JP2020525026A - コハク酸産生が増加した遺伝子組換え酵母 - Google Patents

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Abstract

収量及び力価に基づいてコハク酸産生が増加した改良された酵母細胞を提供する。ペントースリン酸経路に関与する1つ又は複数の酵素の活性を高める工程、ホスホグルコースイソメラーゼを通じてのフラックスを低減させる工程、細胞質アセチル-CoAへのフラックスを増加させる工程、リンゴ酸酵素を組み込む工程、及び/又はギ酸デヒドロゲナーゼを組み込む工程によって、コハク酸の産生の増加という結果につながる。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2017年6月30日出願の米国仮特許出願第62/527,351号の優先権を主張する。
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
該当なし。
共同研究契約
該当なし。
本発明は、バイオベースの化学製品生産の分野に関する。より詳細には、本発明は、遺伝子組換え酵母を使用して再生可能炭素源からコハク酸を生産する工程に関する。
コハク酸は、トリカルボン酸(TCA)サイクルの中間体であり、多数の細菌が、主たる発酵産物としてスクシネートを産生する自然の能力を有していると知られている。コハク酸又はコハク酸の塩(両方、「スクシネート」とも呼ばれる)の商業的需要は拡大している。「Top Value Added Chemicals from Biomass」と題する2004年米国エネルギー省報告書では、再生可能な供給原料から生産することができる12種のビルディングブロック化学物質のうちの1種としてコハク酸が認定されている。コハク酸は、1,4-ブタンジオール、テトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン及びN-メチルピロリドン等のいくつかの特殊化学品の製造における出発原料として使用されている。大量化学品としてコハク酸は、動物飼料、可塑剤、凝固剤(congealer)、ポリマー、繊維、及びプラスチック、最も顕著にはポリブチルスクシネート(「ポリブチレンスクシネート」又は「PBS」とも呼ばれる)を含めて、種々の製品の製造において、使用される可能性を持っている。スクシネート製のポリマーの多くは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、及びポリエチレンテレフタレート(PET)等の石油に由来する他のポリマーより遙かに迅速な速度で生分解する。したがって、スクシネート製のプラスチックは、埋立地又は他の堆肥化環境においてより迅速に崩壊するので、高度に望ましい(Kunioka、Ninomiya、及びFunabashi、2009)。こういった特性は、そのモノマーサブユニットが、生体では通常豊富には見いだされることがない石油化学由来の化合物よりもむしろ生物由来化合物又はその化学的等価物である、他の多くのポリマー及びプラスチックにまで及ぶ。例えば、フマル酸(フマレート)、リンゴ酸(マレート)、アジピン酸(アジペート)、L-乳酸(L-ラクテート)、D-乳酸(D-ラクテート)、及び/又は他の天然有機酸に由来するポリマーは全て、堆肥化環境において、多くの石油化学由来のポリマーよりも容易に分解される。したがって、人類の利益ために、現在の石油化学製品製のポリマー及びプラスチックを生化学物質製のポリマー及びプラスチックで置き換えることが望ましい。
スクシネート、フマレート、及びアジペート等の多くの生化学物質が石油から製造することができ、PBS及びナイロンを作製するのに現在使用されている多くの方法では石油由来のモノマーが使用されている。しかし、世界の石油供給は有限であるので、糖類、糖ポリマー、グリセロール、脂肪酸、二酸化炭素、リグニン、又はバイオマスの他のあらゆる形態若しくはバイオマス由来の廃棄物等の再生可能な炭素源から発酵により生化学的モノマーを生産するための材料及び方法を開発することも望ましいであろう。したがって、再生可能生物資源(biorenewable resources)から生分解性プラスチックを製造するための方法を開発することが望まれる。
上記生化学物質の多くを生産するバイオプロセスでは、低pHで増殖することのできない生物を使用する。したがって、有機酸が産生されている間、培養培地を、塩基、通常、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、又はカルシウムの水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩又はそれらの混合物の添加によりpH約5.6から約7.5に維持する必要がある。結果として、培地ブロス中の有機酸は塩として存在し、有機酸分子の大部が荷電している。荷電状態は、利点と欠点を示す。利点とは、荷電した塩は細胞膜を通過して細胞内に容易には逆拡散しないことである。欠点とは、有機酸の重合化学又はその他のさらなる化学的使用には、通常、有機酸のプロトン化形態(「遊離酸」とも呼ばれる)が必要であり、その結果、発酵により生産された塩には、遊離酸形態をもたらすのに潜在的にコストのかかる下流処理が必要である、ということである。したがって、大部の分子が遊離酸状態であるように、低pH(有機酸の最も低いpKaのpHに近似のpH、より好ましくは、それ未満のpH)で有機酸を生産するのが有利であろう。他の考慮事項はひとまず置いて、発酵中にはるかに少ない対イオン(ナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウム等の)を供給することが必要であり、次いで、発酵後にプロトン化コハク酸を得るためにはるかに少ない対イオンを分離することが必要なので、低pHの発酵ブロスは、遊離酸の純粋な調製を付与するため処理するのにより安価となるはずである。
産生宿主として様々な酵母を利用する低pHでの有機酸の生産向けにいくつかの方法が存在する。WO2012/103261では、スクシネート又はマレートを産生するように操作されたイサチェンキア・オリエンタリス(Issatchenkia orientalis)の株が開示されている。これらの株は、多数の様々な酵母種のコレクションのうち、低pHで高濃度のスクシネートに最も耐性であると選択された野生型の親に由来した。特に、選択されたI.オリエンタリス株は、クルイベロマイセス・マルシアヌス(Kluyveromyces marxianus)株と比較して、サクシネートに対してより耐性であった。しかし、先に開示の通り(WO 2014/043591)、富栄養培地で増殖させた場合、I.オリエンタリス株よりも低pHにてサクシネートに対して耐性であるK.マルシアヌスの新規の野生型株が単離された。したがって、低pHでの有機酸に対する耐性に関して種内の様々な株間で明らかに何らかの変動があり、スクリーニングを行うまさにその条件が、かかるスクリーニングの結果に影響を与えるかもしれない。加えて、サッカロミセス・セレビシエ株がスクシネート産生向けに開発されたが、この場合も、開示されたK.マルシアヌス株(WO 2014/043591)は低pHでスクシネートに対してより耐性である。更に、K.マルシアヌスは、キシロースを元々発酵させることができ、したがって、スクシネート産生のための宿主酵母として、S.セレビシエに勝る第2の利点を有する。
酵母による低pH発酵でのコハク酸等のジカルボン酸を生産する理論的利点にも関わらず、酵母の膜結合性オルガネラの形態での細胞内局在化に起因して、酵母でのスクシネート産生の遺伝子工学は、大腸菌(E. coli)又は他の細菌ほどとうてい一筋縄ではいかない。第一に、サッカロミセス属では、及び全てではないが、恐らくほとんどの他の酵母では、好気的条件下で、TCA回路はミトコンドリア又はプロミトコンドリアの内部で機能している(WO 2008/128522、WO 2010/043197)。特定のスクシネート輸送体の非存在下では、ミトコンドリア内膜はスクシネートに対して不透過性であるが(Leeら、2011)、フマレート又はホスフェートと交換にミトコンドリアへとスクシネートを取り込むタンパク質輸送体が知られている(Palmieriら、2000)。しかし、スクシネートをミトコンドリアから細胞質に分泌するメカニズムは知られておらず、その結果、TCAサイクルから産生されたスクシネートは、分岐モードであっても、ミトコンドリアの外側、したがって細胞の外側に容易には輸送されないことになる。したがって、ミトコンドリアの外側に、細胞質中に存在し、そこで十分に活性な、ピルビン酸カルボキシラーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、及びフマラーゼ等の、還元経路におけるマレート及びスクシネートへのキー酵素を配置することにより、細胞質でのマレート及びスクシネート等のジカルボン酸の生合成を操作することが望ましいであろうことは、先行技術において認識されていた(US 2008/0090273、US 2012/0040422、WO 2010/003728、WO 2011/023700、WO 2009/101180、及びWO 2012/038390、WO 2008/128522、WO 2010/043197)。しかし、先行技術は、酵母においてグルコース又は他の炭素源からスクシネート産生を最大限にしながら、ミトコンドリアからコハク酸を運び出す方法又は嫌気性又は微好気性条件下で酸化還元バランスを達成する方法の問題を、十分に理解していないか又はこれに対処していない。更に、ミトコンドリアの内側と外側の両方で、関連する全ての酵素の産生と活性の調節は相当に複雑であり、適切なレベルを操作する方法は明らかではない。最後に、ミトコンドリア膜はNAD及びNADHに対して透過性ではなく、嫌気性又は微好気性条件下でミトコンドリアマトリクスと細胞質との間の効率的な酸化還元バランスを達成する方法は明らかではない。本明細書で開示される本発明は、これらの課題を理解すると共に、これらの問題の解決策を提供する。
WO 2012/103261 WO 2014/043591 WO 2008/128522 WO 2010/043197 US 2008/0090273 US 2012/0040422 WO 2010/003728 WO 2011/023700 WO 2009/101180 WO 2012/038390
「Top Value Added Chemicals from Biomass」、U.S. Department of Energy report、2004年 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/、the National Center for Biotechnology Information
本発明は、細胞質におけるリンゴ酸、フマル酸及びコハク酸等の有機酸の生産に有用な改変代謝経路を有する酵母細胞を提供する。より詳細には、本発明は、細胞質で機能する酸化還元バランスのとれた代謝経路を有すると共にコハク酸の生産に有用である酵母細胞を提供する。
一実施形態では、本発明の組換え酵母細胞は、細胞質で機能すると共に、ピルビン酸キナーゼ、リンゴ酸酵素、フマラーゼ及びフマル酸レダクターゼの各酵素を含む、ホスホエノールピルベートからコハク酸への還元コハク酸経路を有する。
別の実施形態では、本発明の組換え酵母細胞は、細胞質内で機能すると共に、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、フマラーゼ及びフマル酸レダクターゼの各酵素を含む、ホスホエノールピルベートからコハク酸への還元コハク酸経路を有する。
本発明はまた、細胞質で機能するコハク酸産生のための還元経路が細胞質内のペントースリン酸経路の機能を強化することにより酸化還元バランスのとれている、酵母細胞を提供する。ペントースリン酸経路の機能を強化することから生じる還元当量のレベルが上昇すると、細胞質でのコハク酸産生のための還元経路の機能に必要な還元当量を満たす助けとなる。本実施形態の一態様では、ペントースリン酸経路の機能の強化は、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ酵素の活性を高めることにより得られる。本実施形態の別の態様では、ペントースリン酸経路の機能の強化は、ホスホグルコースイソメラーゼの活性を遮断することにより得られる。本発明の更に別の実施形態では、ペントースリン酸経路の機能の強化は、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ酵素の活性を強化することにより、且つホスホグルコースイソメラーゼの活性を遮断することにより得られる。
更に別の実施形態では、本発明は、細胞質で機能するコハク酸経路のための還元経路について酸化還元バランスをとるのに必要なさらなる還元当量を提供することが可能な、細胞質で機能する修正グリオキシル酸シャントを有する酵母細胞を提供する。本実施形態の一態様では、ピルビン酸ギ酸リアーゼを細胞質で発現させて、細胞質でフォーメート及びアセチル-CoAを生産する。ピルベートから生産されたフォーメートは、ギ酸デヒドロゲナーゼ酵素による作用を受けてNADH及びCO2を生じる。本実施形態の別の態様では、クエン酸シンターゼ、イソクエン酸リアーゼ及びリンゴ酸シンターゼ等のミトコンドリア酵素が細胞質で発現され、その結果、細胞質で機能するコハク酸産生のためのさらなる還元経路の導入に加えて、修正グリオキシル酸シャントの機能からのコハク酸の直接の産生が存在する。
別段の定義のない限り、本明細書で使用される用語は全て、本発明が属する当技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書において言及される刊行物、特許出願、特許、及びその他の参考文献は全て、その全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合には、定義及び専門用語を含めて、本明細書が支配する。本明細書に含まれる材料、方法、実施例、及び図面は例示にすぎず、限定することを意図していない。
酵母細胞の炭素の流れの経路を示すダイヤグラムである。この図の外側のボックスは酵母細胞の外膜/細胞壁を表す。酵母細胞内のボックスはミトコンドリアを表す。ミトコンドリアに入るピルベートは、オキサロ酢酸(OAA)と結合し、実線矢印で示すようにクエン酸サイクルを開始する。クエン酸サイクルからの炭素はまた、一点鎖線による矢印で示すように、グリオキシル酸サイクルに入る。また、ピルベート及びホスホエノールピルベート(PEP)のオキサロ酢酸への変換を招き、破線による矢印で示すように還元経路を通じてのコハク酸の産生に最終的に至る、サイトゾルでのカルボキシル化反応も存在する。ピルベートからエタノールへの発酵経路は点線による矢印で示されている。 酵母細胞でのコハク酸産生のための還元経路を示すダイヤグラムである。ホスホエノールピルベート(PEP)は、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(Pck)酵素によってカルボキシル化されて、オキサロアセテート(OAA)の分子を生じる。オキサロアセテートの分子がスクシネートの分子に変換される場合、2つの還元当量が消費される。PEPはまた、ピルビン酸キナーゼによる作用を受けてピルベートを生じることができ、ピルベートはピルビン酸カルボキシラーゼによってカルボキシル化されてオキサロアセテートを生じることができる。 ホスホエノールピルベート(PEP)からの細胞質におけるマレートの産生経路を示すダイヤグラムである。ピルビン酸キナーゼ(Pyk)はPEPに作用してピルベートを生じ、ピルベートは、二酸化炭素の存在下でNADH依存性リンゴ酸酵素又はNADPH依存性リンゴ酸酵素のいずれかによる作用を受けてマレートを生じ、マレートは還元経路に入ることができる。 細胞質におけるPEPからのマレートの産生経路を示すダイヤグラムである。ホスホエノールピルベート(PEP)は、ピルビン酸キナーゼ(Pck)又はホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(Ppc)によってカルボキシル化されてオキサロ酢酸を生じ、オキサロ酢酸はNADHを使用するリンゴ酸デヒドロゲナーゼによって還元されてマレートを生じる。PEPはまた、Pykによる作用を受けてピルベートを生じて、ピルベートはカルボキシル化されてオキサロアセテートを得ることができ、次いで、オキサロアセテートはマレートに還元することができる。加えて、ピルベートはNADH依存性リンゴ酸酵素又はNADPH依存性リンゴ酸酵素のいずれかによってカルボキシル化されて、マレートを生じることができる。産生経路に関わりなく、マレートは酵母細胞の細胞質でのコハク酸産生のための還元経路の出発点として作用する。 ペントースリン酸経路を通じての炭素の流れを示すダイヤグラムである。グルコース-6-ホスフェート(グルコース)は、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(ZWF)に付されて、リブロース-5-ホスフェート(Ru5P)を産生する。酵母細胞内の解糖反応の通常の過程では、グルコース-6-ホスフェートは、ホスホグルコースイソメラーゼ酵素(図示していない)によってグルコース-1-ホスフェートに変換される。ペントースリン酸経路への炭素の流れを強化するために、ZWFの活性を高め、一方、ホスホグルコースイソメラーゼ酵素活性の活性を低下させる又は阻害する。 2本の垂直線として本図に示されているミトコンドリア膜を横切るピルベート及びアセテートの流れを示すダイヤグラムである。細胞質での解糖からのピルベートは、単純な拡散を通してミトコンドリアに入る。ピルベートは脱炭酸されてアセチル-CoAを生じ、アセチル-CoAを使用してスクシニル-CoA及びアセテートを産生する。アセテートは単純な拡散を通してミトコンドリアの外へ拡散し、アセチルCoAシンターゼによる作用を受けてアセチル-CoAを生じ、次いで、アセチル-CoAはオキサロアセテートと結合してシトレートを生じる。シトレートはグリオキシル酸シャントに入って、グリオキシレート及びスクシネート(SAC)を生じる。2本の垂直線の左側への領域はミトコンドリアを表し、2本の垂直線の右側への領域は細胞質を表す。 細胞質におけるアセチルCoAの形成を示すダイヤグラムである。ピルビン酸ギ酸リアーゼ(PFL)は、ピルベートに作用してフォーメート及びアセチル-CoAを生じる。フォーメートは、ギ酸デヒドロゲナーゼによる作用を受けて、二酸化炭素及びNADHを生じる。アセチル-CoAはオキサロ酢酸と反応してクエン酸を生じ、クエン酸は異性化してイソシトレートを生じ、次いで、イソシトレートはグリオキシレート及びスクシネートに分かれる。グリオキシレート及びアセチル-CoAが一緒になってマレートを生じ、マレートは最終的にコハク酸に変換される。
本発明の理解を容易にするために、本明細書ではいくつかの定義及び専門用語を提供する。
大腸菌等の細菌由来の遺伝子又はコーディング領域は通常、イタリック体の3つの小文字で、時に、その後に続く1字の大文字で命名され、例えば、リンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子について「mdh」及びフマラーゼBをコードする遺伝子について「fumB」である。ある遺伝子によりコードされる酵素又はタンパク質は、同じ文字で命名することができるが、最初の文字が大文字であり、イタリック体ではなく、例えば、リンゴ酸デヒドロゲナーゼについて「Mdh」及びフマラーゼBについて「FumB」である。S.セレビシエ又はK.マルシアヌス等の酵母由来の遺伝子又はコーディング領域は通常、3つの大文字で命名され、時に、その後に整数が続き、全てイタリック体であり、例えば、ピルビン酸デカルボキシラーゼをコードする遺伝子について「PDC1」である。ある遺伝子によりコードされる酵素又はタンパク質は、同じ文字で命名することができるが、最初の文字が大文字であり、イタリック体ではなく、例えば、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼについて「Pck」である。酵素又はタンパク質はまた、より記述的な名称によって、例えば、上記の例について、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、フマラーゼB、及びPEPカルボキシキナーゼ、によって言及することもできる。特定の酵母種由来の遺伝子又は酵素に言及する場合、属及び種の最初の文字を略する1組の文字を、遺伝子又は酵素の特定のバージョンを指定するために、遺伝子又は酵素の前に置くことができる。例えば、「ScMDH1」は、S.セレビシエ由来のリンゴ酸デヒドロゲナーゼのアイソザイム1をコードする遺伝子を指定し、一方、「KmMDH1」は、K.マルシアヌス由来のリンゴ酸デヒドロゲナーゼのアイソザイム1を指定する。所定の種のいずれも多くの様々な株を有することができ、様々な株が同じ機能を果たす様々な遺伝子又は酵素を有するかもしれないので、任意の特定の記号のいずれも特定のDNA又はタンパク質配列に限定されない場合もあるという点で、これらの記号は必ずしも独自である必要はないことに留意されたい。加えて、特定の触媒活性を保有する酵素の一例をコードする遺伝子又はコーディング領域は、起源が歴史的に様々であるため、又は遺伝子が異なる種由来であるため、様々ないくつかの名称を有することができる。本明細書で簡潔にするために、
一微生物から別の微生物に遺伝子を移すことができるので、3つの大文字からなる名前は、細菌又は酵母のいずれか由来の遺伝子又は酵素を指すことができる。例えば、「PCK」とは、ある細菌の若しくはこれ由来の又はある酵母の若しくはこれ由来のいずれかの、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、或いはホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子を指すことができる。3つの大文字の記号が遺伝子を指すかタンパク質を指すかどうかは、特定の使用法に関する文脈から推測できる。
任意のカルボン酸又はジカルボン酸は、「コハク酸」等の遊離酸名を使用することによって、又はその名前が「スクシネート」であることになる場合の、塩、エステル、チオエステル、若しくはアミドとして、いずれかによって、言及することができる。生理的条件下、遊離酸及びその塩は、どちらもある程度存在し、したがって本発明の目的上、2種類の名前は、どちらも両方の形態を指すものとする。同様のことが、他の全ての有機酸に当てはまるものとする。
「発現カセット」又は「カセット」という用語は、少なくとも1つのプロモーター及び酵素若しくは他のタンパク質をコードする遺伝子又は領域を含有する染色体又はプラスミドの一部でありうるDNA配列を意味し、その結果、コーディング領域は当該プロモーターにより発現され、当該酵素又はタンパク質は、当該DNA配列を含有する宿主細胞により産生される。コーディング領域が、当該コーディング領域とは天然では関連しないプロモーターから発現されるように、「発現カセット」は少なくとも、部分的に合成であってもよく、遺伝子工学法により構築されていてもよい。任意選択で、「発現カセット」は、コーディング領域と天然では関連するターミネーターである場合もありそうではない場合もある、転写ターミネーターを含有することができる。「発現カセット」は、2つ以上のタンパク質に対するコーディング領域を有することができ、この場合、これは、オペロン、又は合成オペロンと呼ぶことができる。
“強力な構成的プロモーター"という用語は、RNAポリメラーゼにより転写されるDNA配列又は遺伝子の上流に(慣用の5'から3'方向で示される場合、遺伝子の5'側に)通常には存在すると共に、適当な任意のアッセイ手順により直接的又は間接的に容易に検出されるレベルでRNAポリメラーゼによる転写によって前記DNA配列又は遺伝子を発現させる、DNA配列を意味する。適当なアッセイ手順の例としては、(1)定量的逆転写酵素+ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、(2)コードされる酵素の酵素アッセイ法、(3)クマシーブルー染色タンパク質ゲル法、又は(4)前記転写の結果として間接的に産生される代謝産物の測定可能な産生、及び転写レベル、代謝産物、又はインデューサー化学物質を特に調節するタンパク質の有無に関わらず生じるそういった測定可能な転写、が挙げられる。「強力な構成的プロモーター」ではないプロモーターの例は、大腸菌のラクトースオペロンプロモーター、又はKmLAC4遺伝子の前のプロモーターであり、これは、両遺伝子が、ラクトース等のインデューサーの非存在下で負に調節されるからである。当技術分野でよく知られている方法を使用することにより、「強力な構成的プロモーター」は、生来のプロモーター(DNA配列又は遺伝子の上流に普通なら天然に存在しているプロモーター)を置き換えるために使用することができ、その結果、プラスミド又は染色体のどちらかに置くことができると共に、生来のプロモーターからのレベルよりも高いレベルでの所望のDNA配列又は遺伝子の発現のレベルを提供する、発現カセットがもたらされる。強力な構成的プロモーターは、種又は属に特異的であるとすることができるが、細菌又は酵母由来の強力な構成的プロモーターは、それぞれ、遠縁の細菌又は酵母でうまく機能することができることが多い。例えば、S.セレビシエ由来のプロモーターは、K.ラクティス(K. lactis)又はK.マルシアヌスにおいてうまく機能することができる(Leeら、2012)。強力な構成的プロモーターの例は、解糖経路の酵素、例えばENO(エノラーゼ)又は発酵経路、例えばPDC若しくはアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)をコードする遺伝子、リボソームタンパク質をコードする遺伝子、及び翻訳延長因子、例えばTEF1をコードする遺伝子の発現を誘導するプロモータ
ーである(Sunら、2012)。
遺伝子又はコーディング領域の「過剰発現」という用語は、当該遺伝子又はコーディング領域によりコードされる酵素又はタンパク質が、同じ又は類似の増殖条件下で、宿主微生物の野生型バージョンにおいて見られるレベルよりも高いレベルで宿主微生物において産生されることを引き起こすことを意味する。これは、例えば、以下の方法の1つ又は複数により行うことができる:(1)より強力なプロモーターを組み込む工程、(2)より強力なリボソーム結合部位を組み込む工程、(3)ターミネーター又はより強力なターミネーターを組み込む工程、(4)コーディング領域中の1つ又は複数の部位でコドンの選択を改善する工程、(5)mRNA安定性を改善する工程、及び(6)染色体に複数のコピーの導入、又はマルチコピープラスミドにカセットの配置のいずれかによる、遺伝子のコピー数を増加させる工程。過剰発現である遺伝子から産生される酵素又はタンパク質は、“過剰産生"であると言われる。「過剰発現」である遺伝子、又は「過剰産生」であるタンパク質は、宿主微生物に生来のものとすることができ、又は供与生物から宿主微生物に遺伝子工学方法により移植されたものとすることができ、その場合、酵素又はタンパク質及び当該酵素又はタンパク質をコードする遺伝子又はコーディング領域は、“外来"又は“異種"と呼ばれる。外来又は異種遺伝子及びタンパク質は、未操作の(unengineered)宿主生物には存在しないので、定義によれば過剰発現であり、かつ過剰産生である。
「プラスミド」という用語は、染色体よりも実質的に小さい、微生物の染色体又は複数の染色体とは別の、当該染色体又は複数の染色体とは独立して複製する、環状又は直鎖状のDNA分子を意味する。「プラスミド」は、1細胞当たり約1コピー又は1細胞当たり2つ以上のコピーで存在することができる。一般に微生物細胞内のプラスミドの維持には抗生物質の選択が必要であるが、栄養要求性の相補も使用できる。
発現カセットの組込みは、染色体への非相同の、若しくは好ましくは相同のインテグレーションによる、又は所望のカセットを含有する複製プラスミドの組込みにより行うことができる。それぞれがそれ自体のプロモーター及びターミネーターを持って、2つ以上の遺伝子をパッケージへアセンブリすることは当技術分野でよく知られているが、このパッケージは、染色体又は複製プラスミドのいずれかにインテグレーションするための1つの隣接DNA配列として操ることができる(Shaoら、2012)。
「異種」という用語は、生物中に天然に又は生来見いだされない遺伝子又はタンパク質を意味するが、これは、形質転換、交配、又は形質導入による等の遺伝子工学によって生物に導入できる。異種遺伝子は、染色体にインテグレーションする(挿入する)か、プラスミドに含めることができる。
「外来性」という用語は、形質転換、交配、形質導入、又は突然変異誘発による等の遺伝子工学によって、活性を高める、低下させる、又は排除する目的で生物に導入又はこれにおいて改変された遺伝子又はタンパク質を意味する。外来性の遺伝子又はタンパク質は異種であってもよく、又は、宿主生物にとって生来であるが、1つ又は複数の方法によって、例えば突然変異、欠失、プロモーターの変化、ターミネーターの変化、重複、又は染色体又はプラスミドへのさらなる1又は複数のコピーの挿入によって改変されている、遺伝子又はタンパク質であってもよい。したがって、例えば、KmPCK遺伝子の第2のコピーが、生来の部位とは異なる染色体の部位に挿入される場合、第2のコピーは外来性となる。
第1の遺伝子、DNA配列、又はタンパク質の「相同体」という用語は、前記第1の遺伝子、DNA配列、又はタンパク質の生物学的機能と同様の機能を果たす、第2の遺伝子、DNA配列、又はタンパク質である。これは、配列比較のためにBLASTコンピュータープログラムにより決定される(Saliolaら、2004;Altschulら、1997;Altschulら、1990)、(タンパク質配列を比較するか、又は適当な遺伝子コードを使用して遺伝子配列に由来するタンパク質配列を比較する場合)前記第1の遺伝子又はタンパク質と統計学的に有意な配列同一性を有し、欠失及び挿入が可能である。S.セレビシエ遺伝子ScURA3の相同体の例は、これはオロチジン-5-リン酸デカルボキシラーゼをコードするが、K.マルシアヌス由来のKmURA3遺伝子であろう。
第1の遺伝子、DNA配列、又はタンパク質の「アナログ」という用語は、前記第1の遺伝子、DNA配列、又はタンパク質の生物学的機能と同様の機能を果たす、第2の遺伝子、DNA配列、又はタンパク質である。この場合、配列比較のためにBLASTコンピュータープログラムにより決定される(Altschulら、1990;Altschulら、1997)、(タンパク質配列を比較するか、又は遺伝子配列に由来するアミノ酸配列を比較する場合)前記第1の遺伝子、DNA配列、又はタンパク質と統計学的に有意な配列同一性が存在せず、欠失及び挿入が可能である。例えば、K.マルシアヌス由来のフマラーゼ1であるKmFumlpは大腸菌由来のFumBのアナログであり、これは、双方がフマラーゼとして機能するが、この2つの酵素間又はそのそれぞれの遺伝子間に有意な配列相同性はないからである。当技術分野に精通した科学者であれば、特定の生物学的機能を有する多くの酵素及びタンパク質を、例えば、フマラーゼ又はリンゴ酸デヒドロゲナーゼを、相同体又はアナログいずれかとして、多くの様々な生物で見いだすことができることを知っており、酵素又はタンパク質のそのようなファミリーのメンバーは、構造が僅かに又は実質的に異なる場合もあるが、同じ機能を共有しているので、同じファミリーの様々なメンバーを、多くの場合で、遺伝子工学に関する現在の方法を使用して同じ生物学的機能を果たすために使用することができる。それ故、例えば、K.マルシアヌス由来のKmFum1pフマラーゼと大腸菌由来のFumBフマラーゼとは双方が同じ反応を触媒し、したがって、どちらでも適切な状況でフマル酸及び最終的にコハク酸の産生を得ることができ、同様の発酵条件下でより高力価のフマル酸又はコハク酸をもたらすものを選択することにより、最終的に使用すべきどちらか1つの選択を為すことができる。
「突然変異」という用語は、関連する野生型配列とは異なるものにするDNA配列の任意の変化を意味する。「突然変異」は、DNA配列の単純な塩基の変化、欠失、挿入、置換、フレームシフト、逆位、重複、又はその他のどのタイプの変化も含むことができる。「突然変異」という用語は通常、機能に悪影響を及ぼすか、遺伝子又は遺伝子産物の活性を低減させる変化を指すが、本明細書では、「突然変異」という用語はまた、遺伝子又は遺伝子産物の活性を高める変化も指すことができる。例えば、大腸菌のaroG遺伝子のフィードバック耐性突然変異は、フェニルアラニン等の阻害剤の存在でAroGの活性を高める。プロモーターを異なる、より強力なプロモーターで置き換えることはまた、遺伝子又は遺伝子産物の活性を高めることができる突然変異をもたらす。「ヌル突然変異」という用語は、遺伝子のほとんど又は全ての欠失等の突然変異を意味し、これは、遺伝子の機能を効果的に排除する。
「突然変異体」という用語は、親株又は前駆株と比較した場合に1つ又は複数の突然変異を含む株又は分離株を意味する。酵母の突然変異遺伝子型は、突然変異遺伝子をイタリック体の小文字で書くことによって指定される。例えば、ura3は、その株がURA3遺伝子に突然変異を含むことを指定する。
「遺伝子変異」という用語は、宿主細胞に組み込まれた宿主細胞の染色体又はプラスミドのいずれかにおいて、前記遺伝子変異から生じる細胞を前記遺伝子変異を含まない関連細胞と比較した場合、酵素活性の上昇又は低下、又は代謝物の定常状態濃度又は産生の上昇又は低下等の、所望の結果を意図的又は偶然にもたらす、任意の突然変異、遺伝子若しくはDNA配列の挿入又は付加、遺伝子カセットの挿入又は付加、遺伝子又はDNA配列の重複、DNA配列の欠失を意味する。場合によっては、遺伝子変異により酵素の活性の上昇又は低下を招くことになり、その場合、所望の結果は、酵素活性の特定の活性によって測定することができる(例えば、全細胞、透過処理した細胞、細胞抽出物、オルガネラ(例えば、ミトコンドリア)調製物、又は細胞膜調製物によるタンパク質1ミリグラムあたりの消費された基質又は産生された産物のマイクロモルで)。他の場合では、遺伝子変異により、コハク酸等の所望の代謝物の力価、収量、又は比生産性の上昇がもたらされることになり、これは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の適切な分析方法で評価できる。更に他の場合では、遺伝子変異により、ピルビン酸や酢酸等の望ましくない代謝物の力価、収量、又は比生産性の低下がもたらされることになる。
グルコースからのスクシネート産生のための酵母を操作する第1の工程は、不要な発酵経路が欠失されている宿主株を作出することである。サッカロミセス属、クルイベロマイセス属、カンジダ(Candida)属、ピチア(Pichia)属及びイサチェンキア属の酵母において、主たる発酵経路は、エタノール(+二酸化炭素)及びグリセロールへのものである。エタノール経路は、ピルビン酸デカルボキシラーゼ(PDC; EC 4.1.1.1)をコードする全ての遺伝子を欠失させることにより遮断することができる。サッカロミセス・セレビシエは、3つのかかる遺伝子、ScPDC1、ScPDC5、及びScPDC6を有する。それぞれクルイベロマイセス・ラクティス及びクルイベロマイセス・マルシアヌスは、ただ1つのKlPDC1及びKmPDC1をそれぞれ有する。グリセロール経路は、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.8; EC 1.1.99.5; EC1.1.1.177; EC 1.1.1.94)をコードする全ての遺伝子を欠失させることにより遮断することができる。S.セレビシエは、3つのかかる遺伝子、GUT2、GPD1、及びGPD2を含有する。K.ラクティスは、2つのかかる遺伝子、KlGUT2(Saliolaら、2008)及びKlGPD1(Nevesら、2004)を含有する。
「主要な発酵産物」という用語は、その他のどの発酵産物よりも高い濃度で産生される、水又は二酸化炭素以外の発酵産物を意味する。
遺伝子の欠失は、当技術分野で知られているいくつかの方法によって行ってもよい。そのような方法の1つでは、欠失のための標的遺伝子(例えば、PDC1)をコードするDNA配列を、栄養要求性マーカーを相補する遺伝子をコードするDNA配列によって置き換えることができる。遺伝子の欠失及び置換に一般的に使用されるマーカーには、例えば、ura3、his3、adel、trp5、又はleu2酵母突然変異体における、ウラシル、ヒスチジン、アデニン、トリプトファン、及びロイシン栄養要求性の相補が含まれる。これらの栄養要求性マーカーを使用するには、まず、株は、生合成経路の1ステップが欠けている必要がある。一般的に用いられる栄養要求性マーカーの1つとして、URA3遺伝子が利用される。機能的なプロモーターとターミネーターにリンクされる場合、URA3遺伝子によって、オロチジン-5-リン酸デカルボキシラーゼを欠く株(ura3)は、ウラシルのない最小培地で増殖が可能となる。オロチジン-5-リン酸デカルボキシラーゼを欠く株は、5-フルオロオロチン酸(5-FOA)で増殖できる突然変異体を見つけることにより選択できる。機能的オロチジン-5-リン酸デカルボキシラーゼを有する株は、フッ素化化合物をRNAに取り込み、生存できない。このようにして、機能的なURA3遺伝子を包含するにしろ包含しないにしろ、株を選択できる。通常、第1の工程では、URA3の存在が必要なウラシルのない培地での選択が含まれる。同じDNA配列の少なくとも1つのコピーが両端で、両方とも同じ向きで、URA3遺伝子に隣接している場合、URA3マーカーを欠失させ、次いで、遺伝子組換えの1回又は複数のさらなるラウンドで再利用でき、その結果、2つのフランクとの間での相同的組換えによって、介在するURA3遺伝子の欠失がもたらされる。このアプローチは、「タンデム反復」、「タンデム反復DNA配列」、「反復DNA配列」、「直接反復」等の使用と様々に呼ぶことができる。タンデム反復が隣接するURA3を持つ株を5-FOAで増殖すると、URA3遺伝子は「ループアウト(looped out)」又は「クロスアウト(crossed out)」され、次いで、その後の遺伝子工学に再利用できる。
必要な遺伝子のクローニングは、当技術分野でよく知られているいくつかの方法のいずれかによって、例えば、適切なプラスミド、コスミド、ファージミド、細菌人工染色体、又は酵母人工染色体での遺伝子ライブラリーの構築によって、それ続く、DNAプローブを使用したスクリーニング、又は適切な突然変異の宿主細胞、例えば細菌株又は酵母株での機能的相補による選択によって、行うことができる。例えば、大腸菌、S.セレビシエ、及びクルイベロマイセス・マルシアヌス由来の、多くのかかる遺伝子についてのDNA配列は公開されており、国立生物工学情報センター(the National Center for Biotechnology Information)のウェブサイト上で、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/、入手可能である。これらの場合、所望の遺伝子は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅及びクローニングされ、次いで、適当なベクター中にクローニングすることができる。そのDNA配列が未だ公開されていないある生物由来の、例えば、イサチェンキア・オリエンタリス又はクルイベロマイセス・マルシアヌス由来の、所望の遺伝子についてのDNA配列を取得するため、十分に定着した方法によりゲノム全体のDNA配列を取得し、別の生物由来の既知の遺伝子に対する相同性により所望の遺伝子の位置を突き止めることができる(Altschulら、1997; Altschulら、1990)。次いで、所望の遺伝子は、PCRにより増幅され、適当な発現ベクター又は発現カセット中にクローニングすることができる。所望のDNA配列はまた、合成断片を注文することにより、例えば、Integrated DNA Technologies社(Woodland、Texas、米国)製の「gBlocks」として入手することができる。DNA断片は、従来のライゲーションにより又は「Gibson」法により、New England Biolabs社(Ipswitch、Massachusetts、米国)製のNEBuilderキットを使用して連結することができる。
各所望の遺伝子をクローニング後、生来の(野生型)タンパク質を細胞質以外の細胞内オルガネラに誘導することになる任意の配列を、欠失させるか又は変異を起こさせて、タンパク質が前記オルガネラへ取り込まれることを実質的に防ぐことができる。これを行う方法は文献で良く知られている。例えば、ミトコンドリアマトリクス(ミトコンドリアの内部チャンバー)に標的化されたタンパク質のN-末端タンパク質配列を欠失させて、タンパク質を細胞質に向け直すことができることが知られている。「N-末端ターゲティング配列」はまた、N-末端を内膜を通過してマトリクスへと運ぶので、マトリクス標的配列(MTS)とも呼ばれる。さらなるソーティング情報がない場合、これは、タンパク質をマトリクスへと誘導する。これについては、かなり詳細に研究されており、その主たる特性は、10年超の間知られている。これは、疎水性の1つの面及び陽性荷電の1つの面を有する両親媒性ヘリックスを形成する能力がある、約10〜80個のアミノ酸残基からなる。一次構造にコンセンサスはなく、一次構造は密接に関連したオーソログ間でさえ顕著に異なることが多い。しかし、この両親媒性ヘリックスの一般的性質は、「菌類と動物の間で広く保存されている」(Neuport及びHermann、2007)。1つの具体的例は、ScFUM1遺伝子によりコードされる野生型フマラーゼは、ミトコンドリアと細胞質との両方に誘導されるが、N-末端の17個のアミノ酸をコードしているDNA配列が欠失されている場合、上記酵素はミトコンドリアで見いだされないことである(Steinら、1994)。ペルオキシソームリンゴ酸デヒドロゲナーゼを細胞質へ向け直すことの一例は、MDH3遺伝子由来の、C-末端のトリペプチド配列SKLをコードしている9つの塩基対を欠失させることにより行われた(Zellら、2008)。任意のオルガネラ標的配列を欠失させるか又はこれに突然変異を起こさせることに加えて、各所望の酵素の遺伝子を、構成的プロモーターに機能的に連結することができる。好ましい実施形態では、個別の遺伝子発現カセットを、経路カセットになんらの実質的反復DNA配列を有さない状態で、1つの経路カセットで一緒にアセンブリすることができ、次いで、このことによって、意図する宿主株の染色体中に又は経路カセットを導入するためのビ
ークルとしてのプラスミド中にアセンブリ経路カセットをインテグレーションすることがより簡便となるように、それぞれ所望の遺伝子は異なるプロモーターに連結される。経路カセットはアセンブリされた後、上記の宿主株中に組み入れられる。
発現カセットの組入れは、染色体への非相同的、若しくは好ましくは相同的なインテグレーションにより、又は所望のカセットを含有する複製プラスミドの組入れにより行うことができる。任意選択で、発現カセットの組入れは、1つ又は複数の不要な遺伝子、例えば、KmPDC1の欠失と組み合わせることができ、その結果、カセットが不要な遺伝子の代わりになり、事実上、所望の工程のうち2つを一度に行う。不要な遺伝子のプロモーターを、所望の遺伝子のうちの1つの発現を誘導するように使用するために、配置することができる。例えば、KmPDC1遺伝子座での大腸菌pck遺伝子の発現が得られるように設計されたカセットのインテグレーションは、pckオープンリーディングフレームがKmPDC1オープンリーディングフレームに正確に取って代わるように、設計することができる。カセットから2つ以上の遺伝子を発現させる場合、アレイの最後の遺伝子がKmPCD1ターミネーターに機能的に結合するように、これを配置することができる。
「コハク酸生合成経路」という用語は、糖又はグリセロール等の1つ又は複数の炭素源で始まり、最終的にコハク酸に至る、酵素的及び場合により非酵素的化学反応の任意の系列を意味する。従来の3つコハク酸生合成経路がある:還元的TCA分岐、酸化的TCA分岐、及びグリオキシル酸シャント(図1)。リンゴ酸酵素を含む第4の新規な経路は、本特許の態様の1つである。「リンゴ酸酵素」は、中間体としてのオキサロアセテートをバイパスして、二酸化炭素と還元当量とを加えることによる、ピルベートを直接マレートに変換する酵素である。自然界に見られるリンゴ酸酵素に関して2つのバージョンが存在する。第1のバージョンは「NADH依存性リンゴ酸酵素」と命名され、EC 1.1.1.39及びEC 1.1.1.38とも呼ばれ、その補因子としてNADPHよりもむしろNADHを好む。言い換えると、酵素は、NADPHに対するよりもNADHに対して高い親和性(低いKm)を有するか、又は補基質としてNADPHを使用する場合よりも補基質としてNADHを使用する場合、高いVmaxを得ることが可能である。第2のバージョンは、「NADPH依存型リンゴ酸酵素」と命名され、EC 1.1.1.40とも呼ばれ、その補因子としてNADHよりもNADPHを好む。言い換えると、酵素は、NADHに対するよりもNADPHに対して高い親和性(低いKm)を有するか、又は補基質としてNADHを使用する場合よりも補基質としてNADPHを使用する場合、高いVmaxを得ることが可能である。
還元的TCA分岐(スクシネート産生の還元経路)は、ホスホエノールピルベート(PEP)又はピルベートのいずれかのカルボキシル化で始まり、オキサロアセテートを生じる(図2)。PEPのカルボキシル化は、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PPC)又はホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PCK)のいずれかの酵素によって行うことができる。PCK酵素を使用することは、1個のアデノシン三リン酸(ATP)がオキサロアセテートと一緒に生成されるので、スクシネート産生経路において好ましい。ピルベートのカルボキシル化は、ピルビン酸カルボキシラーゼ(PYC)によって行うことができる。オキサロアセテートは、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH)によってマレートに還元される。マレートはフマラーゼ(FUM)によってフマレートに変換される。最後に、スクシネートはフマル酸レダクターゼ(FRD)によってフマレートから産生される。還元的TCA分岐は高収量経路であるが、NADH、NADPH、及び/又はFADHの形態にある還元当量の正味のコンシューマである。「還元当量」という用語は、酸化還元補因子によって運搬され、基質を化学的に還元するために酵素が使用することができる化学的に還元された形態の水素を意味する。例えば、NADHはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの還元型であり、これは、その還元水素原子をフマレートに供与してスクシネートを形成することができ、酵素フマル酸レダクターゼによって触媒される。このような反応では、補因子は酸化型に、この例ではNADに変換されるが、次いで、これは、コハク酸生合成経路で機能する還元型に戻されて再利用されることが必要である。「酸化還元補因子」という用語は、酵素反応で補基質として使用されて、別の基質に還元当量を供与する又は別の基質から還元当量を受け取る、任意の化合物を意味する。酸化還元補因子は、還元型と酸化型の対で存在する。このような対の例には、限定されないが、NADH/NAD(NAD+と記述されることもある)、NADPH/NADP(NADP+と記述されることもある)、FAD/FADH(FADH2と記述されることもある)、及びFMN/FMNH(FMNH2と記述されることもある)が含まれる。「還元補因子」という用語は、化学的に還元された形態の酸化還元補因子、例えばNADH、NADPH、FADH、又はFMNHを意味する。解糖の過程では、PEP産生中に1個の還元当量が産生されるが(NADH)、PEPからスクシネートへの変換には2個の還元当量(例えばNADH、NADPH、及び/又はFADH)が必要である。酸化コハク酸経路又はグリオキシル酸コハク酸経路から生成される還元当量を使用する細胞質内のコハク酸産生の還元経路の機能に必要なレベルの還元当量を提供するプロセスは、細胞質でのコハク酸産生の還元経路のバランスをとる酸化還元と言及される。
酸化的TCA分岐及びグリシルオキシル酸シャントの両方は、還元的TCA分岐よりもスクシネートの収量が低い経路を提供するが、いずれも、嫌気性又は微好気性条件下でのグルコース又は他の炭水化物炭素源からの還元経路を介してスクシネート生合成の酸化還元バランスを得るのに必要なさらなる還元当量を提供することができる。酸化的TCA分岐(コハク酸の酸化的生産)は、アセチル-CoAとオキサロアセテートからシトレートを形成するクエン酸シンターゼ(CIT)で始まる。シトレートは、アコニターゼ(ACN)によってイソシトレートに変換される。イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)は、イソシトレートをα-ケトグルタレートに変換し、これは、アルファ-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ(KGD)によってスクシニル-CoAに更に変換される。次いで、スクシネートが、スクシニル-CoAシンテターゼ(SCS)又はコハク酸チオキナーゼ又はコハク酸-CoAリガーゼにより、スクシニル-CoAから産生される。コハク酸-CoAリガーゼは、スクシニル-CoAのスクシネートへの可逆的反応を触媒する酵素である。酸化的TCA分岐を介して産生される各スクシネートについて、5個の還元当量が産生される。グリオキシル酸シャント(コハク酸産生のためのグリオキシル酸経路)の機能中に、イソシトレートはイソシトレートリアーゼ(ICL)によってスクシネート及びグリオキシレートに分かれる。マレートシンターゼ(MLS)は、グリオキシレートとアセチル-CoAからマレートを形成する。次いで、マレートはフマレートに、次いでスクシネートに変換される。グリオキシル酸シャントを介して産生される最大還元当量は、3個のグルコース分子から産生される4個のスクシネート分子毎に8個の還元当量である。
TCAサイクル又はグリオキシル酸経路の酸化の方向等の、スクシネート産生のための酸化経路の機能から生成される還元当量による細胞質でのコハク酸産生のための還元経路の酸化還元バランスをとることは、行うことが容易ではなく、したがって、細胞質でのスクシネート産生のための還元経路の機能に必要な還元当量を供給可能な、酵母細胞内の経路を特定する必要性が依然として存在する。スクシネート産生のさらなるルートは、十分な還元当量を産生する必要がある。
還元当量のための一つの代替源は、ペントースリン酸経路(PPP)である。ペントースリン酸経路は、還元当量(NADPH)の給源並びに二酸化炭素及びヌクレオチドの合成に必要な五炭糖ホスフェートの給源でもある。グルコースが細胞に入ってグルコース-6-ホスフェートにリン酸化された後、酸化的PPPは、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD又はZWF)、6-ホスホグルコノラクトナーゼ(SOL又はPGL)、及び6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ(GND)の各酵素よって、2分子のNADPH及び1個のCO2と共にグルコース-6-ホスフェートをリブロース-5-ホスフェートに変換する。グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ及び/若しくは6-ホスホグルコノラクトナーゼ(PGL)及び/若しくは6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ(GND)の活性を高めることにより、並びに/又はグルコース-6-リン酸イソメラーゼ(PGI)の活性を低下させることにより、PPPを通じて炭素フラックスの増加を誘導することができ、したがって、スクシネート産生のために還元的TCA分岐のバランスをとるのに必要な所要の還元当量が生成される(図3)。PGIは、遺伝子欠失又は他の突然変異により活性が低減するか、又は完全に不活性化され、それによりPPPを通じてのグルコースからの全体的な炭素フラックスを強制することができる。PGIの欠失によって、サッカロミセス・セレビシエにおいてグルコース上での増殖の排除が引き起こされるが、他の微生物(例えば、細菌大腸菌又は酵母クルイベロマイセス・ラクティス)では、PGIの欠失は忍容される。一般に、これらのPGI欠失株のバックグラウンドでは、少なくとも最初は細胞増殖が妨げられる。PGI突然変異体については研究されており、より速く増殖する突然変異体が特徴づけられている(Sekarら、2017)。野生型株と比較して部分的又は完全な増殖を回復するには、細胞は、PPPを介して産生される過剰な還元当量を利用する必要がある。大腸菌では、NADPHはNADHに変換することができ、NADHは、スクシネート生合成のために細胞によってより容易に使用される。進化した株は、これらの還元当量の相互変換を可能にする、可溶性又は膜結合性トランスヒドロゲナーゼのいずれかにおいて突然変異をしばしば内在性に持っている。加えて、ZWF活性の上昇によるPPPへのフラックスが増加することによって、PGI欠失株の増殖率が改善されることが示されてきた(Sekarら、2017)。したがって、一実施形態では、グルコース-6-ホスフェートからグリセルアルデヒド-3-ホスフェート及びフルクトース-6-ホスフェートへのPPPを通じてのフラックスは、PPPの1つ又は複数の酵素の活性を高める1つ又は複数の遺伝子変異によって強化され、及び/又はホスホグルコースイソメラーゼ(PGI)活性を低下させる又は排除することにより、直接Embden-Meyerhof-Parnas経路を通じてのフラックスを遮断又は低減する。PPPの酵素には、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(ZWF)、6-ホスホグルコノラクトナーゼ(PGL)、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ(GND)、トランスケトラーゼ(TKT)、トランスアルドラーゼ(TAL)、リブロース-5-リン酸エピメラーゼ(RPE)、及びリブロース-5-リン酸イソメラーゼ(RPI)が含まれる。
前述のように、グリオキシル酸シャントは、スクシネート産生の過程で還元当量の給源として通常に利用されるが、特に酵母では、この経路はかなりの制限を被る。エタノール以外の産物の生産用に操作された酵母では、ピルビン酸デカルボキシラーゼ(PDC)が望ましくない副産物、アセトアルデヒド及びエタノールの原因である。酵母からピルビン酸デカルボキシラーゼの排除によってまた、アセチル-CoAに関して完全にサイトゾル性である唯一の給源も排除される。PDC欠失株のバックグラウンドでは、ピルベートはミトコンドリアに輸送され、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)によってアセチル-CoAに変換される必要がある。次いで、アセチル-CoAはミトコンドリア内部でアセテートに変換され、次いで、サイトゾルに送り戻され、そこでアセチル-CoAシンターゼ(ACS)によってアセテートをアセチル-CoAに変換することできる。この迂回路は非効率的であるだけでなく、また、細胞によるエネルギー消費がより高いという結果にもなる。ACSによって産生されるアセチル-CoAはATPを利用し、且つAMPを生じ、それによって、従来のルートを介するアセチル-CoAの形成よりもかなり多くのエネルギーが必要である。アセチル-CoAへの一般的な細菌ルートは、ピルビン酸ギ酸リアーゼリアーゼ(PFL)に依存している。PFLはピルベートをアセチル-CoA及びフォーメートに変換する。フォーメートは、ギ酸デヒドロゲナーゼ(FDH)によりCO2に更に酸化され、スクシネート産生に必要な還元当量を産生する。PFLには、触媒タンパク質及び活性化酵素の両方が必要である。PFLは、活性のために再活性化を必要とする酸素感受性酵素であることが知られている。先のグループは、S.セレビシエでPFLを発現させ、これが、生来の経路の代わりに細胞が必要とするアセチル-CoAを産生することが可能であることを示した。さらなる研究の示したところは、酵母で発現させた場合、フェレドキシンの共発現によって酵素の酸素耐性を著明に改善できることである(Zhangら、2015)。PFLから産生されたアセチル-CoAは、グリオキシル酸シャントの酵素によって利用することができ、FDHによって形成された還元当量は、還元的TCA分岐で使用することができる(図4及び図5)。
(実施例1)
還元的TCA分岐の組込み
酵母では、TCAサイクルに関与する酵素はミトコンドリアに標的化される。ピルベート及びオキサロアセテート産生までの解糖は細胞質で起こる。最適なスクシネート産生ルートを有するために、細胞質に必要な全酵素を有することが好ましい。細胞質還元的TCA分岐の場合、MDH、FUM、及びFRD酵素は細胞質に全て局在化している必要がある。これは、ミトコンドリアの標的配列を欠く細菌遺伝子を発現させることにより、又は酵母タンパク質に見られるミトコンドリアの標的配列を排除することにより行うことができる。加えて、エネルギー的により有利なスクシネートへのルートを生産するのに、PCK活性の上昇も望まれる。MDH、FUM、FRD、及びPCKの高活性は、遺伝子の発現を高強度のプロモーターとリンクさせることによって得ることができる。そのような高強度プロモーターの例には、限定されないが、PDC、TDH(トリオースリン酸デヒドロゲナーゼ)、ENO(エノラーゼ)、TPI(トリオースリン酸イソメラーゼ)、TEF(翻訳伸長因子)、ADH(アルコールデヒドロゲナーゼ)、及びGDP(グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ)が含まれる。一般に、解糖に関与する遺伝子のプロモーターは、構成的に発現される強力なプロモーターであり、遺伝子の過剰発現にとって良い選択である。
発現カセットの組込みは、染色体への非相同の、若しくは好ましくは相同のインテグレーションにより、又は所望のカセットを含有する複製プラスミドの組込みにより行うことができる。ゲノムのインテグレーション部位は、エタノール形成に関与するPDC又はADH等の、又はグリセロール形成に関与するGPP及びGDP等の、不要な副産物の遺伝子を含有する遺伝子座で行うことができる。それぞれがそれ自体のプロモーター及びターミネーターを持って、2つ以上の遺伝子のパッケージへのアセンブリは当技術分野でよく知られているが、このパッケージは、染色体又は複製プラスミドのいずれかにインテグレーションするための1つの隣接DNA配列として操ることができる(Shaoら、2012)。
(実施例2)
ペントースリン酸経路を通じてのフラックスが上昇したコハク酸経路及びPGI活性の排除又は低減
宿主株が還元的TCA分岐の発現を伴って構築されると、高収率のコハク酸経路のためにさらなる還元当量が必要である。さらなる還元当量を産生できる1つの方法は、ペントースリン酸経路(PPP)を通じての炭素フラックスの方向転換によることである。少なくとも部分的な方向転換は、前述の過剰発現の方法を使用してグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(ZWF)の活性を高めることによって得ることができる。炭素のより完全な方向転換は、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ(PGI)活性を低下又は欠失させることによって得ることできる。欠失によって、グルコース上で増殖する場合、PPPを通じてのNADPHの産生が最高となる。別の実施形態では、ZWF、PGL、及び/又はGND活性の上昇、及びグルコース-6-リン酸イソメラーゼの排除又は低減の両方を、同じ細胞に操作する。
一実施形態では、PGI DNA配列を、直接反復が隣接するURA3遺伝子によって置き換える。第2の工程では、5-FOAを使用する選択に基づいて、URA3マーカーを排除する。別の実施形態では、PGI DNA配列を排除するだけでなく、これをグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼをコードするDNA配列で置き換える。これは、PGIを排除することにより、PPPへのフラックスを誘導するだけでなく、単一の工程でZWF活性を上昇させる。別の実施形態によって、リンゴ酸酵素の導入又は活性の上昇によるマレート産生、フマレート産生、又はスクシネート産生のためのPPPによって産生されたNADPHの使用が可能になる。リンゴ酸酵素は、基質として、NADPHを好むものでもNADHを好むものでもよい。NADPHを好むリンゴ酸酵素、言い換えれば、NADHに対するよりもNADPHに対して低いKmを有するリンゴ酸酵素、又はNADHと比較してNADPHでより高いVmaxを有するリンゴ酸酵素は、本明細書及び特許請求の範囲において簡潔にするために「NADPH依存性リンゴ酸酵素」と呼ばれるものとする。好ましい実施形態では、NADPHがPPPによって産生される還元当量の形態であるので、リンゴ酸酵素は基質としてNADPHを好む。この活性をコードする遺伝子の一例は、大腸菌のmaeB遺伝子である。リンゴ酸酵素(MaeB)は、1個のNADPHを利用してピルベートをカルボキシル化し、マレートを産生する。次いで、産生されたマレートを、MDH、FUM、及びFRDによってスクシネートに更に変換する。
別の実施形態では、NADHを好むリンゴ酸酵素の、言い換えれば、NADPHに対するよりもNADHに対して低いKmを有するリンゴ酸酵素の、又はNADPHと比較してNADHでより高いVmaxを有するリンゴ酸酵素の、活性の上昇を有するように細胞を操作するが、この酵素は、本明細書及び特許請求の範囲において簡潔にするために「NADH依存性リンゴ酸酵素」と呼ばれるものとする。この活性をコードする遺伝子の一例は、大腸菌のmaeA又はsfcA遺伝子である。リンゴ酸酵素(MaeA)は、ピルベートをカルボキシル化し、NADH及びマレートを産生する。次いで、産生されたマレートを、MDH、FUM、及びFRDによってフマレート及び/又はスクシネートに更に変換することができる。
(実施例3)
PFLによるアセチル-CoAへの外来性ルート
還元的TCA分岐のバランスをとるのに必要な還元当量はまた、グリオキシル酸シャントを進行させることにより生成することができる。元々、グリオキシル酸シャントは、唯一の炭素源としてアセテート又は2炭素単位上で増殖する方法を細胞に提供する。グリオキシル酸シャントは、クエン酸リアーゼ(CIT)によるアセチル-CoA及びオキサロアセテートからのシトレートの形成で始まる。次いで、アコニターゼ(ACO)によってシトレートからイソシトレートが産生される。イソクエン酸リアーゼ(ICL)は、イソシトレートをグリオキシレートとスクシネートとに変換する。リンゴ酸シンターゼ(MLS)は、アセチル-CoA及びグリオキシレートを凝縮してマレートを形成する。次いで、産生されたマレートは、FUM及びFRDによってスクシネートに更に変換される。サイトゾル性のアセチル-CoAは通常、PDCを介して酵母で産生される。しかし、エタノール以外の製品用に操作された酵母では、PDCは典型的には不活性化される。これは、サイトゾル性のアセチル-CoAを産生するのが困難な細胞を提示する。これは、ミトコンドリアで産生されたアセテートを利用し、これを細胞質に輸送し、次いで、アセテートをアセチル-CoAに変換することにより行うことができるが、これには、細胞エネルギー論の点では高コストの反応である、ATPのAMPへの変換が必要である。エネルギー使用(例えばATP)と還元電位との両方の点に関してより好ましい生化学的ルートでは、ピルビン酸ギ酸リアーゼ(PFL)及びギ酸デヒドロゲナーゼ(FDH)を利用する。PFLには、機能性のために2種のポリペプチド、PflA及びPflBが必要である。PflAは、触媒酵素PflBにグリシル基を生成する活性化酵素である。PFLは既知のいずれの酵母にとって生来のものではないが、先の研究ではPFLを酵母で機能的に発現させることが可能であると示されている。潜在的な問題の1つは、PFLは嫌気性酵素として知られており、培養条件(例えば、高エアレーション)に応じて、PFLが不活性化される可能性がある、ということである。最近の研究では、それぞれのパートナーレダクターゼと一緒のフラボドキシン又はフェレドキシンの過剰発現を通して、酵母のPFLの好気的機能性が強化される可能性が示されている。「フラボドキシン」及び「フェレ
ドキシン」とは、酸化還元反応で作用するいくつかの小タンパク質のうちのいずれかを指し、これは、活性化、再活性化、又は酸化からの保護によってPFLの比活性を高めるように機能することができる。機能的なPFLは、グリオキシル酸シャント経路に入ることができるアセチル-CoAを、またフォーメートを生成することになる。フォーメートは、ギ酸デヒドロゲナーゼによってCO2に更に変換することができ、一方、1個のNADHも生成して、この経路の利用可能な還元力を更に強化する。宿主株がサイトゾル性の還元的TCA分岐を発現するように操作されたら、グリオキシル酸シャントに必要な4つの酵素(CIT、ACO、ICL、及びMLS)もまた、前述の方法を使用して細胞質で発現させることができる。この株に、大腸菌由来のpflA及びplfB遺伝子を染色体上に又はプラスミド上にいずれかに導入できる。加えて、フェロドキシン又はフラボドキシン及びそれらに伴うパートナー酸化還元酵素を、例えばコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)ATCC 13032由来のfdxB及びCG0639又は大腸菌K-12由来のfldA及びfprをまた、必要であれば、付加して及び/又は過剰発現させて、PFLの活性を高める又は不活性化からこれを保護することができる。最後に、FDH(ギ酸デヒドロゲナーゼ)は、S.セレビシエ又は細菌源由来の遺伝子を組み込むことにより、活性の点で付加する又は高めることができる。付加された又は高まったギ酸脱水素活性を含む、スクシネートを産生するように操作された株に、NADHの形態で還元的コハク酸経路向けの還元当量を提供するために、グルコースに加えてフォーメートを任意選択で供給することができる。
リンゴ酸酵素及びPPPからの還元当量の使用によりオキサロアセテートを提供するように操作された株は、オキサロアセテート生合成のリンゴ酸酵素経路により強く依存するように細胞を強制するために、ピルビン酸カルボキシラーゼ(PYC)活性を低減又は排除するように任意選択で操作することができる。
[参考文献]
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Claims (20)

  1. ペントースリン酸経路を通じてフラックスを増加させる少なくとも1つの遺伝子組換え、及び少なくとも1つのコハク酸生合成経路における少なくとも1つの酵素の活性を高める少なくとも1つの遺伝子組換えを含む、コハク酸産生が増加した遺伝子組換え酵母細胞。
  2. ペントースリン酸経路を通じてフラックスを増加させる前記少なくとも1つの遺伝子組換えは、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(ZWF)の活性を高める、請求項1に記載のコハク酸産生が増加した遺伝子組換え酵母細胞。
  3. ペントースリン酸経路を通じてフラックスを増加させる前記少なくとも1つの遺伝子組換えは、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼホスホグルコースイソメラーゼ(PGI)の活性を低下させる、請求項1に記載のコハク酸産生が増加した遺伝子組換え酵母細胞。
  4. ペントースリン酸経路を通じてフラックスを増加させる前記少なくとも1つの遺伝子組換えは、ホスホグルコースイソメラーゼ(PGI)の活性を低下させ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(ZWF)、6-ホスホグルコン酸ラクトナーゼ(PGL)、及び6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ(GND)からなる群から選択される1つ又は複数の酵素の活性を高める、請求項1に記載のコハク酸産生が増加した遺伝子組換え酵母細胞。
  5. 少なくとも1つのコハク酸生合成経路における前記少なくとも1つの酵素は、リンゴ酸酵素(MAE)、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PCK)、ピルビン酸カルボキシラーゼ(PYC)、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PPC)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH)、フマラーゼ(FUM)、及びフマル酸レダクターゼ(FRD)からなる群から選択される、請求項1に記載のコハク酸産生が増加した遺伝子組換え酵母細胞。
  6. ピルビン酸カルボキシラーゼの活性を低下させる少なくとも1つの遺伝子組換えを更に含む、請求項1に記載のコハク酸産生が増加した遺伝子組換え酵母細胞。
  7. リンゴ酸酵素の活性を高める少なくとも1つの遺伝子組換え並びにNADH、NADPH、及びFADHからなる群から選択される少なくとも1つの還元補因子のアベイラビリティを高める少なくとも1つの遺伝子組換えを含む、コハク酸産生が増加した遺伝子組換え酵母細胞。
  8. 前記リンゴ酸酵素はNADH依存性リンゴ酸酵素である、請求項7に記載のコハク酸産生が増加した遺伝子組換え酵母細胞。
  9. 前記リンゴ酸酵素はNADPH依存性リンゴ酸酵素である、請求項7に記載のコハク酸産生が増加した遺伝子組換え酵母細胞。
  10. 少なくとも1つの還元補因子のアベイラビリティを高める前記少なくとも1つの遺伝子組換えは、外来性ピルビン酸-ギ酸リアーゼの付加である、請求項7に記載のコハク酸産生が増加した遺伝子組換え酵母細胞。
  11. 外来性ギ酸デヒドロゲナーゼを更に含む、請求項10に記載のコハク酸産生が増加した遺伝子組換え酵母細胞。
  12. 前記ピルビン酸-ギ酸リアーゼを活性化するタンパク質と、
    フェレドキシン及びフェレドキシンレダクターゼ、又は
    フラボドキシン及びフラボドキシンレダクターゼと、
    を更に含む、請求項10に記載のコハク酸産生が増加した遺伝子組換え酵母細胞。
  13. ピルビン酸カルボキシラーゼの活性を低下させる少なくとも1つの遺伝子組換えを更に含む、請求項7に記載のコハク酸産生が増加した遺伝子組換え酵母細胞。
  14. 外来性リンゴ酸酵素並びにNADH、NADPH、及びFADHからなる群から選択される少なくとも1つの還元補因子のアベイラビリティを高める少なくとも1つの遺伝子組換えを含む、コハク酸産生が増加した遺伝子組換え酵母細胞。
  15. 前記外来性リンゴ酸酵素はNADH依存性リンゴ酸酵素である、請求項14に記載のコハク酸産生が増加した遺伝子組換え酵母細胞。
  16. 前記外来性リンゴ酸酵素はNADPH依存性リンゴ酸酵素である、請求項14に記載のコハク酸産生が増加した遺伝子組換え酵母細胞。
  17. 少なくとも1つの還元補因子のアベイラビリティを高める前記少なくとも1つの遺伝子組換えは、外来性ピルビン酸-ギ酸リアーゼの付加である、請求項14に記載のコハク酸産生が増加した遺伝子組換え酵母細胞。
  18. 外来性ギ酸デヒドロゲナーゼを更に含む、請求項17に記載のコハク酸産生が増加した遺伝子組換え酵母細胞。
  19. 前記ピルビン酸-ギ酸リアーゼを活性化するタンパク質と、
    フェレドキシン及びフェレドキシンレダクターゼ、又は
    フラボドキシン及びフラボドキシンレダクターゼと、
    を更に含む、請求項17に記載のコハク酸産生が増加した遺伝子組換え酵母細胞。
  20. ピルビン酸カルボキシラーゼの活性を低下させる少なくとも1つの遺伝子組換えを更に含む、請求項14に記載のコハク酸産生が増加した遺伝子組換え酵母細胞。
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