、GDPに結合した完全なGαタンパク質形態に対して空のGαタンパク質形態を特異的に検出する能力を確認した。膜を過剰のGDP(10μM)とともにインキュベートして、Gタンパク質にヌクレオチドを積載させるか(GDPに結合した完全なGαタンパク質形態)、あるいは緩衝液のみでインキュベートした(空のGαタンパク質形態)。これらの2つの条件で観察されたTR−FRETシグナル(HTRF比)の差から、用いた検出リガンド対(抗Gαi抗体DSV39S−d2+抗Gαi抗体DSV26S−Lumi4Tb(図8A))によって、空のGαタンパク質形態とGDPに結合した完全なGαタンパク質形態とを識別することができることが示された。
まず、デルタオピオイドGPCRおよびGαiタンパク質を発現するHEK293細胞膜を用いて、検出リガンド対が、GTPまたはGTPγSに結合した完全なGαタンパク質形態に対して空のGαタンパク質形態を特異的に検出する能力を確認した。膜を過剰のGTPγS(10μM)とともにインキュベートして、Gタンパク質にヌクレオチドを積載させるか(GTPγSに結合した完全なGαタンパク質形態)、あるいは緩衝液のみでインキュベートした(空のGαタンパク質形態)。これらの2つの条件で観察されたTR−FRETシグナル(HTRF比)の差から、用いた検出リガンド対(抗Gαi抗体DSV39S−d2+抗Gαi抗体DSV26S−Lumi4Tb(図9A))によって、空のGαタンパク質形態とGTPγSに結合した完全なGαタンパク質形態とを識別することができることが示された。
4つの異なるGPCR(デルタオピオイド、ガラニンR1、NOP、5HT1A)および2つの異なる細胞株(HEK293およびCHO−K1)に対して活性化の検出の原理を検証した。
デルタオピオイドGPCRおよびGαiタンパク質を発現するHEK293細胞の膜(1μg/ウェル)を、GTPγSまたはGTP(50、1000、または20000nM)のみで、あるいはそれを所定の飽和濃度(1μM)のGPCR作動薬(SNC162)と組み合わせたものとともにインキュベートした。ヌクレオチドGTPγSおよびGTPのいずれでも、作動薬による刺激によって生成されたTR−FRETシグナル(HTRF比)の増加は、空のGタンパク質形態の割合が増加したことを意味する。したがって、作動薬により活性化されたGPCR受容体によって、GTPまたはGTPgSがGタンパク質から放出されて、Gタンパク質が空の形態となり、TR−FRETシグナルが増加する。いずれの条件(GTPγSおよびGTP)も作動薬によるGPCRの活性化の検出に有効である場合、GTPγSで観察されるシグナル変化の振幅は、GTPの場合よりも著しく良好である。このシグナル変化の振幅の差は、GTPに結合した完全なGαタンパク質形態の不安定さ(すなわち、GTPのGDPへの加水分解)により説明される。
まず、デルタオピオイドGPCRおよびGαiタンパク質を発現するHEK293細胞膜を用いて、検出リガンド対が、空のGαタンパク質に対してGTPまたはGTPγSに結合した完全なGαタンパク質を特異的に検出する能力を確認した。膜を過剰のGTPγS(10μM)とともにインキュベートして、Gαタンパク質にヌクレオチドを積載させるか(GTPγSに結合した完全なGαタンパク質形態)、あるいは緩衝液のみでインキュベートした(空のGαタンパク質形態)。これらの2つの条件で観察されたTR−FRETシグナル(HTRF比)の差から、用いた検出リガンド対(抗Gαi抗体DSV36S−Lumi4Tb/抗Gαi抗体SC13533−d2)によって、GTPγSに結合したGαタンパク質形態と空のGαタンパク質形態とを識別することができることが示された(図12A)。
以下の8つのリガンド対を用いた。
・抗Gαi sdAb F11(配列番号2)/抗Gαi抗体SC13533;
・抗Gαi sdAb F4(配列番号3)/抗Gαi抗体SC13533;
・抗Gαi sdAb G6(配列番号4)/抗Gαi抗体SC13533;
・抗Gαi sdAb B11(配列番号5)/抗Gαi抗体SC13533;
・抗Gαi sdAb F9(配列番号6)/抗Gαi抗体SC13533;
・抗Gαi sdAb G7(配列番号7)/抗Gαi抗体SC13533;
・抗Gαi sdAb A10(配列番号8)/抗Gαi抗体DSV36S;
・抗Gαi sdAb E2(配列番号9)/抗Gαi抗体SC13533。
Claims (15)
- 分子がGタンパク質共役受容体(GPCR)の活性化を変化させる能力を決定する方法であって、
a)1種以上のGPCRと1種以上のGタンパク質とを担持する膜標本、
GDP源またはGTP源、
RETパートナー対の第一のメンバーで標識されたGタンパク質αサブユニット(Gαタンパク質)の第一のリガンド、および上記RETパートナー対の第二のメンバーで標識されたGαタンパク質の第二のリガンドであって、それぞれ個別にまたは組み合わせて空のGαタンパク質または完全なGαタンパク質に特異的に結合することができる第一および第二のリガンド
を第一の容器に導入する工程と;
b)第一の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
c)(i)工程a)と同じ試薬および試験分子を第二の容器に、あるいは(ii)試験分子を第一の容器に導入する工程と;
d)工程c)で得られた第二の容器中または第一の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
e)工程b)およびd)で得られたシグナルを比較する工程であって、
GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示し、
GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示し、
GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示し、
GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示す、工程と
を含む方法。 - 分子がGタンパク質共役受容体(GPCR)の活性化を変化させる能力を決定する方法であって、
a)1種以上のGPCRと1種以上のGタンパク質とを担持する膜標本、
GDP源またはGTP源、
RETパートナー対の第一のメンバーで標識されたGタンパク質αサブユニット(Gαタンパク質)の第一のリガンド、および上記RETパートナー対の第二のメンバーで標識されたGαタンパク質の第二のリガンドであって、それぞれ個別にまたは組み合わせて空のGαタンパク質または完全なGαタンパク質に特異的に結合することができる第一および第二のリガンド、
GPCR作動薬
を第一の容器に導入する工程と;
b)第一の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
c)工程a)と同じ試薬および試験分子を第二の容器に導入する工程と;
d)工程c)で得られた第二の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
e)工程b)およびd)で得られたシグナルを比較する工程であって、
GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示し、
GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示し、
GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示し、
GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示す、工程と
を含む方法。 - 上記Gαタンパク質は、Gαi1、Gαi2、Gαi3、Gαo1、Gαo2、Gαq、Gα12、Gα13、Gαs、Gαz、Gαt1、Gαt2、Gα11、Gα14、Gα15、Gα16、およびGαgusタンパク質から、好ましくはGαi1、Gαi2、およびGαi3から選択される、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
- 第一のリガンドおよび第二のリガンドは、抗体、抗体断片、ペプチド、またはアプタマーから選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 第一のリガンドはペプチドであり、第二のリガンドは抗体または抗体断片である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
- 第一のリガンドおよび第二のリガンドは抗体または抗体断片である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
- 第一のリガンドは配列Ser−Ser−Arg−Gly−Tyr−Tyr−His−Gly−Ile−Trp−Val−Gly−Glu−Glu−Gly−Arg−Leu−Ser−Arg(配列番号1)のペプチド(ペプチドKB1753)であり、第二のリガンドは抗Gαi抗体である、請求項5に記載の方法。
- 第一のリガンドは、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、または配列番号9から選択される配列のsdAbであり、第二のリガンドは抗Gαi抗体である、請求項6に記載の方法。
- 上記GTP源は非加水分解性もしくは低加水分解性GTPであり、好ましくはGTPガンマS(GTPγS)、GppNHp、およびGppCpから選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
- 第一のリガンドおよび第二のリガンドはそれぞれ、RETパートナー対のメンバーで標識され、上記対のメンバーの一方は発光供与体化合物または蛍光供与体化合物であり、上記対の他方のメンバーは蛍光受容体化合物または非蛍光受容体化合物(クエンチャー)である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
- 上記蛍光供与体化合物は、ユウロピウムクリプテート、ユウロピウムキレート、テルビウムキレート、テルビウムクリプテート、ルテニウムキレート、量子ドット、アロフィコシアニン、ローダミン、シアニン、スクアライン、クマリン、プロフラビン、アクリジン、フルオレセイン、ボロンジピロメテン誘導体、およびニトロベンゾオキサジアゾールから選択されるFRETパートナーである、請求項10に記載の方法。
- 上記蛍光受容体化合物は、アロフィコシアニン、ローダミン、シアニン、スクアライン、クマリン、プロフラビン、アクリジン、フルオレセイン、ボロンジピロメテン誘導体、ニトロベンゾオキサジアゾール、量子ドット、GFP、GFP10、GFP2、およびeGFPから選択されるGFP変異体、YFP、eYFP、YFP topaz、YFP citrine、YFP venus、およびYPetから選択されるYFP変異体、mOrange、DsRedから選択されるFRETパートナーである、請求項10または11のいずれか一項に記載の方法。
- 上記発光供与体化合物は、ルシフェラーゼ(luc)、ウミシイタケルシフェラーゼ(Rluc)、ウミシイタケルシフェラーゼ変異体(Rluc8)、およびホタルルシフェラーゼから選択されるBRETパートナーである、請求項10に記載の方法。
- 上記蛍光受容体化合物は、アロフィコシアニン、ローダミン、シアニン、スクアライン、クマリン、プロフラビン、アクリジン、フルオレセイン、ボロンジピロメテン誘導体、ニトロベンゾオキサジアゾール、量子ドット、GFP、GFP10、GFP2、およびeGFPから選択されるGFP変異体、YFP、eYFP、YFP topaz、YFP citrine、YFP venus、およびYPetから選択されるYFP変異体、mOrange、DsRedから選択されるBRETパートナーである、請求項10または13のいずれか一項に記載の方法。
- 請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法を実施するためのキットであって、
RETパートナー対の第一のメンバーで標識されたGタンパク質αサブユニット(Gαタンパク質)の第一のリガンド、および上記RETパートナー対の第二のメンバーで標識されたGαタンパク質の第二のリガンドであって、それぞれ個別にまたは組み合わせて空のGαタンパク質または完全なGαタンパク質に特異的に結合することができる第一および第二のリガンド;
一連の指示;
任意で上記試薬用の1種以上の希釈緩衝液;
任意でGDP源またはGTP源;
任意で1種以上のGPCRおよび/または1種以上のタンパク質を担持する膜標本;ならびに
任意でGαタンパク質
を含むキット。
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